(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車両、判定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/24 20130101AFI20241126BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20241126BHJP
【FI】
B60R25/24
H04B1/3822
(21)【出願番号】P 2021156492
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨宅 純平
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-262915(JP,A)
【文献】特開2006-273026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306350(US,A1)
【文献】特開2012-026189(JP,A)
【文献】特開2015-223878(JP,A)
【文献】特開2010-047052(JP,A)
【文献】特開2015-193987(JP,A)
【文献】特開2020-066860(JP,A)
【文献】特開2008-174095(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0120809(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/24
H04B 1/3822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両であって、
起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部と、
前記通信部が故障しているかどうか判定する判定部と、
前記通信部が故障していると前記判定部が判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能とする処理を行う起動処理部と、
を備え
、
前記通信部が故障していると前記判定部が判定した場合、前記起動処理部は、前記判定部が判定してから所定時間の間に限り前記装置に対する認証結果に基づいて前記車両の起動を可能とする処理を行う、車両。
【請求項2】
前記起動処理部は、前記装置に対する認証に用いられた認証手法に応じて前記所定時間を変化させる、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記起動処理部が実行する前記装置に対する認証手法は、生体認証である、請求項1
又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記通信部が故障していないと前記判定部が判定した場合、前記起動処理部は、前記装置が前記車室内に存在することを確認すると、前記装置に対する認証結果を用いることなく前記車両の起動を可能とする処理を行う、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記判定部は、前記通信部との間の定期的な通信が途絶したかどうかで、前記通信部が故障しているかどうか判定する、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両において実行される判定方法であって、
起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部が故障しているかどうか判定し、
前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能と
し、
前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部が故障していると判定してから所定時間の間に限り前記装置に対する認証結果に基づいて前記車両の起動を可能とする
処理をコンピュータが実行する、判定方法。
【請求項7】
車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両において実行されるコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部が故障しているかどうか判定し、
前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能と
し、
前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部が故障していると判定してから所定時間の間に限り前記装置に対する認証結果に基づいて前記車両の起動を可能とする
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、判定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンスイッチの操作の際に、車室内にある携帯機と認証を行うことにより車両を起動することができるデジタルキーシステムにおいて、車両内にデジタルキーが存在していることを確認して車両を起動する技術が開示されている。特許文献1には、車両に設けられた車室内検知手段からの出力信号に応答する携帯機からの送信信号の有無に基づき携帯機が車室内にあるか否かを検知し、携帯機が車室内にあると検知される場合に、所定の制御機器の作動を許可するようにしたシステムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両内にデジタルキーが存在することを確認するためのアンテナ等の通信手段が故障していると、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなり、デジタルキーを使用した車両の起動が出来なくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを使用した車両の起動を可能にする車両、判定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る車両は、車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両であって、起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部と、前記通信部が故障しているかどうか判定する判定部と、前記通信部が故障していると前記判定部が判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能とする処理を行う起動処理部と、を備える。