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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】バスバ冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022026899
(22)【出願日】2022-02-24
(65)【公開番号】P2023123054
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 正章
(72)【発明者】
【氏名】林 篤史
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271063(JP,A)
【文献】特表2020-511782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバスバを冷却するバスバ冷却構造であって、
前記複数のバスバにおける各バスバの一部と接触するように設けられた絶縁性の冷却部を備え、
前記複数のバスバは、電流経路の始点から終点までの長さが異なり、
各バスバと前記冷却部との接触面積は、各バスバの前記長さに比例した面積に設定されており、
前記冷却部は、前記バスバよりも熱伝導性の高い熱伝導部材であり、
各バスバは、前記一部が前記熱伝導部材に埋め込まれた状態で前記熱伝導部材から立設しており、
前記複数のバスバは、前記熱伝導部材から立設する方向に積層している
ことを特徴とするバスバ冷却構造。
【請求項2】
前記バスバは、
前記熱伝導部材に埋め込まれた伝熱部と、
前記始点から前記終点に至る部位を形成する通電部と、
前記通電部から分岐して前記伝熱部に至る分岐部と、を有し、
前記伝熱部は、前記電流経路には含まれない
ことを特徴とする請求項に記載のバスバ冷却構造。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、直方体形状に形成され、
前記複数のバスバは、前記伝熱部が前記熱伝導部材の長手方向に並んで配置された状態で前記分岐部が前記熱伝導部材から立設し、その立設方向に前記通電部が積層している
ことを特徴とする請求項に記載のバスバ冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバ冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体モジュール内部の半導体素子で発生した熱を冷却プレートに伝えて冷却プレートで放熱する冷却構造が開示されている。この冷却構造では、半導体モジュールからは、半導体素子に接続されたバスバが外部に延びており、冷却プレートからは、バスバの熱を冷却プレートに移動させるための伝熱プレートが延び、その先端がバスバに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-060304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動システムの大電流化に伴い、バスバの自己発熱量と、接続先の内部電気部品からの受熱量とが増加する。バスバの冷却を積極的に実施しない場合、熱拡散のための大型化により、バスバや内部電気部品が大型化し、ユニット体格が大型化してしまう。そのため、バスバを効果的に冷却することが望まれる。
【0005】
また、バスバが複数存在する場合には、各バスバをバランスよく冷却する必要がある。冷却性能のばらつきが大きいと、最も冷却性能の低いバスバに合わせて熱拡散のための大型化が図られることになり、ユニット体格が大型化する。このように、最も冷却性能の低いバスバによってユニット体格が左右されてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、バスバを効果的に冷却しつつ複数のバスバをバランスよく冷却することができるバスバ冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のバスバを冷却するバスバ冷却構造であって、前記複数のバスバにおける各バスバの一部と接触するように設けられた絶縁性の冷却部を備え、前記複数のバスバは、電流経路の始点から終点までの長さが異なり、各バスバと前記冷却部との接触面積は、各バスバの前記長さに比例した面積に設定されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、各バスバの冷却面積が各バスバの長さに比例した大きさとなるため、長さの異なる複数のバスバを冷却する際に各バスバの冷却性能のばらつきを抑制することができる。これにより、バスバを効果的に冷却しつつ複数のバスバをバランスよく冷却することができる。
【0009】
