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特許7593267ガス調整装置、およびガス調整装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ガス調整装置、およびガス調整装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
G01N1/00 102D
G01N1/00 101T
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021133927
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023028303
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板橋 亨久
(72)【発明者】
【氏名】北尾 拓也
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-143738(JP,A)
【文献】特開2001-013045(JP,A)
【文献】特開2001-305027(JP,A)
【文献】特開2012-141292(JP,A)
【文献】実開昭57-064752(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記減圧器、前記フローコントローラ、および前記排出弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記ガス管内の成分ガスを排出させるように前記排出弁を開放する開放制御と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するように前記フローコントローラを駆動する駆動制御とを実行し、
前記制御装置は、
ユーザからの開始操作を受付けたときに、成分ガスを減圧して出力するように前記減圧器を制御するとともに、前記開放制御を実行し、
所定時間に亘って前記開放制御を実行した後に前記排出弁を閉塞し、
前記排出弁を閉塞した後に、前記駆動制御を実行する、ガス調整装置。
【請求項2】
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサをさらに備え、
前記所定パラメータは、前記開放制御が実行されることに応じて、所定条件を満たすように変化し、
前記制御装置は、前記所定時間に亘って前記開放制御を実行したときの前記所定パラメータが前記所定条件を満たしたときに前記駆動制御を実行し、
前記所定パラメータは、前記ガス管内の圧力であり、
前記所定条件は、前記圧力が所定圧力に到達するという条件を含む、請求項に記載のガス調整装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定パラメータが前記所定条件を満たすまで、前記開放制御を実行する、請求項に記載のガス調整装置。
【請求項4】
前記所定圧力は、大気圧である、請求項に記載のガス調整装置。
【請求項5】
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサをさらに備え、
前記所定パラメータは、前記開放制御が実行されることに応じて、所定条件を満たすように変化し、
前記制御装置は、前記所定時間に亘って前記開放制御を実行したときの前記所定パラメータが前記所定条件を満たしたときに前記駆動制御を実行し、
前記所定パラメータは、前記ガス管内の成分ガスのガス濃度であり、
前記所定条件は、前記ガス濃度が閾値以上であるという条件を含む、請求項に記載のガス調整装置。
【請求項6】
前記所定時間は、固定値である、請求項~請求項のいずれか1項に記載のガス調整装置。
【請求項7】
前記フローコントローラは、バルブを有し、
前記制御装置は、閉塞状態である前記バルブを開放状態にすることにより、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラから出力し、
前記バルブが閉塞状態である場合には、前記減圧器内で、成分ガスの濃度は低下する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のガス調整装置。
【請求項8】
ガス調整装置であって、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記減圧器、前記フローコントローラ、および前記排出弁を制御する制御装置と、
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサとを備え、
前記制御装置は、
前記ガス管内の成分ガスを排出させるように前記排出弁を開放する開放制御と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するように前記フローコントローラを駆動する駆動制御とを実行し、
前記制御装置は、
所定時間に亘って前記開放制御を実行した後に前記排出弁を閉塞し、
前記排出弁を閉塞した後に、前記駆動制御を実行し、
前記制御装置は、前記所定時間に亘って前記開放制御を実行したときの前記所定パラメータが所定条件を満たしたときに前記駆動制御を実行し、
前記所定パラメータは、前記開放制御が実行されることに応じて、前記所定条件を満たすように変化し、
前記所定パラメータは、前記ガス管内の圧力であり、
前記所定条件は、前記圧力が所定圧力に到達するという条件を含む、ガス調整装置。
【請求項9】
ガス調整装置であって、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記減圧器、前記フローコントローラ、および前記排出弁を制御する制御装置と、
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサとを備え、
前記制御装置は、
前記ガス管内の成分ガスを排出させるように前記排出弁を開放する開放制御と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するように前記フローコントローラを駆動する駆動制御とを実行し、
前記制御装置は、
所定時間に亘って前記開放制御を実行した後に前記排出弁を閉塞し、
前記排出弁を閉塞した後に、前記駆動制御を実行し、
前記制御装置は、前記所定時間に亘って前記開放制御を実行したときの前記所定パラメータが所定条件を満たしたときに前記駆動制御を実行し、
