(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】診断装置、診断システム、遠隔監視システムおよび保守管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241126BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B3/00 R
(21)【出願番号】P 2024505705
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010064
(87)【国際公開番号】W WO2023170796
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長濱 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】新倉 脩平
(72)【発明者】
【氏名】木村 康樹
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-136776(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203561(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/089508(WO,A1)
【文献】特開2022-18941(JP,A)
【文献】国際公開第2021/260942(WO,A1)
【文献】特開2008-156127(JP,A)
【文献】特開2020-40763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断装置であって、
前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、
前記かごが特定の区間を走行した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する判定部と、
を備えた診断装置。
【請求項2】
前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を演算する演算部、
を更に備え、
前記判定部は、前記演算部が演算した前記軸変位量に基づいて前記軸受の異常を判定する請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記主ロープの前記第1綱車に対する巻付角を演算し、演算した巻付角に基づいて前記軸変位量を演算する請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記演算部は、演算した巻付角θ、前記第1綱車の中心と前記第2綱車の中心との水平方向における距離x、前記第1綱車が基準位置にある場合の前記第1綱車の中心と前記第2綱車の中心との鉛直方向の距離y
0、および前記第1綱車と前記第2綱車とに対する前記主ロープの巻付け方式を示す定数i、を以下の式(1)に適用することで前記軸変位量hを演算する請求項3に記載の診断装置。
【数1】
【請求項5】
前記演算部は、
前記かごが上昇運転した場合に、前記かごが前記特定の区間を上昇運転した際の回転角度の合計値Θ
up、前記エレベーターシステムのローピング方式を示す定数r、前記特定の区間の距離X、前記第1綱車のシーブ直径と前記主ロープの直径との和の半分である有効半径Re、および係数C
1、を以下の式(2)に適用することで前記巻付角θを演算し、
前記かごが下降運転した場合に、前記かごが前記特定の区間を下降運転した際の回転角度の合計値Θ
dn、定数r、距離X、有効半径Re、係数C
2、および係数C
3、を以下の式(3)に適用することで前記巻付角θを演算する、
請求項3または請求項4に記載の診断装置。
【数2】
【数3】
【請求項6】
前記演算部は、前記かごの積載重量の測定値と前記回転角度の合計値とに基づいて、前記巻付角を演算する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記軸変位量に基づいて、前記軸受の異常として、前記軸受の内部形状が変化している異常があると判定する請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記軸変位量に基づいて、前記軸受および前記回転軸体の少なくとも一方が膨張することで前記軸受に生じる負荷荷重の値を演算し、前記軸受の異常として、前記負荷荷重の値が増大している異常があると判定する請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記軸受の温度の測定値と前記軸変位量とに基づいて、前記軸受の異常を判定する請求項8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記演算部が演算した前記軸変位量と前記軸変位量の基準値との差に基づいて前記軸受の異常の種類を判定する請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記特定の区間として前記かごに設定された最上階と最下階との間を前記かごが停止することなく上昇運転および下降運転した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項12】
前記かごの積載重量の測定値に基づいて前記かごの内部に物体が存在しないことを検出した場合に、前記かごに設定された最上階と最下階との間を前記かごが停止することなく上昇運転および下降運転する診断運転を実施させる指令を送信する診断運転指令部、
を更に備え、
前記判定部は、前記診断運転が実施された際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項13】
前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を推論するための学習済モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記モデル記憶部に記憶された前記学習済モデルを用いて、前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記軸変位量を推論する推論部と、
を更に備え、
前記判定部は、前記推論部が推論した前記軸変位量に基づいて前記軸受の異常を判定する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項14】
第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断装置であって、
前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、
前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を推論するための学習済モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記モデル記憶部に記憶された前記学習済モデルを用いて、前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記軸変位量を推論する推論部と、
前記推論部が推論した前記軸変位量に基づいて前記軸受の異常を判定する判定部と、
を備えた診断装置。
【請求項15】
第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断システムであって、
前記巻上機に設けられ、前記第1綱車が回転した角度に対応する角度信号を送信する回転角検出装置と、
前記回転角検出装置からの角度信号に基づいて、前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出し、前記かごが特定の区間を走行した際に算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の診断装置と、
を備えた診断システム。
【請求項16】
請求項15に記載の診断システムと、
前記診断システムの前記診断装置が前記軸受の異常を判定した診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報を外部に送信する監視装置と、
を備えた遠隔監視システム。
【請求項17】
請求項15に記載の診断システムと、
前記診断システムの診断装置が前記軸受の異常を判定した診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報を外部に送信する監視装置と、
前記監視装置から前記診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報に基づいて前記エレベーターシステムの保守計画を作成する情報センター装置と、
を備えた保守管理システム。
【請求項18】
第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムの保守管理を行う保守管理システムにおいて、
前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、
前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を演算する演算部と、
前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記演算部が演算した軸変位量と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の積載重量と、が対応付けられた情報を含む学習用情報を取得する学習情報取得部と、