また、前記冷却部は、前記バスバよりも熱伝導性の高い熱伝導部材であり、各バスバは、前記一部が前記熱伝導部材に埋め込まれた状態で前記熱伝導部材から立設しており、前記複数のバスバは、前記熱伝導部材から立設する方向に積層していてもよい。
【0010】
この構成によれば、バスバの一部が熱伝導部材に埋め込まれていることにより、バスバの冷却性能が向上する。
【0011】
また、前記バスバは、前記熱伝導部材に埋め込まれた伝熱部と、前記始点から前記終点に至る部位を形成する通電部と、前記通電部から分岐して前記伝熱部に至る分岐部と、を有し、前記伝熱部は、前記電流経路には含まれなくてもよい。
【0012】
この構成によれば、電流経路から分岐している部位により放熱することが可能になる。
【0013】
また、前記熱伝導部材は、直方体形状に形成され、前記複数のバスバは、前記伝熱部が前記熱伝導部材の長手方向に並んで配置された状態で前記分岐部が前記熱伝導部材から立設し、その立設方向に前記通電部が積層してもよい。
【0014】
この構成によれば、複数のバスバが立設方向に積層することによりスペースを有効活用することができ、省スペース化を図ることができる。これにより、ユニット体格を小型にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、各バスバの冷却面積が各バスバの長さに比例した大きさとなるため、長さの異なる複数のバスバを冷却する際に各バスバの冷却性能のばらつきを抑制することができる。これにより、バスバを効果的に冷却しつつ複数のバスバをバランスよく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態におけるバスバ冷却構造を示す斜視図である。
図2図2は、図1のバスバ冷却構造を反対側から見た場合を示す斜視図である。
図3図3は、図1のバスバ冷却構造をX方向から見た場合を示す側面視図である。
図4図4は、図1のバスバ冷却構造をZ方向から見た場合を示す上面視図である。
図5図5は、バスバの長さと冷却面積との関係を示す図である。
図6図6は、バスバ幅と電流値との関係を示す図である。
図7図7は、複数のバスバをZ方向に積層した構造におけるバスバ本数と電流値との関係を示す図である。
図8図8は、比較例のバスバ冷却構造を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、図8のバスバ冷却構造を反対側から見た場合を示す斜視図である。
図10図10は、図8のバスバ冷却構造をX方向から見た場合を示す側面視図である。
図11図11は、図8のバスバ冷却構造をZ方向から見た場合を示す上面視図である。
図12図12は、バスバ冷却構造のZ方向の大きさを比較説明するための側面視図である。
図13図13は、バスバ冷却構造のX方向の大きさを比較説明するための上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるバスバ冷却構造について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、実施形態におけるバスバ冷却構造を模式的に示す図である。図2は、図1のバスバ冷却構造を反対側から見た場合を示す斜視図である。図3は、図1のバスバ冷却構造をX方向から見た場合を示す側面視図である。図4は、図1のバスバ冷却構造をZ方向から見た場合を示す上面視図である。なお、図1図4では内部構造が透けた状態に図示されている。また、X方向とY方向とは直交する方向である。Z方向はX-Y平面に対して直交する方向である。
【0019】
バスバ冷却構造1は、複数のバスバ2を冷却するものである。このバスバ冷却構造1は、各バスバ2の一部が熱伝導部材3に接触した構造を有する。バスバ冷却構造1では、バスバ2の熱がバスバ2から熱伝導部材3に伝達されることによりバスバ2を冷却する。
【0020】
バスバ2は、板状の導電性部材である。バスバ2は、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属材料により形成されている。バスバ2は、入力側の電気部品に接続される入力側接続部(始点)と、出力側の電気部品に接続される出力側接続部(終点)とを有する。このバスバ2は電気部品同士を電気的に接続する。なお、バスバ2と電気部品との物理的な接続方法(締結方法)は特に限定されない。
【0021】
例えば、バスバ2は、複数の電気部品がユニット化された電気ユニットに含まれ、接続先の電気部品とともにユニットケース内に収容されている。ユニットケース(以下、単にケースという)は、ユニット化された電気部品を収容するケースである。ケース内では、ある電気部品と他の電気部品とがバスバ2によって電気的に接続されている。ある電気部品(入力側)からバスバ2を介して他の電気部品(出力側)へと電力を供給する際、ある電気部品と他の電気部品との間に大電流を流すことを可能にするために、その間の電流経路が複数のバスバ2によって分岐して形成されている。すなわち、バスバ2は大電流が流れるバスバであり、複数のバスバ2からなる分岐した電流経路を形成する。
