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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ラジエータファンモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/00 20160101AFI20241126BHJP
   H02P 23/18 20160101ALI20241126BHJP
   H02P 27/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02P6/00
H02P23/18
H02P27/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021209525
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094198
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】坂田 裕樹
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特許第5519072(JP,B1)
【文献】特開平10-290592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00
H02P 23/18
H02P 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、
前記モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、前記検出信号に基づいて、前記モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、
所定時間ごとに出力される前記検出信号の前回値と今回値とに基づいて、前記モータの動作状態に応じて前記モータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、
前記推定ステップでの推定結果に応じて、前記逆トルクの発生を抑制するように前記推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、
前記推定電気角に基づいて、前記モータを駆動制御するための通電波形を生成して、前記通電波形を前記モータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え
前記推定ステップでは、前記今回値がハイ、かつ、前記前回値がローの場合、前記モータが急加速したことで前記検出信号の立上りエッジが早まった前記動作状態である第1急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第1急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を0°に設定するラジエータファンモータ制御装置。
【請求項2】
前記推定ステップでは、前記今回値がロー、かつ、前記前回値がハイの場合、前記モータが急加速したことで前記検出信号の立下りエッジが早まった前記動作状態である第2急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第2急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を180°に設定する請求項に記載のラジエータファンモータ制御装置。
【請求項3】
ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、
前記モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、前記検出信号に基づいて、前記モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、
所定時間ごとに出力される前記検出信号の前回値と今回値とに基づいて、前記モータの動作状態に応じて前記モータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、
前記推定ステップでの推定結果に応じて、前記逆トルクの発生を抑制するように前記推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、
前記推定電気角に基づいて、前記モータを駆動制御するための通電波形を生成して、前記通電波形を前記モータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え
前記推定ステップでは、前記今回値がロー、かつ、前記前回値がハイの場合、前記モータが急加速したことで前記検出信号の立下りエッジが早まった前記動作状態である第2急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第2急加速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を180°に設定するラジエータファンモータ制御装置。
【請求項4】
前記推定ステップでは、前記今回値がハイ、前記前回値がハイ、かつ、前記算出ステップで算出した前記推定電気角が180°を超えている場合、前記モータが急減速したことで前記検出信号の立下りエッジが遅れた前記動作状態である第1急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第1急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を180°に設定する請求項1~のいずれか1項に記載のラジエータファンモータ制御装置。
