(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】圧力支持療法に対する順守を高めさせるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241126BHJP
A61B 5/091 20060101ALI20241126BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G16H10/00
A61B5/091
A61M16/00 305Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175618
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2020569724の分割
【原出願日】2019-06-28
【審査請求日】2023-11-09
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】グラショー ジョナサン セイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マシュース グレゴリー デラーノ
(72)【発明者】
【氏名】ケーン マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シェリー ベンジャミン アーウィン
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032873(WO,A2)
【文献】特表2018-531055(JP,A)
【文献】特表2012-523261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0061319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/091
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力支持療法に対する患者の順守を高めさせるシステムにおいて使用するための外部装置において、前記外部装置は、
前記患者の1つ以上の属性を感知するように構成される複数のセンサ、
前記複数のセンサと通信する処理ユニット、
前記処理ユニットと通信する通信ユニットであり、圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成される通信ユニット、並びに
視覚、聴覚及び/又は振動警報の1つ以上を前記患者に供給するように構成される出力装置を有し、
前記処理ユニットは、
前記患者の複数の属性に関するデータをその時間情報と共に収集する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定する、
前記圧力支持装置の状態を決定する、並びに
前記発生の決定及び前記状態の決定に応じて、前記出力装置を介して患者に指示を与える
ようにプログラムされ、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者による睡眠開始及び睡眠障害の発生を決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が使用中でないと決定することを有し、並びに前記発生を決定するステップ及び前記状態を決定する前記ステップに応じて、前記患者に指示を与えることは、前記圧力支持装置を使用するための聴覚警報を提供すること及び視覚警報を提供することを有する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が既定の時間期間内に起こると決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が既定の近接範囲内にないと決定することを有し、及び前記患者に指示を与えることは、睡眠中に使用するための前記圧力支持装置を得るための視覚的リマインダを前記患者に表示することを有する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こると決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が既定の近接範囲内にあること、及び前記患者が他の既定の時間期間内に前記圧力支持装置を使用しなかったことを決定することを有する、並びに前記患者に指示を与えることは、前記圧力支持装置が定期的に使用されるべきであるという視覚的リマインダを前記患者に表示することを有する、又は
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こること、及び前記患者が睡眠に向かって進んでいることを決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が使用中ではないと決定することを有し、並びに前記患者に指示を与えることは、聴覚警報、振動警報及び/又は視覚警報の1つ以上を前記患者に供給することを有する、
外部装置であって、
前記通信ユニットは、Bluetooth(登録商標)を介して前記圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成される、外部装置。
【請求項2】
圧力支持療法に対する患者の順守を高めさせるシステムであって、前記システムは、
