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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20241126BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02K11/33
H02P25/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023500466
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006416
(87)【国際公開番号】W WO2022176166
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187078(JP,A)
【文献】特開2017-143203(JP,A)
【文献】特開2019-80471(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2系統の巻線群を有するモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの軸方向に前記モータと並んで設けられる基板と、
前記基板に設けられて前記モータの回転に応じた電気信号を生成するように構成されたセンサと、を有し、
前記基板は、前記モータの軸方向からみて、前記モータの中心を通りかつ前記モータの軸線と直交する境界線を境として区画される第1の領域および第2の領域を有し、
前記第1の領域および第2の領域は、それぞれ、
外部の電源から供給される電力を、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に供給する電力に変換するためのパワー回路領域と、
前記センサにより生成される前記電気信号に基づき、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に対する給電を制御するための制御回路領域と、
前記電気信号を前記制御回路領域へ伝送する信号経路と、
前記電源から供給される電力を前記パワー回路領域へ伝送する電力経路と、を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記信号経路は、前記モータの軸方向からみて、前記電力経路および前記パワー回路領域を横切らないように設けられ、
前記基板は、前記境界線に沿った方向における端部領域に、前記電源から電力が供給される電源端子接続部を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記制御回路領域は、前記パワー回路領域と一緒に前記境界線に沿って並ぶとともに、前記電源端子接続部に対して、前記パワー回路領域より遠くに位置している本体部分を有し、
前記基板は、前記端部領域に、前記第1および第2の領域の前記制御回路領域と外部の機器との間で電気信号を授受するための信号端子接続部を有し、
前記電源端子接続部は、前記境界線に沿った方向において前記第1の領域の前記パワー回路領域に隣接し、
前記信号端子接続部は、前記境界線に沿った方向において前記第2の領域の前記パワー回路領域に隣接し、
前記電源端子接続部から前記第1の領域の前記パワー回路領域へ電力を伝送する前記電力経路は前記境界線に沿って設けられ、
前記電源端子接続部から前記第2の領域の前記パワー回路領域へ電力を伝送する前記電力経路は前記信号端子接続部の外側を迂回して設けられているモータ制御装置。
【請求項4】
2系統の巻線群を有するモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの軸方向に前記モータと並んで設けられる基板と、
前記基板に設けられて前記モータの回転に応じた電気信号を生成するように構成されたセンサと、を有し、
前記基板は、前記モータの軸方向からみて、前記モータの中心を通りかつ前記モータの軸線と直交する境界線を境として区画される第1の領域および第2の領域を有し、
前記第1の領域および第2の領域は、それぞれ、
外部の電源から供給される電力を、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に供給する電力に変換するためのパワー回路領域と、
前記センサにより生成される前記電気信号に基づき、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に対する給電を制御するための制御回路領域と、
前記電気信号を前記制御回路領域へ伝送する信号経路と、
前記電源から供給される電力を前記パワー回路領域へ伝送する電力経路と、を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記信号経路は、前記モータの軸方向からみて、前記電力経路および前記パワー回路領域を横切らないように設けられ、
前記基板は、前記境界線に沿った方向における端部領域に、前記電源から電力が供給される電源端子接続部を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記パワー回路領域は、前記制御回路領域と一緒に前記境界線に沿って並ぶとともに、前記電源端子接続部に対して、前記制御回路領域より遠くに位置している本体部分を有し、
前記センサは、前記第1の領域の前記パワー回路領域における前記本体部分と前記第2の領域の前記パワー回路領域における前記本体部分との間に位置し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記信号経路は、前記パワー回路領域の外側を迂回するように前記基板の周縁に沿って設けられているモータ制御装置。
【請求項6】
2系統の巻線群を有するモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの軸方向に前記モータと並んで設けられる基板と、
前記基板に設けられて前記モータの回転に応じた電気信号を生成するように構成されたセンサと、を有し、
前記基板は、前記モータの軸方向からみて、前記モータの中心を通りかつ前記モータの軸線と直交する境界線を境として区画される第1の領域および第2の領域を有し、
前記第1の領域および第2の領域は、それぞれ、
外部の電源から供給される電力を、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に供給する電力に変換するためのパワー回路領域と、
前記センサにより生成される前記電気信号に基づき、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に対する給電を制御するための制御回路領域と、
前記電気信号を前記制御回路領域へ伝送する信号経路と、
前記電源から供給される電力を前記パワー回路領域へ伝送する電力経路と、を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記信号経路は、前記モータの軸方向からみて、前記電力経路および前記パワー回路領域を横切らないように設けられ、
