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特許7593474発生危険度算出装置、発生危険度表示システム、発生危険度算出方法及び発生危険度算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】発生危険度算出装置、発生危険度表示システム、発生危険度算出方法及び発生危険度算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023504916
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009261
(87)【国際公開番号】W WO2022190204
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017502(JP,A)
【文献】特開2018-060427(JP,A)
【文献】特開2010-015436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の画像を解析する画像解析手段と、
前記道路の周辺における環境情報を取得する環境情報取得手段と、
前記画像解析手段が解析した解析結果及び前記環境情報取得手段が取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出する発生危険度算出手段と、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける表示制御手段と、
を備え
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
発生危険度算出装置。
【請求項2】
前記画像解析手段は、前記路面標示線が設けられた前記道路の画像を解析する
請求項に記載の発生危険度算出装置。
【請求項3】
前記環境情報は、天気、気温、交通量、舗装材料及び前記路面標示線の材料のうち、少なくともいずれかを含む、
請求項1または2に記載の発生危険度算出装置。
【請求項4】
移動しながら道路の画像を撮像するとともに、前記道路の位置情報を取得する移動撮像装置と、
前記移動撮像装置から出力された前記画像を解析した解析結果及び前記道路の周辺における環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出し、算出された前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける発生危険度算出装置と、
前記発生危険度算出装置によって前記発生危険度が対応付けられた前記地図情報を表示する表示装置と、
を備え
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
発生危険度表示システム。
【請求項5】
前記発生危険度算出装置は、前記路面標示線が設けられた前記道路の画像を解析する
請求項に記載の発生危険度表示システム。
【請求項6】
前記環境情報は、天気、気温、交通量、舗装材料及び前記路面標示線の材料のうち、少なくともいずれかを含む、
請求項4または5に記載の発生危険度表示システム。
【請求項7】
道路の画像を解析させ、
前記道路の周辺における環境情報を取得させ、
前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせ
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
発生危険度算出方法。
【請求項8】
前記道路の前記画像を解析させる際に、前記路面標示線が設けられた前記道路の画像を解析させる、
請求項に記載の発生危険度算出方法。
【請求項9】
前記環境情報は、天気、気温、交通量、舗装材料及び前記路面標示線の材料のうち、少なくともいずれかを含む、
請求項7または8に記載の発生危険度算出方法。
【請求項10】
道路の画像を解析させ、
前記道路の周辺における環境情報を取得させ、
前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせる、
ことをコンピュータに実行させる発生危険度算出プログラムであって、
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである発生危険度算出プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生危険度算出装置、発生危険度表示システム、発生危険度算出方法及び発生危険度算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、気温、気圧、湿度、雨量、降雪量、風向、風圧、路面の画像などの環境情報から、道路の破損を検知して経路を割り当てるサーバが記載されている。
【0003】
特許文献2には、路面情報の検出結果を出力した描画を運転者に提供することで、凍結路や積雪路を避けた最適な経路選択を提供するナビゲーション装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、紫外線写真/赤外線写真/温度分布写真を撮像する別々のカメラを用意し、路面状態の特徴量を算出することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、全天魚眼カメラ及び温度センサを使用して、路面の凍結しやすさを算出することが記載されている。
【0006】
特許文献5には、検知したい路面状態に対応した湿潤及び積雪画像などを、外乱因子となる晴天、くもり、夜間などの天候条件にそれぞれ対応させて予め撮像し、それらを基準画像として貯えておき、新たに撮像した検査画像と差分比較することで路面状態を判定することが記載されている。
【0007】
非特許文献1には、現在の凍結路の情報を表示させることが記載されている。
【0008】
非特許文献2には、ポットホールが形成される条件が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/111126号
【文献】特開平11-051682号公報
【文献】特許第4814855号公報
【文献】特開2009-042115号公報
【文献】特開2003-240869号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】国土交通省、“冬の道路情報”、[online]、[2021年2月15日検索]、インターネット、<https://www.mlit.go.jp/road/fuyumichi/fuyumichi.html>
