(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】発光素子及びその製造方法、並びに、発光素子アレイ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20241126BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
(21)【出願番号】P 2021569781
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020045968
(87)【国際公開番号】W WO2021140822
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2020001292
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】濱口 達史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁道
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171864(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/133766(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190030(WO,A1)
【文献】特開平05-075207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法であって、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の上に、第1犠牲層を形成し、その後、
全面に第2犠牲層を形成し、次いで、第2犠牲層及び第1犠牲層をエッチング用マスクとして用いて基部面からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面に突出部を形成し、その後、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている発光素子の製造方法。
【請求項2】
全面に第2犠牲層を形成する工程においては、第2犠牲層の形成を複数回行う請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法であって、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の一部の上に、第1層を形成し、その後、
第1層を覆う第2層を形成し、以て、基部面に、第1層及び第1層を覆う第2層から構成された突出部を形成し、次いで、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている発光素子の製造方法。
【請求項4】
全面に第2層を形成する工程においては、第2層の形成を複数回行う請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子及びその製造方法、並びに、発光素子アレイに関し、具体的には、面発光レーザ素子(VCSEL)から成る発光素子及びその製造方法、並びに、発光素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ素子から成る発光素子においては、一般に、2つの光反射層(Distributed Bragg Reflector 層、DBR層)の間でレーザ光を共振させることによってレーザ発振が生じる。そして、n型化合物半導体層(第1化合物半導体層)、化合物半導体から成る活性層(発光層)及びp型化合物半導体層(第2化合物半導体層)が積層された積層構造体を有する面発光レーザ素子においては、一般に、p型化合物半導体層上に透明導電性材料から成る第2電極を形成し、第2電極の上に第2光反射層を形成する。また、n型化合物半導体層上に(導電性の基板上にn型化合物半導体層が形成されている場合には基板の露出面上に)、第1光反射層及び第1電極を形成する。尚、本明細書において、「上」という概念は、活性層を基準として、活性層から離れる方向を指す場合があるし、「下」という概念は、活性層を基準として、活性層に近づく方向を指す場合があるし、「凸」、「凹」という概念は、活性層を基準としている場合がある。
【0003】
横方向の光場閉じ込めによる回折損失を抑制するために、第1光反射層が凹面鏡としても機能する構造が、例えば、WO2018/083877A1から周知である。ここで、この国際公開公報に開示された技術にあっては、活性層を基準として、例えば、n型化合物半導体層に凸部が形成されており、凸部上に第1光反射層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
n型化合物半導体層に凸部を形成するには、n型化合物半導体層上にレジスト材料層を形成し、凸部を形成すべき領域の上にレジスト材料層を残した後、レジスト材料層に加熱処理を施し、レジスト材料層の断面形状を、例えば、弧とする。しかしながら、n型化合物半導体層とレジスト材料層との間の濡れ性、表面張力、重力の影響等によって、あるいは又、第1光反射層に要求される仕様に依っては、レジスト材料層の断面形状が所望の形状にならず、その結果、所望の断面形状を有する第1光反射層が得られない場合がある。
【0006】
従って、本開示の目的は、所望の断面形状を有する第1光反射層を得ることを可能とする発光素子の製造方法、並びに、係る発光素子の製造方法によって得られる発光素子及び発光素子アレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子の製造方法は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法である。
【0008】
そして、本開示の第1の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の上に、第1犠牲層を形成し、その後、
全面に第2犠牲層を形成し、次いで、第2犠牲層及び第1犠牲層をエッチング用マスクとして用いて基部面からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面に突出部を形成し、その後、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている。
【0009】
また、本開示の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の一部の上に、第1層を形成し、その後、
第1層を覆う第2層を形成し、以て、基部面に、第1層及び第1層を覆う第2層から構成された突出部を形成し、次いで、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている。
【0010】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されており、
突出部の直径をD1、突出部の高さをH1、突出部の頂部の曲率半径をR1、突出部の表面粗さをRaPjとする。
【0011】
そして、本開示の第1の態様に係る発光素子にあっては、
2×10-6m≦D1≦2.5×10-5m
好ましくは、
1×10-5m≦D1≦2.4×10-5m
一層好ましくは、
1.6×10-5m≦D1≦2.0×10-5m
を満足し、且つ、
1×10-8m≦H1≦5×10-7m
好ましくは、
1×10-8m≦H1≦2×10-7m
一層好ましくは、
1×10-8m≦H1≦1×10-7m
を満足し、且つ、
1×10-4m≦R1
好ましくは、
5×10-4m≦R1
一層好ましくは、
9×10-4m≦R1
を満足し、且つ、
RaPj≦1.0nm
好ましくは、
RaPj≦0.7nm
一層好ましくは、
RaPj≦0.3nm
を満足する。
【0012】
また、本開示の第2の態様に係る発光素子にあっては、
2×10-3m≦D1
好ましくは、
5×10-3m≦D1
一層好ましくは、
1×10-2m≦D1
を満足し、且つ、
1×10-3m≦R1
好ましくは、
5×10-3m≦R1
一層好ましくは、
1×10-2m≦R1
を満足し、且つ、
RaPj≦1.0nm
好ましくは、
RaPj≦0.7nm
一層好ましくは、
RaPj≦0.3nm
を満足する。
【0013】
上記の目的を達成するための本開示の第3の態様に係る発光素子は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
突出部は、第1層、及び、第1層を覆う第2層から構成されており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されている。
【0014】
上記の目的を達成するための本開示の発光素子アレイは、
複数の発光素子から構成されており、
各発光素子は、本開示の第1の態様に係る発光素子から構成されており、
発光素子の形成ピッチP0(発光素子を構成する第1光反射層の軸線から、隣接する発光素子を構成する第1光反射層の軸線までの距離)は、3×10-5m以下、
好ましくは、
2×10-6m≦P0≦2.8×10-5m
一層好ましくは、
1×10-5m≦P0≦2×10-5m
である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の発光素子の複数を有する発光素子アレイの模式的な一部断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の発光素子の変形例-1の模式的な一部断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の発光素子の変形例-2の模式的な一部断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の発光素子の複数から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の発光素子の複数から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を模式的な平面図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図8】
図8は、
図7Bに引き続き、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図9】
図9は、
図8に引き続き、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図11】
図11は、第2犠牲層を構成するレジスト材料と、突出部の直径D
1と、突出部の頂部の曲率半径R
1との関係を求めたグラフである。
【
図12】
図12は、実施例3の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、実施例3の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図14】
図14は、実施例4の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図15】
図15は、実施例4の発光素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図16】
図16は、実施例5の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図17】
図17は、実施例5の発光素子の複数から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図である。
【
図18】
図18は、実施例5の発光素子の変形例-1の模式的な一部断面図である。
【
図19】
図19は、実施例5の発光素子の変形例-2の模式的な一部断面図である。
【
図20】
図20は、実施例5の発光素子の変形例-3の模式的な一部断面図である。
【
図21】
図21は、実施例6の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図22】
図22は、実施例7の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図23】
図23は、実施例7の発光素子の変形例の模式的な一部端面図である。
【
図25】
図25は、実施例11の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図26】
図26A及び
図26Bは、実施例11の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図27】
図27の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、従来の発光素子、実施例11の発光素子及び実施例16の発光素子における光場強度を示す概念図である。
【
図28】
図28は、実施例12の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図29】
図29は、実施例13の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図30】
図30A及び
図30Bは、それぞれ、実施例14の発光素子の模式的な一部端面図、及び、実施例14の発光素子の要部を切り出した模式的な一部断面図である。
【
図31】
図31は、実施例15の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図32】
図32は、実施例16の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図33】
図33は、実施例17の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図34】
図34は、実施例17の発光素子の模式的な一部断面図と、縦モードAと縦モードBの2つの縦モードを重ね合わせた図である。
【
図35】
図35は、実施例20の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図36】
図36は、実施例21の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図37】
図37は、実施例21の発光素子の変形例-1の模式的な一部断面図である。
【
図38】
図38は、実施例21の発光素子の変形例-1から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図である。
【
図39】
図39は、実施例21の発光素子の変形例-2の模式的な一部断面図である。
【
図40】
図40は、実施例21の発光素子の変形例-2から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図である。
【
図41】
図41は、実施例21の発光素子の変形例-3の模式的な一部断面図である。
【
図42】
図42は、実施例21の発光素子の変形例-4の模式的な一部断面図である。
【
図43】
図43は、実施例21の発光素子の変形例-5の模式的な一部断面図である。
【
図44】
図44は、実施例21の発光素子から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び隔壁の配置を示す模式的な平面図である。
【
図45】
図45は、
図44に示した実施例21の発光素子の変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図46】
図46は、実施例21の発光素子から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び隔壁の配置を示す模式的な平面図である。
【
図47】
図47は、
図46に示した実施例21の発光素子の変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図48】
図48は、実施例21の発光素子から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び隔壁の配置を示す模式的な平面図である。
【
図49】
図49は、
図48に示した実施例21の発光素子の変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図50】
図50は、実施例21の発光素子から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び隔壁の配置を示す模式的な平面図である。
【
図51】
図51は、
図50に示した実施例21の発光素子の変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図52】
図52は、実施例22の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図53】
図53は、実施例22の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図54】
図54は、実施例23の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図55】
図55は、実施例23の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図56】
図56は、実施例23の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図57】
図57は、実施例23の発光素子アレイにおける第1光反射層41及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図58】
図58は、実施例23の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図59】
図59は、実施例23の発光素子アレイにおける第1光反射層41及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図60】
図60は、実施例24の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図61】
図61は、実施例24の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図62】
図62は、実施例24の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図63】
図63は、同一の曲率半径を有する2つの凹面鏡部で挟まれたファブリペロー型共振器を想定したときの概念図である。
【
図64】
図64は、ω
0の値と共振器長L
ORの値と第1光反射層の凹面鏡部の曲率半径R
1(R
DBR)の値の関係を示すグラフである。
【
図65】
図65は、ω
0の値と共振器長L
ORの値と第1光反射層の凹面鏡部の曲率半径R
1(R
DBR)の値の関係を示すグラフである。
【
図66】
図66A及び
図66Bは、それぞれ、ω
0の値が「正」であるときのレーザ光の集光状態を模式的に示す図、及び、ω
0の値が「負」であるときのレーザ光の集光状態を模式的に示す図である。
【
図67】
図67A及び
図67Bは、活性層によって決まるゲインスペクトル内に存在する縦モードを模式的に示す概念図である。
【
図68】
図68は、従来の発光素子の模式的な一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子の製造方法、本開示の第1の態様~第3の態様に係る発光素子、及び、本開示の発光素子アレイ、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様に係る発光素子の製造方法、本開示の第1の態様に係る発光素子、及び、本開示の発光素子アレイ)
3.実施例2(本開示の第2の態様に係る発光素子)
4.実施例3(本開示の第2の態様に係る発光素子の製造方法、及び、本開示の第3の態様に係る発光素子)
5.実施例4(実施例1~実施例3の変形)
6.実施例5(実施例1~実施例4の変形)
7.実施例6(実施例1~実施例5の変形、第2構成の発光素子)
8.実施例7(実施例1~実施例5の別の変形、第3構成の発光素子)
9.実施例8(実施例7の変形)
10.実施例9(実施例1~実施例8の変形)
11.実施例10(実施例1~実施例9の変形、第4構成の発光素子)
12.実施例11(実施例1~実施例10の変形、第5-A構成の発光素子)
13.実施例12(実施例11の変形、第5-B構成の発光素子)
14.実施例13(実施例11~実施例12の変形、第5-C構成の発光素子)
15.実施例14(実施例11~実施例13の変形、第5-D構成の発光素子)
16.実施例15(実施例11~実施例14の変形)
17.実施例16(実施例1~実施例15の変形、第6-A構成の発光素子、第6-B構成の発光素子、第6-C構成の発光素子及び第6-D構成の発光素子)
18.実施例17(実施例1~実施例16の変形、第7構成の発光素子)
19.実施例18(実施例17の変形)
20.実施例19(実施例17の別の変形)
21.実施例20(実施例17~実施例19の変形)
22.実施例21(実施例1~実施例20の変形)
23.実施例22(実施例1~実施例4の変形)
24.実施例23(実施例22の変形)
25.実施例24(実施例22~実施例24の変形)
26.その他
【0017】
〈本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子の製造方法、本開示の第1の態様~第3の態様に係る発光素子、及び、本開示の発光素子アレイ、全般に関する説明〉
本開示の第1の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、全面に第2犠牲層を形成する工程において、第2犠牲層の形成を複数回行う形態とすることができる。あるいは又、全面に第2犠牲層を形成し、次いで、第2犠牲層及び第1犠牲層をエッチング用マスクとして用いて基部面からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面に突出部を形成した後、全面に第2犠牲層を形成し、次いで、第2犠牲層をエッチング用マスクとして用いて基部面からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面に突出部を形成してもよい。この場合、第2犠牲層の形成を複数回行ってもよい。また、本開示の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、全面に第2層を形成する工程において、第2層の形成を複数回行う形態とすることができる。
【0018】
本開示の第1の態様に係る発光素子の製造方法において、第1犠牲層、第2犠牲層は、レジスト材料といった有機材料、SOGといったセラミック材料、半導体・金属材料等から構成することができる。
【0019】
また、本開示の第2の態様に係る発光素子の製造方法において、第1層を構成する材料として、レジスト材料といった有機材料やSOGといったセラミック材料、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂といった発振波長の光を吸収しない(あるいは吸収し難い)透明樹脂、アクリル系樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、ポリスチレン樹脂といった合成樹脂を挙げることができるし、第2層を構成する材料として、レジスト材料といった有機材料やSOGといったセラミック材料を挙げることができる。第1層の形成方法として、第1層を構成する材料に適切な方法で第1層・形成層を基部面上に形成した後、第1層・形成層をパターニングする方法を挙げることができるし、ナノインプリント法に基づき第1層を得ることもできる。積層構造体の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で第1層を切断したときの第1層の断面形状として、矩形、等脚台形を挙げることができるし、場合によっては、積層構造体の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で基部面を切断したときの突出部の断面形状(後述する)と同様の形状とすることもできる。
【0020】
本開示の第1の態様~第3の態様に係る発光素子にあっては、発光素子の光を出射する領域に波長変換材料層(色変換材料層)が設けられている形態とすることができる。そして、この場合、波長変換材料層(色変換材料層)を介して白色光を出射する形態とすることができる。具体的には、活性層で発光した光が第1光反射層を介して外部に出射される場合、第1光反射層の光出射側の上に波長変換材料層(色変換材料層)を形成すればよいし、活性層で発光した光が第2光反射層を介して外部に出射される場合、第2光反射層の光出射側の上に波長変換材料層(色変換材料層)を形成すればよい。
【0021】
発光層から青色光が出射される場合、以下の形態を採用することで、波長変換材料層を介して白色光を出射する形態とすることができる。
[A]発光層から出射された青色光を黄色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色及び黄色が混ざった白色光を得る。
[B]発光層から出射された青色光を橙色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色及び橙色が混ざった白色光を得る。
[C]発光層から出射された青色光を緑色光に変換する波長変換材料層及び赤色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色、緑色及び赤色が混ざった白色光を得る。
【0022】
あるいは又、発光層から紫外線が出射される場合、以下の形態を採用することで、波長変換材料層を介して白色光を出射する形態とすることができる。
[D]発光層から出射された紫外線の光を青色光に変換する波長変換材料層及び黄色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色及び黄色が混ざった白色光を得る。
[E]発光層から出射された紫外線の光を青色光に変換する波長変換材料層及び橙色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色及び橙色が混ざった白色光を得る。
[F]発光層から出射された紫外線の光を青色光に変換する波長変換材料層、緑色光に変換する波長変換材料層及び赤色光に変換する波長変換材料層を用いることで、波長変換材料層から出射される光として、青色、緑色及び赤色が混ざった白色光を得る。
【0023】
ここで、青色光によって励起され、赤色光を出射する波長変換材料として、具体的には、赤色発光蛍光体粒子、より具体的には、(ME:Eu)S[但し、「ME」は、Ca、Sr及びBaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味し、以下においても同様である]、(M:Sm)x(Si,Al)12(O,N)16[但し、「M」は、Li、Mg及びCaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味し、以下においても同様である]、ME2Si5N8:Eu、(Ca:Eu)SiN2、(Ca:Eu)AlSiN3を挙げることができる。また、青色光によって励起され、緑色光を出射する波長変換材料として、具体的には、緑色発光蛍光体粒子、より具体的には、(ME:Eu)Ga2S4、(M:RE)x(Si,Al)12(O,N)16[但し、「RE」は、Tb及びYbを意味する]、(M:Tb)x(Si,Al)12(O,N)16、(M:Yb)x(Si,Al)12(O,N)16、Si6-ZAlZOZN8-Z:Euを挙げることができる。更には、青色光によって励起され、黄色光を出射する波長変換材料として、具体的には、黄色発光蛍光体粒子、より具体的には、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体粒子を挙げることができる。尚、波長変換材料は、1種類であってもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。更には、波長変換材料を2種類以上を混合して用いることで、黄色、緑色、赤色以外の色の出射光が波長変換材料混合品から出射される構成とすることもできる。具体的には、例えば、シアン色を発光する構成としてもよく、この場合には、緑色発光蛍光体粒子(例えば、LaPO4:Ce,Tb、BaMgAl10O17:Eu,Mn、Zn2SiO4:Mn、MgAl11O19:Ce,Tb、Y2SiO5:Ce,Tb、MgAl11O19:CE,Tb,Mn)と青色発光蛍光体粒子(例えば、BaMgAl10O17:Eu、BaMg2Al16O27:Eu、Sr2P2O7:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb)とを混合したものを用いればよい。
【0024】
また、紫外線によって励起され、赤色光を出射する波長変換材料として、具体的には、赤色発光蛍光体粒子、より具体的には、Y2O3:Eu、YVO4:Eu、Y(P,V)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・Ge2:Mn、CaSiO3:Pb,Mn、Mg6AsO11:Mn、(Sr,Mg)3(PO4)3:Sn、La2O2S:Eu、Y2O2S:Euを挙げることができる。また、紫外線によって励起され、緑色光を出射する波長変換材料として、具体的には、緑色発光蛍光体粒子、より具体的には、LaPO4:Ce,Tb、BaMgAl10O17:Eu,Mn、Zn2SiO4:Mn、MgAl11O19:Ce,Tb、Y2SiO5:Ce,Tb、MgAl11O19:CE,Tb,Mn、Si6-ZAlZOZN8-Z:Euを挙げることができる。更には、紫外線によって励起され、青色光を出射する波長変換材料として、具体的には、青色発光蛍光体粒子、より具体的には、BaMgAl10O17:Eu、BaMg2Al16O27:Eu、Sr2P2O7:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu、CaWO4、CaWO4:Pbを挙げることができる。更には、紫外線によって励起され、黄色光を出射する波長変換材料として、具体的には、黄色発光蛍光体粒子、より具体的には、YAG系蛍光体粒子を挙げることができる。尚、波長変換材料は、1種類であってもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。更には、波長変換材料を2種類以上を混合して用いることで、黄色、緑色、赤色以外の色の出射光が波長変換材料混合品から出射される構成とすることもできる。具体的には、シアン色を発光する構成としてもよく、この場合には、上記の緑色発光蛍光体粒子と青色発光蛍光体粒子を混合したものを用いればよい。
【0025】
但し、波長変換材料(色変換材料)は、蛍光体粒子に限定されず、例えば、間接遷移型のシリコン系材料において、直接遷移型のように、キャリアを効率良く光へ変換させるために、キャリアの波動関数を局所化し、量子効果を用いた、2次元量子井戸構造、1次元量子井戸構造(量子細線)、0次元量子井戸構造(量子ドット)等の量子井戸構造を適用した発光粒子を挙げることもできるし、半導体材料に添加された希土類原子は殻内遷移により鋭く発光することが知られており、このような技術を適用した発光粒子を挙げることもできる。
【0026】
波長変換材料(色変換材料)として、上記のとおり、量子ドットを挙げることができる。量子ドットの大きさ(直径)が小さくなるに従い、バンドギャップエネルギーが大きくなり、量子ドットから出射される光の波長は短くなる。即ち、量子ドットの大きさが小さいほど短い波長を有する光(青色光側の光)を発光し、大きさが大きいほど長い波長を有する光(赤色光側の光)を発光する。それ故、量子ドットを構成する材料を同じとし、量子ドットの大きさを調整することで、所望の波長を有する光を出射する(所望の色に色変換する)量子ドットを得ることができる。具体的には、量子ドットは、コア-シェル構造を有することが好ましい。量子ドットを構成する材料として、例えば、Si;Se;カルコパイライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2;ペロブスカイト系材料;III-V族化合物であるGaAs、GaP、InP、InAs、InGaAs、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、GaN;CdSe、CdSeS、CdS、CdTe、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnTe、ZnS、HgTe、HgS、PbSe、PbS、TiO2等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0027】
本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子の製造方法において、あるいは又、本開示の第1の態様~第3の態様に係る発光素子において、あるいは又、本開示の発光素子アレイ(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)において、「滑らかである」とは、解析学上の用語である。例えば、実変数関数f(x)がa<x<bにおいて微分可能で、且つ、f’(x)が連続ならば、標語的に連続的微分可能であると云えるし、滑らかであるとも表現される。
【0028】
そして、本開示にあっては、積層構造体の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されているが、具体的には、積層構造体の積層方向を含む仮想平面で突出部を切断したときの突出部が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部である構成とすることができる。図形は、厳密には円の一部ではない場合もあるし、厳密には放物線の一部ではない場合もあるし、厳密にはサイン曲線の一部ではない場合もあるし、厳密には楕円の一部ではない場合もあるし、厳密にはカテナリー曲線の一部ではない場合もある。即ち、概ね円の一部である場合、概ね放物線の一部である場合、概ねサイン曲線の一部である場合、概ね楕円の一部である場合、概ねカテナリー曲線の一部である場合も、「図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、概ね楕円の一部である、概ねカテナリー曲線の一部である」ことに包含される。突出部が描く図形は、突出部の形状を計測器で計測し、得られたデータを最小自乗法に基づき解析することで求めることができる。
