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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】保護回路及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241126BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20241126BHJP
   G05F 1/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02H7/18
G05F1/10 304D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021563883
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044770
(87)【国際公開番号】W WO2021117566
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2019222967
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨士松 将克
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007090(JP,A)
【文献】特開2010-044521(JP,A)
【文献】特開2017-200308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/18
G05F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子を備えた蓄電装置の保護回路であって、
外部端子間に接続された負荷に対して並列に接続された還流回路と、
切換回路と、を備え、
前記還流回路は、
負荷への電流を遮断したときに発生する誘導電流を前記負荷に還流する還流素子と、
前記還流素子に直列に接続された半導体スイッチと、を備え、
前記切換回路は、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて、前記半導体スイッチをオンからオフに切り換え、
前記切換回路は、前記半導体スイッチのゲートとソース間に存在する容量部を含み、前記容量部を、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から放電させることにより、逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて前記半導体スイッチをオンからオフに切り換え、
前記切換回路は、前記容量部と並列に接続されたダイオードを含み、
前記容量部と前記ダイオードは、一方を前記半導体スイッチのソースに接続し、他方を前記半導体スイッチのゲートに接続し、
前記ダイオードは、前記容量部からの放電により前記半導体スイッチがオンからオフに切り換えられてから、前記逆電圧が加わらなくなるまでの間、前記半導体スイッチの前記ソースに加わる電圧を、前記半導体スイッチをオフする値に維持する、保護回路。
【請求項2】
外部端子を備えた蓄電装置の保護回路であって、
外部端子間に接続された負荷に対して並列に接続された還流回路と、
切換回路と、を備え、
前記還流回路は、
負荷への電流を遮断したときに発生する誘導電流を前記負荷に還流する還流素子と、
前記還流素子に直列に接続された半導体スイッチと、を備え、
前記切換回路は、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて、前記半導体スイッチをオンからオフに切り換え、
前記切換回路は、前記半導体スイッチのゲートとソース間に存在する容量部を含み、前記容量部を、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から放電させることにより、逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて前記半導体スイッチをオンからオフに切り換え、
前記切換回路は、第1抵抗と、前記容量部と、前記容量部と並列に接続されたダイオードと、第2抵抗とを含み、
前記第1抵抗は、一方を正極の前記外部端子に接続し、他方を前記半導体スイッチのゲートに接続し、
前記容量部と前記ダイオードは、一方を前記半導体スイッチのソースに接続し、他方を前記半導体スイッチのゲートに接続し、
前記第2抵抗は、一方を負極の前記外部端子に接続し、他方を前記半導体スイッチのソースに接続する、保護回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の保護回路と、蓄電素子とを備えた蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、保護回路及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置は、異常発生時に、負荷への電流を遮断するものがある。この種の技術に関する文献として、下記の文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-136901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘導性の負荷は、電流を遮断したときに誘導電流が発生することから、蓄電装置を保護するため、誘導電流を負荷に還流する還流素子を設けることが一案として考えられる。しかし、蓄電装置の外部端子に充電器や外部電源を逆接続した場合、還流素子に電流が流れ続け、還流素子が異常発熱して破損する場合がある。