前記所定パラメータは、前記開放制御が実行されることに応じて、前記所定条件を満たすように変化し、
前記所定パラメータは、前記ガス管内の成分ガスのガス濃度であり、
前記所定条件は、前記ガス濃度が閾値以上であるという条件を含む、ガス調整装置。
【請求項10】
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記減圧器、前記フローコントローラ、および前記排出弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記ガス管内の成分ガスを排出させるように前記排出弁を開放する開放制御と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するように前記フローコントローラを駆動する駆動制御とを実行し、
前記制御装置は、
所定時間に亘って前記開放制御を実行した後に前記排出弁を閉塞し、
前記排出弁を閉塞した後に、前記駆動制御を実行し、
前記所定時間は、固定値である、ガス調整装置。
【請求項11】
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記減圧器、前記フローコントローラ、および前記排出弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記ガス管内の成分ガスを排出させるように前記排出弁を開放する開放制御と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するように前記フローコントローラを駆動する駆動制御とを実行し、
前記制御装置は、
所定時間に亘って前記開放制御を実行した後に前記排出弁を閉塞し、
前記排出弁を閉塞した後に、前記駆動制御を実行し、
前記制御装置は、前記開放制御中、前記ガス管内の濃度が低下した場合に、前記成分ガスを外部に排出させる、ガス調整装置。
【請求項12】
ガス調整装置の制御方法であって、
前記ガス調整装置は、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁とを含み、
前記制御方法は、
ユーザからの開始操作に基づいて、前記減圧器によって、成分ガスを減圧して出力するステップと、
前記排出弁を開放して、前記ガス管内の成分ガスを排出させるステップと、
所定時間に亘って前記排出弁を開放した後に、前記排出弁を閉塞するステップと、
前記排出弁を閉塞した後に、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラを介して出力するステップとを含む、ガス調整装置の制御方法。
【請求項13】
ガス調整装置の制御方法であって、
前記ガス調整装置は、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサとを含み、
前記制御方法は、
前記排出弁を開放して、前記ガス管内の成分ガスを排出させるステップと、
所定時間に亘って前記排出弁を開放した後に、前記所定パラメータが所定条件を満たしたときに、前記排出弁を閉塞するステップと、
前記排出弁を閉塞した後に、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラを介して出力するステップとを含み、
前記所定パラメータは、前記排出弁が開放され、前記ガス管内の成分ガスが排出されることに応じて、前記所定条件を満たすように変化する、ガス調整装置の制御方法。
【請求項14】
ガス調整装置の制御方法であって、
前記ガス調整装置は、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、
前記ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサとを含み、
前記制御方法は、
前記排出弁を開放して、前記ガス管内の成分ガスを排出させるステップと、
所定時間に亘って前記排出弁を開放した後に、前記所定パラメータが所定条件を満たしたときに、前記排出弁を閉塞するステップと、
前記排出弁を閉塞した後に、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラを介して出力するステップとを含み、
前記所定パラメータは、前記排出弁が開放され、前記ガス管内の成分ガスが排出されることに応じて、前記所定条件を満たすように変化し、
前記所定パラメータは、前記ガス管内の成分ガスの濃度であり、
前記所定条件は、ガス濃度が閾値以上であるという条件を含む、ガス調整装置の制御方法。
【請求項15】
ガス調整装置の制御方法であって、
前記ガス調整装置は、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁とを含み、
前記制御方法は、
前記排出弁を開放して、前記ガス管内の成分ガスを排出させるステップと、
所定時間に亘って前記排出弁を開放した後に、前記排出弁を閉塞するステップと、
前記排出弁を閉塞した後に、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラを介して出力するステップとを含み、
前記所定時間は、固定値である、ガス調整装置の制御方法。
【請求項16】
ガス調整装置の制御方法であって、
前記ガス調整装置は、
校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、
ガス管と、
前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、
前記ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁とを含み、
前記制御方法は、
前記排出弁を開放して、前記ガス管内の濃度が低下した場合に、成分ガスを外部に排出させるステップと、
所定時間に亘って前記排出弁を開放した後に、前記排出弁を閉塞するステップと、
前記排出弁を閉塞した後に、前記ガス管経由で前記減圧器から供給された成分ガスを前記フローコントローラを介して出力するステップとを含む、ガス調整装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス調整装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析装置を校正するための校正用ガスを生成するガス調整装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。このガス調整装置は、ユーザなどにより指定された濃度(以下、「設定濃度」とも称される。)の校正用ガスを、成分ガスと、該成分ガスを希釈するための希釈用ガスとを用いて生成する。成分ガスは、成分ガス用ボンベに収容され、希釈用ガスは、希釈用ガスボンベに収容される。ガス調整装置は、成分ガス用ボンベおよび希釈用ガスボンベに接続される。