【0029】
突出部の平面形状が円形以外の場合、突出部の面積を「S」としたとき、
S=π(D1/2)2
で規定されるD1を直径とする。
【0030】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子の製造方法によって得られる発光素子、あるいは又、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の第1の態様~第3の態様に係る発光素子において、あるいは又、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子アレイを構成する発光素子(以下、これらの発光素子を総称して、単に、『本開示の発光素子等』と呼ぶ場合がある)において、共振器長をLORとしたとき、1×10-5m≦LORを満足することが好ましい。また、本開示の第1の態様~第2の態様に係る発光素子において、共振器長LORと突出部の頂部の曲率半径R1の関係として、
1≦R1/LOR≦4×102
を挙げることができる。
【0031】
本開示の発光素子等において、第1光反射層は少なくとも突出部上に形成されているが、第1光反射層の延在部が突出部以外の基部面上に形成されている場合もあるし、突出部以外には形成されていない場合もある。
【0032】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子等において、第1化合物半導体層の第1面が基部面を構成する形態とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第1構成』と呼ぶ。あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板が配されており、基部面は化合物半導体基板の表面から構成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第2構成の発光素子』と呼ぶ。この場合、例えば、化合物半導体基板はGaN基板から成る構成とすることができる。GaN基板として、極性基板、半極性基板、無極性基板のいずれを用いてもよい。化合物半導体基板の厚さとして、5×10-5m乃至1×10-4mを例示することができるが、このような値に限定するものではない。あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には基材が配されており、あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板及び基材が配されており、基部面は基材の表面から構成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第3構成の発光素子』と呼ぶ。基材を構成する材料として、TiO2、Ta2O5、SiO2等の透明な誘電体材料、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂を例示することができる。
【0033】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子等において、活性層と第1光反射層との間に位置する各種の化合物半導体層(化合物半導体基板を含む)を構成する材料にあっては、10%以上の屈折率の変調が無いこと(積層構造体の平均屈折率を基準として、10%以上の屈折率差が無いこと)が好ましく、これによって、共振器内の光場の乱れ発生を抑制することができる。
【0034】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子等において、積層構造体の熱伝導率の値は、第1光反射層の熱伝導率の値よりも高い形態とすることができる。第1光反射層を構成する誘電体材料の熱伝導率の値は、一般に、10ワット/(m・K)程度あるいはそれ以下である。一方、積層構造体を構成するGaN系化合物半導体の熱伝導率の値は、50ワット/(m・K)程度乃至100ワット/(m・K)程度である。
【0035】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子等によって、第1光反射層を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子(垂直共振器レーザ、VCSEL)を構成することができるし、あるいは又、第2光反射層を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子を構成することもできる。場合によっては、発光素子製造用基板(後述する)を除去してもよい。
【0036】
発光素子アレイにあっては、各発光素子の第1光反射層の中心部(頂部)は、限定するものではないが、正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する形態とすることができるし、あるいは又、正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する形態とすることができる。
【0037】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の発光素子等において、積層構造体は、GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る構成とすることができる。具体的には、積層構造体は、
(a)GaN系化合物半導体から成る構成
(b)InP系化合物半導体から成る構成
(c)GaAs系化合物半導体から成る構成
(d)GaN系化合物半導体及びInP系化合物半導体から成る構成
(e)GaN系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
(f)InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
(g)GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
を挙げることができる。
【0038】
本開示の発光素子等において、積層構造体は、より具体的には、例えば、AlInGaN系化合物半導体から成る構成とすることができる。ここで、AlInGaN系化合物半導体として、より具体的には、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNを挙げることができる。更には、これらの化合物半導体に、所望に応じて、ホウ素(B)原子やタリウム(Tl)原子、ヒ素(As)原子、リン(P)原子、アンチモン(Sb)原子が含まれていてもよい。活性層は、量子井戸構造を有することが望ましい。具体的には、単一量子井戸構造(SQW構造)を有していてもよいし、多重量子井戸構造(MQW構造)を有していてもよい。量子井戸構造を有する活性層は、井戸層及び障壁層が、少なくとも1層、積層された構造を有するが、(井戸層を構成する化合物半導体,障壁層を構成する化合物半導体)の組合せとして、(InyGa(1-y)N,GaN)、(InyGa(1-y)N,InzGa(1-z)N)[但し、y>z]、(InyGa(1-y)N,AlGaN)を例示することができる。第1化合物半導体層を第1導電型(例えば、n型)の化合物半導体から構成し、第2化合物半導体層を第1導電型とは異なる第2導電型(例えば、p型)の化合物半導体から構成することができる。第1化合物半導体層、第2化合物半導体層は、第1クラッド層、第2クラッド層とも呼ばれる。第1化合物半導体層、第2化合物半導体層は、単一構造の層であってもよいし、多層構造の層であってもよいし、超格子構造の層であってもよい。更には、組成傾斜層、濃度傾斜層を備えた層とすることもできる。
【0039】
あるいは又、積層構造体を構成するIII族原子として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を挙げることができるし、積層構造体を構成するV族原子として、ヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)、窒素(N)を挙げることができる。具体的には、AlAs、GaAs、AlGaAs、AlP、GaP、GaInP、AlInP、AlGaInP、AlAsP、GaAsP、AlGaAsP、AlInAsP、GaInAsP、AlInAs、GaInAs、AlGaInAs、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSb、AlN、GaN、InN、AlGaN、GaNAs、GaInNAsを挙げることができるし、活性層を構成する化合物半導体として、GaAs、AlGaAs、GaInAs、GaInAsP、GaInP、GaSb、GaAsSb、GaN、InN、GaInN、GaInNAs、GaInNAsSbを挙げることができる。
【0040】
量子井戸構造として、2次元量子井戸構造、1次元量子井戸構造(量子細線)、0次元量子井戸構造(量子ドット)を挙げることができる。量子井戸を構成する材料として、例えば、Si;Se;カルコパイライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2;ペロブスカイト系材料;III-V族化合物であるGaAs、GaP、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、GaN、InAs、InGaAs、GaInNAs、GaSb、GaAsSb;CdSe、CdSeS、CdS、CdTe、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnTe、ZnS、HgTe、HgS、PbSe、PbS、TiO2等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0041】
GaAs、InP材料は同じく閃亜鉛鉱構造である。これらの材料から構成された化合物半導体基板の主面として、(100)、(111)AB、(211)AB、(311)AB等の面に加え、特定方向にオフさせた面を挙げることができる。尚、「AB」は90°オフ方向が異なることを意味しており、このオフ方向により面の主材料がIII族になるかV族になるかが決まる。これらの結晶面方位及び成膜条件を制御することにより、組成ムラやドット形状を制御することが可能となる。成膜方法として、GaN系と同じく、MBE法、MOCVD法、MEE法、ALD法等の成膜方法が一般に用いられるが、これらの方法に限定するものではない。
【0042】
GaN系化合物半導体層の形成にあっては、MOCVD法における有機ガリウム源ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)ガスやトリエチルガリウム(TEG)ガスを挙げることができるし、窒素源ガスとして、アンモニアガスやヒドラジンガスを挙げることができる。n型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、n型不純物(n型ドーパント)としてケイ素(Si)を添加すればよいし、p型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、p型不純物(p型ドーパント)としてマグネシウム(Mg)を添加すればよい。GaN系化合物半導体層の構成原子としてアルミニウム(Al)あるいはインジウム(In)が含まれる場合、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いればよいし、In源としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用いればよい。更には、Si源としてモノシランガス(SiH4ガス)を用いればよいし、Mg源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウムガスやメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いればよい。尚、n型不純物(n型ドーパント)として、Si以外に、Ge、Se、Sn、C、Te、S、O、Pd、Poを挙げることができるし、p型不純物(p型ドーパント)として、Mg以外に、Zn、Cd、Be、Ca、Ba、C、Hg、Srを挙げることができる。
【0043】
積層構造体をInP系化合物半導体あるいはGaAs系化合物半導体から構成する場合、III族原料に関しては、有機金属原料であるTMGa、TEGa、TMIn、TMAl等が一般的に用いられる。また、V族原料に関しては、アルシンガス(AsH3ガス)、ホスフィンガス(PH3ガス)、アンモニア(NH3)等が用いられる。尚、V族原料に関しては有機金属原料が用いられる場合もあり、例えば、ターシャリーブチルアルシン(TBAs)、ターシャリーブチルホスフィン(TBP)、ジメチルヒドラジン(DMHy)、トリメチルアンチモン(TMSb)等を挙げることができる。これらの材料は低温で分解するため、低温成長において有効である。n型ドーパントとして、Si源としてモノシラン(SiH4)、Se源としてセレン化水素(H2Se)等が用いられる。また、p型ドーパントとして、ジメチル亜鉛(DMZn)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)等が用いられる。ドーパント材料としては、GaN系と同様の材料が候補となる。
【0044】
積層構造体は、発光素子製造用基板の第2面上に形成され、あるいは又、化合物半導体基板の第2面上に形成される。尚、発光素子製造用基板あるいは化合物半導体基板の第2面は第1化合物半導体層の第1面と対向しており、発光素子製造用基板あるいは化合物半導体基板の第1面は発光素子製造用基板の第2面と対向している。発光素子製造用基板として、GaN基板、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnS基板、ZnO基板、AlN基板、LiMgO基板、LiGaO2基板、MgAl2O4基板、InP基板、Si基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができるが、GaN基板の使用が欠陥密度の少ないことから好ましい。また、化合物半導体基板として、GaN基板、InP基板、GaAs基板を挙げることができる。GaN基板は成長面によって、極性/無極性/半極性と特性が変わることが知られているが、GaN基板のいずれの主面(第2面)も化合物半導体層の形成に使用することができる。また、GaN基板の主面に関して、結晶構造(例えば、立方晶型や六方晶型等)によっては、所謂A面、B面、C面、R面、M面、N面、S面等の名称で呼ばれる結晶面方位、あるいは、これらを特定方向にオフさせた面等を用いることもできる。発光素子を構成する各種の化合物半導体層の形成方法として、例えば、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法,Metal Organic-Chemical Vapor Deposition 法、MOVPE法,Metal Organic-Vapor Phase Epitaxy 法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法(HVPE法)、原子層堆積法(ALD法, Atomic Layer Deposition 法)、マイグレーション・エンハンスト・エピタキシー法(MEE法, Migration-Enhanced Epitaxy 法)、プラズマアシステッド物理的気相成長法(PPD法)等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0045】
本開示の発光素子等の製造においては、発光素子製造用基板を残したままとしてもよいし、第1化合物半導体層上に活性層、第2化合物半導体層、第2電極、第2光反射層を、順次、形成した後、発光素子製造用基板を除去してもよい。具体的には、第1化合物半導体層上に活性層、第2化合物半導体層、第2電極、第2光反射層を、順次、形成し、次いで、第2光反射層を支持基板に固定した後、発光素子製造用基板を除去して、第1化合物半導体層(第1化合物半導体層の第1面)を露出させればよい。発光素子製造用基板の除去は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液、アンモニア溶液+過酸化水素水、硫酸溶液+過酸化水素水、塩酸溶液+過酸化水素水、リン酸溶液+過酸化水素水等を用いたウェットエッチング法や、ケミカル・メカニカル・ポリッシング法(CMP法)、機械研磨法、反応性イオンエッチング(RIE)法等のドライエッチング法、レーザを用いたリフトオフ法等によって、あるいは、これらの組合せによって、発光素子製造用基板の除去を行うことができる。
【0046】
支持基板は、例えば、発光素子製造用基板として例示した各種の基板から構成すればよいし、あるいは又、AlN等から成る絶縁性基板、Si、SiC、Ge等から成る半導体基板、金属製基板や合金製基板から構成することもできるが、導電性を有する基板を用いることが好ましく、あるいは又、機械的特性、弾性変形、塑性変形性、放熱性等の観点から金属製基板や合金製基板を用いることが好ましい。支持基板の厚さとして、例えば、0.05mm乃至1mmを例示することができる。第2光反射層の支持基板への固定方法として、ハンダ接合法、常温接合法、粘着テープを用いた接合法、ワックス接合を用いた接合法、接着剤を用いた方法等、既知の方法を用いることができるが、導電性の確保という観点からはハンダ接合法あるいは常温接合法を採用することが望ましい。例えば導電性基板であるシリコン半導体基板を支持基板として使用する場合、熱膨張係数の違いによる反りを抑制するために、400゜C以下の低温で接合可能な方法を採用することが望ましい。支持基板としてGaN基板を使用する場合、接合温度が400゜C以上であってもよい。
【0047】
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極は、複数の発光素子において共通であり、第2化合物半導体層に電気的に接続された第2電極は、複数の発光素子において共通であり、あるいは又、複数の発光素子において個別に設けられている形態とすることができる。
【0048】
第1電極は、発光素子製造用基板が残されている場合、発光素子製造用基板の第2面と対向する第1面上に形成すればよいし、あるいは又、化合物半導体基板の第2面と対向する第1面上に形成すればよい。また、発光素子製造用基板が残されていない場合、積層構造体を構成する第1化合物半導体層の第1面上に形成すればよい。尚、この場合、第1化合物半導体層の第1面には第1光反射層が形成されるので、例えば、第1光反射層を取り囲むように第1電極を形成すればよい。第1電極は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、Ti(チタン)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、錫(Sn)及びインジウム(In)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましく、具体的には、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pdを例示することができる。尚、多層構成における「/」の前の層ほど、より活性層側に位置する。以下の説明においても同様である。第1電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。
【0049】
第1光反射層を取り囲むように第1電極を形成する場合、第1光反射層と第1電極とは接している構成とすることができる。あるいは又、第1光反射層と第1電極とは離間している構成とすることができる。場合によっては、第1光反射層の縁部の上にまで第1電極が形成されている状態、第1電極の縁部の上にまで第1光反射層が形成されている状態を挙げることもできる。
【0050】
第1光反射層、突出部、第2光反射層の平面形状として、具体的には、円形、楕円形、長円形、矩形、正多角形(正三角形、正方形、正六角形等)を挙げることができる。また、第1光反射層、突出部、第2光反射層は、相似形あるいは近似形であることが望ましい。
【0051】
第2電極は透明導電性材料から成る構成とすることができる。第2電極を構成する透明導電性材料として、インジウム系透明導電性材料[具体的には、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、インジウム-ガリウム酸化物(IGO)、インジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)、IFO(FドープのIn2O3)、ITiO(TiドープのIn2O3)、InSn、InSnZnO]、錫系透明導電性材料[具体的には、例えば、酸化錫(SnOX)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)]、亜鉛系透明導電性材料[具体的には、例えば、酸化亜鉛(ZnO、AlドープのZnO(AZO)やBドープのZnOを含む)、ガリウム・ドープの酸化亜鉛(GZO)、AlMgZnO(酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム・ドープの酸化亜鉛)]、NiO、TiOX、グラフェンを例示することができる。あるいは又、第2電極として、ガリウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、アンチモン酸化物、ニッケル酸化物等を母層とする透明導電膜を挙げることができるし、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物といった透明導電性材料を挙げることもできる。但し、第2電極を構成する材料として、第2光反射層と第2電極との配置状態に依存するが、透明導電性材料に限定するものではなく、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、金(Au)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)等の金属を用いることもできる。第2電極は、これらの材料の少なくとも1種類から構成すればよい。第2電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。あるいは又、透明電極層として低抵抗な半導体層を用いることもでき、この場合、具体的には、n型のGaN系化合物半導体層を用いることもできる。更には、n型GaN系化合物半導体層と隣接する層がp型である場合、両者をトンネルジャンクションを介して接合することで、界面の電気抵抗を下げることもできる。第2電極を透明導電性材料から構成することで、電流を横方向(第2化合物半導体層の面内方向)に広げることができ、効率良く、電流注入領域(後述する)に電流を供給することができる。
【0052】
第1電極及び第2電極上に、外部の電極あるいは回路(以下、『外部の回路等』と呼ぶ場合がある)と電気的に接続するために、第1パッド電極及び第2パッド電極を設けてもよい。パッド電極は、Ti(チタン)、アルミニウム(Al)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましい。あるいは又、パッド電極を、Ti/Pt/Auの多層構成、Ti/Auの多層構成、Ti/Pd/Auの多層構成、Ti/Pd/Auの多層構成、Ti/Ni/Auの多層構成、Ti/Ni/Au/Cr/Auの多層構成に例示される多層構成とすることもできる。第1電極をAg層あるいはAg/Pd層から構成する場合、第1電極の表面に、例えば、Ni/TiW/Pd/TiW/Niから成るカバーメタル層を形成し、カバーメタル層の上に、例えば、Ti/Ni/Auの多層構成あるいはTi/Ni/Au/Cr/Auの多層構成から成るパッド電極を形成することが好ましい。
【0053】
第1光反射層及び第2光反射層を構成する光反射層(分布ブラッグ反射鏡層、Distributed Bragg Reflector 層、DBR層)は、例えば、半導体多層膜や誘電体多層膜から構成される。誘電体材料としては、例えば、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物、窒化物(例えば、SiNX、AlNX、AlGaNX、GaNX、BNX等)、又は、フッ化物等を挙げることができる。具体的には、SiOX、TiOX、NbOX、ZrOX、TaOX、ZnOX、AlOX、HfOX、SiNX、AlNX等を例示することができる。そして、これらの誘電体材料の内、屈折率が異なる誘電体材料から成る2種類以上の誘電体膜を交互に積層することにより、光反射層を得ることができる。例えば、SiOX/SiNY、SiOX/TaOX、SiOX/NbOY、SiOX/ZrOY、SiOX/AlNY等の多層膜が好ましい。所望の光反射率を得るために、各誘電体膜を構成する材料、膜厚、積層数等を、適宜、選択すればよい。各誘電体膜の厚さは、用いる材料等により、適宜、調整することができ、発振波長(発光波長)λ0、用いる材料の発振波長λ0での屈折率nによって決定される。具体的には、λ0/(4n)の奇数倍とすることが好ましい。例えば、発振波長λ0が410nmの発光素子において、光反射層をSiOX/NbOYから構成する場合、40nm乃至70nm程度を例示することができる。積層数は、2以上、好ましくは5乃至20程度を例示することができる。光反射層全体の厚さとして、例えば、0.6μm乃至1.7μm程度を例示することができる。また、光反射層の光反射率は95%以上であることが望ましい。光反射層の大きさ及び形状は、電流注入領域あるいは素子領域(これらに関しては後述する)を覆う限り、特に限定されない。
【0054】
光反射層は、周知の方法に基づき形成することができ、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、ECRプラズマスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法等のPVD法;各種CVD法;スプレー法、スピンコート法、ディップ法等の塗布法;これらの方法の2種類以上を組み合わせる方法;これらの方法と、全体又は部分的な前処理、不活性ガス(Ar、He、Xe等)又はプラズマの照射、酸素ガスやオゾンガス、プラズマの照射、酸化処理(熱処理)、露光処理のいずれか1種類以上とを組み合わせる方法等を挙げることができる。
【0055】
活性層への電流注入を規制するために、電流注入領域が設けられている。電流注入領域と電流非注入・内側領域との境界の形状、電流非注入・内側領域と電流非注入・外側領域との境界の形状、素子領域や電流狭窄領域に設けられた開口部の平面形状として、具体的には、円形、楕円形、長円形、矩形、正多角形(正三角形、正方形、正六角形等)を挙げることができる。電流注入領域と電流非注入・内側領域との境界の形状、及び、電流非注入・内側領域と電流非注入・外側領域との境界の形状は、相似形あるいは近似形であることが望ましい。ここで、「素子領域」とは、狭窄された電流が注入される領域、あるいは又、屈折率差等により光が閉じ込められる領域、あるいは又、第1光反射層と第2光反射層で挟まれた領域の内、レーザ発振が生じる領域、あるいは又、第1光反射層と第2光反射層で挟まれた領域の内、実際にレーザ発振に寄与する領域を指す。
【0056】
本開示の発光素子等において、発光素子の第2面(第2光反射層側の発光素子の露出面)には、バンプが配設されている構成とすることができる。バンプとして、金(Au)バンプ、ハンダバンプ、インジウム(In)バンプを例示することができるし、バンプの配設方法は周知の方法とすることができる。バンプは、具体的には、第2電極上に設けられた第2パッド電極の上に設けられており、あるいは又、第2パッド電極の延在部上に設けられている。あるいは又、バンプの代わりにロウ材を用いることもできる。ロウ材として、例えば、In(インジウム:融点157゜C);インジウム-金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220~370゜C)、Sn95Cu5(融点227~370゜C)等の錫(Sn)系高温ハンダ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304~365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温ハンダ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温ハンダ;Sn5Pb95(融点300~314゜C)、Sn2Pb98(融点316~322゜C)等の錫-鉛系標準ハンダ;Au88Ga12(融点381゜C)等のロウ材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
【0057】
積層構造体の側面や露出面を被覆層(絶縁膜)で被覆してもよい。被覆層(絶縁膜)の形成は、周知の方法に基づき行うことができる。被覆層(絶縁膜)を構成する材料の屈折率は、積層構造体を構成する材料の屈折率よりも小さいことが好ましい。被覆層(絶縁膜)を構成する材料として、SiO2を含むSiOX系材料、SiNX系材料、SiOYNZ系材料、TaOX、ZrOX、AlNX、AlOX、GaOXを例示することができるし、あるいは又、ポリイミド系樹脂等の有機材料を挙げることもできる。被覆層(絶縁膜)の形成方法として、例えば真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法、あるいは、CVD法を挙げることができるし、塗布法に基づき形成することもできる。
【実施例1】
【0058】
実施例1は、本開示の第1の態様に係る発光素子、本開示の第1の態様に係る発光素子の製造方法、及び、本開示の発光素子アレイに関する。実施例1の発光素子の模式的な一部断面図を
図1に示し、実施例1の発光素子の複数を有する発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図2に示し、実施例1の発光素子の変形例-1及び変形例-2の模式的な一部断面図を
図3及び
図4に示し、実施例1の発光素子の複数から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を模式的な平面図を
図5及び
図6に示す。尚、発光素子あるいは発光素子アレイの模式的な一部断面図は、
図5、
図6の矢印A-Aに沿った模式的な一部断面図であるし、
図5は発光素子が正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する場合を示し、
図6は発光素子が正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する場合を示す。図中、Z軸は、発光素子を構成する第1光反射層41の軸線(第1光反射層41の中心を通る、積層構造体20に対する垂線)を示す。
【0059】
【0060】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例24の発光素子は、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層(発光層)23、並びに、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された積層構造体20、
第1光反射層41、並びに、
第2化合物半導体層22の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層42、
を備えており、
第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90は、活性層23から離れる方向に突出した突出部91を備えており、
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で基部面90を切断したときの突出部91の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層41は、少なくとも突出部91の上に形成されている。
【0061】
そして、実施例1の発光素子10Aにあっては、突出部91の直径をD1、突出部91の高さをH1、突出部91の頂部の曲率半径をR1、突出部91の表面粗さをRaPjとしたとき、
2×10-6m(2μm)≦D1≦2.5×10-5m(25μm)
好ましくは、
1×10-5m(10μm)≦D1≦2.4×10-5m(24μm)
一層好ましくは、
1.6×10-5m(16μm)≦D1≦2.0×10-5m(20μm)
を満足し、且つ、
1×10-8m(10nm)≦H1≦5×10-7m(0.5μm)
好ましくは、
1×10-8m(10nm)≦H1≦2×10-7m(0.2μm)
一層好ましくは、
1×10-8m(10nm)≦H1≦1×10-7m(0.1μm)
を満足し、且つ、
1×10-4m(0.1mm)≦R1
好ましくは、
5×10-4m(0.5mm)≦R1
一層好ましくは、
9×10-4m(0.9mm)≦R1
を満足し、且つ、
RaPj≦1.0nm
好ましくは、
RaPj≦0.7nm
一層好ましくは、
RaPj≦0.3nm
を満足する。
【0062】
また、実施例1の発光素子アレイは、
複数の発光素子から構成されており、
各発光素子は、実施例1の発光素子10Aから構成されており、
発光素子の形成ピッチP0(発光素子を構成する第1光反射層41の軸線から、隣接する発光素子を構成する第1光反射層41の軸線までの距離)は、3×10-5m(30μm)以下、
好ましくは、
2×10-6m(2μm)≦P0≦2.8×10-5m(28μm)
一層好ましくは、
1×10-5m(10μm)≦P0≦2×10-5m(20μm)
である。
【0063】
実施例1の発光素子10Aにおいては、第1化合物半導体層21の第1面21aが基部面90を構成する。即ち、実施例1の発光素子10Aは第1構成の発光素子である。
【0064】
そして、実施例1の発光素子10Aにおいて、第1光反射層41は少なくとも突出部91に形成されているが、具体的には、第1光反射層41は突出部91に形成されている。但し、これに限定するものではなく、第1光反射層41の延在部が基部面90の突出部91以外の領域に形成されていてもよい。尚、基部面90の突出部91が形成された領域以外の領域を参照番号92で示し、以下、便宜上、『第2領域』と呼ぶ。
【0065】
図1に示した実施例1の発光素子10Aにおいて、積層構造体20の積層方向(Z軸方向)を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で突出部91を切断したときの突出部91が描く図形は、例えば、円の一部である。
【0066】
