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特許7593323ペプチドリンカーを有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ペプチドリンカーを有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/323 20060101AFI20241126BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241126BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20241126BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C08G65/323
A61K47/68
C07K4/00
C07K16/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021549023
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036195
(87)【国際公開番号】W WO2021060439
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019176066
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】松野 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181059(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176875(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/108463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【化1】
(式(1)中、
X1およびY1はそれぞれ生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X1が含む前記官能基と原子団Y1が含む前記官能基とは互いに異なる;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~72の整数であり;
A1は-L1-(CH2)m1-L2-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-、アミド結合、ウレタン結合、2級アミノ基または単結合を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
B1は-CH2-L3-、-CH2-L3-(CH2)m3-L4-または-CH2-L3-(CH2)m3-L4-(CH2)m4-を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
Wは2~4残基のオリゴペプチドであり;
ZはペプチドのC末端に結合する二官能性パラ-アミノベンジルアルコール基を有するスペーサーであり;
a1およびa2は、a1=1のときa2=0であり、a1=0のときa2=1であり;
bは0又は1であり;
C1は-L5-(CH2)m5-、-L5-(CH2)m5-L6-(CH2)m6-、アミド結合または単結合を表し、m5およびm6はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
L1~L6はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基、カルボニル基または単結合を表す。)
【請求項2】
Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がシステインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドである、請求項1記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【請求項3】
Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がアラニン、グリシン、シトルリン、プロリン、セリン、アスパラギンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドである、請求項1記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【請求項4】
WがC末端のアミノ酸がグリシンであるオリゴペプチドである、請求項1記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【請求項5】
Wがジペプチドである、請求項1記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【請求項6】
式(1)におけるX1およびY1が、それぞれ独立して式(a)、式(b1)、式(b2)、式(c)、式(d1)、式(d2)、式(e)、式(f)、式(g)、式(h)、式(i)、式(j)、式(k)、式(l)、式(m)、式(n)および式(o)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【化2】
(式(d1)、(d2)中、R2は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基であり;式(e)中、R3は塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択されるハロゲン原子であり;および式(l)中、R4は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基である。)
【請求項7】
式(2)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを含んで成る抗体-薬物複合体。
【化3】
(式(2)中、
X2とY2との一方が抗体であり、他方が薬物であり;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~72の整数であり;
A2は-L1-(CH2)m1-L7-、-L1-(CH2)m1-L8-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-L8-または-L8-を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
B2は-CH2-L9-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L11-、-CH2-L12-、-CH2-L9-(CH2)m3-L12-または-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L12-を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
L1およびL2はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基または単結合を表し;
L7、L9、L10およびL11はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基またはカルボニル基を表し;
L8およびL12はアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基または単結合を表し;
Wは2~4残基のオリゴペプチドであり;
ZはペプチドのC末端に結合する二官能性パラ-アミノベンジルアルコール基を有するスペーサーであり;
a3およびa4は、X2が薬物のとき、a3=1かつa4=0であり、Y2が薬物のとき、a3=0かつa4=1であり;
bは0又は1であり;および
C2はアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基を表す。)
【請求項8】
Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がシステインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドである、請求項7記載の抗体-薬物複合体。
【請求項9】
Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がアラニン、グリシン、シトルリン、プロリン、セリン、アスパラギンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドである、請求項7記載の抗体-薬物複合体。
【請求項10】
WがC末端のアミノ酸がグリシンであるオリゴペプチドである、請求項7記載の抗体-薬物複合体。
【請求項11】
Wがジペプチドである、請求項7記載の抗体-薬物複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドリンカー、および二つの異なる化学反応可能な官能基を有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールに関する。より詳しくは、生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸および低分子薬物などの生体機能性分子、ドラッグデリバリーシステムにおける薬物キャリア、または診断用材料や医用デバイスなどの修飾に用いられ、特に抗体医薬の修飾に有用である、ペプチドリンカー、および二つの異なる化学反応可能な官能基を有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールに関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate; ADC)は、抗体に薬物を結合させ、抗体の抗原特異性を利用して薬剤を疾患部位に能動的に運搬することを目的とした抗体医薬であり、近年、ガン治療の分野で最も急速に成長している技術の一つである。ADCは抗体、薬物、そして抗体と薬物を結合させるリンカーの各部分から構成される。
【0003】
ADCに用いられる薬物は疎水性のものが多く、これら疎水性薬物を抗体に複数結合してADCを調製すると、薬物の疎水性に起因する凝集の発生や抗体の血中安定性の低下が問題となる。よって、抗体一つあたりに搭載可能な薬物の数に制約が生じ、結果としてADCの薬効が十分に得られない場合がある。
【0004】
この課題に対して検討されている解決方法の一つが、親水性リンカーの利用である。親水性リンカーとしてポリエチレングリコール、親水性ペプチド、糖鎖等が用いられており、特にポリエチレングリコールは抗原性が低く、生体適合性が高いことから、現在、臨床試験および前臨床試験段階にある複数のADCに採用されている。
【0005】
ADC分野では、ADCの均一性を保証し、精製、分析および医薬品承認申請を簡便にすることを目的として、特定のエチレングリコール鎖長を有する成分が90%以上含まれる化合物が使用される。このような化合物は、単分散ポリエチレングリコールと呼称される。
【0006】
単分散ポリエチレングリコールをADCのリンカーとして用いる場合、抗体と薬物を区別して結合させる必要があるため、二つの異なる化学反応可能な官能基を有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールが利用される。一般に、単分散ポリエチレングリコール鎖の両末端に互いに異なる化学反応可能な官能基を有する化合物を用いてADCが調製される。
【0007】
ところが近年、単分散ポリエチレングリコールを抗体と薬物とを繋ぐリンカー主鎖として用いるのではなく、抗体と薬物とを繋ぐ分岐リンカーに側鎖として単分散ポリエチレングリコールを導入したADCが報告されている。
【0008】
非特許文献1では、抗体と薬物とを繋ぐリンカー主鎖として単分散ポリエチレングリコールを用いたADC、および抗体と薬物とを繋ぐ分岐リンカーに側鎖として単分散ポリエチレングリコールを用いたADCの薬物動態および治療効果を比較しており、後者の方が薬物の疎水性を遮蔽する(masking)効果が高く、優れた薬物動態および治療効果を示すことが報告されている。
【0009】
また、特許文献1および特許文献2では、分岐リンカーの側鎖として単分散ポリエチレングリコールを有する様々なタイプのADC、およびこれらを調製するための中間体が開示されている。
【0010】
また、特許文献3では、四分岐骨格で4級炭素原子に2本の単分散ポリエチレングリコールが結合し、分岐のうち2つの末端に二種類の官能基を有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール、およびこれを用いたADCが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2015/057699号パンフレット
【文献】国際公開第2016/063006号パンフレット
【文献】国際公開第2018/181059号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Nature Biotechnology, 2015, 33, 733-735
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1および特許文献2では、分岐リンカーの側鎖に二本以上の単分散ポリエチレングリコールを有するADCも開示されている。しかし、それぞれの単分散ポリエチレングリコール側鎖の結合位置が離れており、ポリエチレングリコール鎖を複数本有する分岐型ポリエチレングリコールの特徴である「アンブレラ様(umbrella-like)」構造「Biomaterials 2001, 22(5), 405-417」による疎水性薬物の遮蔽効果が小さく、単分散ポリエチレングリコール側鎖を複数本有する利点を有効に活用できない。
【0014】
また、非特許文献1および特許文献3では、分岐リンカーの側鎖に単分散ポリエチレングリコールを有する分岐型単分散ポリエチレングリコール、およびこれを抗体と薬物の結合に用いたADCが開示されている。しかし、このADCは細胞内へ取り込まれた後、抗体は細胞内の酵素によって分解されるが、薬物に当該単分散ポリエチレングリコールが結合した状態となり、薬物の活性が低下してしまう恐れがあるので、好ましくない。
【0015】
本発明は、抗体及び薬物がペプチドリンカー及び単分散ポリエチレングリコール側鎖を有するリンカーで連結された、抗体-薬物複合体に関する。即ち、本発明の課題は、細胞内の酵素によりペプチドリンカーが分解して薬物を徐放し、かつ薬物の疎水性を効果的に遮蔽する近接した二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖を有するヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール、およびこれを用いて抗体と薬物を結合した抗体-薬物複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、細胞内の酵素により分解するペプチドリンカーを有し、かつ二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖が近接して結合するヘテロ二官能性化合物であるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール、およびこれを用いて抗体と薬物を結合した抗体-薬物複合体を開発した。
【0017】
さらに、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖が分岐部分の4級炭素原子に安定なエーテル結合で結合しているため、当該ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの構造の化学変換プロセスにおいて、一本鎖の単分散ポリエチレングリコールに分解し難いという特徴を有する。
【0018】
また、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、細胞内の酵素により分解されるペプチドリンカーを有しているため、薬物を細胞内で効果的に徐放することができ、細胞内での薬物の活性に影響を与えないという特徴を有する。
【0019】
即ち、本発明は以下のものである。
[1] 式(1)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0020】
【化1】
【0021】
(式(1)中、
X1およびY1はそれぞれ生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X1が含む前記官能基と原子団Y1が含む前記官能基とは互いに異なる;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~72の整数であり;
A1は-L1-(CH2)m1-L2-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-、アミド結合、ウレタン結合、2級アミノ基または単結合を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
B1は-CH2-L3-、-CH2-L3-(CH2)m3-L4-または-CH2-L3-(CH2)m3-L4-(CH2)m4-を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
Wは2~4残基のオリゴペプチドであり;
ZはペプチドのC末端に結合する二官能性パラ-アミノベンジルアルコール基を有するスペーサーであり;
a1およびa2は、a1=1のときa2=0であり、a1=0のときa2=1であり;
bは0又は1であり;
C1は-L5-(CH2)m5-、-L5-(CH2)m5-L6-(CH2)m6-、アミド結合または単結合を表し、m5およびm6はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
L1~L6はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基、カルボニル基または単結合を表す。)
【0022】
[2] Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がシステインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドである、[1]記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0023】
[3] Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がアラニン、グリシン、シトルリン、プロリン、セリン、アスパラギンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドである、[1]記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0024】
[4] WがC末端のアミノ酸がグリシンであるオリゴペプチドである、[1]記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0025】
[5] Wがジペプチドである、[1]記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0026】
[6] 式(1)におけるX1およびY1が、それぞれ独立して式(a)、式(b1)、式(b2)、式(c)、式(d1)、式(d2)、式(e)、式(f)、式(g)、式(h)、式(i)、式(j)、式(k)、式(l)、式(m)、式(n)および式(o)からなる群から選択される、[1]~[5]のいずれか1項に記載のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール。
【0027】
【化2】
【0028】
(式(d1)、(d2)中、R2は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基であり;式(e)中、R3は塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択されるハロゲン原子であり;および式(l)中、R4は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基である。)
【0029】
[7] 式(2)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを含んで成る抗体-薬物複合体。
【0030】
【化3】
【0031】
(式(2)中、
X2とY2との一方が抗体であり、他方が薬物であり;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~72の整数であり;
A2は-L1-(CH2)m1-L7-、-L1-(CH2)m1-L8-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-L8-または-L8-を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
B2は-CH2-L9-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L11-、-CH2-L12-、-CH2-L9-(CH2)m3-L12-または-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L12-を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;
L1およびL2はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基または単結合を表し;
L7、L9、L10およびL11はそれぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基またはカルボニル基を表し;
L8およびL12はアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基または単結合を表し;
Wは2~4残基のオリゴペプチドであり;
ZはペプチドのC末端に結合する二官能性パラ-アミノベンジルアルコール基を有するスペーサーであり;
a3およびa4は、X2が薬物のとき、a3=1かつa4=0であり、Y2が薬物のとき、a3=0かつa4=1であり;
bは0又は1であり;および
C2はアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基を表す。)
【0032】
[8] Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がシステインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドである、[7]記載の抗体-薬物複合体。
【0033】
[9] Wがフェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンの疎水性の中性アミノ酸のうち少なくとも1つを含み、かつそれ以外のアミノ酸がアラニン、グリシン、シトルリン、プロリン、セリン、アスパラギンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドである、[7]記載の抗体-薬物複合体。
【0034】
[10] WがC末端のアミノ酸がグリシンであるオリゴペプチドである、[7]記載の抗体-薬物複合体。
【0035】
[11] Wがジペプチドである、[7]記載の抗体-薬物複合体。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖が分岐部分の4級炭素原子に安定なエーテル結合で結合しているため、化学変換プロセスにおいて一本鎖の単分散ポリエチレングリコールに分解し難い。したがって、当該ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを用いて抗体と薬物を結合することにより、均質性の高い抗体-薬物複合体を得ることができる。
【0037】
更に、当該ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖が近接して結合しているため、抗体-薬物複合体を調製した際に疎水性薬物の遮蔽効果が大きく、薬物の疎水性に起因する凝集の発生、抗体の血中安定性の低下を抑制することができる。
【0038】
更に、当該ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、細胞内の酵素によって分解されるペプチドリンカーを含むため、細胞内において薬物からリンカー部位が切断され、薬物を細胞内で効果的に徐放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例10の式(20)の化合物の実施例37における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図2】実施例37の分解性試験後の式(20)の化合物由来の分解物のマスクロマトグラムを示す。
図3】比較例2の式(44)の化合物の実施例37における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図4】実施例11の式(21)の化合物の実施例38における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図5】実施例38の分解性試験後の式(21)の化合物由来の分解物のマスクロマトグラムを示す。