圧力支持装置、及び
外部装置
を有し、前記外部装置は、
前記患者の1つ以上の属性を感知するように構成される複数のセンサ、
前記複数のセンサと通信する処理ユニット、
前記処理ユニットと通信する通信ユニットであり、前記圧力支持装置とワイヤレス通信する通信ユニット、並びに
聴覚警報及び/又は振動警報の1つ以上を患者に供給するように構成される出力装置
を備え、前記処理ユニットは、
前記患者の複数の属性に関するデータをその時間情報と共に収集する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定する、
前記圧力支持装置の状態を決定する、
前記発生の決定及び前記状態の決定に応じて、前記出力装置を介して患者に指示を与える
ようにプログラムされ、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者による睡眠開始及び睡眠障害の発生を決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が使用中でないと決定することを有し、並びに前記発生を決定するステップ及び前記状態を決定する前記ステップに応じて、前記患者に指示を与えることは、前記圧力支持装置を使用するための聴覚警報を提供すること及び視覚警報を提供することを有する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が既定の時間期間内に起こると決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が既定の近接範囲内にないと決定することを有し、及び前記患者に指示を与えることは、睡眠中に使用するための前記圧力支持装置を得るための視覚的リマインダを前記患者に表示することを有する、
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こると決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が既定の近接範囲内にあること、及び前記患者が他の既定の時間期間内に前記圧力支持装置を使用しなかったことを決定することを有する、並びに前記患者に指示を与えることは、前記圧力支持装置が定期的に使用されるべきであるという視覚的リマインダを前記患者に表示することを有する、又は
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定することは、前記患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こること、及び前記患者が睡眠に向かって進んでいることを決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定することは、前記圧力支持装置が使用中ではないと決定することを有し、並びに前記患者に指示を与えることは、聴覚警報、振動警報及び/又は視覚警報の1つ以上を前記患者に供給することを有する、
システムであって、
前記通信ユニットは、Bluetooth(登録商標)を介して前記圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処方された治療に対する順守を高めさせるための方法に関し、特に、処方された圧力支持療法に対する順守を高めさせるための方法に関する。本発明は、そのような方法を実施する際に使用するためのシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人々は、睡眠中の呼吸障害に苦しんでいる。睡眠時無呼吸は、世界中の何百万人もの人々が苦しんでいるこのような睡眠呼吸障害の一般的な例である。睡眠時無呼吸の1つの種類は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)であり、典型的には上気道又は咽頭領域である、気道の閉塞による呼吸不能により睡眠が繰り返し中断される状態である。気道の閉塞は一般的に、少なくとも一部は、上気道セグメントを安定させる筋肉の全般的な弛緩によるものであり、それにより組織が気道を崩壊させるためであると考えられている。もう一つの種類の睡眠時無呼吸症候群は、中枢性無呼吸であり、これは脳の呼吸中枢からの呼吸信号の欠如による呼吸停止である。閉塞性、中枢性又は閉塞性と中枢性との組み合わせである混合性を問わず、無呼吸状態は、呼吸の完全な停止又は略停止、例えば最大呼吸気流量の90%以上の減少と定義される。
【0003】
睡眠時無呼吸に苦しむ患者は、睡眠の断片化を体験し、潜在的に重度のオキシヘモグロビン不飽和化を伴う睡眠中の間欠的な換気の完全又は略完全な停止を体験する。これらの症状は、極度の日中の眠気、心不整脈、肺動脈性高血圧、うっ血性心不全及び/又は認知機能障害に臨床的に変換される可能性がある。睡眠時無呼吸の他の結果は、右心室機能不全、覚醒時及び睡眠時の二酸化炭素の停滞、並びに動脈血酸素分圧の連続的な低下が含まれる。睡眠時無呼吸患者は、これらの因子による過度の死亡のリスク、並びに運転中及び/又は潜在的に危険な機器の操作中の事故に対する高いリスクに曝される可能性がある。
【0004】
患者が気道の完全又は略完全な閉塞に苦しんでいなくても、例えば睡眠からの覚醒のような悪影響は、気道の部分的な閉塞だけで起こり得ることも知られている。気道の部分的な閉塞は、典型的には低呼吸と呼ばれる浅い呼吸をもたらす。低呼吸は、典型的には、最大呼吸気流の50%又はそれ以上の減少として定義される。他の種類の睡眠呼吸障害は、これらに限定されないが、上気道抵抗症候群(UARS)及び一般にいびきと呼ばれる咽頭壁の振動のような気道の振動が含まれる。