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを保持する装置への認証結果を用いることで、デジタルキーを使用した車両の起動が可能になる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る車両は、第1の態様に係る車両であって、前記通信部が故障していると前記判定部が判定した場合、前記起動処理部は、前記判定部が判定してから所定時間の間に限り前記装置に対する認証結果に基づいて所定時間の間に限り前記車両の起動を可能とする処理を行う。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合には、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できる場合と比較して、セキュリティを高めた上でデジタルキーを使用した車両の起動が可能になる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る車両は、第2の態様に係る車両であって、前記起動処理部は、前記装置に対する認証に用いられた認証手法に応じて前記所定時間を変化させる。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、認証手法に応じた時間の間だけ起動を可能とすることで認証手法に応じたセキュリティを提供できる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る車両は、第1の態様~第3の態様のいずれかに係る車両であって、前記起動処理部が実行する前記装置に対する認証手法は、生体認証である。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、デジタルキーを保持する装置から始動要求を発したのが装置のユーザであることを担保した上で、デジタルキーを使用した車両の起動が可能になる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る車両は、第1の態様~第4の態様のいずれかに係る車両であって、前記通信部が故障していないと前記判定部が判定した場合、前記起動処理部は、前記装置が前記車室内に存在することを確認すると、前記装置に対する認証結果を用いることなく前記車両の起動を可能とする処理を行う。
【0015】
本発明の第5の態様によれば、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できた場合では、デジタルキーを保持する装置への認証を省略しての車両の起動が可能になる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る車両は、第1の態様~第5の態様のいずれかに係る車両であって、前記判定部は、前記通信部との間の定期的な通信が途絶したかどうかで、前記通信部が故障しているかどうか判定する。
【0017】
本発明の第6の態様によれば、定期的な通信の途絶の検出により、起動のためのデジタルキーを保持する装置に対する認証を要求できる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る判定方法は、車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両において実行される判定方法であって、起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部が故障しているかどうか判定し、前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能とする処理をコンピュータが実行する、判定方法処理をコンピュータが実行する。
【0019】
本発明の第7の態様によれば、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを保持する装置への認証結果を用いることで、デジタルキーを使用した車両の起動が可能になる。
【0020】
本発明の第8の態様に係るコンピュータプログラムは、車両を起動するデジタルキーの機能を有する装置が前記車両の車室内に存在することを確認できた場合、起動が許可される車両において実行されるコンピュータプログラムであって、コンピュータに、起動のためのデジタルキーを保持する装置が前記車室内に存在することを確認するための通信を行う通信部が故障しているかどうか判定し、前記通信部が故障していると判定した場合、前記通信部と異なる他の通信部を用いて前記装置に対する認証に係る通信を行い、前記他の通信部による前記認証に係る通信の結果に基づいて前記車両の起動を可能とする処理を実行させる。
【0021】
本発明の第8に態様によれば、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを保持する装置への認証結果を用いることで、デジタルキーを使用した車両の起動が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デジタルキーとして機能する装置に対する認証の結果を用いることで、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを使用した起動を可能にする車両、判定方法及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る車両制御システムの概略構成を示す図である。
【
図2】情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】情報処理装置及び車両による、車両のエンジン始動処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図6】ユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図7】ユーザインターフェースの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0025】
(システム構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御システムの概略構成を示す図である。
図1に示した車両制御システム1は、情報処理装置10、及び車両20を含んで構成される。
【0026】
