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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】半導体装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 652R
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022006132
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2023105361
(43)【公開日】2023-07-31
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 勝俊
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-232574(JP,A)
【文献】特開2017-079225(JP,A)
【文献】特開2016-058498(JP,A)
【文献】特開2019-140203(JP,A)
【文献】特開2020-077721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/76
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/868
H01L 29/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンよりも禁制帯幅が広い半導体材料を主電流経路に用いた半導体装置であって、
主電流を通電するセル領域と、帯状積層欠陥の拡張方向に前記セル領域を分断する分断領域と、前記セル領域の周囲に設けられた終端領域とを有し、
第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域の上部に配置され、前記ドレイン領域より不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域と、
前記セル領域に配置され、前記ドリフト領域の上部に設けられた第2導電型の第1ウェル領域と、
前記分断領域に配置され、前記ドリフト領域の上部に設けられた第2導電型の第2ウェル領域と、
前記セル領域に配置され、前記第1ウェル領域の上部の一部に設けられた第1導電型のソース領域と、
前記セル領域に配置され、前記第1ウェル領域の上部の一部に、前記ソース領域と隣接して設けられた前記第1ウェル領域より不純物濃度が高い第2導電型の第1ウェルコンタクト領域とを含む半導体層、
前記セル領域に配置され、ゲート絶縁膜を介して前記第1ウェル領域と向かい合うように設けられたゲート電極、
前記セル領域に第1コンタクトホールが設けられ、前記分断領域に2つの第2コンタクトホールが設けられ、前記ゲート電極及び前記半導体層を覆う層間絶縁膜、
前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第1コンタクトホールを介して前記ソース領域および前記第1ウェルコンタクト領域と電気的に接続され、前記2つの第2コンタクトホールを介して前記第2ウェル領域と電気的に接続されるソース電極、及び、
前記ドレイン領域の前記ドリフト領域とは反対側に配置されたドレイン電極、
を備え、
前記2つの第2コンタクトホールは、前記帯状積層欠陥の拡張方向に並んで配置され、
前記第2ウェル領域は、上面視して前記2つの第2コンタクトホールに挟まれた領域において前記帯状積層欠陥の拡張方向に連続する1つの領域で形成されたことを特徴とする、
半導体装置。
【請求項2】
前記分断領域に配置され、前記第2ウェル領域の上部の一部に設けられ、前記2つの第2コンタクトホールを介して前記ソース電極と接続される前記第2ウェル領域より不純物濃度が高い第2ウェルコンタクト領域、
を備える、ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ウェル領域の一部が前記帯状積層欠陥の拡張方向に前記2つの第2ウェルコンタクト領域に挟まれ、前記帯状積層欠陥の拡張方向に沿った前記第2ウェル領域の一部の幅は40μm~500μmであることを特徴とする、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ウェルコンタクト領域は、上面視して前記2つの第2コンタクトホールに挟まれた領域において前記帯状積層欠陥の拡張方向に連続する1つの領域で形成されたことを特徴とする、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記帯状積層欠陥の拡張方向における前記2つの第2コンタクトホールの間隔は40μm~500μmであることを特徴とする、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ウェル領域および前記第2ウェル領域は、連続した第2導電型の層で構成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記分断領域は、帯状積層欠陥の拡張方向における前記セル領域の中央で前記セル領域を分断していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記分断領域は、前記セル領域に少なくとも2つ設けられることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記分断領域における前記層間絶縁膜の中にも前記ゲート電極が設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記分断領域における前記層間絶縁膜の上に設けられるゲート配線を含み、
