IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱伝導性接着剤、硬化物、及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20241126BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241126BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/04
C09J11/06
B32B7/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023219951
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】榮 優介
(72)【発明者】
【氏名】金子 千智
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-96940(JP,A)
【文献】国際公開第2022/215326(WO,A1)
【文献】特開2019-172935(JP,A)
【文献】特表2020-521835(JP,A)
【文献】国際公開第2023/008478(WO,A1)
【文献】特開2020-200454(JP,A)
【文献】特開2005-200497(JP,A)
【文献】特開2002-194237(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104910817(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0166065(KR,A)
【文献】特許第7412525(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、リン酸系化合物(B)、分散剤(C)及び熱伝導性フィラー(D1)を含むポリオール組成物と、
ポリイソシアネート(E)、3官能以上のエポキシ化合物(F)及び熱伝導性フィラー(D2)を含むポリイソシアネート組成物と、
を含む熱伝導性接着剤。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)が、各々独立して、金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラーを含む、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)が、各々独立して、シランカップリング剤により表面処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)の合計量が、熱伝導性接着剤の質量を基準として60質量%以上である、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項5】
前記ポリオール(A)が、数平均分子量2,000以下のポリオール(A1)を50質量%以上含む、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項6】
前記リン酸系化合物(B)の含有率が、前記ポリオール(A)の質量を基準として0.1~5質量%である、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項7】
ポリオール組成物の粘度(VOH)に対するポリイソシアネート組成物の粘度(VNCO)の比率(VNCO/VOH)が、0.1~10である、請求項1に記載の熱伝導性接着剤。
【請求項8】
請求項1に記載の熱伝導性接着剤の硬化物。
【請求項9】
第一基材と第二基材との間に接着剤層を備える構造体であって、前記接着剤層が、請求項8に記載の硬化物である構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が良好で、且つ、分散安定性、熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性に優れた熱伝導性接着剤、該接着剤を用いた硬化物、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化や高集積化に伴い、過剰な発熱とそれによる動作不良が問題となっている。電子部品を正常に作動させるために、発せられた熱を効率よく発散する部材が求められている。特に、発熱を起こす構成部品を構造体に固定する必要がある場合には、接着剤樹脂に熱伝導性フィラーを配合することにより熱伝導性を付与した熱伝導性接着剤が有用である。このような熱伝導性接着剤を用いて材料を接着した際に、製造過程又は使用温度環境における温度変化によって生じる材料間の膨張率差により接着層に高い応力がかかり、接着層の破壊又は劣化が促進されるという課題がある。そのため、応力緩和性に優れたウレタン系の熱伝導性接着剤が注目されている。
【0003】
一方で、生産性、省エネルギーの観点から、室温短時間の硬化条件にて十分な初期接着強度を発現する性能(以下、室温速硬化性)が求められるが、従来のウレタン系熱伝導性接着剤ではウレタン化反応が遅いという課題がある。また、従来のウレタン系熱伝導性接着剤では、プライマーを設けないと十分な接着強度を得られないという課題がある。さらに、高い熱伝導率を得るには、熱伝導性フィラーを接着剤樹脂に高い濃度で充填する必要があるが、そのような放熱接着剤は硬化塗膜の機械的特性に悪影響を及ぼし、接着強度が低下するという課題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、異なる熱伝導率を示す異なるフィラー材料を組み合わせて配合したポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む、機械的特性に優れるウレタン系熱伝導性接着剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリイソシアネートとアルコキシシランによって表面処理された所定の平均粒径を有する金属酸化物粒子を含むイソシアネート組成物と、特定の熱伝導性充填剤を含むポリオール組成物と、を含むウレタン系熱伝導性接着剤が開示されており、混合時に低粘度を有し、硬化時に高い熱伝導率を示すことが記載されている。
【0006】
特許文献3には、化学式量又は数平均分子量が1,000以下であるポリアルキレングリコールを50重量%以上含有するポリオール、ポリイソシアネート、無機充填剤、及び特定の分散剤を含む硬化性組成物が開示され、当該組成物が、熱伝導性と柔軟性とに優れ、発熱体の形状に追従/密着でき放熱効率に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2021-507067号公報
