(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】位置精度判定装置、位置精度判定用コンピュータプログラム及び位置精度判定方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241126BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241126BHJP
G01C 21/16 20060101ALI20241126BHJP
B60W 40/00 20060101ALI20241126BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241126BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241126BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/26 A
G01C21/16
B60W40/00
B60W60/00
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2021197958
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2023-07-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】坂本 将紘
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017989(JP,A)
【文献】特開2021-017073(JP,A)
【文献】特開2018-173304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/26
G01C 21/16
B60W 40/00
B60W 60/00
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の前記道路特徴物の位置情報とに基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第1位置を推定する第1位置推定部と、
前記第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、前記第2時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第2位置を推定する第2位置推定部と、
前記第1時刻における前記第1位置及び前記第2位置を予測フィルタに入力して、前記第1時刻における前記移動物体の現在位置を算出する算出部と、
前記第1時刻における前記移動物体の前記現在位置と、前記第1時刻よりも前の時刻における前記移動物体の位置と、前記前の時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の距離を表す第1相違量に基づいて、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態を判定する判定部と、
を有し、
前記判定部は、前記第1時刻と、
所定の時間だけ前の時刻との間に求められた複数の前記第1相違量のうち、当該第1相違量が所定の第1閾値を超えた割合が第1基準値以上である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化したと判定し、当該第1相違量が前記第1閾値を超えた割合が前記第1基準値未満である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化していないと判定する、ことを特徴とする位置精度判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1時刻における前記移動物体の前記第1位置と前記第2位置との間の距離を表す第2相違量を求め、
前記判定部は、前記第1相違量及び前記第2相違量に基づいて、前記移動物体の現在位置の精度の状態を判定し、
前記判定部は、前記第1時刻と、
前記所定の時間だけ前の時刻との間に求められた複数の前記第2相違量のうち、少なくとも1つの当該第2相違量が所定の第2閾値以上である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化したと判定し、全ての当該第2相違量が前記第2閾値未満である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化していないと判定する、請求項1に記載の位置精度判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記移動物体の現在位置の精度が良い状態から悪い状態へ変更するように判定する場合と、前記移動物体の現在位置の精度が悪い状態から良い状態へ変更するように判定する場合とでは、異なる基準を用いる請求項1又は2に記載の位置精度判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第2相違量と所定の基準閾値とを比較して、前記移動物体の位置の推定精度の状態を判定する請求項2に記載の位置精度判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記移動物体の位置の推定精度の状態に基づいて、通知部を介して、前記移動物体の運転に対する関与を求める要求をドライバに対して通知する請求項1~4の何れか一項に記載の位置精度判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記前の時刻として前記第2時刻を用いる請求項1~5の何れか一項に記載の位置精度判定装置。
【請求項7】
第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の前記道路特徴物の位置情報とに基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第1位置を推定し、
前記第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、前記第2時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第2位置を推定し、
前記第1時刻における前記第1位置及び前記第2位置を予測フィルタに入力して、前記第1時刻における前記移動物体の現在位置を算出し、
前記第1時刻における前記移動物体の前記現在位置と、前記第1時刻よりも前の時刻における前記移動物体の位置と、前記前の時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の距離を表す第1相違量に基づいて、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態を判定する、
ことをプロセッサに実行させ、
前記第1時刻と、
所定の時間だけ前の時刻との間に求められた複数の前記第1相違量のうち、当該第1相違量が所定の第1閾値を超えた割合が基準値以上である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化したと判定され、当該第1相違量が前記第1閾値を超えた割合が基準値未満である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化していないと判定される、
ことを特徴とする位置精度判定用コンピュータプログラム。
【請求項8】
第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の前記道路特徴物の位置情報とに基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第1位置を推定し、
前記第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、前記第2時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の第2位置を推定し、
前記第1時刻における前記第1位置及び前記第2位置を予測フィルタに入力して、前記第1時刻における前記移動物体の現在位置を算出し、
前記第1時刻における前記移動物体の前記現在位置と、前記第1時刻よりも前の時刻における前記移動物体の位置と、前記前の時刻から前記第1時刻までの前記移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の距離を表す第1相違量に基づいて、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態を判定する、