前記学習情報取得部が取得した前記学習用情報を用いて、前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記軸変位量を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備えた保守管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置、診断システム、遠隔監視システムおよび保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、軸受の診断装置を開示する。当該診断装置によれば、エレベーターシステムにおける巻上機の軸受に検知センサが設けられる。検知センサは、軸受で発生するノイズを検知する。診断装置は、検知されたノイズを分析することで、軸受の異常を診断し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の診断装置において、軸受に検知センサを設ける必要がある。このため、構成が複雑となる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、簡易な構成で軸受の異常を判定できる診断装置、診断システム、遠隔監視システムおよび保守管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る診断装置は、第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断装置であって、前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、前記かごが特定の区間を走行した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する判定部と、を備えた。
【0007】
本開示に係る診断装置は、第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断装置であって、前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を推論するための学習済モデルを記憶するモデル記憶部と、前記モデル記憶部に記憶された前記学習済モデルを用いて、前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記軸変位量を推論する推論部と、前記推論部が推論した前記軸変位量に基づいて前記軸受の異常を判定する判定部と、を備えた。
【0008】
本開示に係る診断システムは、第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムにおける前記軸受の異常を診断する診断システムであって、前記巻上機に設けられ、前記第1綱車が回転した角度に対応する角度信号を送信する回転角検出装置と、前記回転角検出装置からの角度信号に基づいて、前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出し、前記かごが特定の区間を走行した際に算出した回転角度の合計値に基づいて、前記軸受の異常を判定する診断装置と、を備えた。
【0009】
本開示に係る遠隔監視システムは、前記診断システムと、前記診断システムの前記診断装置が前記軸受の異常を判定した診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報を外部に送信する監視装置と、を備えた。
【0010】
本開示に係る保守管理システムは、前記診断システムと、前記診断システムの診断装置が前記軸受の異常を判定した診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報を外部に送信する監視装置と、前記監視装置から前記診断結果の情報を受信し、前記診断結果の情報に基づいて前記エレベーターシステムの保守計画を作成する情報センター装置と、を備えた。
【0011】
本開示に係る保守管理システムは、第1綱車と前記第1綱車を回転軸体で回転させる電動機と前記回転軸体を支持する軸受とを有する巻上機と、第2綱車と、前記第1綱車および前記第2綱車に巻き掛けられた主ロープと、前記主ロープに吊るされたかごと、を有するエレベーターシステムの保守管理を行う保守管理システムにおいて、前記かごが出発階から到着階まで移動した際に前記第1綱車が回転した回転角度の合計値を算出する回転角算出部と、前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値に基づいて、前記回転軸体の鉛直方向の位置が基準位置から変化した変化量である軸変位量を演算する演算部と、前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記演算部が演算した軸変位量と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の積載重量と、が対応付けられた情報を含む学習用情報を取得する学習情報取得部と、前記学習情報取得部が取得した前記学習用情報を用いて、前記回転角算出部が算出した回転角度の合計値と、前記出発階と、前記到着階と、前記かごが移動した際の前記かごの積載重量と、から前記軸変位量を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、を備えた。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、第1綱車の回転角度の合計値に基づいて、軸受の異常が判定される。このため、簡易な構成で軸受の異常を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1における診断装置が適用されるエレベーターシステムの概要を示す図である。
【
図2】実施の形態1における診断装置が適用される巻上機の断面の概要図である。
【
図3】実施の形態1における診断装置が適用される第1綱車の断面の概要図である。
【
図4】実施の形態1における診断装置が適用される保守管理システムのブロック図である。
【
図5】実施の形態1における診断装置が適用される第1綱車と第2綱車と主ロープとの位置関係を示す概要図である。
【
図6】実施の形態1における診断装置が制御盤に指令する診断運転の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図7】実施の形態1における診断装置が行う異常診断の第1例の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施の形態1における診断装置が行う異常診断の第2例の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図9】実施の形態1における診断装置のハードウェア構成図である。
【
図10】実施の形態2における診断装置が軸変位量を演算する動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図11】実施の形態3における診断装置が適用される巻上機の断面の概要図である。
【
図12】実施の形態3における診断装置が適用される軸受の温度変化の概要を示す図である。
【
図13】実施の形態3における診断装置のブロック図である。
【
図14】実施の形態3における診断装置が行う異常診断の第3例の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図15】実施の形態4における診断装置が適用される保守管理システムのブロック図である。
【
図16】実施の形態4における診断装置が適用される学習装置が行う学習の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図17】実施の形態4における診断装置が行う推論の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0015】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における診断装置が適用されるエレベーターシステムの概要を示す図である。
【0016】
図1のエレベーターシステムにおいて、昇降路1は、建築物2の各階を貫く。機械室3は、昇降路1の直上に設けられる。複数の乗場4は、建築物2の各階にそれぞれ設けられる。例えば、複数の乗場4には、最上階の乗場4aと最下階の乗場4bとが含まれる。
【0017】
巻上機5は、機械室3に設けられる。巻上機5は、電動機6と第1綱車7と回転軸体8と複数の軸受9とを有する。なお、
図1には、複数の軸受9のうちの1つが示される。なお、巻上機5が有する軸受9は、1つであってもよい。電動機6は、機械室3に設けられる。第1綱車7は、ロープ溝を有する滑車である。第1綱車7は、駆動綱車として電動機6に隣接して設けられる。第1綱車7の中心には、回転軸体8が通される。回転軸体8の中央部は、第1綱車7に固定される。回転軸体8の一端部は、電動機6に固定される。なお、回転軸体8は、第1綱車7と一体となるよう形成されてもよい。複数の軸受9は、回転軸体8を回転可能に支持する。
【0018】
第2綱車10は、ロープ溝を有する滑車である。第2綱車10は、そらせ車として昇降路1の内部、機械室3の内部および昇降路1と機械室3とにまたがった位置のいずれかに設けられる。第2綱車10は、第1綱車7から距離xだけ水平方向に離れた位置に設けられる。第2綱車10の回転軸の鉛直方向の位置は、第1綱車の鉛直方向の位置よりも距離yの位置である。第2綱車10の回転軸は、第1綱車7の回転軸と平行である。
【0019】
主ロープ11は、第1綱車7と第2綱車10とに巻き掛けられる。例えば、主ロープ11は、ハーフラップの方式で第1綱車7と第2綱車10とに巻き掛けられる。主ロープ11の第1綱車7との巻付角は、θである。巻付角は、綱車とロープとが接する円弧に対応する中心角である。なお、主ロープ11は、フルラップの方式で第1綱車7と第2綱車10とに巻き掛けられてもよい。この場合、第1綱車7と主ロープ11とは、巻付角θにπを加えた中心角に対応する円弧の長さ分だけ接する。
