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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車載用遮断制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/54 20060101AFI20241126BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241126BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241126BHJP
【FI】
H01H9/54 B
B60L3/00 N
B60L58/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023579880
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2022004797
(87)【国際公開番号】W WO2023152786
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉冨 嵩大
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075262(JP,A)
【文献】特開2001-095138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
B60L 3/00
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の所定時間の間、前記スイッチ部が前記オフ状態のまま前記スイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替え
更に、前記スイッチ部に対して並列に接続される通電回路を有し、
前記通電回路は、前記スイッチ部が前記オン状態のときの当該スイッチ部の抵抗値よりも大きい抵抗値の抵抗部又は前記閾値よりも低い定電流を流す定電流回路を具備する電流抑制部を備え、前記電流抑制部を介して前記スイッチ部の一方側から他方側に電流を流す通電状態と、前記電流抑制部の通電を停止させる停止状態と、に切り替わり、
前記制御部は、前記所定時間の間、前記スイッチ部がオフ状態のまま前記通電回路が前記通電状態で維持されつつ前記スイッチ部の両端の電位差が継続して前記基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
車載用遮断制御装置。
【請求項2】
電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の前記スイッチ部の両端の電位差の上昇速度が基準未満である場合、又は、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えてから所定時間経過した時点の前記スイッチ部の両端の電位差が基準未満である場合、の少なくともいずれかの場合に、前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
車載用遮断制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記オン状態から前記オフ状態に切り替えてから時間が経過するほど電圧閾値を高くするように前記電圧閾値を変化させ、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後、前記電位差が前記電圧閾値未満となった場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
請求項に記載の車載用遮断制御装置。
【請求項4】
前記導電路は、バッテリに基づく電力が供給される電力路であり、
前記制御部は、前記バッテリの出力電圧が高いほど前記基準を低くする
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車載用遮断制御装置。
【請求項5】
電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の所定時間の間、前記スイッチ部が前記オフ状態のまま前記スイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替え、
前記導電路は、バッテリに基づく電力が供給される電力路であり、
前記制御部は、前記バッテリの出力電圧が高いほど前記基準を低くす
載用遮断制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチ部の温度が高いほど前記基準を低くする
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車載用遮断制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用遮断制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、過電流防止装置が開示されている。特許文献1の過電流防止装置は、保護対象の装置へ電流を供給する電流経路にFETが設けられている。ゲート制御部は、電流検出部によって検出された電流が所定の値を超えた時、FETを予め決められた一定時間オフとした後オンとし、所定時間内においてFETのオン/オフの回数が一定値を超えた時、FETを連続的にオフ状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-236061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される過電流防止装置は、電流経路に設けられたスイッチをオン状態に切り替えて当該スイッチに電流を流した上で過電流が生じているか否かを判定しており、過電流を判定するためにスイッチを介して電流を流さなければならない。この方式では、過電流が発生する状況下(負荷に短絡が生じている場合など)において過電流の判定を行う場合、スイッチをオン動作させる度に過電流が流れるため、連続的な保護動作(スイッチの連続的な遮断等)がなされるまでに複数回にわたって過電流が流れることが避けられない。
【0005】
本開示は、電力の経路をなす導電路を遮断する保護動作を行い得る車載用遮断制御装置に関し、導電路に継続的な過電流状態が発生しているか否かを、通電期間を抑えつつ判定することができる技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである車載用遮断制御装置は、
