(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】HMI画面設計装置及びSCADAウェブHMIシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04817 20220101AFI20241126BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20241126BHJP
G05B 23/02 20060101ALN20241126BHJP
G06F 8/34 20180101ALN20241126BHJP
【FI】
G06F3/04817
G06F3/14 310C
G05B23/02 301Z
G06F8/34
(21)【出願番号】P 2024532170
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2023004838
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】野島 章
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸夫
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/003818(WO,A1)
【文献】特開平06-131168(JP,A)
【文献】特開2004-126971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/04817
G06F 3/14
G05B 23/02
G06F 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCADAウェブHMIシステムのウェブブラウザ上で動的に表示するHMI画面を作成するHMI画面設計装置において、
前記HMI画面に配置され
てオペレータにより操作される複数の
操作ボタンまたは操作スイッチが選択可能に配列されるステンシルエリアと、前記ステンシルエリア上で選択された
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチを配置することで図面が描かれる製図エリアとを有する製図処理部と、
複数の
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチが配置された前記図面のデータである図面データを生成する図面データ生成処理部と、を備え、
前記製図処理部は、前記図面上に配置された複数の
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチを相互に排他的にグループ化する排他的グループ化手段を有するHMI画面設計装置。
【請求項2】
前記製図処理部は、前記排他的グループ化手段によりグループ化された複数の
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチの相互の排他的関係または非排他的関係を規定する相互関係規定手段をさらに有する請求項1に記載のHMI画面設計装置。
【請求項3】
前記相互関係規定手段は、テーブル上で前記排他的関係または前記非排他的関係を規定する請求項2に記載のHMI画面設計装置。
【請求項4】
前記ステンシルエリアには、前記HMI画面上で選択される
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチを実行するための実行ボタンがさらに選択可能に配列され、前記ステンシルエリア上で選択された
前記操作ボタンまたは前記操作スイッチ及び前記実行ボタンを前記製図エリアに配置することで前記図面が描かれる請求項1に記載のHMI画面設計装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のHMI画面設計装置と、
前記HMI画面設計装置の前記図面データ生成処理部で生成された前記図面データを読み込むことで、ウェブブラウザ上に前記HMI画面を表示するSCADAウェブHMI実行装置と、を備えるSCADAウェブHMIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCADAウェブHMIシステムのウェブブラウザ上で動的に表示するHMI画面を作成するHMI画面設計装置、及びこのHMI画面設計装置を備えるSCADAウェブHMIシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、社会インフラシステムを監視制御する仕組みとして知られている。社会インフラシステムは、例えば、鉄鋼圧延システム、電力送変電システム、上下水道処理システム、ビル管理システム、道路システムを含む。SCADAは、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行う産業制御システムの一種である。SCADAでは、システムの処理性能に合わせた即応性(リアルタイム性)が必要である。