【0005】
患者の気道に持続陽圧呼吸(CPAP)を加えることにより睡眠呼吸障害を治療することはよく知られている。この陽圧は気道に効果的に“添え木(splint)”を当て、それにより肺への開放通路を維持する。患者に送出されるガスの圧力が患者の呼吸サイクルと共に変化する又は患者の呼吸努力と共に変化する陽圧療法を提供し、患者に対する快適性を高めることも知られている。この圧力支持技術はバイレベル圧力支持と呼ばれ、患者に送出される吸気気道陽圧(IPAP)は呼気気道陽圧(EPAP)よりも高い。例えば患者が無呼吸及び/又は低呼吸を経験しているかどうかのような、患者の検出された状態に基づいて、圧力が自動的に調整される陽圧療法を提供することも知られている。この圧力支持技術は、圧力支持装置が呼吸障害を治療するのに必要なだけ高い圧力を患者に供給しようとするので、自動滴定タイプの圧力支持と呼ばれる。
【0006】
上述したような圧力支持療法は、患者の顔面上に柔らかく柔軟な封止クッションを有するマスク構成要素を有する患者インターフェース装置の配置を含む。マスク構成要素は、これらに限定されないが、患者の鼻を覆う鼻マスク、患者の鼻と口を覆う鼻/口マスク又は患者の顔を覆うフルフェイスマスクである。そのような患者インターフェース装置は、額支持体、頬パッド及び顎パッドのような他の患者接触構成要素を使用してもよい。患者インターフェース装置は通例、ヘッドギア構成要素により患者の頭部に固定される。患者インターフェース装置は、ガス送出チューブ又は導管に接続され、圧力支持装置を患者の気道と結び付けるので、呼吸ガス流が、圧力/フロー発生装置から患者の気道に送出され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧力支持療法を施すために使用される装置における多くの革新にもかかわらず、治療の順守は、そのような治療が処方される患者のかなりの部分とって課題のままである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それに応じて、本発明の目的は、処方された圧力支持療法に対する順守を高めさせるシステム及び方法を提供することである。
【0009】
本発明のある態様として、圧力支持装置により施される治療に対する患者の順守を高めさせる方法が提供される。この方法は、患者の複数の属性に関するデータをその時間情報と共に収集するステップ、前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定するステップ、前記圧力支持装置の状態を決定するステップ、並びに前記発生の決定及び前記状態の決定に応じて、前記患者に指示を与えるステップを有する。
【0010】
前記患者の複数の属性に関するデータを収集するステップは、患者のアクチグラフィ、心拍数及び/又は酸素飽和度の1つ以上に関するデータを収集することを有する。
【0011】
前記睡眠に関連する事象の発生を決定するステップは、患者の既定の就寝時間が既定の時間期間内に起こること、患者が睡眠に向かって進んでいる(trailing)いること、患者が睡眠中であること及び/又は患者が睡眠障害を経験していることの1つ以上を決定することを有する。
【0012】
前記圧力支持装置の状態を決定するステップは、スイッチをオンにして、使用中であること、又はスイッチをオンにしていないことの1つを決定することを有する。
【0013】
前記圧力支持装置の状態を決定するステップは、圧力支持装置が、患者の既定の近接範囲内にないこと、患者の既定の近接範囲内にあり、スイッチをオンにして、使用中であること、又は患者の既定の近接範囲内にあるがスイッチをオンにしていないことの1つを決定することを有する。
【0014】
前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定するステップは、患者による睡眠開始及び睡眠障害の発生を決定することを有し、圧力支持装置の状態を決定するステップは、前記圧力支持装置は使用中でないと決定することを有し、前記発生を決定する及び状態を決定することに応じて、患者に指示を与えるステップは、圧力支持装置を使用するための、聴覚警報を提供すること及び視覚警報を提供することを有する。
【0015】
データから睡眠に関連する事象の発生を決定するステップは、患者の就寝時間が既定の時間期間内に起こると決定することを有する、圧力支持装置の状態を決定するステップは、圧力支持装置が既定の近接範囲内にないと決定することを有する、及び患者に指示を与えるステップは、睡眠中に使用するために圧力支持装置を取得するための視覚的リマインダを患者に表示すること有する。
【0016】
データから睡眠に関連する事象の発生を決定するステップは、患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こると決定することを有し、前記圧力支持装置の状態を決定するステップは、前記圧力支持装置が既定の近接範囲内にある、及び患者が他の既定の時間期間内に圧力支持装置を使用していないと決定することを有し、並びに患者に指示を与えるステップは、圧力支持装置が定期的に使用されるべきであるという視覚的リマインダを患者に表示することを有する。
