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特許7593421電気機器、電池パック、電気機器本体、及びアダプタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電気機器、電池パック、電気機器本体、及びアダプタ
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20241126BHJP
   H01M 50/269 20210101ALI20241126BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20241126BHJP
   H01M 50/247 20210101ALI20241126BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B25F5/00 H
B25F5/00 C
H01M50/269
H01M50/244 Z
H01M50/247
H02J7/00 K
H02J7/00 302C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022581235
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048539
(87)【国際公開番号】W WO2022172633
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021020551
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021178365
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】高野 信宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/129171(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079723(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066904(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
H01M 50/244
H01M 50/247
H01M 50/269
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのセルユニットと、
前記3つのセルユニットの相互接続状態を切替え可能な切替え部と、を有し、
前記切替え部は、前記3つのセルユニットの相互接続状態を、
前記3つのセルユニットが全て並列接続となる状態と、
前記3つのセルユニットが全て直列接続となる状態と、
前記3つのセルユニットのうち2つのセルユニットが並列接続で当該2つのセルユニットに対して前記3つのセルユニットのうち他の1つのセルユニットが直列接続となる状態、又は、前記3つのセルユニットのうち2つのセルユニットが直列接続で当該2つのセルユニットに対して前記3つのセルユニットのうち他の1つのセルユニットが非接続となる状態と、に切替え可能である、電池パック。
【請求項2】
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を有し、
前記複数の電池パックは、前記複数のセルユニットとして少なくとも第1セルユニット及び第2セルユニットを有し、前記第1セルユニット及び前記第2セルユニットの正極と負極が独立した出力端子に割り当てられ、
複数の前記電池パックのうち、一つの前記電池パックの第1セルユニットと第2セルユニットを並列接続とし、残りの前記電池パックの第1セルユニットと第2セルユニットを直列接続とし、
前記並列接続と前記直列接続を、さらに直列に接続することを特徴とする電気機器。
【請求項3】
前記直列接続部は、前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない少なくとも2つの他のセルユニットを互いに直列に接続することを特徴とする請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記電気機器本体は、前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部を含んで構成され、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と、出力端子を含んで構成され、
前記電気機器本体に、前記並列接続部と前記直列接続部を形成する配線手段を内蔵することを特徴とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気機器。
【請求項5】
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を有し、
前記複数の電池パックとして第1の電池パックと第2の電池パックを用い、
前記電気機器本体は前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックはセルユニットを並列に接続することを特徴とする電気機器。
【請求項6】
前記電気機器本体は、前記電池パックを装着するための電池パック装着部と、前記電池パック装着部から着脱可能であって前記電池パック装着部へ複数の前記電池パックを接続可能とするアダプタ部と、を含んで構成され、
前記アダプタ部に、前記並列接続部と前記直列接続部を形成する配線手段を内蔵することを特徴とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気機器。
【請求項7】
前記電気機器本体は、前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部を有し、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と電力端子が形成され、
前記電気機器本体に、複数の電力端子群の接続を並列または直列に切り替えるための複数のスイッチを設け、
前記電気機器本体に格納された制御部によって前記スイッチの接続形態を切り替えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気機器。
【請求項8】
前記制御部は、前記スイッチを切り替えることによって複数の前記電池パックのうち、直列接続状態で出力させる側と、並列接続状態で出力させる側を選択することを特徴とする請求項に記載の電気機器。
【請求項9】
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部と、
を有し、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と電力端子が形成され、
前記電気機器本体に、複数の電力端子群の接続を並列または直列に切り替えるための複数のスイッチを設け、
前記電気機器本体に格納された制御部によって前記スイッチの接続形態を切り替え、
前記電気機器本体は、トリガスイッチを有して先端工具を駆動する電動工具であって、
前記制御部は、前記スイッチを切り替えることによって複数の前記電池パックのうち、直列接続状態で出力させる側と、並列接続状態で出力させる側を選択し、前記トリガスイッチがオフ状態においてのみ切り替えを行うことを特徴とする電気機器。
【請求項10】
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部と、
を有し、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と電力端子が形成され、
前記電気機器本体に、複数の電力端子群の接続を並列または直列に切り替えるための複数のスイッチを設け、
前記電気機器本体に格納された制御部によって前記スイッチの接続形態を切り替え、
複数のセルユニットの電池残量または電圧を検出可能な検出部を設け、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直列に接続するセルユニットと、前記並列に接続するセルユニットを選択することを特徴とする電気機器。
【請求項11】
前記検出部が前記複数のセルユニットに異なる電圧のセルユニットが含まれていることを検出すると、前記制御部は、電圧の異なるセルユニット同士を直列に接続することを特徴とする請求項10に記載の電気機器。
【請求項12】
複数のセルユニットを有する第1の電池パック及び第2の電池パックが同時に装着可能な電気機器本体であって、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を備え
前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックのセルユニットを並列に接続することを特徴とする電気機器本体。
【請求項13】
複数のセルユニットを有する第1の電池パック及び第2の電池パックが同時に装着可能で電気機器本体に対して着脱可能なアダプタであって、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を備え
前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックのセルユニットを並列に接続することを特徴とするアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルユニットを有する電池パック及びそれを電源とする電気機器、電気機器本体、並びに複数の電池パックを電源として稼働する電気機器、電気機器本体、及びアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器が、二次電池を用いた電池パックにて駆動されるようになり、電気機器のコードレス化が進んでいる。また、電気機器の高出力化に伴い、電池パックの大容量化、高電圧化が進んでいる。特許文献1では、出力電圧を切り替え可能として、異なる電圧の電気機器間で共用できるようにした電圧切り替え型電池パックと、そのような電圧切り替え電池パックを使用する電気機器が開示されている。また、特許文献2では、電池パックを複数個用いて、複数の電池パックを直列又は並列接続することによって、高い電圧、大容量を実現した電源装置が開示されている。また、特許文献3では、2つのセルユニットを有して2種類の電圧を出力可能な電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-4631号公報
【文献】特開2014-50234号公報
【文献】特開2019-21603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池パックは、18Vと36Vの2つの電池パックを出力可能であるが、これらの電圧以外の出力を得ることができない。また、特許文献2の電源装置では、複数の電池パックを直列接続することでのそれらの合計の出力が得ることができる。しかしながら、電池パック電圧の整数倍以外の電圧の出力を得ることはできない。例えば、定格電圧36Vの電池パックを2つ用いた場合には定格電圧72Vの出力は得られるが、それ以外の電圧を出力させることはできなかった。
【0005】
本発明は、下記の課題1~4の少なくともいずれかの解決を目的とする。
・課題1…出力の多様化が可能な電池パック電気機器、電気機器本体、及びアダプタを提供すること。
・課題2…複数の電池パックの最大定格電圧の整数倍以外の電圧の出力を可能とした電気機器、電気機器本体、及びアダプタを提供すること。
・課題3…複数の電池パックを接続する電気機器の本体側に入力される電圧を調整可能とすること。
・課題4…低電圧と高電圧の出力を可能とした電圧切替型電池パックを複数用いて、それぞれの取り出し電圧を変えることができる電気機器、電気機器本体、及びアダプタを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、
3つのセルユニットと、
前記3つのセルユニットの相互接続状態を切替え可能な切替え部と、を有し、
前記切替え部は、前記3つのセルユニットの相互接続状態を、
前記3つのセルユニットが全て並列接続となる状態と、
前記3つのセルユニットが全て直列接続となる状態と、
前記3つのセルユニットのうち2つのセルユニットが並列接続で当該2つのセルユニットに対して前記3つのセルユニットのうち他の1つのセルユニットが直列接続となる状態、又は、前記3つのセルユニットのうち2つのセルユニットが直列接続で当該2つのセルユニットに対して前記3つのセルユニットのうち他の1つのセルユニットが非接続となる状態と、に切替え可能である、電池パックである
【0009】
本発明の別の態様は
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を有し、
前記複数の電池パックは、前記複数のセルユニットとして少なくとも第1セルユニット及び第2セルユニットを有し、前記第1セルユニット及び前記第2セルユニットの正極と負極が独立した出力端子に割り当てられ、
複数の前記電池パックのうち、一つの前記電池パックの第1セルユニットと第2セルユニットを並列接続とし、残りの前記電池パックの第1セルユニットと第2セルユニットを直列接続とし、
前記並列接続と前記直列接続を、さらに直列に接続することを特徴とする電気機器である。
【0010】
本発明の別の態様は、
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を有し、
前記複数の電池パックとして第1の電池パックと第2の電池パックを用い、