前記層間絶縁膜は、前記分断領域に前記ゲート配線と前記ゲート電極とを電気的に接続するための第3コンタクトホールを有する、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記分断領域における前記層間絶縁膜の中に温度センスダイオードが設けられていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体材料は、炭化珪素であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動する駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)に構造上内蔵されているボディダイオードを活用すると、還流動作時に必要な外付けのダイオードが不要となり、システムの大幅な小型化が図れるため、近年、このボディダイオードを還流ダイオードとして活用する需要が高まっている。
【0003】
一方、半導体材料としてSiCを用いたMOSFETのボディダイオードに順方向電流を流した場合、多数キャリアと少数キャリアの再結合エネルギーによってSiC結晶中に存在する基底面転位が拡張し帯状積層欠陥が拡張する。これにより、デバイスのセル領域内に電流が流れにくい部分が発生し、デバイスのオン抵抗が増大する。
【0004】
そこで、帯状積層欠陥の拡張を抑制する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、第1導電型のエピタキシャル層の表面に互いに離間して形成されたトランジスタを構成する第2導電型のウェル領域に挟まれる領域において、第1導電型のエピタキシャル層からなる電流制限領域を設けることにより帯状積層欠陥の拡張を抑制する構造としている。さらに、トランジスタを構成する第2導電型のウェル領域の角部での電界集中を緩和するために、電流制限領域のエピタキシャル層表面の左右端部に第2導電型のウェル領域が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-232574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の半導体装置によれば、電流制限領域のエピタキシャル層表面の左右端部にウェル領域を形成することによりウェル領域の角部での電界集中を緩和しつつ、帯状積層欠陥の拡張を抑制する。一方、帯状積層欠陥の拡張をさらに抑制するために電流制限領域の幅を広げた場合、ウェル領域間の距離も遠くなり、電流制限領域内のウェル領域の角部での電界集中が生じ、耐圧が顕著に低下するという課題があった。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、耐圧低下を防止しつつ、帯状積層欠陥の拡張を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置は、シリコンよりも禁制帯幅が広い半導体材料を主電流経路に用いた半導体装置であって、主電流を通電するセル領域と、帯状積層欠陥の拡張方向にセル領域を分断する分断領域と、セル領域の周囲に設けられた終端領域とを有し、第1導電型のドレイン領域と、ドレイン領域の上部に配置され、ドレイン領域より不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域と、セル領域に配置され、ドリフト領域の上部に設けられた第2導電型の第1ウェル領域と、分断領域に配置され、ドリフト領域の上部に設けられた第2導電型の第2ウェル領域と、セル領域に配置され、第1ウェル領域の上部の一部に設けられた第1導電型のソース領域と、セル領域に配置され、第1ウェル領域の上部の一部に、ソース領域と隣接して設けられた第1ウェル領域より不純物濃度が高い第2導電型の第1ウェルコンタクト領域とを含む半導体層、セル領域に配置され、ゲート絶縁膜を介して第1ウェル領域と向かい合うように設けられたゲート電極、セル領域に第1コンタクトホールが設けられ、分断領域に2つの第2コンタクトホールが設けられ、ゲート電極及び半導体層を覆う層間絶縁膜、層間絶縁膜の上に設けられ、第1コンタクトホールを介してソース領域および第1ウェルコンタクト領域と電気的に接続され、2つの第2コンタクトホールを介して第2ウェル領域と電気的に接続されるソース電極、及び、ドレイン領域のドリフト領域とは反対側に配置されたドレイン電極、を備え、2つの第2コンタクトホールは、帯状積層欠陥の拡張方向に並んで配置され、第2ウェル領域は、上面視して2つの第2コンタクトホールに挟まれた領域において帯状積層欠陥の拡張方向に連続する1つの領域で形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、耐圧低下を防止しつつ、帯状積層欠陥の拡張を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図6】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図7】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成の変形例を示す平面図である。
図8】実施の形態2に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図9】実施の形態2に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図10】実施の形態3に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図11】実施の形態3に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図12】実施の形態4に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図13】実施の形態4に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図14】実施の形態4に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図15】実施の形態5に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図16】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成の変形例を示す平面図である。
