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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】光増幅器及び光増幅器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/291 20130101AFI20241126BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241126BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20241126BHJP
【FI】
H04B10/291
H04J14/02
H04B10/079 170
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022558620
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2020040136
(87)【国際公開番号】W WO2022091187
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/空間多重フォトニックノード基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵一
(72)【発明者】
【氏名】竹下 仁士
(72)【発明者】
【氏名】野口 栄実
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/171103(WO,A1)
【文献】特開2006-066862(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038095(WO,A1)
【文献】特開2020-014113(JP,A)
【文献】空間多重光通信技術を適用したスケーラブルフォトニックノードの研究,高度通信・放送研究開発委託研究 研究開発成果 令和元年度 成果概要図 [オンライン],採択番号18801,日本,総務省,2020年01月,第1-5頁,[検索日2020.12.14],インターネット:<URL:https://www2.nict.go.jp/commission/seika/r01/18801_gaiyo_g.pdf>
【文献】柳町成行 他,光海底ケーブルにおけるマルチコア光増幅器省電力化の取り組み,電子情報通信学会2020年総合大会講演論文集 通信2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2020年03月03日,電子情報通信学会2020年総合大会講演論,pages.SS-64~SS-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/291
H04J 14/02
H04B 10/079
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されるWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を増幅する、増幅媒体からなる2以上のコアを有する光増幅器であって、
前記入射されるWDM信号を2以上の波長帯に分波し、前記2以上のコアに別々に導入する波長分波手段と、前記2以上のコアを伝播して増幅された光信号同士を合波して出力する波長合波手段と、増幅されたWDM信号の特定波長帯の増幅率や特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて前記入射されるWDM信号の中から光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号を分波し、前記光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号に対しては相対的に大きい増幅率で増幅されるように、前記波長分波手段及び波長合波手段の合分波比を制御する波長合分波制御手段と、を含み、
前記合分波比は、前記入射されるWDM信号の全波長帯に対する、前記波長分波手段において分波された各波長帯の帯域幅の比である、
光増幅器。
【請求項2】
コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるN個のシングルコア光増幅器である、ことを特徴とする請求項に記載の光増幅器(ただし、M=1、N≧M+1)。
【請求項3】
コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるコア数Nのマルチコア光増幅器であり、
クラッド一括励起手段を備える、ことを特徴とする請求項に記載の光増幅器(ただし、M=1、N≧M+1)。
【請求項4】
コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるコア数Nのマルチコア光増幅器であり、
クラッド一括励起手段を備える、ことを特徴とする請求項に記載の光増幅器(ただし、M>1、N≧M+1)。
【請求項5】
前記波長合分波制御手段は前記光増幅効率と利得ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項6】
前記波長合分波制御手段は前記光増幅効率とNF(Noise Figure)ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項7】
前記波長合分波制御手段は前記光増幅効率とG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項8】
コア数Mの伝送用光ファイバからWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号が入射される光増幅器の制御方法であって、
前記光増幅器が増幅したWDM信号の特定の波長帯の光信号をモニターし、
前記入射されるWDM信号の中から光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号を、モニター結果に応じた合分波比で分波し、
前記合分波比を、前記光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号に対しては相対的に大きい増幅率で増幅されるように制御し、
前記特定の波長帯の光信号と、前記特定の波長帯の光信号が分波された前記WDM信号とを別々に増幅した後に、前記特定の波長帯の光信号と前記特定の波長帯の光信号が分波された前記WDM信号とを前記合分波比によって合波して出力させ、
前記合分波比は、前記入射されるWDM信号の全波長帯に対する、分波された各波長帯の帯域幅の比である、
ことを特徴とする光増幅器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムに関し、特に光信号の信号強度を増幅する光ファイバ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の信号強度を増幅する光ファイバ増幅器としては、光信号が入力される希土類添加ファイバに、励起光源から出力される励起光を入力することで、光信号の信号強度を増幅するものがある。例えば希土類元素の一例としてのエルビウム(Er)がファイバのコア部分に添加された構造のものが知られている。
【0003】
光ファイバ通信において低損失波長帯域である1.55μm帯に用いられる光ファイバ増幅器は、ファイバのコア部分にエルビウムを添加した構造を有し、0.98μmあるいは1.48μm帯の励起光により光ファイバ中のエルビウムイオンを活性化し、エルビウムのもつ1.55μm帯のレーザ遷移を利用するもので、半導体レーザダイオード励起により1.55μm帯の信号光を充分に増幅するものである。
【0004】
光ファイバ増幅器は、高効率・高利得であり、利得がほぼ偏波無依存であることから光ファイバ通信システムの光信号中継用の増幅器として用いられている。光ファイバ通信システムにおいては、大容量通信を可能とすべく複数の波長を多重する波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送技術が採用され、増幅器では全チャネルを一括して増幅する。しかし、波長多重信号光(以下、WDM信号光と記載する)を伝送する光ファイバ伝送中継システムにおいては、光増幅器の利得が波長毎に異なるため、波長間で光信号の強度に差が生じてしまう。そのため、光信号の利得偏差を減少させる光利得等化用フィルタを組み込み、光中継器の出力に利得偏差が発生している場合には、この利得等化フィルタによって光増幅器で生じた利得偏差を等化し、良好な伝送品質が得られる状態に調整している。