【0003】
SCADAは、サブシステムとして、HMI(Human Machine Interface)と、監視制御システムと、遠方入出力装置(Remote Input Output:RIO)を備える。
【0004】
HMIは、対象プロセス(監視対象装置)のデータや操作ボタン等をHMI画面上に表示し、オペレータがプロセスを監視したり、操作ボタンを操作したりすることで、対象プロセスを制御する機構である。監視制御システムは、プロセス上の信号データ(PLC信号)を収集し、プロセスに対して制御コマンドを送る。監視制御システムは、PLC(Programable Logic Controller)によって構成される。
【0005】
汎用SCADAでは、HMI画面設計者は、スクリプトプログラム(以下「スクリプト」という)によりHMI画面を作成していた。HMI画面の作成が完了した後、社会インフラシステムの要求に応じて、HMI画面に表示される操作ボタン等に対応する用品の種類、数、配置等を変更する場合がある。この場合、プロセスエンジニア等のユーザがスクリプトを作り変えることで、HMI画面を変更していたが、SCADAで動作する他のプログラムとの互換性が低く、HMI画面の品質低下を招来する。
【0006】
例えば、下記特許文献1に開示されたSCADAウェブHMIシステムは、HMI画面として用いられる図面を作成するエンジニアリングツールを有する設計装置を備える。エンジニアリングツールが表示する図面作成画面には、ステンシルエリアと製図エリアが並べて表示される。ステンシルエリアには、図面を作成するために必要な複数種の操作要素が、HMI画面設計者により選択可能に配列されている。操作要素は、操作用品または操作部品と称されることもある。製図エリアには、HMI画面設計者によって選択されたステンシルエリア上の操作要素を任意の位置に配置可能である(ドラッグアンドドロップ)。これによれば、汎用SCADAの如くスクリプトを作成する必要がないため、HMI画面の品質が低下することなく、HMI画面の設計効率を向上できる。
【0007】
ところで、HMI画面上に複数の操作要素を表示するのに際しては、例えば、これら複数の操作要素が相反する動作を行う場合がある。相反する動作とは、例えば、バルブの開操作と閉操作、モータの駆動と停止、モータの正転と逆転等のように、両立し得ない動作である。ここで、監視対象装置に対する誤操作を防止する観点から、例えば、HMI画面上で、オペレータによる2アクション操作を採用することが考えられる。2アクション操作とは、HMI画面上に複数の操作要素と共に実行ボタンを表示しておき、複数の操作要素の中から少なくとも1つの操作要素を選択した後に、実行ボタンを押操作することである。このような2アクション操作を採用する場合、実行ボタンを押操作する前の状態(EXE待ち状態)で、HMI画面上に複数の操作要素を排他的に表示する必要がある。つまり、オペレータがHMI画面上で複数の操作要素の中から一の操作要素を選択すると、選択した一の操作要素と相反する他の操作要素を選択できないように表示する必要がある。排他的に表示する複数の操作要素をステンシルエリアに予め配列しておけば、HMI画面設計者により選択可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然し、排他的に表示する操作要素の数、隣接する操作要素の間の間隔等をパラメータとすると、HMI画面上での複数の操作要素の表示態様は多様となる。このため、排他的に表示する複数の操作要素の全ての表示態様をステンシルエリアに配列することは困難である。また、汎用SCADAの如くスクリプトを作り変えることで、如何なる表示態様も実現できるものの、上述の如く品質低下を招来する。
【0010】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものである。本開示の目的は、HMI画面の品質を低下させることなく、複数の操作ボタンまたは操作スイッチを排他的に且つ高い自由度で配置可能なHMI画面を作成することができるHMI画面設計装置、及びこのHMI画面設計装置を備えるSCADAウェブHMIシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点は、SCADAウェブHMIシステムのウェブブラウザ上で動的に表示するHMI画面を作成するHMI画面設計装置に関連する。HMI画面設計装置は、HMI画面に配置されてオペレータにより操作される複数の操作ボタンまたは操作スイッチが選択可能に配列されるステンシルエリアと、ステンシルエリア上で選択された操作ボタンまたは操作スイッチを配置することで図面が描かれる製図エリアとを有する製図処理部と、複数の操作ボタンまたは操作スイッチが配置された図面のデータである図面データを生成する図面データ生成処理部と、を備える。製図処理部は、図面上に配置された複数の操作ボタンまたは操作スイッチを相互に排他的にグループ化する排他的グループ化手段を有する。
