(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】分離膜の酸化リスク評価方法、酸化リスク評価プログラム、記録媒体、および評価装置
(51)【国際特許分類】
B01D 65/10 20060101AFI20241126BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B01D65/10
G01N27/26 351Z
(21)【出願番号】P 2023574231
(86)(22)【出願日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2023041997
(87)【国際公開番号】W WO2024111627
(87)【国際公開日】2024-05-30
【審査請求日】2024-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022188059
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 世志美
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】中辻 宏治
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190212(JP,A)
【文献】特開2015-163869(JP,A)
【文献】国際公開第2014/058041(WO,A1)
【文献】特開2021-6335(JP,A)
【文献】特開2020-6322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 27/26
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、使用した分離膜の付着物を回収し、前記付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき前記付着物の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項2】
前記付着物の代わりに付着物抽出液を用いることを特徴とする請求項1に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項3】
前記分離膜が、下記のいずれかであることを特徴とする、請求項1または2に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:水処理プラントで供給水を透過水と濃縮水に膜分離する半透膜エレメントから採取した分離膜
B:水処理プラントの供給水ラインに設置した通水部材の内部に設けた分離膜
C:水処理プラントで供給水を透過水と濃縮水に膜分離する半透膜エレメントが使用され、濃縮水ラインに設置した通水部材の内部に設けた分離膜
【請求項4】
前記分離膜の酸化リスク評価方法が、触媒反応による酸化リスク評価方法であって、前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、付着物を接触させた溶液の酸化力指標値の経時変化を測定する方法であって、下記いずれかを評価することを特徴とする、請求項1
または2に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
【請求項5】
前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、前記付着物を接触させた溶液に亜硫酸塩または重亜硫酸塩を添加することで溶液の亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を変化させ、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする、請求項
4に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項6】
前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、前記付着物を接触させる溶液が亜硫酸塩または重亜硫酸塩溶液であって濃度が異なる2種類以上の溶液を使用し、付着物を接触させた酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする、請求項
4に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項7】
請求項
5に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価することを特徴とする請求項
5に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項8】
請求項6に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価することを特徴とする請求項6に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項9】
前記酸化力指標値が最大となった後、さらに亜硫酸塩または重亜硫酸塩を添加した際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする請求項
4に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項10】
前記酸化力指標値が最大となった後、さらに濃度が高い異なる溶液を使用し、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする請求項
4に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価する方法であることを特徴とする請求項
9に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項12】
請求項10に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価する方法であることを特徴とする請求項10に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項13】
水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上である前記亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に付着物を接触させることを特徴とする、請求項1
または2に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【請求項14】
水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価プログラムであって、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、入力されたデータをコンピュータに記録しておくデータ記録手段、記録されたデータに基づき付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段として機能させるためのものであり、入力されるデータが使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値である、請求項1に記載の酸化リスク評価方法を利用した酸化リスク評価プログラム。
【請求項15】
水処理プラントの酸化リスク評価方法が、触媒反応による酸化リスク評価方法であって、前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段が、酸化力指標値の経時データに基づき下記少なくともいずれかを評価する手段であることを特徴とする、請求項
14に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
【請求項16】
前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段が、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき下記いずれかを評価する手段であることを特徴とする、請求項
14に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項17】
前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段が、酸化力指標値が最大となった後の、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき下記のいずれかを評価する手段であることを特徴とする、請求項
14に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【請求項18】
請求項
14~
17のいずれか1項に記載の酸化リスク評価プログラムが格納された記録媒体。
【請求項19】
水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価装置であって、使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値をコンピュータに入力するデータ入力手段、前記条件および酸化力指標値をコンピュータに記録しておくデータ記録手段、請求項1
または2に記載のいずれかの方法にて酸化ポテンシャルを評価する手段、とを具備する酸化リスク評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜の酸化リスク評価方法、酸化リスク評価プログラム、記録媒体、および評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気体分離膜、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜など、様々な分離膜を用いた水処理技術は、高精度で省エネルギーの処理プロセスとして注目され、各種水処理への適用が進められている。例えば、逆浸透膜を用いた逆浸透分離法では、塩分などの溶質を含んだ溶液を該溶液の浸透圧以上の圧力で逆浸透膜を透過させることで、塩分などの溶質の濃度が低減された液体を得ることが可能であり、海水やかん水の淡水化、超純水の製造、有価物の濃縮回収などに幅広く用いられ、水処理用膜分離技術の中核をなしている。