積層構造体20は、GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る構成とすることができる。実施例1において、具体的には、積層構造体20はGaN系化合物半導体から成る。
【0067】
具体的には、第1化合物半導体層21は、例えば、Siが2×10
16cm
-3程度ドーピングされたn-GaN層から成り、活性層23はIn
0.04Ga
0.96N層(障壁層)とIn
0.16Ga
0.84N層(井戸層)とが積層された5重の多重量子井戸構造から成り、第2化合物半導体層22は、例えば、マグネシウムが1×10
19cm
-3程度ドーピングされたp-GaN層から成る。第1化合物半導体層21の面方位は{0001}面に限定されず、例えば、半極性面である{20-21}面等とすることもできる。Ti/Pt/Auから成る第1電極31は、例えばTi/Pt/Au又はV/Pt/Auから成る第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等と電気的に接続されている。一方、第2電極32は、第2化合物半導体層22の上に形成されており、第2光反射層42は第2電極32上に形成されている。第2電極32の上の第2光反射層42は平坦な形状を有する。第2電極32は、透明導電性材料、具体的には、厚さ30nmのITOから成る。第2電極32の縁部の上には、外部の回路等と電気的に接続するための、例えば、Pd/Ti/Pt/AuやTi/Pd/Au、Ti/Ni/Auから成る第2パッド電極33が形成あるいは接続されていてもよい(
図3及び
図4参照)。第1光反射層41及び第2光反射層42は、Ta
2O
5層とSiO
2層との積層構造や、SiN層とSiO
2層との積層構造から成る。第1光反射層41及び第2光反射層42はこのように多層構造を有するが、図面の簡素化のため、1層で表している。第1電極31(具体的には、第1電極31に設けられた開口部31’)、第1光反射層41、第2光反射層42、絶縁層(電流狭窄層)34に設けられた開口部34Aのそれぞれの平面形状は円形である。
【0068】
電流狭窄領域を得るためには、このように、第2電極32と第2化合物半導体層22との間に絶縁材料(例えば、SiOXやSiNX、AlOX)から成る絶縁層(電流狭窄層)34を形成してもよく、絶縁層(電流狭窄層)34には、第2化合物半導体層22に電流を注入するための開口部34Aが設けられている。あるいは又、電流狭窄領域を得るために、第2化合物半導体層22をRIE法等によりエッチングしてメサ構造を形成してもよい。あるいは又、積層された第2化合物半導体層22の一部の層を横方向から部分的に酸化して、電流狭窄領域を形成してもよい。あるいは又、第2化合物半導体層22に不純物(例えば、ボロン)をイオン注入して、導電性が低下した領域から成る電流狭窄領域を形成してもよい。あるいは、これらを、適宜、組み合わせてもよい。但し、第2電極32は、電流狭窄により電流が流れる第2化合物半導体層22の部分(電流注入領域)と電気的に接続されている必要がある。
【0069】
図1に示した例では、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第2電極32は第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。第1電極31も、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。そして、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。
【0070】
あるいは又、実施例1の発光素子10Aの変形例-1の模式的な一部断面図を
図3に示すように、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて個別に形成されており、第2パッド電極33を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。そして、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。
【0071】
あるいは又、実施例1の発光素子10Aの変形例-2の模式的な一部断面図を
図4に示すように、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて個別に形成されている。また、第2電極32の上に形成された第2パッド電極33の上にはバンプ35が形成されており、バンプ35を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。バンプ35は、基部面90に対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分に配設されており、第2光反射層42を覆っている。バンプ35として、金(Au)バンプ、ハンダバンプ、インジウム(In)バンプを例示することができる。バンプ35の配設方法は周知の方法とすることができる。そして、第1光反射層41を介して光が外部に出射される。尚、
図1に示した発光素子10Aにおいてバンプ35を設けてもよい。バンプ35の形状として、円柱形、環状、半球形を例示することができる。
【0072】
積層構造体20の熱伝導率の値は、第1光反射層41の熱伝導率の値よりも高い。第1光反射層41を構成する誘電体材料の熱伝導率の値は、10ワット/(m・K)程度あるいはそれ以下である。一方、積層構造体20を構成するGaN系化合物半導体の熱伝導率の値は、50ワット/(m・K)程度乃至100ワット/(m・K)程度である。
【0073】
以下、第1化合物半導体層等の模式的な一部端面図である
図7A、
図7B、
図8、
図9、
図10A、
図10B、
図10Cを参照して、実施例1の発光素子の製造方法を説明するが、実施例1あるいは後述する実施例2の発光素子の製造方法は、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層23、並びに、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された積層構造体20、
第1光反射層41、並びに、
第2化合物半導体層22の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層42、
を備えており、
第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90は、活性層23から離れる方向に突出した突出部91を備えており、
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で基部面90を切断したときの突出部91の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法である。
【0074】
そして、実施例1の発光素子の製造方法にあっては、
積層構造体20を形成した後、第2化合物半導体層22の第2面側に第2光反射層42を形成し、次いで、
突出部91を形成すべき基部面90の上に、第1犠牲層81を形成し、その後、
全面に第2犠牲層82を形成し、次いで、第2犠牲層82及び第1犠牲層81をエッチング用マスクとして用いて基部面90からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面90に突出部91を形成し、その後、
少なくとも突出部91の上に第1光反射層41を形成する、
各工程を備えている。
【0075】
[工程-100]
具体的には、厚さ0.4mm程度の化合物半導体基板11の第2面11b上に、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層(発光層)23、並びに、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された、GaN系化合物半導体から成る積層構造体20を形成する。より具体的には、周知のMOCVD法によるエピタキシャル成長法に基づき、第1化合物半導体層21、活性層23及び第2化合物半導体層22を、化合物半導体基板11の第2面11b上に、順次、形成することで、積層構造体20を得ることができる(
図7A参照)。
【0076】
[工程-110]
次いで、第2化合物半導体層22の第2面22b上に、CVD法やスパッタリング法、真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法との組合せに基づき、開口部34Aを有し、SiO
2から成る絶縁層(電流狭窄層)34を形成する(
図7B参照)。開口部34Aを有する絶縁層34によって、電流狭窄領域(電流注入領域61A及び電流非注入領域61B)が規定される。即ち、開口部34Aによって電流注入領域61Aが規定される。
【0077】
電流狭窄領域を得るためには、第2電極32と第2化合物半導体層22との間に絶縁材料(例えば、SiOXやSiNX、AlOX)から成る絶縁層(電流狭窄層)34を形成してもよく、絶縁層(電流狭窄層)34には、第2化合物半導体層22に電流を注入するための開口部34Aが設けられている。あるいは又、電流狭窄領域を得るために、第2化合物半導体層22をRIE法等によりエッチングしてメサ構造を形成してもよい。あるいは又、積層された第2化合物半導体層22の一部の層を横方向から部分的に酸化して、電流狭窄領域を形成してもよい。あるいは又、第2化合物半導体層22に不純物(例えば、ボロン)をイオン注入して、導電性が低下した領域から成る電流狭窄領域を形成してもよい。あるいは、これらを、適宜、組み合わせてもよい。但し、第2電極32は、電流狭窄により電流が流れる第2化合物半導体層22の部分(電流注入領域)と電気的に接続されている必要がある。
【0078】
[工程-120]
その後、第2化合物半導体層22上に第2電極32及び第2光反射層42を形成する。具体的には、開口部34A(電流注入領域61A)の底面に露出した第2化合物半導体層22の第2面22bから絶縁層34の上に亙り、例えば、リフトオフ法に基づき第2電極32を形成し、更に、所望に応じて、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法といったパターニング法との組合せに基づき第2パッド電極33を形成する。次いで、第2電極32の上から第2パッド電極33の上に亙り、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法といったパターニング法との組合せに基づき第2光反射層42を形成する。第2電極32の上の第2光反射層42は平坦な形状を有する。こうして、
図8に示す構造を得ることができる。その後、所望に応じて、基部面90の突出部91の頂部(中心部)に対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分にバンプ35を配設してもよい。具体的には、
図4に示したように、第2電極32の上に形成された第2パッド電極33の上に、第2光反射層42を覆うようにバンプ35を形成してもよく、バンプ35を介して第2電極32は外部の回路等に接続される。
【0079】
[工程-130]
次いで、第2光反射層42を、接合層48を介して支持基板49に固定する(
図9参照)。具体的には、第2光反射層42(あるいはバンプ35)を、接着剤から成る接合層48を用いて、サファイア基板から構成された支持基板49に固定する。
【0080】
[工程-140]
次いで、化合物半導体基板11を、機械研磨法やCMP法に基づき薄くし、更に、エッチングを行うことで、化合物半導体基板11を除去する。
【0081】
[工程-150]
その後、突出部91を形成すべき基部面90の上に、第1犠牲層81を形成する。具体的には、第1光反射層41を形成すべき基部面90(より具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21a)の突出部91を形成すべき領域の上に、第1犠牲層81(具体的には、XZ平面における断面形状が矩形の第1犠牲層81)を形成する。より具体的には、第1のレジスト材料層を第1化合物半導体層21の第1面21aの上に形成し、突出部91を形成すべき領域の上に第1のレジスト材料層を残すように第1のレジスト材料層をパターニングすることで、
図10Aに示す第1犠牲層81を得る。第1犠牲層81に、断面形状を変形させるための加熱処理を施すことは不要である。こうして、突出部91を形成すべき基部面90の上に、第1犠牲層81を形成することができる。場合によっては、第1犠牲層81の表面にアッシング処理を施し(プラズマ照射処理を施し)、第1犠牲層81の表面を変質させ、次の工程で第2犠牲層82を形成したとき、第1犠牲層81に損傷や変形等が発生することを防止してもよい。また、第1のレジスト材料層を構成する材料に依存して、第1のレジスト材料層の硬化のために第1のレジスト材料層を加熱したり紫外線を照射してもよい。
【0082】
[工程-160]
その後、全面に第2犠牲層82を形成し(
図10B参照)、次いで、第2犠牲層82及び第1犠牲層81をエッチング用マスクとして用いて基部面90からその内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックすることで、基部面90に突出部91を形成する(
図10C参照)。突出部91と第2領域92との接続部を黒四角で示す。エッチバックは、RIE法等のドライエッチング法に基づき行うこともできるし、塩酸、硝酸、フッ酸、リン酸やこれらの混合物等を用いてウェットエッチング法に基づき行うこともできる。第2犠牲層82の表面粗さRqの値が第1化合物半導体層21の表面粗さRqの値よりも小さくなるように第2犠牲層82を形成すれば、エッチバック後の突出部91の表面粗さRqの値をエッチバック前に比べて小さくすることができ、散乱損失を抑制し、共振器としての性能を改善することができる。そして、ひいては、発光素子のレーザ発振の閾値電流の低減及び消費電力の低減、出力構造、発光効率の改善、信頼性の改善を達成することができる。第2犠牲層82の表面粗さRqの値は0.3nmあるいはそれ以下であることが好ましい。また、第2犠牲層82と第1犠牲層81と基部面90のエッチング速度は同等であることが好ましい。尚、表面粗さRqは、JIS B-610:2001に規定されており、具体的には、AFMや断面TEMに基づく観察に基づき測定することができる。
【0083】
具体的には、全面に、例えばフォトレジストから成る第2犠牲層82をスピンコート法に基づき成膜する。第2犠牲層82の膜厚は、第1犠牲層81の頂部を含めた第2犠牲層82の表面が平坦になる膜厚より薄くする必要がある。スピンコート法における回転数は10rpm以上であり、例えば、6000rpmが好ましい。これによって、第1犠牲層81と第1化合物半導体層21の境目に第2犠牲層82が溜まる。その後、第2犠牲層82にベーキング処理を施す。ベーキング温度は90゜C以上であり、例えば、120゜Cが好ましい。ここまでの工程によって、第1犠牲層81の上方の形状が凸形状となり、且つ、第1犠牲層81の裾部の上方が末広がりとなる第2犠牲層82を得ることができる。その後、エッチングガスとしてSiCl4ガス及びCl2ガスを用いたRIE法に基づき第2犠牲層82及び第1犠牲層81をエッチング用マスクとして用いて、基部面90からその内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックすることで、基部面90に突出部91を形成することができる。
【0084】
場合によっては、全面に第2犠牲層82を形成するとき、複数回、第2犠牲層82を形成してもよい。あるいは又、基部面90に突出部91を形成した後、全面に第2犠牲層82を形成し、次いで、第2犠牲層82をエッチング用マスクとして用いて基部面90からその内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックすることで、基部面90に突出部91を形成してもよい。この場合、第2犠牲層82の形成を複数回行ってもよい。
【0085】
また、場合によっては、[工程-150]において、ナノインプリント法に基づき第1犠牲層81を形成してもよい。
【0086】
また、場合によっては、[工程-150]において、第1犠牲層81をエッチング用マスクとして用いて基部面90からその内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックし、[工程-160]において、全面に第2犠牲層82を形成し、次いで、第2犠牲層82をエッチング用マスクとして用いて基部面90からその内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックすることで、基部面90に突出部91を形成することもできる。
【0087】
第1犠牲層81、第2犠牲層82を構成する材料は、レジスト材料に限定されず、SOGといったセラミック材料、酸化物材料(例えば、SiO2、SiN、TiO2等)、半導体材料(例えば、Si、GaN、InP、GaAs等)、金属材料(例えば、Ni、Au、Pt、Sn、Ga、In、Al等)等、第1化合物半導体層21に対して適切な材料を選択すればよい。また、第1犠牲層81、第2犠牲層82を構成するレジスト材料として適切な粘度を有するレジスト材料を用いることで、また、第1犠牲層81の厚さ、第2犠牲層82の厚さ、第1犠牲層81の直径等を適切に設定、選択することで、突出部91の曲率半径R1の値や基部面90の凸の形状(例えば、直径D1や高さH1)、突出部91の断面形状を、所望の値、形状とすることができる。後述する実施例2~実施例3においても同様である。
【0088】
尚、
図11に、第2犠牲層82を構成するレジスト材料と、突出部91の直径D
1と、突出部91の頂部の曲率半径R
1との関係を求めたグラフを示すが、第2犠牲層82を構成するレジスト材料を適切に選択することで、
図11の「A」、「B」及び「C」に示すように、突出部91の直径D
1に対して大きな曲率半径R
1を有する突出部91を得ることができることが判る。
【0089】
[工程-170]
次に、基部面90の少なくとも突出部91の頂部の上に第1光反射層41を形成する。具体的には、基部面90の全面に、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法に基づき第1光反射層41を成膜した後、第1光反射層41をパターニングすることで、基部面90の突出部91の上に第1光反射層41を得ることができる。その後、基部面90の第2領域92の上に、各発光素子10Aに共通な第1電極31を形成する。以上によって、実施例1の発光素子アレイあるいは発光素子10Aを得ることができる。第1電極31を第1光反射層41よりも突出させれば、第1光反射層41を保護することができる。
【0090】
[工程-180]
その後、支持基板49を剥離し、発光素子アレイを個別に分離する。そして、外部の電極あるいは回路(発光素子アレイを駆動する回路)と電気的に接続すればよい。具体的には、第1電極31及び図示しない第1パッド電極を介して第1化合物半導体層21を外部の回路等に接続し、また、第2パッド電極33あるいはバンプ35を介して第2化合物半導体層22を外部の回路等に接続すればよい。次いで、パッケージや封止することで、実施例1の発光素子アレイを完成させる。
【0091】
ところで、前述したとおり、第1化合物半導体層21とレジスト材料層との間の濡れ性、表面張力、重力の影響等によって、あるいは又、第1光反射層41に要求される仕様に依っては、レジスト材料層の断面形状が所望の形状にならず、その結果、所望の断面形状を有する第1光反射層が得られない場合がある。具体的には、例えば、模式的な一部断面図を
図69A、
図69B示すように、レジスト材料層の縁部が盛り上がり、中央部が凹んだ状態(凹形状)となったり、レジスト材料層の頂面が平坦になったりする。例えば、
図69Bに示す状態において、κ
-1(毛管長)の値は、
κ
-1={(γ/(Δρ・g)}
1/2
で求めることができる。ここで、γは界面の表面張力(N/m)であり、Δρはレジスト材料の密度と第1化合物半導体層の密度との密度差(kg/m
3)、gは重力加速度(m/s
2)である。そして、レジスト材料層の半径をr
Resistとしたとき、
r
Resist>κ
-1
の場合、レジスト材料層の頂面は平坦となる。
【0092】
また、レジスト材料層を薄くした場合、第1化合物半導体層21の表面とレジスト材料層の間の表面張力の影響から、得られる接触角に限界がある。そのため小さい接触角が得られず、レジスト材料層の形状が平坦若しくは凹形状になる。高出力の発光素子を製造するためには、1つの発光素子の高光出力化と高密度アレイ化が必要である。1つの発光素子の高光出力化には光出力領域を広げればよく、そのためには、第1光反射層の曲率半径を大きくすればよい。また、高密度アレイ化を達成するためには、小さな領域に多くの発光素子を密に配列すればよい。即ち、第1光反射層の直径の値が小さく、曲率半径の大きな第1光反射層を有する発光素子を狭い形成ピッチで配列することが求められる。しかしながら、従来技術では、上記のように、第1光反射層の作製には理論的な限界がある。例えば、従来技術によって、直径20μm、曲率半径400μmの形状を有するレジスト材料層の形成を試みた場合、加熱処理前後のレジスト材料層の体積が等しいと仮定すると以下の式から、レジスト材料層の高さは124nmとなる。そして、この場合、第1化合物半導体層21とレジスト材料層との接触角は0.7度となる。
【0093】
(π/4)×D2×t={(π・s)/24}(3D2+4s2)
【0094】
ここで、
D:加熱処理前のレジスト材料層の直径(=加熱処理後のレジスト材料層の直径)
t:加熱処理前のレジスト材料層の厚さ
s:加熱処理後のレジスト材料層の厚さ
【0095】
然るに、このような形状を有するレジスト材料層を得るための材料の入手は極めて困難である。これは、理論的には、完全な濡れ性を有する条件、あるいは又、完全な濡れ性と不完全な濡れ性を有する条件の互いの境界近傍の限られた系でしか実現できない。特に後者の場合、ヤング-デュプレ(Young-Dupre)の法則より接触角0.7度を満たすためには第1化合物半導体層、レジスト材料層、空気の関係から成る3方向の張力の関係が、
(γso-γsl)/γ=cos(θE)=0.9999
という極めて限定的な条件を満たさなければならない。ここで、
γso:第1化合物半導体層の表面張力(レジスト材料層を拡げようとする力)
γsl:第1化合物半導体層とレジスト材料層との間の表面張力(第1化合物半導体層とレジスト材料層との間の界面が拡がってエネルギーが高くなることを阻止しようとする力)
γ :レジスト材料層の表面張力
θE :接触角
【0096】
そのため、多くの材料系ではリフロー後の形状が球面にならず、平坦若しくは凹形状になる。例えば、通常、使用されるレジスト材料層と第1化合物半導体層との間の接触角は15度程度であり、要求される接触角0.7度とは大きな乖離がある。
【0097】
エッチバック時の(第1化合物半導体層のエッチング速度)/(レジスト材料層のエッチング速度)の値(エッチング選択比)を1未満として、エッチバック後の第1化合物半導体層の曲率半径を大きくする手法がある。しかしながら、エッチング用マスクであるレジスト材料層の方が早くエッチングされるため、エッチバック中の第1化合物半導体層のエッチャントに対する露出時間が増加し、エッチバック後の第1化合物半導体層の表面粗さの値が大きくなるといった問題がある。表面粗さの値が大きくなると、光損失が増加し、発光素子の閾値電流の増加、発光効率の低下、出力低下等が生じるため、好ましくない。エッチング選択比とエッチバック後の第1化合物半導体層の表面粗さRqの値を求めた結果を、以下の表1に示す。
【0098】
〈表1〉
エッチング選択比 Rq
0.56 1.7nm
0.91 0.47nm
【0099】
また、発光素子アレイにおいて発光素子を配設する場合、第1犠牲層のフットプリント径は発光素子の形成ピッチを超えることができない。従って、発光素子アレイの狭形成ピッチ化を図るためには、第1犠牲層のフットプリント径を縮小させる必要がある。ところで、基部面の突出部の曲率半径R1は、フットプリント径とは正の相関がある。つまり、狭形成ピッチ化に伴いフットプリント径が小さくなると、その結果、曲率半径R1が小さくなる傾向がある。例えば、フットプリント径24μmに対して、30μm程度の曲率半径R1が報告されている。また、発光素子から出射される光の放射角は、フットプリント径とは負の相関がある。つまり、狭形成ピッチ化に伴いフットプリント径が小さくなると、その結果、曲率半径R1が小さくなり、ファー・フィールド・パターン(FFP,Far Field Pattern)が拡大する傾向がある。30μm未満の曲率半径R1では、放射角は数度以上となる場合がある。発光素子アレイの応用分野によっては、発光素子から出射される光には2乃至3度以下の狭い放射角を求められることがある。
【0100】
実施例1にあっては、第1犠牲層81の厚さを1.1μm、直径を20μmとした。また、得られた突出部91の諸元、共振器長LOR、発光素子アレイにおける発光素子の形成ピッチP0、発光素子の発振波長(発光波長)λ0は以下の表2のとおりであった。尚、積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で突出部91を切断したときの突出部91が描く図形を円の一部とした。
【0101】
〈表2〉
D1 =16μm
H1 =66nm
R1 =570μm
RaPj=0.3nm
LOR =25μm
P0 =20μm
λ0 =450μm
【0102】
また、直径D1=24μmとして、高さH1を変えたときに、どの程度の曲率半径R1を有する発光素子が得られるかを調べた。その結果を以下の表3に示すが、高さH1を低くするほど、大きな曲率半径R1を得ることができることが判る。
【0103】
〈表3〉 直径D1=24μm
高さH1 曲率半径R1
0.35μm 200μm
0.18μm 400μm
0.11μm 650μm
【0104】
実施例1あるいは後述する実施例2にあっては、第1犠牲層及び第2犠牲層に基づき基部面に突出部を形成するので、また、後述する実施例3にあっては、第1層及び第2層に基づき基部面に突出部を形成するので、小さな直径D1、低い高さH1、大きな曲率半径R1、低い値の表面粗さRaPjを有する突出部を形成することができる結果、小さな直径、低い高さ、歪みの無い大きな曲率半径、低い値の表面粗さRaを有する第1光反射層を得ることができる。しかも、基本的に、第1犠牲層の断面形状を変形させるための加熱処理を施すことは不要であるが故に、発光素子の他の構成材料の熱劣化、発光素子の特性劣化を抑制することができる。
【0105】
しかも、実施例1にあっては、第1犠牲層及び第2犠牲層に基づき基部面に突出部を形成するので、また、後述する実施例3にあっては、第1層及び第2層に基づき基部面に突出部を形成するので、発光素子を狭い形成ピッチで配設した場合であっても、歪みの無い、大きな曲率半径R1の第1光反射層を得ることができる。それ故、発光素子を高密度に配置した発光素子アレイを得ることができる。また、発光素子から出射される光の放射角を2乃至3度以下の狭い放射角、あるいは、出来る限り狭い放射角とすることが可能となり、狭いFFPを有する発光素子、高い配向性を有する発光素子、高ビーム品質を有する発光素子を提供することができる。更には、広い光出射領域を得ることができるので、発光素子の光出力の増加及び発光効率の改善を図ることができる。
【0106】
しかも、突出部の高さ(厚さ)を低く(薄く)することができるので、発光素子アレイにおいてバンプを用いて外部の回路等と接続・接合するとき、バンプに空洞(ボイド)が発生し難くなり、熱伝導性の向上を図ることができるし、実装が容易となる。
【0107】
また、実施例1の発光素子あるいは後述する実施例2~実施例3において、第1光反射層は凹面鏡としても機能するので、活性層を起点に回折して広がり、そして、第1光反射層に入射した光を活性層に向かって確実に反射し、活性層に集光することができる。従って、回折損失が増加することを回避することができ、確実にレーザ発振を行うことができるし、長い共振器を有することから熱飽和の問題を回避することが可能となる。また、共振器長を長くすることができるが故に、発光素子の製造プロセスの許容度が高くなる結果、歩留りの向上を図ることができる。尚、「回折損失」とは、一般に、光は回折効果に起因して広がろうとするため、共振器を往復するレーザ光は、次第に、共振器外へと散逸してしまう現象を指す。また、迷光を抑制することができるし、発光素子間の光クロストークを抑制することができる。ここで、或る発光素子において発光した光が、隣接する発光素子に飛来し、隣接発光素子の活性層に吸収され、あるいは又、共振モードにカップリングすると、隣接発光素子の発光動作に影響を与えるし、ノイズ発生の原因になる。このような現象を、光クロストークと呼ぶ。しかも、突出部の頂部は、例えば、球面であるので、横方向光閉じ込めの効果を確実に発揮する。
【0108】
また、後述する実施例8を除き、発光素子の製造プロセスにあっては、GaN基板を用いるが、ELO法等の横方向にエピタキシャル成長させる方法に基づきGaN系化合物半導体を形成してはいない。従って、GaN基板として、極性GaN基板だけでなく、半極性GaN基板や無極性GaN基板を用いることができる。極性GaN基板を使用すると、活性層におけるピエゾ電界の効果のために発光効率が低下する傾向があるが、無極性GaN基板や半極性GaN基板を用いれば、このような問題を解決したり、緩和することが可能である。
【実施例2】
【0109】
実施例2は、本開示の第2の態様に係る発光素子に関する。実施例2の発光素子にあっては、
2×10-3m(2mm)≦D1
好ましくは、
5×10-3m(5mm)≦D1
一層好ましくは、
1×10-2m(10mm)≦D1
を満足し、且つ、
1×10-3m(1mm)≦R1
好ましくは、
5×10-3m(5mm)≦R1
一層好ましくは、
1×10-2m(10mm)≦R1
を満足し、且つ、
RaPj≦1.0nm
好ましくは、
RaPj≦0.7nm
一層好ましくは、
RaPj≦0.3nm
を満足する。
【0110】
実施例2の発光素子は、実質的に、実施例1の発光素子の製造方法と同様の方法で製造することができる。但し、実施例2にあっては、第1犠牲層81の厚さを1μm、直径を2mmとした。また、得られた突出部91の諸元、共振器長LOR、発光素子の発振波長(発光波長)λ0は以下の表4のとおりであった。尚、積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で突出部91を切断したときの突出部91が描く図形を円の一部とした。前述したとおり、第1犠牲層81の厚さ、第2犠牲層82の厚さ、第1犠牲層81の直径等を適切に設定、選択することで、突出部91の曲率半径の値や基部面90の凸の形状(例えば、直径D1や高さH1)、突出部91の断面形状を、所望の値、形状とすることができる。
【0111】
〈表4〉
D1 =2mm
H1 =1μm
R1 =0.5m
RaPj=0.3nm
LOR =25μm
λ0 =450μm
【0112】
あるいは又、第1犠牲層81の厚さを50nm、直径を20μmとした。また、得られた突出部91の諸元、共振器長LOR、発光素子アレイにおける発光素子の形成ピッチP0、発光素子の発振波長(発光波長)λ0は以下の表5のとおりであった。尚、積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で突出部91を切断したときの突出部91が描く図形を円の一部とした。
【0113】
〈表5〉
D1 =20μm
H1 =50nm
R1 =0.95mm
RaPj=0.3nm
LOR =25μm
P0 =20μm
λ0 =454μm
【0114】
表5に示した諸元を有する実施例2の発光素子にあっては、GaNの屈折率n0を2.45とすると、ニア・フィールド・パターン(Near Field Pattern,NFP)のσの値は、以下の式で求めることができ、σ=1.5であった。開口部34A(電流注入領域61A)を直径を6μmとしたとき、素子領域の大きさ(直径)は4σで表すことができるので、素子領域の直径は6μmとなる。ここで、「4σ」とは、活性層から出射される光の最大光強度を基準(1.00)として、光強度が1.00から(1/e2)になるまでの領域を指す。従って、開口部34A(電流注入領域61A)の100%からレーザ光を取り出すことができ、1発光素子から25ミリワット級の光出力を得ることが可能である。また、40個の発光素子が集まった発光素子アレイを想定した場合、ワット級の光出力を得ることが可能である。
【0115】
σ=(1/2)[{(λ0/(n0・π)}(LOL・R1-LOL
2)]1/2
【0116】
また、曲率半径R1の値が大きいほど、横モードがシングルとなる発光素子を得られることが知られている(H. Nakajima et.al., "Single transverse mode operation of GaN-based vertical-cavity surfaceemitting laser with monolithically incorporated curved mirror",Applied Physics Express 12, 084003 (2019) 参照)。そして、開口部34A(電流注入領域61A)を直径を8μmとしたときであって、
LOR=25μm
λ0 =454μm
である場合、曲率半径R1の値が447μm以上で横モードがシングルとなるとされている。そして、表5に示した諸元を有する発光素子にあっては、横モードがシングルであることを確認することができた。
【実施例3】
【0117】
実施例3は、本開示の第3の態様に係る発光素子、及び、本開示の第2の態様に係る発光素子の製造方法に関する。実施例3の発光素子10Bの模式的な一部断面図を
図12に示す。
【0118】
実施例3の発光素子10Bは、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層23、並びに、
活性層23と面する第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された積層構造体20、
第1光反射層41、並びに、
第2化合物半導体層22の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層42、
を備えており、
第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90は、活性層23から離れる方向に突出した突出部91を備えており、
突出部91は、第1層71、及び、第1層71を覆う第2層72から構成されており、
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で基部面90を切断したときの突出部91の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層41は、少なくとも突出部91の上に形成されている。
