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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
H01R13/631
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022010914
(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公開番号】P2023109418
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 耀一
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-093930(JP,A)
【文献】特開平08-078097(JP,A)
【文献】特開平09-320682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、
一対のアーム部が操作部によって連結された門形をなして前記第1ハウジングの外側面に装着され、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの嵌合前に位置する初期位置と、嵌合完了時に位置する嵌合位置との間を回動可能とされたレバーと、を備え、
前記レバーは、前記嵌合位置において前記一対のアーム部に設けられた被係止部が前記第2ハウジングに突出して設けられた係止部と係止することで、回動が規制可能とされたレバー式コネクタであって、
前記一対のアーム部に、前記係止部の前記第2ハウジングからの突出寸法よりも小さい突出寸法でそれぞれ内側に向けて突出して互いに対向する姿勢案内部が設けられており、
前記被係止部と前記係止部とが係止するのに先立って、前記姿勢案内部がそれぞれ前記第2ハウジングに当接することで、前記レバーを前記第2ハウジングに対して正規姿勢に案内可能とされているレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記姿勢案内部は、前記第2ハウジングに当接した状態において前記一対のアーム部が押し開かれた状態となる突出寸法とされるとともに、前記係止部および前記被係止部の係止動作が開始する際に第2ハウジングに当接している状態となる位置に形成されている請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記第2ハウジングは、前記レバーが前記嵌合位置とされた状態において、その外側面から窪んで前記姿勢案内部を逃がすための逃がし凹部を備えている、請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記姿勢案内部は円錐台形状とされている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方のハウジングにカム溝を有するレバーを装着するとともに、他方のハウジングにフォロワピンを形成し、両ハウジングを接近させてフォロワピンをカム溝に進入させた後、レバーを回動させることにより、カム作用によって両ハウジングを嵌合するレバー式コネクタが記載されている。
【0003】
このレバー式コネクタには、嵌合完了位置とされたレバーが不用意に回動しないよう、レバーの回動を規制する係止手段が設けられている。具体的には、レバーは一対のアーム部と、一対のアーム部を連結する操作部とを有する門型とされており、一対のアーム部に設けられた被係止部と、他方のハウジングに設けられた係止部との係止構造により、レバーの嵌合完了位置からの回動が規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-93930公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにレバーが門型とされた場合、作業者がレバーを回動操作する際に、レバーの正しい把持位置を把持せず、レバーの偏った位置を把持して操作を行うことが考えられる。例えば、作業者が操作部の端や、一方のアーム部を把持してレバーを回動させることが考えられる。
【0006】