ことを位置精度判定装置が実行し、
前記第1時刻と、
所定の時間だけ前の時刻との間に求められた複数の前記第1相違量のうち、当該第1相違量が所定の第1閾値を超えた割合が基準値以上である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化したと判定され、当該第1相違量が前記第1閾値を超えた割合が基準値未満である場合、前記移動物体の前記現在位置の精度の状態は悪化していないと判定される、
ことを特徴とする位置精度判定用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置精度判定装置、位置精度判定用コンピュータプログラム及び位置精度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動制御システムは、車両の現在位置と、車両の目的位置と、ナビゲーション用地図とに基づいて、車両のナビルートを生成する。自動制御システムは、地図情報を用いて車両の現在位置を推定し、ナビルートに沿って車両を走行させる。
【0003】
自動制御システムは、精確に車両の現在位置を推定できることが好ましい。例えば、自動制御システムは、車両の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と地図上の道路特徴物の位置情報とに基づいて、第1推定位置を推定する。また、自動制御システムは、前時刻における車両の位置と前時刻から現在の時刻までの車両の移動量及び方位角変化量に基づいて、第2推定位置を推定する。そして、自動制御システムは、第1推定位置及び第2推定位置に基づいて、車両の現在位置を推定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像に表される道路特徴物の状態、車両の移動量又は方位角変化量の誤差、又は、車両の横滑りの発生等の要因により、第1推定位置及び第2推定位置に基づいて推定された車両の現在位置は正しいとは限らない。自動制御システムは、車両の現在位置に基づいて車両を走行させるので、車両の現在位置が誤っていると、車両を安全に走行させることができないおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、推定された車両の現在位置の精度の状態を判定できる位置精度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の実施形態によれば、位置精度判定装置が提供される。この位置精度判定装置は、第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の道路特徴物の位置情報とに基づいて、第1時刻における移動物体の第1位置を推定する第1位置推定部と、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、第2時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、第1時刻における移動物体の第2位置を推定する第2位置推定部と、第1時刻における第1位置及び第2位置を予測フィルタに入力して、第1時刻における移動物体の現在位置を算出する算出部と、第1時刻における移動物体の現在位置と、第1時刻よりも前の時刻における移動物体の位置と、前の時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の第1相違量に基づいて、移動物体の現在位置の精度の状態を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、この位置精度判定装置において、判定部は、第1時刻における移動物体の第1位置と第2位置との間の第2相違量を求め、判定部は、第1相違量及び第2相違量に基づいて、移動物体の現在位置の精度の状態を判定することが好ましい。
【0009】
また、この位置精度判定装置において、判定部は、移動物体の現在位置の精度が良い状態から悪い状態へ変更するように判定する場合と、移動物体の現在位置の精度が悪い状態から良い状態へ変更するように判定する場合とでは、異なる基準を用いることが好ましい。
【0010】
また、この位置精度判定装置において、判定部は、第2相違量と所定の基準閾値とを比較して、移動物体の位置の推定精度の状態を判定することが好ましい。
【0011】
また、この位置精度判定装置において、判定部は、移動物体の位置の推定精度の状態に基づいて、通知部を介して、移動物体の運転に対する関与を求める要求をドライバに対して通知することが好ましい。
【0012】
また、この位置精度判定装置において、判定部は、前の時刻として第2時刻を用いることが好ましい。
【0013】
他の実施形態によれば、位置精度判定用コンピュータプログラムが提供される。この位置精度判定用コンピュータプログラムは、第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の道路特徴物の位置情報とに基づいて、第1時刻における移動物体の第1位置を推定し、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、第2時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、第1時刻における移動物体の第2位置を推定し、第1時刻における第1位置及び第2位置を予測フィルタに入力して、第1時刻における移動物体の現在位置を算出し、第1時刻における移動物体の現在位置と、第1時刻よりも前の時刻における移動物体の位置と、前の時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の第1相違量に基づいて、移動物体の現在位置の精度の状態を判定する、ことをプロセッサに実行させることを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
また、他の実施形態によれば、位置精度判定方法が提供される。この位置精度判定方法は、第1時刻における移動物体の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像と、路面上の道路特徴物の位置情報とに基づいて、第1時刻における移動物体の第1位置を推定し、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の位置と、第2時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて、第1時刻における移動物体の第2位置を推定し、第1時刻における第1位置及び第2位置を予測フィルタに入力して、第1時刻における移動物体の現在位置を算出し、第1時刻における移動物体の現在位置と、第1時刻よりも前の時刻における移動物体の位置と、前の時刻から第1時刻までの移動物体の移動量及び方位角変化量に基づいて推定された位置との間の第1相違量に基づいて、移動物体の現在位置の精度の状態を判定する、ことを位置精度判定装置が実行することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る位置精度判定装置は、推定された車両の現在位置の精度の状態を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の位置精度判定装置の動作の概要を説明する図である。
【
図2】本実施形態の位置精度判定装置を含む車両制御システムが実装される車両の概略構成図である。
【
図4】本実施形態の位置推定装置の位置精度判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図8】本実施形態の位置推定装置の判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図9】状態悪化条件及び状態改善条件を決定する考え方を説明する図(その1)である。
【
図10】状態悪化条件及び状態改善条件を決定する考え方を説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態の位置精度判定装置の動作の概要を説明する図である。以下、
図1を参照しながら、本明細書に開示する位置精度判定装置の一例である位置推定装置12の位置精度判定処理に関する動作の概要を説明する。
【0018】
車両10は、位置推定装置12を用いて、所定の周期で現在位置を推定しながら走行する。車両10は、移動物体の一例である。
