(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】非常用点灯装置、照明器具
(51)【国際特許分類】
H05B 45/38 20200101AFI20241126BHJP
H05B 45/36 20200101ALI20241126BHJP
H05B 45/385 20200101ALI20241126BHJP
H05B 45/382 20200101ALI20241126BHJP
【FI】
H05B45/38
H05B45/36
H05B45/385
H05B45/382
(21)【出願番号】P 2024014014
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2020103000の分割
【原出願日】2020-06-15
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 岳秋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝原 信一
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134529(JP,A)
【文献】特開2018-201297(JP,A)
【文献】特開平07-066709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
コイルとスイッチ素子を有し、前記蓄電池に接続され、直流電力変換回路を構成する点灯回路と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御するための制御信号を出力する制御回路と、
前記制御信号に応じてオンオフするMOSFETと、アノードが第1抵抗を介して前記MOSFETのソースと接続されたダイオードと、ベースが前記アノードに接続されエミッタが前記ダイオードのカソードに接続されコレクタが第2抵抗を介して前記ベースに接続されたバイポーラトランジスタと、を有し、前記エミッタが前記スイッチ素子のゲートに接続されたゲート駆動回路と、を備えたことを特徴とする非常用点灯装置。
【請求項2】
前記MOSFETのドレインは、前記点灯回路の高圧線に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の非常用点灯装置。
【請求項3】
蓄電池と、
コイルとスイッチ素子を有し、前記蓄電池に接続され、直流電力変換回路を構成する点灯回路と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御するための制御信号を出力する制御回路と、
前記スイッチ素子をオンするときに前記スイッチ素子のゲートを充電する充電経路を導通させるMOSFETと、前記スイッチ素子をオフするときに前記ゲートを放電する放電経路を導通させるバイポーラトランジスタと、を有し、前記充電経路が導通しているときには前記バイポーラトランジスタがオフ状態を維持し、前記充電経路の導通が終わると前記バイポーラトランジスタにより前記放電経路が導通されるゲート駆動回路と、を備えたことを特徴とする非常用点灯装置。
【請求項4】
前記コイルの巻線材料として、複数の銅線をより合わせたリッツ線を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非常用点灯装置。
【請求項5】
前記スイッチ素子はワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非常用点灯装置。
【請求項6】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項5に記載の非常用点灯装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の非常用点灯装置と、
前記非常用点灯装置に接続された光源と、を備えたことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は非常用点灯装置と照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(LIGHT EMITTING DIODE)を光源とした照明器具のうち、災害等により停電が発生し商用電源が得られない場合に、予め定められた時間点灯状態を維持する非常用の器具がある。そのような非常用点灯装置は、光源を点灯させるための電力源としての蓄電池と、蓄電池から入力されるエネルギーをLEDの点灯に必要な直流の電圧及び電流に変換する点灯回路を備える。また、非常用点灯装置は、商用電源が得られている場合に蓄電池を充電するために、商用電源から入力される交流のエネルギーを直流に変換し、予め定められた電流で蓄電池を充電する充電回路を備える。
【0003】
非常用点灯装置が停電時に光源の点灯を維持する時間が定められており、日本国内においては、照明工業会規格(JIL)がこれにあたる。そのため、非常用の点灯装置で用いられる蓄電池は、あらかじめ定められた点灯時間を満足するために必要な放電容量のものを使用する。蓄電池は、例えば円柱形状の蓄電池セルを複数接続した組電池の構成であり、セル1本あたりの放電容量とセル本数の組み合わせによって、容量が決まる。
【0004】
LEDを点灯させるために必要な電圧に対して蓄電池の電圧が低い場合、点灯回路として昇圧チョッパなどの昇圧動作が可能なスイッチング電源が用いられる。
【0005】
蓄電池は経時劣化により放電容量が減少するため、照明器具の寿命の期間、所定の点灯時間を維持するために必要な容量を維持することができない。そのため、蓄電池を照明器具本体から付け外し可能とし、定期的に蓄電池を交換する構成にしている。交換の作業性を高めるため、蓄電池と点灯回路はワイヤ配線又はコネクタを介して接続する。
【0006】
点灯時における蓄電池からの放電電流は数Aの大きさになることがあり、ワイヤ配線、蓄電池セル同士を接続する配線において、電力損失が発生する。そのため、例えば特許文献1に記載されているように、光源で消費する電力に加え、配線の電力損失を加味して蓄電池の容量を決めており、放電容量が増加していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光源で消費する電力に加え配線の電力損失を加味して蓄電池の容量を大きくする場合、蓄電池セル単体の放電容量を大きくすること、又は蓄電池の本数を増加させることが必要であるため、蓄電池のコストが増加するとともに、蓄電池の体積が増加するという課題がある。
