(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】リアクトルの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20241126BHJP
B29C 45/33 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241126BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/33
B29C45/26
B29C45/14
H01F41/04 A
H01F41/04 F
(21)【出願番号】P 2021189289
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】横澤 諒
(72)【発明者】
【氏名】日向野 光康
(72)【発明者】
【氏名】岸本 俊
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-007857(JP,A)
【文献】実開平02-127418(JP,U)
【文献】特開2003-173917(JP,A)
【文献】特開2002-036296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを備えるリアクトルの製造装置であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を備え、
前記金型は、前記キャビティに突出する複数のピンを備え、
前記コアを前記キャビティに配置するとき、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンが固定されず、各ピンは位置決めピンとして機能し、
成形品を成形するとき、少なくとも1つの前記ピンが固定され、各ピンは成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンとして機能
し、
前記金型は、ピン押さえ部材を備え、
前記金型が閉じられた場合、少なくとも1つの前記ピンは、前記ピン押さえ部材によって押さえられ、少なくとも1つの前記ピンは、少なくとも1つの前記ピンと前記ピン押さえ部材の間の摩擦力によって固定される、
リアクトルの製造装置。
【請求項2】
前記金型は
、前記ピン押さえ部材を鉛直方向に駆動する駆動機構を備え、
前記金型が閉じられ、かつ
、前記ピン押さえ部材が前記駆動機構によって下降した場合
、少なくとも1つの前記ピンは
、前記ピン押
さえ部材によって押さえられる、
請求項
1に記載のリアクトルの製造装置。
【請求項3】
前記コアを前記キャビティに配置するとき、少なくとも1つの前記ピンは、前記コアから受ける圧力に応じて変位する、
請求項1
または2に記載のリアクトルの製造装置。
【請求項4】
前記製造装置は、一対のE字形状のコアを備えるリアクトルの製造装置であり、
各E字形状のコアの外脚コアの幅は、各E字形状のコアの中脚コアの幅よりも短い、
請求項1から
3のいずれか1項に記載のリアクトルの製造装置。
【請求項5】
コアを備えるリアクトルの製造方法であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型に、前記コアを配置するステップと、
前記金型を用いて成形品を成形するステップと、
を含み、
前記コアは、前記キャビティに突出する複数のピンを備え、
前記配置するステップでは、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンが固定されず、各ピンは位置決めピンとして機能し、
前記成形するステップでは、少なくとも1つの前記ピンが固定され、各ピンは成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンとして機能
し、
前記金型は、ピン押さえ部材を備え、
前記金型が閉じられた場合、少なくとも1つの前記ピンは前記ピン押さえ部材によって押さえられ、少なくとも1つの前記ピンは、少なくとも1つの前記ピンと前記ピン押さえ部材の間の摩擦力によって固定される、
リアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一次成形工程と二次成形工程とを含むリアクトルの製造方法を開示している。特許文献1に記載された技術によると、共通の金型を一次成形および二次成形の両方に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リアクトルの製造装置が備える金型には、コアを位置決めするための複数の位置決めピンが配置される。位置決めピンが成形時の樹脂圧に耐えられない場合には、樹脂圧によって成形時にコアが割れてしまうという問題がある。一方、樹脂圧に耐えられるように位置決めピンに高い圧力を印加した場合には、コアの寸法ばらつきによって位置決め時にコアが割れてしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、コアの寸法ばらつきを吸収することと、成形時の樹脂圧による変形を防ぐこととを両立できるリアクトルの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態におけるリアクトルの製造装置は、