前記電気機器本体は前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックはセルユニットを並列に接続することを特徴とする電気機器である。
【0011】
本発明の別の態様は、
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部と、
を有し、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と電力端子が形成され、
前記電気機器本体に、複数の電力端子群の接続を並列または直列に切り替えるための複数のスイッチを設け、
前記電気機器本体に格納された制御部によって前記スイッチの接続形態を切り替え、
前記電気機器本体は、トリガスイッチを有して先端工具を駆動する電動工具であって、
前記制御部は、前記スイッチを切り替えることによって複数の前記電池パックのうち、直列接続状態で出力させる側と、並列接続状態で出力させる側を選択し、前記トリガスイッチがオフ状態においてのみ切り替えを行うことを特徴とする電気機器である。
本発明の別の態様は、
複数のセルユニットを有する複数の電池パックと、
前記電池パックが装着可能な電気機器本体と、
を備え、
前記電気機器本体は、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記複数の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
前記電池パックを装着するための複数の電池パック装着部と、
を有し、
複数の前記電池パック装着部には、それぞれ電池パック装着機構と電力端子が形成され、
前記電気機器本体に、複数の電力端子群の接続を並列または直列に切り替えるための複数のスイッチを設け、
前記電気機器本体に格納された制御部によって前記スイッチの接続形態を切り替え、
複数のセルユニットの電池残量または電圧を検出可能な検出部を設け、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直列に接続するセルユニットと、前記並列に接続するセルユニットを選択することを特徴とする電気機器である。
本発明の別の態様は、
複数のセルユニットを有する第1の電池パック及び第2の電池パックが同時に装着可能な電気機器本体であって、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を備え、
前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックのセルユニットを並列に接続することを特徴とする電気機器本体である。
本発明の別の態様は、
複数のセルユニットを有する第1の電池パック及び第2の電池パックが同時に装着可能で電気機器本体に対して着脱可能なアダプタであって、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットの少なくとも2つを互いに並列に接続する並列接続部と、
前記第1及び第2の電池パックが有する前記複数のセルユニットのうち前記並列接続部に直接接続されていない他の少なくとも1つのセルユニットを前記並列接続部に対して直列に接続可能な直列接続部と、
を備え、
前記第1の電池パックのセルユニットを直列に接続し、前記第2の電池パックのセルユニットを並列に接続することを特徴とするアダプタである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記の課題1~4の少なくともいずれかを解決できる。具体的には、本発明によれば、出力の多様化が可能な電池パック電気機器、電気機器本体、又はアダプタを提供できる。又は、電圧切替型電池パックを複数用いて、最大電圧の整数倍以外の中間電圧を引き出すことができる電気機器、電気機器本体、又はアダプタが実現できる。又は、電気機器本体内で、装着された電池パックのセルユニットの接続を直列又は並列として、セルユニットの接続状況を組み合わせることが可能となる。このように、電圧切替型電池パックを複数用いて必要に応じて異なる電圧を出力することが可能となるので、電気機器を用いた作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は、本発明の実施の形態1に係る電気機器501の正面図。(B)は、電気機器501の側面図。
図2】(A)は、電気機器501の概略回路ブロック図。(B)は、図2(A)における電池パック510の出力電圧とリレーSW1~SW4のコイル通電状態との関係をまとめた表。
図3】電気機器501の動作の一例を示すシーケンス図。
図4】電池パック510又はそれと同様の構成でセルユニットの数を増やした電池パックにおける、セルユニットの数、出力可能な電圧、リレー接点数、C接点リレーの個数、及びB接点リレーの個数をまとめた表。
図5】(A)は、電池パック510が18Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(B)は、図5(A)から接点の図示を省略した回路図。(C)は、電池パック510が36Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(D)は、図5(C)から接点の図示を省略した回路図。(E)は、電池パック510が54Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(F)は、図5(E)から接点の図示を省略した回路図。
図6】(A)は、本発明の実施の形態2における電池パック510Aが18Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(B)は、図6(A)から接点の図示を省略した回路図。(C)は、電池パック510Aが36Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(D)は、図6(C)から接点の図示を省略した回路図。(E)は、電池パック510Aが54Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(F)は、図6(E)から接点の図示を省略した回路図。
図7】(A)は、本発明の実施の形態3における電池パック510Bが18Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(B)は、図7(A)から接点の図示を省略した回路図。(C)は、電池パック510Bが36Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す第1パターンの回路図。(D)は、図7(C)から接点の図示を省略した回路図。(E)は、電池パック510Bが36Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す第2パターンの回路図。(F)は、図7(E)から接点の図示を省略した回路図。(G)は、電池パック510Bが36Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す第3パターンの回路図。(H)は、図7(G)から接点の図示を省略した回路図。(I)は、電池パック510Bが54Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図。(J)は、図7(I)から接点の図示を省略した回路図。
図8】(A)は、本発明の実施の形態4に係る電気機器501Aの概略回路ブロック図。(B)は、図8(A)における電池パック510Cの出力電圧とリレーSW5~SW8のコイル通電状態との関係をまとめた表。
図9】本発明の実施の形態5~7に用いられる電気機器本体1と、それに装着される電池パック100の斜視図。
図10】電池パック100の斜視図。
図11】電池パック100の展開斜視図。
図12】電池パック100を高電圧電気機器本体に装着した際の接続状態を示す図。
図13】電池パック100を低電圧電気機器本体に装着した際の接続状態を示す図。
図14】本発明の実施の形態5に係る電気機器200の斜視図。
図15】電気機器200の底面図。
図16】電気機器200の回路図であり、電気機器本体201と2つの電池パック100A、100B側との接続状況を示す図。
図17】実施の形態5の第1変形例に係る電気機器本体201Aと2つの電池パック100A、100B側との接続回路図。
図18】実施の形態5の第2変形例に係る電気機器本体201Bと2つの電池パック100A、100B側との接続回路図。
図19】本発明の実施の形態6に係る電気機器本体201Cの回路図であり、電気機器本体201と2つの電池パック100A、100B側との接続状況を示す図。
図20図19で示す電気機器本体201Cのさらに詳細な回路図。
図21】電気機器本体201Cの制御部240による制御手順を示すフローチャート。
図22】本発明の実施の形態7に係る電気機器300の斜視図。
図23】本発明の実施の形態7に係る電気機器300の回路図であり、電気機器本体301と、アダプタ400との接続状況を示す図。
図24】アダプタ400の制御部440による制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0015】
(実施の形態1) 図1図5は、本発明の実施の形態1に係る電池パック510及び電気機器501に関する。図1(A),(B)により、電気機器501の互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。電気機器501は、インパクトドライバである。電気機器501は、電池パック510及び電気機器本体530を有する。電気機器本体530は、ハウジング539を有する。ハウジング539は、胴体部539a、ハンドル部539b、及び電池着脱部539cを含む。
【0016】
胴体部539aは、中心軸が前後方向と平行な筒状部であり、図2に示すモータ540や図示しない回転打撃機構等を収容する。ハンドル部539bは、胴体部539aの中間部から下方に延びる。ハンドル部539bの上端部にメインスイッチとしてのトリガスイッチ542が設けられる。トリガスイッチ542は、モータ540の起動及び停止を指示するためにユーザに操作される。電池着脱部539cは、ハンドル部539bの下端部に設けられる。電池着脱部539cに、電池パック510を着脱可能に装着できる。電池着脱部539c内に、図2に示す制御部533等を搭載した制御基板が設けられる。
【0017】
図2に示すように、電池パック510と電気機器本体530は、+端子同士、V端子同士、T1端子同士、T2端子同士、及び-端子同士が互いに電気的に接続される。電池パック510の+端子及び-端子は、電気機器本体530のモータ540に電力供給するための一対の出力端子を構成する。モータ540は、+端子及び-端子を介して電池パック510から供給される電力で動作する出力部である。V端子は、セルユニット523単体の出力電圧を制御系電源生成用に電気機器本体530に供給するための端子である。T1端子及びT2端子は、制御部513、533の相互通信用の端子である。
【0018】
電気機器本体530は、本体側制御部としての制御部533、トリガスイッチ542、インバータ回路543、及びモータ540を有する。制御部533は、マイコン(MCU:Micro Controller Unit)や、V端子からの入力電圧により前記マイコンの電源電圧(制御系電源電圧)を生成する電源回路、インバータ回路543の駆動用のドライバIC等を含む。制御部533は、インバータ回路543の駆動制御によりモータ540に駆動電流を供給し、モータ540の駆動を制御する。
【0019】
電池パック510は、電池側制御部としての制御部513、セルユニット521~523、及び切替え部としてのリレーSW1~SW4を有する。セルユニット521~523の各々は、直列接続された複数の二次電池セルを含む。ここでは一例として、セルユニット521~523の各々は、定格出力電圧が3.6Vの二次電池セルを5つ直列接続した構成で、定格出力電圧が18Vであるものとする。
【0020】
制御部513は、マイコンや、セルユニット523からの入力電圧により前記マイコンの電源電圧を生成する電源回路等を含む。制御部513は、リレーSW1~SW4の各コイルの通電、非通電を制御し、電池パック510の出力電圧を制御する。リレーSW1、SW2はC接点リレーであり、リレーSW3、SW4はB接点リレーである。すなわち、リレーSW1~SW4には種類の異なるリレーが含まれる。
【0021】
リレーSW1の一端は、セルユニット522の正極に接続される。リレーSW1の他端は、リレーSW1のコイル非通電時には、電池パック510の+端子及びセルユニット521の正極に接続され、かつ、リレーSW2を介してセルユニット523の正極に接続される。リレーSW1の他端は、リレーSW1のコイル通電時には、セルユニット521の負極に接続される。
【0022】
リレーSW2の一端は、セルユニット523の正極に接続される。リレーSW2の他端は、リレーSW2のコイル非通電時には、電池パック510の+端子及びセルユニット521の正極に接続され、かつ、リレーSW1を介してセルユニット522の正極に接続される。リレーSW2の他端は、リレーSW2のコイル通電時には、セルユニット522の負極に接続される。
【0023】
リレーSW3の一端は、セルユニット522の負極に接続される。リレーSW3の他端は、リレーSW3のコイル非通電時には、セルユニット521の負極に接続される。リレーSW3の他端は、リレーSW3のコイル通電時には、開放(オフ)状態となる。すなわち、リレーSW3のコイル非通電時にはセルユニット521、522の負極間が接続(短絡)され、リレーSW3のコイル通電時にはセルユニット521、522の負極間が遮断される。
【0024】