【0012】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。製図処理部は、排他的グループ化手段によりグループ化された複数の操作ボタンまたは操作スイッチの相互の排他的関係または非排他的関係を規定する相互関係規定手段をさらに有する。
【0013】
第3の観点は、第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。相互関係規定手段は、テーブル上で排他的関係または非排他的関係を規定する。
【0014】
第4の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。ステンシルエリアには、HMI画面上で選択される操作ボタンまたは操作スイッチを実行するための実行ボタンがさらに選択可能に配列され、ステンシルエリア上で選択された操作ボタンまたは操作スイッチ及び実行ボタンを製図エリアに配置することで図面が描かれる。これによれば、操作ボタンまたは操作スイッチ及び実行ボタンが配置されたHMI画面を作成することができるため、HMI画面上でオペレータによる2アクション操作が採用される場合に対応することができる。
【0015】
第5の観点は、SCADAウェブHMIシステムに関連する。SCADAウェブHMIシステムは、第1の観点から第4の観点のいずれか1つに記載のHMI画面設計装置と、HMI画面設計装置の図面データ生成処理部で生成された図面データを読み込むことで、ウェブブラウザ上にHMI画面を表示するSCADAウェブHMI実行装置、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、製図処理部が排他的グループ化手段を備えるため、複数の操作要素を排他的に且つ高い自由度で配置可能なHMI画面を作成することができる。しかも、汎用SCADAの如くスクリプトによりHMI画面を作成しないため、ウェブブラウザ上に表示されるHMI画面の品質を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態によるHMI画面設計装置を備えるSCADAウェブHMIシステムの構成を示す図である。
【
図2】SCADAウェブHMI実行装置とHMI画面設計装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】HMI画面設計装置のエンジニアリングツールとウェブブラウザにおいて実行される主要な処理について説明するためのブロック図である。
【
図4】エンジニアリングツールが表示する図面作成画面の第1例を示す図である。
【
図5】エンジニアリングツールが表示する図面作成画面の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
1-1.全体システム
図1は、SCADAウェブHMIシステムの構成を示す図である。SCADAウェブHMIシステムは、HMI開発環境であるHMI画面設計装置1を備える。SCADAウェブHMIシステムは、サブシステムとして、SCADAウェブHMI実行装置3と、監視制御システム4と、通信基盤5と、RIO6を備える。監視制御システム4、通信基盤5、RIO6に関する説明は、背景技術で述べた通りであるため省略する。監視制御システム4は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を含む。監視対象装置7は、監視制御対象のプラントを構成するセンサ、アクチュエータなどである。
【0020】
HMI画面設計装置1は、エンジニアリングツール10を実行する。エンジニアリングツール10は、高度な図面作成・編集機能と、図面データをSVG(Scalable Vector Graphics)形式で保存できる機能と、拡張機能とを有する。図面編集機能とSVGデータ保存機能は、一例として、Microsoft Visio(登録商標)で実現される。エンジニアリングツール10は、HMI実行環境であるSCADAウェブHMI実行装置3を機能させるために必要なウェブHMIデータ2とデバイスリスト23とを生成する。HMI画面設計装置1には、エンジニアリングツール10を実行するためのユーザインタフェースとしてGUIが実装されている。HMI画面設計装置1の詳細については後述する。
