IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7593496フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H03H 5/02 20060101AFI20241126BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20241126BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H03H5/02
H03H7/09 Z
H01Q1/50
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023531899
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2022025295
(87)【国際公開番号】W WO2023276879
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021111022
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 真也
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167171(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092453(WO,A1)
【文献】特開2004-312741(JP,A)
【文献】国際公開第2005/036741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/02
H03H 7/09
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域が第1周波数帯であり、前記第1周波数帯よりも低い減衰帯域が第2周波数帯であるフィルタ装置であって、
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置される第1インダクタと、
前記第1インダクタと並列に接続され、第1キャパシタおよび第2インダクタを含むLC直列共振器とを備え、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに磁気結合し、
前記第1インダクタのインダクタンスは、前記第2インダクタのインダクタンスよりも小さく、
前記第1端子は、入力端子であり、
前記第2端子は、出力端子であり、
一体化された部品として構成される、フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに加極性結合をする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
複数の誘電体層が積層された積層体をさらに備え、
前記フィルタ装置は一つの部品として形成されている、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記積層体の少なくとも一つの層に形成された前記第1インダクタと、前記積層体の少なくとも一つの層に形成された前記第2インダクタは隣接して配置される、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記第1端子と前記第1インダクタの一端が電気的に接続され、
前記第1端子と前記第2インダクタの一端が電気的に接続され、
前記第1端子側から電流が流れたときに、前記第1インダクタで発生する磁界の向きと、前記第2インダクタで発生する磁界の向きは逆向きである、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記積層体を平面視した場合に前記第1インダクタの開口と前記第2インダクタの開口とは少なくとも一部が重なっている、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
複数の誘電体層が積層された積層体をさらに備え、
前記第1インダクタは、前記積層体に配置された第3インダクタおよび第4インダクタを含み、
前記第2インダクタは、前記積層体に配置された第5インダクタおよび第6インダクタを含み、
前記第1キャパシタは、前記積層体に配置された第2キャパシタおよび第3キャパシタを含み、
前記第3インダクタおよび前記第4インダクタは、隣接して配置される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記積層体を平面視した場合の前記第3インダクタの巻き方向と前記第4インダクタの巻き方向とは異なる方向である、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のフィルタ装置を備えるアンテナ装置であって、
高周波信号を供給する第1給電回路と、
前記第1周波数帯の高周波を放射可能である第1アンテナと、
第1伝送線路と、
一端が前記第1伝送線路と接続され、他端が前記フィルタ装置と接続された第2伝送線路と、
一端が前記フィルタ装置と接続され、他端が前記第1アンテナと接続された第3伝送線路とを備える、アンテナ装置。
【請求項10】
前記第1アンテナは、第3周波数帯の高周波を放射可能であり、
前記第3周波数帯は、前記第2周波数帯よりも低い周波数帯域である、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1伝送線路の特性インピーダンスは50Ωであり、
前記第2伝送線路および前記第3伝送線路の特性インピーダンスは50Ω未満である、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1に記載のフィルタ装置を備えるアンテナ装置であって、
高周波信号を供給する第1給電回路と、
前記第1周波数帯の高周波を放射可能である第1アンテナとを備え、
前記フィルタ装置は、前記第1アンテナと前記第1給電回路との間に直列に接続される、アンテナ装置。
【請求項13】
請求項に記載のアンテナ装置を第1アンテナ装置として、備えるアンテナモジュールであって、
高周波信号を供給する第2給電回路と、
前記第2周波数帯の高周波を放射可能である第2アンテナとを備える第2アンテナ装置をさらに備え、
前記第1周波数帯は、前記第2周波数帯から所定の範囲内の帯域である、アンテナモジュール。
【請求項14】
アンテナを搭載可能な基板をさらに備え、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、前記基板に搭載される、請求項13に記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
通過帯域が第1周波数帯であり、前記第1周波数帯よりも低い減衰帯域が第2周波数帯であるフィルタ装置であって、
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置される第1インダクタと、
前記第1インダクタと並列に接続され、第1キャパシタおよび第2インダクタを含むLC直列共振器とを備え、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに磁気結合し、
前記第1インダクタのインダクタンスは、前記第2インダクタのインダクタンスよりも小さく、
前記フィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体をさらに備え、
前記第1インダクタは、前記積層体に配置された第3インダクタおよび第4インダクタを含み、
前記第2インダクタは、前記積層体に配置された第5インダクタおよび第6インダクタを含み、
前記第1キャパシタは、前記積層体に配置された第2キャパシタおよび第3キャパシタを含み、
前記第3インダクタおよび前記第4インダクタは、隣接して配置される、フィルタ装置。
【請求項16】
前記積層体を平面視した場合の前記第3インダクタの巻き方向と前記第4インダクタの巻き方向とは異なる方向である、請求項15に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュールに関し、より特定的には、減衰帯域の急峻性を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/167171号(特許文献1)には、第1インダクタおよび第1キャパシタから構成される直列回路に対して、第2インダクタが並列に接続されているフィルタ装置が開示されている。第1インダクタと第2インダクタとは、磁束を互いに強め合う方向に磁界を介して結合している。