図17】実施の形態1に係る半導体装置の概略構成の変形例を示す平面図である。
図18】本施の形態6に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1図7を用いて本実施の形態における半導体装置101について説明する。
図1は半導体装置101を上面視した主表面の平面図である。半導体装置101としてMOSFETが例示される。図1に示されるように半導体装置101には、半導体基板に耐圧を保持する終端領域56、終端領域56に囲まれて主電流を通電するセル領域50、セル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に分断する分断領域51が設けられる。MOSFETのゲート電極と電気的に接続されるゲートパッド60がセル領域50内に設けられる。ゲートパッド60の部分を除く2つのセル領域50及び分断領域51にはMOSFETのソース電極と電気的に接続される図示しないソースパッドが設けられる。ゲートパッド60はソースパッドと分離して形成されている。分断領域51は、セル領域50の中央でセル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に分断する。
【0012】
図2は本実施の形態における半導体装置101の構造を示す断面図であり、後述する図4のセル領域50の一部であるA-A断面に相当する。半導体装置101は半導体層15を含む。セル領域50において、半導体層15は、第1導電型の半導体基板であるドレイン領域1と、ドレイン領域1の上部に設けられドレイン領域1より不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域2と、ドリフト領域2の上部に設けられた第2導電型の第1ウェル領域3Aとを含む。
【0013】
半導体層15は、第1ウェル領域3Aの上部の一部に設けられた第1導電型のソース領域4と、第1ウェル領域3Aの上部の別の一部に設けられた第2導電型の第1ウェルコンタクト領域5Aとを含む。ソース領域4の不純物濃度はドリフト領域2より高く、第1ウェルコンタクト領域5Aの不純物濃度は第1ウェル領域3Aより高い。
【0014】
半導体装置101は、第1ウェル領域3Aにおけるソース領域4の上部から他のソース領域4の上部に亘って設けられたゲート絶縁膜6と、ゲート絶縁膜6を介して第1ウェル領域3Aと向かい合うように設けられたゲート電極7とを含む。半導体装置101は、ゲート絶縁膜6とゲート電極7とを覆う、ゲート絶縁膜6より厚い第1層間絶縁膜8Aと、第1層間絶縁膜8Aの上部に設けられ、第1層間絶縁膜8Aに形成された第1コンタクトホール9Aを介してソース領域4及び第1ウェルコンタクト領域5Aと電気的に接続されるソース電極10とを含む。ソース電極10は第1ウェルコンタクト領域5Aを介して第1ウェル領域3Aと電気的に接続される。半導体装置101はさらに、ドレイン領域1のドリフト領域2とは反対側に設けられたドレイン電極11を含む。
【0015】
セル領域50に設けられたMOSFETの動作を、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合について説明する。ゲート電極7にソース電極10に対しある閾値以上の電圧が印加されると、ゲート電極7の下にある第1ウェル領域3Aの表面にn型のチャネル領域が形成され、ソース領域4とドリフト領域2とが電気的に繋がる。これが半導体装置101のオン状態であり、チャネル領域を介してドレイン電極11からソース電極10へ電流が流れる。この電流がセル領域50の主電流である。ゲート電極7にソース電極10に対し当該閾値より低い電圧が印加されるとチャネル領域は消滅し、MOSFETはオフ状態となる。ドレイン電極11とソース電極10との間は電気的に遮断される。
【0016】
図3は本実施の形態における半導体装置101の構造を示す断面図であり、後述する図4の分断領域51を含むB-B断面に相当する。半導体層15は、分断領域51において、ドリフト領域2の上部に設けられた、第1ウェル領域3Aと連続する第2ウェル領域3Bを含む。半導体装置101は第2ウェル領域3Bの上部にゲート絶縁膜6より厚い第2層間絶縁膜8Bを備える。第2層間絶縁膜8Bは、図示されない箇所で第1層間絶縁膜8Aと連続している。従って第1層間絶縁膜8A及び第2層間絶縁膜8Bは一体の層間絶縁膜によって構成され、第1層間絶縁膜8A及び第2層間絶縁膜8Bは同じ厚みである。ソース電極10は第2層間絶縁膜8Bの上部にセル領域50から連続して形成されている。加えて、分断領域51においてソース領域4及びゲート電極7は形成されない。
【0017】
分断領域51は2つの境界領域51Aと、その間に挟まれた電流制限領域51Bとを有する。各境界領域51Aには、第2層間絶縁膜8Bに第2コンタクトホール9Bが、第2ウェル領域3Bの上部に第2ウェルコンタクト領域5Bがそれぞれ形成され、第2コンタクトホール9Bを介して第2ウェル領域3B及び第2ウェルコンタクト領域5Bがソース電極10と電気的に接続されている。つまり2つの第2コンタクトホール9Bは帯状積層欠陥の拡張方向に並んで配置される。電流制限領域51Bはソース電極10と第2ウェル領域3Bとを電気的に接続するためのコンタクトホール及びウェルコンタクト領域が形成されていない領域であり、第2ウェル領域3Bが半導体層15の表面に形成されて第2層間絶縁膜8Bと接している。第2ウェル領域3Bは、上面視して前記2つの第2コンタクトホール9Bに挟まれた領域において前記帯状積層欠陥の拡張方向に連続する1つの領域で形成される。このため分断領域51ではドリフト領域2は半導体層15の表面には形成されない。このような構成により分断領域51にはトランジスタが形成されない。従って分断領域51には主電流は流れない。
