IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7593507MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 3/00 20060101AFI20241126BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
B23K1/00 330Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023569261
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2022044768
(87)【国際公開番号】W WO2023120141
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021209528
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】黒川 文弥
(72)【発明者】
【氏名】會田 康弘
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/407220(US,A1)
【文献】特許第6870779(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/2273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 3/00
B81C 1/00
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS構造体を含む第1基板と、
前記第1基板と間隔を空けて対向方向に向かい合う第2基板と、
複数種類の金属の共晶合金を主材料とする共晶層を有し、前記第1基板及び前記第2基板の間に前記対向方向から見て前記MEMS構造体を囲むように設けられて、前記第1基板及び前記第2基板に接合された第1接合部と、
前記第1基板及び前記第2基板の間に設けられて前記第1基板に直接的または間接的に接触され且つ前記第2基板に直接的または間接的に接触された接触層と、を備え、
前記接触層は、前記第1接合部に含まれる前記複数種類の金属の一部を含むMEMSデバイス。
【請求項2】
前記第1接合部の前記対向方向の長さは、前記接触層の前記対向方向の長さ以上である請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記複数種類の金属の共晶合金を主材料とする共晶層を有し、前記第1基板及び前記第2基板の間における前記対向方向から見て前記第1接合部の内側に位置して、前記第1基板及び前記第2基板に接合された第2接合部を更に備える請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記第2接合部は、前記第1基板及び前記第2基板を構成する材料の少なくとも一部を含む請求項3に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記接触層に積層されており電気的に絶縁された第1絶縁層を更に備える請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記第1絶縁層は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に埋設されている請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
前記第1接合部に積層されており電気的に絶縁された第2絶縁層を更に備え、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層と前記対向方向に同位置または略同位置にある請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に埋設されている請求項7に記載のMEMSデバイス。
【請求項9】
前記第1絶縁層と前記接触層との界面部に空洞部が形成されている請求項に記載のMEMSデバイス。
【請求項10】
前記対向方向から見て、前記接触層は前記第1接合部の内側に位置している請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項11】
前記MEMS構造体は、
前記第1基板に対して固定された固定部と、
前記第1基板に対して可撓性を有する可動部と、を備え、
前記対向方向から見て、前記接触層は、前記固定部に接触している請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
前記対向方向から見て、前記第1接合部によって囲まれた領域は回転対称形状であり、
前記対向方向から見て、前記第1接合部によって囲まれた領域の回転対称の中心部と前記接触層との距離は、前記第1接合部と前記接触層との距離よりも短い請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項13】
前記対向方向から見て、前記接触層は前記MEMS構造体を囲んでいる請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項14】
前記対向方向から見て、前記第1接合部と前記接触層との距離は、1mm以下且つ0mm以上である請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項15】
前記対向方向から見て、前記接触層の面積は、前記第1接合部の面積の8%以上であり、且つ、前記第1接合部と重なる領域を除いた前記第1基板の面積以下である請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項16】
MEMS構造体を含む第1基板の主面に、前記MEMS構造体を囲むように第1種類の金属を含む第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
第2基板の主面における前記第1金属層に対応する領域に、前記第1種類の金属と金属共晶反応可能な第2種類の金属を含む第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、
前記第1基板の主面または前記第2基板の主面に、前記第1種類の金属及び前記第2種類の金属の一方を含む接触層を形成する接触層形成工程と、
前記第1金属層形成工程、前記第2金属層形成工程、及び前記接触層形成工程の実行後に、前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とを対向方向に対向させ、前記接触層が前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面に接触するまで前記第1基板及び前記第2基板を互いに近づけて、前記第1金属層及び前記第2金属層を金属共晶反応させる接合工程と、を含むMEMSデバイスの製造方法。
【請求項17】
前記第1金属層及び前記第2金属層の前記対向方向の長さの合計は、前記接触層の前記対向方向の長さより長い請求項16に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項18】
前記第1金属層形成工程において、前記第1種類の金属を含む第3金属層が、前記第1基板の主面における前記第1金属層の内側に形成され、
前記第2金属層形成工程において、前記第2種類の金属を含む第4金属層が、前記第2基板の主面における前記第3金属層に対応する領域に形成され、
前記接合工程において、前記第3金属層及び前記第4金属層が金属共晶反応される請求項16または17に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項19】
前記第3金属層及び前記第4金属層の少なくとも一方は、前記第1基板及び前記第2基板のうちの自身に隣接する基板を構成する材料の少なくとも一部を含む請求項18に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項20】
前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に、電気的に絶縁された絶縁層を形成する絶縁層形成工程を更に含み、
前記接触層形成工程において、前記接触層は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に形成された前記絶縁層に、または、前記第1基板の主面または前記第2基板の主面における前記絶縁層に対応する領域に形成される請求項16または17に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項21】
前記絶縁層形成工程において形成される前記絶縁層は、
前記接合工程において前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とが前記対向方向に対向されたときに、前記対向方向から見て前記接触層と重なる第1絶縁層と、
前記接合工程において前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とが前記対向方向に対向されたときに、前記対向方向から見て前記第1金属層及び前記第2金属層と重なる第2絶縁層と、を備え、
前記絶縁層が前記第1基板の主面に形成された場合、前記第1金属層形成工程において前記第1金属層は前記第2絶縁層を介して前記第1基板の主面に形成され、
前記絶縁層が前記第2基板の主面に形成された場合、前記第2金属層形成工程において前記第2金属層は前記第2絶縁層を介して前記第2基板の主面に形成され、
前記接触層形成工程において、前記接触層は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に形成された前記第1絶縁層に、または、前記第1基板の主面または前記第2基板の主面における前記第1絶縁層に対応する領域に形成される請求項20に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項22】
前記第1基板の主面または前記第2基板の主面に凹部を形成する凹部形成工程を更に含み、
前記絶縁層形成工程において、前記絶縁層は、前記凹部に充填されることによって形成される請求項20に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造されたMEMSデバイスが知られている。MEMSデバイスは、例えば共振子等のMEMS構造体を有する第1基板に、第2基板を接合することによって形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、MEMSデバイスの一例としての電子部品が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された電子部品においては、ベース基板(第1基板)とカバー基板(第2基板)とによって内部空間を有するケーシングが構成されており、ケーシングにMEMS構造体が収容されている。第1基板の上面及び第2基板の下面に、それぞれ金属膜が形成されている。第1基板の金属膜と第2基板の金属膜とが金属共晶反応することによって、第1基板と第2基板とが接合されている。
【0005】
また、特許文献1に開示された電子部品においては、第2基板の下面に、絶縁膜が形成されている。第1基板と第2基板とが接合されるとき、絶縁膜は第1基板の上面に接触する。これにより、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきが小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-125912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1基板及び第2基板の接合は、金属膜を金属共晶反応させるために、高温且つ高荷重下で行われる。そのため、絶縁膜が変形するおそれがある。絶縁膜が変形した場合、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきが大きくなってしまう。
【0008】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきを小さくすることができるMEMSデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の一態様に係るMEMSデバイスは、