【0019】
図1(A)に示すように、位置推定装置12は、時刻t1における車両10の周囲の路面上の道路特徴物(例えば、車線区画線)を表す画像と、路面上の道路特徴物の位置情報(例えば、地図情報)とに基づいて、時刻t1における車両10の位置を推定する。同様に、位置推定装置12は、時刻t1から所定の周期が経過した時刻t2において、時刻t2における車両10の位置P1(道路特徴物による推定位置)を推定する。
【0020】
また、位置推定装置12は、時刻t1における車両10の位置と、時刻t1から時刻t2までの車両10の移動量及び方位角変化量に基づいて、時刻t2における車両10の位置P2(デッドレコニングによる推定位置)を推定する。
【0021】
そして、位置推定装置12は、時刻t2における車両10の位置P1及び位置P2を予測フィルタ(例えば、カルマンフィルタ)に入力して、時刻t2における車両10の現在位置P0(予測フィルタによる推定位置)を算出する。この現在位置P0は、車両10の運転を制御するために用いられる。また、現在位置P0は、次回の第2推定位置(デッドレコニングによる推定位置)を求めるためにも使用される。
【0022】
位置推定装置12は、時刻t2における車両10の推定位置P2と現在位置P0との間の相違量Dを求める。なお、
図1(A)に示す例では、相違量Dとして、車両10の進行方向と直行する横方向の横相違量を示している。
【0023】
相違量Dが生じる要因として、例えば、以下のことが挙げられる。(1)車両10の周囲の路面上の道路特徴物を表す画像を撮影するカメラの異常、(2)車両10の周囲の路面上の道路特徴物が明確でないこと(例えば、車線区画線がかすれていること)、(3)路面上の道路特徴物の位置情報を表す高精度地図と現在の地形との不一致、(4)車両10の移動量を求めるのに使用される速度センサの異常、(5)車両10の方位角変化量を求めるのに使用されるヨーレートセンサの異常、(6)車両10が横滑りしたこと、等。
【0024】
位置推定装置12は、相違量Dに基づいて、車両10の現在位置の精度の状態を判定する。
図1(C)に示す例では、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)と、正常2(ハンズオフ)と、不調1(ハンズオン)と、不調2(Transition Demand:TD)とに判定される。車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)が一番よく、正常2(ハンズオフ)、不調1(ハンズオン)、不調2(TD)の順番によくなくなる。
【0025】
車両10の現在位置の精度の状態が、正常1又は正常2と判定された場合、位置推定装置12により推定される車両10の現在位置に基づいて、車両10の運転が安全に自動制御される。
【0026】
一方、車両10の現在位置の精度の状態が、不調1又は不調2と判定された場合、位置推定装置12により推定される車両10の現在位置に基づいて、車両10の運転が安全に自動制御されなくなるおそれがある。
【0027】
そこで、位置推定装置12は、車両10の現在位置の精度の状態が不調1(ハンズオン)であると判定した場合、ドライバに対してステアリングを把持することを求める把持要求を通知する。また、位置推定装置12は、車両10の現在位置の精度の状態が不調2(TD)であると判定した場合、ドライバに対して車両10の運転を自動制御から手動制御に変更することを要求する制御変更要求を通知する。
【0028】
例えば、道路特徴物の一例である車線区画線は、カメラの不調により画像に正しく表されていないと、車両10の現在位置の精度の状態は不調1、2に判定される場合がある。また、車線区画線がかすれていて画像から車線区画線が正しく識別されないと、車両10の現在位置の精度の状態が不調1、2と判定される場合がある。従って、車両10の現在位置の精度の状態は、センサ等のハードウェアと共に、ハードウェア以外の影響を受ける。
【0029】
このように、位置推定装置12によれば、推定された車両10の現在位置の精度の状態を判定できるので、その判定結果に基づいて、車両10を安全に運転するための情報として役立てることができる。
【0030】
図2は、本実施形態の位置推定装置12を含む車両制御システム1が実装される車両の概略構成図である。車両10は、カメラ2と、測位情報受信機3と、ナビゲーション装置4と、ユーザインターフェース(UI)5と、車両速度センサ6と、ヨーレートセンサ7と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16等とを有する。更に、車両10は、LiDARセンサといった、車両10の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)を有してもよい。
【0031】
カメラ2と、測位情報受信機3と、ナビゲーション装置4と、UI5と、車両速度センサ6と、ヨーレートセンサ7と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク17を介して通信可能に接続される。
【0032】
カメラ2は、車両10に設けられる撮像部の一例である。カメラ2は、車両10の前方を向くように、車両10に取り付けられる。カメラ2は、例えば所定の周期で、車両10の前方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。カメラ画像には、車両10の前方の所定の領域内に含まれる道路と、その路面上の車線区画線等の道路特徴物が表わされ得る。カメラ2は、CCDあるいはC-MOS等、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。
【0033】
カメラ2は、カメラ画像を撮影する度に、カメラ画像及びカメラ画像が撮影されたカメラ画像撮影時刻を、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12及び物体検出装置13等へ出力する。カメラ画像は、位置推定装置12において、車両10の位置を推定する処理に使用される。また、カメラ画像は、物体検出装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0034】
測位情報受信機3は、車両10の現在位置を表す測位情報を出力する。例えば、測位情報受信機3は、GNSS受信機とすることができる。測位情報受信機3は、所定の受信周期で測位情報を取得する度に、測位情報及び測位情報を取得した測位情報取得時刻を、ナビゲーション装置4及び地図情報記憶装置11等へ出力する。
【0035】
ナビゲーション装置4は、ナビゲーション用地図情報と、UI5から入力された車両10の目的位置と、測位情報受信機3から入力された車両10の現在位置を表す測位情報とに基づいて、ドライバの要求に応じて、車両10の現在位置から目的位置までのナビルートを生成する。ナビルートは、右折、左折、合流、分岐等の位置に関する情報を含む。ナビゲーション装置4は、目的位置が新しく設定された場合、又は、車両10の現在位置がナビルートから外れた場合等に、車両10のナビルートを新たに生成する。ナビゲーション装置4は、ナビルートを生成する度に、そのナビルートを、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12及び走行車線計画装置14等へ出力する。
【0036】
UI5は、通知部の一例である。UI5は、ナビゲーション装置4及び位置推定装置12等に制御されて、車両10の走行情報、把持要求又は制御変更要求等をドライバへ通知する。車両10の走行情報は、車両の現在位置、ナビルート等の車両の現在及び将来の経路に関する情報等を含む。把持要求は、ドライバに対して、ステアリングを把持することを求める。制御変更要求は、ドライバに対して、車両10の運転を自動制御から手動制御に変更すること求める。また、UI5は、ドライバから車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。UI5は、走行情報等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置5aを有する。また、UI5は、走行情報等をドライバへ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI5は、ドライバから車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両速度及びその他の車両10の制御情報等が挙げられる。UI5は、入力された操作情報を、車内ネットワーク17を介してナビゲーション装置4及び車両制御装置16等へ出力する。
