(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】計測装置、計測システム、計測方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20241126BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61B5/107 120
A61B5/107 130
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2023517071
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005234
(87)【国際公開番号】W WO2022230299
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021075661
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】オウ シンイ
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112043276(CN,A)
【文献】特開2017-146116(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176090(WO,A1)
【文献】特開2010-014712(JP,A)
【文献】実開昭55-134654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A61B 5/11
G01B 21/00-21/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間加速度および空間角速度を計測するセンサが小関節の位置に装着されたユーザによる
大関節を中心とする回転運動である計測動作に応じて前記センサによって計測されたセンサデータを
取得し、
センサデータに含まれる前記空間加速度を二階積分して空間位置を計算し、センサデータに含まれる前記空間角速度を積分して空間角度を計算する計算手段と、
前記空間位置および前記空間角度を用いて前記計測動作の期間における前記センサの回転半径を計算し、算出された前記回転半径を前記ユーザの四肢の長さとして推定する推定手段と、を備え
、
前記計算手段は、
前記計測動作の期間における前記センサの軌跡を複数の区間に分割し、
前記推定手段は、
分割された前記区間ごとの曲率半径を計算し、
複数の前記区間に対して算出された曲率半径の分布に基づいて、前記四肢の長さを推定する計測装置。
【請求項2】
前記計算手段は、
前記大関節を中心とする
回転運動である第1計測動作に応じて、
前記小関節の部分に装着された前記センサによって計測されたセンサデータを用いて、前記第1計測動作の期間における前記センサの軌跡に対応する第1円弧の長さと中心角を計算し、
中関節を中心とする
回転運動である第2計測動作に応じて、前記小関節の部分に装着された前記センサによって計測されたセンサデータを用いて、前記第2計測動作の期間における前記センサの軌跡に対応する第2円弧の長さと中心角を計算し、
前記推定手段は、
前記第1計測動作に応じて算出された前記第1円弧の長さと中心角を用いて前記第1円弧の半径を計算し、
算出された前記第1円弧の半径を前記四肢の長さとして推定し、
前記第2計測動作に応じて算出された前記第2円弧の長さと中心角を用いて前記第2円弧の半径を計算し、
算出された前記第2円弧の半径を前記四肢の下部の長さとして推定し、
前記四肢の長さから前記四肢の下部の長さを引いて、前記四肢の上部の長さを計算する請求項
1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記空間加速度および前記空間角速度を計測する第1センサが前記ユーザの前記小関節の位置に装着され、
前記空間加速度および前記空間角速度を計測する第2センサが前記ユーザの中関節の位置に装着され、
前記計算手段は、
前記大関節を中心とする
回転運動である第1計測動作に応じて、
前記小関節の部分に装着された
前記第1センサによって計測されたセンサデータを用いて、前記第1計測動作の期間における前記第1センサの軌跡に対応する第1円弧の長さと中心角を計算し、
前記第1計測動作に応じて、
前記中関節の部分に装着された
前記第2センサによって計測されたセンサデータを用いて、前記第1計測動作の期間における前記第2センサの軌跡に対応する第3円弧の長さと中心角を計算し、
前記推定手段は、
前記第1計測動作に応じて算出された前記第1円弧の長さと中心角を用いて前記第1円弧の半径を計算し、
算出された前記第1円弧の半径を前記四肢の長さとして推定し、
前記第1計測動作に応じて算出された前記第3円弧の長さと中心角を用いて前記第3円弧の半径を計算し、
算出された前記第3円弧の半径を前記四肢の上部の長さとして推定し、
前記四肢の長さから前記四肢の上部の長さを引いて、前記四肢の下部の長さを計算する請求項
1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記四肢は上肢であり、前記大関節は肩関節であり、前記中関節は肘関節であり、前記小関節は手関節であり、前記四肢の上部が上腕であり、前記四肢の下部が前腕である請求項
2または3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記四肢は下肢であり、前記大関節は股関節であり、前記中関節は膝関節であり、前記小関節は足関節であり、前記四肢の上部が上腿であり、前記四肢の下部が下腿である請求項
2または3に記載の計測装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の計測装置と、
空間加速度および空間角速度を計測するセンサを含み、ユーザの
小関節の位置に装着され、前記ユーザによる四肢に関する計測動作に応じて前記センサによって計測された前記空間加速度および前記空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成された前記センサデータを前記計測装置に出力する少なくとも一つのデータ取得装置と、を備える計測システム。
【請求項7】
前記計測装置は、
前記ユーザによって視認可能な位置にある端末装置の画面に、前記四肢に関する前記計測動作を指示する情報を表示させ、
前記端末装置の画面に表示された指示に応じて前記計測動作を行った前記ユーザの前記
小関節の位置に装着された前記データ取得装置によって計測された前記センサデータを用いて、前記ユーザの前記四肢に関する長さを推定し、
推定された前記ユーザの前記四肢に関する長さを含む情報を前記端末装置の画面に表示させる請求項
6に記載の計測システム。
【請求項8】
コンピュータが、
空間加速度および空間角速度を計測するセンサが小関節の位置に装着されたユーザによる
大関節を中心とする回転運動である計測動作に応じて前記センサによって計測されたセンサデータを
取得し、
前記センサデータに含まれる前記空間加速度を二階積分して空間位置を計算し、
前記センサデータに含まれる前記空間角速度を積分して空間角度を計算し、
前記計測動作の期間における前記センサの軌跡を複数の区間に分割し、
前記空間位置および前記空間角度を用いて、分割された前記区間ごとの曲率半径を計算し、
複数の前記区間に対して算出された曲率半径の分布に基づいて、前記ユーザの四肢の長さ
を推定する計測方法。
【請求項9】
空間加速度および空間角速度を計測するセンサが小関節の位置に装着されたユーザによる
大関節を中心とする回転運動である計測動作に応じて前記センサによって計測されたセンサデータを
取得する処理と、
前記センサデータに含まれる前記空間加速度を二階積分して空間位置を計算する処理と、
前記センサデータに含まれる前記空間角速度を積分して空間角度を計算する処理と、
前記計測動作の期間における前記センサの軌跡を複数の区間に分割する処理と、
前記空間位置および前記空間角度を用いて、分割された前記区間ごとの曲率半径を計算する処理と、
複数の前記区間に対して算出された曲率半径の分布に基づいて、前記ユーザの四肢の長さ
を推定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、四肢に関する計測を行う計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
体調管理を行うヘルスケアへの関心の高まりから、身体を構成する部位に関する計測を簡易に行うことに注目が集まっている。例えば、四肢に関する長さを簡易に計測できれば、計測値に応じた適切な運動プログラムを組むことが可能になる。四肢に関する長さを正確に計測するためには、専門的な知識が必要である。そのため、専門的な知識がない限り、四肢に関する長さを簡易に計測することは難しい。
【0003】
特許文献1には、足首に装着されたセンサ部によって計測される人体の動作状態に関連するセンサデータに基づいて、人体の動作状態を再現した動画を表示させる運動状態表示システムについて開示されている。特許文献1のシステムは、キャリブレーション動作を行った際に取得されるセンサデータに基づいて、センサ部の装着状態、片脚立ちの姿勢、および下腿の長さのうち少なくともいずれかを規定するパラメータを算出する。特許文献1のシステムは、運動中に取得されたセンサデータと、キャリブレーション処理により算出されたパラメータの値とに基づいて、人体の動作状態を再現した動画を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法では、キャリブレーション動作の際に、一連の屈曲動作を行う。一連の屈曲動作では、膝を回転軸として下腿を後方に90度回転させた位置まで動かしてから、当初の左脚を直立させた位置まで下腿を戻すことが繰り返される。特許文献1の手法では、直立した状態では、下腿を極力直立させていることが求められる。また、特許文献1の手法では、屈曲動作の際に、膝を軸として下腿を曲げるようにするため、膝の位置を極力動かさないようにすることが求められる。すなわち、特許文献1の手法では、厳密なキャリブレーション動作を行わないと、身体に関するパラメータを正確に計測することが難しかった。
【0006】