【0003】
ガス調整装置は、ミキサと、成分ガス用フローコントローラと、希釈用ガスフローコントローラとを備える。成分ガス用フローコントローラは、成分ガス用ボンベに収容されている成分ガスを、所定流量でミキサに供給する。希釈用ガスフローコントローラは、希釈用ガスボンベに収容されている希釈用ガスを、所定流量でミキサに供給する。そして、ミキサは、供給された成分ガスと希釈用ガスとを混合することにより、所定濃度の校正用ガスを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-305027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のガス調整装置において、成分ガス用ボンベには、成分ガスが高圧力で収容されている。したがって、成分ガス用ボンベと、成分ガス用フローコントローラとの間には減圧器が配置される。そして、減圧器により減少された圧力と、大気圧との圧力差などにより、減圧器内において、成分ガスの一部が液化し、成分ガスの濃度が低下する場合がある。この場合には、濃度が低下した成分ガスが成分ガス用フローコントローラに供給され、生成される校正用ガスの濃度と、設定濃度との誤差が生じるという問題異聞ガスが生じ得る。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、生成される校正用ガスの濃度と、設定濃度との誤差を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のガス調整装置は、減圧器と、ガス管と、フローコントローラと、排出弁と、制御装置とを備える。減圧器は、校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する。フローコントローラは、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスを出力する。排出弁は、ガス管内の成分ガスを外部に排出する。制御装置は、減圧器、フローコントローラ、および排出弁を制御する。制御装置は、ガス管内の成分ガスを排出させるように排出弁を開放する開放制御と、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスを出力するようにフローコントローラを駆動する駆動制御とを実行する。
【0008】
本開示の方法は、減圧器が、校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力することを備える。また、方法は、フローコントローラが、減圧器から供給された成分ガスを出力することを備える。さらに、方法は、排出弁が、ガス管内の成分ガスを外部に排出することを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示においては、ガス管内のガスを排出させるように排出弁を開放することにより、濃度が低下した成分ガスを外部に排出させることができる。したがって、フローコントローラに供給される成分ガスの濃度の低下を抑制できる。よって、本開示によれば、生成される校正用ガスの濃度と、設定濃度との誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ガス調整装置の機能ブロック図である。
図2】減圧器と、第2MFCなどを示す図である。
図3】制御装置の処理におけるフローチャートである。
図4】別の実施の形態のガス調整装置の機能ブロック図である。
図5】別の実施の形態の制御装置の処理におけるフローチャートである。
図6】別の実施の形態の制御装置の処理におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<第1の実施の形態>
[ガス調整装置の全体構成]
図1は、ガス調整装置100の機能ブロック図である。ガス調整装置100は、ガス分析計(VOC計:Volatile Organic Compounds)を校正するための校正用ガスを生成する。ガス分析計は、たとえば、大気中の揮発性有機化合物など、測定対象成分が低濃度である場合に用いられる。本実施の形態においては、ガス調整装置100は、成分ガスと希釈用ガス(たとえば、精製空気)とを混合することにより、校正用ガスを生成する。成分ガスは、校正対象のガス分析計が分析するガスである。たとえば、校正対象のガス分析計が、ベンゼンの濃度を分析するのであれば、成分ガスは、ベンゼンとなる。
【0013】
ガス調整装置100は、希釈装置50と、制御装置8とを備える。また、ガス調整装置100には、希釈用ガスが収容されている希釈用ガスボンベ1と、成分ガスが収容されている成分ガスボンベ11とが接続される。
【0014】
希釈装置50は、減圧器2と、ガス管3と、第1MFC(Mass Flow Controller)4と、減圧器12と、ガス管13と、排出弁20と、第2MFC14と、ミキサ15とを備える。第2MFC14は、本開示の「フローコントローラ」に対応する。
【0015】
ガス管3は、減圧器2と、第1MFC4とを接続する。具体的には、ガス管3の一端は減圧器2に接続され、ガス管3の他端は第1MFC4に接続される。なお、ガス管3の一端には、他の部材を経由して減圧器2に接続されもよく、ガス管3の他端は他の部材を経由して第1MFC4に接続されてもよい。
【0016】
また、ガス管13は、減圧器12と、第2MFC14とを接続する。具体的には、ガス管13の一端は減圧器12に接続され、ガス管13の他端は第2MFC14に接続される。なお、ガス管13の一端には、他の部材を経由して減圧器12に接続されもよく、ガス管13の他端は他の部材を経由して第2MFC14に接続されてもよい。
【0017】
希釈用ガスボンベ1に希釈用ガスが満タンで収容されている場合には、希釈用ガスの圧力は高圧力となる。したがって、減圧器2は、希釈用ガスを減圧して、出力する。減圧された希釈用ガスは、ガス管3を経由して第1MFC4に供給される。第1MFC4は、第1流量でミキサ15に出力する。
【0018】