【0005】
本明細書では、充電器や外部電源が蓄電装置の外部端子に逆接続されても、還流素子が破損することを抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外部端子を備えた蓄電装置の保護回路であって、外部端子間に接続された負荷に対して並列に接続された還流回路と、切換回路と、を備え、前記還流回路は、負荷への電流を遮断したときに発生する誘導電流を前記負荷に還流する還流素子と、前記還流素子に直列に接続された電流遮断部と、を備え、前記切換回路は、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて、前記電流遮断部を導通から遮断に切り換える。
【0007】
この技術は、蓄電装置に搭載して使用することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
上記技術により、蓄電装置の外部端子に充電器や外部電源が逆接続された場合、所定時間後に電流を遮断することで、還流素子が異常発熱することを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の自動二輪車の側面図
図2】蓄電装置の分解斜視図
図3】二次電池の平面図
図4図3のA-A断面図
図5】蓄電装置の電気的構成を示す図
図6】誘導電流の還流経路を示す図
図7】半導体スイッチのオン、オフを示すタイミングチャート
図8】外部電源が逆接続された状態を示す図
図9】外部電源の電圧を正から負に変化させた時の電流波形
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態の概要)
外部端子を備えた蓄電装置の保護回路は、外部端子間に接続された負荷に対して並列に接続された還流回路と、切換回路と、を備え、前記還流回路は、負荷への電流を遮断したときに発生する誘導電流を前記負荷に還流する還流素子と、前記還流素子に直列に接続された電流遮断部と、を備え、前記切換回路は、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて、前記電流遮断部を導通から遮断に切り換える。
【0011】
この構成では、負荷への電流を遮断したときに発生する誘導電流を、還流回路を用いて負荷に還流させることが出来る。そのため、誘導電流(サージ)から蓄電装置を保護することが出来る。外部端子に充電器や外部電源が逆接続された場合、逆接続から所定時間(遅延時間)が経過すると、電流遮断部が導通から遮断に切り換わる。そのため、逆接続が起きても、遅延時間経過後に電流は遮断される。従って、還流素子が異常発熱して故障することを抑制することが出来る。
【0012】
前記電流遮断部は、半導体スイッチでもよい。半導体スイッチは、機械スイッチに比べて、遮断指令を受けてから電流を遮断するまでの時間が短く、応答に優れる。そのため、電流の遮断性能に優れることから、還流素子が異常発熱し難くなる。
【0013】
前記切換回路は、前記半導体スイッチのゲートとソース間に存在する容量部を含み、前記容量部を、前記外部端子に逆電圧が加わった時点から放電させることにより、逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させて前記半導体スイッチをオンからオフに切り換えてもよい。この構成では、半導体スイッチのソースとゲート間に存在する容量部を利用して、半導体スイッチの遅延時間を作ることが出来る。半導体スイッチが、蓄電装置などが有する制御部からの信号によってではなく、容量部を含むアナログ回路によってオンからオフに切り換えられる。そのため、例えば蓄電装置における蓄電素子の過放電によって制御部が動作していない場合にも、半導体スイッチを適正に動作させることが出来る。
【0014】
前記切換回路は、第1抵抗と、前記容量部と、前記容量部と並列に接続されたダイオードと、第2抵抗とを含み、前記第1抵抗は、一方を正極の前記外部端子に接続し、他方を前記半導体スイッチのゲートに接続し、前記容量部と前記ダイオードは、一方を前記半導体スイッチのソースに接続し、他方を前記半導体スイッチのゲートに接続し、前記第2抵抗は、一方を負極の前記外部端子に接続し、他方を前記半導体スイッチのソースに接続してもよい。この構成では、第1抵抗と容量部によりRC遅延回路を構成することが出来、切換回路を、抵抗、容量部、ダイオードだけで構成することが出来る。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1について、図1から図9を参照しつつ説明する。図1は自動二輪車10の斜視図である。蓄電装置20は、自動二輪車用として使用することが出来る。
【0016】
1.蓄電装置20の構成
蓄電装置20は、図2に示すように、組電池21と、回路基板ユニット45と、収容体50とを備える。収容体50は、合成樹脂材料からなる本体51と蓋体56とを備えている。本体51は有底筒状である。本体51は、底面部52と、4つの側面部53とを備えている。4つの側面部53によって上端部分に上方開口部54が形成されている。
【0017】