情報処理装置10は、例えばスマートフォン等のモバイル端末であり、車両20のドアのロックを解除したり、エンジンを始動させたりするためのデジタルキーとして機能しうる装置である。情報処理装置10は、デジタルキーとして機能するためのアプリケーションをダウンロード及びインストールすることで、車両20のデジタルキーとして利用可能となる。本実施形態において、情報処理装置10が車両20のデジタルキーとして利用可能になるとは、情報処理装置10が車両20のキー情報を保持した状態になっていることをいう。
【0027】
本実施形態に係る車両20は、車両20のデジタルキーとして機能する情報処理装置10との間で近距離無線通信を行い、デジタルキーに係る処理を実行する。本実施形態では、情報処理装置10と車両20とは、近距離無線通信規格としてBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)規格に基づいた無線通信を行う。車両20は、デジタルキーに係る処理として、車両20のデジタルキーとして動作する情報処理装置10からのエンジンの始動要求に基づいてエンジンを始動させる処理を実行する。
【0028】
車両20は、情報処理装置10からのエンジンの始動要求を受信すると、情報処理装置10が車両20の車室内に存在するかどうかを判断する。情報処理装置10が車両20の車室内に存在するかどうかを判断する理由は、情報処理装置10が車室外にある状態でのエンジンの始動を防ぐためである。車両20は、情報処理装置10から発せられ、車室内に設けられたアンテナが受信した電波の強度を参照することで情報処理装置10が車両20の車室内に存在するかどうかを判断する。
【0029】
しかし、車室内に設けられたアンテナが1本しかなく、そのアンテナが故障している等の理由で電波の強度を参照できないと、車両20は、情報処理装置10が車室内に存在しているかどうかを判断することができず、情報処理装置10が車両20の車室内に存在していた場合であっても、情報処理装置10からのエンジンの始動要求に応じたエンジンの始動ができない。情報処理装置10が車室内に存在しているかどうかを判断するためのアンテナを複数設ければ、1本のアンテナが故障しても別のアンテナを用いて判断することができても、コストアップに繋がる。
【0030】
そこで本実施形態に係る車両20は、車室内に設けられたアンテナが故障している等の理由で、情報処理装置10が発した電波の強度を参照できない場合、情報処理装置10に対してユーザ認証を要求する。本実施形態に係る車両20は、情報処理装置10に対してユーザ認証が完了してから改めて情報処理装置10からのエンジンの始動要求を受け付け、エンジンの始動要求に応じてエンジンを始動する。
【0031】
本実施形態に係る車両20は、デジタルキーとして機能する装置に対する認証の結果を用いることで、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを使用した起動が可能となる。
【0032】
(構成)
(情報処理装置)
図2は、情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0034】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からコンピュータプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているコンピュータプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、車両20のデジタルキーとして機能するためのコンピュータプログラムが格納されている。
【0035】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0036】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0037】
表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0038】
通信インタフェース17は、車両20等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)、BLE等の規格が用いられる。
【0039】
(車両)
図3は、車両20のハードウェア構成例を示す図である。
図3に示されるように、本実施形態に係る車両20は、ECU21を含んで構成されている。車両20はさらに、ドアロック25と、イグニッションスイッチ(SW)26、モニタ27と、スピーカ28と、アンテナ29A、29Bと、を含んで構成されている。
【0040】
ECU21は、CPU(Central Processing Unit)21A、ROM(Read Only Memory)21B、RAM(Random Access Memory)21C、無線通信I/F(Inter Face)21E、入出力I/F21F及びアンテナ21Gを含んで構成されている。CPU21A、ROM21B、RAM21C、無線通信I/F21E及び入出力I/F21Fは、内部バス21Hを介して相互に通信可能に接続されている。
【0041】
CPU21Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21Aは、ROM21Bからプログラムを読み出し、RAM21Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0042】
ROM21Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM21Bには、ECU21を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0043】
RAM21Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0044】
無線通信I/F21Eは、情報処理装置10と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、BLEの通信規格が用いられる。無線通信I/F21Eは、アンテナ21Gに対して接続されている。
【0045】
入出力I/F21Fは、車両20に搭載されるドアロック25、イグニッションSW26、モニタ27、スピーカ28、アンテナ29A、29Bと通信するためのインタフェースである。
【0046】
アンテナ21Gは、情報処理装置10との間でBLEによる無線通信のパケットを送信及び受信するアンテナである。
【0047】
ドアロック25は、車両20のドアの鍵であり、車両20に乗車するユーザによって開閉される他、CPU21Aによって開閉が制御される。
【0048】