【0020】
かご12は、昇降路1の内部において、主ロープ11の両端部のうち第1綱車7の側の一端に吊るされる。かご12は、かご枠12aとかご室12bと秤装置12cとを備える。かご枠12aは、主ロープ11に吊られる。かご室12bは、かご枠12aに支持される。秤装置12cは、かご室12bの内部の重量をかご12の積載重量として測定する。釣合おもり13は、昇降路1の内部において、主ロープ11の両端部のうち他端に吊るされる。
【0021】
例えば、回転角検出装置14は、エンコーダである。回転角検出装置14は、巻上機5に取り付けられる。回転角検出装置14は、回転軸体8が回転した角度に応じた信号を出力する。
【0022】
制御盤15は、機械室3に設けられる。制御盤15は、電動機6と秤装置12cと回転角検出装置14とに電気的に接続される。制御盤15は、エレベーターシステムを全体的に制御し得る。監視装置16は、機械室3に設けられる。監視装置16は、制御盤15からエレベーターシステムに関する情報を取得し得る。監視装置16は、制御盤15からの情報に基づいてエレベーターの状態を把握し得る。情報センター装置17は、建築物2から離れた場所に設けられる。例えば、情報センター装置17は、エレベーターシステムの保守会社に設けられる。情報センター装置17は、監視装置16とネットワークを介して通信し得る。情報センター装置17は、監視装置16からの情報に基づいてエレベーターシステムの状態を把握し得るように設けられる。
【0023】
診断装置20は、機械室3に設けられる。診断装置20は、回転角検出装置14と制御盤15と監視装置16とに電気的に接続される。
【0024】
エレベーターシステムが通常運行する場合、制御盤15からの制御指令に基づいて、電動機6は、回転軸体8を回転させる。回転軸体8は、複数の軸受9に鉛直方向の荷重を支持された状態で、回転軸を中心に回転する。第1綱車7は、回転軸体8と同期して回転する。主ロープ11は、第1綱車7との間の摩擦力によって、第1綱車7の回転に追従して移動する。かご12と釣合おもり13とは、主ロープ11の移動に追従して互いに反対方向に昇降する。回転角検出装置14は、回転軸体8が規定の角度だけ回転する毎に角度信号を送信する。制御盤15は、回転角検出装置14からの角度信号を含む複数のセンサからの情報に基づいてかご12の位置を測定しながら、かご12を運行する。
【0025】
エレベーターシステムには、軸受9を健全な状態に保つために、診断システム、遠隔監視システム、および保守管理システムが適用される。診断システムは、回転角検出装置14と診断装置20とを含む。また、遠隔監視システムは、診断システムと監視装置16とを含む。保守管理システムは、遠隔監視システムと情報センター装置17とを含む。
【0026】
複数の軸受9の各々には、かご12の運行に伴って種々の異常が発生し得る。例えば、軸受9の内部の形状は、摩耗によって変化し得る。例えば、回転軸体8と軸受9とは、摩擦熱によって温度上昇し、膨張し得る。この際、回転軸体8が回転軸方向に熱膨張することで、回転軸体8と軸受9との間に回転軸方向への負荷が発生し、位置ずれ等が生じ得る。このように、膨張に伴って軸受9への負荷荷重が増加する。当該負荷荷重は、軸受9の寿命を短くし得る。当該種々の異常は、回転軸体8の鉛直方向の位置によって検出され得る。即ち、軸受9の内部が摩耗した場合、回転軸体8の鉛直方向の位置が基準位置よりも低くなり得る。回転軸体8と軸受9とが熱膨張した場合、回転軸体8の鉛直方向の位置が基準位置よりも高くなり得る。
【0027】
診断装置20は、回転角検出装置14からの角度信号に基づいて軸受9の異常を診断する。具体的には、診断装置20は、角度信号に基づいて、回転軸体8の回転量である回転角度の合計値を算出する。例えば、診断装置20は、かご12が特定の区間である最上階から最下階まで停止せずに移動した際に算出した回転軸体8の回転角度の合計値に基づいて、巻付角θの値を算出する。診断装置20は、巻付角θの値から回転軸体8の鉛直方向の位置の推定が可能であることを利用し、巻付角θの値に基づいて軸受9の異常を診断する。この際、診断装置20は、異常診断として、異常の有無、異常の種類、異常の程度、等の異常の判定を行う。
【0028】
診断装置20は、異常診断の結果を示す診断情報を監視装置16に送信する。監視装置16は、診断情報を情報センター装置17に送信する。情報センター装置17は、受信した診断情報を保守管理に利用する。具体的には、情報センター装置17は、異常があることを示す診断情報を受信した場合、作業員、監視員、オペレータ、等の保守会社の人員にその旨を報知する。情報センター装置17は、診断情報に基づいて、診断情報に対応する軸受9の寿命を推定する。情報センター装置17は、推定した寿命に基づいて当該軸受9の交換計画を含む保守計画を作成し、保守会社の作業員等に保守計画を通知する。
【0029】
【0030】
図2は実施の形態1における診断装置が適用される巻上機の断面の概要図である。
図3は実施の形態1における診断装置が適用される第1綱車の断面の要部の概要図である。
【0031】
図2は、第1綱車7および回転軸体8の回転軸Aを含む巻上機5の断面を示す。例えば、巻上機5は、2つの軸受9を有する。2つの軸受9は、第1綱車7の両側にそれぞれ配置される。
【0032】
軸受9には、転がり軸受が採用される。具体的には、例えば、軸受9には、深溝玉軸受、自動調心玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心ころ軸受、円錐ころ軸受、円筒ころ軸受、トロイダルころ軸受、等の一般的な種類の軸受が採用される。例えば、軸受9の一例として、内部の転動体と移動面との間に、隙間および接触角を有する形式の軸受が採用される。なお、軸受9には、調心作用を有するすべり軸受が採用されてもよい。
【0033】
図3は、回転軸Aを含む第1綱車7の断面の要部を示す。
図3において、第1綱車7には、主ロープ11が巻き掛けられた状態が示される。第1綱車7は、複数のロープ溝7aを有する。
図3には、複数のロープ溝7aのうちの1つが示される。本実施例においては、ロープ溝7aにアンダーカット溝が設けられているため、主ロープ11は、ロープ溝7aの底には接していない。底部7bは、アンダーカット溝が設けられていないと仮定した際に、ロープ溝7aの底とみなせる部分である。シーブ径Dは、シーブであるロープ溝7aの底とみなされる部分の直径である。
【0034】
ロープ径dは、主ロープ11の直径である。第1綱車7の有効径Deは、シーブ径Dの値とロープ径dとの和である。即ち、有効径De=D+d/2+d/2=D+dで表される。第1綱車7の有効半径Reは、有効径Deの半分の値であるDe/2として算出される。有効半径Reは、第1綱車7に巻き掛けられている主ロープ11の中心の回転軸Aからの距離である。即ち、有効半径Reは、シーブ径Dの半分の値とロープ径dの半分の値とを合計して算出されてもよい。
【0035】
次に、
図4を用いて診断装置20を説明する。
図4は実施の形態1における診断装置が適用される保守管理システムのブロック図である。なお、
図4では巻上機5およびかご12の図示は省略される。
【0036】
図4に示されるように、診断装置20は、記憶部21と通信部22と診断運転指令部23と回転角算出部24と演算部25と判定部26とを備える。
【0037】
記憶部21は、軸受9の診断運転に必要な数値の情報を記憶する。記憶部21が記憶する数値は、任意のタイミングで更新されてもよい。例えば、点検によって第1綱車7のシーブ径Dが測定された場合、記憶部21が記憶するシーブ径Dは、最新の値に更新されてもよい。例えば、点検によって、または更新によって主ロープ11のロープ径dが測定された場合、記憶部21が記憶するロープ径dは、最新の値に更新されてもよい。
【0038】
通信部22は、診断装置20と外部の機器との通信を制御する。具体的には、通信部22は、秤装置12cと回転角検出装置14と制御盤15とから情報の受信を受け付ける。通信部22は、制御盤15と監視装置16とに情報を送信し得る。
【0039】
診断運転指令部23は、診断運転を実施させる指令を作成し、制御盤15に送信する。診断運転は、かご12を最上階と最下階との間を停止することなく走行させる運転である。診断運転は、最上階と最下階とをかご12に往復させる運転であってもよい。
【0040】
診断運転指令部23は、秤装置12cが測定した積載重量の情報を取得する。診断運転指令部23は、かご12の積載重量に基づいて、かご12に人および物が存在しない状態であるノーロード状態であることを検出する。例えば、診断運転指令部23は、診断運転を実施させる条件の1つとして、ノーロード状態であることを検出した場合に、診断運転を実施させる指令を制御盤15に送信する。なお、診断運転指令部23は、ノーロード状態でない場合でも、診断運転を実施させる指令を送信してもよい。
【0041】
回転角算出部24は、回転角検出装置14からの角度信号に基づいて回転軸体8の回転角度を算出する。回転角算出部24は、かご12が特定の区間を走行した時の回転量である回転角度の合計値を算出する。具体的には、例えば、かご12が診断運転をした場合、回転角算出部24は、かご12が最上階から最下階までの区間を走行した時の回転角度の合計値を算出する。
【0042】
演算部25は、回転角算出部24が算出した回転角度の合計値に基づいて、回転軸体8の鉛直方向の位置の変化量である軸変位量を演算する。軸変位量は、鉛直方向において、回転角度の合計値から演算される回転軸体8の位置と基準となる回転軸体8の位置との差分である。即ち、演算部25は、回転角度の合計値に基づいて回転軸体8の鉛直方向の位置である軸体位置を演算する。この際、演算部25は、軸体位置として回転軸Aの鉛直方向の位置を演算する。
【0043】
