(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20241126BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241126BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20241126BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241126BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20241126BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241126BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241126BHJP
F02M 26/14 20160101ALI20241126BHJP
F02M 26/35 20160101ALI20241126BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16 ZHV
B60K6/48
B60L7/12 Q
B60L50/16
B60L50/61
F02M26/14
F02M26/35 C
F02M26/35 D
F01N3/24 S
F01N3/24 N
F01N3/24 L
(21)【出願番号】P 2023580019
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005579
(87)【国際公開番号】W WO2023152946
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 健敏
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-18212(JP,A)
【文献】特開2009-264202(JP,A)
【文献】特開2011-11647(JP,A)
【文献】特開2017-81501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/16
B60K 6/48
B60L 7/12
B60L 50/16
B60L 50/61
F02M 26/14
F02M 26/35
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRシステムが適用されて車両に搭載されるエンジンと、
前記車両を走行させる機能と回生発電する機能とを兼ね備えたモータと、
前記回生発電で生成される電力が充電されるバッテリと、
前記エンジンに連結されて前記バッテリの電力で前記エンジンを駆動する機能を有するジェネレータと、
前記エンジンの吸気系と排気系とを接続するEGR通路に介装されるEGRバルブと、
前記回生発電に際し、前記EGRバルブを開いたまま前記エンジンを前記ジェネレータで空回しする空転循環制御を実施する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記空転循環制御に際し、前記吸気系の圧力が低いほど前記EGRバルブの開度を大きくする
ことを特徴とする、ハイブリッド車両。
【請求項3】
前記EGR通路に介装されたトラップ触媒装置を備える
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記吸気系のうち前記EGR通路の接続位置よりも上流の吸気通路に介装されるスロットルバルブを備え、
前記制御ユニットは、前記空転循環制御に際し、前記スロットルバルブを閉じる
ことを特徴とする、請求項1または3記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記排気系のうち前記EGR通路の接続位置よりも下流の排気通路に介装される排気バルブを備え、
前記制御ユニットは、前記空転循環制御に際し、前記排気バルブを閉じる
ことを特徴とする、請求項1,3,4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記排気系のうち前記EGR通路の接続位置よりも下流の排気通路に介装される電気加熱式触媒装置を備え、
前記制御ユニットは、
前記電気加熱式触媒装置の温度が所定温度未満である場合に、前記電気加熱式触媒装置を加熱しつつ前記空転循環制御を実施し、