【文献】特表2023-538181号公報
【文献】国際公開第2021/261519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤は、ポリオール成分中にリン酸系化合物、分散剤を含有せず、ポリイソシアネート成分中にフィラー、エポキシ化合物を含有せず、プライマーを設けない場合、アルミニウム基材に対する接着力が低く、耐長期湿熱性に課題がある。また、ポリオール成分のみにフィラーを含むため、ポリオ―ル成分とポリイソシアネート成分との粘度差が大きく、混合不良が生じやすいという課題がある。
特許文献2に記載の接着剤は、20μm以上の平均粒径を有する球状金属酸化物粒子を含むが、分散剤を使用しておらず、分散安定性に劣る課題がある。
特許文献3に記載の組成物は、ポリイソシアネート成分中にエポキシ化合物を含有しておらずウレタン化反応が遅いため、室温速硬化性が不十分であるという課題がある。
【0009】
よって本発明の課題は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が容易で、分散安定性、熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性に優れる熱伝導性接着剤、該接着剤を用いた硬化物、並びに、構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決し得ることを見出した。
[1]本開示は、ポリオール(A)、リン酸系化合物(B)、分散剤(C)及び熱伝導性フィラー(D1)を含むポリオール組成物と、ポリイソシアネート(E)、3官能以上のエポキシ化合物(F)及び熱伝導性フィラー(D2)を含むポリイソシアネート組成物と、を含む熱伝導性接着剤に関する。
【0011】
[2]本開示は、前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)が、各々独立して、金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラーを含む、[1]に記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0012】
[3]本開示は、前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)が、各々独立して、シランカップリング剤により表面処理されていることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0013】
[4]本開示は、前記熱伝導性フィラー(D1)及び前記熱伝導性フィラー(D2)の合計量が、熱伝導性接着剤の質量を基準として60質量%以上である、[1]~[3]いずれかに記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0014】
[5]本開示は、前記ポリオール(A)が、数平均分子量2,000以下のポリオール(A1)を50質量%以上含む、[1]~[4]いずれかに記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0015】
[6]本開示は、前記リン酸系化合物(B)の含有率が、前記ポリオール(A)の質量を基準として0.1~5質量%である、[1]~[5]いずれかに記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0016】
[7]本開示は、ポリオール組成物の粘度(VOH)に対するポリイソシアネート組成物の粘度(VNCO)の比率(VNCO/VOH)が、0.1~10である、[1]~[6]いずれかに記載の熱伝導性接着剤に関する。
【0017】
[8]本開示は、[1]~[7]いずれかに記載の熱伝導性接着剤の硬化物に関する。
【0018】
[9]本開示は、第一基材と第二基材との間に接着剤層を備える構造体であって、前記接着剤層が、[8]に記載の硬化物である構造体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が容易で、分散安定性、熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性に優れる熱伝導性接着剤、該接着剤を用いた硬化物、並びに、構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の熱伝導性接着剤は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを含み、ポリオール組成物が、ポリオール(A)、リン酸系化合物(B)、分散剤(C)及び熱伝導性フィラー(D1)を含み、ポリオール組成物が、ポリイソシアネート(E)、3官能以上のエポキシ化合物(F)及び熱伝導性フィラー(D2)を含むことを特徴とする。
上記構成とすることで、フィラーの沈降が抑制され、且つ、混合性が向上し、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が向上する。また、優れた熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性を発揮することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。なお、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0021】
<<ポリオール組成物>>
ポリオール組成物は、ポリオール(A)、リン酸系化合物(B)、分散剤(C)及び熱伝導性フィラー(D1)を含有する。
【0022】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は、分子内に水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、特に制限されない。ポリオール(A)が樹脂である場合、水酸基は、樹脂の末端、側鎖又は側基のいずれにあってもよい。
このようなポリオール(A)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物を用いることができる。
また、ポリオール(A)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオール;を用いることができる。
