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特許7593497電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20241126BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20241126BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20241126BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/46
H02J3/14
H02J7/35 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023532078
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026371
(87)【国際公開番号】W WO2023277162
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021110942
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 美沙子
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126983(JP,A)
【文献】特開2014-117003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 3/14
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理システムであって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御する制御部と、
前記発電設備による実発電電力を取得する発電情報取得部と、を含み、
前記制御部は、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、電力管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも小さくなった場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する、請求項に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記差分が小さくなると見込める場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する、請求項に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記発電設備において前記差分が大きくなる原因となる動作を実施していない場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じている場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記太陽光発電装置に含まれる太陽光パネルの受光面に対する障害物の有無を検出する検出部をさらに含み、
前記制御部は、前記検出部が前記受光面に対する障害物を検出した場合に、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていると判断する、請求項に記載の電力管理システム。
【請求項7】
太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理方法であって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、
前記発電設備による実発電電力を取得することと、を含み、
前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、電力管理方法。
【請求項8】
太陽光発電装置を含む発電設備を制御することをコンピュータに実行させる電力管理プログラムであって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、
前記発電設備による実発電電力を取得することと、を前記コンピュータに実行させ、
前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、電力管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクログリッドにおける電力管理を行うシステムとして、発電設備が出力可能と予想される電力を見込み発電電力として出力し、この見込み発電電力に基づいて負荷電力を調整する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/203993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電等の発電設備は屋外に設置されることがほとんどであることから、故障とは異なる何らかの事情によって、発電設備における発電電力が見込み発電電力から乖離した状態が発生する場合がある。このような場合、特許文献1に記載の方法では、発電動作は継続されるものの、発電電力と負荷電力とのバランスを適切に管理できなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、発電設備における実発電電力が想定していた状態から変動した場合において、変動を考慮した電力管理を行うことが可能な技術を提供することについて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る電力管理システムは、太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理システムであって、前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御する制御部と、前記発電設備による実発電電力を取得する発電情報取得部と、を含み、前記制御部は、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法を一時的に変更する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発電設備における実発電電力が想定していた状態から変動した場合において、変動を考慮した電力管理を行うことが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るマイクログリッドの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、EMSの機能的な構成を示す図である。