前記温度が前記所定温度以上になった場合に、前記空転循環制御ではなく、前記EGRバルブを閉じたまま前記エンジンを前記ジェネレータで空回しする空転非循環制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1,3~5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)システムが適用されたエンジンとモータとジェネレータとを備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリーズ走行を実施しうるハイブリッド車両において、走行用モータを回生動作させることで回生制動力を得るとともに、回生電力を利用して別のモータでエンジンを空回しすることで電力収支を調節するものが知られている。この種のハイブリッド車両では、回生電力をエンジンの空回しで消費することで、回生制動力を確保しつつバッテリへの電力の流入を抑制できる。したがって、例えばバッテリの充電率(SOC,State Of Charge)が満充電に近い状況や充放電を控えたい状況において、バッテリ劣化の進行を抑制しうる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなハイブリッド車両では、エンジンの空回しによってエンジンオイル成分を含むガスがクランクケース内から気筒内へと進入し、排気通路に流出することがある。一方、エンジンの空回し時には、排気通路上の触媒装置が十分に暖まっていないこともあり、良好な浄化性能が得られにくい。したがって、ハイブリッド車両の環境性能を改善する上で、このような課題への対策を企てておくことが望ましい。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、エンジンの空回しによるエンジンオイル成分の漏出を抑えることで環境性能を改善できるようにしたハイブリッド車両を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のハイブリッド車両は、以下に開示する態様または適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
開示のハイブリッド車両は、EGRシステムが適用されて車両に搭載されるエンジンと、前記車両を走行させる機能と回生発電する機能とを兼ね備えたモータと、前記回生発電で生成される電力が充電されるバッテリと、前記エンジンに連結されて前記バッテリの電力で前記エンジンを駆動する機能を有するジェネレータと、前記エンジンの吸気系と排気系とを接続するEGR通路に介装されるEGRバルブと、前記回生発電に際し、前記EGRバルブを開いたまま前記エンジンを前記ジェネレータで空回しする空転循環制御を実施する制御ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示のハイブリッド車両によれば、ジェネレータでエンジンを空回しすることで、回生発電で生成される電力をジェネレータに消費させることができ、バッテリへの充電を抑制できる。これにより、例えばバッテリが満充電に近い状態であっても十分な大きさの回生制動力を確保できる。また、エンジンを空回しすることで気筒内から排出されうるエンジンオイル成分をEGR通路に還流させることができる。これにより、エンジンオイル成分の車外への漏出を抑制でき、ハイブリッド車両の環境性能を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】インマニ圧とEGR開度との関係を例示するグラフである。
【
図3】第一制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第二制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第三制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示のハイブリッド車両は、以下の実施例によって実施されうる。
【実施例】
【0010】
[1.装置構成]
図1は、実施例としてのハイブリッド車両1の構成を例示するブロック図である。このハイブリッド車両1(単に車両1とも呼ぶ)は、駆動源としてのエンジン3及びモータ4と発電装置としてのジェネレータ6と蓄電装置としてのバッテリ5とが搭載されたハイブリッド自動車(ハイブリッド電気自動車,HEV,Hybrid Electric Vehicle)またはプラグインハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド電気自動車,PHEV,Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。プラグインハイブリッド自動車とは、バッテリ5に対する外部充電またはバッテリ5からの外部給電が可能なハイブリッド自動車を意味する。プラグインハイブリッド自動車には、外部充電設備からの電力が送給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)や外部給電用のコンセント(アウトレット)が設けられる。
【0011】