【0021】
SCADAウェブHMI実行装置3(HMIサブシステム)は、ウェブサーバ31とウェブブラウザ32とを備える。SCADAウェブHMI実行装置3は、ウェブサーバ31上で動作するHMIサーバランタイム311とウェブブラウザ32上で動作するHMIウェブランタイム321とが協調して、HMIサブシステムとして動作する。
【0022】
ウェブブラウザ32は、プラントを監視するための画面であるHMI画面32aを表示する(
図2参照)。HMI画面32aには、図示省略するが、プラントの状態を表示する部品が配置されると共に、監視制御システム4を介して監視対象装置7を操作するための操作要素が配置される。ウェブサーバ31は、ウェブブラウザ32と監視制御システム4と通信する。例えば、ウェブサーバ31は、監視制御システム4から受信したPLC信号がウェブブラウザ32に現在表示されているHMI画面32aに関する信号である場合に、当該ウェブブラウザ32へ当該PLC信号を送信する。これにより、SCADAウェブHMI実行装置3は、監視制御システム4から受信したPLC信号の値に応じてHMI画面32aに配置された部品の外観を変化させる。SCADAウェブHMI実行装置3の詳細については後述する。
【0023】
SCADAウェブHMIシステムの主要部のハードウェア構成について
図2を参照して説明する。
図2は、SCADAウェブHMIシステムが有するハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0024】
図3に示すHMI画面設計装置1の各処理は、
図2に示す処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ1aと、メモリ1bと、ディスプレイ1cと、入出力インタフェース1dとが接続して構成されている。入出力インタフェース1dは、キーボード、マウス等の入力デバイスと、ウェブHMIデータ2及びデバイスリスト23をファイル出力可能な出力デバイスである。プロセッサ1aは、メモリ1bに記憶された各種プログラムを実行することにより、HMI画面設計装置1の各処理を実現する。
【0025】
図3に示すSCADAウェブHMI実行装置3の各処理は、
図2に示す処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ3aと、メモリ3bと、ディスプレイ3cと、入力インタフェース3dと、ネットワークインタフェース3eとが接続して構成されている。入力インタフェース3dは、キーボード、マウス等の入力デバイスと、ウェブHMIデータ2及びデバイスリスト23を読込可能なデバイスとを含む。ディスプレイ3cには、
HMI画面設計装置1により後述の如く作成されるHMI画面32aが表示される。HMI画面32aは、後述する製図エリア111に描かれる図面に対応する。ネットワークインタフェース3eは、監視制御システム4と接続し、信号データ及び制御コマンドを送受信可能なデバイスである。また、処理回路は、プロセッサ3aは、メモリ3bに記憶された各種プログラムを実行することにより、SCADAウェブHMI実行装置3の各処理を実現する
。
【0026】
1-2.エンジニアリングツールによる処理
図3は、エンジニアリングツール10とウェブブラウザ32において実行される主要な処理について説明するためのブロック図である。エンジニアリングツール10において実行される主要な処理は、製図処理部11による製図処理、排他的グループ化手段11aによる排他的グループ化処理、相互関係規定手段11bによる相互関係規定処理、ウェブHMIデータ生成処理部12によるウェブHMIデータ生成処理、及びデバイスリスト生成処理部13によるデバイスリスト生成処理等である。以下、エンジニアリングツール10によるこれらの処理の内容について説明する。
【0027】
1-
2-1.製図処理
図4を参照して、製図処理部11により実行される製図処理について、具体的には、オペレータによる2アクション操作に対応するHMI画面32aとして用いられる図面を作成するための製図処理について説明する。
図4は、エンジニアリングツール10が表示する図面作成画面の第1例を示す図である。
図5は、エンジニアリングツール10が表示する図面作成画面の第2例を示す図である。図面作成画面は、
図2に示すディスプレイ1c上に表示される。
【0028】
製図処理では、図面作成画面に、図面を作成するための操作要素が配列されたステンシルエリア110と、HMI画面用の図面が描かれる製図エリア111とが並べて表示される。操作要素とは、操作用品または操作部品と称されることもある、図面を作成するために必要な原型(マスターシェイプ)である。製図処理では、入出力インタフェース1d(