【0003】
逆浸透膜を上記用途に適用した際の主な課題として、ファウリングと呼ばれる半透膜表面汚染と半透膜の化学劣化が挙げられる。前者を抑制するための一手段として、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化性物質を添加し、微生物を殺菌する方法が挙げられる。しかし、このような前処理に含まれる酸化性物質は、酸化劣化の一因となる。酸化性物質の検出方法としては、酸化還元電位(ORP)測定や呈色反応であるN,N-ジエチルパラフェニレンジアミン(DPD)法、特許文献1や非特許文献1に記載のフジワラテスト、などが用いられている。一方、酸化性物質ではないが酸化反応過程で重要な役割を果たす物質として、ある種の遷移金属に代表される酸化反応促進物質などが挙げられる。該物質量は、前述の酸化性物質検出方法では評価が困難であり、他の方法として、供給水含有物の元素組成を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析などにより調べる方法が挙げられる。ただし、該分光分析手法は高度かつ高価な機器が必要となり、専門の分析機関を必要とし、結果を得るまでに時間がかかるとともに高額の費用を要する。また、供給水に含有されている酸化反応促進物質量が分光分析手法の検出下限値以下の場合、酸化リスク評価が困難である。他方、特許文献2では水処理プラントにおける分離膜の酸化リスクを、膜ろ過供給水を酸化性物質感受性部材に通水させることで評価する方法が開示されている。ただし、供給水に含有されている酸化反応促進物質が微量である場合、該方法では検出が困難であるという課題が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2020-6322号公報
【文献】日本国特開2016-190212号公報
【文献】日本国特開2021-63335号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Membrane Science, 2010, Vol.347, P.159-164.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分離膜の表面の付着物を用いて酸化ポテンシャルを評価することで、従来の方法では評価困難であった、酸化リスクを簡便かつ迅速に評価することを可能とする。また、簡便かつ迅速に実施可能であり、必要な付着物量も少ないため水処理プラントでのリスク回避や運転トラブルの早期解決に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分離膜の表面の付着物を回収し、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき、付着物の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする酸化リスク評価方法である。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0009】
(1)水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき前記付着物の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜の酸化リスク評価方法。
【0010】
(2)前記付着物の代わりに付着物抽出液を用いることを特徴とする(1)に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0011】
(3)前記分離膜が、下記のいずれかであることを特徴とする(1)または(2)に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:水処理プラントで供給水を透過水と濃縮水に膜分離する半透膜エレメントから採取した分離膜
B:水処理プラントの供給水ラインに設置した通水部材の内部に設けた分離膜
C:水処理プラントで供給水を透過水と濃縮水に膜分離する半透膜エレメントが使用され、濃縮水ラインに設置した通水部材の内部に設けた分離膜
【0012】
(4)前記分離膜の酸化リスク評価方法が触媒反応による酸化リスク評価方法であって、前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、付着物を接触させた溶液の酸化力指標値の経時変化を測定する方法であって、下記いずれかを評価することを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
【0013】
(5)前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、前記付着物を接触させた溶液に亜硫酸塩または重亜硫酸塩を添加することで溶液の亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を変化させ、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0014】
(6)付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、付着物を接触させる溶液が亜硫酸塩または重亜硫酸塩溶液であって濃度が異なる2種類以上の溶液を使用し、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0015】
(7)(5)または(6)に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価することを特徴とする(5)または(6)に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【0016】
(8)酸化力指標値が最大となった後、さらに亜硫酸塩または重亜硫酸塩を添加した際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする(5)~(7)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0017】
(9)酸化力指標値が最大となった後、さらに濃度が高い異なる溶液を使用し、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法であることを特徴とする(5)~(7)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0018】
(10)(7)または(8)に記載の付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、下記の少なくともいずれかを評価する方法であることを特徴とする(7)または(8)に記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【0019】
(11)水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上である前記亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に付着物を接触させることを特徴とする、(1)~(10)のいずれかに記載の分離膜の酸化リスク評価方法。
【0020】
(12)水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価プログラムであって、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、入力されたデータをコンピュータに記録しておくデータ記録手段、記録されたデータに基づき付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段として機能させるためのものであり、入力されるデータが使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値である、(1)に記載の酸化リスク評価方法を利用した酸化リスク評価プログラム。
【0021】
(13)水処理プラントの酸化リスク評価方法が、触媒反応による酸化リスク評価方法であって、前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段が、酸化力指標値の経時データに基づき下記少なくともいずれかを評価する手段であることを特徴とする、(12)に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
【0022】
(14)前記付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段が、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき下記いずれかを評価する手段であることを特徴とする、(12)に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【0023】
(15)付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法が、酸化力指標値が最大となった後の、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき下記のいずれかを評価する方法であることを特徴とする、(12)に記載の酸化リスク評価プログラム。
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
【0024】
(16)(12)~(15)のいずれかに記載の酸化リスク評価プログラムが格納された記録媒体。
【0025】
