(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241126BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20241126BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241126BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20241126BHJP
H01M 10/6235 20140101ALI20241126BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02J7/00 302C
H02J7/14 T
H01M10/44 P
H01M10/46
H01M10/6235
B25F5/00 H
B25F5/00 C
(21)【出願番号】P 2023510241
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2021046846
(87)【国際公開番号】W WO2022209050
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021061186
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷本 英之
(72)【発明者】
【氏名】高野 信宏
(72)【発明者】
【氏名】武久 真之
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191838(JP,A)
【文献】特開2018-073663(JP,A)
【文献】特開2014-017954(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 7/14-7/32
H01M 10/42-10/48
H01M 10/52-10/667
B25F 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電池パックと、
前記第1電池パックと種類が異なる第2電池パックと、を択一的に接続可能な電気機器であって、
電池パックから前記電気機器に供給される電圧を切り替える電圧切替部を有し、
前記電圧切替部は、前記電気機器に前記第1電池パック又は前記第2電池パックのいずれかが接続されたかに応じて前記電気機器に供給される電圧を切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器であって、
前記第1電池パックは高電圧又は低電圧を選択的に出力可能であり、
前記電圧切替部は、前記第1電池パックが前記電気機器に接続された場合に、前記第1電池パックから前記電気機器に供給される電圧を前記高電圧に切り替えるよう構成されたことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機器であって、
前記第2電池パックは前記低電圧のみを出力可能であり、
前記電圧切替部は、前記第2電池パックが前記電気機器に接続された場合に、前記第2電池パックから前記電気機器に供給される電圧を前記低電圧に維持するよう構成されたことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機器であって、
前記電圧切替部は、前記第1電池パックに含まれる複数のセルが前記電圧切替部を介して互いに接続されるとともに、前記第2電池パックに含まれる複数のセルが前記電圧切替部を介して互いに接続されないよう構成されたことを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機器であって、
前記電圧切替部は、前記第1電池パックに含まれる複数のセルを互いに接続できるよう構成された第1スイッチ部を有し、
前記第1スイッチ部は、前記第1電池パックが前記電気機器に接続された場合にオンにされ、前記第2電池パックが前記電気機器に接続された場合にオフにされることを特徴とする電気機器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記電気機器は、複数のコイルを備えたモータを有し、
前記電気機器は、前記第1電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記複数のコイルを互いに第1の接続形態で接続し、前記第2電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記複数のコイルを互いに前記第1の接続形態とは異なる第2の接続形態で接続することを特徴とする電気機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電気機器であって、
前記第1の接続形態は高電圧駆動に適すると共に、前記第2の接続形態は低電圧駆動に適するよう構成されることを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電気機器であって、
前記モータに同じ電圧をかけた場合、前記第1の接続形態と前記第2の接続形態を比較すると、前記第2の接続形態の方が大電流が流れやすいよう構成されることを特徴とする電気機器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記第1電池パックは、第1及び第2セルユニットと、前記第1セルユニットの正極に接続される第1正極端子と、前記第1セルユニットの負極に接続される第1負極端子と、前記第2セルユニットの正極に接続される第2正極端子と、前記第2セルユニットの負極に接続される第2負極端子と、を有し、
前記第2電池パックは、少なくとも一つのセルユニットに含まれる第3セルユニットと、前記第3セルユニットの正極に接続される第3正極端子と、前記第3セルユニットの負極に接続される第3負極端子と、を有し、
前記電気機器は、前記第1及び第3正極端子に接続可能な正極入力端子と、前記第2及び第3負極端子に接続可能な負極入力端子と、前記第1負極端子に接続可能な第1接続端子と、前記第2正極端子に接続可能な第2接続端子と、前記第1及び第2接続端子を互いに接続する接続部と、前記正極入力端子及び負極入力端子に接続される負荷部と、を有し、
前記第1電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記第1正極端子が前記正極入力端子に接続され、前記第2負極端子が前記負極入力端子に接続され、前記第1負極端子が前記第1接続端子に接続され、前記第2正極端子が前記第2接続端子に接続され、前記接続部を介して前記第1及び第2セルユニットが互いに直列に接続された状態で前記負荷部に前記第1電池パックから電力が供給され、
前記第2電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記第3正極端子が前記正極入力端子に接続され、前記第3負極端子が前記負極入力端子に接続され、前記負荷部に前記第2電池パックから電力が供給されることを特徴とする電気機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電気機器であって
、
前記電圧切替部は、前記第1電池パックに含まれる複数のセルを互いに接続できるよう構成された第1スイッチ部を有し、
前記第1スイッチ部に接続される制御部を備え、
前記制御部は、接続された電池パックに応じて前記第1スイッチ部のオン及びオフを切り替えるよう構成されることを特徴とする電気機器。
【請求項11】
請求項10に記載の電気機器であって、
前記第1負極端子とグランドラインとの間に設けられた第2スイッチ部と、
前記第2正極端子とプラス電力ラインとの間に設けられた第3スイッチ部と、を備え、
前記制御部は、前記第1電池パックが接続された場合は前記第2及び第3スイッチ部を遮断し、前記第2電池パックが接続された場合は前記第2及び第3スイッチ部を接続することを特徴とする電気機器。
【請求項12】
第1電池パックと、前記第1電池パックと種類が異なる第2電池パックと、を択一的に接続可能な電気機器であって、
複数のコイルを備えたモータを有し、
前記第1電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記複数のコイルを互いに第1の接続形態で接続し、前記第2電池パックが前記電気機器に接続された場合は、前記複数のコイルを互いに前記第1の接続形態とは異なる第2の接続形態で接続するよう構成したことを特徴とする電気機器。
【請求項13】
請求項12に記載の電気機器であって、
前記第1電池パックは高電圧又は低電圧を選択的に出力可能であり、
前記第2電池パックは前記低電圧のみを出力可能である、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電気機器であって、
前記第1の接続形態は高電圧駆動に適すると共に、前記第2の接続形態は低電圧駆動に適するよう構成されることを特徴とする電気機器。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記モータに同じ電圧をかけた場合、前記第1の接続形態と前記第2の接続形態を比較すると、前記第2の接続形態の方が大電流が流れやすいよう構成されることを特徴とする電気機器。