リレーSW4の一端は、セルユニット523の負極に接続される。リレーSW4の他端は、リレーSW4のコイル非通電時には、セルユニット522の負極に接続される。リレーSW4の他端は、リレーSW4のコイル通電時には、開放(オフ)状態となる。すなわち、リレーSW4のコイル非通電時にはセルユニット522、523の負極間が接続(短絡)され、リレーSW4のコイル通電時にはセルユニット522、523の負極間が遮断される。
【0025】
制御部513は、電池パック510の+端子、-端子間に18Vを出力する場合、リレーSW1~SW4の各コイルを全て非通電とする。これにより、セルユニット521~523は互いに全並列接続状態となる。全並列接続状態は、電池パック510から電気機器本体530のモータ540に電力供給する場合、すなわち電池パック510の+端子から放電する場合(以下「放電する場合」)におけるセルユニット521~523の各々の消費電力が互いに実質的に均等となる均等接続状態の例示である。制御部513は、電池パック510が電気機器本体530に接続されていない状態(以下「非接続状態」とも表記)、電池パック510が電気機器本体530に接続され且つトリガスイッチ542がオフの状態(以下「非出力状態」とも表記)、及び、電池パック510が図示しない充電器本体に接続された状態においても、同様にリレーSW1~SW4の各コイルを全て非通電とする。
【0026】
制御部513は、電池パック510の+端子、-端子間に36Vを出力する場合、リレーSW1、SW3の各コイルを非通電とし、リレーSW2、SW4の各コイルに通電する。これにより、セルユニット521、522が並列接続状態となり、並列接続状態とされたセルユニット521、522に対してセルユニット523が直列に接続された状態となる。このセルユニット521~523の相互接続状態は、放電する場合におけるセルユニット521、522の各々の消費電力とセルユニット523の消費電力とが互いに実質的に均等とならない相互接続状態であり、非均等接続状態の例示である。本例の非均等接続状態では、放電する場合におけるセルユニット523の消費電力がセルユニット521、522の各々の消費電力よりも大きい。なお、並列接続状態にあるセルユニット521、522は、放電する場合における各々の消費電力が互いに等しい均等接続状態である。
【0027】
制御部513は、電池パック510の+端子、-端子間に54Vを出力する場合、リレーSW1~SW4の各コイルに全て通電する。これにより、セルユニット521~523は互いに全直列接続状態となる。全直列接続状態は、放電する場合におけるセルユニット521~523の各々の消費電力が互いに実質的に均等となる均等接続状態の例示である。以下、全直列接続状態である均等接続状態を「全直列均等接続状態」、全並列状態である均等接続状態を「全並列均等接続状態」と表記する。
【0028】
図3は、電気機器501の動作の一例を示すシーケンス図である。初期状態として、リレーSW1~SW4の各コイルを全て非通電としている。制御部513は、電気機器本体530の制御部533に、待機状態である旨を送信する(S1)。制御部533は、トリガスイッチ542のオンを検出すると(S2)、制御部513に機器本体電圧情報を送信する(S3)。
【0029】
制御部513は、受信した機器本体電圧情報に基づいて電池パック510の出力電圧を決定し、必要に応じてリレーSW1~SW4の各コイルの通電状態を切り替える(S4、S5)。具体的には制御部513は、リレーSW1~SW4のうち決定した出力電圧に応じて切替え(コイルへの通電開始)が必要なリレーについてコイルへの通電を開始する。このとき、リレーSW3、SW4の各コイルへの通電を先に開始し(S4)、その後にリレーSW1、SW2の各コイルへの通電を開始する(S5)。
【0030】
例えば36Vを出力する場合、制御部513は、リレーSW4のコイルに通電してからリレーSW2のコイルに通電する。これは、通電状態切替え時におけるセルユニット523の正極、負極間の短絡を確実に防止するためである。54Vを出力する場合、制御部513は、リレーSW3、SW4の各コイルに通電してからリレーSW1、SW2の各コイルに通電する。これは、通電状態切替え時におけるセルユニット522の正極、負極間の短絡、及びセルユニット523の正極、負極間の短絡を確実に防止するためである。
【0031】
制御部513は、リレーSW1~SW4の各コイルの通電状態の切替え(S4、S5)が完了すると、制御部533に駆動準備完了の旨を送信する(S6)。制御部533は、駆動準備完了の旨を受信すると、インバータ回路543を駆動し(S7)、モータ540に駆動電流を供給する。制御部533は、トリガスイッチ542のオフを検出すると(S8)、インバータ回路543の駆動を停止し(S9)、モータ540を停止する。制御部533は、停止完了の旨を制御部513に送信する(S10)。
【0032】
制御部513は、停止完了の旨を受信すると、必要に応じてリレーSW1~SW4の各コイルの通電状態を切り替え(S11、S12)、リレーSW1~SW4の各コイルを全て非通電とする。具体的には制御部513は、リレーSW1~SW4のうち切替えが必要なリレー(リレーSW1~SW4のうちコイルに通電されているリレー)についてコイルへの通電を停止する。このとき、リレーSW1、SW2の各コイルへの通電を先に停止し(S11)、その後にリレーSW3、SW4の各コイルへの通電を停止する(S12)。
【0033】
例えば36Vを出力していた場合、制御部513は、リレーSW2のコイルへの通電を停止してからリレーSW4のコイルへの通電を停止する。これは、通電状態切替え時におけるセルユニット523の正極、負極間の短絡を確実に防止するためである。54Vを出力していた場合、制御部513は、リレーSW1、SW2の各コイルへの通電を停止してからリレーSW3、SW4の各コイルへの通電を停止する。これは、通電状態切替え時におけるセルユニット522の正極、負極間の短絡、及びセルユニット523の正極、負極間の短絡を確実に防止するためである。
【0034】
制御部513は、リレーSW1~SW4の各コイルの通電状態の切替え(S11、S12)が完了すると、制御部533に待機状態である旨を送信する(S13)。
【0035】
図4は、電池パック510又はそれと同様の構成でセルユニットの数を増やした電池パックにおける、セルユニットの数、出力可能な電圧、リレー接点数、C接点リレーの個数、及びB接点リレーの個数をまとめた表である。この表のうちセルユニットの数が3の行は、電池パック510に対応する。これに対してセルユニットが1つ増える毎にC接点リレーとB接点リレーを1つずつ増やしていくことで、セルユニットの数と同じ種類数の電圧を出力できる。
【0036】
セルユニットの数をn(nは3以上の整数)として一般化すると、出力可能な電圧の種類はn種類、必要なリレー接点数は3×(n-1)、必要なC接点リレーとB接点リレーの数はn-1となる。このとき、n-1以下の自然数iの各々について、i番目のセルユニットの負極とi+1番目のセルユニットの負極との間にB接点リレーを設ければよい。また、i+1番目のセルユニットの正極をi番目のセルユニットの負極に接続するか電池パックの+端子に接続するかを切り替えるC接点リレーを設ければよい。電池パック510の例では、セルユニット521が1番目、セルユニット522が2番目、セルユニット523が3番目に対応する。
【0037】
図5(A),(C),(E)は、電池パック510が18V、36V、54Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図である。図5(B),(D),(F)は、図5(A),(C),(E)の各々から接点の図示を省略、すなわちオン状態の接点を短絡に置換しオフ状態の接点を開放に置換した回路図である。
【0038】
接点P1aは、リレーSW1のコイル非通電時にオン、リレーSW1のコイル通電時にオフとなる接点である。接点P1bは、リレーSW1のコイル非通電時にオフ、リレーSW1のコイル通電時にオンとなる接点である。接点P2aは、リレーSW2のコイル非通電時にオン、リレーSW2のコイル通電時にオフとなる接点である。接点P2bは、リレーSW2のコイル非通電時にオフ、リレーSW2のコイル通電時にオンとなる接点である。接点P3は、リレーSW3のコイル非通電時にオン、リレーSW3のコイル通電時にオフとなる接点である。接点P4は、リレーSW4のコイル非通電時にオン、リレーSW4のコイル通電時にオフとなる接点である。
【0039】
接点P1aの一端は、セルユニット522の正極に接続される。接点P2aの一端は、セルユニット523の正極に接続される。接点P1a、P2aの他端は、互いに接続されると共に、電池パック510の+端子及びセルユニット521の正極に接続される。接点P1bの一端は、セルユニット522の正極に接続される。接点P1bの他端は、セルユニット521の負極に接続される。接点P2bの一端は、セルユニット523の正極に接続される。接点P2bの他端は、セルユニット522の負極に接続される。接点P3の一端は、セルユニット521の負極に接続される。接点P3の他端は、セルユニット522の負極に接続される。接点P4の一端は、セルユニット522の負極に接続される。接点P4の他端は、セルユニット523の負極及び電池パック510の-端子に接続される。
【0040】
図5(A),(B)に示すように、接点P1a、P2a、P3、P4をオン、接点P1b、P2bをオフとすることで、電池パック510の+端子、-端子間に18Vを出力できる。図5(C),(D)に示すように、接点P1a、P2b、P3をオン、接点P1b、P2a、P4をオフとすることで、電池パック510の+端子、-端子間に36Vを出力できる。図5(E),(F)に示すように、接点P1b、P2bをオン、接点P1a、P2a、P3、P4をオフとすることで、電池パック510の+端子、-端子間に54Vを出力できる。
【0041】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0042】
(1) 電池パック510は、それぞれ定格出力電圧が18Vである3つのセルユニット521~523を有する構成において、図2に示すように、セルユニット521~523の相互接続状態を切替え可能な切替え部としてリレーSW1~SW4を有する。このため、セルユニット521~523の相互接続状態を、全直列均等接続状態及び全並列均等接続状態だけでなく、放電する場合におけるセルユニット521、522の各々の消費電力とセルユニット523の消費電力とが互いに実質的に均等とならない非均等接続状態とすることができる。これにより電池パック510は、18V、36V、54Vの3種類の電圧が出力可能となり、18V及び54Vの2種類の電圧しか出力できない電池パックと比較して出力の多様化が可能となる。
【0043】
(2) リレーSW1、SW2をC接点リレーとしているため、必要な6個の接点に対してリレーの数が4個で済み、出力の多様化に伴うコスト及び部品点数の増大を抑制できる。また、リレー制御用の信号を出力するための制御部513のマイコンの端子数を削減でき、マイコンのコストも抑制できる。
【0044】
(3) 制御部513は、非接続状態及び非出力状態において、リレーSW1~SW4の各コイルを全て非通電とし、セルユニット521~523を全並列均等接続状態とする。このため、非接続状態及び非出力状態の各々において、セルユニット521~523のうち電圧の高いセルユニットから低いセルユニットに充電される。よって、ユーザは、意図的な操作を行わなくても、非接続状態あるいは非出力状態の間にセルユニット521~523間のバランスをとることができ、安定した出力の電池パックを使用することができる。なお、制御部513、533は、電池パック510又は電気機器本体530に対する操作が無い状態が所定時間以上継続すると省電力のために停止するが、制御部513、533が停止している場合もリレーSW1~SW4の各コイルは全て非通電となり、セルユニット521~523は全並列均等接続状態となる。
【0045】
(4) 制御部513は、リレーSW3、SW4の各コイルに通電してからリレーSW1、SW2の各コイルに通電するという順番、並びにリレーSW1、SW2の各コイルへの通電を停止してからリレーSW3、SW4の各コイルへの通電を停止するという順番で制御するため、通電状態切替え時におけるセルユニット522の正極、負極間の短絡、及びセルユニット523の正極、負極間の短絡を確実に防止でき、信頼性が高められる。
【0046】
(5) モータ540に電力供給するための電池パック510の出力端子が一対のみであるため、出力の多様化に伴う端子数の増大を抑制できる。
【0047】
(実施の形態2) 図6(A),(C),(E)は、本発明の実施の形態2における電池パック510Aが18V、36V、54Vを出力する場合の各リレーの接点の状態を示す回路図である。図6(B),(D),(F)は、図6(A),(C),(E)の各々から接点の図示を省略、すなわちオン状態の接点を短絡に置換しオフ状態の接点を開放に置換した回路図である。
【0048】
電池パック510Aは、実施の形態1の電池パック510の接点P4を短絡に置換し接点P5を追加したものである。接点P5の一端は、セルユニット522の負極に接続される。接点P5の他端は、接点P3、P5の他端は、互いに接続されると共に、電池パック510の-端子及びセルユニット523の負極に接続される。
【0049】
図6(A),(B)に示すように、接点P1a、P2a、P3、P5をオン、接点P1b、P2bをオフとすることで、電池パック510Aの+端子、-端子間に18Vを出力できる。このときのセルユニット521~523の相互接続状態は、実施の形態1の電池パック510が18Vを出力する場合と同様である。
【0050】