軸体位置を演算する際、まず、演算部25は、角度信号に基づいて巻付角θを演算する。演算部25は、演算した巻付角θに基づいて軸体位置を演算する。
【0044】
判定部26は、いくつかの異常診断の形態によって軸受9の異常を判定する。例えば、判定部26は、異常診断を行った場合、異常診断の結果を示す異常度の情報を通信部22に監視装置16へ送信させる。異常度の情報は、軸受9に異常が存在するまたは異常が存在しない旨の情報を含む。異常度の情報は、軸受9に存在する異常の種類を示す情報を含んでもよい。異常度の情報は、軸受9に存在する異常の程度を定量的に示す情報を含んでもよい。
【0045】
なお、判定部26は、異常を判定する前に異常度を算出し、異常度に基づいて軸受9の異常を判定してもよい。
【0046】
異常診断の第1例において、判定部26は、回転角検出装置14が算出した回転角度の合計値に基づいて軸受9の異常を判定する。この際、判定部26は、ノーロード状態である等の規定の条件の下、かご12が特定の区間を走行した際の回転角度の合計値に基づいて、軸受9の異常を判定する。例えば、判定部26は、回転角度の合計値と当該規定の条件に対応する基準の回転角度の合計値との差の絶対値が規定の閾値を超えた場合、軸受9に異常が存在すると判定する。基準の回転角度の合計値は、予め記憶部21に記憶される。なお、基準の回転角度の合計値は、保守作業時の計測値に基づいて、記憶部21に記憶された情報が更新されてもよい。
【0047】
異常診断の第2例において、判定部26は、演算部25の演算結果である軸変位量に基づいて軸受9の異常を判定する。例えば、判定部26は、演算部25に演算された軸変位量と基準の軸変位量との差の絶対値が規定の閾値を超えた場合、軸受9に異常が存在すると判定する。また、判定部26は、演算部25に演算された軸変位量と基準の軸変位量との差の値に基づいて、軸受9の内部に形状変化があるか、回転軸体8または軸受9が膨張しているか、軸受9に位置ずれが生じているか、等の異常を判定する。基準の軸変位量の値は、予め記憶部21に記憶される。
【0048】
異常診断の第3例において、判定部26は、演算部25の演算結果である軸変位量に基づいて、回転軸体8および軸受9が膨張する、軸受9の内輪と外輪とが回転軸方向に位置ずれする、等によって軸受9に負荷される負荷荷重の値を演算する。当該演算は、回転軸体8の膨張量、軸受9の膨張量に対応する鉛直方向の軸変位量の増加と、負荷荷重と、の間に正の相関があることに基づいて行われる。判定部26は、演算した負荷荷重に基づいて軸受9の異常を判定する。例えば、判定部26は、演算した負荷荷重の値と基準の負荷荷重の値との差の絶対値が規定の閾値を超えた場合、軸受9に異常が存在すると判定する。基準の負荷荷重の値は、予め記憶部21に記憶される。
【0049】
次に、
図5を用いて回転角度の合計値から軸変位量が演算される原理を説明する。
図5は実施の形態1における診断装置が適用される第1綱車と第2綱車と主ロープとの位置関係を示す概要図である。なお、
図5には軸受9および診断装置20の図示が省略される。
【0050】
図5は、第1綱車7の鉛直方向の位置が変化した際の主ロープ11の位置の変化を示す。軸受9を交換した直後の基準状態にある第1綱車7とその時の主ロープ11は、破線で示される。軸受9が摩耗した状態にある第1綱車7とその時の主ロープ11は、一点鎖線で示される。回転軸体8および軸受9が膨張した状態にある第1綱車7とその時の主ロープ11は、二点鎖線で示される。
【0051】
距離xは、第2綱車10の回転軸から第1綱車7の回転軸までの水平方向の距離である。軸受9に異常がある場合でも、距離xは、一定とみなすことができる。
【0052】
距離yは、第2綱車10の回転軸の鉛直方向の高さ位置を基準とした第1綱車7の鉛直方向の距離である。基準状態において、距離yは、y0と記載される。軸受9が摩耗した状態において、距離yは、y1と記載される。y1は、y0よりも小さい。回転軸体8および軸受9が膨張した状態において、距離yは、y2と記載される。y2は、y0よりも大きい。
【0053】
巻付角θは、ハーフラップの方式において、第1綱車7と主ロープ11とが接する円弧に対応する中心角である。図示されないが、基準状態において、巻付角θは、θ0と記載される。軸受9が摩耗した状態において、巻付角θは、θ1と記載される。θ1は、θ0よりも小さい。軸受9が膨張した状態において、巻付角θは、θ2と記載される。θ2は、θ0よりも大きい。
【0054】
軸変位量hは、ある状態における距離yからy
0を減算した値である。軸受9が摩耗した状態における軸変位量h
1は、y
1-y
0である。なお、h
1は負の値となるが、
図5では、図示の都合上h
1の絶対値が示される。軸受9が膨張した状態における軸変位量h
2は、y
2-y
0である。
【0055】
図5に示される幾何学的な関係に基づけば、巻付角θと距離x、yとは、以下の式(1)を満たす。
【0056】
【0057】
式(1)において、iは、巻付の方式によって変化する定数である。ハーフラップの場合i=0となる。フルラップの場合、i=1となる。
【0058】
式(1)を変形することで、軸変位量hと巻付角θとの関係を示す以下の式(2)が導出される。
【0059】
【0060】
エレベーターシステムによって距離xの値および巻付の方式iの値が定まるため、式(2)によれば、巻付角θに基づいて軸変位量hが演算可能である。
【0061】
次に、回転角度の合計値に基づいて巻付角θが導出される原理を説明する。
【0062】
巻付角θが変化した場合、第1綱車7についてのトラクション能力Γが以下の式(3)に基づいて変化する。
【0063】
【0064】
式(3)において、μは、主ロープ11とロープ溝7aとの間の摩擦係数である。Kは、ロープ溝7aの形状に対応する溝係数である。トラクション能力Γが変化すると、かご12が移動する際に主ロープ11がロープ溝7aに対して相対的に移動するすべり量が変化する。すべり量が変化するため、かご12の移動量に対する第1綱車7の回転量が変化する。即ち、かご12が同一の区間を走行する場合の第1綱車7の回転角度の合計値は、巻付角θの値に応じて変化する。また、かご12が同一の距離を移動する場合であっても、上昇運転または下降運転という条件が異なる場合、巻付角θと当該すべり量との関係が変化する。
【0065】
かご12が特定の区間を上昇運転した際の第1綱車7の回転角度の合計値Θupと巻付角θとの関係は、以下の式(4)で表される。
【0066】
【0067】
式(4)において、C1は、上昇運転時のすべり量を表現する係数である。C1は、主ロープ11の張力に応じて変化する。即ち、C1は、かご12の積載重量の値の関数である。rの値は、エレベーターシステムのローピング方式に応じて決定される定数である。即ち、1:1ローピング、2:1ローピング、等の方式が異なると、rの値が異なる。Xは、かご12が移動した距離である。Reは、第1綱車7の有効半径である。
【0068】
かご12が特定の区間を下降運転した際の第1綱車7の回転角度の合計値Θdnと巻付角θとの関係は、以下の式(5)で表される。
【0069】
【0070】
式(5)において、C2は、下降運転時のすべり量を表現する係数である。C2は、主ロープ11の張力に応じて変化する。即ち、C2は、かご12の積載重量の値の関数である。C3は、ロープの伸び量を表現する係数である。C3は、かご12の積載重量の値の関数である。
【0071】
診断装置20において、記憶部21は、式(1)から式(5)に含まれる各定数i、x、y0、r、X、Re、C1、C2、C3の値を記憶する。この際、記憶部21は、巻上機5に対応する最新の各定数の値を記憶する。ここで、かご12の移動距離Xは、特定の区間と対応付けて記憶される。なお、診断装置20は、診断運転の際に移動した距離の測定値を移動距離Xとして制御盤15から取得してもよい。
【0072】
異常診断を行う場合、回転角算出部24は、かご12の運転に対応して第1綱車7の回転角度の合計値ΘupまたはΘdnを算出する。
【0073】
異常診断の第2例および第3例において、演算部25は、記憶部21が記憶する各定数と各関数と回転角算出部24が演算した回転角度の合計値とを用いて、式(4)または式(5)に基づいて、当該回転角度の合計値に対応する巻付角θを演算する。演算部25は、記憶部21が記憶する係数と演算した巻付角θとを用いて、式(2)に基づいて、軸変位量hを演算する。
【0074】
異常診断の第1例において、判定部26は、回転角算出部24が算出した回転角度の合計値ΘupまたはΘdnに基づいて、軸受9の異常を判定する。回転角度の合計値から軸受9の異常を判定可能である理由は、係数X、C1、C2、C3が同じ値を取るならば、回転角度の合計値に対する軸変位量hは、同じ値となるからである。
【0075】
異常診断の第2例において、判定部26は、演算部25が演算した軸変位量hに基づいて、軸受9の異常を判定する。
【0076】
異常診断の第3例において、判定部26は、演算部25が演算した軸変位量hに基づいて、軸受9で生じる負荷荷重の値を演算する。例えば、軸受9が転がり軸受である場合、回転軸体8が膨張することで、回転軸方向において軸受9の内輪と外輪との位置がずれる。当該位置ずれに伴って、転動体の接触角が変化し、回転軸体8が突っ張ることで転動体に加わる荷重が増加する。転動体の位置変化、弾性変形、等によって軸受9に生じる負荷が負荷荷重の値として表現される。判定部26は、記憶部21に記憶された負荷荷重を算出する関数に軸変位量hを適用することで、負荷荷重の値を演算する。ここで、負荷荷重を算出する関数は、軸変位量hの関数である。判定部26は、当該負荷荷重の値に基づいて、軸受9の異常を判定する。例えば、判定部26は、軸受9の異常として、基準となる負荷荷重と比較することで、負荷荷重の値が増大している異常があると判定する。なお、判定部26は、当該負荷荷重が軸受9に与える影響を、異常度の値に定量的に反映してもよい。
【0077】
次に、
