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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ハイブリッド車の駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20241126BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20241126BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241126BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20241126BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20241126BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241126BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20241126BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241126BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/02 900
B60W20/00 900
B60L50/16
B60L50/61
B60L7/14
F16D28/00 A
F16D48/06 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024500853
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006626
(87)【国際公開番号】W WO2023157227
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】早貸 舜
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋則
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/148973(WO,A1)
【文献】特開平7-236203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/442
B60W 10/06
B60W 10/02
B60W 20/00
B60L 50/16
B60L 50/61
B60L 7/14
F16D 48/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1動力伝達路を介して走行駆動輪を駆動するエンジンと、前記第1動力伝達路とは異なる第2動力伝達路を介して前記走行駆動輪を駆動する第1回転電機と、
前記エンジンにより駆動されて所定の発電量を発電する第2回転電機と、を備え、
前記エンジン及び前記第1回転電機により前記走行駆動輪を駆動する第1走行モードが可能であるとともに前記第1回転電機及び前記第2回転電機により回生制動が可能なハイブリッド車において、
前記第2動力伝達路に備えられたクラッチと、
前記走行駆動輪の要求回生制動トルクを演算する要求回生制動トルク演算部と、
前記クラッチが切断しているときに回生制動が要求された場合に前記第2回転電機により回生制動する回生アシスト制御部と、
前記回生アシスト制御部による前記回生制動の実行時に、前記第2回転電機において発電により消費する発電トルクと前記要求回生制動トルクとの合計値が、前記第2回転電機の所定の最大トルク以下である場合には、エンジンを所定の出力トルクで作動させて発電トルクを確保するとともに、回生アシストによる回生制動トルクを得る一方、前記第2回転電機において発電により消費する発電トルクと前記要求回生制動トルクとの合計値が、前記第2回転電機の所定の最大トルク以上である場合に、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させる回生発電制御部と、
を備えた
ことを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
【請求項2】
前記回生発電制御部は、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させた際に、前記回生制動により消費する回生制動トルクを前記要求回生制動トルクにするように前記第2回転電機の発電量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の駆動制御装置。
【請求項3】
前記回生発電制御部は、前記エンジンの出力トルクを低下させて、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車の駆動制御装置。
【請求項4】
前記走行駆動輪の要求駆動トルクを演算する要求駆動トルク演算部と、
前記クラッチが切断しているときに前記要求駆動トルクが前記エンジンの出力トルクを超えた場合に前記第2回転電機により前記走行駆動輪の駆動トルクを付与する駆動アシスト制御部と、を備えた