【文献】丸山記美雄、安倍隆二、木村孝司、“融雪期に発生する舗装の損傷実態と損傷のメカニズム”、[online]、[2021年2月15日検索]、インターネット、<https://www.mlit.go.jp/chosahokoku/giken/program/kadai/pdf/jusyo/H26/anzen2_02.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、道路の凍結を検出する定点カメラは、山道、橋梁付近など一地点の凍結情報を提示するにとどまる。定点カメラに映らない範囲の情報については、現地に行くまで不明な状況となっている。したがって、このような定点カメラに映らない範囲の凍結等を検出するためには、専用カメラ、専用センサ、専用車両等を必要とし、コストを要する。
【0012】
また、例えば、道路に空いた穴(以下、ポットホールと呼ぶ。)は、車両の通行上、危険であるので、道路を管理する自治体によって補修等が行われる必要がある。しかしながら、実情としては、住民から苦情が届くまで、ポットホールの発生場所の把握が困難な状況となっており、事後保全型の管理となっている。本来は、ポットホールの発生前にあらかじめポットホールの発生を予測し、ポットホールによる道路の劣化が進む前に舗装等の補修ができる予防保全型の管理が望ましい。このことは、国土交通省の道路管理指針において、予防保全型への移行を呼び掛けていることに対応する。
【0013】
上述した例のように、道路の管理に関して、様々なサービスの提供が期待されている。
【0014】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、道路を管理する上で必要なサービスを向上させることができる発生危険度算出装置、発生危険度表示システム、発生危険度算出方法及び発生危険度算出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る発生危険度算出装置は、道路の画像を解析する画像解析手段と、前記道路の周辺における環境情報を取得する環境情報取得手段と、前記画像解析手段が解析した解析結果及び前記環境情報取得手段が取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出する発生危険度算出手段と、前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける表示制御手段と、を備える。
【0016】
また、本開示に係る発生危険度表示システムは、移動しながら道路の画像を撮像するとともに、前記道路の位置情報を取得する移動撮像装置と、前記移動撮像装置から出力された前記画像を解析した解析結果及び前記道路の周辺における環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出し、算出された前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける発生危険度算出装置と、前記発生危険度算出装置によって前記発生危険度が対応付けられた前記地図情報を表示する表示装置と、を備える。
【0017】
さらに、本開示に係る発生危険度算出方法は、道路の画像を解析させ、前記道路の周辺における環境情報を取得させ、前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせる。
【0018】
また、本開示に係る発生危険度算出プログラムは、道路の画像を解析させ、前記道路の周辺における環境情報を取得させ、前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせることをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、道路を管理する上で必要なサービスを向上させることができる発生危険度算出装置、発生危険度表示システム、発生危険度算出方法及び発生危険度算出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の概要に係る発生危険度表示システムを例示した構成図である。
図2】実施形態の概要に係る発生危険度算出装置を例示したブロック図である。
図3】実施形態の概要に係る発生危険度算出方法を例示したフローチャート図である。
図4】実施形態1に係る発生危険度表示システムを例示した構成図である。
図5】実施形態1に係る移動撮像装置を例示したブロック図である。
図6】実施形態1に係る発生危険度表示方法を例示したシークエンス図である。
図7】実施形態1に係る移動撮像方法を例示したフローチャート図である。
図8】実施形態1に係る発生危険度算出方法を例示したフローチャート図である。
図9】実施形態1に係る路面凍結発生危険度の算出方法を例示したフローチャート図である。
図10】実施形態1に係るポットホール発生危険度の算出方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0022】
(実施形態の概要)
実施形態の概要を説明する。実施形態に係る発生危険度表示システムは、道路の通行の障害となる障害因子が将来的に発生する可能性を、発生危険度として推定し、地図上に表示する。
【0023】
図1は、実施形態の概要に係る発生危険度表示システムを例示した構成図である。図1に示すように、発生危険度表示システム10は、発生危険度算出装置100、移動撮像装置200及び表示装置300を備えている。発生危険度算出装置100、移動撮像装置200及び表示装置300は、それぞれ、発生危険度を算出する発生危険度算出手段、移動しながら撮像する移動撮像手段及び表示手段としての機能を有する。
【0024】
移動撮像装置200は、移動しながら道路の画像を撮像するとともに、道路の位置情報を取得する。発生危険度算出装置100は、移動撮像装置200から出力された道路の画像を解析した解析結果及び道路の周辺における環境情報に基づいて、道路の通行の障害となる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出する。そして、発生危険度算出装置100は、算出された発生危険度を、道路の位置情報を示す地図情報に対応づける。表示装置300は、発生危険度算出装置100によって発生危険度が対応付けられた地図情報を表示する。
【0025】
図2は、実施形態の概要に係る発生危険度算出装置100を例示したブロック図である。図2に示すように、発生危険度算出装置100は、画像解析部110、環境情報取得部120、発生危険度算出部130、及び、表示制御部140を備えている。画像解析部110、環境情報取得部120、発生危険度算出部130、及び、表示制御部140は、それぞれ、画像解析手段、環境情報取得手段、発生危険度算出手段、及び、表示制御手段としての機能を有している。
【0026】
画像解析部110は、道路の画像を解析する。環境情報取得部120は、道路の周辺における環境情報を取得する。発生危険度算出部130は、画像解析部110が解析した解析結果及び環境情報取得部120が取得した環境情報に基づいて、道路の通行の障害となる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出する。表示制御部140は、発生危険度を、道路の位置情報を示す地図情報に対応づける。