電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の所定時間の間、前記スイッチ部が前記オフ状態のまま前記スイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える。
【0007】
本開示の一つである車載用遮断制御装置は、
電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の前記スイッチ部の両端の電位差の上昇速度が基準未満である場合、又は、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えてから所定時間経過した時点の前記スイッチ部の両端の電位差が基準未満である場合、の少なくともいずれかの場合に、前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術は、電力の経路をなす電力路を遮断する保護動作を行い得る車載用遮断制御装置に関し、導電路に継続的な過電流状態が発生しているか否かを、通電期間を抑えつつ判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る車載用遮断制御装置を含む車載システムを概略的に例示するブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る車載用遮断制御装置で実行される遮断制御の流れを例示するフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態に係る車載用遮断制御装置が適用される車載システムにおける、導電路を流れる電流、過電流検知の状態、ラッチ状態、スイッチ部の両端の電位差、スイッチ部状態の変化を例示するタイミングチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係る車載用遮断制御装置が適用される車載システムにおける、導電路を流れる電流、過電流検知の状態、ラッチ状態、スイッチ部の両端の電位差、スイッチ部状態の変化を例示するタイミングチャートである。
図5図5は、第4実施形態に係る車載用遮断制御装置における制御部の内部構成等を例示するブロック図である。
図6図6は、第4実施形態に係る車載用遮断制御装置が適用される車載システムにおける、導電路を流れる電流、過電流検知の状態、ラッチ状態、スイッチ部の両端の電位差、スイッチ部状態の変化を例示するタイミングチャートである。
図7図7は、第5実施形態に係る車載用遮断制御装置における制御部の内部構成等を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される特徴は、矛盾しない内容でどのように組み合わされてもよい。
【0011】
〔1〕電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の所定時間の間、前記スイッチ部が前記オフ状態のまま前記スイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
車載用遮断制御装置。
【0012】
上記の〔1〕の車載用遮断制御装置は、電流値が閾値未満から閾値以上に変化した場合にスイッチ部をオフ状態に切り替えて早期に保護を図ることができる。その後、上記車載用遮断制御装置は、スイッチ部をオン状態からオフ状態に切り替えた後の所定時間の間、スイッチ部がオフ状態のままスイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合には、スイッチ部をオン状態に戻すことができる。上記所定時間にわたってスイッチ部がオフ状態のままスイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合、所定時間の間にスイッチ部の両端の電位差が基準を超えるように変化する場合よりもノイズに起因する一時的な電流上昇である可能性が高い。よって、車載用遮断制御装置が「上記所定時間にわたってスイッチ部がオフ状態のままスイッチ部の両端の電位差が継続して基準未満で維持された場合にスイッチ部をオン状態に戻す」ように動作すれば、スイッチ部を適切に復帰させやすい。
【0013】
〔2〕前記スイッチ部に対して並列に接続される通電回路を有し、
前記通電回路は、前記スイッチ部が前記オン状態のときの当該スイッチ部の抵抗値よりも大きい抵抗値の抵抗部又は前記閾値よりも低い定電流を流す定電流回路を具備する電流抑制部を備え、前記電流抑制部を介して前記スイッチ部の一方側から他方側に電流を流す通電状態と、前記電流抑制部の通電を停止させる停止状態と、に切り替わり、
前記制御部は、前記所定時間の間、前記スイッチ部がオフ状態のまま前記通電回路が前記通電状態で維持されつつ前記スイッチ部の両端の電位差が継続して前記基準未満で維持された場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
〔1〕に記載の車載用遮断制御装置。
【0014】
上記の〔2〕の車載用遮断制御装置は、電流値が閾値未満から閾値以上に変化した場合にスイッチ部をオフ状態に切り替えて早期に保護を図ることができる。その後、上記車載用遮断制御装置は、スイッチ部をオフ状態としたまま通電回路によって電流抑制部に電流を流しつつスイッチ部の両端の電位差が所定時間継続して基準未満であるか否かを判定することができる。スイッチ部がオフ状態のときに通電回路が電流抑制部に電流を流す場合、電流抑制部には抑制された電流が流れるため、車載用遮断制御装置は、このような抑制電流を流した結果に基づいて上記判定を行うことができる。上記車載用遮断制御装置は、このような判定により、導電路(電力の経路をなす導電路)に継続的な過電流状態が発生している可能性が高いか否かを推定することができる。そして、この車載用遮断制御装置は、継続的な過電流状態が発生している可能性が低いと推定される場合には、スイッチをオン状態に戻すことができる。
【0015】
〔3〕電力の経路をなす導電路と、前記導電路の通電を遮断するオフ状態と前記導電路の通電を許容するオン状態とに切り替わるスイッチ部と、を備えた車載用遮断装置を制御する車載用遮断制御装置であって、
前記導電路を流れる電流の値を検出する電流検出部と、
