(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】自動運転装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20241126BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20241126BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241126BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20241126BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20241126BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20241126BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241126BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20241126BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W50/04
B60W50/14
B60W30/182
B60W10/20
B60W10/184
G08G1/16 C
B62D6/00
B60T7/12 D
(21)【出願番号】P 2023002957
(22)【出願日】2023-01-12
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】岩城 祐輝
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-114995(JP,A)
【文献】特開2021-095133(JP,A)
【文献】特開2022-134541(JP,A)
【文献】特開2022-149043(JP,A)
【文献】特開2016-137819(JP,A)
【文献】特開2021-113043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
B60W 10/00 ~ 10/30
G08G 1/00 ~ 1/16
B62D 6/00
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵及び速度を自動制御して前記車両を走行させる自動運転装置であって、
前記操舵及び前記速度を自動制御しているときに、前記車両の駆動系の異常及び周辺状況を検出するセンサの異常の少なくともいずれかを検知する異常検知部と、
前記異常検知部により異常が検知された場合に、前記速度の自動制御を、前記速度を運転者の操作で制御する手動制御に切り替えて、前記手動制御に切り替えた時点から所定の待機時間が経過するまで前記操舵の自動制御を継続する自動制御部と、
を有
し、
前記自動制御部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置が操作されなければ、前記手動制御を自動制御に切り替えて前記車両を減速する制御を実行することにより、前記車両を停車させる、
自動運転装置。
【請求項2】
前記自動制御部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置が操作された場合、前記操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える、
請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
前記
自動制御部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置に取り付けられたセンサにより物体の接触が検知された場合、前記操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える、
請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記自動制御部は、前記車両の車速が大きいほど前記待機時間を短くする、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記自動制御部は、前記車両に搭載されているセンサにより移動物が検出されていれば前記待機時間を短くして、前記センサにより移動物が検出されていなければ前記待機時間を長くする、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を自動制御する自動運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動系及び操舵系の両方の自動運転中に異常を検知したら自動制御を解除する技術が知られている。特許文献1には、駆動系(サスペンションの挙動、エンジンルーム)の異常を検知したときに駆動系及び操舵系の両方の自動運転を解除する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両の駆動系の異常を検知したときに車両の運転者がステアリングホイールを握っていなかったり、アクセルペダルやブレーキペダルに足をのせていなかったりして直ちに車両を操作できない場合がある。