図6(C),(D)に示すように、接点P1b、P5をオン、接点P1a、P2a、P2b、P3をオフとすることで、電池パック510Aの+端子、-端子間に36Vを出力できる。このとき、セルユニット521、522が直列接続状態となり、直列接続状態とされたセルユニット521、522に対してセルユニット523が非接続となる。このセルユニット521~523の相互接続状態は、放電する場合におけるセルユニット521、522の各々の消費電力とセルユニット523の消費電力とが互いに実質的に均等とならない相互接続状態であり、非均等接続状態の例示である。本例の非均等接続状態では、放電する場合におけるセルユニット523の消費電力がセルユニット521、522の各々の消費電力よりも小さい。なお、直列接続状態にあるセルユニット521、522は、放電する場合における各々の消費電力が互いに等しい均等接続状態である。
【0051】
なお、図5に示す実施の形態1の電池パック510においても、接点P1b、P4をオン、接点P1a、P2a、P2b、P3をオフとすることで、+端子、-端子間に36Vを出力できる。一方、本実施の形態の回路構成では、図5(D)に示すようなセルユニット521~523の相互接続状態は実現できない。
【0052】
図6(E),(F)に示すように、接点P1b、P2bをオン、接点P1a、P2a、P3、P5をオフとすることで、電池パック510Aの+端子、-端子間に54Vを出力できる。このときのセルユニット521~523の相互接続状態は、実施の形態1の電池パック510が54Vを出力する場合と同様である。
【0053】
本実施の形態では、電池パック510Aから36Vを出力する場合に接点P2a、P2bを共にオフにする必要があるため、実施の形態1と異なり、接点P2a、P2bは互いに別の2つのリレーとする必要がある。
【0054】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。接点P2a、P2bを別々のリレーとする関係でリレーの数が1個増えるものの、その他の点においては本実施の形態も実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0055】
(実施の形態3) 図7(A),(C),(E),(G),(I)は、本発明の実施の形態3における電池パック510Bの各出力電圧に応じた各リレーの接点の状態を示す回路図である。図7(A)は出力電圧18V、図7(C),(E),(G)は出力電圧36V、図7(I)は出力電圧54Vに対応する。図7(B),(D),(F),(H),(J)は、図7(A),(C),(E),(G),(I)の各々から接点の図示を省略、すなわちオン状態の接点を短絡に置換しオフ状態の接点を開放に置換した回路図である。
【0056】
電池パック510Bは、実施の形態2の電池パック510Aに接点P6を追加したものである。接点P6の一端は、セルユニット523の正極に接続される。接点P6の他端は、セルユニット521の負極に接続される。
【0057】
図7(A),(B)に示すように、接点P1a、P2a、P3、P5をオン、接点P1b、P2b、P6をオフとすることで、電池パック510Bの+端子、-端子間に18Vを出力できる。このときのセルユニット521~523の相互接続状態は、実施の形態2の電池パック510Aが18Vを出力する場合と同様である。
【0058】
図7(C),(D)に示すように、接点P1b、P5をオン、接点P1a、P2a、P2b、P3、P6をオフとすることで、電池パック510Bの+端子、-端子間に36Vを出力できる。このときのセルユニット521~523の相互接続状態は、実施の形態2の電池パック510Aが36Vを出力する場合と同様である。
【0059】
図7(E),(F)に示すように、接点P1a、P2bをオン、接点P1b、P2a、P3、P5、P6をオフとすることで、電池パック510Bの+端子、-端子間に36Vを出力できる。このとき、セルユニット522、523が直列接続状態となり、直列接続状態とされたセルユニット522、523に対してセルユニット521が非接続となる。このセルユニット521~523の相互接続状態は、放電する場合におけるセルユニット522、523の各々の消費電力とセルユニット521の消費電力とが互いに実質的に均等とならない相互接続状態であり、非均等接続状態の例示である。本例の非均等接続状態では、放電する場合におけるセルユニット521の消費電力がセルユニット522、523の各々の消費電力よりも小さい。なお、直列接続状態にあるセルユニット522、523は、放電する場合における各々の消費電力が互いに等しい均等接続状態である。
【0060】
図7(G),(H)に示すように、接点P6をオン、接点P1a、P1b、P2a、P2b、P3、P5をオフとすることで、電池パック510Bの+端子、-端子間に36Vを出力できる。このとき、セルユニット521、523が直列接続状態となり、直列接続状態とされたセルユニット521、523に対してセルユニット522が非接続となる。このセルユニット521~523の相互接続状態は、放電する場合におけるセルユニット521、523の各々の消費電力とセルユニット522の消費電力とが互いに実質的に均等とならない相互接続状態であり、非均等接続状態の例示である。本例の非均等接続状態では、放電する場合におけるセルユニット522の消費電力がセルユニット521、523の各々の消費電力よりも小さい。なお、直列接続状態にあるセルユニット521、523は、放電する場合における各々の消費電力が互いに等しい均等接続状態である。
【0061】
図7(I),(J)に示すように、接点P1b、P2bをオン、接点P1a、P2a、P3、P5、P6をオフとすることで、電池パック510Bの+端子、-端子間に54Vを出力できる。このときのセルユニット521~523の相互接続状態は、実施の形態2の電池パック510Aが54Vを出力する場合と同様である。
【0062】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態2と同様である。本実施の形態によれば、実施の形態2と比較して接点P6を追加で要するものの、電池パック510Bから36Vを出力する場合において放電に使用しないセルユニットを任意に選択できるため、例えばセルユニット521~523のうち出力電圧の最も低いセルユニットを放電に使用しないことでセルユニット521~523間のアンバランスの発生を抑制でき、利便性が高い。
【0063】
(実施の形態4) 図8(A)は、本発明の実施の形態4に係る電気機器501Aの概略回路ブロック図である。図8(B)は、図8(A)における電池パック510Cの出力電圧とリレーSW5~SW8のコイル通電状態との関係をまとめた表である。
【0064】
電気機器501Aは、図2に示す実施の形態1の電池パック510が電池パック510Cに替わり、電気機器本体530が電気機器本体530Aに替わったものである。電池パック510Cと電気機器本体530Aは、上+端子同士、中+端子同士、下+端子同士、上-端子同士、中-端子同士、及び下-端子同士が互いに電気的に接続される。
【0065】
電池パック510Cは、実施の形態1の電池パック510のリレーSW1~SW4を無くし、セルユニット521の正極を上+端子、負極を上-端子に接続し、セルユニット522の正極を中+端子、負極を中-端子に接続し、セルユニット523の正極を下+端子、負極を下-端子に接続したものである。
【0066】
電気機器本体530Aは、実施の形態1の電気機器本体530にリレーSW5~SW8を追加したものである。セルユニット521~523に対するリレーSW5~SW8の接続は、実施の形態1におけるセルユニット521~523に対するリレーSW1~SW4の接続と同様である。電池パック510Cから出力する電圧とリレーSW5~SW8の各コイルの通電状態との関係は、実施の形態1における電池パック510から出力する電圧とリレーSW1~SW4の各コイルの通電状態との関係と同様である。
【0067】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施の形態によれば、例えば、モータ540の定格入力電圧が36Vの場合に、制御部533が一時的に電池パック510Cの出力電圧を54Vとしてブースト効果を得るといった制御も可能となる。また、電池パック510Cはリレーを有さない分だけサイズを小さくできる。
【0068】
(実施の形態5) 図9は本発明の実施の形態5~7に用いられる電池パック100と、電池パック100が装着される電気機器本体1の斜視図である。ここでは電気機器本体1として、公知の定格電圧36Vの電動工具(インパクトドライバ)の例を示している。電気機器本体1は、着脱式の電池パック100を電源とし、図示しないモータによる回転駆動力を用いて先端工具9を駆動することにより締め付け作業を行う。電気機器本体1は、外形を形成する外枠たるハウジング2を備える。ハウジング2は、図示しないモータや動力伝達機構を収容する胴体部2aと、胴体部2aから下方に延びるハンドル部2bと、ハンドル部2bの下側に形成される電池パック装着部3により構成される。ハンドル部2bの一部であってユーザが把持した際に人差し指があたる付近には、トリガスイッチ(図では見えない)を操作するためのトリガレバー5が設けられる。トリガレバー5の上方にはモータの回転方向を切り替えるための正逆切替レバー6が設けられる。ハウジング2の前方側には出力軸たるアンビル(図では見えない)が設けられ、アンビルの先端には先端工具9を装着するための先端工具保持部8が設けられる。ここでは先端工具9としてプラスのドライバービットが装着されている状態を示している。
【0069】
電池パック装着部3には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びる溝やレールを含むレール部11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部(本体側端子部)20が設けられる。レール部11a、11bがレール機構を構成し、ターミナル部20には電力端子が配置される。ターミナル部20は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子22a、22b、負極入力端子27a、27b、LD端子(異常信号端子)28を鋳込んだものである。ターミナル部20の装着方向(前後方向)の後端側には突き当て面となる垂直面20aが形成され、複数の端子の上側には水平面20bが形成される。尚、図9では、ターミナル部20のうち正極入力端子22aと負極入力端子27aの間や隣接して設けられる信号伝達用の他の端子群(T端子、V端子、LS端子)の図示を省略しているが、これらの端子の何れか又はすべてをターミナル部20に追加しても良い。
【0070】
ターミナル部20は、左右分割式のハウジング2の開口部分(ターミナル保持部:図では見えない)に挟持されるようにして固定される。ターミナル部20の水平面20bは電池パック100の装着時に、電池パック100側の上段面115と近接、対向する面となる。水平面20bの前方側には、電池パック100の隆起部132と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部14が形成される。突起部14は左右方向に2分割で形成される電気機器本体1のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
【0071】
電池パック100は、対応する電気機器本体1に対して着脱式であり、複数本の電池セルを合成樹脂製のケース内に収容する。電池パック100の上部には、電気機器本体1に装着するためのレール機構、即ち、レール溝138a(図9では見えない)、138bが設けられる。レール溝138a、138bの間には、電気機器本体1との電気的な接続を実現するための出力端子や通信端子への接続を可能とするスロット部120が配置される。スロット部120の内側部分は図11で後述する接続端子群が配置され、接続端子群の後方には電気機器本体1との装着状態を維持又は解除するためのラッチ機構(ラッチ部)が設けられる。ラッチ機構は、ラッチボタン141a、141bと、ラッチボタン141a、141bと連動して移動する係止爪142a(図9では見えない)、142bを含んで構成される。
【0072】
電池パック100は、低電圧(定格18V)又は高電圧(定格36V)のいずれかを切り替えて出力できる、電圧切替え型の電源である。電池パック100は、定格18Vの電気機器本体(図示せず)と、定格36Vの電気機器本体1のいずれにも装着可能であり、定格18Vの電気機器本体に装着された場合は定格18Vの直流が出力され、36Vの電気機器本体1に装着された場合は定格36Vの直流が出力される。電池パック100を電気機器本体1から取り外した後は、図示しない外部充電器を用いて充電が可能である。
【0073】
図10は電池パック100の斜視図である。電池パック100の筐体は、上下方向に分割可能な下ケース101と上ケース110により形成される。上ケース110は、電気機器本体1の電池パック装着部3(図9参照)に取り付けるために2本のレール溝138a、138bが形成された装着機構が形成される。レール溝138a、138bは、電池パック100の装着方向と平行な方向に延びるように、且つ、上ケース110の左右側面に突出するように形成される。レール溝138a、138bは、電気機器本体1の電池パック装着部3に形成されたレール部11a、11b(図9参照)と対応した形状に形成され、レール溝138a、138bがレール部11a、11bと嵌合した状態で、ラッチボタン141a、141bの爪となる係止爪142a、142bにて係止することにより電池パック100が電気機器本体1に固定される。電池パック100を電気機器本体1から取り外すときは、左右両側にあるラッチボタン141a、141bを押すことにより、係止爪142a、142bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック100を装着方向と反対側に移動させる。
【0074】