コアを備えるリアクトルの製造装置であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を備え、
前記金型は、前記キャビティに突出する複数のピンを備え、
前記コアを前記キャビティに配置するとき、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンが固定されず、各ピンは位置決めピンとして機能し、
成形品を成形するとき、少なくとも1つの前記ピンが固定され、各ピンは成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンとして機能する。
【0007】
本実施の形態におけるリアクトルの製造方法は、
コアを備えるリアクトルの製造方法であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型に、前記コアを配置するステップと、
前記金型を用いて成形品を成形するステップと、
を含み、
前記コアは、前記キャビティに突出する複数のピンを備え、
前記配置するステップでは、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンが固定されず、各ピンは位置決めピンとして機能し、
前記成形するステップでは、少なくとも1つの前記ピンが固定され、各ピンは成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンとして機能する。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、コアの寸法ばらつきを吸収することと、成形時の樹脂圧による変形を防ぐこととを両立できるリアクトルの製造装置および製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】関連技術にかかる製造装置の金型の概要を示す模式上面図である。
【
図2】実施形態1にかかる製造装置の金型の概要を示す模式上面図である。
【
図3】実施形態1にかかる製造装置の金型の構成を示す模式側面図である。
【
図4】位置決め時における、実施形態1にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図5】上型下降時における、実施形態1にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図6】成形時における、実施形態1にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図7】成形品の取り出し時における、実施形態1にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図8】位置決め時における、実施形態2にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図9】上型下降時における、実施形態2にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図10】成形時における、実施形態2にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図11】成形品の取り出し時における、実施形態2にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図12】実施形態3にかかる製造装置の金型の構成を示す模式側面図である。
【
図13】位置決め時における、実施形態3にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図14】上型下降時における、実施形態3にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図15】成形時における、実施形態3にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【
図16】成形品の取り出し時における、実施形態3にかかる製造装置の金型を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態にいたる検討
まず、本願の発明者が行った検討内容について説明する。