【0017】
データから睡眠に関連する事象の発生を決定するステップは、患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こること、及び患者が睡眠に向かって進んでいることを決定することを有する、前記圧力支持装置の状態を決定するステップは、圧力支持装置が使用中ではないと決定することを有する、並びに患者に指示を与えるステップは、聴覚警報、振動警報及び/又は視覚警報の1つ以上をユーザに提供することを有する。
【0018】
本発明の他の態様として、圧力支持療法に対する患者の順守を高めさせるためのシステムにおいて使用するための外部装置が提供される。前記外部装置は、患者の1つ以上の属性を感知するように構成される複数のセンサ、前記複数のセンサと通信する処理ユニット、前記処理ユニットと通信する通信ユニットであって、前記圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成される通信ユニット、並びに視覚、聴覚及び/又は振動警報の1つ以上を患者に供給するように構成される出力装置を有し、前記処理ユニットは、患者の複数の属性に関するデータをその時間情報と共に収集する、データから睡眠に関連する事象の発生を決定する、圧力支持装置の状態を決定する、並びに前記発生の決定及び前記状態の決定に応じて、出力装置を介して患者に指示を与えるようにプログラムされる。
【0019】
通信ユニットは、Bluetooth(登録商標)を介して圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成されてもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様として、圧力支持療法に対する患者の順守を高めさせるためのシステムがある。このシステムは、圧力支持装置、並びに患者の1つ以上の属性を感知するように構成される複数のセンサ、複数のセンサと通信する処理ユニット、処理ユニットと通信し、圧力支持装置とワイヤレス通信する通信ユニット、並びに聴覚警報及び/又は振動警報の1つ以上を患者に供給するように構成される出力装置を有する外部装置を有する。前記処理ユニットは、患者の複数の属性に関するデータをその時間情報と共に収集する、前記データから睡眠に関連する事象の発生を決定する、圧力支持装置の状態を決定する、並びに前記発生の決定及び前記状態の決定に応じて、出力装置を介して患者に指示を与えるようにプログラムされる。
【0021】
前記1つ以上の属性は、アクチグラフ又は心拍数の少なくとも1つを有する。
【0022】
前記通信ユニットは、Bluetooth(登録商標)を介して圧力支持装置とワイヤレス通信するように構成される。
【0023】
本発明のこれら及び他の目的、特徴並びに特性、構造の関連する要素の動作方法及び機能、並びに部品の組み合わせ及び製造の経済性は、添付の図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考察するとより明らかになり、これらの全てが本明細書の一部を形成し、様々な図面において、同様の参照番号は、対応する部品を示す。しかしながら、これら図面は単に例示及び説明のみを目的とし、本発明の限定の定義として意図されていないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の1つの例示的な実施例による圧力発生装置を有する気道圧力支持システムの部分概略図である。
【
図2】本発明の1つの例示的な実施例による、処方された圧力支持療法に対する順守を高めさせるための方法を実行する際に使用するためのシステムの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの例示的な実施例による、圧力支持療法に対する患者の順守を高めさせるための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例が本明細書に開示されるが、開示される実施例は、単なる本発明の例示であり、これは様々な形態で実施されることを理解されたい。従って、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、及び実質的に如何なる適切な詳細な構造で本発明を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0026】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、「及び/又は」は、そのような言葉により分離される要素の一方又は両方を意味するものとする(例えば、A及び/又はBは、A、B又はA及びBの両方を意味する)。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が「結合される」と述べることは、連動している限り、これらの部品が直接的に又は間接的に、すなわち1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより接合される又は共に動作することを意味している。明細書において、「直接的に結合される」は、2つの要素が互いに直に接していることを意味している。明細書において、「固定して結合される」又は「固定される」は、2つの構成要素が互いに対し一定の方向を維持するように結合されることを意味している。明細書において、「選択的に結合される」は、構成要素が、これら構成要素の何れも損傷することなく、予測可能であり反復的な可能な方法で、容易に結合又は分離されることを可能にすることを意味している。明細書において特に説明されない限り、単に「結合される」として記載される如何なる構成要素も、本発明の範囲から外れることなく、「固定的に」又は「選択的に」結合されてもよい。