【0009】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、コスト低減に好適な非常用点灯装置と照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る非常用点灯装置は、蓄電池と、コイルとスイッチ素子を有し、前記蓄電池に接続され、直流電力変換回路を構成する点灯回路と、前記スイッチ素子のオンオフを制御するための制御信号を出力する制御回路と、前記制御信号に応じてオンオフするMOSFETと、アノードが第1抵抗を介して前記MOSFETのソースと接続されたダイオードと、ベースが前記アノードに接続されエミッタが前記ダイオードのカソードに接続されコレクタが第2抵抗を介して前記ベースに接続されたバイポーラトランジスタと、を有し、前記エミッタが前記スイッチ素子のゲートに接続されたゲート駆動回路と、を備える。
本開示に係る非常用点灯装置は、蓄電池と、コイルとスイッチ素子を有し、前記蓄電池に接続され、直流電力変換回路を構成する点灯回路と、前記スイッチ素子のオンオフを制御するための制御信号を出力する制御回路と、前記スイッチ素子をオンするときに前記スイッチ素子のゲートを充電する充電経路を導通させるMOSFETと、前記スイッチ素子をオフするときに前記ゲートを放電する放電経路を導通させるバイポーラトランジスタと、を有し、前記充電経路が導通しているときには前記バイポーラトランジスタがオフ状態を維持し、前記充電経路の導通が終わると前記バイポーラトランジスタにより前記放電経路が導通されるゲート駆動回路と、を備える。
【0011】
本開示のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ゲート駆動回路における損失を抑制することで、蓄電池の容量増大を回避し得る非常用点灯装置と照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る照明器具の回路図である。
【
図3】比較例に係る点灯回路の動作を示す波形図である。
【
図4】実施の形態1に係る点灯回路の動作を示す波形図である。
【
図6】実施の形態2に係る照明器具の回路図である。
【
図7】比較例に係るゲート駆動回路の動作を示す波形図である。
【
図8】実施の形態2に係るゲート駆動回路の動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態に係る非常用点灯装置と照明器具について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明器具100の回路図である。この照明器具100は停電の発生により商用電源が得られない条件において光源を点灯するものである。照明器具100は、充電点灯回路13と、制御回路10と、ゲート駆動回路11と、定電圧回路12を備えている。充電点灯回路13には商用電源1、蓄電池6及びLED9が接続されている。
【0016】
充電点灯回路13は、整流回路2、充電回路3及び点灯回路7を備えている。整流回路2は、商用電源1に接続され商用電源1から入力される交流電圧を直流に変換する。充電回路3は、商用電源1と蓄電池6を電気的に絶縁し、整流回路2が変換した直流の電圧を降圧した一定電圧を出力する。充電回路3が出力する電圧は電解コンデンサ4によって平滑される。レギュレータ5は、電解コンデンサ4の電圧を用いて一定の電流で蓄電池6を充電する。点灯回路7は、商用電源1の電圧が得られない場合に蓄電池6の電圧をLED9が点灯可能な電圧に変換する。点灯回路7が出力する電圧はフィルタコンデンサ8によって平滑される。
【0017】
LED9は、複数のLEDチップを直列又は並列に接続したLED群で構成され得る。LED群の一端は点灯回路7の正極側直流母線に接続され、LED群の他端は点灯回路7の負極側直流母線に接続される。
【0018】
充電回路3は、整流回路2に並列接続されるフィルタコンデンサ3dと、フィルタコンデンサ3dと並列に接続されるフライバックトランス3aの1次側巻線とMOSFET3bからなる直列回路と、フライバックトランス3aの2次巻線に接続されたダイオード3cを備える。また、図示しないが、商用電源1と整流回路2の間には、充電回路3のスイッチング動作に起因して発生する、商用電源1から入力される電流に重畳している高周波成分を低減するための入力フィルタが用いられることがある。入力フィルタは、例えば、商用電源1と並列に接続されるフィルタコンデンサと、商用電源1と直列に接続されるフィルタコイルの両方又は一方で構成される。
【0019】
充電回路3は、整流回路2が出力する電圧を降圧し、一定の電圧を出力するとともに、商用電源1と蓄電池6を電気的に絶縁する機能を備える。また、商用電源1から入力される電流の高調波を抑制して力率を改善する機能を備えることもある。
【0020】
整流回路2は、商用電源1と充電回路3との間に配置され、商用電源1から供給される交流電力を直流電力に変換する。整流回路2は例えば4つのダイオードを組み合わせたダイオードブリッジで構成されており、全波整流した直流の電圧を出力する。なお、整流回路2の構成はこれに限定されるものではなく、単方向導通素子であるMOSFETを組み合わせて構成したものでもよい。
【0021】
また、2つのダイオードを組み合わせたダイオードブリッジで整流回路2を構成することで、部品点数を削減できる。この場合、整流回路2が出力する電圧は半波整流した直流の電圧である。上記の4つのダイオードを使用し全波整流した場合に比べ、商用電源1から入力される電流のピーク値が増加するものの、蓄電池6を充電する電力は1~2Wと低いため、使用する部品の電流定格に対して十分にマージンがあることが多く、部品定格アップといった課題にならない。なお、この場合についても、2つのMOSFETを組み合わせて半波整流するダイオードブリッジを構成してもよい。
【0022】
フィルタコンデンサ3dは整流回路2の出力に並列接続されており、整流回路2の出力電圧を平滑する。
【0023】