前記スイッチ部を前記オフ状態と前記オン状態とに切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチ部が前記オン状態のときに前記電流検出部によって検出される電流値が閾値未満から前記閾値以上に変化した場合に前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替え、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後の前記スイッチ部の両端の電位差の上昇速度が基準未満である場合、又は、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えてから所定時間経過した時点の前記スイッチ部の両端の電位差が基準未満である場合、の少なくともいずれかの場合に、前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
車載用遮断制御装置。
【0016】
上記の〔3〕の車載用遮断制御装置は、上記電流値が閾値未満から閾値以上に変化した場合にスイッチ部をオフ状態に切り替えて早期に保護を図ることができる。その後、この車載用遮断制御装置は、スイッチ部をオフ状態としたまま導電路(電力の経路をなす導電路)に継続的な過電流状態が発生している可能性が高いか否かを判定することができる。
【0017】
例えば、スイッチ部をオン状態からオフ状態に切り替えた後のスイッチ部の両端の電位差の上昇速度が相対的に大きい場合、相対的に小さい場合と比較すると電力の経路をなす導電路に継続的な過電流状態が発生している可能性が高い。或いは、スイッチ部をオン状態からオフ状態に切り替えてから所定時間経過した時点のスイッチ部の両端の電位差が相対的に小さい場合、相対的に大きい場合と比較して、上記導電路に継続的な過電流状態が発生している可能性が高い。上記車載用遮断制御装置は、このような思想に基づき、スイッチ部をオフ状態としたまま上記導電路に継続的な過電流状態が発生している可能性が高いか否かを判定し、継続的な過電流状態が発生している可能性が低いと推定される場合には、スイッチ部をオン状態に戻すことができる。
【0018】
〔4〕前記制御部は、前記オン状態から前記オフ状態に切り替えてから時間が経過するほど電圧閾値を高くするように前記電圧閾値を変化させ、前記スイッチ部を前記オン状態から前記オフ状態に切り替えた後、前記電位差が前記電圧閾値未満となった場合に前記スイッチ部を前記オン状態に切り替える
〔3〕に記載の車載用遮断制御装置。
【0019】
上記の〔4〕の車載用遮断制御装置は、電流値が閾値未満から閾値以上に変化したことに応じてスイッチ部がオフ状態に切り替えられた場合に、その後の上記電位差の上昇速度が基準以下の緩やかな速度であるか否かを早期に確認することができる。具体的には、スイッチ部がオフ状態に切り替えられてから時間が経過するほど電圧閾値が高く設定され、その場合の電圧閾値の上昇速度を基準とした場合に、この電圧閾値の上昇速度よりも上記電位差の上昇速度が緩やかであるか否かを、より早期に確認することができる。
【0020】
〔5〕前記導電路は、バッテリに基づく電力が供給される電力路であり、
前記制御部は、前記バッテリの出力電圧が高いほど前記基準を低くする
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の車載用遮断制御装置。
【0021】
上記の〔5〕の車載用遮断制御装置は、バッテリの出力電圧が高いほど基準が低く設定されるため、バッテリの出力電圧が高いほどスイッチ部がオン状態に解除されにくくなり、保護の水準をより高めることができる。バッテリの出力電圧が大きいほど過電流発生時の影響が大きいため、このような方式が採用されれば、保護と復帰のバランスの適切化が図られやすい。
【0022】
〔6〕前記制御部は、前記スイッチ部の温度が高いほど前記基準を低くする
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の車載用遮断制御装置。
【0023】
上記の〔6〕の車載用遮断制御装置は、上記の車載用遮断制御装置は、スイッチ部の温度が高いほど基準が低く設定されるため、スイッチ部の温度が高いほどスイッチ部がオン状態に解除されにくくなり保護の水準をより高めることができる。
【0024】
<第1実施形態>
【0025】
1.車載システム1の概要
図1には、第1実施形態の車載用遮断制御装置10を備えた車載システム1が示される。車載システム1は、車両100に搭載されるシステムであり、車載用の負荷4に電力を供給し得るシステムである。車載システム1が搭載される車両100は、例えば、電気自動車、ブラグインハイブリッド車、ハイブリッド車等の車両であり、その他の種類の車両であってもよい。図1では、車両100の領域が一点鎖線の枠で概念的に示される。
【0026】
車載システム1は、バッテリ2、導電路6、負荷4、車載用遮断装置3などを備える。以下の説明では、車載用の負荷4は、負荷4とも称される。車載用遮断装置3は、遮断装置3とも称される。車載用遮断制御装置10は、遮断制御装置10とも称される。
【0027】
バッテリ2は、車載用の蓄電池であり、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの二次電池によって構成されてもよく、その他の種類の蓄電池によって構成されてもよい。バッテリ2は、例えば、満充電時に所定の直流電圧(例えば12V)を導電路6A,6B間に印加する補機バッテリであってもよく、12Vよりも高い電圧を出力する高圧バッテリであってもよい。
【0028】
負荷4は、車載用の電気機器である。負荷4は、セルモータ、オルタネータ、及びラジエータクーリングファン等であってもよく、電動パワーステアリングシステム、電動パーキングブレーキ、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置等であってもよく、その他の装置であってもよい。
【0029】
導電路6は、電力の経路をなす導電路である。導電路6は、バッテリ2から供給される電力が伝送される導電路であり、負荷4に対して電力を供給する経路をなす導電路である。導電路6のうち、負荷4とバッテリ2の正極との間の導電路が導電路6Aである。導電路6のうち、バッテリ2の負極に電気的に接続される導電路が導電路6Bである。導電路6のうち、負荷4と遮断装置3との間の導電路が導電路6Cである。導電路6のうち、導電路6D,6Eは、遮断装置3の一部をなす導電路である。導電路6Aと導電路6Bとの間には、バッテリ2の両極間の電位差に応じた出力電圧が印加される。スイッチ部14がオン状態のときには、バッテリ2から供給される電力に基づいて導電路6を介して負荷4に電流が流れる。