【0037】
車両速度センサ6は、車両10の車両速度情報を検知して、車両速度情報及び車両速度情報を取得した速度情報取得時刻を、車内ネットワーク17を介して位置推定装置12等へ出力する。車両速度センサ6は、例えば、車軸(図示せず)に取り付けられ、車軸の回転数を検知して、回転数に比例したパルス信号を出力する。
【0038】
ヨーレートセンサ7は、車両10のヨーレートを検知して、ヨーレート及びヨーレートを取得したヨーレート情報取得時刻を、車内ネットワーク17を介して位置推定装置12等へ出力する。ヨーレートセンサ7として、例えば、ジャイロスコープなどの加速度センサを用いることができる。
【0039】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置を含む相対的に広い範囲(例えば10~30km四方の範囲)の広域の地図情報を記憶する。この地図情報は、路面の3次元情報と、路面上の車線区画線等の道路特徴物、構造物の種類及び位置を表す情報と、道路の法定速度等を含む高精度地図情報を有する。地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置に応じて、車両10に搭載される無線通信装置(図示せず)を介した無線通信により、基地局を介して外部のサーバから広域の地図情報を受信して記憶装置に記憶する。地図情報記憶装置11は、測位情報受信機3から測位情報を入力する度に、記憶している広域の地図情報を参照して、測位情報により表される現在位置を含む相対的に狭い領域(例えば、100m~10km四方の範囲)の地図情報を、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0040】
位置推定装置12は、位置推定処理と、算出処理と、判定処理とを実行する。そのために、位置推定装置12は、通信インターフェース(IF)21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とは、信号線24を介して接続されている。通信インターフェース21は、位置推定装置12を車内ネットワーク17に接続するためのインターフェース回路を有する。
【0041】
位置推定装置12が有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。プロセッサ23は、位置推定部230と、算出部231と、判定部232とを有する。又は、プロセッサ23が有する機能モジュールは、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサ23は、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0042】
位置推定装置12は、カメラ画像撮影時刻における車両10の現在位置を求める度に、現在位置を、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。位置推定装置12の動作の詳細については後述する。
【0043】
物体検出装置13は、カメラ画像等に基づいて、車両10の周囲の他の物体及びその種類(例えば、車両)を検出する。他の物体には、車両10の周囲を走行する他の車両が含まれる。物体検出装置13は、検出された他の物体を追跡して、他の物体の軌跡を求める。物体検出装置13は、地図情報に表された車線区画線と、他の物体位置とに基づいて、他の物体が走行している走行車線を特定する。物体検出装置13は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その位置を示す情報及び走行車線を示す情報を含む物体検出情報を、走行車線計画装置14及び運転計画装置15等へ出力する。
【0044】
走行車線計画装置14は、所定の周期で設定される走行車線計画生成時刻において、ナビルートから選択された直近の運転区間(例えば、10km)において、地図情報と、ナビルート及び周辺環境情報と、車両10の現在位置とに基づいて、車両10が走行する道路内の車線を選択して、車両10が走行する予定走行車線を表す走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、例えば、車両10が追い越し車線以外の車線を走行するように、走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、走行車線計画を生成する度に、この走行車線計画を運転計画装置15へ出力する。
【0045】
また、走行車線計画装置14は、ナビルートから選択された直近の運転区間において、走行車線計画と、地図情報と、ナビルートと、車両10の現在位置とに基づいて、車線変更の要否を判定し、判定結果に応じて車線変更計画を生成する。具体的には、走行車線計画装置14は、ナビルートと車両10の現在位置とに基づいて、車両10の目的位置へ向かう車線へ移動するために、車線変更の要否を判定する。車両10が現在走行している走行道路から合流先の他の道路へ進入すること(合流)、及び、車両10が走行道路から分岐先の他の道路へ退出すること(分岐)の有無を判定する。合流及び分岐では、車両が走行道路の車線から他の道路の車線へ移動するので、車線変更が行われる。走行車線計画装置14は、車線変更の要否の判定に、周辺環境情報又は車両状態情報を更に利用してもよい。周辺環境情報は、車両の10の周囲を走行する他の車両の位置及び速度等を含む。車両状態情報は、車両10の現在位置、車両速度、加速度及び進行方向等を含む。走行車線計画装置14は、車線変更計画を生成した場合、この車線変更計画を追加した走行車線計画を運転計画装置15へ出力する。
【0046】
運転計画装置15は、所定の周期で設定される運転計画生成時刻において、走行車線計画と、地図情報と、車両10の現在位置と、周辺環境情報と、車両状態情報とに基づいて、所定の時間(例えば、5秒)先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する運転計画処理を実行する。運転計画は、現時刻から所定時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。運転計画が生成される周期は、走行車線計画が生成される周期よりも短いことが好ましい。運転計画装置15は、車両10と他の車両との間に所定の距離以上の間隔を維持できるように運転計画を生成する。運転計画装置15は、走行車線計画が車両10の車線間を移動する車線変更を含んでいても、車両10と他の車両との間に所定の距離以上の間隔を確保できない場合、車両10を停車するように運転計画を生成する。運転計画装置15は、運転計画を生成する度に、その運転計画を車両制御装置16へ出力する。
【0047】
車両制御装置16は、車両10の現在位置と、車両速度及びヨーレートと、運転計画装置15によって生成された運転計画とに基づいて、車両10の各部を制御する。例えば、車両制御装置16は、運転計画、車両10の車両速度及びヨーレートに従って、車両10の操舵角、加速度及び角加速度を求め、その操舵角、加速度及び角加速度となるように、操舵量、アクセル開度又はブレーキ量を設定する。そして車両制御装置16は、設定された操舵量に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ車内ネットワーク17を介して出力する。また、車両制御装置16は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンなどの駆動装置(図示せず)へ車内ネットワーク17を介して出力する。あるいは、車両制御装置16は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキ(図示せず)へ車内ネットワーク17を介して出力する。
【0048】
車両制御装置16は、自動制御システム1が車両10を運転する自動制御運転モードと、ドライバが車両10を運転する手動制御運転モードとを有する。車両制御装置16は、自動制御運転モードの適用時には、駆動、制動及び操舵の全ての車両10の動作を自動制御可能である。自動制御運転モードにおける車両制御装置16は、自動制御から手動制御への変更を要求する制御変更通知がドライバにより承認された場合、車両10の運転を自動制御運転モードから手動制御運転モードへ変更する。これにより、車両10が自動制御で安全な走行ができない場合、ドライバは、ステアリング、アクセルペダル及びブレーキペダル(図示せず)等を用いて、手動制御で車両10を操作して走行することが可能となる。手動制御運転モードでは、車両10は、駆動、制動及び操舵の中で少なくとも1つの動作が、手動で制御される。車両制御装置16は、ステアリング、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作量に応じて制御信号を生成する。なお、ドライバの要求に応じて、自動制御から手動制御への変更することも可能である。