(17)水処理プラントにおける分離膜の酸化リスク評価装置であって、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値をコンピュータに入力するデータ入力手段、前記条件および酸化力指標値をコンピュータに記録しておくデータ記録手段、(1)~(11)に記載のいずれかの方法にて酸化ポテンシャルを評価する手段、とを具備する酸化リスク評価装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば従来評価方法では判定困難であった、簡便かつ迅速な分離膜の酸化リスク評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明で使用する通水部材の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明で使用する通水部材を構成する分割可能な通水容器 (単位通水部材) の一例を示す。
【
図4】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第一の形態にて、付着物接触からの経過時間と酸化力指標値の関係と、酸化力指標値の最大値を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第一の形態にて、付着物接触からの経過時間と酸化力指標値の関係と、経時あたりの酸化力指標値の変化率を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図6】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第二または第三の形態にて、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度と酸化力指標値の関係と、酸化力指標値の最大値を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図7】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第二または第三の形態にて、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度と酸化力指標値の関係と、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図8】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第四または第五の形態にて、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度と酸化力指標値の関係と、付着物接触前の酸化力指標値以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図9】本発明の酸化ポテンシャルを評価する第四または第五の形態にて、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度と酸化力指標値の関係と、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率を評価する方法の一例を示すグラフ図である。
【
図10】本発明の第一の形態を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図11】本発明の第二または第三の形態を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図12】本発明の第四の形態のうち酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図13】本発明の第四の形態のうち亜硫酸塩または重亜硫酸塩あたりの酸化力指標値の変化率を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図14】本発明の第一の形態を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図15】本発明の第二または第三の形態を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図16】本発明の第四の形態のうち酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図17】本発明の第四の形態のうち亜硫酸塩または重亜硫酸塩あたりの酸化力指標値の変化率を用いた酸化リスク判定をコンピュータで実行するためのプログラムの一例である。
【
図18】本発明の実施例1に係る亜硫酸塩または重亜硫酸塩接触からの経過時間と酸化還元電位との関係を示すグラフ図である。
【
図19】本発明の実施例3-1に係る亜硫酸塩または重亜硫酸塩接触からの経過時間と酸化還元電位との関係を示すグラフ図である。
【
図20】本発明の実施例3-2に係る亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度と酸化還元電位との関係を示すグラフ図である。
【
図21】本発明の実施例4に係る亜硫酸塩または重亜硫酸塩接触からの経過時間と酸化還元電位との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記課題を解決するため、本発明は次の特徴を有する。以下、図面を例示し、本発明の詳細を説明するが、本発明の内容はこの図に限定されるものではない。
【0029】
本発明は、分離膜の酸化リスク評価方法であって、一実施形態として、分離膜の表面の付着物を回収し、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき、付着物の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする。分離膜表面に付着物が堆積することで供給水内の酸化性物質および酸化反応促進物質が補足され、分離膜の表面に蓄積される。その結果、該物質は供給水や濃縮水と比べて分離膜の表面に高濃度に存在する。そのため、供給水中の含有量が微小でも該付着物の酸化ポテンシャル評価により酸化リスク評価が可能となる。
【0030】
なお、本発明の一実施形態における触媒反応とは、前述および背景技術に記載の、酸化性物質および酸化反応促進物質と、亜硫酸塩または重亜硫酸塩との反応を指す。
【0031】
本発明の一実施形態における分離膜の例として、水処理プラントに設置された分離膜が挙げられる。
【0032】
例えば、
図1に、水処理プラントのフローの一例を示す。
図1に示す水処理プラントは、被処理水(以下、原水)を貯留する原水貯留槽1と、原水を供給する原水供給ポンプ2と、原水をろ過する前処理膜ろ過ユニット3と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を貯留する前処理膜ろ過水貯留槽4と、分離膜ろ過ユニット5と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を分離膜ろ過ユニット5に供給するブースターポンプ6と、更に前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を分離膜ろ過ユニット5で透過水と濃縮水に分離するために昇圧する昇圧ポンプ7から構成されている。
【0033】
また、原水貯留槽1と前処理膜ろ過ユニット3は原水配管8で、前処理膜ろ過ユニット3と前処理膜ろ過水貯留槽4は前処理膜ろ過水配管9で、前処理膜ろ過水貯留槽4と分離膜ろ過ユニット5は分離膜ろ過供給水配管10で接続されている。水処理プラントでは、原水を前処理膜ろ過ユニット3で処理し、前処理膜ろ過水は、一時的に前処理膜ろ過水貯留槽4に貯留された後、ブースターポンプ6によって昇圧ポンプ7に供給され、昇圧ポンプ7で昇圧された後、分離膜ろ過ユニット5に供給され、塩分などの溶質が除去された透過水と、塩分などの溶質が濃縮された濃縮水に分離され、それぞれ分離膜ろ過透過水配管11、分離膜ろ過濃縮水配管12を通して排出される。
【0034】
本発明の一実施形態における分離膜の例としては、分離膜ろ過ユニットに設置された部材から採取した分離膜や、プラント内配管、例えば原水配管8や前処理ろ過水配管9、分離膜ろ過供給水配管10、分離膜ろ過透過水配管11、分離膜ろ過濃縮水配管12、などに設置された部材内の分離膜が挙げられる。
【0035】
本発明の一実施形態における分離膜としては、前処理ろ過ユニット3に適用されるような精密ろ過膜(MF)や限外ろ過膜(UF膜)などにも適用できるが、特に、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜を用いて溶質成分の分離・濃縮を行なうプラントに好適で、海水やかん水の淡水化、工業用水の製造、果汁などの濃縮、水道における高度処理などに好適である。また、本発明の分離膜が半透膜である場合、酸化反応促進物質は透過されずに半透膜表面上に濃縮・蓄積されるため、原水中、あるいは濃縮水中よりも高濃度となり、本発明による評価精度が向上するため、より望ましい。これらは通常、分離膜ろ過ユニット5に設置される。
【0036】
半透膜とは、原水中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ、塩分などの溶質成分を透過させない半透性を有する膜であり、例えばナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などが挙げられる。その膜構造は膜の片面に分離緻密層を有し、分離緻密層から膜内部あるいはもう片面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜などが挙げられる。膜形態としては中空糸膜、平膜がある。
【0037】