イグニッションSW26は、車両20のエンジンをスタートさせるスイッチであり、車両20に乗車するユーザによってオン、オフされる他、CPU21Aによってオン、オフが制御される。
【0049】
モニタ27は、インストルメントパネル、メータパネル等に設けられ、現在地、走行経路、及び注意情報に係る画像を表示するための液晶モニタである。モニタ27は、乗員の手指による操作を入力するスイッチを兼ねたタッチパネルが設けられていてもよい。
【0050】
スピーカ28は、インストルメントパネル、センタコンソール、フロントピラー、ダッシュボード等に設けられ、音声を出力するための装置である。
【0051】
アンテナ29Aは、本発明の通信部の一例であり、情報処理装置10が発するBLEのパケットの電波強度を測定するためのアンテナである。ECU21のアンテナ21Gが、情報処理装置10との無線通信に用いられるのに対し、アンテナ29A、29Bは、情報処理装置10が発するBLEのパケットの電波強度の測定のために用いられる。アンテナ29Aは、車両20の車室内に1つ設けられる。CPU21Aは、アンテナ29Aが受信した電波の強度を用いて情報処理装置10が車両20の車室内にあるかどうかを判断する。また、アンテナ29Bは、車両20に複数設けられる。CPU21Aは、アンテナ29Bが受信した電波の強度を用いて情報処理装置10と車両20との間の距離を算出する。アンテナ29Bは、例えば車両20の前部、左側面部、右側面部に設けられ得る。
【0052】
図3では、1つのECU21が車両20の各装置を制御する構成としているが、本発明は係る例に限定されるものでは無い。例えば、ドアロック25を制御するECUと、イグニッションSW26を制御するECUとは別のECUであってもよい。
【0053】
続いて、車両20が実現する機能構成について説明する。
【0054】
図4は、車両20の機能構成の例を示すブロック図である。
【0055】
図4に示したように、車両20は、機能構成として、判定部201と、起動処理部202と、を有する。各機能構成は、CPU21AがROM21Bに記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0056】
判定部201は、起動のためのキーを保持する情報処理装置10が車室内に確認するための通信を行うアンテナ29Aが故障しているかどうか判定する。より具体的には、判定部201は、アンテナ29Aと定期的に通信している。そして、判定部201は、アンテナ29Aからの返信が途絶したことによりアンテナ29Aが故障していると判定する。なお、1度だけの途絶では単なるエラーと区別が出来ないため、判定部201は所定回数途絶したことによりアンテナ29Aが故障していると判定してもよい。
【0057】
起動処理部202は、イグニッションSW26を制御することにより車両20のエンジンを起動する制御を行う。本実施形態では、判定部201による判定結果に応じてイグニッションSW26を制御するかどうか決定する。アンテナ29Aが故障していると判定部201が判定した場合、起動処理部202は、情報処理装置10に対する認証の結果に基づいて起動を可能とする処理を行う。情報処理装置10に対する認証の例としては、パスコード認証、パターン認証、指紋認証、顔認証その他の生体認証がある。情報処理装置10に対する認証として生体認証が用いられることで、デジタルキーを保持する情報処理装置10から始動要求を発したのが情報処理装置10のユーザであることを担保した上で、デジタルキーを使用した車両20の起動が可能になる。なお、アンテナ29Aが故障していると判定部201が判定しなかった場合、起動処理部202は、情報処理装置10に対する認証結果を用いることなく起動を可能とする処理を行う。
【0058】
アンテナ29Aが故障していると判定部201が判定した場合、起動処理部202は、情報処理装置10に対する認証の結果に基づいて、所定時間の間に限り起動を可能とする処理を行ってもよい。所定時間は例えば30秒程度とする。また、起動処理部202は、情報処理装置10に対する認証の結果に基づいて、所定時間の間に限り起動を可能とする場合、用いられた認証手法に応じて上記所定時間を変化させてもよい。例えば、起動処理部202は、認証手法の強度に応じて上記所定時間を変化させてもよい。具体的には、起動処理部202は、例えばパスコード認証又はパターン認証が認証手法として用いられた場合の時間より、生体認証が認証手法として用いられた場合の時間の方を長くしてもよい。起動処理部202は、認証手法に応じて決められた時間の間だけ起動を可能とすることで、情報処理装置10に対して行われた認証手法に応じたセキュリティを提供できる
【0059】
情報処理装置10に対する認証に用いられる認証手法はユーザに選択させてもよい。また情報処理装置10に対する認証に用いられる認証手法は起動処理部202が指定してもよい。また認証手法は、情報処理装置10のロックを解除するために用いられる認証手法と同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0060】
車両20は、係る構成を有することで、デジタルキーとして機能する情報処理装置10に対する認証の結果を用いることで、車両内にデジタルキーが存在しているかどうかを確認できなくなった場合でも、デジタルキーを使用した起動が可能となる。
【0061】
(作用)
次に、情報処理装置10及び車両20の作用について説明する。
【0062】
図5は、情報処理装置10及び車両20による、車両20のエンジン始動処理の流れを示すシーケンス図である。CPU11がROM12又はストレージ14からコンピュータプログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、また、CPU21AがROM21Bに記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、RAM21Cに展開して実行することにより、情報処理が行なわれる。
図5に示したシーケンス図は、車両20がデジタルキーとして機能している情報処理装置10から起動要求を受け付ける際の情報処理装置10及び車両20による、車両20のエンジン始動処理の流れを示したものである。
図5に示したシーケンス図において、情報処理装置10と車両20との間の通信は、BLEによる無線通信である。
【0063】
まず車両20のエンジンスイッチが、車両の車室内にいるユーザによって操作され、エンジン始動指示が行われる。エンジン始動指示に応じて、ステップS101において、ユーザの情報処理装置10と車両20との間でBLEによる通信が行われる。
【0064】
ユーザからのエンジン始動指示を受信した車両20は、ステップS102において、アンテナ29Aが故障しているかどうか判定する。車両20は、具体的には、アンテナ29AからECU21への返信が所定回数途絶したことによりアンテナ29Aが故障していると判定する。