【0119】
ここで、第1層71は、具体的には、例えば、アクリル系樹脂から成り、第2層72は、具体的には、例えば、SOGから成る。
【0120】
以下、第1化合物半導体層等の模式的な一部端面図である
図13A及び
図13Bを参照して、実施例3の発光素子の製造方法を説明する。
【0121】
[工程-300]
実施例3の発光素子の製造方法にあっては、先ず、実施例1の[工程-100]~[工程-140]と同様の工程を実行する。
【0122】
[工程-310]
そして、突出部91を形成すべき基部面90の一部の上に、第1層71を形成する。具体的には、第1光反射層41を形成すべき基部面90(より具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21a)の突出部91を形成すべき領域の一部の上に、第1層・形成層を形成し、突出部91を形成すべき領域の一部の上に第1層・形成層を残すように第1層・形成層をパターニングすることで、
図13Aに示す第1層71を得ることができる。第1層71に、断面形状を変形させるための加熱処理を施すことは不要である。場合によっては、ナノインプリント法に基づき第1層71を形成してもよい。
【0123】
[工程-320]
その後、第1層71を覆う第2層72を形成し、以て、基部面90に、第1層71及び第1層71を覆う第2層72から構成された突出部91を形成する(
図13B参照)。具体的には、全面に、例えばフォトレジストから成る第2層72をスピンコート法に基づき成膜する。第2層72の膜厚は、第1層71の頂部を含めた第2層72の表面が平坦になる膜厚より薄くする必要がある。スピンコート法における回転数は10rpm以上であり、例えば、6000rpmが好ましい。これによって、第1層71と第1化合物半導体層21の第1面21aとの境目に第2層72が溜まる。その後、第2犠牲層82にベーキング処理を施す。ベーキング温度は90゜C以上であり、例えば、120゜Cが好ましい。ここまでの工程によって、第1層71の上方の形状が凸形状となり、且つ、第1層71の裾部の上方が末広がりとなる第2層72を得ることができる。
【0124】
[工程-330]
次いで、少なくとも突出部91の上に第1光反射層41を形成する。具体的には、実施例1の[工程-170]~[工程-180]と同様の工程を実行する。こうして、実施例3の発光素子10Bを得ることができる。
【0125】
尚、全面に第2層72を形成する工程においては、第2層72の形成を複数回行ってもよい。
【実施例4】
【0126】
実施例4は、実施例1~実施例3の変形である。
【0127】
実施例4の発光素子10Cの模式的な一部断面図を
図14及び
図15に示すように、実施例4の発光素子10Cにあっては、発光素子10Cの光を出射する領域に波長変換材料層(色変換材料層)73が設けられている。そして、波長変換材料層(色変換材料層)73を介して白色光を出射する。具体的には、活性層23で発光した光が第1光反射層41を介して外部に出射される場合、第1光反射層41の光出射側の上に波長変換材料層(色変換材料層)73を形成すればよいし(
図14参照)、活性層23で発光した光が第2光反射層42を介して外部に出射される場合、第2光反射層42の光出射側の上に波長変換材料層(色変換材料層)73を形成すればよい(
図15参照)。
【0128】
以上の点を除き、実施例4の発光素子の構成、構造は、実施例1~実施例3の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0129】
実施例5は、実施例1~実施例4の変形である。
【0130】
ところで、この国際公開公報に開示された技術にあっては、
図68に模式的な一部端面図を示すように、平坦な第1化合物半導体層21から凸部21’が立ち上がっている。立ち上がりの角度θ
CA(後述する)の補角の値は、例えば、15度以上である。尚、凸部の立ち上がり部分を
図68においては、矢印「A」で示す。従って、何らかの原因で発光素子に強い外力が加わった場合、凸部の立ち上がり部分に応力が集中し、第1化合物半導体層等に損傷が発生する虞がある。また、このような損傷が共振器構造にまで及ぶと、光学的な散乱ロスが発生し、結果として閾値電流の上昇を招く。
【0131】
実施例5の発光素子は、強い外力が加わっても損傷し難い構成、構造を有する。
【0132】
即ち、実施例5の発光素子10Dの模式的な一部断面図を
図16に示し、実施例5の発光素子10Dの複数から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図17に示すように、実施例5の発光素子10Dにおいて、第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90は、活性層から離れる方向に突出した突出部91、及び、突出部91を囲み、平坦面を有する第2領域92を有している。
【0133】
そして、突出部91は、突出部91の頂部を含む第1-A領域91A、及び、第1-A領域91Aを囲む第1-B領域91Bから構成されており、
第1光反射層41は、少なくとも第1-A領域91Aの上に形成されており、
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で基部面90を切断したときの基部面90の断面形状における第1-A領域91Aによって構成される第1曲線は、上に凸の滑らかな曲線(即ち、活性層23から離れる方向に向かって凸状の形状を有する滑らかな曲線)から構成されており、
基部面90のこの断面形状における第1-B領域91Bによって構成される第2曲線と第2領域92によって構成される直線との交点において、この第2曲線とこの直線との成す角度の補角θCAは0度を超える値を有しており(具体的には、1度以上、6度以下であり)、
第2曲線は、下に凸の曲線(活性層23に近づく方向に向かって凸状の形状を有する曲線)、線分及び任意の曲線の組合せから成る群から選択された少なくとも1種類の図形から構成されている。
【0134】
あるいは又、第1光反射層41は、少なくとも突出部91の頂部の上に形成されており、
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で基部面90を切断したときの基部面90の断面形状における突出部91によって構成される曲線と第2領域92によって構成される直線との交点において、この曲線とこの直線との成す角度の補角θCAは、1度以上、6度以下である。
【0135】
第1曲線は、前述した、積層構造体20の積層方向を含む仮想平面で突出部を切断したときの突出部91が描く図形と同様の図形とすることができる。
【0136】
一方、第2曲線は、下に凸の曲線、線分及び任意の曲線の組合せから成る群から選択された少なくとも1種類の図形から構成されているが、具体的には、「下に凸の曲線」は、上記の第1曲線と同様の曲線(円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部である構成)とすることができる。また、「任意の曲線の組合せ」には、線分、上に凸の曲線も含まれる。
【0137】
第1曲線と第2曲線との接続部は、あるいは又、第2曲線が複数の曲線等で構成されている場合の複数の曲線等の接続部は、解析学上、連続であってもよいし、滑らかであってもよいし(即ち、微分可能であってもよいし)、解析学上、不連続であってもよいし、接続部は滑らかでなくともよい(即ち、微分不可能であってもよい)。
【0138】
「下に凸の曲線」を[A]、線分を[B]、任意の曲線の組合せを[C]で表し、「⇒」を『接続されている』こと(接続部)を意味するとしたとき、第1曲線と第2曲線の組合せとして、以下の組合せを例示することができる。
(1)第1曲線⇒[A]
(2)第1曲線⇒[B]
(3)第1曲線⇒[C]
(4)第1曲線⇒[A,B,C]のいずれか⇒[A,B,C]のいずれか
(5)第1曲線⇒[A,B,C]のいずれか⇒[A,B,C]のいずれか⇒[A,B,C]のいずれか
【0139】
例えば、上記(4)の場合、第1曲線は、下に凸の曲線、線分、任意の曲線の組合せのいずれかに接続されており、下に凸の曲線、線分、任意の曲線の組合せのいずれかは、更に、下に凸の曲線、線分、任意の曲線の組合せのいずれか(但し、同じ曲線等ではない)に接続されていることを意味する。
【0140】
実施例5の発光素子10Dにおいて、第1光反射層41は少なくとも基部面90の第1-A領域91Aに形成されているが、具体的には、第1光反射層41は基部面90の第1-A領域91Aに形成されている。但し、これに限定するものではなく、第1光反射層41の延在部が基部面90の第1-B領域91Bに形成されていてもよいし、更には、第1光反射層41の延在部が、周辺領域を占める基部面90の第2領域92に形成されていてもよい。
【0141】
図16及び
図17に示した実施例5の発光素子10Dは、前述した(1)の場合に該当し、発光素子10Dにおいて、積層構造体20の積層方向(Z軸方向)を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で第1-A領域91Aを切断したときの第1-A領域91Aが描く図形(第1曲線)は、例えば、円の一部である。また、第1-B領域91Bによって構成される第2曲線は、下に凸の曲線、具体的には、例えば、円の一部である。第1曲線と第2曲線との接続部(黒四角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。突出部91(第1-B領域91B)と第2領域92の接続部を黒丸で示す。
【0142】
実施例5の発光素子10Dの変形例-1の模式的な一部断面図を
図18に示す。前述した(2)の場合に該当するこの変形例-1において、第2曲線は線分から構成されている。第1曲線と第2曲線との接続部(黒四角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。あるいは又、第1曲線と第2曲線との接続部は、解析学上、連続ではないし、滑らかではない(即ち、微分可能ではない)。
【0143】
あるいは又、実施例5の発光素子10Dの変形例-2の模式的な一部断面図を
図19に示す。前述した(4)の場合に該当するこの変形例-2において、第2曲線は、下に凸の曲線と線分の組合せから構成されている。第1曲線と第2曲線との接続部(黒四角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。あるいは又、第1曲線と第2曲線との接続部は、解析学上、連続ではないし、滑らかではない(即ち、微分可能ではない)。また、第2曲線を構成する下に凸の曲線と線分との接続部(黒三角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。あるいは又、第2曲線を構成する下に凸の曲線と線分との接続部は、解析学上、連続ではないし、滑らかではない(即ち、微分可能ではない)。
【0144】
あるいは又、実施例5の発光素子10Dの変形例-3の模式的な一部断面図を
図20に示す。前述した(4)の場合に該当するこの変形例-3において、第2曲線は、線分と下に凸の曲線の組合せから構成されている。第1曲線と第2曲線との接続部(黒四角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。あるいは又、第1曲線と第2曲線との接続部は、解析学上、連続ではないし、滑らかではない(即ち、微分可能ではない)。また、第2曲線を構成する線分と下に凸の曲線との接続部(黒三角で示す)は、解析学上、連続であるし、滑らかである(即ち、微分可能である)。あるいは又、第2曲線を構成する下に凸の曲線と線分との接続部は、解析学上、連続ではないし、滑らかではない(即ち、微分可能ではない)。
【0145】
図18、
図19あるいは
図20に示した第2曲線の構成例は例示であり、下に凸の曲線、線分及び任意の曲線の組合せから成る群から選択された少なくとも1種類の図形から構成されている限り、適宜、変更することができる。
【0146】
実施例5の発光素子において、補角θCAは0度を超える値を有しており、且つ、基部面90における第2曲線は、下に凸の曲線、線分及び任意の曲線の組合せから成る群から選択された少なくとも1種類の図形から構成されている。あるいは又、補角θCAの値が規定されている。それ故、何らかの原因で発光素子に強い外力が加わった場合であっても、基部面の立ち上がり部分に応力が集中するといった従来の技術における問題を確実に回避することができ、第1化合物半導体層等に損傷が発生する虞がない。特に、発光素子アレイにあっては、バンプを用いて外部の回路等と接続・接合するが、接合時、発光素子アレイに大きな荷重(例えば、50MPa程度)を加える必要がある。然るに、実施例5の発光素子アレイにあっては、このような大きな加重が加わっても、発光素子アレイに損傷が生じる虞がない。
【実施例6】
【0147】
実施例6は、実施例1~実施例5の変形であり、第2構成の発光素子に関する。模式的な一部端面図を
図21に示す実施例6の発光素子10Eにおいて、第1化合物半導体層21の第1面21aと第1光反射層41との間には化合物半導体基板11が配されており(残されており)、基部面90は化合物半導体基板11の表面(第1面11a)から構成されている。
【0148】
【0149】
実施例6の発光素子10Eは、実施例1の[工程-140]と同様の工程において、化合物半導体基板11を薄くし、鏡面仕上げを施す。化合物半導体基板11の第1面11aの表面粗さRqの値は10nm以下であることが好ましい。その後、化合物半導体基板11の第1面11aに対して、実施例1の[工程-150]~[工程-180]あるいは実施例3の[工程-310]~[工程-330]と同様の工程を実行し、実施例1における第1化合物半導体層21の代わりに化合物半導体基板11に突出部91及び第2領域92から成る基部面90を設け、発光素子あるいは発光素子アレイを完成させればよい。
【0150】
以上の点を除き、実施例6の発光素子の構成、構造は、実施例1~実施例5の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例7】
【0151】
実施例7も、実施例1~実施例5の変形であり、第3構成の発光素子に関する。模式的な一部端面図を
図22に示す実施例7の発光素子10Fにおいて、第1化合物半導体層21の第1面21aと第1光反射層41との間には基材93が配されており、基部面90は基材93の表面から構成されている。あるいは又、模式的な一部端面図を
図23に示す実施例7の発光素子10Fの変形例において、第1化合物半導体層21の第1面21aと第1光反射層41との間には化合物半導体基板11及び基材93が配されており、基部面90は基材93の表面から構成されている。基材93を構成する材料として、TiO
2、Ta
2O
5、SiO
2等の透明な誘電体材料、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げることができる。
【0152】
図22に示す実施例7の発光素子10Fは、実施例1の[工程-140]と同様の工程において、化合物半導体基板11を除去し、第1化合物半導体層21の第1面21aの上に基部面90を有する基材93を形成する。具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21aの上に、例えば、TiO
2層又はTa
2O
5層を形成する。そして、TiO
2層又はTa
2O
5層に対して、実施例1の[工程-150]~[工程-180]あるいは実施例3の[工程-310]~[工程-330]と同様の工程を実行し、実施例1における第1化合物半導体層21の代わりに、基材93(TiO
2層又はTa
2O
5層)に突出部91及び第2領域92から成る基部面90を設け、発光素子あるいは発光素子アレイを完成させればよい。
【0153】
あるいは又、
図23に示す実施例7の発光素子10Fは、実施例1の[工程-140]と同様の工程において、化合物半導体基板11を薄くし、鏡面仕上げを施した後、化合物半導体基板11の露出面(第1面11a)の上に基部面90を有する基材93を形成する。具体的には、化合物半導体基板11の露出面(第1面11a)の上に、例えば、TiO
2層又はTa
2O
5層を形成する。そして、TiO
2層又はTa
2O
5層に対して、実施例1の[工程-150]~[工程-180]あるいは実施例3の[工程-310]~[工程-330]と同様の工程を実行し、実施例1における第1化合物半導体層21の代わりに、基材93(TiO
2層又はTa
2O
5層)に突出部91及び第2領域92から成る基部面90を設け、発光素子あるいは発光素子アレイを完成させればよい。
【0154】
以上の点を除き、実施例7の発光素子の構成、構造は、実施例1~実施例5の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例8】
【0155】
実施例8は、実施例7の変形である。実施例8の発光素子の模式的な一部端面図は、実質的に、
図23と同様であるし、実施例8の発光素子の構成、構造は、実質的に、実施例7の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0156】
実施例8にあっては、先ず、発光素子製造用基板11の第2面11bに、基部面90を形成するための凸凹部94を形成する(
図24A参照)。そして、発光素子製造用基板11の第2面11bに、多層膜から成る第1光反射層41を形成した後(
図24B参照)、第1光反射層41及び第2面11bの上に平坦化膜95を形成し、平坦化膜95に平坦化処理を施す(
図24C参照)。
【0157】
次に、第1光反射層41を含む発光素子製造用基板11の平坦化膜95の上に、ELO法等の横方向にエピタキシャル成長させる方法を用いて、横方向成長に基づき積層構造体20を形成する。その後、実施例1の[工程-110]及び[工程-120]を実行する。そして、発光素子製造用基板11を除去し、露出した平坦化膜95に第1電極31を形成する。あるいは又、発光素子製造用基板11を除去すること無く、発光素子製造用基板11の第1面11aに第1電極31を形成する。
【実施例9】
【0158】
実施例9は、実施例1~実施例8の変形である。実施例1~実施例8にあっては、積層構造体20をGaN系化合物半導体から構成した。一方、実施例9にあっては、積層構造体20を、InP系化合物半導体あるいはGaAs系化合物半導体から構成する。実施例9の発光素子の仕様を、以下の表6に示す。
【0159】
〈表6〉
第2光反射層42 SiO2/Ta2O5(11.5ペア)
第2電極32 ITO(厚さ:22nm)
第2化合物半導体層22 p-InP
活性層23 InGaAs(多重量子井戸構造)、又は、
AlInGaAsP(多重量子井戸構造)、又は、
InAs量子ドット
第1化合物半導体層21 n-InP
第1光反射層41 SiO2/Ta2O5(14ペア)
共振器長LOR 25μm
発振波長(発光波長)λ0 1.6μm
【0160】
実施例9の発光素子アレイ(但し、積層構造体20をGaAs系化合物半導体から構成した)における発光素子の仕様を、以下の表7に示す。
【0161】
〈表7〉
第2光反射層42 SiO2/SiN(9ペア)
第2電極32 ITO(厚さ:22nm)
第2化合物半導体層22 p-GaAs
活性層23 InGaAs(多重量子井戸構造)、又は、
GaInNAs(多重量子井戸構造)、又は、
InAs量子ドット
第1化合物半導体層21 n-GaAs
第1光反射層41 SiO2/Ta2O5(14ペア)
共振器長LOR 25μm
発振波長(発光波長)λ0 0.94μm
【0162】
以下、実施例1~実施例9の発光素子、前述した好ましい形態、構成を含む本開示の発光素子等の各種変形例を説明し、次いで、実施例10~実施例24を説明する。
【0163】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の発光素子等において、
第2化合物半導体層には、電流注入領域及び電流注入領域を取り囲む電流非注入領域が設けられており、
電流注入領域の面積重心点から、電流注入領域と電流非注入領域の境界までの最短距離DCIは、以下の式を満足する構成とすることができる。ここで、このような構成の発光素子を、便宜上、『第4構成の発光素子』と呼ぶ。尚、以下の式の導出は、例えば,H. Kogelnik and T. Li, "Laser Beams and Resonators", Applied Optics/Vol. 5, No. 10/ October 1966 を参照のこと。また、ω0はビームウェスト半径とも呼ばれる。
【0164】
DCI≧ω0/2 (1-1)
但し、
ω0
2≡(λ0/π){LOR(R1-LOR)}1/2 (1-2)
ここで、
λ0 :発光素子から主に出射される所望の光の波長(発振波長)
LOR:共振器長
R1 :基部面の突出部の頂部(中心部)の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)
【0165】
ここで、本開示の発光素子等は、第1光反射層のみが凹面鏡形状を有するが、第2光反射層の平板な鏡に対する対称性を考えれば、共振器は、同一の曲率半径を有する2つの凹面鏡部で挟まれたファブリペロー型共振器へと拡張することができる(
図63の模式図を参照)。このとき、仮想的なファブリペロー型共振器の共振器長は、共振器長L
ORの2倍となる。ω
0の値と共振器長L
ORの値と第1光反射層の曲率半径R
1の値の関係を示すグラフを、
図64及び
図65に示す。尚、
図64及び
図65においては、曲率半径R
1を「R
DBR」で表示する。ω
0の値が「正」であるとは、レーザ光が模式的に
図66Aの状態にあることを示し、ω
0の値が「負」であるとは、レーザ光が模式的に
図66Bの状態にあることを示す。レーザ光の状態は、
図66Aに示す状態であってもよいし、
図66Bに示す状態であってもよい。但し、2つの凹面鏡部を有する仮想的なファブリペロー型共振器は、曲率半径R
1が共振器長L
ORよりも小さくなると、
図66Bに示す状態となり、閉じ込めが過剰になり回折損失を生じる。それ故、曲率半径R
1が共振器長L
ORよりも大きい、
図66Aに示す状態であることが好ましい。尚、活性層を、2つの光反射層のうち、平坦な光反射層、具体的には、第2光反射層に近づけて配置すると、光場は活性層においてより集光される。即ち、活性層における光場閉じ込めを強め、レーザ発振を容易ならしめる。活性層の位置、即ち、第2化合物半導体層に面する第2光反射層の面から活性層までの距離として、限定するものではないが、λ
0/2乃至10λ
0を例示することができる。
【0166】
ところで、第1光反射層によって反射される光が集光される領域が、電流注入によって活性層が利得を持つ領域に対応する電流注入領域に含まれない場合、キャリアから光の誘導放出が阻害され、ひいては、レーザ発振が阻害される虞がある。上式(1-1)及び(1-2)を満足することで、第1光反射層によって反射される光が集光される領域が電流注入領域に含まれることを保証することができ、レーザ発振を確実に達成することができる。
【0167】
そして、第4構成の発光素子は、
第2化合物半導体層の第2面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、
第2化合物半導体層の第2面上からモードロス作用部位上に亙り形成された第2電極、及び、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第2光反射層は第2電極上に形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている構成とすることができる。
【0168】
そして、このような好ましい構成を含む第4構成の発光素子において、第1光反射層の光反射有効領域の半径r1(=D1’/2)は、ω0≦r1≦20・ω0、好ましくは、ω0≦r1≦10・ω0を満足する構成とすることができる。更には、このような好ましい構成を含む第4構成の発光素子において、DCI≧ω0を満足する構成とすることができる。
【0169】
また、上記の好ましい形態、構成を含む本開示の発光素子等は、
第2化合物半導体層の第2面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、
第2化合物半導体層の第2面上からモードロス作用部位上に亙り形成された第2電極、及び、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第2光反射層は第2電極上に形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている構成とすることができる。ここで、このような構成の発光素子を、便宜上、『第5構成の発光素子』と呼ぶ。
【0170】
あるいは又、上記の好ましい形態、構成を含む本開示の発光素子等は、
第2化合物半導体層の第2面上に形成された第2電極、
第2電極上に形成された第2光反射層、
第1化合物半導体層の第1面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、並びに、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面上からモードロス作用部位上に亙り形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている構成とすることができる。ここで、このような構成の発光素子を、便宜上、『第6構成の発光素子』と呼ぶ。尚、第6構成の発光素子の規定を、第4構成の発光素子に適用することができる。
【0171】
第5構成の発光素子又は第6構成の発光素子において、積層構造体には電流非注入領域(電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域の総称)が形成されているが、電流非注入領域は、具体的には、厚さ方向、第2化合物半導体層の第2電極側の領域に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層全体に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層及び活性層に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層から第1化合物半導体層の一部に亙り形成されていてもよい。モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っているが、電流注入領域から充分に離れた領域においては、モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っていなくともよい。
【0172】
第5構成の発光素子において、電流非注入・外側領域はモードロス作用領域の下方に位置している構成とすることができる。
【0173】
上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子において、電流注入領域の正射影像の面積をS1、電流非注入・内側領域の正射影像の面積をS2としたとき、
0.01≦S1/(S1+S2)≦0.7
を満足する構成とすることができる。また、第6構成の発光素子において、電流注入領域の正射影像の面積をS1’、電流非注入・内側領域の正射影像の面積をS2’としたとき、
0.01≦S1’/(S1’+S2’)≦0.7
を満足する構成とすることができる。但し、S1/(S1’+S2)の範囲、S1’/(S1’+S2’)の範囲は、上記の範囲に限定あるいは制限されるものではない。
【0174】
上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子又は第6構成の発光素子において、電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、積層構造体へのイオン注入によって形成される構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第5-A構成の発光素子』、『第6-A構成の発光素子』と呼ぶ。そして、この場合、イオン種は、ボロン、プロトン、リン、ヒ素、炭素、窒素、フッ素、酸素、ゲルマニウム、亜鉛及びシリコンから成る群から選択された少なくとも1種類のイオン(即ち、1種類のイオン又は2種類以上のイオン)である構成とすることができる。
【0175】
あるいは又、上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子又は第6構成の発光素子において、電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、第2化合物半導体層の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層の第2面への反応性イオンエッチング処理によって形成される構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第5-B構成の発光素子』、『第6-B構成の発光素子』と呼ぶ。これらの処理にあっては、電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域はプラズマ粒子に晒されるので、第2化合物半導体層の導電性に劣化が生じ、電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は高抵抗状態となる。即ち、電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、第2化合物半導体層の第2面のプラズマ粒子への暴露によって形成される構成とすることができる。プラズマ粒子として、具体的には、アルゴン、酸素、窒素等を挙げることができる。
【0176】
あるいは又、上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子又は第6構成の発光素子において、第2光反射層は、第1光反射層からの光を、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって反射あるいは散乱する領域を有する構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第5-C構成の発光素子』、『第6-C構成の発光素子』と呼ぶ。具体的には、モードロス作用部位の側壁(モードロス作用部位に設けられた開口部の側壁)の上方に位置する第2光反射層の領域は、順テーパー状の傾斜を有し、あるいは又、第1光反射層に向かって凸状に湾曲した領域を有する。あるいは又、上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子又は第6構成の発光素子において、第1光反射層は、第2光反射層からの光を、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって反射あるいは散乱する領域を有する構成とすることができる。具体的には、第1光反射層の一部の領域に、順テーパー状の傾斜を形成し、あるいは、第2光反射層に向かって凸状の湾曲部を形成すればよいし、あるいは又、モードロス作用部位の側壁(モードロス作用部位に設けられた開口部の側壁)の上方に位置する第1光反射層の領域は、順テーパー状の傾斜を有し、あるいは又、第2光反射層に向かって凸状に湾曲した領域を有する構成とすればよい。また、モードロス作用部位の頂面と、モードロス作用部位に設けられた開口部の側壁との境界(側壁エッジ部)において光を散乱させることで、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって光を散乱させる構成とすることもできる。
【0177】
以上に説明した第5-A構成の発光素子、第5-B構成の発光素子あるいは第5-C構成の発光素子において、電流注入領域における活性層から第2化合物半導体層の第2面までの光学的距離をOL2、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0としたとき、
OL0>OL2
を満足する構成とすることができる。また、以上に説明した第6-A構成の発光素子、第6-B構成の発光素子あるいは第6-C構成の発光素子において、電流注入領域における活性層から第1化合物半導体層の第1面までの光学的距離をOL1’、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0’としたとき、
OL0’>OL1’
を満足する構成とすることができる。更には、これらの構成を含む、以上に説明した第5-A構成の発光素子、第6-A構成の発光素子、第5-B構成の発光素子、第6-B構成の発光素子、第5-C構成の発光素子あるいは第6-C構成の発光素子において、生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって散逸させられ、以て、発振モードロスが増加する構成とすることができる。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域の存在によって、モードロス作用領域の正射影像内において、Z軸から離れるほど、減少するが、基本モードの光場強度の減少よりも高次モードのモードロスの方が多く、基本モードを一層安定化させることができるし、電流注入内側領域が存在しない場合に比べるとモードロスを抑制することができるので、閾値電流の低下を図ることができる。尚、便宜上、2つの光反射層によって形成される共振器の中心を通る軸線(第1光反射層の中心を通る、積層構造体に対する垂線)はZ軸であり、Z軸と直交する仮想平面はXY平面である。
【0178】
また、以上に説明した第5-A構成の発光素子、第6-A構成の発光素子、第5-B構成の発光素子、第6-B構成の発光素子、第5-C構成の発光素子あるいは第6-C構成の発光素子において、モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る構成とすることができる。誘電体材料として、SiOX、SiNX、AlNX、AlOX、TaOX、ZrOXを例示することができるし、金属材料あるいは合金材料として、チタン、金、白金あるいはこれらの合金を例示することができるが、これらの材料に限定するものではない。これらの材料から構成されたモードロス作用部位により光を吸収させ、モードロスを増加させることができる。あるいは直接的に光を吸収しなくても、位相を乱すことでモードロスを制御することができる。この場合、モードロス作用部位は誘電体材料から成り、モードロス作用部位の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍から外れる値である構成とすることができる。即ち、共振器内を周回し定在波を形成する光の位相を、モードロス作用部位においては位相を乱すことで定在波を破壊し、それに相応するモードロスを与えることができる。あるいは又、モードロス作用部位は誘電体材料から成り、モードロス作用部位(屈折率をn0とする)の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍である構成とすることができる。即ち、モードロス作用部位の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の位相を乱さず定在波を破壊しないような厚さである構成とすることができる。但し、厳密に1/4の整数倍である必要はなく、