MEMS構造体を含む第1基板と、
前記第1基板と間隔を空けて対向方向に向かい合う第2基板と、
複数種類の金属の共晶合金を主材料とする共晶層を有し、前記第1基板及び前記第2基板の間に前記対向方向から見て前記MEMS構造体を囲むように設けられて、前記第1基板及び前記第2基板に接合された第1接合部と、
前記第1基板及び前記第2基板の間に設けられて前記第1基板に直接的または間接的に接触され且つ前記第2基板に直接的または間接的に接触された接触層と、を備え、
前記接触層は、前記第1接合部に含まれる前記複数種類の金属の一部を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図2図1のA-A断面を示す断面図。
図3】本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第1基板に第1金属層及び第3金属層が形成されたときの断面図。
図4】本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第1基板に接触層が形成されたときの断面図。
図5】本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第2基板に第2金属層及び第4金属層が形成されたときの断面図。
図6】本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第2基板に絶縁層が形成されたときの断面図。
図7】本発明の第2実施形態に係るMEMSデバイスの、図1のA-A断面に対応する断面を示す断面図。
図8】本発明の第3実施形態に係るMEMSデバイスの、図1のA-A断面に対応する断面を示す断面図。
図9】本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図10】本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図11】本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図12】本発明の第5実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図13図12のB-B断面を示す断面図。
図14】本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図15】本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図16】本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図17】本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図18】本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図19】本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図20】本発明の第8実施形態に係るMEMSデバイスの平面図。
図21】本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図。
図22】本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図。
図23】本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様に係るMEMSデバイスは、
MEMS構造体を含む第1基板と、
前記第1基板と間隔を空けて対向方向に向かい合う第2基板と、
複数種類の金属の共晶合金を主材料とする共晶層を有し、前記第1基板及び前記第2基板の間に前記対向方向から見て前記MEMS構造体を囲むように設けられて、前記第1基板及び前記第2基板に接合された第1接合部と、
前記第1基板及び前記第2基板の間に設けられて前記第1基板に直接的または間接的に接触され且つ前記第2基板に直接的または間接的に接触された接触層と、を備え、
前記接触層は、前記第1接合部に含まれる前記複数種類の金属の一部を含む。
【0013】
この構成によれば、第1基板、第2基板、及び第1接合部によって、MEMS構造体が振動するための空間を形成することができる。
【0014】
この構成によれば、MEMSデバイスの製造過程において、接触層が第1基板及び第2基板に接触することによって、第1基板及び第2基板の間の間隔を、接触層の高さに合わせるように制御することができる。
【0015】
複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度は、当該複数種類の金属の各々の融点より低い。よって、MEMSデバイスの製造過程において、第1接合部に含まれる複数種類の金属は、各金属の融点より低い温度で金属共晶反応する。ここで、この構成によれば、接触層は、第1接合部に含まれる複数種類の金属の一部を含む。よって、MEMSデバイスの製造過程において、接触層に含まれる金属の融点は、第1接合部に含まれる複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度より高くなる。つまり、金属の金属共晶反応が行われる高温且つ高荷重下において、接触層を化学的に安定させることができる。そのため、MEMSデバイスの製造過程において、接触層が変形することを抑制することができる。その結果、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきを小さくすることができる。
【0016】
この構成によれば、接触層が第1接合部に含まれる複数種類の金属の一部を含む。そのため、仮に、MEMSデバイスの製造過程において、接触層に含まれる金属が第1接合部に混合してしまったとしても、第1接合部に与える影響を小さくすることができる。
【0017】
前記MEMSデバイスにおいて、前記第1接合部の前記対向方向の長さは、前記接触層の前記対向方向の長さ以上であってもよい。
【0018】
この構成によれば、第1接合部の対向方向の長さは、接触層の対向方向の長さ以上である。これにより、MEMSデバイスの製造過程において、高荷重を第1接合部に加えることができる。
【0019】
本発明の一態様に係るMEMSデバイスは、前記複数種類の金属の共晶合金を主材料とする共晶層を有し、前記第1基板及び前記第2基板の間における前記対向方向から見て前記第1接合部の内側に位置して、前記第1基板及び前記第2基板に接合された第2接合部を更に備えていてもよい。
【0020】
この構成によれば、第2接合部は、対向方向から見て第1接合部の内側に位置している。そのため、第2接合部が対向方向から見て第1接合部の外側に位置している構成よりも、第2接合部はMEMS構造体の近くに位置する。その結果、第2接合部とMEMS構造体とを電気的に接続する場合に、両者の間の配線を短くすることができる。
【0021】
前記MEMSデバイスにおいて、前記第2接合部は、前記第1基板及び前記第2基板を構成する材料の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0022】
この構成によれば、第2接合部に含まれる材料が第1基板及び第2基板の少なくとも一方に拡散することによって、第2接合部と第1基板及び第2基板の少なくとも一方とは、オーミック接触を保持することができる。その結果、第2接合部を配線として使用する場合に、第2接合部と第1基板及び第2基板の少なくとも一方との電気的な接続を信頼性の高いものとすることができる。
【0023】
前記MEMSデバイスは、前記接触層に積層されており電気的に絶縁された第1絶縁層を更に備えていてもよい。
【0024】
仮に、第1基板と第2基板とが接触層を介して意図せず電気的に接続されている場合、MEMSデバイスは不要な配線を備える。この場合、例えば、当該配線と第2基板に形成されたビア導体や電極パッドとの間に寄生容量が形成されるおそれがあり、当該寄生容量によってMEMSデバイスの電気的な特性が劣化するおそれがある。また、当該配線によって、MEMSデバイスの消費電力が増えるおそれがある。
【0025】
この構成によれば、第1基板と第2基板との接触層を介しての電気的な接続は、第1絶縁層によって防止される。これにより、前述した寄生容量の形成や消費電力の増加を防止することができる。
【0026】
前記MEMSデバイスにおいて、前記第1絶縁層は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に埋設されていてもよい。
【0027】
この構成によれば、第1絶縁層の接触層との接触面を、第1絶縁層が埋設された第1基板及び第2基板と面一にすることができる。これにより、接触層による第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0028】
前記MEMSデバイスは、前記第1接合部に積層されており電気的に絶縁された第2絶縁層を更に備えていてもよく、
前記MEMSデバイスにおいて、前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層と前記対向方向に同位置または略同位置にあってもよい。
【0029】
第1接合部及び接触層のうち接触層のみに絶縁層が積層されている場合、MEMSデバイスの製造過程において、第1接合部及び接触層の間に絶縁層分の段差が生じるおそれがある。この構成によれば、第1接合部及び接触層の双方に絶縁層が積層されている。そのため、MEMSデバイスの製造過程において、第1接合部及び接触層の間の段差を小さくすることができる。これにより、接触層を形成することによる第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0030】
前記MEMSデバイスにおいて、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に埋設されていてもよい。
【0031】
この構成によれば、第2絶縁層と第1接合部との接触面、及び第1絶縁層と接触層との接触面を、絶縁層が埋設された第1基板及び第2基板と面一にすることができる。これにより、接触層による第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0032】
前記MEMSデバイスにおいて、前記第1絶縁層と前記接触層との界面部に空洞部が形成されていてもよい。
【0033】
仮に、第1絶縁層と接触層との界面部に空洞部が形成されていない場合、第1絶縁層と接触層との接触面積が大きくなる。この場合、MEMSデバイスの製造過程の高温且つ高荷重下において、接触層が第1絶縁層に押しつぶされて変形する可能性が高まる。しかし、この構成によれば、第1絶縁層と接触層との界面部に空洞部が形成されているため、第1絶縁層と接触層とが接触面積が小さくなる。これにより、MEMSデバイスの製造過程の高温且つ高荷重下において、接触層が変形する可能性を低くすることができる。
【0034】
前記MEMSデバイスにおいて、前記対向方向から見て、前記接触層は前記第1接合部の内側に位置していてもよい。
【0035】
この構成によれば、対向方向から見て接触層は第1接合部の内側に位置している。そのため、対向方向から見て接触層が第1接合部の外側に位置している構成に比べて、MEMSデバイスを小型化することができる。
【0036】
前記MEMSデバイスにおいて、
前記MEMS構造体は、
前記第1基板に対して固定された固定部と、
前記第1基板に対して可撓性を有する可動部と、を備えていてもよく、
前記対向方向から見て、前記接触層は、前記固定部に接触していてもよい。
【0037】
この構成によれば、接触層はMEMS構造体に接触している。そのため、第2基板において、MEMS構造体とは別に接触層を接触させるための領域を設ける必要がない。これにより、MEMSデバイスを小型化することができる。
【0038】
この構成によれば、接触層はMEMS構造体の固定部に接触している。そのため、MEMS構造体の振動が接触層によって阻害されることはない。
【0039】
前記MEMSデバイスにおいて、
前記対向方向から見て、前記第1接合部によって囲まれた領域は回転対称形状であってもよく、
前記対向方向から見て、前記第1接合部によって囲まれた領域の回転対称の中心部と前記接触層との距離は、前記第1接合部と前記接触層との距離よりも短くてもよい。
【0040】