充電回路3は、整流回路2と蓄電池6との間に配置される。充電回路3は、スイッチング素子であるMOSFET3bと、フライバックトランス3aと、ダイオード3cとを有する。充電回路3は、制御手段(図示せず)によってMOSFET3bがオンオフ制御されることにより、整流回路2の出力電圧を降圧し、降圧した電圧を電解コンデンサ4に出力するものである。また充電回路3は、商用電源1と蓄電池6を電気的に絶縁する機能を備える。これは、後述するが、蓄電池6を手動で交換する必要があるためである。また、充電回路3は入力電流の高調波を抑制し、力率改善する機能を備えることがある。ここでは、充電回路3をフライバックコンバータで構成した例を示すが、フライバックコンバータの他にも、フライフォワードコンバータ、LLCコンバータ、絶縁型のSEPIC(SINGLE ENDED PRIMARY INDUCTOR CONVERTER)といった回路で構成してもよい。
【0024】
フライバックトランス3aは、フィルタコンデンサ3dとMOSFET3bとの間に配置される。フライバックトランス3aはコアに絶縁性ワイヤを巻くことにより形成され得る。フライバックトランス3aの1次側巻線の一端はフィルタコンデンサ3dの一端に接続される。フライバックトランス3aの1次側巻線の他端はMOSFET3bのドレインに接続される。また、フライバックトランス3aの1次側巻線と並列に、ダイオード、コンデンサ及び抵抗からなるスナバ回路を備えることができる。スナバ回路を設けることで、MOSFET3bのスイッチングに伴うサージ電圧が抑制され、MOSFET3bの損失を低減し、温度上昇を抑制することができる
【0025】
MOSFET3bのドレインは、フライバックトランス3aの1次側巻線に接続され、MOSFET3bのソースはフィルタコンデンサ3dの他端に接続される。MOSFET3bのゲートには制御手段に接続されており、その制御手段からMOSFET3bのオンオフ状態を制御するための制御信号がMOSFET3bのゲートに入力される。
【0026】
ダイオード3cは、フライバックトランス3aと電解コンデンサ4との間に配置される。ダイオード3cのアノードはフライバックトランス3aの2次側巻線に接続され、ダイオード3cのカソードは電解コンデンサ4およびレギュレータ5に接続される。
【0027】
電解コンデンサ4は、充電回路3と蓄電池6との間に配置される。電解コンデンサ4の一端はダイオード3cのカソードおよびレギュレータ5に接続され、電解コンデンサ4の他端はフライバックトランス3aの2次側巻線と蓄電池6の負極側端子に接続される。
【0028】
次にレギュレータ5の動作を説明する。
【0029】
レギュレータ5は、電解コンデンサ4と蓄電池6の間に接続される。レギュレータ5は、電解コンデンサ4の電圧を入力とし、一定の電流を出力することで、蓄電池6を充電する。この際、電解コンデンサ4の電圧と蓄電池6の電圧の差分をレギュレータ5において熱損失として失う。そのため、充電回路3が出力する電圧を蓄電池6の充電状況に応じて変化させ、蓄電池6の電圧と略同一とすることで、レギュレータ5における損失を抑制するとともに、部品温度の上昇を抑制することができる。
【0030】
次に点灯回路7の構成と動作を説明する。
【0031】
点灯回路7は、コイル7a、スイッチ素子7b、ダイオード7c、フィルタコンデンサ7d及び電流検出回路7eを備えている。スイッチ素子7bは例えばMOSFETである。スイッチ素子7bは正極側直流母線と負極側直流母線の間に配置される。スイッチ素子7bのドレインは、コイル7aの一端とダイオード7cのアノードとに接続される。スイッチ素子7bのソースは、フィルタコンデンサ7dの一端、蓄電池6の他端及びフィルタコンデンサ8の一端に接続される。スイッチ素子7bのゲートはゲート駆動回路11に接続されている。ゲート駆動回路11から、スイッチ素子7bのオンオフ動作を切り替えるための制御信号がスイッチ素子7bのゲートに入力される。
【0032】
コイル7aの一端は、スイッチ素子7bのドレインとダイオード7cのアノードとに接続される。コイル7aの他端は、フィルタコンデンサ7dの他端と蓄電池6の一端とに接続される。ダイオード7cのカソードは、フィルタコンデンサ8の他端とLED9の一端とに接続される。
【0033】
点灯回路7は直流電力変換回路を構成するものである。
図1の例では点灯回路7は昇圧チョッパ回路で構成されているが、昇圧チョッパ回路の他にも、昇降圧チョッパ回路、フライバック回路、フライフォワード回路、SEPIC、Zetaコンバータ又はCukコンバータといった回路で構成されたものでもよい。
【0034】
MOSFET3bとスイッチ素子7bは、例えばシリコン系の半導体で構成されることができる。別の例によれば、MOSFET3bとスイッチ素子7bを珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成してもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドを含む。
【0035】
MOSFET3bとスイッチ素子7bにワイドバンドギャップ半導体を用いることで、これらの通電損失を減らすことができる。さらに、スイッチング周波数すなわちオンオフ動作の繰り返し周波数を高周波にしても放熱が良好となる。このため、充電回路3又は点灯回路7の放熱部品を小型化又は削除することで、充電点灯回路13の小型化および低コスト化を実現することができる。加えて、駆動周波数を高周波にすることで、フライバックトランス3aとコイル7aを小型化できるので、充電点灯回路13の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0036】
次に制御回路10の構成と動作を説明する。
【0037】
制御回路10は、停電検出部10a、電流検出部10b、電圧検出部10c、演算部10d及びスイッチング制御部10eを備える。
【0038】
停電検出部10aは、フライバックトランス3aの2次巻線の一端と、ダイオード3cのアノードに接続されており、商用電源1の停電の状況、すなわち商用電源1の電圧が正常に得られているか否かを検出するための回路である。停電検出部10aの具体的な構成は、例えば、抵抗を直列に接続した抵抗分圧回路である。抵抗分圧回路は、フライバックトランス3aの2次巻線の一端に発生している電圧を演算部10dに入力可能な電圧に分圧する。
【0039】
電流検出部10bは、電流検出回路7eに接続されており、LED9に流れている電流の大きさを検出する。電流検出回路7eとしてシャント抵抗を用いることができる。この場合、シャント抵抗に発生する電圧はスイッチ素子7bのスイッチングに起因したリプル電圧を含んでいる。そのため、電流検出部10bの具体的な構成は、例えば、抵抗とコンデンサを並列に接続したローパスフィルタ回路である。そのようなローパスフィルタ回路は、シャント抵抗の電圧に発生しているリプル電圧を除去し、平均化した電圧を演算部10dに入力する。