本開示の目的は、簡易な動作に応じて計測されるセンサデータに基づいて、四肢に関する計測を行うことができる計測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の計測装置は、所定の装着部位にセンサが装着されたユーザによる四肢に関する計測動作に応じてセンサによって計測されたセンサデータを用いて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さおよび中心角を計算する計算部と、算出された円弧の長さおよび中心角を用いて算出される円弧の半径を、ユーザの四肢の長さとして推定する推定部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の計測方法においては、所定の装着部位にセンサが装着されたユーザによる四肢に関する計測動作に応じてセンサによって計測されたセンサデータを用いて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さおよび中心角を計算し、算出された円弧の長さおよび中心角を用いて算出される円弧の半径を、ユーザの四肢の長さとして推定する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、所定の装着部位にセンサが装着されたユーザによる四肢に関する計測動作に応じてセンサによって計測されたセンサデータを用いて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さおよび中心角を計算する処理と、算出された円弧の長さおよび中心角を用いて算出される円弧の半径を、ユーザの四肢の長さとして推定する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡易な動作に応じて計測されるセンサデータに基づいて、四肢に関する計測を行うことができる計測装置等を提供ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置の装着例について説明するための概念図である。
【
図2B】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置の別の装着例について説明するための概念図である。
【
図3】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置に設定される座標系について説明するための概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る上肢の第1計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図7】第1の実施形態に係る上肢の第2計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図8】第1の実施形態に係る下肢の第1計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図9】第1の実施形態に係る下肢の第2計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図10】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置による四肢の長さの計算例について説明するための概念図である。
【
図11】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置による四肢の長さの別の計算例について説明するための概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置による四肢の長さの別の計算例について説明するための概念図である。
【
図13】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置による上肢の長さの計測例について説明するためのフローチャートである。
【
図14】第1の実施形態に係る計測システムの計測装置による下肢の長さの計測例について説明するためのフローチャートである。
【
図15】第1の実施形態に係る適用例1における上肢に関する計測について説明するための概念図である。
【
図16】第1の実施形態に係る適用例1における下肢に関する計測について説明するための概念図である。
【
図17】第1の実施形態に係る適用例1における上肢/下肢の計測結果の表示例を示す概念図である。
【
図18】第2の実施形態に係る計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図19】第2の実施形態に係る上肢の計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図20】第2の実施形態に係る下肢の計測動作の一例について説明するための概念図である。
【
図21】第2の実施形態に係る計測システムの計測装置による上肢の長さの計測例について説明するためのフローチャートである。
【
図22】第2の実施形態に係る計測システムの計測装置による下肢の長さの計測例について説明するためのフローチャートである。
【
図23】第2の実施形態に係る適用例2における上肢/下肢に関する計測について説明するための概念図である。
【
図24】第2の実施形態に係る適用例2における上肢/下肢の計測結果の表示例を示す概念図である。
【
図25】第3の実施形態に係る計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図26】各実施形態における制御や処理を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図面中の矢印の向きは、時間や処理の流れの一例を示すものであり、時間や処理の流れの向きを限定するものではない。
【0013】
本開示において、人体の各部の名称は、以下の通りに定義される。上肢は、肩関節と手関節の間の部分である。上腕は、肩関節と肘関節の間の部分である。前腕は、肘関節と手関節の間の部分である。下肢は、股関節と足関節の間の部分である。上腿は、股関節と膝関節の間の部分である。下腿は、膝関節と足関節の間の部分である。肩関節と股関節を総じて大関節と称する。肘関節と膝関節を総じて中関節と称する。手関節と足関節を総じて小関節と称する。上肢と下肢を総じて四肢と称する。上腕と上腿を総じて「四肢の上部」と称する。前腕と下腿を総じて「四肢の下部」と称する。なお、本開示における各関節や各部分の名称の定義は、医学的な定義や運動学的な定義と異なる場合がある。
【0014】
本開示において、四肢等に関して、以下のような規則で表記する場合がある。「上肢または下肢」を、「上肢/下肢」と表記する。「上腕または上腿」を、「上腕/上腿」と表記する。「前腕または下腿」を、「前腕/下腿」と表記する。そのほかの文言についても、「/」を用いて表記されている場合は、「/」の前後の文言のうちいずれかであることを示す。例えば、一つの段落や文の中で、「上肢/下肢」や「上腕/上腿」、「前腕/下腿」などが組み合わされて使用される場合がある。このような場合、「/」の前の文言同士を組み合わせ、「/」の後の文言同士を組み合わせることを意味する。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の情報処理システムは、所定の装着部位にセンサが設置されたユーザが、特定の動作(計測動作とも呼ぶ)を行った際に、センサによって計測されるセンサデータを用いて、そのユーザの四肢(上肢/下肢)の長さを計測する。本実施形態において、所定の装着部位とは、小関節(手関節/足関節)の位置に相当する手首や足首の位置である。
【0016】
(構成)
図1は、本実施形態の計測システム10の構成の一例を示すブロック図である。計測システム10は、データ取得装置11と計測装置15を備える。データ取得装置11と計測装置15は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、データ取得装置11と計測装置15は、単一の装置で構成されてもよい。また、計測システム10の構成からデータ取得装置11を除き、計測装置15だけで計測システム10が構成されてもよい。
【0017】
データ取得装置11は、ユーザや被検者等の人物の所定の装着部位(手首や足首)に装着される。本実施形態においては、手首や足首の部分を、第1装着部位と呼ぶ。すなわち、データ取得装置11は、第1装着部位に装着される。例えば、データ取得装置11は、リストバンドやサポーター、テーピング、包袋などによって、第1装着部位に装着される。データ取得装置11は、腕時計や活動量計などの装置に内蔵されてもよい。また、データ取得装置11は、ブレスレットやアンクレットなどの装身具に内蔵されてもよい。例えば、データ取得装置11は、手袋や靴に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、手首や足首に直に貼り付けられたり、手首や足首の皮膚の内側に埋め込まれたりしてもよい。例えば、データ取得装置11は、モーションセンサに組み込まれる。例えば、データ取得装置11は、外付け型のモーションセンサに組み込まれる。例えば、データ取得装置11は、スーツと一体化されたスーツ型モーションセンサに組み込まれる。例えば、データ取得装置11は、手や足の近辺で使用される機器に搭載されてもよい。データ取得装置11の形態には、特に限定を加えない。
【0018】
データ取得装置11は、加速度およぶ角速度を計測するセンサを含む。データ取得装置11は、人物の四肢(上肢/下肢)の動きに関する物理量として、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)および3軸周りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。データ取得装置11が計測する四肢(上肢/下肢)の動きに関する物理量には、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度も含まれる。また、データ取得装置11が計測する四肢(上肢/下肢)の動きに関する物理量には、加速度を二階積分することによって計算される位置(軌跡)も含まれる。データ取得装置11は、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置11は、変換後のセンサデータを計測装置15に送信する。
【0019】
データ取得装置11は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。データ取得装置11には、加速度センサと角速度センサ以外のセンサが含まれてもよい。例えば、慣性計測装置の別の一例として、VG(Vertical Gyro)や、AHRS(Attitude Heading)がある。例えば、慣性計測装置の別の一例として、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)がある。
【0020】
図2Aおよび
図2Bは、データ取得装置11の装着例を示す概念図である。
図2Aは、データ取得装置11を手首に装着する一例を示す概念図である。
図2Bは、データ取得装置11を足首に装着する一例を示す概念図である。
図2には、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)の座標軸の一例を図示する。本実施形態においては、直立して静止するユーザにとって、左右方向をX方向(左方が正)、前後方向をY方向(前方が正)、上下方向をZ方向(上方が正)と定義する。
【0021】
図2Aの例において、データ取得装置11は、計測対象の上肢の手首に装着される。
図2Aは、右手の手首にデータ取得装置11が装着される例である。データ取得装置11は、左手の手首に装着されてもよい。また、データ取得装置11は、両手の手首に装着されてもよい。両手の手首にデータ取得装置11を装着すれば、左右両方の上肢の動きに関するセンサデータを同時に取得できる。なお、データ取得装置11は、手首以外の位置に装着されてもよい。例えば、データ取得装置11は、手の位置に装着されてもよい。その場合、センサデータに基づいて計測された上肢の長さを、データ取得装置11と手首(手関節)の位置関係に応じて補正すればよい。