そしてこのような場合には、作業者の操作力が一対のアーム部に対して均等に伝わらず、レバーが正規の姿勢から傾き、一対のアーム部にそれぞれ設けられた被係止部のうち一方の被係止部が係止部に係止されるだけで、他方の被係止部は係止されない片掛かりの状態となることが考えられる。つまり、両ハウジングが正規の嵌合深さに達しない虞がある。特に、レバーに肉抜きが設けられる場合には、レバーが薄肉化により撓み易くなるため、嵌合が不完全になる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、一対のアーム部が操作部によって連結された門形をなして前記第1ハウジングの外側面に装着され、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの嵌合前に位置する初期位置と、嵌合完了時に位置する嵌合位置との間を回動可能とされたレバーと、を備え、前記レバーは、前記嵌合位置において前記一対のアーム部に設けられた被係止部が前記第2ハウジングに突出して設けられた係止部と係止することで、回動が規制可能とされたレバー式コネクタであって、前記嵌合位置において、前記一対のアーム部に設けられた被係止部と、前記第2ハウジングに突出して設けられた係止部とが係止することで、前記レバーの回動を規制可能とされたレバー式コネクタであって、前記一対のアーム部に、前記係止部の前記第2ハウジングからの突出寸法よりも小さい突出寸法でそれぞれ内側に向けて突出して互いに対向する姿勢案内部が設けられており、前記被係止部と前記係止部とが係止するのに先立って、前記姿勢案内部がそれぞれ前記第2ハウジングに当接することで、前記レバーを前記第2ハウジングに対して正規姿勢に案内可能とされている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レバーに対して荷重が偏って加えられた場合でも、レバーを正しい姿勢に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のレバー式コネクタの嵌合前の正面図である。
図2図2は、実施形態のレバーの斜視図である。
図3図3は、実施形態のレバー式コネクタの嵌合完了直前の斜視図である。
図4図4は、実施形態のレバー式コネクタの嵌合完了直前の正面図である。
図5図5は、図4の一部拡大正面図である。
図6図6は、図5のI-I断面図である。
図7図7は、実施形態のレバー式コネクタの嵌合完了状態の正面図である。
図8図8は、図7の一部拡大正面図である。
図9図9は、図7のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
(1)本開示は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに嵌合される第2ハウジングと、一対のアーム部が操作部によって連結された門形をなして前記第1ハウジングの外側面に装着され、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの嵌合前に位置する初期位置と、嵌合完了時に位置する嵌合位置との間を回動可能とされたレバーと、を備え、前記レバーは、前記嵌合位置において前記一対のアーム部に設けられた被係止部が前記第2ハウジングに突出して設けられた係止部と係止することで、回動が規制可能とされたレバー式コネクタであって、前記一対のアーム部に、前記係止部の前記第2ハウジングからの突出寸法よりも小さい突出寸法でそれぞれ内側に向けて突出して互いに対向する姿勢案内部が設けられており、前記被係止部と前記係止部とが係止するのに先立って、前記姿勢案内部がそれぞれ前記第2ハウジングに当接することで、前記レバーを前記第2ハウジングに対して正規姿勢に案内可能とされている。
【0011】
上記構成によれば、レバーに対して荷重が偏って加えられ、その姿勢に偏りが生じた場合でも、姿勢案内部によってレバーの第2ハウジングに対する姿勢を正規の姿勢とすることができる。つまり、レバーの第2ハウジングに対する追従性を改善することができる。もって、レバーの姿勢の偏りに起因する第1ハウジングおよび第2ハウジングの嵌合不良を回避することが可能となる。
【0012】
なお、姿勢案内部の突出寸法は係止部の突出寸法よりも小さい寸法とされているから、姿勢案内部がハウジングを離脱させる際の最大離脱荷重に影響を与えることはない。
【0013】
(2)上記(1)のレバー式コネクタにおいて、前記姿勢案内部は、前記第2ハウジングに当接した状態において前記一対のアーム部が押し開かれた状態となる突出寸法とされるとともに、前記係止部および前記被係止部の係止動作が開始する際に第2ハウジングに当接している状態となる位置に形成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、レバーが回動され、被係止部が係止部に到達した際に、アーム部は姿勢案内部によりすでに押し開かれた状態とされている。
【0015】
(3)上記(2)のレバー式コネクタにおいて、前記第2ハウジングは、前記レバーが前記嵌合位置とされた状態において、その外側面から窪んで前記姿勢案内部を逃がすための逃がし凹部を備えていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、第1ハウジングおよび第2ハウジングの嵌合が完了した際には、姿勢案内部は第2ハウジングと干渉しない状態とすることができる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつのレバー式コネクタにおいて、前記姿勢案内部は円錐台形状とされていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、レバーがどの方向に傾いている場合でも、レバーは姿勢案内部の全周に亘って設けられた傾斜状の側面によって、姿勢案内部の平坦な頂部を第2ハウジングの外面に当接させる姿勢に案内される。つまり、レバーを第2ハウジングに対して正しい姿勢に案内することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