このように、運転者が直ちに操作できない場合に駆動系及び操舵系の両方の自動運転を解除すると、車両が自動制御も手動制御もされない状態となり、安全性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、異常発生時の安全性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、車両の操舵及び速度を自動制御して前記車両を走行させる自動運転装置であって、前記操舵及び前記速度を自動制御しているときに、前記車両の駆動系の異常及び周辺状況を検出するセンサの異常の少なくともいずれかを検知する異常検知部と、前記異常検知部により異常が検知された場合に、前記速度の自動制御を、前記速度を運転者の操作で制御する手動制御に切り替えて、前記手動制御に切り替えた時点から所定の待機時間が経過するまで前記操舵の自動制御を継続する自動制御部と、を有する自動運転装置を提供する。
【0007】
前記自動制御部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置が操作された場合、前記操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替えてもよい。
【0008】
前記判定部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置に取り付けられたセンサにより物体の接触が検知された場合、前記操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替えてもよい。
【0009】
前記自動制御部は、前記待機時間が経過するまでの間に前記車両の操舵装置が操作されなければ、前記車両を停車させてもよい。
【0010】
前記自動制御部は、前記車両の車速が大きいほど前記待機時間を短くしてもよい。
【0011】
前記自動制御部は、前記車両に搭載されているセンサにより移動物が検出されていれば前記待機時間を短くして、前記センサにより移動物が検出されていなければ前記待機時間を長くしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異常発生時の安全性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】自動運転装置の構成を説明するための図である。
【
図2】操舵制御操作が行われたか否かを判定する処理を説明するための図である。
【
図3】待機時間を設定する処理を説明するための図である。
【
図4】自動運転装置が実行する制御を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[自動運転装置1の構成]
図1は、自動運転装置1の構成を説明するための図である。自動運転装置1は、自動運転車両である車両2に搭載されている。車両2には、センサ3、操舵系システム4、駆動系システム5及び出力装置6が搭載されている。
【0015】
センサ3は、周辺状況を検出するセンサである。センサ3は、例えば撮像装置及びLIDARの少なくともいずれかを含む。センサ3は、撮像装置及びLIDARの少なくともいずれかが検出した検出値を自動運転装置1に出力する。また、センサ3は、車両2の周辺に存在する物体を検出してもよい。例えば、センサ3は、撮像装置が撮像した撮像画像及びLIDARの検出値の少なくともいずれかに基づいて、車両2の周辺に存在している物体である移動物及び静止物を検出する。移動物は例えば他車両及び人であり、静止物は道路上の物体である。
【0016】
操舵系システム4は、ラック・アンド・ピニオン型のステアリングシステムであり、操舵装置であるステアリングホイール41、ステアリングシャフト、ラック・アンド・ピニオン、タイ・ロッド及びキングピンを含む。運転者は、ステアリングホイール41を回転させることにより車両2の操舵角を変化させることができる。なお、操舵系システム4は、ラック・アンド・ピニオン型のステアリングシステムに限らず、ウオーム・アンド・セクター型又はステアリング・リンク型のステアリングシステムであってもよい。
【0017】
駆動系システム5は、トランスミッション、プロペラシャフト、クラッチ、ドライブシャフト、ブレーキ及びエンジンを含む。具体的には、駆動系システム5は、クラッチを作動させる装置、ブレーキを作動させる装置及びエンジンのシリンダに燃料を噴射させる燃料噴射装置を含む。
【0018】
自動運転装置1は、車両2の操舵及び速度を自動制御して車両2を走行させる。例えば、自動運転装置1は、センサ3が検出した検出値に基づいて、操舵系システム4及び駆動系システム5を制御することにより、目標地点に向かうように車両2を走行させる。具体的には、自動運転装置1は、センサ3が検出した移動物及び静止物に車両2が接触しないようにしながら車両2を目標地点に向かうように走行させる。自動運転装置1は、センサ3及び駆動系システム5の少なくともいずれかの異常を検知したら、異常を検知したことを示す情報を出力装置6に報知させる。
【0019】
出力装置6は、異常を検知したことを示す情報を出力するスピーカ及びディスプレイの少なくともいずれかである。車両2は、出力装置6として、スピーカ及びディスプレイの両方を搭載していてもよい。
【0020】