【0030】
2.遮断装置の構成
遮断装置3は、導電路6を遮断するための装置である。遮断装置3は、スイッチ部14と電流検出部16と制御部12とを備える。
【0031】
スイッチ部14は、FET(Field Effect Transistor)などの半導体スイッチや機械式のリレーなどによって構成されている。スイッチ部14は、導電路6の通電を遮断するオフ状態と導電路6の通電を許容するオン状態とに切り替わる。スイッチ部14は、1つの素子によって構成されていてもよく、複数の素子によって構成されていてもよい。
【0032】
以下で説明される代表例では、図1のようにスイッチ部14は、FETである。スイッチ部14は、制御部12がオン信号を出力している場合にオン状態となり、制御部12がオフ信号を出力している場合にオフ状態となる。スイッチ部14がオフ状態のときには、導電路6Dから導電路6Eへのスイッチ部14を介しての通電が遮断され、スイッチ部14がオン状態のときには、導電路6Dから導電路6Eへのスイッチ部14を介しての通電が許容される。スイッチ部14がオン状態のときにはスイッチ部14を介しての通電が双方向に許容されてもよく、スイッチ部14がオフ状態のときにはスイッチ部14を介しての通電が双方向に遮断されてもよい。
【0033】
電流検出部16は、導電路6を流れる電流の値を検出する検出部である。「導電路6を流れる電流の値を検出する」とは、導電路6を流れる電流の値を特定可能な検出値を出力又は取得することを意味する。図1の例では、電流検出部16は、導電路6に設けられるとともに自身が設けられた部位を流れる電流の値を示す検出値を出力する。例えば、電流検出部16は、導電路6Cと導電路6Dの間を流れる電流の値に対応する電圧値を生成及び出力することにより、自身を流れる電流の値を実質的に検出し、上記電圧値を制御部12に与える。電流検出部16は、公知の電流センサによって構成され、電流センサの方式は限定されない。
【0034】
制御部12は、MPUなどを含んだ情報処理装置を有していてもよく、ハードウェア回路によって構成されていてもよい。制御部12には、半導体メモリなどの記憶部が含まれていてもよい。制御部12は、様々な演算や情報処理を行う機能を有し、信号の受信や出力を行う機能も有する。
【0035】
図1の例では、導電路6Cは、負荷4と電流検出部16との間の導電路であり、負荷4と電流検出部16との間を短絡し得る導電路である。導電路6Dは、電流検出部16とスイッチ部14の一端との間の導電路であり、スイッチ部14の一端と電流検出部16とを短絡し得る導電路である。導電路6Eは、スイッチ部14の他端と導電路6Bの間の導電路であり、スイッチ部14の他端と導電路6Bとの間を短絡し得る導電路である。
【0036】
3.遮断制御装置の動作
制御部12は、所定の開始条件が成立した場合に図2に示される遮断制御を開始し、所定の終了条件が成立した場合に遮断制御を終了する。本実施形態では、上記開始条件が成立してから上記終了条件が成立するまでの間が遮断制御中の期間である。所定の開始条件は、車両100の始動スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わったことであってもよく、制御部12に対する電源供給が開始されたことであってもよく、その他の開始条件であってもよい。所定の終了条件は、ステップS10が終了したことであってもよく、車両100の始動スイッチがオン状態からオフ状態に切り替わったことであってもよく、制御部12に対する電源供給が停止されたことであってもよく、その他の終了条件であってもよい。
【0037】
制御部12は、上記開始条件が成立した場合、図2のステップS1の動作を実行し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。なお、上記遮断制御中でない期間は、スイッチ部14は、オフ状態で維持される。
【0038】
制御部12は、ステップS1の後、ステップS2において電流検出部16から与えられる検出値Vrを確認する。制御部12は、ステップS2の後、ステップS3においてステップS2で確認した検出値Vrに基づいて過電流が生じているか否かを確認する。制御部12は、ステップS3では、例えば、検出値Vrによって特定される電流値(導電路6における電流検出部16の位置を流れる電流値)Irと過電流の基準となる閾値Ithとを比較する。なお、ステップS3での比較は、電流値Irを特定するための検出値(電流検出部16の出力電圧値)Vrと閾値Ithに対応する電圧閾値Vthとを比較してもよい。
【0039】
制御部12は、ステップS3の後、ステップS4において検出値Vrによって特定される電流値Irが閾値Ith未満であるか否かを判定する。制御部12は、ステップS4において電流値Irが閾値Ith未満であると判定した場合には、処理をステップS1に戻し、ステップS1以降の処理を再び行う。制御部12は、ステップS4において電流値Irが閾値Ith以上であると判定した場合には、処理をステップS5に進める。なお、制御部12は、ステップS4の判定を行う場合、上記検出値Vrが上記電圧閾値Vth未満である場合にステップS4においてNoと判定してもよく、上記検出値Vrが上記電圧閾値Vth以上である場合にステップS4においてYesと判定してもよい。
【0040】
制御部12は、処理をステップS5に進めた場合、ステップS5において、ステップS4においてYesと判定してからの経過時間T1(ステップS4で電流値Irが閾値Ith以上であると判定してからの経過時間)が基準時間Tdを超えたか否かを判定する。制御部12は、ステップS5において上記経過時間T1が上記基準時間Tdを超えていないと判定した場合、処理をステップS1に戻し、ステップS1以降の処理を再び行う。制御部12は、ステップS5において上記経過時間T1が上記基準時間Tdを超えたと判定した場合、処理をステップS6に進め、過電流状態をラッチする。ステップS6では、ラッチ回路によってラッチ信号を継続的に出力することでラッチ状態を継続してもよく、情報処理装置によってラッチ状態を継続してもよい。制御部12は、ステップS6においてラッチ状態に切り替えた場合、ステップS7においてスイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替える。本実施形態では、ラッチ状態が維持されている間は、スイッチ部14がオフ状態とされる。
【0041】