【0027】
図3は、実施形態の概要に係る発生危険度算出方法を例示したフローチャート図である。図3のステップS110に示すように、道路の画像を解析させる。また、ステップS120に示すように、道路の周辺における環境情報を取得させる。なお、ステップS110及びS120の順序は、これに限らず逆でもよいし、同時でもよい。
【0028】
次に、ステップS130に示すように、画像を解析した解析結果及び取得した環境情報に基づいて、道路の通行の障害となる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させる。次に、ステップS140に示すように、発生危険度を、道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせる。
【0029】
本実施形態の発生危険度算出方法をプログラミングした発生危険度算出プログラムをコンピュータに実行させてもよい。
【0030】
本実施形態の発生危険度表示システム10によれば、道路の通行の障害となる障害因子が将来的に発生する可能性を示す発生危険度を推定し提示することができる。よって、道路の管理に関するサービスを向上させることができる。
【0031】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係る発生危険度表示システムを説明する。本実施形態に係る発生危険度表示システムは、例えば、道路の路面凍結及びポットホール等の発生しやすい条件を複合的に加味することにより、予め、路面凍結及びポットホールが将来的に発生する可能性を、発生危険度として推定し、地図上に表示する。
【0032】
図4は、実施形態1に係る発生危険度表示システムを例示した構成図である。図4に示すように、本実施形態の発生危険度表示システム11は、発生危険度算出装置100、移動撮像装置200及び表示装置300を備えている。発生危険度表示システム11は、1つの移動撮像装置200を備えてもよいし、複数の移動撮像装置200を備えてもよい。また、発生危険度表示システム11は、1つの表示装置300を備えてもよいし、複数の表示装置300を備えてもよい。以下では、<移動撮像装置>、<発生危険度算出装置>及び<表示装置>を説明し、その後で、<発生危険度表示方法>、<移動撮像方法>及び<発生危険度算出方法>を説明する。
【0033】
<移動撮像装置>
移動撮像装置200は、カメラ等の撮像機能を有し、移動しながら道路の画像を撮像する。したがって、移動撮像装置200は、移動体210に搭載させて使用される。移動体210は、例えば、車両でもよいし、ドローンでもよいし、人でもよい。また、移動撮像装置200は、カメラとして、車両に配置されたドライブレコーダ、車両の乗員が所持するスマートフォン、ドローンに取り付けられたカメラ、歩行する人が所持するカメラを共有して用いてもよい。また、移動撮像装置200は、カメラとして、全方位カメラを用いてもよいし、カメラの種類や個数に制限はない。このように、移動撮像装置200は、移動体210を用いて、カメラ等の撮像機能を作動させつつ、移動しながら道路の画像を撮像する。
【0034】
移動体210として、一般的な自動車等の車両の他、例えば、自治体のパトロール車、配送車、ゴミ収集車等を用いてもよい。この場合には、パトロール車、配送車、ゴミ収集車等は、普段通りに街中を走行し、舗装面の情報を含む画像を収集する。なお、移動撮像装置200は、移動体210として、一般の車両等を用いずに、発生危険度表示システム11のために専用に作製された移動体210を用いてもよい。
【0035】
図5は、実施形態1に係る移動撮像装置200を例示したブロック図である。図5に示すように、移動撮像装置200は、撮像部220、時刻情報取得部230、位置情報取得部240、センサ部250、通信部260、及び、記憶部270を有している。撮像部220、時刻情報取得部230、位置情報取得部240、センサ部250、通信部260、及び、記憶部270は、それぞれ、撮像手段、時刻情報取得手段、位置情報取得手段、センサ手段、通信手段、及び、記憶手段としての機能を有している。
【0036】
撮像部220は、例えば、カメラである。撮像部220は、ドライブレコーダのカメラと共用でもよいし、スマートフォンのカメラと共用でもよい。撮像部220は、移動体210の走行方向または移動体210の横方向を撮像してもよいし、全方位を撮像してもよい。撮像部220は、同時に一つ以上の箇所を撮影してもよい。撮像部220が撮像する画像は、静止画でもよいし、動画でもよい。
【0037】
撮像部220は、道路の画像を撮像する。撮像部220は、道路の影を撮像してもよいし、道路の轍を撮像してもよい。また、撮像部220は、道路を通行する車両を撮像してもよいし、道路に積もった雪を撮像してもよい。また、撮像部220は、道路に設けられた路面標示を撮像してもよいし、道路の路肩及び路側帯を撮像してもよい。さらに、撮像部220は、道路の画像だけでなく、道路の周辺領域の画像を撮像してもよい。例えば、撮像部220は、豪雪地帯であれば、屋根や電柱及び/または電線の雪の高さや、つららの発生具合を撮像してもよい。
【0038】
時刻情報取得部230は、時刻情報を取得する。時刻情報取得部230は、例えば、時計である。時刻情報取得部230は、移動撮像装置200に内蔵の時計から時刻情報を取得してもよいし、通信部260を介して、インターネット等から時刻情報を取得してもよい。時刻情報取得部230は、取得した時刻情報を撮像部220に出力する。撮像部220は、撮像した画像に時刻情報を紐づける。
【0039】
位置情報取得部240は、移動撮像装置200及び移動体210の位置情報を取得する。位置情報取得部240は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機である。位置情報取得部240は、取得した位置情報を撮像部220に出力する。撮像部220は、撮像した画像に位置情報を紐づける。
【0040】
センサ部250は、例えば、加速度センサである。センサ部250は、移動体210の走行時の加速度の変化を検出するセンサである。また、センサ部250は、道路の路面のひび割れ及び轍等に基づく移動体210の走行時の振動具合を検知する。これにより、道路の路面のIRI指標(International Roughness Index)を推定することができる。センサ部250は、気温、降雪量、風速等の気象データを検出するセンサを含んでもよい。
【0041】
通信部260は、時刻情報及び位置情報と紐づけられた撮像画像を、発生危険度算出装置100に送信する。また、通信部260は、撮像画像の他、時刻情報取得部230が取得した時刻情報、位置情報取得部240が取得した位置情報、センサ部250が取得したセンサ情報を、発生危険度算出装置100に送信する。時刻情報及び位置情報と紐づけられた画像は、通信部260を介して所定の受信装置にアップロードされてもよい。