【0065】
ステップS102の判定の結果、アンテナ29Aが故障していると判定した場合は(ステップS102;Yes)、続いて車両20は、ステップS103において、車両20を緊急始動モードに移行させる。緊急始動モードは、アンテナ29Aが受信した電波の強度を用いずに車両20を起動させるモードである。
【0066】
緊急始動モードに移行させると、続いて車両20は、ステップS104において、アンテナ29Bが受信した電波の強度が所定値以上であるかどうか判定する。ステップS104の判定の結果、アンテナ29Bが受信した電波の強度が所定値以上であれば(ステップS104;Yes)、続いて車両20は、ステップS105において、情報処理装置10に対して緊急始動要求を指示する。情報処理装置10に対する緊急始動要求は、情報処理装置10にユーザ認証を要求することで行われる。一方、ステップS104の判定の結果、アンテナ29Bが受信した電波の強度が所定値以上でなければ(ステップS104;No)、続いて車両20は、情報処理装置10が車両20の近傍に存在しないとして、一連の処理を終了する。
【0067】
車両20からの緊急始動要求の指示を受信した情報処理装置10は、ステップS106において、所定の認証手法によるユーザ認証を要求する。
図6は、情報処理装置10が表示部16に表示するユーザインターフェースの例を示す図である。
図6に示したのは、ユーザが情報処理装置10に対するユーザ認証を行っている状態において情報処理装置10が表示部16に表示するユーザインターフェースの例である。
【0068】
ステップS106に続いて、情報処理装置10は、ステップS107において、ユーザ認証に成功したかどうか判定する。ステップS107の判定の結果、ユーザ認証に成功しなかったと判定すると(ステップS107;No)、情報処理装置10は、一連の処理を終了する。ユーザ認証に成功しなかったと判定した場合、情報処理装置10は、ユーザ認証に成功しなかった旨のメッセージを表示部16に表示してもよい。一方、ステップS107の判定の結果、ユーザ認証に成功したと判定すると(ステップS107;Yes)、続いて情報処理装置10は、ステップS108において、ユーザ認証に成功した旨を車両20に送信する。
【0069】
ユーザ認証に成功した旨を情報処理装置10から受信した車両20は、続いてステップS109において、情報処理装置10でユーザ認証が成功したことを確認する。情報処理装置10でユーザ認証が成功したことを確認すると、車両20は、続いてステップS110において、所定時間エンジンの始動を許可する。所定時間は例えば30秒程度とする。また、車両20は、情報処理装置10において用いられた認証手法に応じて上記所定時間を変化させてもよい。車両20は、例えばパスコード認証又はパターン認証が情報処理装置10において認証手法として用いられた場合の時間より、生体認証が情報処理装置10において認証手法として用いられた場合の時間の方を長くしてもよい。
【0070】
車両20において所定時間エンジンの始動が許可され、車両20のエンジンスイッチが車両の車室内にいるユーザによって操作されると、再びエンジン始動指示が行われる。ステップS111において、エンジン始動指示に応じてユーザの情報処理装置10と車両20との間でBLEによる通信が行われる。車両20は、ステップS112において、ユーザからのエンジン始動指示が上記所定時間以内に行われたかどうか判定する。エンジン始動指示が上記所定時間以内に行われたと判定した場合(ステップS112;Yes)、続いて車両20は、ステップS113において、始動指示に基づいてエンジンを始動する。一方、エンジン始動指示が上記所定時間以内に行われなかったと判定した場合(ステップS112;No)、続いて車両20は、エンジンを始動させずに一連の処理を終了する。
【0071】
車両20は、エンジン始動指示が上記所定時間以内に行われなかったと判定した場合、情報処理装置10にエンジンを始動できなかった旨を送信してもよい。そして、情報処理装置10は、車両20のエンジンが始動できなかった場合に、ユーザに再度ユーザ認証を要求してもよい。
図7は、情報処理装置10が表示部16に表示するユーザインターフェースの例を示す図である。
図7に示したのは、車両20のエンジンが始動できなかった場合に、ユーザに再度ユーザ認証を要求するために表示部16に表示されるユーザインターフェースの例である。ボタン161をユーザが選択すると、情報処理装置10は、再度ユーザ認証の処理を実行する。ボタン162をユーザが選択すると、情報処理装置10はユーザ認証を要求しない。
【0072】
なお、ステップS102の判定の結果、アンテナ29Aが故障していないと判定した場合は(ステップS102;No)、続いて車両20は、ステップS114において、情報処理装置10がエンジン始動エリア内にあるかどうか判定する。エンジン始動エリアは、例えば車両20の車室である。
【0073】
ステップS114の判定の結果、情報処理装置10がエンジン始動エリア内にあると判定した場合は(ステップS114;Yes)、車両20は、ステップS113において、始動指示に基づいてエンジンを始動する。一方、ステップS114の判定の結果、情報処理装置10がエンジン始動エリア内にないと判定した場合は(ステップS114;No)、車両20はエンジンを始動させずに一連の処理を終了する。
【0074】
車両20は、一連の処理を実行することで、アンテナ29Aが故障している等の理由で、情報処理装置10がエンジン始動エリア内にあるかどうかを判定できない場合であっても、情報処理装置10に対するユーザ認証の結果に基づいてエンジンを始動させることができる。
【0075】
上記実施形態では、車両20がガソリンを動力としてエンジンを動作させて駆動する車両であるとして説明したが、本発明は係る例に限定されるものでは無い。車両20は、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)、BEV(Battery Electric Vehicle)等の電動車であってもよい。
【0076】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した起動処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0077】
また、上記各実施形態では、起動処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 車両制御システム
10 情報処理装置
20 車両
29A アンテナ(通信部)