【0022】
複数のバスバ2は、それぞれに長さの異なる6本のバスバ2A,2B,2C,2D,2E,2Fにより構成されている。この長さ(バスバ長さ)とは、電流経路の始点21からの終点22までの距離のことである。始点21は、入力側の電気部品に接続される部位である。終点22は、出力側の電気部品に接続される部位である。複数のバスバ2は、図1に示すように、電流経路の始点21からの終点22までの距離が長い順に、第1バスバ2A、第2バスバ2B、第3バスバ2C、第4バスバ2D、第5バスバ2E、第6バスバ2Fを備える。
【0023】
第1バスバ2Aは、入力側接続部である始点21Aと、出力側接続部である終点22Aとを有し、電流経路の始点21Aから終点22Aまでの距離が最も長い形状に形成されている。第1バスバ2Aは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Aから終点22Aに至る電流経路を形成する。
【0024】
第2バスバ2Bは、入力側接続部である始点21Bと、出力側接続部である終点22Bとを有し、電流経路の始点21Bから終点22Bまでの距離が二番目に長い形状に形成されている。第2バスバ2Bは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Bから終点22Bに至る電流経路を形成する。
【0025】
第3バスバ2Cは、入力側接続部である始点21Cと、出力側接続部である終点22Cとを有し、電流経路の始点21Cから終点22Cまでの距離が三番目に長い形状に形成されている。第3バスバ2Cは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Cから終点22Cに至る電流経路を形成する。
【0026】
第4バスバ2Dは、入力側接続部である始点21Dと、出力側接続部である終点22Dとを有し、電流経路の始点21Dから終点22Dまでの距離が四番目に長い形状に形成されている。第4バスバ2Dは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Dから終点22Dに至る電流経路を形成する。
【0027】
第5バスバ2Eは、入力側接続部である始点21Eと、出力側接続部である終点22Eとを有し、電流経路の始点21Eから終点22Eまでの距離が五番目に長い形状に形成されている。第5バスバ2Eは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Eから終点22Eに至る電流経路を形成する。
【0028】
第6バスバ2Fは、入力側接続部である始点21Fと、出力側接続部である終点22Fとを有し、電流経路の始点21Fから終点22Fまでの距離が六番目に長い形状、すなわち最も短い形状に形成されている。第6バスバ2Fは電気部品同士を電気的に接続し、これら電気部品同士の間で始点21Fから終点22Fに至る電流経路を形成する。
【0029】
第1~第6バスバ2A~2Fはいずれも、同じ入力側の電気部品(第1電気部品)と、同じ出力側の電気部品(第2電気部品)とに接続される。第1電気部品と第2電気部品との間で六本の電流経路を形成するように第1~第6バスバ2A~2Fが接続されている。例えばバスバ冷却構造1は昇圧コンバータに適用することが可能であり、入力側に設けられたリアクトルと出力側に設けられたパワーモジュールとを第1~第6バスバ2A~2Fによって電気的に接続する。この場合、ユニットは昇圧コンバータユニット(昇圧用DC/DCコンバータ)であり、ケースは昇圧コンバータユニットを収容するコンバータケースである。このユニットは車両に搭載されることが可能である。
【0030】
そして、各バスバ2は、一部が熱伝導部材3に埋め込まれた状態で熱伝導部材3から立設している。
【0031】
熱伝導部材3は、高い熱伝導性および高い絶縁性を有する部材である。熱伝導部材3は、バスバ2よりも熱伝導性の高い材料(高熱伝導材)により形成された絶縁性の冷却部である。熱伝導部材3は、各バスバ2から熱を受け取ることにより各バスバ2を冷却する冷却部として機能する。
【0032】
熱伝導部材3は、直方体形状に形成されている。熱伝導部材3は、X方向を短手方向、Y方向を長手方向、Z方向を高さ方向として、Y方向に沿って延在している。
【0033】
例えば熱伝導部材3はケースの内面に密着した状態でケース内に収容されている。熱伝導部材3は、バスバ2の熱を熱伝導部材3からケースに伝える熱経路を形成する。ケースは、バスバ2の熱を放熱する放熱部として機能する。一例として、バスバ2が銅製であり、ケースがアルミニウム製である場合、熱伝導部材3は銅より熱伝導性の高い材料により形成されている。熱伝導部材3が高い絶縁性を有することにより、バスバ2とケースとが短絡することを防止する。