自動運転装置1は、センサ3及び駆動系システム5の少なくともいずれかの異常を検知したら、駆動系システム5の自動制御を手動制御に切り替えて、操舵系システム4の自動制御を継続する。これにより、自動運転装置1は、異常発生時に車両2の運転者がステアリングホイール41から手を離して手動でステアリングホイール41を操作できなくても、車両2の操舵が自動制御も手動制御もされない状態となることを抑制できる。その結果、自動運転装置1は、車両2の安全性を向上できる。以下、自動運転装置1の構成を具体的に説明する。
【0021】
自動運転装置1は、記憶部11及び制御部12を有する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0022】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、自動制御部121、異常検知部122及び報知制御部123としての機能を実現する。
【0023】
自動制御部121は、車両2の操舵及び速度を自動制御して車両2を走行させる。例えば、自動制御部121は、センサ3が検出した検出値に基づいて、操舵系システム4及び駆動系システム5を制御することにより、目標地点に向かうように車両2を走行させる。具体的には、自動制御部121は、センサ3が検出した移動物及び静止物と車両2とが接触しないようにしながら、操舵系システム4及び駆動系システム5を制御して目標地点に向かうように車両2を走行させる。なお、自動制御部121は、センサ3が検出した検出値に基づいて車両2の周辺の移動物及び静止物を検出してもよい。
【0024】
異常検知部122は、駆動系システム5の異常及びセンサ3の異常の少なくともいずれかを検知する。例えば、異常検知部122は、自動制御部121が車両2の操舵及び速度を自動制御しているときに、センサ3の異常及び駆動系システム5の異常を検知する。センサ3の異常は、例えば、センサ3が検出した値が正常でない検出値の異常、自動運転装置1とセンサ3との通信が途絶する通信の異常、センサ3の電源が落ちる又は電源が入らない等の電源の異常である。
【0025】
異常検知部122は、駆動系システム5の異常を検知する。具体的には、異常検知部122は、駆動系システム5に含まれるトランスミッション、プロペラシャフト、クラッチ、ドライブシャフト、ブレーキ及びエンジンを構成する部品の状態を検出するセンサの出力値に基づいて駆動系システム5の異常を検知する。また、異常検知部122は、駆動系システム5のクラッチを作動させる装置、ブレーキを作動させる装置及び燃料噴射装置と、自動運転装置1との通信が途絶する通信の異常、各装置の電源が落ちる又は電源が入らない等の電源の異常を検知する。
【0026】
報知制御部123は、異常検知部122が異常を検知すると、異常を検知したことを出力装置6に報知させる。例えば、異常検知部122は、異常を検知したことを示す音声を出力装置6のスピーカに出力させる。また、報知制御部123は、異常を検知したことを示す情報を出力装置6のディスプレイに表示させる。
【0027】
自動制御部121は、異常検知部122により異常が検知されたら速度の自動制御を運転者の操作で速度を制御する手動速度制御に切り替える。自動制御部121は、手動速度制御に切り替えた時点から待機時間が経過するまで操舵の自動制御を継続する。待機時間は、車両2の運転者が報知に反応して操舵制御操作が可能になるまでの時間に応じて定められている。待機時間の具体的な値は2秒であるが、これに限定するものではない。このように、自動制御部121は、センサ3及び駆動系システム5の異常が検知されたとしても、操舵の自動制御を運転者の操作で操舵を制御する手動操舵制御に切り替えることなく、操舵の自動制御を継続させる。その結果、自動制御部121は、運転者がステアリングホイール41から手を離して手動でステアリングホイール41を操作できなくても、車両2の操舵が自動制御も手動制御もされない状態となることを抑制できるので安全性を向上できる。
【0028】
自動制御部121は、速度の自動制御を手動速度制御に切り替えた速度制御切替時点から待機時間が経過するまでの間に運転者が操舵制御操作を行ったら、操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える。例えば、自動制御部121は、速度制御切替時点から待機時間が経過するまでの間に車両2のステアリングホイール41が操作されたら、運転者が操舵制御操作を行ったと判定して、操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える。
図2は、操舵制御操作が行われたか否かを判定する処理を説明するための図である。
【0029】
自動制御部121は、ステアリングホイール41を回転させないで操舵の自動制御を行う場合、操舵の自動制御中にステアリングホイール41が基準位置Kから回転されたら操舵制御操作が行われたと判定する。具体的には、自動制御部121は、ステアリングホイール41の回転角が自動運転制御の操舵の制御量に対応する基準角度θ以上になったら操舵制御操作が行われたと判定する。
【0030】
運転者による操舵制御が行われたと判定する処理は、ステアリングホイール41に取り付けられた接触検知センサによってもよい。具体的には、自動制御部121は、接触検知センサにより物体の接触が検知されたら操舵制御操作が行われたと判定する。接触検知センサは、例えば静電容量式のセンサであり、人の手が触れたら物体が接触したことを検知する。
【0031】