【0003】
特許文献1では、磁界結合により第1インダクタおよび第2インダクタの実効的なインダクタンスが大きくなるため、第1インダクタおよび第2インダクタの各々単体におけるインダクタンスは小さくなる。これにより、特許文献1のフィルタ装置では、並列共振器の抵抗成分を減少させ、Q値を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/167171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、様々な周波数帯域の高周波が使用されるようになったことから、フィルタ装置においては、減衰帯域に近接した帯域を通過帯域とする場合がある。通過帯域が減衰帯域と近接する場合、特許文献1に示されているフィルタ装置において、減衰帯域の急峻性が十分でない場合がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は高周波信号におけるフィルタ装置において、減衰帯域の急峻性を改善し、減衰帯域と近接する帯域の高周波信号を通過させる場合に発生する損失を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の他の局面に従うフィルタ装置は、通過帯域が第1周波数帯であり、第1周波数帯よりも低い減衰帯域が第2周波数帯である。フィルタ装置は、第1端子と、第2端子と、第1インダクタと、LC直列共振器とを備える。第1インダクタは、第1端子と第2端子との間に配置される。LC直列共振器は、第1インダクタと並列に接続され、第1キャパシタおよび第2インダクタを含む。第1インダクタと第2インダクタとは、互いに磁気結合する。第1インダクタのインダクタンスは、第2インダクタのインダクタンスよりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によるフィルタ装置においては、LC並列共振器において、第1インダクタのインダクタンスは、第2インダクタのインダクタンスよりも小さくなるように構成される。このような構成とすることによって、第1インダクタのインダクタンスが第2インダクタのインダクタンスよりも大きくなる構成に比べて、減衰帯域の急峻性を改善することができ、減衰帯域と近接する帯域の高周波信号を通過させる場合に発生する損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
図2】フィルタ装置の等価回路図である。
図3】一般的なLC並列共振器のリアクタンス特性について説明する図である。
図4】LC並列共振器の共振に必要な誘導性リアクタンスを説明するための図である。
図5】実施の形態1におけるフィルタ装置の挿入損失および比較例のフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図6図5に示す領域の縦軸拡大図である。
図7】実施の形態1におけるフィルタ装置の挿入損失および比較例のフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図8】LC並列共振器が並列接続される回路構成を示す図である。
図9図8に示す回路構成を実現するフィルタ装置の分解図である。
図10】実施の形態2におけるアンテナモジュールの構成を示す図である。
図11】実施の形態2におけるアンテナ装置と反射損失と比較例のアンテナ装置の反射損失との一例を示す図である。
図12】アンテナ装置とアンテナ装置との間のアイソレーション特性を示す図である。
図13】アンテナ装置の放射効率を示す図である。
図14】実施の形態2におけるLC並列共振器の合成リアクタンス特性を示す図である。
図15】実施の形態2におけるフィルタ装置の挿入損失を示す図である。
図16】実施の形態2におけるアンテナの挿入損失を示す図である。
図17】実施の形態2の変形例におけるアンテナ装置の挿入損失および比較例のアンテナ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図18】実施の形態2の変形例におけるアンテナ装置の放射効率および比較例のアンテナ装置の放射効率の一例を示す図である。
図19】実施の形態2の変形例におけるアンテナ装置とアンテナ装置との間のアイソレーション特性を示す図である。
図20】逆F型アンテナであるアンテナモジュールの外観図である。
図21】逆F型アンテナである場合のアンテナの放射効率を示す図である。
図22】ループアンテナであるアンテナモジュールの外観図である。
図23】ループアンテナである場合のアンテナの放射効率を示す図である。
図24】パッチアンテナであるアンテナモジュールの外観図である。
図25】パッチアンテナである場合のアンテナの放射効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
<アンテナ装置の基本構成>
図1は、実施の形態1におけるアンテナ装置150の構成を示す図である。アンテナ装置150は、給電回路RF1と、フィルタ装置100と、アンテナ155とを含む。アンテナ装置150は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどの通信装置に搭載される。
【0012】
給電回路RF1は、f1帯の周波数帯域の高周波信号をアンテナ155に供給する。アンテナ155は、給電回路RF1から供給されたf1帯の高周波信号を電波として空気中に放射可能である。f1帯の周波数帯域は、たとえば、Wi-Fi(登録商標)の5GHz帯(5.15-5.7GHz)である。アンテナ155は、たとえば、モノポールアンテナである。
【0013】
フィルタ装置100は、特定の周波数帯の高周波信号の通過を妨げ、減衰させるトラップフィルタである。フィルタ装置100は、バンドエリミネートフィルタとも称される。実施の形態1におけるフィルタ装置100は、f2帯の周波数帯域の高周波信号を減衰させるように構成されている。f2帯の周波数帯域は、5G-NR(New Radio)のn77(3.3-4.2GHz)、n78(3.3-3.8GHz)を含む帯域である。f1帯とf2帯とは近接する周波数帯域である。周波数帯域が近接するか否かは、たとえば、帯域幅とその帯域幅に対する中心周波数を用いて定められる。たとえば、f1帯の周波数端とf2帯の周波数端との帯域幅とその帯域幅に対する中心周波数の比が所定の範囲内にある場合、f1帯とf2帯とが近接していると判断する。なお、その他の手法によって、周波数帯域が近接しているか否かを定めてもよい。フィルタ装置100において、f1帯が通過帯域であってf2帯が減衰帯域である。
【0014】
アンテナ装置150は、伝送線路TL1,TL2,TL3を含む。伝送線路TL1と伝送線路TL2とは、接続点SPにおいて電気的に接続させる。伝送線路TL1(第1伝送線路)は、接続点SPから給電回路RF1または給電回路RF1側に配置されている他の構成までの伝送線路である。すなわち、伝送線路TL1の一端は、給電回路RF1または給電回路RF1側に配置されている他の構成と接続し、伝送線路TL1の他端は、接続点SPにおいて伝送線路TL2(第2伝送線路)と接続する。
【0015】
伝送線路TL2は、接続点SPからフィルタ装置100までの伝送線路である。すなわち、伝送線路TL2の一端は接続点SPにおいて伝送線路TL1と接続し、伝送線路TL2の他端はフィルタ装置100と接続する。伝送線路TL3(第3伝送線路)は、フィルタ装置100からアンテナ155までの伝送線路である。すなわち、伝送線路TL3の一端はフィルタ装置100と接続され、伝送線路TL3の他端はアンテナ155と接続する。図1では、フィルタ装置100がアンテナ155に接続される例について説明したが、フィルタ装置100はパワーアンプ等に接続されてもよい。
【0016】
<フィルタ装置100の等価回路図>
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。端子P1は、フィルタ装置100を伝送線路TL2と接続するための端子である。端子P2は、フィルタ装置100をアンテナ155側の伝送線路TL3と接続するための端子である。
【0017】
給電回路RF1がフィルタ装置100を介して高周波信号をアンテナ155に供給する場合、端子P1は入力端子となり、端子P2は出力端子となる。アンテナ155が受信した高周波信号がフィルタ装置100を介して給電回路RF1側の回路に伝達される場合、端子P1は出力端子となり、端子P2は入力端子となる。フィルタ装置100は、接地電極を有さず、一体化された部品として構成される。