【請求項5】
ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、
前記モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、前記検出信号に基づいて、前記モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、
所定時間ごとに出力される前記検出信号の前回値と今回値とに基づいて、前記モータの動作状態に応じて前記モータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、
前記推定ステップでの推定結果に応じて、前記逆トルクの発生を抑制するように前記推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、
前記推定電気角に基づいて、前記モータを駆動制御するための通電波形を生成して、前記通電波形を前記モータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え
前記推定ステップでは、前記今回値がハイ、前記前回値がハイ、かつ、前記算出ステップで算出した前記推定電気角が180°を超えている場合、前記モータが急減速したことで前記検出信号の立下りエッジが遅れた前記動作状態である第1急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第1急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を180°に設定するラジエータファンモータ制御装置。
【請求項6】
前記推定ステップでは、前記今回値がロー、前記前回値がロー、かつ、前記算出ステップで算出した前記推定電気角が360°を超えている場合、前記モータが急減速したことで前記検出信号の立上りエッジが遅れた前記動作状態である第2急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第2急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を360°に設定する請求項1~5のいずれか1項に記載のラジエータファンモータ制御装置。
【請求項7】
ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、
前記モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、前記検出信号に基づいて、前記モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、
所定時間ごとに出力される前記検出信号の前回値と今回値とに基づいて、前記モータの動作状態に応じて前記モータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、
前記推定ステップでの推定結果に応じて、前記逆トルクの発生を抑制するように前記推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、
前記推定電気角に基づいて、前記モータを駆動制御するための通電波形を生成して、前記通電波形を前記モータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え
前記推定ステップでは、前記今回値がロー、前記前回値がロー、かつ、前記算出ステップで算出した前記推定電気角が360°を超えている場合、前記モータが急減速したことで前記検出信号の立上りエッジが遅れた前記動作状態である第2急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定し、
前記設定ステップでは、前記第2急減速状態で、前記逆トルクが発生する可能性があると推定すると、前記推定電気角を360°に設定するラジエータファンモータ制御装置。
【請求項8】
前記モータは、三相モータであり、
前記算出ステップでは、前記検出信号として三相のうちの一相分のみに基づいて前記算出を行い、
前記推定ステップでは、前記検出信号として三相のうちの一相分のみに基づいて前記推定を行う請求項1~7のいずれか1項に記載のラジエータファンモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジエータファンモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたモータ制御装置がある。モータ制御装置は、ラジエータファンの駆動に用いられるモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-67079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラジエータファンモータは、ホールICを搭載したブラシレスモータを用いることが考えられる。この場合、ラジエータファンモータ制御装置は、ホールICの出力をもとに、エッジからの経過時間から電気角を推定し、この推定電気角からブラシレスモータへの通電波形を算出する。
【0005】