図3図3は、電力管理方法を説明するフロー図である。
図4図4は、EMSのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一形態に係る電力管理システムは、太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理システムであって、前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御する制御部と、前記発電設備による実発電電力を取得する発電情報取得部と、を含み、前記制御部は、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法を一時的に変更する。
【0010】
また、本開示の一形態に係る電力管理方法は、太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理方法であって、前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、前記発電設備による実発電電力を取得することと、を含み、前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法が一時的に変更される。
【0011】
また、本開示の一形態に係る電力管理プログラムは、太陽光発電装置を含む発電設備を制御することをコンピュータに実行させる電力管理プログラムであって、前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、前記発電設備による実発電電力を取得することと、を前記コンピュータに実行させ、前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法が一時的に変更される。
【0012】
上記の電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムによれば、予想発電電力と実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、制御部によって発電設備の制御方法が一時的に変更される。そのため、発電設備による実際の発電電力が予想発電電力に対して乖離した場合に、発電設備による発電電力が予想発電電力であるとした制御が継続されることを防ぐことができる。また、上記の制御方法の変更を一時的な変更とすることにより、制御方法の変更が長期的に継続することによる問題の発生を防ぐことができる。
【0013】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する態様であってもよい。
【0014】
上記のように、予想発電電力と実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、制御部によって、負荷電力の制御において基準となる発電設備による発電電力が、予想発電電力から実発電電力へ変更される構成とすることで、実発電電力の変動に応じた制御を行うことができる。つまり、発電設備における実発電電力が想定していた状態から変動した場合において、変動を考慮した電力管理を行うことが可能となる。
【0015】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも小さくなった場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する態様であってもよい。
【0016】
差分が所定値よりも小さくなった場合に予想発電電力に基づく制御へ復帰させる構成とすることで、実発電電力に基づく制御が不要となった場合には速やかに予想発電電力に基づく制御に復帰させることができる。
【0017】
前記制御部は、前記差分が小さくなると見込める場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する態様であってもよい。
【0018】
差分が小さくなると見込める場合に、予想発電電力に基づく制御へ復帰させる構成とすることで、実発電電力に基づく制御が不要となった場合には速やかに予想発電電力に基づく制御に復帰させることができる。
【0019】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記発電設備において前記差分が大きくなる原因となる動作を実施していない場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する態様であってもよい。
【0020】
予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因として、発電設備における発電能力に何らかの変化が生じたのではなく、発電電力の調整等を目的とした強制的な一部設備の停止等の通常動作の範囲での制御動作が原因となる場合が生じ得る。これに対して、上記のように、発電設備において予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因となる動作を実施していないことを確認した上で、実発電電力を発電設備による発電電力とした制御に変更する構成とすることで、例えば、通常動作に由来した差分の発生を契機とした変更を防ぐことができる。
【0021】
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じている場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する態様であってもよい。
【0022】
予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因として、発電設備において発電能力の低下の原因となる事象が発生したのではなく、発電設備又はその周辺装置における故障等の別の事象が原因となる場合が生じ得る。これに対して、上記のように、発電設備において実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていることを確認した上で、実発電電力を発電設備による発電電力とした制御に変更する構成とすることで、例えば故障等に由来した異常の発生を契機とした変更を防ぐことができる。
【0023】
前記太陽光発電装置に含まれる太陽光パネルの受光面に対する障害物の有無を検出する検出部をさらに含み、前記制御部は、前記検出部が前記受光面に対する障害物を検出した場合に、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていると判断する態様であってもよい。
【0024】