こと特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置。
【請求項5】
前記走行駆動輪の要求駆動トルクを演算する要求駆動トルク演算部と、
前記第1走行モードにおいて前記要求駆動トルクが前記エンジンの出力トルク未満になった場合に前記クラッチを切断するクラッチ制御部と、を備えた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生発電可能なハイブリッド車の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと電気モータを走行駆動源として備えたプラグインハイブリッド車やハイブリッド車(以下、まとめてハイブリッド車という)において、走行モードを切り替え可能な車両が開発されている。走行モードとしては、電気モータのみで駆動するEVモード、シリーズモード、パラレルモードが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に記載された車両は、エンジンと走行駆動輪との間の動力伝達路にクラッチ(エンジンクラッチ)を備え、エンジンクラッチを切断することで、エンジンによってジェネレータを発電しつつモータによって走行駆動するシリーズモードが可能となる一方、エンジンクラッチを接続することでエンジンよって走行駆動しつつモータによって駆動力をアシストするパラレルモードが可能になっている。
【0004】
更に、特許文献1では、モータと走行駆動輪との間の動力伝達路にクラッチ(モータクラッチ)を備えている。モータクラッチを切断することで、エンジンによって走行駆動しつつモータの駆動を停止することが可能になる。これにより、例えばパラレルモードによる走行中において高速巡行時のように要求駆動トルクが低下した際に、モータクラッチを切断してエンジンのみによって走行駆動するともにモータの強制駆動を防止することが可能になっている。これにより、要求駆動トルクを満たすために行われていたモータの制御による電力損失を抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2020/148973/A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにモータクラッチを備えた車両において、モータクラッチ切断時において回生制動が必要になった場合に、モータクラッチを接続しなければならず、回生制動力を迅速に増加させることが困難である。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータクラッチを備えた車両において、モータクラッチ切断時に回生制動力を迅速かつ大きく確保することが可能なハイブリッド車の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車の駆動制御装置は、第1動力伝達路を介して走行駆動輪を駆動するエンジンと、前記第1動力伝達路とは異なる第2動力伝達路を介して前記走行駆動輪を駆動する第1回転電機と、前記エンジンにより駆動されて所定の発電量を発電する第2回転電機と、を備え、前記エンジン及び前記第1回転電機により前記走行駆動輪を駆動する第1走行モードが可能であるとともに前記第1回転電機及び前記第2回転電機により回生制動が可能なハイブリッド車において、前記第2動力伝達路に備えられたクラッチと、前記走行駆動輪の要求回生制動トルクを演算する要求回生制動トルク演算部と、前記クラッチが切断しているときに回生制動が要求された場合に前記第2回転電機により回生制動する回生アシスト制御部と、前記回生アシスト制御部による前記回生制動の実行時に、前記第2回転電機において発電により消費する発電トルクと前記要求回生制動トルクとの合計値が、前記第2回転電機の所定の最大トルク以下である場合には、エンジンを所定の出力トルクで作動させて発電トルクを確保するとともに、回生アシストによる回生制動トルクを得る一方、前記第2回転電機において発電により消費する発電トルクと前記要求回生制動トルクとの合計値が、前記第2回転電機の所定の最大トルク以上である場合に、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させる回生発電制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより、回生アシスト制御部により、クラッチが切断されてエンジンによって走行駆動しているときに回生制動が要求された場合に第2回転電機により回生制動することで、発電を行う第2回転電機を利用して回生制動トルクを得ることができる。したがって、クラッチが切断されている状況で回生制動が要求された場合に、クラッチを接続して第1回転電機により回生制動するよりも迅速に回生制動トルクを得ることが可能になる。
【0010】
更に、回生発電制御部において、第2回転電機により回生制動を実行しているときに、第2回転電機による発電により消費する発電トルクと要求回生制動トルクとの合計値が、第2回転電機の最大トルク以上である場合に、第2回転電機における発電量を低下させることで、第2回転電機の消費トルクが最大トルクを超えない範囲で第2回転電機による回生制動トルクを増加させることができる。
