(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】バッテリの管理装置および管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241126BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20241126BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20241126BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241126BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241126BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241126BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241126BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/10 B
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
(21)【出願番号】P 2023105135
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃太
(72)【発明者】
【氏名】島貫 伊紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮川 仁
(72)【発明者】
【氏名】西谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊行
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/098686(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171688(WO,A1)
【文献】特開2007-234257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
G01R 31/00-31/01
G01R 31/24-31/25
G01R 31/36-31/396
G01R 31/40-31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの初期からの使用履歴および劣化度のそれぞれのデータを取得する取得部と、
前記初期から取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第1の近似線を算出する第1算出部と、
前記初期から前記第1の近似線における変曲点
までに取得された前記データを除く、前記変曲点を過ぎてから取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第2の近似線を算出する第2算出部と、
算出された前記第2の近似線に基づいて、前記劣化度を判定する判定部と、
を備える、
バッテリの管理装置。
【請求項2】
前記バッテリの前記使用履歴は、前記バッテリのサイクル数、使用時間、前記バッテリの温度、前記バッテリの電圧のうち少なくともいずれかを含む
請求項
1に記載のバッテリの管理装置。
【請求項3】
前記バッテリの前記劣化度は、前記バッテリの残存容量率を含む
請求項
1に記載のバッテリの管理装置。
【請求項4】
バッテリの初期からの使用履歴および劣化度のそれぞれのデータを取得し、
前記初期から取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第1の近似線を算出し、
前記初期から前記第1の近似線における変曲点
までに取得された前記データを除く、前記変曲点を過ぎてから取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第2の近似線を算出し、
算出された前記第2の近似線に基づいて、前記劣化度を判定する、
バッテリの管理方法。
【請求項5】
前記バッテリの前記使用履歴は、前記バッテリのサイクル数、使用時間、前記バッテリの温度、前記バッテリの電圧のうち少なくともいずれかを含む
請求項
4に記載のバッテリの管理方法。
【請求項6】
前記バッテリの前記劣化度は、前記バッテリの残存容量率を含む
請求項
4に記載のバッテリの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(Electric Vehicle:EV)やハイブリッド車においては、走行用の動力源に電力を供給するためのバッテリが車両に搭載されている。バッテリは、繰り返し使用することで、徐々に劣化する。また、バッテリの使用状況に応じて劣化スピードが速まる場合がある。そこで、バッテリの使用履歴に基づいて、バッテリの劣化度を予測することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バッテリの使用方法に応じた劣化曲線からバッテリの劣化度を予測することが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、使用履歴および環境条件に基づいて膨張曲線および劣化曲線のそれぞれを補正し、補正した膨張曲線および劣化曲線に基づいて、バッテリの劣化度を予測することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-084198号公報
【文献】特開2020-071035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バッテリの劣化度は、通常劣化時のデータに基づいて作成された劣化曲線により判定されることが好ましい。
【0007】