上ケース110の下段面111と上段面115は階段状に高さが異なるように形成され、それらの段差部分から後方側に延びる複数のスロット121~128が形成される。スロット121~128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電気機器本体1又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子(接続端子群)が配設される。スロット121~128は、電池パック100の右側のレール溝138aに近い側のスロット121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、左側のレール溝138bに近い側のスロット127が負極端子(-端子)の挿入口となる。スロット122及び127に配置される+端子、-端子が実質的な電力端子となる。スロット121に配置されるC+端子は、図では見えないヒューズを介して+端子に接続される。
【0075】
正極端子と負極端子の間には、電池パック100と電気機器本体1や外部の充電装置(図示せず)への信号伝達用の複数のスロット123~126が配置され、これらスロット内には3つの信号端子が設けられる。スロット123は予備の端子挿入口であり、本実施の形態では端子は設けられない。スロット124は電池パック100の識別情報となる信号を電気機器本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(-端子)の挿入口となるスロット127の左側には、さらに電池パック100内に含まれる電池保護回路(図示せず)による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット128が設けられる。
【0076】
上段面115の後方側には、隆起するように形成された隆起部132が形成される。隆起部132の中央付近に窪み状のストッパ部131が形成される。ストッパ部131は、電池パック100を、電池パック装着部3(図9参照)に装着した際に突起部14(図9参照)の突き当て面となる。電池パック100が電気機器本体1の所定の位置に装着されると電気機器本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック100に配設された複数の接続端子が接触して導通状態となる。下段面111の前方左側角部には、従来の18V用電池パックを36V用の電気機器本体1に装着できないようにするための、識別用の切り欠き部111aが形成される。36V用の電気機器本体1には切り欠き部111aに対応する凸部(図示せず)が電池パック装着部3の上壁部に形成されるが、従来の18V用電池パックは切り欠き部111aに相当する部分が形成されない。18V用電池パックは、電気機器本体1側に形成された凸部と下段面111の端部が干渉するため、を36V用の電気機器本体1には装着できない。
【0077】
図11図10の電池パック100の展開斜視図である。電池パック100の筐体は、上下方向に分離可能な上ケース110と下ケース101によって形成され、下ケース101の内部空間には、10本の電池セルが収容される。複数の電池セル(図示せず)は、5本ずつ上下2段にスタックさせた状態で、合成樹脂等の不導体で構成されたセパレータ145にて固定される。セパレータ145は電池セルの両端部となる左右両側だけが開口するようにして複数の電池セルを保持する。セパレータ145には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたものを一つのセルユニットとし、第1のセルユニット146と第2のセルユニット147の2つで構成され、2つのセルユニットの接続方法の変更により、18V出力(低電圧出力)と36V出力(高電圧出力)を切り換えることができるもので、いわゆる「電圧切替え型電池パック」である。
【0078】
セパレータ145の上側には、回路基板150が固定される。回路基板150は複数の接続端子(161、162、164~168、171、172、177)を半田付けによって固定すると共に、これら接続端子と図示しない回路パターンとの電気的な接続を行うプリント基板である。回路基板150にはさらに、MPU(Micro Processor Unit)、電池保護IC、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板150の前後方向の中央よりもやや前側には、接続端子群160が設けられ、そこに複数の接続端子(161、162、164~168、171、172、177)が横方向に並べて固定される。
【0079】
正極端子(161、162、171、172)と負極端子(167、177)の間には3つの信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)が設けられる。本実施の形態では電力端子用の部品として、水平方向に延びる腕部が上側の左右に1組、下側の左右に1組の合計2組設けられたものを用いる。負極端子対(167、177)の左側にはLD端子168が設けられる。すべての信号端子(164~166、168)は、回路基板150の形成された複数の取付孔151a、151bにそれぞれの脚部を表面から裏面にまで貫通させて、裏面側で半田付けにより固定される。以上のように、回路基板150上に図示しない電子素子が搭載され、複数の接続端子が半田付けにより固定されたあとに、回路基板150の表面に防水防塵のために樹脂(図示せず)が塗布される。
【0080】
下ケース101は、上面が開口された略直方体の形状である。前面壁のほぼ中央には、スリット104が設けられる。上ケース110のスリット134は、充電装置にて充電を行う際に電池パック100の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を流入させるための流入口として用いられ、下ケース101のスリット104は冷却風の排出口として用いられる。
【0081】
電池セル側からの出力の回路基板150との接続は、上方向に板状に延びる接続用の引出しタブ181a、186a、187a、188aを介して行われる。また直列接続された電池セルの中間接続点からのリード線の端部194b、196b~199bが上方向に延びるように配置され、回路基板上に半田付けされる。さらに、直列接続された電池セルの中間接続点からの中間引出しタブ182a、183aが回路基板150に接続されるべく、上方向に延びるように配置される。セパレータ145の上側には、回路基板150を固定する為のネジボス157a、157bが形成される。
【0082】
次に図12を用いて電気機器本体1及び電池パック100の2組の電力端子の形状を説明する。図12(A)は本実施の形態に用いられる電池パック100の正極端子(162と172)、負極端子(167と177)の形状を示す部分斜視図と高電圧出力時の接続回路を示す図である。図12(B)は高電圧用電気機器のターミナル部50と、電池パック100側の端子との接続状況を示すための部分斜視図である。図12(A)に示すように、電池パック100のスロット122(図10参照)には、上側正極端子162と下側正極端子172が並んで配置される。上側正極端子162と下側正極端子172は金属板のプレス加工によって形成され、脚部を回路基板150に半田付け等により強固に固定したものである。上側正極端子162と下側正極端子172は距離を隔てて配置され、電気的に非導通状態にある。同様にしてスロット127(図10参照)には、上側負極端子167と下側負極端子177が並んで配置される。上側正極端子162と上側負極端子167は同じ金属部品であり、下側正極端子172と下側負極端子177は同じ金属部品である。
【0083】
電池パック100の内部には、5本のリチウムイオン電池セルが直列に接続された第1セルユニット146と第2セルユニット147が収容され、第1セルユニット146の正極が第1正極端子に相当する上側正極端子162に接続され、第1セルユニット146の負極が第1負極端子に相当する下側負極端子177に接続される。同様にして、第2セルユニット147の正極が第2正極端子に相当する下側正極端子172に接続され、第2セルユニット147の負極が第2負極端子に相当する上側負極端子167に接続される。このような電池パック100の形態において、電気機器本体1側の正極用入力端子を上側正極端子162に接続し、負極用入力端子を上側負極端子167に接続するとともに、点線52b、59、57bで示すように下側正極端子172と下側負極端子177を電気的に接続すれば、第1セルユニット146と第2セルユニット147の直列接続の出力、即ち定格36Vが電池パック100から電気機器本体1の負荷装置18に出力されることになる。
【0084】
出力用の正極端子は、電気的に独立した上側正極端子162と下側正極端子172が、回路基板150の取り付け位置(脚部の位置)で見ると前後方向に並ぶように配置される。上側正極端子162と下側正極端子172は、それぞれが前方側に延在する腕部組(腕部162aと162b、腕部172aと172b)を有する。ここでは腕部162a、162bと腕部172a、172bが上下方向に離れた位置であって、その嵌合部の前後方向位置がほぼ同一となるような形状とされる。これら正極端子対(162、172)は、単一のスロット122内に配置される。負極端子対も、正極端子対の形状と同じであって、上側負極端子167と下側負極端子177により構成され、これら負極端子対(167、177)が単一のスロット127の内部に配置される。スロット127の内部では、上側に上側負極端子167の腕部組が配置され、上側負極端子167の腕部組の下側に下側負極端子177の腕部組が配置される。尚、図12では図示していないが、放電用の正極端子対(上側正極端子162と下側正極端子172)の右側には、充電用の正極端子対(上側正極端子161と下側正極端子171:図12参照)が配置される。充電用の正極端子対(161、171)の形状は、上側正極端子162と下側正極端子172と同じである。
【0085】
図12(B)は定格36Vの電気機器本体1のターミナル部50と、電池パック100側の接続端子(162、167、172,177)との接続関係を示す図である。ターミナル部50は、図9で示したターミナル部20と互換形状であり、違いは図12(B)では信号用の端子(54~56、58)が含まれていることである。電気機器本体1の電池パック装着部3に設けられる。ターミナル部50には、電池パック100のスロット121~128(図10参照)に対応する機器側端子(52a、52b、54~56、57a、57b、58)が設けられ、合成樹脂製の基台51に鋳込まれるようにして固定される。基台51の上側に露出する端子52a、54~58と、下側の板状の端子52a、54~56、57a、58は同一の金属板により構成され電気的に導通されている。尚、スロット123(図10参照)に対応する位置には機器側端子は設けられない。電力用の入力端子として、受電用の正極入力端子52aと52b、負極入力端子57aと57bが小さいサイズで形成される。正極入力端子52aと52bは導通していない。また、負極入力端子57aと57bは導通していない。
【0086】
電気機器本体が36Vで動作する機器の場合は、正極入力端子52bと負極入力端子57bを、コの字状に曲げられた金属板にて一体に形成し、いわゆるショートバーとして製造し、一端側を52bとして基台51から露出させ、他端側を57bとして基台51から露出させる。電池パック100の装着時において、正極入力端子52aは上側正極端子162だけに嵌合し、負極入力端子57aは上側負極端子167だけに嵌合する。また、正極入力端子52bは下側正極端子172だけに嵌合し、負極入力端子57bは下側負極端子177だけに嵌合する。
【0087】
正極入力端子52aは、上側正極端子162と嵌合する部分であって平板状に形成された端子本体と、端子本体から延在して基台51の上方に突出する接続子により構成され合成樹脂製の基台51に鋳込まれる。上方に突出する接続子は、貫通穴が形成され、電気機器本体1側の回路基板側と結線される。負極入力端子57aも正極入力端子52aと同様であって、他の端子部(54~56、58)に比べて半分よりやや小さい程度の大きさとされる。他の端子部(54~56、58)は信号伝達用の端子であり、合成樹脂製の基台51の上方に接続子の部分が露出する。
【0088】
電気機器本体を本実施の形態の54Vで動作させる場合は、正極入力端子52bの接続子と、負極入力端子57bの接続子は、それぞれ基台51の後側に露出させて(図12(B)では見えない)、配線可能なように構成される。ターミナル部50の合成樹脂製の基台51の前側と後側には、ハウジングによって挟持されるための凹部51aと51bが設けられる。
【0089】
図12(B)において、電池パック100を装着する際には、電池パック100を電気機器本体1に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子52aと52bが同一のスロット122(図10参照)を通って内部まで挿入され、上側正極端子162と下側正極端子172にそれぞれ嵌合される。このとき、正極入力端子52aが上側正極端子162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子162の腕部162aと162bの間に圧入され、正極入力端子52bが下側正極端子172の腕部172aと172bの間を押し広げるようにして圧入される。同様にして、負極入力端子57aと57bが同一のスロット127(図10参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子167と下側負極端子177に嵌合される。この際、負極入力端子57aが嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子167の腕部167aと167bの間に圧入される。さらに、負極入力端子57bが下側負極端子177の腕部177aと177bの間を押し広げるようにして圧入される。このように図12に示すように正極入力端子52bと負極入力端子57bを短絡させることによって、第1セルユニット146と第2セルユニット147の直列接続の出力、即ち定格36Vが負荷装置18に出力されることになる。