図6】実施例16の式(26)の化合物の実施例38における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図7】実施例30の式(40)の化合物の実施例39における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図8】実施例39の分解性試験後の式(40)の化合物由来の分解物のマスクロマトグラムを示す。
図9】比較例4の式(46)の化合物の実施例39における分解性試験前後のHPLC測定結果を示す。
図10】実施例40の分解性試験後の式(42)の化合物由来の分解物のマスクロマトグラムを示す。
図11】式(40)および式(46)の薬物-リンカー化合物を用いた実施例41の細胞毒性試験における各サンプル濃度あたりの細胞生存率をプロットしたグラフを示す。
図12】式(42)および式(46)の薬物-リンカー化合物を用いた実施例42の細胞毒性試験における各サンプル濃度あたりの細胞生存率をプロットしたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書における「ヘテロ二官能性」とは、二つの異なる化学反応可能な官能基を有することを意味し、「単分散ポリエチレングリコール」とは、特定のエチレングリコール鎖長を有する成分が90%以上含まれる化合物のことを意味し、「リンカー」とは、抗体と薬物を共有結合させるまたは炭素鎖を含む化学部位のことである。
【0041】
本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは式(1)で示される。
【0042】
【化4】
【0043】
本発明の式(1)におけるR1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基およびベンジル基などが挙げられる。R1の好ましい実施形態としてはメチル基または水素原子であり、更に好ましくはメチル基である。
【0044】
本発明の式(1)におけるnは、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す3~72の整数であり、好ましくは4~48の整数であり、更に好ましくは6~36の整数であり、特に好ましくは8~24の整数である。
【0045】
本明細書において、式(1)の原子団X1およびY1は互いに異なり、当該ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールによる修飾の対象となる生体機能性分子(生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸および低分子薬物など)に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であれば特に制限されない。前記官能基の例としては、「Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques, 2nd ed.; Academic Press: San Diego, CA, 2008」、「Harris, J. M. Poly(Ethylene Glycol) Chemistry; Plenum Press: New York, 1992」および「PEGylated Protein Drugs: Basic Science and Clinical Applications; Veronese, F. M., Ed.; Birkhauser: Basel, Switzerland, 2009」などに記載されている官能基が挙げられる。
【0046】
その中でも、X1およびY1に含まれる官能基はそれぞれ独立に、タンパク質に代表される天然の生体機能性分子に存在する官能基(アミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシ基等)や前記生体機能性分子に人工的に導入可能な官能基(マレイミド基、ケトン基、アジド基、アルキニル基等)に穏和な反応条件、かつ高い反応効率で反応可能な官能基であることが好ましい。より具体的には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、2-ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、ヒドロキシ基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基、アジド基、およびジベンゾシクロオクチン(DBCO)基が好ましく、さらに反応効率を考慮すると、活性エステル基、活性カーボネート基、マレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アジド基およびジベンゾシクロオクチン(DBCO)基が好ましく、活性エステル基、活性カーボネート基およびマレイミド基がより好ましい。
【0047】
更に具体的には、X1およびY1に含まれる官能基はそれぞれ独立に、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がアミノ基である場合には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基またはカルボキシ基であり、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がチオール基である場合には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、2-ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基またはビニル基であり、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がアルデヒド基またはカルボキシ基である場合には、チオール基、ヒドロキシ基、アミノ基、オキシアミノ基またはヒドラジド基であり、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がアルキニル基である場合には、チオール基またはアジド基であり、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がアジド基である場合には、アルキニル基およびジベンゾシクロオクチン基であり、修飾の対象となる生体機能性分子に存在する官能基がハロゲン化アルキル基、アルキルスルホン酸エステルまたはアリールスルホン酸エステルである場合には、チオール基、ヒドロキシ基またはアミノ基である。
【0048】
ここで「活性エステル基」とは、式:-C(=O)-Eで表される活性化されたカルボキシ基を示し、Eは脱離基を示す。Eで表される脱離基としては、スクシンイミジルオキシ基、フタルイミジルオキシ基、4-ニトロフェノキシ基、1-イミダゾリル基、ペンタフルオロフェノキシ基、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ基および7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ基などが挙げられ、スクシンイミジルオキシ基および4-ニトロフェノキシ基が好ましい。「活性カーボネート基」とは、式:-O-C(=O)-Eで表される活性化されたカーボネート基を示し、Eは前記と同様の脱離基を示す。
【0049】
本発明の好適な実施形態において、X1およびY1はそれぞれ独立に、群(I)、群(II)、群(III)、群(IV)、群(V)または群(VI)で示される基である。
群(I):生体機能性分子のアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b1)、(b2)、(c)、(d1)、(d2)、(e)および(f)
群(II):生体機能性分子のチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b1)、(b2)、(c)、(d1)、(d2)、(e)、(f)、(g)、(h)および(l)
群(III):生体機能性分子のアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(i)、(j)、(k)および(o)
群(IV):生体機能性分子のアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(i)、(j)、(k)および(n)
群(V):生体機能性分子のアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(l)および(m)
群(VI):生体機能性分子のハロゲン化アルキル基、アルキルスルホン酸エステルまたはアリールスルホン酸エステルと反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(i)および(o)
【0050】
【化5】
【0051】
式中、R2、R4は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基およびペンチル基などが挙げられる。R3は塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択されるハロゲン原子である。
【0052】
式(1)の原子団X1およびY1に含まれる官能基の好ましい組み合わせとして、X1に含まれる官能基が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアルデヒド基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、ビニルスルホン基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がマレイミド基、ビニルスルホン基またはα-ハロアセチル基のときは、Y1に含まれる官能基は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアルキニル基またはアジド基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、オキシアミノ基およびヒドロキシ基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、Y1に含まれる官能基はアルキニル基、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、X1に含まれる官能基がチオール基、2-ピリジルジチオ基またはヒドロキシ基のときは、Y1はアミノ基、オキシアミノ基、アジド基およびカルボキシ基から選択される基である。より好ましくは、X1に含まれる官能基が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアルデヒド基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がマレイミド基またはα-ハロアセチル基のときは、Y1に含まれる官能基は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアルキニル基またはアジド基のときは、Y1に含まれる官能基はマレイミド基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、オキシアミノ基およびヒドロキシ基から選択される基であり、X1に含まれる官能基がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、Y1に含まれる官能基はアルキニル基、アジド基、ヒドロキシ基またはチオール基であり、X1に含まれる官能基がチオール基、2-ピリジルジチオ基またはヒドロキシ基のときは、Y1に含まれる官能基はアミノ基、オキシアミノ基およびアジド基から選択される基である。
【0053】
式(1)中のWは、細胞内のリソソーム酵素により特異的に切断される分解性リンカーである。このようなリンカーは例えば、ペプチドをベースとする構造である。リソソーム酵素は、細胞内のリソソームの低pH環境でのみ活性化されるため、分解性ペプチドリンカーは、一般に良好な血中安定性を有する。抗体からの薬物の放出は、リソソーム酵素、例えばカテプシンおよびプラスミンの作用により特異的に起こる。これらの酵素は、ある種の腫瘍組織において高いレベルで存在することがある。ある種の実施形態において、リンカーはリソソーム酵素によって切断可能であり、このリソソーム酵素の例としてはカテプシンBなどが挙げられる。
【0054】
式(1)中のWは、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素により分解する2~4残基のオリゴペプチドであれば特に制限はないが、抗体-薬物複合体の調製時に薬物の疎水性を最大限遮蔽し、薬物の疎水性に起因する凝集を抑制するためには、より親水性の高いアミノ酸を含むオリゴペプチドを用いることが好ましい。ある種の実施形態において、より長いペプチドは疎水性であるために、より長いペプチドよりもジペプチドがより好ましい。
【0055】
一方で、リソソーム酵素であるカテプシンBは、疎水性の高いアミノ酸を有するオリゴペプチドを効率良く加水分解する性質がある(Vieira Portaro, F. C. et al. Biochem. J. 2000, 347:123-129、Cezari, M.H.S. et al. Biochem.J. 2002, 368:365-369)。したがって、式(1)中のWは、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸、具体的には、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドであることが好ましく、バリンまたはフェニルアラニンを有する2~4残基のオリゴペプチドであることが更に好ましい。KyteとDoolittleにより作成された、アミノ酸の疎水性を定量的に示すハイドロパシー指標(hydropathy index)は、値が大きいほど疎水性なアミノ酸であることを示す(Kyte J & Doolittle RF, 1982, J Mol Biol, 157:105-132.)。
【0056】
上記の疎水性アミノ酸と組み合わせられるアミノ酸として、式(1)中のWは、XLogP3により算出されたLogP値が-2.5よりも小さい中性アミノ酸、具体的には、アラニン、グリシン、シトルリン、プロリン、セリン、アスパラギンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドであることが好ましく、アラニン、グリシン、シトルリンを少なくとも1つ有する2~4残基のオリゴペプチドであることが更に好ましい。ここで「LogP」とは、オクタノール/水の分配係数の対数として定義され、疎水性の指標となる値であり、その値が小さいほど親水性であることを示す。また、「XlogP3」とは、Chengらにより作成された、LogP値を算出するための方法である(Cheng, T. et al. J Chem Inf Model. 2007, 47:2140-2148)。
【0057】
加えて、式(1)中のWは、C末端のアミノ酸としてグリシンを有する2~4残基のオリゴペプチドであることが好ましい。C末端のカルボキシル基を反応させる際は、基本的にC末端のカルボキシル基を縮合剤などで活性化する必要がある。この活性化の工程において、グリシン以外のアミノ酸ではエピメリ化が起こりやすく、立体異性体が複製することが知られている。オリコペプチドのC末端のアミノ酸をアキラルなグリシンとすることで、立体異性体が副生しない、高純度な目的物を得ることができる。
【0058】
また、式(1)中のWは、側鎖にアミノ基やカルボキシル基をもつアミノ酸、具体的には、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含まないアミノ酸で構成される2~4残基のオリゴペプチドであることが好ましい。本発明の式(1)におけるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの合成において、ポリエチレングリコール部分にオリゴペプチドを導入する際、オリゴペプチドのN末端のアミノ基、またはC末端のカルボキシル基を反応に利用している。しかし、側鎖にアミノ基やカルボキシル基をもつアミノ酸がオリゴペプチドに含まれると、ポリエチレングリコール部分が目的のN末端のアミノ基やC末端のカルボキシル基だけでなく、側鎖のアミノ基やカルボキシル基にも導入された不純物が生じる。この不純物は通常の抽出や晶析などの精製工程で除去することが難しいため、純度よく目的物を得るためには、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を持たないアミノ酸からなるオリゴペプチドを用いることが望ましい。ここで使用されるアミノ酸は、α-アミノ酸であり、また基本的にはL型である。
【0059】
さらに、中性アミノ酸であるシステインはチオール基を有しており、他のチオール基とジスルフィド結合を形成するため、式(1)中のWは、システインを含まないアミノ酸からなるオリゴペプチドであることが好ましい。
【0060】
式(1)中のWは、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素により分解する性能を有し、システインを除く中性アミノ酸からなる2~4残基のオリゴペプチドであれば特に制限はないが、具体的な例としては、グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-ロイシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、バリン-シトルリン、バリン-アラニン、フェニルアラニン-グリシンなどであり、好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、バリン-シトルリン、バリン-アラニン、フェニルアラニン-グリシンであり、より好ましくはバリン-シトルリン、バリン-アラニン、またはフェニルアラニン-グリシンであり、さらにより好ましくはバリン-シトルリンである。
【0061】
式(1)中のZは、Wで示されるペプチドリンカーが酵素によって切断された部位から薬物をさらに分離する自己分解性スペーサーである。薬物とペプチドリンカーを直接結合した場合、ペプチドリンカー切断時に薬物にペプチドリンカー部分が残ることで、薬物の活性低下をもたらす恐れがある。自己分解性スペーサーの使用により、アミド結合の加水分解時に、ペプチドリンカーを含まない薬物を放出することが可能となる。
【0062】
自己分解性スペーサーの1つは二官能性のパラ-アミノベンジルアルコール基であり、この基は、アミノ基を介してペプチドに連結されてアミド結合を形成する一方、アミノ基あるいは水酸基を有する薬物は、カーバメート結合あるいはカーボネート結合を介して、当該リンカーのベンジルアルコール基に結合され得る(パラ-アミノベンジルカーバメートあるいはパラ-アミノベンジルカーボネートを与える)。得られたプロドラッグは、ペプチド-リンカー間のアミド結合切断時に活性化され、1,6-脱離反応をもたらし、ペプチドリンカーを含まない薬物、二酸化炭素およびリンカー基の残りの部分を放出する。また、この基は、ペプチドリンカーのC末端側のアミド結合が切断された場合にのみ脱離反応をもたらし、ペプチドリンカーを含まない薬物を放出するため、ペプチドリンカーのC末端が単分散ポリエチレングリコール側にあって、薬物側に無い場合は必ずしもなくても良い。以下のスキームは、パラ-アミドベンジルカーバメートあるいはパラ-アミドベンジルカーボネートの断片化、および薬物の放出を図示している:
【0063】
【化6】
【0064】
(式中、X-Dは、ペプチドリンカーを含まない薬物を表す。)
【0065】
式(1)のbは、0または1である。bが0である場合、式(1)中のZで示される自己分解性スペーサーは含まれず、bが1である場合、式(1)中のZで示される自己分解性スペーサーは含まれる。
【0066】
本発明の式(1)におけるA1は、分岐部分の4級炭素原子とWまたはX1との間の2価のスペーサーであり、式(1)におけるB1は、分岐部分の4級炭素原子とWまたはY1との間の2価のスペーサーであり、式(1)におけるC1は、ZとX1またはY1の間の2価のスペーサーであり、それぞれ共有結合で構成される。
【0067】
具体的には、A1は-L1-(CH2)m1-L2-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-、アミド結合、ウレタン結合、2級アミノ基または単結合を表し、好ましくは-L1-(CH2)m1-L2-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-、アミド結合、2級アミノ基であり、更に好ましくは-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-、アミド結合、2級アミノ基である。式中のm1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0068】
また、B1は-CH2-L3-、-CH2-L3-(CH2)m3-L4-または-CH2-L3-(CH2)m3-L4-(CH2)m4-を表し、好ましくは-CH2-L3-または-CH2-L3-(CH2)m3-L4-である。式中のm3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0069】
さらに、C1は-L5-(CH2)m5-、-L5-(CH2)m5-L6-(CH2)m6-、アミド結合または単結合を表し、好ましくは単結合である。式中のm5およびm6はそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0070】
前記式中のL1~L6はそれぞれ独立して2価のスペーサーであり、具体的には、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基、カルボニル基または単結合である。
【0071】
さらに、L1およびL2はそれぞれ独立してウレタン結合、アミド結合または2級アミノ基が好ましく、L3はエーテル結合、ウレタン結合または単結合が好ましく、L4はアミド結合、ウレタン結合、2級アミノ基、カルボニル基または単結合が好ましく、L5はウレタン結合が好ましく、L6はアミド結合、ウレタン結合または2級アミノ基が好ましい。
【0072】
本発明における式(1)のa1およびa2は、式(1)中、-W-(Z)b-C1-で示されるスペーサー部位の有無を示し、ある種の実施形態において、a1=1のときa2=0であり、ある種の別の実施形態において、a1=0のときa2=1である。
【0073】
本発明の好適な実施形態における式(1)のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの典型的な合成例を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
(A)本発明の好適な実施形態における式(1)のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、例えば、以下の工程で製造することができる。
【0075】
【化7】
【0076】
(式(3)中、P1はアミノ基の保護基であり;およびP2はヒドロキシ基の保護基である。)
【0077】
前記式(3)で表される化合物を無水溶媒中、強塩基存在下でモノメチル単分散ポリエチレングリコールのアルキルまたはアリールスルホン酸エステル、もしくはモノメチル単分散ポリエチレングリコールのハロゲン化物に対して求核置換反応させて、下記式(4)で表される化合物を得る。
【0078】
ここで「保護基」とは、ある反応条件下で分子中の特定の官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基は、保護される官能基の種類、使用される条件および分子中の他の官能基もしくは保護基の存在により変化する。保護基の具体的な例は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば「Wuts, P. G. M.; Greene, T. W. Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed.; Wiley-Interscience: New York, 2007」に記載されている。また、保護基で保護された官能基は、それぞれの保護基に適した反応条件を用いて脱保護、すなわち化学反応させることで、元の官能基を再生させることができる。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されている。
【0079】
保護される官能基と保護基の好ましい組み合わせとして、保護される官能基がアミノ基のときは、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基および2-(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、保護される官能基がヒドロキシ基のときは、例えばシリル系保護基およびアシル系保護基が挙げられ、具体的にはt-ブチルジフェニルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、アセチル基およびピバロイル基などが挙げられる。
【0080】