【0022】
本実施形態においては、肩関節と手関節の間の長さが、上肢の長さUと定義される。肩関節と肘関節の間の長さは、上腕の長さU1と定義される。肘関節と手関節の間の長さは、前腕の長さU2と定義される。上腕の長さU1と前腕の長さU2の和が、上肢の長さUに相当する。実際には、肩関節の回転中心と、データ取得装置11の装着部位との距離が、上肢の長さUとして計測される。そのため、上肢の長さUは、データ取得装置11の装着部位に応じて変動しうる。
【0023】
図2Bの例において、データ取得装置11は、計測対象の下肢の足首に装着される。
図2Bは、右足の足首にデータ取得装置11が装着される例である。データ取得装置11は、左足の足首に装着されてもよい。また、データ取得装置11は、両足の足首に装着されてもよい。両足の足手首にデータ取得装置11を装着すれば、左右両方の下肢の動きに関するセンサデータを同時に取得できる。なお、データ取得装置11は、足首以外の位置に装着されてもよい。例えば、データ取得装置11は、足の上や裏の位置に装着されてもよい。その場合、センサデータに基づいて計測された下肢の長さを、データ取得装置11と足首(足関節)の位置関係に応じて補正すればよい。
【0024】
本実施形態においては、股関節と足関節の間の長さが、下肢の長さLと定義される。股関節と膝関節の間の長さは、上腿の長さL1と定義される。膝関節と足関節の間の長さは下腿の長さL2と定義される。上腿の長さL1と下腿の長さL2の和が、下肢の長さLに相当する。実際には、股関節の回転中心と、データ取得装置11の装着部位との距離が、下肢の長さLとして計測される。そのため、下肢の長さLは、データ取得装置11の装着部位に応じて変動しうる。
【0025】
本実施形態において、四肢(上肢/下肢)に関する動きは、大関節(肩関節/股関節)を中心とする計測動作(第1計測動作とも呼ぶ)と、中関節(肘関節/膝関節)を中心とする計測動作(第2計測動作)とを含む。すなわち、第1計測動作は大関節(肩関節/股関節)を中心とする回転運動であり、第2計測動作は中関節(肘関節/膝関節)を中心とする回転運動である。例えば、四肢(上肢/下肢)の動きに応じてデータ取得装置11によって取得されたセンサデータは、データ取得装置11の装着部位(手首/足首)や、計測動作の種別(第1計測動作/第2計測動作)を識別できる符号(識別符号ともよぶ)を含む。例えば、センサデータは、左右いずれの装着部位(手首/足首)に装着されたデータ取得装置11によって取得されたのかを示す識別符号を含んでもよい。識別符号を含むセンサデータの形式には、特に限定を加えない。
【0026】
図3は、データ取得装置11に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、ユーザが直立して静止した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(右向きが正)、ユーザの正面の方向(進行方向)がY軸方向(前向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。ローカル座標系は、データ取得装置11を基準とするx方向、y方向、およびz方向からなる座標系を設定する。例えば、ローカル座標系は、ユーザが直立して静止した状態で世界座標系に一致するように設定される。ローカル座標系は、四肢(上肢/下肢)の動きに応じて軌跡を計算できれば、任意に設定できる。
【0027】
計測装置15は、データ取得装置11からセンサデータを取得する。計測装置15は、取得されたセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを計測する。計測装置15は、四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを推定する。例えば、計測装置15は、計測動作に応じて計測されるセンサデータに含まれる空間加速度を二階積分して、空間位置(軌跡)を計算する。例えば、計測装置15は、計測動作に応じて計測されるセンサデータに含まれる空間角度を積分して、空間角度を計算する。計測装置15は、算出された空間位置(軌跡)と空間角度に基づいて、計測動作の期間におけるデータ取得装置11の回転半径を計算する。計測動作の期間におけるデータ取得装置11の回転半径は、四肢(上肢/下肢)に関する長さに相当する。データ取得装置11による回転半径の計算方法については、後述する。
【0028】
計測装置15は、大関節(肩関節/股関節)を回転中心とする第1計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを計算する。また、計測装置15は、中関節(肘関節/膝関節)を回転中心とする第2計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを計算する。計測装置15は、四肢(上肢/下肢)の長さから、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを引くことによって、四肢の上部(上腕/上腿)の長さを計算する。
【0029】
計測装置15は、算出した四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、計測装置15は、表示装置(図示しない)に、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、表示装置に出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、その表示装置の画面に表示される。例えば、計測装置15は、外部システムに、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、外部システムに出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、任意の用途に用いられる。
【0030】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置11の詳細について図面を参照しながら説明する。
図4は、データ取得装置11の詳細構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置11は、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、および送信部115を有する。また、データ取得装置11は、図示しない電源を含む。データ取得装置11は、四肢(上肢/下肢)の計測対象であるユーザの所定の装着部位(手首/足首)に装着される。
【0031】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、計測した加速度を制御部113に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、加速度センサ111に用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0032】
角速度センサ112は、3軸周りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、計測した角速度を制御部113に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、角速度センサ112に用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0033】
制御部113は、加速度センサ111から3軸方向の加速度を取得する。制御部113は、角速度センサ112から3軸周りの角速度を取得する。制御部113は、取得した加速度および角速度をデジタルデータに変換する。制御部113は、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)を送信部115に出力する。センサデータには、アナログデータからデジタルデータに変換された加速度データおよび角速度データが少なくとも含まれる。デジタルデータに変換された加速度データには、3軸方向の加速度ベクトルが含まれる。デジタルデータに変換された角速度データには、3軸方向の角速度ベクトルが含まれる。加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。例えば、センサデータには、データ取得装置11の装着部位(手首/足首)や、計測動作の種別(第1計測動作/第2計測動作)を識別できる識別符号が付与される。例えば、センサデータは、左右いずれの装着部位(手首/足首)に装着されたデータ取得装置11によって取得されたのかを示す識別符号が付与される。識別符号は、データ取得装置11において付与されてもよいし、計測装置15において付与されてもよい。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成されてもよい。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データを用いて、3軸方向の速度データや位置データ(軌跡データ)、3軸周りの角度データを生成するように構成されてもよい。
【0034】
例えば、制御部113は、データ取得装置11の制御や処理を行う、マイクロコンピュータやマイクロコントローラである。例えば、制御部113は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して角速度や加速度を計測する。例えば、制御部113は、計測された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)し、変換後のデジタルデータをフラッシュメモリに記憶させる。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。フラッシュメモリに記憶されたデジタルデータは、所定のタイミングで送信部115に出力される。
【0035】
送信部115は、制御部113からセンサデータを取得する。送信部115は、取得したセンサデータを計測装置15に送信する。送信部115は、ケーブルなどの有線を介してセンサデータを計測装置15に送信してもよいし、無線通信を介してセンサデータを計測装置15に送信してもよい。例えば、送信部115は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、センサデータを計測装置15に送信するように構成される。なお、送信部115の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。なお、送信部115から計測装置15に直接センサデータを送信せず、データベース(図示しない)にセンサデータを蓄積するようにしてもよい。その場合、計測装置15は、データベースに蓄積されたセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行う。
【0036】
〔計測装置〕
次に、計測システム10が備える計測装置15の詳細について図面を参照しながら説明する。
図5は、計測装置15の構成の一例を示すブロック図である。計測装置15は、取得部151、計算部153、推定部155、および出力部157を有する。
【0037】