【0027】
明細書において、「ユニタリ(unitary)」という言葉は、構成要素が単一ピース又は単一ユニットとして作られることを意味している。すなわち、別々に作られ、その後ユニットとして連結される部分を含んでいる構成要素は、“ユニタリ”な構成要素又は本体ではない。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに「係合する」と述べることは、これらの部品が互いに向けて直接的に又は1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより力を及ぼしていることを意味している。明細書において、“数字”は、1又は1より大きい整数(すなわち複数)を意味する。
【0028】
明細書において、例であり限定ではない方向の表現は、頂部、底部、左側、右側、上方、下方、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の方位に関連し、特に明瞭に言わない限り、請求項を制限しない。
【0029】
本発明のある特定の非限定的である例示的な実施例の一部として用いられる例示的な気道圧力支持システム2を
図1に示す。気道圧力支持システム2は、送風機アセンブリ6を収容する圧力支持装置4を含み、その例は、以下にさらに詳細に説明される。送風機アセンブリ6は、圧力支持装置4の一部として設けられたろ過吸気口8を介して周囲雰囲気から一般的に矢印Cで示される呼吸ガスを受け取り、患者回路12、14を介して患者10に圧力補償を提供するための圧力を生成するために、相対的に高い圧力及び低い圧力、すなわち一般的に周囲大気圧に等しい又はそれ以上の圧力で患者10の気道に送出するための呼吸ガス流を生成する。例示的な実施例において、送風機アセンブリ6は、2~30cmH2Oの圧力範囲の呼吸ガス流を提供することができる。送風機アセンブリ6からの加圧された呼吸ガス流は、一般的に矢印Dで示され、送出導管12を介して、任意の既知の構造の呼吸マスク又は患者インターフェース14に送出され、この呼吸マスク又は患者インターフェース14は、患者10により着用されるか、さもなければ患者10に取り付けられ、呼吸ガス流を患者10の気道に伝える。送達導管12及び患者インターフェース装置14は通例、総称して患者回路と呼ばれる。
【0030】
図1に示される圧力支持システム2は、単一リムシステムとして知られているものであり、前記患者回路が、患者10を圧力支持システム2に接続する送出導管12のみを有することを意味する。そのようなものとして、排気口16は、矢印Eで示されるように、呼気ガスをシステムから放出するために送出導管12内に設けられる。排気口16は、送出導管12に加えて又はその代わりに、例えば患者インターフェース装置14内のような他の場所に設けることができることに留意されたい。排気口16は、ガスを圧力支持システム2から放出する所望の方法に応じて、多種多様な構成を有することができることも理解されるべきである。
【0031】
本概念はまた、圧力支持システム2が、患者10に接続される送出導管及び排出導管を有する2肢システムも可能であり得ることを意図する。(デュアルリムシステムとも呼ばれる)2肢システムにおいて、排出導管は、患者10からの排気ガスを運び、患者10から遠位の端部に排気弁を有する。そのような実施例における排気弁は通例、システム内を所望のレベル又は圧力に維持するように能動的に制御され、これは一般に、呼気終末陽圧(PEEP)として知られている。
【0032】
その上、
図1に示される例示的な実施例において、患者インターフェース14は鼻/口マスクである。しかしながら、患者インターフェース14は、鼻マスク、鼻枕、気管チューブ、気管内チューブ又は適切なガス流伝達機能を備える他の如何なる装置を有することができると理解されるべきである。また、本発明の目的のために、「患者インターフェース」という言葉は、送達導管12及び加圧された呼吸ガスの供給源を患者10に結合する他の如何なる構造も有することができる。
【0033】
例示される実施例において、圧力支持システム2は、圧力支持装置4のハウジング内に設けられた内部の送出導管20内に設けられるバルブ18形式の圧力制御器を有する。バルブ18は、患者10に送出される、送風機アセンブリ6からの呼吸ガス流の圧力を制御する。この目的のために、送風機アセンブリ6及びバルブ18は、患者10に送出されるガスの圧力及び/又はガス流を生成及び制御するように協調して機能するので、総称して圧力発生システムと呼ばれる。しかしながら、例えば送風機組立体6の速度を単独で又は圧力制御バルブと組み合わせて変化させるような、患者10に送出されるガスの圧力を制御するための他の技術が、本発明により考慮されることは明らかである。故に、バルブ18は、患者10に送出される呼吸ガス流の圧力を制御するのに使用される技術に応じて、任意選択である。
バルブ18が除外される場合、圧力発生システムは、送風機アセンブリ6単独に対応し、患者回路内のガスの圧力は例えば、送風機アセンブリ6の速度を制御することによって制御される。
【0034】