半透膜は、一般的に膜形態に合わせ、適切な形態のエレメントとして使用される。本発明における半透膜エレメントとは、半透膜両面側に実質的な液室を有し、半透膜の一方の表面から他方の表面に液体を加圧透過させることができるものであれば、特に限定されない。一例として、平膜形態の半透膜を有する、スパイラル型半透膜エレメントが挙げられる。スパイラル型半透膜エレメントは、一般的に、供給水を半透膜表面へ導く供給側流路材、半透膜、半透膜を透過した液(透過水)を集水管へと導く透過側流路材から構成され、供給側流路材、半透膜、透過側流路材が集水管を中心にスパイラル状に巻囲されている。前述の通り、本発明の分離膜としては評価精度向上の観点より、スパイラル型半透膜エレメントから採取した分離膜が好ましい。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る評価方法を、定期的、例えば規則的に1日~1週間に1回の頻度で実施することで、突発的な酸化リスク上昇の発生時期の特定が容易になり、迅速に対策を講じることが可能となる。この際、分離膜ろ過ユニットの設置部材、例えば半透膜エレメントからの分離膜の採取が困難な場合、分離膜ろ過ユニットに近い配管、例えば分離膜ろ過供給水配管10、分離膜ろ過透過水配管11、または分離膜ろ過濃縮水配管12に設置された分離膜を利用することで、分離膜ろ過ユニット5における酸化リスクを正確かつ迅速に評価できるため、望ましい。特に、該配管内溶液での酸化促進物質濃度が大きい方が本発明の評価精度が向上するため、分離膜ろ過供給水配管または分離ろ過膜濃縮水配管が好ましく、分離膜ろ過濃縮水配管がより好ましい。該配管への分離膜設置形態の例として、分離膜を内部に有する通水部材を該配管内に設置することが挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態における通水部材は、分離膜を内部に具備しており、通水部材の一端から他端に向け、溶液が移動する形態であれば、特に限定されない。また、前述の通り、定期的かつ高頻度での酸化リスク評価を可能とするため、該通水部材は水処理プラント配管への脱着が容易なものが望ましい。一例として、
図2に例示するように、ねじ構造や嵌合構造(ワンタッチ式ジョイント15のようなジョイントなど)の接続部材を介し、ある単位構造物を連続して結合および分離可能であること、あるいは、ホース13などハサミなどを用いて容易に切断可能、または一部分離可能な構造を有することが望ましい。例として、
図2及び
図3に示すように、通水容器開閉部16と、円筒状である単位通水部材19aの長手方向(通水方向18)の両端に、ネジ溝が設けられ、分離膜20が設置された連結可能な構造を有する単位通水部材19aを、一つまたは複数連結し、さらに通水容器開閉部16に接続して形成し通水容器19を好ましい形態として例示することができる。接続部には、形状に応じて、パッキン、シールテープ、о-リングなどの水漏れ防止対策を施しておくことが好ましい。なお、この際、分離膜20の面積としては特に限定しないが、0.01m
2以上であることが好ましく、0.03m
2以上であることがより好ましい。また、分離膜20は通水方向と垂直に設置されることがより好ましい。
【0040】
また、簡易的な通水容器としては、後者のようなホースなどの部材を用いることが可能である。この場合、通水容器は軟質素材で形成された円筒状であることが好ましい。これによって、ハサミなどを用いて容易に切断し、内部の分離膜を取り出すことが可能である。また、流量計14や流量調整バルブ17をホース13の途中に挿入してもよい。
【0041】
なお、該通水部材を、前述、分離膜ろ過ユニット付近以外のプラント内配管に設置した場合、各配管および付近での酸化リスク評価も可能である。
【0042】
分離膜または半透膜を構成する素材(成分)としては、特に限定はしないが、酢酸セルロース化合物、ビニルポリマー化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、ポリイミド化合物などが好ましく、特に半透膜素材として広く使用されている酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物が好ましい。
【0043】
亜硫酸塩または重亜硫酸塩としては、特に限定されないが、例として亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸マグネシウム、重亜硫酸カルシウム、などが挙げられる。これらは一般的な市販品を用いることができ、これらのうち、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態では、分離膜表面の付着物を物理的手法で回収した後、酸化リスク評価に供することを特徴とする。付着物の回収方法としては、回収率が高く定量的な方法であれば特に限定されないが、例えば、膜を純水に浸漬し、超音波粉砕により付着物を純水中に分散させ回収する方法が挙げられる。また、分離膜に固着した付着物を確実に剥離させ回収する方法としては、分離膜表面の付着物を拭き取り用具を用いて回収した後、拭き取り用具を純水に浸漬し、付着物を純水中に分散させ回収する方法が挙げられる。拭き取り用具としては、綿棒やスパチュラ、スクレーパー、ゴムベラ、などが挙げられ、これらが酸化剤系消毒液を含有していないことが望ましい。また、分離膜の破壊および剥離を防ぐため、綿棒やシリコン製用具が好適な用具として挙げられるが、特に限定されない。純水としては、蒸留水、精製直後の逆浸透膜(RO膜)水およびイオン交換水、市販の超純水、などが好ましい。また、分離膜を乾燥させた後、分離膜表面の付着物を前述の拭き取り用具を用いて容器に回収する方法も例として挙げられる。この際、分離膜の乾燥方法としては、分離膜表面の付着物を容易に剥離できる方法であれば特に限定しないが、室温下での自然乾燥や、加温した乾燥器内に静置し、乾燥させる方法が挙げられる。回収した付着物は、室温下もしくは加熱により乾燥することが望ましい。この際、恒温乾燥器を用いて30℃~120℃に加熱し、その重量変化が±0.1g未満となるまで乾燥することが望ましい。
本発明の一実施形態では、付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき、付着物の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする。付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させる方法は特に限定しないが、例えば、純水に亜硫酸塩または重亜硫酸塩を溶解させ作製した溶液に、回収した付着物を投入する方法が挙げられる。この際、付着物と溶液の接触面積を増大させるため、攪拌治具や撹拌機、振とう器、などを用いて付着物を投入した溶液を振動・攪拌させることが望ましい。攪拌治具や撹拌機、振とう器としては、薬さじ、スパチュラ、マグネチックスターラー、先端に攪拌羽を有する攪拌棒、スリーワンモーター(新東科学(株)製)などの撹拌機、超音波洗浄器、などが挙げられる。
【0045】
また、付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させ、発生した酸化性物質に基づき、付着物の酸化ポテンシャルを評価する他の例として、付着物を薬液にて処理した付着物抽出液を用いる方法が挙げられる。付着物抽出液を用いることで、付着物中の酸化反応促進物質と、亜硫酸塩または重亜硫酸塩との触媒反応が促進され、より正確な付着物の酸化ポテンシャル評価が可能となる。付着物を薬液にて処理および抽出する方法としては、一般的な抽出作業が利用できる。例えば、薬液に付着物を添加し、静置、または後述の攪拌治具や撹拌機、振とう器を用いて薬液を攪拌し、一定時間経過後に薬液を採取する方法が挙げられる。この時薬液を採取する方法としては、スポイト等の治具を用いて薬液を採取するほか、ろ過作業によって付着物を除去し、薬液を採取する方法などが例として挙げられる。用いる薬液としては、酸性の薬液が望ましい。つまり、水素イオン濃度pH6以下、さらに好ましくはpH3以下の薬液を用いることが好ましく、例としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、などが挙げられ、こちらのうち、硝酸、塩酸、リン酸が特に好ましい。これらの薬液は一般的に市販されており、それらを用いることが可能である。
【0046】
また、本発明の一実施形態における亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液は実際の水処理プラントでの状態を再現すべく、他の無機塩を含有してもよい。特に、塩化ナトリウムを含有することが好ましい。塩化ナトリウム濃度としては500~80000mg/Lが好ましく、1000~50000mg/Lがより好ましい。
【0047】
本発明の酸化ポテンシャルを評価する第一の形態として、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に、分離膜の表面から回収した付着物を接触させ、その溶液の酸化力指標値の経時変化を測定する方法が挙げられる。第一の形態の一例として
図4または
図5のように下記の少なくともいずれかを評価する方法が挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、後述のとおり、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従うが、一般的には下記いずれの場合も、値が大きいほど酸化ポテンシャルが大きく、酸化リスクが高いと判断する。
【0048】
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
なお、経時あたりの酸化力指標値の変化率は、酸化力指標値の差分を、対応する付着物接触からの経過時間の差分にて除することで算出する。例えば、
図5の場合、式1にて算出する。
【0049】
(経時あたりの酸化力指標値の変化率)=(y
2-y
1)÷(t
2-t
1) (式1)
式1にてy
1は付着物接触からの経過時間がt
1であるときの酸化力指標値、y
2は付着物接触からの経過時間がy
2であるときの酸化力指標値を表す。ただしt
2>t
1とする。なお、付着物を1回接触させる1回の評価にて複数のt
2、t
1に関して算出する場合は式1にて算出した値のうち最大値を採用する。また、酸化力指標値の移動平均値は、直近N(2以上の整数)点の酸化力指標値の相加平均を指す。本発明の酸化ポテンシャルを評価する第二の形態として、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度が異なる2種類以上の溶液を使用し、それぞれに、分離膜の表面から回収した付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法が挙げられる。第二の形態の一例として、