前記基板は、前記境界線に沿った方向における端部領域に、前記電源から電力が供給される電源端子接続部を有し、
前記第1および第2の領域の各々において、前記制御回路領域は、前記パワー回路領域と一緒に前記境界線に沿って並んでおり、かつ、前記電源端子接続部に対して、前記パワー回路領域より近い側に位置し、
前記電源端子接続部から前記第1および第2の領域の前記パワー回路領域へそれぞれ電力を伝送する前記電力経路は、前記第1および第2の領域の前記制御回路領域の外側をそれぞれ迂回するように前記基板の周縁に沿って設けられているモータ制御装置。
【請求項7】
前記基板は、前記端部領域に、前記第1および第2の領域の前記制御回路領域と外部の機器との間で電気信号を授受するための信号端子接続部を有し、
前記電源端子接続部は、前記境界線に沿った方向において前記第1の領域の前記制御回路領域に隣接し、
前記信号端子接続部は、前記境界線に沿った方向において前記第2の領域の前記制御回路領域に隣接し、
前記電源端子接続部から前記第1の領域の前記パワー回路領域へ電力を伝送する前記電力経路は前記第1の領域の前記制御回路領域の外側を迂回するように前記基板の周縁に沿って設けられ、
前記電源端子接続部から前記第2の領域の前記パワー回路領域へ電力を伝送する前記電力経路は前記信号端子接続部の外側、および前記第2の領域の前記制御回路領域の外側を迂回するように前記基板の周縁に沿って設けられている請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記センサは、前記第1の領域の前記パワー回路領域と前記第2の領域の前記パワー回路領域との間に位置し、
前記センサにより生成される前記電気信号を前記第1および第2の領域の前記制御回路領域へそれぞれ伝送する前記信号経路は、前記第1の領域の前記パワー回路領域と前記第2の領域の前記パワー回路領域との間に設けられている請求項6または請求項7に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、2つの給電系統を有するモータが存在する。モータは、三相を1組とする巻線群を2組有している。このモータの制御装置は、2組の巻線群に対する給電を個別に制御する。モータの制御装置は、単一の基板、2つのインバータ、単一の回転角センサおよび2つの制御部を有している。これらインバータ、回転角センサおよび制御部は、基板に設けられている。
【0003】
インバータは、電源から供給される直流電力を三相の交流電力に変換する。回転角センサは2つの検知回路を有している。これら検知回路はモータの回転角をそれぞれ検出する。各制御部は、マイクロコンピュータを有している。各マイクロコンピュータは、対応する系統の検知回路を通じて検出されるモータの回転角に基づき、2つの給電系統のうち対応する系統のインバータを制御する。これにより、三相の交流電力が2組の巻線群に対して個別に供給される。
【0004】
基板には、各系統のインバータを含む電力関係の電子部品、回転角センサおよびマイクロコンピュータを含む制御関係の電子部品が規則的に配置されている。回転角センサは、モータの軸方向からみて、基板の中心付近に設けられている。各系統の電力関係の電子部品および制御関係の電子部品は、モータの軸方向からみて、基板の中心を通る直線を対称軸とする線対称に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-92583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1を含む従来のモータの制御装置において、基板は信号線および電源線を有している。信号線は電気信号を伝送するための配線である。電源線は電力を伝送するための配線である。たとえば回転角センサにより生成される電気信号は、信号線を介してマイクロコンピュータへ伝送される。また、電源からの電力は電源線を介してインバータへ伝送される。電源線には、信号線に比べてより大きい値の電流が流れる。このため、基板における電子部品および配線のレイアウトによっては、たとえば電源線から発せられる磁界の影響を受けて電気信号にノイズが重畳するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るモータ制御装置は、2系統の巻線群を有するモータを制御するモータ制御装置である。モータ制御装置は、前記モータの軸方向に前記モータと並んで設けられる基板と、前記基板に設けられて前記モータの回転に応じた電気信号を生成するように構成されたセンサと、を有している。前記基板は、前記モータの軸方向からみて、前記モータの中心を通りかつ前記モータの軸線と直交する境界線を境として区画される第1の領域および第2の領域を有している。前記第1の領域および第2の領域は、それぞれ、外部の電源から供給される電力を、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に供給する電力に変換するためのパワー回路領域と、前記センサにより生成される前記電気信号に基づき、前記2系統のうち対応する系統の前記巻線群に対する給電を制御するための制御回路領域と、前記電気信号を前記制御回路領域へ伝送する信号経路と、前記電源から供給される電力を前記パワー回路領域へ伝送する電力経路と、を有している。前記第1の領域および前記第2の領域の前記信号経路は、前記モータの軸方向からみて、それぞれ前記電力経路および前記パワー回路領域を横切らないように設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態のモータ制御装置が搭載されるモータ装置の部分断面図。
図2図1のモータ制御装置の分解斜視図。
図3図2のモータ制御装置の回路図。
図4図2のモータ制御装置に設けられた基板の平面図。
図5】第2の実施の形態におけるモータ制御装置に設けられた基板の平面図。
図6】第3の実施の形態におけるモータ制御装置に設けられた基板の平面図。
図7】第4の実施の形態におけるモータ制御装置に設けられた基板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
以下、モータ制御装置をモータ装置に具体化した第1の実施の形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、モータ装置11は、モータ12および制御装置13を有している。モータ12としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。モータ12は、2系統の巻線群を有している。制御装置13は、モータ12の軸方向端部に設けられている。制御装置13は、モータ12における2系統の巻線群に対する給電を系統ごとに独立して制御する。制御装置13はモータ制御装置に相当する。
【0011】
モータ12は、一端が閉塞された円筒状のケース21、およびケース21の開口を塞ぐ蓋22を有している。ケース21の内部には、ステータ23、バスバーモジュール24、およびロータ25が設けられている。
【0012】