中でも、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールが、長期の耐湿熱性の観点から好ましい。これらポリオール(A)は1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
ポリオール(A)は、数平均分子量2,000以下のポリオール(A1)を、ポリオール(A)の全質量を基準として50質量%以上含むことが好ましい。これにより、熱伝導性フィラーを配合した場合であってもポリオール組成物の流動性を損なうことがないため好ましい。より好ましくは60質量%以上である。また好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。該ポリオール(A1)の数平均分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下である。
本明細書において数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、標準ポリスチレンによる換算値である。
【0024】
ポリオール(A)は、末端に1級水酸基を有していてもよい。末端に1級水酸基を有していると、室温での初期接着強度、塗膜の発泡抑制、及び硬化後の強度に優れる。またポリオール(A)は、分子内にウレタン結合を有するポリオール(以下、ウレタンポリオール)であってもよい。このようなウレタンポリオールを含有することで、垂直面塗布時の接着剤のタレ抑制と、硬化塗膜の伸張性に優れる。すなわち、ポリオール(A)として好ましくは、末端に1級水酸基を有し、且つ、分子内にウレタン結合を有するウレタンポリオールを含む。
【0025】
上記ウレタンポリオールの製造方法は特に制限されず、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物を好適に用いることができる。該ポリオールとしては、例えば、上述する<ポリオール(A)>の項に例示した化合物を用いることができる。
【0026】
該ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族、又は脂環式のジイソシアネート(以下、ポリイソシアネート単量体ともいう);ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート;炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0028】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0029】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
上記ウレタンポリオールの数平均分子量は特に制限されないが、好ましくは3,000~100,000である。数平均分子量が3,000以上であると硬化物の伸張性に優れ、100,000以下であると、室温硬化での接着力に優れる。
【0031】
ウレタンポリオールは更に分子内にウレア結合を有していてもよい。分子内にウレア結合を有することで、耐熱耐久性や接着強度が向上する。このようなウレア結合を有するウレタンポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物である末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーのイソシアネート基と、分子内に水酸基を有する分子量200未満のモノアミン化合物のアミノ基と、を反応させてなる化合物が挙げられる。このような低分子モノアミンを使用した化合物は、分子量が高くなりすぎずに樹脂の凝集力を高めることができ、接着剤のタレ抑制及び接着強度の観点で好ましい。
【0032】
<リン酸系化合物(B)>
ポリオール組成物はリン酸系化合物(B)を含む。リン酸系化合物(B)は接着剤の硬化を促進し、良好な室温硬化での初期強度と金属への密着性を向上させ、プライマーを用いることなくアルミへの優れた接着性を発揮することができる。
リン酸系化合物(B)は、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類、ホスホン酸類;が挙げられる。
またリン酸系化合物(B)として、リン酸系化合物の誘導体を用いてもよい。このような誘導体としては、例えば、上記のリンの酸素酸中の遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコールにより部分的にエステル化したもの、ホスホン酸エステルが挙げられる。該アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸系化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
リン酸系化合物(B)の配合量は、硬化促進、金属への接着性の観点から、ポリオール(A)の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上である。また、配合後の可使時間の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。リン酸系化合物(B)の配合量は、例えば、ポリオール(A)の質量を基準として0.1~5質量%であってもよい。
【0034】
<分散剤(C)>
ポリオール組成物は分散剤(C)を含む。分散剤(C)としては、従来、フィラーの分散剤として用いられているものの中から適宜選択して用いることができる。分散剤(C)は、熱伝導性フィラー(D1)をポリオール組成物中に均一に分散させ、低粘度化や凝集抑制を達成できる。
分散剤(C)としては、例えば、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性等の界面活性剤を使用できる。
アニオン性分散剤とは、水に溶解した時に、親水基が電離して陰イオンを生ずるものである。アニオン性分散剤としては、例えば、リン酸エステル型、硫酸エステル型、スルホン酸型、及びカルボン酸型が挙げられる。カチオン性分散剤とは、水に溶解した時に、親水基が電離して陽イオンを生ずるものである。カチオン性分散剤としては、例えば、アルキルアミン塩型、及びアルキルアンモニウム塩型が挙げられる。ノニオン性分散剤とは、親水基がイオン解離性を持たないものである。非イオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン型、及びエステル型が挙げられる。両性分散剤とは、上記アニオン性とカチオン性の基を両方備えるものである。分散剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましく、より好ましくは酸性基を有する高分子分散剤である。酸性基としては、カルボキシ基、リン酸基及びその塩、スルホン酸基及びその塩等が挙げられる。