【0018】
フィルタ装置100は、インダクタL1とインダクタL2とキャパシタC1とを備える。LC直列共振器RSは、インダクタL2とキャパシタC1とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器である。LC直列共振器RSは、端子P1と端子P2との間に配置される。
【0019】
インダクタL1は、LC直列共振器RSと並列に接続される。すなわち、インダクタL1も、端子P1と端子P2との間に配置される。LC並列共振器RPは、インダクタL1とLC直列共振器RSとが並列接続されることによって形成されるLC並列共振器である。
【0020】
インダクタL1とインダクタL2とは、磁束を互いに強め合う方向に磁気結合をする。これにより、インダクタL1とインダクタL2とに対して、相互インダクタンスMが発生する。インダクタL1とインダクタL2との磁気結合は、加極性結合である。すなわち、図2における端子P1から端子P2に向かって電流が流れる時に、インダクタL1で発生する磁界の方向とインダクタL2で発生する磁界の方向は逆である。実施の形態1のフィルタ装置100では、インダクタL1のインダクタンスは、インダクタL2のインダクタンスよりも小さい。フィルタ装置100は、図2に示すLC並列共振器RPおよびLC直列共振器RSを用いて、共振する周波数帯域の高周波信号を通過させずに減衰させる。なお、LC直列共振器RSにおいて、インダクタL2の配置とキャパシタC1の配置とは、逆であってもよい。また、フィルタ装置100は、インピーダンスを整合させる回路、スイッチなどの他の構成を含んでもよい。
【0021】
<一般的なLC並列共振器のリアクタンス特性について>
続いて、実施の形態1におけるLC並列共振器RPの急峻性を改善するための方法について、一般的なLC並列共振器の例を用いて説明する。一般的なLC並列共振器とは、図2に示すようなLC直列共振器RSを含むLC並列共振器RPではなく、インダクタおよびキャパシタのみが並列に接続された構成のLC並列共振器を意味する。
【0022】
図3は、一般的なLC並列共振器300M,Nのリアクタンス特性について説明する図である。図3では、2つのLC並列共振器300MおよびLC並列共振器300Nにおけるリアクタンスを示す線LnM1,LnM2,LnN1,LnN2が示されている。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸はLC並列共振器のリアクタンスの値を示す。
【0023】
LC並列共振器300MとLC並列共振器300Nとは、インダクタとキャパシタとが並列に接続された一般的なLC並列共振器の一例であるが、LC並列共振器300MとLC並列共振器300Nの各々が有するインダクタのインダクタンスの値およびキャパシタのキャパシタンスの値が異なるように構成されている。
【0024】
具体的には、LC並列共振器300Nのインダクタのインダクタンスは1nHであり、キャパシタのキャパシタンスは3pFである。LC並列共振器300Mのインダクタのインダクタンスは3nHであり、キャパシタのキャパシタンスは1pFである。線LnN1および線LnN2は、LC並列共振器300Nのリアクタンスを示す。線LnM1および線LnM2は、LC並列共振器300Mのリアクタンスを示す。
【0025】
線LnN1の絶対値が無限大に収束する周波数と線LnN2の絶対値が無限大に収束する周波数との間の周波数帯において、LC並列共振器300Nは共振する。これにより、当該周波数帯は、LC並列共振器300Nにおける減衰帯域d2となる。同様に、線LnM1の絶対値が無限大に収束する周波数と線LnM2の絶対値が無限大に収束する周波数との間の周波数帯において、LC並列共振器300Mは共振する。これにより、当該周波数帯は、LC並列共振器300Mにおける減衰帯域d1となる。LC並列共振器300M,300Nは、減衰帯域d1および減衰帯域d2がf2帯の周波数帯域に含まれるように構成されている。
【0026】
図3に示されるように、LC並列共振器300Mよりも、インダクタのインダクタンスが小さいLC並列共振器300Nの減衰帯域d2は、LC並列共振器300Mの減衰帯域d1よりも狭くなる。すなわち、インダクタとキャパシタとが並列に接続された一般的なLC並列共振器において、並列接続されたインダクタのインダクタンスを小さくすることにより、減衰帯域は狭域化し、急峻性が改善される。
【0027】
図2に示すLC並列共振器RPにおけるインダクタL1は、図3で説明した一般的なLC並列共振器300M,Nにおけるインダクタに対応する。すなわち、図2に示す等価回路の構成を有するフィルタ装置100では、一般的なLC並列共振器のインダクタに対応するインダクタL1のインダクタンスを小さくすることにより、フィルタ装置100の減衰帯域を狭域化することができる。
【0028】
<LC並列共振器RPにおける共振周波数について>
続いて、実施の形態1におけるLC並列共振器RPの急峻性をより改善するため、LC並列共振器RPにおけるインダクタL1のインダクタンスを小さくする方法について説明する。
【0029】
図4は、LC並列共振器RPの共振に必要な誘導性リアクタンスを説明するための図である。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸はリアクタンスの値を示す。フィルタ装置100は、図2に示す等価回路を有するフィルタ装置の一例である。図2に示すように、フィルタ装置100では、インダクタL1とインダクタL2との間で加極性の磁気結合がされる。一方で、比較例のフィルタ装置100Qは、インダクタL1とインダクタL2との間で磁気結合がされないフィルタ装置である。フィルタ装置100Qは、インダクタL1とインダクタL2との間で磁気結合がされない点を除いて、フィルタ装置100と同一の構成を有する。
【0030】
線LnPは、フィルタ装置100におけるLC直列共振器RSの容量性リアクタンスを示す。線LnQは、フィルタ装置100QにおけるLC直列共振器RSの容量性リアクタンスを示す。図4のf2帯に示されているように、フィルタ装置100におけるLC直列共振器RSの容量性リアクタンスrc3は、フィルタ装置100QにおけるLC直列共振器RSの容量性リアクタンスrc4よりも高くなる。これは、インダクタL1とインダクタL2との磁気結合によって、結合係数kに応じた相互インダクタンスMが生じるためである。
【0031】
また、図4の線LnP,LnQに示されるように、f1帯において、フィルタ装置100およびフィルタ装置100QにおけるLC直列共振器RSの容量性リアクタンスの値は共に0となる。すなわち、f1帯に属する周波数の高周波信号は、フィルタ装置100およびフィルタ装置100QにおけるLC直列共振器RSを通過する。これにより、フィルタ装置100およびフィルタ装置100Qは、通過帯域であるf1帯の高周波信号を通過させることができる。
【0032】
破線LnQpは、フィルタ装置100QにおけるインダクタL1の誘導性リアクタンスを示す。フィルタ装置100Qにおいて、LC並列共振器RPをf2帯で共振させるために、インダクタL1の誘導性リアクタンスの値は、図4に示す誘導性リアクタンスrc1となる必要がある。すなわち、誘導性リアクタンスrc1の絶対値は、容量性リアクタンスrc4の絶対値と同一の値となる。
【0033】
破線LnPpは、フィルタ装置100のインダクタL1の誘導性リアクタンスを示す。フィルタ装置100において、LC並列共振器RPをf2帯で共振させるために、インダクタL1の誘導性リアクタンスの値は、図4に示す誘導性リアクタンスrc2となる必要がある。すなわち、誘導性リアクタンスrc2の絶対値は、容量性リアクタンスrc3の絶対値と同一の値となる。このように、フィルタ装置100においてLC並列共振器RPを共振させるために必要となる誘導性リアクタンスrc2は、誘導性リアクタンスrc1よりも小さくなる。これは、相互インダクタンスMが生じた結果、容量性リアクタンスrc3が容量性リアクタンスrc4よりも高くなっているためである。
【0034】
さらに、フィルタ装置100では、誘導性リアクタンスrc2自身についても、インダクタL1のインダクタンスに相互インダクタンスMが加わるため、インダクタL1の値は低下する。このように、フィルタ装置100では、インダクタL1とインダクタL2とが加極性の磁気結合をすることによって、フィルタ装置100Qと比較して、インダクタL1のインダクタンスを小さくすることができる。これにより、図2で説明したように、減衰帯域を狭帯域化することが可能となり、フィルタ装置100の減衰帯域の急峻性を改善することができる。なお、フィルタ装置100では、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも小さければ、加極性結合ではなく減極性の磁気結合がされてもよい。