【0018】
図4はセル領域50及び分断領域51の不純物注入領域を示す平面図であり、半導体装置101からゲート絶縁膜6、ゲート電極7、第1層間絶縁膜8A、第2層間絶縁膜8B及びソース電極10を取り除いた半導体層15の表面を示す。図5図4にゲート電極7を配置した図であり、セル領域50及び分断領域51の不純物注入領域にゲート電極7を追加した平面図である。図4及び図5図1の一点鎖線で示した部分Xで示された領域の拡大図に相当する。
【0019】
図4に示すように、分断された2つのセル領域50の各々において、ソース領域4及び第1ウェルコンタクト領域5Aのすべて並びに第1ウェル領域3Aの一部及びドリフト領域2の一部からなる単位セル(一点鎖線で示した部分Y)が、並んで敷き詰められている。例えば複数の単位セルYは、帯状積層欠陥70の拡張方向及びその拡張方向に直交する方向の格子状に配置される。第1ウェルコンタクト領域5Aはソース領域4に囲まれる。ソース領域4内に第1コンタクトホール9A(点線で示す)が設けられ、ソース領域4及び第1ウェルコンタクト領域5Aに接続される。ソース領域4を第1ウェル領域3Aが囲む。ソース領域4及び第1ウェルコンタクト領域5Aからなる領域は第1ウェル領域3A表面において互いに離間して格子状に複数配列される。図2で示される3つの第1ウェル領域3Aは一つのウェル領域3として互いに接続して形成されている。ドリフト領域2の一部は、隣接する2つのソース領域4の間に設けられ、第1ウェル領域3Aに囲まれる。
【0020】
分断領域51の帯状積層欠陥70の拡張方向の両端には、上面視して帯状積層欠陥70の拡張方向に直交する方向に延びる境界領域51Aが設けられる。電流制限領域51Bは2つの境界領域51Aに挟まれ、帯状積層欠陥70の拡張方向に直交する方向に延びている。第2ウェル領域3B内に2つの第2ウェルコンタクト領域5Bが離れて設けられ、2つの境界領域51Aにそれぞれ配置される。2つの第2ウェルコンタクト領域5Bは第2ウェル領域内で分離されてもよいし、図示されない箇所で接続されていてもよい。第2層間絶縁膜8Bには1つの孔で形成された第2コンタクトホール9B(点線で示す)が2つ設けられ、第2ウェルコンタクト領域5Bにそれぞれ接続される。2つの第2コンタクトホール9Bの間の間隔は単位セルYの一辺よりも広い。電流制限領域51Bには2つの第2ウェルコンタクト領域5Bに挟まれるように第2ウェル領域3Bが形成されている。
第1ウェル領域3Aと第2ウェル領域3Bとはドリフト領域2内で互いに連続して形成されている。しかし第1ウェル領域3Aと第2ウェル領域3Bとはドリフト領域2内のセル領域50と分断領域51との境界部分で分離されていてもかまわない。
【0021】
図5に示されるようにゲート電極7は、例えばポリシリコンで形成され、第1ウェル領域3A及びソース領域4の一部と重なるように配置される。ゲート電極7には、単位セルYにそれぞれ対応し、各単位セルYのソース領域4の他の一部及び第1ウェルコンタクト領域5Aを開口する開口部Zが複数設けられている。
図示しないが、図5で示される半導体装置101の主面上に第1コンタクトホール9A及び第2コンタクトホール9Bを有した層間絶縁膜(例えば、酸化シリコンを材料とする)が設けられる。この層間絶縁膜が第1層間絶縁膜8A及び第2層間絶縁膜8Bとなる。層間絶縁膜上にさらにアルミ配線(アルミニウムを材料とした配線層)が設けられる。このアルミ配線はソース電極10、ゲート配線及びゲートパッド60を構成する。ゲート配線はゲートパッド60と繋がり且つゲート電極7に電気的に接続される。ソース電極10は、ゲートパッド60及びゲート配線と分離され、その表面がソースパッドとなる。
【0022】
ドレイン領域1、ドリフト領域2、第1ウェル領域3A、第2ウェル領域3B,ソース領域4、第1ウェルコンタクト領域5A及び第2ウェルコンタクト領域5Bは、シリコンよりも禁制帯幅が広い半導体材料で構成される。つまり主電流の経路にシリコンよりも禁制帯幅が広い半導体材料が用いられる。シリコンよりも禁制帯幅が広い半導体材料として炭化珪素(不純物が添加された炭化珪素も含む)が挙げられる。半導体基板として、(0001)面から<11-20>の方向に数度傾斜した面が主表面となる、いわゆるオフ角を有した炭化珪素半導体基板が用いられる。
【0023】
ドリフト領域2はエピタキシャル拡張によって炭化珪素半導体基板の主表面に形成される。周知のリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用いてドリフト領域2の主表面に不純物を注入することによって、第1ウェル領域3A、第2ウェル領域3B,ソース領域4、第1ウェルコンタクト領域5A及び第2ウェルコンタクト領域5Bが形成される。第1ウェル領域3A及び第2ウェル領域3Bは同時に形成されるため、同じ深さ及び同じ濃度分布を有する。第1ウェルコンタクト領域5A及び第2ウェルコンタクト領域5Bは同時に形成されるため、同じ深さ及び同じ濃度分布を有する。
【0024】
図6は本実施の形態における半導体装置101の構造を示す断面図である。図中に示す矢印はボディダイオードに流れる電流の向きを示している。
セル領域50及び分断領域51においてボディダイオードに順方向電流を流した場合の動作について説明する。ここでは第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である場合について説明する。
【0025】
MOSFET構造は、ソースドレイン間にp型ウェルコンタクト領域(第1ウェルコンタクト領域5A及び第2ウェルコンタクト領域5B)、p型ウェル領域(第1ウェル領域3A及び第2ウェル領域3B)及びn型ドリフト領域2から構成されるボディダイオードを有する。
【0026】