【0049】
図2では、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16とは、別々の装置(例えば、Electronic Control Unit:ECU)として説明されているが、これらの装置の全て又は一部は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0050】
図3は、本実施形態の位置推定装置12の位置精度判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
図4を参照しながら、位置推定装置12の位置精度判定処理について、以下に説明する。位置推定装置12は、カメラ画像が入力される度に、
図4に示される動作フローチャートに従って位置精度判定処理を実行する。
【0051】
まず、位置推定部230は、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の周囲の路面上の道路特徴物を表すカメラ画像と、路面上の道路特徴物の位置情報とに基づいて、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の第1推定位置を推定する(ステップS101)。位置推定部230は、第1位置推定部の一例である。例えば、位置推定部230は、カメラ画像内に識別した車線区画線と、地図情報記憶装置11から入力された地図情報に表された車線区画線とを対比して、カメラ画像撮影時刻における車両10の第1推定位置及び第1推定方位角を求める。車線区画線は、道路特徴物の一例である。
【0052】
次に、位置推定部230は、前回のカメラ画像撮影時刻における移動物体の位置と、前回のカメラ画像撮影時刻から今回のカメラ画像撮影時刻までの車両10の移動量及び方位角変化量に基づいて、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の第2推定位置(デッドレコニングにより推定される位置)及び第2推定方位角を推定する(ステップS102)。位置推定部230は、第2位置推定部の一例である。位置推定部230は、車両10の車両速度情報により求められる車両速度を積分して、前回から今回のカメラ画像撮影時刻間の車両10の移動量を求める。また、位置推定部230は、車両10のヨーレート情報により求められるヨーレートを積分して、前回から今回のカメラ画像撮影時刻間の車両10の方位角変化量を求める。位置推定部230は、前回のカメラ画像撮影時刻における車両10の位置及び方位角と、移動量及び方位角変化量とを用いて、デッドレコニングにより推定される第2推定位置及び第2推定方位角を求める。
【0053】
次に、算出部231は、
図4に示すように、第1推定位置及び第1推定方位角並びに第2推定位置及び第2推定方位角を予測フィルタに入力して、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の現在位置及び現在の方位角を算出する(ステップS103)。
図4は、予測フィルタを説明する図である。予測フィルタとして、例えばカルマンフィルタを用いることができる。なお、予測フィルタとして、カルマンフィルタ以外のフィルタを用いてもよい。
【0054】
また、位置推定部230は、地図情報に表された車線区画線と、車両10の現在位置及び現在の方位角とに基づいて、車両10が位置する道路上の走行車線を推定してもよい。位置推定部230は、カメラ画像撮影時刻における車両10の現在位置、現在の方位角及び走行車線を求める度に、これらの情報を、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0055】
次に、位置推定部230は、今回のカメラ画像撮影時刻よりも前であるカメラ画像撮影時刻における車両10の位置及び方位角と、この以前のカメラ画像撮影時刻から今回のカメラ画像撮影時刻までの車両10の移動量及び方位角変化量に基づいて、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の第3推定位置を推定する(ステップS104)。今回のカメラ画像撮影時刻よりも前であるカメラ画像撮影時刻として、前回のカメラ画像撮影時刻を用いてもよい。この場合、第3推定位置は、第2推定位置と同じであるので、ステップS104は省略される。なお、今回のカメラ画像撮影時刻よりも前であるカメラ画像撮影時刻として、例えば、前々回のカメラ画像撮影時刻等の他の時刻を用いてもよい。
【0056】
次に、判定部232は、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の第1推定位置と第2推定位置との間の第1相違量を求める(ステップS105)。第1相違量は、第1推定位置と第2推定位置との間の距離を表す。第1相違量は、車両10の進行方向と一致する方向の縦相違量と、車両10の進行方向と直交する横方向の横相違量とに分けてもよい。また、第1相違量は、地図上の2つの位置の間の距離であってもよい。なお、第1相違量は、特許請求の範囲の第2相違量の一例である。
【0057】
図5は、第1相違量の一例を説明する図である。車両10は、今回のカメラ画像撮影時刻t2では、前回のカメラ画像撮影時刻t1の位置から第1推定位置P1へ移動している。判定部232は、今回のカメラ画像撮影時刻t2において、第1推定位置P1における横方向の位置と、第2推定位置P2における横方向の位置との間の横相違量を、第1相違量D1として求める。第1相違量が大きい場合、カメラ2の異常、地図情報と現在の地形との不一致、車両速度センサ6及び/又はヨーレートセンサ7の異常等が原因として考えられる。
【0058】
道路特徴物を表す画像と道路特徴物の位置情報とに基づいて推定された車両10の第1推定位置P1と、デッドレコニングにより推定された車両10の第2推定位置P2との間の第1相違量D1は、第1推定位置P1に対する第2推定位置P2の相対的な妥当性を表す。
【0059】
次に、判定部232は、今回のカメラ画像撮影時刻における車両10の第3推定位置と現在位置と間の第2相違量を求める(ステップS106)。第2相違量は、第3推定位置と現在位置との間の距離を表す。第2相違量は、車両10の進行方向と一致する方向の縦相違量と、車両10の進行方向と直交する方向の横相違量とに分けてもよい。また、第1相違量は、地図上の2つの位置の間の距離であってもよい。第2相違量が大きく且つ第1相違量が小さい場合、車両10が横滑りしていることが原因として考えられる。なお、第2相違量は、特許請求の範囲の第1相違量の一例である。
【0060】
図6は、第2相違量の一例を説明する図である。車両10は、今回のカメラ画像撮影時刻t2では、前回のカメラ画像撮影時刻t3の位置から第3推定位置P3へ移動している。判定部232は、今回のカメラ画像撮影時刻t2において、車両10の現在位置P0における横方向の位置と、第3推定位置P3における横方向の位置との間の相違量を、第2相違量D2として求める。
図6に示す例のように、車両10はカーブした道路を走行している時に、路面の状態によっては横滑りすることがある。
【0061】
デッドレコニングにより推定された車両10の第3推定位置P3と、予測フィルタを用いて算出された車両10の現在位置P0と間の第2相違量D2は、第3推定位置P3に対する車両10の現在位置P0の妥当性を表す。
【0062】
次に、判定部232は、第1相違量及び/又は第2相違量に基づいて、車両10の現在位置の精度の状態を判定して、一連の処理を終了する(ステップS106)。判定部232による判定処理の詳細については、次に説明する。
【0063】
図7は、判定処理の一例を説明する図である。
図7に示すように、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)と、正常2(ハンズオフ)と、不調1(ハンズオン)と、不調2(Transition Demand:TD)とに判定される。
【0064】
車両10の現在位置の精度の状態が、正常1(ノーマル)と判定された場合、位置推定装置12により推定される車両10の現在位置に基づいて、車両10の運転が安全に自動制御される。
【0065】
車両10の現在位置の精度の状態が、正常2(ハンズオフ)と判定された場合、車両10の現在位置の精度は、正常1(ノーマル)よりも劣るものの、自動制御システム1の制御の許容範囲にある。従って、位置推定装置12により推定される車両10の現在位置に基づいて、車両10の運転が安全に自動制御される。