発電設備において発電能力の低下の原因となる事象として、積雪等のように太陽光パネルの受光面の一部を塞ぐ障害物の発生が想定され得る。そこで、上記のように、太陽光パネルの受光面に対する障害物の有無を検出する検出部が障害物を検出した場合に、実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていると判断する構成とすることで、制御部では、太陽光発電装置において発生している事象を確実に判断することができる。また、この結果に基づいて制御部では実発電電力に基づく制御への一時的な変更を適切に行うことができる。
【0025】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
[マイクログリッド]
本実施形態に係る電力管理システム(以下、「EMS」(Energy Management System)ともいう。)、電力管理方法、及び電力管理プログラムは、マイクログリッドに用いられる。
【0027】
図1を参照して、マイクログリッドについて説明する。図1は、一実施形態に係るマイクログリッドの構成を概略的に示す図である。マイクログリッド1は、発電設備2と、負荷装置3と、蓄電装置4と、電力調整装置5と、これらを接続する送電網6と、これらを制御するEMS10(電力管理システム)と、を含んで構成される。マイクログリッド1では、発電設備2が出力する発電電力を負荷装置3が消費する。
【0028】
マイクログリッド1は、理想的には、発電設備2から発生する発電電力と、負荷装置3が消費する負荷電力と、が等しくなるように運用する。つまり、EMS10は、発電電力と負荷電力との調整を行う。EMS10は、基本的に、発電電力が負荷電力を上回ることがないように、発電電力と負荷電力とを調整する。また、EMS10は、発電電力と負荷電力との間のバッファとして、蓄電装置4における蓄電池の充放電を調整してもよい。以下の実施形態では、「負荷電力の制御」について説明をするが、この場合の制御対象には、少なくとも負荷装置3が消費する負荷電力が含まれる。また、上述のように蓄電装置4における蓄電池も負荷電力と連動して変更され得ることから、制御対象として上述の蓄電池の充放電が含まれていてもよい。
【0029】
マイクログリッド1は、必要に応じて、電力系統90に接続されてもよい。この場合には、不足する電力を電力系統90から受けることができる。一方、マイクログリッド1から電力系統90への電力の流出(いわゆる逆潮流)は、電力系統90における電力の需要と供給とのバランスに影響を与える。したがって、本実施形態に係るEMS10が管理するマイクログリッドでは、逆潮流は、基本的に発生させない。
【0030】
なお、マイクログリッド1は、その運用形態を柔軟に変更してもよい。マイクログリッド1は、要求される電力の全てを発電設備2によって賄ってもよいし、要求される電力の一部を電力系統90から受けてもよい。また、マイクログリッド1は、内部で発電した全ての電力を負荷装置3によって消費してもよい。
【0031】
発電設備2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う設備である。本実施形態では、発電設備2は、太陽光(Photovoltaic:PV)発電装置であり、複数の太陽光パネル2a及び複数のPCS2b(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)を含む。発電設備2は、少なくとも太陽光発電装置を含んで構成され得るが、他の種類の再生可能エネルギ発電装置と組み合わせて構成されていてもよい。図1では一例として、太陽光発電装置において使用される2つのPCS2bを示している。PCS2bは、太陽光パネル2aで発電した電力を変換する電力変換装置である。PCS2bは、発電設備2の中に複数設けられて、1以上の太陽光パネル2aと接続され得る。PCS2bは、太陽光パネル2aからの直流電力を交流電力に変換し、送電網6に対して出力する。
【0032】
なお、発電設備2においては、稼働させるPCS2bの台数を制御することで、太陽光パネル2aの台数を変更することにより発電量が変動し得る。発電設備2に含まれる複数のPCS2bのうちの全数を稼働させると、PCS2bに接続される太陽光パネル2aによる発電量(送電網6での送電量)が最大となる。一方、一部のPCS2bの動作を停止させると、太陽光パネル2aにおいて発電した電力の送電網6への送信が行われないため、発電設備2としての発電量は減少することになる。また、PCS2bを起動させてから、送電網6への送電量(電力)が実際の能力に対応した状態となるまで、一定時間(例えば、数十秒~数分程度)かかる場合がある。これはPCS2bが用いられる発電設備2では、想定され得る事象である。
【0033】
なお、発電設備2には、自設備における発電能力に係る指標を算出する発電能力指標算出部21と、発電設備2の太陽光パネル2aの状態を監視するパネル監視部22とが設けられていてもよい。
【0034】
発電能力指標算出部21は、発電設備2における発電量を予想し、指標として算出する機能を有する。予想される発電量(予想発電電力)とは、気象条件等に応じて変動し得る発電設備2の発電量を予測したものである。例えば、各太陽光パネル2aの正常動作が可能であって、且つ、晴天であり太陽光パネル2aに対して照射される太陽光の光量が十分である場合には、発電設備2において想定されている最大発電量と同等の発電が行われ得る。そのため、このような条件の場合には、予測される発電量は大きくなる一方、曇天である場合のように、太陽光パネル2aに対して照射される太陽光の光量が原因で発電量が最大とならない場合には、最大発電量は実現不可能であり、太陽光の光量に応じた予想発電電力となり得る。このように、主に気象条件に応じて、発電設備2における発電量は変動し得る。発電能力指標算出部21では、全てのPCS2bが動作していることを前提として、予想される発電量を算出し、これを発電能力指標としてEMS10に対して出力する構成としてもよい。
【0035】
発電能力指標算出部21は、例えば太陽光パネル2aを模したサンプルパネルを準備し、当該サンプルパネルにおける発電量を基準として発電能力指標を算出してもよい。また、光センサを用いて太陽光の光量を検出し、光量に基づいて発電可能な電力量を計算し発電能力指標としてもよい。また、このような手法をいくつか組み合わせて、発電能力指標算出部21を構成してもよい。なお、図1では、発電能力指標算出部21が発電設備2に設けられている例を示しているが、発電能力指標算出部21としての機能の一部は、例えば、EMS10に設けられていてもよい。例えば、発電能力指標の算出に必要なパラメータ(例えば、太陽光の光量の情報の取得)は、発電設備2またはその周辺で行い、実際の能力指標の算出はEMS10にて行う構成としてもよい。
【0036】