図6を用いて、診断運転の例を説明する。
図6は実施の形態1における診断装置が制御盤に指令する診断運転の概要を説明するためのフローチャートである。
【0078】
図6に示されるフローチャートにおいて、診断運転における特定の区間は、最上階の乗場4aから最下階の乗場4bまでの区間である。異常診断において、かご12が停止することなくなるべく長い距離を走行するほど、演算した巻付角θの値は、実際の巻付角の値に近い値となる。このため、特定の区間は、最上階から最下階までが選定され得る。
【0079】
例えば、診断装置20は、かご12に人または物が積載されていないことを秤装置12cからの情報で確認した後、フローチャートの動作を開始する。
【0080】
ステップS001において、診断装置20は、診断運転を実施させる指令を制御盤15に送信する。制御盤15は、診断運転を開始する。
【0081】
その後、ステップS002の動作が行われる。ステップS002において、かご12は、現在の乗場4から最下階の乗場4bへ移動する。
【0082】
その後、ステップS003の動作が行われる。ステップS003において、かご12は、最上階の乗場4aまで停止することなく移動する。当該フローチャートの診断運転における移動速度の推移は、一般的なエレベーターシステムの診断運転におけるかごの移動速度の推移と同様である。かご12は、最上階の乗場4aに到着する。診断装置20は、ステップS003におけるかご12の上昇運転の際に回転軸体8が回転した回転角度の合計値Θupを算出する。
【0083】
その後、ステップS004の動作が行われる。ステップS004において、かご12は、最下階の乗場4bまで停止することなく移動する。かご12は、最下階の乗場4bに到着する。診断装置20は、ステップS004におけるかご12の下降運転の際に回転軸体8が回転した回転角度の合計値Θdnを算出する。
【0084】
その後、ステップS005の動作が行われる。ステップS005において、診断装置20は、算出した回転角度の合計値ΘupおよびΘdnを用いて、異常診断として軸受9の異常を判定する。この際、診断装置20は、回転角度の合計値ΘupおよびΘdnの平均値を用いて軸受9の異常を判定する。なお、診断装置20は、回転角度の合計値ΘupおよびΘdnのうちの少なくとも一方を用いて、軸受9の異常を判定してもよい。
【0085】
その後、診断装置20は、フローチャートの動作を終了する。
【0086】
次に、
図7を用いて、異常診断の第1例を説明する。
図7は実施の形態1における診断装置が行う異常診断の第1例の概要を説明するためのフローチャートである。
【0087】
例えば、診断装置20は、診断運転の後に
図7に示される異常診断を開始する。なお、診断運転の後ではなくても、診断装置20は、かご12が特定の区間を移動したことを検出した場合、異常診断を行ってもよい。
【0088】
ステップS101において、診断装置20は、かご12が特定の区間を移動したことを検出する。
【0089】
その後、ステップS102の動作が行われる。ステップS102において、診断装置20は、回転角検出装置14からの角度信号等の情報に基づいて第1綱車7が停止したことを検出する。
【0090】
その後、ステップS103の動作が行われる。ステップS103において、診断装置20の回転角算出部24は、かご12が特定の区間を移動したことによる回転角度の合計値Θiを算出する。なお、Θiは、ΘupおよびΘdnのうち少なくとも一方から算出される。
【0091】
その後、ステップS104の動作が行われる。ステップS104において、診断装置20の判定部26は、算出された回転角度の合計値Θiと基準の回転角度の合計値Θ0との差の絶対値が閾値を超えたか否かを判定する。即ち、「|Θ0-Θi|>閾値」であるか否かを判定する。
【0092】
ステップS104で、「|Θ0-Θi|>閾値」でない場合、ステップS105の動作が行われる。ステップS105において、判定部26は、軸受9に異常が無い、即ち正常であると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常が無い旨および「|Θ0-Θi|」の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0093】
ステップS104で、「|Θ0-Θi|>閾値」である場合、ステップS106の動作が行われる。ステップS106において、判定部26は、軸受9に異常があると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常がある旨および「|Θ0-Θi|」の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0094】
ステップS105の動作またはステップS106の動作が行われた後、ステップS107の動作が行われる。ステップS107において、監視装置16は、診断結果の情報を情報センター装置17に送信する。情報センター装置17は、診断結果の情報を保守会社の作業員等に対して表示する。情報センター装置17は、診断結果の情報に基づいて、当該エレベーターシステムの保守点検計画を作成する。
【0095】
その後、フローチャートの動作が終了する。
【0096】
次に、
図8を用いて、異常診断の第2例を説明する。
図8は実施の形態1における診断装置が行う異常診断の第2例の概要を説明するためのフローチャートである。
【0097】
例えば、診断装置20は、診断運転の後に
図8に示される異常診断を開始する。なお、診断運転の後ではなくても、診断装置20は、かご12が特定の区間を移動したことを検出した場合、異常診断を行ってもよい。
【0098】
ステップS201からステップS203で行われる動作は、
図7のフローチャートのステップS101からステップS103で行われる動作と同じである。
【0099】
ステップS203の動作が行われた後、ステップS204の動作が行われる。ステップS204において、診断装置20の演算部25は、ステップS203で算出された回転角度の合計値Θiに基づいて、軸変位量hiを演算する。
【0100】
その後、ステップS205の動作が行われる。ステップS205において、診断装置20の判定部26は、演算された軸変位量hiと基準の軸変位量h0との差の絶対値が閾値を超えたか否かを判定する。即ち、「|h0-hi|>閾値」であるか否かを判定する。
【0101】
ステップS205で、「|h0-hi|>閾値」でない場合、ステップS206の動作が行われる。ステップS206において、判定部26は、軸受9に異常が無い、即ち正常であると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常が無い旨および「|h0-hi|」の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0102】
ステップS205で、「|h0-hi|>閾値」である場合、ステップS207の動作が行われる。ステップS207において、判定部26は、軸受9に異常があると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常がある旨および「|h0-hi|」の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0103】
ステップS206の動作またはステップS207の動作が行われた後、ステップS208の動作が行われる。ステップS208において、監視装置16は、診断結果の情報を情報センター装置17に送信する。情報センター装置17は、診断結果の情報を保守会社の作業員に対して表示する。情報センター装置17は、診断結果の情報に基づいて、当該エレベーターシステムの保守点検計画を作成する。
【0104】
その後、フローチャートの動作が終了する。
【0105】
なお、ステップS207において、判定部26は、hiの値とh0の値との差分に基づいて、軸受9の異常が、内部の形状変化であるまたは回転軸体8および軸受9の熱膨張であることを判定してもよい。例えば、hiの値とh0の値との差分が負の値となる場合、判定部26は、軸受9において内部の形状変化が起きていると判定してもよい。hiの値とh0の値との差分が正の値となる場合、判定部26は、回転軸体8および軸受9において熱膨張が起きていると判定してもよい。
【0106】
なお、ステップS206およびステップS207において、判定部26は、hiの値とh0の値との差分を含む異常度の情報を作成してもよい。この場合、ステップS208において、情報センター装置17は、当該差分の推移を解析してもよい。具体的には、情報センター装置17は、当該差分が負の値でかつ減少しているという推移に基づいて、軸受9の摩耗が進行していることを解析してもよい。
【0107】
なお、異常診断の第3例においても、判定部26が負荷荷重を演算する動作、判定部26が負荷荷重に基づいて軸受9の異常を判定する動作、が加わる点を除いて、
図8のフローチャートとほぼ同様の動作が行われる。
【0108】
以上で説明した実施の形態1によれば、診断装置20は、回転角算出部24と判定部26とを備える。診断装置20は、かご12が特定の区間を走行した際に算出した第1綱車7の回転角度の合計値に基づいて、軸受9の異常を判定する。第1綱車7の回転角度を示す角度信号を出力する装置は、一般的なエレベーターシステムに設けられている。このため、巻上機5に追加の装置を取り付けることなく、簡易な構成で軸受9の異常を判定することができる。
【0109】
また、診断システムは、回転角検出装置14と診断装置20とを備える。診断システムにおいて、第1綱車7の回転角度の合計値の情報に基づいて、軸受9の異常が判定される。このため、簡易な構成で軸受9の異常を判定することができる。
【0110】
また、遠隔監視システムは、診断システムと監視装置16とを備える。監視装置16は、診断装置20の診断結果を示す情報を外部に送信し得る。このため、軸受9の異常を外部に送信することができる。