【0066】
車両10の現在位置の精度の状態が、不調1(ハンズオン)と判定された場合、車両10の現在位置の精度は、自動制御システム1の制御の許容範囲を超えるおそれがある。そこで、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態が不調1(ハンズオン)であると判定した場合、UI5を介して、車両10の運転に対する関与を求める要求を通知する。具体的には、判定部232は、ステアリングを把持することを求める把持要求をドライバに対して通知する。自動制御システム1は、ドライバによりステアリングが把持された状態で、車両10の運転を自動制御する。ドライバは、自動制御による車両10の運転が安全でないと判断した場合には、ステアリングを操作することが可能である。
【0067】
車両10の現在位置の精度の状態が、不調2(TD)と判定された場合、車両10の現在位置の精度は、自動制御システム1の制御の許容範囲を超えていると推定される。判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態が不調2(TD)であると判定した場合、UI5を介して、車両10の運転に対する更なる関与を求める要求をドライバに対して通知する。具体的には、判定部232は、UI5を介して、車両10の運転を自動制御から手動制御に変更することを要求する制御変更要求をドライバに対して通知する。
【0068】
図8は、本実施形態の位置推定装置12の判定処理に関する動作フローチャートの一例である。車両10の現在位置の精度の現在の状態のそれぞれについて、
図8に示す動作フローチャートに従って、判定処理が実行される。
【0069】
まず、車両10の現在位置の精度の現在の状態が、正常1(ノーマル)である場合の判定処理について、以下に説明する。
【0070】
まず、判定部232は、第1相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS201)。状態悪化条件は、車両10の現在位置の精度の状態が現在の状態より悪くなっているか否かを判定する条件である。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態悪化閾値を超えた割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、正常1(ノーマル)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th1は、状態悪化閾値を0.1mとして、基準値を0.5とすることができる。また、正常1(ノーマル)から不調1(ハンズオン)へ変更する条件th2は、状態悪化閾値を0.3mとして、基準値を0.6とすることができる。また、正常1(ノーマル)から不調2(TD)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.5mとして、基準値を0.8とすることができる。
【0071】
本明細書において条件1を満たすと判定されることは、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量が、条件1を満たすが、条件2は満たさないことを意味する。本明細書において条件2を満たすと判定されることは、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量が、条件2を満たすが、条件3は満たさないことを意味する。このことは、他の判定処理に対しても適用される。
【0072】
第1相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS201-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th1を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。また、第1相違量が条件th2を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から不調1(ハンズオン)へ変更される。また、第1相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から不調2(TD)へ変更される。
【0073】
一方、第1相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS201-No)、判定部232は、第2相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS202)。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態悪化閾値以上であることが挙げられる。例えば、正常1(ノーマル)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th1は、状態悪化閾値を0.2mとすることができる。また、正常1(ノーマル)から不調1(ハンズオン)へ変更する条件th2は、状態悪化閾値を0.4mとすることができる。また、正常1(ノーマル)から不調2(TD)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.6mとすることができる。また、車両10が走行する道路の曲率判定が、基準曲率よりも大きい場合には、基準曲率以下の場合よりも状態悪化閾値を大きくしてもよい。これは、道路が湾曲している場合には、位置の変化量も大きくなり易いためである。なお、第2相違量については、正常1(ノーマル)から正常2(ハンズオフ)へ変更する判定は行わなくてもよい。
【0074】
第2相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS202-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th1を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。また、第2相違量が条件th2を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から不調1(ハンズオン)へ変更される。また、第2相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常1(ノーマル)から不調2(TD)へ変更される。
【0075】
一方、第2相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS202-No)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態は変更なしであると判定して(ステップS205)、一連の処理は終了する。車両10の現在位置の精度の現在の状態が、正常2(ハンズオフ)である場合、ステップS203及びステップS204の処理は行われない。
【0076】
次に、車両10の現在位置の精度の現在の状態が、正常2(ハンズオフ)である場合の判定処理について、以下に説明する。
【0077】
まず、判定部232は、第1相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS201)。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態悪化閾値を超えた割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、正常2(ハンズオフ)から不調1(ハンズオン)へ変更する条件th2は、状態悪化閾値を0.3mとして、基準値を0.6とすることができる。また、正常2(ハンズオフ)から不調2(TD)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.5mとして、基準値を0.8とすることができる。
【0078】
第1相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS201-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th2を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から不調1(ハンズオン)へ変更される。また、第1相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から不調2(TD)へ変更される。