エンジン3は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であり、EGRシステム2が適用されたものである。エンジン3の駆動軸には、少なくともバッテリ5の電力でエンジン3を駆動する機能を有するジェネレータ6(発電機)が連結される。本実施例のジェネレータ6は、エンジン3の駆動力を利用して発電する機能も有する。ジェネレータ6の発電電力(発電出力)は、モータ4の駆動やバッテリ5の充電に用いられる。エンジン3とジェネレータ6とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構が介装されうる。
【0012】
モータ4は、バッテリ5に蓄えられている電池電力やジェネレータ6の発電電力を用いて車両1を走行させる機能と、回生発電によって生じる電力をバッテリ5に充電する機能とを兼ね備えた電動機兼発電機である。バッテリ5は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの二次電池である。モータ4の駆動軸は、車両1の駆動輪に連結される。モータ4と駆動輪とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構が介装されうる。
【0013】
エンジン3とモータ4とを繋ぐ動力伝達経路上には、クラッチ7が介装される。エンジン3はクラッチ7を介して駆動輪に接続され、モータ4はクラッチ7よりも駆動輪側に配置される。また、ジェネレータ6はクラッチ7よりもエンジン3側に接続される。クラッチ7が切断(解放)されると、エンジン3及びジェネレータ6が駆動輪に対して非接続の状態となり、モータ4が駆動輪に対して接続された状態となる。したがって、例えばモータ4のみを作動させることで、いわゆるEV走行(モーター単独走行)が実現される。これに加えて、エンジン3を作動させてジェネレータ6に発電させることで、いわゆるシリーズ走行が実現される。
【0014】
一方、クラッチ7が接続(締結)されると、エンジン3,モータ4,ジェネレータ6の三者が駆動輪に対して接続された状態となる。したがって、例えばエンジン3のみを作動させることで、いわゆるENG走行(エンジン単独走行)が実現される。これに加えて、モータ4やジェネレータ6を駆動することで、いわゆるパラレル走行が実現される。なお、車両1は少なくともシリーズ走行が可能なハイブリッド車両であればよく、他の走行態様(EV走行,ENG走行,パラレル走行)は適宜省略されうる。
【0015】
エンジン3に適用されたEGRシステム2について詳述する。EGRシステム2とは、エンジン3の気筒内から排出されるガスを排気系9から吸気系8へと再循環させることで、燃費や環境性能を改善するシステムである。一般的なEGRシステム2では、気筒内で燃焼した後の排気ガスが、吸気系8へと導入されるように制御される。一方、本実施例では排気ガスだけでなく、エンジン3の空回しによって排気系9に排出されるガス(エンジンオイル成分を含むガス)についても、吸気系8へと導入されるように制御される。なお、エンジンオイル成分の具体例としては、鉱油成分,ポリαオレフィン,ポリオールエステル,シリコーン,VHVI(Very High Viscosity Index)油,各種調整剤(摩擦調整剤,粘度調整剤,清浄分散剤,酸化防止剤,防錆剤,消泡剤など)が挙げられる。
【0016】
エンジン3の吸気系8には、吸気通路14,エアクリーナ15,インマニ16(インテークマニホールド),スロットルバルブ17,インマニ圧センサ18が設けられる。吸気通路14は、エンジン3の気筒内に新気や燃料混合気を流入させるための管路である。エアクリーナ15は、新気に含まれるごみや埃を除去するための濾過装置(フィルタ)である。インマニ16は、気筒内に流入する新気や燃料混合気が蓄えられる一定の容積を持った室である。エンジン3に複数の気筒が設けられている場合には、各気筒に繋がる複数の流路がインマニ16から分岐して形成される。
【0017】
スロットルバルブ17は、エンジン3の吸気量を調節するための流量制御弁であり、エアクリーナ15とインマニ16との間の吸気通路14に介装される。スロットルバルブ17の作動状態(スロットル開度)は、後述する制御ユニット13によって制御される。インマニ圧センサ18は、インマニ16の内部圧力(インマニ圧)を検出する圧力センサである。インマニ圧の情報は、制御ユニット13に伝達される。本実施例では、吸気系8の圧力を代表する値としてインマニ圧が参照される。
【0018】
エンジン3の排気系9には、排気通路19,電気加熱式触媒装置20,排気バルブ21,触媒温度センサ22が設けられる。排気通路19は、エンジン3の気筒内からガスを車外へと流出させるための管路である。電気加熱式触媒装置20は、排気通路19を流れるガスに含まれる各種成分を浄化するための触媒装置と触媒装置自体を昇温させるための電気加熱器(ヒータ)とを一体化させた装置である。電気加熱式触媒装置20の作動状態は、制御ユニット13によって制御される。