しかしながら、バッテリは、様々な原因により初期に劣化を起す。そのため、バッテリの初期に劣化を起こす期間である初期劣化期間のデータを含むデータに基づいて劣化曲線が作成される場合がある。そのような劣化曲線に基づいてバッテリの劣化度を判定する場合、バッテリの劣化度を誤判定するおそれがある。
【0008】
特許文献1に記載された発明においては、初期劣化期間のデータを含むデータに基づいて劣化曲線が作成されるおそれがあるため、バッテリの劣化度を誤判定するおそれがある。
【0009】
特許文献2に記載された発明においても、初期劣化期間のデータを含むデータに基づいて劣化曲線が作成されるおそれがあるため、バッテリの劣化度を誤判定するおそれがある。
【0010】
本開示の目的は、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能なバッテリの管理装置および管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本開示におけるバッテリの管理装置は、
バッテリの初期からの使用履歴および劣化度のそれぞれのデータを取得する取得部と、
前記初期から取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第1の近似線を算出する第1算出部と、
前記初期から前記第1の近似線における変曲点までに取得された前記データを除く、前記変曲点を過ぎてから取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第2の近似線を算出する第2算出部と、
算出された前記第2の近似線に基づいて、前記劣化度を判定する判定部と、
を備える。
【0013】
本開示におけるバッテリの管理方法は、
バッテリの初期からの使用履歴および劣化度のそれぞれのデータを取得し、
前記初期から取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第1の近似線を算出し、
前記初期から前記第1の近似線における変曲点までに取得された前記データを除く、前記変曲点を過ぎてから取得された前記データに基づいて、前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す第2の近似線を算出し、
算出された前記第2の近似線に基づいて、前記劣化度を判定する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、バッテリの劣化度の誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの管理装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、記憶部に蓄積される蓄積データの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態における散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの管理装置の一例を示す図である。なお、本実施の形態におけるバッテリの管理装置は、トラックや、バスなどの商用車に適用することが可能であるが、乗用車などの車両にも適用することが可能である。
【0018】
本実施の形態におけるバッテリの管理装置が適用される車両10は、電気自動車(Electric Vehicle:EV)や、ハイブリッド車である。EV10には、走行用の動力源(モータ)に電力を供給するためのバッテリ(不図示)が搭載されている。バッテリは、充放電の繰り返し回数であるサイクル数に応じて、徐々に劣化する。また、バッテリは、使用状況に応じてその劣化スピードが速まることが知られている。以下の説明で、バッテリから電力が供給されるモータなどの電力供給先を「負荷」という場合がある。
【0019】
EV10には、車両制御装置30(Vehicle Control Unit:VCU)が設けられている。VCU30は、EV10の状態を判断し、EV10を最適な状態に維持する制御を実行する。具体的には、VCU30は、EV10の異常を検知した場合、EV10を停止するようにモータを制御する。VCU30は、バッテリをモニタリングし、バッテリの稼働時間を取得する。VCU30は、EV10の走行距離を取得する。また、VCU30は、バッテリと負荷との間の電圧を変化させることで、バッテリから負荷への供給電力を制御する。また、VCU30は、バッテリを充電するときの充電電力が充電可能電力を超過しないように充電器(不図示)を制御する。
【0020】
バッテリの稼働時間およびEV10の走行距離は、VCU30からバッテリの管理装置20に送られる。
【0021】
バッテリは、温度センサ(不図示)と電圧センサ(不図示)とを有している。温度センサは、バッテリの温度およびバッテリの周囲温度を検出する。電圧センサは、バッテリの電圧を検出する。
【0022】
EV10には、バッテリの使用状況を監視する監視部40が設けられている。監視部40は、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果を取得し、取得した検出結果に基づいて、残存容量率(State Of Health:SOH)を特定する。また、監視部40は、バッテリのサイクル数を取得する。サイクル数は、バッテリが第1の残量以上の充電量から第2の残量以下の充電量まで放電し、再度第1の残量以上の充電量に充電するまでの充放電サイクルを1とするパラメータである。なお、第1の残量は、第2の残量よりも高く、第1の残量は満充電としてもよい。監視部40は、バッテリの残量などを監視して、バッテリが経過したサイクル数を取得する。
【0023】
監視部40は、バッテリを安全かつ有効に使うための制御を行う。具体的には、監視部40は、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果に基づいて、バッテリと負荷との間の接続/切断を行うリレー(不図示)を制御する。
【0024】