【0005】
特許文献1では、光増幅器で生じた利得偏差を、利得等化フィルタによって等化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2020/137820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術の光増幅器では、伝送用光ファイバから入射されるWDM信号の波長充填率が高くなると波長間での信号利得ばらつきが大きくなる。そして、背景技術の光増幅器の実運用では、信号利得が最も低い波長においても所望利得を上回って光増幅されるように光増幅器が設定され、過剰増幅された波長帯の信号光は後段の利得等化器で減衰される。
【0008】
図面を参照して説明すると、図7の(b)に示すような、光伝送路に挿入された背景技術の光増幅器でWDM信号を増幅する場合には、図7の(a)に横線で示す所望利得を上回って光増幅されるように、また信号利得が最も低い波長においても所望利得を上回って光増幅されるように、光増幅器が設定される。こうして図7の(b)の光増幅器で増幅されたWDM信号の、図7の(c)の所望利得を上回っている部分は後段の利得等化器で減衰され、等化される。所望利得を上回っている部分を利得等化器で減衰させることは、エネルギー損失につながる。
【0009】
そのため、背景技術の光増幅器では、波長間ばらつきが大きく、過剰増幅される波長数が多い場合には、供給電力資源の利用が非効率になるという課題がある。光増幅効率に課題があるクラッド一括励起方式では、その影響は顕著である。
【0010】
したがって本発明の目的は、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減することができる、光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光増幅器は、入射されるWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を増幅する、増幅媒体からなる2以上のコアを有する光増幅器であって、
上記入射されるWDM信号を2以上の波長帯に分波し、上記2以上のコアに別々に導入する波長分波手段と、上記2以上のコアを伝播して増幅された光信号同士を合波して出力する波長合波手段と、増幅されたWDM信号の特定波長帯の増幅率や特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて上記入射されるWDM信号の中から光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号を分波し、上記光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号に対しては相対的に大きい増幅率で増幅されるように、上記波長分波手段による分波を制御する波長分波制御手段と、を含む。
【0012】
本発明の光伝送システムは、端局間を結ぶ伝送用光ファイバと、上記伝送用光ファイバに挿入され、上記伝送用光ファイバから上記WDM信号が入射される前記光増幅器と、を含む。
【0013】
本発明の光増幅器の制御方法は、コア数M(M≧1)の伝送用光ファイバからWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号が入射される光増幅器の制御方法であって、
上記光増幅器が増幅したWDM信号の特定の波長帯の光信号をモニターし、
モニター結果に応じて上記伝送用光ファイバから入射されるWDM信号から上記特定の波長帯の光信号を分波し、
上記特定の波長帯の光信号と、上記特定の波長帯の光信号が分波された上記WDM信号とを別々に増幅した後に、上記特定の波長帯の光信号と上記特定の波長帯の光信号が分波された上記WDM信号とを合波して出力させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減することができる、光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の第1実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図1B図1Aの波長合分波制御手段14のより具体的な構成を示した、第1実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図1C】本発明の第1実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。
図1D図1Cの光増幅器の制御方法を説明するためのフローチャートである。
図1E図1Cの波長合分波制御手段14のより具体的な構成を示した、第1実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。
図2A】本発明の第2実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図2B図2Aの波長合分波制御手段24のより具体的な構成を示した、第1実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図2C】本発明の第2実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。
図2D図2Cの波長合分波制御手段24のより具体的な構成を示した、第1実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。
図3A】本発明の第3実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図3B図3Aの波長合分波制御手段34のより具体的な構成を示したブロック図である。
図4A】本発明の実施形態による、増幅すべきWDM信号からの特定の波長帯の光信号の分波と、光増幅器による増幅と、増幅されたWDM信号の合波の考え方について、説明するための波形図である。
図4B】本発明の実施形態による、増幅すべきWDM信号からの特定の波長帯の光信号の分波と、光増幅器による増幅と、増幅されたWDM信号の合波の考え方について、説明するための波形図である。
図4C】特定波長帯の光信号のNFばらつきのモニターを説明するための、モニター手段14nのブロック図、及び波長利得特性、波長NF特性を示すグラフである。
図4D】特定波長帯の光信号のG-OSNRばらつきのモニターを説明するためのブロック図、及び波長利得特性、波長G-OSNR特性を示すグラフである。
図5】本発明の上位概念による実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。
図6】本発明の実施形態の光伝送システムを説明するための構成図である。
図7】(a)は背景技術のWDM信号の波長に対する光強度を示すグラフであり、(b)は背景技術の光増幅器を説明するための構成図であり、(a)は背景技術の光増幅器で増幅されたWDM信号の波長に対する光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
初めに、本発明の第1実施形態による光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムについて説明する。図1Aは、本発明の第1実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。本実施形態は、光増幅器としてマルチコア光ファイバ増幅器を想定する。本実施形態は光増幅器として、コア数M(ただしM=1)の伝送用光ファイバからWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号が入射されるコア数N(ただしN≧M+1)のマルチコア光ファイバ増幅器を想定して説明する。すなわち、コア数が1の伝送用光ファイバから、WDM信号が入射されるマルチコア光ファイバ増幅器を想定して説明する。なお、以降に説明する実施形態から理解されるように、本発明が適用される光増幅器はこの実施形態の構成に限られない。
【0018】
(実施形態の構成)
図1Aの光増幅器10は、図6に示される光伝送システムに用いられる。図6の光伝送システム100は、端局101aと端局101bとを結ぶ伝送用光ファイバ102と、この伝送用光ファイバ102に挿入される中継器103と、を含んで、構成される。この中継器103は、一つの伝送用光ファイバ102に複数挿入されることが一般的である。そして図1Aの光増幅器10は、図6の一つの中継器103に設けられ、伝送用光ファイバ102を伝播する光信号を増幅する。