【0035】
<シミュレーション結果>
図5は、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失および比較例のフィルタ装置100Z1,100Z2の挿入損失の一例を示す図である。図5では、実施の形態1に係るフィルタ装置100および比較例のフィルタ装置100Z1,100Z2の挿入損失を示す線Ln1~Ln3が示されている。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸は高周波信号の挿入損失を示す。ここで、挿入損失とはフィルタ装置100に入力される電力に対し、出力される電力の比である。挿入損失が大きければ、高周波信号はフィルタ装置を通過しにくく、挿入損失が小さければ高周波信号はフィルタ装置を通過し易い。
【0036】
線Ln1は、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失の波形を示す。線Ln2は、比較例におけるフィルタ装置100Z1の挿入損失の波形を示す。線Ln3は、比較例におけるフィルタ装置100Z2の挿入損失の波形を示す。
【0037】
以下、図5におけるフィルタ装置100,フィルタ装置100Z1,フィルタ装置100Z2の違いについて説明する。フィルタ装置100,フィルタ装置100Z1,フィルタ装置100Z2の各々は、図2に示すLC並列共振器RPと同様の構成を有するフィルタ装置の一例であるが、以下に示す点において異なる。
【0038】
実施の形態1のフィルタ装置100において、インダクタL1のインダクタンスは0.775nHであり、インダクタL2のインダクタンスは0.997nHであり、キャパシタC1のキャパシタンスは0.885pFであり、インダクタL1とインダクタL2とは加極性の磁気結合をする。
【0039】
比較例のフィルタ装置100Z1において、インダクタL1のインダクタンスは1.195nHであり、インダクタL2のインダクタンスは1.417nHであり、キャパシタC1のキャパシタンスは0.885pFであり、インダクタL1とインダクタL2とは減極性の磁気結合をする。
【0040】
比較例のフィルタ装置100Z2において、インダクタL1のインダクタンスは0.997nHであり、インダクタL2のインダクタンスは0.775nHであり、キャパシタC1のキャパシタンスは0.885pFであり、インダクタL1とインダクタL2とは加極性の磁気結合をする。
【0041】
すなわち、比較例のフィルタ装置100Z1は、インダクタL1とインダクタL2との磁気結合が減極性結合である点において実施の形態1のフィルタ装置100と異なる。また、比較例のフィルタ装置100Z2は、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも大きい点において実施の形態1のフィルタ装置100と異なる。
【0042】
なお、実施の形態1のフィルタ装置100において、インダクタL1,L2のインダクタンスおよびキャパシタC1のキャパシタンスは、上述の値に限られるものではない。また、各フィルタ装置のインダクタL1,L2のインダクタンスの値およびキャパシタC1のキャパシタンスの値は、浮遊容量、浮遊インダクタンスを含む。
【0043】
各線Ln1~Ln3の減衰する周波数は、周波数F2である。すなわち、周波数F2は、LC並列共振器RPの共振周波数である。また、周波数F2は、減衰帯域であるf2帯に属する周波数である。そのため、図5に示されるように、フィルタ装置100,100Z1,100Z2のうちのいずれのフィルタ装置においても、f2帯の周波数F2は最も挿入損失が大きくなる。一方で、周波数F1は、通過帯域であるf1帯に属する周波数である。以下では、図6を用いて、フィルタ装置100,100Z1,100Z2におけるf1帯に属する周波数の挿入損失について説明する。なお、以下では、周波数F2は、f2帯に属する任意の周波数として扱い、周波数F1は、f1帯に属する任意の周波数として扱う。すなわち、周波数F2は、f2帯に属する周波数であればよく、周波数F1は、f1帯に属する周波数であればよい。
【0044】
図6は、図5に示す領域Rg1の縦軸拡大図である。図6では、図5に示す領域Rg1の縦軸(挿入損失)方向が拡大された波形が示されている。各線Ln1~Ln3の違いをわかりやすくするため、図6における横軸(周波数)方向の比率は、図5と同様であり、縦軸(挿入損失)方向の比率のみ拡大されている。
【0045】
図6に示されるように、周波数F1の高周波信号が通過する場合の挿入損失は、線LN1では0.418dBであり、線LN2では0.468dBであり、線LN3では0.773dBである。実施の形態1におけるフィルタ装置100、比較例におけるフィルタ装置100Z1,100Z2のうち、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失が最も小さい。すなわち、実施の形態1におけるフィルタ装置100は、フィルタ装置100Z1,Z2と同様にf2帯を減衰帯域とする一方で、フィルタ装置100Z1,Z2よりも通過帯域であるf1帯に属する周波数F1の高周波信号を最も通過させやすい。
【0046】
このように、実施の形態1のフィルタ装置100では、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも小さいことにより、減衰帯域の急峻性が改善し、減衰帯域であるf2帯に近接する通過帯域のf1帯の挿入損失を比較例よりも小さくすることができる。すなわち、実施の形態1のフィルタ装置100では、f1帯の高周波信号を通過させる場合に発生する損失を抑制することができる。
【0047】
さらに、実施の形態1のフィルタ装置100では、インダクタL1とインダクタL2とが加極性結合をすることにより、インダクタL1のインダクタンスをより小さくすることができるため、減衰帯域の急峻性をさらに改善することが可能となる。
【0048】
<伝送線路の特性インピーダンスについて>
続いて、伝送線路の特性インピーダンスを調整することによって、フィルタ装置100の挿入損失を調整する例について説明する。図7は、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失および比較例のフィルタ装置100Z3の挿入損失の一例を示す図である。
【0049】
図1に示されるように、伝送線路TL1の特性インピーダンスは50Ωである。また、伝送線路TL2および伝送線路TL3の特性インピーダンスは5Ωである。図7では、実施の形態1に係るフィルタ装置100および比較例のフィルタ装置の挿入損失を示す線Ln4,Ln5が示されている。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸は高周波信号の挿入損失を示す。図7においては、フィルタ装置100およびフィルタ装置100Z3のLC並列共振器RPは、共振周波数F2が4.35GHzとなるように調整されている。
【0050】
線Ln4は、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失の波形を示す。線Ln5は、比較例におけるフィルタ装置100Z3の挿入損失の波形を示す。フィルタ装置100,フィルタ装置100Z3は、同一の構成を有するフィルタ装置であるが、フィルタ装置100Z3は50Ωの伝送線路TL2と50Ωの伝送線路TL3とに接続されている。一方で、図1に示されるように、フィルタ装置100は5Ωの伝送線路TL2と5Ωの伝送線路TL3との間に接続されている。
【0051】
このように、実施の形態1のフィルタ装置100では、特性インピーダンスが50Ωよりも低い伝送線路TL1,TL2に接続されることにより、伝送線路の特性インピーダンスとフィルタ装置100の特性インピーダンスとの比率を大きくして、挿入損失を増大させることが可能となる。これにより、図7に示されているように挿入損失が増大し、周波数F2を含む減衰帯域が改善される。なお、伝送線路TL2および伝送線路TL3の特性インピーダンスは50Ω未満の値であれば他の値であってもよい。
【0052】
<回路構成の一例>