収容体50は、組電池21と回路基板ユニット45を収容する。回路基板ユニット45は、回路基板46と回路基板46上に搭載される電子部品とを含み、組電池21の上部に配置されている。蓋体56は、本体51の上方開口部54を閉鎖する。蓋体56の周囲には外周壁57が設けられている。蓋体56には、円柱状の正極の端子35Aと、円柱状の負極の端子35Bとが固定されている。
【0018】
組電池21は複数の電池セル22(蓄電素子)を有する。電池セル22は、図4に示すように、直方体形状のケース23内に電極体27を非水電解質と共に収容したものでもよい。電池セル22は、リチウムイオン二次電池セルでもよい。ケース23は、ケース本体24と、その上方の開口部を閉鎖する蓋25とを有している。
【0019】
電極体27は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体24に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0020】
正極要素には正極集電体28を介して正極の端子35Aが、負極要素には負極集電体30を介して負極の端子35Bがそれぞれ接続されている。正極集電体28及び負極集電体30は、平板状の台座部33と、この台座部33から延びる脚部34とからなる。台座部33には貫通孔が形成されている。脚部34は正極要素又は負極要素に接続されている。正極の端子35A及び負極の端子35Bは、端子本体部36と、その下面中心部分から下方に突出する軸部37とからなる。そのうち、正極の端子35Aの端子本体部36と軸部37とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極の端子35Bにおいては、端子本体部36がアルミニウム製で、軸部37が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極の端子35A及び負極の端子35Bの端子本体部36は、蓋25の両端部に絶縁材料からなるガスケット39を介して配置され、このガスケット39から外方へ露出されている。蓋25は、図3に示すように、圧力開放弁41を有している。圧力開放弁41は、ケース23の内圧が制限値を超えた時に、開放して、ケース23の内圧を下げる。
【0021】
2.蓄電装置20の電気的構成
図5は蓄電装置20のブロック図である。蓄電装置20は、一対の外部端子58Aと外部端子58Bと、組電池21と、電流センサ60と、リレー75と、管理装置70と、保護回路100とを備える。組電池21は、複数の電池セル22から構成されている。組電池21は、定格12Vである。
【0022】
正極の外部端子58Aと組電池21の正極の間、負極の外部端子58Bと組電池21の負極の間は、それぞれ電力供給経路としてのパワーラインPL1、PL2により接続されている。
【0023】
正極のパワーラインPL1には、リレー75が配置されている。リレー75は、ノーマリクローズ(normally close)である。リレー75は、パワーラインPLの電流を遮断する遮断装置である。リレー75に代えて、FETなどの半導体スイッチを遮断装置として用いてもよい。負極のパワーラインPL2には、電流を検出する電流センサ60が配置されている。
【0024】
管理装置70は、CPU71とメモリ73とを備える。管理装置70は、組電池21の状態を監視し、異常を検出した場合、リレー75に電流遮断指令を与え、リレー75をクローズからオープンに切り換える。これにより、蓄電装置20の使用を禁止することが出来る。異常は、電流の異常、電圧の異常、温度の異常などが含まれる。蓄電装置20は、電流センサ60に加えて、組電池21の電圧を検出する電圧検出部、組電池21の温度を検出する温度センサなどを有してもよい。
【0025】
蓄電装置20の外部端子58A、58Bには、負荷12が接続されている。負荷12は、抵抗成分Rとインダクタンス成分Lとを有する誘導性の負荷である。蓄電装置20は、エンジン始動用でもよい。負荷12はスタータモータでもよい。
【0026】
3.保護回路の構成
負荷12が誘導性の場合、電流を遮断すると、誘導起電力が発生する。蓄電装置20は、誘導起電力から保護のため保護回路100を有している。
【0027】
保護回路100は、還流回路110と、切換回路120を備える。還流回路110は、外部端子58A、58B間に接続された負荷12に対して、並列に接続されている。還流回路110は、還流素子111と、半導体スイッチ115を備える。
【0028】
還流素子111は、一例として、ダイオードでもよい。還流素子111は、カソードを正極の外部端子58Aに接続する。還流素子111は、負極のパワーラインPL2から正極のパワーラインPL1に向かう方向が順方向である。還流素子111は、正常時、逆方向の電流を流さないように、外部端子58A、58B間の最大電圧よりも、逆方向電圧が高くてもよい。
【0029】
半導体スイッチ115は、FET(電界効果トランジスタ)でもよい。この例では、NチャンネルのFETである。半導体スイッチ115は、ソースSを還流素子111のアノードに接続し、ドレインDを負極の外部端子58Bに接続する。半導体スイッチ115は、還流素子111に流れる電流を遮断する電流遮断部である。ソースS、ドレインDは、半導体スイッチの接続端子である。
【0030】
切換回路120は、半導体スイッチ115を切り換える回路である。切換回路120は、第1抵抗121と、ダイオード123と、コンデンサ125と、第2抵抗127とを含む。
【0031】