【0090】
図13(A)及び(B)は、18V用の電気機器本体1(図11参照)に本実施の形態に用いられる電池パック100を装着した際の接続状態を示す図である。図13(B)に示すように、ターミナル部60のうち、正極入力端子62と負極入力端子67は、他の入力端子(64~67、68)と同じ高さに形成される。電池パック100が電気機器本体1に取り付けられるときは、正極入力端子62の端子部は、上側正極端子162と下側正極端子172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子62の端子部の上側一部の領域が上側正極端子162と接触し、下側一部の領域が下側正極端子172と接触する。このように正極入力端子62の端子部を上側正極端子162の腕部162a、162bと下側正極端子172の腕部172a、172bを同時に嵌合させることによって、正極入力端子62は並列接続部をして機能する。
【0091】
負極入力端子67の端子部は、上側負極端子167と下側負極端子177の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、負極入力端子67の端子部の上側一部の領域が上側負極端子167と接触し、下側一部の領域が下側負極端子177と接触する。このように負極入力端子67の端子部を上側負極端子167の腕部167a、167bと下側負極端子177の腕部177a、177bに同時に嵌合させることによって、正極入力端子62は並列接続部をして機能する。これらの結果、電気機器本体1には第1セルユニット146と第2セルユニット147の並列接続の出力、即ち定格18Vが負荷装置19に出力される。
【0092】
以上のように本実施の形態に用いられる電池パック100は、18V用の電気機器本体(図示せず)か36V用の電気機器本体1(図9参照)のいずれかに装着することにより、電池パック100の出力が自動的に切り替わる。この電圧切り替えは電池パック100側にて行うのではなくて、電気機器本体側のターミナル部の形状によって自動的に行われる。
【0093】
電池パック100を外部充電装置(図示せず)により充電する場合は、第1セルユニット146と第2セルユニット147を独立して充電できる専用の外部充電装置にて充電すると良い。第1セルユニット146と第2セルユニット147を並列接続状態として従来の18V用電池パック用外部充電器を用いて充電することも可能であるが、第1セルユニット146と第2セルユニット147を別々の回路として充電するようにすれば、それらセルユニット146、147の残容量が不均衡であっても、それぞれ最適な状態まで充電することが可能となる。尚、電池パック100のスロット121には、上側正極端子162と下側正極端子172と同等の形状の充電用の正極端子が設けられるので、放電用の正極端子(162、172)の代わりに、充電用の正極端子(図示せず)を外部充電装置(図示せず)の正極端子に接続するようにすれば良い。
【0094】
図14は、本実施の形態に係る電気機器200の全体を示す斜視図である。電気機器本体201は公称動作電圧54Vで稼働する電動工具であって、合成樹脂製のハウジング202の胴体部202aと、胴体部202aから下方に延びるハンドル部202bと、ハンドル部202bの下側に形成され、電池パックを装着するための電池パック装着部204により構成される。胴体部202aの前方には、動力伝達機構を収容する筒状のケース203が接続され、ケース203の前方には回転軸(図では見えない)が突出し、回転軸の先端には先端工具を固定するための先端工具保持部208が設けられる。
【0095】
電池パック装着部204は左右方向に並べて2つの電池パック100(100A、100B)を装着するために形成される。ここでは電池パック100として、図10図13で示した電圧切り替え型電池パック100を2つ用い、横方向に並べて配置する。電池パック装着部204は右側に第1装着部204aが形成され、左側に第2装着部204bが形成されるもので、電池パック装着部204の横幅は、電池パック100の2つ分よりもわずかに大きい程度となる。尚、説明の便宜上、本明細書では一方の電池パック100の符号を100A、他方を100Bと付しているが、同一構造、同一電圧の電池パックであるので、装着位置を相互に入れ替えても良い。
【0096】
図15は、図14で示した電気機器200の底面図である。図からわかるように左右方向に並べて配置される電池パック100A、100Bは同一定格電圧、同一容量の電池パックであり、同一形状の外観を有する。図15では見えないが、電池パック装着部204には2組の電池パック装着機構が設けられる。本実施の形態における電池パック装着機構は、電池パック100のレール部と嵌合する本体側レール部と、電力端子と信号端子を含む本体側接続端子を有して構成される。また、電池パック100には、電池パック装着部204に装着された際に電気機器200から脱落しないように固定するためのラッチ機構が設けられる。
【0097】
図16は、本実施の形態に係る電気機器200の回路図であり、電気機器本体201と2つの電池パック100A、100B側との接続状況を示す。電池パック100Aと100Bには、それぞれ5本のリチウムイオン電池を直列接続したセルユニット、即ち第1のセルユニット146と、第2のセルユニット147が収容される。第1のセルユニット146の両端電圧は上側正極端子162と下側負極端子177に接続され、第2のセルユニット147の両端電圧は、上側負極端子167と下側正極端子172に接続される。ここでは、電池パック100Aから直流36Vを取り出して、電池パック100Bから直流18Vを取り出して、双方の出力をリード線73により直列に接続して合計54Vの直流を電気機器本体201に供給するようにした。
【0098】
電池パック100Aから直流36Vを取り出すには、図12で示したターミナル部(本体側端子部)50を電池パック100A用の装着部に配置する。同様にして、他方の電池パック100Bから直流18Vを取り出すには、図13で示したターミナル部(本体側端子部)60を電池パック100B用の装着部に配置する。電力用の配線手段であるリード線71は電池パック100Aの正極端子(162)に接続され、2つの電池パック100の直流電力の+側出力線となる。リード線72は負極入力端子67を介して電池パック100Bの負極端子(167、177)に接続され、2つの電池パック100の直列接続の-側出力線となる。ターミナル部50側のリード線59、短絡用の正極入力端子52b、及び、負極入力端子57bが本発明における直列接続部に該当し、ターミナル部60側の正極入力端子62、及び、負極入力端子67が本発明における並列接続部に該当する。
【0099】
本実施の形態では、2つの電池パックを用いて、一方の電池パック100Aの第1のセルユニット146と第2のセルユニット147の直列出力と、他方の電池パック100Bの並列出力を合計する(直列に接続する)ことによって中間の電圧たる54Vを生成し、電気機器本体201に供給するようにした。尚、ターミナル部50側には、従来から公知の18V電圧固定型の電池パックは物理的に取り付け不能とすることが重要である。一方、ターミナル部60側には、従来から公知の18V電圧固定型の電池パックを取り付けることが物理的に可能であるし、動作的にも可能である。本実施の形態での電池パック100A、100Bの使用では、電池パック100A側の電力消費が大きいため、電池パック100A側のLD信号(放電停止信号)が、電池パック100Aの制御信号発生回路(具体的には制御部に含まれるマイコン)から送出される。この際、他方の電池パック100Bは、おおよそ電池残量の半分が残ることになる。
【0100】
本実施の形態のように電気機器本体201の動作電圧として直流54Vとすると、公知の36V用の電気機器本体1(図9参照)に用いるパワー素子と同じ耐圧のパワー素子を用いて電気機器本体201を構成できる。電気機器本体の動作電圧を電池パック100A、100Bの最大電圧の2倍、即ち直流72Vにすると、72V用電気機器本体に使用するパワー素子として耐圧80Vや100Vのような高電圧対応の高価な素子を使う必要が出るので、電気機器本体の製造コストが大きく上昇することになる。
【0101】
図17は、本実施の形態の第1変形例に係る電気機器本体201Aと2つの電池パック100A、100B側との接続回路図である。電気機器本体201Aでは、共通するターミナル部50を用いる。ターミナル部50は、図12で示したターミナル部50と同じである。ここでは、電池パック100Aの第2セルユニット147と、電池パック100Bの第2セルユニット147のリード線79による直列接続によって36Vの出力が確保される。また、電池パック100Aの第1セルユニット146と、電池パック100Bの第1セルユニット146がリード線77、78による並列接続によって18Vの出力が確保される。電池パック100Aと100Bのそれぞれの第1セルユニット146の並列接続の正極側出力は、接続点a1にてリード線74に接続され、負極側出力は接続点a2からリード線76によって電池パック100Aの第2セルユニット147の正極入力端子52bに接続される。電池パック100Aと電池パック100Bの全体の出力の負極側は、負極入力端子57aからリード線75により出力される。
【0102】
第1の変形例においても、図16で示した実施の形態と同じようにリード線74と75の間に54Vの直流電圧が出力されることになる。尚、この構成では、電池パック100Aと100Bの電池容量の減り具合は均等とはなるが、それぞれの電池パック100A、100Bの内部のセルユニット同士の減り具合が均等ではなく、第2セルユニット147側の電力消費が大きい。従って、第1のセルユニット146と第2のセルユニット147の残容量が不均等であっても、それらを独立して充電できるような専用の外部充電器を準備して、電池パック100A、100Bを充電すると良い。電池パック100Bの下側正極端子172と接続する正極入力端子52b、リード線79、電池パック100Aの上側負極端子167と接続する負極入力端子57a、電池パック100Aの下側正極端子172と接続する正極入力端子52b、及び、リード線76が直列接続部に該当し、電池パック100Bの上側正極端子162と接続する正極入力端子52a、電池パック100Bの下側負極端子177と接続する負極入力端子57b、リード線77,リード線78、電池パック100Aの上側正極端子162と接続する正極入力端子52a、及び、電池パック100Aの下側負極端子177と接続する負極入力端子57bが並列接続部に該当する。
【0103】
図18は、本実施の形態の第2変形例に係る電気機器本体201Bと2つの電池パック100A、100B側との接続回路図である。電気機器本体201A、201Bは、共に図12で示した36V用のターミナル部50を用いる。電池パック100A側の正極入力端子52aはリード線71により電気機器本体201Bの正極側入力となり、正極入力端子52bはリード線(又はショートバー)59により負極入力端子57bに接続される。電池パック100B側の負極入力端子57aはリード線72により電気機器本体201Bの正極側入力となる。電池パック100A側の負極入力端子57aはリード線73によって電池パック100B側の正極入力端子52bと接続される。電池パック100B側の正極入力端子52a、負極入力端子57bは配線されない。このようにしてリード線71と72の間には直流54Vの電力が供給される。尚、電池パック100B側の片方のセルユニット(第1セルユニット146)は利用されないので、放電しないことになる。
【0104】
以上説明した実施の形態5(図16)と、その第1変形例(図17)及び第2変形例(図18)は、電池パック100を電池パック装着部204(図14参照)の右側と左側に装着する電池パック100Aと100Bの間で、または電池パック100の第1と第2のセルユニット間で非対称な電力消費が生じる。この問題を、電気機器本体側の制御部による切り替え制御により、解決しようとするのが図19及び図20で示す実施の形態6である。実施の形態6では、電池パック100Aと100Bの物理的な入れ替え操作を伴わずに、電力消費の大きい側(36V出力側)と小さい側(18V)の割り当てを電気的に切り替え可能とする。
【0105】
(実施の形態6) 図19は本発明の実施の形態6に係る電気機器本体201Cと2つの電池パック100A、100B側との接続回路図である。電気機器本体201Cの外観は図14及び図15で示した形状と同じであり、電気機器本体201Cの内部に第1のリレースイッチ261と、第2のリレースイッチ262が設けられる点が新規である。第1のリレースイッチ261と第2のリレースイッチ262は、それぞれ二極リレーであって、2つのコモン接点(1番、4番接点)と、それぞれに選択的に接続される4つの接点(2番、3番、5番、6番接点)を有する。
【0106】
電池パック100A、100Bと嵌合するターミナル部50、250は同一形状ものが用いられるが、ここでは識別のために符号を50番台(電池パック100A側)と、200番台(電池パック100B側)に分けている。第1の電池パック100Aの正極入力端子52aはリード線271に接続されて54V出力の正極出力として電気機器本体201Cの負荷部に接続される。正極入力端子52bはリード線272によって第1のリレースイッチ261の1番ピンに接続される。第1の電池パック100Aの負極入力端子57bはリード線273によって第1のリレースイッチ261の4番ピンに接続され、負極入力端子57aはリード線274によって第1のリレースイッチ261の6番ピンと第2の電池パック100B側の正極入力端子252aに接続される。第1のリレースイッチ261の2番ピンは5番ピンと接続され、第1のリレースイッチ261の3番ピンはリード線271と接続される。