ステータ23は、ケース21の内周面に嵌った状態で固定されている。ステータ23は、円筒状のコア31、2つのインシュレータ32,33、および複数の巻線34を有している。インシュレータ32はコア31の第1の端部に、インシュレータ33はコア31の第2の端部に設けられている。複数の巻線34は、インシュレータ32,33を介してコア31に巻回されている。複数の巻線34は、第1の巻線群と第2の巻線群とを構成している。
【0013】
バスバーモジュール24は、蓋22とステータ23との間に位置するようにステータ23の端部に設けられている。バスバーモジュール24は、円筒状のホルダ35および複数のバスバー36を有している。ホルダ35は、合成樹脂製である。ホルダ35の形状は円筒状である。各バスバー36は、ホルダ35に保持されている。各バスバー36には、対応する巻線34の端部が適宜接続される。各巻線34には、対応するバスバー36を介して三相交流電力が供給される。
【0014】
ロータ25は、ステータ23およびバスバーモジュール24の内周に挿通されている。ロータ25は、段付き円柱状の回転軸37、および回転軸37の外周面に固定された円筒状のロータマグネット38を有している。回転軸37は、ケース21の内底部および蓋22に設けられた2つの軸受39A,39Bを介して回転可能に支持されている。回転軸37の第1の端部は、ケース21の底壁を貫通して外部に突出している。回転軸37の第2の端部は、制御装置13に向かって延びている。
【0015】
図2に示すように、蓋22は、ケース21の開口端部から外部へ向けて若干突き出している。モータ12の第1の巻線群に対応する3つのモータ端子36A、およびモータ12の第2の巻線群に対応する3つのモータ端子36Bが、蓋22の外端面からケース21の外側に突出している。これらモータ端子36A,36Bは、三相のバスバー36の一部分である。モータ端子36A,36B、すなわちバスバー36の端部は、蓋22を非接触で貫通してモータ12の外部に導出されている。蓋22は、たとえばアルミニウムなどの熱伝導性に優れる金属製である。蓋22の形状は円柱状である。蓋22は、軸受39Aを保持するベアリングホルダとして用いられる。また、蓋22は、放熱を促すヒートシンクとして用いられる。
【0016】
3つのモータ端子36Aおよび3つのモータ端子36Bは、それぞれ蓋22の周縁部分に設けられている。3つのモータ端子36Aと3つのモータ端子36Bとは、蓋22の円周方向に間隔を空けて設けられている。3つのモータ端子36Aは、モータ12の軸方向からみて、中央のモータ端子36Aが設けられた位置での蓋22の外周に対する接線方向に沿って一列に立ち並んでいる。同様に、3つのモータ端子36Bは、モータ12の軸方向からみて、中央のモータ端子36Bが設けられた位置での蓋22の外周に対する接線方向に沿って一列に立ち並んでいる。
【0017】
蓋22は、収容孔22Aを有している。収容孔22Aは、モータ12の軸方向からみて、蓋22の中央に設けられている。収容孔22Aは、蓋22をモータ12の軸方向に貫通している。収容孔22Aには、モータ12の回転軸37の端部が挿入されている。回転軸37の端部には、円柱状の永久磁石70が固定されている。永久磁石70の外径は、収容孔22Aの内径よりも短い長さに設定されている。永久磁石70は、いわゆる2極磁石である。永久磁石70の直径に沿った直線を境として半分はN極に、残りの半分はS極に着磁されている。永久磁石70は、収容孔22Aの内部に収容されている。永久磁石70は、モータ12の軸方向において、蓋22の外端面よりも内側に位置している。つまり、永久磁石70は、モータ12の軸方向において、蓋22の外端面から外部に突出していない。
【0018】
つぎに、制御装置13の構成を説明する。
【0019】
図2に示すように、制御装置13は、ハウジング41、基板42およびカバー43を有している。
【0020】
ハウジング41は、モータ12の軸方向端部、詳しくはケース21の開口端部に固定される。ハウジング41は、アルミニウムなどの熱伝導性に優れる金属製である。ハウジング41は、放熱を促すヒートシンクとして用いられる。ハウジング41の形状は、一端が開口した箱体状である。ハウジング41の開口は、モータ12と反対側(図2中の上側)へ向いている。ハウジング41は、モータ12の軸方向からみて、モータ12とオーバーラップする部分と、モータ12の側方へはみ出す部分とを有している。
【0021】
ハウジング41は、嵌合孔41Dを有している。嵌合孔41Dは、ハウジング41の底壁におけるモータ12に対応する部分に設けられている。嵌合孔41Dは、ハウジング41の底壁をモータ12の軸方向に貫通している。嵌合孔41Dの内径は、モータ12の蓋22の外径よりも若干長い長さに設定されている。嵌合孔41Dは、蓋22におけるケース21の端部から外部へ突き出した部分に嵌合可能である。
【0022】
ハウジング41は、その外周を構成する4つの側壁を有している。これら側壁は、モータ12の軸方向からみて、短辺方向において互いに対向する2つの長側壁、および長辺方向において互いに対向する2つの短側壁を含んでいる。2つの短側壁のうち嵌合孔41Dに近い側の短側壁は、モータ12の外周に沿って円弧状に湾曲している。
【0023】
ハウジング41は、3つのコネクタ嵌合部41A,41B,41Cを有している。3つのコネクタ嵌合部41A,41B,41Cは、ハウジング41におけるモータ12の側方へはみ出す部分の底面に設けられている。3つのコネクタ嵌合部41A,41B,41Cの形状は、それぞれ四角筒状である。コネクタ嵌合部41Aのサイズは、他の2つのコネクタ嵌合部41B,41Cのサイズよりも大きい。2つのコネクタ嵌合部41B,41Cのサイズは同じ程度である。3つのコネクタ嵌合部41A,41B,41Cは、ハウジング41における円弧状の短側壁と長辺方向において対向する平板状の短側壁に沿って一列に並んでいる。コネクタ嵌合部41A,41B,41Cは、それぞれハウジング41が開口する方向と反対側(図2中の下側)へ開口している。
【0024】
コネクタ嵌合部41Aには、たとえばバッテリなどの直流電源から延びる配線のプラグコネクタが嵌合される。コネクタ嵌合部41Aの内部には、図示しない電源端子およびグランド端子が設けられている。電源端子およびグランド端子は、それぞれ基板42に接続される。
【0025】
2つのコネクタ嵌合部41B,41Cには、それぞれモータ装置11の外部の機器から延びる配線のプラグコネクタが嵌合される。外部の機器としては、たとえばモータ12の制御に使用される物理量を検出するセンサ、制御装置13との間で情報を授受する他の制御装置が挙げられる。2つのコネクタ嵌合部41B,41Cの内部には、図示しない信号端子が設けられている。信号端子は基板42に接続される。
【0026】
基板42は、ハウジング41の内部に収容される。つまり、基板42は、モータ12の軸方向に該モータ12と並んで設けられている。基板42の板厚方向は、モータ12の軸方向と平行である。モータ12の軸方向からみて、基板42の外周の輪郭はハウジング41の内周の輪郭形状に対応している。基板42は、モータ12の軸方向からみて、長方形の1つの短辺が円弧状である形状を有している。
【0027】