セル領域50では、ドレイン電極11に対しソース電極10が高い電圧が印加されると、ボディダイオードの各不純物領域に少数キャリアが注入される。特にn型ドリフト領域2に注入された少数キャリア(正孔)が多数キャリア(電子)と再結合する際の再結合エネルギーによってドレイン領域1及びドリフト領域2の少なくともいずれかに存在する基底面転位が拡張し帯状積層欠陥70が発生する。
【0027】
炭化珪素を用いた半導体装置では、上面視して帯状積層欠陥が拡張する方向は定まっており、その拡張方向は結晶方位[-1100]または[1-100]の方向である。よって「帯状積層欠陥の拡張方向」とは、実際に帯状積層欠陥が発生したどうかに拘わらず、上面視して帯状積層欠陥が最も拡張しやすい方向を意味する。半導体装置101であれば、「帯状積層欠陥の拡張方向」を結晶方位[-1100]または[1-100]の方向と言い換えることができる。図6において、例えば、左向きを[-1100]の方向とした場合、右向きが[1-100]の方向である。
【0028】
境界領域51Aでは、第2コンタクトホール9Bを介してソース電極10と第2ウェル領域3Bとが電気的に接続されているため、セル領域50と同様に帯状積層欠陥70が発生する。
電流制限領域51Bでは、コンタクトホールが形成されていないため、ドリフト領域2に実質的に少数キャリアが注入されない。そのため、ドレイン領域1及びドリフト領域2に存在する基底面転位が拡張せず帯状積層欠陥70が発生しないことに加えて、セル領域50又は境界領域51Aで発生した帯状積層欠陥70の拡張を抑制する。
【0029】
分断領域51で境界領域51Aと電流制限領域51Bは第2ウェル領域3Bで電気的に接続されていることで、第2ウェル領域3Bの抵抗は大きいものの電流制限領域51Bにおける第2ウェル領域3Bからドリフト領域2へ少量ながら少数キャリアが注入され、帯状積層欠陥70が部分的に拡張する。よって帯状積層欠陥70の拡張を抑えるため電流制限領域51Bの幅は広いほうがよい。他方、電流制限領域51Bは主電流を通流しない領域となるため、電流制限領域51Bの幅を広くとりすぎると通流可能なセル領域50の面積が減少しチップ性能が低下する。境界領域51Aからの少数キャリアの広がりを完全に抑制しつつチップ性能を確保するためには、帯状積層欠陥70の拡張方向における電流制限領域51Bの幅は40μm以上500μm以下であることが望ましい。
【0030】
このように本実施の形態の半導体装置101は、電流制限領域51Bは第2コンタクトホール9Bを設けない構造とすることで、ボディダイオードに順方向電流が流れることを防止し、帯状積層欠陥70の拡張方向に分断するように形成されていることで、セル領域50及び境界領域51Aの少なくともいずれかで発生した帯状積層欠陥70が電流制限領域51Bに到達した場合、帯状積層欠陥70の拡張を止める。結果、電流制限領域51Bにより帯状積層欠陥70の拡張を抑制することができる。
【0031】
また、分断領域51において、第2ウェル領域3Bは上面視して2つの第2コンタクトホールに挟まれた領域において帯状積層欠陥の拡張方向に連続する1つの領域で形成されるので、分断領域51で第2導電型の半導体領域による角部が生じない。結果、分断領域51で角部での電界集中が発生しにくくなり、耐圧が顕著に低下することを防止できる。
【0032】
また、分断領域51はセル領域50の中央でセル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に分断していることで、セル領域50又は境界領域51Aで発生した帯状積層欠陥70の面積を少なくとも半分以下に制限する。結果、セル領域50内で電流が流れにくい部分が増大するのを防止しセル領域50におけるオン抵抗の増加を低減できる。
【0033】
また、分断領域51で第2層間絶縁膜8B直下全面に第2ウェル領域3Bが形成され、ソース電極10と電気的に接続されていることで、半導体装置101におけるスイッチングオフ時に、ソース及びドレイン間で高電圧がかかった場合でも第2ウェル領域3Bはソース電極10と概ね同じ電位となる。結果、特許文献1のように、半導体層の表面にドリフト領域を露出させ、ドリフト領域の上に層間絶縁膜を形成する場合に比べて第2層間絶縁膜8B直下の電位が固定され、第2層間絶縁膜8Bの絶縁破壊を防止できる。
【0034】
また、境界領域51Aで第2コンタクトホール9Bを介して第2ウェルコンタクト領域5Bがソース電極10と電気的に接続されていることで、半導体装置101におけるオン状態とオフ状態との切り替えが速い高速スイッチング動作時に、変位電流が第2ウェルコンタクト領域5Bからソース電極10へ優先的に流れる。結果、第2ウェルコンタクト領域5Bを設けず、第2ウェル領域3Bに直接ソース電極10を接続する場合に比べて変位電流を効率よく回収し、分断領域51直下の変位電流による電位差を小さくできるため第2層間絶縁膜8Bの絶縁破壊を抑制できる。
【0035】
なお、分断領域51はセル領域50の中央に配置され、セル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に2領域に分断する例を説明したが、図7に示すように分断領域51を2箇所以上に配置し、セル領域50を3領域以上に分断してもよい。分断領域51を2箇所以上に増やすことで、分断領域51を1箇所設置した場合に比べて、帯状積層欠陥70の拡張を抑制し帯状積層欠陥70の面積を小さくする。結果、セル領域50におけるオン抵抗の増加をさらに低減することができる。
【0036】
また、第2ウェルコンタクト領域5Bは第2ウェル領域3Bと同一の導電型とする例を示したが、半導体装置101のスイッチング速度によっては第2ウェル領域3Bより不純物濃度が高ければ異なる導電型としてもよい。スイッチングがより速くなると、第2ウェルコンタクト領域5Bと第2ウェル領域3Bとの接合容量を介して変位電流がソース電極10に抜けやすくなる。さらに第2ウェルコンタクト領域5Bがn型である場合、p型と比較して低抵抗であるためその効果は増す。
【0037】
実施の形態2.