なお、発電設備2における一部のPCS2bが動作していない状態の場合、太陽光パネル2aに対して太陽光が照射されたとしてもPCS2bによる送電が行われないため、発電設備2における発電量として含めることができない。そこで、発電能力指標算出部21は、PCS2bの動作状況等にも基づいて将来の発電設備2における予想発電電力を予測する構成としてもよい。PCS2bの動作状況に基づいて予想発電電力を算出する場合、発電能力指標(全台数分)に対して、PCS2bの全台数に対するPCS2bの稼働台数の割合を乗算することで稼働中のPCS2bに応じた予想発電電力が得られる。
【0037】
ただし、本実施形態では、発電能力指標算出部21が算出する発電能力指標は、全てのPCS2bが動作していることを前提として予想発電電力を算出したものであるとして説明する。つまり、以下で説明する「発電能力指標」とは、全てのPCS2bが動作しているという条件で算出された予想発電電力であるとして取り扱う。
【0038】
パネル監視部22は、太陽光パネル2aの状況を監視し、特に太陽光パネル2aの受光面に対する障害物の有無を監視する。例えば、太陽光パネル2aの受光面の一部が、落葉や雪等の光を遮断し得る物体によって覆われていた場合、太陽光パネル2aに向かって太陽光が十分に照射している場合であっても、太陽光パネル2aにおける受光量が少なくなってしまい、結果として発電量が減少し得る。パネル監視部22は、上記のように、太陽光パネル2aへの太陽光の照射に対して干渉し得る事象の有無を監視し、特に障害物の有無を監視する機能を有する。監視の方法としては、例えば、カメラによって太陽光パネル2aの受光面を撮像する構成であってもよい。また、太陽光パネル2aに対して積雪・落葉等が発生した場合に同種の状態を検知ができるようなセンサを用いてもよく、例えば、降雪センサ等を用いてもよい。例えば、太陽光パネル2aと同様のサンプルパネルを準備し、サンプルパネルの表面の一部を塞ぐ障害物の有無を、太陽光パネル2aに対する障害物の有無として判定する構成であってもよい。なお、パネル監視部22は、常時稼働している構成であってもよいし、例えば、EMS10からの指示によって監視を実施する構成であってもよい。
【0039】
さらに、発電設備2には、自設備における実発電量を計測するための実発電量計測部23が設けられる。実発電量計測部23は、発電設備2から送電網6へ出力される電力を計測することで、発電設備2における実発電量を計測する構成としてもよい。ただし、実発電量の計測方法は、上記の方法に限定されない。
【0040】
負荷装置3は、送電網6を介して発電設備2、蓄電装置4及び電力系統90に接続されている。負荷装置3は、発電設備2からの発電電力及び電力系統90からの供給電力を消費して、所望の動作を行う。なお、負荷装置3はマイクログリッド1の外部に設けられた負荷装置等と連携して動作する構成であってもよい。
【0041】
蓄電装置4は、発電設備2による発電電力に伴うエネルギを蓄える。本実施形態において蓄電装置4は、発電設備2により発電された電力を充放電する。蓄電装置4は、例えば、負荷装置3に対して一定量の出力電力を出力する。なお、マイクログリッド1は、蓄電装置4に代えて、発電設備2により発電された発電電力を、電気以外のエネルギキャリア(例えば、水素またはアンモニア等)を製造して貯蔵又は供給する装置を備えていてもよい。
【0042】
電力調整装置5は、例えば、発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4及び電力系統90に接続され、EMS10の制御により、発電設備2からの発電電力、蓄電装置4からの出力電力、及び電力系統90からの供給電力を組み合わせた所定の電力を、負荷装置3に出力する。例えば、電力調整装置5は、蓄電装置4から出力される一定量の出力電力と、発電設備2による発電電力の一部と、を負荷装置3に出力する。電力調整装置5が負荷装置3に出力する発電電力の一部は、負荷電力に対する蓄電装置4からの出力電力の不足分に相当する電力である。電力調整装置5は、発電設備2からの発電電力及び蓄電装置4からの出力電力だけでは負荷電力に満たない場合に、不足分を電力系統90から購入した供給電力によって補ってもよい。電力調整装置5は、常に電力系統90からの供給電力を負荷装置3に出力してもよい。これらの電力調整装置5による電力の分配に係る動作は、上述のようにEMS10の制御によって行われる。
【0043】
[EMS]
EMS10は、発電設備2による発電電力と、負荷装置3による負荷電力と、蓄電装置4による出力電力と、電力系統90からの供給電力と、を管理する。図2は、EMSの機能的な構成を示す図である。EMS10は、発電設備2、負荷装置3、蓄電装置4、及び、電力調整装置5を制御する。なお、EMS10は、発電設備2のうちPCS2bを制御する。
【0044】
図2に示されるように、EMS10は、機能部として、発電能力指標取得部11と、実発電量情報取得部12(発電情報取得部)と、関連情報取得部13と、制御部14と、制御情報保持部15と、を備える。制御部14は、制御内容決定部16と、制御内容指令部17と、を有する。なお、これらの機能部は、1台のコンピュータにまとめられていてもよく、複数台のコンピュータに分散していてもよい。
【0045】
発電能力指標取得部11は、発電能力指標算出部21において算出される発電能力指標を取得する機能を有する。発電能力指標取得部11は、発電能力指標算出部21から、例えば所定の間隔で発電能力指標を取得する。取得した発電能力指標は、制御部14における制御内容決定部16において使用される。なお、上述したように、発電能力指標算出部21ではなく、EMS10にて発電能力指標を算出する構成とする場合には、例えば、発電能力指標の算出に必要な情報(太陽光の光量の情報等)を発電能力指標取得部11において取得し、発電能力指標取得部11において発電能力指標を算出する構成としてもよい。
【0046】
実発電量情報取得部12は、実発電量計測部23において計測される実発電量を取得する機能を有する。実発電量情報取得部12は、実発電量計測部23から、例えば所定の間隔で実発電量を取得する。取得された実発電量は、制御部14における制御内容決定部16において使用される。
【0047】
関連情報取得部13は、制御部14の制御内容決定部16における制御内容の決定に影響を与え得る情報(関連情報)を取得する機能を有する。詳細は後述するが、制御部14では、発電能力指標と実発電量との差分を考慮して、制御内容として負荷装置3における負荷電力の算出方法を変更する場合がある。そのときに、関連情報取得部13で取得した関連情報を用いて、負荷装置3における負荷電力の算出方法を変更するかを決定する場合がある。この際に使用される関連情報とは、実発電量が変動し得る原因の有無を示す情報であり、一例としては、パネル監視部22による太陽光パネル2aの受光面の状況に係る監視結果である。また、他の例としては、マイクログリッド1(特に発電設備2)の周辺での気象情報を関連情報として用いてもよい。これらの情報は、発電設備2における実発電量が、発電能力指標に基づく予想発電電力と乖離した場合に、発電設備2における発電能力の変化に寄与する事象が発生しているかを確認するために用いられる。