基板42は、モータ12に対する給電を制御するための回路である制御回路を構成する制御関係の電子部品を有している。この電子部品には、2系統の巻線群に対応する2つのマイクロコンピュータ51,61が含まれる。2つのマイクロコンピュータ51,61は、チップ型の集積回路である。基板42は、ハウジング41の底壁に向き合う実装面を有する。2つのマイクロコンピュータ51,61は、基板42の実装面に設けられている。
【0028】
基板42は、モータ12に電力を供給するための回路であるパワー回路を構成する電力関係の電子部品を有している。この電子部品には、2系統の巻線群に対応する2つのインバータ回路52,62が含まれる。2つのインバータ回路52,62は、基板42の実装面に設けられている。
【0029】
基板42は、2組のモータ端子接続部54,64、電源端子接続部55、グランド端子接続部56、および2つの信号端子接続部57,58を有している。モータ端子接続部54は、対応する系統の3つのモータ端子36Aが接続される部分である。モータ端子接続部64は、対応する系統の3つのモータ端子36Bが接続される部分である。図示の例では、これらモータ端子接続部54,64は、それぞれ3つの孔であるが、たとえば直方体状の端子台であってもよい。電源端子接続部55はコネクタ嵌合部41Aの電源端子が接続される部分である。電源端子接続部55には、電源端子を介して直流電源からの直流電力が供給され、プラスの電圧が印加される。グランド端子接続部56は、コネクタ嵌合部41Aのグランド端子が接続される部分であって、直流電源の負極、すなわちグランドに接続される部分である。信号端子接続部57は、コネクタ嵌合部41Bの信号端子が接続される部分である。信号端子接続部58は、コネクタ嵌合部41Cの信号端子が接続される部分である。2つのマイクロコンピュータ51,61とモータ装置11の外部の機器との間では、信号端子を介して電気信号が授受される。
【0030】
基板42は、モータ12の回転を検出するための2つの回転角センサ71A,71Bを有している。2つの回転角センサ71A,71Bは、基板42の実装面に設けられている。2つの回転角センサ71A,71Bと永久磁石70とは、モータ12の軸方向において、互いに対向する。2つの回転角センサ71A,71Bとしては、MRセンサなどの磁気センサが採用される。2つの回転角センサ71A,71Bには、永久磁石70のN極からS極へ向かう磁界が付与される。2つの回転角センサ71A,71Bは、永久磁石70から発せられる磁界の方向、すなわちモータ12の回転軸37の回転角に応じた電気信号を生成する。
【0031】
カバー43は、ハウジング41に取り付けられる。カバー43は、たとえば合成樹脂製である。カバー43の形状は、一端が開口した箱体状である。カバー43は、ハウジング41へ向けて開口している。カバー43は、ハウジング41の外周に嵌合されることによりハウジング41の開口を覆うかたちで塞ぐ。
【0032】
つぎに、モータ装置11の電気的な構成を説明する。
【0033】
図3に示すように、モータ装置11は、第1の系統の構成要素として、モータ12の第1の巻線群34A、インバータ回路52およびマイクロコンピュータ51を有している。
【0034】
インバータ回路52は複数のFET(Field Effect Transistor)53を有している。インバータ回路52は、直列に接続された2つのFET53の組からなるレグを3つ有している。3つのレグは、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との間で並列に接続されている。電源端子接続部55およびグランド端子接続部56は、それぞれ直流電源の+端子および-端子に接続される。
【0035】
第1の巻線群34Aは、U相巻線、V相巻線およびW相巻線を有している。U相巻線、V相巻線およびW相巻線は、たとえばスター結線されている。各相の巻線の中性点と反対側の端部は、モータ端子36Aを介してインバータ回路52における対応する相のレグの中点に接続されている。
【0036】
マイクロコンピュータ51は、インバータ回路52の動作を制御する。マイクロコンピュータ51は、回転角センサ71Aを通じて検出されるモータ12の回転角に基づきインバータ回路52の各FET53に対するスイッチング指令を生成する。インバータ回路52の各FET53がマイクロコンピュータ51により生成されるスイッチング指令に基づきスイッチングすることによって直流電源から供給される直流電力が三相の交流電力へ変換される。インバータ回路52により生成される交流電力は、モータ端子36Aを介してモータ12の第1の巻線群34Aへ供給される。
【0037】
モータ装置11は、第2の系統の構成要素として、モータ12の第2の巻線群34B、インバータ回路62およびマイクロコンピュータ61を有している。
【0038】
インバータ回路62は複数のFET63を有している。インバータ回路62は、直列に接続された2つのFET63の組からなるレグを3つ有している。3つのレグは、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との間で並列に接続されている。
【0039】
第2の巻線群34Bは、U相巻線、V相巻線およびW相巻線を有している。U相巻線、V相巻線およびW相巻線は、たとえばスター結線されている。各相の巻線の中性点と反対側の端部は、モータ端子36Bを介してインバータ回路62における対応する相のレグの中点に接続されている。
【0040】
マイクロコンピュータ61は、インバータ回路62の動作を制御する。マイクロコンピュータ61は、回転角センサ71Bを通じて検出されるモータ12の回転角に基づきインバータ回路62の各FET63に対するスイッチング指令を生成する。インバータ回路62の各FET63がマイクロコンピュータ61により生成されるスイッチング指令に基づきスイッチングすることによって直流電源から供給される直流電力が三相の交流電力へ変換される。インバータ回路62により生成される交流電力は、モータ端子36Bを介してモータ12の第2の巻線群34Bへ供給される。
【0041】
つぎに、基板42に設けられる構成要素のレイアウトについて説明する。
【0042】
図4に示すように、基板42は、境界線BLを境として第1の系統の巻線群に対応する第1の領域A1と、第2の系統の巻線群に対応する第2の領域A2とに区画されている。境界線BLは、モータ12の軸方向からみて、基板42の長辺に沿って延び、かつモータ12の中心である軸線Oを通る。つまり、境界線BLは、モータ12の中心を通りかつモータ12の軸線Oと直交する。基板42は、境界線BLに沿った方向において、第1側と第2側とを有する。第1側は、基板42の円弧状の短辺と反対側(図4中の右側)であり、第2側は、基板42の円弧状の短辺が設けられている側(図4中の左側)である。
【0043】
第1の領域A1は、第1のパワー回路領域A11および第1の制御回路領域A12を有している。第1のパワー回路領域A11および第1の制御回路領域A12は、モータ12の軸方向からみて、境界線BLに沿って並んでいる。第1のパワー回路領域A11は、モータ12の軸方向からみて、基板42の第1側に位置している。第1の制御回路領域A12は、モータ12の軸方向からみて、基板42の第2側に位置している。詳細には、第1の制御回路領域A12は、モータ12の軸方向からみて、モータ12とオーバーラップする第1の部分と、この第1の部分から境界線BLに沿って基板42の第1側へ延び第1のパワー回路領域A11と境界線BLとの間に介在する第2の部分とを有している。第1の部分は、電源端子接続部55に対して、境界線BLに沿った方向において、第1のパワー回路領域A11における第2側の端部より遠くに位置している本体部分である。言い換えれば、第1のパワー回路領域A11は、境界線BLに沿った方向において、第1の制御回路領域A12の本体部分と、電源端子接続部55との間に位置している。