図1は、関連する製造装置の金型200の概要を示す模式上面図である。関連する製造装置は、コア10を備えるリアクトルの製造装置である。金型200内にインサートされたコア10、および樹脂がモールドされたコイルモールド20の周囲に樹脂が注入され、インサート成形が行われる。符号R1は、コイルモールド20に含まれる樹脂を表している。穴hは、ボルト等の挿通穴であり、樹脂によって形成される。成形時の樹脂流路は、コア10の内側を流れる内側流路31aおよび31bと、コア10の外側を流れる外側流路32とを含む。
図1は、インサート成形時の金型200の内部の状態を表している。
【0011】
図1では、説明の明確化のため、XYZの3次元直交座標系を示している。尚、Z方向が鉛直方向である。したがって、Z方向が高さ方向となる。樹脂は、例えば、Z軸負方向に射出される。
【0012】
金型200は、コア10を収納するキャビティを備える。キャビティには、例えば、一対のE字形状のコア10がインサートされる。コア10は、ベースコア11と、中脚コア12と、外脚コア13aおよび13bとを備えている。以下では、外脚コア13aおよび13bを互いに区別しない場合には、単に外脚コア13と称する場合がある。中脚コア12および外脚コア13は、ベースコア11から同一方向に突出する。外脚コア13の幅(例えば、X軸方向の長さ)は、中脚コア12の幅よりも短い。
図1では、X軸方向はベースコア11の延在方向を表し、Y軸方向は中脚コア12および外脚コア13の延在方向を表す。
【0013】
金型200のキャビティは、キャビティに突出するピンP11、P12、P13、P14、P21、P22、およびP23を備えている。ピンP21およびP22はコア10のX軸負方向側の端面に接触し、ピンP11およびP12はコア10のX軸正方向側の端面に接触する。ピンP23はコア10のY軸負方向側の端面に接触し、ピンP13およびP14はコア10のY軸正方向側の端面に接触する。成形時、ピンP11、P12、P13、P14、P21、P22、およびP23が接触する部分には樹脂が注入されないため、成形品には、ピンP11、P12、P13、P14、P21、P22、およびP23に対応する窓が形成される。
【0014】
ピンP11~P14は金型200にバネSを介して接続されており、固定されていない。ピンP21~P23は金型200に固定されている。バネSは、コイルバネや板バネ等の金属バネであってもよく、空気バネ等の流体バネであってもよく、ゴムや樹脂等の弾性材料によって構成されたバネであってもよい。以下では、ピンP11~P14を互いに区別しない場合には、単にピンP1と称する場合がある。また、ピンP21~P23を互いに区別しない場合には、単にピンP2と称する場合がある。ピンP2の位置は一定に保持されており、ピンP1の位置はコア10から受ける圧力に応じて変位すると考えてもよい。そして、ピンP1およびP2を互いに区別しない場合には、単にピンPと称する場合がある。
【0015】
なお、コア10のX軸正方向側の端面に接触するピンP、およびコア10のX軸負方向側の端面に接触するピンPのうち少なくとも一方が、バネSに接続されていればよい。同様に、コア10のY軸正方向側の端面に接触するピンP、およびコア10のY軸負方向側の端面に接触するピンPのうち少なくとも一方が、バネSに接続されていればよい。
【0016】
ピンP11およびP12は、コア10のX方向の長さに応じてX軸正方向に変位する。ピンP13およびP14は、コア10のY軸方向の長さに応じてY軸正方向に変位する。これにより、ピンP11、P12、P13、P14、P21、P22、およびP23は、コア10の寸法ばらつきを吸収しつつ、コア10を位置決めできる。コア10の外脚コア13bは、ピンP11およびピンP12の変位により、X軸負方向に加圧されている。
【0017】
上述の通り、成形時の樹脂流路には、コア10の内部を通る内側流路31aおよび31bと、コア10の外部を通る外側流路32とが含まれている。内側流路31aは、コイルモールド20の周辺を通る。外側流路32よりも優先的に内側流路31bに樹脂を注入した場合、外脚コア13bは、内側流路31bの樹脂によって、X軸正方向に加圧される。外脚コア13が外側から変形することを防ぐために、内側流路31に優先的に樹脂を注入する場合がある。通常、ピンP11およびP12による加圧力は樹脂圧よりも小さいため、外脚コア13bが外側に変形することを防ぐことができず、コア10が割れてしまうという問題がある。
【0018】
したがって、成形時にコア10が割れることを防ぐためには、例えばバネSのバネ係数を高くすることにより、外脚コア13bをX軸負方向に強く加圧する必要がある。しかしながら、ピンP11およびP12による加圧力を強く設定すると、コア10の位置決め時にコア10を割ってしまうおそれがあるという問題がある。本願の発明者は、以上の検討に基づき、実施形態にかかる発明に想到した。
【0019】
実施形態1
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0020】
以下、図面を参照して実施形態1にかかる製造装置について説明する。