【0042】
記憶部270は、撮像部220が撮像した撮像画像を、時刻情報及び位置情報と紐づけして記憶する。なお、記憶部270に記憶された撮像画像を、ストレージ経由で、発生危険度算出装置100にアップロードされてもよい。
【0043】
上述した移動撮像装置200の各構成は、ドライブレコーダやスマートフォン等を構成する部材と共有されてもよい。なお、道路の路面状態や走行状況を検出する目的で、上記の各構成以外にも、気温測定装置、日照測定装置など任意の構成を追加してもよい。また、各構成の設置位置は任意であり、移動撮像装置200及び移動体210の内部にあってもよいし、外部にあってもよい。例えば、記憶部270は、外付けの記憶装置でもよいし、クラウド上の記憶装置でもよい。
【0044】
<発生危険度算出装置>
発生危険度算出装置100は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。なお、発生危険度算出装置100は、所定の箇所に固定されたものに限らず、クラウド上に設けられてもよい。
【0045】
図4に示すように、発生危険度算出装置100は、上述した画像解析部110、環境情報取得部120、発生危険度算出部130、及び、表示制御部140の他、記憶部150を備えてもよい。記憶部150は、記憶手段としての機能を有している。
【0046】
画像解析部110は、移動撮像装置200から送信された画像を受信する。そして、画像解析部110は、受信した画像から、画像撮像時の道路の影、交通量(車量)、ひび割れ等の少なくともいずれかの情報を解析する。画像解析部110は、影検出部111、交通量検出部112、及び、ひび割れ検出部113を有してもよい。影検出部111、交通量検出部112、及び、ひび割れ検出部113は、それぞれ、影の検出手段、交通量の検出手段、及び、ひび割れの検出手段としての機能を有している。
【0047】
影検出部111は、道路の画像から影を検出する。交通量検出部112は、道路の画像から車量等の交通量を検出する。ひび割れ検出部113は、道路の画像からひび割れを検出する。画像解析部110が解析した解析結果は、発生危険度算出装置100に出力される。
【0048】
環境情報取得部120は、天気、気温、積雪量、交通量、轍の有無、及び、舗装材料(アスファルト、コンクリート、排水性舗装など)のうち、少なくともいずれかを含む環境情報を取得する。環境情報取得部120は、環境情報を、当該環境情報を検出した時刻情報及び位置情報等に対応させて取得する。取得する環境情報は、移動撮像装置200から取得してもよいし、インターネット等で一般に公開されている情報から取得してもよいし、ユーザが独自で保持する情報を取得するようにしてもよい。例えば、ユーザが道路を管理する管理者である場合には、ユーザは、舗装材料の情報を保持している。よって、舗装材料を含む環境情報は、ユーザから取得される。環境情報取得部120が取得した環境情報は、発生危険度算出装置100に出力される。
【0049】
発生危険度算出部130は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報に基づいて、発生危険度を算出する。発生危険度は、道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示すものである。例えば、発生危険度は、道路の路面凍結が発生する可能性を示すものである。また、例えば、発生危険度は、道路のポットホールが発生する可能性を示すものである。このように、発生危険度は、現時点における道路の路面凍結の発生状況及びポットホールの発生状況とは異なる。なお、発生危険度は、道路の通行の障害となる障害因子が発生する可能性を示してもよい。
【0050】
発生危険度算出部130は、路面凍結算出部131及びポットホール算出部132を有してもよい。路面凍結算出部131及びポットホール算出部132は、それぞれ、路面凍結の発生危険度を算出する算出手段及びポットホールの発生危険度を算出する算出手段としての機能を有している。
【0051】
路面凍結算出部131は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報に基づいて、道路の路面凍結が将来的に発生する可能性を示す発生危険度を算出する。ポットホール算出部132は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報に基づいて、道路のポットホールが将来的に発生する可能性を示す発生危険度を算出する。発生危険度算出部130が算出した発生危険度は、時刻情報及び位置情報と紐づけされて、表示制御部140及び記憶部150へ出力される。
【0052】
表示制御部140は、発生危険度算出部130から出力された発生危険度、または、記憶部150から出力された発生危険度を、道路の位置情報を示す地図情報に対応づける。具体的には、表示制御部140は、発生危険度の高さに応じて、地図情報に表示する制御を行う。この際、発生危険度を複数段階に分け、明示的に色やアイコンなどで視覚的に分かりやすく段階を分けて情報提示してもよい。例えば、発生危険度が顕著に高い地点及び/または区間等を赤い矢印で表示してもよい。また、段階を分ける危険度の閾値をユーザが設定できるようにしてもよい。さらに、発生危険度算出の根拠となる情報及びエビデンスとなる特定地点の画像等を地図情報からユーザが確認できるよう制御してもよい。また、地図情報には、時刻情報を対応付けてもよい。
【0053】
記憶部150は、発生危険度算出部130から出力された発生危険度を時刻情報及び位置情報と紐づけて記憶する。なお、記憶部150は、発生危険度算出装置100に外付けされた記憶装置に設けられてもよいし、クラウド上の記憶装置に設けられてもよい。
【0054】
<表示装置>
表示装置300は、発生危険度算出装置100によって発生危険度が対応付けられた地図情報を表示する。例えば、表示装置300は、表示制御部140によって制御された地図情報を発生危険度算出装置100から受信し、受信した地図情報をユーザに対して表示する。表示装置300は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等のユーザが保持するディスプレイ付きの端末装置である。表示装置300は、例えば、発生危険度算出装置100が出力した地図情報を、インターネットを介して受信してもよい。表示装置300は、ユーザに対して、俯瞰して街全体の路面凍結及びポットホールの発生等の危険性を確認できる地図情報付きユーザインターフェイスを提供する。
【0055】
<発生危険度表示方法>
次に、発生危険度表示システム11による発生危険度表示方法を説明する。図6は、実施形態1に係る発生危険度表示方法を例示したシークエンス図である。
【0056】
図6のステップS210に示すように、移動撮像装置200は、移動しながら、道路の画像を撮像し、撮像画像を取得する。また、移動撮像装置200は、道路の画像を撮像した際の時刻情報、位置情報及びセンサ情報を取得する。