本開示における実施形態について図1から図9を参照して説明する。本実施形態のレバー式コネクタ10は、互いに嵌合可能な第1ハウジング11および第2ハウジング31を備え、第1ハウジング11に装着されたレバー20を回動操作することで互いに嵌合・離脱が可能とされている。以下、第1ハウジング11および第2ハウジング31の嵌合方向を基準として、それぞれ嵌合面側を前方とし、嵌合方向と交差する方向を側方とする。また、上下方向および左右方向については図1を基準とし、図1の紙面手前側を正面として説明する。
【0021】
[第1ハウジング11]
第1ハウジング11は合成樹脂製とされ、全体として略直方体のブロック状をなしている。第1ハウジング11は、端子(図示せず)を保持するための第1端子保持部12と、第1端子保持部12の周囲から前方に向けて張り出して開口する角筒状のフード部13とを備えている。第1端子保持部12には、例えば複数の雄端子が収容されており、雄端子のタブがフード部13内に突出している。
【0022】
第1ハウジング11には、一対の回動軸14が設けられている。回動軸14は円柱形状をなしており、第1ハウジング11の互いに対向する長尺側の側壁11A(嵌合面と隣り合う壁)の中央部からそれぞれ外側に向けて突出している。これらの回動軸14には、後述するレバー20が回動可能に取り付けられる。
【0023】
また第1ハウジング11には、後述する第2ハウジング31のカムフォロア34が挿通される逃がし溝15が、前後方向に延びて形成されている。逃がし溝15は、回動軸14に対して所定寸法前方側の位置からフード部13の前端まで直線状に延びている。
【0024】
[レバー20]
レバー20は合成樹脂製であって、図2に示すように略門形をなしている。レバー20は、操作部21と、操作部21の両端から互いに対向するように延びる一対のアーム部22とを備えて構成されている。
【0025】
各アーム部22は厚みがある板状をなし、上述した第1ハウジング11の回動軸14を受け入れる軸孔23と、後述する第2ハウジング31のカムフォロア34を受け入れるカム溝24とを有している。軸孔23は、アーム部22の板面を貫通する略円形の孔である。カム溝24はアーム部22の内面(一対のアーム部22の対向面)に形成されている。カム溝24は、アーム部22の一縁にカムフォロア34の進入を許容するカム進入口24Aを有し、このカム進入口24Aから奥方に向かって延びている。カム溝24は、カム進入口24Aから奥方に向かうにつれて次第にアーム部22の回動中心である軸孔23に接近する略弧状をなしている(図1参照)。
【0026】
レバー20は、第1ハウジング11を跨ぐようにして取り付けられ、各アーム部22が第1ハウジング11の側壁11Aに沿って配置され、各軸孔23に各回動軸14が嵌合される。レバー20は、回動軸14を回動中心として、初期位置(図1に示す位置)と、第1ハウジング11に対して第2ハウジング31が正規嵌合位置に嵌合された状態となる嵌合位置(図7に示す位置)との間で回動可能に軸支されている。
【0027】
両アーム部22の内面(対向面)において、アーム部22の延び方向(長さ方向)における中央部よりやや操作部21に近い位置には、外側に向けて窪む長円形の初期位置ロック凹部25が設けられている。第1ハウジング11の側壁11Aの左端には、初期位置ロック突部16が突出して設けられている。初期位置ロック凹部25は、レバー20が初期位置とされた状態(図1の状態)において、初期位置ロック突部16を受け入れて、初期位置とされたレバー20の回り止めを図るためのものである。
【0028】
また、両アーム部22の内面において初期位置ロック凹部25よりも操作部21に近い位置には、外側に向けて窪む矩形の嵌合位置ロック凹部26が設けられている。後述する第2ハウジング31の側壁35Aの右端には、嵌合位置ロック突部38が突出して設けられている。嵌合位置ロック凹部26は、レバー20が嵌合位置とされた状態(図7の状態)において、嵌合位置ロック突部38を受け入れて、嵌合位置とされたレバー20の回り止めを図るためのものである。
【0029】
さらに、両アーム部22の内面において嵌合位置ロック凹部26よりも操作部21に近い位置には、嵌合位置ロック凹部26と並ぶ形で、内面から内側(対向する相手側のアーム部22)に向けて突出する姿勢案内部27が設けられている。姿勢案内部27は、図2に示すように、緩やかな円錐台形状とされており、その突出端に平坦な頂部28を備えている。
【0030】