【請求項16】
請求項
12から15のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記第1の接続形態は前記複数のコイルのスター結線であり、前記第2の接続形態は前記複数のコイルのデルタ結線であることを特徴とする電気機器。
【請求項17】
請求項
1から16のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記第1電池パック及び前記第2電池パックの少なくとも一方を備えることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数種類の電池パックに接続可能な電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
出力電圧を変更可能な電池パックと、当該電池パックを接続可能な電気機器本体と、を有する電気機器が知られている(特許文献1)。特許文献1の電池パックには、2つのセルユニットと、当該2つのセルユニットそれぞれに接続された2組の正極端子及び負極端子が設けられている。電気機器本体には、一方の正極端子と接続される正極入力端子と、他方の負極端子と接続される負極入力端子と、他方の正極端子と一方の負極端子を接続する接続要素(ショートバー)が設けられている。電池パックを電気機器本体に接続すると、接続要素を介して2つのセルユニットが直列接続されるように構成される。
【0003】
特許文献2には、所定の定格電圧を有する電気機器本体に、当該定格電圧と異なり出力電圧が変更できない電池パックを接続可能な電気機器が開示されている。特許文献2では、電池パックに設けられた1組の正極端子及び負極端子を、電気機器本体に設けられた1組の正極入力端子及び負極入力端子に接続可能に構成されている。特許文献3では、電動工具に加わる負荷の大きさに応じて、電池パックから電動工具に供給される電圧を切り替える電圧切替部を備えた電動工具が開示されている。さらに、特許文献4では、高電圧と低電圧に出力電圧を変更可能な電池パックと、高電圧のみを出力可能な電池パックと、を択一的に接続可能な電動工具が開示されている。さらに、特許文献5では、電気機器本体において、電源として接続されたACアダプタ、DCアダプタに応じてモータコイルの結線方式を変更することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/230337号
【文献】国際公開第2020/066905号
【文献】特開2012-66333号公報
【文献】国際公開第2019/031272号
【文献】特開2019-047605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示した低/高電圧の電池パックは、従来の18Vの電気機器本体と、36Vの電気機器本体の双方に装着できるため、電池パックの使い勝手が大変良い。しかしながら、従来の18Vの電池パックは、ほぼ互換形状のターミナル部を有していながら、36Vの電気機器本体には物理的に装着できない。しかしながら、出力電圧が変更できない既存の18Vの電池パックを、36Vの電気機器本体でも使用できるように構成できれば、新たな36Vの電気機器の利便性を向上させることができる。また、電気機器本体に様々な公称電圧を有する電池パックが択一的に接続できるのであれば、接続された電池パックに応じて電気機器本体を高出力で効率よく駆動でき、作業性を向上することができる。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、電池パックと電気機器本体との互換性を拡張し、利便性を向上させた電気機器を提供するである。本発明の他の目的は、作業性を向上させた電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。本発明の一つの特徴によれば、第1電池パックと、第1電池パックと種類が異なる第2電池パックと、を択一的に接続可能な電気機器であって、電池パックから電気機器に供給される電圧を切り替える電圧切替部を有し、電圧切替部は、電気機器に第1電池パック又は第2電池パックのいずれかが接続されたかに応じて電気機器に供給される電圧を切り替えるように構成される。第1電池パックは高電圧又は低電圧を選択的に出力可能であり、第2電池パックは低電圧のみを出力可能である。また、電気機器は、電池パックから電気機器に供給される電圧を切り替える電圧切替部を有し、第1電池パックが電気機器に接続された場合に、電圧切替部は第1電池パックから電気機器に供給される電圧を高電圧に切り替える。また、第2電池パックが電気機器に接続された場合に、電圧切替部は第2電池パックから電気機器に供給される電圧を低電圧に維持するよう構成した。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、電気機器の電圧切替部は、第1電池パックに含まれる複数のセルが電圧切替部を介して互いに接続されるとともに、第2電池パックに含まれる複数のセルが電圧切替部を介して互いに接続されないよう構成される。また、電圧切替部は、第1電池パックに含まれる複数のセルを互いに接続できるよう構成された第1スイッチ部を有し、第1スイッチ部は、第1電池パックが電気機器に接続された場合にオンにされ、第2電池パックが電気機器に接続された場合にオフにされる。さらに、電気機器は、複数のコイルを備えたモータを有し、電気機器は、第1電池パックが電気機器に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態で接続し、第2電池パックが電気機器に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態とは異なる第2の接続形態で接続する。このように、第1の接続形態は高電圧駆動に適すると共に、第2の接続形態は低電圧駆動に適するよう構成され、モータに同じ電圧をかけた場合、第1の接続形態と第2の接続形態を比較すると、第2の接続形態の方が大電流が流れやすいよう構成される。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、第1電池パックは、第1及び第2セルユニットと、第1セルユニットの正極に接続される第1正極端子と、第1セルユニットの負極に接続される第1負極端子と、第2セルユニットの正極に接続される第2正極端子と、第2セルユニットの負極に接続される第2負極端子と、を有し、第2電池パックは、少なくとも一つのセルユニットに含まれる第3セルユニットと、第3セルユニットの正極に接続される第3正極端子と、第3セルユニットの負極に接続される第3負極端子と、を有する。電気機器は、第1及び第3正極端子に接続可能な正極入力端子と、第2及び第3負極端子に接続可能な負極入力端子と、第1負極端子に接続可能な第1接続端子と、第2正極端子に接続可能な第2接続端子と、第1及び第2接続端子を互いに接続する接続部と、正極入力端子及び負極入力端子に接続される負荷部と、を有し、第1電池パックが電気機器に接続された場合は、第1正極端子が正極入力端子に接続され、第2負極端子が負極入力端子に接続され、第1負極端子が第1接続端子に接続され、第2正極端子が第2接続端子に接続され、接続部を介して第1及び第2セルユニットが互いに直列に接続された状態で負荷部に第1電池パックから電力が供給される。また、第2電池パックが電気機器に接続された場合は、第3正極端子が正極入力端子に接続され、第3負極端子が負極入力端子に接続され、負荷部に第2電池パックから電力が供給される。この電気機器は、第1スイッチ部に接続される制御部を備え、制御部は、接続された電池パックに応じて第1スイッチ部のオン及びオフを切り替えるよう構成される。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、電気機器は、第1負極端子とグランドラインとの間に設けられた第2スイッチ部と、第2正極端子とプラス電力ラインとの間に設けられた第3スイッチ部と、を備え、制御部は、第1電池パックが接続された場合は第2及び第3スイッチ部を遮断し、第2電池パックが接続された場合は第2及び第3スイッチ部を接続する。このように、高電圧又は低電圧を選択的に出力可能な第1電池パックと、低電圧のみを出力可能な第2電池パックと、を択一的に接続可能な電気機器であって、複数のコイルを備えたモータを有し、第1電池パックが電気機器に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態で接続し、第2電池パックが電気機器に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態とは異なる第2の接続形態で接続するよう構成した。第1の接続形態は複数のコイルのスター結線であり、第2の接続形態は複数のコイルのデルタ結線である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利便性を向上させた電気機器を提供することができる。また、作業性を向上させた電気機器を提供することができる。また、高電圧電気機器を、低電圧用の電池パックで適切に運転できるようになるので、作業者にとって利便性を向上し、作業性を向上させた電気機器を提供することができる。また、高電圧電気機器に含まれる作業負荷(モータ)の特性を、装着される電池パックの種類に応じて運転前にスター結線、又は、デルタ結線に自動で切り替わるので、電池パック種類に応じて高出力で効率よく作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る電気機器システムの全体図である。