自動制御部121は、操舵制御操作が行われたか否かを判定する処理を実行する直前に、操舵の制御量に対応する位置Aまでステアリングホイール41が回転したときの角度を基準角度θに設定する。言い換えると、自動制御部121は、自動運転制御による操舵角にするのに必要なステアリングホイール41の回転角を基準角度θに設定する。なお、ステアリングホイール41の回転角は、例えばステアリングホイール41が基準位置Kにあるときに0度であるとする。
【0032】
自動制御部121は、ステアリングホイール41を回転させて操舵の自動制御を行う場合、ステアリングホイール41の回転角が基準角度θを含む判定範囲H外になったら操舵制御操作が行われたと判定する。この場合、自動制御部121は、基準角度θに所定値を加えた上限値B以下、基準角度θから所定値を引いた下限値C以上の範囲を判定範囲Hに設定する。所定値は、適宜定めればよく、例えば1度である。
【0033】
自動制御部121は、運転者が正しい操舵制御操作を行った場合に操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替えて、運転者が正しい操舵制御操作を行っていない場合に操舵の自動制御を継続してもよい。例えば、自動制御部121は、操舵の自動制御による車両2の旋回方向と、運転者の操舵制御操作による旋回方向とが同じであるときに、正しい操舵制御操作が行われたと判定して操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える。自動制御部121は、操舵の自動制御の旋回方向と、操舵制御操作の旋回方向とが異なれば、正しい操舵制御操作が行われていないと判定して操舵の自動制御を継続する。
【0034】
具体例を挙げると、自動制御部121は、操舵の自動制御が右旋回である場合、運転者の操舵制御操作が右旋回であれば正しい操舵制御操作が行われたと判定し、運転者の操舵制御操作の向きが左旋回であれば正しい操舵制御操作が行われていないと判定する。より具体的には、自動制御部121は、操舵の自動制御が右旋回である場合に運転者の操舵制御操作が右旋回であり、かつステアリングホイール41の回転角が基準角度θを含む判定範囲H外になったら正しい操舵制御操作が行われたと判定する。自動制御部121は、操舵の自動制御が右旋回である場合に運転者の操舵制御操作が右旋回であっても、かつステアリングホイール41の回転角が基準角度θを含む判定範囲H内である間、正しい操舵制御操作が行われていないと判定する。これにより、自動制御部121は、運転者が自動運転制御と異なる誤った操作を行った場合に、誤った操作を反映してしまうことを抑制できる。
【0035】
自動制御部121は、速度制御切替時点から待機時間が経過するまでの間にステアリングホイール41が操作されなければ、車両2を停車させる。具体的には、自動制御部121は、検知された異常がエンジンの異常であればエンジンを停止させるとともにブレーキを作動させて車両2を停車させる。また、自動制御部121は、検知された異常がブレーキの異常であればエンジンの出力を小さくしてエンジンブレーキを作動させることにより車両2を停車させる。具体的には、自動制御部121は、異常検知部122がセンサ3の異常を検知する直前にセンサ3が検出した検出値に基づいて車両2の周辺の物体を特定し、特定した物体と車両2とが接触しない位置に車両2を停車させる。このようにすることで、自動制御部121は、速度の自動制御を手動速度制御に切り替えた時点から待機時間を経過しても車両2の運転者が操舵制御操作を行わないときに車両2を停車させるので、異常がある状態で車両2を走行させ続けることを抑制できる。
【0036】
ところで、車両2の状態や周辺状況に応じて、運転者の操作が直ちに必要な場合と、運転者の操作が直ちに必要でない場合がある。そこで、自動制御部121は、異常検知部122が異常を検知したときに、車両2の状態及び周辺状況に応じて待機時間を設定する。例えば、自動制御部121は、車両2の車速が大きいほど待機時間を短くする。
図3は、待機時間を設定する処理を説明するための図である。
図3の横軸は車速を示し、縦軸は待機時間を示す。自動制御部121は、車両2の車速が第1閾値V1未満であれば、車両2の運転者が報知に反応して操舵制御操作が可能になるまでの基準時間TKを待機時間として決定する。
【0037】
自動制御部121は、車速が第1閾値V1以上であり、かつ第1閾値V1よりも大きい第2閾値V2未満であれば、車両2の車速が大きいほど待機時間を短くする。言い換えると、自動制御部121は、車速に反比例する待機時間を決定する。このようにすることで、自動制御部121は、運転者の操作が直ちに必要な状況で運転者の操作がないときには車両2を停車させるので、車両2が周辺の移動物や静止物と接触する確率を低減できる。
【0038】
自動制御部121は、車速が第2閾値以上であれば、待機時間を下限時間Tminにする。下限時間Tminは、異常の報知に反応した運転者が操作可能になる最小時間である。これにより、自動制御部121は、運転者が反応するのに最低限必要な時間よりも短い時間で自動制御に切り替えてしまうことを抑制できる。その結果、自動制御部121は、運転者が操舵制御操作を行おうとしているのに車両2を停車させてしまうことを抑制できる。
【0039】