図2は、実施形態1にかかる製造装置の金型100の概要を示す模式上面図である。なお、以下では、上述した関連する製造装置の金型200と異なる点を中心に説明する。
【0021】
図2の上図はコア10の配置時の金型100の状態を示し、
図2の下図は成形品の成形時の金型100の状態を示している。上図と下図の間の下向き矢印は、金型100の状態が変化することを表している。
図2の上図ではピンP1はバネSに接続されているが、
図2の下図ではピンP1はバネSに接続されていない。なお、上述の通り、ピンP1は、ピンP11~P14を意味している。
図2の上図は、コア10の配置時にはピンP1が固定されておらず、ピンP1はコアから受ける圧力によって変位することを示している。コア10をキャビティに配置するとき、各ピンPは位置決めピンとして機能する。
【0022】
図2の下図は、成形時にはピンP1が金型100に固定されることを示している。ピンP11~P14、およびP21~P23は、矢印で示される加圧力によりコア10が変形することを、防ぐことができる。なお、下向き矢印は、2つの内側流路31の両方から樹脂圧を受けることを意味している。成形品を成形するとき、各ピンPは成形時の樹脂圧に対してコア10を支持するコア支えピンとして機能する。
【0023】
ピンP1が固定されていない状態と、ピンP1が固定された状態とは、金型100の開閉に応じて切り替えられる。コア10の配置は金型100が開いた状態で行われるため、
図2の上図ではピンP1が固定されていない。成形時は金型100が閉じているため、
図2の下図では、ピンP1が固定されている。なお、金型100の具体的な構成については後述する。
【0024】
図3は、実施形態1にかかる製造装置が備える金型100の模式側面図である。なお、実施形態1にかかる製造装置は、金型100の他に、金型100の開閉を制御する開閉装置(不図示)や樹脂の射出装置(不図示)などを備えていてもよい。
【0025】
金型100は上型110および下型120を備えている。上型110が下降することによって金型100が閉じた状態となり、上型110が上昇することによって金型100が開いた状態となる。上型110は、Z軸方向に延在するくさび押さえピン111およびバネ112を備えている。
【0026】
くさび押さえピン111は、Z軸方向に伸縮するバネ112を介して上型110に接続されている。くさび押さえピン111は、金型100が閉じるときに、後述するくさび124を押し下げ、くさび124をピンP1と後述するスライドコアブロック122の間に入れて、ピンP1を固定する。バネ112は、くさび押さえピン111にくさび124を押さえる力を付与する。バネ112の荷重は、後述するバネ125の荷重よりも大きい。
【0027】
下型120は、突起部121、スライドコアブロック122、バネ123、くさび124、バネ125、ピンP1、およびバネSを備えている。突起部121は、Z軸方向に突起を有しており、Z軸方向に移動可能である。
【0028】
スライドコアブロック122は、X軸方向に伸縮するバネ123を介して下型120に接続されており、X軸方向に進退可能である。スライドコアブロック122は、突起部121を挿入することが可能な貫通孔を有している。突起部121が貫通孔に挿入されると、スライドコアブロック122はX軸正方向に移動する。突起部121が貫通孔から退避すると、スライドコアブロック122は、バネ123の弾性力によってX軸負方向に移動する。
【0029】
くさび124は、Z軸方向に伸縮するバネ125を介してスライドコアブロック122に接続されている。くさび124は、Z軸負方向に向かうにつれて幅(例えば、X軸方向の長さ)が狭くなるくさび型となっている。くさび124は、後述するバネ125の働きにより、コア10の配置時にはピンP1と干渉しない位置に退避している。成形時には、くさび124は、ピンP1とスライドコアブロック122の間に入り、ピンP1を固定する。
【0030】
バネ125は、成形完了後に金型100が開き、くさび押さえピン111が退避した後、弾性力によってくさび124を浮上させる。これにより、ピンP1は、固定されていない状態、つまり圧力によって変位可能な状態に戻る。
【0031】
ピンP1は、コア10の配置時には位置決めピンとして機能する。ピンP1は、成形時には、コア10を、成形時の樹脂圧に対して支持するコア支えピンとして機能する。ピンP1の基端は、X軸方向に伸縮するバネS(横バネとも称される)を介してスライドコアブロック122に接続されている。
【0032】
ピンP1は、基端からX軸負方向に延在し、コア10のX軸正方向側の端面に接触する。また、ピンP1は基端からX軸正方向に延在し、ピンP1は、くさび124のX軸負方向側の端面と係合可能な傾斜端面を有する。くさび124が押されていないときにピンP1とくさび124が係合しないように、バネSの長さは適切に設定されてもよい。
【0033】