また、成分ガスボンベ11に成分ガスが満タンで収容されている場合には、成分ガスの圧力は高圧力(たとえば、10MPa)となる。したがって、減圧器12は、成分ガスを減圧する。減圧された希釈用ガスは、ガス管13を経由して第2MFC14に供給される。第2MFC14は、第2流量でミキサ15に出力する。
【0019】
ミキサ15は、第1MFC4からの希釈用ガスと、第2MFC14からの成分ガスとを混合する。そして、ミキサ15は、該混合したガス(つまり、希釈された成分ガス)を、校正用ガスとして出力する。また、ミキサ15で混合された校正用ガス濃度Cは、以下の式(1)により示される。
【0020】
校正用ガス濃度C=C0×Q2/(Q1+Q2) (1)
ただし、式(1)において、Q1は、第1MFC4による希釈用ガスの流量(以下、「第1流量」とも称される。)を示す。Q2は、第2MFC14による成分ガスの流量(以下、「第2流量」とも称される。)を示す。C0は、成分ガスボンベ11内の成分ガス濃度を示す。
【0021】
次に、制御装置8を説明する。制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)81と、メモリ82と、インターフェース(I/F)83とを含む。制御装置8は、メモリ82に記憶されたプログラムをCPU81が読み出して実行することにより、希釈装置50の各部材を制御する。
【0022】
制御装置8は、I/F83を介して、ユーザインターフェースである入力装置84および表示装置85と、有線あるいは無線で接続されている。
【0023】
入力装置84は、たとえばキーボードあるいはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザによる操作を受け付ける。ユーザによる操作は、第1操作と第2操作とを含む。第1操作は、成分ガスの希釈倍率を設定するための操作である。以下、この希釈倍率により希釈された成分ガスにより生成される校正用ガスの濃度は、「設定濃度」とも称される。また、第2操作は、校正用ガスの生成を開始するための操作(以下、「開始操作」とも称される。)である。制御装置8は、該希釈倍率で成分ガスを希釈するように、希釈装置50の各構成部を制御する。
【0024】
表示装置85は、たとえば液晶(LCD:Liquid Crystal Display)パネルで構成され、ユーザに情報を表示する。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合には、入力装置84と表示装置85とが一体的に形成される。
【0025】
制御装置8は、上記の設定濃度などに基づいて、第1流量Q1、および第2流量Q2を設定する。また、排出弁20について後述する。減圧器2による減圧力、および減圧器12による減圧力は、ユーザにより手動で設定される。減圧器2による減圧力、および減圧器12による減圧力は、たとえば、200~400kPaに設定される。なお、減圧器2による減圧力、および減圧器12による減圧力は、上記の設定濃度などに基づいて、制御装置8により設定されるようにしてもよい。
【0026】
[減圧器などの構成]
図2は、減圧器12と、第2MFC14などを示す図である。なお、減圧器2は、減圧器12と同様の構成であり、第1MFC4は、第2MFC14と同様の構成である。
【0027】
まず、減圧器12を簡単に説明する。減圧器12は、第1スプリング51と、シート52と、ステム53と、第2スプリング54と、ダイヤフラム55と、調整ねじ56などを有する。減圧器12内には、第1室71と、第2室72とが形成されている。第1室71は、成分ガスボンベ11と連通されている。第2室72は、ガス管13に連通している。
【0028】
本実施の形態の減圧器12は、ダイヤフラム55を境界として、第1スプリング51からのダイヤフラム55に対する力、および第2スプリング54からのダイヤフラム55に対する力とのつりあいで圧力を調整する。具体的には、制御装置8が、調整ねじ56を押し込む制御を実行することにより第1スプリング51に力を加えると、その力に応じた圧力(減少された圧力)が維持される。該減少された圧力は、「減圧力」とも称される。該減圧力により、ステム53が、シート52から離れることにより、第1室71と第2室72とが連通する。これにより、成分ガスボンベ11からの成分ガスを減圧させることができる。このように、制御装置8は、減圧力に応じた力で調整ねじ56を押し込む。
【0029】
第2MFC14は、バルブ30などを備える。バルブ30は、制御装置8により開閉可能である。制御装置8は、第2流量Q2に応じた開度でバルブ30を開放する。バルブ30が開放されている状態(以下、「開放状態」とも称される。)では、第2MFC14は、減圧器12から供給された成分ガスを出力する。第2MFC14から出力された成分ガスがミキサ15に供給される。また、バルブ30が閉塞されている状態(以下、「閉塞状態」とも称される。)では、成分ガスはミキサ15に供給されない。バルブ30の閉塞状態は、図2に示されている状態である。なお、バルブ30の閉塞状態においては、少量の成分ガスがミキサ15に供給される構成であってもよい。また、バルブ30の開放および閉塞は、制御装置8により実行される。バルブ30が開放されることにより、成分ガスをミキサ15に出力する制御は、「駆動制御」とも称される。
【0030】
ガス分析計の分析対象のガスは、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどである。これらのガスは、塗装などに用いられ、沸点が約80度~140度である。一般的に、成分ガスボンベ11内の成分ガスの濃度は、約10ppmである。高圧で成分ガスボンベ11に封入されている成分ガスが、大気圧中の空間に開放されると、該成分ガスの殆どがガス成分となる。
【0031】
一方、校正用ガスを生成するために、成分ガスボンベ11から成分ガスが出力される場合、上述の通り、減圧器12で200~400kPaという減圧力で減圧される。また、バルブ30が閉塞されている状態においては、成分ガスボンベ11からバルブ30までの空間(以下、「流路空間」とも称される。)が密閉空間となる。したがって、該密閉空間において、この減圧力が維持される。なお、本開示においては、「バルブ30の閉塞状態において、少量の成分ガスがミキサ15に供給される構成」であっても、該閉塞状態であるときには、密閉空間と称する。
【0032】