しかしながら、推定電気角は、ブラシレスモータの急加速や急減速が起こった場合に、実電気角との差異が大きくなるこがある。この場合、推定電気角から算出した通電波形は、推定電気角と実電気角との差異がない状態の通電波形と逆方向となる。これによって、ブラシレスモータには、逆トルクが発生し、この逆トルクによってがたつきが生じるという問題がある。
【0006】
開示される一つの目的は、逆トルクの発生を抑制できるラジエータファンモータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されたラジエータファンモータ制御装置は、
ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するものであって、
モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、検出信号に基づいて、モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、
所定時間ごとに出力される検出信号の前回値と今回値とに基づいて、モータの動作状態に応じてモータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、
推定ステップでの推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、
推定電気角に基づいて、モータを駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え
推定ステップでは、今回値がハイ、かつ、前回値がローの場合、モータが急加速したことで検出信号の立上りエッジが早まった動作状態である第1急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定し、
設定ステップでは、第1急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角を0°に設定することを特徴とする。
【0008】
このように、ラジエータファンモータ制御装置は、所定時間ごとに出力される検出信号の前回値と今回値とに基づいて、モータの動作状態に応じてモータに逆トルクが発生する可能性を推定する。そして、ラジエータファンモータ制御装置は、推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角を設定する。このため、ラジエータファンモータ制御装置は、逆トルクの発生を抑制できる。また、ここに開示されたラジエータファンモータ制御装置は、ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、検出信号に基づいて、モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、所定時間ごとに出力される検出信号の前回値と今回値とに基づいて、モータの動作状態に応じてモータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、推定ステップでの推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、推定電気角に基づいて、モータを駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え、推定ステップでは、今回値がロー、かつ、前回値がハイの場合、モータが急加速したことで検出信号の立下りエッジが早まった動作状態である第2急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定し、設定ステップでは、第2急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角を180°に設定することを特徴とする。また、ここに開示されたラジエータファンモータ制御装置は、ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、検出信号に基づいて、モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、所定時間ごとに出力される検出信号の前回値と今回値とに基づいて、モータの動作状態に応じてモータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、推定ステップでの推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、推定電気角に基づいて、モータを駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え、推定ステップでは、今回値がハイ、前回値がハイ、かつ、算出ステップで算出した推定電気角が180°を超えている場合、モータが急減速したことで検出信号の立下りエッジが遅れた動作状態である第1急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定し、設定ステップでは、第1急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角を180°に設定することを特徴とする。