図8は本実施の形態における半導体装置102の構造を示す断面図であり、後述する図9におけるB-B断面に相当する。
実施の形態1において、第2ウェルコンタクト領域5Bが境界領域51Aに形成される構成について説明したが、本実施の形態では、第2ウェルコンタクト領域5Cが分断領域52に形成されている点が実施の形態1と異なる。それ以外の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一のもの又は相当するものには同一の符号を付している。
【0038】
半導体層16は分断領域52において、第2ウェルコンタクト領域5Bの代わりに、第2ウェル領域3Bの上部に設けられた第2ウェルコンタクト領域5Cを含み、それ以外は半導体層15と同じ構成である。第2ウェルコンタクト領域5Cは分断領域52の全体に設けられる。つまり、第2ウェルコンタクト領域5Cは上面視して2つの第2コンタクトホール9Bに挟まれた領域において帯状積層欠陥の拡張方向に連続する一つの領域で形成されている。そのため分断領域52における半導体層16の表面には第2ウェル領域3Bは形成されない。第2ウェルコンタクト領域5Cの上部にゲート絶縁膜6より厚い第2層間絶縁膜8Bが形成される。2つの第2コンタクトホール9Bは、分断領域52においてセル領域50との境界付近の第2層間絶縁膜8Bに設けられる。
【0039】
図9はセル領域50及び分断領域52の不純物注入領域を示す平面図である。
分断領域52の全体に第2ウェルコンタクト領域5Cが形成される。分断領域52の2つのセル領域50とのそれぞれ境界付近には、帯状積層欠陥の拡張方向に対して直交する方向に延びる1つの孔で形成された第2コンタクトホール9Bが設けられ、第2ウェルコンタクト領域5Cに接続される。よって2つの第2コンタクトホール9Bを介して第2ウェル領域3B及び第2ウェルコンタクト領域5Cがソース電極10と電気的に接続される。
【0040】
本実施の形態の分断領域52においてボディダイオードに順方向電流を流した場合の動作について説明する。
セル領域50との分断領域52の境界付近では、第2コンタクトホール9Bを介してソース電極10と第2ウェル領域3Bとが電気的に接続されているため、セル領域50と同様に帯状積層欠陥70が発生する。
【0041】
分断領域52の第2コンタクトホール9Bが形成されていない領域では、第2コンタクトホール9Bが形成されていないものの、第2ウェルコンタクト領域5Cが分断領域52全般に形成されており、ソース電極10と第2ウェル領域3Bとが電気的に接続されている。しかし、ボディダイオードに流れる順方向電流は、第2ウェルコンタクト領域5Cにおける第2コンタクトホール9B直下及びその周辺に流れる。また、第2ウェルコンタクト領域5Cを形成しても分断領域52の第2コンタクトホール9Bが形成されていない領域では順方向電流は減少しており、帯状積層欠陥が拡張するほどの少数キャリアはドリフト領域2に注入されない。帯状積層欠陥の拡張方向における分断領域52の中央及びその周辺ではドリフト領域2への少数キャリアの注入はない。そのため、ドレイン領域1及びドリフト領域2の少なくともいずれかに存在する基底面転位が拡張せず帯状積層欠陥70が発生しないことに加えて、第2コンタクトホール9B直下で発生した帯状積層欠陥70の拡張を抑制する。
【0042】
帯状積層欠陥70の拡張を完全に抑制し、且つチップ性能が低下しない程度に主電流の密度(チップ全体に対するセル領域50の面積の割合)を確保するため、帯状積層欠陥の拡張方向に並んで配置される2つの第2コンタクトホール9Bの間隔は40μm以上500μm以下であることが望ましい。
【0043】
なお、第2ウェルコンタクト領域5Cは第2ウェル領域3Bと同一の導電型とする例を示したが、半導体装置102のスイッチング速度によっては第2ウェル領域3Bより不純物濃度が高ければ異なる導電型としてもよい。
【0044】
このように本実施の形態の半導体装置102は、実施の形態1の効果に加えて、分断領域52の全体で、半導体層16の表面に第2ウェルコンタクト領域5Cが形成されているので、分断領域51の一部で第2ウェルコンタクト領域5Bを形成する実施の形態1と比較して、高速スイッチング動作時の変位電流を効率よく回収し、分断領域52直下の変位電流による電位差を小さくできるため第2層間絶縁膜8Bの絶縁破壊を抑制できる。
【0045】
実施の形態3.
図10は本実施の形態における半導体装置103の構造を示す断面図であり、後述する図11のA-A断面に相当する。
実施の形態1において、分断領域51において第2ウェル領域3Bの上部に第2層間絶縁膜8B及びソース電極10が形成される構成について説明したが、本実施の形態では、実施の形態1の構成に加えて第2ウェル領域3Bの上部に第2層間絶縁膜8Bに覆われたゲート電極7が形成されている点、及びゲート電極7と第2ウェル領域3Bおよび第2ウェルコンタクト領域5Bとの間に第3層間絶縁膜8Cが設けられる点が実施の形態1と異なる。それ以外の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一のもの又は相当するものには同一の符号を付している。
【0046】
分断領域53において、第2ウェル領域3Bおよび第2ウェルコンタクト領域5Bの上部にゲート絶縁膜6より厚い第3層間絶縁膜8Cが形成される。ゲート電極7はセル領域50から連続して第3層間絶縁膜8Cの上部にも形成される。第2層間絶縁膜8Bはゲート電極7を覆うように形成される。よってゲート電極7は第2層間絶縁膜8B及び第3層間絶縁膜8Cで構成される層間絶縁膜の中に設けられる構成となる。ソース電極10は第2層間絶縁膜8Bの上部にセル領域50から連続して形成されている。加えて、分断領域53においてソース領域4は形成されない。