この減圧力は大気圧(1013hPa)より高い。したがって、減圧器12内のデッドボリューム(たとえば、第1室71または第2室72)では、成分ガスの一部が液化する。そのため、減圧器12内の成分ガス濃度は、大気圧状態である場合の成分ガス濃度に比べて低下する場合がある。
【0033】
従来では、濃度が低下した成分ガスが第2MFC14に供給されていた。したがって、第2MFC14からは、濃度が低下した成分ガス(以下、「濃度低下ガス」とも称される。)が第2流量で出力される。よって、ミキサ15により混合された校正用ガス(生成された校正用ガス)の濃度と、設定濃度との誤差が生じるという問題が生じ得る。また、ユーザなどにより設定された成分ガスの希釈倍率と、生成された校正用ガスにおける成分ガスの希釈倍率との誤差が生じるという問題が生じ得る。また、成分ガスの濃度が低下していることから、校正用ガスの濃度が、設定濃度に到達するまでに時間がかかってしまう。その結果、長時間、ガス調整装置100を駆動する必要があるという問題、およびガス分析計の校正に時間がかかるという問題も生じ得る。
【0034】
そこで、本実施の形態のガス調整装置100においては、ガス管13に排出弁20が配置される。排出弁20は、制御装置8により開放および閉塞される。排出弁20を開放する制御は、「開放制御」とも称される。排出弁20が開放されている状態においては、成分ガスボンベ11からバルブ30までの空間(ガス管13内の空間)内のガスが外部に排出される。
【0035】
また、排出弁20を開放することにより、ガス管13内の気圧を大気圧とすることができる(ガス管13内の気圧を大気圧に近づけることができる)。したがって、排出弁20は、液化していた成分ガスを気化させることができ、かつ該気化された成分ガスを外部に排出させることができる。よって、ガス調整装置100は、液化した成分ガスを除去することができる。
【0036】
本実施の形態においては、制御装置8は、ガス管内のガスを排出させるように排出弁20を所定時間に亘って開放する。この所定時間については、固定時間としてもく、ユーザが変更可能な時間としてもよい。この所定時間の間に、濃度低下ガスは、外部に排出される。そして、制御装置8は、排出弁20が開放したときから所定時間経過した後に、第2MFC14のバルブ30を開放する。つまり、制御装置8は、排出弁20が開放したときから所定時間経過した後に、ガス管13経由で減圧器12から供給された成分ガスを出力するように第2MFC14を制御する。これにより、濃度低下ガスを外部に排出した後で、ガス管13経由で減圧器12から供給された成分ガスを第2MFC14から出力できる。したがって、濃度が低下していない成分ガスを第2MFC14に供給することができる。よって、第2MFC14からは、濃度が低下していない成分ガスが第2流量で出力される。その結果、ガス調整装置100は、ミキサ15により混合された校正用ガス(生成された校正用ガス)の濃度と設定濃度との誤差を従来と比較して抑制することができる。
【0037】
また、ガス調整装置100は、ユーザなどにより設定された希釈倍率で校正用ガスを生成できる。したがって、ガス調整装置100は、該設定された希釈倍率と、生成された校正用ガスにおける成分ガスの希釈倍率との誤差を従来と比較して抑制することができる。また、成分ガスの濃度が低下していることから、校正用ガスの濃度が、設定濃度に到達するまでの時間も適正な時間とすることができる。よって、ガス調整装置100の駆動時間、およびガス分析計の校正に必要な時間を従来と比較して短縮できる。
【0038】
なお、排出弁20が閉塞されている状態においては、成分ガスボンベ11からバルブ30までの空間(ガス管13内の空間)内のガスは、外部に排出されない。排出弁20が閉塞されている状態においては、成分ガスボンベ11からの成分ガスは、第2MFC14に供給され、該成分ガスは、第2MFC14からミキサ15に供給される。
【0039】
[ガス調整装置のフローチャート]
図3は、制御装置8の処理のおけるフローチャートである。図3においては、主に、成分ガスの経路の構成部についての処理を示す。なお、図3の処理の開始時には、第1MFC4のバルブ、および第2MFC14のバルブ30はともに閉塞状態である。
【0040】
まず、ステップS2において、制御装置8は、入力装置84から上述の開始操作を入力されたか否かを判断する。ステップS2において、制御装置8は、開始操作が実行されるまで待機する(ステップS2でNO)。ステップS2でYESと判断された場合には、処理は、ステップS4に進む。
【0041】
ステップS4において、制御装置8は、減圧を開始する。具体的には、制御装置8は、減圧器2を駆動することにより、希釈用ガスを減圧して出力する。これとともに、制御装置8は、減圧器12を駆動することにより、成分ガスを減圧して出力する。
【0042】
次に、ステップS6において、制御装置8は、排出弁20を開放する。そして、制御装置8は、所定時間が経過した否かを判断する。ここで、本実施の形態においては、所定時間は、固定値である。所定時間は、減圧器12の体積などにより予め設計者などにより定められる。また、所定時間は、ユーザが変更可能としてもよい。本実施の形態においては、減圧器による減圧の開始の後、排出弁20の開放が行われるが、減圧器による減圧の開始、および排出弁20の開放は同時に行われてもよい。
【0043】
制御装置8は、所定時間が経過するまで待機する(ステップS8でNO)。そして、所定時間が経過したときには(ステップS8でYES)、ステップS10において、制御装置8は、排出弁20を閉塞する。そして、ステップS12において、制御装置8は、第1MFC4および第2MFC14の駆動を開始する。具体的には、制御装置8は、第1MFC4のバルブを開放状態にするとともに、第2MFC14のバルブ30を開放状態にする。これにより、第1MFC4から、第1流量Q1で希釈用ガスがミキサ15に出力されるとともに、第2MFC14から、第2流量Q2で成分ガスがミキサ15に出力される。ミキサ15では、希釈用ガスと成分ガスとを混合することにより、校正用ガスを生成する。
【0044】
図3に示すフローチャートによれば、ガス管13内のガスを排出させるように排出弁20を開放し、ガス管13経由で減圧器12から供給された成分ガスを出力するように第2MFC14を制御する。したがって、濃度が低下した成分ガスを外部に排出して、濃度が低下していない成分ガスを第2MFC14に供給することができる。よって、ガス調整装置100は、成分ガス用フローコントローラに供給される成分ガスの濃度の低下を抑制できる。その結果、ガス調整装置100は、生成される校正用ガスの濃度と、設定濃度との誤差を抑制できる。