【0019】
図1Aの光増幅器10は、コア数M(ただしM=1)の伝送用光ファイバ18と、伝送用光ファイバ18に挿入されたMC-EDFA(Multi-Core Erbium Doped optical Fiber Amplifier)11と、を含む。MC-EDFA11は、増幅媒体がコア数N(ただしN≧M+1)のマルチコア光ファイバ増幅器であり、コア数Mの伝送用光ファイバ18から入射されるWDM信号を増幅する。MC-EDFA11は、一つのクラッドの中に、N本のコアが配置されて構成されている。
【0020】
さらに図1Aの光増幅器10は、伝送用光ファイバ18から入射されるWDM信号の波長合分波手段を含む。このWDM信号の波長合分波手段は、制御信号に応じて分波する波長分波手段12と、波長分波手段12によって分波され、MC-EDFA11で別々に増幅された複数の光信号を制御信号に応じて合波する波長合波手段13と、を含む。波長合波手段13と波長分波手段12とは、同じ部品から構成されており、光信号の向きが異なることのみ相違していることから、波長合波手段13に与える制御信号は波長分波手段12に与える制御信号と同じものとすることができる。波長合波手段13を制御信号に応じて合波する構成とした場合、波長合波手段13を受動的に合波する構成としたものと比べて、合波時の挿入損失の波長依存性を低減できることが期待される。
【0021】
波長分波手段12や波長合波手段13は、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)や波長選択スイッチ(WSS)で構成することができる。WSSは、波長毎に異なる出力ポートに接続するポートスイッチ機能、波長毎に光強度レベルを調整するアッテネーション機能、波長多重機能、及び波長分離機能を含み、後述する合分波比を反映させてポートスイッチ機能やアッテネーション機能を制御することにより、実現することが考えられる。AWGは、1本の導波路を伝搬してきたWDM信号光を自由空間に放射、導波路長の異なる複数の導波路に伝搬させて位相差を生じさせた後に、干渉を利用してマルチプレクス或いはデマルチプレクスする光デバイスである。AWGでは、外部から熱、あるいは電界を印加して位相差を変化させることで、分岐比を可変にすることができ、この機能を適用することにより波長分波手段12や波長合波手段13を実現することが考えられる。
【0022】
なお、波長分波手段12とMC-EDFA11との間は、N本のシングルモードファイバ19(SMファイバ19)で接続され、MC-EDFA11と波長合波手段13との間は、N本のシングルモードファイバ19(SMファイバ19)で接続されている。さらに図1Aの光増幅器10は、波長合波手段13で合波され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じた制御信号を上記波長分波手段12及び波長合波手段13に供給する波長合分波制御手段14を含む。波長合分波制御手段14は、モニター結果に応じた制御の一例として、上記モニター結果に応じて波長分波手段12及び波長合波手段13のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更する。なおここで「合分波比」を、光増幅器に入射され増幅される、WDM信号に含まれる全波長帯に対する、波長分波手段12で分波された各波長帯の帯域幅の比として定義する。
【0023】
波長合分波制御手段14は、特定波長帯の増幅率をモニターする。或いは、波長合分波制御手段14は、特定波長帯の光増幅効率及び利得ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段14は、特定波長帯の光増幅効率及びNF(Noise Figure)ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段14は、特定波長帯の光増幅効率及びG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきをモニターする。G-OSNRは、光雑音及び定量化した非線形干渉雑音を考慮した光通信システムの品質評価パラメータである。特定波長帯のNFばらつきのモニターや、特定波長帯のG-OSNRばらつきのモニターについては、後述する〔その他の実施形態〕で改めて説明する。
【0024】
図1Aの光増幅器10の波長合分波制御手段14は、図1Bに示すように、モニター手段14m、ルックアップテーブル(LUT)14c、及び波長分波手段12及び波長合波手段13を制御するコントローラ14dを含んで構成される。モニター手段14mは、光増幅器10で増幅され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)14aと、BPF14aで抽出された特定の波長帯の光強度を検出するフォトディテクタ(PD)14bを含む。LUT14cには、後で図4Bを参照して説明する、光増幅器10で増幅され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号のうち特定の波長帯と、この特定の波長帯における「光増幅効率」とが対応付けられて保持されている。光増幅効率は、光増幅器10に固有の値である。コントローラ14dは、モニター手段14mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT14cに保持されLUT14cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを用いて、波長分波手段12及び波長合波手段13のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更する。
【0025】
(実施形態の動作)
本発明の各実施形態では、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば伝送用光ファイバ18から入射されるWDM信号のうち、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号とそれ以外の波長帯のWDM信号とを波長分波手段12によって分波し、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号に対してはより大きい利得で増幅した後、波長合波手段13で合波し再びWDM信号として伝送用光ファイバ18に出射する。
【0026】
ここで、伝送用光ファイバ18から光増幅器10へ入射される、増幅すべきWDM信号からの特定の波長帯の光信号の分波と、光増幅器10による増幅と、増幅されたWDM信号の合波の考え方について、説明する。図4Aの左側に、増幅すべきWDM信号の波長に対する光強度と、波長に対する光増幅器10の利得偏差の一例を示す。増幅すべきWDM信号に波長に対する光強度のばらつきがなく光強度が一定である場合を想定しても、光増幅器10で増幅された後のWDM信号には波長に対する光強度のばらつきが生じる。
【0027】
図4Aでは点線の横線で、光増幅器10に期待される所望利得を示す。光ファイバ増幅器では一般的に、波長に対して利得偏差があることが知られている。全体的な傾向としては、短波長帯の光信号に対しては利得が小さく、長波長帯の光信号に対しては利得が大きい傾向がある。本実施形態では、コントローラ14dは光増幅器10で増幅されるWDM信号を分波する合分波比を求める。この合分波比を求める際に、モニター手段14mがモニターした光増幅器10で増幅され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号のうち特定の波長帯の光信号とその光強度とのデータと、LUT14cに保持されLUT14cから読み出した特定の波長帯とその光増幅効率とのデータとを参照する。さらにコントローラ14dは上述した合分波比に応じて波長分波手段12へ分波を指示し、増幅すべきWDM信号を波長分波手段12は光増幅器10の利得が大きい波長帯の光信号と光増幅器10の利得が小さい波長帯の光信号とに分波する。
【0028】
そして、コア数NのMC-EDFA11のコア1とコア2とに上記利得が大きい波長帯の光信号と上記利得が小さい波長帯の光信号とを別々に供給して、別々に光増幅する。図4Aでは、光増幅器10の利得が小さい波長帯の光信号をMC-EDFA11のコア1に供給し、光増幅器10の利得が大きい波長帯の光信号をMC-EDFA11のコア2に供給する場合を示している。MC-EDFA11では、光増幅器10の利得が小さい波長帯の光信号は所望利得を超えるように、光増幅器10の利得が小さい波長帯以外の波長帯のWDM信号もまた所望利得を超えるように、別々のコアで増幅される。コア1では大きい増幅率が、コア2では比較的小さい増幅率が設定され、それぞれ光増幅する。