【
図3】
図1の電気機器1の本体部を別の角度(下側)から見た斜視図である。
【
図4】電気機器1の接続端子と、電池パック200、250の接続端子の形状を示す図である。
【
図5】本実施例の電気機器1に、低/高電圧電池パック200を装着した際の回路図である。
【
図6】本実施例の電気機器1に、低電圧電池パック250を装着した際の回路図である。
【
図7】本実施例の電気機器1の電圧切替え手順を示すフローチャートである。
【
図8】本実施例の第2の実施例に係る電気機器1Aに、低/高電圧電池パック200を装着した際の回路図である。
【
図9】本実施例の第2の実施例に係る電気機器1Aに、低電圧電池パック250を装着した際の回路図である。
【
図10】本実施例の第3の実施例に係る電気機器1Bに、低/高電圧電池パック200Aを装着した際の回路図である。
【
図11】(A)
図10で示す電気機器1Bの電池パック装着部10Bと、(B)低/高電圧電池パック200Aの上面図である。
【
図12】本実施例の第3の実施例に係る電気機器1Bに、低電圧電池パック250を装着した際の回路図である。
【
図13】モータの制御特性の切り替え例を示す図であり、(A)は電気進角を変更した場合のモータ回転数とモータトルクの関係を示す図であり、(B)は導通角を変更した場合のモータ回転数とモータトルクの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る電気機器システムの全体図である。電気機器システムは、複数の電気機器本体(1、101、151)と、複数の電池パック(200、250)により構成される。電気機器本体(1、101、151)は、対応する電池パック(200、250)のいずれかを装着して動作する機器であり、AC電源を必要としないコードレス機器である。電気機器本体(1、101、151)は、使用する電池パックの定格電圧に合わせて分類され、ここでは定格電圧36Vという高電圧の供給を受けるよう構成された公知の電気機器101と、定格電圧18Vという低電圧の供給を受けるよう構成された公知の電気機器151に加えて、定格電圧36Vと定格電圧18Vの双方で動作可能な本実施例に係る電気機器1を含んで構成される。尚、本明細書では、電池パック(200、250)を装着した状態を「電気機器」と称し、電池パック(200、250)を取り外した状態の本体側を、「電気機器本体」と称する。
【0015】
ブラシレスモータを有する電気機器1において18Vと36Vのいずれの電圧でも動作する電気機器1を実現するために、低電圧と高電圧(18Vと36V)の出力が可能な電池パック200と、従来の18V用電池パック250の双方を電池パック装着部10に差し込み可能(装着可能)なように構成した。また、電池パック200は、自身の電池パックの種類を示す識別信号を出力可能として電気機器1の制御部が、装着された電池パックが2電圧対応の電池パックか、それ以外の低電圧の電池パックであるかを識別できるように構成する。
【0016】
公知の電気機器151は、定格電圧18Vで動作する機器であり、定格電圧18V用の電池パック250を装着して動作する。公知の電気機器101は、定格電圧36Vで動作する機器であり、定格電圧36Vの出力が可能な電池パック(本出願人による販売製品では、18Vと36Vを切り替えが出力可能な電池パック200)にて動作する。
【0017】
図1では電気機器1、101、151として、電池パック200、250の何れかで動作する丸のこの例を示しているが、電気機器本体の種類は任意であり、丸のこだけに限られず、インパクトドライバ、インパクトレンチ、ドライバドリル、ディスクグラインダ、ハンマドリル、ブロワ、クリーナー、カッタ、バンドソー、マルチツール、ジグソー、セーバソー、チェンソー、かんな、ピン釘打機、タッカ、釘打機、テレビ、ラジオ、スピーカ、ファン、冷温庫、ライト、高圧洗浄機、刈払機等の多彩な機器が用いられる。
【0018】
低電圧(18V出力)又は高電圧(36V出力)の出力が可能な電池パック200は、実線矢印とマル印で示すように従来の電気機器101、151に装着して動作可能であったが、本実施例に係る電気機器1に対しても装着して動作可能である。一方、低電圧(18V)の電池パック250は、従来の電気機器151に装着して動作可能であったが、高電圧の電気機器101にはバツ印で示すように装着不能であった(つまり動作不能)。しかしながら、本実施例に係る電気機器1は、電池パック250が装着できるように電池パック装着部10を形成すると共に、18Vの低電圧でも動作可能なように構成した。
【0019】
電気機器1は、基本的には36Vで動作するが、低電圧(18V)の電池パック250を装着した際の18V電源でも動作するように構成される。この2電圧動作を可能とするために、内蔵するモータの結線状態を変更するか、又は、モータの回転制御方法を変更するようにした(それらの変更については
図5以降で後述する)。
【0020】
電池パック200は、複数本(ここでは10本)の電池セルを合成樹脂製のケース201内に収容したものである。電池パック200の上面前方から後方にかけて、下段面202と、上段面204が形成され、下段面202と上段面204の間の段差部203が形成される。段差部203から上段面204の前方部分にかけて8つのスロット状の切り欠き部が形成されたスロット群205が形成される。スロット群205のスロットには、電気機器1、101、151のターミナル部の接続端子が挿入される。電池パック200の、上部側面には、電気機器1、101、151の電池パック装着部10、110、160に装着するためのレール溝208a、208bが形成され、レール溝208a、208bの後方には、電気機器1、101、151の本体部との装着状態を維持又は解除するためのラッチ機構を構成するラッチボタン209a、209bが配置される。スロット群205のうち、右から5番目、6番目のスロット部の部分は、上段面から下方向に窪んだ形状とされる。この窪んだ部分が電池誤装着防止用のストッパ部207となる。
【0021】
電池パック250は、複数本(ここでは10本)の電池セルを合成樹脂製のケース251内に収容したものである。電池パック200は、18V用の電池パック250をベースに、上部形状に互換性を持たせて設計されたものであるため、電池パック250の上側半分の外形は、ストッパ部207が無いことを除いて電池パック200と同じ(互換)である。電池パック250の上面前方から後方にかけて、下段面252と上段面254が形成され、それらの間に段差部253が形成される。また、段差部253から上段面254の前方部分にかけて8つのスロット状の切り欠き部が形成されたスロット群255が形成される。スロット群255を挟んだ左右両側には、レール溝258a、258bとラッチボタン259a、259bが形成される。
【0022】
図1の実線で示すように、電池パック200は、電気機器1、101、151に対して装着可能であり、また、電気機器1、101、151に36V又は18Vの直流電力を供給可能である。一方、電池パック250は、対応する電気機器151だけでなく、本実施例に係る電気機器1に対しても装着可能であり、電気機器1、151に18Vの直流電力を供給可能である。一方、電池パック250は、36V用の電気機器101の電池パック装着部110には装着できない。
【0023】
36Vの単一電圧で動作する電気機器101では、電池パック装着部110に、電池パック200のストッパ部207に対応する凸部たるストッパ片(図示せず)が形成される。ストッパ片は、接続端子付近の上壁から下方向に延在する形状で、電池パック200を装着した際にストッパ片がストッパ部207内に位置するようにして、電池パック200とターミナル部が嵌合する。このように、電気機器101では、従来からターミナル部にストッパ片が形成されているため、ストッパ片に対応する窪み(ストッパ部207)を持たない電池パック250を、電気機器101に装着しようとすると、電気機器101のターミナル部に形成された凸状のストッパ片が、段差部253に干渉するため電気機器101に電池パック250は物理的に装着できないことになる。一方、本実施例に係る電気機器1では、36V電気機器として従来では備わっていた凸状のストッパ片を省略したターミナル部(詳細は後述の
図3参照)として、電池パック250が電気機器1の電池パック装着部10に装着可能とした。
【0024】
電気機器1は、基本的には36Vの電圧で動作する36V用電気機器である。ここでは、18V/36Vの複数電圧対応の電池パック200を装着することで、電池パック200から36Vの直流が供給される。一方、電気機器1の電池パック装着部10に電池パック250が装着された場合は、供給電圧が18Vであるため、低圧の18Vで動作することになる。
【0025】