【0034】
また、バスバ冷却構造1では、各バスバ2の熱を熱伝導部材3に直接的に伝えるように構成されている。各バスバ2は、熱伝導部材3に接触してバスバ2の熱を熱伝導部材3に直接的に伝える部位を含む。
【0035】
具体的には、バスバ2は、始点21と、終点22と、通電部23と、伝熱部24と、分岐部25と、を有する。バスバ2は、厚さ2mmの板状部材により形成されている。
【0036】
なお、この説明では、始点21A,21B,21C,21D,21E,21Fを特に区別しない場合には、添え字のA~Fを省略して始点21と記載する。同様に、終点22、通電部23、伝熱部24、分岐部25についても添え字のA~Fを省略する場合がある。
【0037】
通電部23は、バスバ2の電流経路を形成する部位であり、電流経路の始点21から終点22に至る部位を形成する。始点21と終点22と通電部23とは、熱伝導部材3よりもZ方向に高い位置に配置され、熱伝導部材3に接触していない。Y方向において、始点21は一方側に配置され、終点22は他方側に配置されている。この始点21と終点22とを繋ぐようにして通電部23がY方向に沿って延在している。通電部23は、厚さ2mm、幅22mmに形成されている。
【0038】
また、通電部23は、図2に示すように、Z方向に積層している。通電部23は、Y方向の一方側に配置された始点21側の第1部位と、Y方向の他方側に配置された終点22側の第2部位と、第1部位と第2部位とを繋ぐようにY方向に沿って延在する中間部位とを有する。複数のバスバ2では、通電部23がZ方向に積層しており、通電部23のうちの中間部位がZ方向に積層している。通電部23のうち第1部位と第2部位とはY方向に積層している。
【0039】
伝熱部24は、バスバ2の熱を直接的に熱伝導部材3に伝える部位である。伝熱部24は、熱伝導部材3に埋め込まれた状態で、その表面が熱伝導部材3に接触している。伝熱部24の表面と熱伝導部材3の表面とが面接触(密着)している。伝熱部24は、通電部23から分岐した分岐部25の先端部位であるため、電流経路には含まれない。伝熱部24は、通電部23と同じ厚さ2mmに形成されているが、その幅は通電部23と同じ幅に形成されていなくてよい。伝熱部24の幅は、各バスバ2の長さに応じて設定されている。
【0040】
分岐部25は、通電部23から分岐して伝熱部24に至る部位である。分岐部25は、図1に示すように、熱伝導部材3からZ方向に立設している。分岐部25は、通電部23から分岐しているため、電流経路には含まれない。この分岐部25は、通電部23の熱を伝熱部24に伝える熱伝導部として機能する。通電部23の熱は分岐部25を介して伝熱部24に熱伝導し、伝熱部24から熱伝導部材3に熱伝達される。分岐部25は、通電部23と同じ厚さ2mmに形成され、その幅は各伝熱部24と同じ幅に形成されている。
【0041】
このように構成された各バスバ2は伝熱部24から熱伝導部材3に熱を伝える。その際、通電時にバスバ自身で発生した熱と、始点21または終点22に締結された接続先の電気部品から受け取った熱とが、各バスバ2から熱伝導部材3に伝えられる。そして、バスバ冷却構造1では、長さの異なる6本のバスバ2A,2B,2C,2D,2E,2Fをバランスよく冷却するために、各バスバ2の長さに応じて、バスバ2と熱伝導部材3とが接触する面積(接触面積,冷却面積)が設定されている。
【0042】
詳細には、バスバ2において、バスバ自身での発熱量(自己発熱量)は、通電時の損失すなわちRIにより表される。Rはバスバ2の電気抵抗値であり、Iはバスバ2を流れる電流の値である。各バスバ2において、電流経路の断面積が同じ大きさに形成された場合、各バスバ2における通電時の損失は各バスバ2の電流経路の長さに比例する(バスバ長さ∝R)。各バスバ2の放熱量は、熱伝導部材3との接触面積に比例する(放熱量∝面積)。そこで、バスバ冷却構造1では、図5に示すように、各バスバ2の冷却面積が各バスバ2の始点21から終点22までの距離(バスバ長さ)に比例した面積に設定されている。
【0043】
バスバ2の冷却面積は、伝熱部24が熱伝導部材3に接触する面積(接触面積)である。複数のバスバ2は、伝熱部24が熱伝導部材3の長手方向(Y方向)に並んで配置された状態で分岐部25が熱伝導部材3から立設している。各伝熱部24は、熱伝導部材3の短手方向(X方向)で同じ位置に配置されている。そして、各バスバ2の伝熱部24A,24B,24C,24D,24E,24Fはいずれも、同じ厚さに形成されており、同じ深さで熱伝導部材3に埋め込まれている。つまり、バスバ2の冷却面積の大きさは伝熱部24の幅により規定される。複数のバスバ2では、各通電部23の幅が同じ大きさに形成されているものの、伝熱部24は通電部23から分岐した部位であるため、伝熱部24の幅を通電部23の幅とは異なる大きさに形成することが可能である。