このように、制御部12は、上記遮断制御中においてスイッチ部14がオン状態のときに電流検出部16によって検出される電流値Irが閾値Ith未満から閾値Ith以上に変化した場合にスイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替え、保護を図る。一方、制御部12は、遮断制御中に電流検出部16によって検出される電流値Irが閾値Ith未満である場合、スイッチ部14をオン状態で維持する。具体的には、図3のように、電流値Irが閾値Ith以上となった時点(図3において時間(時点)t1、t7)から過電流検知期間となり、過電流検知期間の長さ(経過時間T1)が時間Tdを超えた時点(図3において時間(時点)t2、t)からラッチ状態の期間となる。図3において、「過電流検知」がONの期間(過電流検知期間)は、図示されていない過電流検知回路が検知信号を出力してもよく、「過電流検知」がOFFの期間(検知解除期間)は、図示されていない過電流検知回路が検知解除信号を出力してもよい。或いはこれらの動作に代えて、制御部12が情報処理によって過電流検知期間と検知解除期間を特定してもよい。図3において、「ラッチ状態」がONの期間(ラッチ期間)は、図示されていないラッチ回路がラッチ信号を出力してもよく、「ラッチ状態」がOFFの期間(ラッチ解除期間)は、図示されていないラッチ回路がラッチ解除信号を出力してもよい。或いはこれらの動作に代えて、制御部12が情報処理によってラッチ期間とラッチ解除期間とを特定してもよい。
【0042】
制御部12は、ステップS7の後、ステップS8において、スイッチ部14の両端の電位差(両端電圧)Vdsを取得する。制御部12には、スイッチ部14の一端の電位と他端の電位とが入力されるようになっており、制御部12は、これらの電位差によってスイッチ部14の両端の電位差Vdsを検出する。
【0043】
制御部12は、ステップS8の後、ステップS9において継続的遮断条件が成立したか否かを判定する。本実施形態での継続的遮断条件は、「スイッチ部14がオン状態からオフ状態に切り替えられた後の所定時間Trの間に、スイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上になること」である。本実施形態の継続的な遮断の解除条件は、「所定時間Trの間に、スイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持されること」である。所定時間Trは、スイッチ部14がオン状態からオフ状態に切り替えられた時点(図3では、時間(時点)t2又はt8)から予め定められた規定時間が経過するまでの間の期間である。
【0044】
制御部12は、ステップS9において、上記所定時間Trの間にスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上になったと判定した場合、処理をステップS10に進め、スイッチ部14をオフ状態で維持する。図3では、制御部12が処理をステップS10に進めた後のスイッチ部14のオフ期間を「本遮断」の期間としている。制御部12は、処理をステップS10に進めてスイッチ部14をオフ状態で維持する場合、ラッチ解除条件(例えば、上述の開始条件又は上述の終了条件)が成立するまでラッチ状態を維持し、ラッチ解除条件が成立した場合にラッチ状態を解除する。図3の例は、時間t3においてラッチ解除条件が成立した例である。
【0045】
制御部12は、ステップS9において、上記所定時間Trの間に、スイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持されたと判定した場合、処理をステップS1に戻し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。なお、制御部12は、処理をステップS1に戻した場合、上述のラッチ期間になるまでラッチ状態を解除しておく。このような動作がなされるため、スイッチ部14が早期にオン状態に復帰し得る。
【0046】
4.効果の例
遮断制御装置10は、導電路6を流れる電流の値Irが閾値Ith未満から閾値Ith以上に変化した場合にスイッチ部14をオフ状態に切り替えて早期に保護を図ることができる。その後、遮断制御装置10は、スイッチ部14をオフ状態としたまま導電路6(電力の経路をなす導電路)に継続的な過電流状態が発生している可能性が高いか否かを判定することができる。
【0047】
遮断制御装置10は、スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた後の所定時間Trの間、スイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持された状況(例えば、図3の時間t9後の状況)において、スイッチ部14をオン状態に戻すことができる。図3の時間t9後のように所定時間Trにわたってスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値vth)未満で維持された場合、図3の時間t2後の期間のように所定時間Trにおいてスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準を超えるように変化する場合よりも、ノイズに起因する一時的な電流上昇である可能性が高い。よって、上述のように動作すれば、スイッチ部14を適切に復帰させやすい。
【0048】
<第2実施形態>
次の説明は第2実施形態に関する。
第2実施形態の代表例の装置構成は図1に示される車載用遮断制御装置10と同一である。よって以下では、第2実施形態の代表例について図1が参照されつつ説明される。以下で説明される第2実施形態の代表例は、図2のステップS9の判定方法の具体的内容のみが第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同一である。よって、以下では、図2のステップS9の内容が重点的に説明される。図1図2の内容は、第1実施形態と第2実施形態とで同一であるため、以下の説明では、図1図2が参照される。
【0049】
第2実施形態でも、制御部12は、上述の開始条件が成立した場合に図2に示される遮断制御を開始し、上述の終了条件が成立するまで遮断制御を行う。遮断制御においてステップS1~S8の処理は、第1実施形態と同一である。制御部12は、ステップS8の後、ステップS9において継続的遮断条件が成立したか否かを判定する。
【0050】