姿勢案内部27の、アーム部22の内面からの突出寸法は、アーム部22が第2ハウジング31と重畳された状態において、第2ハウジング31の外側面(側壁35A)に当接して一対のアーム部22を互いに離れる方向に押し広げることが可能な寸法とされている。つまり、レバー20が第2ハウジング31に対して正規姿勢とされた状態における、レバー20の内面と第2ハウジング31の外面との間の寸法よりも、やや大きい突出寸法とされている。
【0031】
上述した嵌合位置ロック凹部26と姿勢案内部27とは、レバー20が初期位置から嵌合位置に向けて回動される際に、アーム部22の進行方向側に位置する端縁部(以下、進行側端縁部22Aとする)に近接した位置に設けられている。これに対し、初期位置ロック凹部25は、進行側端縁部22Aの反対側に位置する端縁部に近接した位置に設けられている。またアーム部22の内面には、複数の肉抜きが設けられている。
【0032】
[第2ハウジング31]
第2ハウジング31は合成樹脂製とされ、略直方体状をなす第2端子保持部32と、この第2端子保持部32に対して背面(嵌合面の反対面)を覆うように組み付けられる電線カバー35とを備えて構成されている。第2端子保持部32の長尺側の側壁(嵌合面と隣り合う壁部)には、後方に向けて延びる係止片33がそれぞれ2本ずつ合計4本延設されている。電線カバー35は、これらの係止片33に設けられて外側に向けて突出する係止爪を、当該電線カバー35に設けられた係止孔36の孔縁部に係止させることにより、第2端子保持部32に対して組み付けられている。
【0033】
第2端子保持部32には複数の雌端子(図示せず)が収容されており、これらの雌端子に接続された複数の電線(図示せず)が、第2端子保持部32の背面から導出されている。電線カバー35は、短尺側の側壁の一方が側方(図1の右側)に向けて開口する電線引き出し口37とされている(図3参照)。複数の電線は、電線カバー35の内部において第2端子保持部32の背面に沿うように曲げられ、電線引き出し口37から外部へ引き出されている。
【0034】
第2端子保持部32の長尺側の側壁には、一対のカムフォロア34が設けられている(図1参照)。カムフォロア34は、断面が縦長長円形の柱状をなして、第2端子保持部32の互いに対向する側壁の前端中央部からそれぞれ外側に向けて突出している。
【0035】
また、上述した電線カバー35の直尺側の側壁35Aのうち、電線引き出し口37に隣接した位置(右端)であって、かつ、前後方向(図1の上下方向)における中央部付近に、レバー20を嵌合位置に係止するための嵌合位置ロック突部38が外側に向けて突出している。この電線カバー35の直尺側の側壁35Aの上端角部は、面取りされたR形状とされている(図3参照)。
【0036】
嵌合位置ロック突部38は、電線カバー35の側壁35Aの外面から正面視矩形に突出している。嵌合位置ロック突部38は、レバー20が初期位置から嵌合位置に向けて回動される際に、アーム部22の進行側端縁部22Aが当該嵌合位置ロック突部38と略垂直に交差しつつ乗り上がる(図4および図5参照)ように、前後方向(図1の上下方向)から傾いて設けられている。また、嵌合位置ロック突部38には、回動するアーム部22(進行側端縁部22A)の乗り上がりを案内するための傾斜面38Aが、図1の左上方の角部を切り欠く形で設けられている(図6参照)。
【0037】
なお、上述したレバー20に設けられた姿勢案内部27の側面29の、アーム部22の内面に対する傾斜角度は、嵌合位置ロック突部38の傾斜面38Aの、第2ハウジング31(電線カバー35)の側壁35Aに対する傾斜角度よりも小さい角度とされている。また、姿勢案内部27の、アーム部22の内面からの突出寸法は、嵌合位置ロック突部38の、第2ハウジング31の外面からの突出寸法よりも小さい寸法とされている。
【0038】
また、第2ハウジング31の側壁35Aの外面において、嵌合位置ロック突部38の後方(図1の上方)には、内側に向けて窪む逃がし凹部39が設けられている。逃がし凹部39は電線カバー35の外面から矩形に窪んでおり、その電線引き出し口37の反対側(左側)に位置する内壁は、外側(左側)に向かって傾斜する傾斜面39Aとされている。この逃がし凹部39は、レバー20が嵌合位置に配された状態において、レバー20の姿勢案内部27に対応する位置に設けられている(図8参照)。
【0039】
[第1ハウジング11および第2ハウジング31の嵌合]
両ハウジング11,31を嵌合する際には、図1に示すように、レバー20を初期位置に待機させておく。このとき、レバー20の初期位置ロック凹部25内に第1ハウジング11の初期位置ロック突部16が嵌め入れられることより、レバー20は初期位置に保持される。この状態において、レバー20のカム溝24のカム進入口24Aは、第2ハウジング31の嵌合面側(上方)に向かって開口する。また、操作部21は、第1ハウジング11のフード部13の開口領域の外へ退避しており、フード部13の左側の側壁と対向するように位置する。