電気機器101は、36Vの電圧で動作する。ここでは、18V/36Vの複数電圧対応の電池パック200を装着することで、電池パック200から36Vの直流が供給される。電気機器151は、18Vの電池パックで動作する。ここでは、18V/36Vの複数電圧対応の電池パック200を装着することで、電池パック200から18Vの直流が供給される。また、18Vの単一電圧対応の電池パック250を装着することで、電池パック250から18Vの直流が供給される。
【0026】
図1では図示していないが、電池パック200、250は、電気機器本体(1、101、151)から取り外した後に図示しない18V用の外部充電器を用いて充電が可能である。以上、
図1に示す電気機器システムでは、低電圧、高電圧の組み合わせを、18V、36Vにて構成した。尚、本明細書で示す低電圧、高電圧とは、2つある任意の定格電圧のうち、高圧側を「高電圧」と称し、低圧側を「低電圧」と称するため、低電圧/高電圧の組み合わせは、18V/36Vだけでなく、他の電圧の組であっても良い。
【0027】
図2は
図1の電気機器1の斜視図である。電気機器1は、基本的に36Vで動作するが、18Vでも動作可能とした電動丸鋸の例を示している。電気機器1は、鋸刃8を回転可能に支持するハウジング2とベース3を備えて構成される。ハウジング2は、本体部2aと、ハンドル部2bと、ソーカバー2cを含んで構成され、その内部には図では見えない負荷部としてのモータ5と、制御基板が収容される。ハウジング2は、例えば合成樹脂の一体成型により製造される。ハウジング2の後方であって、ハンドル部2bの下側には、電池パック装着部10が形成され、そこに低/高電圧の出力が可能な2電圧の電池パック200が装着される。図示しないモータの回転軸には鋸刃8が取り付けられる。鋸刃8は円板形状をなし、本体部2aの右側において回転する。ベース3は、例えばアルミ等の金属製の板形状の部材であり、上下方向に貫通して前後方向に延びる切り抜き部3aが形成され、切り抜き部3aを通して鋸刃8の下側大部分がベース3よりも下側に突出する。ベース3の下側であって鋸刃8の外周側には、周方向に可動式の保護カバー9が設けられる。
【0028】
電気機器1の電池パック装着部10に電池パック200を取り付けることにより木板等の被加工材を切断する場合、作業者は片手でハンドル部2bを把持し、ベース3を被加工材の上面に押し当てて、トリガスイッチ6を引くことで図示しないモータを回転させる。作業者は鋸刃8が回転している状態で、ベース3の下面を被加工材の上面を摺動させながら前方に移動させる。ベース3の下面より下側の鋸刃8部分が被加工材に押し当たると、保護カバー9が回転方向と反対側に相対移動することによって鋸刃8により被加工材が切断される。
【0029】
図3は電気機器1の本体部を別の角度(下側)から見た斜視図であって、電池パック装着部10の形状を示す図である。ここでは、見やすくするためにベース3の図示を省いている。本体部2aの左側には鋸刃8の回転軸と同軸に配置されるモータ5を覆うモータカバー4が設けられる。モータカバー4の後方側には、電池パック装着部10が形成される。電池パック装着部10には、2つの平行するレール部11、12が形成され、レール部11、12の内側部分にはターミナル部15が配置される。ターミナル部15には、18V用の電池パック250の装着を阻害する凸部(図示せず)形成されていないため、18V用の電池パック250の装着も可能である。
【0030】
レール部11、12は、ターミナル部15が収容される空間の左右両側の側壁部分から、内側(ターミナル部15の左右中心線)に向けて凸状に突出させ、凸状部分を後方から前方まで連続させることでレール状に形成した部分である。レール部11、12は、ターミナル部15の左右中心線を通る鉛直面に対して面対称に形成され、レール部11、12の長手方向は平行する方向となる。ターミナル部15に電池パック200を装着する際には、レール部11が電池パック200のレール溝208aをガイドし、レール部12が電池パック200のレール溝208bをガイドすることにより、電池パック200が電池パック装着部10に装着される。この状態で、電池パック200のラッチ爪(図示せず。レール溝208a、208bの溝底部から外側に突出するように移動可能な凸部)が、ラッチ機構の図示しない付勢力によってレール部11、12の前端側に形成されたラッチ溝(凹部11a、12a)と係合することにより、電池パック200がターミナル部15から取り外せないように固定される。
【0031】
ターミナル部15には、4つの電力用の端子(31~34)と、4つの信号用端子24~26、28)、1つの仕切り板30が形成される。4つの電力用の端子(31~34)と、4つの信号用端子(24~26、28)はターミナル部15の合成樹脂製の基台部分に鋳込まれるようにして強固に固定される。正極入力端子31と第2接続端子32は、同一スロット内(
図1のスロット222)に挿入されるように上下に並んで配置される。また、負極入力端子33と第1接続端子34は、同一スロット内(
図1のスロット227)に挿入されるように上下に並んで配置される。次に
図4を用いて4つの電力用の端子(31~34)の形状と、対応する電池パック200、250側の接続端子の形状を説明する。
【0032】
図4(A)は本実施例に係る電池パック200の正極端子(231と232)、負極端子(241と242)と、電気機器1の接続端子(31~34)の形状を示す部分斜視図である。電池パック200の正極端子(正極出力端子)として、腕部が上側に位置する第1正極端子231と、腕部が下側に位置する第2正極端子232が設けられる。第1正極端子231と第2正極端子232は、同一のスロット内(
図1のスロット群205の右から2番目のスロット222)に位置し、それぞれの脚部が前後方向に並ぶようにして回路基板(図示せず)に固定される。同様にして、腕部が上側に位置する第2負極端子242と、腕部が下側に位置する第1負極端子241が設けられる。第1負極端子241と第2負極端子242は、同一のスロット内(
図1のスロット群205の左から2番目のスロット227)に位置し、それぞれの脚部が前後方向に並ぶようにして回路基板(図示せず)に固定される。
【0033】
第1正極端子231と第2正極端子232は、それぞれが前方側に延在する腕部組(腕部231aと231b、腕部232aと232b)を有する。ここでは腕部231a、231bと腕部232a、232bが上下方向に離れた位置であって、その嵌合部の前後方向位置がほぼ同一となるような形状に第1正極端子231と第2正極端子232が形成される。これら正極端子231と232からなる正極端子対は、電池パック200の一つのスロット222(
図1参照)からアクセスできる空間に配置される。負極端子対も正極端子対の形状と同じであって、第2負極端子242と第1負極端子241により構成され、これら負極端子対(242、241)は、電池パック200の一つのスロット226(
図1参照)からアクセスできる空間に配置される。尚、
図4では図示していないが、放電用の正極端子対(第1正極端子231と第2正極端子232)の右側には、充電用の正極端子対(図示せず)が配置される。充電用の正極端子対の形状は、第1正極端子231と第2正極端子232と同じである。第1正極端子231と第2負極端子242は、金属板のプレス加工によって形成された共通の金属部品が用いられる。また、第2正極端子232と第1負極端子241は、金属板のプレス加工によって形成された共通の金属部品が用いられる。
【0034】
電池パック200の内部には、リチウムイオン電池セルが5本直列接続されたセルユニット(210、220)が収容される。リチウムイオン電池セルは、定格電圧3.6V/本であるので、第1セルユニット210の合計が18V(公称値)となり、第2セルユニット220の合計が18V(公称値)となる。第1セルユニット210の正極は第1正極端子231に接続され、負極は第1負極端子241に接続される。同様にして、第2セルユニット220の正極は第2正極端子232に接続され、負極は第2負極端子242に接続される。
【0035】
電池パック200に接続される電気機器側の接続端子は、正極入力端子31と負極入力端子33と、第1接続端子34と第2接続端子32がそれぞれ準備される。これらの接続端子(31~34)は、ターミナル部15の合成樹脂の基台部に鋳込まれることにより固定され、貫通孔の形成された接続部にて電力線35、グランドライン36、短絡線37(いずれも後述の
図5、
図6参照)とハンダ付けにより接続される。第1接続端子34と第2接続端子32は、後述する第3スイッチ43(
図5参照)を用いて短絡することによって、第1セルユニット210と第2セルユニット220の直列接続状態を形成するために用いられる。
【0036】
図4(B)は本実施例に係る電池パック250の正極端子281と負極端子291、電気機器1の接続端子(31~34)の形状を示す部分斜視図である。電気機器1の接続端子(31~34)は、
図4(A)と同一形状である。電池パック250は18V用であって、内部に2つのセルユニット(260、270)が収容される。電池パック250が18Vの場合、1つのセルユニット、即ち、リチウムイオン電池セルが5本だけで構成可能であるが、ここでは、リチウムイオン電池セルが5本直列接続された第3セルユニット260と、第4セルユニット270を並列に接続し、これらの正極側出力を第3正極端子281に接続し、負極側出力を第3負極端子291に接続して大容量化を図っている。