(λ0/4n0)×m-(λ0/8n0)≦t0≦(λ0/4n0)×2m+(λ0/8n0)
を満足すればよい。あるいは又、モードロス作用部位を、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る構成とすることで、モードロス作用部位を通過する光がモードロス作用部位によって、位相を乱されたり、吸収させることができる。そして、これらの構成を採用することで、発振モードロスの制御を一層高い自由度をもって行うことができるし、発光素子の設計自由度を一層高くすることができる。
【0179】
あるいは又、上記の好ましい構成を含む第5構成の発光素子において、
第2化合物半導体層の第2面側には凸部が形成されており、
モードロス作用部位は、凸部を囲む第2化合物半導体層の第2面の領域上に形成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第5-D構成の発光素子』と呼ぶ。凸部は、電流注入領域及び電流非注入・内側領域を占めている。そして、この場合、電流注入領域における活性層から第2化合物半導体層の第2面までの光学的距離をOL2、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0としたとき、
OL0<OL2
を満足する構成とすることができ、更には、これらの場合、生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、電流注入領域及び電流非注入・内側領域に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する構成とすることができる。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域の存在によって、電流注入領域及び電流非注入・内側領域の正射影像内において増加する。更には、これらの場合、モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る構成とすることができる。ここで、誘電体材料、金属材料又は合金材料として、上述した各種の材料を挙げることができる。
【0180】
あるいは又、上記の好ましい構成を含む第6構成の発光素子において、
第1化合物半導体層の第1面側には凸部が形成されており、
モードロス作用部位は、凸部を囲む第1化合物半導体層の第1面の領域上に形成されており、あるいは又、モードロス作用部位は、凸部を囲む第1化合物半導体層の領域から構成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第6-D構成の発光素子』と呼ぶ。凸部は、電流注入領域及び電流非注入・内側領域の正射影像と一致する。そして、この場合、電流注入領域における活性層から第1化合物半導体層の第1面までの光学的距離をOL1’、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0’としたとき、
OL0’<OL1’
を満足する構成とすることができ、更には、これらの場合、生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、電流注入領域及び電流非注入領域に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する構成とすることができ、更には、これらの場合、モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る構成とすることができる。ここで、誘電体材料、金属材料又は合金材料として、上述した各種の材料を挙げることができる。
【0181】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の発光素子等において、第2電極を含む積層構造体には、活性層が占める仮想平面(XY平面)と平行に、少なくとも2層の光吸収材料層が形成されている構成とすることができる。ここで、このような構成の発光素子を、便宜上、『第7構成の発光素子』と呼ぶ。
【0182】
第7構成の発光素子にあっては、少なくとも4層の光吸収材料層が形成されていることが好ましい。
【0183】
上記の好ましい構成を含む第7構成の発光素子において、発振波長(発光素子から主に出射される光の波長であり、所望の発振波長である)をλ0、2層の光吸収材料層、及び、光吸収材料層と光吸収材料層との間に位置する積層構造体の部分の全体の等価屈折率をneq、光吸収材料層と光吸収材料層との間の距離をLAbsとしたとき、
0.9×{(m・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(m・λ0)/(2・neq)}
を満足することが好ましい。ここで、mは、1、又は、1を含む2以上の任意の整数である。等価屈折率neqとは、2層の光吸収材料層、及び、光吸収材料層と光吸収材料層との間に位置する積層構造体の部分を構成する各層のそれぞれの厚さをti、それぞれの屈折率をniとしたとき、
neq=Σ(ti×ni)/Σ(ti)
で表される。但し、i=1,2,3・・・,Iであり、「I」は、2層の光吸収材料層、及び、光吸収材料層と光吸収材料層との間に位置する積層構造体の部分を構成する層の総数であり、「Σ」はi=1からi=Iまでの総和を取ることを意味する。等価屈折率neqは、発光素子断面の電子顕微鏡観察等から構成材料を観察し、それぞれの構成材料に対して既知の屈折率及び観察により得た厚さを基に算出すればよい。mが1の場合、隣接する光吸収材料層の間の距離は、全ての複数の光吸収材料層において、
0.9×{λ0/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{λ0/(2・neq)}
を満足する。また、mが1を含む2以上の任意の整数であるとき、一例として、m=1,2とすれば、一部の光吸収材料層において、隣接する光吸収材料層の間の距離は、
0.9×{λ0/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{λ0/(2・neq)}
を満足し、残りの光吸収材料層において、隣接する光吸収材料層の間の距離は、
0.9×{(2・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(2・λ0)/(2・neq)}
を満足する。広くは、一部の光吸収材料層において、隣接する光吸収材料層の間の距離は、
0.9×{λ0/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{λ0/(2・neq)}
を満足し、残りの種々の光吸収材料層において、隣接する光吸収材料層の間の距離は、
0.9×{(m’・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(m’・λ0)/(2・neq)}
を満足する。ここで、m’は、2以上の任意の整数である。また、隣接する光吸収材料層の間の距離とは、隣接する光吸収材料層の重心と重心との間の距離である。即ち、実際には、活性層の厚さ方向に沿った仮想平面(XZ平面)で切断したときの、各光吸収材料層の中心と中心との間の距離である。
【0184】
更には、上記の各種の好ましい構成を含む第7構成の発光素子において、光吸収材料層の厚さは、λ0/(4・neq)以下であることが好ましい。光吸収材料層の厚さの下限値として1nmを例示することができる。
【0185】
更には、上記の各種の好ましい構成を含む第7構成の発光素子にあっては、積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最小振幅部分に光吸収材料層が位置する構成とすることができる。
【0186】
更には、上記の各種の好ましい構成を含む第7構成の発光素子において、積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最大振幅部分に活性層が位置する構成とすることができる。
【0187】
更には、上記の各種の好ましい構成を含む第7構成の発光素子において、光吸収材料層は、積層構造体を構成する化合物半導体の光吸収係数の2倍以上の光吸収係数を有する構成とすることができる。ここで、光吸収材料層の光吸収係数や積層構造体を構成する化合物半導体の光吸収係数は、発光素子断面の電子顕微鏡観察等から構成材料を観察し、それぞれの構成材料に対して観察された既知の評価結果より類推することで求めることができる。
【0188】
更には、上記の各種の好ましい構成を含む第7構成の発光素子において、光吸収材料層は、積層構造体を構成する化合物半導体よりもバンドギャップの狭い化合物半導体材料、不純物をドープした化合物半導体材料、透明導電性材料、及び、光吸収特性を有する光反射層構成材料から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成されている構成とすることができる。ここで、積層構造体を構成する化合物半導体よりもバンドギャップの狭い化合物半導体材料として、例えば、積層構造体を構成する化合物半導体をGaNとする場合、InGaNを挙げることができるし、不純物をドープした化合物半導体材料として、Siをドープしたn-GaN、Bをドープしたn-GaNを挙げることができるし、透明導電性材料として、後述する電極を構成する透明導電性材料を挙げることができるし、光吸収特性を有する光反射層構成材料として、後述する光反射層を構成する材料(例えば、SiOX、SiNX、TaOX等)を挙げることができる。光吸収材料層の全てがこれらの材料の内の1種類の材料から構成されていてもよい。あるいは又、光吸収材料層のそれぞれがこれらの材料の内から選択された種々の材料から構成されていてもよいが、1層の光吸収材料層は1種類の材料から構成されていることが、光吸収材料層の形成の簡素化といった観点から好ましい。光吸収材料層は、第1化合物半導体層内に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層内に形成されていてもよいし、第1光反射層内に形成されていてもよいし、第2光反射層内に形成されていてもよいし、これらの任意の組み合わせとすることもできる。あるいは又、光吸収材料層を、後述する透明導電性材料から成る電極と兼用することもできる。
【実施例10】
【0189】
実施例10は、実施例1~実施例9の変形であり、第4構成の発光素子に関する。前述したとおり、開口部34Aを有する絶縁層34によって、電流狭窄領域(電流注入領域61A及び電流非注入領域61B)が規定される。即ち、開口部34Aによって電流注入領域61Aが規定される。即ち、実施例10の発光素子にあっては、第2化合物半導体層22には、電流注入領域61A及び電流注入領域61Aを取り囲む電流非注入領域61Bが設けられており、電流注入領域61Aの面積重心点から、電流注入領域61Aと電流非注入領域61Bの境界までの最短距離DCIは、前述した式(1-1)及び式(1-2)を満足する。
【0190】
実施例10の発光素子にあっては、第1光反射層41の光反射有効領域の半径r1は、
ω0≦r1≦20・ω0
を満足する。また、DCI≧ω0を満足する。GaN基板として、c面をm軸方向に約75度傾けた面を主面とする基板を用いる。即ち、GaN基板は、主面として、半極性面である{20-21}面を有する。尚、このようなGaN基板を、他の実施例において用いることもできる。
【0191】
基部面90の突出部91の中心軸(Z軸)と、XY平面方向における電流注入領域61Aとの間のズレは、発光素子の特性を悪化させる原因となる。突出部91の形成のためのパターニング、開口部34Aの形成のためのパターニングのいずれも、リソグラフィ技術を用いることが多いが、この場合、両者の位置関係は、露光機の性能に応じてXY平面内で屡々ずれる。特に、開口部34A(電流注入領域61A)は、第2化合物半導体層22の側からアライメントを行って位置決めされる。一方、突出部91は、化合物半導体基板11の側からアライメントを行って位置決めされる。そこで、実施例10の発光素子では、開口部34A(電流注入領域61)を、突出部91によって光が絞られる領域よりも大きく形成することで、突出部91の中心軸(Z軸)と、XY平面方向における電流注入領域61Aとの間にズレが生じても、発振特性に影響が出ない構造を実現している。
【0192】
即ち、第1光反射層によって反射される光が集光される領域が、電流注入によって活性層が利得を持つ領域に対応する電流注入領域に含まれない場合、キャリアから光の誘導放出が阻害され、ひいては、レーザ発振が阻害される虞がある。然るに、上式(1-1)及び(1-2)を満足することで、第1光反射層によって反射される光が集光される領域が電流注入領域に含まれることを保証することができ、レーザ発振を確実に達成することができる。
【実施例11】
【0193】
実施例11は、実施例1~実施例10の変形であり、且つ、第5構成の発光素子、具体的には、第5-A構成の発光素子に関する。実施例11の発光素子の模式的な一部端面図を
図25に示す。
【0194】
ところで、第1電極と第2電極との間を流れる電流の流路(電流注入領域)を制御するために、電流注入領域を取り囲むように電流非注入領域を形成する。GaAs系面発光レーザ素子(GaAs系化合物半導体から構成された面発光レーザ素子)においては、活性層をXY平面に沿って外側から酸化することで電流注入領域を取り囲む電流非注入領域を形成することができる。酸化された活性層の領域(電流非注入領域)は、酸化されない領域(電流注入領域)に比べて屈折率が低下する。その結果、共振器の光路長(屈折率と物理的な距離の積で表される)は、電流注入領域よりも電流非注入領域の方が短くなる。そして、これによって、一種の「レンズ効果」が生じ、面発光レーザ素子の中心部にレーザ光を閉じ込める作用をもたらす。一般に、光は回折効果に起因して広がろうとするため、共振器を往復するレーザ光は、次第に、共振器外へと散逸してしまい(回折損失)、閾値電流の増加等の悪影響が生じる。しかしながら、レンズ効果は、この回折損失を補償するので、閾値電流の増加等を抑制することができる。
【0195】
然るに、GaN系化合物半導体から構成された発光素子においては、材料の特性上、活性層をXY平面に沿って外部から(横方向から)酸化することが難しい。それ故、実施例1~実施例10において説明したとおり、第2化合物半導体層22上に開口部を有するSiO2から成る絶縁層34を形成し、開口部34Aの底部に露出した第2化合物半導体層22から絶縁層34上に亙り透明導電性材料から成る第2電極32を形成し、第2電極32上に絶縁材料の積層構造から成る第2光反射層42を形成する。このように、絶縁層34を形成することで電流非注入領域61Bが形成される。そして、絶縁層34に設けられた開口部34A内に位置する第2化合物半導体層22の部分が電流注入領域61Aとなる。
【0196】
第2化合物半導体層22上に絶縁層34を形成した場合、絶縁層34が形成された領域(電流非注入領域61B)における共振器長は、絶縁層34が形成されていない領域(電流注入領域61A)における共振器長よりも、絶縁層34の光学的厚さ分だけ長くなる。それ故、面発光レーザ素子(発光素子)の2つの光反射層41,42によって形成される共振器を往復するレーザ光が共振器外へと発散・散逸する作用が生じてしまう。このような作用を、便宜上、『逆レンズ効果』と呼ぶ。そして、その結果、レーザ光に発振モードロスが生じ、閾値電流が増加したり、スロープ効率が悪化する虞が生じる。ここで、『発振モードロス』とは、発振するレーザ光における基本モード及び高次モードの光場強度に増減を与える物理量であり、個々のモードに対して異なる発振モードロスが定義される。尚、『光場強度』は、XY平面におけるZ軸からの距離Lを関数とした光場強度であり、一般に、基本モードにおいては距離Lが増加するに従い単調に減少するが、高次モードにおいては距離Lが増加するに従い増減を一度若しくは複数繰り返しながら減少に至る(
図27の(A)の概念図を参照)。尚、
図27において、実線は基本モードの光場強度分布、破線は高次モードの光場強度分布を示す。また、
図27において、第1光反射層41を、便宜上、平坦状態で表示しているが、実際には凹面鏡形状を有する。
【0197】
実施例11の発光素子あるいは後述する実施例12~実施例15の発光素子は、
(A)第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層(発光層)23、及び、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された、GaN系化合物半導体から成る積層構造体20、
(B)第2化合物半導体層22の第2面22b上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域55を構成するモードロス作用部位(モードロス作用層)54、
(C)第2化合物半導体層22の第2面22bの上からモードロス作用部位54の上に亙り形成された第2電極32、
(D)第2電極32の上に形成された第2光反射層42、
(E)第1化合物半導体層21の第1面側に設けられた第1光反射層41、並びに、
(F)第1化合物半導体層21に電気的に接続された第1電極31、
を備えている。
【0198】
そして、積層構造体20には、電流注入領域51、電流注入領域51を取り囲む電流非注入・内側領域52、及び、電流非注入・内側領域52を取り囲む電流非注入・外側領域53が形成されており、モードロス作用領域55の正射影像と電流非注入・外側領域53の正射影像とは重なり合っている。即ち、電流非注入・外側領域53はモードロス作用領域55の下方に位置している。尚、電流が注入される電流注入領域51から充分に離れた領域においては、モードロス作用領域55の正射影像と電流非注入・外側領域53の正射影像とは重なり合っていなくともよい。ここで、積層構造体20には、電流が注入されない電流非注入領域52,53が形成されているが、図示した例では、厚さ方向、第2化合物半導体層22から第1化合物半導体層21の一部に亙り形成されている。但し、電流非注入領域52,53は、厚さ方向、第2化合物半導体層22の第2電極側の領域に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層22全体に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層22及び活性層23に形成されていてもよい。
【0199】
モードロス作用部位(モードロス作用層)54は、SiO2といった誘電体材料から成り、実施例11あるいは後述する実施例12~実施例15の発光素子においては、第2電極32と第2化合物半導体層22との間に形成されている。モードロス作用部位54の光学的厚さは、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍から外れる値とすることができる。あるいは又、モードロス作用部位54の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍とすることもできる。即ち、モードロス作用部位54の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の位相を乱さず、定在波を破壊しないような厚さとすることができる。但し、厳密に1/4の整数倍である必要はなく、
(λ0/4n0)×m-(λ0/8n0)≦t0≦(λ0/4n0)×2m+(λ0/8n0)
を満足すればよい。具体的には、モードロス作用部位54の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長の1/4の値を「100」としたとき、25乃至250程度とすることが好ましい。そして、これらの構成を採用することで、モードロス作用部位54を通過するレーザ光と、電流注入領域51を通過するレーザ光との間の位相差を変える(位相差を制御する)ことができ、発振モードロスの制御を一層高い自由度をもって行うことができるし、発光素子の設計自由度を一層高くすることができる。
【0200】
実施例11において、電流注入領域51と電流非注入・内側領域52との境界の形状を円形(直径:8μm)とし、電流非注入・内側領域52と電流非注入・外側領域53との境界の形状を円形(直径:12μm)とした。即ち、電流注入領域51の正射影像の面積をS1、電流非注入・内側領域52の正射影像の面積をS2としたとき、
0.01≦S1/(S1+S2)≦0.7
を満足する。具体的には、
S1/(S1+S2)=82/122=0.44
である。
【0201】
実施例11あるいは後述する実施例12~実施例13、実施例15の発光素子において、電流注入領域51における活性層23から第2化合物半導体層22の第2面までの光学的距離をOL
2、モードロス作用領域55における活性層23からモードロス作用部位54の頂面(第2電極32と対向する面)までの光学的距離をOL
0としたとき、
OL
0>OL
2
を満足する。具体的には、
OL
0/OL
2=1.5
とした。そして、生成した高次モードを有するレーザ光は、モードロス作用領域55により、第1光反射層41と第2光反射層42とによって構成される共振器構造の外側に向かって散逸させられ、以て、発振モードロスが増加する。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域55の存在によって、モードロス作用領域55の正射影像内において、Z軸から離れるほど、減少するが(
図27の(B)の概念図を参照)、基本モードの光場強度の減少よりも高次モードの光場強度の減少の方が多く、基本モードを一層安定化させることができるし、閾値電流の低下を図ることができるし、基本モードの相対的な光場強度を増加させることができる。しかも、高次モードの光場強度の裾の部分は、電流注入領域から、従来の発光素子(
図27の(A)参照)よりも一層遠くに位置するので、逆レンズ効果の影響の低減を図ることができる。尚、そもそも、SiO
2から成るモードロス作用部位54を設けない場合、発振モード混在が発生してしまう。
【0202】
第1化合物半導体層21はn-GaN層から成り、活性層23はIn0.04Ga0.96N層(障壁層)とIn0.16Ga0.84N層(井戸層)とが積層された5重の多重量子井戸構造から成り、第2化合物半導体層22はp-GaN層から成る。また、第1電極31はTi/Pt/Auから成り、第2電極32は、透明導電性材料、具体的には、ITOから成る。モードロス作用部位54には円形の開口部54Aが形成されており、この開口部54Aの底部に第2化合物半導体層22が露出している。第1電極31の縁部の上には、外部の回路等と電気的に接続するための、例えばTi/Pt/Au又はV/Pt/Auから成る第1パッド電極(図示せず)が形成あるいは接続されている。第2電極32の縁部の上には、外部の回路等と電気的に接続するための、例えばTi/Pd/Au又はTi/Ni/Auから成る第2パッド電極33が形成あるいは接続されている。第1光反射層41及び第2光反射層42は、SiN層とSiO2層の積層構造(誘電体膜の積層総数:20層)から成る。
【0203】
実施例11の発光素子において、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53は、積層構造体20へのイオン注入によって形成される。イオン種として、例えば、ボロンを選択したが、ボロンイオンに限定するものではない。
【0204】
以下、実施例11の発光素子の製造方法の概要を説明する。
【0205】
[工程-1100]
実施例11の発光素子の製造にあっては、先ず、実施例1の[工程-100]と同様の工程を実行する。
【0206】
[工程-1110]
次いで、ボロンイオンを用いたイオン注入法に基づき、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53を積層構造体20に形成する。
【0207】
[工程-1120]
その後、実施例1の[工程-110]と同様の工程において、第2化合物半導体層22の第2面22b上に、周知の方法に基づき、開口部54Aを有し、SiO
2から成るモードロス作用部位(モードロス作用層)54を形成する(
図26A参照)。
【0208】
[工程-1130]
その後、実施例1の[工程-120]以降の工程と同様の工程を実行することで、実施例11の発光素子を得ることができる。尚、[工程-120]と同様の工程の途中において得られた構造を
図26Bに示す。
【0209】
実施例11の発光素子において、積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている。即ち、電流注入領域とモードロス作用領域とは、電流非注入・内側領域によって隔てられている(切り離されている)。それ故、概念図を
図27の(B)に示すように、発振モードロスの増減(具体的には、実施例11にあっては増加)を所望の状態とすることが可能となる。あるいは又、電流注入領域とモードロス作用領域との位置関係、モードロス作用領域を構成するモードロス作用部位の厚さ等を、適宜、決定することで、発振モードロスの増減を所望の状態とすることが可能となる。そして、その結果、例えば、閾値電流が増加したり、スロープ効率が悪化するといった従来の発光素子における問題を解決することができる。例えば、基本モードにおける発振モードロスを減少させることによって、閾値電流の低下を図ることができる。しかも、発振モードロスが与えられる領域と電流が注入され発光に寄与する領域とを独立して制御することができるので、即ち、発振モードロスの制御と発光素子の発光状態の制御とを独立して行うことができるので、制御の自由度、発光素子の設計自由度を高くすることができる。具体的には、電流注入領域、電流非注入領域及びモードロス作用領域を上記の所定の配置関係とすることで、基本モードとより高次のモードに対してモードロス作用領域が与える発振モードロスの大小関係を制御することができ、高次モードに与える発振モードロスを基本モードに与える発振モードロスに対して相対的に大きくすることで、基本モードを一層安定化させることができる。しかも、尚、実施例11の発光素子にあっては突出部91を有するので、回折損失の発生を一層確実に抑制することができる。
【実施例12】
【0210】
実施例12は、実施例11の変形であり、第5-B構成の発光素子に関する。模式的な一部断面図を
図28に示すように、実施例12の発光素子において、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53は、第2化合物半導体層22の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層22の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層22の第2面への反応性イオンエッチング(RIE)処理によって形成される。そして、このように電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53はプラズマ粒子(具体的には、アルゴン、酸素、窒素等)に晒されるので、第2化合物半導体層22の導電性に劣化が生じ、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53は高抵抗状態となる。即ち、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53は、第2化合物半導体層22の第2面22bのプラズマ粒子への暴露によって形成される。
【0211】
実施例12においても、電流注入領域51と電流非注入・内側領域52との境界の形状を円形(直径:10μm)とし、電流非注入・内側領域52と電流非注入・外側領域53との境界の形状を円形(直径:15μm)とした。即ち、電流注入領域51の正射影像の面積をS1、電流非注入・内側領域52の正射影像の面積をS2としたとき、
0.01≦S1/(S1+S2)≦0.7
を満足する。具体的には、
S1/(S1+S2)=102/152=0.44
である。
【0212】
実施例12にあっては、実施例11の[工程-1110]の代わりに、第2化合物半導体層22の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層22の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層22の第2面への反応性イオンエッチング処理に基づき、電流非注入・内側領域52及び電流非注入・外側領域53を積層構造体20に形成すればよい。
【0213】
以上の点を除き、実施例12の発光素子の構成、構造は、実施例11の発光素子と構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0214】
実施例12あるいは後述する実施例13の発光素子にあっても、電流注入領域、電流非注入領域及びモードロス作用領域を前述した所定の配置関係とすることで、基本モードとより高次のモードに対してモードロス作用領域が与える発振モードロスの大小関係を制御することができ、高次モードに与える発振モードロスを基本モードに与える発振モードロスに対して相対的に大きくすることで、基本モードを一層安定化させることができる。
【実施例13】
【0215】
実施例13は、実施例11~実施例12の変形であり、第5-C構成の発光素子に関する。模式的な一部断面図を
図29に示すように、実施例13の発光素子において、第2光反射層42は、第1光反射層41からの光を、第1光反射層41と第2光反射層42とによって構成される共振器構造の外側に向かって(即ち、モードロス作用領域55に向かって)反射あるいは散乱する領域を有する。具体的には、モードロス作用部位(モードロス作用層)54の側壁(開口部54Bの側壁)の上方に位置する第2光反射層42の部分は、順テーパー状の傾斜部42Aを有し、あるいは又、第1光反射層41に向かって凸状に湾曲した領域を有する。
【0216】
実施例13において、電流注入領域51と電流非注入・内側領域52との境界の形状を円形(直径:8μm)とし、電流非注入・内側領域52と電流非注入・外側領域53との境界の形状を円形(直径:10μm乃至20μm)とした。
【0217】
実施例13にあっては、実施例11の[工程-1120]と同様の工程において、開口部54Bを有し、SiO2から成るモードロス作用部位(モードロス作用層)54を形成するとき、順テーパー状の側壁を有する開口部54Bを形成すればよい。具体的には、第2化合物半導体層22の第2面22b上に形成されたモードロス作用層の上にレジスト層を形成し、開口部54Bを形成すべきレジスト層の部分に、フォトリソグラフィ技術に基づき開口を設ける。周知の方法に基づき、この開口の側壁を順テーパー状とする。そして、エッチバックを行うことで、モードロス作用部位(モードロス作用層)54に順テーパー状の側壁を有する開口部54Bを形成することができる。更には、このようなモードロス作用部位(モードロス作用層)54の上に、第2電極32、第2光反射層42を形成することで、第2光反射層42に順テーパー状の傾斜部42Aを付与することができる。
【0218】
以上の点を除き、実施例13の発光素子の構成、構造は、実施例11~実施例12の発光素子と構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例14】
【0219】
実施例14は、実施例11~実施例13の変形であり、第5-D構成の発光素子に関する。実施例14の発光素子の模式的な一部断面図を
図30Aに示し、要部を切り出した模式的な一部断面図を
図30Bに示すように、第2化合物半導体層22の第2面側には凸部22Aが形成されている。そして、
図30A及び
図30Bに示すように、モードロス作用部位(モードロス作用層)54は、凸部22Aを囲む第2化合物半導体層22の第2面22bの領域22Bの上に形成されている。凸部22Aは、電流注入領域51、電流注入領域51及び電流非注入・内側領域52を占めている。モードロス作用部位(モードロス作用層)54は、実施例11と同様に、例えば、SiO
2といった誘電体材料から成る。領域22Bには、電流非注入・外側領域53が設けられている。電流注入領域51における活性層23から第2化合物半導体層22の第2面までの光学的距離をOL
2、モードロス作用領域55における活性層23からモードロス作用部位54の頂面(第2電極32と対向する面)までの光学的距離をOL
0としたとき、
OL
0<OL
2
を満足する。具体的には、
OL
2/OL
0=1.5
とした。これによって、発光素子にはレンズ効果が生じる。
【0220】
実施例14の発光素子にあっては、生成した高次モードを有するレーザ光は、モードロス作用領域55により、電流注入領域51及び電流非注入・内側領域52に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域55の存在によって、電流注入領域51及び電流非注入・内側領域52の正射影像内において増加する。
【0221】
実施例14において、電流注入領域51と電流非注入・内側領域52との境界の形状を円形(直径:8μm)とし、電流非注入・内側領域52と電流非注入・外側領域53との境界の形状を円形(直径:30μm)とした。
【0222】
実施例14にあっては、実施例11の[工程-1110]と[工程-1120]との間において、第2化合物半導体層22の一部を第2面側から除去することで、凸部22Aを形成すればよい。
【0223】
以上の点を除き、実施例14の発光素子の構成、構造は、実施例11の発光素子と構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例14の発光素子にあっては、種々のモードに対してモードロス作用領域が与える発振モードロスを抑制し、横モードを多モード発振させるのみならず、レーザ発振の閾値を低減することができる。また、概念図を
図27の(C)に示すように、生じる基本モード及び高次モードの光場強度を、発振モードロスの増減(具体的には、実施例14にあっては、減少)に作用するモードロス作用領域の存在によって、電流注入領域及び電流非注入・内側領域の正射影像内において増加させることができる。
【実施例15】
【0224】
実施例15は、実施例11~実施例14の変形である。実施例15あるいは後述する実施例16の発光素子は、より具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1光反射層41を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子(発光素子)(垂直共振器レーザ、VCSEL)から成る。