【0044】
第1バスバ2Aの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Aが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Aは幅が最も広く形成されている。伝熱部24Aは、二つの部位により形成されている。この伝熱部24Aは、Y方向で一方側に配置された部位である第1接触部241と、Y方向で他方側に配置された部位である第2接触部242とを含む。第1バスバ2Aの冷却面積は、第1接触部241が熱伝導部材3に接触する面積と、第2接触部242が熱伝導部材3に接触する面積とを足し合わせた面積である。
【0045】
第2バスバ2Bの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Bが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Bは、幅が二番目に広く形成されている。
【0046】
第3バスバ2Cの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Cが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Cは、幅が三番目に広く形成されている。
【0047】
第4バスバ2Dの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Dが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Dは、幅が四番目に広く形成されている。
【0048】
第5バスバ2Eの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Eが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Eは、幅が五番目に広く形成されている。
【0049】
第6バスバ2Fの冷却面積は、図1および図3に示すように、伝熱部24Fが熱伝導部材3に接触する面積である。伝熱部24Fは、幅が六番目に広く、すなわち幅が最も狭く形成されている。
【0050】
このように構成されたバスバ冷却構造1によれば、各バスバ2の冷却面積を電流経路の長さに比例した大きさにすることにより、その長さの違いによる各バスバ2での冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0051】
図6は、バスバ幅と電流値との関係を示す図である。図7は、複数のバスバをZ方向に積層した構造におけるバスバ本数と電流値との関係を示す図である。図6には、バスバの厚さを2mmに固定してバスバ幅を変化させた例が示されている。
【0052】
図6に示す電流値とバスバ幅(バスバ断面積)との関係は、Melson & Boothの関係式により表される。図6には、電流値に対して、その電流値の電流を流すためにどのくらいのバスバ幅(バスバ断面積)が必要であるかが示されている。言い換えれば、バスバ幅に応じた許容電流値が示されている。例えば、100Aの電流を流す際には9mmのバスバ幅が必要であることを表している。
【0053】
図7には、複数のバスバをZ方向に積層した構造がコンパクト性に優れていることが示されている。図7に示す電流値とバスバ本数との関係は、複数のバスバをZ方向に積層した構造において、電流値とバスバ本数とが増えるほど(図7に示す図表の右下方向ほど)、体格がコンパクトになることを表している。図7に示すように、2本のバスバをZ方向に積層した構造では、電流値が100Aの場合、2本のバスバをX方向またはY方向に積層した構造よりも小型になる。同様に、4本のバスバをZ方向に積層した構造では、電流値が100~600Aの場合、4本のバスバをX方向またはY方向に積層した構造よりも小型になる。そして、6本のバスバをZ方向に積層した構造では、電流値が100~1000Aの場合、6本のバスバをX方向またはY方向に積層した構造よりも小型になる。例えば電流値が900Aの場合、900Aの電流を6本のバスバ2A,2B,2C,2D,2E,2Fに分岐して流すのでバスバ一本あたりの電流値は150Aとなり、通電部23の幅が22mmに形成されたバスバ2であれば、図6に示すように、許容電流値に収まることになる。
【0054】
このように6本のバスバ2A,2B,2C,2D,2E,2FがZ方向に積層したバスバ冷却構造1は、複数のバスバがX方向またはY方向に積層したバスバ冷却構造に比べて、体格を小さくすることができる。比較例として、図8図11には、複数のバスバがX方向に積層したバスバ冷却構造100が示されている。
【0055】