対向方向から見て第1接合部に囲まれた領域の回転対称の中心部の第1接合部からの距離が長い場合、当該中心部において、第1基板及び第2基板が撓む可能性が高まる。
【0041】
この構成によれば、対向方向から見て接触層は第1接合部に囲まれた領域において回転対称の中心部近くに位置する。これにより、当該中心部における第1基板及び第2基板の撓みを抑制することができる。
【0042】
前記MEMSデバイスにおいて、前記対向方向から見て、前記接触層は前記MEMS構造体を囲んでいてもよい。
【0043】
この構成によれば、対向方向から見て接触層はMEMS構造体を囲んでいる。これにより、対向方向から見た接触層の面積を大きくすることができる。また、各位置における第1接合部と接触層との距離を均等に近づけることができる。その結果、接触層による第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0044】
前記MEMSデバイスにおいて、前記対向方向から見て、前記第1接合部と前記接触層との距離は、1mm以下且つ0mm以上であってもよい。
【0045】
対向方向から見たときの第1接合部及び接触層の距離が長くなると、MEMSデバイスの製造過程の高荷重下において液状で流動性を有する第1接合部に対する荷重が、局所的に大きくなり過ぎるおそれがある。この構成によれば、対向方向から見たときの第1接合部及び接触層の距離が1mm以下であるため、前記のような第1接合部に対して局所的に過大な荷重が作用することを低減することができる。
【0046】
前記MEMSデバイスにおいて、前記対向方向から見て、前記接触層の面積は、前記第1接合部の面積の8%以上であり、且つ、前記第1接合部と重なる領域を除いた前記第1基板の面積以下であってもよい。
【0047】
対向方向から見たときの接触層の面積が小さい場合、MEMSデバイスの製造過程の高温且つ高荷重下において接触層に対する荷重が大きくなり過ぎて、接触層が変形するおそれがある。この構成によれば、対向方向から見たときの接触層の面積が第1接合部の面積の8%以上であるため、MEMSデバイスの製造過程の高温且つ高荷重下において接触層に対する荷重が大きくなり過ぎる可能性を低くすることができる。
【0048】
本発明の一態様に係るMEMSデバイスの製造方法は、
MEMS構造体を含む第1基板の主面に、前記MEMS構造体を囲むように第1種類の金属を含む第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
第2基板の主面における前記第1金属層に対応する領域に、前記第1種類の金属と金属共晶反応可能な第2種類の金属を含む第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、
前記第1基板の主面または前記第2基板の主面に、前記第1種類の金属及び前記第2種類の金属の一方を含む接触層を形成する接触層形成工程と、
前記第1金属層形成工程、前記第2金属層形成工程、及び前記接触層形成工程の実行後に、前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とを対向方向に対向させ、前記接触層が前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面に接触するまで前記第1基板及び前記第2基板を互いに近づけて、前記第1金属層及び前記第2金属層を金属共晶反応させる接合工程と、を含む。
【0049】
この製造方法によれば、接合工程において接触層が第1基板の主面及び第2基板の主面に接触することによって、第1基板及び第2基板の間の間隔を、接触層の高さに合わせるように制御することができる。
【0050】
複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度は、当該金属の各々の融点より低い。よって、第1金属層に含まれる第1種類の金属と第2金属層に含まれる第2種類の金属とは、各金属の融点より低い温度で金属共晶反応する。ここで、この製造方法によれば、接触層は、第1種類の金属及び第2種類の金属の一方を含む。よって、接合工程において、接触層に含まれる金属の融点は、前記の金属共晶反応するときの温度より高くなる。つまり、金属の金属共晶反応が行われる高温且つ高荷重下において、接触層を化学的に安定させることができる。そのため、接合工程において、接触層が変形することを抑制することができる。その結果、第1基板及び第2基板の間隔のばらつきを小さくすることができる。
【0051】
この製造方法によれば、接触層は、第1種類の金属及び第2種類の金属の一方を含む。接触層が第1種類の金属を含む場合、仮に、接合工程において、接触層に含まれる金属が第1金属層に混合してしまったとしても、第1金属層に与える影響を小さくすることができる。接触層が第2種類の金属を含む場合、仮に、接合工程において、接触層に含まれる金属が第2金属層に混合してしまったとしても、第2金属層に与える影響を小さくすることができる。
【0052】
前記MEMSデバイスの製造方法において、前記第1金属層及び前記第2金属層の前記対向方向の長さの合計は、前記接触層の前記対向方向の長さより長くてもよい。
【0053】
この製造方法によれば、第1金属層及び第2金属層の対向方向の長さの合計は、接触層の対向方向の長さより長い。これにより、接合工程において、高荷重を第1金属層及び第2金属層に加えることができる。
【0054】
前記MEMSデバイスの製造方法において、
前記第1金属層形成工程において、前記第1種類の金属を含む第3金属層が、前記第1基板の主面における前記第1金属層の内側に形成されてもよく、
前記第2金属層形成工程において、前記第2種類の金属を含む第4金属層が、前記第2基板の主面における前記第3金属層に対応する領域に形成されてもよく、
前記接合工程において、前記第3金属層及び前記第4金属層が金属共晶反応されてもよい。
【0055】
この製造方法によれば、第3金属層は、対向方向から見て第1金属層の内側に形成される。そのため、第3金属層が対向方向から見て第1金属層の外側に形成される製造方法よりも、第3金属層をMEMS構造体の近くに形成することができる。その結果、第3金属層とMEMS構造体とを電気的に接続する場合に、両者の間の配線を短くすることができる。
【0056】
前記MEMSデバイスの製造方法において、前記第3金属層及び前記第4金属層の少なくとも一方は、前記第1基板及び前記第2基板のうちの自身に隣接する基板を構成する材料の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0057】
この製造方法によれば、第3金属層及び第4金属層は、第1基板及び第2基板を構成する材料の少なくとも一部を含む。そのため、接合工程において、第1種類の金属と第2種類の金属と金属共晶反応するとき、第3金属層及び第4金属層に含まれる材料が第1基板及び第2基板に拡散する。これにより、第3金属層及び第4金属層と第1基板及び第2基板とのオーミック接触を保持することができる。
【0058】
本発明の一態様に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に、電気的に絶縁された絶縁層を形成する絶縁層形成工程を更に含んでいてもよく、
前記MEMSデバイスの製造方法では、前記接触層形成工程において、前記接触層は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に形成された前記絶縁層に、または、前記第1基板の主面または前記第2基板の主面における前記絶縁層に対応する領域に形成されてもよい。
【0059】
仮に、第1基板と第2基板とが接触層を介して意図せず電気的に接続されている場合、MEMSデバイスは不要な配線を備える。この場合、例えば、当該配線と第2基板に形成されたビア導体や電極パッドとの間に寄生容量が形成されるおそれがあり、当該寄生容量によってMEMSデバイスの電気的な特性が劣化するおそれがある。また、当該配線によって、MEMSデバイスの消費電力が増えるおそれがある。
【0060】
この製造方法によれば、第1基板と第2基板との接触層を介しての電気的な接続は、絶縁層によって防止される。これにより、前述した寄生容量の形成や消費電力の増加を防止することができる。
【0061】
前記MEMSデバイスの製造方法において、
前記絶縁層形成工程において形成される前記絶縁層は、
前記接合工程において前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とが前記対向方向に対向されたときに、前記対向方向から見て前記第1金属層及び前記第2金属層と重なる第1絶縁層と、
前記接合工程において前記第1基板の主面と前記第2基板の主面とが前記対向方向に対向されたときに、前記対向方向から見て前記接触層と重なる第2絶縁層と、を備えていてもよく、
前記絶縁層が前記第1基板の主面に形成された場合、前記第1金属層形成工程において前記第1金属層は前記第1絶縁層を介して前記第1基板の主面に形成されてもよく、
前記絶縁層が前記第2基板の主面に形成された場合、前記第2金属層形成工程において前記第2金属層は前記第1絶縁層を介して前記第2基板の主面に形成されてもよく、
前記接触層形成工程において、前記接触層は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面の少なくとも一方に形成された前記第2絶縁層に、または、前記第1基板の主面または前記第2基板の主面における前記第2絶縁層に対応する領域に形成されてもよい。
【0062】
この製造方法によれば、絶縁層は、第1金属層及び第2金属層に対応する位置と、接触層に対応する位置との双方に形成される。これにより、前記の各位置間での段差を小さくすることができる。その結果、接触層を形成することによる第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0063】
本発明の一態様に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記第1基板の主面及び前記第2基板の主面に凹部を形成する凹部形成工程を更に含んでいてもよく、
前記MEMSデバイスの製造方法では、前記絶縁層形成工程において、前記絶縁層は、前記凹部に充填されることによって形成されてもよい。
【0064】
この製造方法によれば、絶縁層を第1基板の主面または第2基板の主面から突出しないように形成することができる。例えば、絶縁層を第1基板の主面または第2基板の主面と面一に形成することができる。これにより、接触層を形成することによる第1基板及び第2基板の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0065】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図2は、図1のA-A断面を示す断面図である。第1実施形態及び後述する各実施形態に係るMEMSデバイスは、例えば加速度センサ、角速度センサ、高周波フィルタ、MEMSスイッチ等に適用される。
【0066】
図1及び図2に示すように、第1実施形態において、MEMSデバイス10の外形は、直方体である。MEMSデバイス10は、第1基板20と、第2基板30と、第1接合部40と、接触層51と、絶縁層52と、第2接合部60とを備える。絶縁層52は、第1絶縁層の一例である。なお、MEMSデバイス10の外形は、直方体以外であってもよい。
【0067】
以下の説明では、第1基板20及び第2基板30が第1接合部40、接触層51、及び絶縁層52を介して積層されている方向が対向方向100とされる。また、以下の説明では、説明の便宜上、MEMSデバイス10のうち、第2基板30が設けられている側が上側、第1基板20が設けられている側が下側とされる。
【0068】
図2に示すように、MEMSデバイス10では、第2基板30が、第1接合部40、接触層51、及び絶縁層52を介して第1基板20の上方に積層されている。
【0069】
第1基板20は、下層21と、上層22と、絶縁層23とを備える。下層21及び上層22の各々の主材料は、シリコン(Si)である。つまり、下層21及び上層22は、シリコンを含む。主材料とは、特定の部分(例えば下層21)に含まれる材料のうち、最も大きな割合を占める材料である。絶縁層23は、電気的に絶縁された絶縁物で構成されている。例えば、第1実施形態において、絶縁層23は、二酸化シリコン(SiO)で構成されている。絶縁層23は、下層21及び上層22に挟まれており、下層21及び上層22に接合されている。つまり、下層21及び上層22は、絶縁層23を介して接合されている。以上より、第1実施形態において、第1基板20はSOI(Silicon on Insulator)基板である。なお、第1基板20は、SOI基板に限らない。例えば、下層21及び上層22は、シリコンの代わりにLN(LiNbO)やLT(LiTaO)等の圧電単結晶材料(LT,LN等)を含んでいてもよい。また、例えば、絶縁層23は、二酸化シリコン以外の絶縁物(例えばSiO)で構成されていてもよい。