図6または
図7のように下記の少なくともいずれかを評価する方法が挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、後述のとおり、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従うが、一般的には下記いずれの場合も、値が大きいほど酸化ポテンシャルが大きく、酸化リスクが高いと判断する。
【0050】
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
なお、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率は、酸化力指標値の差分を、対応する亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度の差分にて除することで算出する。例えば、
図8の場合、式2にて算出する。
【0051】
(亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率)
=(y4-y3)÷(c4-c3) (式2)
式2にてy3は亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度がc3であるときの酸化力指標値、y4は亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度がc4であるときの酸化力指標値を表す。ただしc4>c3とする。
【0052】
なお、付着物を1回接触させる1回の評価にて複数のc4、c3に関して算出する場合は式2にて算出した値のうち最大値を採用する。また、各濃度条件にて酸化力指標値を経時にて測定する場合、各濃度条件での酸化力指標値は以下のうちいずれかを使用する。
【0053】
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
本発明の酸化ポテンシャルを評価する第三の形態として、付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に、亜硫酸塩または重亜硫酸塩をさらに添加することで溶液の亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を変化させ、付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法が挙げられる。第三の形態の一例として、
図6または
図7のように下記の少なくともいずれかを評価する方法が挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、後述のとおり、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従うが、一般的には下記いずれの場合も、値が大きいほど酸化ポテンシャルが大きく、酸化リスクが高いと判断する。
【0054】
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
なお、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率は、酸化力指標値の差分を、対応する亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度の差分にて除することで算出する。例えば、前述の通り、
図7の場合、式2にて算出する。
【0055】
本発明の酸化ポテンシャルを評価する第四の形態として、付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する、第一から第三のいずれかに記載の溶液よりもさらに濃度が大きい溶液に付着物を接触させた際の酸化力指標値を測定する方法が挙げられる。第四の形態の一例として、
図8または
図9のように下記の少なくともいずれかを評価する方法が挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、後述のとおり、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従うが、一般的には下記いずれの場合も、値が大きいほど酸化ポテンシャルが大きく、酸化リスクが高いと判断する。
【0056】
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる、亜硫酸塩または亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
なお、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率は、酸化力指標値の差分を、対応する亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度の差分にて除することで算出する。例えば、
図9の場合、式3にて算出する。
【0057】
(亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率)
=(y6-y5)÷(c6-c5) (式3)
式3にてy5は亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度がc5であるときの酸化力指標値、y6は亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度がc6であるときの酸化力指標値を表す。ただしc6>c5とする。通常、y6<y5であるため、式3にて算出した値は負となり、絶対値が大きいほど小さい値となる。
【0058】
なお、付着物を1回接触させる1回の評価にて複数のc5、c6に関して算出する場合は式3にて算出した値のうち最大値を採用する。
【0059】
また、各濃度条件にて酸化力指標値を経時にて測定する場合、各濃度条件での酸化力指標値は以下のうちいずれかを使用する。
【0060】
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
また、本発明の酸化ポテンシャルを評価する第五の形態として、第一から第三のいずれかに記載の形態にて付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値が最大となった後、亜硫酸塩または重亜硫酸塩をさらに添加した際の酸化力指標値を測定する方法が挙げられる。第五の形態の一例として、
図8または
図9のように下記の少なくともいずれかを評価する方法が挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、後述のとおり、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従うが、一般的には下記いずれの場合も、値が大きいほど酸化ポテンシャルが大きく、酸化リスクが高いと判断する。
【0061】
A:酸化力指標値が付着物接触前以下となる、亜硫酸塩または亜硫酸塩濃度
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
なお、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率は、酸化力指標値の差分を、対応する亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度の差分にて除することで算出し、一般的には負の値となる。例えば、前述の通り、
図9の場合、式3にて算出する。
【0062】
第一~第三の形態のいずれかの形態を利用することで、迅速かつ簡便に酸化ポテンシャルを評価することが可能である。例えば、実プラントでの使用亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度など規定濃度・量での酸化リスクを評価する場合は、第一の形態が好ましい。一方、懸念される最大酸化リスクを知りたい場合は、第二または第三の形態が好ましい。また、第四または第五の形態を用いれば、この酸化ポテンシャルを十分打ち消すのに必要な亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を知ることができる。
【0063】
また、さらに第一~第五の形態にて、付着物の採取に使用した膜面積や、該膜を含有するエレメントまたは通水部材の使用(運転)年数を把握できる場合、各形態にて得られた指標を膜面積および/または使用年数で除した値を用いれば、より正確に実プラントにおける酸化リスクを評価することが可能である。例えば、第一の形態を利用する場合、式4にて算出した値を用いれば、より正確な酸化リスク評価が可能となる。
【0064】
(単位面積・使用年数あたりの酸化力指標値)
=z÷((付着物採取に用いた膜面積)×(該膜の使用年数)) (式4)
ここで、zは第一の形態にて評価した酸化リスク指標値、つまり以下のいずれかである。
【0065】
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
他の形態においても同様に、各方法にて評価した酸化リスク指標値をzとし、式4にて算出した値を用いることで、より正確な酸化リスク評価が可能となる。
【0066】
酸化力指標値の測定方法としては特に限定されないが、酸化性物質に鋭敏に反応する手法が望ましい。一般的な手法としては例えば、酸化還元電位(ORP)測定、N,N-ジエチルパラフェニレンジアミン(以降、DPD)法による遊離残留塩素濃度または結合および/または全塩素濃度の測定、特許文献1や非特許文献1に記載のフジワラテスト、溶存酸素量(DO)測定、などが挙げられる。特に、測定の簡便さの観点から、ORP測定、DPD法による遊離残留塩素濃度、結合および/または全塩素濃度の測定が好ましい。
【0067】
なお、酸化還元電位(ORP)とは、溶液の酸化性または還元性の指標であり、溶液中に共存する酸化体および還元体の間で生じる電子供受の平衡状態によって定まり、一般的に金属電極と比較電極の電位差として、ネルンスト式(Nernst equation)に基づいて測定される。該指標を測定する方法として、酸化還元電位計を用いる方法があり、酸化還元電位計については、特に制約はないが、白金電極と比較電極、または白金電極と比較電極の複合電極を用いてネルンスト式に基づき酸化還元電位を測定する酸化還元電位計であることが好ましく、かつ好ましくは比較電極として飽和カロメル電極や飽和銀/塩化銀電極などを用いて、比較電極として3.3mol/L塩化銀電極を用いて測定することがより好ましい。