【0011】
好ましくは、前記回生発電制御部は、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させた際に、前記回生制動により消費する回生制動トルクを前記要求回生制動トルクにするように前記第2回転電機の発電量を制御するとよい。
【0012】
これにより、回生発電制御部において、第2回転電機における発電量を低下させた際に、第2回転電機の消費トルクが最大トルクを超えない範囲で第2回転電機による回生制動トルクを要求回生制動トルクにすることができる。したがって、要求される回生制動性能を確保することができる。
【0013】
好ましくは、前記回生発電制御部は、前記エンジンの出力トルクを低下させて、前記第2回転電機における発電量を前記所定の発電量より低下させるとよい。
【0014】
これにより、第2回転電機における発電量を、所定の発電量より容易に低下させるとともに、エンジンにおける燃料消費量を抑制することができる。
【0015】
好ましくは、前記走行駆動輪の要求駆動トルクを演算する要求駆動トルク演算部と、前記クラッチが切断しているときに前記要求駆動トルクが前記エンジンの出力トルクを超えた場合に前記第2回転電機により前記走行駆動輪の駆動トルクを付与する駆動アシスト制御部と、を備えるとよい。
【0016】
これにより、駆動アシスト制御部により、クラッチが切断されてエンジンによって走行駆動しているときに要求駆動トルクが増加した場合に、第2回転電機により駆動することで、発電を行う第2回転電機を利用して走行駆動トルクを得ることができる。したがって、クラッチが切断されている状況で要求駆動トルクが増加した場合に、クラッチを接続して第1回転電機により駆動アシストするよりも迅速に走行駆動トルクを増加させることが可能になり、走行駆動性能を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、前記走行駆動輪の要求駆動トルクを演算する要求駆動トルク演算部と、前記第1走行モードにおいて前記要求駆動トルクが前記エンジンの出力トルク未満になった場合に前記クラッチを切断するクラッチ制御部と、を備えるとよい。
【0018】
これにより、エンジン及び第1回転電機により走行駆動輪を駆動する第1走行モードにおいて、要求駆動トルクがエンジンの出力トルク未満の場合にクラッチを切断することで、要求駆動トルクをエンジンの出力トルクによって充足させるとともに、第1回転電機の強制駆動、所謂連れ回りを防止することができる。したがって、第1回転電機の連れ回りによる駆動トルク制御のための電力消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動車両の駆動制御装置は、クラッチを切断して第2回転電機により回生制動を実行しているときに、第2回転電機の消費トルクが最大トルクを超えずに第2回転電機の保護を図ることができる。更に、第2回転電機における発電量を低下させることで第2回転電機による回生制動トルクを増加させることでき、回生制動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の駆動制御装置を備えたプラグインハイブリッド車の概略構成図である。
図2】本実施形態に係るハイブリッドコントロールユニットにおける駆動・回生アシスト制御部の構成図である。
図3】駆動・回生アシスト制御におけるトルクの伝達経路の説明図である。
図4】回生アシスト制御におけるジェネレータトルクの設定量の推移を示すタイムチャートの一例であり、ジェネレータの最大トルクに達していない場合での設定例を示す。
図5】ジェネレータトルクの設定の推移を示すタイムチャートの一例であり、ジェネレータの最大トルクに達した場合での設定の参考例を示す。
図6】本実施形態におけるジェネレータトルクの設定の推移を示すタイムチャートの一例であり、ジェネレータの最大トルクに達した場合での設定例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動制御装置を搭載したプラグインハイブリッド車(以下、車両1という)の概略構成図である。
【0022】
本実施形態の車両1は、エンジン2の出力によって前輪3を駆動して走行可能であるとともに、前輪3(走行駆動輪)を駆動する電動のフロントモータ4(第1回転電機)を備えている。
【0023】
エンジン2は、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、減速機7を介してモータジェネレータ9(第2回転電機)を駆動して発電させることが可能となっている。
【0024】
フロントモータ4は、フロントインバータ10を介して、車両1に搭載された駆動用バッテリ11(蓄電池)及びモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。減速機7においてエンジン2と駆動軸8との間の動力伝達路と、フロントモータ4と駆動軸8との動力伝達路とは、異なる経路になっている。減速機7には、エンジン2の出力軸と駆動軸8との間の動力の伝達を断接切換え可能なエンジンクラッチ7aが内蔵されている。また、減速機7には、フロントモータ4と駆動軸8との間の動力の伝達を断接切換え可能なモータクラッチ7bが内蔵されている。