【0040】
電圧検出部10cは、フィルタコンデンサ8の他端と、LED9の一端に接続されており、点灯回路7が出力する電圧を検出する。電圧検出部10cの具体的な構成は、例えば、抵抗を直列に接続した抵抗分圧回路である。そのような抵抗分圧回路は、点灯回路7が出力している電圧を演算部10dに入力可能な電圧に分圧する。
【0041】
演算部10dは、停電検出部10a、電流検出部10b、電圧検出部10cから入力された信号を用いスイッチ素子7bのオンオフ状態を制御するための信号を演算し、その信号をスイッチング制御部10eに出力する。
【0042】
具体的には、演算部10dは、停電検出部10aから入力された信号を用いて、商用電源1の停電の発生の有無を判定する。商用電源1において停電が発生すると、充電回路3において、フライバックトランスの2次巻線に出力される電圧が低下する。そのため、例えば、停電検出部10aから入力された電圧が商用電源1の周波数の半周期の期間、所定の電圧を下回ったことを検出し、停電が発生したと判定することができる。非常用の照明器具は、停電が発生した際に点灯する必要があるため、上記の手段により点灯回路7によるLED9の点灯動作を開始することができる。従って、
図1の例では、停電検出部10aをフライバックトランス3aの2次巻線の一端と、ダイオード3cのアノードに接続したが、停電検出部10aをフィルタコンデンサ3dの一端に接続してもよい。停電検出部10aをフィルタコンデンサ3dの一端に接続する場合、充電回路3は商用電源1と蓄電池6を電気的に絶縁した構成であるため、停電検出部10aはフォトカプラなどの絶縁素子をさらに備え、演算部10dに信号を伝達する必要がある。しかし、停電検出部10aをフィルタコンデンサ3dの一端に接続する場合、商用電源1により近い箇所の電圧を検出することができるので、商用電源1に停電が発生したことをより早く判断することができ、停電時において速やかに点灯を開始することができる。
【0043】
演算部10dは、電流検出部10bと電圧検出部10cによって検出した電圧を用いて、スイッチ素子7bをオンオフ制御するための信号を演算する。電流検出部10bによって検出される電流は、LED9に出力している電流である。また、電圧検出部10cによって検出された電圧はLED9に出力している電圧である。従って、演算部10dは、電流検出部10bと、電圧検出部10cによって検出した電圧を乗算することにより、LED9に出力している電力を判定することができる。演算部10dは、判定した電力に従って、一定の電力になるようスイッチ素子7bをオンする期間、オフする期間を演算し、演算結果が反映された制御信号をスイッチング制御部10eに出力する。LED9が出力する明るさは電流の大きさによって決まるため、演算部10dは電流検出部10bの検出結果のみを用い、一定の電流になるようスイッチ素子7bをオンオフ制御するための制御信号を演算することとしてもよい。ただしその場合、LED9を構成するLEDチップの何点かが故障し、ショートモードとなった場合には、LED9から出力される光が減少する。これに対して、電流検出部10bと、電圧検出部10cによって検出した電圧を用いて、一定の電力になるようスイッチ素子7bのオンオフを制御することで、LED9を構成するLEDチップの何点かが故障しショートモードとなった場合にも、LED9から出力される光が減少することを抑制できる。
【0044】
スイッチング制御部10eは、演算部10dが演算したスイッチ素子7bをオンする期間、オフする期間に従い、スイッチ素子7bのオンオフを制御するための制御信号をゲート駆動回路11に出力する。したがって、制御回路10はスイッチ素子7bの導通状態を制御するために設けられている。
【0045】
演算部10dは、乗算器など、複数のアナログICを組み合わせたハードウェアとして実現することができる。別の例によれば、演算部10dを、マイクロコンピュータ又はDSP(DIGITAL SIGNAL PROCESSOR)により、ソフトウェアとして実現することができる。後者の場合、アナログICを組み合わせて構成した場合に比べ、部品点数を削減することがでるとともに、基板面積を小型化することができる。また、スイッチング制御部10eの構成としては、アナログのタイマICを組み合わせたハードウェアとして実現することができるが、上記と同様にマイクロコンピュータ又はDSPにより実現することで、部品点数の削減と基板面積の小型化ができる。演算部10dとスイッチング制御部10eを両方ともソフトウェアとして実現する場合、これらを同一部品にすることもできる。
【0046】
ゲート駆動回路11は、MOSFET11a、11b、11c、抵抗11d、11f及び第1抵抗11eを備える。ゲート駆動回路11は、スイッチング制御部10eが出力した信号を、スイッチ素子7bのゲートを駆動することができる電圧に増幅する。
【0047】
MOSFET11aのゲートはスイッチング制御部10eに接続される。MOSFET11aのドレインは抵抗11dの一端と、MOSFET11b、11cのゲートに接続される。MOSFET11aのソースはMOSFET11cのソースと、フィルタコンデンサ12dの一端に接続される。抵抗11dの他端はMOSFET11bのドレインと、フィルタコンデンサ12dの他端に接続される。MOSFET11bのドレインは抵抗11dの一端と、フィルタコンデンサ12dの一端に接続され、ソースは第1抵抗11eの一端に接続される。MOSFET11cのソースはMOSFET11aのソースとフィルタコンデンサ12dの他端に接続され、ドレインは抵抗11fの一端に接続される。第1抵抗11eの他端と抵抗11fの他端はスイッチ素子7bのゲートに接続される。
【0048】
MOSFET11aと抵抗11dにおいて、スイッチング制御部10eの電圧を上昇さえ、高められた電圧がMOSFET11b、11cのゲートを駆動する。例えば、スイッチング制御部10eをマイクロコンピュータにより構成している場合、スイッチング制御部10eから出力される電圧は0V~3.3Vの高さであり、これをゲート駆動回路の駆動電圧として、例えば0V~5Vの高さに上昇させている。ゲート駆動回路11の駆動電圧は定電圧回路12の設計によって、任意に選択することができる。MOSFET11b、11cは一般的にプッシュプル型と呼ばれる構成であり、スイッチ素子7bのゲートを高速に駆動する。第1抵抗11eと抵抗11fはスイッチ素子7bのゲート抵抗である。