【0037】
第3正極端子281の腕部281a、281bは上下方向に大きい幅を有し、電池パック200の第1正極端子231の腕部231a、231bと、第2正極端子232の腕部232a、232bを、それぞれ上下方向につなげて間隔を無くしたような形状とされる。同様に第3負極端子291の腕部291a、291bも上下方向に大きい幅を有し、電池パック200の第2負極端子242の腕部242a、242bと第1負極端子241の腕部241a、24
1bをそれぞれ上下方向につなげて間隔を無くしたような形状とされる。このような第3正極端子281と第3負極端子291の端子形状によって、
図4(B)のような嵌合状態(電池パック250が電気機器1に装着されている状態)においては、電気機器1の正極入力端子31と第2接続端子32が第3正極端子281に同時に接続されることにより短絡する。同様に、電気機器1の負極入力端子33と第1接続端子34が第3負極端子291に同時に接続されることにより短絡する。
【0038】
図5は本実施例の電気機器1に、電池パック200を装着した際の回路図である。本実施例の電気機器1には、マイコン51を含んだ演算部(制御部)50が含まれる。マイコン51には、図示されていないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するためのCPUと、後述するフローチャートに相当するプログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、タイマ等を内蔵して構成され、モータ5の回転制御や装着された電池パック200又は250の電圧、電流監視を行う。
図5の実施例では、充電可能であって低電圧又は高電圧を出力可能な電池パック200が電源として用いられる。電池パック200は、電気機器1の電池パック装着部10(
図3参照)に装着される。
図3に示したように電池パック装着部10の正極側には、正極入力端子31と第2接続端子32が設けられ、負極側には負極入力端子33と第1接続端子34が設けられる。正極入力端子31の出力は電力線(プラス電力ライン)35を介してインバータ回路65に伝達され、負極入力端子33は電力線(グランドライン)36を介してインバータ回路65に伝達される。電力線36の経路中には、シャント抵抗46が介在される。また、電力線35と電力線36の間には、コンデンサ45が設けられる。コンデンサ45は平滑用、ノイズ対策用に設けられる。
【0039】
電池パック200には、
図4で示したように2組のセルユニット(210、220)が収容され、第1セルユニット210の出力は第1正極端子231と第1負極端子241に配線され、第2セルユニット220の出力は第2正極端子232と第2負極端子242に配線される。電池パック200を電気機器1の電池パック装着部10に装着することで、第1正極端子231は正極入力端子31に嵌合し、第2正極端子232は第2接続端子32と嵌合する。第2接続端子32と電力線35の経路中には第1スイッチ41が介在される。また、第1接続端子34と電力線36の経路中には第2スイッチ42が介在される。さらに、第2接続端子32と第1接続端子34を接続する短絡線37が設けられ、その経路を接続又は遮断するための第3のスイッチ43が設けられる。
【0040】
4つの電力用の端子(31~34)と、第1~第3のスイッチ41~43が電池パック200からの電圧を切替える電圧切替部を構成する。第1~第3のスイッチ41~43は、公知のメカニカルリレー、MOS FETリレー、又は、FET等の半導体スイッチング素子を用いて構成され、演算部50のマイコン51からの制御信号(その配線は図示せず)によってそれぞれの開閉が独立して制御可能である。第1~第3のスイッチ41~43としてメカニカルリレーを用いる場合は、a接点を有する2極単投形のリレースイッチを用いると良い。電池パック200の近傍には、装着された電池パックの種類を検出するための検出器44が設けられる。検出器44は、何らかの機械機構によって判別しても良いし、電気的な信号、光学的認識技術を用いて装着された電池パックが、低/高電圧切り替え型の電池パック200か、単一電圧(低電圧)の電池パック250かを識別する。この識別を容易に行う方法の一つとして、電池パック200及び250に設けられている信号端子の信号レベルを検出することで判別する方法がある。例えば、検出器44を電池パック200の電池識別信号出力用のT端子の信号を電池パック種類検出回路58に伝達する。電池パック種類検出回路58は、電池パック200、250が装着された直後に、電池パック200、250のT端子から信号を読み出すことで、マイコン51は電池パック200と250のうちの何れかが装着されたかを識別できる。
【0041】
電池パック200の出力は、電力線35、36を介してインバータ回路65に伝達される。インバータ回路65は、複数(ここでは6つ)の半導体スイッチング素子Q1~Q6により構成され、演算部50の制御により制御信号回路52から供給されるゲート信号H1~H6によってスイッチング動作が制御される。スイッチング素子Q1~Q6は、電界効果トランジスタ(FET)を用いているが、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いても良い。インバータ回路65の出力は、モータ5のコイルのU相、V相、W相の一端側に接続される。
【0042】
制御電源回路60は演算部50が稼働するための安定した基準電圧Vcc(例えば5V又は3.3V)の直流を供給する電源回路である。制御電源回路60は第2接続端子32と負極入力端子33に接続され、さらにはトリガスイッチ6の状態信号も入力される。電池パック200(又は250)が装着されると制御電源回路60に電池電圧(18Vの直流)が供給されるが、この電池電圧が加えられている状態で、トリガスイッチ6のレバーが引かれてオンになったときに、制御電源回路60は演算部50への電源供給を開始する構成とした。このように制御電源回路60の起動にトリガスイッチ6の状態信号を用いることによって、電池パック200(又は250)が装着しただけでは演算部50のマイコン51が起動しないので、電気機器を使用しない状態の電力消費を抑えることができる。また、トリガスイッチ6がオンになると制御電源回路60から演算部50への電源供給が開始されるので、マイコン51を含む演算部50が起動し、第1~第5のスイッチ(41~43、70、75)のオン又はオフの制御が可能な状態となる。尚、トリガスイッチ6がオフにされても、一定時間(例えば5分間)は演算部50からの起動維持信号62により演算部50への電力供給が維持される。
【0043】
マイコン51が制御信号回路52を制御することによってインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6へのゲート信号H1~H6のオン又はオフを切り替える。モータ5は、いわゆるインナーロータ型の公知のブラシレスモータであって、一対のN極およびS極を含むマグネット(永久磁石)を埋め込んで構成されたロータ5aと、ロータ5aの外周側に配置されるステータ5bにより構成される。ステータ5bは外周側の円筒部から内側に向けて6つのティース(図示せず)を有し、6つのティースの回転軸線方向の両側には合成樹脂製のインシュレータ(図示せず)が設けられる。
【0044】
ステータコア(図示せず)は強い磁力線を導くため、例えば鋼板の積層構造により構成される。2つのインシュレータと、それらに挟まれるティースの外周側にはそれぞれエナメル線が複数回巻かれることにより6つのコイル要素が形成される。これら6つのコイル要素を、2つずつ直列接続続することによりU相、V相、W相の3つのコイルが形成される。U相、V相、W相の3つのコイルの一端側は、インバータ回路65に接続され(図中VV、VU、VW)、他方が第5スイッチ75に接続される。
【0045】
第5スイッチ75は、U相、V相、W相の3つのコイルの他端側を短絡又は開放するための切り替えスイッチ群であり、3つのスイッチ76~78を含む。第5スイッチ75は、公知のメカニカルリレー、MOS FET リレー、又は、FET等の半導体スイッチング素子を用いて構成され、接続状態の切り替えは、マイコン51からの制御信号(その配線は図示せず)によって行われる。メカニカルリレーを用いる場合は、a接点を有する2極単投形のリレースイッチを用いると良い。3つのスイッチ76~78は連動して一括でオン又はオフに切り替えられ、
図5の接続状態(スイッチ76~78がオン状態、スイッチ71~73がオフ状態)では、U相、V相、W相の端部が接続されて中点が形成された“スター結線”となる。
【0046】
第4スイッチ70は、U相、V相、W相の3つのコイルによる“デルタ結線”を形成するための切り替えスイッチ群であり、3つのスイッチ71~73を含む。スイッチ71は、U相のインバータ回路65側端部と、W相の中点側端部を短絡する配線中に配置される。同様にしてスイッチ72は、V相のインバータ回路65側端部と、U相の中点側端部を短絡する配線中に配置され、スイッチ73は、W相のインバータ回路65側端部と、V相の中点側端部を短絡する配線中に配置される。第4スイッチ70は、公知のメカニカルリレー、MOS FET リレー、又は、FET等の半導体スイッチング素子を用いて構成され、接続状態の切り替えは、マイコン51からの制御信号(その配線は図示せず)によって行われる。メカニカルリレーを用いる場合は、a接点又はb接点を有する2極単投形のリレースイッチを用いると良い。3つのスイッチ71~73は連動して一括でオン又はオフに切り替えられ、後述の