【0025】
なお、エンジン2と前輪3との間の動力伝達路が本発明の第1動力伝達路に該当し、フロントモータ4と駆動軸8との間の動力伝達路が本発明の第2動力伝達路に該当する。
【0026】
モータジェネレータ9によって発電された電力は、フロントインバータ10を介して駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4に電力を供給可能である。
【0027】
駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有しており、更に、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOC)等を監視するバッテリモニタリングユニット11aを備えている。
【0028】
フロントインバータ10は、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づき、フロントモータ4の出力を制御する一方、モータジェネレータ9の発電量を制御する機能を有する。
【0029】
また、車両1には、駆動用バッテリ11を外部電源によって充電する充電機21が備えられている。
【0030】
ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。
【0031】
ハイブリッドコントロールユニット20の入力側には、駆動用バッテリ11のバッテリモニタリングユニット11a、フロントインバータ10、エンジンコントロールユニット22、アクセル操作量を検出するアクセル開度センサ40等が接続されており、これらの機器からの検出及び作動情報が入力される。
【0032】
一方、ハイブリッドコントロールユニット20の出力側には、フロントインバータ10、減速機7(クラッチ7a、7b)、エンジンコントロールユニット22が接続されている。
【0033】
そして、ハイブリッドコントロールユニット20は、アクセル開度センサ40等の上記各種検出量及び各種作動情報に基づいて、車両1の走行駆動に必要とする車両要求出力、走行用の駆動トルクを演算し、エンジンコントロールユニット22、フロントインバータ10、減速機7に制御信号を送信して、走行モード((EVモード:電気自動車モード)、シリーズモード、パラレルモード)の切換え、エンジン2とフロントモータ4の出力、モータジェネレータ9の出力(発電電力)を制御する。
【0034】
EVモードでは、エンジン2を停止し、駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して車両1を走行させる。
【0035】
シリーズモードでは、減速機7のエンジンクラッチ7aを切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動する。そして、モータジェネレータ9により発電された電力及び駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して走行させる。また、シリーズモードでは、エンジン2の回転速度を所定の回転速度に設定し、余剰電力を駆動用バッテリ11に供給して駆動用バッテリ11を充電する。
【0036】
パラレルモード(第1走行モード)では、減速機7のエンジンクラッチ7aを接続し、エンジン2から減速機7を介して機械的に動力を伝達して前輪3を駆動させる。また、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動させて発電した電力及び駆動用バッテリ11から供給される電力によってフロントモータ4を駆動して走行させる。
【0037】
なお、EVモード及びシリーズモードにおいて、モータクラッチ7bは接続状態となる。また、パラレルモードにおいても基本的には、モータクラッチ7bは接続状態となる。
【0038】
ハイブリッドコントロールユニット20は、高速領域のように、エンジン2の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、車両1の駆動トルク及び駆動用バッテリ11の充電率SOCに基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0039】
車両1は、アクセルオフ状態の減速走行時において、前輪3の回転力によりフロントモータ4を強制駆動して発電(回生発電)させるとともに、前輪3に制動トルク(回生制動トルク)を付与させる回生制動機能を備えている。
【0040】
図2は、ハイブリッドコントロールユニット20における駆動・回生アシスト制御部25の構成図である。
【0041】
本実施形態のハイブリッドコントロールユニット20は、更に、駆動アシスト制御及び回生アシスト制御を行う駆動・回生アシスト制御部25を備えている。
【0042】
駆動・回生アシスト制御部25には、要求駆動トルク演算部31、要求回生制動トルク演算部32、モータクラッチ制御部33、駆動アシスト制御部34、回生アシスト制御部35、回生発電制御部36が備えられている。
【0043】
要求駆動トルク演算部31は、車両1を走行駆動するための要求駆動トルクを演算する。
【0044】
要求回生制動トルク演算部32は、要求される車両1の回生制動トルクを演算する。