取得部151は、四肢(上肢/下肢)の計測対象であるユーザの第1計測部位(手首/足首)に装着されたデータ取得装置11から、そのユーザの四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて計測されたセンサデータを取得する。取得部151は、取得されたセンサデータを計算部153に出力する。例えば、取得部151は、ケーブルなどの有線を介して、データ取得装置11からセンサデータを受信する。例えば、取得部151は、無線通信を介して、データ取得装置11からセンサデータを受信する。例えば、取得部151は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、データ取得装置11からセンサデータ受信する。なお、取得部151の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。データベース(図示しない)に蓄積されたセンサデータを用いる場合、計測装置15は、データベースに蓄積されたセンサデータを取得する。
【0038】
計算部153は、取得部151からセンサデータを取得する。計算部153は、取得されたセンサデータを用いて、ユーザの四肢(上肢/下肢)に関する計測動作(第1計測動作/第2計測動作)に応じて計測されるデータ取得装置11の軌跡を計算する。例えば、計算部153は、データ取得装置11を第1装着位置(手首/足首)に装着したユーザの四肢(上肢/下肢)に関する計測動作(第1計測動作/第2計測動作)に応じて計測される空間加速度を二階積分して、空間位置(軌跡)を計算する。例えば、計算部153は、計測動作(第1計測動作/第2計測動作)に応じて計測されるセンサデータに含まれる空間角度を積分して、空間角度を計算する。計算部153は、空間位置(軌跡)や空間角度に関するデータ(軌跡データとも呼ぶ)を推定部155に出力する。
【0039】
ここで、上肢に関する計測動作について図面を参照しながら説明する。
図6および
図7は、上肢に関する計測動作について説明するための概念図である。
図6および
図7は、手首にデータ取得装置11を装着したユーザを、右側方の視座から見た図である。肩関節から肘関節までの長さ(上腕の長さ)をU1とし、肘関節から手関節までの長さ(前腕の長さ)をU2とする。上肢の長さUは、上腕の長さU1と前腕の長さU2の和に相当する。
【0040】
図6は、上肢に関する第1計測動作について説明するための概念図である。
図6(1)は、第1計測動作の準備段階である。
図6(1)において、ユーザは、上肢を真っ直ぐに伸ばした状態で、手を下方(-Z方向)に向けて直立している。
図6(2)は、ユーザが第1計測動作を行っている状態を示す。上肢に関する第1計測動作は、肘関節を真っ直ぐにした状態で、肩関節を中心として上肢を回転させる動作である。
図6の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において上肢を回転させる。計算部153は、
図6(1)の状態から
図6(2)の状態に遷移した際のデータ取得装置11の軌跡を計算する。本実施形態において、上肢に関する第1計測動作は、肩関節を中心とする円弧C
A(第1円弧とも呼ぶ)を描く円運動とみなす。上肢に関する第1計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、上肢に関する第1計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。上肢に関する第1計測動作が単一の面内に限定されない場合は、3次元的なデータ取得装置11の軌跡を計算すればよい。
図6には、
図6(1)の状態から
図6(2)の状態に遷移させる例をあげた。上肢を真っ直ぐに伸ばした状態で肩関節を中心とする回転運動を行うのであれば、上肢に関する第1計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、上肢を何回か往復させてもよい。上肢を何回か往復させる場合、データ取得装置11の軌跡を平均化することで、上肢の長さに関する計測精度が向上する。また、異なる面内において、3次元的に上肢を回転させてもよい。3次元的に上肢を回転させる場合は、データ取得装置11の軌跡を球面としてとらえればよい。
【0041】
図7は、上肢に関する第2計測動作について説明するための概念図である。
図7(1)は、第2計測動作の準備段階である。
図7(1)において、ユーザは、上肢を真っ直ぐに伸ばした状態で、手を下方(-Z方向)に向けて直立している。
図7(2)は、ユーザが第2計測動作を行っている状態を示す。上肢に関する第2計測動作は、上腕を体側につけた状態で、肘関節を中心として前腕を回転させる動作である。
図7の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において前腕を回転させる。計算部153は、
図7(1)の状態から
図7(2)の状態に遷移した際のデータ取得装置11の軌跡を計算する。本実施形態において、上肢に関する第2計測動作は、肘関節を中心とする円弧C
B(第2円弧とも呼ぶ)を描く円運動とみなす。上肢に関する第2計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、上肢に関する第2計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。上肢に関する第2計測動作が単一の面内に限定されない場合は、3次元的なデータ取得装置11の軌跡を計算すればよい。
図7には、
図7(1)の状態から
図7(2)の状態に遷移させる例をあげた。上腕を体側につけた状態で肘関節を中心とする回転運動を行うのであれば、上肢に関する第2計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、前腕を何回か往復させてもよい。前腕を何回か往復させる場合、データ取得装置11の軌跡を平均化することで、前腕の長さに関する計測精度が向上する。
【0042】
次に、下肢に関する計測動作について図面を参照しながら説明する。
図8および
図9は、下肢に関する計測動作について説明するための概念図である。
図8および
図9は、足首にデータ取得装置11を装着したユーザを、右側方の視座から見た図である。以下において、股関節から膝関節までの長さ(上腿の長さ)をL1とし、膝関節から足関節までの長さ(下腿の長さ)をL2とする。下肢の長さLは、上腿の長さL1と下腿の長さL2の和に相当する。
【0043】
図8は、下肢に関する第1計測動作について説明するための概念図である。
図8(1)は、第1計測動作の準備段階である。
図8(1)において、ユーザは、下肢を真っ直ぐに伸ばした状態で直立している。
図8(2)および
図8(3)は、ユーザが第1計測動作を行っている状態を示す。
図8(2)は、右足を前方(+Y方向)に向けて蹴り出した状態である。
図8(3)は、前方(+Y方向)に向けて蹴り出した右足を、後方(-Y方向)に引いた状態である。下肢に関する第1計測動作は、膝関節を真っ直ぐにした状態で、股関節を中心として下肢を回転させる動作である。
図8の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において下肢を回転させる。計算部153は、
図8(1)から
図8(2)、そして
図8(3)の状態に遷移した際のデータ取得装置11の軌跡を計算する。本実施形態において、下肢に関する第1計測動作は、股関節を中心とする円弧C
C(第1円弧とも呼ぶ)を描く円運動とみなす。下肢に関する第1計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、下肢に関する第1計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。下肢に関する第1計測動作が単一の面内に限定されない場合は、3次元的なデータ取得装置11の軌跡を計算すればよい。
図8には、
図8(1)の状態から
図8(2)の状態、そして
図8(3)の状態に遷移させる例をあげた。下肢を真っ直ぐに伸ばした状態で股関節を中心とする回転運動を行うのであれば、下肢に関する第1計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、下肢を往復させてもよい。下肢を何回か往復させる場合、データ取得装置11の軌跡を平均化することで、下肢の長さに関する計測精度が向上する。また、異なる面内において、3次元的に下肢を回転させてもよい。3次元的に下肢を回転させる場合は、データ取得装置11の軌跡を球面としてとらえればよい。
【0044】
図9は、下肢に関する第2計測動作について説明するための概念図である。
図9(1)は、第2計測動作の準備段階である。
図9(1)において、ユーザは、下腿をZ方向に対して略平行にした状態で、椅子に座っている。
図9(2)は、ユーザが第2計測動作を行っている状態を示す。下肢に関する第2計測動作は、椅子に座った状態で、膝関節を中心として下腿を回転させる動作である。
図9の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において下腿を回転させる。計算部153は、
図9(C1)から
図9(C2)の状態に遷移した際のデータ取得装置11の軌跡を計算する。本実施形態において、下肢に関する第2計測動作は、膝関節を中心とする円弧C
D(第2円弧とも呼ぶ)を描く円運動とみなす。下肢に関する第2計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、下肢に関する第2計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。下肢に関する第2計測動作が単一の面内に限定されない場合は、3次元的なデータ取得装置11の軌跡を計算すればよい。
図9には、
図9(1)の状態から
図9(2)の状態に遷移させる例をあげた。膝関節を中心とする回転運動を行うのであれば、下肢に関する第2計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、下腿を往復させてもよい。下腿を何回か往復させる場合、データ取得装置11の軌跡を平均化することで、下腿の長さに関する計測精度が向上する。また、膝関節を中心とする回転運動であれば、椅子に座った状態ではなく、片脚立ちの体勢や、壁に寄り掛かった体勢、寝そべった体勢で、下肢に関する第2計測動作が行われてもよい。
【0045】
推定部155は、四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて計測されたセンサデータに基づく、四肢(上肢/下肢)に関する軌跡(軌跡データとも呼ぶ)を計算部153から取得する。推定部155は、取得した四肢(上肢/下肢)に関する軌跡に基づいて、四肢(上肢/下肢)の長さを推定する。例えば、推定部155は、算出された空間位置(軌跡)と空間角度に基づいて、計測動作中におけるデータ取得装置11の回転半径を計算する。計測動作中におけるデータ取得装置11の回転半径は、四肢(上肢/下肢)に関する長さに相当する。
【0046】