温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、サイクル数、および、SOHは、監視部40からバッテリの管理装置20に送られる。なお、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、並びに、サイクル数が本開示の「バッテリの使用履歴」に対応する。また、SOHが本開示の「バッテリの劣化度」に対応する。
【0025】
バッテリの管理装置20は、車両10毎に設けられる。バッテリの管理装置20は、制御部21と記憶部27とを備える。
図1において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図1に示していないデータの流れがあってもよい。
図1において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図1に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0026】
なお、管理装置20は、複数の車両10に対して設けられてもよい。この場合の一例として、管理装置20は、サーバ(不図示)に設けられる。車両10およびサーバのそれぞれは通信部を有し、車両10とサーバとはネットワークを介して通信する。
【0027】
記憶部27は、管理装置20を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input System)等を格納するROM(Read Only Memory)や管理装置20の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0028】
制御部21は、管理装置20のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部27に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部22、第1算出部23、第2算出部24、期間特定部25、判定部26および特定部28として機能する。
【0029】
図1は、管理装置20が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、管理装置20は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算ソースによって実現されてもよい。この場合、制御部21を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。なお、管理装置20が単一の装置で構成される場合、例えば、管理装置20は、
図1に示すVCU30、および、監視部40の全部により構成されてもよい。管理装置20が複数の装置で構成される場合、例えば、管理装置20は、VCU30、および、監視部40のそれぞれで構成されてもよく、また、いずれかの2つの装置を組み合わせたものと、他の一つの装置で構成されてもよい。
【0030】
取得部22は、監視部40からバッテリの使用履歴(温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、並びに、サイクル数)を取得する。また、取得部22は、監視部40からSOHを取得する。
【0031】
記憶部27は、取得部22により取得されたバッテリの使用履歴およびSOHを記憶する。
図2は、記憶部27に蓄積される蓄積データの一例を示す図である。
図2に示すように、記憶部27には、SOH、稼働時間、走行距離、電力積算量のそれぞれのデータが年月日毎に蓄積される。ここで、「稼働時間」は、バッテリの稼働時間、「走行距離」はEV10の走行距離、「電力積算量」は、バッテリの消費電力積算量である。記憶部27には、SOH、稼働時間、走行距離、電力積算量のそれぞれのデータが、それぞれのデータを取得したタイミングに関連付けられて記憶されるといえる。
【0032】
第1算出部23は、過去に取得された使用履歴およびSOHに基づいて、使用履歴と劣化度との関係を表す第1の近似線を算出する。なお、ここで、「過去に取得された使用履歴および劣化度」は、第1の近似線を算出する算出時以前に取得された使用履歴およびSOHをいう。また、「第1の近似線」は、近似曲線や、劣化曲線と呼ばれる。第1の近似線の算出方法には、公知の方法が用いられる。例えば、第1算出部23は、横軸に「年月日」、縦軸にSOHとする散布図に、記憶部27に蓄積された蓄積データをプロットして第1の近似線を算出する。なお、本開示において、第1の近似線の算出に用いられる蓄積データは、「年月日」に限定されない。例えば、「走行距離」や、「電力積算量」や、「サイクル数」でもよい。
【0033】
図3は、本実施の形態における散布図である。
図3における横軸に「サイクル数」を示し、縦軸に「SOH」を示す。
図3に示すように、散布図には、サイクル数に対応するSOHがプロットされる。なお、散布図には複数のサイクル数のそれぞれに対応する複数のSOHがプロットされるが、
図3では、プロットされる複数のSOHを代表してS31,S32を示す。
【0034】
期間特定部25は、第1の近似線に基づいて、バッテリの初期に劣化を起こす期間である初期劣化区間を特定する。具体的には、バッテリの初期劣化は、第1の近似線の使用開始からサイクル数に対するSOHの低下の傾きが小さくなる変曲点として示される。そこで、期間特定部25は、第1の近似線における変曲点を特定する。
図3に、「第1の近似線Lo-q」、「変曲点P」および変曲点Pにおける「サイクル数Np」を示す。サイクル数Npよりも前の区間を「初期劣化区間」といい、サイクル数Npよりも後の区間を「通常劣化区間」という。
図3に「初期劣化区間No-p」を、ハッチングを付して示す。また、
図3に「通常劣化区間Np-q」を示す。また、
図3に、サイクル数Npにおける劣化度(SOH)を「SOHp」で示す。
【0035】