【0045】
モータクラッチ制御部33は、車両1の走行モード及びエンジン出力トルクを入力するとともに、要求駆動トルク演算部31から要求駆動トルクを入力する。モータクラッチ制御部33は、パラレルモードにおいて、要求駆動トルクがエンジン2の出力トルクのみで充足する場合にはモータクラッチ7bを切断する。このように、モータクラッチ7bを切断することでフロントモータ4の強制回転(連れ回り)がなくなるので、フロントモータ4において発生する誘起電圧を解消させるための制御が不要となり電力消費を抑制することができる。
【0046】
駆動アシスト制御部34は、モータクラッチ制御部33よりモータクラッチ7bの接続・切断指示信号を、要求駆動トルク演算部31から要求駆動トルクを入力するとともに、エンジン出力トルクを入力する。駆動アシスト制御部34は、モータクラッチ制御部33によるモータクラッチ7bの切断時に、例えばアクセル操作による加速要求により、要求駆動トルクがエンジン出力トルクを超えた場合に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4により走行駆動トルクを増加させる。更に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4による駆動トルクが増加する前に、モータジェネレータ9に電力を供給して駆動しモータジェネレータ9の駆動トルクを駆動軸8に付与する駆動アシスト制御を実行する。
【0047】
駆動アシスト制御の実行時では、パラレルモードにおいてエンジンクラッチ7aは接続されており駆動軸8とモータジェネレータ9とが接続されているので、図3の破線で示すように、モータジェネレータ9から動力が駆動軸8に伝達するとともに、エンジン2から動力が伝達される。したがって、この駆動アシストにより迅速に走行駆動トルクを付与することができる。
【0048】
回生アシスト制御部35は、モータクラッチ制御部33よりモータクラッチ7bの接続・切断判定信号を、要求回生制動トルク演算部から要求回生制動トルクを入力する。回生アシスト制御部は、モータクラッチ制御部33によるモータクラッチ7bの切断時に、例えばアクセル操作戻し等による減速要求により、回生制動が要求された場合に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4により回生制動を行う。更に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4による回生制動トルクが増加する前に、モータジェネレータ9により回生制動を行い、回生制動トルクを駆動軸8に付与する回生アシスト制御を実行する。
【0049】
回生アシスト制御の実行時では、パラレルモードにおいてエンジンクラッチ7aは接続されており駆動軸8とモータジェネレータ9とが接続されているので、図3の一点鎖線で示すように、エンジン2からモータジェネレータ9に動力が伝達するとともに、駆動軸8からモータジェネレータ9に動力が伝達される。したがって、この回生アシスト制御により迅速に回生制動トルクを付与することができる。
【0050】
図4から6を用いて、回生アシスト制御におけるジェネレータトルクTgの設定、即ちモータジェネレータ9によって発電するために入力するトルクの設定要領について説明する。
【0051】
図4、5、6は、ジェネレータトルクTgの設定の推移を示すタイムチャートの一例である。図4はジェネレータトルクTgが最大トルクTgmax以下の場合を示し、図5はジェネレータトルクTgが最大トルクTgmaxに達した場合の参考例を示し、図6は本実施形態でのジェネレータトルクTgが最大トルクTgmaxに達した場合の設定例を示す。
【0052】
図4~6に示すように、パラレルモードにおいてはエンジン2を作動させ、エンジン2の出力トルク(エンジントルク)によりモータジェネレータ9によって発電する。このエンジントルクによる発電トルクTgaは、基本的には図3、4に示すように一定の基準値Tg1に制御される。
【0053】
パラレルモードにおいてエンジン2の出力トルクによりモータジェネレータ9において発電しているときに、上記のようにモータジェネレータ9において回生アシストが要求された場合について以下に説明する。
【0054】
図4に示すようにモータジェネレータ9におけるエンジントルクによる発電トルクTgaと回生アシストによる回生制動トルクTgbとの和が、モータジェネレータ9による最大トルクTgmax以下の場合(Tga+Tgb≦Tgmax)では、エンジン2を所定の出力トルクTepで作動させて発電トルクTgaを確保するとともに、回生アシストによる回生制動トルクTgbが得られる。
【0055】
参考例として、図5に示すように、エンジントルクによる発電トルクTgaと回生アシストによる回生制動トルクTgbとの和が、モータジェネレータ9による最大トルクTgmaxを超える場合(Tga+Tgb>Tgmax)には、エンジン2を所定の出力トルクTepで作動させることで、モータジェネレータ9における発電量は確保される。しかしながら、モータジェネレータ9を保護するために、回生アシストによる回生制動トルクが要求値である回生制動トルクTgbよりも低く制限する必要がある。
【0056】