酸性基を有する高分子分散剤の市販品としては、例えば、DISPERBYK-103、DISPERBYK-111、DISPERBYK-118、アジスパーPN411、アジスパーPA111等が挙げられる。
【0035】
分散剤(C)の配合量は、分散性の観点から、後述する熱伝導性フィラー(D1)質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、接着性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0036】
<熱伝導性フィラー(D1)>
ポリオール組成物は熱伝導性フィラー(D1)を含む。熱伝導性フィラー(D1)としては、例えば、二酸化ケイ素;アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、及びシリカ等の金属酸化物;炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム等の金属水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ケイ素、及び炭化ホウ素等金属炭化物;銀、銅、アルミニウム、及びこれらを含む合金等の粒子が挙げられる。
中でも、熱伝導性フィラー(D1)は、電気絶縁性及び熱伝導率の観点から、金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラーを含むことが好ましい。熱伝導性フィラー(D1)の熱伝導率は、好ましくは5W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上、さらに好ましくは20W/m・K以上である。
【0037】
熱伝導性フィラー(D1)はシランカップリング剤により表面処理されていてもよい。シランカップリング剤での表面処理により、樹脂への濡れ性を改善し、ポリオール組成物中の官能基や水分との反応が抑制される。これによりハンドリング性や接着剤の硬化膜の強度が向上する。
シランカップリング剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシラン;メチルトリメトキシシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン等のジアルコキシシラン化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
熱伝導性フィラー(D1)の含有量は、ポリオール組成物の質量を基準として、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。また好ましくは97質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。
熱伝導性フィラー(D1)と後述する熱伝導性フィラー(D2)合計量は、熱伝導性接着剤の質量を基準として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。また好ましくは97質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。
熱伝導性フィラー(D1)と後述する熱伝導性フィラー(D2)とは、同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0039】
<<ポリイソシアネート組成物>>
ポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネート(E)、3官能以上のエポキシ化合物(F)及び熱伝導性フィラー(D2)を含む。
【0040】
<ポリイソシアネート(E)>
ポリイソシアネート(E)は、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、ポリイソシアネート(E)としては、例えば、芳香族、脂肪族、又は脂環式のジイソシアネート(以下、ポリイソシアネート単量体ともいう);ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート;炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネート(E)は、上述のポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である、ウレタン結合を有するポリイソシアネートであってもよい。このようなウレタン結合を有するポリイソシアネートを含むことで、接着剤の硬化膜は柔軟性に優れるため好ましい。該ポリオールとしては、例えば、上述する<ポリオール(A)>の項に例示した化合物を用いることができる。
【0045】
上記ウレタン結合を有するポリイソシアネートを形成するためのポリイソシアネートとしては、初期の接着強度の観点から、好ましくは芳香族ジイソシアネート、より好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートが好適に用いられる。すなわちポリイソシアネート(E)としては、硬化膜の柔軟性と初期の接着強度の観点から、芳香族ジイソシアネートとポリオールとの反応生成物が好ましく、より好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの反応生成物である。該反応におけるジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアネート基数とポリオールの水酸基数との比(NCO/OH)は、1以上とすればよく、好ましくは1.5以上である。
ポリイソシアネート(E)は、要求される物性や粘度に応じて、さらに別のポリイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。ウレタン結合を有するポリイソシアネートと組み合わせて用いるポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメリックMDI(以下、クルードMDIともいう。)、液状MDI(2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)が好適に使用できる。
【0046】
<官能基数が3以上のエポキシ化合物(F)>
ポリイソシアネート硬化剤は、官能基数が3以上のエポキシ化合物(F)を含有する。1分子中に3つ以上のエポキシ基を有する化合物(F)を含有することで、接着剤の耐湿熱性試験後の接着強度を保持することができる。