保護される官能基がカルボキシ基のときは、例えばアルキルエステル系保護基およびシリルエステル系保護基が挙げられ、具体的にはメチル基、9-フルオレニルメチル基およびt-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。保護される官能基がスルファニル基のときは、例えばチオエーテル系保護基、チオカーボネート系保護基およびジスルフィド系保護基が挙げられ、具体的にはS-2,4-ジニトロフェニル基、S-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびS-t-ブチルジスルフィド基などが挙げられる。また、同種または異種の二つの官能基を同時に保護することが可能な二官能性の保護基を用いてもよい。保護される官能基と保護基の好ましい組み合わせとして、保護される官能基が二つのヒドロキシ基のときは、例えば環状アセタール系保護基および環状シリル系保護基が挙げられ、具体的には2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン基、2-フェニル-1,3-ジオキソラン基、2-フェニル-1,3-ジオキサン基およびジ-t-ブチルシリレン基などが挙げられる。保護される官能基がアミノ基とヒドロキシ基のときは、例えばオキサゾリン系保護基が挙げられ、具体的には2-フェニルオキサゾリン基などが挙げられる。
【0081】
保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されており、それぞれの保護基に適した反応条件を選択することができる。ただし、構造中に含まれる官能基が、保護基で保護されていなくても他の官能基の化学反応を阻害しない官能基の場合は、保護基を使用する必要は無い。
【0082】
【化8】
【0083】
前記式(4)で表される化合物の保護基P1を脱保護した後、縮合剤存在下、N末端のアミノ基が保護基P3により保護されたオリゴペプチドを反応させて、下記式(5)で表される化合物を得る。ここで、ヒドロキシ基がアミノ基の反応試薬と反応しない反応条件を選択すれば、保護基P1と同時に保護基P2も脱保護してよい。なお、下記式(5)中のPeptideは、前記Wと同義のオリゴペプチドである。
【0084】
【化9】
【0085】
前記式(5)で表される化合物の保護基P2を脱保護した後、塩基存在下、活性カーボネート化試薬を用いて活性カーボネート化し、さらに活性カーボネートとアミノ基を有するカルボン酸を反応させることで、下記式(6)で表される化合物を得る。
活性カーボネート化試薬は、特に制限はないが、例えばp-ニトロフェニルクロロホルメートや炭酸ジ(N-スクシンイミジル)などが挙げられる。なお、下記式(6)におけるm3は、前記と同義である。
【0086】
【化10】
【0087】
さらに、前記式(6)で表される化合物の保護基P3を脱保護することで、下記式(7)で表される化合物を得る。
【0088】
【化11】
【0089】
また、本工程の好適な別の実施形態においては、前記式(5)で表される化合物の保護基P2を脱保護した後、強塩基存在下、カルボン酸が保護されたアクリル酸エステルを反応させ、さらに保護基P3およびカルボン酸の保護基を脱保護することで、下記式(8)で表される化合物を得る。なお、下記式(8)におけるm3は前記と同義であり、反応に用いるアクリル酸エステルは炭素数がm3を満たす範囲であれば特に制限されないが、具体的には、t-ブチルアクリレートなどが用いられる。
【0090】
【化12】
【0091】
(B)本発明の好適な別の実施形態においては、式(1)のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、例えば、以下の工程で製造することができる。
【0092】
前記式(4)で表される化合物の保護基P2を脱保護した後、縮合剤存在下、アミノ基が保護基P4により保護されたカルボン酸を反応させることで、下記式(9)で表される化合物を得る。なお、下記式(9)におけるm1およびm3は、前記と同義である。
【0093】
【化13】
【0094】
前記式(9)で表される化合物に縮合剤存在下、N末端のアミノ基が無保護で、かつC末端にパラーアミノベンジルアルコールを縮合させたオリゴペプチド誘導体を反応させた後、保護基P4を脱保護することで、下記式(10)で表される化合物を得る。なお、下記式(10)におけるPeptideは、前記と同義である。
【0095】
【化14】
【0096】
前記式(7)、(8)および(10)で表される化合物は、いずれもアミノ基を1つ有しており、これを利用して前記X1として示した官能基への変換が可能である。
【0097】
前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端のアミノ基を他の官能基に変換する工程については、特に制限はないが、基本的には、アミノ基と反応可能な活性エステル基を有した化合物、または酸無水物、酸クロライドなどの一般的な反応試薬を用いることで、種々の官能基に変換することが出来る。
【0098】
例えば、前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端のアミノ基をマレイミド基に変換したい場合は、以下のような試薬と反応させることで、目的物を得ることが出来る。
【0099】
【化15】
【0100】
例えば、前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端のアミノ基をカルボキシル基に変換したい場合は、無水コハク酸や無水グルタル酸と反応させることで、目的物を得ることが出来る。
【0101】
例えば、前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端のアミノ基を水酸基に変換したい場合は、カプロラクトンなどの環状エステルの開環物と縮合反応させることで、目的物を得ることが出来る。
【0102】
また、前記式(6)、(7)、(8)および(9)で表される化合物は、いずれもカルボン酸を1つ有しており、前記式(10)で表される化合物は、水酸基を1つ有していることから、これを利用して前記Y1として示した官能基への変換が可能である。
【0103】
前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端のカルボン酸を他の官能基に変換する工程については、特に制限はないが、例えば、カルボン酸を活性エステル基へ変換できる化合物、具体的には、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの試薬を縮合剤存在下で反応させることで、種々の官能基に変換することが出来る。
【0104】
前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの末端の水酸基を他の官能基に変換する工程については、特に制限はないが、例えば、水酸基を活性カーボネート基へ変換できる化合物、具体的には、p-ニトロフェニルクロロホルメートや炭酸ジ(N-スクシンイミジル)などの活性カーボネート化試薬を用いることで、種々の官能基に変換することが出来る。
【0105】
本発明の別の一態様では、式(2)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを含んで成る抗体-薬物複合体が提供される。
【0106】
【化16】
【0107】
本発明の式(2)におけるR1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基およびベンジル基などが挙げられる。R1の好ましい実施形態としてはメチル基または水素原子であり、更に好ましくはメチル基である。なお、式(2)中のR1は前記と同義である。
【0108】
本発明の式(2)におけるnは、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す3~72の整数であり、好ましくは4~48の整数であり、更に好ましくは6~36の整数であり、特に好ましくは8~24の整数である。なお、式(2)中のnは前記と同義である。
【0109】
本明細書において、式(2)のX2およびY2の一方が抗体であり、他方が薬物である。
【0110】
本発明の式(2)におけるW、Zおよびbは、前記式(1)におけるW、Zおよびbと同義である。
【0111】
本発明の式(2)におけるA2、B2およびC2は、2価のスペーサーであり、それぞれ共有結合で構成される。
【0112】
具体的には、A2は-L1-(CH2)m1-L7-、-L1-(CH2)m1-L8-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-L8-または-L8-を表し、好ましくは-L1-(CH2)m1-L8-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-L8-または-L8-である。なお、式中のL1、L2、m1およびm2は前記と同義である。
【0113】
また、B2は-CH2-L9-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-、-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L11-、-CH2-L12-、-CH2-L9-(CH2)m3-L12-または-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L12-を表し、好ましくは-CH2-L9-(CH2)m3-L10-、-CH2-L9-(CH2)m3-L12-または-CH2-L9-(CH2)m3-L10-(CH2)m4-L12-であり、更に好ましくは-CH2-L9-(CH2)m3-L10-または-CH2-L9-(CH2)m3-L12-である。なお、式中のm3およびm4は前記と同義である。
【0114】
前記式中のL7、L9、L10およびL11は、それぞれ独立してエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基またはカルボニル基である。
【0115】
さらに、L7およびL11は、前記式(1)で示されるWとの間で形成される結合であり、それぞれ独立してアミド結合または2級アミノ基が好ましく、L9はエーテル結合またはウレタン結合が好ましく、L10はウレタン結合、アミド結合または2級アミノ基が好ましい。
【0116】
また、前記式中のL8およびL12は、それぞれa3=0またはa4=0である場合、前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールのX1またはY1に含まれる官能基とX2またはY2で示される抗体に存在する官能基との間で形成される原子団であり、具体的にはアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基または単結合である。
【0117】
さらに、C2は、Wで示されるペプチドリンカー存在下において前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールのX1またはY1に含まれる官能基と抗体または薬物に存在する官能基との間で形成される原子団であり、具体的にはアミド結合、ウレタン結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、1H-1,2,3-トリアゾール-1,4-ジイル構造、2級アミノ基、ヒドラジド基、オキシアミド基もしくはこれらを含む炭化水素基である。
【0118】
本発明の式(2)におけるa3およびa4は、式(2)中、-W-(Z)b-C2-で示されるスペーサー部位の有無を示し、X2が薬物であるとき、a3=1かつa4=0であり、Y2が薬物であるとき、a3=0かつa4=1である。
【0119】
本発明の具体的な実施形態において、抗体-薬物複合体(ADC)は、以下の式(I)によって表される化合物またはその塩であり、式中、Abは抗体を表し、Dは薬物を表し、Lは前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールからなるリンカーを表し、kは抗体に結合するリンカー-薬物コンジュゲート(D-L)単位の数を表す。
【0120】
【化17】
【0121】
本発明における抗体(Ab)、薬物(D)、リンカー(L)およびリンカー-薬物コンジュゲート(D-L)の結合様式、並びにADCに結合する薬物の数の具体的な実施形態について、以下に説明する。
【0122】
本明細書で使用する用語「抗体」とは、その最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを、それらが望ましい生物学的活性を示す限り、網羅する(Miller, K. et al. J. Immunol. 2003, 170, 4854-4861)。
【0123】
抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または他の種由来であり得る。抗体は、特定の抗原を認識および結合することが可能な、免疫系によって生成されるタンパク質である(Janeway, C.; Travers, P.; Walport, M.; Shlomchik, M. Immunobiology, 5th ed.; Garlan Publishing: New York, 2001)。標的抗原は、一般的には、複数の抗体上にあるCDRによって認識される多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープ特異的に結合する抗体は、異なる構造を有する。従って、ある1つの抗原は、1つよりも多くの対応する抗体を有し得る。抗体は、全長免疫グロブリン分子、または全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、対象とする抗原もしくはその部分に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)を包含する。そのような標的としては、ガン細胞、または自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を生成する細胞が挙げられるが、これらに限定はされない。本明細書において開示される免疫グロブリンは、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。上記免疫グロブリンは、任意の種に由来し得る。しかし、一態様において、上記免疫グロブリンは、ヒト起源、マウス起源、またはウサギ起源である。
【0124】
ポリクローナル抗体は、免疫化動物の血清由来のものなどの、抗体分子の不均一集団である。当分野において既知のさまざまな手順を用いて対象抗原に対するポリクローナル抗体を作り出してよい。例えば、ポリクローナル抗体を作り出すために、対象抗原またはその誘導体を注射して、ウサギ、マウス、ラットおよびモルモットを含むがそれらに限定されないさまざまな宿主動物を免疫化してよい。宿主種に依存して、フロインドの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リソレシチンなどの表面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳化物、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、およびBCG(bacille Calmett-Guerin)およびCorynebacteriumu parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがそれらに限定されない、さまざまなアジュバントを用いて免疫応答を増加させてよい。そのようなアジュバントも、当分野では公知である。
【0125】
モノクローナル抗体は、特定の抗原決定基(例えば、細胞抗原(ガンまたは自己免疫細胞抗原)、ウイルス抗原、微生物抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、化学物質、核酸またはそれらの抗原結合フラグメント)に対する抗体の均一な集団である。当分野において既知の任意の技法を用いて対象抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)を調製してよい。これらは、Kohler, G; Milstein, C. Nature 1975, 256, 495-497)が最初に記載したハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor, D. et al. Immunol. Today 1983, 4, 72-79)およびEBV-ハイブリドーマ技法(Cole, S. P. C. et al. Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy; Alan R. Liss: New York, 1985, pp. 77-96)を含むが、それらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA及びIgDを含む任意の免疫グロブリンの種類およびそれらの任意の亜種であってよい。本発明においてモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養してよい。
【0126】
モノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体および抗体フラグメントを含むがそれらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体は、当分野で既知の多数の技法のうちの任意のもの(例えば、Teng, N. N. et al. Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1983, 80, 7308-7312、Kozbor, D. et al. Immunology Today 1983, 4, 72-79、Olsson, L. et al. Meth. Enzymol. 1982, 92, 3-16、および米国特許第5939598号明細書および第5770429号明細書を参照)によって作成してよい。キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体などの組み換え抗体は、当分野で既知の標準的な組み換えDNA技法を用いて作ることができる(例えば、米国特許第4816567号明細書、第4816397号明細書を参照)。
【0127】
抗体の表面再構成(resurfacing)処理によっても、抗体の免疫原性を減少させることができる(米国特許第5225539号明細書、欧州特許第0239400号明細書、第0519596号明細書、第0592106号明細書を参照)。
【0128】
本発明の一実施形態において、抗体は二重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体を作るための方法は、当分野で既知である。従来の完全長二重特異性抗体の作製方法は、2つの鎖が異なる特異性を有する場合の2つの免疫グロブリン重鎖―軽鎖対の同時発現を利用している(Milstein, C et al. Nature 1983, 305, 537-539を参照)。また、別の方法として、所望の結合特異性(抗体―抗原結合部位)を有する抗体可変分域を免疫グロブリン不変分域配列と融合させることでも、二重特異性抗体を作製することができる。
【0129】
その他の有用な抗体は、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fvs、単鎖抗体(SCA)(例えば、米国特許第4946778号明細書、Bird, R. E. et al. Science1988, 242, 423-442、Huston, J. S. et al. Proc. Natl. Acad. Sot USA 1988, 85, 5879-5883及びWard, E. S. et al. Nature 1989, 334, 544-554に記載されている)、scFv、sc-Fv-Fc、FvdsFv、ミニボディー、ダイアボディー、トライアボディー、テトラボディー、およびCDRを含み、抗体と同じ特異性を有する任意の他の分子、例えばドメイン抗体などが挙げられるが、それらに限定されない抗体のフラグメントを含む。
【0130】
本発明の好ましい実施形態では、ガンの治療または予防のための既知の抗体を用いてよい。発現がガン、細胞増殖障害または腫瘍の細胞上での発現と相関関係にある任意の標的タンパク質を含む、すべての標的タンパク質を、抗体の標的とすることができる。
【0131】
本発明の好ましい実施形態において、抗体はガンの治療に有用である。ガンの治療に利用可能な抗体の例は、非ホジキンリンパ腫を有する患者の治療のためのキメラ抗CD20モノクローナル抗体であるリツキサン(登録商標)(ジェネンテック社)、卵巣ガンの治療のためのマウス抗体であるオバレックス(アルタレックス社)、結直腸ガンの治療のためのマウスIgG2a抗体であるパノレックス(グラクソウェルカム社)、頭部ガンおよび頚部ガンなどの上皮細胞成長因子陽性ガンの治療のための抗EGFR IgGキメラ抗体であるセツキシマブエルビツクス(イムクローンシステムズ社)、肉腫の治療のためのヒト化抗体であるビタキシン(メドイミューン社)、慢性リンパ球白血病(CLL)の治療のためのヒト化IgG1抗体であるキャンパスI/H(ロイコサイト社)、急性骨髄性白血病(AML)の治療のためのヒト化抗CD33 IgG抗体であるスマートM195(プロテインデザインラブズ社)、非ホジキンリンパ腫の治療のためのヒト化抗CD22 IgG抗体であるリンフォサイド(イムノメディックス社)、非ホジキンリンパ腫の治療のためのヒト化抗HLA-DR抗体であるスマートID10(プロテインデザインラブズ社)、非ホジキンリンパ腫の治療のための放射性元素標識化マウス抗HLA-Dr10抗体であるオンコリム(テクニクローン社)、ホジキン氏病または非ホジキンリンパ腫の治療のためのヒト化抗CD2 mAbであるアロミューン(バイオトランスプラント社)、肺ガンおよび結直腸ガンの治療のための抗VEGFヒト化抗体であるアバスチン(ジェネンテック社)、非ホジキンリンパ腫の治療のための抗CD22抗体であるエプラツザマブ(イムノメディックス社およびアムジェン社)、および結直腸ガンの治療のためのヒト化抗CEA抗体であるシーサイド(イムノメディックス社)を含むが、それらに限定されない。
【0132】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は以下の抗原に対する抗体である。CA125、CA15-3、CA19-9、L6、ルイスY、ルイスX、アルファフェトタンパク質、CA242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異性膜抗原、EphB2、TMEFF2、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮増殖因子、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、抗トランスフェリン受容体、p97、MUC1-KLH、CEA、gp100、MART1、前立腺特異性抗原、IL-2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPGおよびNeuガン遺伝子産物。いくつかの特異的な有用な抗体は、BR96 mAb(Trail, P. A. et al. Science 1993, 261, 212-215)、BR64(Trail, P. A. et al. Cancer Research 1997, 57, 100-105)、S2C6 mAb(Francisco, J. A. et al. Cancer Res. 2000, 60, 3225-3231)などのCD40抗原に対するmAb、または米国特許出願公開第2003/0211100号明細書および第2002/0142358号明細書に開示されているようなその他の抗CD40抗体、1F6 mAbおよび2F2 mAbなどのCD70抗原に対するmAb、およびAC10(Bowen, M. A. et al. J. Immunol. 1993, 151, 5896-5906、Wahl, A. F. et al. Cancer Res. 2002, 62(13), 3736-42)またはMDX-0060(米国特許出願公開第2004/0006215号明細書)などのCD30抗原に対するmAbを含むが、それらに限定されない。
【0133】