続いて、実施の形態1におけるフィルタ装置100を一体化した素子として形成する例について、図8および図9を用いて説明する。図8は、LC並列共振器RPが並列接続される回路構成を示す図である。図9は、一体化した素子として形成されるフィルタ装置100の分解図である。
【0053】
図8では、図2に示すLC並列共振器RPが並列に接続されることにより、図2に示す等価回路を実現する回路構成のフィルタ装置100が示されている。図8におけるインダクタL1aおよびインダクタL1bは、図2におけるインダクタL1として機能する。また、図8におけるインダクタL2aおよびインダクタL2bは、図2におけるインダクタL2として機能する。また、図8におけるキャパシタC1aおよびキャパシタC1bは、図2におけるキャパシタC1として機能する。インダクタL2aとインダクタL1aとは、加極性の磁気結合をする。また、インダクタL2bとインダクタL1bとは、加極性の磁気結合をする。
【0054】
すなわち、図2に示す等価回路が図8に示す回路構成により実現される場合、図2に示すインダクタL1は、積層体に配置されたインダクタL1a(第3インダクタ)およびインダクタL1b(第4インダクタ)を含む。また、図2に示すインダクタL2は、積層体に配置されたインダクタL2a(第5インダクタ)およびインダクタL2b(第6インダクタ)を含む。さらに、図2に示すキャパシタC1は、積層体に配置されたキャパシタC1aおよびキャパシタC1bを含む。このように、図2に示すLC並列共振器RPが並列接続されることにより、インダクタL1のインダクタンスをより小さくすることができる。以下では、図9を用いて、インダクタL1のインダクタンスをより小さくすることを説明する。
【0055】
図9に示すように、フィルタ装置100は10枚の誘電体層Ly1~Ly10が重ねられて構成される。すなわち、フィルタ装置100は、誘電体層Ly1~Ly10が積層された積層体を備える。図9では、各誘電体層Ly1~Ly10の各々を平面視した状態が示されている。各誘電体層において、斜線で示される領域は高周波信号を伝達する電極を意味し、円形状は各誘電体層間を接続するビアの端部を意味する。
【0056】
誘電体層Ly3,Ly5,Ly6,Ly8には、端子in1,in2,in3,in4がそれぞれ設けられている。端子in1,in2,in3,in4の各々は、図8における端子P1に接続される。誘電体層Ly2,Ly4,Ly7,Ly9には、端子out1,out2,out3,out4がそれぞれ設けられている。端子out1,out2,out3,out4の各々は、図8における端子P2に接続される。
【0057】
図9に示されるように、誘電体層Ly1と誘電体層Ly2と誘電体層Ly3とが含む巻線形状の電極はインダクタL2aを形成する。誘電体層Ly1と誘電体層Ly2と誘電体層Ly3と誘電体層Ly4とが含む平板形状の電極は、キャパシタC1aを形成する。誘電体層Ly4と誘電体層Ly5とが含む巻線形状の電極は、インダクタL1aを形成する。
【0058】
誘電体層Ly6と誘電体層Ly7とが含む巻線形状の電極は、インダクタL1bを形成する。誘電体層Ly8と誘電体層Ly9と誘電体層Ly10とが含む巻線形状の電極は、インダクタL2bを形成する。誘電体層Ly7と誘電体層Ly8と誘電体層Ly9と誘電体層Ly10とが含む平板形状の電極は、キャパシタC1bを形成する。これにより、図9に示すフィルタ装置100が備える積層体は、図8に示す回路構成を実現する。
【0059】
図3で説明したように、インダクタL1のインダクタンスを小さくすることにより、減衰帯域の急峻性は改善される。また、図4で説明したように、インダクタL1とインダクタL2とが加極性の磁気結合をする。これにより、相互インダクタンスMを発生し、インダクタL1のインダクタンスはより小さくなる。
【0060】
図9に示されるインダクタL1aおよびインダクタL2aの開口面(断面積)を大きくすれば、インダクタL1aおよびインダクタL2a間の加極性の磁気結合による相互インダクタンスMは増大する。しかしながら、インダクタL1aの断面積を大きくすれば、インダクタL1a自身のインダクタンスも増大してしまう。そのため、図9に示されるように、インダクタL1aおよびインダクタL1bは、並列して配置される。具体的には、インダクタL1aは誘電体層Ly4,Ly5の電極によって形成され、インダクタL1bは誘電体層Ly4,Ly5と隣接した誘電体層Ly6,Ly7の電極によって形成される。これにより、図9に示すフィルタ装置100では、インダクタL1aとインダクタL1bとで合成したインダクタンスを増大させることなく、インダクタL1aとインダクタL2aとの間の加極性の磁気結合による相互インダクタンスMを増大させることができる。
【0061】
続いて、インダクタL1aとインダクタL1bとの磁気結合に着目する。インダクタL1aとインダクタL1bとが磁気結合することにより、インダクタL1aおよびインダクタL1bのインダクタンスが増大し得る。
【0062】
図9のフィルタ装置100は、インダクタL1aの巻き方向とインダクタL1bの巻き方向は異なる方向であるように構成されている。具体的には、矢印Ar1として示されるように、誘電体層Ly5の巻線状の電極は端子in2から反時計回りに旋回する。その後、誘電体層Ly5の巻線状の電極はビアを介して誘電体層Ly4の巻線状の電極と接続する。誘電体層Ly4の巻線状の電極は、矢印Ar2として示されるように、ビアの端部からさらに反時計回りに旋回する。すなわち、矢印Ar1および矢印Ar2として示されているように、積層体を平面した場合のインダクタL1aの巻き方向は、反時計回り(左回り)となる。
【0063】
一方で、矢印Ar3として示されるように、誘電体層Ly6の巻線状の電極は端子in3から時計回りに旋回する。その後、誘電体層Ly6の巻線状の電極はビアを介して誘電体層Ly7の巻線状の電極と接続する。誘電体層Ly7の巻線状の電極は、矢印Ar4として示されるように、ビアの端部からさらに時計回りに旋回する。すなわち、矢印Ar3および矢印Ar4として示されているように、積層体を平面した場合のインダクタL1bの巻き方向は、時計回り(右回り)となる。
【0064】
このように、図9に示されるフィルタ装置100では、インダクタL1aとインダクタL1bとの巻き方向が逆回りであり、平面視した場合のインダクタL1aとインダクタL1bとの重なりを減少させる。これにより、図9に示されるフィルタ装置100では、インダクタL1aとインダクタL1bとの間で磁気結合を低下し、インダクタL1aおよびインダクタL1bのインダクタンスが増大することを防止しつつ、インダクタL1aとインダクタL1bとを隣接した誘電体層に配置することが可能となる。
【0065】
さらに、平面視した場合に誘電体層Ly3におけるインダクタL2aを形成する巻線が誘電体層Ly4におけるインダクタL1aを形成する巻線と重なる面積は、誘電体層Ly5におけるインダクタL1aを形成する巻線が誘電体層Ly3におけるインダクタL2aを形成する巻線と重なる面積よりも大きい。これにより、インダクタL2aおよびインダクタL1aの間の磁気結合の結合係数を増大させることができ、よりインダクタL1aのインダクタンスを小さくすることができる。同様に、インダクタL2bとインダクタL1bとの間の磁気結合の結合係数を増大させることができ、インダクタL1bのインダクタンスをより小さくすることができる。
【0066】
また、図9に示すように、誘電体層Ly1~Ly10において、インダクタL1a,L1b,L2a,L2bは、誘電体層Ly1~Ly10を平面視した場合にキャパシタC1a,C1bと重ならないように配置されている。これにより、インダクタL1aとインダクタL2aとの磁気結合により発生する磁束、およびインダクタL1bとインダクタL2bとの磁気結合により発生する磁束を遮ることなく、結合係数を高めることができ、L1aおよびL1bのインダクタンスが増大することを防止できる。
【0067】
なお、実施の形態1のフィルタ装置100は、図9における積層体の誘電体層Ly1~Ly5またはLy6~Ly10のいずれかを有する構成であってもよい。
【0068】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、アンテナ155を有するアンテナ装置150について説明した。実施の形態2においては、実施の形態1におけるアンテナ装置150に加えて、アンテナ装置160を備えるアンテナモジュール200について説明する。なお、実施の形態2のアンテナモジュール200において、実施の形態1のアンテナ装置150と重複する構成については、説明を繰り返さない。
【0069】
<アンテナモジュールの基本構成>