【0047】
境界領域53Aには、第2層間絶縁膜8B及び第3層間絶縁膜8Cに第2コンタクトホール9Bが形成され、第2コンタクトホール9Bを介して第2ウェル領域3B及び第2ウェルコンタクト領域5Bがソース電極10と電気的に接続されている。ゲート電極7は第2コンタクトホール9Bを通すための開口部7Aを有する。
電流制限領域53Bは第2コンタクトホール9Bが形成されていない領域であり、第2ウェル領域3Bが電流制限領域53Bの全体にわたって第3層間絶縁膜8Cと接している。実施の形態1と同様、第2ウェル領域3Bは、分断領域53の一端の境界領域53Aと他端の境界領域53Aに挟まれている。
なお図10において、第2ウェルコンタクト領域5Bに代えて、実施の形態2の第2ウェルコンタクト領域5Cを第2ウェル領域3Bに設けてもよい。
【0048】
図11はセル領域50及び分断領域53の不純物注入領域にゲート電極7を追加した平面図であり、図10から第1層間絶縁膜8A及び第2層間絶縁膜8Bを取り除いた半導体装置103の主表面を示す。図11図1の一点鎖線で示した部分Xで示された領域の拡大図に相当する。
分断領域53では、セル領域50から連続してゲート電極7が形成され、2つの境界領域53Aの各々において、ゲート電極7には、帯状積層欠陥の拡張方向に並ぶ複数の開口部7Aが形成され、各開口部7Aのなかに第2コンタクトホール9Bが形成されている。第2コンタクトホール9Bが複数の孔で形成されている理由は、ゲート電極7の電位をセル領域50及び分断領域53で共通化するためである。
上方からみれば第2コンタクトホール9Bをゲート電極7が囲み、セル領域50と分断領域53に形成されたゲート電極7は互いに連続して形成されている。
【0049】
このように本実施の形態の半導体装置103は、実施の形態1の効果に加えて、分断領域53で、ゲート電極7が形成されていることで、分断領域53にゲート電極7を形成しない場合と比較して、半導体装置103のゲート駆動信号に対する応答が速くなる。
【0050】
実施の形態4.
実施の形態3において、分断領域53の上部にソース電極10が設けられた構成について説明したが、本実施の形態では、ゲートフィンガー(ゲート電極7に接続されるゲート配線である)が分断領域54に設けられている点、ソース電極の形状、及び、ゲートパッドの配置される位置が実施の形態3と異なる。それ以外の構成は実施の形態3と同様であり、実施の形態3と同一のもの又は相当するものには同一の符号を付している。
【0051】
図12図14を用いて本実施の形態における半導体装置104について説明する。
図12に示される半導体装置104は、ゲートパッド61がセル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に分断するように設けられ、ゲートフィンガーが分断領域54として形成されている。
【0052】
図13は本実施の形態における半導体装置104の構造を示す断面図であり、後述する図14のA-A断面に相当する。
分断領域54において、ゲート電極7の上部に位置する第2層間絶縁膜8Bにゲート電極7とゲートフィンガー20とを電気的に接続するための第3コンタクトホール9Cが形成される。ゲートフィンガー20は、図12のゲートパッド61に電気的に接続される。ソース電極10とゲート電極7とのショート防止を目的としてアルミ配線に開口部9Dが形成されている。
第2コンタクトホール9Bは第2層間絶縁膜8B及び第3層間絶縁膜8Cに設けられ、ソース電極10は第2コンタクトホール9Bを介して第2ウェルコンタクト領域5Bと電気的に接続される。ゲート電極7は第2コンタクトホール9Bを通すための開口部7Aを有する。
なお図13において、第2ウェルコンタクト領域5Bに代えて、実施の形態2の第2ウェルコンタクト領域5Cを第2ウェル領域3Bに設けてもよい。
【0053】
図14はセル領域50及び本実施の形態における分断領域54におけるアルミ配線を示す平面図である。図14図12の一点鎖線で示した部分Xで示された領域の拡大図に相当する。
上方から見れば、ゲートフィンガー20は電流制限領域54B上に配置された第1の部分と、第1の部分から終端領域56に隣接する領域で帯状積層欠陥の拡張方向の双方向にそれぞれ延びる第2の部分及び第3の部分を有する。ソース電極10は分離された2つのセル領域50の上にそれぞれ設けられる。斜線の部分はソース電極10とゲートフィンガー20とを分離する配線の開口部9Dを示す。
ゲート電極7は、ゲートフィンガー20及びソース電極10の下方に設けられ、図14で示す部分の全体に形成されている。ゲート電極7とゲートフィンガー20とのにある層間絶縁膜に複数の第3コンタクトホール9Cがゲートフィンガー20のパターン形状に沿って設けられる。ゲートフィンガー20は複数の第3コンタクトホール9Cを介してゲート電極7と電気的に接続される。ゲートフィンガー20は分断領域54に沿って図の右方に延在しており、端部でゲートパッド61とつながっている。
ゲート電極7には、ソース電極10と重なる位置に開口部9Dに沿うようにして複数の開口部7Aが設けられている。各開口部7Aのなかには、ソース電極10と第2ウェルコンタクト領域5Bとを電気的に接続するための第2コンタクトホール9Bが設けられる。
なお一点鎖線は、半導体層15の表面における第1ウェル領域3A及び第2ウェル領域3Bと第2ウェルコンタクト領域5Bとの境界を示している。
【0054】
このように本実施の形態の半導体装置104は、実施の形態1及び実施の形態3と同様の効果を奏する。
【0055】
なお、ゲートパッド61がセル領域50を帯状積層欠陥70の拡張方向に分断するように設けられる例を説明したが、ゲートパッド61は半導体装置104上のどこに配置してもよい。
【0056】
実施の形態5.