図6の接続状態(3つのスイッチ71~73がオン状態、かつ、スイッチ76~78がオフ状態)では、“デルタ結線”となる。
【0047】
モータ5のロータ5aの近傍には、3つの位置検出素子48が設けられる。位置検出素子48は、インバータ回路65上に、回転角60°毎に配置される。回転位置検出回路53は、3つの位置検出素子48の出力信号に基づいてロータ5aとステータ5bの電機子巻線U、V、Wとの関係位置を検出するための回路である。回転数検出回路54は、単位時間内にカウントされる回転位置検出回路53からの検出信号の数に基づいてモータ5の回転数を検出する回路である。
【0048】
第4及び第5スイッチ70、75は、18/36V対応の電気機器1にだけ設けられ、
図1で示した36V用の電気機器101と、18V用の電気機器151には設けられない。電気機器101及び電気機器151では、U相、V相、W相の3つのコイルが直接ハンダ付けされるか、又はモータ5に設けられるインバータ回路基板(図示せず)に接続されることにより、“デルタ結線”又は“スター結線”が設定される。つまり、電気機器101及び電気機器151では、デルタ結線”と“スター結線”を切り替えることができない。
【0049】
以上のように、2電圧で動作する電気機器1には、第4スイッチ70と第5スイッチ75が設けられるため、低/高電圧電池パック200が装着された際には、モータ5の運転前に、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオフとし、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオンにすることにより、スター結線状態とすることができる。同様にして、後述の
図6で示すように、18V電池パック250が装着された際には、モータ5の運転前に、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオンとし、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオフにすることにより、デルタ結線状態(後述の
図6の状態)とすることができる。
【0050】
電流検出回路57はシャント抵抗46の両端電圧を測定することによりモータ5に流れる電流を測定して演算部50に出力する。電圧検出回路59は、第2接続端子32と負極入力端子33の間の電圧を検出し、演算部50に出力する回路である。スイッチ操作検出回路61は、トリガスイッチ6のレバーが引かれているかどうかを検出すると共に、レバーの引き量に応じた信号を演算部50に出力する。演算部50のマイコン51は、トリガスイッチ6のレバーの移動ストローク量に応答してモータ5の印加電圧、すなわちPWM信号のデューティ比を設定する。動作モードスイッチ56は、モータ5の回転速度を段階的に設定するためのスイッチであり、動作モード検出回路55はスイッチの設定状況を検出して、演算部50に出力する。
【0051】
以上説明した電気機器1において、電池パック装着部10に電池パック200が装着されると、制御電源回路60に第2セルユニット220からの18V出力が供給されるため、最初にトリガスイッチ6がオンにされたタイミングで、制御電源回路60が演算部50に基準電圧Vccを生成して供給する。制御電源回路60に基準電圧Vccが供給されるとマイコン51が起動するため、装着されている電池パックが、18/36V電池パック200であるか、18V電池パック250であるかを判断し、それに合わせた第1~第3スイッチ41~43のオンオフを設定し、その後に、第4、第5スイッチ70、75のオンオフを設定する。
図5の回路図では18/36V電池パック200が装着されており、第1スイッチ41と第2スイッチ42がオフとされ、第3スイッチ43がオンとされる。この結線状態では、電力線35とグランドライン36の間に定格直流36Vが供給される。一方、モータ5はスター結線とするために、第4スイッチ70の各スイッチ71~73がオフとされ、第5スイッチ75の各スイッチ76~78が接続状態(オン)とされる。
【0052】
図6は本実施例の電気機器1の電池パック装着部10に、低電圧電池パック250を装着した際の回路図である。電気機器1の回路は
図5と全く同じであり、第1~第3スイッチ
41~43の接続状態と、第4、第5スイッチ70、75の接続状態が異なるだけである。装着される電池パック250は、定格18Vであって、
図4(B)の第3正極端子281、第3負極端子291のような端子形状である。電気機器1の電池パック装着部10に、低電圧電池パック250が装着されると、正極入力端子31と負極入力端子33には、電池パック250から定格18Vの直流が出力される。この際、マイコン51は、第1スイッチ41と第2スイッチ42をオン状態に維持すると共に、第3スイッチ43はオフ状態とする。次に、マイコン51は、第4スイッチ70と第5スイッチ75を切り替えることにより、モータ5の結線状態をデルタ結線にする。即ち、マイコン51は第4スイッチ70の各スイッチ71~73をオン状態に維持し、第5スイッチ75の各スイッチ76~78をオフ状態に維持する。
【0053】
通常ではスター結線されて36Vで駆動されるモータ5を、18Vで駆動するような場合は、スター結線でなくデルタ結線に切り替えた方が有利である。デルタ結線の方が、低い電圧でも大電流を高くしやすく、同一発生トルク時のモータ5の回転数を上げられるためである。
【0054】
図7は本実施例の電気機器1の電圧切替え手順を示すフローチャートである。
図7に示す一連の手順は、演算部50にあらかじめ格納されたプログラムによって、マイコン51によってソフトウェア的に実行可能である。最初の状態、つまり電池パック200、250のいずれも装着されていない状態では、演算部50に電源供給ができないので、マイコンもシャットダウンしたままにある。この状態では、第1~第3スイッチ41~43はいずれもオフ状態(導通していない状態)にあり、第4スイッチ70と第5スイッチ75もすべてオフ状態(U相、V相、W相が結線されていない状態)にある(ステップ81)。次に、電池パック200、250のいずれかが装着されたかどうかが実質的に判断され、装着されなかった場合は装着されるまで待機する(ステップ82)。ステップ82で装着されると、制御電源回路60(
図5、
図6参照)に電圧が供給されて演算部50のマイコン51が起動可能な状態になり、最初にトリガスイッチ6が引かれると制御電源回路60が演算部50に動作用の電圧Vccの出力を開始するので(ステップ83、84)、以降のステップ85以降の手順が実行可能な状態になる。
【0055】
次に、電池パック200、250が、識別信号を検出器44(
図5、
図6参照)に送出する。検出器44は、受信した識別信号を検出し、演算部50に送信する(ステップ86)。次にマイコン51は、識別信号を判別して装着された電池パックが、18/36Vの低/高電圧電池パック200であるか、18Vの単一電圧電池パック250であるかを判定する(ステップ87)。
【0056】
ステップ87において、装着されているのが18/36Vの電池パック200であると判定されたら、マイコン51は、第3スイッチ43をオン(接続)にして、短絡線37によって第2接続端子32と第1接続端子34を接続する。一方、第1スイッチ41と第2スイッチ42はオフ状態に維持する(ステップ88)、この状態が
図5の回路図で示した状態で有り、正極入力端子31と負極入力端子33の間には、36Vの直流が出力される。次に、マイコン51は、モータ5の結線を36V動作用に設定する(ステップ89)。ここで、36V動作用設定の一例は、
図5で示したようにモータ5のコイルの結線をスター結線にすることである。即ち、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオフにして、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオンにする。この結線が終了したらマイコン51は、モータ5を起動して電気機器の作業を開始する(ステップ90)。
【0057】
ステップ87において、装着されているのが18Vの電池パック250であると判定されたら、マイコン51は、第3スイッチ43をオフ(非接続)にして、短絡線37の経路を遮断し、第1スイッチ41と第2スイッチ42をオン状態に維持する(ステップ91)、この状態が
図6の回路図で示した状態で有り、正極入力端子31と負極入力端子33の間には、18Vの直流が出力される。次に、マイコン51は、モータ5の結線を18V動作用に設定する(ステップ92)。ここで、18V動作用設定の一例は、
図6で示したようにモータ5のコイルの結線をデルタ結線にすることである。即ち、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオンにして、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオフにする。この結線が終了したらマイコン51は、モータ5を起動して電気機器の作業を開始する(ステップ90)。