【0029】
さらにコア1、及びコア2で別々に増幅された光信号は、波長合波手段13で合波されて、伝送用光ファイバ18へ出射される。
【0030】
図4Aでは、伝送用光ファイバ18から光増幅器10に入射され、光増幅器10で増幅されるWDM信号を2つに分波した場合を示しているが、分波する数は2つに限られない。例えば、WDM信号を3つや4つに分波してもよい。この分波の考え方について、さらに図4Bを参照して説明する。図4Bの右上に、光増幅器の波長に対して利得偏差の特性を示す。図4Bで、横軸は増幅すべきWDM信号の波長を示し、縦軸は波長に対する光強度を示す。点線の横線で、光増幅器に期待される所望利得を示す。利得特性と所望利得との間の、網掛けされた部分の面積に着目する。ここで、「光増幅効率」を
(EDFからの出力信号光量-EDFへの入力信号光量)/EDFへ入射される励起光量×100
と定義する。光増幅器の光増幅効率と図示の網掛けされた部分の面積とを組み合わせた尺度として、(面積/光増幅効率)を想定する。この尺度が同じとなるWDM信号の波長帯で、WDM信号を分波する。例えば、面積が1かつ光増幅効率が1の波長帯の光信号と、面積が2かつ光増幅効率が2の波長帯の光信号とに分波する。図4Bの図示の場合には、WDM信号の短波長帯の光信号は面積が1かつ光増幅効率が1の波長帯の光信号であり、WDM信号の長波長帯の光信号は面積が2かつ光増幅効率が2の波長帯の光信号である。面積が1かつ光増幅効率が1の波長帯の光信号はMC-EDFA11のコア1へ供給され、面積が2かつ光増幅効率が2の波長帯の光信号はMC-EDFA11のコア2へ供給されると共に、クラッド一括励起方式で増幅され、さらに波長合波手段13で合波されて、伝送用光ファイバ18へ出射される。
【0031】
コア1で増幅されるWDM信号の波長帯の光信号の利得ばらつき、コア2で増幅されるWDM信号の波長帯の光信号の利得ばらつきが許容範囲内であるかを、波長合分波制御手段14は確認する。利得ばらつきが許容範囲内にはないときには、コア1で増幅されるWDM信号の波長帯の光信号をさらに分波して、例えばコア1と、コア1及びコア2とは別のコアであるコア3とに分波したり、コア2で増幅されるWDM信号の波長帯の光信号をさらに分波して、例えばコア2と、コア1乃至コア3とは別のコアであるコア4とに分波したりすることも考えられる。
【0032】
本実施形態のようなクラッド一括励起方式のマルチコア光増幅器の場合、WDM信号の波長充填率が小さいほど、光増幅器の増幅率が大きくなり、WDM信号の波長充填率が大きいほど、光増幅器の増幅率が小さくなる。なおここで、「波長充填率」とは、光増幅器で増幅される最も広い波長帯のWDM信号に対する、あるコアに入射され増幅されるWDM信号の波長帯の比率と定義する。図4Aが示す分波では、このような光増幅器の特性も考慮して、光増幅器10の利得が小さい波長帯としては狭い範囲を、光増幅器10の利得が大きい波長帯から分波している。これにより、光増幅器10の利得が小さい波長帯の光信号に対して、大きな増幅率が期待され、励起光の有効利用を図ることができる。
【0033】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば光増幅効率が大きい波長帯の光信号と光増幅効率が小さい波長帯の光信号とに分波した後に、MC-EDFA11の別々のコアで増幅することにより、波長帯毎に大きすぎずまた小さすぎないように、適切な増幅率で増幅することができる。これによって、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減した、マルチコア光ファイバ増幅器、マルチコア光ファイバ増幅器の制御方法及び光伝送システムを実現することができる。背景技術の光増幅器と比べて、光増幅器での消費電力を削減することができる。
【0034】
本実施形態では、波長合分波制御手段14は、増幅されたWDM信号をモニター、特に特定波長帯の増幅率をモニターするなどとして説明したが、波長合分波制御手段14がモニターする対象は特定波長帯の増幅率そのものには限られない。波長合分波制御手段14が、特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて波長分波手段12による分波及び波長合波手段13による合波を制御するように、構成することができる。なおここで増幅率につながる尺度としては、後述するNF(Noise Figure)、G-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)などが考えられる。
【0035】
〔第1実施形態の変形例〕
上述した図1Aの光増幅器10の波長合分波制御手段14は、波長合波手段13で合波され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じた制御信号を上記波長分波手段12及び上記波長合波手段13に供給しているが、MC-EDFA11のクラッド一括励起用の励起光源に対しても上記モニター結果に応じた制御信号を供給するように構成することも考えられる。クラッド一括励起方式の光ファイバ増幅器では、単一の励起光源からの励起光をクラッド内に伝播させて、クラッド内の複数のコアの信号光を一括増幅する。
【0036】
図1Cは、本発明の第1実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。図1Cの光増幅器10Bは、図1Aの光増幅器10の構成と比べて、MC-EDFA11がクラッド一括励起手段の一例として励起光源のレーザダイオード(LD)15をさらに含み、波長合分波制御手段14からLD15に対しても制御信号が供給される点が相違している。図1Cの光増幅器10Bでは波長合分波制御手段14が、波長合波手段13で合波され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じて上記波長分波手段12及び上記波長合波手段13のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更すると共に、MC-EDFA11のLD15の光量を設定、或いは変更するように制御する。
【0037】
図1Cの光増幅器の制御方法として、LD15の出力の調整について説明する。図1Dは、光増幅器の制御方法を説明するためのフローチャートである。MC-EDFA11に入射されるWDM信号の波長特性のうちで、最大利得が光増幅器10Bに期待される所望利得となるように、まずLD15の出力を調整する(ステップS1)。次に、波長合分波制御手段14が、利得が不足している波長をモニターする(ステップS2)。次に、図4Bに示す考え方で、「面積/該帯域での光増幅効率」が等しくなるような分離帯を、計算する(ステップS3)。なおここで「分離帯」とは、本実施形態の手法に沿って分波される複数の波長帯の境界の、波長、或いは数nmの幅の波長帯を指すものとする。図4Bの図示では、「コア1」と「コア2」との間に点線で示されている、波長、或いは波長帯を指すものとする。次に、ステップS3での計算結果に応じて、波長分波手段12が特定の波長帯の光信号を分波し、異なるコアに入射させる(ステップS4)。次に、最大利得が光増幅器10Bに期待される所望利得となるように、LD15の出力を調整する(ステップS5)。ステップS4の分波の結果、MC-EDFA11の波長帯ごとの利得が変化する可能性があるので、ステップS5でLD15の出力の調整(LD15出力の再調整)を行っている。次に、利得ばらつきが許容範囲内かどうかを判断する(ステップS6)。利得ばらつきが許容範囲内のとき(ステップS6のyes)は、波長特性のうち、最小利得が所望利得となるように、LD15の出力を調整(ステップS7)して、調整を終了する。利得ばらつきが許容範囲内にないとき(ステップS6のno)は、ステップS2に戻って調整を続ける。
【0038】