【0019】
排気バルブ21は、エンジン3の気筒内から排出されるガスの流量を調節するための流量制御弁であり、電気加熱式触媒装置20よりも上流側の排気通路19に介装される。排気バルブ21の作動状態(排気バルブ開度)は、制御ユニット13によって制御される。触媒温度センサ22は、電気加熱式触媒装置20の触媒温度を検出する温度センサである。ここでいう触媒温度には、触媒内部温度だけでなく、触媒上流温度や触媒下流温度が含まれる。触媒温度の情報は、制御ユニット13に伝達される。
【0020】
吸気系8と排気系9との間は、EGR通路10によって接続される。EGR通路10は、エンジン3の気筒内から排出されるガスを排気系9から吸気系8へと再還流させるための管路である。排気通路19におけるEGR通路10の分岐位置は、排気バルブ21よりも上流側に設定される。また、EGR通路10の下流端は、吸気系8のインマニ16に接続される。EGR通路10には、EGRバルブ11とトラップ触媒装置12とが介装される。EGRバルブ11は、EGR通路10を流れるガスの流量を調節するための流量制御弁である。EGRバルブ11の作動状態(EGR開度)は、制御ユニット13によって制御される。
【0021】
トラップ触媒装置12は、エンジン3の気筒内から排出されるガスに含まれる各種成分が吸着されるトラップ層を有する触媒装置である。トラップ層には、例えば燃料の未燃成分(HC成分,炭化水素成分),エンジンオイル成分,NOx成分(窒素酸化物成分)、S成分(硫黄成分)などが吸着されうる。トラップ層に吸着された各種成分は、トラップ触媒装置12に内蔵される触媒の作用によって浄化されうるほか、電気加熱式触媒装置20でも浄化されうる。なお、EGRバルブ11及びトラップ触媒装置12の位置関係は、
図1に示すような関係に限定されず、EGRバルブ11をトラップ触媒装置12よりも下流側(吸気系8に近い側)に配置してもよい。
【0022】
エンジン3のクランクケースと吸気系8との間には、ブローバイガスを吸気系8に導入するための第一ブローバイ配管23及び第二ブローバイ配管24が設けられる。第一ブローバイ配管23及び第二ブローバイ配管24の上流端(エンジン3側の端部)は、クランクケースの内部(例えば、クランク室やバルブ室など)に接続される。また、第一ブローバイ配管23の下流端は、スロットルバルブ17よりも上流側の吸気通路14に接続される。一方、第二ブローバイ配管24の下流端は、スロットルバルブ17よりも下流側の吸気通路14に接続される。
【0023】
[2.制御構成]
エンジン3,モータ4,バッテリ5,ジェネレータ6,クラッチ7,EGRバルブ11,スロットルバルブ17,電気加熱式触媒装置20,排気バルブ21の各々の作動状態は、制御ユニット13によって制御される。制御ユニット13は、モータ4の回生発電に際し、少なくとも空転循環制御を実施するためのコンピュータ(電子制御装置,ECU)である。制御ユニット13は、プロセッサ(演算処理装置)及びメモリ(記憶装置)を内蔵する。制御ユニット13が実施する制御の内容(制御プログラム)は、メモリに保存されるとともに、プロセッサによって実行される。
【0024】
空転循環制御とは、モータ4の回生発電に際し、EGRバルブ11を開いたままエンジン3をジェネレータ6で空回しする制御である。EGR開度は少なくとも全閉以外の状態とされ、具体的な開度の値は適宜設定可能である。空転循環制御は、バッテリ5への充電が抑制または禁止される状況において、モータ4で回生発電させたい場合(回生制動力を発生させたい場合)に好適な制御である。
【0025】
例えば、バッテリ5の充電率が満充電に近い状況(SOCが所定値以上である状況)では、バッテリ5への充電ができないことになり、十分な回生制動力が得られない可能性がある。あるいは、バッテリ温度が所定値未満である寒冷環境では、バッテリ5への充電を行うことでバッテリ5が著しく劣化する可能性がある。このような状況下で空転循環制御を実施することで、回生電力をジェネレータ6に消費させることができ、バッテリ5への充電を抑制,禁止しながら回生制動力を確保することが可能となる。
【0026】
空転循環制御におけるEGR開度は、好ましくはエンジン3の吸気系8の圧力に応じて設定される。例えば、吸気系8の圧力が低いほどEGR開度が大きく設定され、吸気系8の圧力が高いほどEGR開度が小さく(ただし全閉を除く)設定される。吸気系8の圧力とは、例えばインマニ圧,筒内圧力,吸気通路14の内圧などである。
図2は、インマニ圧とEGR開度との関係を例示するグラフである。このような特性を用いることで、インマニ圧が所定の目標インマニ圧になるようにEGR開度が調節されうる。
【0027】