第1抵抗121は、一方を正極の外部端子58Aに接続し、他方を半導体スイッチ115のゲートGに接続する。ゲートGは、半導体スイッチの制御端子である。第1抵抗121は、200[kΩ]程度の高抵抗でもよい。
【0032】
ダイオード123とコンデンサ125は並列に接続されている。ダイオード123とコンデンサ125の一方は、半導体スイッチ115のソースSに接続され、他方は、半導体スイッチ115のゲートGに接続されている。コンデンサ125の容量は1000[pF]程度でもよい。コンデンサ125は、半導体スイッチ115のゲート-ソース間に存在する容量部である。
【0033】
ダイオード123は、半導体スイッチ115のソースSからゲートGに向かう方向が順方向であり、逆方向の電流は阻止する。
【0034】
第2抵抗127は、一方を負極の外部端子58Bに接続し、他方を半導体スイッチ115のソースSに接続する。第2抵抗127は、100[kΩ]程度の高抵抗でもよい。
【0035】
4.保護回路の動作説明
リレー75がクローズしている場合、外部端子58A、58Bに逆電圧が加わっていなければ、図5に示すように、半導体スイッチ115のソースSは基準電圧(この例では0V)、ゲートGは組電池21の電池電圧(この例では12V)である。そのため、Vgs>閾値電圧Vthとなり、半導体スイッチ115はオンの状態(導通)となる。Vgsは、ソースを基準としたゲートの電圧である。
【0036】
リレー75がクローズからオープンに切り換わって、パワーラインPLの電流が遮断されると、負荷12に逆起電力が発生し、図6に示すように、蓄電装置20の外部端子58A、58Bに逆電圧が加わる。逆電圧は、組電池21に対して逆極性の電圧、つまり、負極の外部端子58Bをプラス、正極の外部端子58Aをマイナスとする電圧である。
【0037】
コンデンサ125は、半導体スイッチ115のゲートGとソースS間に接続されており、逆起電力の発生前は、組電池21により電池電圧(12V)に充電されている。
【0038】
外部端子58A、58Bに逆起電力(逆電圧)が加わった直後、半導体スイッチ115のVgsは、コンデンサ125により閾値電圧Vthよりも高い状態に維持されるため、半導体スイッチ115はオンを維持する。
【0039】
半導体スイッチ115がオンを維持することで、逆起電力による誘導電流Iは、図6に示すように、半導体スイッチ115と還流素子111を通って負荷12に還流する。そのため、負荷12の誘導電流(サージ)から蓄電装置20を保護することが出来る。
【0040】
コンデンサ125は、逆起電力が加わった時点から、第1抵抗121を介して放電し、電圧が低下する。コンデンサ125の放電により、半導体スイッチ115のVgsが低下して閾値電圧Vthを下回ると、半導体スイッチ115はオンからオフに自動的に切り換わる。
【0041】
このように、コンデンサ125と第1抵抗121は、半導体スイッチ115をオン(導通)からオフ(遮断)に切り換えるタイミングを、逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させる遅延回路130を構成している。
【0042】
コンデンサ125に並列に接続されたダイオード123は、半導体スイッチ115がオンからオフに切り換わった以降、逆電圧が無くなるまでの間、Vgsを負の電圧(ダイオード123の降伏電圧)に維持することで、半導体スイッチ115をオフに維持する役割を果たしている。
【0043】
図7は、逆電圧の印加時における半導体スイッチ115の切り換えタイミングを示すタイミングチャートである。時刻t0は逆電圧が加わるタイミング、時刻t1は半導体スイッチ115がオンからオフに切り換わるタイミング、Tdはその遅延時間である。
【0044】
遅延時間Tdは、第1抵抗121とコンデンサ125によるRC遅延回路130の時定数により決定され、誘導電流の継続時間Tsより少なくとも長い時間であることが好ましい。誘導電流の継続時間Tsは、実験値を用いてもいいし、回路定数から求めた理論値を用いてもよい。遅延時間Tdを誘導電流の継続時間Tsより長くすることで、誘導電流の継続中は、還流回路110が導通状態を保つので、誘導電流によるサージを負荷12に還流させることが出来る。
【0045】
遅延時間Tdの経過後に、半導体スイッチ115をオンからオフ(導通から遮断)に自動的に切り換えることで、以下の効果が得られる。
【0046】
図8に示すように、蓄電装置20の外部端子58A、58Bに、外部電源150を逆接続される場合がある。逆接続は、極性が正負逆の接続であり、逆接続が発生すると、正極の外部端子58Aに負の電圧が加わり、負極の外部端子58Bに正の電圧が加わる。
【0047】
外部電源150の逆接続が発生すると、還流素子111に電流Iが流れ続けるため、還流素子111が異常発熱して破損する場合がある。つまり、誘導電流によるサージは継続時間Tsが短く短時間しか流れないので、還流素子111が異常発熱することは無いが、外部電源150が逆接続された場合、還流素子111に電流Iが流れ続けるため、還流素子111が異常発熱して破損する場合がある。外部電源150に限らず、充電器(不図示)が逆接続された場合も、同様の問題が懸念される。
【0048】
この構成では、外部電源150が逆接続された場合、逆接続された時点から遅延時間Tdが経過すると、半導体スイッチ115がオンからオフに切り換わる。半導体スイッチ115がオフに切り換わることで、外部電源150から還流素子111への電流Iを遮断することが出来る。