【0070】
下層21及び絶縁層23に、凹部が形成されている。当該凹部の上方は、上層22によって覆われている。これにより、第1基板20に、空間24が形成されている。
【0071】
上層22は、MEMS構造体25を有する。上層22及びMEMS構造体25は、一体に形成されている。第1実施形態において、MEMS構造体25は、第1基板20の上層22に固定された固定部と、固定部に接続されており固定部に対して共振する可動部とを備える構造体である。可動部は、共振子(MEMS技術を用いて製造されるMEMS振動子)である。MEMS構造体25は、空間24及び後述する空間70に面している。言い換えると、MEMS構造体25は、対向方向100から見て空間24,70と重なる位置にある。また、図示されていないが、固定部と可動部との間には隙間が形成されている。これにより、MEMS構造体25(詳細には、MEMS構造体25の可動部)は、空間24,70と前記の隙間とを含む空間において振動可能である。なお、図示されていないが、空間24,70は互いに連通されている。また、空間24,70は、互いに連通された状態で密閉空間を形成する。
【0072】
図2及び後述する図3,4,7,8,13では省略されているが、MEMS構造体25は、シリコンの他、圧電薄膜や金属層を備えている。圧電薄膜や金属層は、MEMS構造体25内にのみ形成されていてもよいし、MEMS構造体25内及びMEMS構造体25外(上層22におけるMEMS構造体25以外の部分)に亘って形成されていてもよい。
【0073】
なお、共振子としては、公知の種々のもの(例えば、面外屈曲振動モードを用いたもの、厚み縦振動モードを用いたもの、ラム波振動モードを用いたもの等)が採用可能である。また、MEMS構造体25は、共振子に限らず、例えば静的に駆動する加速度センサやひずみセンサであってもよい。
【0074】
第2基板30は、第1基板20の上方に、第1基板20と対向方向100に対向して配置されている。第2基板30は、第1基板20と対向方向100に間隔を空けて配置されている。第2基板30の主材料は、シリコンである。つまり、第2基板30は、シリコンを含む。なお、第2基板30の主材料は、シリコン以外、例えばガラスであってもよい。
【0075】
各図に示されていないが、第1基板20及び第2基板30には、ビア導体及び電極パッドが形成され得る。ビア導体は、例えば、導電性を有する基板に形成される貫通孔、凹部、密閉空間に、絶縁材料が充填されることによって形成される。ビア導体の形成方法は、前記に限らず、例えば、ビア導体は、基板に形成される貫通孔、凹部、密閉空間に、導電性ペーストが充填されることによって形成されてもよい。電極パッドは、例えば、半導体プロセスによって形成される。なお、電極パッドの形成方法は、半導体プロセスに限らず、例えば、印刷等でもよい。
【0076】
第1接合部40は、第1基板20及び第2基板30の間に配置されている。第1接合部40の下端部は、第1基板20の主面20A(第1基板20の上層22の上面)に接合されている。第1接合部40の上端部は、第2基板30の主面30A(第2基板30の下面)に接合されている。
【0077】
図1に示すように、対向方向100から見て、第1接合部40は、環状に形成されている。対向方向100から見て、第1接合部40は、第1基板20のMEMS構造体25を囲んでいる。これにより、第1基板20、第2基板30、及び第1接合部40に囲まれた空間70が形成される。
【0078】
図2に示すように、第1接合部40は、第1金属層41と、第2金属層42と、共晶層43とを備えている。ただし、MEMSデバイス10の製造過程において、第1接合部40の全体に亘って金属共晶反応された結果、第1金属層41及び第2金属層42が明確に残らない場合がある。この場合、第1接合部40は、共晶層43のみで構成される。
【0079】
第1金属層41は、第1基板20の主面20Aに接合されている。第2金属層42は、第2基板30の主面30Aに接合されている。
【0080】
第1金属層41及び第2金属層42の主材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)等である。但し、第1金属層41の主材料と、第2金属層42の主材料とは、金属共晶反応可能である。第1実施形態において、第1金属層41の主材料はアルミニウムであり、第2金属層42の主材料はゲルマニウムである。また、第1実施形態において、第1金属層41及び第2金属層42には、微量の銅(Cu)及びチタン(Ti)が含まれる。
【0081】
共晶層43は、第1金属層41及び第2金属層42の間に位置している。共晶層43は、第1金属層41及び第2金属層42と金属共晶反応している。共晶層43は、第1金属層41に含まれる金属と、第2金属層42に含まれる金属との共晶合金を主材料としている。第1実施形態において、共晶層43は、第1金属層41の主材料であるアルミニウムと、第2金属層42の主材料であるゲルマニウムとの共晶合金を主材料としている。つまり、第1実施形態において、アルミニウム及びゲルマニウムは、複数種類の金属に相当する。
【0082】
接触層51は、第1基板20及び第2基板30の間に配置されている。接触層51の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。接触層51の上端部は、絶縁層52に積層されている。
【0083】
図1に示すように、対向方向100から見て、接触層51は、第1接合部40の外側に位置している。第1実施形態において、MEMSデバイス10は、4つの接触層51を備える。4つの接触層51の各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点の近くに位置している。
【0084】
図2に示すように、絶縁層52は、接触層51に積層されている。第1実施形態において、絶縁層52は、接触層51の上方に位置する。接触層51の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。絶縁層52の上端部は、第2基板30の主面30Aに接触している。つまり、接触層51は、絶縁層52を介して第2基板30に接触している。すなわち、図2では、接触層51は、第1基板20に直接的に接触しており、第2基板30に間接的に接触している。間接的に接触とは、接触層51が絶縁層52を介して第1基板20(後述する別の例では第2基板30)と接触することである。
【0085】
接触層51は、第1接合部40の共晶層43の主材料である共晶合金を構成する複数種類の金属の一部を含む。第1実施形態において、接触層51は、共晶層43の共晶合金を構成する2種類の金属(アルミニウム及びゲルマニウム)の一部を含む。つまり、接触層51は、アルミニウム及びゲルマニウムのいずれかを含む。なお、接触層51は、共晶合金を含まない。複数種類の金属の一部が複数種類である場合、複数種類である当該一部の金属は、互いに金属共晶反応しない種類の金属で構成される。
【0086】
接触層51は、共晶層43の共晶合金を構成する複数種類の金属の一部のみ(第1実施形態ではアルミニウム及びゲルマニウムのいずれかのみ)で構成されていてもよいし、当該複数種類の金属以外の材料、例えばスズを含んでいてもよい。
【0087】
第1実施形態において、接触層51は、共晶層43の共晶合金を構成する複数種類の金属(アルミニウム及びゲルマニウム)の一部を主材料としている。しかし、接触層51は、共晶層43の共晶合金を構成する複数種類の金属の一部を含んでいることを条件として、当該複数種類の金属以外の材料を主材料としてもよい。例えば、第1金属層41が金を含み、第2金属層42がインジウムを含み、共晶層43が金及びインジウムの共晶合金を含む場合、接触層51は、金またはインジウムを主材料としてもよい。
【0088】
絶縁層52は、電気的に絶縁された絶縁物で構成されている。例えば、第1実施形態において、絶縁層52は、二酸化シリコン(SiO)で構成されている。絶縁層52は、接触層51及び第2基板30の間に介在している。これにより、接触層51及び第1基板20と第2基板30との間は、電気的に絶縁されている。
【0089】
前述したように、絶縁層52は接触層51の上方に位置する。しかし、絶縁層52は接触層51の下方に位置していてもよい。この場合、絶縁層52の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。つまり、接触層51は、絶縁層52を介して第1基板20に接触している。また、接触層51の上端部は、第2基板30の主面30Aに接触している。すなわち、この場合、接触層51は、第1基板20に間接的に接触しており、第2基板30に直接的に接触している。
【0090】
また、絶縁層52は、接触層51の上方及び下方に位置していてもよい。言い換えると、2つの絶縁層52は、対向方向100において接触層51を挟んでいてもよい。この場合、絶縁層52の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。つまり、接触層51は、絶縁層52を介して第1基板20に接触している。また、絶縁層52の上端部は、第2基板30の主面30Aに接触している。つまり、接触層51は、絶縁層52を介して第2基板30に接触している。すなわち、この場合、接触層51は、第1基板20に間接的に接触しており、第2基板30に間接的に接触している。
【0091】
また、絶縁層52は、対向方向100において2つの接触層51の間に位置していてもよい。言い換えると、絶縁層52は、対向方向100において2つの接触層51によって挟まれていてもよい。この場合、接触層51の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。また、接触層51の上端部は、第2基板30の主面30Aに接触している。すなわち、この場合、接触層51は、第1基板20に直接的に接触しており、第2基板30に直接的に接触している。
【0092】
接触層51及び絶縁層52の対向方向100の長さは、第1接合部40の対向方向100の長さと同一または略同一である。なお、第1接合部40の対向方向100の長さは、接触層51及び絶縁層52の対向方向100の長さより長くてもよい。例えば、第1基板20及び第2基板30の少なくとも一方が反っていることによって、第1基板20及び第2基板30の間隔にばらつきが生じている場合、第1接合部40の対向方向100の長さは、接触層51及び絶縁層52の対向方向100の長さより長くなり得る。また、例えば、第1接合部40の上端部及び下端部の少なくとも一方が、第1基板20または第2基板30に埋設されている場合、第1接合部40の対向方向100の長さは、接触層51及び絶縁層52の対向方向100の長さより長くなり得る。
【0093】
図2に示すように、第2接合部60は、第1基板20及び第2基板30の間に配置されている。第2接合部60の下端部は、第1基板20の主面20Aに接合されている。第2接合部60の上端部は、第2基板30の主面30Aに接合されている。
【0094】
図1に示すように、対向方向100から見て、第2接合部60は、第1接合部40の内側に位置している。対向方向100から見て、第2接合部60は、第1接合部40と第1基板20のMEMS構造体25との間に位置している。
【0095】
図2に示すように、第2接合部60は、第3金属層61と、第4金属層62と、共晶層63とを備えている。
【0096】
第3金属層61は、第1基板20の主面20Aに接合されている。第4金属層62は、第2基板30の主面30Aに接合されている。
【0097】
第3金属層61及び第4金属層62の主材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)等である。但し、第3金属層61の主材料と、第4金属層62の主材料とは、金属共晶反応可能である。第1実施形態において、第3金属層61の主材料は第1金属層41の主材料と同じであり、第4金属層62の主材料は第2金属層42の主材料と同じである。つまり、第3金属層61の主材料はアルミニウムであり、第4金属層62の主材料はゲルマニウムである。また、第1実施形態において、第3金属層61及び第4金属層62には、微量の銅(Cu)及びチタン(Ti)が含まれる。第3金属層61の主材料は第1金属層41の主材料と異なっていてもよい。第4金属層62の主材料は第2金属層42の主材料と異なっていてもよい。