【0048】
制御部14は、発電能力指標取得部11と、実発電量情報取得部12と、関連情報取得部13とにおいて取得された情報に基づいて、マイクログリッド1における電力の運用方針を決定し、マイクログリッド1の各部の制御内容を決定し得る。また、制御部14は、決定された制御内容に基づいてマイクログリッド1の各部を制御し得る。
【0049】
制御内容決定部16は、マイクログリッド1の各部の制御内容を決定する機能を有する。具体的には、制御内容決定部16は、発電設備2における発電電力に応じて負荷装置3における負荷電力を決定する。その上で、蓄電装置4による出力電力及び電力系統90からの供給電力を決定する。制御内容決定部16が制御内容を決定する際には、上記の発電能力指標取得部11、実発電量情報取得部12及び関連情報取得部13で取得された以外の情報も活用されてもよい。
【0050】
制御内容指令部17は、制御内容決定部16により決定された制御内容に基づいて、マイクログリッド1の各部に対して指令を出し、各部を制御する機能を有する。具体的には、発電設備2、負荷装置3、及び電力調整装置5に対して指令を出して、各部を制御し得る。
【0051】
制御情報保持部15は、上記の制御に利用する各種情報を保持する機能を有する。例えば、制御内容決定部16において制御内容を決定するためのロジック等については、制御情報保持部15において保持されてもよい。また、決定された制御内容についても、制御情報保持部15において所定時間保持する構成としてもよい。さらに、制御情報保持部15は、発電能力指標取得部11、実発電量情報取得部12及び関連情報取得部13で取得された情報を保持する機能を有していてもよい。
【0052】
[電力管理方法]
図3を参照して、EMS10による電力管理方法について説明する。図3は、電力管理方法を説明するフロー図である。
【0053】
なお、前提として、EMS10では、通常運転時は、発電能力指標算出部21において算出される発電能力指標に基づいて、負荷装置3における負荷電力を算出し、マイクログリッド1の各部に対する制御を行っている。EMS10の制御部14では、発電能力指標取得部11において取得される発電能力指標で示されている発電量の電力が発電設備2から送電網6へ向けて送電されることを前提として、発電電力が活用できるように、負荷装置3における負荷電力を調整している。
【0054】
一方で、EMS10は、実発電量計測部23において実際に発電設備2から送電網6へ送出される電力を計測し、この結果を実発電量情報取得部12において取得している。このような構成とすることで、発電能力指標と実発電量との乖離が発生していることをEMS10が把握することが可能となる。そこで、EMS10では、定期的(例えば、数分~数時間毎)に、発電能力指標と実発電量との差分を評価している。図3に示すフロー図は、上述のように、通常運転時にEMS10は、発電能力指標に基づく制御を行っていて、且つ、発電能力指標と実発電量との差分を監視している場合のEMS10の動作手順を示している。
【0055】
まず、EMS10の制御内容決定部16では、発電能力指標と実発電量(実際の発電量)との差分が閾値以上であるかを判定する(ステップS01)。閾値は、通常運転時に生じ得る差分よりも十分大きく設定され得る。通常運転時でも、各部の動作設定等に由来して発電能力指標と実発電量との差分が大きくなる時間が存在する場合がある。閾値は、このような通常時に発生する電力変動を考慮して設定されていてもよい。
【0056】
判定の結果、発電能力指標と実発電量(実際の発電量)との差分が閾値未満である場合(S01-NO)は、EMS10の制御内容決定部16では通常の運転を継続すると判断し、制御を継続する。一方、発電能力指標と実発電量(実際の発電量)との差分が閾値以上である場合(S01-YES)、制御内容決定部16は、発電能力指標と実発電量との差分が閾値以上である原因として、発電設備2に含まれるPCS2bの動作を強制停止した履歴があるかを確認する(ステップS02)。
【0057】
ステップS02での判断基準であるPCS2bの動作の強制停止は、マイクログリッド1の通常運転時にも生じ得る制御内容である。一例として、負荷装置3による負荷電力が小さいために、マイクログリッド1から電力系統90への逆潮流が発生し得る場合、EMS10は逆潮流を防止するために発電設備2におけるPCS2bを強制停止することで発電量を抑制する場合がある。PCS2bを停止すると、PCS2bが全数稼働することを想定された発電能力指標との乖離が必然的に生じる。逆潮流を抑制するためのPCS2bの強制停止は、逆潮流の可能性がなくなった段階で解除され得る(PCS2bが再起動され得る)。逆潮流の可能性の有無という観点で強制停止と再起動とが繰り返される場合がある。したがって、PCS2bの強制停止が短期間に繰り返し行われる場合もあるし、ある程度長時間強制停止の状態が継続される場合も考えられる。
【0058】
また、PCS2bを停止した状態から起動させようとすると、上述のように送電量(電力)が実際の能力に対応した状態に復帰するまで、一定時間(例えば、数十秒~数分程度)必要となる。このように、発電設備2に含まれるPCS2bの動作を強制停止した履歴があるということは、PCS2bの強制停止に由来する発電量の減少の可能性が考えられる。そこで、ステップS02では、上記の履歴の有無を判定することによって、EMS10による通常運転時の制御に由来する差分であるか否かを判定する。
【0059】
マイクログリッド1では、基本的に発電設備2のPCS2bを長期に停止させることは想定しておらず、PCS2bを停止したとしても短期間(数分~数十分程度)で再度起動させる制御が行われる。そのため、強制停止の履歴の有無を判定する期間は、PCS2bの起動からの復帰に必要な一定時間(例えば、数分)よりも長くされる。また、マイクログリッド1での通常運転で想定され得るPCS2bの停止の継続時間を上限としてもよい。上記の条件で設定された判定対象の時間内で、EMS10による制御もしくは手動操作によって、発電設備2のPCS2bのいずれかが強制停止した履歴が無い場合には、発電設備2に含まれるPCS2bの動作を強制停止した履歴がないと判定する(S02-NO)。
【0060】
一方、EMS10による制御もしくは手動操作によって、発電設備2のPCS2bのいずれかが強制停止した履歴があると判定した場合(S02-YES)には、稼働中のPCS2bの台数に基づいて算出される予想発電電力と、実発電量とに乖離があるかを判定する(ステップS03)。強制停止した後に停止が継続されているか、または、起動開始されているけども、稼働状態に復帰していないPCS2bが存在すると、発電能力指標に相当する電力を発電することができないため、発電能力指標と実発電量との間に乖離はでることは当然である。そこで、稼働中のPCS2bの台数を利用して、「発電能力指標×(PCS稼働台数/PCS全台数)」を計算することによって、実際に稼働しているPCS2bが全て問題なく発電能力を発揮した際の予想発電電力を算出する。そして、予想発電電力と、実際の発電設備2における発電量との間に乖離がないかを判定する。乖離の有無を判定する際には、ステップS01と同様に閾値を設定してもよい。判定の結果、乖離がないと判定された場合(S03-NO)、制御内容の変更等を行わず、通常運転時の制御を継続する。一方、乖離があると判定された場合(S03-YES)、強制停止した履歴がないと判定された場合(S02-NO)と同様に、太陽光パネル2aについて、発電に影響を与える事象が起きていないかを判定する。