本実施形態での継続的遮断条件は、「スイッチ部14が遮断された直後の所定時間Trにおけるスイッチ部14の両端の電位差の上昇速度が基準(基準上昇速度)を超えること」である。継続的遮断の解除条件は、「所定時間Trにおけるスイッチ部14の両端の電位差の上昇速度が基準(基準上昇速度)未満であること」である。所定時間Trは、スイッチ部14がオン状態からオフ状態に切り替えられた時点(図4では、時間(時点)t2又はt8)から予め定められた規定時間が経過するまでの間の期間である。
【0051】
制御部12は、以下の方法で、所定時間Trにおけるスイッチ部14の両端の電位差Vdsの上昇速度が基準未満であるか否かを判定することができる。制御部12は、ステップS6、S7の動作によってスイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた時点(図3における時間(時点)t2、t8)から時間が経過するほど電圧閾値(解除閾値)Vthを高くするように電圧閾値Vthを変化させる。具体的には、制御部12は、スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた時点(図3における時間(時点)t2、t8)から一定時間の間、Vthを0で維持するように電圧閾値Vthを設定する。制御部12は、上記一定時間が経過した時点から所定の上昇速度(基準速度)でVthを一定値Vaまで上昇させ、その後、ラッチ解除条件が成立するまで電圧閾値Vthを上記一定値Vaで維持する。一定値Vaは、例えば、0よりも大きくバッテリ2の満充電時の出力電圧よりも小さい値である。上記基準速度は、回路の特性に合わせて設定されればよい。上記基準速度で電圧閾値Vthを次第に上昇させる期間Taは、制御部12がスイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた時点から所定時間Trが経過するまでの期間の一部期間である。図4の例では、期間Taの長さをT1とした場合、基準速度は、単位時間当たりVa/T1だけ電圧を直線的に上昇させる上昇速度である。
【0052】
このように、制御部12は、スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた後(ラッチ期間となった後)、上述の方法で所定時間Trにおいて電圧閾値Vthを変化させ、ステップS9では、所定時間Trにおいて電位差Vdsが電圧閾値Vth未満となったか否かを判定する。制御部12は、ステップS9において、上記所定時間Trの間に電位差Vdsが電圧閾値Vth未満になったと判定した場合(即ち、所定時間Trにおける電位差Vdsの上昇速度が基準速度未満であると判定した場合)、処理をステップS1に戻し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。制御部12は、処理をステップS1に戻した場合、上述のラッチ期間になるまでラッチ状態を解除しておく。このような動作がなされるため、スイッチ部14が早期にオン状態に復帰し得る。
【0053】
一方、制御部12は、スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた後(ラッチ期間となった後)、所定時間Trにおいて電位差Vdsが電圧閾値Vth以上で維持されたと判定した場合(即ち、所定時間Trにおける電位差Vdsの上昇速度が基準速度以上であると判定した場合)、処理をステップS10に進め、スイッチ部14をオフ状態で維持する。制御部12は、処理をステップS10に進めてスイッチ部14をオフ状態で維持する場合、ラッチ解除条件(例えば、上述の開始条件又は上述の終了条件)が成立するまでラッチ状態を維持し、ラッチ解除条件が成立した場合にラッチ状態を解除する。
【0054】
例えば、スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えた後のスイッチ部14の両端の電位差Vdsの上昇速度が相対的に大きい場合、相対的に小さい場合と比較すると導電路6に継続的な過電流状態が発生している可能性が高い。第2実施形態の遮断制御装置10は、このような思想に基づき、スイッチ部14をオフ状態としたまま導電路6に継続的な過電流状態が発生している可能性が高いか否かを判定し、継続的な過電流状態が発生している可能性が低いと推定される場合には、スイッチ部14をオン状態に戻すことができる。
【0055】
遮断制御装置10は、電流値Irが閾値Ith未満から閾値Ith以上に変化したことに応じてスイッチ部14がオフ状態に切り替えられた場合に、上述のように電圧閾値Vthを変化させる方法を採用し、更に電圧閾値Vthと電位差Vdsとを比較する方法を採用することにより、電位差Vdsの上昇速度が基準以下の緩やかな速度であるか否かを早期に確認することができる。
【0056】
<第3実施形態>
次の説明は第3実施形態に関する。
第3実施形態の代表例の装置構成は図1に示される車載用遮断制御装置10と同一である。よって以下では、第3実施形態の代表例について図1が参照されつつ説明される。以下で説明される第3実施形態の代表例は、図2のステップS9の判定方法の具体的内容のみが第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同一である。よって、以下では、図2のステップS9の内容が重点的に説明される。図1図3の内容は、第1実施形態と第実施形態とで同一であるため、以下の説明では、図1図3が参照される。
【0057】
第3実施形態でも、制御部12は、上述の開始条件が成立した場合に図2に示される遮断制御を開始し、上述の終了条件が成立するまで遮断制御を行う。この遮断制御においてステップS1~S8の処理は、第1実施形態と同一である。制御部12は、ステップS8の後、ステップS9において継続的遮断条件が成立したか否かを判定する。
【0058】
本実施形態での継続的遮断条件は、「スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えてから所定時間Trが経過した時点のスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上であること」である。継続的遮断の解除条件は、「スイッチ部14をオン状態からオフ状態に切り替えてから所定時間Trが経過した時点のスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)未満であること」である。所定時間Trの長さは、予め定められた長さである。
【0059】