なお図1Cの光増幅器10Bの波長合分波制御手段14は、図1Eに示すように、モニター手段14m、ルックアップテーブル(LUT)14c、波長分波手段12及び波長合波手段13を制御するコントローラ14d、及びLD15を制御するコントローラ14eを含んで構成される。モニター手段14mは、光増幅器10で増幅され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)14aと、BPF14aで抽出された特定の波長帯の光強度を検出するフォトディテクタ(PD)14bを含む。BPF14aとPD14bとの対は、光増幅器10で増幅されるWDM信号のうちで特定の波長帯毎に利得をモニターするためのものであり、波長軸方向で複数個設けられるものとする。LUT14cには、MC-EDFA11の「光増幅効率」が保持されている。コントローラ14dは、モニター手段14mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT14cに保持されLUT14cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを用いて、波長分波手段12及び波長合波手段13のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更する。コントローラ14dは、モニター手段14mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT14cに保持されLUT14cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを元に、LD15の光量を制御する。
【0039】
図1Eに示す波長合分波制御手段14による、LD15の出力の調整について説明する。まずMC-EDFA11に入射されるWDM信号に含まれる全ての波長帯の光信号について、特定の波長帯の光信号の集まりとして波長に対する光強度を検出することにより、WDM信号の全体の利得をモニターする。具体的には、定波長間隔ごとに上記BPFを用いてモニターする。次に、図1DのステップS1のように、波長特性のうちで、最大利得が光増幅器10Bに期待される所望利得となるように、まずLD15の出力を調整する。次に、図1DのステップS2のように、利得が不足している波長をモニターする。ここでは、定波長間隔ごとに上記BPFを用いてモニターする。次に、図1DのステップS3のように、「面積/該帯域での光増幅効率」が等しくなるような分離帯を、計算する。MC-EDFA11の光増幅効率は、EDF長で決まり、事前に記憶している。次に、図1DのステップS4のように、ステップS3での計算結果に応じて、波長分波手段12が特定の波長帯の光信号を分波し、異なるコアに入射させる。図1DのステップS5のように、最大利得が光増幅器10Bに期待される所望利得となるように、LD15の出力を調整する。次に、図1DのステップS6のように、利得ばらつきが許容範囲内かどうかを判断する。利得ばらつきが許容範囲内のときは、波長特性のうち、最小利得が所望利得となるように、LD15の出力を調整して、調整を終了する。図1DのステップS6のnoのように、利得ばらつきが許容範囲内にないときは、図1DのステップS1のように戻って調整を続ける。
【0040】
図1Cに示される、本発明の第1実施形態の光増幅器の変形例によれば、波長合波手段13で合波され伝送用光ファイバ18に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じて上記波長分波手段12及び上記波長合波手段13のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更すると共に、MC-EDFA11のLD15の光量を設定、或いは変更するように制御している。これにより、例えば光増幅効率が大きい波長帯の光信号と光増幅効率が小さい波長帯の光信号とに分波して別々のコアで増幅し、その際に各コアへ至るLD15からの励起光による励起効果をLD15の光量で調整することができる。その結果、MC-EDFA11による波長毎の利得偏差をより小さくしつつ、クラッド一括励起のための光量を最適化して消費電力をより一層低減することができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムについて説明する。図2Aは、本発明の第2実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。本実施形態は、光増幅器として第1実施形態と同様なマルチコア光ファイバ増幅器を想定する。ただし、第1実施形態ではコア数が1の伝送用光ファイバからWDM信号(Wavelength Division Multiplexing)が入射されるマルチコア光ファイバ増幅器を想定しているのに対し、本実施形態では光増幅器として、コア数M(ただしM>1)の伝送用光ファイバからWDM信号が入射されるコア数N(ただしN≧M+1)のマルチコア光ファイバ増幅器を想定して説明する。なお、以降に説明する実施形態から理解されるように、本発明が適用される光増幅器はこの実施形態の構成に限られない。
【0042】
(実施形態の構成)
図2Aの光増幅器20は、第1実施形態と同様に、図6に示される光伝送システムに用いられる。図6の光伝送システム100は、端局101aと端局101bとを結ぶ伝送用光ファイバ102と、この伝送用光ファイバ102に挿入される中継器103と、を含んで、構成される。この中継器103は、一つの伝送用光ファイバ102に複数挿入されることが一般的である。そして図2Aの光増幅器20は、図6の一つの中継器103に設けられ、伝送用光ファイバ102を伝播する光信号を増幅する。光伝送システムの伝送用光ファイバは、マルチコアで構成されることが一般的である。本実施形態は、このようなマルチコアの伝送用光ファイバに挿入される光増幅器を想定して説明する。
【0043】
図2Aの光増幅器20は、コア数M(ただしM>1)の伝送用光ファイバ28と、伝送用光ファイバ28に挿入されたMC-EDFA(Multi-Core Erbium Doped optical Fiber Amplifier)21と、を含む。MC-EDFA21は第1実施形態と同様に、増幅媒体がコア数N(ただしN≧M+1)のマルチコア光ファイバ増幅器であり、コア数Mの伝送用光ファイバ28から入射されるWDM信号を増幅する。MC-EDFA21は、一つのクラッドの中に、N本のコアが配置されて構成されている。
【0044】
さらに図2Aの光増幅器20は、伝送用光ファイバ28から入射されるWDM信号の合分波手段を含む。このWDM信号の合分波手段は、制御信号に応じて分波する波長分波手段22と、波長分波手段22によって分波され、MC-EDFA21で別々に増幅された複数の光信号を制御信号に応じて合波する波長合波手段23と、を含む。波長分波手段22や波長合波手段23は、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)や波長選択スイッチ(WSS)で構成することができる。
【0045】
なお、波長分波手段22とMC-EDFA21との間は、N本のシングルモードファイバ29(SMファイバ29)で接続され、MC-EDFA21と波長合波手段23との間は、N本のシングルモードファイバ29(SMファイバ29)で接続されている。さらに図2Aの光増幅器20は、波長合波手段23で合波され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じた制御信号を上記波長分波手段22及び波長合波手段23に供給する波長合分波制御手段24を含む。
【0046】
波長合分波制御手段24は、特定波長帯の増幅率をモニターする。或いは、波長合分波制御手段24は、特定波長帯の光増幅効率及び利得ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段24は、特定波長帯の光増幅効率及びNF(Noise Figure)ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段24は、特定波長帯の光増幅効率及びG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきをモニターする。
【0047】
図2Aの光増幅器20の波長合分波制御手段24は、図2Bに示すように、モニター手段24m、ルックアップテーブル(LUT)24c、及び波長分波手段22及び波長合波手段23を制御するコントローラ24dを含んで構成される。モニター手段24mは、光増幅器20で増幅され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)24aと、BPF24aで抽出された特定の波長帯の光強度を検出するフォトディテクタ(PD)24bを含む。LUT24cには、MC-EDFA21の「光増幅効率」が保持されている。コントローラ24dは、モニター手段24mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT24cに保持されLUT24cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを用いて、波長分波手段22及び波長合波手段23のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更する。