本発明において用いることができる薬物には、化学療法薬が含まれる。化学療法薬は、ガンの処置において有用な化合物である。化学療法薬の例には次のものが含まれる:アルキル化剤、例えばチオテパ(thiotepa)およびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標));アルキルスルホネート類、例えばブスルファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)およびピポスルファン(piposulfan);アジリジン類(aziridines)、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミン類およびメチルアメラミン類(methylamelamines)、アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphoramide)およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含む;アセトゲニン類(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(camptothecin)(合成類似体であるトポテカンを含む);ブリオスタチン (bryostatin);カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン類(cryptophycins)(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(その合成類似体であるKW-2189およびCBI-TMIを含む));エレウテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード類、例えばクロラムブシル(chlorambucil)、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素類(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine);抗生物質、例えばエネジイン(enediyne)抗生物質(例えばカリケアマイシン(calicheamicin)、特に、カリケアマイシンガンマ1およびカリケアマイシンシータI、例えばAngew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)を参照;ダイネマイシン(dynemicin)、ダイネマイシンAを含む;エスペラマイシン(esperamicin);ならびに、ネオカルジノスタチンクロモフォア(neocarzinostatin chromophore)および関連する色素タンパク質エネジイン抗生物質クロモモフォア類)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン類(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin);クロモマイシン類(chromomycins)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、ナイトマイシン類(nitomycins)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン類(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン類、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォミチン(elfomithine);エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);マイタンシノイド類、例えばマイタンシン (maytansine)およびアンサミトシン類(ansamitocins);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジクオン(triaziquone);2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(trichothecenes)、(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類(taxoids)、例えばパクリタキセル(paclitaxel)(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology)およびドキセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer);クロラムブシル;ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ類似体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);ダウノマイシン(daunomycin);アミノプテリン;ゼローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(difluoromethylomithine)(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);ならびに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩類、酸類、または誘導体。腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば次のものもこの定義に含まれる:例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール類、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(toremifene)(ファレストン(Fareston))を含む抗エストロゲン薬;ならびに抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、およびゴセレリン(goserelin);siRNAならびに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩類、酸類、または誘導体。本発明と共に用いることができる他の化学療法薬が、米国特許出願公開第2008/0171040号明細書または米国特許出願公開第2008/0305044号明細書において開示されており、それらをそのまま援用する。
【0134】
本発明の好ましい実施形態において、化学療法薬は低分子薬物である。低分子薬物は、好ましくは100~1500、より好ましくは120~1200まで、さらに好ましくは200~1000までの分子量を有する。典型的には約1000未満の分子量を有する有機、無機、または有機金属化合物を指して広く用いられる。また、本発明の低分子薬物は、約1000未満の分子量を有するオリゴペプチドおよび他の生体分子を含む。低分子薬物は当分野において、例えばとりわけ国際公開第05/058367号パンフレット、欧州特許出願公開第85901495号明細書および第8590319号明細書において、ならびに米国特許第4,956,303号明細書においてよく特性付けされており、それらをそのまま援用する。
【0135】
本発明の好ましい低分子薬物は、抗体への連結が可能な低分子薬物である。本発明には、既知の薬物および既知になる可能性がある薬物が含まれる。特に好ましい低分子薬物には細胞毒性薬物が含まれる。
【0136】
好ましい細胞毒性薬物はマイタンシノイド類、CC-1065類似体、モルホリノ類(morpholinos)、ドキソルビシン類、タキサン類(taxanes)、クリプトフィシン類(cryptophycins)、エポチロン類(epothilones)、カリケアマイシン類(calicheamicins)、アウリスタチン類(auristatins)、およびピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)二量体類である。
【0137】
本発明の式(2)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを含んで成る抗体-薬物複合体は、式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを用いて抗体と薬物を結合させることで調製できる。前記式(2)で示される抗体-薬物複合体の調製方法は、前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールと薬物を結合させた後に抗体を結合させて調製しても、前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールと抗体を結合させた後に薬物を結合させて調製してもいずれでもよい。また、抗体または薬物のいずれか一方を結合させた後に精製を行っても、抗体と薬物の両方を結合させた後に精製を行ってもいずれでもよい。
【0138】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールと薬物を結合させた化合物は、例えばカラムクロマトグラフィー、抽出、再結晶、吸着剤処理、再沈殿、超臨界抽出等の精製手段にて精製することができる。また、前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールと抗体を結合させた化合物および抗体と薬物の両方を結合させた抗体-薬物複合体は、例えばカラムクロマトグラフィー、抽出、吸着剤処理等の精製手段にて精製することができる。
【0139】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを薬物に結合させたリンカー-薬物コンジュゲートは、当分野で既知の標準的なコンジュゲーション技法を用いて作ることができる(例えば、米国特許出願公開第8163888号明細書、同第7659241号明細書、同第7498298号明細書及び国際公開第2011/023883号パンフレット、同第2005/112919号パンフレットを参照)。
【0140】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートと抗体とのコンジュゲートは、式(1)中の原子団X1またはY1に含まれる官能基が抗体中の官能基と反応して、共有結合を形成する条件下で、合成され得る。また一般に、使用される化学反応は、抗体の完全性、例えば、抗体の標的結合能を改変し得ない。好ましくは、コンジュゲートされた抗体の結合特性は、非コンジュゲート抗体の結合特性と類似である。
【0141】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートを抗体に結合させたコンジュゲートは、当分野において既知の化学反応および技法を用いて作ることができる(例えば、「Arnon, R. et al.; Monoclonal antibodies as carriers for immunotargeting of drugs; Monoclonal antibodies for cancer detection and therapy. Academic Press; Baldwin, R.W. et al. eds.; London, 1985, 367-382」、「Hellstrom, K. E. et al.; Antibodies for drug delivery.; Controlled Drug Delivery; Robinson, J.R. et al. eds.; Marcel Dekker, Inc.; New York; 1987, 623-653」、「Thorpe, P. E. et al. Monoclonal antibodies, 1985, 84: 475-506」、「Order, S.E.; Analysis, results, and future prospective of the therapeutic use of radiolabeled antibody in cancer therapy; Monoclonal antibodies for cancer detection and therapy. Academic Press; Baldwin, R.W. et al. eds.: London, 1985」、「Thorpe, P.E et al. Immunol Rev. 1982, 62:119-158」及び国際公開第89/12624号パンフレットを参照)。
【0142】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートは、抗体のアミノ酸残基の側鎖と結合され得る。例えば、利用可能なリジン残基の一級アミノ基、または利用可能なシステイン残基の遊離チオール基である。本発明の一実施形態において、抗体との反応により形成される結合は、抗体のアミノ基と形成される結合であり、例えば、アミド結合、チオエーテル結合、およびチオウレア結合であり、好ましくは、アミド結合である。また、ある種の実施形態において、抗体との反応により形成される結合は、抗体のチオール基と形成される結合であり、例えば、アミド結合、マレイミドとチオールの結合、チオエーテル結合、およびチオウレア結合であり、好ましくは、マレイミドとチオールの結合およびチオエーテル結合である。
【0143】
本発明の好適な実施形態において、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたはリンカー-薬物コンジュゲートと抗体との結合は、抗体の鎖間システイン残基との反応により生じるマレイミドとチオールの結合またはチオエーテル結合である。より均一性の高いADCを得るためには、抗体の4対の鎖間ジスルフィド結合を還元することで生成するシステイン残基と反応することで、1抗体あたり平均8個の薬物が結合することが望ましい。
【0144】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートを利用可能なリジン残基の1級アミノ基に連結させるための官能基については公知であり、特に限定されないが、例えば、NHS-エステル基、N-スクシンイミジルカーボネート基、およびp-ニトロフェニルカーボネート基などが挙げられる。
【0145】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートを利用可能なシステイン残基の遊離チオール基に連結させるための官能基については公知であり、特に限定されないが、例えば、α-ハロアセチル基およびマレイミド基などが挙げられる。
【0146】
しかし、前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートと反応する抗体の官能基は、天然に存在するアミノ酸の側鎖基に限定されず、抗体のアミノ酸側鎖へ適切な低分子を反応させることで別の有用な官能基に変換することができる。例えば、アミノ基のようなアミノ酸の側鎖は、適切な低分子をアミノ基に反応させることにより、ヒドロキシ基のような他の有用な官能基に変換することができる。
【0147】
また、コンジュゲーションのための抗体の官能基については、遺伝子工学操作により抗体の任意の位置にアミノ酸を導入してもよく、導入されるアミノ酸は天然型または非天然型のいずれでもよい。抗体へアミノ酸残基を導入するための遺伝子工学的手法は、例えば、「Axup, J.Y. et al. Proc Natl Acad Sci. 2012, 109:16101-16106」及び「Tian, F. et al. Proc Natl Acad Sci. 2014, 111:1766-1771」に記載されている。
【0148】
前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたは当該リンカーと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲートは、抗体へ部位非特異的に結合されても、部位特異的に結合されてもいずれでもよいが、好ましくは、部位特異的なコンジュゲーションである。
【0149】
本発明の式(2)で示される、ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを含んで成る抗体-薬物複合体(ADC)は、「Hamblett, K. J. et al. Clin. Cancer Res. 2004, 10:7063-7070」、「Doronina, S.O. et al. Nat Biotechnol. 2003, 21:778-784」、「Francisco, J.A. et al. Blood, 2003, 102:1458-1465」、「Chari, R.V.J. et al. Cancer Res. 1992, 52:127-131」及び「Tumey, L.N. et al. ACS Med. Chem. Lett. 2016, 7:977-982」において記載されている方法と類似の標準法によって調製され得る。例えば、抗体の鎖間システイン残基に本発明のリンカー-薬物コンジュゲートが結合し、1抗体あたり8つの薬物を有するADCは、ジチオトレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)のような還元試薬を過剰量用いて、37℃で1時間、抗体を部分還元し、次に、過剰量の前記式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールと薬物からなるリンカー-薬物コンジュゲート、例えば15当量を20℃において1時間加えた後、さらに過剰量のN-アセチル-L-システイン、例えば50当量を添加することで反応をクエンチすることができる。また、得られたADC混合物は、PBSで平衡化したNAP(登録商標)-5を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより、脱塩、未反応のリンカー-薬物コンジュゲートを除去し精製することができ、サイズ排除クロマトグラフィーにより更に精製することができる。次に、得られたADCは、例えば0.2μmのフィルターを用いて滅菌ろ過し、保管のために凍結乾燥してもよい。
【0150】
ADCにおける1抗体あたりの薬物の数は、例えば紫外/可視分光法、質量分析法、ELISA法、電気泳動、HPLC、およびこれらを組み合わせた方法など、当業者に公知の方法によって決定され得る(例えば、「Chen, J. et al. Anal. Chem. 2013, 85:1699-1704」、「Valliere-Douglass, J. F. et al. Anal. Chem. 2012, 84:2843-2849」、「Birdsall, R. E. et al. mABs, 2015, 7:1036-1044」及び「Zhao, R. Y. et al. J. Med. Chem. 2011, 54:3606-3623」に記載されている)。一実施形態において、ADCにおける1抗体の薬物の平均数は紫外/可視分光法により算出することができる。具体的には、抗体-薬物複合体水溶液の、異なる二波長、例えば280nm及び495nmにおけるUV吸光度を測定した後、以下の計算を行うことで算出することができる。ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物の複合化反応前後において、抗体及び薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物複合体における抗体濃度及び薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A280=εD,280CD+εA,280CA 式(i)
A495=εD,495CD+εA,495CA 式(ii)
DAR=CD/CA 式(iii)
A280は280nmにおける抗体-薬物複合体水溶液の吸光度を示し、A495は495nmにおける抗体-薬物複合体水溶液の吸光度を示し、εA,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εA,495は495nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εD,280は280nmにおけるリンカー-薬物コンジュゲートのモル吸光係数を示し、εD,495は495nmにおけるリンカー-薬物コンジュゲートのモル吸光係数を示し、CAは抗体-薬物複合体における抗体濃度を示し、CDは抗体-薬物複合体における薬物濃度を示す。εA,280及びεA,495は、推定値が用いられ、εA,495は、通常、0である。εD,280及びεD,495は、用いるリンカー-薬物コンジュゲートを任意のモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定し、ランベルト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)を利用することで得ることができる。抗体-薬物複合体水溶液のA280及びA495を測定し、これらの値を式(i)及び(ii)に代入して連立方程式を解くことによって、CA及びCDを求めることができる。さらに、CDをCAで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数を求めることができる。
【0151】
前記式(I)中のkとして表される、本発明の式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを介して抗体に結合した薬物の数は、例えば、1抗体あたりの薬物の平均数によって定義される。本発明の式(1)で示されるヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールまたはリンカー-薬物コンジュゲートと抗体の反応において、その結合数は当該リンカーまたはリンカー-薬物コンジュゲートが反応する抗体上の反応性部位の数によって決定され得る。抗体上の反応性部位は、全てが封鎖されなくてもよく、調製後のADCにおいて抗体に結合した薬物の数が異なるコンジュゲートが混在してもよい。しかし、反応性部位の制御や精製により、抗体に結合した薬物の数が単一であるコンジュゲートを得ることもできる。したがって、1抗体に結合する薬物の数は、分布の平均値であっても単一の値であってもいずれでもよいが、分布が少ない、あるいは無い方がADCの物性が安定化するため、単一の値であることが好ましい。このため、前記式(I)中のkは整数ではない分布のある数または整数を表す。
【0152】
本発明における実施形態において、1抗体あたりに結合する薬物の数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~16であり、更に好ましくは3~12であり、特に好ましくは4~8であり、最も好ましくは8である。
【0153】
本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、細胞内で特異的に分解し、薬物を効果的に徐放できる性能を有することが求められる。その性能を適切に評価するため、例えば、以下に示すような試験を実施し、前記ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの細胞内における分解性、および当該リンカーを結合させた薬物の細胞内での活性を評価することができる。
【0154】
前記ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの細胞内の酵素による分解性を評価するための試験方法については、特に制限はないが、例えば、細胞内の酵素であるリソソーム酵素を用いて、当該リンカーを結合させたモデル化合物または薬物の分解を確認する試験などが挙げられる。具体的には、リソソーム酵素がカテプシンBであれば、カテプシンBに還元剤であるDTTを添加して調製したカテプシンB/DTT溶液に対し、前記ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを結合させたモデル化合物あるいは薬物を含む溶液を添加し、37℃でインキュベート後、サンプリングした溶液のHPLC測定を行い、試験前後のチャートを比較することで分解性を確認することができる。さらに、新規ピークがあれば、マスクロマトグラムを確認することで、リンカーの切断部位、および遊離したモデル化合物または薬物の構造を確認することができる。
【0155】
試験に用いられるモデル化合物については、特に制限はないが、前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールが官能基としてマレイミド基を有する場合は、カテプシンBのシステイン残基とマレイミド基が反応し、酵素反応を阻害するため、マレイミド基と反応するモデル化合物を用いることが好ましく、例えば、チオール基を有する化合物、具体的にはグルタチオンなどが挙げられる。
【0156】
また、試験に用いられる薬物は、前記に示される薬物であれば特に制限されないが、例えば、アミノ基を有する薬物、具体的には、ドキソルビシンなどが挙げられる。
【0157】
さらに、前記へテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを結合させた薬物-リンカー化合物の細胞内での薬理活性を評価するための試験方法について、特に制限はないが、例えば、当該薬物-リンカー化合物を含有した培地を用いて細胞を培養し、細胞生存率を算出することによる細胞毒性試験などが挙げられる。
【0158】
本発明のへテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールに導入されたペプチドリンカーが細胞内で分解されない場合、細胞内で薬物との結合が分解されず、薬物の活性が低下する可能性が考えられる。細胞生存率が高いほど薬物の活性は低いことが示されるため、本試験によって細胞生存率を算出し、ペプチドリンカーを含まないコントロールの薬物-リンカー化合物との細胞生存率と比較することで、本発明のへテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを用いることによる細胞内での薬物の活性を評価することができる。
【0159】
ここで使用する細胞や培地については、特に制限はないが、具体的には、当該薬物-リンカー化合物を培地RPMI-1640に溶解し、HeLa細胞を37℃で培養後、生細胞数測定キットを用いて呈色反応を行い、さらに吸光度測定を行うことで、細胞生存率を算出することができる。細胞生存率は、ブランクの吸光度を差し引いたサンプルの吸光度を、サンプルを含まない細胞のみの吸光度で除することで算出する。
【0160】
また、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールに導入されるオリゴペプチドは、当該リンカーによる疎水性薬物の遮蔽効果を妨げない、より親水性の高い性質を有することが求められる。その性能を適切に評価するため、例えば、以下に示すような試験を実施し、前記ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールの親水性を評価することができる。
【0161】
前記ヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコール中のペプチドの親水性を評価するための試験方法については、特に制限はないが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、逆相(RP)クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によるHPLCなど、当業者に公知の方法によって評価され得る(例えば、「Mant, C.T. et al. Methods Mol Biol. 2007, 386:3-55」を参照)。例示的な実施形態において、逆相HPLCを用いて対象化合物を同一の条件で測定し、ピークトップの保持時間を比較することでペプチドの親水性を評価することができる。逆相HPLCの場合、対象化合物の親水性が高いほど保持時間は短く検出される。