また、ここに開示されたラジエータファンモータ制御装置は、ラジエータファンを回転させるモータ(30)を駆動制御するラジエータファンモータ制御装置であって、モータのロータ回転位置を検出するホールセンサの検出信号を取得し、検出信号に基づいて、モータの電気角の推定値である推定電気角を算出する算出ステップ(S10)と、所定時間ごとに出力される検出信号の前回値と今回値とに基づいて、モータの動作状態に応じてモータに逆トルクが発生する可能性を推定する推定ステップ(S12,S14,S18,S22,S26)と、推定ステップでの推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角を設定する設定ステップ(S16,S20,S24,S28)と、推定電気角に基づいて、モータを駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータに出力する出力ステップ(S32,S34)と、を備え、推定ステップでは、今回値がロー、前回値がロー、かつ、算出ステップで算出した推定電気角が360°を超えている場合、モータが急減速したことで検出信号の立上りエッジが遅れた動作状態である第2急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定し、設定ステップでは、第2急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角を360°に設定することを特徴とする。
【0009】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態におけるラジエータファンモータ制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施形態におけるラジエータファンモータ制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
図3】実施形態における急減速時のラジエータファンモータ制御装置の処理動作を示すタイムチャートである。
図4】実施形態における急加速時のラジエータファンモータ制御装置の処理動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。本実施形態では、車両に搭載可能に構成されたラジエータファンモータ制御装置を採用する。
【0012】
ラジエータファンモータ制御装置は、図示を省略するエンジン、エンジンの冷却を行う熱交換器であるラジエータ、ラジエータを冷却するためのファンなどとともに車両に搭載される。ラジエータは、冷媒を冷却してエンジンに供給する。ファンは、後ほど説明するモータ30と一体的に設けられている。ファンは、モータ30が駆動することで回転し、ラジエータに空気を供給する。ファンは、ラジエータに空気を供給することで、ラジエータを冷却するためのラジエータファンである。
【0013】
ラジエータファンモータ制御装置は、モータ30を駆動制御して、ファンを回転させるものである。本実施形態では、ラジエータファンモータ制御装置をマイコン10に適用した例を採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されず、ラジエータファンモータ制御装置を制御装置100に適用することもできる。
【0014】
<構成>
図1を用いて、制御装置100、および制御装置100の周辺構成に関して説明する。制御装置100は、少なくともマイコン10を備えている。しかしながら、本実施形態では、一例として、マイコン10に加えて、インバータ回路20、分圧回路50、電流センサ60、チョークコイル71などを備えた制御装置100を採用している。制御装置100は、これらの構成要素に加えて、逆接防止FETなどを備えていてもよい。
【0015】
制御装置100は、モータ30、バッテリ200、および上位ECU300と電気的に接続されている。制御装置100は、モータ30と一体的に構成されていてもよい。制御装置100とモータ30とが一体化された構造体は、モータユニットともいえる。モータユニットは、例えば、制御装置100を収容するケースに、モータ30が取り付けられている。しかしながら、制御装置100は、これに限定されず、モータ30と別体に設けられていてもよい。
【0016】
<インバータ回路>
インバータ回路20は、モータ30のステータ31のコイルに供給する電力を生成する。例えば、スイッチング素子21A,21DはU相のコイル31Uに、スイッチング素子21B,21EはV相のコイル31Vに、スイッチング素子21C,21FはW相のコイル31Wに、各々供給する電力を生成する。
【0017】
スイッチング素子21A,21B,21Cの各々のドレインは、ノイズ除去用のチョークコイル71を介して車載のバッテリ200の正極に接続されている。また、スイッチング素子21D,21E,21Fの各々のソースは、バッテリ200の負極に接続されている。なお、逆接防止FETは、スイッチング素子21D,21E,21Fの各々のソースと、バッテリ200の負極との間に接続されていてもよい。
【0018】
<モータ>
モータ30は、ステータ31、ロータマグネット32などを備えている。また、モータ30は、これらの他に、ロータ、シャフトなどを備えている。モータ30は、ブラシレス三相モータである。
【0019】
ステータ31は、コア部材にコイル31U,31V,31Wが巻かれた電磁石であって、U相,V相,W相の三相を構成している。ステータ31のU相,V相,W相の各々は、制御装置100の制御により、電磁石で発生する磁界の極性が切り替えられることで回転磁界を発生する。
【0020】
ロータマグネット32は、ロータの内側に設けられている。ロータマグネット32は、ステータ31で生じた回転磁界によりロータを回転させる。ロータには、シャフトが設けられている。シャフトは、ロータと一体になって回転する。また、シャフトは、ファンに連結されている。よって、モータ30は、ロータが回転することで、シャフトを介してファンを回転させる。
【0021】