【0061】
具体的には、関連情報取得部13が取得する関連情報に基づいて、実発電量に影響を与える事象に関する情報の有無を判定する(ステップS04)。具体的には、関連情報取得部13において取得される、パネル監視部22による太陽光パネル2aの受光面の状況に係る監視結果、及び気象情報(積雪に関する情報)等に、太陽光パネル2aの受光面において太陽光を適切に受光できないような状態を示す情報が含まれているかに基づいて判定する。この判定の結果、実発電量に影響を与える事象に関する情報があると判定された場合(S04-YES)、EMS10の制御内容決定部16では、上記の実発電量に影響を与える事象に由来して、発電能力指標に対応した発電を行うことができない状況であると判断する。そこで、制御内容決定部16では、EMS10による負荷装置3における負荷電力を決定する手法として、発電能力指標を用いた方法から、実発電量を用いた方法に変更する(ステップS05)。その結果、実発電量に基づいて負荷電力が算出され、この負荷装置3における負荷電力をコントロールするための各部への指令が制御内容指令部17から発出される。
【0062】
なお、実発電量に基づいた負荷電力の制御を開始した場合、EMS10では、稼働しているPCS2bの台数を監視していてもよい。通常運転時には発電能力指標と実発電量との間に差分が生じたときに、EMS10は、負荷装置3における負荷電力を大きくすることによって、停止中のPCS2bを起動させる動作を行う。一方、上記のように実発電量に基づいた負荷電力の制御を開始すると、発電能力指標との比較を行うことができなくなることによって、停止中のPCS2bを起動させるような制御を行う契機がなくなってしまうことが想定される。そこで、EMS10はPCS2bの稼働台数を監視し、停止状態が継続されているPCS2bが存在する場合には、PCS2bが起動するように、負荷装置3における負荷電力を大きくするような制御を加えてもよい。
【0063】
一方、判定の結果、実発電量に影響を与える事象に関する情報がないと判定された場合(S04-NO)は、降雪等のような実発電量に影響を与える事象とは異なる原因によって、発電能力指標に対応した電力の発電を行うことができない状態になっていると判断する。その結果、EMS10の制御内容決定部16では、制御内容自体は通常運転時から変更しないを決定する。ただし、何らかの問題が起きている可能性を、EMS10の管理者等へ通知すべく、エラー通知の出力を行う(ステップS06)。発電能力指標に対応した電力の発電を行うことができなくなる原因としては、例えば、積雪・落葉等の事象とは関係ない部分の装置の故障等が考えられる。この場合には、故障箇所の修理・交換等が必要となる。また、発電設備2の太陽光パネル2aまたはPCS2bの長年の使用によって、平常時の発電能力が低下するということが考えられる。この場合は、発電能力指標自体を発電設備2における実質的な発電能力に対応させて補正することが求められる。いずれの場合でも、エラー通知によって管理者等へ何らかの問題を通知する。
【0064】
なお、EMS10による負荷装置3における負荷電力の決定方法を実発電量を用いた方法に変更した場合(ステップS05)、何らかのタイミングで、負荷電力の決定方法を元の発電能力指標を用いる方法に戻される。EMS10の制御部14(制御内容決定部16,制御内容指令部17)は、負荷電力の決定方法を、発電能力指標を用いる方法へ変更することに係る制御も行う。EMS10が、負荷電力の決定方法を発電能力指標を用いる方法へ戻すタイミングの設定方法は、特に限定されない。一例として、EMS10の制御部14は、発電能力指標(停止中のPCS2bが存在する場合には、稼働中のPCS2bの台数に応じて算出される予想発電電力)と実発電量との差分を監視し、差分が閾値内になったことを契機として、発電能力指標を用いる方法へ戻してもよい。
【0065】
また、関連情報取得部13によって取得されるパネル監視部22による監視の結果、太陽光パネル2aの受光面から積雪等の障害物が除去されたことと判断できる情報が得られた場合に、これを変更の契機としてもよい。具体的には、カメラによる撮像画像に雪が存在しないことが確認できたときに、これを制御変更の契機とすることが考えられる。この情報は、太陽光パネル2aにおける発電に関する障害物が除去されたことを特定する情報であるといえる。また、降雪センサの情報から降雪が融解したと判断できる情報が得られたときに、この情報を制御変更の契機とすることが考えられる。さらに、気象情報等に基づいて例えば雪が融解したと判断できる場合、この情報の取得を発電能力指標に基づく制御への変更の契機とすることもできる。これらの情報は、障害物の除去が見込める情報ということができる。または、障害物の除去が見込める情報であるいうことができる。
【0066】
また、負荷電力の決定方法を実発電量を用いた方法に変更した後、所定時間経過した後に、負荷電力の決定方法を発電能力指標を用いた方法に変更するように予め設定しておく、等の方法を用いことも考えられる。太陽光パネル2aの受光面における受光に影響を与えると考えられる事象によっても、取り得る対応は変更されると考えられる。したがって、発電設備2の設置場所、及び、太陽光パネル2aの受光面での受光に影響を与える想定される事象等に基づいて、負荷電力の決定方法を元に戻す方法を設定してもよい。
【0067】
[ハードウェア構成]
図4を参照して、EMS10のハードウェア構成について説明する。図4は、EMS10のハードウェア構成の一例を示す図である。EMS10は、1または複数のコンピュータ100を含む。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、通信制御部104と、入力装置105と、出力装置106とを有する。EMS10は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1または複数のコンピュータ100によって構成される。
【0068】
EMS10が複数のコンピュータ100によって構成される場合には、これらのコンピュータ100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つのEMS10が構築される。
【0069】