【0079】
一方、第1相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS201-No)、判定部232は、第2相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS202)。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態悪化閾値以上であることが挙げられる。例えば、正常2(ハンズオフ)から不調1(ハンズオン)へ変更する条件th2は、状態悪化閾値を0.4mとすることができる。また、正常2(ハンズオフ)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.6mとすることができる。車両10が走行する道路の曲率判定が、基準曲率よりも大きい場合には、基準曲率以下の場合よりも状態悪化閾値を大きくしてもよい。
【0080】
第2相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS202-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th2を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から不調1(ハンズオン)へ変更される。また、第2相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から不調2(TD)へ変更される。
【0081】
一方、第2相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS202-No)、判定部232は、第1相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS203)。状態改善条件は、車両10の現在位置の精度の状態が現在の状態より良くなっているか否かを判定する条件である。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態改善閾値以下である割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、正常2(ハンズオフ)から正常1(ノーマル)へ変更する条件th4は、状態改善閾値を0.1mとして、基準値を0.8とすることができる。
【0082】
第1相違量は状態改善条件を満たす場合(ステップS203-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th4を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から正常1(ノーマル)へ変更される。
【0083】
一方、第1相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、第2相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS204)。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態改善閾値以下であることが挙げられる。例えば、正常2(ハンズオフ)から正常1(ノーマル)へ変更する条件th4は、状態改善閾値を0.2mとすることができる。
【0084】
第2相違量は状態改善条件を満たす場合(ステップS204-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th4を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、正常2(ハンズオフ)から正常1(ノーマル)へ変更される。
【0085】
一方、第2相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態は変更なしであると判定して(ステップS205)、一連の処理は終了する。
【0086】
次に、車両10の現在位置の精度の現在の状態が、不調1(ハンズオン)である場合の判定処理について、以下に説明する。
【0087】
まず、判定部232は、第1相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS201)。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態悪化閾値を超えた割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、不調1(ハンズオン)から不調2(TD)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.5mとして、基準値を0.8とすることができる。
【0088】
第1相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS201-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調1(ハンズオン)から不調2(TD)へ変更される。
【0089】
一方、第1相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS201-No)、判定部232は、第2相違量が状態悪化条件を満たすか否かを判定する(ステップS202)。状態悪化条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態悪化閾値以下であることが挙げられる。例えば、不調1(ハンズオン)から不調2(TD)へ変更する条件th3は、状態悪化閾値を0.6mとすることができる。車両10が走行する道路の曲率判定が、基準曲率よりも大きい場合には、基準曲率以下の場合よりも状態悪化閾値を大きくしてもよい。
【0090】
第2相違量が状態悪化条件を満たす場合(ステップS202-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th3を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調1(ハンズオン)から不調2(TD)へ変更される。
【0091】
一方、第2相違量が状態悪化条件を満たさない場合(ステップS202-No)、判定部232は、第1相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS203)。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態改善閾値以下である割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、不調1(ハンズオン)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th5は、状態改善閾値を0.3mとして、基準値を1.0とすることができる。
【0092】
第1相違量が状態改善条件を満たす場合(ステップS203-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th5を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調1(ハンズオン)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。
【0093】
一方、第1相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、第2相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS204)。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態改善閾値以下であることが挙げられる。例えば、不調1(ハンズオン)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th5は、状態改善閾値を0.4mとすることができる。
【0094】
第2相違量は状態改善条件を満たす場合(ステップS204-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th4を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調1(ハンズオン)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。