【0057】
次に、ステップS220に示すように、移動撮像装置200は、取得した撮像画像、時刻情報、位置情報及びセンサ情報を発生危険度算出装置100に送信する。これに応じて、発生危険度算出装置100は、撮像画像、時刻情報、位置情報及びセンサ情報を受信する。
【0058】
次に、ステップS230に示すように、発生危険度算出装置100は、移動撮像装置200から出力された撮像画像を解析する。例えば、発生危険度算出装置100は、道路の画像から、影、交通量及びひび割れを検出する。
【0059】
また、ステップS240に示すように、発生危険度算出装置100は、環境情報を取得する。発生危険度算出装置100は、移動撮像装置200から環境情報を取得してもよいし、インターネット等で一般に公開されている情報から取得してもよいし、ユーザが保持する情報を取得するようにしてもよい。なお、ステップS230及びS240の順序は、逆でもよいし、同時でもよい。
【0060】
そして、ステップS250に示すように、発生危険度算出装置100は、道路の画像の解析結果及び環境情報に基づいて、発生危険度を算出する。例えば、発生危険度算出装置100は、路面凍結発生危険度及びポットホール発生危険度を算出する。
【0061】
次に、ステップS260に示すように、発生危険度算出装置100は、発生危険度を地図情報に対応付ける。発生危険度算出装置100は、発生危険度を対応付けた地図情報を記憶部150に記憶させてもよい。
【0062】
次に、ステップS270に示すように、発生危険度算出装置100は、発生危険度を対応付けた地図情報を表示装置300に対して送信する。これに応じて、表示装置300は、発生危険度を対応付けた地図情報を受信する。
【0063】
次に、ステップS280に示すように、表示装置300は、発生危険度を対応付けた地図情報を表示する。
【0064】
<移動撮像方法>
次に、移動撮像装置200による移動撮像方法を説明する。図7は、実施形態1に係る移動撮像方法を例示したフローチャート図である。
【0065】
図7のステップS310に示すように、移動撮像装置200を移動させる。例えば、移動撮像装置200を搭載した移動体210を移動させることにより、移動撮像装置200を移動させる。
【0066】
次に、ステップS320に示すように、道路の画像を撮像させる。例えば、撮像部220に道路の画像を撮像させる。
【0067】
次に、ステップS330に示すように、時刻情報を取得させる。例えば、時刻情報取得部230に撮像部220が道路の画像を撮像した時刻情報を取得させる。そして、時刻情報取得部230は、取得した時刻情報を撮像部220に出力し、画像と紐づけさせる。
【0068】
また、ステップS340に示すように、位置情報を取得させる。例えば、位置情報取得部240に撮像部220が道路の画像を撮像した位置情報を取得させる。そして、位置情報取得部240は、取得した位置情報を撮像部220に出力し、画像と紐づけさせる。
【0069】
また、ステップS350に示すように、センサ情報を取得させる。例えば、センサ部250にセンサ情報を取得させる。そして、センサ部250は、取得したセンサ情報を撮像部220に出力する。なお、ステップS330~S350の順序は、これに限らない。また、ステップS330~S350を同時に行ってもよい。
【0070】
次に、ステップS360に示すように、撮像画像、時刻情報、位置情報及びセンサ情報を発生危険度算出装置100に送信させる。例えば、通信部260は、時刻情報及び位置情報を紐づけした撮像画像を発生危険度算出装置100に送信する。
【0071】
次に、ステップS370に示すように、記憶部270に撮像画像、時刻情報、位置情報及びセンサ情報を記憶させてもよい。
【0072】
<発生危険度算出方法>
次に、発生危険度算出装置100による発生危険度算出方法を説明する。図8は、実施形態1に係る発生危険度算出方法を例示したフローチャート図である。図8に示すように、本実施形態の発生危険度算出方法は、前述の実施形態の概要に係る発生危険度算出方法と同様に、ステップS110~S140を備えている。
【0073】
図8のステップS110においては、まず、ステップS410に示すように、道路の画像が入力される。具体的には、画像解析部110は、移動撮像装置200が撮像した道路の画像を入力される。
【0074】
次に、ステップS411に示すように、画像解析部110は、画像を解析する。具体的には、ステップS412に示すように、影検出部111は、道路の画像から影を検出する。また、ステップS413に示すように、交通量検出部112は、道路の画像から車量等の交通量を検出する。また、ステップS414に示すように、ひび割れ検出部113は、道路の画像からひび割れを検出する。画像解析部110が解析した解析結果は、発生危険度算出部130に出力される。
【0075】
また、ステップS120においては、ステップS415に示すように、環境情報取得部120は、気温、天気、舗装材料の情報(アスファルト、コンクリート、排水性舗装など)、積雪量等の環境情報を、当該情報を検出した時刻情報及び位置情報等に対応させて取得する。次に、ステップS416に示すように、環境情報取得部120は、環境情報を用いて算出することにより、昼夜の寒暖差、日照時間等の環境情報を取得してもよい。環境情報取得部120が取得した環境情報は、発生危険度算出部130に出力される。
【0076】
次に、ステップS130においては、発生危険度算出部130は、発生危険度を算出する。ここでは、発生危険度の例として、路面凍結発生危険度及びポットホール発生危険度を用いて、発生危険度の算出方法を説明する。
【0077】
ステップS417に示すように、路面凍結算出部131は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報に基づいて、道路の路面凍結が将来的に発生する可能性を示す路面凍結発生危険度を算出する。
【0078】
図9は、実施形態1に係る路面凍結発生危険度の算出方法を例示したフローチャート図である。図9のステップS510に示すように、画像解析部110は、移動撮像装置200から、道路の画像を時刻情報及び位置情報等の情報とともに取得する。
【0079】
次に、ステップS511に示すように、影検出部111は、道路の画像から、路面に映りこむ影を検出する。また、ステップS512に示すように、交通量検出部112は、道路の画像に映りこむ車両の数から車量等の交通量を検出する。なお、ステップS511及びS512の順序は、これに限らず逆でもよいし、同時でもよい。
【0080】
一方、ステップS520に示すように、環境情報取得部120は、気温等の環境情報を取得する。例えば、環境情報取得部120は、移動撮像装置200から撮像画像とともに出力された時刻情報及び位置情報等に基づいて、画像の撮像時の天候、気温、舗装材料の情報(アスファルト、コンクリート、排水性舗装など)、積雪量等の環境情報を取得してもよい。次に、ステップS521に示すように、環境情報取得部120は、気温等の環境情報を用いて算出することにより、昼夜の寒暖差を取得する。