制御部12は、ステップS9において、上記所定時間Trが経過した時点のスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上であると判定した場合、処理をステップS10に進め、スイッチ部14をオフ状態で維持する。
【0060】
制御部12は、ステップS9において、上記所定時間Trが経過した時点のスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)未満であると判定した場合、処理をステップS1に戻し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。制御部12は、処理をステップS1に戻した場合、上述のラッチ期間になるまでラッチ状態を解除しておく。このような動作がなされるため、スイッチ部14が早期にオン状態に復帰し得る。
【0061】
<第4実施形態>
次の説明は第4実施形態に関する。
第4実施形態の代表例の装置構成は、図1に示される車載用遮断制御装置10の構成を全て含み、更に特徴が付加されている。よって以下では、第4実施形態の代表例について図1が参照されつつ説明され、制御部12内の構成等については、図5が参照されつつ説明される。以下で説明される第4実施形態の代表例は、遮断制御についての流れは図2と同一であるため、以下の説明では、図2が参照される。
【0062】
第4実施形態の代表例に係る遮断制御装置10は、図1のような構成をなす。更に、図5のように、制御部12は、第1実施形態の制御部12と同様の構成及び機能を有する制御装置12Aと、通電回路の一例である定電流回路12Bとを備える。図5のように、定電流回路12Bは、導電路6Dと導電路6Eとの間においてスイッチ部14に対して並列に接続される。定電流回路12Bは、電流抑制部の一例に相当する。定電流回路12Bは、上述の閾値Ithよりも低い値の定電流を流す回路である。定電流回路12Bは、制御装置12Aから動作指示がなされた場合には、次に制御装置12Aから停止指示がなされるまで通電状態となり、この通電状態のときにはスイッチ部14の一方側の導電路6Dから他方側の導電路6Eへと自身を介して上記定電流を流すように動作する。定電流回路12Bは、制御装置12Aから停止指示がなされた場合には、次に制御装置12Aから動作指示がなされるまで停止状態となり、この停止状態のときには自身を介しての通電を停止させる。
【0063】
第4実施形態でも、制御部12は、上述の開始条件が成立した場合に図2に示される遮断制御を開始し、上述の終了条件が成立するまで遮断制御を行う。この遮断制御においてステップS1~S8、S10の処理は、第1実施形態と同一である。制御部12は、ステップS8の後、ステップS9において継続的遮断条件が成立したか否かを判定する。
【0064】
制御部12は、ステップS9において、定電流回路12Bに動作指示を与え、図6のように定電流回路12Bを所定時間Trにわたって継続的に通電状態とする。本実施形態での継続的遮断条件は、「所定時間Trの間にスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上になること」である。本実施形態の継続的な遮断の解除条件は、「所定時間Trの間にスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持されること」である。所定時間Trは、スイッチ部14がオン状態からオフ状態に切り替えられた時点(図6では、時間(時点)t2又はt8)から予め定められた規定時間が経過するまでの間の期間である。
【0065】
制御部12は、上記所定時間Trにおいて電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上となり且つ上記所定時間Trの開始時点から電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上となるまでスイッチ部14がオフ状態で継続された場合、ステップS9においてYesと判定して処理をステップS10に進め、スイッチ部14をオフ状態で維持する。
【0066】
制御部12は、ステップS9において上記所定時間Trにわたって定電流回路12Bに定電流を流した場合において、上記所定時間Trの全期間にわたってスイッチ部14がオフ状態のまま電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持された場合、ステップS9においてNoと判定して処理をステップS1に戻し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。制御部12は、処理をステップS1に戻した場合、ラッチ期間になるまでラッチ状態を解除しておく。このような動作がなされるため、スイッチ部14が早期にオン状態に復帰し得る。
【0067】
<第5実施形態>
次の説明は第5実施形態に関する。
第5実施形態の代表例の装置構成は、図1に示される車載用遮断制御装置10の構成を全て含み、更に特徴が付加されている。よって以下では、第5実施形態の代表例について図1が参照されつつ説明され、制御部12内の構成等については、図7が参照されつつ説明される。以下で説明される第5実施形態の代表例は、遮断制御についての流れは図2と同一であるため、以下の説明では、図2が参照される。
【0068】
第5実施形態の遮断制御装置10は、図のような構成をなす。第5実施形態の遮断制御装置10では、第4実施形態の遮断制御装置10の定電流回路12Bの代わりに電流抑制部12Cが用いられる。図7の遮断制御装置10のハードウェア構成は、定電流回路12B(図5)の代わりに電流抑制部12Cが用いられる点、及び制御装置12Aが定電流回路12B(図5)の動作を制御する代わりに制御装置12Aがスイッチ12Dのオンオフを制御する点以外は第4実施形態の遮断制御装置10(図5)と同一である。

【0069】
図7のように、電流抑制部12Cは、抵抗部12Eとスイッチ12Dとを備える。抵抗部12Eの抵抗値は、スイッチ部14がオン状態のときのスイッチ部14の抵抗値よりも大きい。スイッチ12Dは、自身がオン状態のときに抵抗部12Eの通電を許容し、自身がオフ状態のときに抵抗部12Eの通電を遮断する。図7の例では、スイッチ12Dと抵抗部12Eとが直列に接続されている。電流抑制部12Cは、通電回路の一例に相当し、自身を介してスイッチ部14の一方側から他方側に電流を流す通電状態と、自身の通電を停止させる停止状態と、に切り替わる。
【0070】