圧力支持システム2は、送出導管20及び送出導管12内の呼吸ガスの流量を測定する流量センサ22をさらに有する。
図1に示される特定の実施例において、流量センサ22は、送出導管20及び12と一列に、最も好ましくはバルブ18の下流側に置かれる。圧力支持システム2は、送出導管20内の加圧された流体の圧力を検出する圧力センサ28をさらに有する。流量センサ22により流量が測定される、及び圧力センサ28により圧力が測定される地点は、圧力支持装置4内にあるとして例示されているが、実際の流量及び圧力の測定が行われる位置は、送出導管20又は12に沿ったどこの場所でもよいことが理解されるべきである。流量センサ22により測定される呼吸ガスの流量及び圧力センサ28により検出される圧力は、患者10におけるガスの流量(QPATIENT)を決定するために処理ユニット24に供給される。
【0035】
処理ユニット24は例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又は他の何らかの適切な処理装置とすることができる処理部と、処理部の内部にある又は処理部に動作可能に結合することができ、圧力支持システム2の動作を制御するための処理部により実行可能なデータ及びソフトウェアのための記憶媒体を備えるメモリ部とを有する。処理ユニット24は、例えば上述したような1つ以上のセンサの出力を受信するように構成され、これらセンサは、圧力支持療法の有効性に関連するデータを収集するように構成される。処理ユニット24は、圧力支持療法が患者に施されている間に前記センサの出力を分析して、患者回路内の患者の気流及び圧力波形を決定するように構成されている。
【0036】
入力/出力装置26は、圧力支持システム2により使用される様々なパラメータを設定するため、並びに情報及びデータを臨床医又は介護者などのユーザに表示及び出力するために設けられる。
【0037】
本発明のある例示的な実施例による、処方された圧力支持療法に対する順守を増大させるための方法を実行する際に使用するための例示的なシステム30が、
図2に概略的に示されている。システム30は、例えば
図1に関連して上述した圧力支持装置4及びその処理ユニット24のような、処理ユニット34を有する圧力支持装置32、及びこの圧力支持装置32の処理ユニット34とワイヤレス通信(例えば、これに限定されないが、Bluetooth(登録商標)を介して)する外部装置36を有する。本発明の例示的な実施例において、外部装置は、例えばスマートウォッチ(例えば、限定はしないが、FitBit或いは同様の装置)又は他の適切なウェアラブルな装置(例えば、リング、ネックレス等)のようなウェアラブルなスマートデバイスである。外部装置36は、装置を着用している患者の1つ以上の属性(例えばアクチグラフ、心拍数、SpO2、位置(例えばGPS座標など))を、このようなデータに関する関連する時間情報と共に感知するための複数のセンサ38、複数のセンサ38からデータを受信するための処理ユニット40、他の電子装置(例えば圧力支持装置32の処理ユニット34)と(例えば、Bluetooth(登録商標)を介して)ワイヤレス通信するための処理ユニット40と通信する通信ユニット42、並びに患者に視覚的、聴覚的及び/又は振動的な警告の1つ以上を供給するように構成される出力装置44を有する。処理ユニット40は例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又は他の如何なる適切な処理装置とすることができる処理部と、処理部の内部にある又は処理部に動作可能に結合することができ、外部装置36の動作を制御するために処理部により実行可能なデータ及びソフトウェアのための記憶媒体を提供するメモリ部とを有する。
【0038】
システム30について説明したが、システム30の外部装置36が患者に(例えば時計、ネックレス等の形式で)配置される、システム30の圧力支持装置32により提供される処方された圧力支持療法に対する患者による順守を高めさせるための、本発明の例示的な実施例による一般的な方法100の一例が、
図3に関連して以下に説明される。方法100は、102で始まり、ここで患者の複数の属性に関するデータが、外部装置36の複数のセンサ38により感知/収集される。上述したように、上記データは、患者のアクチグラフィ、心拍数及び/又は酸素飽和度の1つ以上であり、その時間情報も共に含む。次に、102において収集されたデータは、104に示されるような1つ以上の睡眠に関連する事象の発生を決定するために、処理ユニット40により分析される。上記事象は例えば、既定の就寝時間が近づいている(例えば、限定ではないが、患者又は介護者により指定される患者の通例の就寝時間まで1時間)、予想される(圧力支持装置32により観測された以前の就寝時間から決定されてもよい)就寝時間、(例えば、心拍変動及び/又はアクチグラフが患者は眠りについたことを示す)睡眠開始及び/又は(例えば心拍変動/心拍の増加、アクチグラフ及び/又は酸素飽和度低下が可能性のある睡眠時無呼吸を示す)睡眠障害を有してもよい。
【0039】