【0081】
次に、ステップS530に示すように、路面凍結算出部131は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報を複合的に加味し、道路の路面凍結が発生する可能性を示す路面凍結発生危険度を地点ごとに算出する。
【0082】
以下で、路面凍結発生危険度の算出方法の具体例を説明する。例えば、路面凍結発生危険度K1[%]を(1)式で算出する。
【0083】
K1=((α1+α2+α3)/3)×100 (1)
【0084】
ここで、α1は、影の影響度を示し、α2は、昼夜の寒暖差影響度を示し、α3は、交通量の影響度を示す。
【0085】
影の影響度α1として、例えば、路面領域面積のうち30[%]未満に影がある場合をα1=0.0、路面領域面積のうち30[%]以上70[%]未満に影がある場合をα1=0.6、路面領域面積のうち70[%]以上に影がある場合をα1=1.0と定義してもよい。
【0086】
昼夜の寒暖差影響度α2として、昼夜の寒暖差が5[℃]未満である場合をα2=0.2、昼夜の寒暖差が5[℃]以上10[℃]未満である場合をα2=0.5、昼夜の寒暖差が10[℃]以上である場合をα2=1.0と定義してもよい。
【0087】
交通量の影響度α3として、道路の交通量が一方向で一日当たり1000台・方向未満の場合をα3=0.0、道路の交通量が一方向で一日当たり1000台・方向以上の場合をα3=0.8と定義してもよい。
【0088】
このようにして、路面凍結発生危険度K1[%]を算出してもよい。なお、これらの路面凍結発生危険度の算出方法は、一例であり、影響度の算出方法や路面凍結発生危険度の算出方法に用いる項目、項目ごとの閾値や影響度は変更してもよい。例えば、影の影響度α1を、(影領域の面積)×(路面凍結における影の重要度(重み))等に定義してもよい。また、路面凍結しやすいとされる橋梁及び峠道の有無を表すパラメータα4及びα5を追加してもよいし、重視する項目に重みをつけてもよい。また、例えば、機械学習モデルを構築することにより、発生危険度を算出するための専用モデルを作製してもよい。
【0089】
さらに、以下のような条件が多いほど、発生危険度が高くなるように設定してもよい。すなわち、晴れの日に影が多い道路は必然的に溶けにくいので、発生危険度を高くする。また、昼間日光が当たっていても夕方にかけて温度が下がり、昼夜寒暖差が大きい場合はアイスバーンとなるので、発生危険度を高くする。また、交通量が多いほど道路は圧接されて氷になりやすく、優先的に除雪させたいので、発生危険度を高くする。
【0090】
図8に戻り、ステップS418に示すように、ポットホール算出部132は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報に基づいて、道路のポットホールが将来的に発生する可能性を示すポットホール発生危険度を算出する。
【0091】
図10は、実施形態1に係るポットホール発生危険度の算出方法を例示したフローチャート図である。図10のステップS610~ステップS612、ステップS620~ステップS621は、図9のステップS510~ステップS512、ステップS520~ステップS521と同様である。
【0092】
図10のステップS613に示すように、ひび割れ検出部113は、道路の画像からひび割れ率を検出する。また、ステップS622に示すように、環境情報取得部120は、ゼロクロッシング、すなわち、気温が0[℃]を下回る状態の発生を検出する。
【0093】
次に、ステップS630に示すように、ポットホール算出部132は、画像解析部110から出力された解析結果及び環境情報取得部120から出力された環境情報を複合的に加味し、ポットホールが発生する可能性を示すポットホール発生危険度を地点ごとに算出する。
【0094】
以下で、ポットホール発生危険度の算出方法の具体例を説明する。例えば、ポットホール発生危険度K2[%]を(2)式で算出する。
【0095】
K2=((β1+β2+β3+β4)/4)×100 (2)
【0096】
ここで、β1は、季節の影響度を示し、β2は、ひび割れ率の影響度を示し、β3は、交通量の影響度を示し、β4は、ゼロクロッシングの影響度を示す。
【0097】
季節の影響度β1として、例えば、融雪期である場合をβ1=1.0、融雪期でない場合をβ1=0.0と定義してもよい。
【0098】
ひび割れ率の影響度β2として、ひび割れ率が20[%]未満である場合をβ2=0.2、ひび割れ率が20[%]以上40[%]未満である場合をβ2=0.5、ひび割れ率が40[%]以上である場合をβ2=1.0と定義してもよい。
【0099】
交通量の影響度β3として、道路の交通量が一方向で一日当たり1000台・方向未満の場合をβ3=0.0、道路の交通量が一方向で一日当たり1000台・方向以上の場合をβ3=0.8と定義してもよい。
【0100】
ゼロクロッシングの影響度β4として、直近1~2日内に0[℃]を下回った日がある場合をβ4=1.0、上記条件に該当しない場合をβ4=0.0と定義してもよい。
【0101】
このようにして、ポットホール発生危険度K2[%]を算出してもよい。なお、これらのポットホール発生危険度の算出方法は、一例であり、影響度の算出方法やポットホール発生危険度の算出方法に用いる項目、項目ごとの閾値や影響度は変更してもよいし、重視する項目に重みをつけてもよい。また、例えば、機械学習モデルを構築することにより、発生危険度を算出するための専用モデルを作製してもよい。
【0102】
さらに、以下のような条件が多いほど、危険度が高くなるように設定してもよい。すなわち、ポットホールが多く発生する時期、例えば、融雪期に発生危険度を高くする。また、ポットホールが発生しやすい箇所、例えば、ひび割れや打継ぎ目等の弱点がある箇所の発生危険度を高くする。また、融雪水が流入・滞留しやすい箇所の発生危険度を高くする。また、ひび割れ率が高い区間や路線、特に、亀甲状のひびからポットホールに発展する可能性が高いので、そのような箇所の発生危険度を高くする。また、ポットホールの発生時の気象条件は、ゼロクロッシング発生日及びその1~2日後であるので、そのような場合に、発生危険度を高くする。
【0103】
次に、図8のステップS140においては、ステップS419に示すように、表示制御部140は、路面凍結発生危険度及びポットホール発生危険度を、道路の位置情報を示す地図情報に対応づける。次に、ステップS420に示すように、表示制御部140は、路面凍結発生危険度及びポットホール発生危険度を対応付けた地図情報を表示装置300に出力する。