これに対し、本実施形態では、図6に示すように、エンジントルクによる発電トルクTgaと回生アシストによる回生制動トルクTgbとの和が、モータジェネレータ9による最大トルクTgmaxを超える場合に、エンジン2の出力トルクを所定の出力トルクTepより減少させる。これにより、エンジントルクによる発電トルクTgaが減少する。これに伴い、エンジントルクによる発電トルクTgaと回生アシストによる回生制動トルクTgbとの和が、モータジェネレータ9における最大トルクTgmaxを超えない範囲で、回生アシストによる回生制動トルクTgbが増加する。
【0057】
以上のように、本実施形態の車両1は、エンジン2と電気モータ(フロントモータ4)を走行駆動源として備えたプラグインハイブリッド車であって、エンジン2及びフロントモータに4より前輪3を駆動するパラレルモードが可能である。
【0058】
更に、フロントモータ4と前輪3の駆動軸8との間の動力伝達路は、エンジン2と駆動軸8との間の動力伝達路とは異なる経路であり、フロントモータ4と駆動軸8との間の動力伝達路にモータクラッチ7bが備えられている。
【0059】
そして、パラレルモードにおいて、要求駆動トルクがエンジン2の出力トルクのみで充足する場合にモータクラッチ7bを切断することで、フロントモータ4の連れ回しを防止し、フロントモータ4の連れ回しによる影響を解消するために行われる制御による消費電力を抑制することができる。
【0060】
パラレルモードにおいてモータクラッチ7bが切断されてエンジン2によって走行駆動しているときに要求駆動トルクが増加した場合に、モータジェネレータ9により駆動することで、モータジェネレータ9を利用して走行駆動トルクを得ることができる。したがって、モータクラッチ7bが切断されている状況で要求駆動トルクが増加した場合に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4により駆動アシストするよりも迅速に走行駆動トルクを増加させることが可能になり、駆動性能を向上させることができる。
【0061】
一方、パラレルモードにおいてモータクラッチ7bが切断されてエンジン2によって走行駆動しているときに回生制動が要求された場合に、モータジェネレータ9により回生制動することで、モータジェネレータ9を利用して回生制動トルクが得られる。したがって、モータクラッチ7bが切断されている状況で回生制動が要求された場合に、モータクラッチ7bを接続してフロントモータ4により回生制動するよりも迅速に回生制動トルクを得ることができる。
【0062】
更に、本実施形態では、回生発電制御部36においてモータジェネレータ9により回生制動を実行しているときに、モータジェネレータ9による発電によって消費する発電トルクTgaと要求する回生制動トルクTgbとの合計値が、モータジェネレータ9の最大トルクTgmax以上である場合に、モータジェネレータ9における発電量を通常時の発電量(所定の発電量)より低下させて発電トルクTgaを基準値Tg1より低下させることで、ジェネレータトルクTgが最大トルクTgmaxを超えないように抑えた上でモータジェネレータ9による回生制動トルクTgbを増加させることができる。これにより、回生制動性能を向上させることができる。
【0063】
また、回生発電制御部36は、モータジェネレータ9における発電量を通常時の発電量より低下させた際に、回生制動により消費する回生制動トルクを要求値(回生制動トルクTgb)にする。これにより、回生発電制御部36においてモータジェネレータ9における発電量を低下させた際に、モータジェネレータ9の消費トルクが最大トルクTgmaxを超えない範囲でモータジェネレータ9による回生制動トルクを回生制動トルクTgbにすることができる。したがって、要求される回生制動性能を確保することができる。
【0064】
また、回生発電制御部36においてモータジェネレータ9における発電量を通常時より低下させる際には、エンジン2の出力トルクを低下させるので、容易に発電量を通常時より低下させることができるとともに、エンジン2における燃料消費量を抑制することができる。
【0065】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の車両1は、前輪駆動車であるが、例えば左右の後輪5を駆動するリヤモータを備えた4輪駆動車にも本発明を適用できる。この場合は、前輪の要求駆動トルクを上記実施形態における要求駆動トルクとして扱えばよい。
【0066】
また、本実施形態の車両1は、外部充電又は外部給電が可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)であるが、充電機能を有しないハイブリッド車にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両(ハイブリッド車)
3 前輪(走行駆動輪)
4 フロントモータ(第1回転電機)
9 モータジェネレータ(第2回転電機)
7b モータクラッチ(クラッチ)
31 要求駆動トルク演算部
32 要求回生制動トルク演算部
33 モータクラッチ制御部(クラッチ制御部)
34 駆動アシスト制御部
35 回生アシスト制御部
36 回生発電制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6