【0098】
また、第2接合部60は、第1基板20及び第2基板30を構成する材料の少なくとも一部を含む。第1実施形態において、第3金属層61は、第1基板20の上層22を構成する材料であるシリコンを含み、第4金属層62は、第2基板30を構成する材料であるシリコンを含む。
【0099】
なお、第1基板20が第1材料を含み、第2基板30が第1材料とは異なる第2材料を含む場合、第3金属層61が第1材料を含み、第4金属層62が第2材料を含んでいてもよい。また、第1材料及び第2材料の異同にかかわらず、第3金属層61及び第4金属層62の一方のみが、第1材料及び第2材料の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0100】
共晶層63は、第3金属層61及び第4金属層62の間に位置している。共晶層63は、第3金属層61及び第4金属層62の各々と金属共晶反応している。共晶層63は、第3金属層61に含まれる金属と、第4金属層62に含まれる金属との共晶合金を主材料としている。第1実施形態において、共晶層63は、第3金属層61の主材料であるアルミニウムと、第4金属層62の主材料であるゲルマニウムとの共晶合金を主材料としている。
【0101】
図1に示すように、第1実施形態において、第1接合部40と接触層51との距離Dは、1mm以下である。距離Dは、第1接合部40と接触層51との最短距離である。第1接合部40と接触層51とは接していてもよい。つまり、距離Dは、1mm以下且つ0mm以上である。なお、距離Dは、1mmより長くてもよい。なお、第1実施形態において、MEMSデバイス10の面内方向の長さ(図1の縦及び横の長さ)は、例えば0.8~5mm程度であり、MEMSデバイス10の厚み(図2の対向方向100の長さ)は、例えば0.5~1mm程度である。
【0102】
図1に示すように、対向方向100から見て、接触層51の面積は、第1接合部40の面積の8%以上である。接触層51は、対向方向100から見て第1接合部40と重なる領域を除いた部分の全域を占めていてもよい。つまり、対向方向100から見て、接触層51の面積は、第1接合部40と重なる領域を除いた第1基板20の面積以下である。
【0103】
第1実施形態によれば、第1基板20、第2基板30、及び第1接合部40によって、MEMS構造体25が振動するための空間を形成することができる。
【0104】
第1実施形態によれば、MEMSデバイス10の製造過程において、接触層51及び絶縁層52が第1基板20及び第2基板30に接触することによって、第1基板20及び第2基板30の間の間隔を、接触層51及び絶縁層52の高さに合わせるように制御することができる。
【0105】
複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度は、当該複数種類の金属の各々の融点より低い。よって、MEMSデバイス10の製造過程において、第1接合部40に含まれる複数種類の金属は、各金属の融点より低い温度で金属共晶反応する。ここで、第1実施形態によれば、接触層51は、第1接合部40に含まれる複数種類の金属の一部を含む。よって、MEMSデバイス10の製造過程において、接触層51に含まれる金属の融点は、第1接合部40に含まれる複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度より高くなる。つまり、金属の金属共晶反応が行われる高温且つ高荷重下において、接触層51を化学的に安定させることができる。そのため、MEMSデバイス10の製造過程において、接触層51が変形することを抑制することができる。その結果、第1基板20及び第2基板30の間隔のばらつきを小さくすることができる。
【0106】
第1実施形態によれば、接触層51が第1接合部40に含まれる複数種類の金属の一部を含む。そのため、仮に、MEMSデバイス10の製造過程において、接触層51に含まれる金属が第1接合部40に混合してしまったとしても、第1接合部40に与える影響を小さくすることができる。
【0107】
第1実施形態によれば、第1接合部40の対向方向100の長さは、接触層51の対向方向100の長さ以上である。これにより、MEMSデバイス10の製造過程において、高荷重を第1接合部40の第1金属層41及び第2金属層42に加えることができる。
【0108】
第1実施形態によれば、第2接合部60は、対向方向100から見て第1接合部40の内側に位置している。そのため、第2接合部60が対向方向100から見て第1接合部40の外側に位置している構成よりも、第2接合部60はMEMS構造体25の近くに位置する。その結果、第2接合部60とMEMS構造体25とを電気的に接続する場合に、両者の間の配線を短くすることができる。
【0109】
第1実施形態によれば、第2接合部60が第1基板20及び第2基板30を構成する材料の少なくとも一部を含む。そのため、MEMSデバイス10の製造過程において、複数種類の金属が金属共晶反応して共晶合金が形成されるとき、第2接合部60に含まれる材料が第1基板20や第2基板30に拡散する。これにより、第2接合部60と第1基板20及び第2基板30の少なくとも一方とは、オーミック接触を保持することができる。その結果、第2接合部60を配線として使用する場合に、第2接合部60と第1基板20及び第2基板30の少なくとも一方との電気的な接続を信頼性の高いものとすることができる。
【0110】
仮に、第1基板20と第2基板30とが接触層51を介して意図せず電気的に接続されている場合、MEMSデバイス10は不要な配線を備える。この場合、例えば、当該配線と第2基板30に形成されたビア導体や電極パッドとの間に寄生容量が形成されるおそれがあり、当該寄生容量によってMEMSデバイス10の電気的な特性が劣化するおそれがある。また、当該配線によって、MEMSデバイス10の消費電力が増えるおそれがある。
【0111】
第1実施形態によれば、第1基板20と第2基板30との接触層51を介しての電気的な接続は、絶縁層52によって防止される。これにより、前述した寄生容量の形成や消費電力の増加を防止することができる。
【0112】
対向方向100から見たときの第1接合部40及び接触層51の距離が長くなると、MEMSデバイス10の製造過程の高荷重下において液状で流動性を有する第1接合部40に対する荷重が、局所的に大きくなり過ぎるおそれがある。第1実施形態によれば、対向方向100から見たときの第1接合部40及び接触層51の距離が1mm以下であるため、前記のような第1接合部40に対して局所的に過大な荷重が作用することを低減することができる。
【0113】
対向方向100から見たときの接触層51の面積が小さい場合、MEMSデバイス10の製造過程の高温且つ高荷重下において接触層51に対する荷重が大きくなり過ぎて、接触層51が変形するおそれがある。第1実施形態によれば、対向方向100から見たときの接触層51の面積が第1接合部40の面積の8%以上であるため、MEMSデバイス10の製造過程の高温且つ高荷重下において接触層51に対する荷重が大きくなり過ぎる可能性を低くすることができる。
【0114】
第1実施形態では、MEMSデバイス10は、絶縁層52を備えるが、絶縁層52を備えていなくてもよい。この場合、接触層51の下端部は、第1基板20の主面20Aに接触している。また、接触層51の上端部は、第2基板30の主面30Aに接触している。すなわち、この場合、接触層51は、第1基板20に直接的に接触しており、第2基板30に直接的に接触している。
【0115】
<第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造方法>
以下に、第1実施形態に係るMEMSデバイス10の製造方法の一例が、図3図6が参照されつつ説明される。図3は、本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第1基板に第1金属層及び第3金属層が形成されたときの断面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第1基板に接触層が形成されたときの断面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第2基板に第2金属層及び第4金属層が形成されたときの断面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係るMEMSデバイスの製造過程において第2基板に絶縁層が形成されたときの断面図である。
【0116】
MEMSデバイス10は、積層体が複数に個片化されることにより製造される。積層体は、複数のMEMSデバイス10が配列された状態で一体化されたものである。図3図6では、説明の便宜上、積層体のうち1つのMEMSデバイス10に対応する部分のみが示される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10の製造方法は、第1金属層形成工程、接触層形成工程、第2金属層形成工程、絶縁層形成工程、接合工程、研磨工程、電極形成工程、及び個片化工程を含む。
【0117】
(第1金属層形成工程)
最初に、第1金属層形成工程が実行される。第1金属層形成工程では、図3に示すように、第1基板20が用意される。第1基板20は、公知の方法で製造される。前述したように、第1基板20は、下層21と、下層21と対向して配置され且つMEMS構造体25を有する上層22と、下層21及び上層22の間に介在された絶縁層23とを備える。第1基板20には、空間24が形成されている。MEMS構造体25は、空間24に面している。なお、図示されていないが、第1基板20には、ビア導体(例えばシリコン貫通電極(TSV))や電極パッドが形成されていてもよい。
【0118】
第1基板20の主面20Aに、第1金属層41及び第3金属層61が形成される。前述したように、第1実施形態において、第1金属層41及び第3金属層61の主材料は、アルミニウムである。アルミニウムは、第1種類の金属の一例である。第1種類の金属は、後述する第2種類の金属と金属共晶反応可能である。なお、第1種類の金属は、第2種類の金属と金属共晶反応可能であることを条件として、アルミニウム以外であってもよい。例えば、第1種類の金属は、金、インジウム、スズ、ゲルマニウム等であってもよい。
【0119】
第3金属層61は、自身に隣接する第1基板20の上層22を構成する材料であるシリコンを含む。
【0120】
第3金属層61は、MEMS構造体25と異なる位置に形成される。第1金属層41は、対向方向100から見て環状である。第1金属層41は、対向方向100から見てMEMS構造体25及び第3金属層61を囲むように形成される。つまり、第3金属層61は、主面20Aにおける第1金属層41の内側に形成される。
【0121】
第1金属層41及び第3金属層61は、例えば半導体プロセスによって形成される。なお、第1金属層41及び第3金属層61の形成方法は、半導体プロセスに限らず、例えば、印刷等でもよい。
【0122】
(接触層形成工程)
次に、接触層形成工程が実行される。接触層形成工程では、図4に示すように、第1基板20の主面20Aに、接触層51が形成される。接触層51は、第1種類の金属(本製造方法ではアルミニウム)と後述する第2種類の金属(本製造方法ではゲルマニウム)との一方を含む。
【0123】
本製造方法では、4つの接触層51が、対向方向100から見て第1金属層41の外側に形成される。4つの接触層51の各々は、対向方向100から見て長方形の外形である第1金属層41の4つの頂点の近くに形成される。
【0124】
接触層51は、例えば半導体プロセスによって形成される。なお、接触層51の形成方法は、半導体プロセスに限らず、例えば、印刷等でもよい。
【0125】
(第2金属層形成工程)
次に、第2金属層形成工程が実行される。第2金属層形成工程では、図5に示すように、第2基板30が用意される。第2基板30は、公知の方法で製造される。なお、図示されていないが、第2基板30には、ビア導体(例えばシリコン貫通電極(TSV))や電極パッドが形成されていてもよい。
【0126】