【0049】
図9は、外部電源150の電圧を正から負に変化させた時の還流素子の電流波形を示している。時刻t0にて、外部電源150の電圧は正から負に切り換わっており、時刻t0以降、外部端子58A、58Bに逆電圧(負の電圧)が加わる。
【0050】
時刻t0にて逆電圧が印加されてから遅延時間Tdを経過すると、切換回路120が半導体スイッチ115をオンからオフに切り換える。
【0051】
そのため、逆電圧の印加後、還流素子111に流れる電流は、遅延時間Tdを経過すると遮断され、それ以降は、逆電圧が継続して加わっていても、還流素子111に電流Iは流れない。以上のことから、還流素子111が異常発熱により故障することを抑制することが出来る。
【0052】
遅延時間Tdは、逆接続時に流れる電流Iにより、還流素子111の温度が定格(制限温度)を超えない範囲にすることが好ましい。
【0053】
外部電源150が時刻t2の時点で負から正に切り換わると、図5の状態に戻り、半導体スイッチ115のソースSは基準電圧(0V)、ゲートGは組電池21の電池電圧(12V)になる。そのため、VgsがVthを上回る状態となり、半導体スイッチ115は、オフからオンに自動復帰する。
【0054】
5.効果説明
この構成では、負荷12への放電電流を遮断したときに発生する誘導電流Iを、還流回路110を用いて負荷12に還流する。そのため、誘導電流(サージ)から蓄電装置20を保護することが出来る。
【0055】
外部電源150や充電器が逆接続された場合、逆接続から所定時間(遅延時間Td)が経過すると、半導体スイッチ115がオンからオフに切り換わる。そのため、逆接続が起きても、遅延時間経過後に電流Iが遮断されるので、還流素子111が異常発熱して故障することを抑制することが出来る。
【0056】
この構成では、半導体スイッチ115をオンからオフに切り換えるタイミング遅延回路130を用いて遅延させているので、マイコン等の制御部を利用して遅延させる場合に比べて、ノイズに強く誤作動が少ない。そのため、遅延時間の経過後、還流素子111の電流を確実に遮断することが出来る。
【0057】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、蓄電素子の一例として、電池セル22を例示した。蓄電素子は、電池セル22に限らず、キャパシタでもよい。電池セル22は、リチウムイオン二次電池に限らず他の非水電解質二次電池でもよい。鉛蓄電池などを使用することも出来る。蓄電素子は、複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルの構成でもよい。
【0058】
(2)上記実施形態では、蓄電装置20をエンジン始動用とした。蓄電装置20の使用用途は、特定の用途に限定されない。蓄電装置20は、移動体用(車両用や船舶用、無人搬送車(AGV)など)や、産業用(無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電装置)など、種々の用途に使用してもよい。負荷についてもスタータ12に限られず、車両等の種々の負荷(各種モータ等)とすることができる。
【0059】
(3)上記実施形態では、蓄電装置20として二輪車用を説明したが、これに限られず、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両の蓄電装置としてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では、還流素子111の電流を遮断する電流遮断部を半導体スイッチ115により構成した。電流遮断部は、半導体スイッチ115に代えて、リレーなど、接点スイッチを用いてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、半導体スイッチ115のゲート-ソース間に存在する容量部をコンデンサ125とした。容量部は、コンデンサ125に代えて、半導体スイッチ115のゲート-ソース間における浮遊容量でもよい。
【0062】
(6)上記実施形態では、遅延回路130を第1抵抗121とコンデンサ125からなるRC遅延回路とした。遅延回路130は、半導体スイッチ115をオンからオフに切り換えるタイミングを、外部端子に逆電圧が加わった時点から所定時間遅延させることが出来ればよく、例えば、タイマーなどを用いて、半導体スイッチ115を切り換えるタイミングを遅延させてもよい。マイコンを用いて、タイミングを遅延させてもよい。タイマーやマイコンを用いる場合、検出回路により逆電圧を検出し、それをトリガにして、半導体スイッチ115を切り換えるタイミングを遅延させてもよい。検出回路は、外部端子の電圧から逆電圧の印加を検出するものでもいいし、逆電圧を他の方法で検出するものでもよい。
【0063】
(7)上記実施形態では、還流素子111の一例としてダイオードを例示した。還流素子111は、負極のパワーラインPL2から正極のパワーラインPL1に向かう方向を順方向とする整流作用(逆方向を阻止)を持つ素子であれば、ダイオード以外でもよい。
【符号の説明】
【0064】
10: 自動二輪車
12: 負荷
20: 蓄電装置
21: 組電池
22: 二次電池(蓄電素子)
58A: 正極の外部端子
58B: 負極の外部端子
75: リレー
100: 保護回路
110: 還流回路
120: 切換回路
130: 遅延回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9