モータ30は、後ほど説明するマイコン10によって推定電気角θに基づいて駆動制御される。そして、モータ30は、無負荷時や負荷が小さい場合に急加速や急減速が起こると、実電気角と推定電気角θの差異が大きくなる。これによって、モータ30は、モータ電流の向きが理想と逆方向となる場合がある。モータ30は、モータ電流が逆方向になることで逆トルクが発生する可能性がある。
【0022】
なお、無負荷状態や負荷が小さい状態は、ファンに対する空気抵抗が小さい場合に起こりやすい。車両は、イグニッションスイッチがオンになった直後など停車している場合、ファンに走行風が印加されない。このため、ファンに対する空気抵抗が比較的小さい。また、制御装置100にモータ30が接続された構造体の検査時や製造時は、ファンが取り付けられていないこともあるため、無負荷状態や負荷が小さい状態が起こりやすい。一方、急減速や急加速は、上位ECU300からの指令信号(回転数)と、現在のモータ30の回転数との差が大きい場合に起こりやすい。
【0023】
<検出部>
ホールIC41は、各相に対応したホール素子を有している。ホールIC41は、シャフトと同軸に設けられたロータマグネット32の磁界をロータの回転位置を示す磁界として検出する。ホールIC41は、検出した検出信号(出力信号、ホール信号)をマイコン10に出力する。ホールIC41は、ホール信号として、図3に示すような、ハイとロー(HIとLO)を繰り返す矩形波を出力する。ホールIC41は、ホールセンサに相当する。
【0024】
分圧回路50は、サーミスタ51Aと抵抗51Bとを有している。サーミスタ51Aは、回路の基板の温度に応じて抵抗値が変化するので、分圧回路50が出力する信号の電圧は基板の温度に応じて変化する。電流センサ60は、シャント抵抗60Aとシャント抵抗60Aの両端の電位差を増幅するアンプ60Bとを有している。
【0025】
<マイコン>
マイコン10は、CPU(コア)11、記憶装置12などを備えている。さらに、マイコン10は、CPU11、記憶装置12に加えて、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えていてもよい。マイコン10は、マイクロコンピュータともいえる。マイコン10は、インバータ回路20、ホールIC41、分圧回路50、電流センサ60、バッテリ200、上位ECU300と電気的に接続されている。マイコン10は、バッテリ200から電力供給されて動作可能な状態となる。また、マイコン10は、上位ECU300からの回転を指令する指令信号に応じて処理動作を行う。指令信号は、例えば、モータ30の回転数を示す信号などを採用できる。
【0026】
記憶装置12は、揮発性メモリ、不揮発性メモリを含んでいる。不揮発性メモリは、CPU11によって実行される種々のプログラムなどを格納している。揮発性メモリは、CPU11の演算結果などの各種データが書き換え可能に記憶される。演算結果は、後ほど説明する推定電気角θなどが含まれる。
【0027】
CPU11は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、揮発性メモリに記憶されたデータや入出力インターフェースで取得した信号を用いて演算を実行する。マイコン10は、CPU11がプログラムを実行することで各種処理動作を行う。また、マイコン10は、処理動作の一つとして、モータ30を駆動制御する。この場合、マイコン10は、モータ30を一方向のみに回転させる。なお、モータ30の回転は、モータ30におけるロータの回転と同意である。同様に、モータ30の回転角は、ロータの回転角と同意である。
【0028】
なお、揮発性メモリに記憶されたデータは、ホール信号などである。つまり、揮発性メモリには、HIを示すホール信号およびLOを示すホール信号が記憶される。本実施形態では、三相のうちの一相のホール信号(U相ホール信号)のみを揮発性メモリに記憶する。入出力インターフェースで取得した信号は、ホール信号などである。
【0029】
マイコン10は、ホールIC41から出力されたホール信号に基づいてロータの回転速度および位置(回転位置)を取得する。なお、ロータの回転速度や回転位置は、モータ30の回転速度や回転位置ともいえる。
【0030】
また、マイコン10は、ホール信号に基づいて、モータ30の電気角の推定値である推定電気角θを算出する。このとき、マイコン10は、ホール信号としてU相ホール信号のみに基づいて推定電気角θを算出する。そして、マイコン10は、推定電気角θに基づいて、モータ30を駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータ30に出力する。また、マイコン10は、今回取得したホール信号ではなく、ホール信号の前回周期の値に基づいて、推定電気角θを算出する。この点に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0031】
なお、マイコン10は、分圧回路50から出力される信号の電圧の変化に基づいて、基板の温度を算出してもよい。本実施形態では、便宜上、分圧回路50から出力される信号をサーミスタ51Aの検知結果に基づく信号とする。また、本実施形態では、サーミスタ51Aの検知結果に基づいて算出された基板の温度を、サーミスタ51Aが検知した基板の温度とする。マイコン10は、アンプ60Bが出力した信号に基づいて、インバータ回路20の電流値を算出してもよい。
【0032】
マイコン10が提供する手段および/または機能は、実体的な記憶装置12に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン10を採用している制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