【0044】
第2の領域A2は、第2のパワー回路領域A21および第2の制御回路領域A22を有している。第2のパワー回路領域A21および第2の制御回路領域A22は、モータ12の軸方向からみて、境界線BLに沿って並んでいる。第2のパワー回路領域A21は、モータ12の軸方向からみて、基板42の第1側に位置している。第2の制御回路領域A22は、モータ12の軸方向からみて、基板42の第2側に位置している。詳細には、第2の制御回路領域A22は、モータ12の軸方向からみて、モータ12とオーバーラップする第3の部分と、この第3の部分から境界線BLに沿って基板42の第1側へ延び、第2のパワー回路領域A21と境界線BLとの間に介在する第4の部分とを有している。第3の部分は、境界線BLに沿った方向において、電源端子接続部55に対して、第2のパワー回路領域A21における第2側の端部より遠くに位置している本体部分である。言い換えれば、第2のパワー回路領域A21は、境界線BLに沿った方向において、第2の制御回路領域A22の本体部分と、電源端子接続部55との間に位置している。
【0045】
第1のパワー回路領域A11と第2のパワー回路領域A21とは、境界線BLを対称軸とする線対称である。第1の制御回路領域A12と第2の制御回路領域A22とは、境界線BLを対称軸とする線対称である。
【0046】
第1のパワー回路領域A11には、第1の系統の構成要素であるインバータ回路52およびモータ端子接続部54を含む電力関係の電子部品が設けられる。インバータ回路52の各FET53は、放熱グリスを介してハウジング41の底壁に接触した状態に維持される。第1の制御回路領域A12には、第1の系統の構成要素であるマイクロコンピュータ51を含む制御関係の電子回路が設けられる。
【0047】
第2のパワー回路領域A21には、第2の系統の構成要素であるインバータ回路62およびモータ端子接続部64を含む電力関係の電子部品が設けられる。インバータ回路62の各FET63は、放熱グリスを介してハウジング41の底壁に接触した状態に維持される。第2の制御回路領域A22には、第2の系統の構成要素であるマイクロコンピュータ61を含む制御関係の電子回路が設けられる。
【0048】
電源端子接続部55、グランド端子接続部56、および2つの信号端子接続部57,58は、モータ12の軸方向からみて、基板42の第1側の端部領域に設けられている。より具体的には、各端子接続部(55~58)は、基板42における第1側の短辺と回路領域群(A11,A12,A21,A22)との間の領域に設けられている。これらの端子接続部(55~58)は、モータ12の軸方向からみて、基板42における第1側の短辺に沿って一列に並んでいる。
【0049】
電源端子接続部55およびグランド端子接続部56は、第1の領域A1に設けられている。電源端子接続部55およびグランド端子接続部56は、境界線BLに沿った方向において、第1のパワー回路領域A11に隣接している。信号端子接続部57は、おおよそ第2の領域A2に設けられている。信号端子接続部57は境界線BLを横切るかたちで若干第1の領域A1にはみ出している。信号端子接続部57は、境界線BLに沿った方向において、第2の制御回路領域A22に隣接している。信号端子接続部58は、第2の領域A2に設けられている。信号端子接続部58は、境界線BLに沿った方向において、第2のパワー回路領域A21に隣接している。
【0050】
2つの回転角センサ71A,71Bは、モータ12の軸方向からみて、基板42の永久磁石70にオーバーラップする部位に設けられている。つまり、回転角センサ71A,71Bは、第1の制御回路領域A12の第1の部分と第2の制御回路領域A22の第3の部分との間に位置している。2つの回転角センサ71A,71Bは、境界線BLを対称軸とする線対称の位置にあるように、基板42に設けられている。回転角センサ71Aは、第1の領域A1における境界線BLの近傍に設けられて第1の制御回路領域A12に隣接している。回転角センサ71Bは、第2の領域A2における境界線BLの近傍に設けられて第2の制御回路領域A22に隣接している。
【0051】
基板42の4つの回路領域(A11,A12,A21,A22)には、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対を経由して基板42に供給される電力が、電源線を介して供給される。また、基板42の第1の制御回路領域A12および第2の制御回路領域A22には、2つの信号端子接続部57,58からの電気信号が信号線を介して供給される。また、第1の制御回路領域A12には、回転角センサ71Aにより生成される電気信号が信号線を介して供給される。第2の制御回路領域A22には、回転角センサ71Bにより生成される電気信号が信号線を介して供給される。
【0052】
これら電源線および信号線は、それぞれ基板42のパターン配線として設けられる。基板42としては、たとえば多層基板が採用される。多層基板とは、複数の絶縁層と複数の配線層とが交互に積層された基板をいう。たとえば6層基板は、基板の互いに反対側に位置する2つの表面に設けられる2層および基板の内部に設けられる4層の合計6層の配線層を有する。配線層は、たとえばエッチングにより導体箔の一部を除去することによって所定のパターン形状に形成される。複数の配線層は、それぞれ電源線および信号線の少なくとも一方として用いられる。定められた複数の配線層の間は、たとえばビアを介して接続される。
【0053】
つぎに、基板42における電源線および信号線の経路の一例を説明する。ただし、基板42をモータ12の軸方向からみる。
【0054】
図4に示すように、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、電力経路である第1の経路R1を経て第1のパワー回路領域A11へ供給される。第1の経路R1は、境界線BLに沿った方向において、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分から第1のパワー回路領域A11へ向けて直線状に延びている。
【0055】
電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、電力経路である第2の経路R2を経て第2のパワー回路領域A21へ供給される。第2の経路R2は、境界線BLに交わる方向において、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分から第2の領域A2へ向けて延びている。第2の経路R2は、基板42における2つの信号端子接続部57,58の外側を迂回して第2のパワー回路領域A21へ至る。外側とは、境界線BLに沿った方向において、基板42における2つの信号端子接続部57,58を基準とする各回路領域(A11,A12,A21,A22)と反対側をいう。