上記の空転循環制御において、スロットルバルブ17や排気バルブ21の開度は、好ましくはいずれか一方が全閉に制御され、より好ましくは双方が全閉に制御される。一方、目標インマニ圧が確保されうる場合には、スロットルバルブ17を若干開放してもよい。同様に、エンジン3の気筒内から排出されるガスが少ない場合には、排気バルブ21を若干開放してもよい。
【0028】
空転循環制御の開始条件を以下に例示する。必須条件は条件Aのみであり、条件B~条件Fは必須でない任意条件である。
条件A.回生発電が実施されている(回生発電が開始された)。
条件B.バッテリ5の充電率(SOC)が所定値以上である。
条件C.バッテリ温度が所定値未満である。
条件D.車両1が減速中である。
条件E.ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキオンである)。
条件F.アクセルペダルが踏み込まれていない(アクセルオフである)。
【0029】
また、空転循環制御の終了条件を以下に例示する。必須条件は条件Gのみであり、条件H~条件Lは必須でない任意条件である。
条件G.回生発電が実施されていない(回生発電が終了した)。
条件H.バッテリ5の充電率(SOC)が所定値未満である。
条件I.バッテリ温度が所定値以上である。
条件J.車両1が減速中でない。
条件K.ブレーキペダルが踏み込まれていない(ブレーキオフである)。
条件L.アクセルペダルが踏み込まれている(アクセルオンである)。
【0030】
本実施例の制御ユニット13は、空転循環制御だけでなく、空転非循環制御をも実施しうる。空転非循環制御とは、EGRバルブ11を閉じたままエンジン3をジェネレータ6で空回しする制御である。空転非循環制御は、空転循環制御が実施されている状況下において、電気加熱式触媒装置20の触媒温度が所定温度以上である場合(十分に暖まっている場合,触媒活性温度に達している場合)に、空転循環制御の代わりに実施される。これにより、EGR通路10を介して循環していたガスが電気加熱式触媒装置20へと導入され、浄化される。なお、電気加熱式触媒装置20は、例えば空転循環制御の実施中に通電(加熱)される。この通電は、空転非循環制御が開始されたときに終了してもよい。あるいは、触媒温度が所定温度以上の状態を維持するように、通電を継続してもよい。
【0031】
上記の空転非循環制御において、EGRバルブ11の開度は全閉とされる。また、スロットルバルブ17や排気バルブ21の開度は、好ましくは空転循環制御時と比較して大きく開放され、より好ましくは全開とされる。スロットルバルブ17や排気バルブ21の開度が大きいほど、エンジン3の気筒内から排出されるガスが電気加熱式触媒装置20へ導入されるまでの時間が短縮され、ガスが直ちに浄化される。スロットルバルブ17や排気バルブ21の開度は、電気加熱式触媒装置20の触媒温度に応じて調節してもよい。触媒温度が高いほどスロットルバルブ17や排気バルブ21の開度を大きくすることで、エンジン3の気筒内から排出されるガスの浄化効率が上昇しうる。
【0032】
[3.フローチャート]
図3~
図5は、制御ユニット13の内部において所定の周期で繰り返し実行されうる制御のフローチャート例である。
図3は、第一制御例に係るフローチャートである。第一制御例は、スロットルバルブ17を閉鎖した状態で空転循環制御を実施する制御であり、排気バルブ21のないエンジン3が搭載された車両1でも実施可能である。ステップA1では、空転循環制御の開始条件の成否が判定され、少なくともモータ4で回生発電が実施されているか否かが判定される。開始条件が成立しない場合には、この周期での制御が終了し、開始条件が成立した場合には、制御がステップA2に進む。
【0033】
ステップA2では、スロットルバルブ17が閉鎖される。また、ステップA3では、インマニ圧センサ18で検出されたインマニ圧に応じた開度でEGRバルブ11が開放される。EGRバルブ11の開度は、例えばインマニ圧が低いほど大きく開放される。続くステップA4では、エンジン3がジェネレータ6によってモータリング(空回し)される。これにより、回生発電電力の一部(または全部)がジェネレータ6を駆動するために消費され、バッテリ5への充電が抑制(または防止)される。また、エンジン3の空回しによって排気系9に排出されるガスがEGR通路10を流通し、排気系9から吸気系8へと循環する。また、循環するガスに含まれるエンジンオイル成分は、トラップ触媒装置12に吸着することで回収される。
【0034】
ステップA5では、空転循環制御の終了条件が判定され、少なくともモータ4の回生発電が終了したか否かが判定される。ここで、終了条件が成立しない場合には制御がステップA2に戻り、空転循環制御が継続される。一方、終了条件が成立した場合には、制御がステップA6に進む。ステップA6では、ジェネレータ6によるエンジン3のモータリング(空回し)が停止する。また、ステップA7では、スロットルバルブ17が開放される。これにより、スロットルバルブ17の開度がステップA2以前の状態に戻り、あるいは全開状態となる。続くステップA8では、EGRバルブ11が閉鎖される。これにより、EGRバルブ11の開度がステップA3以前の状態に戻り、あるいは全閉状態となる。