【実施例
【0162】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0163】
1H-NMR分析では日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600を使用した。測定にはφ5mmチューブを用い、重水素化溶媒がCDCl3、CD2Cl2またはDMSO-d6の場合は、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
【0164】
(実施例1 化合物11の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管および冷却管を装備した500 mLの四つ口フラスコにトリスヒドロキシメチルアミノメタン(30.3 g, 250 mmol)、炭酸ナトリウム(5.30g, 50 mmol)、脱水メタノール(237 g)およびベンゾニトリル(5.15g, 50 mmol)を仕込み、65℃にて24時間反応を行った。ろ過を行い、溶媒を減圧留去した後、イソプロピルアルコール、ジクロロメタンを加えて溶解し、10wt%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をテトラヒドロフランに溶解し、ヘキサンを加えて結晶化を行い、ろ過することによって式(11)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 3.06(2H, brs, -OH), 3.65-3.81(4H, dd, >C(CH 2OH)2), 4.38(2H, s, -CNO-CH 2 -), 7.32-7.83(5H, m, arom. H)
【0165】
【化18】
【0166】
(実施例2 化合物12の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌子、Dean-stark管および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコにドデカエチレングリコールモノメチルエーテル(10.4 g, 18.5 mmol)、トルエン(52.0 g)、トリエチルアミン(2.44 g, 24.1 mmol)、塩化メタンスルホニル(2.34 g, 20.4 mmol)を仕込み、40℃にて3時間反応を行った。ジクロロメタンを加えて希釈した後に水洗を行い、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し式(12)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 3.08(3H, s, -O-SO2-CH 3 ), 3.38(3H, s, -O-CH 3 ), 3.45-3.85(46H, m, CH3-O-(CH 2 CH 2O)11-CH 2 CH2-O-SO2-CH3), 4.38(2H, m, -CH 2 -O-SO2-CH3)
【0167】
【化19】
【0168】
(実施例3 化合物13の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌子、Dean-stark管および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコに式(11)の化合物(0.21 g, 1.01 mmol)、脱水テトラヒドロフラン(7.70 g)、式(12)の化合物(2.46 g, 3.84 mmol)、1M tert-ブトキシカリウム/テトラヒドロフラン溶液(3.72 g, 4.04 mmol)を仕込み、50℃にて4時間反応を行った。ジクロロメタン、25wt%食塩水を加えて水洗を行い、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し式(13)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.75(100H, m, >C(CH 2O)2-, -O-(CH 2 CH 2O)12-, -CNO-CH 2 -), 4.36(2H, s, -CNO-CH 2 -), 7.37-7.94(5H, m, arom.H)
【0169】
【化20】
【0170】
(実施例4 化合物14の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌子、Dean-stark管および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコに式(13)の化合物(1.13 g, 0.877 mmol)、蒸留水(31.1 g)を加え溶解させた。85%リン酸(0.43 ml)を加えてpH 1.5に調整した後、50℃にて3時間反応を行った。次に冷却しながら400g/L水酸化ナトリウム水溶液(5.58 ml)を加えた後、50℃にて6時間反応を行った。続いて、6N塩酸を加えてpH 2.0に調整した後、トルエン、クロロホルムを加えて洗浄を行った。25wt%食塩水となるよう水層に食塩を加えた後、400g/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH 12.5に調整した。トルエンを用いて抽出を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し式(14)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 3.08(1H, brs, -OH), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.80(102H, m, >C(CH 2O)2-, -O-(CH 2 CH 2O)12-, >CNH2-CH 2 -OH)
【0171】
【化21】
【0172】
(実施例5 化合物15の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌子、Dean-stark管および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコに式(14)の化合物(1.80 g, 1.49 mmol)、N末端を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護したL-フェニルアラニン-グリシン(Fmoc-Phe-Gly)(0.862 g, 1.94 mmol, 渡辺化学工業(株)製)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(0.670 g, 1.94 mmol)、アセトニトリル(18.0 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.263 g, 2.04 mmol)を仕込み、25℃にて7時間反応を行った。5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液(10.8 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエン、ヘキサンにて洗浄した。トルエン、クロロホルムを用いて抽出を行った後、5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液、20wt%食塩含有5wt%リン酸水素二ナトリウム水溶液を用いて水洗を行った。さらに、有機層を20wt%食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去し式(15)の化合物を得た。
1H-NMR(CD2Cl2, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.99-3.26(2H, m, -CH-CH 2 -phenyl), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.45-3.90(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH2-phenyl, >CCH2-NHCO-CH 2 -NHCO-CH-, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc(1H)) 3.94-4.46(6H, m, >CNH-CH 2 -OH, >CCH2-NHCO-CH2-NHCO-CH-, >CNH-CH2-OH, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc(1H), -NH-C(O)O-CH2-Fmoc(CH)), 5.63(1H, d, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 6.74(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.09-7.76(13H, m, arom.H)
【0173】
【化22】
【0174】
(実施例6 化合物16の合成)
攪拌子を入れた20 mLのスクリュー管に式(15)の化合物(1.80 g, 1.10 mmol)、N-フェニルモルホリン(0.449 g, 3.85 mmol)、p-ニトロフェニルクロロホルメート(0.621 g, 3.08 mmol)、ジクロロメタン(17.9 g)を加え、25℃にて2 時間反応を行った。さらに、6.7wt%βアラニン水溶液(11.8 g)を加えて希釈後、ジクロロメタンを減圧留去し、400g/L水酸化ナトリウム水溶液(0.869 g, 6.60 mmol)を加え、25℃にて1時間反応を行った。反応液をトルエン、ジクロロメタンにて洗浄後、15wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層にアセトニトリルを添加し、15wt%食塩含有5wt%炭酸ナトリウム水溶液を用いて水洗後、さらに20wt%食塩含有0.2M塩酸を用いて水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(16)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.47-2.52(2H, m, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 2.95-3.24(2H, m, -CH-CH 2 -phenyl), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.45-3.90(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH2-phenyl, >CCH2-NHCO-CH 2 -NHCO-CH-, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc(1H), >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH), 3.94-4.55(5H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc(CH), >CCH2-NHCO-CH2-NHCO-CH-, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc(1H)), 5.72(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH2-CH2-COOH), 5.81(1H, d, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 6.71(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.10-7.80(13H, m, arom.H)
【0175】
【化23】
【0176】
(実施例7 化合物17の合成)
攪拌子を入れた50 mLのスクリュー管に式(16)の化合物(0.935 g, 0.535 mmol)、ピペリジン(0.846 g, 10.7 mmol)、クロロホルム(6.55 g)を加え、25℃にて2 時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて水洗後、有機層にトルエンを加えて希釈し、蒸留水を用いて水層へ抽出を行った。400g/L 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した水層をトルエンにて洗浄した後、6N塩酸を用いて水層pHをpH2.5に調整した。15wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、クロロホルムを用いて抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(17)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.58(2H, m, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 3.15-3.30(1H, m, -NHCO-CH-NH2), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.45-3.90(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CCH2-NHCO-CH 2 -NHCO-CH-, -OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH), 4.20-4.50(2H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 4.59(1H, s, >CCH2-NHCO-CH2-NHCO-CH-NH2), 6.18(1H, brs, -OC(O)-NH-CH2-CH2-COOH), 6.65(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.20-7.50(5H, m, arom.H), 8.77(2H, s, -CH-NH 2 )
【0177】
【化24】
【0178】
(実施例8 化合物18の合成)
攪拌子を入れた30 mLのスクリュー管に式(17)の化合物(0.703 g, 0.450 mmol)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸N-スクシンイミジル(0.181g, 0.540 mmol)、トリエチルアミン(0.105 g, 1.04 mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.21 mg)、クロロホルム(13.4 g)を加え、遮光下、25℃にて13時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH2.4)にて水洗後、有機層を濃縮し、残渣を0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH3.0)に溶解した。水層をトルエンにて洗浄した後、トルエン、クロロホルムを用いて有機層へ抽出を行った。有機層を20wt%食塩水にて水洗後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(18)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.89-2.09(10H, m, -cyclohexyl-), 2.54(2H, brs, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 2.93-3.20(2H, m, -cyclohexyl-CH 2 -maleimide), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.33-3.95(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CCH2-NHCO-CH 2 -NHCO-CH-, -OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH), 4.28-4.45(2H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 4.74-4.80(1H, m, -NHCO-CH-NHCO-cyclohexyl-), 5.63(1H, brs, -OC(O)-NH-CH2-CH2-COOH), 6.26(1H, d, >CCH2-NHCO-CH2-NHCO-CH-), 6.64(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 6.69(2H, s, -maleimide), 7.07(1H, brs, -NHCO-cyclohexyl-), 7.16-7.26(5H, m, arom.H)
【0179】
【化25】
【0180】
(実施例9 化合物19の合成)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(18)の化合物(0.351 g, 0.201 mmol)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.058 g, 0.503 mmol)、ジメチルアミノプロピルエチルカルボジイミド塩酸塩(0.123 g, 0.643 mmol)、クロロホルム(2.08 g)を加え、遮光下、25℃にて4時間反応を行った。反応液を5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液にて水洗後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(19)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.89-2.01(10H, m, -cyclohexyl-), 2.81-2.90(6H, m, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COO-, -N-succinimidyl), 2.90-3.25(2H, m, -cyclohexyl-CH 2 -maleimide), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.33-3.95(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CCH2-NHCO-CH 2 -NHCO-, -OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COO-), 4.28-4.45(2H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 4.65-4.70(1H, m, -NHCO-CH-NHCO-cyclohexyl-), 5.84(1H, brs, -OC(O)-NH-CH2-CH2-COOH), 6.16(1H, d, >CCH2-NHCO-CH2-NHCO-CH-), 6.55(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 6.69(2H, s, -maleimide), 6.91(1H, brs, -NHCO-cyclohexyl-), 7.15-7.28(5H, m, arom.H)
【0181】
【化26】
【0182】
(実施例10 化合物18とグルタチオンの反応)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(18)の化合物(1 mg)、酢酸にてpH5に調整した10mMグルタチオン/25mM酢酸ナトリウム/1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA)水溶液(1 ml)を仕込み、遮光下、25℃にて3時間反応を行い、式(20)の化合物を含む水溶液を得た。
【0183】
【化27】
【0184】
(実施例11 化合物21の合成)
攪拌子を入れた30mlのスクリュー管に式(14)の化合物(0.350 g, 0.290 mmol)、N末端を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護したL-バリン-L-アラニン-グリシン(Fmoc-Val-Ala-Gly)(0.154 g, 0.363 mmol,GenScript製)、DMT-MM(0.130 g, 0.508 mmol)、アセトニトリル(3.50 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073 g, 0.566 mmol)を仕込み、25℃にて13時間反応を行った。5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液(4.20 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエン、ヘキサンにて洗浄した。トルエン、クロロホルムを用いて抽出を行った後、5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液、5wt%リン酸水素二ナトリウム水溶液を用いて水洗を行った。さらに、有機層を20wt%食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去し式(21)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm):0.78-0.93(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.22(3H, d, >CH-CH 3 ), 1.93-2.04(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.38-3.76(102H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH 2 -NHCO-), 3.83-3.94(1H, m, -CH2-Fmoc(CH)), 4.16-4.42(6H, m, >CH-CH3, >CH-CH(CH3)2, -CH 2 -Fmoc, >CNH-CH 2 -OH), 4.66(1H, t, >CNH-CH2-OH), 7.09(1H, s, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 7.28-7.43(5H, m, arom.H, >CNHCO-CH2-NHCO-), 7.70-7.92(4H, m, arom.H), 8.00-8.11(2H, m, -NHCO-CH-NHCO-CH-, -NHCO-CH-NHCO-CH-)
【0185】
【化28】
【0186】
(実施例12 化合物22の合成)
攪拌子を入れた6 mLのスクリュー管に式(21)の化合物(0.306 g, 0.185 mmol)、N-フェニルモルホリン(0.106 g, 0.648 mmol)、p-ニトロフェニルクロロホルメート(0.104 g, 0.518 mmol)、ジクロロメタン(2.40 g)を加え、25℃にて9 時間反応を行った。さらに、6.7wt%βアラニン水溶液(2.00 g)を加えて希釈後、ジクロロメタンを減圧留去し、400g/L水酸化ナトリウム水溶液(0.150 g, 1.11 mmol)を加え、25℃にて1時間反応を行った。反応液をトルエン、ジクロロメタンにて洗浄後、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。15wt%食塩含有5wt%炭酸ナトリウム水溶液を用いて水洗後、さらに20wt%食塩含有0.2M塩酸を用いて水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(22)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.78-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.22(3H, d, >CH-CH 3 ), 1.92-2.03(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.38(2H, t, >CCH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 3.12-3.21(2H, m, >CCH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.38-3.78(102H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH 2 -NHCO-), 3.88(1H, t, -CH2-Fmoc(CH)), 4.12-4.40(6H, m, >CH-CH3, >CH-CH(CH3)2, -CH 2 -Fmoc, >CCH 2 -OC(O)-NH-), 7.09-7.28(2H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc, >CCH2-OC(O)-NH-), 7.29-7.45(5H, m, arom.H, >CNHCO-CH2-NHCO-), 7.70-7.94(4H, m, arom.H), 7.96-8.10(2H, m, -NHCO-CH-NHCO-CH-, -NHCO-CH-NHCO-CH-)