推定部155は、大関節(肩関節/股関節)を回転中心とする第1計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを計算する。また、推定部155は、中関節(肘関節/膝関節)を回転中心とする第2計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを計算する。推定部155は、四肢(上肢/下肢)の長さから、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを引くことによって、四肢の上部(上腕/上腿)の長さを計算する。
【0047】
図10は、空間位置(軌跡)と空間角度に基づいて、計測動作中におけるデータ取得装置11の回転半径を計算する一例について説明するための概念図である。計測動作においては、大関節(肩関節/股関節)および中関節(肘関節/膝関節)を中心とする回転運動が行われる。
【0048】
例えば、推定部155は、データ取得装置11の軌跡(
図10の円弧C)と、計測動作における始点と終点におけるデータ取得装置11の位置間の距離(
図10の弦長L)とを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する長さ(
図10の半径R)を計算する。例えば、推定部155は、下記の式1の関係式に基づいて、四肢(上肢/下肢)に関する長さ(半径R)を計算する。
推定部155は、上記の式1に基づいて、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして半径Rを計算する。
【0049】
例えば、推定部155は、データ取得装置11の軌跡(
図10の円弧C)と、データ取得装置11の円軌道における空間角度(
図10の中心角θ)とを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する長さ(
図10の半径R)を計算する。例えば、推定部155は、下記の式2の関係式を用いて、四肢(上肢/下肢)に関する長さ(半径R)を計算する。
上記の式2を用いれば、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして、半径Rを算出できる。
【0050】
例えば、推定部155は、計測動作に応じたデータ取得装置11の軌跡を複数の区間に分割し、区間ごとに算出される曲率半径を用いて、四肢(上肢/下肢)に関する長さを求めてもよい。
【0051】
図11は、データ取得装置11の軌跡Tを微小ステップdsに分割し、微小ステップdsごとに算出される曲率半径Rを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する長さを推定する一例について説明するための概念図である。
図11(1)は、データ取得装置11の軌跡Tに設定される微小ステップdsの一例である。ここでは、点Mと点Nの間の区間の微小ステップdsが十分に微小な長さであり、微小ステップdsの区間において軌跡Tが円弧Cに近似できるものとする。点Mにおける軌跡Tの接線の傾きをa、点Nにおける軌跡Tの接線の傾きをa+daとする。すなわち、点Mにおける軌跡Tの接線の傾きと、点Nにおける軌跡Tの接線の傾きとの差をdaとする。
図11(2)は、点Mと点Nの間の区間の微小ステップdsに、中心角がdaの円弧Cをフィッティングさせた例である。
図11(2)の円弧Cの曲率半径Rは、四肢(上肢/下肢)に関する長さに相当する。
【0052】
例えば、推定部155は、以下の式3を用いて、曲率半径Rを計算する。
例えば、微小ステップdsおよび中心角daを0に収束させて曲率半径Rを求めれば、四肢(上肢/下肢)に関する長さを高精度で算出できる。
【0053】
図11の例において、推定部155は、複数の区間の曲率半径の分布に基づいて、四肢(上肢/下肢)に関する長さを推定する。例えば、推定部155は、曲率半径を横軸とし、曲率半径の度数を縦軸とする度数分布において、度数が最も大きい曲率半径を、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして推定する。
図12は、曲率半径を横軸とし、曲率半径の度数を縦軸とする度数分布曲線の一例である。例えば、推定部155は、複数の区間の曲率半径の相加平均R
dを、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして推定する。例えば、推定部155は、複数の区間の曲率半径の相乗平均を、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして推定してもよい。例えば、推定部155は、複数の区間の曲率半径の中央値や最頻値などの代表値を、四肢(上肢/下肢)に関する長さとして推定してもよい。
【0054】
出力部157は、推定部155によって推定された四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、出力部157は、表示装置(図示しない)に、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、表示装置に出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、その表示装置の画面に表示される。例えば、出力部157は、外部システムに、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、外部システムに出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、任意の用途に用いられる。
【0055】
(動作)
次に、本実施形態の計測システム10の動作の一例について図面を参照しながら説明する。ここでは、計測システム10の計測装置15の動作の一例について、フローチャートを参照しながら説明する。ここでは、上肢と下肢に関する計測動作を別々に説明する。以下においては、上肢と下肢に関する計測を別々に行う例をあげるが、上肢と下肢に関する計測が同一のフローで行われてもよい。
【0056】
〔上肢に関する計測〕
図13は、上肢に関する計測における、計測装置15の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図13のフローチャートに沿った説明においては、計測装置15を動作主体として説明する。
【0057】
図13において、まず、計測装置15は、上肢の計測動作(第1計測動作/第2計測動作)に応じて計測されたセンサデータを、データ取得装置11から取得する(ステップS111)。
【0058】
次に、計測装置15は、取得されたセンサデータを用いて、空間軌跡/空間角度を計算する(ステップS112)。
【0059】
次に、計測装置15は、第1計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、上肢の長さを計算する(ステップS113)。
【0060】
次に、計測装置15は、第2計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、前腕の長さを計算する(ステップS114)。ステップS113とステップS114の処理の順番は、入れ替えられてもよい。
【0061】
次に、計測装置15は、上肢の長さから前腕の長さを引いて、上腕の長さを計算する(ステップS115)。
【0062】
次に、計測装置15は、算出された上肢、上腕、および前腕の長さの値(上肢に関する計測値ともよぶ)を出力する(ステップS116)。計測装置15から出力された上肢に関する計測値は、用途に応じて使用される。
【0063】
〔下肢に関する計測〕
図14は、下肢に関する計測における、計測装置15の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図14のフローチャートに沿った説明においては、計測装置15を動作主体として説明する。
【0064】
図14において、まず、計測装置15は、下肢の計測動作(第1計測動作/第2計測動作)に応じて計測されたセンサデータを、データ取得装置11から取得する(ステップS121)。
【0065】
次に、計測装置15は、取得されたセンサデータを用いて、空間軌跡/空間角度を計算する(ステップS122)。
【0066】
次に、計測装置15は、第1計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、下肢の長さを計算する(ステップS123)。
【0067】
次に、計測装置15は、第2計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、下腿の長さを計算する(ステップS124)。ステップS123とステップS124の処理の順番は、入れ替えられてもよい。
【0068】
次に、計測装置15は、下肢の長さから下腿の長さを引いて、上腿の長さを計算する(ステップS125)。
【0069】
次に、計測装置15は、算出された下肢、上腿、および下腿の長さの値(下肢に関する計測値ともよぶ)を出力する(ステップS126)。計測装置15から出力された下肢に関する計測値は、用途に応じて使用される。
【0070】
(適用例1)
次に、本実施形態の適用例1について図面を参照しながら説明する。本適用例においては、本実施形態の計測装置の機能を有するアプリケーション(アプリとも呼ぶ)がインストールされた携帯端末の表示部に表示された指示に応じて、ユーザが計測動作を行うものとする。本適用例では、携帯端末を用いる例をあげるが、ユーザが視認できる位置に画面を配置できれば、任意の端末装置を用いることができる。
【0071】
図15は、上肢に関する計測について説明するための概念図である。
図15の例において、ユーザは、手首にデータ取得装置11を装着する。例えば、データ取得装置11を手首に装着する指示を、携帯端末160の画面に表示させてもよい。ユーザは、携帯端末160の画面に表示された指示に応じて、上肢に関する計測動作を行う。
図15の例では、右手の計測動作の一例を示す。左手の計測動作についても、右手と同様に行うことができる。
【0072】
図15(1)は、四肢の計測対象のユーザが、携帯端末160の画面に表示された「上肢に関する第1計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図15(2)は、携帯端末160の画面に表示された指示に応じたユーザが、上肢に関する第1計測動作に備えて静止した状態である。
図15(3)は、ユーザが、第1計測動作として、肩関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
図15(4)は、上肢に関する第1計測動作を終えたユーザが、携帯端末160の画面に表示された「上肢に関する第2計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図15(5)は、携帯端末160の画面に表示された指示に応じたユーザが、上肢に関する第2計測動作に備えて静止した状態である。
図15(6)は、ユーザが、第2計測動作として、肘関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
【0073】
図16は、下肢に関する計測について説明するための概念図である。
図16の例において、ユーザは、足首にデータ取得装置11を装着する。例えば、データ取得装置11を足首に装着する指示を、携帯端末160の画面に表示させてもよい。ユーザは、携帯端末160の画面に表示された指示に応じて、下肢に関する計測動作を行う。