【0049】
定電圧回路12はゲート駆動回路11が動作するための一定の電圧を生成するための回路である。定電圧回路12は、トランジスタ12a、抵抗12b、ツェナーダイオード12c、フィルタコンデンサ12dを備える。一例によれば、定電圧回路12が出力する電圧は、スイッチ素子7bのゲート閾値電圧よりも高い電圧であり、例えば5Vである。
【0050】
図1の例では、定電圧回路12をフィルタコンデンサ8の他端とLED9の一端に接続し、点灯回路7の出力からゲート駆動回路11の駆動電圧を得ている。定電圧回路12を接続する箇所はこれに限るものではなく、蓄電池6の正極側に接続する構成としてもよい。特に、ゲート駆動回路11を駆動する電圧との差分である電圧が低い箇所に接続する構成にすることで、定電圧回路12において発生する損失を抑制することができる。
【0051】
図2は、蓄電池6、LED9、充電点灯回路13の構成を示した外観斜視図である。ここで、実際には、蓄電池6、LED9及び充電点灯回路13は、それぞれ樹脂又は板金のケースに収められた構成であるが、説明のためケースは省略した。
【0052】
蓄電池6は、複数の蓄電池セルを直列または並列に接続して提供される。
図2の例では、蓄電池6は、複数の蓄電池セル6a、6b、6cを直列に接続した組電池の形状である。LED9を点灯させる際の消費電力に応じて、組電池に含まれる蓄電池セルの本数を調整することができる。蓄電池セルは単電池である。蓄電池セル6a、6b、6cの正極・負極端子は一般にスチールであるため、複数の蓄電池セルを接続する配線として、スチール製のバスバー配線17a、17b、17cを用いることができる。
図2の例ではバスバー配線17a、17b、17cは板状の形状を有している。スチールは、一般的な配線材料である銅と比べて電気抵抗率が7~43倍高く、配線における電力損失が大きい。そのため、上述のとおりスチールを用いた組電池を採用すると、セル単体に比べて取り出せる電力が減少する。そのため、LEDの点灯に必要な容量よりも大きい放電容量の蓄電池セルを使用したり、セル数を増やしたりする必要があり、コストが増加してしまう。
【0053】
図2には、1枚の基板上に充電点灯回路13を実装した例が示されている。また、充電点灯回路13を構成する部品のうち、比較的大型の部品のみを図示している。LED9は複数のLEDチップから構成され、LED基板9aに実装されている。
【0054】
蓄電池6は、経年劣化により放電容量が低下するため、交換なしには照明器具の寿命の全期間で十分な点灯時間を確保することができない。そのため、蓄電池6は交換部品として扱われる。蓄電池6を充電点灯回路13から取り外したり取り付けたりすることが可能な構造が採用されている。
【0055】
蓄電池6とLED9は、充電点灯回路13とリード配線によって接続させている。特に、蓄電池6と充電点灯回路13の接続について説明する。
【0056】
蓄電池6と充電点灯回路13はリード配線16a、16bを介して接続される。特に、充電点灯回路13は蓄電池用端子15bを備えており、この蓄電池用端子15bにリード配線16a、16bが接続される。蓄電池6において、リード配線16a、16bはバスバー配線17a、17cとそれぞれ接続されている。接続の方法としては、カシメ、はんだ付け又は溶接といった手段を用いることができる。リード配線16a、16bにおいても電力損失が発生するため、蓄電池セル6a、6b、6cの放電容量を抑制するためには、リード配線16a、16bの長さを短く、太さを太くし、抵抗を下げることが望ましい。
【0057】
充電点灯回路13は、商用電源1と接続するための商用電源用端子15aと、LED9と接続するためのLED基板用端子15cを備えている。さらに
図2には、前述の入力フィルタとして提供される入力フィルタ14が図示されている。
【0058】
図3は、比較例に係る点灯回路のスイッチング動作を示す波形図である。
図3には、蓄電池6から点灯回路7に入力される放電電流と、コイル7aの電流と、スイッチ素子7bのオンオフの状態を示すドレイン電圧の波形が示されている。
【0059】
横軸は時間を表しており、スイッチング周期Tswは、スイッチ素子7bがオフからオンに変化した時点から、再びスイッチ素子7bがオフからオンに変化するまでの時間に等しい。スイッチング周期Tswは予め演算部10dに設定されている。オン時間Tonは、スイッチ素子7bがオフからオンに変化した時点から、オンからオフに変化するまでの時間に等しい。
【0060】
スイッチ素子7bがオフからオンの状態に変化すると、蓄電池6、コイル7a、スイッチ素子7bを通る電流経路が形成され、
図3に示すようにコイル7aに流れる電流が増加する。
【0061】
スイッチ素子7bがオンからオフの状態に変化すると、スイッチ素子7bが遮断されるため、蓄電池6、コイル7a、ダイオード7c、LED9を通る電流経路が形成される。蓄電池6の電圧がLED9よりも低いことから、コイル7aに流れる電流が減少し、0Aまで到達する。スイッチング周期Tswが経過した時点で、スイッチ素子7bを再びオフからオンに変化させる。
【0062】
このとき、コイル7aに流れる電流波形は、不連続期間、すなわち、コイル7aの電流が0Aである期間を含む三角波状の波形になるが、蓄電池6から入力される電流はフィルタコンデンサ7dによりスイッチング周波数の脈動電流が低減される。そのため、蓄電池6が放電する平均電流Iave1´は、コイル7aに流れる平均電流Iave1と略同一であるが、スイッチングに起因した電流の脈動は同一とならず、Ipp1´の大きさの脈動電流をもつ。なお、コイル7aの電流がゼロまで低下した後、スイッチ素子7bの寄生容量と、コイル7aが形成する共振回路において共振電流が発生するが、記載を省略している。
【0063】
演算部10dは、LED9の電力が目標の大きさになるようフィードバックによる演算を実施する。例えば、電流検出部10bと電圧検出部10cの検出した値に応じて、スイッチ素子7bをターンオンするスイッチング周期Tswを一定とし、LED9の電力の大きさよってオン時間Tonを変化させる。具体的には、検出した値が目標の大きさよりも低い場合にはオン時間Tonを長くし、検出した値が目標の大きさよりも高い場合にはオン時間Tonを短くする。このようにオン時間Tonを調整することにより特定の出力を得る制御方法は、スイッチング周期Tswに対するオン時間Tonの割合をデューティと呼ぶことから、デューティ制御と呼ばれる。