【0187】
【化29】
【0188】
(実施例13 化合物23の合成)
攪拌子を入れた9 mLのスクリュー管に式(22)の化合物(0.177 g, 0.100 mmol)、ピペリジン(0.158 g, 2.00 mmol)、クロロホルム(2.50 g)を加え、25℃にて2 時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて水洗後、有機層にトルエンを加えて希釈し、蒸留水を用いて水層へ抽出を行った。400g/L 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した水層をトルエン、クロロホルムにて洗浄した後、6N塩酸を用いて水層pHをpH2.5に調整した。10wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、クロロホルムを用いて抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(23)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.71-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.13-1.31(3H, d, >CH-CH 3 ), 1.82-2.04(3H, m, >CH-CH(CH3)2, >CCH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 2.87-3.13(3H, m, >CCH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH, >CH-CH(CH3)2), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.85(102H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH 2 -NHCO-), 4.03-4.42(3H, m, >CH-CH3, >CCH 2 -OC(O)-NH-), 6.64(1H, brs, >CCH2-OC(O)-NH-), 6.95-7.32(3H, m, >CNHCO-CH2-NHCO-, -NHCO-CH-NHCO-CH-, -NHCO-CH-NHCO-CH-)
【0189】
【化30】
【0190】
(実施例14 化合物24の合成)
攪拌子を入れた9mLのスクリュー管に式(23)の化合物(0.100 g, 0.0637 mmol)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸N-スクシンイミジル(0.0788 g, 0.236 mmol)、トリエチルアミン(8.4 mg, 0.0828 mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.03 mg)、クロロホルム(1.90 g)を加え、遮光下、25℃にて17時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH2.4)にて水洗後、有機層を濃縮し、残渣を0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH3.0)に溶解した。水層をトルエン、クロロホルムにて洗浄した後、トルエン、クロロホルムを用いて有機層へ抽出を行った。有機層を20wt%食塩水にて水洗後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(24)の化合物を得た。
1H-NMR(CD2Cl2, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.81-1.12(8H, m, >CH-CH(CH 3 )2, -cyclohexyl-), 1.31-1.48(5H, d, >CH-CH 3 , -cyclohexyl-), 1.71-2.18(7H, m, >CH-CH(CH3)2, -cyclohexyl-), 2.48-2.63(2H, m, >CCH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 3.34(6H, s, -O-CH 3 ), 3.38-3.95(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH 2 -NHCO-, >CCH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH, -cyclohexyl-CH 2 -maleimide), 4.16-4.38(2H, m, >CH-CH3, >CH-CH(CH3)2), 4.42-4.52(2H, m, >CCH 2 -OC(O)-NH-), 6.17-6.32(2H, m, >CNHCO-CH2-NHCO-, >CCH2-OC(O)-NH-), 6.50(1H, brs, >CNHCO-CH2-NHCO-CH-), 6.68(2H, s, -maleimide), 7.20-7.43(2H, m, >CNHCO-CH2-NHCO-CH-NHCO-CH-, -NHCO-cyclohexyl-)
【0191】
【化31】
【0192】
(実施例15 化合物25の合成)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(24)の化合物(0.100 g, 0.0566 mmol)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(9.8 mg, 0.0849 mmol)、ジメチルアミノプロピルエチルカルボジイミド塩酸塩(0.0228 g, 0.119 mmol)、クロロホルム(0.800 g)を加え、遮光下、25℃にて4時間反応を行った。反応液を5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液にて水洗後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(25)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.75-0.97(8H, m, >CH-CH(CH 3 )2, -cyclohexyl-), 1.17-1.33(5H, d, >CH-CH 3 , -cyclohexyl-), 1.48-1.75(5H, m, -cyclohexyl-), 1.93-2.02(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.17-2.27(1H, m, -cyclohexyl-), 2.81(4H, s, -N-succinimidyl), 2.83-2.88(2H, m, >CCH2-OC(O)-NH-CH2-CH 2 -), 3.23(6H, s, -O-CH 3 ), 3.42-3.75(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH 2 -NHCO-, >CCH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-, -cyclohexyl-CH 2 -maleimide), 4.08-4.33(4H, m, >CH-CH3, >CH-CH(CH3)2, >CCH 2 -OC(O)-NH-), 7.01(2H, s, -maleimide), 7.26-7.35(2H, m, >CNHCO-CH2-NHCO-, >CCH2-OC(O)-NH-), 7.62-7.72(1H, m, -NHCO-cyclohexyl-), 7.90-8.05(2H, m, >CNHCO-CH2-NHCO-CH-, >CNHCO-CH2-NHCO-CH-NHCO-CH-)
【0193】
【化32】
【0194】
(実施例16 化合物26の合成)
撹拌子を入れた50mlのスクリュー管に式(14)の化合物(2.00 g, 1.66 mmol)、Fmoc-βアラニン(0.568 g, 1.82 mmol)、DMT-MM(0.631 g, 1.82 mmol)、アセトニトリル(18.0 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.279 g, 2.16 mmol)を仕込み、25℃にて2時間反応を行った。5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液(12.0 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエンにて洗浄した。以降、実施例5と同様に精製を行い、式(26)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.99-3.26(2H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -CH2-NHCO-), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.45-3.90(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNH-CH 2 -OH, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-), 4.18-4.22(1H, m, >CNH-CH2-OH), 4.34(1H, t, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc(CH)), 4.40(2H, d, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc), 5.75-5.80(1H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 6.34(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.28-7.78(8H, m, arom.H)
【0195】
【化33】
【0196】
(実施例17 化合物27の合成)
攪拌子を入れた20 mLのスクリュー管に式(26)の化合物(2.00 g, 1.33 mmol)、N-フェニルモルホリン(0.762 g, 4.00 mmol)、p-ニトロフェニルクロロホルメート(0.753 g, 3.20 mmol)、ジクロロメタン(19.3 g)を加え、25℃にて6 時間反応を行った。さらに、6.7wt%βアラニン水溶液(14.3 g)を加えて希釈後、ジクロロメタンを減圧留去し、25℃にて1時間反応を行った。反応液をトルエン、ジクロロメタンにて洗浄後、15wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。有機層にアセトニトリルを添加し、15wt%食塩含有5wt%炭酸ナトリウム水溶液を用いて水洗後、さらに20wt%食塩含有0.2M塩酸を用いて水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(27)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.38(2H, brs, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COOH), 2.51(2H, t, >CCH2-NHCO-CH 2 -CH2-), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.90(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, -OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COOH), 4.19-4.23(1H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc(CH)), 4.45-4.50(4H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc), 5.56(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 5.93(1H, brs, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 6.33(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.26-7.78(8H, m, arom.H)
【0197】
【化34】
【0198】
(実施例18 化合物28の合成)
撹拌子を入れた20mLのスクリュー管に式(27)の化合物(0.500 g, 0.310 mmol)、C末端にp-アミノベンジルアルコール(pAB)を縮合させたL-フェニルアラニン-グリシン塩酸塩(H-Phe-Gly-pAB塩酸塩)(0.141 g, 0.387 mmol, 渡辺化学工業(株)製)、DMT-MM(0.134 g, 0.387 mmol)、アセトニトリル(5.00 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.092 g, 0.712 mmol)を仕込み、25℃にて3時間反応を行った。5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液(3.00 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエン、ヘキサンにて洗浄した。以降、実施例5と同様に精製を行い、式(28)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.20-2.45(4H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -CH2-, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 2.60-3.80(108H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-OH), 3.80-4.57(9H, -NH-C(O)O-CH 2 -Fmoc, -CONH-phenyl-CH 2 -OH, -CH2-Fmoc(CH), -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -CH2-OH, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-), 4.61(2H, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 6.02-6.15(2H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 6.53(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-CH2-), 7.11-7.84(17H, m, arom.H), 8.89(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0199】
【化35】
【0200】
(実施例19 化合物29の合成)
攪拌子を入れた6mLのスクリュー管に式(28)の化合物(0.100 g, 0.052 mmol)、ピペリジン(0.082 g, 1.04 mmol)、クロロホルム(0.700 g)を加え、25℃にて2 時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて水洗後、有機層にトルエンを加えて希釈し、蒸留水を用いて水層へ抽出を行った。400g/L 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した水層をトルエンにて洗浄した後、6N塩酸を用いて水層pHをpH2.5に調整した。15wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、クロロホルムを用いて抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(29)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.20-2.55(6H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -, -CH 2 -NH2), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 2.90-3.80(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-OH), 3.80-4.57(6H, -CONH-phenyl-CH 2 -OH, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -CH2-OH), 4.61(2H, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 6.01(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 6.53(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-CH2-), 7.20-7.80(9H, m, arom.H), 8.70(2H, brs, -CH2-NH 2 ), 8.87(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0201】
【化36】
【0202】
(実施例20 化合物30の合成)
撹拌子を入れた6mlのスクリュー管に式(29)の化合物(0.100 g, 0.058 mmol)、3-マレイミドプロピオン酸(0.012 g, 0.072 mmol)、DMT-MM(0.020 g, 0.072 mmol)、トリエチルアミン(0.013 g, 0.132 mmol)、アセトニトリル(1.00 g)を加え、遮光下、25℃で2時間反応を行った。0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH3.0)(0.600 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエンにて洗浄した。トルエン、クロロホルムを用いて抽出を行った後、20wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH2.4)、20wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH6.5)を用いて水洗を行った。さらに、有機層を20wt%食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(30)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):2.13-2.57(6H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -, -NHCO-CH 2 -CH2-maleimide), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 2.90-3.80(111H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-OH, -CH 2 -maleimide, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, -CH-CH2-phenyl), 3.80-4.57(6H, -CONH-phenyl-CH 2 -OH, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -CH2-OH), 4.61(2H, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 6.01(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 6.53(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-CH2-), 6.69(2H, s, -maleimide), 7.20-7.80(9H, m, arom.H), 8.87(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0203】
【化37】
【0204】
(実施例21 化合物31の合成)
撹拌子を入れた6mlのスクリュー管に式(30)の化合物(0.100 g, 0.054 mmol)、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(0.058 g, 0.227 mmol)、トリエチルアミン(0.025 g, 0.243 mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.02 mg)を仕込み、25℃にて2時間反応を行った。反応液を15wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH2.4)にて水洗後、アセトニトリル、ヘキサン、0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH7.0)を仕込み洗浄を行った。さらに、有機層を15wt%食塩含有0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH2.4)にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去し式(31)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.17-2.33(6H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-, -NHCO-CH 2 -CH2-maleimide, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -), 2.61(4H, s, -N-succinimidyl), 2.75-2.83(1H, m, >CH-CH2-phenyl), 3.04-3.18(4H, m, >CNHCO-CH2-CH 2 -, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.41-3.70(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-OC(O)-, -CH 2 -maleimide), 3.80-4.00(2H, m, >CH-CH 2 -phenyl), 4.14(2H, s, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 4.45-4.57(1H, m, >CCH2-NHCO-CH2-CH2-), 4.94(2H, s, -CONH-phenyl-CH 2 -OC(O)O-), 6.99(2H, s, -maleimide), 7.16-7.30(5H, m, arom.H), 7.32(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 7.40(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-), 7.65(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-), 7.83-7.92(1H, brs, -NHCO-CH2-CH2-maleimide), 8.20-8.45(2H, m, -CONH-CH-CONH-CH2-, -CONH-CH-CONH-CH2-), 9.91(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-)
【0205】
【化38】
【0206】
(実施例22 化合物32の合成)