図16の例では、右足の計測動作の一例を示す。左足の計測動作についても、右足と同様に行うことができる。
【0074】
図16(1)は、四肢の計測対象のユーザが、携帯端末160の画面に表示された「下肢に関する第1計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図16(2)は、携帯端末160の画面に表示された指示に応じたユーザが、下肢に関する第1計測動作に備えて静止した状態である。
図16(3)は、ユーザが、第1計測動作として、股関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
図16(4)は、下肢に関する第1計測動作を終えたユーザが、携帯端末160の画面に表示された「下肢に関する第2計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図16(5)は、携帯端末160の画面に表示された指示に応じたユーザが、下肢に関する第2計測動作に備えて椅子に腰かけた状態である。
図16(6)は、ユーザが、第2計測動作として、膝関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
【0075】
図17は、四肢(上肢/下肢)に関する計測を終えたユーザが、携帯端末160の画面に表示された計測結果を視認している状況を示す。ユーザは、携帯端末160の画面に表示された計測結果を視認することによって、自身の上肢/下肢に関する長さを確認できる。
【0076】
以上のように、本実施形態の計測システムは、少なくとも一つのデータ取得装置と、計測装置とを備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測するセンサを含む。データ取得装置は、ユーザの所定の装着部位に装着される。データ取得装置は、ユーザの所定の装着部位(手首/足首)に装着される。データ取得装置は、ユーザによる四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて、センサによって計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成する。データ取得装置は、生成されたセンサデータを計測装置に出力する。計測装置は、取得部、計算部、推定部、および出力部を備える。取得部は、ユーザによる四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて計測されたセンサデータを取得する。計算部は、所定の装着部位にセンサが装着されたユーザによる四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて、センサによって計測されたセンサデータを用いて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さおよび中心角を計算する。推定部は、算出された円弧の長さおよび中心角を用いて算出される円弧の半径を、ユーザの四肢(上肢/下肢)の長さとして推定する。出力部は、推定部によって推定されたユーザの四肢(上肢/下肢)の長さに関する情報を出力する。
【0077】
本実施形態の計測システムは、四肢(上肢/下肢)の回転運動に着目し、ユーザの計測動作の期間におけるセンサの軌跡の円弧や中心角に基づいて、四肢(上肢/下肢)の長さを推定する。本実施形態の手法では、ユーザによる計測動作の始点や終点を厳密に定める必要がなく、センサの軌跡を計算できさえすればよい。すなわち、本実施形態の手法では、ユーザの動作に厳密な制約が課されない。そのため、本実施形態の計測システムによれば、簡易な動作に応じて計測されるセンサデータに基づいて、四肢に関する計測を行うことができる。
【0078】
本実施形態の一態様において、計算部は、計測動作の期間におけるセンサの軌跡を複数の区間に分割する。推定部は、分割された区間ごとの曲率半径を計算する。推定部は、複数の区間に対して算出された曲率半径の分布に基づいて、四肢の長さを推定する。本態様によれば、センサの軌跡がきれいな円弧を描かなくても、分割された区間の各々を円弧とみなし、それら円弧の曲率半径の分布に基づいて、四肢の長さを推定できる。
【0079】
本実施形態の一態様において、計算部は、大関節(肩関節/股関節)を中心とする第1計測動作に応じて、第1計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する第1円弧の長さと中心角を計算する。計算部は、小関節(手関節/足関節)の部分に装着されたセンサによって計測された、第1計測動作の期間におけるセンサデータを用いて、第1円弧の長さと中心角を計算する。推定部は、第1計測動作に応じて算出された第1円弧の長さと中心角を用いて第1円弧の半径を計算する。推定部は、算出された第1円弧の半径を四肢(上肢/下肢)の長さとして推定する。計算部は、中関節(肘関節/膝関節)を中心とする第2計測動作に応じて、第2計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する第2円弧の長さと中心角を計算する。計算部は、小関節(手関節/足関節)の部分に装着されたセンサによって計測された、第2計測動作の期間におけるセンサデータを用いて、第2円弧の長さと中心角を計算する。推定部は、第2計測動作に応じて算出された第2円弧の長さと中心角を用いて第2円弧の半径を計算する。推定部は、算出された第2円弧の半径を四肢の下部(前腕/下腿)の長さとして推定する。推定部は、四肢(上肢/下肢)の長さから四肢の下部(前腕/下腿)の長さを引いて、四肢の上部(上腕/上腿)の長さを計算する。
【0080】
本態様では、大関節(肩関節/股関節)を中心とする第1計測動作の期間と、中関節(肘関節/膝関節)を中心とする第2計測動作の期間におけるセンサデータを用いて、四肢に関する計測を行う。本態様によれば、小関節(手関節/足関節)の部分にセンサを装着し、第1計測動作と第2計測動作を行うことによって、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行うことができる。
【0081】
本実施形態の一態様において、四肢は上肢であり、大関節は肩関節であり、中関節は肘関節であり、小関節は手関節であり、四肢の上部が上腕であり、四肢の下部が前腕である。本態様によれば、上肢に関する計測を行うことができる。
【0082】
本実施形態の一態様において、四肢は下肢であり、大関節は股関節であり、中関節は膝関節であり、小関節は足関節であり、四肢の上部が上腿であり、四肢の下部が下腿である。本態様によれば、下肢に関する計測を行うことができる。
【0083】
本実施形態の一態様において、計測装置は、ユーザによって視認可能な位置にある端末装置の画面に、四肢(上肢/下肢)に関する計測動作を指示する情報を表示させる。計測装置は、端末装置の画面に表示された指示に応じて計測動作を行ったユーザの所定の装着部位に装着されたデータ取得装置によって計測されたセンサデータを用いて、ユーザの四肢(上肢/下肢)に関する長さを推定する。計測装置は、推定されたユーザの四肢に関する長さの情報を、端末装置の画面に表示させる。本態様によれば、端末装置の画面に表示された指示に応じて計測動作を行うことによって、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行うことができる。さらに、本態様によれば、計測された四肢(上肢/下肢)に関する長さを含む情報を、端末装置の画面で確認することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の情報処理システムは、所定の装着部位にセンサが設置されたユーザが、特定の動作(計測動作とも呼ぶ)を行った際に、センサによって計測されるセンサデータを用いて、そのユーザの四肢(上肢/下肢)の長さを計測する。本実施形態において、所定の装着部位とは、小関節(手関節/足関節)の位置に相当する手首や足首の位置と、中関節(肘関節/膝関節)の位置に相当する肘や膝の位置である。本実施形態の計測システムは、小関節(手関節/足関節)と中関節(肘関節/膝関節)の位置にセンサが装着された状態で計測されたセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行う。
【0085】
(構成)
図18は、本実施形態の計測システム20の構成の一例を示すブロック図である。計測システム20は、データ取得装置21A、データ取得装置21B、および計測装置25を備える。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの各々と計測装置25は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの各々と計測装置25は、単一の装置で構成されてもよい。また、計測システム20の構成からデータ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bを除き、計測装置25だけで計測システム20が構成されてもよい。
【0086】
データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、第1の実施形態のデータ取得装置11と同様の構成である。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、ユーザや被検者等の人物の所定の装着部位(手首や足首、肘、膝)に設置される。本実施形態において、データ取得装置21Aは、小関節(手関節/足関節)の位置に相当する手首や足首の位置に装着される。データ取得装置21Bは、中関節(肘関節/膝関節)の位置に相当する肘や膝の位置に装着される。本実施形態においては、手首や足首の部分を第1装着部位と呼び、肘や膝の部分を第2装着部位と呼ぶ。すなわち、データ取得装置21Aは第1装着部位に装着され、データ取得装置21Bは第2装着部位に装着される。
【0087】
データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、加速度およぶ角速度を計測するセンサを含む。データ取得装置21Aに含まれるセンサを第1センサと呼び、データ取得装置21Bに含まれるセンサを第2センサと呼ぶこともある。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、人物の四肢(上肢/下肢)の動きに関する物理量として、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)および3軸周りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bが計測する四肢(上肢/下肢)の動きに関する物理量には、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度も含まれる。また、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bが計測する上肢/下肢の動きに関する物理量には、加速度を二階積分することによって計算される位置(軌跡)も含まれる。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bは、変換後のセンサデータを計測装置25に送信する。