【0040】
この状態で、第1ハウジング11のフード部13内に第2ハウジング31の第2端子保持部32を浅く嵌合させる。すると、第2ハウジング31のカムフォロア34が第1ハウジング11の逃がし溝15内を通りながら、カム進入口24Aに進入する。この後、初期位置ロック突部16と初期位置ロック凹部25との嵌合力を上回る回動操作力を操作部21に付与し、レバー20を嵌合方向(図1の右側)に回動させる。すると、レバー20の回動が進むのに伴い、カム溝24とカムフォロア34との係合によるカム作用により、両ハウジング11,31が引き寄せられ、嵌合が進む。
【0041】
更にレバー20の回動を進め、図4および図5に示すように、レバー20が嵌合位置に近接すると、アーム部22の進行側端縁部22Aが嵌合位置ロック突部38の傾斜面38Aに乗り上げることで、一対のアーム部22が押し広げられる。そして、嵌合位置ロック凹部26の開口縁部が嵌合位置ロック突部38を乗り越えると同時に、押し広げられていたアーム部22が弾性復帰し、嵌合位置ロック凹部26内に嵌合位置ロック突部38が嵌まり込んで係止される(図7参照)。これにより、両ハウジング11,31が正規の嵌合状態となる。
【0042】
ところで、作業者がレバー20を回動操作する際に、レバー20の正しい把持位置(操作部21の中央)を把持せず、例えば、操作部21の端を把持したり、一方のアーム部22を把持して操作を行う場合がある。このような場合、レバー20が正規の姿勢から傾くことが考えられる。レバー20が傾いた場合には、把持部に近い一方のアーム部22には荷重が伝わり、嵌合位置ロック突部38を乗り越えて嵌合位置ロック凹部26内に係止させることができるが、把持部から遠い他方のアーム部22は嵌合位置ロック突部38を乗り越えられずに弾性変形し、レバー20が所謂、片掛かりの状態となることが考えられる。つまり、両ハウジング11,31が正規の嵌合深さに達しない虞がある。
【0043】
このような問題を解決するべく、本実施形態では上述したように、レバー20に一対の姿勢案内部27が設けられている。
【0044】
[姿勢案内部27の作用効果]
レバー20が初期位置から回動され、嵌合位置に近づくと、レバー20の進行側端縁部22Aが第2ハウジング31の嵌合位置ロック突部38に到達するのに先立って、レバー20の姿勢案内部27が第2ハウジング31の外面(電線カバー35の側壁35A)に当接する。この時、姿勢案内部27は緩やかな円錐台形状とされており、その傾斜状とされた側面29が全周に亘って設けられている。したがって、レバー20の姿勢がどの方向に傾いている場合でも、レバー20は、姿勢案内部27の側面29(傾斜面)がR形状とされた電線カバー35の上端角部に沿いつつ、姿勢案内部27の頂部28が第2ハウジング31の側壁35Aに当接する姿勢に案内される。
【0045】
そして、2つの姿勢案内部27の平坦な各頂部28が第2ハウジング31の外面(側壁35A)に両側から当接した状態となると、レバー20は第2ハウジング31に対して正規の姿勢とされる。この時、一対のアーム部22は、姿勢案内部27と第2ハウジング31との干渉により弾性変形して、若干押し広げられた状態とされる。
【0046】
このような状態から更にレバー20を回動させると、レバー20はアーム部22が押し広げられた弾発力により正規の姿勢を保った状態で、その進行側端縁部22Aが嵌合位置ロック突部38に当接する(図4から図6参照)。この時、一対のアーム部22はすでに姿勢案内部27によって押し広げられた状態とされており、アーム部22の内面は第2ハウジング31の外面との間に隙間を有している。つまり、アーム部22と嵌合位置ロック突部38とのラップ量が小さくなっているから、アーム部22は比較的に小さい力で嵌合位置ロック突部38を乗り越えることができる。したがって、作業者がレバー20の偏った位置を把持しており、一方のアーム部22に充分な荷重が伝達されない場合でも、レバー20を片掛かりとすることなく、両方の嵌合位置ロック凹部26内に嵌合位置ロック突部38を嵌め入れて係止させることができる(図7から図9参照)。
【0047】
なお、レバー20の進行側端縁部22Aが第2ハウジング31の嵌合位置ロック突部38に乗り上がり、その後、嵌合位置ロック凹部26の開口縁部が嵌合位置ロック突部38に到達して、嵌合位置ロック突部38および嵌合位置ロック凹部26の係止動作が開始するのとほぼ同時に、あるいは、僅かに遅れて、姿勢案内部27の平坦な頂部28が、第2ハウジング31の逃がし凹部39の傾斜面39Aに到達するように、姿勢案内部27および逃がし凹部39の位置が設定されている。
【0048】
そして、嵌合位置ロック凹部26内に嵌合位置ロック突部38が嵌まり込み、レバー20が第2ハウジング31にロックされた状態においては、姿勢案内部27は逃がし凹部39内に収容され、押し広げられていた一対のアーム部22は弾性復帰した状態とされる。つまり、嵌合位置ロック凹部26および嵌合位置ロック突部38の係止により、十分なレバー20の保持力が得られる。