【0095】
一方、第2相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態は変更なしであると判定して(ステップS205)、一連の処理は終了する。
【0096】
次に、車両10の現在位置の精度の現在の状態が、不調2(TD)である場合の判定処理について、以下に説明する。車両10の現在位置の精度の現在の状態が不調2(TD)である場合、ドライバが制御移行要求を承認するまでの間、判定処理が実行される。
【0097】
まず、判定部232は、第1相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS203)。車両10の現在位置の精度の現在の状態が、正常2(ハンズオフ)である場合、ステップS201及びステップS202の処理は行われない。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第1相違量のうち、第1相違量が状態改善閾値以下である割合が基準値以上であることが挙げられる。例えば、不調2(TD)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th5は、状態改善閾値を0.3mとして、基準値を1.0とすることができる。
【0098】
第1相違量は状態改善条件を満たす場合(ステップS203-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第1相違量が条件th5を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調2(TD)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。
【0099】
一方、第1相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、第2相違量が状態改善条件を満たすか否かを判定する(ステップS204)。状態改善条件として、今回のカメラ撮影時刻と所定の時間(例えば1秒)だけ前の時刻との間に求められた複数の第2相違量のうち、少なくとも1つの第2相違量が状態改善閾値以下であることが挙げられる。例えば、不調2(TD)から正常2(ハンズオフ)へ変更する条件th5は、状態改善閾値を0.4mとすることができる。
【0100】
第2相違量は状態改善条件を満たす場合(ステップS204-Yes)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態を変更して(ステップS206)、一連の処理は終了する。第2相違量が条件th4を満たす場合、車両10の現在位置の精度の状態は、不調2(TD)から正常2(ハンズオフ)へ変更される。
【0101】
一方、第2相違量が状態改善条件を満たさない場合(ステップS203-No)、判定部232は、車両10の現在位置の精度の状態は変更なしであると判定して(ステップS205)、一連の処理は終了する。
【0102】
上述した判定処理では、判定233は、第1相違量又は第2相違量に基づいて、車両10の現在位置の精度の状態を判定していた。判定233は、第1相違量及び第2相違量に基づいて、車両10の現在位置の精度の状態を判定してもよい。この場合、判定233は、第1相違量が状態悪化条件を満し(ステップS201-Yes)且つ第2相違量が状態悪化条件を満す(ステップS202-Yes)場合、現在位置の精度の状態は悪くなったと判定する。また、判定233は、第1相違量が状態改善条件を満し(ステップS203-Yes)且つ第2相違量が状態改善条件を満す(ステップS204-Yes)場合、現在位置の精度の状態は良くなったと判定する。
【0103】
次に、上述された状態悪化条件及び状態改善条件を決定する考え方を、
図9及び
図10を参照しながら以下に説明する。
図9及び
図10は、状態悪化条件及び状態改善条件を決定する考え方を説明する図である。
【0104】
図9に示す例では、車両900は時刻t1~t4における第1推定位置(道路特徴物による推定位置)を示しており、車両901は時刻t1~t4における第2推定位置(デッドレコニングによる推定位置)を示しており、車両902は時刻t1~t4における現在位置(予測フィルタによる推定位置)を示す。時刻t1においてカメラの異常が発生して、車両900が示す第1推定位置は、車両901に示す第2推定位置に対して横方向にδ(1m)だけ移動したとする。このカメラの異常はその後も続いている。車両は一定の速度で走行しているとして、その後の第1推定位置、第2推定位置及び現在位置が、シミュレーションにより求められた。車両902が示す現在位置は、時間の経過と共に車両901に示す第1推定位置に近づいていく。
【0105】
図10は、車両の速度が40km/h、80km/h及び136km/hの場合について、車両902の現在位置の横方向の位置のずれ量を、時間の経過と共に示している。各位置の計算は、100msごとに行われる。
【0106】
車両902の現在位置は、時刻t1(20000ms)から約1秒後(21000ms)には、車両900の第1推定位置の異常によるズレδ(1m)の90%まで移動している。車両902の現在位置は、100m秒で約0.1m横方向に移動し、150m秒で約0.3m横方向に移動し、300m秒で約0.5m横方向に移動している。車両902の現在位置の横方向の位置のずれ量は、車両の速度が40km/h、80km/h及び136km/hの場合についてほぼ同じであった。第1相違量及び第2相違量は、約32m秒ごとに算出可能であるとする。
【0107】
第1相違量の状態悪化条件については、
図10に示す結果に基づいて、条件th1は、状態悪化閾値を0.1mとし基準値を0.5とすること、条件th2は、状態悪化閾値を0.3mとし基準値を0.6とすること、条件th3は、状態悪化閾値を0.5mとし基準値を0.8とすることが考えられる。
【0108】
また、第2相違量の状態悪化条件については、
図10に示す結果に基づいて、条件th1は、状態悪化閾値を0.2mとし、条件th2は、状態悪化閾値を0.4mとし、条件th3は、状態悪化閾値を0.6mとすることが考えられる。
【0109】
また、第1相違量の状態改善条件については、
図10に示す結果に基づいて、条件th4は、状態改善閾値を0.1mとし基準値を0.8とすること、条件th5は、状態改善閾値を0.3mとして基準値を1.0とすることが考えられる。
【0110】
また、第2相違量の状態改善条件については、
図10に示す結果に基づいて、th4は、状態改善閾値を0.2mとし、条件th5は、状態改善閾値を0.4mとすることが考えられる。
【0111】
上述した本実施形態の位置精度判定装置によれば、推定された車両の現在位置の精度の状態を判定できる。
【0112】
本開示では、上述した実施形態の位置精度判定装置、位置精度判定用コンピュータプログラム及び位置精度判定方法は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本開示の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0113】
例えば、上述した実施形態では、判定部は、第1相違量又は第2相違量に基づいて、車両の現在位置の精度の状態を判定していたが、判定部は、第2相違量に基づいて、車両の現在位置の精度の状態を判定してもよい。
【0114】
また、上述した実施形態では、第1推定位置は、カメラ撮影時刻ごとにおける車両の推定位置を表していた。この場合、前回と今回のカメラ撮影時刻との間では、道路特徴物による推定位置を求めることができない。そこで、前回のカメラ撮影時刻における車両の推定位置と、今回のカメラ撮影時刻における車両の推定位置との間の車両の位置を、前回のカメラ撮影時刻における車両の推定位置を始点とするデッドレコニングにより求めて、第1推定位置としてもよい。
【0115】
また、上述した判定処理は一例であり、判定条件は上述したものに限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0116】
1 車両制御システム
2 カメラ
3 測位情報受信機
4 ナビゲーション装置
5 ユーザインターフェース
5a 表示装置
6 車両速度センサ
7 ヨーレートセンサ
10 車両
11 地図情報記憶装置
12 位置推定装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
230 位置推定部
231 算出部
232 判定部
13 物体検出装置
14 走行車線計画装置
15 運転計画装置
16 車両制御装置
17 車内ネットワーク