【0088】
本実施形態において、四肢(上肢/下肢)に関する動きは、大関節(肩関節/股関節)を中心とする計測動作(第1計測動作とも呼ぶ)である。第1計測動作は大関節(肩関節/股関節)を中心とする回転運動である。例えば、上肢/下肢の動きに応じてデータ取得装置21Aとデータ取得装置21Bによって取得されたセンサデータは、識別符号を含む。
識別符号は、データ取得装置21Aの装着部位(手首/足首)や、データ取得装置21Bの装着部位(肘/膝)を識別するための符号である。例えば、センサデータは、データ取得装置21Aとデータ取得装置21Bのうちいずれによって計測されたのかを示す識別符号を含む。例えば、センサデータは、左右いずれの第1装着部位(手首/足首)に装着されたデータ取得装置21Aによって取得されたのかを示す識別符号を含む。例えば、センサデータは、左右いずれの第2装着部位(肘/膝)に装着されたデータ取得装置21Bによって取得されたのかを示す識別符号を含む。識別符号を含むセンサデータの形式には、特に限定を加えない。
【0089】
計測装置25は、第1の実施形態と同様に、取得部、計算部、推定部、および出力部を有する(図面は省略)。計測装置25は、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bからセンサデータを取得する。計測装置25は、取得されたセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを計測する。計測装置25は、四肢(上肢/下肢)に関する計測動作に応じて計測されるセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)の長さを推定する。例えば、計測装置25は、計測動作に応じて計測されるセンサデータに含まれる空間加速度を二階積分して、空間位置(軌跡)を計算する。例えば、計測装置25は、計測動作に応じて計測されるセンサデータに含まれる空間角度を積分して、空間角度を計算する。計測装置25は、算出された空間位置(軌跡)と空間角度に基づいて、計測動作中におけるデータ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの回転半径を計算する。計測動作中におけるデータ取得装置21Aの回転半径は、四肢(上肢/下肢)の長さに相当する。計測動作中におけるデータ取得装置21Bの回転半径は、四肢の上部(上腕/上腿)の長さに相当する。計測装置25は四肢(上肢/下肢)の長さから、四肢の上部(上腕/上腿)の長さを引くことによって、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを計算する。
【0090】
図19は、上肢に関する計測動作(第1計測動作)について説明するための概念図である。計測対象のユーザの手首には、データ取得装置21Aが装着される。計測対象のユーザの肘には、データ取得装置21Bが装着される。肩関節から肘関節までの長さ(上腕の長さ)がU1である。肘関節から手関節までの長さ(前腕の長さ)がU2である。上腕の長さU1と前腕の長さU2の和が、上肢の長さUに相当する。
【0091】
図19(1)は、上肢に関する計測動作の準備段階である。
図19(1)において、ユーザは、上肢を真っ直ぐに伸ばした状態で、手を下方(-Z方向)に向けて直立している。
図19(2)は、ユーザが計測動作を行っている状態を示す。上肢に関する計測動作は、肘関節を真っ直ぐにした状態で、肩関節を中心として上肢を回転させる動作である。
図19の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において上肢を回転させる。計測装置25は、
図19(1)の状態から
図19(2)の状態に遷移した際のデータ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を計算する。
【0092】
本実施形態において、上肢に関する計測動作は、データ取得装置21Aの軌跡に基づく肩関節を中心とする円運動と、データ取得装置21Bの軌跡に基づく肩関節を中心とする円運動とを含む。データ取得装置21Aの軌跡に基づく肩関節を中心とする円運動は、円弧C
UA(第1円弧とも呼ぶ)を描く。データ取得装置21Bの軌跡に基づく肩関節を中心とする円運動は、円弧C
UB(第3円弧とも呼ぶ)を描く。上肢に関する計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、上肢に関する第1計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。上肢に関する計測動作が単一の面内に限定されない場合は、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの3次元的な軌跡を計算すればよい。
図19には、
図19(1)の状態から
図19(2)の状態に遷移させる例をあげた。上肢を真っ直ぐに伸ばした状態で肩関節を中心とする回転運動を行うのであれば、上肢に関する計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、上肢を往復させてもよい。上肢を何回か往復させる場合、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を平均化することで、上肢の長さに関する計測精度が向上する。また、異なる面内において、3次元的に上肢を回転させてもよい。3次元的に上肢を回転させる場合は、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を球面としてとらえればよい。
【0093】
計測装置25は、データ取得装置21Aの軌跡(円弧CUA)に基づいて、上肢の長さUを計測する。また、計測装置25は、データ取得装置21Bの軌跡(円弧CUB)に基づいて、上腕の長さU1を計測する。上肢の長さUや上腕の長さU1の計算方法は、第1の実施形態と同様である。計測装置25は、上肢の長さUから上腕の長さU1を引いて、前腕の長さU2を計算する。
【0094】
図20は、下肢に関する計測動作(第1計測動作)について説明するための概念図である。計測対象のユーザの足首には、データ取得装置21Aが装着される。計測対象のユーザの膝には、データ取得装置21Bが装着される。股関節から膝関節までの長さ(上腿の長さ)がL1である。膝関節から足関節までの長さ(下腿の長さ)がL2である。上腿の長さL1と下腿の長さL2の和が、下肢の長さLに相当する。
【0095】
図20(1)は、下肢に関する計測動作の準備段階である。
図20(1)において、ユーザは、下肢を真っ直ぐに伸ばした状態で直立している。
図20(2)および
図20(3)は、ユーザが計測動作を行っている状態を示す。
図20(2)は、右足を前方(+Y方向)に向けて蹴り出した状態である。
図20(3)は、前方(+Y方向)に向けて蹴り出した右足を、後方(-X方向)に引いた状態である。下肢に関する計測動作は、膝関節を真っ直ぐにした状態で、股関節を中心として下肢を回転させる動作である。
図20の例において、ユーザは、YZ平面(矢状面)において下肢を回転させる。計測装置25は、
図20(1)から
図20(2)、そして
図20(3)の状態に遷移した際のデータ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を計算する。
【0096】
本実施形態において、下肢に関する計測動作は、データ取得装置21Aの軌跡に基づく股関節を中心とする円運動と、データ取得装置21Bの軌跡に基づく股関節を中心とする円運動とを含む。データ取得装置21Aの軌跡に基づく股関節を中心とする円運動は、円弧C
LB(第1円弧とも呼ぶ)を描く。データ取得装置21Bの軌跡に基づく股関節を中心とする円運動は、円弧C
LA(第3円弧とも呼ぶ)を描く。下肢に関する計測動作は、YZ平面(矢状面)に限らず、XY平面(水平面)やZX平面(冠状面)において行われてもよい。また、下肢に関する計測動作は、YZ平面(矢状面)、XY平面(水平面)、およびZX平面(冠状面)における動作が混在していてもよい。下肢に関する計測動作が単一の面内に限定されない場合は、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの3次元的な軌跡を計算すればよい。
図20には、
図20(1)の状態から
図20(2)の状態、そして
図20(3)の状態に遷移させる例をあげた。下肢を真っ直ぐに伸ばした状態で股関節を中心とする回転運動を行うのであれば、下肢に関する計測動作の始点や終点の位置には、特に限定を加えない。例えば、同様の軌道に沿って、下肢を往復させてもよい。下肢を何回か往復させる場合、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を平均化することで、下肢の長さに関する計測精度が向上する。また、異なる面内において、3次元的に下肢を回転させてもよい。3次元的に下肢を回転させる場合は、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bの軌跡を球面としてとらえればよい。
【0097】
計測装置25は、データ取得装置21Aの軌跡(円弧CLA)に基づいて、下肢の長さLを計測する。また、計測装置25は、データ取得装置21Bの軌跡(円弧CLB)に基づいて、上腿の長さL1を計測する。下肢の長さLや上腿の長さL1の計算方法は、第1の実施形態と同様である。計測装置25は、下肢の長さLから上腿の長さL1を引いて、下腿の長さL2を計算する。
【0098】
計測装置25は、算出した四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、計測装置25は、表示装置(図示しない)に、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、表示装置に出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、その表示装置の画面に表示される。例えば、計測装置25は、外部システムに、四肢(上肢/下肢)に関する計測値を出力する。例えば、外部システムに出力された四肢(上肢/下肢)に関する計測値は、任意の用途に用いられる。
【0099】
(動作)
次に、本実施形態の計測システム20の動作の一例について図面を参照しながら説明する。ここでは、計測システム20の計測装置25の動作の一例について、フローチャートを参照しながら説明する。ここでは、上肢と下肢に関する計測動作を別々に説明する。以下においては、上肢と下肢に関する計測を別々に行う例をあげるが、上肢と下肢に関する計測が同一のフローで行われてもよい。
【0100】
〔上肢に関する計測〕
図21は、上肢に関する計測における、計測装置25の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図21のフローチャートに沿った説明においては、計測装置25を動作主体として説明する。
【0101】
図21において、まず、計測装置25は、上肢の計測動作(第1計測動作)に応じて計測されたセンサデータを、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bから取得する(ステップS211)。