【0033】
<処理動作>
マイコン10は、モータ30における各相のコイル31U,31V,31Wへの通電を切り替えるためにインバータ回路20をスイッチング制御(オンオフ制御)する。マイコン10は、U相のコイル31Uへの通電を切り替えるために、スイッチング素子21A,21Dのスイッチング制御を行う。同様に、マイコン10は、V相のコイル31Vへの通電を切り替えるために、スイッチング素子21B,21Eのスイッチング制御を行う。また、マイコン10は、W相のコイル31Wへの通電を切り替えるために、スイッチング素子21C,21Fのスイッチング制御を行う。
【0034】
マイコン10は、図3図4に示すように、上位ECU300からの指令信号に応じて、推定電気角θを用いてモータ30を駆動制御するための通電波形を生成して、通電波形をモータ30に出力する。また、マイコン10は、モータ30における各相の相電圧を正弦波パルス幅変調方式(以下、正弦波PWM)にて制御する。そのために、マイコン10は、インバータ回路20の各スイッチング素子におけるゲート信号としてのPWM制御信号を生成する。よって、マイコン10は、通電波形となるように、インバータ回路20の各スイッチング素子をPWM制御するといえる。
【0035】
ここで、図2図3図4を用いて、モータ30への通電処理に関して説明する。マイコン10は、ある時間周期に基づいて、図2に示すフローチャートを実行する。つまり、マイコン10は、所定時間ごとに、図2に示すフローチャートを実行する。なお、図2のステップS12~S30に関しては、マイコン10は、バッテリ200から電力供給された起動時に1回だけ実行してもよい。この場合、マイコン10は、所定時間ごとに、ステップS10、S32、S34を行う。
【0036】
図3のタイムチャートは、タイミングt0~t2まではモータ30に加速も減速も生じておらず、タイミングt2よりも後に急減速が生じている状態を示している。図4のタイムチャートは、タイミングt10~t12に達する前まではモータ30に加速も減速も生じておらず、タイミングt12以降に急加速が生じている状態を示している。
【0037】
なお、図3図4の電気角は、実線で実電気角、破線で対策無の推定電気角、二点鎖線で対策有の推定電気角を示している。太い横線は、上限ガード値を示している。なお、対策有とは、後ほど説明する推定電気角θのガードやリセットを行った場合の推定電気角θや通電波形である。対策無とは、算出したままの推定電気角θや通電波形である。理想の通電波形は、推定電気角と実電気角との差異がない状態の通電波形である。
【0038】
また、図3図4では、斜めハッチングで逆トルクが発生していることを示している。図3図4では、ドットハッチングで逆トルクが発生しない領域を示している。
【0039】
ステップS10では、推定電気角θを算出する(算出ステップ)。マイコン10は、ホール信号として三相のうちの一相分(U相ホール信号)のみに基づいてステップS10を行う。マイコン10は、(Tup/Told)×360°を演算することで推定電気角θを算出する。ここで算出した推定電気角θは、今回の推定電気角θである。Tupは、立上りエッジからの経過時間である。Toldは、前回のホール信号の周期である。ここでの周期は、U相ホール信号の周期である。なお、立上りエッジは、アップエッジともいえる。一方、後ほど説明する立下りエッジは、ダウンエッジともいえる。
【0040】
ステップS12では、U相ホール信号がHIであるか否かを判定する(推定ステップ)。マイコン10は、今回のU相ホール信号がHIであると判定するとステップS14へ進み、今回のU相ホール信号がHIであると判定しないとステップS22へ進む。マイコン10は、モータ30(ロータ)の実位置を確認するためにステップS12と行う。YES判定だった場合、実位置は、0°≦θ<180°とみなす。NOだった場合、実位置は、180°≦θ<360°とみなす。今回のU相ホール信号は、今回値に相当する。
【0041】
ステップS14では、前回U相ホール信号がLOであるか否かを判定する(推定ステップ)。マイコン10は、記憶装置12に記憶されている前回のU相ホール信号がLOであるか否かを判定する。前回のU相ホール信号は、前回値に相当する。
【0042】
マイコン10は、前回のU相ホール信号がLOであると判定した場合、ステップS16へ進む。マイコン10は、今回のU相ホール信号がHIであるため、U相ホール信号の立上りエッジが出力されたことを検出する。この場合、マイコン10は、モータ30(ロータ)が急加速したことでホール信号の立上りエッジが早まった動作状態である第1急加速状態で、モータ30に逆トルクが発生する可能性があると推定する。しかしながら、これは、あくまでも可能性を推定しているにすぎない。よって、実際は、第1急加速状態でない場合や、モータ30に逆トルクが発生しない場合もありうる。以下で説明する推定結果もどうように、必ず推定した状態になるとは限らない。
【0043】
一方、マイコン10は、前回のU相ホール信号がLOであると判定しなかった場合、ステップS18へ進む。マイコン10は、今回のU相ホール信号がHIであるため、U相ホール信号のHIが継続しているとみなす。
【0044】
このように、マイコン10は、所定時間ごとに出力されるホール信号の前回値と今回値とに基づいて、モータ30の動作状態に応じてモータ30に逆トルクが発生する可能性を推定する(推定ステップ)。マイコン10は、以下に説明する推定ステップでも同様に、ホール信号の前回値と今回値とに基づいて、逆トルクが発生する可能性を推定する。