【0045】
また、制御装置8は、排出弁20を所定時間に亘って開放し、該開放の後に排出弁20を閉塞する(ステップS6~ステップS8)。そして、制御装置8は、排出弁20を閉塞した後に、ガス管13経由で減圧器12から供給された成分ガスを出力するように第2MFC14を制御する(ステップS12)。したがって、濃度が低下した成分ガスの排出が終了した後に、第2MFC14を制御する。よって、ガス調整装置100は、成分ガスが外部に排出されながら第2MFC14に供給されるといった事象を防止できる。
【0046】
また、排出弁20の開放時間(図3のステップS8参照)は、固定値である。したがって、開放時間が変動値である構成と比較して、排出弁20の開放制御の負担を軽減できる。
【0047】
また、ユーザからの開始操作を受付けたときに(ステップS2でYES)、成分ガスの圧力を減少して出力するように減圧器12を制御するとともに(ステップS4)、排出弁20を開放する(ステップS6)。このような構成によれば、「ユーザからの開始操作を受付けたとから、一定の時間が経過したときに、排出弁を開放する構成」と比較して、排出弁20の開放タイミングを早めることができる。したがって、濃度が低下した成分ガスの排出時間を多く確保することができる。
【0048】
また、第2MFCは、バルブ30を有する。制御装置8は、閉塞状態であるバルブ30を開放状態にすることにより、第2MFC14から成分ガスを出力する。また、バルブ30が閉塞状態である場合には、減圧器12内で、成分ガスの濃度は低下する。したがって、ガス調整装置100において、比較的簡易な構成である第2MFC14が採用される。また、成分ガスの濃度が低下したとしても、制御装置8は、排出弁20を開放することにより、該濃度が低下した成分ガスを外部に排出できる。
【0049】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態においては、図3のステップS6~S10に示すように、所定時間に亘って排出弁20を開放した後に、第2MFC14の駆動を開始する構成を説明した。しかしながら、排出弁20が開放されている所定時間において、上述の流路空間(たとえば、ガス菅13内の空間)の圧力が大気圧とならない(該圧力が大気圧以上である)場合がある。上述のように、流路空間は、成分ガスボンベ11からバルブ30までの空間である。流路空間の圧力が大気圧とならない場合には、液化した成分ガスが、ガス管13内に残存し、ガス菅13内の成分ガスの濃度が低下している場合がある。この場合には、第2MFC14から、濃度低下ガスがミキサ15に出力されてしまう。第2の実施の形態においては、このような場合に備えて、流路空間(ガス管13内の空間)の圧力が所定圧力(本実施の形態においては、大気圧)となるまで、排出弁20を開放する構成が採用される。
【0050】
図4は、第2の実施の形態のガス調整装置100Aの機能ブロック図である。ガス調整装置100Aは圧力センサ25を有する。圧力センサ25は、流路空間の圧力(たとえば、ガス管13内の圧力)を検出する。図4の例では、圧力センサ25は、ガス管13に配置されている。なお、圧力センサ25は、流路空間の圧力を検出できるのであれば、如何なる場所に配置されてもよく、たとえば、減圧器12内に配置されてもよい。
【0051】
図5は、第2の実施の形態の制御装置8の処理におけるフローチャートである。図5の例では、排出弁20が閉塞した後に(ステップS10の後に)、ステップS15において、制御装置8は、圧力センサ25が検出した圧力を取得する。そして、該圧力が、所定圧力であるか否かを判断する。所定圧力は、予め定められた値である。本実施の形態では、所定圧力は、大気圧である。所定圧力は、ユーザが変更可能としてもよい。
【0052】
該圧力が、大気圧でないとき(該圧力が大気圧より大きい値であるとき)、つまり、濃度低下ガスが残存していると想定される場合には(ステップS15でNO)、処理は、ステップS6に戻る。ステップS6おいては、再び、所定時間に亘って排出弁20は開放されて閉塞される。この開放により、残存している濃度低下ガスは排出される。
【0053】
一方、該圧力が、大気圧であるとき、つまり、濃度低下ガスが排出されたと想定される場合には(ステップS15でYES)、処理は、ステップS12に進む。
【0054】
また、流路空間(ガス管13内の空間)の圧力は、本開示の「ガス調整装置の所定パラメータ」に対応する。圧力センサ25は、本開示の「センサ」に対応する。また、ステップS15でYESと判断される「圧力センサの圧力が大気圧の値である」という条件は、本開示の所定条件に対応する。また、所定パラメータである圧力は、開放制御が実行されることに応じて、所定圧力である大気圧に近づくように変化する。
【0055】
第2の実施の形態によれば、制御装置8は、排出弁20を閉塞した後、圧力センサ25により検出された圧力が大気圧に到達した場合に(ステップS15でYES)、制御装置8は、第2MFC14の駆動を開始する(ステップS12)。したがって、制御装置8は、「排出弁20を閉塞したときの圧力センサ25の圧力が大気圧より大きい状態で駆動制御を実行するガス調整装置」と比較して、最適なタイミングで駆動制御を実行することができる。また、第2の実施の形態によれば、制御装置8は、液化していた成分ガスを気化させることができ、かつ該気化された成分ガスおよび濃度低下ガスを外部に排出させることができる。
【0056】
また、第2の実施の形態によれば、制御装置8は、圧力センサ25の圧力が大気圧に到達するまで開放制御を実行する。したがって、たとえば、1回目の開放制御が実行されて圧力センサ25の圧力が大気圧に到達していない場合であっても、再度、開放制御を実行することにより圧力センサ25の圧力が大気圧に到達させることができる。
【0057】
また、第2の実施の形態においては、ガス管13内の圧力が大気圧となった場合に(ステップS15でYES)、制御装置8は、第2MFC14の駆動を開始する。したがって、制御装置8は、ガス濃度が低下した成分ガスのガス濃度を高めた後に、該成分ガスを第2MFC14からミキサ15に対して出力させることができる。
【0058】
なお、第2の実施の形態において、ステップS15の所定圧力は、大気圧でなくてもよい。たとえば、所定圧力は、大気圧に近い圧力としてもよい。
【0059】
<第3の実施の形態>
第2の実施の形態においては、流路空間(ガス管13内の空間)の圧力が所定圧力(本実施の形態においては、大気圧)となるまで、排出弁20を開放する構成を説明した。第3の実施の形態においては、成分ガスの濃度が閾値以上となるまで、排出弁20を開放する構成が採用される。