金型100が開いているとき、つまり上型110が上昇しているとき、ピンP1はくさび124によって固定されないため、バネSが、コア10の寸法のばらつきを吸収できる。一方、金型が閉じているとき、つまり上型110が下降しているとき、くさび124はくさび押さえピン111によって押さえられ、ピンP1がくさび124によって固定される。したがって、実施形態1にかかる製造装置は、コア10の寸法のばらつきを吸収することと、成形時の樹脂圧による変形を防ぐこととを両立することができる。
【0034】
次に、
図4~
図7を参照して、実施形態1にかかる製造方法について詳細に説明する。
図4は、位置決め時における金型100を示す模式側面図である。上型110が上昇した状態で、下型120にコア10が配置される。突起部121をZ軸負方向に移動させると、スライドコアブロック122は、矢印で示すようにX軸負方向に移動する。そして、ピンP1でコア10の位置決めを行う。
【0035】
図5は、上型110の下降時における金型100を示す模式側面図である。上型110は、矢印で示されるように下降する。上型110の下降に応じて、くさび押さえピン111がくさび124を押さえ始める。くさび押さえピン111がくさび124を押す力は、コア10を破壊しないように適切に設定されていてもよい。例えば、くさび押さえピン111は、所定の力でくさび124を押さえてもよい。
【0036】
図6は、成形時における金型100を示す模式側面図である。上型110の下降が完了すると、金型100には型締め力が働き、ピンP1はくさび124およびくさび押さえピン111によって固定される。そして、ピンP1とスライドコアブロック122の間に、くさび124が入った状態となる。金型100内に樹脂が射出されると、コア押さえピンP1は、矢印で示すようにX軸正方向に加圧される。くさび124は樹脂圧を鉛直方向の力に変換し、くさび押さえピン111が鉛直方向にくさび124を押さえる。例えば、バネ112のバネ係数を十分高くしておくことにより、ピンP1を固定することができる。
【0037】
図7は、成形品の取り出し時における金型100を示す模式側面図である。樹脂成形が完了した後、上向き矢印で示されるように、上型110を上昇させる。これにより、くさび押さえピン111が退避し、バネ125によりくさび124が浮上する。そして、突起部121をZ軸正方向に移動させることによりスライドコアブロック122をX軸正方向に移動させ、成形品の取り出しを行う。なお、符号R2は、成形品にモールドされた樹脂を示している。
【0038】
実施形態1にかかる製造装置は、コアの寸法ばらつきを吸収しつつ位置決めを行う。このとき、ピンP1は、バネSによって変位可能とされる。そして、実施形態1にかかる製造装置は、成形品を成形するとき、ピンP1をくさび機構によって固定する。したがって、樹脂圧を受けたピンP1が動かずにコアの変形を抑制し、コアが割れることを防止できる。
【0039】
実施形態2
次に、
図8~
図11を参照して、実施形態2にかかる製造装置について説明する。以下では、実施形態1と異なる点を中心に説明する。実施形態2にかかる製造装置の金型100aは、上述したバネ112の代わりに、上述したくさび押さえピン111を鉛直方向に駆動するエアシリンダー113を備える。エアシリンダー113による荷重は、バネ125による荷重よりも大きい。
【0040】
図8は、位置決め時における金型100aを示す模式側面図である。まず、下型120にコア10が配置される。そして、スライドコアブロック122が、矢印で示されるようにX軸負方向に移動し、ピンP1でコア10の位置決めが行われる。
【0041】
図9は、上型110a下降時における金型100aを示す模式側面図である。矢印で示すように上型110aが下降する。上型110aの下降が完了すると、金型100aに型締め力が働く。この時点では、くさび124は、まだくさび押さえピン111によって押さえられていない。
【0042】
金型100aの型締めにより、金型100aの各部品はミクロンオーダで僅かに変形することが知られている。したがって、上型110aの下降が完了したときに、くさび押さえピン111がくさび124を押さえていると、各部品の変形に起因して、ピンP1がコア10を押して割ってしまうおそれがある。そこで、金型100aの下降が完了するタイミングと、くさび124を押さえるタイミングとをずらしている。
【0043】
図10は、成形時における金型100aを示す模式側面図である。上型110aの下降が完了した後、エアシリンダー113を作動させ、くさび押さえピン111をZ軸負方向に移動させる。金型100aが閉じられ、かつくさび押さえピン111がエアシリンダー113によって下降した場合に、くさび124は、くさび押さえピン111によって押さえられる。これにより、ピンP1とくさび押さえピン111の間にくさび124が入り、ピンP1の位置が固定される。エアシリンダー113は、例えば、所定の荷重でくさび押さえピン111を加圧してもよい。この後、金型100a内に樹脂が射出され、くさび124は樹脂圧を鉛直方向の力に変換する。コア10は、ピンP1およびくさび124を介して、くさび押さえピン111によって押さえられる。