【0107】
第2の電池パック100B側の出力は、第1の電池パック100A側の出力と同様に配線される。即ち、第2の電池パック100B側の正極入力端子252aはリード線274に接続され、正極入力端子252bはリード線275によって第2のリレースイッチ262の1番ピンに接続される。また、負極入力端子257bはリード線276によって第2のリレースイッチ261の4番ピンに接続され、負極入力端子257aはリード線278によって第2のリレースイッチ262の6番ピンと第2の電池パック100Bの負極出力として電気機器本体201Cの負荷部に接続される。第2のリレースイッチ262の2番ピンは5番ピンと接続され、3番ピンはリード線277によってリード線274と接続される。
【0108】
図19において、初期状態では第1のリレースイッチ261の1番ピンに連結される接触子は2番ピンに接触し、4番ピンに連結される接触子は5番ピンに接触する。このリレーの接触子の位置によってリード線271と274の間には、電池パック100Aの第1セルユニット146と第2セルユニット147の直列接続電圧(直流36V)が出力されることになる(図16の電池パック100A側と同じ接続形式)。一方、第2のリレースイッチ262の初期状態では、1番ピンに連結される接触子は3番ピンに接触し、4番ピンに連結される接触子は6番ピンに接触する。このリレーの接触子の位置によってリード線274と278の間には、電池パック100Bの第1セルユニット146と第2セルユニット147の並列接続電圧(直流18V)が出力されることになる(図16の電池パック100B側と同じ接続形式)。このように、第1のリレースイッチ261と第2のリレースイッチ262を用いて、2つある電池パック100A、100Bの一方側を高電圧側の出力とし、他方側を低電圧側の出力としたうえで、電池パック100Aの出力と電池パック100Bの出力をリード線274によって直列に接続することで、高電圧側の2倍の電力でなく、高電圧出力(36V)と低電圧出力(18V)を合計した中間の電圧(54V)を取り出すことができる。
【0109】
第1のリレースイッチ261の接触子と、第2のリレースイッチ262の接触子の動作は、連動して切り替えられるように制御される。即ち、第1のリレースイッチ261の接触子の接続が直列出力側(1-2ピンが短絡、4-5番ピンが短絡)の場合は、第2のリレースイッチ261の接触子の接続は反対側に位置するようにして、並列接続側(1-3ピンが短絡、4-6番ピンが短絡)とする。逆に、第1のリレースイッチ261の接触子の接続が並列接続側(1-3ピンが短絡、4-6番ピンが短絡)に切り替えられる場合は、第2のリレースイッチ261の接触子の接続は反対側に移動させて直列出力側(1-2ピンが短絡、4-5番ピンが短絡)に切り替える。このような連動切替動作は、電気機器本体201C側の制御部(制御回路)240からの制御信号によって制御される(制御手順は図20にて後述する)。実施の形態6では、並列接続側が請求項で規定する並列接続部に該当し、直列接続側が請求項で規定する直列接続部に該当する。
【0110】
リレースイッチ(261、262)の動作には電圧を必要とすることから第1のリレースイッチ261の接触子と第2のリレースイッチ262の接触子の切り替え動作は、電池パック100A、100Bの一つ以上が接続されている時に行われる。つまり、電池パック100A、100Bのいずれも電気機器本体201Cに装着されていない場合は、リレースイッチ(261、262)だけでなく制御部240も動作しない。また、電池パック100A、100Bが装着されている際に、リレースイッチ(261、262)の接触子の切り替えする場合には、複数の接触子の位置によって第1セルユニット146の正極と負極が短絡しないように、第2セルユニット147の正極と負極が短絡しないように構成とすることが重要である。そこで、第1のリレースイッチ261の接触子と第2のリレースイッチ262は、接触子の切り替え前の接点と切り替え後の接点の間に無通電区間(いわゆる「オフ区間」)が必ず生ずるような形状のリレースイッチを用いると良い。
【0111】
以上のように、実施の形態6では複数の電池パックの高電圧出力と低電圧出力を第1及び第2のリレースイッチ261、262を用いて任意に切り替えることができる。第1及び第2のリレースイッチ261、262は、電気機器本体201Cのハウジング202内に内蔵させることが可能である。これらの電気機器本体201C内の配線と、第1及び第2のリレースイッチ261、262を用いることで、電圧切替型の電池パック100を複数用いて、それぞれの取り出し電圧を変えることもできる。尚、本実施の形態では第1及び第2のリレースイッチ261、262を、いわゆる2極4接点リレーにて実現したが、リレースイッチ261、262以外の他のスイッチ手段を用いるように構成しても良い。例えば、リレースイッチ261、262と同等の機能を果たすように複数の半導体スイッチング素子を用いた電気回路にて、電池パック100A、100Bの高電圧出力と低電圧出力側を切り替えられるように構成しても良い。
【0112】
図20は、図19で示す電気機器本体201Cのさらに詳細な回路図である。図19では電池パック100A、100Bの電力端子群(162、167、172、177)と電気機器本体201Cの電力端子群(52a、52b、57a、57b、252a、252b、257a、257b)だけについて説明したが、図20ではそれらに加えて信号端子群、即ち電池パック100A、100BのT端子164、LD端子168と、電気機器本体201C側のT端子54、254とLD端子58、258の接続関係も図示している。ここでは、図19に記載されていなかった結線部分だけを説明する。また、信号端子(54、58、254、258)から制御部240までの信号線54a、58a、254a、258aを、わかりやすいように点線で示しているが、これらの点線は電気的に配線されることを示している。
【0113】
電気機器本体201Cには、制御部240が設けられる。制御部240は例えばMPU(Micro Processor Unit)等のマイコンを用いて構成でき、マイコンによってモータ206の回転制御、電池パック100A、100Bの電圧監視、モータ206に流れる電流監視や、通信端子群(54、254)を用いて電池パック100A、100Bとの通信等の制御を行う。制御部240のマイコンには複数の入力ポートがあって、リード線272a、274aにより電池パック100Aの正極入力端子52bと負極入力端子57aの電圧(Vb1)を測定することによって1番目のセルユニット(電池パック100Aのセルユニット146、図では丸1で示す)の電圧を測定する。同様にして、制御部のマイコンは、リード線271a、273aにより電池パック100Aの正極入力端子52aと負極入力端子57bの電圧(Vb2)を測定することによって2番目のセルユニット(電池パック100Aのセルユニット147、図では丸2で示す)の電圧を測定する。
【0114】
電池パック100B側も同様であり、制御部240のマイコンは、リード線275a、278aにより電池パック100Bの正極入力端子252bと負極入力端子257aの電圧(Vb3)を測定することによって3番目のセルユニット(電池パック100Bのセルユニット146、図では丸3で示す)の電圧を測定する。制御部240のマイコンは、リード線274b、276aにより電池パック100Aの正極入力端子52bと負極入力端子57aの電圧(Vb4)を測定することによって4番目のセルユニット(電池パック100Aのセルユニット146、図では丸4で示す)の電圧を測定する。
【0115】
制御部240のマイコンは、測定された電池セル(146、147)の電圧Vb1、Vb2、Vb3、Vb4を用いて、第1リレースイッチ261にリード線241によって“リレー制御信号A”を送出することにより切り替え指示を行い、第2リレースイッチ262にリード線242によって“リレー制御信号B”を送出することにより切り替え指示を行う。これら、“リレー制御信号A”と“リレー制御信号B”は同期して送出され、第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の切り替えタイミングが同期するように制御される。制御部240のマイコンは、電池パック100A、100Bからの放電が許可できる状態に有る場合は、スイッチング素子215のゲートにハイ信号を送出することにより、スイッチング素子215のドレイン-ソース間を導通させ、100A、100Bから負荷部(モータ206等)への放電を停止させる場合は、スイッチング素子215のゲートをローにすることにより、ドレイン-ソース間を遮断させる。モータ206に流れる電流は、モータ206への電流経路中に設けられた、シャント抵抗216の両端電圧を測定することにより、制御部240により監視される。尚、図20に示す回路図は、説明の便宜から細かい回路構成などの図示を省略している。例えば、モータ206をブラシ付きの直流モータで図示しているが、インバータ回路を用いたブラシレスDCモータを用いるようにしても良い。また、スイッチング素子215のゲート信号を安定化させるために、抵抗器や更なるスイッチング素子を介在させることがあるが、図20では記載していない。また、シャント抵抗216の両端電圧を制御部240に伝達する信号線は2本必要であるが、ここでは1本で簡易的に記載している。
【0116】
図21は、電気機器本体201Cの制御部240の制御手順を示すフローチャートである。図21では電池パック100Aを「電池パックA」、電池パック100Bを「電池パックB」として記載している。制御部240に示す手順は、制御部240に含まれるマイコンによってプログラムを実行することによってソフトウェア的に実行される。実施の形態6では電池パック100Aの出力を切り替える第1リレースイッチ261と、電池パック100Bの出力を切り替える第2リレースイッチ262の切り替えを連動して行う。最初に電池パック100A及び100Bが電気機器本体201Cに装着されたか否かを判定し、装着されるまで待機する(ステップ281)。電池パック100Aが装着されないと電気機器本体201Cの制御部240のマイコンが起動しないので、ステップ282以降の処理が実行できないからである。
【0117】
2つの電池パック100A,100Bが装着され、制御部240(図20参照)中のマイコンが起動すると、マイコンはトリガレバー5が操作されていないことによってトリガスイッチがオフになっているか否かを検出する(ステップ282)。トリガスイッチがオンであることは、電気機器本体201Cが動作して作業が行われている状態であるため、動作中に電池パック100A、100Bの接続状態を切り替えるべきではないからである。ステップ282で、トリガスイッチがオンの場合はオフになるまで待機する。オフの場合は、制御部240のマイコンは、電池パック100AのLD端子168からの出力が放電許可、即ち、放電禁止を示すグランド電位ではなくて、放電許可を示すハイ電位になっているかを判定する。放電禁止の場合は、マイコンは電池パック100B側のLD端子168からの出力が放電許可か否かを判定し(ステップ289)、放電禁止である場合は、制御部240(図20参照)中のマイコンは、さらなる放電を禁止するために、スイッチング素子215(図20参照)をオフにして、モータ206の回転を禁止して(ステップ291)、図21のフローチャートに占める手順を終了する。ステップ289にて電池パック100B側が放電許可状態にある場合は(ステップ289)、第1リレースイッチ261によって電池パックAを並列接続状態として、第2リレースイッチ262によって電池パック100B側を直列接続状態とする(ステップ290)。
【0118】
ステップ283にて、電池パック100Aが放電許可状態にある場合は、電池パック100Bが放電許可状態にあるかを判定する(ステップ284)。ここで、電池パックBが放電不可状態、即ち電池パック100BのLD信号168がグランド電位になっている場合は、第1リレースイッチ261によって電池パックAを直列接続状態として、第2リレースイッチ262によって電池パック100B側を並列接続状態とする(ステップ288)。このステップ288による接続は、図20に示した第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の状態と同じになる。
【0119】
ステップ284にて、電池パック100Bが放電許可状態にある場合は、制御部240中のマイコンは、電池パック100Aの第1セルユニット146の電圧Vb1と第2セルユニット147の電圧Vb2の合計電圧が、電池パック100Bの第1セルユニット146の電圧Vb3と第2セルユニット147の電圧Vb4の合計電圧よりも大きいか否かを判定する(ステップ285)。電池パック100A側の合計電圧(Vb1+Vb2)が、電池パック100B側の合計電圧(Vb3+Vb4)よりも大きいときは、第1リレースイッチ261によって電池パックAを直列接続状態として、第2リレースイッチ262によって電池パック100B側を並列接続状態とする(ステップ286)。また、電池パック100A側の合計電圧(Vb1+Vb2)が、電池パック100B側の合計電圧(Vb3+Vb4)よりも小さいときは、第1リレースイッチ261によって電池パックAを並列接続状態として、第2リレースイッチ262によって電池パック100B側を直列接続状態とする(ステップ284)。
【0120】