【0111】
また、保守管理システムは、診断システムと監視装置16と情報センター装置17とを備える。情報センター装置17は、診断装置20の診断結果に基づいて保守計画を作成する。このため、遠隔地点から、軸受9の異常を診断し、診断結果に基づいて交換等の計画を作成することができる。その結果、点検に必要な労力を削減することができる。
【0112】
また、診断装置20は、演算部25を備える。診断装置20は、軸変位量を演算し、軸変位量に基づいて軸受9の異常を判定する。このため、軸受9の形状の変化に起因する異常を判定することができる。その結果、異常診断の精度を向上することができる。
【0113】
また、診断装置20は、主ロープ11の第1綱車7に対する巻付角θを演算し、巻付角θに基づいて軸変位量を演算する。この際、診断装置20は、式(2)に基づいて軸変位量hの値を演算する。このため、エレベーターシステムにおける構成の幾何学的な関係に基づいて軸変位量を演算することができる。
【0114】
また、診断装置20は、式(4)および式(5)を用いて巻付角θの値を演算する。このため、実際のトラクション能力に基づいて軸変位量を演算することができる。
【0115】
また、診断装置20は、軸変位量に基づいて、軸受9の内部形状が変化している異常があると判定する。例えば、軸受9の内部形状は、摩耗、損傷、等によって変化し得る。このため、軸受9の異常の種類を判定することができる。
【0116】
また、診断装置20は、軸受9に生じる負荷荷重の値を演算する。診断装置20は、負荷荷重の値が増大している異常があると判定する。このため、軸受9の異常の種類を判定することができる。特に、負荷荷重の値が増大していることは、軸受9の寿命を縮める事象であるが、軸受9の摩耗等の直接的な異常ではなく、点検で検査することが難しい。診断装置20は、そのような種類の異常を判定することができる。
【0117】
また、診断装置20は、演算した軸変位量と軸変位量の基準値との差分に基づいて、軸受9の異常の種類を判定する。なお、軸変位量の基準値は、任意に設定されればよい。例えば、作業員による点検の直後に演算された軸変位量が軸変位量の基準値に設定されてもよい。このため、異常の種類を判定する精度を向上させることができる。
【0118】
また、診断装置20は、特定の区間として最上階と最下階との間をかご12が停止することなく往復運転した、即ち上昇運転および下降運転した際に算出した回転角度の合計値に基づいて、軸受9の異常を判定する。軸受9の異常は、主ロープ11と第1綱車7とのすべり量の推定に基づいて判定される。最上階から最下階まで停止することなくかご12が運転した場合の回転角度の合計値が用いられることで、軸受9の異常診断の精度を向上させることができる。
【0119】
また、診断装置20は、診断運転指令部23を更に備える。診断装置20は、かご12の内部に物体が存在しないノーロード状態であることを検出した場合に、制御盤15に診断運転を行わせる。主ロープ11と第1綱車7とのすべり量は、かご12の積載重量の影響を受ける。診断装置20は、診断運転を行わせることで、利用者による利用状況という不確定な要素を排除した条件の下で異常診断を行うことができる。その結果、異常診断の精度を向上させることができる。
【0120】
なお、記憶部21が記憶する値は、任意のタイミングで更新されてもよい。例えば、記憶部21が記憶する各基準値は、更新されてもよい。例えば、情報センター装置17は、監視装置16を介して、診断装置20に対して、更新後の基準値の情報を送信してもよい。この場合、診断装置20は、更新後の基準値の値を記憶部21に新しく記憶させる。
【0121】
なお、判定部26は、異常度の情報を作成し、異常度に基づいて軸受9の異常の判定を行ってもよい。具体的には、異常診断の第1例において、判定部26は、回転角度の合計値に基づいて異常度の情報を作成してもよい。当該異常度は、回転角度の合計値に対応する異常判定値を含んでもよい。異常診断の第2例において、判定部26は、軸変位量に基づいて異常度の情報を作成してもよい。当該異常度は、軸変位量の値に対応する異常判定値を含んでもよい。異常診断の第3例において、判定部26は、負荷荷重に基づいて異常度の情報を作成してもよい。当該異常度は、負荷荷重の値に対応する異常判定値を含んでもよい。いずれの例においても、判定部26は、異常度の異常判定値が規定の閾値を超えた場合に、軸受9が異常であると判定してもよい。
【0122】
なお、診断装置20は、機械室が無い方式のエレベーターシステム、機械室が昇降路の下部に設けられる方式のエレベーターシステムに適用されてもよい。この際、第1綱車と第2綱車と主ロープとの位置関係に基づいて、回転角度の合計値から軸変位量を演算する際に用られる式などが適宜選択されてもよい。また、この場合、診断装置20および監視装置16は、昇降路の内部に設けられてもよい。
【0123】
次に、
図9を用いて、診断装置20を構成するハードウェアの例を説明する。
図9は実施の形態1における診断装置のハードウェア構成図である。
【0124】
診断装置20の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0125】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、診断装置20の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、診断装置20の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0126】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、診断装置20の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、診断装置20の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0127】
診断装置20の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、回転角度の合計値を算出する機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、回転角度の合計値を算出する機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0128】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで診断装置20の各機能を実現する。
【0129】
図示されないが、監視装置16の各機能も、診断装置20の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。図示されないが、情報センター装置17の各機能も、診断装置20の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。
【0130】
実施の形態2.
図10は実施の形態2における診断装置が軸変位量を演算する動作の概要を説明するためのフローチャートである。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0131】
実施の形態2において、演算部25は、秤装置12cが測定したかご12の積載重量の値を更に用いて軸変位量hを演算する。
【0132】
具体的には、演算部25は、軸変位量hを演算する際に、かご12の積載重量の値を用いて式(4)および式(5)における係数C1、C2、C3の値をそれぞれ補正する。係数C1、C2、C3は、いずれも積載重量の値の関数であるため、それぞれが秤装置12cが測定した積載重量の値に応じた数値となる。演算部25は、補正後の係数C1、C2、C3を用いて、巻付角θを演算する。演算部25は、演算した巻付角θを用いて軸変位量hを演算する。
【0133】
図10には、演算部25が積載重量による補正を行って軸変位量hを演算する動作のフローチャートが示される。
【0134】
ステップS301からステップS303で行われる動作は、
図8のフローチャートのステップS201からステップS203で行われる動作と同様である。
【0135】
ステップS303の動作が行われた後、ステップS304の動作が行われる。ステップS304において、診断装置20は、かご12が特定の区間を移動した時のかご12の積載重量の情報を秤装置12cから取得する。なお、診断装置20は、ステップS301において当該情報を取得していてもよい。診断装置20の演算部25は、積載重量の値に基づいて係数C1、C2、C3の値をそれぞれ補正する。
【0136】
その後、ステップS305の動作が行われる。ステップS305において、演算部25は、回転角度の合計値Θiと補正後の係数C1、C2、C3とを用いて、軸変位量hを演算する。
【0137】
その後、演算部25は、軸変位量hを演算する動作を終了する。診断装置20は、当該軸変位量hを用いて各種の異常診断を行う。
【0138】
以上で説明した実施の形態2によれば、診断装置20は、かご12の積載重量の情報と回転角度の合計値とに基づいて、巻付角θを演算する。このため、診断装置20は、かご12に人等が乗っている場合でも、異常診断を行うことができる。その結果、特別な運転ではなく、エレベーターシステムが通常運行している際に、診断装置20は、異常診断を行うことができる。
【0139】
なお、演算部25は、秤装置12cが測定したかご12の積載重量の値を用いて、軸変位量hの演算結果を補正することで、補正後の軸変位量h´を演算してもよい。この場合、演算部25は、軸変位量hを演算する際に係数C1、C2、C3の値を補正しない。例えば、演算部25は、かご12の積載重量の値に対応する補正係数を算出し、補正係数と軸変位量hとを積算することで補正後の軸変位量h´を演算してもよい。
【0140】
実施の形態3.