このようなエポキシ化合物(F)としては、例えば、ポリビニルフェノール、ポリイソプロペニルフェノール、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-ジメチルメタン等から誘導されるエポキシ化合物;フェノールノボラック、臭素化フェノールノボラック、クレゾールノボラック、臭素化クレゾールノボラック、レゾルシンノボラック、臭素化レゾルシンノボラック等から誘導されるノボラック系樹脂;レゾルシン、ヒドロキノン、メチルレゾルシン等から誘導される多価フェノール系エポキシ樹脂;アニリン、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノ-m-クレゾール、4,4′-ジアミノジフェニルメタン等から誘導されるアミン系エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、m-オキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸から誘導されるグリシジルエステル系化合物;5,5′-ジメチルヒダントイン等から誘導されるヒダントイン系エポキシ樹脂;ビニルシクロヘキセンオキサイド等の脂環式エポキシの重合物;トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多官能ポリオールのポリグリシジルエーテル類;その他、例えばトリグリシジルイソシアヌレート、2,4,6-トリグリシドキシ-5-トリアジン、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化植物油等を挙げることができる。また、これらの変性物であるダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等を使用してもよい。これらエポキシ化合物(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
ポリイソシアネート硬化剤の溶液安定性の観点から、エポキシ化合物(F)として好ましくは、二重結合に酸素を付加して形成される、エポキシ化ブタジエン、エポキシ化SEBS、エポキシ化植物油、ビニルシクロヘキセンオキサイド等の脂環式エポキシの重合物である。
【0048】
<熱伝導性フィラー(D2)>
ポリイソシアネート硬化剤は熱伝導性フィラー(D2)を含む。熱伝導性フィラー(D2)としては、上述する<熱伝導性フィラー(D1)>の項の記載を援用でできる。
熱伝導性フィラー(D2)の含有量は、ポリイソシアネート硬化剤の質量を基準として、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。また好ましくは97質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。熱伝導性フィラー(D2)は、熱伝導性フィラー(D1)と同様に、シランカップリング剤により表面処理されていてもよい。シランカップリング剤での表面処理により、樹脂への濡れ性を改善し、ポリイソシアネート組成物中の官能基や水分との反応が抑制される。これによりハンドリング性や接着剤の硬化膜の強度が向上する。
【0049】
<<熱伝導性接着剤の調整>>
本発明の熱伝導性接着剤は、少なくともポリオール組成物、及び、ポリイソシアネート組成物を、公知の方法で混合することで得ることができる。ポリオール組成物中の水酸基数とポリイソシアネート組成物中のイソシアナト基数との比[NCO/OH]は、好ましくは0.9~1.3、より好ましくは1.0~1.2である。
本発明の接着剤は、溶剤型、無溶剤型のいずれであってもよいが、硬化過程において乾燥工程が不要となる点で、好ましくは無溶剤型である。ただし、無溶剤型は、消泡剤等に含まれる溶剤や、固体の添加剤を添加する際に用いる希釈溶剤等、少量の溶剤を含んでもよい。
【0050】
塗工性の観点から、ポリオール組成物の粘度は、好ましくは1Pa・s~500Pa・s、より好ましくは10Pa・s~300Pa・sであり、ポリイソシアネート組成物の粘度は、好ましくは1Pa・s~500Pa・s、より好ましくは10Pa・s~300Pa・sである。また、ポリオール組成物の粘度(VOH)に対するポリイソシアネート組成物の粘度(VNCO)の比率(VNCO/VOH)は、接着強度の安定性の観点から、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5である。
当該粘度は、レオメーターMCR302(Anton Paar社製)を用いて温度25℃、せん断速度10/sの条件で測定した値である。
【0051】
<添加剤>
本発明の接着剤は、さらに、エポキシ化合物、反応促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
エポキシ化合物としては、例えば、ポリビニルフェノール、ポリイソプロペニルフェノール、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-ジメチルメタン等から誘導されるエポキシ化合物;フェノールノボラック、臭素化フェノールノボラック、クレゾールノボラック、臭素化クレゾールノボラック、レゾルシンノボラック、臭素化レゾルシンノボラック等から誘導されるノボラック系樹脂;レゾルシン、ヒドロキノン、メチルレゾルシン等から誘導される多価フェノール系エポキシ樹脂;アニリン、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノ-m-クレゾール、4,4′-ジアミノジフェニルメタン等から誘導されるアミン系エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、m-オキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸から誘導されるグリシジルエステル系化合物;5,5′-ジメチルヒダントイン等から誘導されるヒダントイン系エポキシ樹脂;ビニルシクロヘキセンオキサイド等の脂環式エポキシの重合物;トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多官能ポリオールのポリグリシジルエーテル類;その他、例えばトリグリシジルイソシアヌレート、2,4,6-トリグリシドキシ-5-トリアジン、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化植物油等を挙げることができる。また、これらの変性物であるダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ化合物の配合量は、接着性及び耐湿熱性の観点から、ポリオール(A)の合計質量を基準として、好ましくは1~20質量%である。