【0068】
また、DPD法とは、水中に存在している酸化性物質とDPD試薬との呈色反応に基づき、遊離残留塩素濃度や結合および/または全塩素濃度を測定する方法である。該指標を測定する場合、市販の測定器およびDPD試薬を用いることができる。
【0069】
酸化力指標値として、測定条件の影響を受ける指標を用いる場合は、任意の一条件における値を用いること、もしくは、測定条件の影響を一義的に補正した値を用いることが望ましい。例えば、前述の指標として酸化還元電位(ORP)を用いる場合は、任意の測定条件下、特にある任意の溶液温度、pHにおける値を用いることが望ましく、溶液温度が20~35℃、pH1~8の任意の一条件における値を用いることが好ましい。以降、酸化還元電位について特に記載がない場合、溶液温度25℃、pH7での値を記載する。
【0070】
酸化リスクの判定方法の一例としては、第一~第三の形態のうち酸化力指標値の最大値、または酸化力指標値の移動平均値の最大値にて酸化ポテンシャルを評価する場合、例えば酸化力指標値として酸化還元電位を利用する場合には、300mV未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、300mV以上600 mV未満であれば酸化リスクがあり(中度)、600mV以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。酸化力指標値として遊離残留塩素濃度または全塩素濃度を利用する場合、0.01mg/L未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、0.01mg/L以上0.5mg/L未満であれば酸化リスクがあり(中程度)、0.5mg/L以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。
【0071】
また、酸化リスク判定方法の一例として、第一の形態のうち経時あたりの酸化力指標値の変化率、酸化力指標値の移動平均値の変化率にて酸化ポテンシャルを評価する場合、例えば酸化力指標値として酸化還元電位を利用する場合には、50mV/分未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、50mV/分以上300mV/分未満であれば酸化リスクがあり(中程度)、300mV/分以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。酸化力指標値として遊離残留塩素濃度または全塩素濃度を利用する場合、0.1mg/L/分であれば酸化リスクは低く(軽度)、0.1mg/L/分以上0.5 mg/L/分未満であれば酸化リスクがあり(中度)、0.5mg/L/分以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。
【0072】
また、第二または第三の形態のうち濃度あたりの酸化力指標値の変化率にて酸化ポテンシャルを評価する場合、例えば酸化力指標値として酸化還元電位を利用する場合には50mV/(mg/L)未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、50mV/(mg/L)以上100mV/(mg/L)未満であれば酸化リスクがあり(中度)、100mV/(mg/L)以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。酸化力指標値として遊離残留塩素濃度または全塩素濃度を利用する場合、0.1mg/L/(mg/L)であれば酸化リスクは低く(軽度)、0.1mg/L/(mg/L)以上0.5mg/L/(mg/L)未満であれば酸化リスクがあり(中度)、0.5mg/L/(mg/L)以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。
【0073】
また、第四または第五の形態にて、酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度にて酸化ポテンシャルを評価する場合、5mg/L未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、5mg/L以上100mg/L未満であれば酸化リスクがあり(中程度)、100mg/L以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。また、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率にて酸化ポテンシャルを評価する場合、例えば酸化力指標値として酸化還元電位を利用する場合には-100mV/(mg/L)未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、-100mV/(mg/L)以上-5mV/(mg/L)未満であれば酸化リスクがあり(中度)、-5mV/(mg/L)以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。酸化力指標値として遊離残留塩素濃度または全塩素濃度を利用する場合、-0.01mg/L/(mg/L)未満であれば酸化リスクは低く(軽度)、-0.01mg/L/(mg/L)以上-5.0×10-3mg/L/(mg/L)未満であれば酸化リスクがあり(中度)、-5.0×10-3mg/L/(mg/L)以上であれば酸化リスクが高い(重度)と判断できる。
【0074】
付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含む溶液に接触させる際、接触させる溶液の水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上である場合、酸化性物質の発生が促進される。このことより、迅速かつ高精度にて付着物の酸化力ポテンシャル評価が可能となるため、水素イオン濃度指数(pH)が9.0以上である亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含む溶液に付着物を接触させることが好ましい。
【0075】
亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含む溶液の水素イオン濃度指数(pH)を9.0以上とする方法としては、該溶液に塩基性物質を添加する方法が挙げられる。塩基性物質としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、などが挙げられる。
【0076】
また、本発明の一実施形態の亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含む溶液は、塩化物イオンおよび/または臭化物イオンを含むことが好ましい。これらのイオンが存在すると次亜塩素酸イオンや次亜臭素酸イオンといった酸化性物質が発生し、酸化リスクが増大するため、水処理プラントでの酸化ポテンシャルをより正確に見積もることが可能となる。また、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含む溶液を、実際の水処理プラントで使用する原水や供給水に近い組成とすることで、水処理プラントでの酸化リスクをより正確に評価することが可能となる。
【0077】
本発明の利用例として、ある水処理プラントでの酸化リスクを、本発明の第一~第五のいずれかの形態にて評価した酸化ポテンシャルをもとに判定することが挙げられる。この際、酸化リスクの大小は、用いた酸化力指標値の測定方法での判定方法に従う。例えば、ORPやDPD法では測定値が大きいほど酸化リスクは大きく、特許文献1や非特許文献1記載のフジワラテストでは呈色した場合に酸化リスクが大きいと判断される。さらに、本発明の利用例として、異なる水処理プラントや配管箇所、異なる時期での酸化リスクを、本発明の第一~第五のいずれかの形態のうち同一の方法にて、ある規定量の付着物を用いて評価した酸化ポテンシャルを比較することで判断することが挙げられる。例えば、異なるプラントにて使用した半透膜エレメントまたは分離膜を有する通水部材から付着物を回収し、第一~第五のいずれかの形態のうち同一の方法にて、各付着物を同量用いてそれぞれの付着物の酸化ポテンシャルを評価した場合、それらの大小から、各プラントでの酸化リスク大小を比較することが可能である。また、例えば、同一プラント内の異なる配管に分離膜を有する通水部材を設置し、各分離膜から回収した付着物につき第一~第五のいずれかの形態のうち同一の方法にて、各付着物を同量用いて酸化ポテンシャルを評価することで、各配管での酸化リスク大小を判断することが可能である。これにより、例えばプラントでの酸化リスクが増大した場合、原因箇所の特定が容易となる。また、同一プラントでの付着物の酸化ポテンシャルを本発明の第一~第五のいずれかの形態にて定期的に評価することで、プラントの酸化リスクを監視することができ、酸化リスクが増大した場合も迅速な対応が可能となる。例えば、供給水ラインでの還元剤の過剰添加や前工程トラブルによる酸化リスク増加を検知できる。また、半透膜の劣化・部材破損などによる透過水ラインでの酸化リスク(透過水への酸化反応促進物質の混入トラブル)有無を発見できる。このように、本発明によって従来方法では困難であった簡便かつ迅速な酸化リスク判定が可能となり、リスク回避や運転トラブルの早期解決に有用である。
【0078】
本発明の別の形態として、水処理プラントの酸化リスク評価プログラムであって、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、入力されたデータをコンピュータに記録しておくデータ記録手段、入力されたデータに基づき付着物の酸化ポテンシャルを評価する手段、とを具備しており、入力されるデータが使用した分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値である、酸化リスク評価プログラムが挙げられる。本形態は、各手段を有するコンピュータを、分離膜の酸化リスクを評価するために機能させるものである。本形態は、コンピュータのメモリ、ハードディスクなどの記録装置などに記録可能であり、記録の形態は特に限定されない。また、本発明の別の形態として、前記の評価リスク評価プログラムが格納された記録媒体が挙げられる。