【0104】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態によれば、移動撮像装置200から道路の路面の画像情報を含む走行時のデータを収集し、分析を行うことにより、道路の路面凍結及びポットホール等の発生危険度を算出することができる。そして、それらの情報をユーザインターフェイスに地図情報として表示することができる。このように、単純に、道路の路面凍結やポットホール等の発生状況を提示するのではなく、それらの発生しやすい条件を複合的に加味することにより、予め、路面凍結やポットホール等が将来的に発生する可能性を示す発生危険度を推定し提示することができる。よって、道路の管理に関するサービスを向上させることができる。
【0105】
関連する凍結情報提示システムと比較すると、情報を取得する装置が移動できるため、固定の地点以外のより細かい区画の路面凍結及びポットホールの発生危険度を算出することができる。よって、町全体を俯瞰して情報提供することができる。また、いつ発生するか分からず、管理が非常に難しいポットホールの発生危険性を提示することができる。これにより、道路管理者がパトロールすべき地点の優先順位を提供することができる。
【0106】
また、本実施形態の発生危険度表示システム11は、高価な専用機器、センサ等を使用せず、廉価で汎用的なカメラ(ドライブレコーダーやスマホ等)を用いて、道路のデータ収集を行うことができるので、コストを低減することができる。
【0107】
さらに、固定の定点カメラではなく、移動体210(自治体のパトロール車、配送車、ゴミ収集車など)に取り付けた移動可能なカメラを使用することで、小さな生活道路にまで入り込んで詳細な道路単位の路面状態を把握することができる。また、頻繁に路面状態を把握することができる。よって、これまでよりも細かい道路、時間単位で道路の管理・監視を可能とすることができる。
【0108】
また、現在における発生状況だけでなく、発生危険度を地図上で提示することで、町全体の状態を俯瞰して見える化でき、パトロールすべき路線の優先度付けに活用することができる。
【0109】
なお、本実施形態の発生危険度表示システム11は、日々の解析結果、取得情報及び発生危険度の算出結果を記憶部150に蓄積してもよい。そして、発生危険度表示システム11は、同地点の各日の結果を時間方向について、統計的に処理してもよい。例えば、ある地点の1週間の間に算出された発生危険度の分散を確認し、1日のみ他と比べて明らかに発生危険度が高い場合または低い場合には、誤判定の可能性が考えられる。このため、統計の観点で誤判定として、平均的な発生危険度を提示するなどして、ノイズを除去してより精度よく発生危険度を推定、表示するような方法を取ってもよい。平均値以外にも任意の(例えば、最頻値等で)統計値を定めるアルゴリズムを設定してよい。この場合には、発生危険度算出装置100内で蓄積したデータベース内のデータを統計的に再計算し直し、表示制御部140に情報を与えてもよい。
【0110】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る発生危険度表示システムを説明する。本実施形態の発生危険度表示システムは、発生危険度として、道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を算出してもよい。路面標示線は、路面に設けられた横断歩道、センターライン、追い越し線、速度表示等を含む。したがって、前述の実施形態1で言及した発生危険度算出に関わる項目に加えて、以下の環境情報を、γ1~γ4等として加味し、発生危険度算出装置100により解析及び算出を行ってもよい。なお、発生危険度は、実施形態1で言及した発生危険度算出に関わる項目α1~α3及び/またはβ1~β4に、γ1~γ4等を加えたものに限らない。算出した発生危険度は、地図情報に対応付けてユーザインターフェイスに表示される。
【0111】
・直近の雨
・ゼロクロッシング
・交通量の増加または交通量の減少
・路面標示線の材料(新しいものは排水性を考慮されている場合有り)及び形状(面積を含む)
【0112】
例えば、ユーザが道路を管理する管理者である場合には、ユーザは、路面標示線の材料及び形状を保持している。よって、路面標示線の材料及び形状を含む環境情報は、ユーザから取得される。
【0113】
また、発生危険度表示システムは、発生危険度として、道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山が発生する可能性を算出してもよい。道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山は、道路の路面上に降った雪が、路肩及び路側帯に寄せ集められたものである。したがって、前述の実施形態1で言及した発生危険度算出に関わる項目に加えて、以下の要素を、δ1~δ4等として加味し、発生危険度算出装置100により解析及び算出を行ってもよい。なお、発生危険度は、実施形態1で言及した発生危険度算出に関わる項目α1~α3及び/またはβ1~β4に、δ1~δ4等を加えたものに限らない。算出した発生危険度は、地図情報に対応付けてユーザインターフェイスに表示される。
【0114】
・路肩及び路側帯に雪かき及び除雪した雪山が少しでもできているかどうか(視界が狭くなり、飛び出しなどが分かりにくく危ない。)
・雪山の高さパラメータ
・車線幅のパラメータ(雪山があると走行できる領域が狭くなりがち)
・除雪のスケジュール
【0115】
例えば、ユーザが道路を管理する管理者である場合には、ユーザは、除雪のスケジュールを保持している。よって、除雪のスケジュールを含む環境情報は、ユーザから取得される。
【0116】
本実施形態によれば、路面標示線上の凍結及び雪山等、一見見落としそうで危険性が高い障害因子の発生可能性を算出することができる。また、道路の管理者しか把握できない環境情報を用いるので、高精度に発生危険度を算出することができる。
【0117】
以上、実施形態1及び2を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態1及び2に限られたものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることが可能である。例えば、実施形態1及び2の各構成を組み合わせた実施形態も、技術的思想の範囲に含まれる。
【0118】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0119】
(付記1)
道路の画像を解析する画像解析手段と、
前記道路の周辺における環境情報を取得する環境情報取得手段と、
前記画像解析手段が解析した解析結果及び前記環境情報取得手段が取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出する発生危険度算出手段と、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける表示制御手段と、
を備えた発生危険度算出装置。
(付記2)
前記発生危険度は、前記道路の路面凍結が発生する可能性を示すものである、
付記1に記載の発生危険度算出装置。