【0225】
実施例15の発光素子にあっては、模式的な一部断面図を
図31に示すように、第2光反射層42は、金(Au)層あるいは錫(Sn)を含むハンダ層から成る接合層48を介して、シリコン半導体基板から構成された支持基板49にハンダ接合法に基づき固定されている。実施例15の発光素子の製造にあっては、支持基板49の除去を除き、即ち、支持基板49を除去すること無く、例えば、実施例11の[工程-1100]~[工程-1130]と同様の工程を実行すればよい。
【0226】
実施例15の発光素子にあっても、電流注入領域、電流非注入領域及びモードロス作用領域を前述した所定の配置関係とすることで、基本モードとより高次のモードに対してモードロス作用領域が与える発振モードロスの大小関係を制御することができ、高次モードに与える発振モードロスを基本モードに与える発振モードロスに対して相対的に大きくすることで、基本モードを一層安定化させることができる。
【0227】
以上に説明し、
図31に示した発光素子の例では、第1電極31の端部は第1光反射層41から離間している。但し、このような構造に限定するものではなく、第1電極31の端部が第1光反射層41と接していてもよいし、第1電極31の端部が第1光反射層41の縁部の上に亙り形成されていてもよい。
【0228】
また、例えば、実施例11の[工程-1100]~[工程-1130]と同様の工程を実行した後、発光素子製造用基板11を除去して第1化合物半導体層21の第1面21aを露出させ、次いで、第1化合物半導体層21の第1面21a上に第1光反射層41、第1電極31を形成してもよい。
【実施例16】
【0229】
実施例16は、実施例1~実施例15の変形であるが、第6構成の発光素子、具体的には、第6-A構成の発光素子に関する。実施例16の発光素子は、より具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1光反射層41を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子(発光素子)(垂直共振器レーザ、VCSEL)から成る。
【0230】
模式的な一部端面図を
図32に示す実施例16の発光素子は、
(a)GaN系化合物半導体から成り、第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
GaN系化合物半導体から成り、第1化合物半導体層21の第2面21bと接する活性層(発光層)23、及び、
GaN系化合物半導体から成り、第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有し、第1面22aが活性層23と接する第2化合物半導体層22、
が積層されて成る積層構造体20、
(b)第2化合物半導体層22の第2面22b上に形成された第2電極32、
(c)第2電極32上に形成された第2光反射層42、
(d)第1化合物半導体層21の第1面21a上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域65を構成するモードロス作用部位64、
(e)第1化合物半導体層21の第1面21aの上からモードロス作用部位64の上に亙り形成された第1光反射層41、並びに、
(f)第1化合物半導体層21に電気的に接続された第1電極31、
を備えている。尚、実施例16の発光素子において、第1電極31は、第1化合物半導体層21の第1面21aの上に形成されている。
【0231】
そして、積層構造体20には、電流注入領域61、電流注入領域61を取り囲む電流非注入・内側領域62、及び、電流非注入・内側領域62を取り囲む電流非注入・外側領域63が形成されており、モードロス作用領域65の正射影像と電流非注入・外側領域63の正射影像とは重なり合っている。ここで、積層構造体20には電流非注入領域62,63が形成されているが、図示した例では、厚さ方向、第2化合物半導体層22から第1化合物半導体層21の一部に亙り形成されている。但し、電流非注入領域62,63は、厚さ方向、第2化合物半導体層22の第2電極側の領域に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層22全体に形成されていてもよいし、第2化合物半導体層22及び活性層23に形成されていてもよい。
【0232】
積層構造体20、第2パッド電極33、第1光反射層41及び第2光反射層42の構成は、実施例11と同様とすることができるし、接合層48及び支持基板49の構成は、実施例15と同様とすることができる。モードロス作用部位64には円形の開口部64Aが形成されており、この開口部64Aの底部に第1化合物半導体層21の第1面21aが露出している。
【0233】
モードロス作用部位(モードロス作用層)64は、SiO2といった誘電体材料から成り、第1化合物半導体層21の第1面21a上に形成されている。モードロス作用部位64の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍から外れる値とすることができる。あるいは又、モードロス作用部位64の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の整数倍とすることもできる。即ち、モードロス作用部位64の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の位相を乱さず、定在波を破壊しないような厚さとすることができる。但し、厳密に1/4の整数倍である必要はなく、
(λ0/4n0)×m-(λ0/8n0)≦t0≦(λ0/4n0)×2m+(λ0/8n0)
を満足すればよい。具体的には、モードロス作用部位64の光学的厚さt0は、発光素子において生成した光の波長λ0の1/4の値を「100」としたとき、25乃至250程度とすることが好ましい。そして、これらの構成を採用することで、モードロス作用部位64を通過するレーザ光と、電流注入領域61を通過するレーザ光との間の位相差を変える(位相差を制御する)ことができ、発振モードロスの制御を一層高い自由度をもって行うことができるし、発光素子の設計自由度を一層高くすることができる。
【0234】
実施例16において、電流注入領域61と電流非注入・内側領域62との境界の形状を円形(直径:8μm)とし、電流非注入・内側領域62と電流非注入・外側領域63との境界の形状を円形(直径:15μm)とした。即ち、電流注入領域61の正射影像の面積をS1’、電流非注入・内側領域62の正射影像の面積をS2’としたとき、
0.01≦S1’/(S1’+S2’)≦0.7
を満足する。具体的には、
S1’/(S1’+S2’)=82/152=0.28
である。
【0235】
実施例16の発光素子において、電流注入領域61における活性層23から第1化合物半導体層21の第1面までの光学的距離をOL
1’、モードロス作用領域65における活性層23からモードロス作用部位64の頂面(第1電極31と対向する面)までの光学的距離をOL
0’としたとき、
OL
0’>OL
1’
を満足する。具体的には、
OL
0’/OL
1’=1.01
とした。そして、生成した高次モードを有するレーザ光は、モードロス作用領域65により、第1光反射層41と第2光反射層42とによって構成される共振器構造の外側に向かって散逸させられ、以て、発振モードロスが増加する。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域65の存在によって、モードロス作用領域65の正射影像内において、Z軸から離れるほど、減少するが(
図27の(B)の概念図を参照)、基本モードの光場強度の減少よりも高次モードの光場強度の減少の方が多く、基本モードを一層安定化させることができるし、閾値電流の低下を図ることができるし、基本モードの相対的な光場強度を増加させることができる。
【0236】
実施例16の発光素子において、電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63は、実施例11と同様に、積層構造体20へのイオン注入によって形成される。イオン種として、例えば、ボロンを選択したが、ボロンイオンに限定するものではない。
【0237】
以下、実施例16の発光素子の製造方法を説明する。
【0238】
[工程-1600]
先ず、実施例11の[工程-1100]と同様の工程を実行することで、積層構造体20を得ることができる。次いで、実施例11の[工程-1110]と同様の工程を実行することで、電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63を積層構造体20に形成することができる。
【0239】
[工程-1610]
次いで、第2化合物半導体層22の第2面22bの上に、例えば、リフトオフ法に基づき第2電極32を形成し、更に、周知の方法に基づき第2パッド電極33を形成する。その後、第2電極32の上から第2パッド電極33の上に亙り、周知の方法に基づき第2光反射層42を形成する。
【0240】
[工程-1620]
その後、第2光反射層42を、接合層48を介して支持基板49に固定する。
【0241】
[工程-1630]
次いで、発光素子製造用基板11を除去して、第1化合物半導体層21の第1面21aを露出させる。具体的には、先ず、機械研磨法に基づき、発光素子製造用基板11の厚さを薄くし、次いで、CMP法に基づき、発光素子製造用基板11の残部を除去する。こうして、第1化合物半導体層21の第1面21aを露出させ、次いで、第1化合物半導体層21の第1面21aに、突出部91及び第2領域92を有する基部面90を形成する。
【0242】
[工程-1640]
その後、第1化合物半導体層21の第1面21a上に(具体的には、基部面90の第2領域92の上に)、周知の方法に基づき、開口部64Aを有し、SiO2から成るモードロス作用部位(モードロス作用層)64を形成する。
【0243】
[工程-1650]
次に、モードロス作用部位64の開口部64Aの底部に露出した第1化合物半導体層21の第1面21aの突出部91の上に第1光反射層41を形成し、更に、第1電極31を形成する。尚、第1電極31の一部は、図示しない領域において、モードロス作用部位(モードロス作用層)64を貫通し、第1化合物半導体層21に達している。こうして、
図32に示した構造を有する実施例16の発光素子を得ることができる。
【0244】
実施例16の発光素子にあっても、積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている。それ故、概念図を
図27の(B)に示すように、発振モードロスの増減(具体的には、実施例16にあっては増加)を所望の状態とすることが可能となる。しかも、発振モードロスの制御と発光素子の発光状態の制御とを独立して行うことができるので、制御の自由度、発光素子の設計自由度を高くすることができる。具体的には、電流注入領域、電流非注入領域及びモードロス作用領域を前述した所定の配置関係とすることで、基本モードとより高次のモードに対してモードロス作用領域が与える発振モードロスの大小関係を制御することができ、高次モードに与える発振モードロスを基本モードに与える発振モードロスに対して相対的に大きくすることで、基本モードを一層安定化させることができる。また、逆レンズ効果の影響の低減を図ることもできる。しかも、尚、実施例16の発光素子にあっては突出部91を有するので、回折損失の発生を一層確実に抑制することができる。
【0245】
実施例16にあっても、実施例12と同様に、電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63を、第2化合物半導体層22の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層22の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層22の第2面への反応性イオンエッチング(RIE)処理によって形成することができる(第6-B構成の発光素子)。このように電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63をプラズマ粒子に暴露することで、第2化合物半導体層22の導電性に劣化が生じ、電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63は高抵抗状態となる。即ち、電流非注入・内側領域62及び電流非注入・外側領域63は、第2化合物半導体層22の第2面22bのプラズマ粒子への暴露によって形成される。
【0246】
また、実施例13と同様に、第2光反射層42は、第1光反射層41からの光を、第1光反射層41と第2光反射層42とによって構成される共振器構造の外側に向かって(即ち、モードロス作用領域65に向かって)反射あるいは散乱する領域を有する構成とすることもできる(第6-C構成の発光素子)。
【0247】
また、実施例14と同様に、モードロス作用部位(モードロス作用層)64を形成してもよい(第6-D構成の発光素子)。モードロス作用部位(モードロス作用層)64は、凸部を囲む第1化合物半導体層21の第1面21aの領域の上に形成すればよい。凸部は、電流注入領域61、電流注入領域61及び電流非注入・内側領域62を占める。そして、これによって、生成した高次モードを有するレーザ光は、モードロス作用領域65により、電流注入領域61及び電流非注入・内側領域62に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する。即ち、生じる基本モード及び高次モードの光場強度が、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域65の存在によって、電流注入領域61及び電流非注入・内側領域62の正射影像内において増加する。このような構成の実施例16の発光素子の変形例にあっても、種々のモードに対してモードロス作用領域65が与える発振モードロスを抑制し、横モードを多モード発振させるのみならず、レーザ発振の閾値電流を低減することができる。また、概念図を
図27の(C)に示すように、生じる基本モード及び高次モードの光場強度を、発振モードロスの増減(具体的には、実施例16の発光素子の変形例にあっては、減少)に作用するモードロス作用領域65の存在によって、電流注入領域及び電流非注入・内側領域の正射影像内において増加させることができる。
【実施例17】
【0248】
実施例17は、実施例1~実施例16の変形であり、第7構成の発光素子に関する。
【0249】
ところで、2つのDBR層及びその間に形成された積層構造体によって構成された積層構造体における共振器長LORは、積層構造体全体の等価屈折率をneq、面発光レーザ素子(発光素子)から出射すべきレーザ光の波長をλ0としたとき、
L=(m・λ0)/(2・neq)
で表される。ここで、mは、正の整数である。そして、面発光レーザ素子(発光素子)において、発振可能な波長は共振器長LORによって決まる。発振可能な個々の発振モードは縦モードと呼ばれる。そして、縦モードの内、活性層によって決まるゲインスペクトルと合致するものが、レーザ発振し得る。縦モードの間隔Δλは、実効屈折率をneffとしたとき、
λ0
2/(2neff・L)
で表される。即ち、共振器長LORが長いほど、縦モードの間隔Δλは狭くなる。よって、共振器長LORが長い場合、複数の縦モードがゲインスペクトル内に存在し得るため、複数の縦モードが発振し得る。尚、等価屈折率neqと実効屈折率neffとの間には、発振波長をλ0としたとき、以下の関係がある。
【0250】
neff=neq-λ0・(dneq/dλ0)
【0251】
ここで、積層構造体をGaAs系化合物半導体層から構成する場合、共振器長L
ORは、通常、1μm以下と短く、面発光レーザ素子から出射される縦モードのレーザ光は、1種類(1波長)である(
図67Aの概念図を参照)。従って、面発光レーザ素子から出射される縦モードのレーザ光の発振波長を正確に制御することが可能である。一方、積層構造体をGaN系化合物半導体層から構成する場合、共振器長L
ORは、通常、面発光レーザ素子から出射されるレーザ光の波長の数倍と長い。従って、面発光レーザ素子から出射され得る縦モードのレーザ光が複数種類となってしまい(
図67Bの概念図を参照)、面発光レーザ素子から出射され得るレーザ光の発振波長を正確に制御することが困難となる。
【0252】
模式的な一部断面図を
図33に示すように、実施例17の発光素子、あるいは又、後述する実施例18~実施例20の発光素子において、第2電極32を含む積層構造体20には、活性層23が占める仮想平面(XY平面)と平行に、少なくとも2層の光吸収材料層74が、好ましくは、少なくとも4層の光吸収材料層74が、具体的には、実施例17にあっては20層の光吸収材料層74が、形成されている。尚、図面を簡素化するため、図面では2層の光吸収材料層74のみを示した。
【0253】
実施例17において、発振波長(発光素子から出射される所望の発振波長)λ0は450nmである。20層の光吸収材料層74は、積層構造体20を構成する化合物半導体よりもバンドギャップの狭い化合物半導体材料、具体的には、n-In0.2Ga0.8Nから成り、第1化合物半導体層21の内部に形成されている。光吸収材料層74の厚さはλ0/(4・neq)以下、具体的には、3nmである。また、光吸収材料層74の光吸収係数は、n-GaN層から成る第1化合物半導体層21の光吸収係数の2倍以上、具体的には、1×103倍である。
【0254】
また、積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最小振幅部分に光吸収材料層74が位置するし、積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最大振幅部分に活性層23が位置する。活性層23の厚さ方向中心と、活性層23に隣接した光吸収材料層74の厚さ方向中心との間の距離は、46.5nmである。更には、2層の光吸収材料層74、及び、光吸収材料層74と光吸収材料層74との間に位置する積層構造体の部分(具体的には、実施例17にあっては、第1化合物半導体層21)の全体の等価屈折率をneq、光吸収材料層74と光吸収材料層74との間の距離をLAbsとしたとき、
0.9×{(m・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(m・λ0)/(2・neq)}
を満足する。ここで、mは、1、又は、1を含む2以上の任意の整数である。但し、実施例17においては、m=1とした。従って、隣接する光吸収材料層74の間の距離は、全ての複数の光吸収材料層74(20層の光吸収材料層74)において、
0.9×{λ0/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{λ0/(2・neq)}
を満足する。等価屈折率neqの値は、具体的には、2.42であり、m=1としたとき、具体的には、
LAbs=1×450/(2×2.42)
=93.0nm
である。尚、20層の光吸収材料層74の内、一部の光吸収材料層74にあっては、mを、2以上の任意の整数とすることもできる。
【0255】
実施例17の発光素子の製造にあっては、実施例1の[工程-100]と同様の工程において、積層構造体20を形成するが、このとき、第1化合物半導体層21の内部に20層の光吸収材料層74を併せて形成する。この点を除き、実施例17の発光素子は、実施例1の発光素子と同様の方法に基づき製造することができる。
【0256】
活性層23によって決まるゲインスペクトル内に複数の縦モードが発生する場合、これを模式的に表すと
図34のようになる。尚、
図34においては、縦モードAと縦モードBの2つの縦モードを図示する。そして、この場合、光吸収材料層74が、縦モードAの最小振幅部分に位置し、且つ、縦モードBの最小振幅部分には位置しないとする。とすると、縦モードAのモードロスは最小化されるが、縦モードBのモードロスは大きい。
図34において、縦モードBのモードロス分を模式的に実線で示す。従って、縦モードAの方が、縦モードBよりも発振し易くなる。それ故、このような構造を用いることで、即ち、光吸収材料層74の位置や周期を制御することで、特定の縦モードを安定化させることができ、発振し易くすることができる。その一方で、望ましくないそれ以外の縦モードに対するモードロスを増加させることができるので、望ましくないそれ以外の縦モードの発振を抑制することが可能となる。
【0257】
以上のとおり、実施例17の発光素子にあっては、少なくとも2層の光吸収材料層が積層構造体の内部に形成されているので、面発光レーザ素子から出射され得る複数種類の縦モードのレーザ光の内、不所望の縦モードのレーザ光の発振を抑制することができる。その結果、出射されるレーザ光の発振波長を正確に制御することが可能となる。しかも、尚、実施例17の発光素子にあっては突出部91を有するので、回折損失の発生を確実に抑制することができる。
【実施例18】
【0258】
実施例18は、実施例17の変形である。実施例17においては、光吸収材料層74を、積層構造体20を構成する化合物半導体よりもバンドギャップの狭い化合物半導体材料から構成した。一方、実施例18においては、10層の光吸収材料層74を、不純物をドープした化合物半導体材料、具体的には、1×1019/cm3の不純物濃度(不純物:Si)を有する化合物半導体材料(具体的には、n-GaN:Si)から構成した。また、実施例18にあっては、発振波長λ0を515nmとした。尚、活性層23の組成は、In0.3Ga0.7Nである。実施例18にあっては、m=1とし、LAbsの値は107nmであり、活性層23の厚さ方向中心と、活性層23に隣接した光吸収材料層74の厚さ方向中心との間の距離は53.5nmであり、光吸収材料層74の厚さは3nmである。以上の点を除き、実施例18の発光素子の構成、構造は、実施例17の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、10層の光吸収材料層74の内、一部の光吸収材料層74にあっては、mを、2以上の任意の整数とすることもできる。
【実施例19】
【0259】
実施例19も、実施例17の変形である。実施例19においては、5層の光吸収材料層(便宜上、『第1の光吸収材料層』と呼ぶ)を、実施例17の光吸収材料層74と同様の構成、即ち、n-In0.3Ga0.7Nから構成した。更には、実施例19にあっては、1層の光吸収材料層(便宜上、『第2の光吸収材料層』と呼ぶ)を透明導電性材料から構成した。具体的には、第2の光吸収材料層を、ITOから成る第2電極32と兼用した。実施例19にあっては、発振波長λ0を450nmとした。また、m=1及び2とした。m=1にあっては、LAbsの値は93.0nmであり、活性層23の厚さ方向中心と、活性層23に隣接した第1の光吸収材料層の厚さ方向中心との間の距離は46.5nmであり、5層の第1の光吸収材料層の厚さは3nmである。即ち、5層の第1の光吸収材料層にあっては、
0.9×{λ0/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{λ0/(2・neq)}
を満足する。また、活性層23に隣接した第1の光吸収材料層と、第2の光吸収材料層とは、m=2とした。即ち、
0.9×{(2・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(2・λ0)/(2・neq)}
を満足する。第2電極32を兼用する1層の第2の光吸収材料層の光吸収係数は2000cm-1、厚さは30nmであり、活性層23から第2の光吸収材料層までの距離は139.5nmである。以上の点を除き、実施例19の発光素子の構成、構造は、実施例17の発光素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、5層の第1の光吸収材料層の内、一部の第1の光吸収材料層にあっては、mを、2以上の任意の整数とすることもできる。尚、実施例17と異なり、光吸収材料層74の数を1とすることもできる。この場合にも、第2電極32を兼ねた第2の光吸収材料層と光吸収材料層74の位置関係は、以下の式を満たす必要がある。
0.9×{(m・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(m・λ0)/(2・neq)}
【実施例20】
【0260】
実施例20は、実施例17~実施例19の変形である。実施例20の発光素子は、より具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1光反射層41を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子(垂直共振器レーザ、VCSEL)から成る。
【0261】
実施例20の発光素子にあっては、模式的な一部断面図を
図35に示すように、第2光反射層42は、金(Au)層あるいは錫(Sn)を含むハンダ層から成る接合層48を介して、シリコン半導体基板から構成された支持基板49にハンダ接合法に基づき固定されている。
【0262】
実施例20の発光素子は、第1化合物半導体層21の内部に20層の光吸収材料層74を併せて形成する点を除き、また、支持基板49の除去しない点を除き、実施例1の発光素子と同様の方法に基づき製造することができる。
【実施例21】
【0263】
実施例21は、実施例1~実施例20の変形である。第1光反射層が一種の凹面鏡として機能する発光素子にあっては、構造にも依るが、或る発光素子において発生した迷光が隣接する発光素子に侵入するといった光クロストークが発生する虞がある場合がある。実施例21の発光素子は、このような光クロストークの発生を防止し得る構成、構造を有する。
【0264】
実施例21の発光素子10Gの模式的な一部断面図を
図36、
図37、
図39、
図41、
図42、
図43に示し、実施例21の発光素子10Gの変形例-1から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図38に示し、実施例21の発光素子10Gの変形例-2から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図40に示す。また、実施例21の発光素子10Gの変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び隔壁の配置を示す模式的な平面図を、
図44、
図46、
図48、
図49、
図50及び
図51に示し、実施例21の発光素子10Gの変形例-1から構成された発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図を、
図45及び
図47に示す。尚、
図44、
図45、
図48、
図50は発光素子が正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する場合を示し、
図46、
図47、
図49、
図51は発光素子が正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する場合を示す。また、
図38、
図40において、第1化合物半導体層の第1面と対向する第1光反射層の対向面の端部を「A」で示す。
【0265】
具体的には、実施例21の発光素子10Gは、模式的な一部断面図を
図36に示すように、第1光反射層41を囲むように、積層構造体20の積層方向に延びる隔壁96が形成されている。
【0266】
具体的には、突出部91の頂部の正射影像は、第1光反射層41と対向する隔壁96の側面(以下、単に、『隔壁96の側面96’』と呼ぶ場合がある)の正射影像に含まれている。あるいは又、隔壁96の側面96’の正射影像は、第1光反射層41の光反射に寄与しない部分(第1光反射層41の非有効領域)の正射影像に含まれていてもよい。隔壁96の側面96’は、連続面であってもよいし、一部が切り欠かれた非連続面であってもよい。尚、本明細書において、『正射影像』とは、積層構造体20へ正射影したときに得られる正射影像を意味する。
【0267】
隔壁96は、第1化合物半導体層21の第1面側から、第1化合物半導体層21内を、第1化合物半導体層21の厚さ方向の途中まで延びている。即ち、隔壁96の上端部96bは、第1化合物半導体層21の厚さ方向の途中に位置する。隔壁96の下端部96aは、発光素子10Gの第1面に露出している。ここで、『発光素子の第1面』とは、第1光反射層41が設けられた側の発光素子10Gの露出面を指し、『発光素子の第2面』とは、第2光反射層42が設けられた側の発光素子10Gの露出面を指す。
【0268】
あるいは又、実施例21の発光素子10Gの変形例-1の模式的な一部断面図を
図37に示し、発光素子10Gの変形例-1の複数から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図38に示すように、隔壁96は、発光素子10Gの第1面に露出しておらず、隔壁96の下端部96aは第1電極31によって覆われている。
【0269】
そして、実施例21の発光素子10Gあるいは実施例21の発光素子10Gの変形例-1から構成された発光素子アレイにおいて、L0とL1とL3との間の関係は、
以下の式(1)、好ましくは、式(1’)を満足し、又は、
以下の式(2)、好ましくは、式(2’)を満足し、又は、
以下の式(1)及び式(2)を満足し、又は、
以下の式(1’)及び式(2’)を満足することが望ましい。
0.01×L0≦L0-L1 (1)
0.05×L0≦L0-L1 (1’)
0.01×L3≦L1 (2)
0.05×L3≦L1 (2’)
ここで、
L0:第1化合物半導体層の第1面と対向する第1光反射層の対向面の端部から、活性層までの距離
L1:活性層から、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びる隔壁の端部(隔壁の上端部であり、活性層の方を向いた端部)までの距離
L3:発光素子を構成する第1光反射層の軸線から、積層構造体への隔壁の正射影像(より具体的には、隔壁の上端部の正射影像)までの距離
である。尚、(L0-L1)の上限値はL0未満であるが、活性層と第1電極との間に隔壁によって短絡が発生しない場合には、(L0-L1)の上限値はL0以上であってもよい。
【0270】
あるいは又、実施例21の発光素子10Gの変形例-2の模式的な一部断面図を
図39に示し、発光素子10Gの変形例-2の複数から構成された発光素子アレイの模式的な一部断面図を
図40に示すように、隔壁97は、第2化合物半導体層22の第2面側から第2化合物半導体層22内及び活性層23内を延び、更に、第1化合物半導体層21内を第1化合物半導体層21の厚さ方向の途中まで延びている。即ち、隔壁97の下端部97aは、第1化合物半導体層21の厚さ方向の途中に位置する。隔壁97の上端部97bは、発光素子10Gの第2面に露出している。
【0271】
あるいは又、実施例21の発光素子10Gの変形例-3の模式的な一部断面図を
図41に示すように、隔壁97の上端部97bは、発光素子10Gの第2面に露出していない。具体的には、隔壁97の上端部97bは、絶縁層(電流狭窄層)34及び第2電極32によって覆われている。
【0272】
あるいは又、実施例21の発光素子10Gの変形例-4の模式的な一部断面図を
図42に示すように、第1化合物半導体層21の第1面側から第2化合物半導体層22の第2面側に向かう方向に沿って、隔壁97の側面97’は窄まっている。即ち、積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で発光素子10Gを切断したときの隔壁97の側面97’の形状は台形である。具体的には、第2化合物半導体層側が短辺であり、第1化合物半導体層21側が長辺である等脚台形である。そして、これによって、迷光を一層効率良く発光素子自身に戻すことができる。
【0273】
あるいは又、実施例21の発光素子10Gの変形例-5の模式的な一部断面図を
図43に示すように、隔壁97はハンダ材料から構成されており、隔壁97の一部は発光素子10Gの外面に露出している。発光素子10Gの外面に露出した隔壁97の一部によって、一種のバンプを構成することができる。このような隔壁97を構成する材料として、具体的には、前述したバンプを構成する材料、より具体的には、例えば、Au-Sn共晶ハンダを挙げることができる。隔壁97の一部は、発光素子10Gの外面上に形成されており、発光素子10Gの第2面から露出した隔壁97の一部を介して外部の回路等に接続することができる。
【0274】
そして、実施例21の発光素子10Gの変形例-2、変形例-3、変形例-4、変形例-5から構成された発光素子アレイにおいて、L0とL2とL3’との間の関係は、
以下の式(3)、好ましくは、式(3’)を満足し、又は、
以下の式(4)、好ましくは、式(4’)を満足し、又は、
以下の式(3)及び式(4)を満足し、又は、
以下の式(3’)及び式(4’)を満足することが望ましい。
0.01×L0≦L2 (3)
0.05×L0≦L2 (3’)
0.01×L3’≦L2 (4)
0.05×L3’≦L2 (4’)
ここで、
L0 :第1化合物半導体層の第1面と対向する第1光反射層の対向面の端部から、活性層までの距離
L2 :活性層から、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びる隔壁の端部(隔壁の下端部であり、第1電極の方を向いた端部)までの距離
L3’:発光素子を構成する第1光反射層の軸線から、積層構造体への隔壁の正射影像(より具体的には、隔壁の下端部の正射影像)までの距離
である。尚、L2の上限値はL0未満であるが、活性層と第1電極との間に隔壁によって短絡が発生しない場合には、L2の上限値はL0であってもよい。
【0275】
これらの具体的な値の一例を、以下の表8及び表9に示す。
【0276】
〈表8〉
P0 :40μm
L0 :30μm
L1 :28μm
L3 :18μm
【0277】
〈表9〉
P0 :20μm
L0 :17μm
L2 :12μm
L3’: 9μm
【0278】
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で発光素子10Gを切断したときの隔壁96、97の側面96’,97’の形状は線分である。また、積層構造体20の積層方向と直交する仮想平面(XY平面)で発光素子10Gを切断したときの隔壁96,97の側面96’,97’の形状は円形である。但し、これらに限定するものではない。
【0279】
発光素子10Gがアレイ状に配列されている場合、隔壁96は、各発光素子10Gを構成する第1光反射層41を取り囲むように設けられているが、隔壁96の側面96’よりも外側の領域は、隔壁96によって占められていてもよい。即ち、発光素子10Gと発光素子10Gとの間は、隔壁96を構成する材料で占められていてもよい。
図44及び