104において、睡眠事象の発生が概ね同時に(すなわち、直前、最中又は直後に)決定され、106に示されるように、外部装置36と圧力支持装置32との間のワイヤレス接続を介して、圧力支持装置32の状態が決定される。そのような圧力支持装置32の決定された状態は、圧力支持装置が、(例えば、GPSを介して、共通の無線ネットワークを検出することを介して、Bluetooth(登録商標)を介して)外部装置36、故に外部装置36を装着している患者が既定の近接範囲内にいない、スイッチを入れ、使用していると同時に、外部装置36、故に患者が既定の近接範囲内にいる、又は患者が既定の近接範囲内にいるがスイッチを入れてないことである。加えて、例えばスマートフォンのアプリケーション又は他の適切な配置追跡の使用を介して、圧力支持装置が既定の時間期間(例えば、1週間)内に使用されたかどうかが決定されてもよい。
【0040】
最後に、108に示されるように、外部装置36の出力装置44を介して患者に指示が与えられる。そのような指示は例えば、ディスプレイ上に提供される視覚指示、スピーカにより提供される音声指示、振動指示、上述したものの1つ以上の組み合わせ又はメッセージ或いはその緊急性に応じた他の如何なる適切な指示とすることができる。
【0041】
一般的な方法100について説明したが、これらの幾つかのさらに詳細な例示的な実施例は、引き続き
図3を参照しながら説明する。
【0042】
本発明のある実施例による第1の例において、患者による睡眠開始及び睡眠障害の発生が104において決定される。次いで、106において、圧力支持装置が使用されていないことが決定され、従って、108において、(患者の注意を引くための)聴覚警報及び(患者に圧力支持装置を使用することを知らせるための)視覚警報が患者に提供される。
【0043】
本発明のある実施例による他の例において、104において、患者の就寝時間が既定の時間期間内に起こると決定される。次に、106において、圧力支持装置が既定の近接範囲内にはないと決定され、それに応じて、108において、睡眠中に使用するための圧力支持装置を得るために、患者に視覚的なリマインダが提供される。
【0044】
本発明のある実施例による他の例において、104において、患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こると決定される。次に、106において、圧力支持装置は既定の近接範囲内にある、及び患者は他の既定の時間期間内に圧力支持装置を使用していないと決定される。次いで、患者は、圧力支持装置が定期的に使用されるべきであるという視覚的なリマインダが提供される。
【0045】
本発明のある例示的な実施例による他の例において、104において、患者の就寝時間が第1の既定の時間期間内に起こる、及び患者は睡眠に向かって進んでいると決定される。次に、106において、圧力支持装置は使用されていないと決定される。次いで、108において、患者は、聴覚警報、振動警報及び/又は視覚警報の1つ以上が提供される。
【0046】
上述したことから、本発明の実施例は、順守を改善する、及び(例えば、「忘れた」、「ソファーで寝た」、「圧力支持装置を付けずにベッドで読書をしていたら寝た」等の)患者が自分の圧力支持装置を使用しないことに共通する故障モード(言い訳)の幾つかを取り除くことを理解されたい。患者にとっての利益は、より良い夜の睡眠、患者の圧力支持装置の使用のより良い実施及び継続性を含み、これは、圧力支持療法の順守の既知の健康結果(すなわち、血圧の低下、活力の増大、日中の注意力、心臓病の可能性の減少等)につながる。
【0047】
本出願に記載される特徴は、うっとうしく、患者が簡単に無視する“間抜け(dumb)”な設定のリマインダという他の概念(例えば、毎晩11pmに設定される「CPAPを付けてください」と言うアラーム)を改善する。代わりに、本発明の実施例は、ユーザがそれを最も必要とする可能性が高い(すなわち、患者がPAPを着用してなく、睡眠しようとしている)ときに、実用的な助言を提供する(すなわち、PAPが使用可能であるときにのみ、ユーザに警告する)、及びユーザがその助言を受け入れる可能性が高いときに(例えば、患者が実際に睡眠中であるとき、又は患者がSDB事象により眠りから覚めた後に)行うことができる。
【0048】
本発明は、最も実用的で好ましい実施例であると現在考えられるものに基づいて、例示を目的に詳細に説明されているが、そのような詳細は、単にその目的のためだけであること、及び本発明は、開示された実施例に限定されるのではなく、それどころか添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲内にある修正及び同等の構成を包含することが意図されることを理解されるべきである。例えば、本発明は、可能な限り、何れかの実施例の1つ以上の特徴が、他の何れかの実施例の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを意図することが理解されるべきである。
【0049】
請求項において、括弧の間に付された参照記号は、請求項を限定するものと解釈されない。「有する」又は「含む」という言葉は、請求項に列挙された以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてもよい。要素が複数あることを述べなくても、そのような要素が複数あることを排除するものではない。幾つかの手段を列挙している如何なる装置の請求項において、これらの手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてもよい。特定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用されることができないことを示すものではない。