【0035】
図4は、第二制御例に係るフローチャートである。第二制御例は、排気バルブ21を閉鎖した状態で空転循環制御を実施する制御であり、スロットルバルブ17のないエンジン3が搭載された車両1でも実施可能である。
図4中のステップB1,B3~B6,B8は、
図3中のステップA1,A3~A6,A8と同一である。ステップB2では、排気バルブ21が閉鎖され、ステップB7では、排気バルブ21が開放される。このように、スロットルバルブ17の代わりに排気バルブ21を閉鎖した場合であっても、エンジン3の空回しによって排気系9に排出されるガスがEGR通路10を流通し、排気系9から吸気系8へと循環する。
【0036】
図5は、第三制御例に係るフローチャートである。第三制御例は、スロットルバルブ17及び排気バルブ21を閉鎖した状態で空転循環制御を実施するとともに、触媒温度に応じて空転非循環制御を実施する制御である。ステップC1では、空転循環制御の開始条件の成否が判定される。開始条件が成立しない場合には、この周期での制御が終了し、開始条件が成立した場合には、制御がステップC2に進む。ステップC2では、触媒温度センサ22で検出された触媒温度が所定温度未満であるか否かが判定される。
【0037】
ステップC2の条件が成立する場合には、空転非循環制御の開始条件が満たされないと判断されて、制御がステップC3に進む。ステップC3では、電気加熱式触媒装置20への通電が開始され、電気加熱式触媒装置20が加熱される。ステップC4ではスロットルバルブ17及び排気バルブ21が閉鎖される。また、ステップC5では、インマニ圧センサ18で検出されたインマニ圧に応じた開度でEGRバルブ11が開放される。続くステップC9では、エンジン3がジェネレータ6によってモータリング(空回し)される。
【0038】
ステップC2の条件が不成立の場合には、空転非循環制御の開始条件が満たされたと判断されて、制御がステップC6に進む。ステップC6では、電気加熱式触媒装置20を保温する制御が実施される。例えば、所定温度以上の触媒温度が維持されるように、通電量が調節され、あるいは通電状態が断続的に制御される。ステップC7では、スロットルバルブ17及び排気バルブ21が開放される。ステップC8では、EGRバルブ11が閉鎖される。続くステップC9では、エンジン3がジェネレータ6によってモータリング(空回し)される。
【0039】
その後、ステップC10では、空転循環制御の終了条件が判定される。終了条件が成立しない場合には制御がステップC2に戻り、空転循環制御または空転非循環制御が継続される。一方、終了条件が成立した場合には、制御がステップC11に進む。ステップC11では、ジェネレータ6によるエンジン3のモータリング(空回し)が停止する。また、ステップC12では、スロットルバルブ17及び排気バルブ21が開放される。続くステップC13では、EGRバルブ11が閉鎖される。なお、空転非循環制御が実施されていた場合には、EGRバルブ11,スロットルバルブ17,排気バルブ21の開度を変更しなくてもよく、ステップC12,C13をスキップしてもよい。
【0040】
[4.効果]
(1)上記のハイブリッド車両1は、EGRシステム2が適用されて車両1に搭載されるエンジン3と、車両1を走行させる機能と回生発電する機能とを兼ね備えたモータ4と、回生発電で生成される電力が充電されるバッテリ5とを備える。また、エンジン3に連結されてバッテリ5の電力でエンジン3を駆動する機能を有するジェネレータ6と、エンジン3の吸気系8と排気系9とを接続するEGR通路10に介装されるEGRバルブ11と、制御ユニット13とを備える。制御ユニット13は、モータ4の回生発電に際し、EGRバルブ11を開いたままエンジン3をジェネレータ6で空回しする空転循環制御を実施する。
【0041】
このように、ジェネレータ6でエンジン3を空回しすることで、回生発電で生成される電力をジェネレータ6に消費させることができ、バッテリ5への充電を抑制できる。したがって、例えばバッテリ5が満充電に近い状態であっても十分な大きさの回生制動力を確保できる。また、エンジン3を空回しすることで気筒内から排出されうるエンジンオイル成分をEGR通路10に還流させることができる。これにより、エンジンオイル成分を含むガスを循環させ続けることができ、ガスの車外への漏出を抑制してハイブリッド車両1の環境性能を改善できる。
【0042】
(2)上記の制御ユニット13は、空転循環制御に際し、吸気系の圧力が低いほどEGRバルブ11の開度を大きく制御しうる。このような制御により、エンジン負圧(吸気系8の負圧)を適正化することができ、エンジンオイル成分を含むガスを効率よく循環させ続けることができる。したがって、ハイブリッド車両1の環境性能を改善できる。