【0048】
本発明の各実施形態では、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば伝送用光ファイバ28から入射されるWDM信号のうち、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号とそれ以外の波長帯のWDM信号とを波長分波手段22によって分波し、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号に対してはより大きい利得で増幅した後、波長合波手段23で合波し再びWDM信号として伝送用光ファイバ28に出射する。分波の考え方や、増幅の考え方は、上述した第1実施形態での説明と同様である。
【0049】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば光増幅効率が大きい波長帯の光信号と光増幅効率が小さい波長帯の光信号とに分波した後に、MC-EDFA21の別々のコアで増幅することにより、波長帯毎に大きすぎずまた小さすぎないように、適切な増幅率で増幅することができる。これによって、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減した、マルチコア光ファイバ増幅器、マルチコア光ファイバ増幅器の制御方法及び光伝送システムを実現することができる。背景技術の光増幅器と比べて、光増幅器での消費電力を削減することができる。
【0050】
本実施形態では、波長合分波制御手段24は、増幅されたWDM信号をモニター、特に特定波長帯の増幅率をモニターするなどとして説明したが、波長合分波制御手段24がモニターする対象は特定波長帯の増幅率そのものには限られない。波長合分波制御手段24が、特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて波長分波手段22による分波及び波長合波手段23による合波を制御するように、構成することができる。
【0051】
〔第2実施形態の変形例〕
上述した図2Aの光増幅器20の波長合分波制御手段24は、波長合波手段23で合波され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じた制御信号を上記波長分波手段22及び上記波長合波手段23に供給しているが、MC-EDFA21のクラッド一括励起用の励起光源に対しても上記モニター結果に応じた制御信号を供給するように構成することも考えられる。クラッド一括励起方式の光ファイバ増幅器では、単一の励起光源からの励起光をクラッド内に伝播させて、クラッド内の複数のコアの信号光を一括増幅する。
【0052】
図2Cは、本発明の第2実施形態の光増幅器の変形例を説明するための構成図である。図2Cの光増幅器20Bは、図2Aの光増幅器20の構成と比べて、MC-EDFA21がクラッド一括励起手段の一例として励起光源のレーザダイオード(LD)25をさらに含み、波長合分波制御手段24からLD25に対しても制御信号が供給される点が相違している。図2Cの光増幅器20Bでは波長合分波制御手段24が、波長合波手段23で合波され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じて上記波長分波手段22及び上記波長合波手段23のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更すると共に、MC-EDFA21のLD25の光量を設定、或いは変更するように制御する。
【0053】
なお図2Cの光増幅器20Bの波長合分波制御手段24は、図2Dに示すように、モニター手段24m、ルックアップテーブル(LUT)24c、波長分波手段22及び波長合波手段23を制御するコントローラ24d、及びLD25を制御するコントローラ24eを含んで構成される。モニター手段24mは、光増幅器20で増幅され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)24aと、BPF24aで抽出された特定の波長帯の光強度を検出するフォトディテクタ(PD)24bを含む。LUT24cには、MC-EDFA21の「光増幅効率」が保持されている。コントローラ24dは、モニター手段24mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT24cに保持されLUT24cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを用いて、波長分波手段22及び波長合波手段23のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更する。コントローラ24dは、モニター手段24mが抽出した特定の波長帯の光信号の利得と、LUT24cに保持されLUT24cから読み出した特定の波長帯の光増幅効率とを元に、LD25の光量を制御する。
【0054】
図2Cに示される、本発明の第2実施形態の光増幅器の変形例によれば、波長合波手段23で合波され伝送用光ファイバ28に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じて上記波長分波手段22及び上記波長合波手段23のWDM信号に対する合分波比を設定、或いは変更すると共に、MC-EDFA21のLD25の光量を設定、或いは変更するように制御している。これにより、MC-EDFA21による波長毎の利得偏差をより小さくしつつ、クラッド一括励起のための光量を最適化して消費電力をより一層低減することができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態による光増幅器、光増幅器の制御方法及び光伝送システムについて説明する。上述した第1実施形態及び第2実施形態では、コア数Mの伝送用光ファイバに対して、増幅媒体がコア数N(ただしN≧M+1)のマルチコア光ファイバ増幅器を用い、本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、マルチコア光ファイバ増幅器ではなく、シングルコア光ファイバ増幅器を用いて、本発明を実現することができる。
【0056】
図3Aは、本発明の第3実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。本実施形態は光増幅器として、コア数M(ただしM=1)の伝送用光ファイバからWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号が入射されるN個(ただしN≧M+1)のシングルコア光ファイバ増幅器を想定して説明する。
【0057】
図3Aの光増幅器30は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、図6に示される光伝送システムに用いられる。図6の光伝送システム100は、端局101aと端局101bとを結ぶ伝送用光ファイバ102と、この伝送用光ファイバ102に挿入される中継器103と、を含んで、構成される。この中継器103は、一つの伝送用光ファイバ102に複数挿入されることが一般的である。そして図3Aの光増幅器30は、図6の一つの中継器103に設けられ、伝送用光ファイバ102を伝播する光信号を増幅する。
【0058】
図3Aの光増幅器30は、コア数M(ただしM=1)の伝送用光ファイバ38と、伝送用光ファイバ38に挿入されたN個(ただしN≧M+1)のシングルコアEDFA(Erbium Doped optical Fiber Amplifier)31と、を含む。本実施形態のシングルコアEDFA31はそれぞれが、増幅媒体がコア数1のシングルコア光ファイバ増幅器であり、コア数Mの伝送用光ファイバ38から入射されるWDM信号または光信号を増幅する。シングルコアEDFA31は、一つのクラッドの中に、1本のコアが配置されて構成されている。
【0059】
さらに図3Aの光増幅器30は、伝送用光ファイバ38から入射されるWDM信号の合分波手段を含む。このWDM信号の合分波手段は、制御信号に応じて分波する波長分波手段32と、波長分波手段32によって分波され、複数のシングルコアEDFA31で別々に増幅された複数の光信号を制御信号に応じて合波する波長合波手段33と、を含む。波長分波手段32や波長合波手段33は、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)や波長選択スイッチ(WSS)で構成することができる。