【0044】
図11は、成形品の取り出し時における金型100aを示す模式側面図である。矢印で示すように上型110aを上昇させると、くさび押さえピン111が退避し、バネ125によってくさび124が浮上する。エアシリンダー113を用いてくさび押さえピン111を上昇させた後、上型110aを上昇させてもよい。スライドコアブロック122をX軸正方向に移動させた後、成形品が取り出される。
【0045】
実施形態2にかかる製造装置は、エアシリンダーを用いることで、金型の下降が完了するタイミングと、ピンP1がくさびによって固定されるタイミングとをずらしている。これにより、金型の型締め力に起因する部品の変形によってコアが割れることを防いでいる。
【0046】
なお、上述したエアシリンダー113の代わりに、電動式または油圧式の駆動機構が設けられてもよい。ただし、駆動機構は、金型100aの温度に耐えることができるものとする。なお、くさび押さえピン111を鉛直方向に駆動する代わりに、後述するピン押さえ部材を鉛直方向に駆動してもよい。
【0047】
実施形態3
次に、
図12を参照して、実施形態3にかかる製造装置について説明する。実施形態3にかかる製造装置の金型100bは、上型110bおよび下型120bを備えている。
図3と
図12とを比較すると、上型110bは、くさび押さえピン111を備えておらず、ピン押さえ部材114を備えている。ピン押さえ部材114は、金型100bを閉じることにより、後述するピンP1aを押さえる。ピン押さえ部材114は、上型110bに固定されていてもよい。
【0048】
また、下型120bは、くさび124を備えておらず、ピンP1がピンP1aに置き換わっている。ピンP1aは、ピン押さえ部材114の下面と接触する接触面を備えている。ピンP1aは、ピン押さえ部材114とピンP1aとの間の摩擦力によって、金型100bに対して固定される。ピンP1aの上面は、例えば、摩擦部材を備えていてもよい。
【0049】
このような場合も、実施形態1と同様に、コア10の寸法のばらつきをバネSによって吸収し、かつ、樹脂圧を受けたピンP1aを摩擦力によって固定してコア10の変形を防ぐことができる。
【0050】
次に、
図13~
図16を参照して、実施形態3にかかる製造方法について説明する。
図13は、位置決め時における金型100bを示す模式側面図である。上型110bが上昇した状態で、下型120bにコア10が配置される。スライドコアブロック122がX軸負方向に移動することで、ピンP1aでコア10が位置決めされる。
【0051】
図14は、上型110b下降時における金型100bを示す模式側面図である。矢印で示されるように上型110bが下降する。上型110bの下降が完了すると、金型100bに型締め力がかかる。このとき、ピン押さえ部材114がピンP1aの上面をZ軸負方向に押さえており、摩擦によりピンP1aのX軸方向の位置が固定される。
【0052】
図15は、成形時における金型100bを示す模式側面図である。金型100bに樹脂が射出され、ピンP1aは矢印で示される方向に樹脂圧を受ける。ピンP1aは、ピン押さえ部材114からX軸負方向の摩擦力を受けて固定される。
【0053】
図16は、成形品の取り出し時における金型100bを示す模式側面図である。樹脂成形が完了すると、上向き矢印で示すように上型110bが上昇し、ピン押さえ部材114が退避する。ピン押さえ部材114の退避と同時に、ピンP1aは、バネSによって変位可能に支持された状態に戻る。スライドコアブロック122が右向き矢印で示す方向に移動した後、成形品が取り出される。
【0054】
実施形態3にかかる製造装置は、コアの寸法ばらつきを吸収して位置決めを行う。このとき、ピンP1aはバネSによって変位可能に支持されている。一方、成形時には、ピンP1aは摩擦力によって固定され、コアが変形して割れることを防ぐことができる。
【0055】
実施形態1~3は、適宜組合せてもよい。例えば、実施の形態3において、ピン押さえ部材114をエアシリンダー113によって駆動してもよい。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 コア
11 ベースコア
12 中脚コア
13、13a、13b 外脚コア
20 コイルモールド
内側流路 31、31a、31b
外側流路 32
h 挿通穴
100、100a、100b、200 金型
110、110a、110b 上型
111 くさび押さえピン
112 バネ
113 エアシリンダー
114 ピン押さえ部材
120、120a、120b 下型
121 突起部
122 スライドコアブロック
123 バネ
124 くさび
125 バネ
P1、P1a、P11、P12、P13、P14 ピン
P2、P21、P22、P23 ピン
S バネ