【0043】
(3)上記のハイブリッド車両1は、EGR通路10に介装されたトラップ触媒装置12を備える。これにより、エンジン3の気筒内から排出されるガスに含まれるエンジンオイル成分を回収することができる。したがって、ハイブリッド車両1の環境性能を改善できる。なお、回収されたエンジンオイル成分の一部は、トラップ触媒装置12に内蔵される触媒の作用によって浄化することができる。また、空転循環制御の終了後や空転非循環制御の実施中には、電気加熱式触媒装置20で浄化することができる。
【0044】
(4)空転循環制御に際し、
図3,
図5に示すように、スロットルバルブ17を閉じるようにしてもよい。これにより、空転循環制御時に気筒内への新気の流入をより確実に防止することができ、エンジンオイル成分を含むガスを安定的に循環させることができる。したがって、エンジンオイル成分を含むガスが車外へと漏出しにくくなり、ハイブリッド車両1の環境性能を改善できる。また、排気バルブ21のないエンジン3が搭載された車両1においても、空転循環制御を実施できる。
【0045】
(5)空転循環制御に際し、
図4,
図5に示すように、排気バルブ21を閉じるようにしてもよい。これにより、エンジンオイル成分を含むガスの車外への漏出をより確実に防止することができ、エンジンオイル成分を含むガスを安定的に循環させることができる。したがって、ハイブリッド車両1の環境性能を改善できる。また、スロットルバルブ17のないエンジン3が搭載された車両1においても、空転循環制御を実施できる。
【0046】
(6)上記の制御ユニット13は、空転循環制御に際し、電気加熱式触媒装置20の温度が所定温度未満である場合に、電気加熱式触媒装置20を加熱する。また、電気加熱式触媒装置20の温度が所定温度以上になった場合には、EGRバルブ11を閉じたままエンジン3をジェネレータ6で空回しする空転非循環制御が実施される。このように、電気加熱式触媒装置20が暖まっていないときには、空転循環制御を実施することで、エンジンオイル成分を含むガスを循環させ続けることができる。その後、電気加熱式触媒装置20が暖まったら、空転非循環制御を実施することで、エンジンオイル成分を含むガスを浄化できる。
【0047】
[5.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。例えば、上記の実施例ではEGR通路10にトラップ触媒装置12が介装されているが、トラップ触媒装置12は省略可能である。少なくとも、回生発電に際し、EGRバルブ11を開いたままエンジン3をジェネレータ6で空回しすることで、エンジンオイル成分を含むガスを循環させることができ、上述の実施例と同様の作用効果を獲得できる。
【0048】
上記の実施例では、吸気系8にスロットルバルブ17が介装されるとともに、排気系9に排気バルブ21が介装されたエンジン3を例示したが、スロットルバルブ17及び排気バルブ21はともに省略可能である。少なくとも、EGRバルブ11を開いたまま空転循環制御を実施することで、エンジンオイル成分を含むガスを循環させることができ、上述の実施例と同様の作用効果を獲得できる。
【0049】
上記の実施例では、電気加熱式触媒装置20が排気通路19に介装されたエンジン3を例示したが、電気加熱式触媒装置20は電気加熱式でない触媒装置に置換可能であり、あるいは省略可能である。また、電気加熱式でない触媒装置が適用される場合、モータ4やジェネレータ6の廃熱を利用して触媒装置を昇温させてもよいし、エンジン3のファイアリングにより触媒装置を昇温させてもよい。
【0050】
上記の実施例では、
図2に示すようなインマニ圧とEGR開度との関係を例示したが、このような関係は実施例の動作を説明するための一例に過ぎず、これとは相違する対応関係を規定してもよい。また、インマニ圧の代わりに、筒内圧力や吸気通路14の内圧を用いてEGR開度を設定してもよい。吸気系8の圧力に基づいてEGR開度を設定することで、エンジン負圧の適正化が容易となりうる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本件は、ハイブリッド車両の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 車両(ハイブリッド車両)
2 EGRシステム
3 エンジン
4 モータ
5 バッテリ
6 ジェネレータ
7 クラッチ
8 吸気系
9 排気系
10 EGR通路
11 EGRバルブ
12 トラップ触媒装置
13 制御ユニット
14 吸気通路
15 エアクリーナ
16 インマニ
17 スロットルバルブ
18 インマニ圧センサ
19 排気通路
20 電気加熱式触媒装置
21 排気バルブ
22 触媒温度センサ
23 第一ブローバイ配管
24 第二ブローバイ配管