【0060】
なお、波長分波手段32とN個のシングルコアEDFA31との間は、N本のシングルモードファイバ39(SMファイバ39)で接続され、N個のシングルコアEDFA31と波長合波手段33との間は、N本のシングルモードファイバ39(SMファイバ39)で接続されている。さらに図3Aの光増幅器30は、波長合波手段33で合波され伝送用光ファイバ38に出射されるWDM信号をモニターし、モニター結果に応じた制御信号を上記波長分波手段32及び波長合波手段33に供給する波長合分波制御手段34を含む。
【0061】
波長合分波制御手段34は、特定波長帯の増幅率をモニターする。或いは、波長合分波制御手段34は、特定波長帯の光増幅効率及び利得ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段34は、特定波長帯の光増幅効率及びNF(Noise Figure)ばらつきをモニターする。また或いは、波長合分波制御手段34は、特定波長帯の光増幅効率及びG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきをモニターする。
【0062】
図3Aの光増幅器30の波長合分波制御手段34は図3Bに示すように、第1実施形態の図1Bや、第2実施形態の図2Bと同様に、モニター手段34m、ルックアップテーブル(LUT)34c、及び波長分波手段32及び波長合波手段33を制御するコントローラ34dを含んで構成することができる。モニター手段34mは、第1実施形態の図1Bや、第2実施形態の図2Bと同様に、光増幅器30で増幅され伝送用光ファイバ38に出射されるWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)34aと、BPF34aで抽出された特定の波長帯の光強度を検出するフォトディテクタ(PD)34bを含む。
【0063】
本発明の各実施形態では、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば伝送用光ファイバ38から入射されるWDM信号のうち、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号とそれ以外の波長帯のWDM信号とを波長分波手段32によって分波し、利得が低い波長帯のWDM信号または光信号に対してはより大きい利得で増幅した後、波長合波手段33で合波し再びWDM信号として伝送用光ファイバ38に出射する。分波の考え方や、増幅の考え方は、クラッド一括励起方式ではない点を除いて、上述した第1実施形態での説明と同様である。
【0064】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、利得が波長毎に異なる傾向にある光増幅器に対し、例えば光増幅効率が大きい波長帯の光信号と光増幅効率が小さい波長帯の光信号とに分波して別々のシングルコアEDFA31で増幅することにより、波長帯毎に大きすぎずまた小さすぎないように、適切な増幅率で増幅することができる。これによって、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減した、光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法及び光伝送システムを実現することができる。背景技術の光増幅器と比べて、光増幅器での消費電力を削減することができる。
【0065】
本実施形態では、波長合分波制御手段34は、増幅されたWDM信号をモニター、特に特定波長帯の増幅率をモニターするなどとして説明したが、波長合分波制御手段34がモニターする対象は特定波長帯の増幅率そのものには限られない。波長合分波制御手段34が、特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて波長分波手段32による分波及び波長合波手段33による合波を制御するように、構成することができる。
【0066】
〔上位概念の実施形態〕
上述した第1実施形態乃至第3実施形態を上位概念化した、本発明の上位概念の実施形態による光増幅器を説明する。図5は、本発明の上位概念による実施形態の光増幅器を説明するための構成図である。図5の光増幅器50は、入射されるWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を増幅する、増幅媒体からなる2以上のコア55を有する光増幅器である。ここで増幅媒体は、エルビウムドープ光ファイバなどの不純物ドープ光ファイバである。この増幅媒体からなる2以上のコア55を有する光増幅器は、上述した第1実施形態及び第2実施形態のようなマルチコア光増幅器で構成することもでき、また第3実施形態のような複数のシングルコア光増幅器で構成することもできる。
【0067】
図5の光増幅器50はさらに、上記入射されるWDM信号を2以上の波長帯の光信号に分波し、上記2以上のコア55に別々に導入する波長分波手段56と、上記2以上のコア55を伝播して増幅された光信号同士を合波して出力する波長合波手段57と、を含む。図5の光増幅器50はさらに、増幅されたWDM信号をモニターし、モニター結果に応じて上記波長分波手段56を制御する波長分波制御手段58を含む。
【0068】
本実施形態の光増幅器50によれば、供給電力資源の利用効率性を向上させつつ、信号利得の波長依存性を低減することができる、光増幅器を提供することができる。その理由は、増幅されたWDM信号をモニターし、波長分波手段56でWDM信号を複数の波長帯に分波した後に、別々のコア55で増幅し、増幅された光信号同士を合波しているからである。増幅されたWDM信号のモニターの際には、特定波長帯の増幅率をモニターする、或いは特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターする。分波の際にはモニター結果に応じて、入射されるWDM信号から上記特定波長帯の光信号を分波する。例えば、光増幅効率が小さい波長帯の光信号とそれ以外の波長帯の光信号とのように、或いは光増幅効率が小さい波長帯の光信号と光増幅効率が大きい波長帯とのように、モニター結果に応じてWDM信号を複数の波長帯に分波している。また別々のコア55で増幅する際に、光増幅効率が小さい波長帯の光信号については相対的により大きい増幅率で増幅している。このように、別々のコア55で増幅することにより、光増幅器は、波長帯毎に大きすぎずまた小さすぎないように、適切な増幅率で増幅することが可能になるからである。
【0069】
〔その他の実施形態〕
第1実施形態で波長合分波制御手段14は、特定波長帯の増幅率をモニターする、或いは特定波長帯の光増幅効率及び利得ばらつきをモニターするとして説明したが、これに限られない。波長合分波制御手段14は、特定波長帯の光増幅効率及びNF(Noise Figure)ばらつきをモニターするように構成することも考えられる。或いは、波長合分波制御手段14は、特定波長帯の光増幅効率及びG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきをモニターするように構成することも考えられる。
【0070】
図4Cは、特定波長帯のNFばらつきのモニターを説明するための、モニター手段14nのブロック図、及び波長利得特性、波長NF特性を示すグラフである。特定波長帯の光増幅効率及びNFばらつきをモニターする場合、図1Bの波長合分波制御手段14のモニター手段14mに代えて、図4Cの上側に示すモニター手段14nを用いる。このモニター手段14nは、第1実施形態のモニター手段14mと同様に、増幅されるWDM信号に含まれる波長帯を想定して、複数個設けられる。図4Cのモニター手段14nは、増幅されたWDM信号から特定の波長帯の光信号を抽出するBPF14gと、BPF14gが抽出した波長帯の光信号強度をモニターするPD14hと、偏光子14iと、ASE(Amplified Spontaneous Emission)強度をモニターするPD14jと、を含む。ASE強度を、光信号の偏波と直交する偏光子14iで光信号を除去し、強度値を2倍することで測定する(偏波ヌリング法)。こうして、光増幅器の後段のG-OSNRを求めることができる。
【0071】
NFばらつきをモニターするためには、光増幅器の前段にも図4Cのモニター手段14nを設ける。光増幅器の後段でのG-OSNRと、光増幅器の前段でのG-OSNRとの差から、光増幅器のNFを取得する。