【0064】
なお、
図3ではデューティ制御を実施する場合を示したが、他の一般的な制御手段として、オン時間Tonを固定とし、スイッチング周期Tswを変更する方法も実施することができる。これは、スイッチング周期Tswの逆数が周波数であることから、周波数制御と呼ばれる。
【0065】
次に、実施の形態1に係る点灯回路7の動作を説明する。
【0066】
図4は、実施の形態1の点灯回路7のスイッチング動作を示す波形である。
図4には、蓄電池6から点灯回路7に入力される放電電流と、コイル7aの電流と、スイッチ素子7bのオンオフの状態を示すドレイン電圧の波形が図示されている。
【0067】
横軸は時間を表しており、スイッチング周期Tswは、スイッチ素子7bがオフからオンに変化した時点から、再びスイッチ素子7bがオフからオンに変化するまでの時間に等しい。スイッチング周期Tswは予め演算部10dに設定されている。オン時間Tonは、スイッチ素子7bがオフからオンに変化した時点から、オンからオフに変化するまでの時間に等しい。
【0068】
スイッチ素子7bがオフからオンの状態に変化すると、蓄電池6、コイル7a、スイッチ素子7bを通る電流経路が形成され、
図4に示すようにコイル7aに流れる電流が増加する。
【0069】
スイッチ素子7bがオンからオフの状態に変化すると、スイッチ素子7bが遮断されるため、蓄電池6、コイル7a、ダイオード7c、LED9を通る電流経路が形成される。蓄電池6の電圧がLED9よりも低いことから、コイル7aに流れる電流が減少する。コイル7aの電流が0Aまで減少する前に、スイッチ素子7bを再びオフからオンに変化させる。このような動作はスイッチング周期Tswの期間においてコイル7aに連続的に電流が導通することから、電流連続モードと呼ばれる。制御回路10は、上述のとおり、コイル7aに連続的に電流が流れるようにスイッチ素子7bのオンオフを繰り返し、蓄電池6に蓄えられた電力を出力させる。これに対して、
図3に示す比較例では、スイッチング周期Tswの期間においてコイル7aの電流が0Aとなり不連続な期間を有する。このような制御は電流不連続モードと呼ばれる。
【0070】
図4に示されるとおり、コイル7aに流れる電流は直流成分が重畳した三角波状の波形になる。蓄電池6から入力される電流はフィルタコンデンサ7dによりスイッチング周波数の脈動電流が低減されるため、蓄電池6が放電する平均電流Iave2´は、コイル7aに流れる平均電流Iave2と略同一である。蓄電池6の放電電流はIpp2´の大きさの脈動電流をもつ。
【0071】
コイル7aに流れる平均電流を比較すると、蓄電池6の電圧が同一、点灯回路7の消費電力が同一であれば、比較例の平均電流Iave1と実施の形態1の平均電流Iave2は略同一である。同じように、蓄電池6から放電される平均電流Iave1´と平均電流Iave2´も略同一である。しかしながら、実施の形態1においては、コイル7aの電流が電流連続モードとなるように制御するため、スイッチ素子7bのスイッチングに起因したコイル7aの電流の脈動が小さくなる。したがって、
図4の脈動電流Ipp2´を、
図3の脈動電流Ipp1´よりも小さくすることができる。
【0072】
蓄電池6からの放電電流の実効値Iinは、電流の波形が三角波であるとした場合、平均電流Iaveと脈動電流Ippを用いてIin=Iave+1/2√3×Ippで表すことができる。本実施の形態1の脈動電流Ipp2´は比較例の脈動電流Ipp1´より小さい。したがって、蓄電池6から比較例と同等の平均電流を出力しつつ、実効値電流を抑制することができる。
【0073】
前述の通り、蓄電池6は複数の蓄電池セル6a、6b、6cを直列に接続した組電池の形状であり、セル同士を接続する配線としてスチール製のバスバー配線17a、17b、17cを用いている。一般的な配線材料である銅と比べ、スチールは電気抵抗率が7~43倍高く、配線における損失が大きい。そのため、上述の組電池を採用することによって、セル単体に比べて取り出せる電力が減少していた。本実施の形態においては、上述のとおり蓄電池6から放電される実効値電流を抑制することができるため、バスバー配線における電力損失を低減し、組電池にすることによって取り出せる電力が減少することを抑制するという効果を奏する。従って、蓄電池6に用いる蓄電池セル6a、6b、6cの放電容量を低減したり、蓄電池セルの本数を削減したりすることができるため、コスト低減ができる。
【0074】
また、バスバー配線17a、17b、17cの厚みを薄くしたり、幅を細くしたりしてバスバー配線17a、17b、17cの抵抗値を増加させても、上述した実効値電流の抑制によって、バスバー配線における電力損失を比較例と同等にすることができる。さらに、バスバー配線17a、17b、17c又はリード配線16a、16bの長さを長くしても電力損失を比較例と同等にすることができる。バスバー配線17a、17b、17c又はリード配線16a、16bの長さを長くすることで、蓄電池6と充電点灯回路13の距離を大きくすれば、蓄電池6の交換作業性を高めることができる。
【0075】
点灯回路7を電流連続モードで動作させるための手段の一つとして、スイッチング周期Tswを短くする方法がある。この場合、スイッチングの回数が増加するため、スイッチ素子7bとダイオード7cで発生するスイッチング損失が増加し、点灯回路7の消費電力が増加してしまう。これに対し、スイッチ素子7bとダイオード7cの材料として、従来のシリコン系からなる半導体ではなく、スイッチング損失がより小さい炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いることで、点灯回路7の消費電力の増加を抑制することができる。
【0076】
点灯回路7を電流連続モードで動作させるための別の手段として、コイル7aのインダクタンスを大きくする方法がある。この場合、コイルの巻き数を増加させるため、巻線抵抗の上昇により、コイル7aで発生する銅損が増加してしまう。したがって、点灯回路7の消費電力が増加してしまう。これに対し、コイル7aの巻線材料として、銅単線ではなく、高周波での銅損が低いリッツ線を用いることで、点灯回路7の消費電力を抑制することができる。リッツ線とは複数の銅線をより合わせたものである。
【0077】