【0056】
回転角センサ71Aにより生成される電気信号は、信号経路である第3の経路R3を経て第1の制御回路領域A12へ供給される。第3の経路R3は、境界線BLに交わる方向において、回転角センサ71Aから第2の制御回路領域A22と反対側へ直線状に延びている。
【0057】
回転角センサ71Bにより生成される電気信号は、信号経路である第4の経路R4を経て第2の制御回路領域A22へ供給される。第4の経路R4は、境界線BLに交わる方向において、回転角センサ71Bから第1の制御回路領域A12と反対側へ直線状に延びている。
【0058】
<第1の実施の形態の効果>
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
(1)第1のパワー回路領域A11へ供給される電流の経路である第1の経路R1および第2のパワー回路領域A21へ供給される電流の経路である第2の経路R2は、いずれも2つの信号端子接続部57,58を避けるように設けられている。このため、2つの信号端子接続部57,58は、第1の経路R1および第2の経路R2を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。したがって、2つの信号端子接続部57,58からの電気信号にノイズが重畳することを抑制できる。
【0060】
(2)回転角センサ71Aは、第1の制御回路領域A12に隣接している。このため、回転角センサ71Aから第1の制御回路領域A12へ伝送される電気信号の経路である第3の経路R3を、第1のパワー回路領域A11および第1の経路R1を横切ることなく設定することが可能である。したがって、回転角センサ71Aおよび第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11および第1の経路R1を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。このため、回転角センサ71Aにより生成される電気信号、および第3の経路R3により伝送される電気信号にノイズが重畳することを抑制できる。
【0061】
また、回転角センサ71Bは、第2の制御回路領域A22に隣接している。このため、回転角センサ71Bから第2の制御回路領域A22へ伝送される電気信号の経路である第4の経路R4を、第2のパワー回路領域A21および第2の経路R2を横切ることなく設定することが可能である。したがって、回転角センサ71Bおよび第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21および第2の経路R2を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。このため、回転角センサ71Bにより生成される電気信号、および第4の経路R4により伝送される電気信号にノイズが重畳することを抑制できる。
【0062】
(3)電源端子接続部55およびグランド端子接続部56は、基板42の第1側の端部領域に設けられている。第1の制御回路領域A12および第2の制御回路領域A22は、境界線BLに沿った方向において、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56に対して第1のパワー回路領域A11および第2のパワー回路領域A21より遠くに位置している本体部分を有する。このため、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第1のパワー回路領域A11との間の距離を、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第1の制御回路領域A12との間の距離よりも短くしやすい。特に、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56は、第1のパワー回路領域A11に隣接しているため、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第1のパワー回路領域A11との間の距離を好適に短くできる。また、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第2のパワー回路領域A21との間の距離を、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第2の制御回路領域A22との間の距離よりも短くしやすい。この距離が短くなる分だけ、電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第1のパワー回路領域A11との間の電気抵抗、ならびに電源端子接続部55およびグランド端子接続部56と第2のパワー回路領域A21との間の電気抵抗がより小さくなる。したがって、モータ12に対してより好適に電力が供給される。モータ12の出力も改善される。
【0063】
<第2の実施の形態>
つぎに、モータ制御装置の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の第1の実施の形態と同様の構成を有しているが、パワー回路領域と制御回路領域とが逆の位置に設定されている点で第1の実施の形態と異なる。説明の便宜上、同一の構成については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図5に示すように、第1の制御回路領域A12は、基板42の第1の領域A1における第1側(図5中の右端部側)に設定されている。第1のパワー回路領域A11は、基板42の第1の領域A1における第2側(図5中の左端部側)に設定されている。また、第2の制御回路領域A22は、基板42の第2の領域A2における第1側に設定されている。第2のパワー回路領域A21は、基板42の第2の領域A2における第2側に設定されている。第1のパワー回路領域A11の第1の部分は、境界線BLに沿った方向において、電源端子接続部55に対して、第1の制御回路領域A12における第2側の端部より遠くに位置している本体部分である。第2のパワー回路領域A21の第3の部分は、境界線BLに沿った方向において、電源端子接続部55に対して、第2の制御回路領域A22における第2側の端部より遠くに位置している本体部分である。回転角センサ71A,71Bは、第1のパワー回路領域A11の第1の部分と第2のパワー回路領域A21の第3の部分との間に位置している。
【0065】
電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第1の経路R1を経て第1のパワー回路領域A11へ供給される。第1の経路R1は、モータ12の軸方向からみて、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分から第1のパワー回路領域A11における第1の制御回路領域A12と境界線BLとの間の部分へ向けて斜状に延びている。第1の経路R1は、第1の制御回路領域A12と境界線BLとの間の部分まで延びた後、第1のパワー回路領域A11における第1の制御回路領域A12と境界線BLとの間の部分において、基板42の第1の端部側から第2の端部側へ向けて境界線BLに沿って直線状に延びている。