図11は実施の形態3における診断装置が適用される巻上機の断面の概要図である。
図12は実施の形態3における診断装置が適用される軸受の温度変化の概要を示す図である。なお、実施の形態1または2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0141】
図11に示されるように、実施の形態3において、軸受9には、軸受温度測定装置30が設けられる。なお、図示されないが、軸受温度測定装置30は、軸受9に対して回転軸方向に隣接して設けられてもよい。軸受温度測定装置30は、軸受9の温度を測定する。軸受温度測定装置30は、測定した温度を診断装置20に送信し得る。
【0142】
図12は、軸受9の温度の時間推移を表すグラフの例を示す。例として、オフィスビルに設けられたエレベーターシステムにおける軸受9の温度の時間推移が示される。縦軸は、軸受温度測定装置30が測定した軸受9の軸受温度である。横軸は、時間である。横軸には、1週間の期間が示される。
【0143】
例えば、平日のオフィスビルでは、時刻7:00から時刻18:00までの時間帯で巻上機5の稼働率が高い。稼働率と対応して、軸受温度が上昇または下降する。例えば、平日において、軸受9の温度は、時刻7:00ごろから軸受温度が上昇する傾向がある。軸受温度は、時刻18:00ごろまで上がり続ける。その後は、稼働率が急激に下がるため、軸受温度は、下降し、次の日の7:00ごろまで下がり続ける。軸受温度は、このような周期で上昇および下降を繰り返す。
【0144】
休日のオフィスビルにおいても、平日と同様の周期で軸受温度が変化する。ただし、休日のオフィスビルでは、平日よりも稼働率が全体的に低いため、休日の軸受温度の最高値は、平日の軸受温度の最高値よりも低い。
【0145】
なお、商業施設、居住用のマンション、等の設置場所に応じて、軸受温度の変化の傾向はそれぞれ異なる。また、外気温の影響によって、軸受温度の値は、季節によって異なる。
【0146】
軸受温度が上昇すると、軸受9が膨張する。この際、回転軸体8の温度は、軸受9と共に上昇する。回転軸体8は、軸受9と共に膨張する。このため、軸受温度は、軸受9に発生する負荷荷重に影響を与える。
【0147】
次に、
図13を用いて実施の形態3における診断システムを説明する。
図13は実施の形態3における診断装置のブロック図である。なお、
図13では巻上機5の図示は省略される。
【0148】
実施の形態3において、診断システムは、軸受温度測定装置30を更に含む。
図13に示されるように、診断装置20は、軸受温度測定装置30から軸受温度の情報を取得する。
【0149】
実施の形態3の記憶部21が記憶する負荷荷重の関数は、軸変位量hと軸受温度との関数である。
【0150】
判定部26は、負荷荷重の演算を行う際に、軸受温度測定装置30から取得した現在の軸受温度を演算の結果に反映する。具体的には、判定部26は、負荷荷重の関数に、演算部25が演算した軸変位量hと軸受温度測定装置30が測定した軸受温度とを入力することで、負荷荷重の値を演算する。当該負荷荷重の値は、実施の形態1で演算される負荷荷重の値よりも精度が高い。判定部26は、軸受温度によってより精度が向上した負荷荷重の値に基づいて軸受9の異常を判定する。
【0151】
次に、
図14を用いて、実施の形態3における異常診断の第3例を説明する。
図14は実施の形態3における診断装置が行う異常診断の第3例の概要を説明するためのフローチャートである。
【0152】
図14に示されるフローチャートにおいて、ステップS401からステップS404で行われる動作は、
図8のフローチャートのステップS201からステップS204で行われる動作と同様である。
【0153】
ステップS404の動作の後、ステップS405の動作が行われる。ステップS405において、判定部26は、軸受温度測定装置30から軸受温度の情報を取得する。
【0154】
その後、ステップS406の動作が行われる。ステップS406において、判定部26は、ステップS404で演算された軸変位量hと取得した軸受温度とに基づいて負荷荷重を演算する。
【0155】
その後、ステップS407の動作が行われる。ステップS407において、判定部26は、負荷荷重の値に基づいて軸受9の異常を判定する。具体的には、判定部26は、演算した負荷荷重の値が規定の閾値を超えたか否かを判定する。
【0156】
ステップS407で、負荷荷重の値が規定の閾値を超えない場合、ステップS408の動作が行われる。ステップS408において、判定部26は、軸受9に異常が無い、即ち正常であると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常が無い旨および演算した負荷荷重の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0157】
ステップS407で、負荷荷重の値が規定の閾値を超えた場合、ステップS409の動作が行われる。ステップS409において、判定部26は、軸受9に異常があると判定する。判定部26は、診断結果の情報として異常がある旨および演算した負荷荷重の値を含む異常度の情報を作成する。診断装置20は、診断結果の情報を監視装置16に送信する。診断装置20は、異常診断を終了する。
【0158】
ステップS408の動作またはステップS409の動作が行われた後、ステップS410の動作が行われる。ステップS410において、監視装置16は、診断結果の情報を情報センター装置17に送信する。情報センター装置17は、診断結果の情報を保守会社の作業員等に対して表示する。情報センター装置17は、診断結果の情報に基づいて、当該エレベーターシステムの保守点検計画を作成する。この際、情報センター装置17は、軸受9の寿命診断を行ってもよい。
【0159】
以上で説明した実施の形態3によれば、診断装置20は、軸受9の温度の測定値と軸変位量とに基づいて負荷荷重を演算する。このため、異常診断の精度を向上させることができる。
【0160】
なお、判定部26は、軸受9の温度の測定値に基づいて軸受9の膨張量を推定してもよい。この場合、判定部26は、演算部25に演算された軸変位量の値から回転軸体8および軸受9の膨張量の影響を除いた補正軸変位量を演算し、当該補正軸変位量に基づいて負荷荷重を演算してもよい。このため、軸受9の内部形状の状態をより高精度に判定することができる。
【0161】
なお、実施の形態1から実施の形態3において、軸変位量の基準値は、回転角度の合計値が算出された時間帯に応じて選択されてもよい。
図12に示されるように、軸受9の温度は、朝方に最も低い。即ち、朝方に回転角度の合計値が算出され、演算された軸変位量の値は、回転軸体8および軸受9の膨張量が最も小さい状態の軸変位量の値である。判定部26は、朝方に演算された軸変位量の値を軸変位量の基準値として設定してもよい。判定部26は、夕方に演算された軸変位量の値から当該基準値を減算することで、回転軸体8および軸受9の膨張量を精度よく演算することができる。
【0162】
実施の形態4.