蓄電池6の放電電流の脈動電流を低減する別の手段として、フィルタコンデンサ7dの容量を増加させる方法がある。しかしながら、フィルタコンデンサ7dの容量を増加させるためには、部品サイズが大型化したり、多数並列化による部品点数が増加したりするデメリットがある。そのため、本実施の形態による対策が好適である。
【0078】
図5は商用電源1に停電が発生し、点灯動作を開始した直後における点灯回路7の動作の例を示す波形図である。この波形図には、コイル7aの電流波形と、スイッチ素子7bのオンオフの状態示すドレイン電圧波形が図示されている。
【0079】
LED9の点灯を開始した直後に、LED9に出力する電流に大きなオーバーシュートが発生すると、LED9の定格電流を超過し、LED9が劣化又は故障することがある。
図5はLED9の電流に大きなオーバーシュートが発生することを抑制するための動作を示している。
【0080】
図5の例では、点灯回路7の動作を開始した直後において、スイッチ素子7bのオン時間Tonを定常状態よりも短い時間としている。そして時間の経過に伴ってオン時間Tonを長くすることで、目標の出力を得るように出力の大きさを制御している。このように、スイッチ素子7bのオンオフを開始してから、単位時間にしめるスイッチ素子7bのオン時間を経時的に長くしていくことで、LED9に出力する電流のオーバーシュートを抑制する。これによって、LED9の劣化又は故障を抑制することができる。
【0081】
また、オン時間Tonが短い条件で電流連続モードを実施する場合、スイッチ素子7bのスイッチング周期を短くし、高周波で駆動する必要がある。そのため、演算部10dとしてマイコンを使用する場合には、高速な動作クロックで時間分解能を高める必要があり、演算部10dにおける消費電力が増加することに加えて、高価なマイコンが必要になる。
【0082】
そこで、一例によれば、
図5に示す動作を実現するために、点灯回路7の動作を開始した直後の予め定められた期間において、連続モードではなく不連続モードで動作させることができる。言いかえると、スイッチ素子7bのオンオフを開始後予め定められた期間は、コイル7aに流れる電流が略ゼロになる不連続期間を設ける。これによって、スイッチング周波数を高周波にする必要がなくなるため、演算部10dの動作クロックを比較的低速にすることができる。動作クロックの低減は、消費電力の抑制と、安価なマイコンの利用を可能とする。
【0083】
実施の形態1に記載した変形例、修正例又は代案については、以下の実施の形態に係る非常用点灯装置と照明器具に応用し得る。以下の実施の形態に係る非常用点灯装置と照明器具については、主として実施の形態1との相違点を説明する。
【0084】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る照明器具200の回路図である。実施の形態1の照明器具100と同一又は対応する構成には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
実施の形態1に係る照明器具100と比較すると、
図6の照明器具200は、定電圧回路12がなく、ゲート駆動回路11に代わりゲート駆動回路11´を備えている点で相違している。ゲート駆動回路11´は、ダイオード11g、バイポーラトランジスタ11h及び第2抵抗11iを備えている。
【0086】
実施の形態2では、ゲート駆動回路11よりも高い電圧でスイッチ素子7bのゲートを駆動するため、連続モードで動作させた場合に発生するスイッチ素子7bのターンオン損失を低減することができる。また、定電圧回路12を用いない構成とすることで、定電圧回路12で発生していた損失を低減することと、部品点数の削減が可能となり、コスト削減に好適である。
【0087】
図6に示すとおり、MOSFET11aのゲートは、スイッチング制御部10eも接続される。MOSFET11aのドレインは抵抗11dの一端と、MOSFET11bのゲートに接続される。MOSFET11aのソースは第2抵抗11iに接続される。抵抗11dの他端はMOSFET11bのドレインに接続される。MOSFET11bのドレインは、点灯回路7の高圧線に接続されている。高圧線とは正極側直流母線のことである。MOSFET11bのソースは第1抵抗11eの一端に接続される。第1抵抗11eの他端は、ダイオード11gのアノードと、バイポーラトランジスタ11hのベースと、第2抵抗11iの一端に接続される。したがって、ダイオード11gのアノードは第1抵抗11eを介してMOSFET11bのソースに接続されるとともにバイポーラトランジスタ11hのベースに接続され、カソードはバイポーラトランジスタ11hのエミッタとスイッチ素子7bのゲートとに接続されている。バイポーラトランジスタ11hのコレクタはMOSFET11aのソースと第2抵抗11iの他端に接続される。
【0088】
スイッチング制御部10eの電圧は、スイッチ素子7bのオンオフを制御するための制御信号である。スイッチング制御部10eの電圧は、MOSFET11a、抵抗11dにおいて高められ、MOSFET11bのゲート駆動に用いられる。例えば、スイッチング制御部10eをマイクロコンピュータにより構成している場合、スイッチング制御部10eから出力される電圧は0V~3.3Vの大きさであり、これをゲート駆動回路の駆動電圧として、例えば0V~10Vの電圧に上昇させている。ゲート駆動回路11´をフィルタコンデンサ8の他端とLED9の一端とに接続し、点灯回路7の出力からゲート駆動回路11´の駆動電圧を得る。この場合、駆動電圧は、点灯回路7が出力する電圧と同一になる。ここでは、一例として、点灯回路7が出力する電圧が10Vであるとして説明する。なお、ゲート駆動回路11´を接続する箇所はこれに限るものではなく、蓄電池6の正極側に接続する構成としてもよい。特に、スイッチ素子7bにおけるターンオン損失を低減するためには、ゲート駆動回路11´の駆動電圧が高いことが望ましい。
【0089】
図7は、実施の形態1の照明器具100から定電圧回路12を削除した場合のゲート駆動回路11の動作を示す波形である。
図7には、上からスイッチング制御部10eの出力電圧、MOSFET11aのドレイン電圧、MOSFET11bのゲート電圧、ドレイン電圧、MOSFET11cのゲート電圧、ドレイン電圧が示されている。横軸は時間を表している。
【0090】