【0066】
電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第2の経路R2を経て第2のパワー回路領域A21へ供給される。第2の経路R2は、モータ12の軸方向からみて、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分から第2のパワー回路領域A21における第2の制御回路領域A22と境界線BLとの間の部分へ向けて斜状に延びている。第2の経路R2は、第2の制御回路領域A22と境界線BLとの間の部分まで延びた後、第2のパワー回路領域A21における第2の制御回路領域A22と境界線BLとの間の部分において、基板42の第1の端部側から第2の端部側へ向けて境界線BLに沿って直線状に延びている。
【0067】
回転角センサ71Aにより生成される電気信号は、第3の経路R3を経て第1の制御回路領域A12へ供給される。第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11を迂回するように設けられている。具体的には、第3の経路R3は、基板42における第1のパワー回路領域A11と境界線BLとの間の部分において、回転角センサ71Aから基板42の第2側へ向けて直線状に延びている。第3の経路R3は、境界線BLに沿った方向において、第1のパワー回路領域A11から外れた位置まで延びた後、第1のパワー回路領域A11の外側を基板42の周縁に沿って第1の制御回路領域A12へ向けて延びている。
【0068】
回転角センサ71Bにより生成される電気信号は、第4の経路R4を経て第2の制御回路領域A22へ供給される。第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21を迂回するように設けられている。具体的には、第4の経路R4は、基板42における第2のパワー回路領域A21と境界線BLとの間の部分において、回転角センサ71Aから基板42の第2側へ向けて直線状に延びている。第4の経路R4は、境界線BLに沿った方向において、第2のパワー回路領域A21から外れた位置まで延びた後、第2のパワー回路領域A21の外側を基板42の周縁に沿って第2の制御回路領域A22へ向けて延びている。
【0069】
<第2の実施の形態の効果>
したがって、第2の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0070】
(4)回転角センサ71Aから第1の制御回路領域A12へ伝送される電気信号の経路である第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11を迂回するように設けられている。このため、第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。また、回転角センサ71Bから第2の制御回路領域A22へ伝送される電気信号の経路である第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21を迂回するように設けられている。このため、第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。したがって、第3の経路R3および第4の経路R4によって伝送される電気信号にノイズが重畳することを抑制することができる。
【0071】
<第3の実施の形態>
つぎに、モータ制御装置の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の第2の実施の形態と同様の構成を有しているが、電源端子接続部からパワー回路領域へ伝送される電力の経路、および回転角センサから制御回路領域へ伝送される電気信号の経路の点で第2の実施の形態と異なる。説明の便宜上、同一の構成については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図6に示すように、第1のパワー回路領域A11は、第2の部分を有していない。第1の制御回路領域A12は、境界線BLに近接した範囲まで広がっている。第2のパワー回路領域A21は、第4の部分を有していない。第2の制御回路領域A22は、境界線BLに近接した範囲まで広がっている。第1の制御回路領域A12および第2の制御回路領域A22は、電源端子接続部55に対して、それぞれ第1のパワー回路領域A11および第2のパワー回路領域A21より近い側に位置している。
【0073】
電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第1の経路R1を経て第1のパワー回路領域A11へ供給される。第1の経路R1は、モータ12の軸方向からみて、第1の制御回路領域A12を迂回するように設けられている。すなわち、第1の経路R1は、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分を起点として、第1の制御回路領域A12の外側を基板42の周縁に沿って第1のパワー回路領域A11へ向けて延びている。
【0074】
また、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第2の経路R2を経て第2のパワー回路領域A21へ供給される。第2の経路R2は、モータ12の軸方向からみて、第2の制御回路領域A22を迂回するように設けられている。すなわち、第2の経路R2は、基板42の電源端子接続部55およびグランド端子接続部56が設けられた部分を起点として、第2の制御回路領域A22の外側を基板42の周縁に沿って第2のパワー回路領域A21へ向けて延びている。
【0075】
回転角センサ71Aにより生成される電気信号は、第3の経路R3を経て第1の制御回路領域A12へ供給される。第3の経路R3は、基板42における第1のパワー回路領域A11と境界線BLとの間の部分において、回転角センサ71Aから基板42の第1側へ向けて直線状に延びている。第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11から外れた位置まで延びた後、第1の制御回路領域A12へ向けて斜状に延びている。
【0076】
回転角センサ71Bにより生成される電気信号は、第4の経路R4を経て第2の制御回路領域A22へ供給される。第4の経路R4は、基板42における第2のパワー回路領域A21と境界線BLとの間の部分において、回転角センサ71Bから基板42の第1側へ向けて直線状に延びている。第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21から外れた位置まで延びた後、第2の制御回路領域A22へ向けて斜状に延びている。
【0077】
<第3の実施の形態の効果>
したがって、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の(1)に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0078】