【0060】
第3の実施の形態においては、図4の括弧書きに示すように、圧力センサ25の代わりに濃度センサ26が採用される。濃度センサ26は、成分ガスの濃度を検出する。濃度センサ26は、減圧器12により減圧された成分ガスの濃度を検出する。図4の例では、濃度センサ26は、ガス管13に配置されている。なお、濃度センサ26は、減圧器12により減圧された成分ガスの濃度を検出できるのであれば、如何なる場所に配置されてもよく、たとえば、減圧器12内に配置されてもよい。
【0061】
図6は、第3の実施の形態の制御装置8の処理におけるフローチャートである。図6の例では、排出弁20が閉塞した後に(ステップS10の後に)、ステップS20において、制御装置8は、濃度センサ26が検出した濃度を取得する。そして、該濃度が、閾値以上であるか否かを判断する。閾値は、予め定められた値である。閾値は、ユーザが変更可能としてもよい。
【0062】
該濃度が、閾値未満であるとき、つまり、濃度低下ガスが残存していると想定される場合には(ステップS20でNO)、処理は、ステップS6に戻る。ステップS6おいては、再び、所定時間に亘って排出弁20は開放されて閉塞される。この開放により、残存している濃度低下ガスは排出される。
【0063】
一方、該濃度が、閾値以上であるとき、つまり、濃度低下ガスが排出されたと想定される場合には(ステップS20でYES)、処理は、ステップS12に進む。
【0064】
また、流路空間(ガス管13内の空間)の成分ガスの濃度は、本開示の「ガス調整装置の所定パラメータ」に対応する。濃度センサ26は、本開示の「センサ」に対応する。また、ステップS20でYESと判断される「濃度センサの濃度が閾値以上の値である」という条件は、本開示の所定条件に対応する。また、該所定パラメータである成分ガスの濃度は、開放制御が実行されることに応じて、閾値以上となるように変化する。
【0065】
第3の実施の形態によれば、制御装置8は、排出弁20を閉塞した後、濃度センサ26により検出された濃度が閾値以上である場合に(ステップS20でYES)、制御装置8は、第2MFC14の駆動を開始する(ステップS12)。したがって、制御装置8は、「排出弁20を閉塞したときの濃度センサ26により検出された成分ガスの濃度が閾値未満である状態で駆動制御を実行するガス調整装置」と比較して、最適なタイミングで駆動制御を実行することができる。また、第3の実施の形態によれば、制御装置8は、濃度が高い成分ガスを第2MFC14から出力させることができる。
【0066】
また、第3の実施の形態によれば、制御装置8は、濃度センサ26の濃度が閾値以上となるまで開放制御を実行する。したがって、たとえば、1回目の開放制御が実行されて濃度センサ26の濃度が閾値以上となっていない場合であっても、再度、開放制御を実行することにより濃度センサ26の濃度を閾値以上にすることができる。
【0067】
<変形例>
(1) 図3および図5の例では、ユーザにより開始操作が実行されて、ステップS4において減圧器12による減圧が開始されて、ステップS6による排出弁20が開放される構成を説明した。しかしながら、減圧器12による減圧が開始して、一定時間が経過した後に排出弁20が開放される構成が採用されてもよい。また、排出弁20が開放されてから、一定時間が経過した後に減圧器12による減圧が開始される構成が採用されてもよい。
【0068】
(2) 図3および図5の例では、ステップS10において排出弁20が閉塞された後に、MFCの駆動が開始される構成を説明した。しかしながら、ガス調整装置100は、MFCの駆動が開始した後に、排出弁20が閉塞されてもよい。また、ガス調整装置100は、所定時間に亘って排出弁20が開放した後に、MFCを駆動し、その後、排出弁20を閉塞してもよい。
【0069】
(3) 第2の実施の形態および第3の実施の形態によれば、センサは圧力センサ25または濃度センサ26である構成を説明した。しかしながら、センサは、他のセンサであってもよい。他のセンサは、たとえば、温度センサとしてもよい。一般的に、流路空間(ガス管13内の空間)の圧力が高まると、流路空間(ガス管13内の空間)の温度も上昇する。そこで、ステップS10の後、温度センサにより検出される温度が閾値以下である場合に、処理は、ステップS12に進み、該温度が閾値より大きい場合に、処理は、ステップS16に戻るようにしてもよい。ここで、閾値は、たとえば、流路空間(ガス管13内の空間)の大気圧となる場合の該流路空間の温度である。
【0070】
このような変形例の場合には、また、流路空間(ガス管13内の空間)の温度は、本開示の「ガス調整装置の所定パラメータ」に対応する。また、「温度センサにより検出される温度が閾値以下である」という条件は、本開示の所定条件に対応する。温度センサは、本開示の「センサ」に対応する。また、該所定パラメータである温度は、開放制御が実行されることに応じて、閾値以下となるように変化する。
【0071】
(4) 図5および図6の例では、制御装置8は、ステップS10の排出弁20の閉塞処理が終了した後に、ステップS15の処理またはステップS20の処理を実行する構成を説明した。しかしながら、制御装置8は、ステップS8でYESと判断された後に、ステップS15の処理またはステップS20の処理を実行する構成が採用されてもよい。このような構成の場合には、ステップS15の処理でYESと判断された場合、または、ステップS20の処理でYESと判断された場合に、ステップS10の処理を実行し、その後、ステップS12の処理を実行するようにしてもよい。つまり、制御装置8は、所定時間に亘って開放制御を実行したときの所定パラメータ(ガス菅13内の圧力など)が所定条件を満たしたときに駆動制御を実行するようにしてもよい。
【0072】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0073】
(第1項) 一態様に係るガス調整装置は、校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力する減圧器と、ガス管と、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスを出力するフローコントローラと、ガス管内の成分ガスを外部に排出するための排出弁と、減圧器、フローコントローラ、および排出弁を制御する制御装置とを備え、制御装置は、ガス管内の成分ガスを排出させるように排出弁を開放する開放制御と、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスを出力するようにフローコントローラを駆動する駆動制御とを実行する。