図15は本実施の形態における半導体装置105の構造を示す断面図である。
実施の形態3において、第2ウェル領域3Bの上部に第2層間絶縁膜8Bに覆われたゲート電極7が形成されている構成について説明したが、本実施の形態では、実施の形態3の分断領域53におけるゲート電極7の代わりに単一の温度センスダイオードが形成されている点が異なる。それ以外の構成は実施の形態3と同様であり、実施の形態3と同一のもの又は相当するものには同一の符号を付している。
【0057】
分断領域55において、p型領域であるアノード層13と、n型領域であるカソード層14からなる単一の温度センスダイオードが第3層間絶縁膜8Cの上部に形成されている。アノード層13及びカソード層14は第2層間絶縁膜8Bに設けられた図示しない第4コンタクトホールを介して図示しないアノード電極及びカソード電極にそれぞれ接続されている。
なお図15において、第2ウェルコンタクト領域5Bに代えて、実施の形態2の第2ウェルコンタクト領域5Cを第2ウェル領域3Bに設けてもよい。
【0058】
このように本実施の形態の半導体装置105は、実施の形態1の効果に加えて、分断領域55で、温度センスダイオードが形成されていることで、半導体装置105中央に配置されることにより正確な温度測定が可能となる。加えて、電流制限領域55B内に温度センスダイオードを設置することにより、半導体装置105の面積効率が向上する。
【0059】
なお、温度センスダイオードが分断領域55に設けられる例を説明したが、温度センスダイオードは半導体装置105上のどこに配置してもよい。
【0060】
また、分断領域55に単一の温度センスダイオードが設けられる例を説明したが、複数の温度センスダイオードを直列接続したもの、並列接続したもの或いはその組み合わせたものを設けてもよい。複数の温度センスダイオードを直列接続することで、温度センスダイオードの接続数に比例して順方向電圧の温度変化量が増加する。結果、温度変化の検出感度を向上させることができる。
【0061】
また、各実施の形態においてセル領域50に形成されたMOSFETはプレーナー型のゲート構造をもつ場合を例示したが、トレンチ型のゲート構造を持つMOSFETであってもよい。
【0062】
また、各実施の形態においてセル領域50に形成されたMOSFETのセル構造が格子状である場合を説明したが、セル構造がストライプ形状若しくは六角形状であるMOSFETであってもよい。
【0063】
図16は、例えば、実施の形態1の半導体装置101のセル構造を格子状からストライプ形状に置き換えた、セル領域50及び分断領域51の不純物注入領域を示す平面図であり、半導体装置101からゲート絶縁膜6、ゲート電極7、第1層間絶縁膜8A、第2層間絶縁膜8B及びソース電極10を取り除いた半導体層15の表面を示す。図17は図16にゲート電極7を配置した図であり、セル領域50及び分断領域51の不純物注入領域にゲート電極7を追加した平面図である。図16及び図17図1の一点鎖線で示した部分Xで示された領域の実施の形態1における拡大図に相当する。
【0064】
セル領域50において、第2導電型の第1ウェル領域3A内に、上面視して、帯状積層欠陥の拡張方向に直交する方向に沿って第1導電型のソース領域4及び第2導電型の第1ウェルコンタクト領域5Aが交互に設けられた列状の構造が単位セルとなる。隣接する単位セルの間に第1導電型のドリフト領域2を挟んで、複数の単位セルが帯状積層欠陥の拡張方向にならんでいる。帯状積層欠陥の拡張方向に直交する方向に延びるゲート電極7が各ドリフト領域2上に配置されている。隣接する単位セルの間隔は、帯状積層欠陥の拡張方向に並ぶ2つの第1ウェルコンタクト領域5Aのそれぞれ中心の間の距離に相当する。
【0065】
実施の形態6.
本実施の形態は、上述した実施の形態1から実施の形態5にかかる半導体装置を電力変換装置200に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置200に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0066】
図18は、本実施の形態にかかる電力変換装置200を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0067】
図18に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0068】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図18に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
【0069】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0070】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1から実施の形態5のいずれかにかかる半導体装置を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0071】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0072】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0073】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1から実施の形態5にかかる半導体装置を適用するため、安定動作を実現することができる。
【0074】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置200に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置200としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置200であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0075】
また、本開示を適用した電力変換装置200は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0076】
また、上述以外にも、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ドレイン領域、2 ドリフト領域、3A 第1ウェル領域、3B 第2ウェル領域、4 ソース領域、5A 第1ウェルコンタクト領域、5B、5C 第2ウェルコンタクト領域、6 ゲート絶縁膜、7 ゲート電極、7A 開口部、8A 第1層間絶縁膜、8B 第2層間絶縁膜、8C 第3層間絶縁膜、9A 第1コンタクトホール、9B 第2コンタクトホール、9C 第3コンタクトホール、9D 開口部、10 ソース電極、11 ドレイン電極、12 ボディダイオード電流、13 アノード層、14 カソード層、15、16 半導体層、50 セル領域、51、52、53、54、55 分断領域、51A、53A、54A、55A 境界領域、51B、53B、54B、55B 電流制限領域、56 終端領域、60 ゲートパッド、70 帯状積層欠陥、100 電源、101、102、103、104、105 半導体装置、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 駆動回路、203 制御回路、300 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18