攪拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(30)の化合物(0.100 g, 0.054 mmol)、p-ニトロフェニルクロロホルメート(0.026 g, 0.130 mmol)、N-フェニルモルホリン(0.026 g, 0.227 mmol)、ジクロロメタン(0.716 g)を仕込み、25℃にて12時間反応を行った。蒸留水(0.016 g, 0.0756 mmol)、N-フェニルモルホリン(0.044 g, 0.270 mmol)を加えて反応をクエンチ後、ヘキサンを加えて希釈し、20wt%食塩含有0.2M塩酸にて洗浄を行った。さらに、有機層を10wt%食塩含有0.15Mホウ酸緩衝液(pH10)、10wt%食塩含有5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をアセトニトリルに溶解し、ヘキサン、t-ブタノールで洗浄後、溶媒を減圧留去して式(32)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm):2.19-2.32(6H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-, -NHCO-CH 2 -CH2-maleimide, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -), 2.72-2.82(1H, m, >CH-CH2-phenyl), 3.03-3.22(4H, m, >CNHCO-CH2-CH 2 -, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-), 3.23(6H, s, -O-CH 3 ), 3.38-3.70(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-OC(O)-, -CH 2 -maleimide), 3.80-3.96(2H, m, >CH-CH 2 -phenyl), 4.15(2H, s, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-), 4.45-4.56(1H, brs, >CNHCO-CH2-CH2-), 5.25(2H, s, -CONH-phenyl-CH 2 -OC(O)O-), 6.99(2H, s, -maleimide), 7.14-7.35(6H, m, arom.H, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 7.42(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-), 7.54-7.60(2H, m, arom.H(p-nitrophenyl)), 7.64-7.72(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-), 7.83-7.92(1H, m, -NHCO-CH2-CH2-maleimide), 8.22-8.43(4H, m, -CONH-CH-CONH-CH2-, -CONH-CH-CONH-CH2-, arom.H(p-nitrophenyl)), 9.90(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-)
【0207】
【化39】
【0208】
(実施例23 化合物33の合成)
撹拌子を入れた6mlのスクリュー管に式(28)の化合物(0.100 g, 0.052 mmol)、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(0.056 g, 0.218 mmol)、トリエチルアミン(0.024 g, 0.234 mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(0.02 mg)を仕込み、25℃にて2時間反応を行った。以降、実施例16と同様に精製を行い、式(33)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.20-2.45(4H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -CH2-, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -), 2.82(4H, s, -N-succinimidyl), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 2.90-3.80(108H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, -CH-CH 2 -phenyl, >CNH-CH2-OC(O)-NH-CH 2 -CH2-, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, -CONH-CH 2 -CONH-phenyl-CH2-), 3.80-4.65(8H, -NH-C(O)O-CH 2 -Fmoc, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-, -CH2-Fmoc(CH), -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH2-), 5.26(2H, s, -CONH-phenyl-CH 2 -OC(O)O-), 6.02-6.15(2H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 6.53(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-CH2-), 7.11-7.84(17H, m, arom.H), 8.89(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OC(O)O-)
【0209】
【化40】
【0210】
(実施例24 化合物34の合成)
撹拌子を入れた14mLのスクリュー管に式(27)の化合物(0.300 g, 0.186 mmol)、C末端にp-アミノベンジルアルコール(pAB)を縮合させたL-バリン-シトルリン(H-Val-Cit-pAB)(0.088 g, 0.233 mmol, 渡辺化学工業(株)製), DMT-MM(0.080 g, 0.233 mmol)、アセトニトリル(3.00 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.031 g, 0.242 mmol)を仕込み、25℃にて2時間反応を行った。5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液(1.80 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエンにて洗浄した。以降、実施例5と同様に精製を行い、式(34)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm):0.76-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.30-1.48(2H, m, -CH2-CH 2 -CH2-NHCO-NH2), 1.55-1.78(2H, m, -CH 2 -CH2-CH2-NHCO-NH2), 1.92-2.04(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.22-2.44(4H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-NHCO-, >CCH2-O-CONH-CH2-CH 2 -), 2.87-3.10(2H, m, -CH2-CH2-CH 2 -NHCO-NH2), 3.23(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.72(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-,>CNHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, >CCH2-O-CONH-CH 2 -CH2-), 4.15(2H, brs, >CCH 2 -O-CONH-), 4.18-4.24(2H, m, -CH2-Fmoc(CH), >CH-CH(CH3)2), 4.25-4.32(2H, m, -CH 2 -Fmoc(CH)), 4.36-4.42(1H, m, >CH-CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 4.42(2H, d, -CONH-phenyl-CH 2 -OH), 5.08(1H, t, -CONH-phenyl-CH2-OH), 5.40(2H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH 2 ), 5.94-6.05(1H, m, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 7.02-7.10(1H, m, >CCH2-O-CONH-CH2-CH2-), 7.16-7.28(3H, m, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-, -CONH-phenyl-CH2-OH), 7.31-7.47(5H, m, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-, arom.H(Fmoc)), 7.54(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OH), 7.67(2H, d, arom.H(Fmoc)), 7.83-8.16(4H, m, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, arom.H(Fmoc)), 9.88(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0211】
【化41】
【0212】
(実施例25 化合物35の合成)
攪拌子を入れた9mLのスクリュー管に式(34)の化合物(0.150 g, 0.076 mmol)、ピペリジン(0.120 g, 1.52 mmol)、クロロホルム(1.34 g)を加え、25℃にて3 時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて水洗後、有機層にトルエンを加えて希釈し、蒸留水を用いて水層へ抽出を行った。400g/L 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した水層をトルエン、クロロホルムにて洗浄した後、15wt%食塩水となるよう水層に食塩を溶解し、クロロホルムを用いて抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(35)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.76-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.30-1.50(2H, m, -CH2-CH 2 -CH2-NHCO-NH2), 1.52-1.75(2H, m, -CH 2 -CH2-CH2-NHCO-NH2), 1.92-2.02(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.13-2.43(4H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-NH2, >CCH2-O-CONH-CH2-CH 2 -), 2.68-2.80(2H, m, >CNHCO-CH2-CH 2 -NH2), 2.87-3.08(2H, m, -CH2-CH2-CH 2 -NHCO-NH2), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.15-3.70(102H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CCH2-O-CONH-CH 2 -CH2-), 4.16(2H, brs, >CCH 2 -O-CONH-), 4.20(1H, t, >CH-CH(CH3)2), 4.36-4.41(1H, m, >CH-CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 4.42(2H, d, -CONH-phenyl-CH 2 -OH), 5.08(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH), 5.41(2H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH 2 ), 6.00(1H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 7.04(1H, brs, >CCH2-O-CONH-CH2-CH2-), 7.18-7.28(2H, m, -CONH-phenyl-CH2-OH), 7.48-7.63(3H, m, -CONH-phenyl-CH2-OH, >CNHCO-CH2-CH2-NH2), 7.89-8.20(2H, m, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-), 9.89(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0213】
【化42】
【0214】
(実施例26 化合物36の合成)
撹拌子を入れた6mlのスクリュー管に式(35)の化合物(0.100 g, 0.057 mmol)、3-マレイミドプロピオン酸(0.011 g, 0.063 mmol)、DMT-MM(0.022 g, 0.063 mmol)、トリエチルアミン(6.9 mg, 0.068 mmol)、アセトニトリル(0.900 g)を加え、遮光下、25℃で2時間反応を行った。0.2Mクエン酸りん酸緩衝液(pH3.0)(1.20 g)を加えた後、アセトニトリルを減圧留去し、水層をトルエンにて洗浄した。以降、実施例20と同様に精製を行い、式(36)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):0.76-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.32-1.48(2H, m, -CH2-CH 2 -CH2-NHCO-NH2), 1.52-1.77(2H, m, -CH 2 -CH2-CH2-NHCO-NH2), 1.93-2.02(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.17-2.44(6H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-NHCO-CH2-CH2-, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-CH 2 -CH2-, >CCH2-O-CONH-CH2-CH 2 -), 2.87-3.08(2H, m, -CH2-CH2-CH 2 -NHCO-NH2), 3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.13-3.74(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH2-CH 2 -NHCO-CH2-CH2-, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-CH2-CH 2 -, >CCH2-O-CONH-CH 2 -CH2-), 4.15(2H, brs, >CCH 2 -O-CONH-), 4.16-4.23(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 4.34-4.41(1H, m, >CH-CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 4.42(2H, d, -CONH-phenyl-CH 2 -OH), 5.08(1H, t, -CONH-phenyl-CH2-OH), 5.40(2H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH 2 ), 5.99(1H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 7.00(2H, s, -maleimide), 7.04(1H, brs, >CCH2-O-CONH-CH2-CH2-), 7.22-7.32(3H, m, -CONH-phenyl-CH2-OH, >CNHCO-CH2-CH2-), 7.54(2H, d, -CONH-phenyl-CH2-OH), 7.88-8.16(3H, m, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-), 9.88(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0215】
【化43】
【0216】
(実施例27 化合物37の合成)
攪拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(36)の化合物(0.100 g, 0.0483 mmol)、炭酸ビス(4-ニトロフェニル) (0.029 g, 0.0966 mmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(0.0094 g, 0.0725 mmol)、ジクロロメタン(0.640 g)を仕込み、25℃にて3時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて洗浄を行った。さらに、有機層を10wt%食塩含有0.15Mホウ酸緩衝液(pH10)、20wt%食塩含有5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をアセトニトリルに溶解し、ヘキサン、t-ブタノールで洗浄後、溶媒を減圧留去して式(37)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.78-0.92(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.32-1.52(2H, m, -CH2-CH 2 -CH2-NHCO-NH2), 1.54-1.80(2H, m, -CH 2 -CH2-CH2-NHCO-NH2), 1.93-2.02(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.16-2.42(6H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-NHCO-, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-CH 2 -CH2-, >CCH2-O-CONH-CH2-CH 2 -), 2.90-3.08(2H, m, -CH2-CH2-CH 2 -NHCO-NH2),3.24(6H, s, -O-CH 3 ), 3.13-3.75(106H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-CH2-CH 2 -, >CCH2-O-CONH-CH 2 -CH2-), 4.15(2H, brs, >CCH 2 -O-CONH-), 4.20(1H, t, >CH-CH(CH3)2), 4.33-4.46(1H, m, >CH-CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 5.24(2H, brs, -CONH-phenyl-CH 2 -O-), 5.42(2H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH 2 ), 6.00(1H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 7.00(2H, s, -maleimide), 7.05(1H, brs, >CCH2-O-CONH-CH2-CH2-), 7.32(1H, brs, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-), 7.37-7.47(2H, m, -CONH-phenyl-CH2-O-), 7.57(2H, d, arom.H(p-nitrophenyl)), 7.63-7.68(2H, m, -CONH-phenyl-CH2-O-), 7.80-8.18(3H, m, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-), 8.31(2H, d, arom.H(p-nitrophenyl)), 10.1(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-O-)
【0217】
【化44】
【0218】
(実施例28 化合物38の合成)
攪拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(34)の化合物(0.100 g, 0.0506 mmol)、炭酸ビス(4-ニトロフェニル) (0.031 g, 0.101 mmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(0.0098 g, 0.0759 mmol)、ジクロロメタン(0.671 g)を仕込み、25℃にて3時間反応を行った。反応液を20wt%食塩含有0.2M塩酸にて洗浄を行った。さらに、有機層を10wt%食塩含有0.15Mホウ酸緩衝液(pH10)、20wt%食塩含有5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去した。残渣をアセトニトリルに溶解し、ヘキサン、t-ブタノールで洗浄後、溶媒を減圧留去して式(38)の化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 内部標準TMS); δ(ppm): 0.77-0.90(6H, m, >CH-CH(CH 3 )2), 1.33-1.51(2H, m, -CH2-CH 2 -CH2-NHCO-NH2), 1.53-1.78(2H, m, -CH 2 -CH2-CH2-NHCO-NH2), 1.93-2.03(1H, m, >CH-CH(CH3)2), 2.22-2.43(4H, m, >CNHCO-CH 2 -CH2-NHCO-, >CCH2-O-CONH-CH2-CH 2 -), 2.87-3.15(2H, m, -CH2-CH2-CH 2 -NHCO-NH2), 3.23(6H, s, -O-CH 3 ), 3.13-3.70(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CNHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, >CCH2-O-CONH-CH 2 -CH2-), 4.13-4.23(4H, m, >CCH 2 -O-CONH-, -CH2-Fmoc(CH), >CH-CH(CH3)2), 4.24-4.29(2H, m, -CH 2 -Fmoc(CH)), 4.36-4.42(1H, m, >CH-CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 5.24(2H, brs, -CONH-phenyl-CH 2 -OH), 5.41(2H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH 2 ), 6.00(1H, brs, -CH2-CH2-CH2-NHCO-NH2), 7.04(1H, brs, >CCH2-O-CONH-CH2-CH2-), 7.19(1H, brs, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-), 7.31-7.38(3H, m, >CNHCO-CH2-CH2-NHCO-, arom.H(Fmoc)), 7.38-7.46(4H, m, -CONH-phenyl-CH2-OH, arom.H(Fmoc)), 7.56-7.71(6H, m, -CONH-phenyl-CH2-OH, arom.H(Fmoc, p-nitrophenyl)), 7.87-8.20(4H, m, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, -(CH2)2-CONH-CH-CONH-CH-, arom.H(Fmoc)), 8.28-8.33(2H, m, arom.H(p-nitrophenyl)), 10.1(1H, brs, -CONH-phenyl-CH2-OH)
【0219】
【化45】
【0220】
(実施例29 化合物31とドキソルビシンのコンジュゲート)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管にドキソルビシン塩酸塩(2.62mg, 4.51μmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(1.55mg, 11.5μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド、および式(31)の化合物(10.0mg, 5.01μmol)を仕込み、25℃で4時間反応を行った。反応液をジクロロメタンで希釈後、5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液、イオン交換水を用いて水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去し式(39)の薬物-リンカー化合物を得た。
【0221】
【化46】
【0222】
(実施例30 化合物33とドキソルビシンのコンジュゲート)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管にドキソルビシン塩酸塩(2.53mg, 4.36μmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(1.50mg, 11.1μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド、および式(33)の化合物(10.0mg, 4.84μmol)を仕込み、25℃で4時間反応を行った。以降、実施例29と同様に精製を行い、式(40)の薬物-リンカー化合物を得た。