図46に示すように、隔壁96は、各発光素子10Gを構成する第1光反射層41を取り囲むように設けられており、隔壁96の側面96’よりも外側の領域は、隔壁96によって占められている。即ち、発光素子10Gと発光素子10Gとの間は、隔壁96を構成する材料で占められている。
【0280】
図45あるいは
図47に示すように、隔壁96を導電性を有していない材料から構成する場合、第1化合物半導体層21の第1面21aの上に第1電極31を設ける。また、隔壁96を導電性を有している材料から構成する場合、あるいは又、隔壁96を導電性を有していない材料から構成する場合、隔壁96の露出面(下端面96a)の上に第1電極31を設けてもよい。具体的には、隔壁96の下端部(第1電極31の方を向いた端部)96aは、発光素子10Gの第1面(第1化合物半導体層21の第1面21a)に形成された第1電極31に接している。隔壁96を導電性を有している材料から構成する場合、隔壁96が第1電極31を兼ねていてもよい。隔壁96を高い熱伝導率を有する材料から構成すれば、積層構造体20において発生した熱を隔壁96を介して外部に排熱(放熱)することができる。具体的には、積層構造体20において発生した熱を隔壁96及び第1電極31あるいは第1パッド電極を介して外部に効果的に排熱(放熱)することができる。
【0281】
あるいは又、隔壁96の側面96’よりも外側の領域は、隔壁96を構成する材料以外の材料(例えば、積層構造体20)によって占められている。この場合、隔壁96は、例えば、連続した溝状あるいは非連続の溝状に形成されている。即ち、発光素子10Gと発光素子10Gとの間は、隔壁96を構成する材料以外の材料(例えば、積層構造体20)によって占められていてもよい。そして、隔壁96は、例えば、連続した溝状に形成されていてもよいし(
図48及び
図49参照)、あるいは又、非連続の溝状に形成されていてもよい(
図50及び
図51参照)。尚、
図48、
図49、
図50、
図51において、隔壁96を明示するために隔壁96の部分に斜線を付した。
【0282】
隔壁96,97は、活性層で生成した光を透過しない材料から構成されている形態とすることができ、これによって、迷光の発生、光クロストークの発生を防止することができる。具体的には、このような材料として、チタン(Ti)やクロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、MoSi2等の光を遮光することができる材料を挙げることができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法等によって形成することができる。あるいは又、黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜(具体的には、例えば、黒色のポリイミド系樹脂や、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂)を挙げることができる。
【0283】
あるいは又、隔壁96,97は、活性層で生成した光を反射する材料から構成されている形態とすることができ、これによって、迷光の発生、光クロストークの発生を防止することができるし、迷光を効率良く発光素子自身に戻すことができ、発光素子の発光効率の改善に寄与することができる。具体的には、隔壁96,97は、薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタから構成されている。薄膜フィルタは、例えば、光反射層と積層方向(交互の配列方向)が異なるものの、同様の構成、構造を有する。具体的には、積層構造体20の一部に凹部を形成し、例えば、スパッタリング法に基づき、この凹部内を光反射層と同様の材料で、順次、埋め込むことで、積層構造体20の積層方向と直交する仮想平面(XY平面)で隔壁96,97を切断したとき、誘電体層が交互に配列された薄膜フィルタを得ることができる。あるいは又、このような材料として、金属材料や合金材料、金属酸化物材料を例示することができ、より具体的には、銅(Cu)やその合金、金(Au)やその合金、スズ(Sn)やその合金、銀(Ag)や銀合金(例えば、Ag-Pd-Cu、Ag-Sm-Cu)、白金(Pt)やその合金、パラジウム(Pd)やその合金、チタン(Ti)やその合金、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金(例えば、Al-NdやAl-Cu)、Al/Ti積層構造、Al-Cu/Ti積層構造、クロム(Cr)やその合金、ITO等を挙げることができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法;メッキ法等によって形成することができる。
【0284】
あるいは又、第1化合物半導体層21を構成する材料の熱伝導率をTC1、隔壁96,97を構成する材料の熱伝導率をTC0としたとき、
1×10-1≦TC1/TC0≦1×102
を満足する形態とすることができる。このような隔壁96,97を構成する材料として、具体的には、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)等の金属あるいはその合金あるいはこれらの金属の混合物、ITO等を挙げることができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法;メッキ法等によって形成することができる。そして、このように、隔壁96,97を高い熱伝導率を有する材料から構成することで、積層構造体20において発生した熱を隔壁96,97を介して外部に排熱(放熱)することができる。尚、この場合、積層構造体20において発生した熱を隔壁96,97及び隔壁延在部を介して外部に排熱(放熱)することができるように、発光素子10Gの外面(第1面あるいは第2面)に隔壁延在部を形成してもよく、あるいは又、積層構造体20において発生した熱を隔壁96,97及び第1電極31あるいは第2電極32あるいはパッド電極を介して外部に排熱(放熱)することができるように、隔壁96,97を第1電極31あるいは第2電極32あるいはパッド電極に接続してもよい。
【0285】
あるいは又、第1化合物半導体層21を構成する材料の線膨張率をCTE1、隔壁96,97を構成する材料の線膨張率をCTE0としたとき、
|CTE0-CTE1|≦1×10-4/K
を満足する形態とすることができる。このような隔壁96,97を構成する材料として、具体的には、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、カーボン系材料、SOG、多結晶GaN、単結晶GaNを挙げることができる。このように線膨張率を規定することで、発光素子全体の熱膨張係数(線膨張係数)の最適化を図ることができ、発光素子10Gの熱膨張を制御(抑制)することができる。具体的には、例えば、積層構造体20の正味の熱膨張係数を大きくすることができ、発光素子10Gを実装する基板材料等の熱膨張係数に合わせることで、発光素子10Gの破損防止や、応力の発生による発光素子10Gの信頼性の低下を抑制することができる。ポリイミド系樹脂から成る隔壁96,97は、例えば、スピンコート法及びキュア法に基づき形成することができる。
【0286】
あるいは又、隔壁96,97を絶縁材料から構成すれば、電気的クロストークの発生を抑制することができる。即ち、隣接する発光素子10Gの間に不要な電流が流れることを防止することができる。
【0287】
積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(XZ平面)で発光素子10Gを切断したときの隔壁96,97の側面96’,97’の形状として、線分、弧、放物線の一部、任意の曲線の一部等を挙げることができる。また、積層構造体20の積層方向と直交する仮想平面(XY平面)で発光素子10Gを切断したときの隔壁96,97の側面96’,97の形状として、円形、楕円形、長円形、正方形や長方形を含む矩形、正多角形(丸みを帯びた正多角形を含む)等を挙げることができる。
【0288】
そして、より具体的には、実施例21にあっては、隔壁96,97は、活性層23で生成した光を透過しない材料から構成されており、あるいは又、第1化合物半導体層21を構成する材料の熱伝導率をTC1、隔壁96,97を構成する材料の熱伝導率をTC0としたとき、
1×10-1≦TC1/TC0≦1×102
を満足する。具体的には、第1化合物半導体層21を構成する材料はGaNから構成されており、隔壁96,97は銅(Cu)から構成されている。尚、
TC0:50ワット/(m・K)乃至100ワット/(m・K)
TC1:400ワット/(m・K)
である。例えば、銅層から成る隔壁96,97をメッキ法にて形成する場合、シード層として0.1μm程度の厚さのAu層等から成る下地層を予めスパッタリング法等で形成しておき、その上に銅層をメッキ法にて形成すればよい。このように、隔壁96,97を高い熱伝導率を有する材料から構成することで、積層構造体20において発生した熱を隔壁96,97を介して外部に効果的に排熱(放熱)することができる。
【0289】
あるいは又、隔壁96,97は、活性層23で生成した光を反射する材料、例えば、銀(Ag)から構成されている。
【0290】
あるいは又、第1化合物半導体層21を構成する材料(GaN)の線膨張率をCTE1、隔壁96,97を構成する材料(ポリイミド系樹脂)の線膨張率をCTE0としたとき、
|CTE0-CTE1|≦1×10-4/K
を満足する。具体的には、
CTE0:5.5×10-6/K
CTE1:25×10-6/K
である。そして、これらの材料を組み合わせることで発光素子10Gの正味の熱膨張係数(線膨張係数)を大きくすることができ、発光素子10Gを実装する基板材料等の熱膨張係数と合わせることができるので、発光素子10Gの破損や、発光素子10Gにおける応力の発生による信頼性の低下を抑制することができる。
【実施例22】
【0291】
実施例22は、実施例1~実施例4の変形である。実施例22の発光素子10Hの模式的な一部端面図を
図52に示し、実施例22の発光素子アレイの模式的な一部端面図を
図53に示す。実施例22の発光素子は、後述する第8-A構成の発光素子に関する。
【0292】
実施例22の発光素子アレイにおいて、
第1光反射層41は、第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90の上に形成されており、
基部面90は、周辺領域に延在しており、あるいは又、複数の発光素子10Hによって囲まれた周辺領域に延在しており、
基部面90は、凹凸状であり、且つ、微分可能である。
【0293】
ここで、基部面90をz=f(x,y)で表すとき、基部面90における微分値は、
∂z/∂x=[∂f(x,y)/∂x]y
∂z/∂y=[∂f(x,y)/∂y]x
で得ることができる。
【0294】
実施例22の発光素子において、第1光反射層41は基部面90の第1の部分91’に形成されているが、周辺領域を占める基部面90の第2の部分92’に第1光反射層41の延在部が形成されている場合もあるし、第2の部分92’に第1光反射層41の延在部が形成されていない場合もある。
【0295】
実施例22の発光素子において、基部面90は滑らかであることが好ましい。また、第1化合物半導体層21の第2面を基準としたとき、第1光反射層41が形成された基部面90の第1の部分91’は上に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の実施例22の発光素子を、『第8構成の発光素子』と呼ぶ。
【0296】
ここで、第8構成の発光素子において、第1の部分91’と第2の部分92’との境界は、
(1)周辺領域に第1光反射層41が延在していない場合、第1光反射層41の外周部
(2)周辺領域に第1光反射層41が延在している場合、第1の部分91’から第2の部分92’に亙る基部面90における変曲点が存在する部分
であると規定することができる。
【0297】
第8構成の発光素子において、第1化合物半導体層の第2面を基準としたとき、周辺領域を占める基部面90の第2の部分92’は下に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の実施例22の発光素子を、『第8-A構成の発光素子』と呼ぶ。そして、第8-A構成の発光素子において、基部面90の第1の部分91’の中心部は正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する構成とすることができるし、あるいは又、基部面90の第1の部分91’の中心部は正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する構成とすることができる。前者の場合、基部面90の第2の部分92’の中心部は正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができ、後者の場合、基部面90の第2の部分92’の中心部は正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。
【0298】
第8-A構成の発光素子において、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状]
(B)[上に凸の形状/下に凸の形状から線分へと続く]
(C)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状へと続く]
(D)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、線分へと続く]
(E)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状へと続く]
(F)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、線分へと続く]
といったケースがある。尚、発光素子においては、第2の部分92’の中心部で基部面90が終端している場合もある。
【0299】
あるいは又、第8構成の発光素子において、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準としたとき、周辺領域を占める基部面90の第2の部分92’は、周辺領域の中心部に向かって、下に凸の形状、及び、下に凸の形状から延びる上に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の実施例22の発光素子を、『第8-B構成の発光素子』と呼ぶ。そして、第8-B構成の発光素子において、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91’の中心部までの距離をLL1、第1化合物半導体層21の第2面から基部面90の第2の部分92’の中心部までの距離をLL2としたとき、
LL2>LL1
を満足する構成とすることができ、また、基部面90の第1の部分91’の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層41の曲率半径)をR1、基部面90の第2の部分92’の中心部の曲率半径をR2としたとき、
R1>R2
を満足する構成とすることができる。尚、LL2/LL1の値として、限定するものではないが、
1<LL2/LL1≦100
を挙げることができるし、R1/R2の値として、限定するものではないが、
1<R1/R2≦100
を挙げることができる。
【0300】
上記の好ましい構成を含む第8-B構成の発光素子において、基部面90の第1の部分91’の中心部は正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する構成とすることができ、この場合、基部面90の第2の部分92’の中心部は正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。あるいは又、基部面90の第1の部分91’の中心部は正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する構成とすることができ、この場合、基部面90の第2の部分92’の中心部は正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。
【0301】
第8-B構成の発光素子において、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状へと続く]
(B)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状へと続く]
(C)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状へと続く]
といったケースがある。
【0302】
あるいは又、第8構成の発光素子において、第1化合物半導体層21の第2面を基準としたとき、周辺領域を占める基部面90の第2の部分92’は、基部面90の第1の部分91’を取り囲む環状の凸の形状、及び、環状の凸の形状から基部面90の第1の部分91’に向かって延びる下に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の実施例2の発光素子を、『第8-C構成の発光素子』と呼ぶ。
【0303】
第8-C構成の発光素子において、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91’の中心部までの距離をLL1、第1化合物半導体層21の第2面から基部面90の第2の部分92’の環状の凸の形状の頂部までの距離をLL2’としたとき、
LL2’>LL1
を満足する構成とすることができ、また、基部面90の第1の部分91’の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層41の曲率半径)をR1、基部面90の第2の部分92’の環状の凸の形状の頂部の曲率半径をR2’としたとき、
R1>R2’
を満足する構成とすることができる。尚、LL2’/LL1の値として、限定するものではないが、
1<LL2’/LL1≦100
を挙げることができるし、R1/R2’の値として、限定するものではないが、
1<R1/R2’≦100
を挙げることができる。
【0304】
第8-C構成の発光素子において、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(B)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
(C)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(D)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
(E)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(F)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
といったケースがある。尚、発光素子においては、第2の部分92’の中心部で基部面90が終端している場合もある。
【0305】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む実施例22の発光素子において、積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面90を切断したときの基部面90の第1の部分91’が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部である構成とすることができる。図形は、厳密には円の一部ではない場合もあるし、厳密には放物線の一部ではない場合もあるし、厳密にはサイン曲線の一部ではない場合もあるし、厳密には楕円の一部ではない場合もあるし、厳密にはカテナリー曲線の一部ではない場合もある。即ち、概ね円の一部である場合、概ね放物線の一部である場合、概ねサイン曲線の一部である場合、概ね楕円の一部である場合、概ねカテナリー曲線の一部である場合も、「図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、概ね楕円の一部である、概ねカテナリー曲線の一部である」ことに包含される。これらの曲線の一部が線分で置き変えられていてもよい。
【0306】
より具体的には、実施例22の発光素子10Hにあっては、実施例1~実施例4において説明した発光素子10A,10B,10Cにおいて、基部面90が周辺領域99に延在しており、基部面90は凹凸状であり、且つ、微分可能である。即ち、実施例22の発光素子10Hにおいて、基部面90は解析学的に滑らかである。尚、第1光反射層41は、実施例1~実施例4において説明した発光素子10A,10B,10Cと同様に、第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90の上に形成されているし、第2光反射層42は、第2化合物半導体層22の第2面側に形成され、平坦な形状を有する。
【0307】
また、実施例22の発光素子アレイは、発光素子が、複数、配列されて成り、各発光素子は、上記の実施例22の発光素子10Hから構成されている。尚、基部面90は、周辺領域99に延在している。
【0308】
そして、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準としたとき、第1光反射層41が形成された基部面90の第1の部分91’は上に凸の形状を有するし、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準としたとき、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’は下に凸の形状を有する。基部面90の第1の部分91’の中心部91cは正方形の格子の頂点(交差部)上に位置しあるいは又、基部面90の第1の部分91’の中心部91cは正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する。
【0309】
第1光反射層41は基部面90の第1の部分91’に形成されているが、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’に第1光反射層41の延在部が形成されている場合もあるし、第2の部分92’に第1光反射層41の延在部が形成されていない場合もある。実施例22においては、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’に第1光反射層41の延在部は形成されていない。
【0310】
実施例22の発光素子10Hにおいて、第1の部分91’と第2の部分92’との境界90bdは、
(1)周辺領域99に第1光反射層41が延在していない場合、第1光反射層41の外周部
(2)周辺領域99に第1光反射層41が延在している場合、第1の部分91’から第2の部分92’に亙る基部面90における変曲点が存在する部分
であると規定することができる。ここで、実施例22の発光素子10Hは、具体的には、第8-A構成の発光素子において説明した(1)のケースに該当する。
【0311】
また、実施例22の発光素子10Hにおいて、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、具体的には前述した第8-A構成の発光素子において説明した(A)のケースに該当する。
【0312】
実施例22の発光素子10Hにおいては、第1化合物半導体層21の第1面21aが基部面90を構成する。積層構造体20の積層方向を含む仮想平面(図示した例では、例えば、XZ平面)で基部面90を切断したときの基部面90の第1の部分91’が描く図形は、微分可能であり、より具体的には、円の一部、放物線の一部、サイン曲線、楕円の一部、又は、カテナリー曲線の一部、あるいはこれらの曲線の組合せとすることができるし、これらの曲線の一部が線分で置き換えられていてもよい。第2の部分92’が描く図形も、微分可能であり、より具体的には、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、又は、カテナリー曲線の一部、あるいはこれらの曲線の組合せとすることができるし、これらの曲線の一部が線分で置き換えられていてもよい。更には、基部面90の第1の部分91’と第2の部分92’との境界も微分可能である。
【0313】
このように、実施例22の発光素子にあっては、基部面90は、凹凸状であり、且つ、微分可能であるが故に、何らかの原因で発光素子に強い外力が加わった場合、凸部の立ち上がり部分に応力が集中するといった問題を確実に回避することができ、第1化合物半導体層21等に損傷が発生する虞がない。特に、発光素子アレイにあっては、バンプを用いて外部の回路等と接続・接合するが、接合時、発光素子アレイに大きな荷重(例えば、50MPa程度)を加える必要がある。実施例22の発光素子アレイにあっては、このような大きな加重が加わっても、発光素子アレイに損傷が生じる虞がない。また、基部面90が凹凸状であるが故に、迷光の発生が一層抑制され、発光素子間における光クロストークの発生を一層確実に防止することができる。
【0314】
実施例22において説明した発光素子の構成、構造を、実施例6~実施例21において説明した発光素子に適用することもできる。
【実施例23】
【0315】
実施例23は、実施例22の変形であり、第8-B構成の発光素子に関する。実施例23の発光素子10Jの模式的な一部端面図を
図54に示し、実施例23の発光素子アレイの模式的な一部端面図を
図55に示す。また、実施例23の発光素子アレイにおける基部面90の第1の部分91’及び第2の部分92’の配置を模式的な平面図を
図56及び
図58に示し、実施例23の発光素子アレイにおける第1光反射層41及び第1電極の配置の模式的な平面図を
図57及び
図59に示す。
【0316】
実施例23の発光素子10Jにおいて、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準としたとき、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’は、周辺領域99の中心部に向かって、下に凸の形状、及び、下に凸の形状から延びる上に凸の形状を有する。そして、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91’の中心部91cまでの距離をLL1、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第2の部分92’の中心部92cまでの距離をLL2としたとき、
LL2>LL1
を満足する。また、基部面90の第1の部分91’の中心部91cの曲率半径(即ち、第1光反射層41の曲率半径)をR1、基部面90の第2の部分92’の中心部92cの曲率半径をR2としたとき、
R1>R2
を満足する。尚、LL2/LL1の値として、限定するものではないが、
1<LL2/LL1≦100
を挙げることができるし、R1/R2の値として、限定するものではないが、
1<R1/R2≦100
を挙げることができ、具体的には、例えば、
LL2/LL1=1.05
R1/R2=10
である。
【0317】
実施例23の発光素子10Jにおいて、基部面90の第1の部分91’の中心部91
cは正方形の格子の頂点(交差部)上に位置し(
図56参照)、この場合、基部面90の第2の部分92’の中心部92
c(
図56においては円形で示す)は正方形の格子の頂点上に位置する。あるいは又、基部面90の第1の部分91’の中心部91
cは正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置し(
図58参照)、この場合、基部面90の第2の部分92’の中心部92
c(
図58においては円形で示す)は正三角形の格子の頂点上に位置する。また、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’は、周辺領域99の中心部に向かって、下に凸の形状を有するが、この領域を
図56及び
図58においては、参照番号92
bで示す。
【0318】
実施例23の発光素子10Jにおいて、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、具体的には前述した第8-B構成の発光素子において説明した(A)のケースに該当する。
【0319】
実施例23の発光素子10Jにおいて、基部面90の第2の部分92’における凸の形状の部分に対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分に、バンプ35が配設されている。
【0320】
図54に示すように、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Jにおいて共通であり、あるいは又、
図55に示すように、個別に形成されており、バンプ35を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Jにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。バンプ35は、基部面90の第2の部分92’における凸の形状の部分92
cに対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分に形成されている。
図54、
図55A、
図55Bに示す発光素子10Jにあっては、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。バンプ35の形状として、円柱形、環状、半球形を例示することができる。
【0321】
また、基部面90の第2の部分92’の中心部92cの曲率半径R2は、1×10-6m以上、好ましくは3×10-6m以上、より好ましくは5×10-6m以上であることが望ましく、具体的には、
曲率半径R2=3μm
である。
【実施例24】
【0322】
実施例24も、実施例22あるいは実施例23の変形であり、第8-C構成の発光素子に関する。実施例24の発光素子アレイの模式的な一部端面図を
図60及び
図61に示し、また、実施例24の発光素子アレイにおける基部面90の第1の部分91’及び第2の部分92’の配置を模式的な平面図を
図62に示す。尚、
図60に示す例では、第2電極32は各発光素子に個別に形成されており、
図61に示す例では、第2電極32は各発光素子に共通に形成されている。また、
図60及び
図61においては、第1電極の図示を省略している。
【0323】
実施例24の発光素子10Kにおいて、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準としたとき、周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’は、基部面90の第1の部分91’を取り囲む環状の凸の形状93、及び、環状の凸の形状93から基部面90の第1の部分91’に向かって延びる下に凸の形状94Aを有する。周辺領域99を占める基部面90の第2の部分92’において、環状の凸の形状93によって囲まれた領域を参照番号94Bで示す。
【0324】
実施例24の発光素子10Kにおいて、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91’の中心部91cまでの距離をLL1、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第2の部分92’の環状の凸の形状93の頂部までの距離をLL2’としたとき、
LL2’>LL1
を満足する。また、基部面90の第1の部分91’の中心部91cの曲率半径(即ち、第1光反射層41の曲率半径)をR1、基部面90の第2の部分92’の環状の凸の形状93の頂部の曲率半径をR2’としたとき、
R1>R2’
を満足する。尚、LL2’/LL1の値として、限定するものではないが、
1<LL2’/LL1≦100
を挙げることができ、具体的には、例えば、
LL2’/LL1=1.1
である。また、R1/R2’の値として、限定するものではないが、
1<R1/R2’≦100
を挙げることができ、具体的には、例えば、
R1/R2’=50
である。
【0325】
実施例24の発光素子10Kにおいて、[第1の部分91’/第2の部分92’の周辺部から中心部まで]の形状は、具体的には前述した第8-C構成の発光素子において説明した(A)のケースに該当する。
【0326】
また、実施例24の発光素子10Kにおいて、基部面90の第2の部分92’における環状の凸の形状93の部分に対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分には、バンプ35が配設されている。バンプ35の形状として、環状の凸の形状93と対向した環状とすることが好ましい。円柱形、環状、半球形を例示することができる。バンプ35は、基部面90の第2の部分92’における凸の形状の部分92cに対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分に形成されている。
【0327】
図60に示すように、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Kにおいて個別に形成されており、バンプ35を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Kにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。あるいは又、
図61に示すように、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Kにおいて共通であり、バンプ35を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Kにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。
図60、
図61に示す発光素子10Kにあっては、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。
【0328】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した発光素子の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができるし、発光素子の製造方法も、適宜、変更することができる。場合によっては、接合層や支持基板を適切に選択することで、第2化合物半導体層の第2面から第2光反射層を介して光を出射する面発光レーザ素子とすることができる。場合によっては、発光に影響を与えない第2化合物半導体層及び活性層の領域に第1化合物半導体層に至る貫通孔を形成し、この貫通孔内に第2化合物半導体層及び活性層と絶縁された第1電極を形成することもできる。第1光反射層は、基部面の第2領域に延在していてもよい。即ち、基部面上における第1光反射層は、所謂ベタ膜から構成してもよい。そして、この場合、基部面の第2領域に延在した第1光反射層に貫通孔を形成し、この貫通孔内に第1化合物半導体層に接続された第1電極を形成すればよい。