第2基板30の主面30Aに、第2金属層42及び第4金属層62が形成される。前述したように、第1実施形態において、第2金属層42及び第4金属層62の主材料は、ゲルマニウムである。ゲルマニウムは、第2種類の金属の一例である。第2種類の金属は、第1種類の金属と金属共晶反応可能である。なお、第2種類の金属は、第1種類の金属と金属共晶反応可能であることを条件として、ゲルマニウム以外であってもよい。例えば、第2種類の金属は、アルミニウム、金、インジウム、スズ等であってもよい。
【0127】
第4金属層62は、自身に隣接する第2基板30を構成する材料であるシリコンを含む。
【0128】
第2金属層42は、後述する接合工程において第2基板30が第1基板20と対向して配置されるときに第1金属層41に対応する領域に形成される。つまり、第2金属層42は、対向方向100から見て第1金属層41と同じ大きさ且つ同じ形状(または略同じ大きさ且つ略同じ形状)である。
【0129】
第4金属層62は、後述する接合工程において第2基板30が第1基板20と対向して配置されるときに第3金属層61に対応する領域に形成される。つまり、第4金属層62は、対向方向100から見て第3金属層61と同じ大きさ且つ同じ形状(または略同じ大きさ且つ略同じ形状)である。
【0130】
第2金属層42及び第4金属層62は、例えば半導体プロセスによって形成される。なお、第2金属層42及び第4金属層62の形成方法は、半導体プロセスに限らず、例えば、印刷等でもよい。
【0131】
(絶縁層形成工程)
次に、絶縁層形成工程が実行される。絶縁層形成工程では、図6に示すように、第2基板30の主面30Aに、絶縁層52が形成される。絶縁層52は、電気的に絶縁された絶縁物(第1実施形態では二酸化シリコン)で構成されている。
【0132】
絶縁層52は、後述する接合工程において第2基板30が第1基板20と対向して配置されるときに接触層51に対応する領域に形成される。つまり、絶縁層52は、対向方向100から見て接触層51と同じ大きさ且つ同じ形状(または略同じ大きさ且つ略同じ形状)である。
【0133】
絶縁層52は、例えば半導体プロセスによって形成される。
【0134】
絶縁層52の対向方向100の長さL4(図6参照)、及び接触層51の対向方向100の長さL3(図4参照)の合計は、長さL1(図3参照)及び長さL2(図5参照)の合計より短い。図3に示す長さL1は、第1金属層41の対向方向100の長さである。図5に示す長さL2は、第2金属層42の対向方向100の長さL2(図5参照)である。
【0135】
本製造方法では、接触層51が第1基板20の主面20Aに形成され、絶縁層52が第2基板30の主面30Aに形成される。しかし、このような方法に限らない。
【0136】
例えば、絶縁層52が第1基板20の主面20Aに形成され、接触層51が第2基板30の主面30Aに形成されてもよい。この場合、接触層51は、接合工程において第2基板30が第1基板20と対向して配置されるときに絶縁層52に対応する領域に形成される。
【0137】
また、例えば、接触層51及び絶縁層52が共に第1基板20の主面20Aに形成されてもよい。この場合、絶縁層形成工程において絶縁層52が第1基板20の主面20Aに形成される。その後、接触層形成工程が実行される。接触層形成工程において、接触層51は、絶縁層52に積層される。これにより、接触層51は、絶縁層52を介して第1基板20の主面20Aに形成される。
【0138】
また、例えば、接触層51及び絶縁層52が共に第2基板30の主面30Aに形成されてもよい。この場合、絶縁層形成工程において絶縁層52が第2基板30の主面30Aに形成される。その後、接触層形成工程が実行される。接触層形成工程において、接触層51は、絶縁層52に積層される。これにより、接触層51は、絶縁層52を介して第2基板30の主面30Aに形成される。
【0139】
また、例えば、絶縁層形成工程において、絶縁層52が第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aに形成されてもよい。この場合、接触層形成工程において、接触層51は、主面20Aに形成された絶縁層52または主面30Aに形成された絶縁層52に積層される。
【0140】
以上より、接触層51は、第1基板20の主面20Aまたは第2基板30の主面30Aに形成され得る。
【0141】
MEMSデバイス10は絶縁層52を備えていなくてもよい。この場合、接触層51の対向方向100の長さL3(図4参照)は、第1金属層41の対向方向100の長さL1(図3参照)、及び第2金属層42の対向方向100の長さL2(図5参照)の合計より短い。
【0142】
(接合工程)
次に、接合工程が実行される。接合工程では、図4に示す第1基板20と、図6に示す第2基板30とが、主面20A及び主面30Aが向かい合うように対向方向100に対向される。このとき、第1金属層41及び第2金属層42が互いに対向し、第3金属層61及び第4金属層62が互いに対向し、接触層51及び絶縁層52が互いに対向する。
【0143】
次に、所定温度下において、例えば10MPa以上の荷重を、第1基板20及び第2基板30に対して印加する。第1基板20に対する荷重の向きは、第2基板30へ近づく向きである。第2基板30に対する荷重の向きは、第1基板20へ近づく向きである。
【0144】
所定温度は、例えば200℃以上の温度である。また、所定温度は、第1金属層41及び第3金属層61の主材料(第1実施形態ではアルミニウム)と、第2金属層42及び第4金属層62の主材料(第1実施形態ではゲルマニウム)とが金属共晶反応可能な温度以上に設定される。また、所定温度は、第1金属層41及び第3金属層61の主材料(第1実施形態ではアルミニウム)の融点より低く、且つ第2金属層42及び第4金属層62の主材料(第1実施形態ではゲルマニウム)の融点より低い温度に設定される。
【0145】
第1基板20及び第2基板30に対して荷重が印加されることにより、第1基板20及び第2基板30が互いに近づき、第1金属層41及び第2金属層42が接触し、第3金属層61及び第4金属層62が接触する。このとき、接触層51及び絶縁層52は、未だ接触していない。長さL1,L2の合計は、長さL3,L4の合計より長いためである。
【0146】
第1金属層41及び第2金属層42が接触し、第3金属層61及び第4金属層62が接触した状態から、接触層51及び絶縁層52が互いに更に近づくと、拡散が発生する。
【0147】
つまり、第1金属層41及び第2金属層42の界面部において、第1金属層41の主材料(第1実施形態ではアルミニウム)と、第2金属層42の主材料(第1実施形態ではゲルマニウム)とが、相手方の金属層へ拡散して金属共晶反応する。これにより、両主材料の共晶合金を主材料とする共晶層43が、第1金属層41及び第2金属層42の間に形成される。
【0148】
また、第3金属層61及び第4金属層62の界面部において、第3金属層61の主材料(第1実施形態ではアルミニウム)と、第4金属層62の主材料(第1実施形態ではゲルマニウム)とが、相手方の金属層へ拡散して金属共晶反応する。これにより、両主材料の共晶合金を主材料とする共晶層63が、第3金属層61及び第4金属層62の間に形成される。
【0149】
接触層51及び絶縁層52が接触すると、言い換えると、接触層51が直接または絶縁層52を介して第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aに接触すると、荷重の印加による第1基板20及び第2基板30の相対位置の変化が停止する。これにより、第1金属層41、第2金属層42、第3金属層61、及び第4金属層62の位置が固定されるため、前記の拡散及び金属共晶反応がそれ以上発生しなくなる。その結果、図2に示すように、第1金属層41、第2金属層42、及び共晶層43よりなる第1接合部40が形成され、第3金属層61、第4金属層62、及び共晶層63よりなる第2接合部60が形成される。
【0150】
(研磨工程)
次に、研磨工程が実行される。研磨工程では、第2基板30における主面30Aとは反対側の面が研磨されて取り除かれる。これにより、第2基板30にシリコン貫通電極が形成されている場合に、当該シリコン貫通電極が露出され得る。
【0151】
(電極形成工程)
次に、電極形成工程が実行される。電極形成工程では、研磨工程において露出されたシリコン貫通電極に対して、金、アルミニウム等の金属薄膜が公知の手段によってパターニングされる。これにより、第2基板30に電極パッドが形成される。
【0152】
(個片化工程)
次に、個片化工程が実行される。個片化工程では、積層体が、複数のMEMSデバイス10に切断される。積層体の切断には、例えば、ダイシングソー、ギロチンカッタ、レーザ等が使用される。
【0153】
この製造方法によれば、接合工程において接触層51が絶縁層52を介してまたは直接に第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aに接触することによって、第1基板20及び第2基板30の間の間隔を、接触層51及び絶縁層52の高さに合わせるように制御することができる。
【0154】
複数種類の金属が金属共晶反応するときの温度は、当該金属の各々の融点より低い。よって、第1金属層41に含まれる第1種類の金属と第2金属層42に含まれる第2種類の金属とは、各金属の融点より低い温度で金属共晶反応する。ここで、この製造方法によれば、接触層51は、第1種類の金属及び第2種類の金属の一方を含む。よって、接合工程において、接触層51に含まれる金属の融点は、前記の金属共晶反応するときの温度より高くなる。つまり、金属の金属共晶反応が行われる高温且つ高荷重下において、接触層51を化学的に安定させることができる。そのため、接合工程において、接触層51が変形することを抑制することができる。その結果、第1基板20及び第2基板30の間隔のばらつきを小さくすることができる。
【0155】
この製造方法によれば、接触層51は、第1種類の金属及び第2種類の金属の一方を含む。接触層51が第1種類の金属を含む場合、仮に、接合工程において、接触層51に含まれる金属が第1金属層41に混合してしまったとしても、第1金属層41に与える影響を小さくすることができる。接触層51が第2種類の金属を含む場合、仮に、接合工程において、接触層51に含まれる金属が第2金属層42に混合してしまったとしても、第2金属層42に与える影響を小さくすることができる。
【0156】
この製造方法によれば、第1金属層41及び第2金属層42の対向方向100の長さの合計L1+L2は、接触層51の対向方向100の長さL3より長い。これにより、接合工程において、高荷重を第1金属層41及び第2金属層42に加えることができる。
【0157】
この製造方法によれば、第3金属層61は、対向方向100から見て第1金属層41の内側に形成される。そのため、第3金属層61が対向方向100から見て第1金属層41の外側に形成される製造方法よりも、第3金属層61をMEMS構造体25の近くに形成することができる。その結果、第3金属層61とMEMS構造体25とを電気的に接続する場合に、両者の間の配線を短くすることができる。
【0158】
この製造方法によれば、第3金属層61及び第4金属層62は、第1基板20及び第2基板30を構成する材料の少なくとも一部を含む。そのため、接合工程において、第1種類の金属と第2種類の金属と金属共晶反応するとき、第3金属層61及び第4金属層62に含まれる材料が第1基板20及び第2基板30に拡散する。これにより、第3金属層61及び第4金属層62と第1基板20及び第2基板30とのオーミック接触を保持することができる。
【0159】
仮に、第1基板20と第2基板30とが接触層51を介して意図せず電気的に接続されている場合、MEMSデバイス10は不要な配線を備える。この場合、例えば、当該配線と第2基板30に形成されたビア導体や電極パッドとの間に寄生容量が形成されるおそれがあり、当該寄生容量によってMEMSデバイス10の電気的な特性が劣化するおそれがある。また、当該配線によって、MEMSデバイス10の消費電力が増えるおそれがある。
【0160】
この製造方法によれば、第1基板20と第2基板30との接触層51を介しての電気的な接続は、絶縁層52によって防止される。これにより、前述した寄生容量の形成や消費電力の増加を防止することができる。
【0161】
前述した製造方法では、第3金属層61は自身に隣接する第1基板20を構成する材料であるシリコンを含み、第4金属層62は自身に隣接する第2基板30を構成する材料であるシリコンを含む。しかし、第3金属層61及び第4金属層62の一方のみが、自身に隣接する基板を構成する材料(第1実施形態ではシリコン)を含んでいてもよい。