【0053】
反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触媒;が挙げられる。反応促進剤の配合量は、ポリオール(A)の合計質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%である。
【0054】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアナト基を有するトリアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、接着剤の合計質量を基準として、好ましくは0.05~10質量%である。
【0055】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリ エステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
【0056】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等、公知のものが挙げられる。
【0057】
<<積層体、硬化物>>
本発明の硬化物は、本発明の熱伝導性接着剤を、公知の方法で硬化して得ることができる。また、本発明の構造体は、第一基材と第二基材との間に接着剤層を備え、該接着剤層が、上記硬化物であることを特徴とする。構造体の製造方法は特に制限されず、例えば、接着剤を第一基材の一方の面に塗布し、次いで、未硬化の接着剤面に第二基材を重ねて、20~40℃程度で硬化反応を行い、接着剤を硬化させることで、構造体を得ることができる。硬化後の接着剤層の厚さは、好ましくは0.1μm~300mmである。
【0058】
<第一基材、第二基材>
本発明の接着剤は、多種の基材間の接着に用いることができる。好適な第一、第二基材として使用可能な基材としては、例えば、アルミニウム等の金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックが挙げられる。第一基材及び第二基材は、同一の基材であってもよく、異なる基材であってもよい。
【0059】
本発明の接着剤は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が良好で、且つ、分散安定性、熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性に優れ、該接着剤を用いた構造体は、半導体素子、LEDバックライト、バッテリー、及びこれらを備えた電気回路等発熱部材の冷却用途として有用である。
【実施例
【0060】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
【0061】
<平均分子量(Mn)>
樹脂の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、標準ポリスチレンによる換算値として求めた。測定は、GPC装置としてGPC-8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件で行った。
【0062】
本明細書における化合物の略称を以下に示す。
<ポリオール>
・P-400;2官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量400、水酸基価280mgKOH/g、ADEKA社製
・P-1000;2官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量1,000、水酸基価112mgKOH/g、ADEKA社製
・P-2000;2官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量2,000、水酸基価56mgKOH/g、ADEKA社製
・T-400:3官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量400、水酸基価410mgKOH/g、三井化学社製
・T5650E;2官能ポリカーボネートポリオール、数平均分子量500、水酸基価220mgKOH/g、商品名「デュラノールT5650E」、旭化成社製
・T5651;2官能ポリカーボネートポリオール、数平均分子量1,000、水酸基価110mgKOH/g、商品名「デュラノールT5651」、旭化成社製
・TMP:トリメチロールプロパン
・GI-1000:ポリブタジエンポリオール、数平均分子量1,400、水酸基価69mgKOH/g、日本曹達社製
【0063】
<ポリイソシアネート>
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・TDI:トリレンジイソシアネート
・4,4’-MDI:4,4’- ジフェニルメタンジイソシアネート
・液状MDI:ミリオネートMN、東ソー社製
・クルードMDI:PM-200、万華化学社製
・HDI-ヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、Basonat HI-100、BASF社製
【0064】
<エポキシ化合物>
・JP-100:エポキシ化ポリブタジエン、日本曹達社製
・ED-505:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ADEKA社製
・jER-828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製
【0065】
<分散剤>
・BYK-111:リン酸エステル化合物(酸性基を有する高分子分散剤に該当)、商品名「DISPERBYK-111」、ビックケミー・ジャパン社製、酸価129mgKOH/g、不揮発分95.0%。
【0066】
<熱伝導性フィラー>
・DAW-45:アルミナ、平均粒径46μm、熱伝導率27W/m・K、デンカ社製
・DAW-20:アルミナ、平均粒径23μm、熱伝導率27W/m・K、デンカ社製
・DAW-05:アルミナ、平均粒径6μm、熱伝導率27W/m・K、デンカ社製
・DAW-01:アルミナ、平均粒径2μm、熱伝導率27W/m・K、デンカ社製
・HFS-80:窒化アルミニウム、平均粒径80μm、熱伝導率170W/m・K、トクヤマ社製
・SP-3:窒化ホウ素、平均粒径4μm、熱伝導率60W/m・K、デンカ社製
【0067】
<フィラー>
・MS-KY:タルク、平均粒径21μm、日本タルク社製
【0068】