【0074】
このような構成によれば、ガス管内のガスを排出させるように排出弁を開放することにより、フローコントローラに供給される成分ガスの濃度の低下を抑制できる。よって、本開示によれば、生成される校正用ガスの濃度を抑制することができる。
【0075】
(第2項) 第1項に記載のガス調整装置において、制御装置は、所定時間に亘って開放制御を実行した後に排出弁を閉塞し、排出弁を閉塞した後に、駆動制御を実行する。
【0076】
このような構成によれば、濃度が低下した成分ガスの排出が終了した後に、フローコントローラを制御する。よって、このような構成によれば、成分ガスが外部に排出されながらフローコントローラに供給されるといった事象を防止できる。
【0077】
(第3項) 第2項に記載のガス調整装置において、ガス調整装置の所定パラメータを検出するセンサをさらに備え、所定パラメータは、開放制御が実行される前と、開放制御が実行された後とでは異なり、制御装置は、所定時間に亘って開放制御を実行したときの所定パラメータが所定条件を満たしたときに駆動制御を実行する。
【0078】
このような構成によれば、「所定時間に亘って開放制御を実行したときの所定パラメータが所定条件を満たさずに、駆動制御を実行するガス調整装置」と比較して、最適なタイミングで駆動制御を実行することができる。
【0079】
(第4項) 第3項に記載のガス調整装置において、制御装置は、所定パラメータが所定条件を満たすまで、開放制御を実行する。
【0080】
このような構成によれば、所定パラメータが所定条件を満たさない場合であっても、再度、開放制御を実行することにより所定パラメータが所定条件を満たすようにすることができる。
【0081】
(第5項) 第3項に記載のガス調整装置において、所定パラメータは、ガス管内の圧力であり、所定条件は、圧力が所定圧力に到達するという条件を含む。
【0082】
このような構成によれば、排出弁の1回目の開放によって、ガス管内の圧力が所定値以上である場合、つまり、液化した成分ガスが残存している場合であっても、再び排出弁を開放する。したがって、制御装置は、ガス管内の圧力を低下させることができ、液化した成分ガスを気化させることができ、その結果、成分ガスのガス濃度を増加させることができる。また、液化した成分ガスを気化させることにより、ガス濃度が低下した成分ガスのガス濃度を高めることができる。そして、ガス調整装置は、該成分ガスをフローコントローラから出力させることができる。
【0083】
(第6項) 第5項に記載のガス調整装置において、所定値は、大気圧の値である。
【0084】
このような構成によれば、液化した成分ガスを気化させることにより、ガス濃度が低下した成分ガスのガス濃度を高めることができる。そして、ガス調整装置は、該成分ガスをフローコントローラから出力させることができる。
【0085】
(第7項) 第3項に記載のガス調整装置において、所定パラメータは、ガス管内の成分ガスのガス濃度であり、所定条件は、ガス濃度が閾値以上であるという条件を含む。
【0086】
このような構成によれば、排出弁の1回目の開放によって、濃度が低下した全ての成分ガスが排出されない場合であっても、再び排出弁を開放することにより、濃度が低下した成分ガスを排出することができる。また、ガス濃度が高い成分ガスをフローコントローラから出力させることができる。
【0087】
(第8項) 第2項~第7項のいずれか1項に記載のガス調整装置において、所定時間は、固定値である。
【0088】
このような構成によれば、所定時間が変動値である構成と比較して、排出弁の開放制御の負担を軽減できる。
【0089】
(第9項) 第1項~第8項のいずれか1項に記載のガス調整装置において、制御装置は、ユーザからの開始操作を受付けたときに、成分ガスを減圧して出力するように減圧器を制御するとともに、開放制御を実行する。
【0090】
このような構成によれば、「ユーザからの開始操作を受付けたとから、一定の時間が経過したときに、排出弁を開放する構成」と比較して、排出弁の開放タイミングを早めることができる。したがって、濃度が低下した成分ガスの排出時間を多く確保することができる。
【0091】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか1項に記載のガス調整装置において、フローコントローラは、バルブを有し、制御装置は、閉塞状態であるバルブを開放状態にすることにより、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスをフローコントローラから出力し、バルブが閉塞状態である場合には、減圧器内で、成分ガスの濃度は低下する。
【0092】
このような構成によれば、比較的簡易な構成であるフローコントローラを用いることができる。また、成分ガスの濃度が低下したとしても、制御装置は、排出弁を開放することにより、該濃度が低下した成分ガスを外部に排出できる。
【0093】
(第11項) 一態様に係る方法は、減圧器が、校正用ガスを生成するための成分ガスが収容されたボンベからの該成分ガスを減圧して出力することと、フローコントローラが、ガス管経由で減圧器から供給された成分ガスを出力することと、排出弁が、ガス管内の成分ガスを外部に排出することとを備える。
【0094】
このような構成によれば、ガス管内のガスを排出させるように排出弁を開放することにより、フローコントローラに供給される成分ガスの濃度の低下を抑制できる。よって、本開示によれば、生成される校正用ガスの濃度を抑制することができる。
【0095】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 希釈用ガスボンベ、2,12 減圧器、3,13 ガス管、8 制御装置、11 成分ガスボンベ、15 ミキサ、20 排出弁、25 濃度センサ、30 バルブ、50 希釈装置、51 第1スプリング、52 シート、53 ステム、54 第2スプリング、55 ダイヤフラム、56 調整ねじ、71 第1室、72 第2室、82 メモリ、84 入力装置、85 表示装置、100,100A ガス調整装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6