CPU101は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部103は、一般的に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。EMS10を構成する各部の少なくとも一部は、補助記憶部103によって実現される。通信制御部104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。EMS10を構成する各部の少なくとも一部は、通信制御部104によって実現されてもよい。入力装置105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置106は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。例えば、EMS10は、制御内容指令部17からの指令内容等をディスプレイ等に表示してもよい。
【0070】
補助記憶部103は、予め、プログラム110及び処理に必要なデータを格納している。プログラム110は、EMS10の各機能要素をコンピュータ100に実行させる。プログラム110によって、例えば、上述したステップS01からステップS06に係る処理がコンピュータ100において実行される。例えば、プログラム110は、CPU101又は主記憶部102によって読み込まれ、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、及び出力装置106の少なくとも1つを動作させる。例えば、プログラム110は、主記憶部102及び補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0071】
プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。プログラム110は、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0072】
なお、プログラム110は、具体的には、太陽光発電装置を含む発電設備に接続される負荷装置3が消費する負荷電力を調整することをコンピュータに実行させる電力管理プログラムであって、発電設備2による発電電力が、発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、予想発電電力に基づいて負荷電力を制御することと、発電設備2による実発電電力を取得することと、をコンピュータに実行させる。このとき、制御することにおいて、予想発電電力と実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備による発電電力が、予想発電電力から実発電電力へ一時的に変更される。
【0073】
[作用]
上記の電力管理システム(EMS10)、電力管理方法及び電力管理プログラムによれば、予想発電電力と実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、制御部14によって発電設備2に対する制御方法が一時的に変更される。そのため、発電設備2による実際の発電電力が予想発電電力に対して乖離した場合に、発電設備2による発電電力が予想発電電力であるとした制御が継続されることが防がれる。
【0074】
また、発電設備2の制御方法の一時的な変更として、制御部14によって、発電設備2に接続される負荷装置3が消費する負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力が、予想発電電力から実発電電力へ変更される。そのため、発電設備2による実際の発電電力が予想発電電力に対して乖離した場合に、発電設備2による発電電力が予想発電電力であるとした制御が継続されることが防がれる。すなわち、発電設備における実発電電力が想定していた状態から変動した場合において、変動を考慮した電力管理を行うことが可能となる。
【0075】
また、上記の予想発電電力から実発電電力へ変更した状態での制御は一時的となるように構成されている。このような構成とすることによって、実発電電力に基づいた負荷電力の制御を長期的に継続することによる問題の発生を防ぐことができる。予想発電電力に基づいた負荷電力の算出を行うことを前提として設計されたEMS10では、予想発電電力と実発電電力との差分を利用した制御が含まれる場合がある。そのため、実発電電力を用いた負荷電力の算出を長期間行うことになると、通常運転時に想定されていた予想発電電力と実発電電力との差分を利用した制御ができなくなるため、想定外の問題が発生する可能性がある。これに対して、実発電電力に基づく負荷電力の算出に係る制御は一時的とすることによって、上記のような事象が発生することが回避される。
【0076】
また、EMS10の制御部14は、差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、発電設備2において差分が大きくなる原因となる動作を実施していない場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力を、予想発電電力から実発電電力へ変更してもよい。予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因として、発電設備2における発電能力に何らかの変化が生じたのではなく、発電電力の調整等を目的とした強制的な一部設備の停止等の通常動作の範囲での制御動作が原因となる場合が生じ得る。具体的には、上記実施形態で説明した逆潮流を防ぐための強制停止等が想定される。これに対して、上記のように、発電設備2において予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因となる動作を実施していないことを確認した上で、実発電電力を発電設備2による発電電力とした制御に変更する構成とすることで、例えば、通常動作に由来した差分の発生を契機とした変更を防ぐことができる。
【0077】
また、EMS10の制御部14は、差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じている場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力を、予想発電電力から実発電電力へ変更してもよい。予想発電電力と実発電電力との差分が大きくなる原因として、発電設備又はその周辺装置における故障等の別の事象が原因となる場合がある。このような場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力を、予想発電電力から実発電電力に変更してしまうと、故障が生じていること等を早期に発見することが難しくなる可能性がある。そこで、上記のように、発電設備2において実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていることを確認した上で、実発電電力を発電設備による発電電力とした制御に変更する構成とすることで、例えば故障等に由来した異常の発生を契機とした変更を防ぐことができる。