図10は、実施の形態2におけるアンテナモジュール200の構成を示す図である。アンテナモジュール200は、アンテナ装置150およびアンテナ装置160を含む。アンテナ装置160は、給電回路RF2とアンテナ165とを含む。アンテナモジュール200は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどの通信装置に搭載される。
【0070】
給電回路RF1は、f1帯およびf3帯の周波数帯域の高周波信号をアンテナ155に供給する。アンテナ155は、給電回路RF1から供給されたf1帯およびf3帯の高周波信号を電波として空気中に放射可能である。f1帯の周波数帯域は、たとえば、Wi-Fiの5GHz帯(5.15-5.7GHz)である。f3帯の周波数帯域は、たとえば、Wi-Fiの2GHz帯(2.4-2.48GHz)である。
【0071】
実施の形態2におけるフィルタ装置100は、f2帯の周波数帯域の高周波信号を減衰させるように構成されている。f2帯の周波数帯域は、たとえば、5G-NRのn77(3.3-4.2GHz)などの帯域である。f2帯は、n77(3.3-4.2GHz)のみに限られず、n77に加えてn78(3.3-3.8GHz)、n79(4.4-4.9GHz)を含む帯域であってもよい。
【0072】
実施の形態2におけるフィルタ装置100において、f1帯およびf3帯が通過帯域であってf2帯が減衰帯域である。f2帯は、f1帯とf3帯との間の周波数帯域である。f2帯の周波数帯域は、f1帯の周波数帯域よりも低い。また、f3帯の周波数帯域は、f2帯の周波数帯域よりも低い。
【0073】
すなわち、f1帯、f2帯、およびf3帯のうち、f1帯が最も高い周波数帯域であり、f3帯が最も低い周波数帯域である。なお、f1帯,f2帯,f3帯の関係性がf1帯,f2帯,f3帯の順番で低くなる関係性であれば、f1帯、f2帯、およびf3帯の各々は他の周波数帯域であってもよい。実施の形態2におけるフィルタ装置100のLC並列共振器RPの共振周波数F2は、実施の形態2におけるf2帯の中央値付近である3.8GHzとなるように調整されている。
【0074】
給電回路RF2は、f2帯の周波数帯域の高周波信号をアンテナ165に供給する。アンテナ165は、給電回路RF2から供給されたf2帯の高周波信号を電波として、空気中に放射可能である。
【0075】
アンテナ装置150において、同一のアンテナモジュール200内に設けられているアンテナ装置160から放射されるf2帯の高周波信号は、ノイズとなり得る。そのため、フィルタ装置100は、アンテナ装置150においてノイズとなり得るf2帯の高周波信号を、並列共振による挿入損失を増大させることで取り除くために設けられている。
【0076】
アンテナ155およびアンテナ165は、同一の基板170に搭載されている。なお、図10では、アンテナ155およびアンテナ165は、同一の基板170に設けられているが、同一のアンテナモジュール200内に設けられれば、異なる基板に設けられてもよい。また、実施の形態2において、給電回路RF1は、f3帯の高周波信号を供給せず、f1帯の高周波信号のみを供給してもよい。
【0077】
図11は、実施の形態2におけるアンテナ装置150と反射損失と比較例のアンテナ装置150Zの反射損失との一例を示す図である。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸は高周波信号の反射損失を示す。ここで、反射損失とは、アンテナ装置150の給電回路RF1から供給された電力に対する反射された電力の比を示す。すなわち、アンテナから電力が放射されると反射損失も大きくなる。
【0078】
線Ln6は、実施の形態2におけるアンテナ装置150の反射損失の波形を示す。線Ln7は、比較例におけるアンテナ装置150Zの反射損失の波形を示す。アンテナ装置150Zは、図10に示すアンテナ装置150からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。すなわち、実施の形態2のアンテナ装置150と比較例のアンテナ装置150Zは、フィルタ装置100を備えるか否かという点で異なる。
【0079】
図11に示されているように、通過帯域のf1帯に含まれる周波数F1において、フィルタ装置100を備える実施の形態2のアンテナ装置150の反射損失は、比較例のアンテナ装置150Zと比較して大きくなる。すなわち、フィルタ装置100を備えることにより、アンテナ装置150のアンテナ特性は、比較例のアンテナ装置150Zよりも向上している。また、線Ln7および線Ln6は、共に周波数F1で減衰する。すなわち、アンテナ装置150とアンテナ装置150Zとの間において、フィルタ装置100が有する直列共振によりインピーダンスの周波数にズレが発生せず、整合を保つことができる。換言すれば、フィルタ装置100を備えるか否かによってインピーダンスの整合は劣化しない。したがって、実施の形態2のアンテナモジュール200では、インピーダンスの劣化を改めて整合することなくフィルタ装置100をアンテナ装置150に搭載することができる。
【0080】
図12は、アンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーション特性を示す図である。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸は高周波信号のアイソレーションを示す。すなわち、アイソレーションとはアンテナ装置150の給電回路RF1から入力された電力に対する、アンテナを介してアンテナ装置160の給電回路RF2が受信した電力の比である。
【0081】
線Ln8は、実施の形態2におけるアンテナモジュール200のアンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーションを示す。線Ln9は、比較例におけるアンテナモジュール200Zのアンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーションを示す。
【0082】
アンテナモジュール200Zは、図10のアンテナモジュール200からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。すなわち、実施の形態2のアンテナモジュール200と比較例のアンテナモジュール200Zは、フィルタ装置100を備えるか否かという点で異なる。
【0083】
図12に示されているように、f2帯の周波数F2において、実施の形態2のアンテナモジュール200では、比較例のアンテナモジュール200Zよりもアイソレーションが15dB以上大きくなっている。すなわち、実施の形態2では、フィルタ装置100がf2帯の周波数を減衰させることによって、アンテナ装置150およびアンテナ装置160のアイソレーションが比較例よりも改善されている。
【0084】
図13は、アンテナ装置160の放射効率を示す図である。横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸はアンテナ装置160の放射効率を示す。線Ln10は、実施の形態2におけるアンテナモジュール200のアンテナ装置160の放射効率を示す。線Ln11は、比較例におけるアンテナモジュール200Zのアンテナ装置160の放射効率を示す。ここで、放射効率とは、給電回路から供給される電力に対し、アンテナから放射される電力の比を意味する。すなわち、図13ではグラフ上部ほど、同じ供給電力に対し、アンテナから放射される電力が大きくなる。
【0085】
図13に示されているように、f2帯に含まれる周波数F2において、実施の形態2のアンテナモジュール200は、比較例のアンテナモジュール200Zよりも放射効率が約4.5dBだけ改善されている。すなわち、実施の形態2にでは、アンテナ装置150においてフィルタ装置100が備えられることにより、アンテナ装置160の放射効率を比較例よりも改善することができる。
【0086】
<フィルタ装置100Z2との比較>
図14図16では、アンテナモジュール200において、実施の形態2におけるフィルタ装置100を適用した場合と上述で説明した比較例のフィルタ装置100Z2を適用した場合との比較について説明する。
【0087】
比較例のフィルタ装置100Z2は、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも大きい点において、実施の形態2のフィルタ装置100と異なる。
【0088】
図14は、実施の形態2におけるLC並列共振器RPの合成リアクタンス特性を示す図である。図14では、横軸は高周波信号の周波数を示し、縦軸はLC並列共振器RPの合成リアクタンスの値を示す。