【0045】
マイコン10は、ホール信号として三相のうちの一相分のみに基づいてステップS12を行う。言い換えると、マイコン10は、ホール信号としてU相ホール信号のみに基づいて推定ステップを行う。その他の推定ステップも同様である。なお、マイコン10は、U相ホール信号の立上りエッジを検出するためにステップS12,S14を行う。また、マイコン10は、モータ30の動作状態に応じてモータ30に逆トルクが発生する可能性があるか否かを判定するともいえる。
【0046】
ステップS16では、推定電気角θを0°に設定する(設定ステップ)。マイコン10は、第1急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角θを0°に設定する。つまり、マイコン10は、ステップS10で算出した推定電気角θにかえて、推定電気角θとして0°を採用する。
【0047】
図4のタイミングt14に示すように、マイコン10は、立上りエッジが前回周期よりも早く来ているため、推定電気角θを0°にリセットする。なお、マイコン10は、図4のタイミングt10でも同様に推定電気角θを0°にリセットする。しかしながら、タイミングt10では、立上りエッジが前回周期と同様のタイミングできているため、実電気角とリセット後の推定電気角θとが同じとなっている。このように、マイコン10は、ステップS12、S14での推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角θを設定する。
【0048】
ステップS18では、推定電気角θ>180°であるか否かを判定する(推定ステップ)。マイコン10は、推定電気角θが180°であると判定した場合、ステップS20へ進み、推定電気角θが180°であると判定しなかった場合、ステップS30へ進む。ここでの推定電気角θは、ステップS10で算出した推定電気角θである。
【0049】
マイコン10は、ステップS14でNO判定の場合、前回のU相ホール信号がHI、かつ、今回のU相ホール信号がHIと判定したことになる。つまり、マイコン10は、U相ホール信号がHIで継続していると判定する。そして、マイコン10は、ステップS18でYES判定の場合、推定電気角θが180°を超えていることになる。この場合、マイコン10は、モータ30が急減速したことでホール信号の立下りエッジが遅れた動作状態である第1急減速状態で、モータ30に逆トルクが発生する可能性があると推定する。ホール信号の立下りエッジが遅れた動作状態は、ホール信号の前回周期では来るはずのタイミングで立下りエッジが来ない状態である。
【0050】
ステップS20では、推定電気角θを180°に設定する(設定ステップ)。マイコン10は、第1急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角θを上限ガード値の一つである180°に設定する。言い換えると、マイコン10は、推定電気角θを上限ガード値である180°でガードする。また、マイコン10は、180°を超えないように推定電気角θを設定する。つまり、マイコン10は、ステップS10で算出した推定電気角θにかえて、推定電気角θを180°でガードする。
【0051】
急減速が発生していなければ、図3のタイミングt3に示すように、立下りエッジがくるはずである。しかしながら、図3のタイミングt4に示すように、マイコン10は、第1急減速状態で、立下りエッジが前回周期よりも遅く来ているため、推定電気角θを180°でガードする。よって、図3の二点鎖線で示すように、推定電気角θは、タイミングt3からタイミングt4の期間で180°となる。このように、マイコン10は、ステップS12、S14、S18での推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角θを設定する。なお、対策無の場合、図3の破線で示すように、タイミングt3からタイミングt4の期間でも推定電気角θは大きくなる。
【0052】
ステップS22では、前回U相ホール信号がHIであるか否かを判定する(推定ステップ)。マイコン10は、記憶装置12に記憶されている前回のU相ホール信号がHIであるか否かを判定する。
【0053】
マイコン10は、前回のU相ホール信号がHIであると判定した場合、ステップS24へ進む。マイコン10は、今回のU相ホール信号がLOであるため、U相ホール信号の立下りエッジが出力されたことを検出する。この場合、マイコン10は、モータ30(ロータ)が急加速したことでホール信号の立下りエッジが早まった動作状態である第2急加速状態で、モータ30に逆トルクが発生する可能性があると推定する。
【0054】
一方、マイコン10は、前回のU相ホール信号がHIであると判定しなかった場合、ステップS26へ進む。マイコン10は、今回のU相ホール信号がLOであるため、U相ホール信号のLOが継続しているとみなす。
【0055】
なお、マイコン10は、U相ホール信号の立下りエッジを検出するためにステップS22,S24を行う。また、マイコン10は、モータ30の動作状態に応じてモータ30に逆トルクが発生する可能性があるか否かを判定するともいえる。
【0056】
ステップS24では、推定電気角θを180°に設定する(設定ステップ)。マイコン10は、第2急加速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角θを180°に設定する。つまり、マイコン10は、ステップS10で算出した推定電気角θにかえて、推定電気角θを180°を採用する。
【0057】