【0162】
前述した製造方法において、各工程の順序は、前述した順序に限らない。例えば、第2金属層形成工程及び絶縁層形成工程が、第1金属層形成工程及び接触層形成工程より先に実行されてもよい。
【0163】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るMEMSデバイスの、図1のA-A断面に対応する断面を示す断面図である。第2実施形態に係るMEMSデバイス10Aが第1実施形態に係るMEMSデバイス10と異なることは、絶縁層44を備えることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0164】
MEMSデバイス10Aは、絶縁層44を備えている。絶縁層44は、第2絶縁層の一例である。
【0165】
第2実施形態において、絶縁層44は、第2金属層42と第2基板30の主面30Aの間に位置している。つまり、絶縁層44は、第2金属層42に積層されている。言い換えると、絶縁層44は、第2基板30の主面30Aに形成されている。第2実施形態において、絶縁層44は、絶縁層52と対向方向100に同位置にある。なお、絶縁層44は、絶縁層52と対向方向100に略同位置にあってもよい。また、絶縁層44は、絶縁層52と対向方向100に異なる位置にあってもよい。例えば、絶縁層44が主面30Aに積層されている一方で、絶縁層52が主面20Aに積層されていてもよい。
【0166】
絶縁層44は、電気的に絶縁された絶縁物で構成されている。例えば、第2実施形態において、絶縁層44は、絶縁層52と同じ材料(二酸化シリコン(SiO))で構成されている。これにより、第1基板20と第2基板30との間は、電気的に絶縁されている。絶縁層44は、絶縁層52と異なる材料で構成されていてもよい。
【0167】
前述したように、絶縁層44は、第2金属層42と第2基板30の主面30Aの間に位置している。しかし、絶縁層44の対向方向100の位置は、第2金属層42と第2基板30の主面30Aの間に限らない。例えば、絶縁層44は、第1金属層41と第1基板20の主面20Aの間に位置していてもよい。つまり、絶縁層44は、絶縁層52と対向方向100に異なる位置にあってもよい。また、例えば、絶縁層44は、第2金属層42と第2基板30の主面30Aの間と、第1金属層41と第1基板20の主面20Aの間との双方に位置していてもよい。
【0168】
第1接合部40及び接触層51のうち接触層51のみに絶縁層が積層されている場合、MEMSデバイス10の製造過程において、第1接合部40及び接触層51の間に絶縁層分の段差が生じるおそれがある。第2実施形態によれば、第1接合部40及び接触層51の双方に絶縁層が積層されている。そのため、MEMSデバイス10の製造過程において、第1接合部40及び接触層51の間の段差を小さくすることができる。これにより、接触層51を形成することによる第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0169】
第2実施形態に係るMEMSデバイス10Aの製造方法では、絶縁層形成工程において、第2基板30の主面30Aに、絶縁層44,52が形成される。
【0170】
絶縁層44は、接合工程において第2基板30の主面30Aが第1基板20の主面20Aと対向方向100に対向されるときに、第1金属層41及び第2金属層42に対応する領域に形成される。これにより、絶縁層44は、接合工程において第2基板30の主面30Aが第1基板20の主面20Aと対向方向100に対向されるときに、対向方向100から見て第1金属層41及び第2金属層42と重なる。
【0171】
絶縁層52は、接合工程において第2基板30の主面30Aが第1基板20の主面20Aと対向方向100に対向されるときに、接触層51に対応する領域に形成される。これにより、絶縁層52は、接合工程において第2基板30の主面30Aが第1基板20の主面20Aと対向方向100に対向されるときに、対向方向100から見て接触層51と重なる。絶縁層52は、第1絶縁層の一例である。
【0172】
本製造例のように、絶縁層44が第2基板30の主面30Aに形成された場合、第2金属層形成工程において第2金属層42は絶縁層44を介して第2基板30の主面30Aに形成される。
【0173】
本製造例とは異なり、絶縁層44が第1基板20の主面20Aに形成された場合、第1金属層形成工程において第1金属層41は絶縁層44を介して第1基板20の主面20Aに形成される。また、絶縁層44が主面20A,30Aの双方に形成された場合、第1金属層形成工程において第1金属層41は絶縁層44を介して第1基板20の主面20Aに形成され、第2金属層形成工程において第2金属層42は絶縁層44を介して第2基板30の主面30Aに形成される。
【0174】
接触層51は、第1実施形態に係るMEMSデバイス10の製造方法と同様に形成される。
【0175】
絶縁層44が形成される工程と、絶縁層52が形成される工程とが、別工程であってもよい。例えば、絶縁層44が絶縁層52と異なる材料で構成されている場合、絶縁層44,52は別工程で形成される。また、例えば、絶縁層44が絶縁層52と異なる位置に形成されている場合(例えば、絶縁層44が第2基板30の主面30Aに形成される一方で、絶縁層52が第1基板20の主面20Aに形成される場合)、絶縁層44,52は別工程で形成される。
【0176】
この製造方法によれば、絶縁層は、第1金属層41及び第2金属層42に対応する位置と、接触層51に対応する位置との双方に形成される。これにより、前記の各位置間での段差を小さくすることができる。その結果、接触層51を形成することによる第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0177】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係るMEMSデバイスの、図1のA-A断面に対応する断面を示す断面図である。第3実施形態に係るMEMSデバイス10Bが第2実施形態に係るMEMSデバイス10Aと異なることは、絶縁層44,52が第2基板30に埋設されていることである。以下、第2実施形態との相違点が説明される。第2実施形態に係るMEMSデバイス10Aとの共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0178】
MEMSデバイス10Bでは、第2基板30の主面30Aに、凹部31が形成されている。凹部31は、絶縁層44,52に対応する領域に形成されている。凹部31には、絶縁層44,52が埋設されている。つまり、絶縁層44,52は、第2基板30に埋設されている。
【0179】
絶縁層44,52は、第1基板20に埋設されていてもよい。この場合、凹部31は、第1基板20の主面20Aに形成される。絶縁層44,52の一方が第1基板20に埋設され、絶縁層44,52の他方が第2基板30に埋設されていてもよい。この場合、凹部31は、第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aに形成される。絶縁層44,52は、第1基板20及び第2基板30の双方に埋設されていてもよい。
【0180】
絶縁層52を備えていない第1実施形態に係るMEMSデバイス10において、絶縁層44が埋設されていてもよい。この場合、絶縁層44は、第1基板20及び第2基板30の少なくとも一方に埋設される。
【0181】
第3実施形態によれば、絶縁層52の接触層51との接触面を、絶縁層52が埋設された第1基板20及び第2基板30と面一にすることができる。これにより、接触層51による第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0182】
第3実施形態によれば、絶縁層44と第1接合部40との接触面、及び絶縁層52と接触層51との接触面を、絶縁層が埋設された第1基板20及び第2基板30と面一にすることができる。これにより、接触層51による第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0183】
第3実施形態に係るMEMSデバイス10Bの製造方法では、絶縁層形成工程より前に凹部形成工程が実行される。
【0184】
凹部形成工程では、第2基板30の主面30Aにおける絶縁層44,52が形成される領域に、凹部31が形成される。
【0185】
凹部形成工程より後に実行される絶縁層形成工程において、絶縁層44,52の材料(例えば二酸化シリコン)で構成されるペーストが、凹部31に充填される。
【0186】
その後、第2金属層形成工程が実行される。第2金属層42は絶縁層44を介して第2基板30の主面30Aに形成される。
【0187】
なお、絶縁層44,52が第1基板20に形成される場合、凹部形成工程において、凹部は、第1基板20の主面20Aにおける絶縁層44,52が形成される領域に形成される。また、絶縁層44,52が第1基板20及び第2基板30に形成される場合、凹部形成工程において、凹部は、第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aにおける絶縁層44,52が形成される領域に形成される。つまり、凹部は、第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aの少なくとも一方に形成される。
【0188】
この製造方法によれば、絶縁層44,52を第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aから突出しないように形成することができる。例えば、絶縁層44,52を第1基板20の主面20A及び第2基板30の主面30Aと面一に形成することができる。これにより、接触層51を形成することによる第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0189】
<第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図10は、本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図11は、本発明の第4実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。第4実施形態に係るMEMSデバイス10C,10D,10Eが第1実施形態に係るMEMSデバイス10と異なることは、接触層51の個数、形状、大きさ、配置位置である。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0190】
図1に示すように、第1実施形態に係るMEMSデバイス10は、4つの接触層51を備えている。4つの接触層51の各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点の近くに位置している。4つの接触層51の各々は、対向方向100から見てL字形状である。しかし、接触層51の個数、形状、大きさ、配置位置は、前記に限らない。
【0191】
例えば、図9に示すMEMSデバイス10Cは、1つの接触層51Aを備えている。接触層51Aは、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点のうちの1つの近くに位置している。接触層51Aは、対向方向100から見て正方形である。
【0192】
また、例えば、図10に示すMEMSデバイス10Dは、4つの接触層51Cを備えている。4つの接触層51Cの各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの辺の近くに位置している。4つの接触層51Cの各々は、対向方向100から見て長方形である。
【0193】
また、例えば、図11に示すMEMSデバイス10Eは、1つの接触層51Dを備えている。対向方向100から見て、接触層51Dは、第1接合部40と第1基板20のMEMS構造体25とを囲んでいる。
【0194】
図11に示す構成によれば、対向方向100から見て接触層51DはMEMS構造体25を囲んでいる。これにより、対向方向100から見た接触層51Dの面積を大きくすることができる。また、各位置における第1接合部40と接触層51Dとの距離を均等に近づけることができる。その結果、接触層51Dによる第1基板20及び第2基板30の間隔の制御を高精度で行うことが容易となる。
【0195】
<第5実施形態>