【0089】
線Ln15は、実施の形態2におけるフィルタ装置100のLC並列共振器RPの合成リアクタンスの値を示す。線Ln1は、比較例のフィルタ装置100Z2を適用した場合のフィルタ装置100Z2におけるLC並列共振器RPの合成リアクタンスの値を示す。
【0090】
図14に示されるように、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも小さいフィルタ装置100では、通過帯域であるf1帯の周波数F1およびf3帯の周波数F3における合成リアクタンスの値が比較例よりも小さくなる。これにより、通過帯域に含まれる周波数F1,F3の高周波信号は、フィルタ装置100Z2よりもフィルタ装置100の方が通り易くなる。以下では、周波数F3は、f3帯に属する任意の周波数として扱う。すなわち、周波数F3は、f3帯に属する周波数であればよい。
【0091】
図15は、実施の形態2におけるフィルタ装置100の挿入損失を示す図である。線Ln13は、実施の形態2におけるアンテナモジュール200のフィルタ装置100の挿入損失を示す。線Ln14は、比較例におけるフィルタ装置100Z2を実施の形態2に適用した場合のフィルタ装置100Z2の挿入損失を示す。
【0092】
図14で説明したように、通過帯域であるf1帯の周波数F1およびf3帯の周波数F3において合成リアクタンスが小さくなるため、図15に示されるように、周波数F1および周波数F3における実施の形態2におけるフィルタ装置100の挿入損失は、比較例のフィルタ装置100Z2の挿入損失よりも小さくなる。
【0093】
すなわち、実施の形態2におけるフィルタ装置100は、インダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも小さいことによって、比較例よりも減衰帯域に近接する通過帯域の周波数F1,F3の高周波信号を通過させ易くなる。
【0094】
実施の形態2におけるフィルタ装置100では、LC並列共振器RPの共振周波数をf2帯に含まれる周波数F2とすることにより、f2帯を減衰帯域とする。このとき、f2帯よりも低い周波数F3の高周波信号は、LC直列共振器RSの経路よりもインダクタL1が配置される経路を通過する。すなわち、f3帯の高周波信号が通過する場合、インダクタL1が配置される経路が支配的となる。
【0095】
実施の形態2においては、減衰帯域を狭帯域化するためにインダクタL1のインダクタンスがインダクタL2のインダクタンスよりも小さくなるように構成されている。これにより、周波数F3がインダクタL1を通過する際のインピーダンスが小さくなる。このように、実施の形態2におけるアンテナモジュール200では、周波数F2を給電回路RF2から効率的に放射し、フィルタ装置100Z2と比較して、減衰帯域を狭帯域化することにより、周波数F1,F3を給電回路RF1から効率的に放射することが可能となる。
【0096】
図16は、実施の形態2におけるアンテナ155の挿入損失を示す図である。線Ln17は、実施の形態2におけるアンテナモジュール200のアンテナ155の挿入損失を示す。線Ln18は、比較例におけるアンテナ155Zの挿入損失を示す。線Ln19は、比較例におけるアンテナ155Z1の挿入損失を示す。
【0097】
アンテナ155Zは、図10に示すアンテナ装置150からフィルタ装置100を取り除いた場合のアンテナである。アンテナ155Z1は、図10に示すアンテナ155がフィルタ装置100に代えてフィルタ装置100Z2を有する構成を有する。
【0098】
図16に示されているように、周波数F3近傍において、線Ln17の挿入損失が大きい周波数は、線Ln19の挿入損失が大きい周波数よりも線Ln18の挿入損失が大きい周波数に近づく。すなわち、フィルタ装置100Z2を搭載する場合と比較して、実施の形態2におけるフィルタ装置100を搭載する場合の方がインピーダンス整合は劣化しない。したがって、実施の形態2のフィルタ装置100は、比較例のフィルタ装置100Z2よりも、アンテナモジュール200に適用する際のインピーダンス整合にかかる負担が少なくなる。
【0099】
<実施の形態2の変形例>
実施の形態2では、フィルタ装置100のLC並列共振器RPの共振周波数F2がf2帯域内である3.8GHzとなるように設計されている構成について説明した。実施の形態2の変形例では、LC並列共振器RPの共振周波数F2がf2帯の周波数帯域の下限値付近として設計されたフィルタ装置100Bについて説明する。実施の形態2の変形例において、f2帯の周波数帯域は、5G-NRのn78(3.3-3.8GHz)帯域である。すなわち、フィルタ装置100BのLC並列共振器RPの共振周波数F2は、3.3GHzである。図17図19では、フィルタ装置100Bに対する比較例としてフィルタ装置100Aを用いて説明する。比較例であるフィルタ装置100AのLC並列共振器RPの共振周波数F2は、f2帯の周波数帯域内の3.5GHzとなるように調整されている。実施の形態2の変形例のフィルタ装置100Bにおいて、実施の形態1,実施の形態2と重複する構成については説明を繰り返さない。
【0100】
図17は、実施の形態2の変形例におけるフィルタ装置100Bの挿入損失および比較例のフィルタ装置100Aの挿入損失の一例を示す図である。図17図19には、f2帯の下限値付近の周波数3.3GHzを示す周波数f2sと、f2帯の中央付近の周波数3.5GHzを示す周波数f2cと、f2帯の上限値付近の周波数3.8GHzを示す周波数f2eとが図示されている。以下では、実施の形態2でのフィルタ装置100に代えて、フィルタ装置100Aおよびフィルタ装置100Bを適用したアンテナモジュールをそれぞれアンテナモジュール250A、250Bと称する。
【0101】
図17に示される線Ln20は、実施の形態2の変形例におけるアンテナモジュール250Bのアンテナ装置150の挿入損失を示す。線Ln21は、実施の形態2の変形例における比較例のアンテナモジュール250Aのアンテナ装置150の挿入損失を示す。上述したように、フィルタ装置100Bにおける共振周波数F2は、n78帯域の下限値付近である周波数f2s(3.3GHz)となるように設計されている。なお、フィルタ装置100Bにおける共振周波数は、3.3GHzではなく、たとえば、3.2GHzまたは3.4GHzであってもよい。一方で、フィルタ装置100Aにおける共振周波数F2は、周波数f2c(3.5GHz)となるように設計されている。
【0102】
図18は、実施の形態2の変形例におけるアンテナ装置150の放射効率および比較例のアンテナ装置150の放射効率の一例を示す図である。図18に示される線Ln22は、実施の形態2の変形例におけるアンテナモジュール250Bのアンテナ装置150の放射効率を示す。線Ln23は、実施の形態2の変形例における比較例のアンテナモジュール250Aのアンテナ装置150の放射効率を示す。線Ln24は、実施の形態2の変形例における比較例のアンテナモジュール200Zのアンテナ装置150の放射効率を示す。上述したように、アンテナモジュール200Zは、図10のアンテナモジュール200からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。
【0103】
比較例のアンテナモジュール250Aの放射効率は、周波数f2sから周波数f2cまでの周波数帯であって、特に周波数2s付近において、比較例のアンテナモジュール200Zの放射効率よりも低い。一方で、実施の形態2の変形例であるアンテナモジュール20Bの放射効率は、周波数2sから周波数f2cまでの周波数帯において、比較例のアンテナモジュール200Zの放射効率よりも高い。すなわち、実施の形態2の変形例であるアンテナモジュール20Bの放射効率は、f2帯の全域(周波数f2sから周波数f2eまでの帯域)において、比較例のアンテナモジュール200Zよりも放射効率が向上している。
【0104】
図19は、実施の形態2の変形例におけるアンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーション特性を示す図である。線Ln25は、実施の形態2の変形例におけるアンテナモジュール250Bのアンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーションを示す。線Ln26は、比較例におけるアンテナモジュール200Zのアンテナ装置150とアンテナ装置160との間のアイソレーションを示す。
【0105】