図3参照)を用いて、HMI画面設計者により選択されたステンシルエリア110上の操作要素を、製図エリア111の図面上に配置することができる。
【0029】
図4及び
図5に示す例では、ステンシルエリア110には、図示簡略化のため、複数種の操作要素PL1A,PL1,PL2,・・・が配列されている。ステンシルエリア110には、上述した2アクション操作に対応するため、これらの操作要素と共に、実行ボタンEXEが配列されている。なお、操作要素PL2は、2つの操作要素PL1が左右方向に連設されたものである。これらの操作要素は、HMI画面32aにおいてオペレータにより操作される操作ボタンまたは操作スイッチに対応する。ただし、操作要素の種類はこれに限定されるものではなく、ステンシルエリア110には、3つの操作要素PL1が連設された操作要素、4つの操作要素PL1が連設された操作要素、操作要素PL1A,PL1が連設された操作要素のように、複数種の操作要素が配列され得る。
【0030】
HMI画面設計者は、
図4中または
図5中のステンシルエリア110上の操作要素及び実行ボタンEXEをコピーして製図エリア111上の任意の位置に配置可能である(ドラッグアンドドロップ)。製図エリア111に操作要素及び実行ボタンが配置されることにより、HMI画面32aに対応する図面が作成される。
図4中の操作要素PL1A_1,PL1_2、及び、
図5中の操作要素PL2_1,PL2_2は、HMI画面設計者がステンシルエリア110から製図エリア111上にドラッグアンドドロップしたものである。なお、「_1」及び「_2」は、製図エリア111上で操作要素を識別する識別子である操作要素番号である。操作要素番号は、用品番号とも称される。また、
図4及び
図5中の実行ボタンEXEは、操作要素と同様に、HMI画面設計者がステンシルエリア110から製図エリア111上にドラッグアンドドロップしたものである。
【0031】
1-
2-1-1.排他的グループ化処理
製図処理部11は排他的グループ化手段11aを有する。排他的グループ化手段11aにより排他的グループ化処理が実行される。
図4に示す第1例では、排他的グループ化手段11aは、製図エリア111の図面上に配置された複数(本実施の形態では2つ)の操作要素PL1A_1,PL1_2を相互に排他的にグループ化する。
図5に示す第2例では、排他的グループ化手段11aは、製図エリア111の図面上に配置された複数の操作要素PL2_1,PL2_2を相互に排他的にグループ化する。排他的グループ化する操作要素の選択は、例えば、
図4中及び
図5中に一点鎖線で示す範囲指定を用いることができる。例えば、入出力インタフェース1d(図
2参照)を用いて、HMI画面設計者により選択された図面上の操作要素PL1A_1,PL1_2、または、操作要素PL2_1,PL2_2に排他的グループの特性を付与すると、排他的グループ番号Ge1,Ge2が付与される。第1例において、オペレータがHMI画面32a上に表示される操作要素PL1A_1,PL1_2の何れか一方(例えばPL1A_1)を選択すると、その選択した状態(EXE待ち状態)で、何れか他方(例えばPL1_2)を選択できないように表示することができる。オペレータは、HMI画面32a上で排他的グループ化された操作要素PL1A_1,PL1_2の何れか一方を選択した後、HMI画面32a上に表示される実行ボタンEXEを押操作することで、選択された操作要素に対応する操作が監視対象装置7に対して行われる。即ち、HMI画面32a上でオペレータによる2アクション操作が可能となる。このような2アクション操作を採用することで、監視対象装置7に対する誤操作を防止することができる。
【0032】
1-
2-1-2.相互関係規定処理
製図処理部11は相互関係規定手段11bを有する。相互関係規定手段11bにより相互関係規定処理が実行される。
図5に示す第2例においては、排他的グループ化された複数の操作要素PL2_1,PL2_2の相互の排他的関係または非排他的関係を規定する。相互関係規定手段11bは、排他的グループ化されたときにテーブルTbを表示し、HMI画面設計者の入力により排他的関係または非排他的関係が規定される。テーブルTbにおいて「Y(排他)」と示すように、HMI画面32a上で操作要素PL2_1が選択された場合には、操作要素PL2_
2が選択できないように表示される。一方、「N(非排他)」と示すように、HMI画面32a上で操作要素PL2_2が選択された場合には、操作要素PL2_1を選択できるように表示される。このように、排他的グループ化された操作要素PL2_1,PL2_2に対して上位概念及び下位概念のような方向付けを行うことが可能となる。結果として、HMI画面32aの設計自由度が向上する。