(5)回転角センサ71Aから第1の制御回路領域A12へ伝送される電気信号の経路である第3の経路R3は、モータ12の軸方向からみて第1のパワー回路領域A11を横切らないように設けられている。このため、第3の経路R3は、第1のパワー回路領域A11を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。また、回転角センサ71Bから第2の制御回路領域A22へ伝送される電気信号の経路である第4の経路R4は、モータ12の軸方向からみて第2のパワー回路領域A21を横切らないように設けられている。このため、第4の経路R4は、第2のパワー回路領域A21を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。したがって、第3の経路R3および第4の経路R4によって伝送される電気信号にノイズが重畳することを抑制することができる。
【0079】
(6)電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対から第1のパワー回路領域A11へ伝送される電力の経路である第1の経路R1は、第1の制御回路領域A12の外側を迂回するように設けられている。すなわち、第1の経路R1は、モータ12の軸方向からみて、第1の制御回路領域A12を横切らないように設けられている。このため、第1の制御回路領域A12は、第1の経路R1を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。また、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対から第2のパワー回路領域A21へ伝送される電力の経路である第2の経路R2は、第2の制御回路領域A22の外側を迂回するように設けられている。すなわち、第2の経路R2は、モータ12の軸方向からみて、第2の制御回路領域A22を横切らないように設けられている。このため、第2の制御回路領域A22は、第2の経路R2を流れる大電流による磁界の影響を受けにくい。
【0080】
(7)第1の経路R1は、第1の制御回路領域A12の外側を迂回するように設けられている。また、第2の経路R2は、第2の制御回路領域A22の外側を迂回するように設けられている。このため、図5に示される第2の実施の形態のように、第1の経路R1および第2の経路R2を基板42における第1の制御回路領域A12と第2の制御回路領域A22との間の部分に設定する場合に比べて、第1の制御回路領域A12および第2の制御回路領域A22の面積をより広く確保することができる。
【0081】
<第4の実施の形態>
つぎに、モータ制御装置の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図4に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。説明の便宜上、同一の構成については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図7に示すように、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第5の経路R5を経て第1の制御回路領域A12へ供給される。第5の経路R5は、モータ12の軸方向からみて、第1のパワー回路領域A11の外側を迂回するように基板42の周縁に沿って設けられている。
【0083】
また、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対からの電力は、第6の経路R6を経て第2の制御回路領域A22へ供給される。第6の経路R6は、モータ12の軸方向からみて、グランド端子接続部56、2つの信号端子接続部57,58、および第2のパワー回路領域A21の外側を迂回するように基板42の周縁に沿って設けられている。
【0084】
なお、製品仕様に応じて、第5の経路R5および第6の経路R6を基板42における第1のパワー回路領域A11と第2のパワー回路領域A21との間の部分に設定してもよい。
【0085】
<第4の実施の形態の効果>
したがって、第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態の(1)~(3)に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0086】
(8)電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対から第1の制御回路領域A12へ伝送される電力の経路である第5の経路R5は、モータ12の軸方向からみて、第1のパワー回路領域A11および第1の経路R1のいずれも横切らない。このため、第5の経路R5を流れる電流による磁界と第1のパワー回路領域A11を流れる電流による磁界とが互いに影響を及ぼし合うことが抑制される。第5の経路R5を流れる電流による磁界と第1の経路R1を流れる電流による磁界とが互いに影響を及ぼし合うことも抑制される。
【0087】
また、電源端子接続部55とグランド端子接続部56との対から第2の制御回路領域A22へ伝送される電力の経路である第6の経路R6は、モータ12の軸方向からみて、第2のパワー回路領域A21および第2の経路R2のいずれも横切らない。このため、第6の経路R6を流れる電流による磁界と第2のパワー回路領域A21を流れる電流による磁界とが互いに影響を及ぼし合うことが抑制される。第6の経路R6を流れる電流による磁界と第2の経路R2を流れる電流による磁界とが互いに影響を及ぼし合うことも抑制される。
【0088】
<他の実施の形態>
なお、第1~第4の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0089】
・各実施の形態では、2つの回転角センサ71A,71Bを設けたが、1つの回転角センサを設けるようにしてもよい。ただし、この場合であれ、回転角センサにより生成される電気信号は、第3の経路R3を介して第1の制御回路領域A12へ伝送される一方、第4の経路R4を介して第2の制御回路領域A22へ伝送される。
【0090】
・モータ装置11は、たとえば電動パワーステアリング装置の駆動源として使用してもよい。この場合、モータ12は操舵アシスト力を発生するアシストモータとして機能する。制御装置13は、アシストモータとしてのモータ12を制御する。
【0091】
・モータ装置11は、ステアバイワイヤ方式の操舵装置における反力機構あるいは転舵機構の駆動源として使用してもよい。この場合、モータ12は操舵反力を発生する反力モータ、あるいは車両の転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータとして機能する。制御装置13は、反力モータあるいは転舵モータとしてのモータ12を制御する。
【0092】
・モータ装置11の適用先は車載装置に限られない。モータ装置11をマシニングセンタなどの工作機械またはロボットなどの駆動源として適用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7