【0079】
コンピュータは、使用された分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値が記録されるデータ記録手段を有する。さらにデータ記録手段に記録されるデータを用いて、酸化リスク指標値を判定または算出し、出力する。もしくは、あらかじめ決められた判定基準に基づき、分離膜の酸化リスクが評価され、出力される。
【0080】
例えば、
図10または
図14のように酸化力指標値の経時データに基づき酸化リスクを評価するプログラムが挙げられる。すなわち、入力された付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値と、酸化力指標値を測定した時点での付着物接触時からの経過時間から、下記いずれかを判定または算出することで酸化ポテンシャルを評価し、酸化リスク判定結果を出力する。
【0081】
A:酸化力指標値の最大値
B:経時あたりの酸化力指標値の変化率
C:酸化力指標値の移動平均値の最大値
D:経時あたりの酸化力指標値の移動平均値の変化率
この際、出力される判定結果は、正確な酸化リスク把握のためには
図10のように酸化リスク指標値である酸化ポテンシャル評価結果そのものであることが好ましい。他方、簡便かつ判別容易とするためには、
図14のようにあらかじめ決められた判定基準(指標値)に基づき、酸化リスク大小、例えば、酸化劣化程度(軽度、中度、重度)を判定した結果が好ましい。このときの指標値や判定基準としては前述のとおり、例えば酸化還元電位、遊離残留塩素濃度または結合(全)塩素濃度、など、酸化ポテンシャルの評価方法に即した値や判定基準を用いることができる。
【0082】
なお、前記酸化ポテンシャル評価方法のうち、判定を迅速に行いたい場合には、経時あたりの酸化力指標値の変化率(B)を用いることが好ましい。一方、判定の正確さの観点では、酸化力指標値の最大値(A)が好ましい。また、例えば、ある期間での酸化リスクを正確に把握したい場合には、記録された経時データから移動平均値を算出し、その最大値(C)や変化率(D)にて酸化ポテンシャルを評価することで、酸化リスクを判定できる。この場合、迅速に結果を得たい場合には移動平均値の変化率(D)を用いることが好ましく、正確な酸化リスクを把握したい場合には移動平均値の最大値(C)を用いることが好ましい。
【0083】
また、例えば
図11または
図15のように亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき酸化リスクを評価するプログラムが挙げられる。つまり、付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値と、酸化力指標値を測定した時点での亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度から、下記いずれかを判定または算出することで酸化ポテンシャルを評価し、酸化リスク判定結果を出力する。
【0084】
A:酸化力指標値の最大値
B:亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度あたりの酸化力指標値の変化率
この際、出力される判定結果は、正確な酸化リスク把握のためには
図11のように酸化リスク大小を表す酸化ポテンシャル評価結果の値そのものであることが好ましい。他方、簡便かつ判別容易とするためには、
図15のようにあらかじめ決められた判定基準(指標値)に基づき判定した結果が好ましい。
【0085】
このときの指標値としては前述のとおり、酸化ポテンシャルの評価方法に即した値や判定基準を用いることができる。
【0086】
また、前述と同様、判定を迅速に行ないたい場合には、亜硫酸塩または重亜硫酸塩あたりの酸化力指標値の変化率(B)が利用できる。一方、判定の正確さの観点では、酸化力指標値の最大値(A)が好ましい。
【0087】
他の例として、酸化力指標値が最大となった後の、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき酸化リスクを評価するプログラムが挙げられる。つまり、例えば
図12または16のように、付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値と、酸化力指標値を測定した時点での亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度、付着物接触前の亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値から、酸化力指標値が付着物接触前以下となる亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度にて酸化リスクを判定するプログラムが挙げられる。また、別の例として、
図13または17のように付着物を接触させた亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液の酸化力指標値と、酸化力指標値を測定した時点での亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度から、酸化力指標値が最大となった後の亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき重亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度の変化率を算出することで酸化ポテンシャルを評価し、酸化リスクを判定するプログラムが挙げられる。
【0088】
これらの際、出力される判定結果は、正確な酸化リスク把握のためには
図12または
図13のように酸化リスク大小を表す酸化ポテンシャル評価結果の値そのものであることが好ましい。他方、簡便かつ判別容易とするためには、
図16または
図17のようにあらかじめ決められた判定基準となる指標値に基づき酸化リスク大小を判定した結果が好ましい。
【0089】
第一~第五の形態を利用した各プログラムのうち、どれを利用するかは、前述のとおり、状況や目的に応じて任意に選択できる。
【0090】
また、本発明の別の形態として、水処理プラントの酸化リスク評価装置であって、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に使用した分離膜から回収した付着物を接触させた際の条件および酸化力指標値をコンピュータに入力するデータ入力手段、前記条件および酸化力指標値をコンピュータに記録しておくデータ記録手段、前述の方法にて酸化ポテンシャルを評価する手段、とを具備する酸化リスク評価装置が挙げられる。評価装置は、酸化リスクを評価するためにコンピュータを、分離膜から回収した付着物を亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に接触させた際の条件および酸化力指標値を入力するデータ入力手段、入力されたデータをコンピュータに記録しておくデータ記録手段、入力されたデータをコンピュータに記録しておくデータ記録手段、入力されたデータに基づき付着物の酸化ポテンシャルを評価する方法、とを具備している。
【0091】
付着物を接触させた際の条件の例としては、接触させてからの経過時間や亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度、付着物接触前の酸化力指標値、などが挙げられる。データ入力手段として、亜硫酸塩または重亜硫酸塩を含有する溶液に使用した分離膜から回収した付着物を接触させた際の条件および酸化力指標値は評価結果に基づき入力され、これらは人の手による数値入力や、評価装置自体にこれら条件を評価・測定する方法が具備されており自動的に入力される方法が挙げられる。自動的な入力方法としては、例えば、接触させてからの経過時間や亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を決定可能な評価・測定方法が評価装置に具備されており、その結果が随時記録され、入力される方法が挙げられる。こうした評価・測定方法としては、例えば亜硫酸塩または重亜硫酸塩と反応し着色・変色する薬剤を用いた比色法を利用し、作成した検量線に基づき亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度を決定し、さらに時刻から接触からの経過時間を決定する方法が挙げられる。
【0092】
酸化ポテンシャルを評価する方法としては、本発明、つまり前述内容や
図10~
図17のように、酸化力指標値の経時データや、亜硫酸塩または重亜硫酸塩濃度に対する酸化力指標値の関係性に基づき評価する方法が挙げられ、判定・算出された酸化リスク指標値が出力される。もしくは、あらかじめ決められた判定基準に基づき、分離膜の酸化リスクが評価され、出力される。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>
約2ヶ月間運転した水処理プラントAにて生産水の水質悪化傾向が見られた。該プラントで使用された半透膜エレメントTM820C-400(東レ(株)製)を解体し、分離膜を採取した。該分離膜を24時間室温下で乾燥させ、シリコン製治具を用いて付着物を回収し、ガラス製シャーレに入れた。これを120℃に設定した乾燥器で2時間乾燥させた。これを付着物A-1とする。
【0095】
1Lビーカーに重亜硫酸ナトリウム濃度が20mg/Lである水溶液を400mL作製すべく、海水と重亜硫酸ナトリウム、スターラーバーを入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、溶解させた。さらに1mоl/L水酸化ナトリウム水溶液および1mоl/L硫酸を加え、pHが7となるよう調整した。この溶液に上記の付着物A-1を10mg投入し、攪拌しながら酸化還元電位計を用いて酸化還元電位の経時変化を測定した。また、水素イオン濃度(pH)計およびアルコール温度計を用いてpHおよび溶液温度を測定した。結果を