<ポリオールの合成>
・(ポリオールa1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、T5651を100部、トリレンジイソシアネートを13.7部仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させ、数平均分子量5,000のウレタン化ポリオール(a1)を得た。
【0069】
(ポリオールa2)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、T5651を100部、イソホロンジイソシアネートを30.5部仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させてウレタン化プレポリマーを得た。次に、80℃まで冷却し、エタノールアミン4.8部を部加え、75℃で2時間反応させ、数平均分子量6,000のポリウレタンウレアポリオール(a2)を得た。
【0070】
(ポリオールa3)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、P-1000を100部、トリレンジイソシアネートを13.9部仕込み、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させた後、数平均分子量5,000のウレタン化ポリオール(a3)を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
<ポリイソシアネートの合成>
(ポリイソシアネートe1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、P-400を25部、4,4’- ジフェニルメタンジイソシアネートを45部仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させ、ウレタン化反応を行った。その後50℃まで冷却して、クルードMDIを30部加えて15分撹拌し、ポリイソシアネート(e1)を得た。
【0073】
(ポリイソシアネートe2)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、P-400を12部、P-2000を12部、T-400を1.6部仕込み、均一に撹拌した後、4,4’-MDIを32.4部仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させ、ウレタン化反応を行った。その後50℃まで冷却して、クルードMDIを30部、液状MDIを12部、加えて15分撹拌し、ポリイソシアネート(e2)を得た。
【0074】
(ポリイソシアネートe3)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に液状MDIを35部仕込み、GI-1000を39.6部及びTMPを0.4部事前混合したものを少量ずつ仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させ、ウレタン化反応を行った。その後50℃まで冷却して、液状MDIを25部加えて撹拌し、ポリイソシアネート(e3)を得た。
【0075】
【表2】
【0076】
<熱伝導性フィラーの調整>
(熱伝導性フィラーd1)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にDAW-45を60部、DAW-20を25部、DAW-01を15部仕込み、均一に撹拌した後、デシルトリメトキシシランを1部仕込み、60℃で30分撹拌した。その後150℃で3時間乾燥して、熱伝導性フィラー(d1)を得た。
【0077】
(熱伝導性フィラーd2)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にDAW-45を30部、DAW-20を50部、DAW-01を20部仕込み均一に撹拌した後、デシルトリメトキシシランを1部仕込み、60℃で30分撹拌した。その後150℃で3時間乾燥して、熱伝導性フィラー(d2)を得た。
【0078】
(熱伝導性フィラーd3)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にHFS-80を60部、DAW-05を25部、DAW-01を15部仕込み均一に撹拌した後、デシルトリメトキシシランを1部仕込み、60℃で30分撹拌した。その後150℃で3時間乾燥して、熱伝導性フィラー(d3)を得た。
【0079】
(熱伝導性フィラーd4)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にDAW-45を12部、DAW-05を5部、DAW-01を3部、SP-3を40部仕込み均一に撹拌した後、デシルトリメトキシシランを1部仕込み、60℃で30分撹拌した。その後150℃で3時間乾燥して、熱伝導性フィラー(d4)を得た。
【0080】
(熱伝導性フィラーd5)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にHFS-80を60部、DAW-20を25部、SP-3を15部仕込み均一に撹拌した後、デシルトリメトキシシランを1部仕込み、60℃で30分反応撹拌した。その後150℃で3時間乾燥して、熱伝導性フィラー(d5)を得た。
【0081】
(熱伝導性フィラーd6)
撹拌装置、温度計を備えた反応容器にDAW-45を60部、DAW-20を25部、DAW-01を15部仕込み均一に撹拌し、熱伝導性フィラー(d6)を得た。
【0082】
【表3】
【0083】
<分散剤の製造>
(分散剤(c1))
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、1-ドデカノールを62.6部、ε-カプロラクトンを287.4部、及び触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシドを0.1部仕込み、窒素雰囲気下、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認した後、上記反応生成物にピロメリット酸二無水物を36.6部仕込み、100℃で5時間反応させ、酸性基を有する高分子分散剤である分散剤(c1)を得た。
【0084】
<ポリオール組成物の製造>
(ポリオール組成物1)
ポリオール(a1)を10部、T5650Eを90部、ポリリン酸を1.00部、分散剤(c1)を1.45部、熱伝導性フィラー(d1)を580部混合し、自転公転ミキサー(泡とり練太郎、シンキー社製)で撹拌、脱泡し、ポリオール組成物1を得た。
【0085】