【0329】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《発光素子の製造方法・・・第1の態様》
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法であって、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の上に、第1犠牲層を形成し、その後、
全面に第2犠牲層を形成し、次いで、第2犠牲層及び第1犠牲層をエッチング用マスクとして用いて基部面からその内部に向けてエッチバックすることで、基部面に突出部を形成し、その後、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている発光素子の製造方法。
[A02]全面に第2犠牲層を形成する工程においては、第2犠牲層の形成を複数回行う[A01]に記載の発光素子の製造方法。
[A03]《発光素子の製造方法・・・第2の態様》
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されている発光素子の製造方法であって、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
突出部を形成すべき基部面の一部の上に、第1層を形成し、その後、
第1層を覆う第2層を形成し、以て、基部面に、第1層及び第1層を覆う第2層から構成された突出部を形成し、次いで、
少なくとも突出部の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている発光素子の製造方法。
[A04]全面に第2層を形成する工程においては、第2層の形成を複数回行う[A03]に記載の発光素子の製造方法。
[B01]《発光素子・・・第1の態様》
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されており、
突出部の直径をD1、突出部の高さをH1、突出部の頂部の曲率半径をR1、突出部の表面粗さをRaPjとしたとき、
発光素子の共振器長をLORとしとき、
2×10-6m≦D1≦2.5×10-5m
1×10-8m≦H1≦5×10-7m
1×10-4m≦R1
RaPj≦1.0nm
を満足する発光素子。
[B02]《発光素子・・・第2の態様》
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されており、
突出部の直径をD1、突出部の高さをH1、突出部の頂部の曲率半径をR1、突出部の表面粗さをRaPjとしたとき、
発光素子の共振器長をLORとしとき、
2×10-3m≦D1
1×10-3m≦R1
RaPj≦1.0nm
を満足する発光素子。
[B03]《発光素子・・・第3の態様》
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
突出部は、第1層、及び、第1層を覆う第2層から構成されており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されている発光素子。
[B04]発光素子の光を出射する領域には波長変換材料層が設けられている[B01]乃至[B03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[B05]波長変換材料層を介して白色光を出射する[B04]に記載の発光素子。
[B06]積層構造体は、GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る[B01]乃至[B05]のいずれか1項に記載の発光素子。
[B07]積層構造体の熱伝導率の値は、第1光反射層の熱伝導率の値よりも高い[B01]乃至[B06]のいずれか1項に記載の発光素子。
[C01]《第1構成》
第1化合物半導体層の第1面が基部面を構成する[B01]乃至[B07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[C02]《第2構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板が配されており、基部面は化合物半導体基板の表面から構成されている[B01]乃至[B07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[C03]《第3構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には基材が配されており、あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板及び基材が配されており、基部面は基材の表面から構成されている[B01]乃至[B07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[C04]基材を構成する材料は、TiO2、Ta2O5、SiO2等の透明な誘電体材料、シリコーン系樹脂及びエポキシ系樹脂から成る群から選択された少なくとも1種類の材料である[C03]に記載の発光素子。
[D01]《第4構成の発光素子アレイ》
第2化合物半導体層には、電流注入領域及び電流注入領域を取り囲む電流非注入領域が設けられており、
電流注入領域の面積重心点から、電流注入領域と電流非注入領域の境界までの最短距離DCIは、以下の式を満足する[B01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の発光素子。
DCI≧ω0/2
但し、
ω0
2≡(λ0/π){LOR(R1-LOR)}1/2
ここで、
λ0 :発光素子から主に出射される所望の光の波長(発振波長)
LOR:共振器長
R1 :基部面の第1領域の頂部(中心部)の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)
[D02]第2化合物半導体層の第2面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、
第2化合物半導体層の第2面上からモードロス作用部位上に亙り形成された第2電極、及び、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第2光反射層は第2電極上に形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている[D01]に記載の発光素子。
[D03]第1領域の半径r1は、
ω0≦r1≦20・ω0
を満足する[D01]又は[D02]に記載の発光素子。
[D04]DCI≧ω0を満足する[D01]乃至[D03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E01]《第5構成の発光素子アレイ》
第2化合物半導体層の第2面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、
第2化合物半導体層の第2面上からモードロス作用部位上に亙り形成された第2電極、及び、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第2光反射層は第2電極上に形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている[B01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E02]電流非注入・外側領域はモードロス作用領域の下方に位置している[E01]に記載の発光素子。
[E03]電流注入領域の射影像の面積をS1、電流非注入・内側領域の射影像の面積をS2としたとき、
0.01≦S1/(S1+S2)≦0.7
を満足する[E01]又は[E02]に記載の発光素子。
[E04]電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、積層構造体へのイオン注入によって形成される[E01]乃至[E03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E05]イオン種は、ボロン、プロトン、リン、ヒ素、炭素、窒素、フッ素、酸素、ゲルマニウム及びシリコンから成る群から選択された少なくとも1種類のイオンである[E04]に記載の発光素子。
[E06]《第5-B構成の発光素子アレイ》
電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、第2化合物半導体層の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層の第2面への反応性イオンエッチング処理によって形成される[E01]乃至[E05]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E07]《第5-C構成の発光素子アレイ》
第2光反射層は、第1光反射層からの光を、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって反射あるいは散乱する領域を有する[E01]乃至[E06]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E08]電流注入領域における活性層から第2化合物半導体層の第2面までの光学的距離をOL2、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0としたとき、
OL0>OL2
を満足する[E01]乃至[E07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E09]生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって散逸させられ、以て、発振モードロスが増加する[E01]乃至[E08]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E10]モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る[E01]乃至[E09]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E11]モードロス作用部位は誘電体材料から成り、
モードロス作用部位の光学的厚さは、発光素子アレイにおいて生成した光の波長の1/4の整数倍から外れる値である[E10]に記載の発光素子。
[E12]モードロス作用部位は誘電体材料から成り、
モードロス作用部位の光学的厚さは、発光素子アレイにおいて生成した光の波長の1/4の整数倍である[E10]に記載の発光素子。
[E13]《第5-D構成の発光素子アレイ》
第2化合物半導体層の第2面側には凸部が形成されており、
モードロス作用部位は、凸部を囲む第2化合物半導体層の第2面の領域上に形成されている[E01]乃至[E03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E14]電流注入領域における活性層から第2化合物半導体層の第2面までの光学的距離をOL2、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0としたとき、
OL0<OL2
を満足する[E13]に記載の発光素子。
[E15]生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、電流注入領域及び電流非注入・内側領域に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する[E13]又は[E14]に記載の発光素子。
[E16]モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る[E13]乃至[E15]のいずれか1項に記載の発光素子。
[E17]第2電極は、透明導電性材料から成る[E01]乃至[E16]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F01]《第6構成の発光素子アレイ》
第2化合物半導体層の第2面上に形成された第2電極、
第2電極上に形成された第2光反射層、
第1化合物半導体層の第1面上に設けられ、発振モードロスの増減に作用するモードロス作用領域を構成するモードロス作用部位、並びに、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を更に備えており、
第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面上からモードロス作用部位上に亙り形成されており、
積層構造体には、電流注入領域、電流注入領域を取り囲む電流非注入・内側領域、及び、電流非注入・内側領域を取り囲む電流非注入・外側領域が形成されており、
モードロス作用領域の正射影像と電流非注入・外側領域の正射影像とは重なり合っている[B01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F02]電流注入領域の射影像の面積をS1、電流非注入・内側領域の射影像の面積をS2としたとき、
0.01≦S1’/(S1’+S2’)≦0.7
を満足する[F01]に記載の発光素子。
[F03]《第6-A構成の発光素子アレイ》
電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、積層構造体へのイオン注入によって形成される[F01]又は[F02]に記載の発光素子。
[F04]イオン種は、ボロン、プロトン、リン、ヒ素、炭素、窒素、フッ素、酸素、ゲルマニウム及びシリコンから成る群から選択された少なくとも1種類のイオンである[F03]に記載の発光素子。
[F05]《第6-B構成の発光素子アレイ》
電流非注入・内側領域及び電流非注入・外側領域は、第2化合物半導体層の第2面へのプラズマ照射、又は、第2化合物半導体層の第2面へのアッシング処理、又は、第2化合物半導体層の第2面への反応性イオンエッチング処理によって形成される[F01]乃至[F04]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F06]《第6-C構成の発光素子アレイ》
第2光反射層は、第1光反射層からの光を、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって反射あるいは散乱する領域を有する[F01]乃至[F05]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F07]電流注入領域における活性層から第1化合物半導体層の第1面までの光学的距離をOL1’、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0’としたとき、
OL0’>OL1’
を満足する[F01]乃至[F06]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F08]生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、第1光反射層と第2光反射層とによって構成される共振器構造の外側に向かって散逸させられ、以て、発振モードロスが増加する[F01]乃至[F07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F09]モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る[F01]乃至[F08]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F10]モードロス作用部位は誘電体材料から成り、
モードロス作用部位の光学的厚さは、発光素子アレイにおいて生成した光の波長の1/4の整数倍から外れる値である[F09]に記載の発光素子。
[F11]モードロス作用部位は誘電体材料から成り、
モードロス作用部位の光学的厚さは、発光素子アレイにおいて生成した光の波長の1/4の整数倍である[F09]に記載の発光素子。
[F12]《第6-D構成の発光素子アレイ》
第1化合物半導体層の第1面側には凸部が形成されており、
モードロス作用部位は、凸部を囲む第1化合物半導体層の第1面の領域上に形成されている[F01]又は[F02]に記載の発光素子。
[F13]電流注入領域における活性層から第1化合物半導体層の第1面までの光学的距離をOL1’、モードロス作用領域における活性層からモードロス作用部位の頂面までの光学的距離をOL0’としたとき、
OL0’<OL1’
を満足する[F12]に記載の発光素子。
[F14]第1化合物半導体層の第1面側には凸部が形成されており、
モードロス作用部位は、凸部を囲む第1化合物半導体層の第1面の領域から構成されている[F01]又は[F02]に記載の発光素子。
[F15]生成した高次モードを有する光は、モードロス作用領域により、電流注入領域及び電流非注入・内側領域に閉じ込められ、以て、発振モードロスが減少する[F12]乃至[F14]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F16]モードロス作用部位は、誘電体材料、金属材料又は合金材料から成る[F12]乃至[F15]のいずれか1項に記載の発光素子。
[F17]第2電極は、透明導電性材料から成る[F01]乃至[F16]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G01]《第7構成の発光素子アレイ》
第2電極を含む積層構造体には、活性層が占める仮想平面と平行に、少なくとも2層の光吸収材料層が形成されている[B01]乃至[F17]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G02]少なくとも4層の光吸収材料層が形成されている[G01]に記載の発光素子。
[G03]発振波長をλ0、2層の光吸収材料層、及び、光吸収材料層と光吸収材料層との間に位置する積層構造体の部分の全体の等価屈折率をneq、光吸収材料層と光吸収材料層との間の距離をLAbsとしたとき、
0.9×{(m・λ0)/(2・neq)}≦LAbs≦1.1×{(m・λ0)/(2・neq)}
を満足する[G01]又は[G02]に記載の発光素子。
但し、mは、1、又は、1を含む2以上の任意の整数である。
[G04]光吸収材料層の厚さは、λ0/(4・neq)以下である[G01]乃至[G03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G05]積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最小振幅部分に光吸収材料層が位置する[G01]乃至[G04]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G06]積層構造体の内部において形成される光の定在波に生じる最大振幅部分に活性層が位置する[G01]乃至[G05]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G07]光吸収材料層は、積層構造体を構成する化合物半導体の光吸収係数の2倍以上の光吸収係数を有する[G01]乃至[G06]のいずれか1項に記載の発光素子。
[G08]光吸収材料層は、積層構造体を構成する化合物半導体よりもバンドギャップの狭い化合物半導体材料、不純物をドープした化合物半導体材料、透明導電性材料、及び、光吸収特性を有する光反射層構成材料から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成されている[G01]乃至[G07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H01]第1光反射層を囲むように、積層構造体の積層方向に延びる隔壁が形成されている[B01]乃至[G07]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H02]隔壁は、第1化合物半導体層の第1面側から、第1化合物半導体層内を、第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びている[H01]に記載の発光素子。
[H03]隔壁は、第2化合物半導体層の第2面側から第2化合物半導体層内及び活性層内を延び、更に、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びている[H01]に記載の発光素子。
[H04]隔壁は、活性層で生成した光を透過しない材料から構成されている[H01]乃至[H03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H05]隔壁は、活性層で生成した光を反射する材料から構成されている[H01]乃至[H03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H06]第1化合物半導体層を構成する材料の熱伝導率をTC1、隔壁を構成する材料の熱伝導率をTC0としたとき、
1×10-1≦TC1/TC0≦1×102
を満足する[H01]乃至[H03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H07]第1化合物半導体層を構成する材料の線膨張率をCTE1、隔壁を構成する材料の線膨張率をCTE0としたとき、
|CTE0-CTE1|≦1×10-4/K
を満足する[H01]乃至[H03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H08]隔壁は、ハンダ材料から構成されており、
隔壁の一部は、発光素子の外面に露出している[H01]乃至[H03]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H09]第1化合物半導体層の第1面側から第2化合物半導体層の第2面側に向かう方向に沿って、隔壁の側面は窄まっている[H01]乃至[H08]のいずれか1項に記載の発光素子。
[H10]第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面の上に形成されており、
基部面は、周辺領域に延在しており、
基部面は、凹凸状であり、且つ、微分可能である[H01]乃至[H09]のいずれか1項に記載の発光素子。
[J01]第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部から成る第1領域、及び、第1領域を囲み、平坦面を有する第2領域を有しており、
第1領域は、突出部の頂部を含む第1-A領域、及び、第1-A領域を囲む第1-B領域から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも第1-A領域の上に形成されており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの基部面の断面形状における第1-A領域によって構成される第1曲線は、上に凸の滑らかな曲線から構成されており、
基部面の該断面形状における第1-B領域によって構成される第2曲線と第2領域によって構成される直線との交点において、該第2曲線と該直線との成す角度の補角θCAは0度を超える値を有しており、
第2曲線は、下に凸の曲線、線分及び任意の曲線の組合せから成る群から選択された少なくとも1種類の図形から構成されている[B01]乃至[H10]のいずれか1項に記載の発光素子。
[J02]補角θCAは、1度以上、6度以下である[J01]に記載の発光素子。
[J03]第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部から成る第1領域、及び、第1領域を囲み、平坦面を有する第2領域を有しており、
第1光反射層は、少なくとも第1領域の頂部の上に形成されており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの基部面の断面形状における第1領域によって構成される曲線と第2領域によって構成される直線との交点において、該曲線と該直線との成す角度の補角θCAは、1度以上、6度以下である[B01]乃至[H10]のいずれか1項に記載の発光素子。
[K01]第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面の上に形成されており、
基部面は、周辺領域に延在しており、
基部面は、凹凸状であり、且つ、微分可能である[B01]乃至[H10]のいずれか1項に記載の発光素子。
[L01]《発光素子アレイ》
複数の発光素子から構成されており、
各発光素子は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層された積層構造体、
第1光反射層、並びに、
第2化合物半導体層の第2面側に形成され、平坦な形状を有する第2光反射層、
を備えており、
第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面は、活性層から離れる方向に突出した突出部を備えており、
積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの突出部の断面形状は滑らかな曲線から構成されており、
第1光反射層は、少なくとも突出部の上に形成されており、
突出部の直径をD1、突出部の高さをH1、突出部の頂部の曲率半径をR1、突出部の表面粗さをRaPjとしたとき、
発光素子の共振器長をLORとしとき、
2×10-6m≦D1≦2.5×10-5m
1×10-8m≦H1≦5×10-7m
1×10-4m≦R1
RaPj≦1.0nm
を満足し、
発光素子の形成ピッチP0は、3×10-5m以下である発光素子アレイ。
[L02]各発光素子において、第1光反射層を囲むように、積層構造体の積層方向に延びる隔壁が形成されている[L01]に記載の発光素子アレイ。
[L03]各発光素子において、隔壁は、第1化合物半導体層の第1面側から、第1化合物半導体層内を、第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びている[L02]に記載の発光素子アレイ。
[L04]L0とL1とL3との間の関係は、
以下の式(1)、好ましくは、式(1’)を満足し、又は、
以下の式(2)、好ましくは、式(2’)を満足し、又は、
以下の式(1)及び式(2)を満足し、又は、
以下の式(1’)及び式(2’)を満足する[B0X]に記載の発光素子アレイ。
0.01×L0≦L0-L1 (1)
0.05×L0≦L0-L1 (1’)
0.01×L3≦L1 (2)
0.05×L3≦L1 (2’)
ここで、
L0:第1化合物半導体層の第1面と対向する第1光反射層の対向面の端部から、活性層までの距離
L1:活性層から、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びる隔壁の端部(隔壁の上端部であり、活性層の方を向いた端部)までの距離
L3:発光素子を構成する第1光反射層の軸線から、積層構造体への隔壁の正射影像(より具体的には、隔壁の上端部の正射影像)までの距離
である。
[L05]各発光素子において、隔壁は、第2化合物半導体層の第2面側から第2化合物半導体層内及び活性層内を延び、更に、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びている[L02]に記載の発光素子アレイ。
[L06]L0とL2とL3’との間の関係は、
以下の式(3)、好ましくは、式(3’)を満足し、又は、
以下の式(4)、好ましくは、式(4’)を満足し、又は、
以下の式(3)及び式(4)を満足し、又は、
以下の式(3’)及び式(4’)を満足する[L05]に記載の発光素子アレイ。
0.01×L0≦L2 (3)
0.05×L0≦L2 (3’)
0.01×L3’≦L2 (4)
0.05×L3’≦L2 (4’)
ここで、
L0 :第1化合物半導体層の第1面と対向する第1光反射層の対向面の端部から、活性層までの距離
L2 :活性層から、第1化合物半導体層内を第1化合物半導体層の厚さ方向の途中まで延びる隔壁の端部(隔壁の下端部であり、第1電極の方を向いた端部)までの距離
L3’:発光素子を構成する第1光反射層の軸線から、積層構造体への隔壁の正射影像(より具体的には、隔壁の下端部の正射影像)までの距離
である。
「M01]第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面の上に形成されており、
基部面は、複数の発光素子によって囲まれた周辺領域に延在しており、
基部面は、凹凸状であり、且つ、微分可能である[L01]乃至[L06]のいずれか1項に記載の発光素子アレイ。
「M02]基部面は滑らかである「M01]に記載の発光素子アレイ。
「M03]《第8構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第2面を基準としたとき、第1光反射層が形成された基部面の第1の部分は上に凸の形状を有する「M01]又は「M02]に記載の発光素子アレイ。
「M04]《第8-A構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第2面を基準としたとき、周辺領域を占める基部面の第2の部分は下に凸の形状を有する「M03]に記載の発光素子アレイ。
「M05]基部面の第1の部分の中心部は正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M04]に記載の発光素子アレイ。
「M06]基部面の第1の部分の中心部は正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M04]に記載の発光素子アレイ。
「M07]《第8-B構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第2面を基準としたとき、周辺領域を占める基部面の第2の部分は、周辺領域の中心部に向かって、下に凸の形状、及び、下に凸の形状から延びる上に凸の形状を有する「M03]に記載の発光素子アレイ。
「M08]第1化合物半導体層の第2面から基部面の第1の部分の中心部までの距離をLL1、第1化合物半導体層の第2面から基部面の第2の部分の中心部までの距離をLL2としたとき、
LL2>LL1
を満足する「M07]に記載の発光素子アレイ。
「M09]基部面の第1の部分の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)をR1、基部面の第2の部分の中心部の曲率半径をR2としたとき、
R1>R2
を満足する「M07]又は「M08]に記載の発光素子アレイ。
「M10]基部面の第1の部分の中心部は正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M07]乃至「M09]のいずれか1項に記載の発光素子アレイ。
「M11]基部面の第2の部分の中心部は正方形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M10]に記載の発光素子アレイ。
「M12]基部面の第1の部分の中心部は正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M07]乃至「M09]のいずれか1項に記載の発光素子アレイ。
「M13]基部面の第2の部分の中心部は正三角形の格子の頂点(交差部)上に位置する「M12]に記載の発光素子アレイ。
「M14]《第8-C構成の発光素子》
第1化合物半導体層の第2面を基準としたとき、周辺領域を占める基部面の第2の部分は、基部面の第1の部分を取り囲む環状の凸の形状、及び、環状の凸の形状から基部面の第1の部分に向かって延びる下に凸の形状を有する「M03]に記載の発光素子アレイ。
「M15]第1化合物半導体層の第2面から基部面の第1の部分の中心部までの距離をLL1、第1化合物半導体層の第2面から基部面の第2の部分の環状の凸の形状の頂部までの距離をLL2’としたとき、
LL2’>LL1
を満足する「M14]に記載の発光素子アレイ。
「M16]基部面の第1の部分の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)をR1、基部面の第2の部分の環状の凸の形状の頂部の曲率半径をR2’としたとき、
R1>R2’
を満足する「M14]又は「M15]に記載の発光素子アレイ。
【符号の説明】
【0330】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10J,10K・・・発光素子(面発光素子、面発光レーザ素子)、11・・・化合物半導体基板(発光素子アレイ製造用基板)、11a・・・第1化合物半導体層と面する化合物半導体基板(発光素子アレイ製造用基板)の第1面、11b・・・第1化合物半導体層と面する化合物半導体基板(発光素子アレイ製造用基板)の第2面、20・・・積層構造体、21・・・第1化合物半導体層、21a・・・第1化合物半導体層の第1面、21b・・・第1化合物半導体層の第2面、22・・・第2化合物半導体層、22a・・・第2化合物半導体層の第1面、22b・・・第2化合物半導体層の第2面、23・・・活性層(発光層)、31・・・第1電極、31’・・・第1電極に設けられた開口部、32・・・第2電極、33・・・第2パッド電極、34・・・絶縁層(電流狭窄層)、34A・・・絶縁層(電流狭窄層)に設けられた開口部、35・・・バンプ、41・・・第1光反射層、42・・・第2光反射層、42A・・・第2光反射層に形成された順テーパー状の傾斜部、48・・・接合層、49・・・支持基板、51,61・・・電流注入領域、61A・・・電流注入領域、61B・・・電流非注入領域、52,62・・・電流非注入・内側領域、53,63・・・電流非注入・外側領域、54,64・・・モードロス作用部位(モードロス作用層)、54A,54B,64A・・・モードロス作用部位に形成された開口部、55,65・・・モードロス作用領域、71・・・第1層、72・・・第2層、73・・・波長変換材料層(色変換材料層)、74・・・光吸収材料層、81・・・第1犠牲層、82・・・第2犠牲層、90・・・基部面、91・・・突出部、91A・・・突出部の第1-A領域、91B・・・突出部の第1-B領域、92・・・第2領域、91’・・・第1の部分、92’・・・第2の部分、91c・・・基部面の第1の部分の中心部、90bd・・・第1の部分と第2の部分との境界、93・・・基材、94・・・基部面を形成するための凸凹部、95・・・平坦化膜、96,97・・・隔壁、96’,97’・・・隔壁の側面、96a,97a・・・隔壁の下端部、96b,97b・・・隔壁の上端部