図19に示されるように、f2帯全域において、アンテナモジュール250Bでは、比較例のアンテナモジュール200Zよりもアイソレーションが大きい。すなわち、実施の形態2の変形例では、フィルタ装置100Bがf2帯の周波数を減衰させることによって、アンテナ装置150およびアンテナ装置160のアイソレーションが比較例よりも改善されている。
【0106】
フィルタ装置100Bは、共振周波数F2が減衰帯域であるf2帯の下限値付近となるように調整されている。これにより、実施の形態2におけるフィルタ装置100Bでは、f2帯の全域において高い効率を得ることができる。なお、フィルタ装置100Bの共振周波数F2は、減衰帯域の下限値付近の周波数であればよく、減衰帯域の下限値よりも低い周波数であってもよい。
【0107】
<各アンテナへの適用例>
図20は、アンテナ155が逆F型アンテナであるアンテナモジュール201の外観図である。図20に示されるように、アンテナ155は、逆F型アンテナとして形成されている。アンテナ165は、モノポールアンテナとして形成されている。図20に示されるように、アンテナ155はフィルタ装置100を介して給電回路RF1と接続する。
【0108】
図20に示されるように、逆F型アンテナであるアンテナ155は、給電回路RF1へと接続する経路と分岐して接地電極GNDと接続する。以下では、給電回路RF1へと接続する経路と接地電極GNDへと接続する経路とに分岐する位置を分岐点と称する。
【0109】
図21は、アンテナ155が逆F型アンテナである場合のアンテナ165の放射効率を示す図である。線LnF1は、比較例のアンテナモジュール201Zのアンテナ165の放射効率を示す。線LnF2は、実施の形態2のアンテナモジュール201のアンテナ165の放射効率を示す。線LnF3は、変形例1のアンテナモジュール201Aのアンテナ165の放射効率を示す。線LnF4は、変形例2のアンテナモジュール201Bのアンテナ165の放射効率を示す。
【0110】
比較例のアンテナモジュール201Zは、フィルタ装置100を備えない。すなわち、アンテナモジュール201Zは、図20のアンテナモジュール201からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。
【0111】
変形例1のアンテナモジュール201Aは、分岐点から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置されるのではなく、分岐点から接地電極GNDまでの間の経路Rtにフィルタ装置100が配置される構成を有する。
【0112】
変形例2のアンテナモジュール201Bは、分岐点から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置され、さらに、分岐点から接地電極GNDまでの間の経路Rtにおいてもフィルタ装置100が配置される構成を有する。すなわち、変形例2のアンテナモジュール20Bのアンテナ装置150は、2つのフィルタ装置100を備える。
【0113】
図21に示されるように、フィルタ装置100を備えない比較例のアンテナモジュール201Zにおけるアンテナ165の放射効率は、最も低下している。すなわち、逆F型アンテナを適用した実施の形態2および、変形例1,2は、フィルタ装置100を備えることにより、アンテナ165の放射効率が比較例よりも改善されている。
【0114】
図22は、アンテナ155がループアンテナであるアンテナモジュール202の外観図である。図22に示されるように、アンテナ155は、ループアンテナとして形成されている。アンテナ165は、モノポールアンテナとして形成されている。図22に示されるように、ループアンテナであるアンテナ155においても、給電回路RF1へと接続する経路と異なる経路Rtを介して接地電極GNDと接続する。
【0115】
図23は、アンテナ155がループアンテナである場合のアンテナ165の放射効率を示す図である。線LnL1は、比較例のアンテナモジュール202Zのアンテナ165の放射効率を示す。線LnL2は、実施の形態2のアンテナモジュール202のアンテナ165の放射効率を示す。線LnL3は、変形例1のアンテナモジュール202Aのアンテナ165の放射効率を示す。線LnL4は、変形例2のアンテナモジュール202Bのアンテナ165の放射効率を示す。
【0116】
比較例のアンテナモジュール202Zは、図22のアンテナモジュール202からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。変形例1のアンテナモジュール202Aは、アンテナ155から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置されるのではなく、アンテナ155から接地電極GNDまでの間の経路Rtにフィルタ装置100が配置される構成を有する。変形例2のアンテナモジュール202Bは、アンテナ155から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置され、さらに、アンテナ155から接地電極GNDまでの間の経路Rtにおいてもフィルタ装置100が配置される構成を有する。
【0117】
図23に示されるように、フィルタ装置100を備えない比較例のアンテナモジュール202Zにおけるアンテナ165の放射効率は、最も低下している。すなわち、ループアンテナを適用した実施の形態2、変形例1,2においても、フィルタ装置100を備えることにより、アンテナ165の放射効率が比較例よりも改善されている。
【0118】
図24は、アンテナ155がパッチアンテナであるアンテナモジュール203の外観図である。図24に示されるようにアンテナ155は、パッチアンテナとして形成されている。アンテナ165は、モノポールアンテナとして形成されている。図24に示されるように、パッチアンテナであるアンテナ155においても、給電回路RF1へと接続する経路と異なる経路Rtで接地電極GNDと接続する。
【0119】
図25は、アンテナ155がパッチアンテナである場合のアンテナ165の放射効率を示す図である。線LnP1は、比較例のアンテナモジュール203Zのアンテナ165の放射効率を示す。線LnP2は、実施の形態2のアンテナモジュール203のアンテナ165の放射効率を示す。線LnP3は、変形例1のアンテナモジュール203Aのアンテナ165の放射効率を示す。線LnP4は、変形例2のアンテナモジュール203Bのアンテナ165の放射効率を示す。
【0120】
比較例のアンテナモジュール203Zは、図24のアンテナモジュール203からフィルタ装置100を取り除いた構成を有する。変形例1のアンテナモジュール203Aは、アンテナ155から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置されるのではなく、アンテナ155から接地電極GNDまでの間の経路Rtにフィルタ装置100が配置される構成を有する。変形例2のアンテナモジュール203Bは、アンテナ155から給電回路RF1までの間の経路にフィルタ装置100が配置され、さらに、アンテナ155から接地電極GNDまでの間の経路Rtにおいてもフィルタ装置100が配置される構成を有する。
【0121】
図25に示されるように、フィルタ装置100を備えない比較例のアンテナモジュール203Zにおけるアンテナ165の放射効率は、最も低下している。すなわち、パッチアンテナを適用した実施の形態2、変形例1,2においても、フィルタ装置100を備えることにより、アンテナ165の放射効率が比較例よりも改善されている。
【0122】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
100 フィルタ装置、150,160 アンテナ装置、155,165 アンテナ、170 基板、200,201,202,203,250 アンテナモジュール、Ar1~Ar4 矢印、C1a,C1b,C1 キャパシタ、F1~F3,f2s,f2c,f2e 周波数、GND 接地電極、L1,L1a,L1b,L2,L2b,L2a インダクタ、Ly1~Ly10 誘電体層、P1,P2,in1~in4,out1~out4 端子、RF1,RF2 給電回路、RS LC直列共振器、RP LC並列共振器、Rg1 領域、SP 接続点、TL1~TL3 伝送線路、d1,d2 減衰帯域、M 相互インダクタンス、rc1,rc2 誘導性リアクタンス、rc3,rc4 容量性リアクタンス、Rt 経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25