【0223】
【化47】
【0224】
(実施例31 化合物37とドキソルビシンのコンジュゲート)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管にドキソルビシン塩酸塩(2.62mg, 4.51μmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(1.55mg, 11.5μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド、および式(37)の化合物(10.4mg, 5.01μmol)を仕込み、25℃で4時間反応を行った。反応液をジクロロメタンで希釈後、5wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液、5wt%リン酸水素二ナトリウム水溶液、イオン交換水を用いて水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去して式(41)の薬物-リンカー化合物を得た。
【0225】
【化48】
【0226】
(実施例32 化合物38とドキソルビシンのコンジュゲート)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管にドキソルビシン塩酸塩(2.53mg, 4.36μmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(1.50mg, 11.1μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド、および式(38)の化合物(10.4mg, 4.84μmol)を仕込み、25℃で4時間反応を行った。以降、実施例31と同様に精製を行い、式(42)の薬物-リンカー化合物を得た。
【0227】
【化49】
【0228】
(実施例33 化合物39を用いたADCの調製)
マウスで産生されたモノクローナル抗インターロイキン-1β抗体(0.500mg,Sigma-Aldrich)をリン酸緩衝食塩水(PBS,0.500mL)に溶解した。この溶液0.048mLを0.5mLのポリプロピレン製チューブに入れ、ここに50.0mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA,0.006mL)、0.800mMのトリス(2-カルボキシメチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)水溶液(0.006mL;抗体に対して15当量)を加え、混合物を37℃で1時間振とうした。上記溶液へ、式(39)の化合物の2.50mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液(0.007mL;抗体に対して53当量)を添加し、混合物を20℃で1時間さらに振とうした。N-アセチルシステインの2.50mM水溶液(0.007mL;抗体に対して53当量)を添加し、得られた混合物を20℃で1時間さらに振とうした。PBS(10mL)を用いて平衡化したNAP-5カラム(GE Healthcare Life Science)に上記で得られた溶液を充填し、PBSで溶出させることで、抗体画分を分取した。
【0229】
(実施例34 化合物41を用いたADCの調製)
マウスで産生されたモノクローナル抗インターロイキン-1β抗体(0.500mg,Sigma-Aldrich)をリン酸緩衝食塩水(PBS,0.500mL)に溶解した。この溶液0.048mLを0.5mLのポリプロピレン製チューブに入れ、ここに50.0mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA,0.006mL)、0.800mMのトリス(2-カルボキシメチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)水溶液(0.006mL;抗体に対して15当量)を加え、混合物を37℃で1時間振とうした。上記溶液へ、式(41)の化合物の2.50mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液(0.007mL;抗体に対して53当量)を添加し、混合物を20℃で1時間さらに振とうした。N-アセチルシステインの2.50mM水溶液(0.007mL;抗体に対して53当量)を添加し、得られた混合物を20℃で1時間さらに振とうした。PBS(10mL)を用いて平衡化したNAP-5カラム(GE Healthcare Life Science)に上記で得られた溶液を充填し、PBSで溶出させることで、抗体画分を分取した。
【0230】
(実施例35 化合物39を用いたADCの1抗体あたりの薬物平均結合数の算出)
抗体-薬物複合体における1抗体あたりの平均結合数は、抗体-薬物複合体水溶液の280nm及び495nmの二波長におけるUV吸光度を測定したのちに下記の計算を行うことで、算出することができる。
ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物の複合化反応前後において、抗体及び薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物複合体における抗体濃度及び薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A280=AD,280+AA,280=εD,280CD+εA,280CA 式(i)
A495=AD,495+AA,495=εD,495CD+εA,495CA 式(ii)
ここで、A280は280nmにおける抗体-薬物複合体水溶液の吸光度を示し、A495は495nmにおける抗体-薬物複合体水溶液の吸光度を示し、AA,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、AA,495は495nmにおける抗体の吸光度を示し、AD,280は280nmにおける薬物-リンカー化合物の吸光度を示し、AD,495は495nmにおける薬物-リンカー化合物の吸光度を示し、εA,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εA,495は495nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εD,280は280nmにおける薬物-リンカー化合物のモル吸光係数を示し、εD,495は495nmにおける薬物-リンカー化合物のモル吸光係数を示し、CAは抗体-薬物複合体における抗体濃度を示し、CDは抗体-薬物複合体における薬物濃度を示す。
ここで、εA,280、εA,495、εD,280、εD,495は、事前に用意した値(推定値もしくは化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。εA,495は、通常、ゼロである。εD,280及びεD,495は、用いる薬物-リンカー化合物をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベルト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ることができる。抗体-薬物複合体水溶液のA280及びA495を測定し、これらの値を式(i)及び(ii)に代入して連立方程式を解くことによって、CA及びCDを求めることができる。さらにCDをCAで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数を求めることができる。
モル吸光係数εA,280=206,999(推定値)、εA,495=0、εD,280=10426(実測値)、εD,495=10339(実測値)を用いて上記の連立方程式を解き、1抗体あたりの薬物平均結合数7.8であった。
【0231】
(実施例36 化合物41を用いたADCの1抗体あたりの薬物平均結合数の算出)
実施例35と同様の方法で、モル吸光係数εA,280=206,999(推定値)、εA,495=0、εD,280=9837(実測値)、εD,495=9785(実測値)を用いて計算を行い、1抗体あたりの薬物平均結合数8.1であった。
【0232】
(比較例1 化合物43の合成)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌子、Dean-stark管および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコに式(14)の化合物(0.800 g, 0.663 mmol)、6-マレイミドヘキサン酸(0.161 g, 0.762 mmol)、DMT-MM(0.263 g, 0.762 mmol)、アセトニトリル(8.00 g)、トリエチルアミン(0.081 g, 0.796 mmol)を仕込み、25℃にて7時間反応を行った。pH 3.0クエン酸りん酸緩衝液(pH3.0)を加えた後、トルエンを用いて洗浄を行った。クロロホルムを用いて抽出を行った後、有機層を10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去し式(43)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 1.31(2H, m, -CH 2 CH2CH2-CONH-), 1.62(4H, m, -CH 2 CH2CH 2 CH2-CONH-), 2.18(2H, t, -CH 2 -CONH-), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.40-3.85(104H, m, >C(CH 2O)2-, -O-(CH 2 CH 2O)12-, >CNH-CH 2 -OH, -CH 2 -maleimide), 4.62(1H, t, -OH), 6.23(1H, s, -CH2-CONH-), 6.69(2H, s, -maleimide)
【0233】
【化50】
【0234】
(比較例2 化合物43とグルタチオンの反応)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(43)の化合物(1 mg)、酢酸にてpH5に調整した10mMグルタチオン/25mM酢酸ナトリウム/1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA)水溶液(1 ml)を仕込み、遮光下、25℃にて3時間反応を行い、式(44)の化合物を含む水溶液を得た。
【0235】
【化51】
【0236】
(比較例3 化合物45の合成)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管に式(27)の化合物(0.100 g, 0.062 mmol)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.015 g, 0.133 mmol)、ジメチルアミノプロピルエチルカルボジイミド塩酸塩(0.023 g, 0.121 mmol)、クロロホルム(0.574 g)を加え、25℃にて4時間反応を行った。以降、実施例9と同様に精製を行い、式(45)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm): 2.28-2.43(2H, m, -OC(O)-NH-CH2-CH 2 -COO-), 2.75-2.92(6H, m, >CCH2-NHCO-CH 2 -CH2-, -N-succinimidyl), 3.38(6H, s, -O-CH 3 ), 3.35-3.90(104H, m, >C(CH 2 O)2-, -O-(CH 2 CH 2 O)12-, >CCH2-NHCO-CH2-CH 2 -NHCO-, -OC(O)-NH-CH 2 -CH2-COO-), 4.19-4.23(1H, m, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc(CH)), 4.35-4.50(4H, m, >CNH-CH 2 -OC(O)-NH-, -NH-C(O)O-CH 2-Fmoc), 5.62(1H, brs, >CNH-CH2-OC(O)-NH-), 5.88(1H, brs, -NH-C(O)O-CH2-Fmoc), 6.29(1H, brs, >CCH2-NHCO-CH2-), 7.26-7.78(8H, m, arom.H)
【0237】
【化52】
【0238】
(比較例4 化合物45とドキソルビシンのコンジュゲート)
撹拌子を入れた4mlのスクリュー管にドキソルビシン塩酸塩(3.05mg, 4.36μmol)、N,N-ジイソプロピルアミン(1.82mg, 13.4μmol)、N,N-ジメチルホルムアミド、および式(45)の化合物(10.0mg, 5.84μmol)を仕込み、25℃で4時間反応を行った。以降、実施例29と同様に精製を行い、式(46)の薬物-リンカー化合物を得た。
【0239】
【化53】
【0240】
(実施例37 カテプシンBを用いた化合物20、44の分解性試験)
実施例10で得た式(20)の化合物および比較例2で得た式(44)の化合物について、リソソーム内のタンパク質分解酵素であるカテプシンBを用いたペプチドの分解性試験を行った。4mlのスクリュー管にヒト肝臓由来カテプシンB緩衝液(25μg,≧1500units/mg protein, Sigma-Aldrich社製)に酢酸にてpH5に調整した25mM酢酸ナトリウム/1mM EDTA水溶液(0.500 ml)を仕込み、カテプシンB希釈溶液を得た。さらに、4mlスクリュー管にカテプシンB希釈溶液(0.160 ml)、pH5に調整した30mM DTT/25mM 酢酸ナトリウム/15mM EDTA水溶液(0.320 ml)を仕込み、25℃で15分間静置後、あらかじめ37℃に加温したpH5の25mM酢酸ナトリウム/1mM EDTA水溶液(1.32 ml)、式(20)または式(44)の化合物を0.1mg/ml含む水溶液(0.200 ml)を混合した。同時に、37℃に加温したpH5の25mM酢酸ナトリウム/1mM EDTA水溶液(1.80 ml)、式(20)または式(44)の化合物を0.1mg/ml含む水溶液(0.200 ml)を混合し、カテプシンBおよびDTTを含まないコントロールの水溶液を調整した。調整した水溶液(カテプシンB含有/非含有)を37℃でインキュベートし、サンプリング後、下記の測定条件にてHPLC測定を行った。測定結果のチャートを図1~3に示した。
結果として、本発明である式(20)の化合物は、図1のチャートにおいて保持時間12.9分に検出されるが、カテプシンBによる試験後は保持時間10.9分および7.7分に新たにピークが検出され、図2のマスクロマトグラムの結果から、新規ピークの分子量は式(20)の化合物のグリシンのC末端で分解された断片と一致した。一方、比較例である式(44)の化合物は、図3のチャートにおいて保持時間11.9分に検出され、カテプシンBによる試験後も新たなピークは検出されなかった。したがって、ペプチドリンカーを有する式(20)の化合物のみカテプシンBによって特異的に切断されたことから、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、ペプチドリンカー部分が細胞内の酵素依存的に切断されることが分かった。
・HPLC装置:Alliance (Waters)
・カラム:Sun Shell C18 (3.0×150mm、2.6μm ; 株式会社クロマニックテクノロジーズ)
・流速:0.6mL/分
・分析時間:30分
・カラム温度:40℃
・注入量:5μL
・検出器:質量分析計(イオン化:ESI)
・移動相A:0.1Mギ酸/水
・移動相B:0.1Mギ酸/アセトニトリル
・グラジエントプログラム:10%-50%(0分-20分)、50%-95%(20分-25分)、95%-10%(25分-30分)
【0241】
(実施例38 カテプシンBを用いた化合物21、26の分解性試験)
実施例11で得た式(21)の化合物および実施例16で得た式(26)の化合物について、リソソーム内のタンパク質分解酵素であるカテプシンBを用いたペプチドの分解性試験を行った。以降、実施例37と同様の条件にて分解性試験およびHPLC測定を行った。測定結果のチャートを図4~6に示した。
結果として、本発明である式(21)の化合物は、図4のチャートにおいて保持時間13.8分に検出されるが、カテプシンBによる試験後は保持時間13.6分および7.5分に新たにピークが検出され、図5のマスクロマトグラムの結果から、新規ピークの分子量は式(21)の化合物のグリシンのC末端で分解された断片と一致した。一方、式(26)の化合物は、図6のチャートにおいて保持時間13.5分に検出され、カテプシンBによる試験後も新たなピークは検出されなかった。したがって、ペプチドリンカーを有する式(21)の化合物のみカテプシンBによって特異的に切断されたことから、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、ペプチドリンカー部分が細胞内の酵素依存的に切断されることが分かった。
【0242】
(実施例39 カテプシンBを用いた薬物―リンカー化合物40、46の分解性試験)
実施例30で得た式(40)の薬物-リンカー化合物および比較例4で得た式(46)の薬物-リンカー化合物について、リソソーム内のタンパク質分解酵素であるカテプシンBを用いたペプチドの分解性試験を行った。以降、実施例37と同様に試験を行い、下記の測定条件にてHPLC測定を行った。測定結果のチャートを図7~9に示した。
結果として、本発明である式(40)の薬物-リンカー化合物は、図7のチャートにおいて保持時間16.8分に検出されるが、カテプシンBによる試験後は保持時間6.8分に新たにピークが検出された。図8のマスクロマトグラムの結果から新規ピークはドキソルビシンと一致した。一方、比較例である式(46)の薬物-リンカー化合物は、図9のチャートにおいて保持時間14.7分に検出され、カテプシンBによる試験後も新たなピークはみられなかった。したがって、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、ペプチドのC末端にパラ-アミノベンジルアルコール基を有する場合、ペプチドリンカーが切断されることでパラ-アミノベンジルアルコール基も脱離し、薬物を化学的に未修飾の構造で遊離できることが分かった。
・HPLC装置:Alliance (Waters)
・カラム:Sun Shell C18 (3.0×150mm、2.6μm ; 株式会社クロマニックテクノロジーズ)
・流速:0.6mL/分
・分析時間:30分
・カラム温度:40℃
・注入量:5μL
・検出器:質量分析計(イオン化:ESI)、フォトダイオードアレイ(PDA)(波長:480nm)
・移動相A:0.1Mギ酸/水
・移動相B:0.1Mギ酸/アセトニトリル
・グラジエントプログラム:10%-80%(0分-20分)、80%-95%(20分-25分)、95%-10%(25分-30分)
【0243】
(実施例40 カテプシンBを用いた薬物―リンカー化合物42、46の分解性試験)
実施例32で得た式(42)の薬物-リンカー化合物および比較例4で得た式(46)の薬物-リンカー化合物について、リソソーム内のタンパク質分解酵素であるカテプシンBを用いたペプチドの分解性試験を行った。以降、実施例39と同様の条件にて分解性試験およびHPLC測定を行った。測定結果のチャートを図10に示した。
結果として、本発明である式(42)の薬物-リンカー化合物では、実施例39と同様、カテプシンBによる試験後に保持時間6.8分に新たにピークが検出され、マスクロマトグラムの結果から新規ピークはドキソルビシンと一致した。一方、比較例である式(46)の薬物-リンカー化合物では、カテプシンBによる試験後も新たなピークはみられなかった。したがって、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、ペプチドのC末端にパラ-アミノベンジルアルコール基を有する場合、ペプチドリンカーが切断されることでパラ-アミノベンジルアルコール基も脱離し、薬物を化学的に未修飾の構造で遊離できることが分かった。
【0244】
(実施例41 薬物-リンカー化合物40、46を用いた細胞毒性試験)
培地RPMI-1640(10% FBS Pn/St) 10mL、HeLa細胞の80%コンフルエント細胞を用いて、5000cells/wellとなるよう細胞浮遊液を調製し、96穴マイクロプレートの各プレートに細胞浮遊液を分注した。炭酸ガスインキュベーター内で24時間培養した後、培地を交換し、実施例30で得た式(40)の薬物-リンカー化合物または比較例4で得た式(46)の化合物を各種濃度で溶解した培地を添加して、37℃で24時間培養した。マイクロプレートの各ウェルにCell Counting Kit-8溶液((株)同仁化学製)を添加し、炭酸ガスインキュベーター内で2時間呈色反応を行った。マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、下記式により細胞生存率を算出し、薬物の細胞毒性を評価した。各濃度における細胞生存率を図11に示した。
細胞生存率(%)=[(Asample-Ablank)/(Acell-Ablank)]×100
Asample:サンプルの吸光度、
Acell:サンプルを含まない細胞のみの吸光度、
Ablank:細胞を含まないブランクの吸光度
結果として、本発明である式(40)の薬物-リンカー化合物は、サンプル濃度依存的に細胞生存率が低下したことから細胞毒性を示した。一方で、比較例である式(46)の化合物はサンプル濃度が高い条件でも細胞生存率が高く、細胞毒性を示さなかった。したがって、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを用いた薬物-リンカー化合物は、ペプチドリンカーを含まない比較例の薬物-リンカー化合物と比べて細胞毒性が高く、細胞内で薬物を遊離できることが分かった。
【0245】
(実施例42 薬物-リンカー化合物42、46を用いた細胞毒性試験)
培地RPMI-1640(10% FBS Pn/St) 10mL、HeLa細胞の80%コンフルエント細胞を用いて、5000cells/wellとなるよう細胞浮遊液を調製し、96穴マイクロプレートの各プレートに細胞浮遊液を分注した。炭酸ガスインキュベーター内で24時間培養した後、培地を交換し、実施例32で得た式(42)の薬物-リンカー化合物または比較例4で得た式(46)の化合物を各種濃度で溶解した培地を添加して、37℃で24時間培養した。マイクロプレートの各ウェルにCell Counting Kit-8溶液((株)同仁化学製)を添加し、炭酸ガスインキュベーター内で2時間呈色反応を行った。マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、下記式により細胞生存率を算出し、薬物の細胞毒性を評価した。各濃度における細胞生存率を図12に示した。
細胞生存率(%)=[(Asample-Ablank)/(Acell-Ablank)]×100
Asample:サンプルの吸光度、
Acell:サンプルを含まない細胞のみの吸光度、
Ablank:細胞を含まないブランクの吸光度
結果として、細胞生存率の傾向は実施例41と同様であり、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールを用いた薬物-リンカー化合物は、ペプチドリンカーを含まない比較例の薬物-リンカー化合物と比べて細胞毒性が高く、細胞内で薬物を遊離できることが分かった。
【0246】
(実施例43 各種リンカーの親水性評価)
実施例5、11、18および24で得た式(15)、(21)、(28)および(34)の化合物について、下記の測定条件にてHPLC測定を行い、各種リンカーのピークの保持時間を下表に示した。
結果として、バリン-シトルリンを含むリンカーの保持時間が最も短く、次いでバリン-アラニン、フェニルアラニン-グリシンを含むリンカーの順に保持時間が短かった。したがって、本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールのうち、バリン-シトルリンを含むリンカーがより親水性を高められることが分かった。
・HPLC装置:Thermo Fisher Ultimate3000
・カラム:Sun Shell C18 (3.0×150mm、2.6μm ; 株式会社クロマニックテクノロジーズ)
・流速:0.6mL/分
・分析時間:80分
・カラム温度:40℃
・注入量:10μL
・検出器:コロナ荷電化粒子検出器(CAD)
・移動相A:0.1Mギ酸/水
・移動相B:0.1Mギ酸/アセトニトリル
・グラジエントプログラム:20%-95%(0分-75分)、95%-95%(75分-80分)
【0247】
【表1】
【0248】
本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、細胞内において酵素により切断されることで薬物から遊離し、リンカーが結合した状態で存在することによる薬理活性の低下を抑制した。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明のヘテロ二官能性単分散ポリエチレングリコールは、細胞内の酵素によりペプチドリンカーが分解して薬物を徐放し、かつ薬物の疎水性を効果的に遮蔽する近接した二本の単分散ポリエチレングリコール側鎖を有するので、生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸および低分子薬物などの生体機能性分子、ドラッグデリバリーシステムにおける薬物キャリア、または診断用材料や医用デバイスなどの修飾に有用である。
【0250】
本出願は、日本で出願された特願2019-176066を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12