図3に、初期劣化区間No-pおよび通常劣化区間Np-qを含む全区間においてプロットされたSOHに基づいて算出された「第1の近似線Lo-q」を示す。なお、第1の近似線Lo-qに基づき、S31を参照してSOHを推定する場合、推定されたSOHがS32となるため、寿命ラインLbに達するサイクル数Nb1が算出される。急峻に劣化が進む初期劣化区間No-pにおいて得られたデータを用いて近似線を算出することにより、初期劣化区間No-pを含まず通常劣化区間Np-qにおいて得られたデータを用いて算出された近似線よりも、サイクル数に対する劣化度合いが急峻な近似線が得られる。したがって、近似線から推定される寿命ラインLbに達するサイクル数が短く評価されてしまう。
【0036】
これに対して、通常劣化区間Np-q(全区間No-qから初期劣化区間No-pを除いた区間)においてプロットされたSOHに基づいて第2の近似線Lp-qが算出され、第2の近似線Lp-qに基づき、S31を参照してSOHを推定する場合、推定されたSOHがS32とならずに、第2の近似線Lp-qに沿ったSOHが推定されるため、寿命ラインLbに達するサイクル数Nbが算出される。これにより、寿命ラインLbに達するサイクル数が、上記のサイクル数Nb1によりも大幅に先となる。これにより、バッテリの寿命が大幅に短く推定されることが防止される。なお、
図3に、区間が通常劣化区間Np-qよりも長い通常劣化区間Np-rにおいてプロットされたSOHに基づいて算出された第2の近似線Lp-rを示す。
【0037】
したがって、本実施の形態においては、第1の近似線が作成される際に、バッテリの初期劣化が考慮される。期間特定部25は、第1の近似線Lo-qにおける変曲点pを算出する。そして、第2算出部24は、変曲点Pにおけるサイクル数Npよりも後の区間である通常劣化区間Np-qにおいてプロットされたSOHに基づいて、第2の近似線Lp-qを算出する。また、本実施の形態においては、判定部26は、第2の近似線Lp-qに基づいて、バッテリの劣化度を判定する。これにより、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能となる。
【0038】
特定部28は、第2の近似線Lp-qに基づいて、バッテリの推定寿命を特定する。特定部28は、第2の近似線Lp-qと寿命ラインLbとの交点から、バッテリのサイクル数Nb(推定寿命)を特定する。特定部28が特定したサイクル数Nbは、記憶部27に格納される。また、サイクル数Nbは、不図示の通信部を介して、EV10を管理する管理サーバに送信される。なお、サイクル数Nbを、EV10が有する表示デバイスに表示させることによって、EV10のユーザに通知してもよい。
【0039】
上記実施の形態におけるバッテリの管理装置20は、バッテリの初期からの使用履歴およびSOHのそれぞれのデータを取得する取得部22と、取得されたデータに基づいて、使用履歴とSOHとの関係を表す第1の近似線Lo-qを算出する第1算出部23と、第1の近似線Lo-qにおける変曲点pを過ぎたデータに基づいて、使用履歴とSOHとの関係を表す第2の近似線Lp-qを算出する第2算出部24と、算出された第2の近似線Lp-qに基づいて、SOHを判定する判定部26と、を備える。
【0040】
以上の構成により、バッテリの劣化度の誤判定の要因となる初期劣化区間において取得されたデータを除き、通常劣化区間において取得されたデータに基づいて第2の近似線を算出し、第2の近似線に基づいて、劣化度が判定されるため、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能となる。また、第2の近似線に基づいてバッテリの寿命が推定されるため、バッテリの寿命が短縮されことを防止することが可能となる。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、期間特定部25が第1の近似線Lo-qにおける変曲点Pを算出し、変曲点Pにおけるサイクル数Npよりも前の区間を初期劣化区間No-pとし、サイクル数Npよりも後の区間を通常劣化区間Np-qとしたが、本開示はこれに限定しない。例えば、期間特定部25は、第1の近似線Lo-qにおける接線の傾きの増減に基づいて初期劣化区間を算出してもよい。この場合においても、第2算出部24は、全区間から初期劣化区間を除いた通常劣化区間に基づいて第2の近似線を算出し、判定部26は、第2の近似線に基づいてバッテリの劣化度を判定する。
【0042】
また、上述の実施の形態では、サイクル数に対するSOHの近似線を用いて推定寿命を特定したが、これに限らない。他の使用履歴、例えば、温度センサの検出結果、電圧センサの検出結果、または年月日に対するSOHの近似線を用いて、推定寿命を特定してもよい。
【0043】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが要求されるバッテリの管理装置を備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0045】
La 近似線
La1 近似線
Lb 寿命ライン
Lo-q 第1の近似線
Lp-q 第2の近似線
10 電気自動車(EV)
20 バッテリの管理装置
21 制御部
22 取得部
23 第1算出部
24 第2算出部
25 期間特定部
26 判定部
27 記憶部
30 VCU
40 監視部
【要約】
【課題】バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能なバッテリの管理装置および管理方法を提供する。
【解決手段】バッテリの管理装置は、バッテリの初期からの使用履歴および劣化度のそれぞれのデータを取得する取得部と、取得された前記データに基づいて、使用履歴と前記劣化度との関係を表す第1の近似線を算出する第1算出部と、第1の近似線における変曲点を過ぎたデータに基づいて、使用履歴と劣化度との関係を表す第2の近似線を算出する第2算出部と、算出された第2の近似線に基づいて、劣化度を判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図1