図18に示す。酸化還元電位の最大値は459mVであった。また、この時のpHは7であり、溶液温度は25℃であった。酸化還元電位が300mV以上であることから、該付着物の酸化ポテンシャルは高く、本プラントでの酸化リスクは高いと考えられる。
【0096】
分離膜の酸化劣化有無を調べるため、20mLガラス瓶にピリジン6gと3mоl/L水酸化ナトリウム水溶液2gを投入し、混合した。上記エレメントから解体し採取した分離膜を10cm角に切り出し、純水ですすぎ、基材を剥離除去した。これを前述のピリジン-水酸化ナトリウム水溶液に投入し、室温で8時間静置したところ、溶液が赤色に呈色した。この結果より非特許文献1に記載の通り、分離膜が酸化劣化していると考えられる。また、前述の付着物の元素組成を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析にて調べた結果、銅(1.1wt%)およびマンガン(32wt%)を含有すると判明した。
【0097】
<比較例1>
実施例1と同時期に水処理プラントAで使用された重力ろ過器(DМF)のろ材(砂)を濃硝酸に20時間浸漬し、DMFろ材抽出液を得た。1Lビーカーに重亜硫酸ナトリウム濃度が20mg/Lである水溶液を400mL作製すべく、海水と重亜硫酸ナトリウム、スターラーバーを入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、溶解させた。この溶液に前述のDMFろ材抽出液5gを投入し、攪拌しながら酸化還元電位の経時変化を測定した。結果を
図18に併せて示す。酸化還元電位の最大値は220mVであった。
【0098】
実施例1と比較例1の結果より、水処理プラントAで使用された分離膜エレメントは酸化劣化しており、水処理プラントAでは酸化リスクが高いと考えられる。水処理プラントAでの酸化リスクが高いことは、上記の通り、使用された分離膜の付着物を用いて酸化ポテンシャルを評価することで迅速に判断できる。さらに、付着物の元素組成分析結果では多量の銅およびマンガンが検出されたことから、これらにより、上記の通り分離膜の酸化リスクが高い状態となっていると推測される。一方で、DMFのろ材抽出物を用いて評価した場合、酸化ポテンシャルは低く、水処理プラントAの酸化リスクを正しく評価できず、分離膜の付着物を用いることで該酸化リスク評価が可能となる。
【0099】
<実施例2>
実施例1と同様の半透膜エレメントTM820C-400(東レ(株)製)から、分離膜を採取した。該分離膜を24時間室温下で乾燥させ、シリコン製治具を用いて付着物を回収し、ガラス製シャーレに入れた。これを120℃に設定した乾燥器で2時間乾燥させた。これを付着物A-2とする。
【0100】
1Lビーカーに重亜硫酸ナトリウム濃度が20mg/Lである水溶液を400mL作製すべく、海水と重亜硫酸ナトリウム、スターラーバーを入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、溶解させた。さらに1mоl/L水酸化ナトリウム水溶液および1mоl/L硫酸を加え、pHが7となるよう調整した。この溶液に付着物A-2を10mg投入し、15分間攪拌した。この溶液の遊離塩素濃度を、残留塩素計を用いて測定した結果、4.34mg/Lであった。
【0101】
遊離塩素濃度が0.5mg/L以上であることから、実施例1と同様、該付着物の酸化ポテンシャルは高く、本プラントでの酸化リスクは高いと判定した。
【0102】
<実施例3-1>
約0.5ヶ月間運転した水処理プラントBにつき、プラント運転状況の確認のため、触媒反応による酸化リスク評価方法を用いて酸化リスクを調べることとした。該プラントにて使用された半透膜エレメントTML10D(東レ(株)製)を解体し、分離膜を採取した。該分離膜からシリコン製治具を用いて付着物を回収し、ガラス製シャーレに入れた。これを120℃に設定した乾燥器で2時間乾燥させた。これを付着物Bとする。
【0103】
密閉できるガラス瓶に1mоl/L硝酸水溶液を20mL入れ、さらに付着物Bを1.0g投入し、密閉して室温下で静置した。一晩経過後、スポイトを用いて上澄み液を別のガラス瓶に採取した。これを付着物抽出液Bとする。
【0104】
重亜硫酸ナトリウム濃度が10mg/L、塩化ナトリウム濃度が32000mg/Lである塩化ナトリウム水溶液を500mL作製すべく、1Lビーカーに塩化ナトリウムと重亜硫酸ナトリウム、純水、スターラーバーを入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、溶解させた。溶液を攪拌したまま、付着物抽出液5mLを投入し、酸化還元電位計を用いて酸化還元電位の経時変化を8分間測定した。この時、水素イオン濃度(pH)計およびアルコール温度計を用いて、溶液のpHおよび温度も測定した。8分間での酸化還元電位の最大値は436mVであった。
【0105】
一方で、重亜硫酸ナトリウム濃度が10mg/L、塩化ナトリウム濃度が32000mg/Lである塩化ナトリウム水溶液に1mоl/L硝酸を5mL投入し、酸化還元電位、pH、温度を測定した結果、pH2、26℃で338mVであった。
【0106】
上記の結果を
図19に示す。なお、いずれの場合も、経時変化を測定している間の重亜硫酸ナトリウム水溶液の水素イオン濃度(pH)は2であり、溶液温度は26℃であった。
【0107】
これらの結果から、付着物抽出液Bの酸化ポテンシャルは、付着物を用いずに1mоl/L硝酸のみを重亜硫酸ナトリウム水溶液に投入した場合よりも98mV高いため、付着物Bの酸化ポテンシャルは高く、酸化リスクがあると判定した。
【0108】
<実施例3-2>
実施例3-1の付着物抽出液を投入した重亜硫酸ナトリウム水溶液に、さらに重亜硫酸ナトリウムを、重亜硫酸ナトリウム濃度が50mg/Lとなるよう追加し、実施例3-1と同様にして8分間測定した。また、さらに重亜硫酸ナトリウムを、重亜硫酸ナトリウム濃度が100mg/Lとなるよう追加して同様に測定した。その結果、8分間での酸化還元電位の最大値はそれぞれ344mV、および329mVであった。また、いずれの場合も、経時変化を測定している間の重亜硫酸ナトリウム水溶液の水素イオン濃度(pH)は2であり、溶液温度は26℃であった。
【0109】
上記の結果から得られた、重亜硫酸塩 (重亜硫酸ナトリウム) 濃度と酸化還元電位の最大値の関係を
図20に示す。
【0110】
上記結果から、各重亜硫酸塩濃度における最大値は、
図20に示すとおり重亜硫酸塩10mg/Lの場合に436mVと最も大きく、該結果を付着物の酸化ポテンシャルとした。これは実施例3-1で得られた酸化ポテンシャルと同様であり、付着物Bの酸化ポテンシャルは高く、酸化リスクがあると判定した。一方、pH7で酸化リスクが重度と判定される600mVより低い値であり、一般的に、pHが低いと酸化還元電位は高くなることを考慮したうえで、酸化リスクは中程度であると判定した。また、付着物抽出液投入前後でのpH変化を加味した場合、付着物の抽出液投入がなくpHのみが変化した場合は、水溶液の酸化還元電位は実施例3-1の1mоl/L硝酸での酸化還元電位での値と同等であると考えられ、該数値が338mVであり、付着物抽出液を用いた場合には重亜硫酸塩濃度が100mg/Lである時の酸化ポテンシャルが、該数値と同等であることから、付着物Bの酸化リスクを十分低減するには、重亜硫酸塩濃度が100mg/Lである必要があると推定した。
【0111】
<実施例4>
約2ヶ月間運転した水処理プラントCにつき、ROモジュール差圧が上昇し、膜面への付着物増加に伴う酸化リスク発生が懸念されたため、触媒反応による酸化リスク評価方法を用いて酸化リスクを調べることとした。該プラントにて使用された半透膜エレメントSU-720(東レ(株)製)を解体し、分離膜を採取した。該分離膜からシリコン製治具を用いて付着物を回収し、ガラス製シャーレに入れた。これを120℃に設定した乾燥器で2時間乾燥させた。これを付着物Cとする。
【0112】
密閉できるガラス瓶に1mоl/L硝酸を20mL入れ、さらに付着物Cを4.0g投入し、密閉して室温下で静置した。約70時間経過後、スポイトを用いて上澄み液を別のガラス瓶に採取した。これを付着物抽出液Cとする。
【0113】
重亜硫酸ナトリウム濃度が10mg/L、塩化ナトリウム濃度が32000mg/Lである水溶液を400mL作製すべく、1Lビーカーに塩化ナトリウムと重亜硫酸ナトリウム、純水、スターラーバーを入れ、マグネチックスターラーにて攪拌し、溶解させた。この溶液に上記の付着物抽出物Cを5mL投入し、攪拌しながら酸化還元電位計を用いて酸化還元電位を10分間、1分ごとに測定することで経時変化を測定した。また、水素イオン濃度(pH)計およびアルコール温度計を用いてpHおよび溶液温度を測定した。結果を
図21に示す。酸化還元電位の最大値は633mVであった。また、この時のpHは2であり、溶液温度は25℃であった。
【0114】
上記および実施例3-1の結果から、付着物Cの酸化ポテンシャルは高く、また、付着物Bの酸化ポテンシャルよりも高く、酸化リスクは重度と判定した。
【0115】
以上、各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0116】
なお、本出願は、2022年11月25日出願の日本特許出願(特願2022-188059)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば従来評価方法では判定困難であった、分離膜の酸化リスク評価が可能となる。また、簡便かつ迅速な酸化リスク把握が可能となり、劣化原因の特定や講じる対策の選定がより容易となるため、水処理プラント運転状況の確実な改善が期待される。
【符号の説明】
【0118】
1:原水貯留槽
2:原水供給ポンプ
3:前処理膜ろ過ユニット
4:前処理膜ろ過水貯留槽
5:分離膜ろ過ユニット
6:ブースターポンプ
7:昇圧ポンプ
8:原水配管
9:前処理膜ろ過水配管
10:分離膜ろ過供給水配管
11:分離膜ろ過透過水配管
12:分離膜ろ過濃縮水配管
13:ホース
14:流量計
15:ワンタッチ式ジョイント
16:通水容器開閉部
17:流量調整バルブ
18:通水方向
19:通水容器
19a:単位通水部材
20:分離膜