図15は実施の形態4における診断装置が適用される保守管理システムのブロック図である。なお、実施の形態1から実施の形態3の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0163】
実施の形態4の保守管理システムにおいて、教師ありの機械学習によって軸変位量を推論する学習済モデルが作成される。軸変位量は、当該学習モデルによって推論される。診断装置20は、推論された軸変位量に基づいて軸受9の異常を診断する。
【0164】
図15に示されるように、情報センター装置17は、学習装置40を更に備える。学習装置40は、学習情報取得部41とモデル生成部42とを備える。
【0165】
学習情報取得部41は、学習を行うための学習用情報を、監視装置16を介して、制御盤15および診断装置20から取得する。学習情報取得部41は、取得した情報を蓄積する。学習用情報は、かご12が特定の区間を移動した際に回転角算出部24が算出した回転角度の合計値と、当該回転角度の合計値に基づいて演算部25が演算した軸変位量と、当該特定の区間の出発階と、当該特定の区間の到着階と、当該特定の区間を移動したかご12の積載重量と、が対応付けられた情報である。
【0166】
なお、出力の精度を向上させるために、学習用情報には、更に多くの情報が含まれていてもよい。具体的には、学習用情報には、回転角度の合計値が算出された日付、曜日、および時間帯のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。学習用情報には、回転角度の合計値が算出された日における、1日の使用頻度、1日の累積走行距離、1日の累積回転角度のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。学習用情報には、回転角度の合計値が算出された日の巻上機の温度および機械室の温度の少なくとも一方が含まれていてもよい。学習用情報には、診断装置20が演算した軸変位量と実際に変位測定機器によって測定された軸変位量とが対応付けられた情報が含まれていてもよい。
【0167】
モデル生成部42は、学習情報取得部41が取得した学習用情報に基づいて学習を行い、学習済モデルを生成する。この際、モデル生成部42は、一般的に用いられる教師あり機械学習の手法を利用して学習を行う。モデル生成部42は、生成した学習済モデルの情報を記憶する。モデル生成部42は、生成した学習済モデルの情報を送信する。
【0168】
学習済モデルは、かご12が特定の区間を移動した際に回転角算出部24が算出した回転角度の合計値と、当該特定の区間の出発階と、当該特定の区間の到着階と、当該特定の区間を移動したかご12の積載重量と、を入力情報とするモデルである。学習済モデルは、入力情報に対して、軸変位量の推論値を出力情報とするモデルである。即ち、学習済モデルは、演算部25の代わりとなって軸変位量を出力するモデルである。
【0169】
診断装置20は、モデル記憶部43と情報取得部44と推論部45とを更に備える。
【0170】
モデル記憶部43は、学習済モデルの情報を記憶する。例えば、モデル記憶部43は、モデル生成部42から学習済モデルの情報を受信し、最新の学習済モデルの情報を記憶する。
【0171】
情報取得部44は、学習済モデルに入力する情報を取得する。具体的には、情報取得部44は、入力情報に対応する情報を制御盤15および回転角算出部24から取得し、対応付ける。例えば、情報取得部44は、診断運転が行われた際に、入力情報に対応する情報を取得する。
【0172】
なお、学習済モデルが更に多くの入力情報に対応する場合、情報取得部44は、当該対応する入力情報を取得する。
【0173】
推論部45は、異常診断において、モデル記憶部43に記憶された学習済モデルを用いて、情報取得部44が取得した情報から軸変位量を推論する。
【0174】
判定部26は、異常診断の第2例または第3例において、推論部45が推論した軸変位量に基づいて、軸受9の異常を診断する。即ち、判定部26は、演算部25が演算した軸変位量の代わりに、推論部45が推論した軸変位量を用いて異常診断を行う。この際、判定部26は、推論部45が推論した軸変位量に基づいて、異常度の情報を作成する。
【0175】
なお、判定部26は、異常診断の第2例または第3例において、更に演算部25が演算した軸変位量を用いて異常診断を行ってもよい。この場合、判定部26は、推論部45に推論された軸変位量に基づく異常度と演算部25に演算された軸変位量に基づく異常度とを比較し、その結果を異常診断の診断結果として出力してもよい。また、判定部26は、演算部25に演算された軸変位量に基づく異常度を推論部45に推論された軸変位量に基づく異常度で補正し、その結果を異常診断の診断結果として出力してもよい。
【0176】
次に、
図16を用いて、学習装置40の動作を説明する。
図16は実施の形態4における診断装置が適用される学習装置が行う学習の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0177】
図16に示されるように、ステップS501において、学習装置40の学習情報取得部41は、学習用情報を取得し、蓄積する。なお、学習情報取得部41は、学習の動作に関わらず、任意のタイミングで学習用情報を取得し、蓄積していてもよい。
【0178】
その後、ステップS502の動作が行われる。ステップS502において、学習装置40のモデル生成部42は、学習用情報を用いて教師あり学習の処理を行い、学習済モデルを生成する。
【0179】
その後、ステップS503の動作が行われる。ステップS503において、モデル生成部42は、学習済モデルを記憶する。モデル生成部42は、監視装置16を介して、学習済モデルを診断装置20に送信する。
【0180】
その後、学習装置40は、学習の動作を終了する。
【0181】
なお、学習装置40の学習の動作は、任意のタイミングで行われればよい。具体的には、学習の動作は、規定の周期ごとに行われる。学習の動作は、保守点検でシーブ径または主ロープ11の径が検査された後、検査後に蓄積された学習用情報に基づいて行われる。
【0182】
なお、学習の動作で用いられる学習用情報は、回転角度の合計値が算出された時間帯に応じて区別されて用いられてもよい。具体的には、例えば、学習情報取得部41は、軸受9の温度が低い時間帯である朝方に取得した学習用情報を第1学習用情報として蓄積する。学習情報取得部41は、軸受9の温度が朝方よりも高い時間帯である昼に取得した学習用情報を第2学習用情報として蓄積する。この場合、モデル生成部42は、第1学習用情報に基づいた学習済モデルと第2学習用情報に基づいた学習済モデルとを区別して作成する。モデル生成部42は、第1学習用情報に基づいて作成した学習済モデルと第2学習用情報に基づいて作成した学習済モデルとを区別して管理する。
【0183】
次に、
図17を用いて、診断装置20が推論する動作を説明する。
図17は実施の形態4における診断装置が行う推論の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0184】
診断装置20は、異常診断の際に軸変位量の推論を行う。例えば、診断運転が行われた後、診断装置20は、軸変位量の推論を行う。
【0185】
ステップS601において、情報取得部44は、学習済モデルに入力する入力情報を取得する。
【0186】
その後、ステップS602の動作が行われる。ステップS602において、推論部45は、入力情報を学習済モデルに入力する。推論部45は、学習済モデルの出力処理を行う。
【0187】
その後、ステップS603の動作が行われる。ステップS603において、推論部45は、学習済モデルに基づいて軸変位量を推論し、出力情報として出力する。
【0188】
その後、ステップS604の動作が行われる。ステップS604において、判定部26は、推論部45が出力した軸変位量に基づいて、軸受9の異常を判定する。
【0189】
診断装置20は、推論の動作を完了する。その後、診断装置20は、異常診断を継続する。
【0190】
以上で説明した実施の形態4によれば、保守管理システムは、回転角算出部24と演算部25と学習情報取得部41とモデル生成部42とを備える。保守管理システムは、回転角算出部24が算出した第1綱車7の回転角度の合計値等の情報を入力することで、軸変位量を出力する学習済モデルを作成する。例えば、出力された軸変位量は、軸受9の異常の判定に用いられ得る。即ち、回転角度の合計値に基づいて軸受9の異常が判定され得る。このため、保守管理システムは、簡易な構成で軸受9の異常を判定することができる。
【0191】
また、診断装置20は、モデル記憶部43と推論部45とを備える。診断装置20は、学習済モデルに基づいて、回転角度の合計値から軸変位量を推論する。診断装置20は、推論した軸変位量から軸受9の異常を判定する。このため、簡易な構成で軸受9の異常を判定することができる。また、軸変位量を都度演算する必要がないため、診断装置20の演算量を低減することができる。また、診断装置20が学習済モデルに基づく推論を行うため、情報センター装置17等で推論を行う場合と比べて、エッジ処理等を行うことができ、より精度よく推論を行うことができる。
【0192】
なお、学習済モデルは、軸変位量でなく、巻付角の値を出力するモデルであってもよい。この場合、推論部45は、異常診断において、モデル記憶部43に記憶された学習済モデルを用いて、情報取得部44が取得した情報から巻付角の値を推論する。
【0193】
なお、図示されないが、学習装置40の各機能は、診断装置20の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。また、学習装置40の各機能を診断装置20が備えていてもよい。また、学習装置40の各機能は、情報センター装置17でなく、クラウドサーバ等に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0194】
以上のように、本開示に係る診断装置は、エレベーターシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0195】
1 昇降路、 2 建築物、 3 機械室、 4,4a,4b 乗場、 5 巻上機、 6 電動機、 7 第1綱車、 7a ロープ溝、 7b 底部、 8 回転軸体、 9 軸受、 10 第2綱車、 11 主ロープ、 12 かご、 12a かご枠、 12b かご室、 12c 秤装置、 13 釣合おもり、 14 回転角検出装置、 15 制御盤、 16 監視装置、 17 情報センター装置、 20 診断装置、 21 記憶部、 22 通信部、 23 診断運転指令部、 24 回転角算出部、 25 演算部、 26 判定部、 30 軸受温度測定装置、 40 学習装置、 41 学習情報取得部、 42 モデル生成部、 43 モデル記憶部、 44 情報取得部、 45 推論部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア、 A 回転軸