【0102】
次に、計測装置25は、取得されたセンサデータを用いて、空間軌跡/空間角度を計算する(ステップS212)。
【0103】
次に、計測装置25は、手首に装着されたデータ取得装置21Aによって計測された計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、上肢の長さを計算する(ステップS213)。
【0104】
次に、計測装置25は、肘に装着されたデータ取得装置21Bによって計測された計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、上腕の長さを計算する(ステップS214)。ステップS213とステップS214の処理の順番は、入れ替えられてもよい。
【0105】
次に、計測装置25は、上肢の長さから上腕の長さを引いて、前腕の長さを計算する(ステップS215)。
【0106】
次に、計測装置25は、算出された上肢、上腕、および前腕の長さの値(上肢に関する計測値ともよぶ)を出力する(ステップS216)。計測装置25から出力された上肢に関する計測値は、用途に応じて使用される。
【0107】
〔下肢に関する計測〕
図22は、下肢に関する計測における、計測装置25の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図22のフローチャートに沿った説明においては、計測装置25を動作主体として説明する。
【0108】
図22において、まず、計測装置25は、下肢の計測動作に応じて計測されたセンサデータを、データ取得装置21Aおよびデータ取得装置21Bから取得する(ステップS221)。
【0109】
次に、計測装置25は、取得されたセンサデータを用いて、空間軌跡/空間角度を計算する(ステップS222)。
【0110】
次に、計測装置25は、足首に装着されたデータ取得装置21Aによって計測された計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、下肢の長さを計算する(ステップS223)。
【0111】
次に、計測装置25は、膝に装着されたデータ取得装置21Bによって計測された計測動作に基づく空間軌跡/空間角度を用いて、上腿の長さを計算する(ステップS224)。ステップS223とステップS224の処理の順番は、入れ替えられてもよい。
【0112】
次に、計測装置25は、下肢の長さから上腿の長さを引いて、下腿の長さを計算する(ステップS225)。
【0113】
次に、計測装置25は、算出された下肢、上腿、および下腿の長さの値(下肢に関する計測値ともよぶ)を出力する(ステップS226)。計測装置25から出力された下肢に関する計測値は、用途に応じて使用される。
【0114】
(適用例2)
次に、本実施形態の適用例2について図面を参照しながら説明する。本適用例においては、本実施形態の計測装置の機能を有するアプリケーション(アプリとも呼ぶ)がインストールされた携帯端末の表示部に表示された指示に応じて、ユーザが計測動作を行うものとする。本適用例では、携帯端末を用いる例をあげるが、ユーザが視認できる位置に画面を配置できれば、任意の端末装置を用いることができる。
【0115】
図23は、四肢(上肢/下肢)に関する計測について説明するための概念図である。
図23の例において、ユーザは、手首と足首にデータ取得装置21A(第1センサとも呼ぶ)を装着し、肘と膝にデータ取得装置21B(第2センサとも呼ぶ)を装着する。例えば、データ取得装置21Aを手首と足首に装着する指示と、データ取得装置21Bを肘と膝に装着する指示とを、携帯端末260の画面に表示させてもよい。ユーザは、携帯端末260の画面に表示された指示に応じて、上肢/下肢に関する計測動作を行う。
図23の例では、右手と右足の計測動作の一例を示す。左手と左足の計測動作についても、右手と右足と同様に行うことができる。
【0116】
図23(1)は、四肢の計測対象のユーザが、携帯端末260の画面に表示された「上肢に関する計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図23(2)は、携帯端末260の画面に表示された指示に応じたユーザが、上肢に関する計測動作に備えて静止した状態である。
図23(3)は、ユーザが、上肢に関する計測動作として、肩関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
図23(4)は、上肢に関する計測動作を終えたユーザが、携帯端末260の画面に表示された「下肢に関する計測動作を行ってください」という指示を視認した状況を示す。
図23(5)は、携帯端末260の画面に表示された指示に応じたユーザが、下肢に関する計測動作に備えて静止した状態である。
図23(6)は、ユーザが、下肢に関する計測動作として、股関節を中心とする回転運動を行っている状態である。
【0117】
図24は、四肢(上肢/下肢)に関する計測を終えたユーザが、携帯端末260の画面に表示された計測結果を視認している状況を示す。ユーザは、携帯端末260の画面に表示された計測結果を視認することによって、自身の上肢/下肢に関する長さを確認できる。
【0118】
以上のように、本実施形態において、計算部は、大関節(肩関節/股関節)を中心とする第1計測動作に応じて、第1計測動作の期間における第1センサの軌跡に対応する第1円弧の長さと中心角を計算する。計算部は、小関節(手関節/足関節)の部分に装着された第1センサによって計測された、第1計測動作の期間におけるセンサデータを用いて、第1円弧の長さと中心角を計算する。推定部は、第1計測動作に応じて算出された第1円弧の長さと中心角を用いて、第1円弧の半径を計算する。推定部は、算出された第1円弧の半径を四肢(上肢/下肢)の長さとして推定する。計算部は、第1計測動作に応じて、中関節(肘関節/膝関節)の部分に装着された第2センサによって計測されたセンサデータを用いて、第1計測動作の期間における第2センサの軌跡に対応する第3円弧の長さと中心角を計算する。推定部は、第1計測動作に応じて算出された第3円弧の長さと中心角を用いて、第3円弧の半径を計算する。推定部は、算出された第3円弧の半径を四肢の上部(上腕/上腿)の長さとして推定する。推定部は、四肢(上肢/下肢)の長さから四肢の上部(上腕/上腿)の長さを引いて、四肢の下部(前腕/下腿)の長さを計算する。
【0119】
本態様では、大関節(肩関節/股関節)を中心とする第1計測動作の期間におけるセンサデータを用いて、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行う。本態様によれば、小関節(手関節/足関節)および中関節(肘関節/膝関節)の部分にセンサを装着し、第1計測動作を行うことによって、四肢(上肢/下肢)に関する計測を一度に行うことができる。
【0120】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る計測装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の計測装置は、第1~第2の実施形態の計測装置を簡略化した構成である。図25は、本実施形態の計測装置35の構成の一例を示すブロック図である。計測装置35は、計算部353と推定部355を備える。
【0121】
計算部353は、所定の装着部位にセンサが装着されたユーザによる四肢に関する計測動作に応じて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さと円弧の中心角を計算する。計算部353は、センサによって計測されたセンサデータを用いて、計測動作の期間におけるセンサの軌跡に対応する円弧の長さと円弧の中心角を計算する。推定部355は、計算部353によって算出された円弧の長さおよび中心角を用いて算出される円弧の半径を、ユーザの四肢(上肢/下肢)の長さとして推定する。
【0122】
本実施形態の計測装置は、四肢(上肢/下肢)の回転運動に注目し、ユーザの動作期間において計測されるセンサの軌跡の円弧や中心角に基づいて、四肢(上肢/下肢)の長さを推定する。本実施形態の手法では、ユーザによる動作の始点や終点を厳密に定める必要がなく、センサの軌跡を計算できさえすればよい。すなわち、本実施形態の手法では、ユーザの動作に厳密な制約が課されない。そのため、本実施形態の計測装置によれば、簡易な動作に応じて計測されるセンサデータに基づいて、四肢(上肢/下肢)に関する計測を行うことができる。
【0123】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図26の情報処理装置90(コンピュータ)を一例としてあげて説明する。なお、
図26の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0124】
図26のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図26においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0125】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0126】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0127】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0128】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0129】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0130】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0131】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0132】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図26のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0133】
各実施形態の装置に含まれる構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の装置に含まれる構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0134】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0135】
この出願は、2021年4月28日に出願された日本出願特願2021-075661を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0136】
10、20 計測システム
11、21A、21B データ取得装置
15、25、35 計測装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
113 制御部
115 送信部
151 取得部
153、353 計算部
155、355 推定部
157 出力部