【0078】
なお、上記の構成を実現するために、太陽光発電装置に含まれる太陽光パネル2aの受光面に対する障害物の有無を検出する検出部としてのパネル監視部22をさらに含んでもよい。また、制御部14は、検出部としてのパネル監視部22が受光面に対する障害物を検出した場合に、実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていると判断してもよい。上記の構成とすることで、制御部14では、太陽光発電装置において発生している事象を確実に判断することができる。また、この結果に基づいて制御部14において、実発電電力に基づく制御への一時的な変更を適切に行うことができる。
【0079】
また、EMS10の制御部14は、上記の差分が所定値よりも小さくなった場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力を、実発電電力から予想発電電力へ変更してもよい。このような構成とすることで、実発電電力に基づく制御が不要となった場合には速やかに予想発電電力に基づく制御に復帰させることができる。
【0080】
また、EMS10の制御部14は、上記の差分が小さくなると見込める場合に、負荷電力の制御において基準となる発電設備2による発電電力を、実発電電力から予想発電電力へ変更してもよい。このような構成とすることで、実発電電力に基づく制御が不要となった場合には速やかに予想発電電力に基づく制御に復帰させることができる。
【0081】
[変形例]
以上、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態で説明した負荷電力の算出方法の変更を決定するためのフロー(図3)に示された各判定(S01~S04)の順序は変更してもよい。また、差分が閾値以上であるか否かという判定(S01)以外の判定は省略してもよい。マイクログリッド1の構成やEMS10による通常運転時の運転ロジックによっては、各判定がなくてもよい場合が想定される。したがって、運転環境等を考慮して適宜判定内容を変更してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、発電能力指標取得部11が発電能力指標算出部21から発電能力指標(すべてのPCS2bが稼働していることを前提とした予想発電電力)を取得する場合について説明したが、予想発電電力をEMS10で算出する構成としてもよい。
【0084】
[その他]
本開示は、再生可能エネルギの普及・拡大に貢献することができる。このため、本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【0085】
[付記]
本開示は以下の構成を含む。
[1]
太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理システムであって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御する制御部と、
前記発電設備による実発電電力を取得する発電情報取得部と、を含み、
前記制御部は、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法を一時的に変更する、電力管理システム。
[2]
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、[1]に記載の電力管理システム。
[3]
前記制御部は、前記差分が所定値よりも小さくなった場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する、[2]に記載の電力管理システム。
[4]
前記制御部は、前記差分が小さくなると見込める場合に、前記負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記実発電電力から前記予想発電電力へ変更する、[2]に記載の電力管理システム。
[5]
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記発電設備において前記差分が大きくなる原因となる動作を実施していない場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、[1]~[4]のいずれかに記載の電力管理システム。
[6]
前記制御部は、前記差分が所定値よりも大きいことを検知した場合であって、且つ、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じている場合に、前記発電設備に接続される負荷装置が消費する負荷電力の制御において基準となる前記発電設備による発電電力を、前記予想発電電力から前記実発電電力へ一時的に変更する、[1]~[5]のいずれかに記載の電力管理システム。
[7]
前記太陽光発電装置に含まれる太陽光パネルの受光面に対する障害物の有無を検出する検出部をさらに含み、
前記制御部は、前記検出部が前記受光面に対する障害物を検出した場合に、前記実発電電力が小さくなる原因となる事象が生じていると判断する、[6]に記載の電力管理システム。
[8]
太陽光発電装置を含む発電設備を制御する電力管理方法であって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、
前記発電設備による実発電電力を取得することと、を含み、
前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法を一時的に変更する、電力管理方法。
[9]
太陽光発電装置を含む発電設備を制御することをコンピュータに実行させる電力管理プログラムであって、
前記発電設備による発電電力が、前記発電設備の発電能力に基づく予想発電電力であるとして、前記予想発電電力に基づいて前記発電設備を制御することと、
前記発電設備による実発電電力を取得することと、を前記コンピュータに実行させ、
前記制御することにおいて、前記予想発電電力と前記実発電電力との差分が所定値よりも大きいことを検知した場合に、前記発電設備の制御方法を一時的に変更する、電力管理プログラム。
【符号の説明】
【0086】
1 マイクログリッド
2 発電設備
2a 太陽光パネル
2b PCS
3 負荷装置
4 蓄電装置
5 電力調整装置
6 送電網
10 EMS(電力管理システム)
11 発電能力指標取得部
12 実発電量情報取得部(発電情報取得部)
13 関連情報取得部
14 制御部
15 制御情報保持部
16 制御内容決定部
17 制御内容指令部
21 発電能力指標算出部
22 パネル監視部(検出部)
23 実発電量計測部
90 電力系統
100 コンピュータ

図1
図2
図3
図4