第5実施形態でも、制御部12は、上述の開始条件が成立した場合に図2に示される遮断制御を開始し、上述の終了条件が成立するまで遮断制御を行う。この遮断制御においてステップS1~S8、S10の処理は、第1実施形態と同一である。制御部12は、ステップS8の後、ステップS9において継続的遮断条件が成立したか否かを判定する。
【0071】
制御部12は、ステップS9において、電流抑制部12Cに動作指示を与え(具体的には、スイッチ12Dにオン指示を与え)、電流抑制部12Cを所定時間Trにわたって継続的に通電状態とする。本実施形態での継続的遮断条件は、「所定時間Trの間にスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上になること」である。本実施形態の継続的な遮断の解除条件は、「所定時間Trの間にスイッチ部14がオフ状態のままスイッチ部14の両端の電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持されること」である。所定時間Trは、スイッチ部14がオン状態からオフ状態に切り替えられた時点から予め定められた規定時間が経過するまでの間の期間である。制御部12は、ステップS9の判定を行う場合、上記所定時間Trにおいて電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上となり且つ上記所定時間Trの開始時点から電位差Vdsが基準(電圧閾値Vth)以上となるまでスイッチ部14がオフ状態で継続された場合、ステップS9においてYesと判定して処理をステップS10に進め、スイッチ部14をオフ状態で維持する。
【0072】
制御部12は、ステップS9において上記所定時間Trにわたって定電流回路12Bに定電流を流した場合において、上記所定時間Trの全期間にわたってスイッチ部14がオフ状態のまま電位差Vdsが継続して基準(電圧閾値Vth)未満で維持された場合、ステップS9においてNoと判定して処理をステップS1に戻し、スイッチ部14をオン状態に切り替える。制御部12は、処理をステップS1に戻した場合、ラッチ期間になるまでラッチ状態を解除しておく。このような動作がなされるため、スイッチ部14が早期にオン状態に復帰し得る。
【0073】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0074】
上述されたいずれの実施形態でも、制御部12は、バッテリ2の出力電圧が高いほど基準を低くするように基準を調整してもよい。例えば、第1、第3~第5実施形態のいずれでも、電圧閾値Vthが固定値とされる方式に代えて、バッテリ2の出力電圧と電圧閾値Vthとが負の比例関係で定められる方式に変更されてもよく、バッテリ2の出力電圧と電圧閾値Vthとが反比例で定められる方式に変更されてもよく、バッテリ2の出力電圧が高いほど電圧閾値Vthを低く決定するその他の関数によって電圧閾値Vthが定められる方式に変更されてもよい。また、第2実施形態では、基準速度が固定値とされる方式に代えて、バッテリ2の出力電圧と基準速度とが負の比例関係で定められる方式に変更されてもよく、バッテリ2の出力電圧と基準速度とが反比例で定められる方式に変更されてもよく、バッテリ2の出力電圧が高いほど基準速度を低く決定するその他の関数によって基準速度が定められる方式に変更されてもよい。バッテリ2の出力電圧と基準との対応関係は、予め定められた演算式(バッテリ2の出力電圧を変数として電圧閾値Vthを決定する演算式やバッテリ2の出力電圧を変数として基準速度を決定する演算式)で定められていてもよく、テーブルによって定められてもよい。このようにすれば、バッテリ2の出力電圧が高いほど、ステップS9においてYesと判定されやすくなり、解除の基準が厳しくなるため、バッテリ2の出力電圧が高いほど保護の水準をより高めることができる。バッテリ2の出力電圧が大きいほど過電流発生時の影響が大きいため、このような方式が採用されれば、保護と復帰のバランスの適切化が図られやすい。
【0075】
上述されたいずれの実施形態でも、制御部12は、スイッチ部14の温度が高いほど基準を低く設定するように基準を調整してもよい。この例では、遮断制御装置10又は遮断制御装置10の外部においてスイッチ部14の温度を検出する温度センサが設けられているとよい。例えば、第1、第3~第5実施形態のいずれでも、電圧閾値Vthが固定値とされる方式に代えて、スイッチ部14の温度と電圧閾値Vthとが負の比例関係で定められる方式に変更されてもよく、スイッチ部14の温度と電圧閾値Vthとが反比例で定められる方式に変更されてもよく、スイッチ部14の温度が高いほど電圧閾値Vthを低く決定するその他の関数によって電圧閾値Vthが定められる方式に変更されてもよい。また、第2実施形態では、基準速度が固定値とされる方式に代えて、スイッチ部14の温度と基準速度とが負の比例関係で定められる方式に変更されてもよく、スイッチ部14の温度と基準速度とが反比例で定められる方式に変更されてもよく、スイッチ部14の温度が高いほど基準速度を低く決定するその他の関数によって基準速度が定められる方式に変更されてもよい。スイッチ部14の温度と基準との対応関係は、予め定められた演算式(スイッチ部14の温度を変数として電圧閾値Vthを決定する演算式やスイッチ部14の温度を変数として基準速度を決定する演算式)で定められていてもよく、テーブルによって定められてもよい。このようにすれば、スイッチ部14の温度が高いほど、ステップS9においてYesと判定されやすくなり、解除の基準が厳しくなるため、スイッチ部14の温度が高いほど保護の水準をより高めることができる。スイッチ部14の温度が大きいほど過電流発生時の影響が大きいため、このような方式が採用されれば、保護と復帰のバランスの適切化が図られやすい。
【0076】
上述の実施形態では、スイッチ部14が遮断制御装置10に含まれていないが、スイッチ部14が遮断制御装置10に含まれてもよい。
【0077】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 :車載システム
2 :バッテリ
3 :車載用遮断装置
4 :負荷
6 :導電路
6A :導電路
6B :導電路
6C :導電路
6D :導電路
6E :導電路
10 :車載用遮断制御装置
12 :制御部
12A :制御装置
12B :定電流回路(通電回路、電流抑制部)
12C :電流抑制部(通電回路)
12D :スイッチ
12E :抵抗部
14 :スイッチ部
16 :電流検出部
100 :車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7