図4のタイミングt13に示すように、マイコン10は、立下りエッジが前回周期よりも早く来ているため、推定電気角θを180°にリセットする。なお、マイコン10は、図4のタイミングt11でも同様に推定電気角θを180°にリセットする。しかしながら、タイミングt11では、立下りエッジが前回周期と同様のタイミングできているため、実電気角とリセット後の推定電気角θとが同じとなっている。マイコン10は、ステップS22、S24での推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角θを設定する。
【0058】
ステップS26では、推定電気角θ>360°であるか否かを判定する(推定ステップ)。マイコン10は、推定電気角θが360°であると判定した場合、ステップS28へ進み、推定電気角θが360°であると判定しなかった場合、ステップS30へ進む。ここでの推定電気角θは、ステップS10で算出した推定電気角θである。
【0059】
マイコン10は、ステップS22でNO判定の場合、前回のU相ホール信号がLO、かつ、今回のU相ホール信号がLOと判定したことになる。つまり、マイコン10は、U相ホール信号がLOで継続していると判定する。そして、マイコン10は、ステップS26でYES判定の場合、推定電気角θが360°を超えていることになる。この場合、マイコン10は、モータ30が急減速したことでホール信号の立上りエッジが遅れた動作状態である第2急減速状態で、モータ30に逆トルクが発生する可能性があると推定する。ホール信号の立上りエッジが遅れた動作状態は、ホール信号の前回周期では来るはずのタイミングで立上りエッジが来ない状態である。
【0060】
ステップS28では、推定電気角θを360°に設定する(設定ステップ)。マイコン10は、第2急減速状態で、逆トルクが発生する可能性があると推定すると、推定電気角θを360°に設定する。言い換えると、マイコン10は、推定電気角θを上限ガード値である360°でガードする。また、マイコン10は、360°を超えないように推定電気角θを設定する。つまり、マイコン10は、ステップS10で算出した推定電気角θにかえて、推定電気角θを360°でガードする。
【0061】
急減速が発生していなければ、図3のタイミングt5に示すように、立上りエッジがくるはずである。しかしながら、図3のタイミングt6に示すように、マイコン10は、第2急減速状態で、立上りエッジが前回周期よりも遅く来ているため、推定電気角θを上限ガード値の一つである360°でガードする。よって、図3の二点鎖線で示すように、推定電気角θは、タイミングt5からタイミングt6の期間で360°となる。このように、マイコン10は、ステップS12、S22、S26での推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角θを設定する。なお、対策無の場合、図3の破線で示すように、タイミングt5からタイミングt6の期間でも推定電気角θは大きくなる。
【0062】
ステップS30では、U相ホール信号を記憶する。マイコン10は、次のタイミングで用いるために、U相ホール信号を記憶装置12に記憶する。
【0063】
ステップS32では、推定電気角θに基づき通電波形を生成する(出力ステップ)。そして、ステップS34では、通電波形をモータ30に出力する(出力ステップ)。このように、マイコン10は、推定電気角θに基づいて、モータ30を駆動制御するための通電波形を生成して、生成した通電波形をモータ30に出力する。
【0064】
<効果>
このように、マイコン10は、所定時間ごとに出力されるホール信号の前回値と今回値とに基づいて、モータ30の動作状態に応じてモータ30に逆トルクが発生する可能性を推定する。そして、マイコン10は、推定結果に応じて、逆トルクの発生を抑制するように推定電気角θを設定する。このため、マイコン10は、逆トルクの発生を抑制できる。つまり、マイコン10は、モータ30におけるロータが急加速した場合や、急減速した場合であっても、ロータに逆トルクが発生することを抑制できる。
【0065】
しかしながら、マイコン10は、逆トルクの発生を完全に防止するものではない。図3図4の斜めに示すように、マイコン10が上記のような処理動作を行っても、一部で逆トルクが発生する。つまり、マイコン10は、推定電気角θのガードやリセットを行わない場合よりも逆トルクが発生することを抑制できることを目的としている。これによって、マイコン10は、車両におけるイグニッションスイッチオン時など、モータ30の駆動制御を開始した際に、逆トルクが発生することを抑制できる。これによって、マイコン10は、逆トルクが発生して、モータ30の駆動制御が開始できなくなることを抑制できる。
【0066】
また、マイコン10は、ホール信号として、三相のうちの一相分のホール信号のみを用いて逆トルクの発生を抑制している。このため、マイコン10は、三相分のホール信号を用いる場合よりも処理を簡素化できる。
【0067】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0068】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0069】
10…マイコン、11…CPU、12…記憶装置、20…インバータ回路、21A~21F…スイッチング素子、30…モータ、31…ステータ、31U,31V,31W…コイル、32…ロータマグネット、40…ホールIC、50…分圧回路、51A…サーミスタ、51B…抵抗、60…電流センサ、60A…シャント抵抗、60B…アンプ、71…チョークコイル、100…制御装置、200…バッテリ、300…上位ECU
図1
図2
図3
図4