以上の手順を繰り返すことによって、電気機器本体201が動作していない非稼働状態(トリガレバー205が引かれていない状態)において、制御部240中のマイコンによって第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の切り替えを行うことができる。この切り替えによって、電池パック100A側と電池パック100B側の電力を無駄なく消費することができる。実施の形態6では第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の切り替えを、電動工具等による作業時(先端工具が動作している時)ではなく、トリガレバー205が引かれていない停止時に行う。具体的には、電池パック100A、100Bが装着された直後や、トリガレバー205が引かれて作業が行われて、その作業が終了してモータが停止した直後に切り替えるようにすると良い。また、2つの電池パックのセルユニットのそれぞれの電圧又は残容量を比較して、電圧が高い方、残容量が多い方の電池パック100を直列接続として、電圧が低い方、残容量が少ない方の電池パック100を並列接続とし、第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262による切り替え動作を、電池パック100A、100Bが装着されてから取り外すまでに1回以上、例えば、数回行うようにすると良い。
【0121】
電池パック100A、100Bの出力電圧が“直列接続(出力36V)”か“並列接続(18V)”とするかを制御部240中のマイコンにより第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262を切り替えることにより行うことにより、多様な制御が可能となる。一例として、リレースイッチの切り替えを、電池パック100の残容量に合わせて優先順位を付けて定期的に行うことも可能である。最初に、電池パック100の残容量を比較し、多い方の電池パックを直列接続とし、低い方の電池パックを並列接続とする。制御部240中のマイコンは、電気機器本体201Cの電池残量のカウントを継続し、残容量のカウントが設定された閾値まで来たら、第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の接続形態を切りかえる。例えば、残容量の少ない方の電池パックの残容量が3/4になったら入れ替えて、次に残容量の少ない方の電池パックの残容量が1/2になったら再度切り替え、さらに残容量の少ない方の電池パックの残容量が1/4になったらまた切り替え、いずれか一方(または双方)の電池パック100A、100Bから放電禁止信号(LD信号)が出されるまで放電を許可する。これら電池パック100A、100Bの残容量カウントは電池パック側の制御部が監視して。その信号を電気機器本体側のマイコンが通信端子(V端子)を経由してもらうようにすれば良い。このように、複数の電池パックを電気機器本体に接続して、直列接続放電と並列接続放電を切り替えながら電池パックの装着から取外しまでの一連の作業を行うようにした電動工具を実現したので、複数の電池パックを非対称の放電形態にて使用することが可能となる。
【0122】
(実施の形態7) 図22は本発明の実施の形態7に係る電気機器300の斜視図である。実施の形態7では、2つの電池パック100Aと100Bを装着する部分をアダプタ400を介して電気機器本体301に接続する構成とした。アダプタ400は、電気機器本体301側の電池パックを装着するための電池パック装着部303から着脱可能であって電池パック装着部303へ複数の電池パック100A、100Bを接続可能とする。つまり、電気機器本体301には1つの電池パック装着部303が形成され、そこにアダプタ400が装着される。電池パック100A、100Bはアダプタ400にそれぞれ装着される。アダプタ400の左右側面にはラッチボタン441が設けられ、ラッチボタン441を押しながらアダプタ400を後方側に相対移動させると、アダプタ400を電気機器本体301から取り外すことができる。アダプタ400の下面側には、電池パック100A、100Bのレール部と対応するレール部がそれぞれ設けられる。アダプタ400に取り付けられた電池パック100Aと電池パック100Bは同一形状であり、それぞれのラッチボタン141a、141b(図では見えない)を押しながら電池パック100A又は100Bを後方側に相対移動させると、アダプタ400から電池パック100A、100Bを取り外すことができる。
【0123】
図23は、実施の形態7に係る電気機器本体301とアダプタ400の回路図であり、電気機器本体301と、アダプタ400との接続状況を示す図である。基本的な回路図は、図21と同様であり、異なる主な点は第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262が電気機器本体301と分離可能なアダプタ400内に収容される点である。アダプタ400と電気機器本体301は分離式であって、正極端子457aと正極入力端子322、負極端子457aと負極入力端子327によって電力が伝達され、LD端子468、328によって放電禁止信号が伝達される。従って、電気機器本体1側の制御部(図23では図示していない)が、第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262を制御する信号経路は存在しない。そこで、実施の形態7ではアダプタ内にも制御部440を設けるようにした。制御部440は、例えばMPU(Micro Processor Unit)等のマイコンを用いて構成でき、電池パック100A、100Bの電圧監視を行って第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の切り替え制御を行う。第1リレースイッチ261と第2リレースイッチ262の制御の仕方は、図19で示した制御部240の制御と同様である。
【0124】
制御部440は、さらに電池パック100A、100Bから受信される信号を処理して、電気機器本体301側に伝達される放電禁止信号に変換してLD端子468として出力する。具体的には、2つの電池パック100A、100Bの使用が禁止される状態、即ち、図21のステップ291に該当する状態になったらLD端子468の電位をグランド電位に落とすようにする。図23には図示していないが、電気機器本体301側にも制御部が設けられ、モータ306の回転制御、モータ206に流れる電流監視を行い、図示しない他の通信端子群を用いて制御部440を介して電池パック100A、100Bとの間接的な通信を行う。電気機器本体301側の図示しない制御部は、LD端子328の電位がハイの時はスイッチング素子315を導通させてモータ306の駆動を許容するが、LD端子328の電位がグランド電位に落ちると、スイッチング素子315のドレイン-ソース間を遮断する。
【0125】
図24はアダプタ400の制御部440による制御手順を示すフローチャートである。制御部440の動作は、図21で示した制御部240の動作と同じである。同じ手順のステップには同じ番号の符号(281~291)を付与している。違う部分はステップ292~296の追加である。ステップ286~288、290で電池パック100A、100Bのセルユニット間の接続形態(直列接続か並列接続か)が設定された後に、制御部440がLD端子468を介して電気機器本体301のLD端子328に放電許可信号(放電OKを示すハイ電位)を出力する。また、ステップ291にて制御部440が電池パック100A、100Bからの放電を停止させると判断した後に、制御部440がLD端子468をグランド電位に落とすことによって、電気機器本体301側のLD端子328をグランド電位にする。
【0126】
以上、実施の形態7においてはアダプタ400に、2つのリレースイッチ261、262を収容し、内蔵する制御部440によって電池パック100A、100Bの接続形態を変更するので、2つの電池パック100A、100Bの高電位側の1.5倍の電圧を電気機器本体301に出力できるようになった。この構成は電気機器本体301が、定格36V~54Vの範囲で動作可能な電気機器であれば更に多様な使用形態が可能となる。例えば、電気機器本体301の高出力が必要な場合は、電池パック100A、100Bの一方の第1セルユニットと第2セルユニットを並列接続とし、他方の電池パックの第1セルユニットと第2セルユニットを直列接続とし、それらを直列に接続することができる。また、電気機器本体301の高出力が不要で長時間駆動が必要な場合は、電池パック100A、100Bの双方の第1セルユニットと第2セルユニットを直列接続出力とし、それらの出力を並列に接続して、電池パック100と同電圧(つまり36V)で電池パック100の1個分の2倍の電池容量を実現することもできる。
【0127】
以上、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、実施の形態1~4において、制御部533は、制御系電源生成用の電圧を、インバータ回路543への入力電圧ラインから取得してもよい。この場合、V端子を省略できる。また、この場合、リレー切替え時のオフのタイミングで電気機器本体側に電源供給されなくなるが、再通電時に制御部533のマイコンの起動処理を行えばよい。あるいは、制御部533はコンデンサ等に蓄えた電力をリレー切替え時のオフのタイミングにおける電力として利用してもよい。制御部533の電源回路による降圧方式は、1ステップに限定されず、2ステップとしてもよい。例えば、制御部533の電源回路は、入力電圧(18V、36V又は54V)を一旦12V等の中間電圧に降圧し、中間電圧を電源電圧(例えば5V)に更に降圧する構成としてもよい。
【0128】
さらに、直列接続、並列接続を切り替える手段として、複数のリレースイッチにより実現したが、リレースイッチの代わりに複数の半導体スイッチング素子を用いて切り替え手段を実現しても良い。さらに、上述の実施の形態5~7では18V/36V切り替え可能な電池パック100を2つ用いたが、電池パック100を3つ用いて2つの電池パックの出力を直列接続とし、1つの電池パックの出力を並列接続とし、それらを直列に接続することによって合計96V(=36V+36V+18V)の出力を得るように構成しても良い。
【0129】
実施の形態で具体的な数値として例示した電圧やセルユニットの数、接点数等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。本発明の電気機器本体は、実施の形態で例示したインパクトドライバに限定されず、インパクトドライバ以外の電動工具や作業機であってもよいし、電動工具や作業機以外のラジオ等の電気機器であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
1,1A…電気機器本体、2…ハウジング、2a…胴体部、2b…ハンドル部、3…電池パック装着部、5…トリガレバー、6…正逆切替レバー、8…先端工具保持部、9…先端工具、11a,11b…レール部、12…湾曲部、14…突起部、18,19…負荷装置、20…ターミナル部、20a…垂直面、20b…水平面、22a,22b…正極入力端子、27a,27b…負極入力端子、28…LD端子、50…ターミナル部、51…基台、51a,51b…凹部、52a,52b…正極入力端子、54…T端子、57a,57b…負極入力端子、58…LD端子、59…リード線、60…ターミナル部、62…正極入力端子、67…負極入力端子、71~79…リード線(配線手段)、100,100A,100B…電池パック、101…下ケース、104…スリット、110…上ケース、111…下段面、111a…切り欠き部、115…上段面、120…スロット部、121~128…スロット、131…ストッパ部、132…隆起部、134…スリット、138a,138b…レール溝、141a,141b…ラッチボタン、142a,142b…係止爪、145…セパレータ、146…第1セルユニット、147…第2セルユニット、150…回路基板、151a,151b…取付孔、157a,157b…ネジボス、160…接続端子群、161,162…上側正極端子、162a,162b…腕部、164…T端子、165…V端子、166…LS端子、167…上側負極端子、167a,167b…腕部、168…LD端子、171,172…下側正極端子、172a,172b…腕部、177…下側負極端子、177a,177b…腕部、181a,182a,183a,186a,187a,188a…引出しタブ、194b,196b~199b…リード線の端部、200…電気機器、201,201A,201B,201C…電気機器本体,202…ハウジング、202a…胴体部、202b…ハンドル部、203…ケース、204…電池パック装着部、204a…第1装着部、204b…第2装着部、205…トリガレバー、206…モータ、208…先端工具保持部、215…スイッチング素子、216…シャント抵抗、222…正極入力端子、227…負極入力端子、240…制御部、241,242…リード線、252a,252b…正極入力端子、257a,257b…負極入力端子、261…第1リレースイッチ、262…第2リレースイッチ、271~278…リード線、271a,272a,274b,275a…リード線,300…電気機器、301…電気機器本体、302b…ハンドル部、303…電池パック装着部、306…モータ、315…スイッチング素子、316…シャント抵抗、322…正極入力端子、327…負極入力端子、328…LD端子、400…アダプタ、440…制御部、441…ラッチボタン、457a…正極端子、457a…負極端子、468…LD端子、501,501A…電気機器、510,510A~510C…電池パック、513…制御部、521~523…セルユニット、530…電気機器本体、533…制御部、539…ハウジング、539a…胴体部、539b…ハンドル部、539c…電池着脱部、540…モータ(出力部)、542…トリガスイッチ(メインスイッチ)、543…インバータ回路。
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