図12は、本発明の第5実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図13は、図12のB-B断面を示す断面図である。第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fが第1実施形態に係るMEMSデバイス10と異なることは、対向方向100から見て、接触層51Eが第1接合部40の内側に位置していることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0196】
図12及び図13に示すように、対向方向100から見て、接触層51Eは、第1接合部40の内側に位置している。第5実施形態において、MEMSデバイス10Fは、4つの接触層51Eを備える。4つの接触層51Eの各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点の近くに位置している。なお、第2接合部60は、第1基板20の主面20Aにおける第1接合部40より内側の領域のうち、MEMS構造体25及び接触層51E以外の領域に配置されている。
【0197】
第5実施形態によれば、対向方向100から見て接触層51Eは第1接合部40の内側に位置している。そのため、対向方向100から見て接触層51Eが第1接合部40の外側に位置している構成に比べて、MEMSデバイス10を小型化することができる。
【0198】
<第6実施形態>
図14は、本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図15は、本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図16は、本発明の第6実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。第6実施形態に係るMEMSデバイス10G,10H,10Iが第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fと異なることは、接触層51Fの個数、形状、大きさ、配置位置である。以下、第5実施形態との相違点が説明される。第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fとの共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0199】
図12に示すように、第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fは、4つの接触層51Eを備えている。4つの接触層51Eの各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点の近くに位置している。4つの接触層51Eの各々は、対向方向100から見てL字形状である。しかし、接触層51の個数、形状、大きさ、配置位置は、前記に限らない。
【0200】
例えば、図14に示すMEMSデバイス10Gは、1つの接触層51Fを備えている。接触層51Fは、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの頂点のうちの1つの近くに位置している。接触層51Fは、対向方向100から見て正方形である。
【0201】
また、例えば、図15に示すMEMSデバイス10Hは、4つの接触層51Gを備えている。4つの接触層51Gの各々は、対向方向100から見て外形が長方形である第1接合部40の4つの辺の近くに位置している。4つの接触層51Gの各々は、対向方向100から見て長方形である。
【0202】
また、例えば、図16に示すMEMSデバイス10Iは、1つの接触層51Hを備えている。対向方向100から見て、接触層51Hは、第2接合部60と第1基板20のMEMS構造体25を囲んでいる。なお、接触層51Hは、第2接合部60を囲んでいなくてもよい。この場合、対向方向100から見て、第2接合部60は、接触層51Hと第1接合部40との間に位置する。
【0203】
<第7実施形態>
図17は、本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図18は、本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。図19は、本発明の第7実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。第7実施形態に係るMEMSデバイス10J,10K,10Lが第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fと異なることは、複数のMEMS構造体25を備えていることである。以下、第5実施形態との相違点が説明される。第5実施形態に係るMEMSデバイス10Fとの共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0204】
MEMSデバイスは、複数のMEMS構造体25を備えていてもよい。図17図19に示すように、MEMSデバイス10J,10K,10Lでは、上層22は、2つのMEMS構造体251,252を有する。なお、上層22は、3つ以上のMEMS構造体25を有していてもよい。
【0205】
図17に示すように、MEMSデバイス10Jは、4つの接触層51Eと、1つの接触層51Iと、2つの第2接合部60とを備える。
【0206】
図18に示すように、MEMSデバイス10Kは、1つの接触層51Iと、2つの第2接合部60とを備える。
【0207】
図19に示すように、MEMSデバイス10Lは、4つの接触層51Gと、1つの接触層51Iと、2つの第2接合部60とを備える。
【0208】
図17図19において、接触層51Iは、2つのMEMS構造体251,252の間に位置しており、2つの第2接合部60の各々は、2つのMEMS構造体25の各々と電気的に接続されている。
【0209】
また、図18に示すように、対向方向100から見て、中心部Cと接触層51Iとの距離L5は、第1接合部40と接触層51Iとの距離L6より短い。中心部Cは、第1接合部40によって囲まれた領域の回転対称の中心部である。距離L5は、中心部Cと接触層51Iとの最短距離である。距離L6は、第1接合部40と接触層51Iとの最短距離である。ここで、第1接合部40によって囲まれた領域は、長方形であるため回転対称形状である。なお、第1接合部40によって囲まれた領域は、回転対称形状であればよく長方形に限らない。例えば、第1接合部40によって囲まれた領域が円形であってもよい。
【0210】
なお、図17及び図19では、対向方向100から見て、接触層51Iは中心部Cと重なっているが、この場合、距離L5はゼロである。以上より、図17及び図19においても、距離L5は、距離L6より短い。
【0211】
対向方向100から見て第1接合部40に囲まれた領域の回転対称の中心部Cの第1接合部からの距離が長い場合、中心部Cにおいて、第1基板20及び第2基板30が撓む可能性が高まる。
【0212】
第7実施形態によれば、対向方向100から見て接触層51は第1接合部40に囲まれた領域において回転対称の中心部Cの近くに位置する。これにより、中心部Cにおける第1基板20及び第2基板30の撓みを抑制することができる。
【0213】
図17図19では、対向方向100から見て、接触層51が第1接合部40より内側に位置する例が説明された。しかし、MEMSデバイスが複数のMEMS構造体25を備える構成において、第1実施形態~第4実施形態のように、接触層51が第1接合部40より外側に位置していてもよい。
【0214】
<第8実施形態>
図20は、本発明の第8実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。第8実施形態に係るMEMSデバイス10Mが第1実施形態に係るMEMSデバイス10と異なることは、接触層51が固定部25A上に配置されていることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。なお、第1実施形態の図1及び図2等では固定部及び可動部は区別して描かれていなかったが、第8実施形態の図20では固定部25A及び可動部25Bが区別して描かれている。
【0215】
図20に示すように、MEMS構造体25は、固定部25Aと可動部25Bとを備える。固定部25Aは、第1基板20の上層22に対して固定されており、上層22に対して動かない。可動部25Bは、固定部25Aに接続されており、固定部25Aに対して可撓性を有する。つまり、可動部25Bは、固定部25Aに対して動く。対向方向100から見て、接触層51は、MEMS構造体25の固定部25A上に配置されている。つまり、対向方向100から見て、接触層51は、固定部25Aに接続されている。
【0216】
第8実施形態によれば、接触層51はMEMS構造体25に接触している。そのため、第2基板30において、MEMS構造体25とは別に接触層51を接触させるための領域を設ける必要がない。これにより、MEMSデバイス10Mを小型化することができる。
【0217】
第8実施形態によれば、接触層51はMEMS構造体25の固定部25Aに接合されている。そのため、MEMS構造体25の振動が接触層51によって阻害されることはない。
【0218】
<第9実施形態>
図21は、本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図である。図22は、本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図である。図23は、本発明の第9実施形態に係るMEMSデバイスにおいて接触層及びその周辺を示す断面図である。第9実施形態に係るMEMSデバイス10Nが第1実施形態に係るMEMSデバイス10と異なることは、絶縁層と接触層との界面部に空洞部が形成されていることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るMEMSデバイス10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0219】
図2に示すように、第1実施形態に係るMEMSデバイス10では、絶縁層52と接触層51とが面接触しており、絶縁層52と接触層51との間に隙間が形成されていない。しかし、絶縁層52と接触層51との間に、隙間が形成されていてもよい。
【0220】
例えば、図21図23に示すように、絶縁層52と接触層51との界面部53に空洞部54が形成されている。図21に示すMEMSデバイス10N1では、複数の空洞部54が形成されている。図22に示すMEMSデバイス10N2では、1つの空洞部54が形成されている。図23に示すMEMSデバイス10N3では、空洞部54が接触層51を対向方向100に貫通している。
【0221】
なお、空洞部54の数、形状、位置、大きさは、図21図23に示す数、形状、位置、大きさに限らない。また、図21では、各空洞部54が隙間なく並んで形成されているが、隣り合う空洞部54の間に、空洞部54がない領域が存在していてもよい。
【0222】
仮に、絶縁層52と接触層51との界面部53に空洞部54が形成されていない場合、第2接合部50の絶縁層52と接触層51との接触面積が大きくなる。この場合、MEMSデバイス10の製造過程の高温且つ高荷重下において、接触層51が絶縁層52に押しつぶされて変形する可能性が高まる。しかし、第9実施形態によれば、絶縁層52と接触層51との界面部53に空洞部54が形成されているため、絶縁層52と接触層51とが接触面積が小さくなる。これにより、MEMSデバイス10の製造過程の高温且つ高荷重下において、接触層51が変形する可能性を低くすることができる。
【0223】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0224】
本発明は、適宜図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0225】
10 MEMSデバイス
20 第1基板
20A 主面
25 MEMS構造体
25A 固定部
25B 可動部
30 第2基板
30A 主面
31 凹部
100 対向方向
40 第1接合部
41 第1金属層
42 第2金属層
43 共晶層
44 絶縁層
51 接触層
52 絶縁層
53 界面部
54 空洞部
60 第2接合部
61 第3金属層
62 第4金属層
63 共晶層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23