図8図11に示すように、比較例のバスバ冷却構造100は、複数のバスバ102がX方向に積層した構造を有し、各バスバ102を熱伝導部材103により冷却するように構成されている。複数のバスバ102は、電流経路の始点121からの終点122までの距離が長い順に、第1バスバ102A、第2バスバ102B、第3バスバ102C、第4バスバ102D、第5バスバ102E、第6バスバ102Fを備える。
【0056】
バスバ102は、始点121と、終点122と、通電部123とを有する。
【0057】
なお、この説明では、始点121A,121B,121C,121D,121E,121Fを特に区別しない場合には、添え字のA~Fを省略して始点121と記載する。同様に、終点122、通電部123についても添え字のA~Fを省略する場合がある。
【0058】
通電部123は、少なくとも一部が熱伝導部材103に埋め込まれた状態でX方向に積層している。つまり、通電部123は、バスバ102の電流経路を形成する部位であるとともに、その一部がバスバ102の熱を直接的に熱伝導部材103に伝える部位である。図10に示すように、各通電部123は同じ深さで熱伝導部材103に埋め込まれているので、各バスバ102の冷却面積の大きさは、図11に示すように、通電部123が熱伝導部材103に埋め込まれている長さにより規定される。そのため、各バスバ102の冷却面積は、第1バスバ102Aから第6バスバ102Fの順に小さくなる。
【0059】
図12は、バスバ冷却構造のZ方向の大きさを比較説明するための側面視図である。図13は、バスバ冷却構造のX方向の大きさを比較説明するための上面視図である。
【0060】
Z方向の大きさについて、図12に示すように、バスバ冷却構造1とバスバ冷却構造100とは同じ大きさとなる。これに対して、X方向の大きさについては、図13に示すように、バスバ冷却構造1のほうがバスバ冷却構造100よりも小さくなる。このように、複数のバスバ2をZ方向に積み重ねた構造のほうが、複数のバスバ102をX方向に積層した構造よりもX方向の体格をコンパクトにすることができる。そして、ケース内において、バスバ上部(Z方向)のスペースは他部品で空間を有効活用しにくいため、そのスペースを有効活用することにより、ユニット全体の省スペース化を図ることができる。
【0061】
以上説明した通り、実施形態によれば、バスバ2の伝熱部24を熱伝導部材3に埋め込むことにより冷却性能が向上する。また、各バスバ2の冷却面積がバスバ長さに応じた大きさに設定されるため、複数のバスバ2における長さの違いによる冷却性能のばらつきを抑えることができる。これにより、長さの異なる複数のバスバ2を効果的に冷却することができるとともに、各バスバ2での冷却性能のばらつきを抑制することができる。その結果、複数のバスバ2を備える構造について省スペース化と冷却性能のばらつき抑制との両立を図ることができる。
【0062】
なお、バスバ冷却構造1は、長さの異なる複数のバスバ2を冷却することが可能であるため、長さの組合せや、バスバ2の本数は特に限定されない。複数のバスバ2について、少なくとも二つのバスバが異なる長さに形成されていればよく、全部のバスバが異なる長さに形成されていなくてよい。
【0063】
また、バスバ2の厚さは2mmに限定されない。例えばバスバ2は厚さが2~5mmで形成されていればよい。同様に、バスバ2の通電部23の幅も22mmに限定されない。
【0064】
また、バスバ冷却構造1を含むユニットが車両に搭載される例について説明したが、その場合、X方向は車幅方向、Y方向は車両前後方向、Z方向は高さ方向とすることが可能である。
【0065】
また、バスバ冷却構造1は、昇圧コンバータに適用される例について説明したがこれに限定されない。バスバ冷却構造1は、システムの高出力化(大電流化)に伴い、バスバ自体あるいは締結先の電気部品の熱制約のため、バスバが複数に分かれている機構において有効に適用可能である。要するに、大電流化かつバスバ本数が多いほど、このバスバ冷却構造1は有利な構造である。
【0066】
また、バスバ2は、一枚の板状部材により形成されたものに限らず、複数枚の板状部材を接合して形成されたものであってもよい。例えば、通電部23は二枚の板状部材を繋げて形成されたものとすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 バスバ冷却構造
2 バスバ
2A 第1バスバ
2B 第2バスバ
2C 第3バスバ
2D 第4バスバ
2E 第5バスバ
2F 第6バスバ
3 熱伝導部材
21,21A,21B,21C,21D,21E,21F 始点
22,22A,22B,22C,22D,22E,22F 終点
23,23A,23B,23C,23D,23E,23F 通電部
24,24A,24B,24C,24D,24E,24F 伝熱部
25,25A,25B,25C,25D,25E,25F 分岐部
図1
図2
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