【0058】
ステップ90における作業が終了してトリガスイッチ6が戻されたら、モータ5が停止するが、マイコン51がシャットダウンするまでは、ステップ88又は91で設定した第1~第3スイッチ41~43の状態を維持し、ステップ89又は92で設定した第4、第5スイッチ70、75の状態を維持する。
【0059】
本実施例によれば、電気機器1の演算部50によって装着された電池パックの種類(低/高電圧電池パック200か単電圧の電池パック250か)を判定し、装着された電池パックの種類に適した入力端子(31、33)と接続端子(32、34)の結線の設定を行うので、36V用ターミナル部形状を有する電気機器において、18V用の電池パックも装着できるようになった。また、装着された電池パック200又は250の電圧に合わせて、モータ5のコイルの接続形態(スター結線かデルタ結線か)を切り替えるので、低電圧側の電池パック250を装着した場合でも、さほど違和感を覚えることなく電気機器1を使用できるようになった。さらに、ユーザにとっては、所持している電池パック200、250を効果的に使い回しできるので、使い勝手が向上した。
【0060】
また、本実施例によれば、複数のコイルを備えたモータ5を有し、第1電池パック(250)が電気機器1に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態(例えばスター結線)で接続し、第2電池パック(200)が電気機器に接続された場合は、複数のコイルを互いに第1の接続形態とは異なる第2の接続形態(例えばデルタ結線)で接続するよう構成したので、装着される電池パックによって効率の良い駆動方法を選択できる。また、接続形態を切り替えないと、36Vの半分程度の速度しか出ないところを補うことが可能となる。また、18Vでも36Vと同等の回転数・トルクを確保できる。同一トルクでの回転数を高くできる。
【実施例2】
【0061】
次に
図8及び
図9を用いて本願発明の第2の実施例を説明する。
図8は本実施例の第2の実施例に係る電気機器1Aの電池パック装着部10に、低/高電圧電池パック200を装着した際の回路図である。
図5、
図6で示した第1の実施例との違いは、電気機器1Aの電池パック装着部10から第1スイッチ41(
図5参照)と第2スイッチ42(
図5参照)を省いた点である。つまり、第1実施例にて第1、第2スイッチ41、42(
図5参照)の部分は結線されていないので、第2接続端子32と電力線35は直接接続されず、第1接続端子34とグランドライン36は直接接続されない。第1、第2スイッチ41、42(
図5参照)が無い点以外の、その他の構成要素は第1の実施例と同一である。モータ5のスター結線とデルタ結線の切り替え方法も、第4スイッチ70と第5スイッチ75を用いて同じように制御する。電気機器1Aの電池パック装着部10に低/高電圧電池パック200を装着した場合は、第3スイッチ43をオンにして短絡線37を接続状態とすることで、正極入力端子31と負極入力端子33の間には36Vの直流が出力される。この際、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオフにし、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオンにして、モータ5をスター結線とする。
【0062】
図9は本実施例の第2の実施例に係る電気機器1Aの電池パック装着部10に、低電圧電池パック250を装着した際の回路図である。低電圧電池パック250を装着した際には、その第3正極端子281と第3負極端子291(共に
図4(B)参照)の形状から、正極入力端子31と第2接続端子32が短絡され、負極入力端子33と第1接続端子34が短絡される。また、マイコン51は、電池パック種類検出回路58の出力により装着された電池パック250が18Vと判断したら、第3スイッチ43をオフ状態で維持する。更に、マイコン51は、第4スイッチ70のスイッチ71~73をすべてオンにし、第5スイッチ75のスイッチ76~78をすべてオフにして、モータ5をデルタ結線とする。
【0063】
第2の実施例における電気機器1Aの電圧切替え手順は、
図7で示したフローチャートとほぼ同じである。唯一の違いはステップ88と91にて第1スイッチ41と第2スイッチ42の制御が不要な点である。第2の実施例では第1スイッチ41と第2スイッチ42を省略できるので、電気機器1Aのハウジング2内に配置するスイッチの個数を削減してハウジング2の大型化を抑制することができる。
【実施例3】
【0064】
図10は本実施例の第3の実施例に係る電気機器1Bの電池パック装着部10に、低/高電圧電池パック200Aを装着した際の回路図である。18V/36Vの電池パック200Aは、
図5で示した低/高電圧電池パック200と同様に、電池パック200Aの正極側端子として、腕部が上側に位置する第1正極端子231と、腕部が下側に位置する第2正極端子232が設けられる。同様にして、腕部が上側に位置する第2負極端子242と、腕部が下側に位置する第1負極端子241が設けられる。これに対応する電気機器1Bには、正極入力端子31と、負極入力端子33、第2接続端子32が設けられる。しかしながら、
図5に示した第1接続端子34に相当する端子は省略されている。
【0065】
第3の実施例では、18V/36Vの電池パック200Aの筐体内に短絡線247が設けられ、短絡線247の経路中に第3スイッチ243が設けられる。第3スイッチ243はケース201(
図2参照)の外部から物理的にスイッチ可動片を移動させるようにして、オン又はオフの制御を行う。ここでは、矢印235に示す方向に向けて電気機器1Bの電池パック装着部10側に設けられる押圧片23(
図11にて後述)が第3スイッチ243の可動片243a(
図11にて後述)を付勢することで第3スイッチ243がオンになる。また、電池パック200Aが装着されると、検出器44を介してマイコン51により電池パック200Aが36V出力可能な機種であると判定できるので、第4スイッチ70をすべてオフにして、第5スイッチ75をすべてオンにしてモータ5のコイルをスター結線とする。次に、
図11を用いて電気機器1Bの電池パック装着部10に設けられる押圧片23と、第3スイッチ243の形状を説明する。
【0066】
図11(A)は
図10で示す電気機器1Bの電池パック装着部10Bの底面図である。電池パック装着部10Bには、
図4で示した正極入力端子31と第2接続端子32が上下に距離を隔てて配置され(図では重なって見える)、負極入力端子33と第1接続端子34が上下に距離を隔てて配置される(図では重なって見える)。第1接続端子34と第2接続端子32との間には、通信用のT端子24、V端子25、LS端子26が設けられ、第1接続端子34の隣にはLD端子28が設けられる。第2接続端子32とT端子24の間には、第3スイッチ243を押圧するための押圧片23が設けられる。押圧片23が設けられる位置、即ち、
図11(B)のスロット223には、従来の18V電池パックや、従来の18/36V電池パックではそこに接続端子が設けられておらず、予備のスペースであった。そこで、第3の実施例では予備のスペースに合成樹脂等の不導体でできた押圧片23を設け、電池パック200を電池パック装着部10Bに装着した際に、対応するスロット223内に配置される第3スイッチ243を押圧するように構成した。
【0067】
図11(B)は低/高電圧電池パック200Aの上面の概略図である。電池パック200Aの形状は第3スイッチ243をスロット223の内部に配置した構造が低/高電圧電池パック200と違う点である。電池パック200Aのスロット群205には、右側から8つのスロット221~228が配置される。スロット222は正極用であり、その内部空間には
図4で示した第1正極端子231と第2正極端子232が配置される。スロット227は負極用であり、その内部空間には
図4で示した第1負極端子241と第2負極端子242が配置される。
図11(A)で示した電池パック装着部10Bに電池パック200Aを装着するために移動させると、正極入力端子31と第2接続端子32がスロット222内に挿入され、第1正極端子231と第2正極端子232と嵌合する。また、負極入力端子33と第1接続端子34がスロット227内に挿入され、第2負極端子242と第1負極端子241と嵌合する。また、通信用の端子24~26、28もそれぞれスロット224~226、228に挿入され、電池パック200A側の通信用端子と嵌合する。
【0068】
電気機器1Bの電池パック装着部10Bに形成された押圧片23はスロット223内に挿入され、第3スイッチ243の可動子243aを押圧して移動させることにより、第3スイッチ243をオフ状態からオン状態に切り替える。つまり電気機器1Bの電池パック装着部10Bの突起(押圧片23)が電池パック200A側の空きスロット223内に設けられた第3スイッチ243を操作するため、第3スイッチ243が自動的に操作される。このようにして、18V/36V用の2電圧電池パック200Aが装着されると強制的に第3スイッチ243がオン状態、即ち