また、車両2の周辺に移動物が存在していれば、移動物と車両2が接触しないように運転者が直ちに操舵制御操作を行うか、車両2を停車させることが望ましい。そこで、自動制御部121は、センサ3の検出値に基づいて移動物を検出しているか、センサ3により移動物が検出されていれば待機時間を短くする。これにより、自動制御部121は、運転者の操作が直ちに必要な状況で運転者の操作が無ければ車両2を直ちに停車させられるようになる。また、自動制御部121は、センサ3により移動物が検出されていなければ待機時間を長くする。このようにすることで、自動制御部121は、運転者の操作が直ちに必要な状況でなければ、運転者の操作を受け付けられる時間を長くできる。
【0040】
(変形例1)
報知制御部123は、異常検知部122が異常を検知したら異常を検知したことを出力装置6に報知させた。これに限らず、報知制御部123は、自動制御部121が速度の自動制御を手動速度制御に切り替えたら、異常を検知したことにより速度の自動制御を手動速度制御に切り替えたこと出力装置6に報知させてもよい。例えば、報知制御部123は、異常検知部122が切り替えるタイミングと同じタイミングで異常を検知したことにより速度の自動制御を手動速度制御に切り替えたこと出力装置6に報知させる。
【0041】
(変形例2)
自動制御部121が速度の自動制御を手動速度制御に切り替える制御切替処理と、報知制御部123が異常を報知する異常報知処理とは、同時に行うことが望ましい。しかし、制御切替処理と異常報知処理のいずれか一方が先に実行されてしてしまうことがある。そこで、自動制御部121は、速度制御切替時点と報知制御部123が出力装置6に異常を報知させた異常報知時点とのうちの早い方を起点に、待機時間を計数する。例えば、異常検知部122は、速度制御切替時点よりも異常報知時点の方が早ければ、異常報知時点から待機時間を計数する。この場合、異常検知部122は、異常を検知したことを報知制御部123が出力装置6に報知させた時点から待機時間が経過するまでに操舵制御操作が行われていれば、操舵の自動制御を手動操舵制御に切替え、行われていなければ車両2を停車させる。
【0042】
[制御を切り替える処理]
図4は、自動運転装置1が実行する制御を切り替える処理の一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、自動制御部121が速度及び操舵の自動制御中に異常検知部122が異常を検知したら実行される。
【0043】
報知制御部123は、異常検知部122が異常を検知したら、異常を検知したことを出力装置6に報知させる(ステップS1)。具体的には、異常検知部122は、異常を検知したことを示す音声を出力装置6のスピーカに出力させるとともに、異常を検知したことを示す情報を出力装置6のディスプレイに表示させる。また、自動制御部121は、異常検知部122が異常を検知したら速度の自動制御を運転者の操作で速度を制御する手動速度制御に切り替える(ステップS2)。なお、ステップS2の処理はステップS1の前に実行されてもよく、ステップS1及びステップS2の処理は並列に実行されてもよい。
【0044】
自動制御部121は、手動速度制御に切り替えた時点から待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。自動制御部121は、手動速度制御に切り替えた時点から待機時間が経過していなければ(ステップS3でNo)、車両2のステアリングホイール41が操作されたか否かを判定する(ステップS4)。例えば、自動制御部121は、ステアリングホイール41の回転角が基準角度θを含む判定範囲H外になったら操舵制御操作が行われたと判定し、ステアリングホイール41の回転角が基準角度θを含む判定範囲H内であれば操舵制御操作が行われていないと判定する。
【0045】
自動制御部121は、車両2のステアリングホイール41が操作されたら(ステップS4でYes)、操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替える(ステップS5)。自動制御部121は、車両2のステアリングホイール41が操作されていなければ(ステップS4でNo)、ステップS3に戻る。自動制御部121は、手動速度制御に切り替えた時点から待機時間が経過したら(ステップS3でYes)、車両2を停車させる(ステップS6)。例えば、自動制御部121は、検知された異常がエンジンの異常であればエンジンを停止させてブレーキを作動させることにより車両2を停車させる。
【0046】
[自動運転装置1の効果]
以上説明したとおり、自動運転装置1は、操舵及び速度を自動制御しているときに、車両の駆動系の異常及び周辺状況を検出するセンサの異常の少なくともいずれかを検知したら、速度の自動制御を運転者の操作で速度を制御する手動速度制御に切り替えて、手動速度制御に切り替えた時点から所定の待機時間が経過するまで操舵の自動制御を継続する。このように、自動制御部121は、車両2の駆動系の異常が検知されたときに、操舵の自動制御を手動操舵制御に切り替えることなく、操舵の自動制御を継続させる。その結果、自動制御部121は、運転者が直ちに車両2を操作できない場合に、車両2の操舵が自動制御も手動制御もされない状態となることを抑制できるので、安全性を向上できる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 自動運転装置
11 記憶部
12 制御部
121 自動制御部
122 異常検知部
123 報知制御部
2 車両
3 センサ
4 操舵系システム
41 ステアリングホイール
5 駆動系システム
6 出力装置