図7の例においてスイッチ素子7bをオフする際の動作を説明する。時刻t1において、スイッチング制御部10eの出力が立ち下がると、MOSFET11aのゲートが放電し、ドレインが遮断されオフする。時刻t2において、MOSFET11cのゲートの電圧がオン閾値Vth2を上回り、ドレインが導通しオンする。時刻t3において、MOSFET11bのゲートの電圧がオン閾値Vth1を下回り、ドレインが遮断しオフする。MOSFET11cがオンし、MOSFET11bがオフすることによって、スイッチ素子7bのゲートが放電され、ドレインがオフする。この際、定電圧回路12を削除したことによって、ゲート駆動回路11の駆動電圧が上昇することに加え、抵抗11dにおける損失を抑制するために抵抗11dの抵抗値を高くする必要があり、MOSFET11aのドレインがオフする際の傾きが比較的大きい。そのため、時刻t2~t3の期間において、MOSFET11b、11cのゲート電圧が両方とも閾値を上回る。すなわち、MOSFET11b、11cが両方ともオンするため、第1抵抗11eと抵抗11fで損失が発生してしまい、損失低減の効果が得られないことがある。
【0091】
実施の形態2に係るゲート駆動回路11´は上記を鑑みた回路であり、定電圧回路12を削除した構成であっても、直列に接続された2つのトランジスタが両方ともオンしてしまう動作モードをもたない。
【0092】
図8は実施の形態2におけるゲート駆動回路11´の動作を示す波形図である。
図8には、上からスイッチング制御部10eの出力電圧、MOSFET11aのドレイン電圧、MOSFET11bのゲート電圧、ドレイン電圧、バイポーラトランジスタ11hのベース電圧、エミッタコレクタ間電圧が示されている。横軸は時間を表している。
【0093】
スイッチ素子7bをオフする際の動作を説明する。時刻t1において、スイッチング制御部10eの出力が立ち下がると、MOSFET11aのゲートが放電し、ドレインが遮断されオフする。時刻t3において、MOSFET11bのゲート電圧がオン閾値Vth1を下回り、ドレインが遮断しオフする。時刻t1~t3の期間においては、MOSFET11bが導通していることに伴い、ダイオード11gが導通し、ダイオード11gの順方向電圧によりバイポーラトランジスタ11hのベースが逆バイアスされるため、バイポーラトランジスタ11hはオフ状態を維持する。
【0094】
時刻t3において、MOSFET11bがオフすると、ダイオード11gもオフするため、バイポーラトランジスタ11hのベースの逆バイアスが解除される。バイポーラトランジスタ11hのベース-コレクタ間は第2抵抗11iで接続されているため、ベースが逆バイアスされておらず、エミッタに電圧が印加されているとエミッタ-コレクタ間が導通しオンする。バイポーラトランジスタ11hがオンし、MOSFET11bがオフすることによって、スイッチ素子7bのゲートが放電され、ドレインがオフする。したがって、バイポーラトランジスタ11hは、スイッチ素子7bをオフするときにスイッチ素子7bのゲートを放電する放電経路を導通させるものである。
【0095】
続いて、スイッチ素子7bをオンする際の動作を説明する。時刻t4において、スイッチング制御部10eの出力が立ち上がると、MOSFET11aのゲートが充電され、ドレインが導通しオンする。すると、MOSFET11bのゲートの電圧が充電され、オン閾値Vth1を上回り、ドレインが導通しオンする。これによりダイオード11gが導通し、ダイオード11gの順方向電圧によりバイポーラトランジスタ11hのベースが逆バイアスされるため、コレクタが遮断されバイポーラトランジスタ11hがオフする。バイポーラトランジスタ11hがオフし、MOSFET11bがオンすることによって、スイッチ素子7bのゲートが充電され、ドレインがオンする。したがって、MOSFET11bは、制御信号に応じてオンオフするものであり、スイッチ素子7bをオンするときにスイッチ素子7bのゲートを充電する充電経路を導通させるものである。
【0096】
このように、スイッチ素子7bのゲートの充電経路が導通しているときにはバイポーラトランジスタ11hがオフ状態を維持し、当該充電経路の導通が終わるとバイポーラトランジスタ11hによりスイッチ素子7bのゲートの放電経路が導通される。
【0097】
ゲート駆動回路11´は、定電圧回路12を削除し、ゲート駆動回路11´の駆動電圧が上昇するとともに、抵抗11dにおける損失を抑制するために抵抗11dの抵抗値を高くした場合においても、MOSFET11bとバイポーラトランジスタ11hが両方ともオンして第1抵抗11eで損失が発生する動作モードがない。そのため、定電圧回路12で発生していた損失を低減するとともに、ゲート駆動回路11よりも高い電圧でスイッチ素子7bのゲートを駆動することで、スイッチ素子7bにおけるターンオン損失を低減し充電点灯回路13の損失を削減できる。また、定電圧回路12を用いない構成とすることで、部品点数を削減し、コストを削減することができる。
【0098】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、上記技術的特徴の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【0099】
また、LED9を光源として用いる場合について説明したが、光源はLEDに限定されず、有機EL(ElectroLuminescence)でもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 商用電源、 2 整流回路、 3 充電回路、 3a フライバックトランス、 3b,11a,11b,11c MOSFET、 3c,7c,11g ダイオード、 3d,7d,8,12d フィルタコンデンサ、 4 電解コンデンサ、 5 レギュレータ、 6 蓄電池、 6a,6b,6c 蓄電池セル、 7 点灯回路、 7a コイル、 7b スイッチ素子、 7e 電流検出回路、 9 LED、 9a LED基板、 10 制御回路、 10a 停電検出部、 10b 電流検出部、 10c 電圧検出部、 10d 演算部、 10e スイッチング制御部、 11,11´ ゲート駆動回路、 11d,11f,12b 抵抗、 11e 第1抵抗、 11i 第2抵抗、 12 定電圧回路、 11h,バイポーラトランジスタ、 12a トランジスタ、 12c ツェナーダイオード、 13 充電点灯回路、 14 入力フィルタ、 15a 商用電源用端子、 15b 蓄電池用端子、 15c LED基板用端子、 16a,16b リード配線、 17a,17b,17c バスバー配線、 100、200 照明器具