図10の回路図に示した接続状態になる。電池パック200Aを電気機器1Bの電池パック装着部10Bから取り外すと、押圧していた押圧片23が第3スイッチ243から離れるため、第3スイッチ243の可動片(可動子243a)が図示しないバネの作用により元の位置(初期位置)にもどることにより、第3スイッチ243はオフ状態となる。
【0069】
図12は本実施例の第3の実施例に係る電気機器1Bの電池パック装着部10Bに、18Vの電池パック250を装着した際の回路図である。18Vの電池パック250のターミナル部やレール部の外観形状は、
図11(B)で示した電池パック200Aの外観と同じ(互換)である。
図4(B)で示した第3正極端子281が
図11(B)のスロット222に相当する位置に配置され、
図4(B)で示した第3負極端子291が
図11(B)のスロット227に相当する位置に配置される。一方、18Vの電池パック250の内部には第3のスイッチ243(
図10参照)に相当するスイッチは設けられず、
図11(B)のスロット223に相当する位置の内部空間は空洞になっている。従って、電気機器1Bの電池パック装着部10Bに電池パック250を装着しても、矢印235のように不導体たる押圧片23が空きスロット223の内部に挿入されるだけで、電池パック250側の回路構成には何ら変更がない。
【0070】
電池パック250は、第3正極端子281と第3負極端子291を有する。第3正極端子281は、正極入力端子31と第2接続端子32に嵌合し、第3負極端子291は負極入力端子33に嵌合する。この結果、
図12に示すように、電力線35とグランドライン36の間には18Vの直流が出力される。また、電池パック250が装着されると、検出器44を介してマイコン51により電池パック250が18V出力可能な機種であると判定できるので、第4スイッチ70をすべてオンにして、第5スイッチ75をすべてオフにしてモータ5のコイルをデルタ結線とする。
【0071】
第3の実施例では、2つのセルユニット210、220を直列に接続するための短絡線247を電池パック200Aの内部に配置した。電気機器1Bの電池パック装着部10Bには、電池パック200Aの内部に配置した第3スイッチ243を操作するための操作部材(押圧片23)を設けるようにしたので、電池パック200Aを押圧片23付きの電気機器1Bの電池パック装着部10Bに装着するだけで自動的に電池パック200Aの出力を高出力側に切り替えることができる。
【0072】
以上、第1~第3の実施例では、電池パック装着部10、10Bに高電圧(36V)の電池パックが装着された際にはモータ5をスター結線とし、低電圧(18V)の電池パックが装着された際にはモータ5をデルタ結線とした。しかしながら、モータ5の制御を高電圧駆動に最適な回転制御と、低電圧駆動に最適な回転制御を切り替える方法は他にも考えられる。
【0073】
図13はモータの制御特性の切り替え例を示す図であり、(A)は電気進角を変更した場合のモータ回転数とモータトルクの関係を示す図である。ここで、電気進角について説明する。位置検出素子(ホールIC)48が回転位置検出回路53を介して演算部50(マイコン51)へ出力する信号がオンからオフ、或いは、オフからオンに切り替わった瞬間にインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6のオン、オフを切り替える場合を電気進角0度という。このタイミングよりもロータ5aが回転角15度前のタイミングでインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6のオン、オフを切り替えることを電気進角30度(15度×2(4極ロータの場合))という。図中、縦軸はモータ5の回転数(単位:min
-1)であり、横軸はモータ5の発生トルク(単位:N・m)である。特性93は、18/36V対応の電気機器1において、モータ5を36Vで駆動し、電気進角を30度で駆動した場合のモータ回転数とモータトルクの特性である。モータトルクが大きくなると、モータ回転数がリニアに下がるという特性を有する。このような特性のモータ5において、18Vの電力で同じモータ5を駆動すると、点線で示す特性94のようになるので、モータ回転数もモータトルクも小さくなってしまう。そこで、電気進角0度のタイミングに対してロータ5aが回転角30度前(電気進角30×2(4極ロータの場合)=60度)にインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6のオン、オフを切り替え、18Vの電力でも電気進角を30度から60度に変更することで、特性95のように低トルク領域でのモータ回転数を大きく上昇させることができる。このように18V電池パック250を電気機器1に装着した時に、電気進角を大きくすることで、36V動作時の回転特性に近づけることが可能となる。
【0074】
図13(B)は導通角を変更した場合のモータ回転数とモータトルクの関係を示す図である。ここで、通電角について説明する。ロータ5aの位置(位置検出素子48の出力)に応じてインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6のオン、オフが切り替わるため、各ステータコイル(U相、V相、W相)に流れる電流にも通電のオン、オフや、電流の流れる向き(正方向、逆方向)に変化が生じる。120度通電とは、ロータ5aが60度回転(電気角で60度×2(4極ロータの場合)=120度)するまで、各ステータコイルの通電のオン、オフ、及び電流の流れる向きが変化しないようにインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6をオン、オフさせることをいう。特性96は、18/36V対応の電気機器1において、モータ5を36Vで駆動し、導通角を120度で駆動した場合のモータ回転数とモータトルクの特性である。モータトルクが大きくなると、モータ回転数がリニアに下がるという特性を有する。このような特性のモータ5において、18Vの電力で同じモータ5を駆動すると、点線で示す特性97のようになるので、モータ回転数もモータトルクも小さくなってしまう。そこで、ロータ5aが90度回転(電気角で90度×2(4極ロータの場合)。180度)するまで、各ステータコイルの通電のオン、オフ及び電流の流れる向きが変化しないようにインバータ回路65の半導体スイッチング素子Q1~Q6をオン、オフさせ、18Vの電力でも導通角を120度から180度に変更することで、特性98のように低トルク領域でのモータ回転数を大きく上昇させることができる。このように18V電池パック250を電気機器1に装着した時に、導通角を大きくすることで、36V動作時の回転特性に近づけることが可能となる。
【0075】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B…電気機器、2…ハウジング、2a…本体部、2b…ハンドル部、2c…ソーカバー、3…ベース、3a…切り抜き部、4…モータカバー、5…モータ、5a…ロータ、5b…ステータ、6…トリガスイッチ、8…鋸刃、9…保護カバー、10,10B…電池パック装着部、11,12…レール部、11a,11b…凹部、15…ターミナル部、23…押圧片、24…T端子、25…V端子、26…LS端子、28…LD端子、30…仕切り板、31…正極入力端子、32…第2接続端子、33…負極入力端子、34…第1接続端子、35…電力線(プラス電力ライン)、36…電力線(グランドライン)、37…短絡線、41…第1スイッチ、42…第2スイッチ、43…第3スイッチ、44…検出器、45…コンデンサ、46…シャント抵抗、48…位置検出素子、50…演算部、51…マイコン、52…制御信号回路、53…回転位置検出回路、54…回転数検出回路、55…動作モード検出回路、56…動作モードスイッチ、57…電流検出回路、58…電池パック種類検出回路、59…電圧検出回路、60…制御電源回路、61…スイッチ操作検出回路、62…起動維持信号、65…インバータ回路、70…第4スイッチ、71~73…スイッチ、75…第5スイッチ、76~78…スイッチ、101…電気機器、110…電池パック装着部、151…電気機器、160…電池パック装着部、200,200A…電池パック(低/高電圧電池パック,第1電池パック)、201…ケース、202…下段面、203…段差部、204…上段面、205…スロット群、207…ストッパ部、208a,208b…レール溝、209a,209b…ラッチボタン、210…第1セルユニット、220…第2セルユニット、221~228…スロット、231…第1正極端子、231a,231b…腕部、232…第2正極端子、232a,232b…腕部、241…第1負極端子、241a,241b…腕部、242…第2負極端子、242a,242b…腕部、243…第3スイッチ、243a…可動子、247…短絡線、250…電池パック(低電圧電池パック,第2電池パック)、251…ケース、252…下段面、253…段差部、254…上段面、255…スロット群、258a…レール溝、259a…ラッチボタン、260…第3セルユニット、270…第4セルユニット、281…第3正極端子、281a,281b…腕部、291…第3負極端子、291a,291b…腕部、Q1~Q6…スイッチング素子、Vcc…基準電圧