(ポリオール組成物2~23)
各成分の配合組成比率を表4に示す内容に変更した以外は、ポリオール組成物1と同様の方法で混合し、ポリオール組成物2~23を得た。
【0086】
得られたポリオール組成物について、レオメーターMCR302(Anton Paar社製)を用いて温度25℃、せん断速度10/sの条件で粘度を測定した。結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
(ポリイソシアネート組成物1)
ポリイソシアネート(e1)を100部、JP-100を10部、熱伝導性フィラー(d1)を625部加えて自転公転ミキサー(泡とり練太郎、シンキー社製)で撹拌、脱泡し、ポリイソシアネート組成物1を得た。
【0089】
(ポリイソシアネート組成物2~17)
各成分の配合組成比率を表5に示す内容に変更した以外は、ポリイソシアネート組成物1と同様の方法で混合し、ポリイソシアネート組成物2~17を得た。
【0090】
得られたポリイソシアネート組成物について、ポリオール組成物と同様の条件で粘度を測定した。結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
<熱伝導性接着剤の調整>
[実施例1~23、比較例1~6]
ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物を、40℃環境下で1か月間保管した後、室温に戻し、撹拌混合時間を変更した2種類の接着剤を調整した。
具体的には、表6に記載の配合組成で50rpm60秒間、均一になるまで十分に撹拌混合し、熱伝導性接着剤(X)を調製した。また、同様にして50rpm10秒間の短時間で撹拌混合し、熱伝導性接着剤(Y)を調製した。
なお、ポリオール組成物20は、分散剤を含まないためフィラーが沈殿し、接着剤としての評価に至らなかった(比較例1)。
【0093】
<熱伝導性接着剤の評価>
得られた接着剤(X)及び(Y)を用いて以下の評価を行った。結果を表6に示す。
[熱伝導率]
得られた接着剤(X)を、厚み1mmとなるようCPPフィルムの未処理面に塗布し、23℃環境下で3日間養生し、硬化膜を得た。得られた硬化膜をCPPフィルムから取り外し、TRIDENT(C-THERM社製)を用いて熱伝導率を測定した。熱伝導率の値に基づき、以下の基準で評価した。
A:2.0W/m・K以上(極めて良好)
B:1.5W/m・K以上、2.0W/m・K未満(良好)
C:1.0W/m・K以上、1.5W/m・K未満(使用可)
D:1.0W/m・K未満(使用不可)
【0094】
[室温速硬化性]
得られた接着剤(X)を、第一のアルミニウム基材(長さ100mm、幅25mm、厚み2mm)上に、幅25mm、長さ10mm、厚み0.3mmとなるよう塗布し、同一の第二のアルミニウム基材と貼り合わせ、厚み0.3mmを保つように圧着した状態で、23℃環境下で養生を開始した。養生を開始してから10分おきに、23℃の条件下、引張速度50mm/分で引張試験機を用いてせん断接着強度を測定した。せん断強度が0.4MPa以上になるまでの時間に基づき、以下の基準で評価した。
A:20分以内(極めて良好)
B:20分を超え、30分以内(良好)
C:30分を超え、60分以内(使用可)
D:60分を超える(使用不可)
【0095】
[AL基材接着性]
接着剤(X)を用いて前述の[室温速硬化性]と同様にして作製した試験片を、23℃環境下で3日間養生した後、23℃の条件下、引張速度50mm/分で引張試験機を用いてせん断接着強度を測定した。せん断接着強度の値に基づき、以下の基準で評価した。
A:10MPa以上(極めて良好)
B:7MPa以上、10MPa未満(良好)
C:5MPa以上、7MPa未満(使用可)
D:5MPa未満(使用不可)
【0096】
[耐長期湿熱性]
接着剤(X)を用いて前述の[室温速硬化性]と同様にして作製した試験片を、23℃環境下で3日間養生した後、85℃相対湿度85%の環境下で1000時間保管した。保管前と保管後の試験片について、23℃の条件下、引張速度50mm/分で引張試験機を用いてせん断強度を測定した。保管前のせん断強度の値に対する、保管後のせん断強度の値の割合を、下記式より算出し、以下の基準で評価した。
式)保管前のせん断強度の値に対する保管後のせん断強度の値の割合(%)
=[(保管後のせん断強度の値)/(保管前のせん断強度の値)]×100
A:85%以上(極めて良好)
B:75%以上、85%未満(良好)
C:50%以上、75%未満(使用可)
D:50%未満(使用不可)
【0097】
[接着強度安定性]
接着剤(X)の代わりに、混合時間が短い接着剤(Y)を用いた以外は、前述の[AL基材接着性]と同様にして試験片を作製し、23℃環境下で3日間養生した後、23℃の条件下、引張速度50mm/分で引張試験機を用いてせん断接着強度を測定した。
接着剤(X)を用いた場合のせん断強度の値(=前述の[AL基材接着性]のせん断強度の値)に対する、接着剤(Y)を用いた場合のせん断強度の値の割合を、下記式より算出し、以下の基準で評価した。
式)接着剤(X)を用いた場合のせん断強度の値に対する、接着剤(Y)を用いた場合のせん断強度の値の割合(%)
=[(接着剤(Y)を用いた場合のせん断強度の値)/(接着剤(X)を用いた場合のせん断強度の値)]×100
A:85%以上(極めて良好)
B:75%以上、85%未満(良好)
C:50%以上、75%未満(使用可)
D:50%未満(使用不可)
【0098】
【表6】
【0099】
表6によれば、ポリオール、リン酸系化合物、分散剤及び熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネート、3官能以上のエポキシ化合物及び熱伝導性フィラーを含むポリイソシアネート組成物と、を含む熱伝導性接着剤は、分散安定性に優れフィラーの沈降が起こり難く、高い熱伝導率を有し、室温短時間で良好な初期接着強度を発現し、さらに、アルミニウム基材への接着力、耐長期湿熱性、短時間混合での接着強度安定性に優れていた。
【要約】
【課題】
ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合性が容易で、分散安定性、熱伝導率、室温速硬化性、アルミニウム基材に対する接着性、長期の耐湿熱性に優れる熱伝導性接着剤、該接着剤を用いた硬化物、並びに、構造体の提供。
【解決手段】
上記課題は、ポリオール(A)、リン酸系化合物(B)、分散剤(C)及び熱伝導性フィラー(D1)を含むポリオール組成物と、ポリイソシアネート(E)、3官能以上のエポキシ化合物(F)及び熱伝導性フィラー(D2)を含むポリイソシアネート組成物と、を含む熱伝導性接着剤によって解決される。
【選択図】 なし