【0049】
[実施形態の作用効果]
このように、本実施形態のレバー式コネクタ10は、第1ハウジング11と、第1ハウジング11に嵌合される第2ハウジング31と、一対のアーム部22が操作部21によって連結された門形をなして第1ハウジング11の外側面に装着され、第1ハウジング11および第2ハウジング31の嵌合前に位置する初期位置と、嵌合完了時に位置する嵌合位置との間を回動可能とされたレバー20と、を備え、レバー20は、嵌合位置において一対のアーム部22に設けられた嵌合位置ロック凹部26が第2ハウジング31に突出して設けられた嵌合位置ロック突部38と係止することで、回動を規制可能とされており、一対のアーム部22に、嵌合位置ロック突部38の第2ハウジング31からの突出寸法よりも小さい突出寸法でそれぞれ内側に向けて突出して互いに対向する姿勢案内部27が設けられており、嵌合位置ロック凹部26と嵌合位置ロック突部38とが係止するのに先立って、姿勢案内部27がそれぞれ第2ハウジング31に当接することで、レバー20を第2ハウジング31に対して正規姿勢に案内可能とされている。
【0050】
上記構成によれば、レバー20に対して荷重が偏って加えられ、その姿勢に偏りが生じた場合でも、姿勢案内部27によってレバー20の第2ハウジング31に対する姿勢を正規の姿勢とすることができる。つまり、レバー20の第2ハウジング31に対する追従性を改善することができる。もって、レバー20の姿勢の偏りに起因する第1ハウジング11および第2ハウジング31の嵌合不良を回避することが可能となる。
【0051】
なお、姿勢案内部27の突出寸法は嵌合位置ロック突部38の突出寸法よりも小さい寸法とされているから、姿勢案内部27がハウジング11,31を離脱させる際の最大離脱荷重に影響を与えることはない。
【0052】
また、姿勢案内部27は、第2ハウジング31に当接した状態において一対のアーム部22が押し開かれた状態となる突出寸法とされるとともに、嵌合位置ロック突部38および嵌合位置ロック凹部26の係止動作が開始する際に第2ハウジング31に当接している状態となる位置に形成されている。
【0053】
このような構成によれば、レバー20が回動され、嵌合位置ロック凹部26が嵌合位置ロック突部38に到達した際に、アーム部22は姿勢案内部27によりすでに押し開かれた状態とされている。
【0054】
また、第2ハウジング31は、レバー20が嵌合位置とされた状態において、その外側面から窪んで姿勢案内部27を逃がすための逃がし凹部39を備えている。
【0055】
このような構成によれば、第1ハウジング11および第2ハウジング31の嵌合が完了した際には、姿勢案内部27は第2ハウジング31と干渉しない状態とすることができる。
【0056】
また、姿勢案内部27は円錐台形状とされている。このような構成によれば、レバー20がどの方向に傾いている場合でも、レバー20は姿勢案内部27の全周に亘って設けられた傾斜状の側面29によって、姿勢案内部27の平坦な頂部28を第2ハウジング31の外面に当接させる姿勢に案内される。つまり、レバー20を第2ハウジング31に対して正しい姿勢に案内することができる。
【0057】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)上記実施形態では姿勢案内部27を円錐台形状としたが、姿勢案内部は円錐台形状に限らず、矩形や断面半円型のエンボス状としてもよい。
【0059】
(2)上記実施形態では、レバー20が第2ハウジング31に対して正規の姿勢とされた際に、一対のアーム部22は、若干押し広げられた状態とされる構成を示したが、一対のアーム部は、第2ハウジングに当接するだけで、押し広げられない構成としてもよい。
【0060】
(3)姿勢案内部は第2ハウジング側に設けることも可能であるが、レバーの撓みを軽減するために、レバー側に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
10: レバー式コネクタ
11: 第1ハウジング
11A: 側壁
12: 第1端子保持部
13: フード部
14: 回動軸
15: 逃がし溝
16: 初期位置ロック突部
20: レバー
21: 操作部
22: アーム部
22A: 進行側端縁部
23: 軸孔
24: カム溝
24A: カム進入口
25: 初期位置ロック凹部
26: 嵌合位置ロック凹部(被係止部)
27: 姿勢案内部
28: 頂部
29: 側面
31: 第2ハウジング
32: 第2端子保持部
33: 係止片
34: カムフォロア
35: 電線カバー
35A: 側壁
36: 係止孔
37: 電線引き出し口
38: 嵌合位置ロック突部(係止部)
38A: 傾斜面
39: 逃がし凹部
39A: 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9