(付記3)
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
付記1に記載の発生危険度算出装置。
(付記4)
前記発生危険度は、前記道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山が発生する可能性を示すものである、
付記1に記載の発生危険度算出装置。
(付記5)
前記発生危険度は、前記道路にポットホールが発生する可能性を示すものである、
付記1に記載の発生危険度算出装置。
(付記6)
前記画像解析手段は、前記画像から、影、交通量及びひび割れの少なくともいずれかを解析する、
付記1~5のいずれか1項に記載の発生危険度算出装置。
(付記7)
前記環境情報は、天気、気温、積雪量、交通量、轍の有無、及び、舗装材料のうち、少なくともいずれかを含む、
付記1~6のいずれか1項に記載の発生危険度算出装置。
(付記8)
移動しながら道路の画像を撮像するとともに、前記道路の位置情報を取得する移動撮像装置と、
前記移動撮像装置から出力された前記画像を解析した解析結果及び前記道路の周辺における環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出し、算出された前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づける発生危険度算出装置と、
前記発生危険度算出装置によって前記発生危険度が対応付けられた前記地図情報を表示する表示装置と、
を備えた発生危険度表示システム。
(付記9)
前記発生危険度は、前記道路の路面凍結が発生する可能性を示すものである、
付記8に記載の発生危険度表示システム。
(付記10)
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
付記8に記載の発生危険度表示システム。
(付記11)
前記発生危険度は、前記道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山が発生する可能性を示すものである、
付記8に記載の発生危険度表示システム。
(付記12)
前記発生危険度は、前記道路にポットホールが発生する可能性を示すものである、
付記8に記載の発生危険度表示システム。
(付記13)
前記発生危険度算出装置は、前記画像から、影、交通量及びひび割れの少なくともいずれかを解析する、
付記8~12のいずれか1項に記載の発生危険度表示システム。
(付記14)
前記環境情報は、天気、気温、積雪量、交通量、轍の有無、及び、舗装材料のうち、少なくともいずれかを含む、
付記8~13のいずれか1項に記載の発生危険度表示システム。
(付記15)
道路の画像を解析させ、
前記道路の周辺における環境情報を取得させ、
前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせる、
発生危険度算出方法。
(付記16)
前記発生危険度は、前記道路の路面凍結が発生する可能性を示すものである、
付記15に記載の発生危険度算出方法。
(付記17)
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
付記15に記載の発生危険度算出方法。
(付記18)
前記発生危険度は、前記道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山が発生する可能性を示すものである、
付記15に記載の発生危険度算出方法。
(付記19)
前記発生危険度は、前記道路にポットホールが発生する可能性を示すものである、
付記15に記載の発生危険度算出方法。
(付記20)
前記道路の前記画像を解析させる際に、
前記画像から、影、交通量及びひび割れの少なくともいずれかを解析させる、
付記15~19のいずれか1項に記載の発生危険度算出方法。
(付記21)
前記環境情報は、天気、気温、積雪量、交通量、轍の有無、及び、舗装材料のうち、少なくともいずれかを含む、
付記15~20のいずれか1項に記載の発生危険度算出方法。
(付記22)
道路の画像を解析させ、
前記道路の周辺における環境情報を取得させ、
前記画像を解析した解析結果及び取得した前記環境情報に基づいて、前記道路の通行の妨げとなりうる障害因子が発生する可能性を示す発生危険度を算出させ、
前記発生危険度を、前記道路の位置情報を示す地図情報に対応づけさせる、
ことをコンピュータに実行させる発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記23)
前記発生危険度は、前記道路の路面凍結が発生する可能性を示すものである、
付記22に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記24)
前記発生危険度は、前記道路に設けられた路面標示線上の凍結が発生する可能性を示すものである、
付記22に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記25)
前記発生危険度は、前記道路の路肩及び路側帯に堆積する雪山が発生する可能性を示すものである、
付記22に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記26)
前記発生危険度は、前記道路にポットホールが発生する可能性を示すものである、
付記22に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記27)
前記道路の前記画像を解析させる際に、
前記画像から、影、交通量及びひび割れの少なくともいずれかを解析させる、
ことをコンピュータに実行させる付記22~26のいずれか1項に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記28)
前記環境情報は、天気、気温、積雪量、交通量、轍の有無、及び、舗装材料のうち、少なくともいずれかを含む、
付記22~27のいずれか1項に記載の発生危険度算出プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0120】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0121】
10、11 発生危険度表示システム
100 発生危険度算出装置
110 画像解析部
111 影検出部
112 交通量検出部
113 ひび割れ検出部
120 環境情報取得部
130 発生危険度算出部
131 路面凍結算出部
132 ポットホール算出部
140 表示制御部
150 記憶部
200 移動撮像装置
210 移動体
220 撮像部
230 時刻情報取得部
240 位置情報取得部
250 センサ部
260 通信部
270 記憶部
300 表示装置
図1
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