【0072】
図4Cの下側に、光増幅器の波長利得特性と、波長NF特性とを示す。波長NF特性の波形は、点線で示すある利得水準を中心として波長利得特性のデータを反転させたような相関がある。利得が大きい波長帯の光信号ではNFは小さく、利得が小さい波長帯の光信号ではNFは大きい。この関係を考慮して、NFが大きい波長帯の光信号と、NFが小さい波長帯の光信号とに分波した後に、それぞれ別々のコアで増幅する。また、図4A及び図4Bで説明したような尺度「面積/光増幅効率」を考慮して、「面積/光増幅効率」が等しくなる分離帯を計算し、分波した後に、それぞれ別々のコアで増幅するように構成する。
【0073】
図4Dは、特定波長帯のG-OSNRばらつきのモニターを説明するためのブロック図、及び波長利得特性、波長G-OSNR特性を示すグラフである。
【0074】
特定波長帯の光増幅効率及びG-OSNRばらつきをモニターする場合、図1Bの波長合分波制御手段14のモニター手段14mを設けるのに代えて、光伝送システムの受信側の端局の受信器でG-OSNRをモニターする。端局間を結ぶ伝送用光ファイバに、複数の中継器が挿入されて構成された光伝送システムの場合、図4Dの上側に示すブロック図の受信側の端局の受信器52から、各中継器の光増幅器10にG-OSNRのモニター結果が送信される。受信側の端局の受信器52では、送信側の端局の送信器51から送信され、直列接続された複数の光増幅器10を伝搬したWDM信号がデマルチプレクスされた後、波長ごとに受信される。受信側の端局の受信器52では、この受信信号のS/Nレベルを再度波長軸に沿って並べて、取得したモニター値として各光増幅器10へと送る。
【0075】
図4Dの下側に、光増幅器の波長利得特性と、波長G-OSNR特性とを示す。波長G-OSNR特性の波形は、波長利得特性の波形と同様になる。G-OSNRが大きい波長帯の光信号と、G-OSNRが小さい波長帯の光信号とに分波した後に、それぞれ別々のコアで増幅する。また、図4A及び図4Bで説明したような尺度「面積/光増幅効率」を考慮して、「面積/光増幅効率」が等しくなる分離帯を計算し、分波した後に、それぞれ別々のコアで増幅するように構成する。
【0076】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0077】
例えば、本発明の各実施形態の波長分波手段及び上記波長合波手段のWDM信号に対する合分波比は、固定として設計してもよいし、可変できるように設計してもよい。光伝送システムで伝送用光ファイバを介して伝送されるWDM信号の波長帯が変更されない運用の場合には、合分波比を変更しなくてもよいため、上記合分波比は固定として設計してもよい。伝送用光ファイバに、本発明の実施形態の光増幅器が複数挿入されて運用される光伝送システムにおいては、各光増幅器の波長分波手段及び上記波長合波手段のWDM信号に対する合分波比がお互いに同じ値に設計することも考えられる。また伝送用光ファイバに、本発明の実施形態の光増幅器が複数挿入されて運用される光伝送システムにおいて、1つの光増幅器の波長分波手段及び上記波長合波手段のWDM信号に対する合分波比が他の光増幅器のうちの1つの光増幅器の波長分波手段及び上記波長合波手段のWDM信号に対する合分波比と異なるように設計することも考えられる。
【0078】
本発明の各実施形態の波長分波手段及び上記波長合波手段のWDM信号に対する合分波比の設定は、光伝送システムの運用を開始する前に1回だけ行うことも考えられ、また光伝送システムの運用開始後に定期的にまたは不定期的に行うことも考えられる。
【0079】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)入射されるWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を増幅する、増幅媒体からなる2以上のコアを有する光増幅器であって、
前記入射されるWDM信号を2以上の波長帯の光信号に分波し、前記2以上のコアに別々に導入する波長分波手段と、前記2以上のコアを伝播して増幅された光信号同士を合波して出力する波長合波手段と、増幅されたWDM信号の特定波長帯の増幅率や特定波長帯の増幅率につながる尺度をモニターし、モニター結果に応じて前記入射されるWDM信号の中から光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号を分波し、前記光増幅効率が相対的に小さい波長帯の光信号に対しては相対的に大きい増幅率で増幅されるように、前記波長分波手段による分波を制御する波長分波制御手段と、を含む光増幅器。
(付記2)前記波長分波制御手段は、前記モニター結果に応じて前記波長分波手段による分波及び前記波長合波手段による合波を制御する波長合分波制御手段である、ことを特徴とする付記1に記載の光増幅器。
(付記3)コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるN個のシングルコア光増幅器である、ことを特徴とする付記2に記載の光増幅器(ただし、M=1、N≧M+1)。
(付記4)コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるコア数Nのマルチコア光増幅器であり、
クラッド一括励起手段を備える、ことを特徴とする付記2に記載の光増幅器(ただし、M=1、N≧M+1)。
(付記5)コア数Mの伝送用光ファイバから前記WDM信号が入射されるコア数Nのマルチコア光増幅器であり、
クラッド一括励起手段を備える、ことを特徴とする付記2に記載の光増幅器(ただし、M>1、N≧M+1)。
(付記6)前記波長合分波制御手段は光増幅効率と利得ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする付記3~5のいずれか一つに記載の光増幅器。
(付記7)前記波長合分波制御手段は光増幅効率とNF(Noise Figure)ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする付記3~5のいずれか一つに記載の光増幅器。
(付記8)前記波長合分波制御手段は光増幅効率とG-OSNR(Generalized Optical Signal to Noise Ratio)ばらつきとをモニターし、入射される前記WDM信号を複数の増幅器、または増幅器の複数のコアに合分波する、ことを特徴とする付記3~5のいずれか一つに記載の光増幅器。
(付記9)前記波長分波手段及び前記波長合波手段の合分波比を固定値とする、ことを特徴とする付記3~5のいずれか一つに記載の光増幅器。
(付記10)伝送用光ファイバと、前記伝送用光ファイバに挿入された複数の、付記6~9のいずれか一つに記載の光増幅器と、を含み、
前記複数の光増幅器の前記波長分波手段及び前記波長合波手段の合分波比がお互いに同じ値である、ことを特徴とする光伝送システム。
(付記11)伝送用光ファイバと、前記伝送用光ファイバに挿入された複数の、付記6~9のいずれか一つに記載の光増幅器と、を含み、
前記複数の光増幅器の前記波長分波手段及び前記波長合波手段の合分波比が1つ以上異なる、ことを特徴とする光伝送システム。
(付記12)コア数Mの伝送用光ファイバからWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号が入射される光増幅器の制御方法であって、
前記光増幅器が増幅したWDM信号の特定の波長帯の光信号をモニターし、
モニター結果に応じて前記伝送用光ファイバから入射されるWDM信号から前記特定の波長帯の光信号を分波し、
前記特定の波長帯の光信号と、前記特定の波長帯の光信号が分波された前記WDM信号とを別々に増幅した後に、前記特定の波長帯の光信号と前記特定の波長帯の光信号が分波された前記WDM信号とを合波して出力させる、ことを特徴とする光増幅器の制御方法。
【符号の説明】
【0080】
10、10B、20、20B、30 光増幅器
11、21 MC-EDFA
12、22、32 波長分波手段
13、23、33 波長合波手段
14、24、34 波長合分波制御手段
14a、24a BPF
14b、24b PD
14c、24c LUT
14d、14e、24d、24e コントローラ
14m、24m、34m モニター手段
15、25 LD
18、28、38 伝送用光ファイバ
19、29、39 SMファイバ
31 シングルコアEDFA
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7