【0033】
1-
2-2.ウェブHMIデータ生成処理
再び
図3を参照して、図面データ生成処理部としてのウェブHMIデータ生成処理部12により実行されるウェブHMIデータ生成処理について説明する。ウェブHMIデータ生成処理では、画面データとして、ウェブHMIデータ2が生成され、出力される。ウェブHMIデータ2は、静的表示属性データ21と、ランタイム属性データ22とを含む。静的表示属性とは、受信したPLC信号の値によらず部品の外観が変わらない情報である。例えば、形、位置、大きさなどの部品の配置情報である。ランタイム属性とは、受信したPLC信号の値によって部品の外観を変えるための情報である。具体的には、色属性やアフィン変換のサブセットの変換の種別およびその変換のパラメータとPLC信号との対応である。
【0034】
静的表示属性データ21は、操作要素(排他的グループ化されたものを含む)の配置情報とアイテム名とを関連付けたデータである。静的表示属性データ21は、SVG(Scalable Vector Graphics)形式のデータであり、SVGエレメントの属性として、操作要素の配置情報を含む。操作要素の配置情報は、具体的には、形、位置、及び大きさ等である。
【0035】
ランタイム属性データ22は、操作要素の表示情報、すなわち、色属性やアフィン変換のサブセットの変換種別およびPLC信号との対応である。ランタイム属性データ22には、図形の変換がアフィン変換のサブセットである行列変換translate(tx、ty)であるという情報が含まれている。また、その行列変換のパラメータtx,tyとPLC信号の対応の情報が含まれている。ウェブブラウザ32上で動作する動的表示処理部36は、この情報に基づきJavaScript(登録商標)プログラムを使って監視制御システム4から受信したPLC信号に応じて操作要素の表示状態を変更させる。
【0036】
このようなウェブHMIデータ2は、上記特許文献1に開示されたものを用いることができるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
1-
2-3.デバイスリスト生成処理
再び
図3を参照して、デバイスリスト生成処理部13により実行されるデバイスリスト生成処理について説明する。デバイスリスト生成処理では、各操作要素について、アイテム名とPLC信号とを関連付けたデータのリストであるデバイスリスト23が生成される。デバイスリスト23には、アイテム名とPLC信号(PLC信号を受信するためのPLCアドレス)とが1対1の関係で関連付けられている。デバイスリストはウェブサーバ31により読み込まれ、ウェブブラウザ32と監視制御システム4との間で信号を送受信するために用いられる。
【0038】
1-
3.SCADAウェブHMI実行装置(HMIサブシステム)
再び
図1を参照して、SCADAウェブHMI実行装置3について説明する。上述のように、SCADAウェブHMI実行装置3は、ウェブサーバ31とウェブブラウザ32とを備える。
【0039】
1-3-1.ウェブサーバ
ウェブサーバ31は、ウェブHMIデータ2とデバイスリスト23とを読み込む。ウェブサーバ31は、ウェブHMIデータ2を読み込み、静的表示属性データ21とランタイム属性データ22とをHMIウェブランタイムコンテンツとして配置する。ウェブサーバ31は、デバイスリスト23を読み込み、ウェブブラウザ32と監視制御システム4との間で信号を送受信可能な状態とする。
【0040】
ウェブサーバ31上で動作するHMIサーバランタイム311の処理は以下の通りである。即ち、アプリケーションサーバを内蔵し、ウェブブラウザ32に対して、HMIウェブランタイムコンテンツを供給する。監視制御システム4と通信し、監視対象装置7からの信号データをHMIウェブランタイム321に送信するとともに、HMIウェブランタイム321からの制御コマンドを監視制御システム4へ送信する。
【0041】
1-3-2.ウェブブラウザ
次に、ウェブブラウザ32の処理について説明する。ウェブブラウザ32は、ウェブHMIデータ読込処理部33によりウェブHMIデータ2(静的表示属性データ21及びランタイム属性データ22)を読み込み、静的表示処理と動的表示処理とを実行することができる。静的表示処理部35により実行される静的表示処理では、ウェブブラウザ32は、ウェブサーバ31からSVG形式の図面データである静的表示属性データ21を読み込み、HMI画面32aを表示する。
【0042】
動的表示処理部36により実行される動的表示処理では、ウェブブラウザ32は、ランタイム属性データ22を読み込む。ランタイム属性データ22に含まれる変換の定義、操作要素のアイテム名及び表示情報が設定パラメータとしてJavaScript(登録商標)プログラムに適用される。これらの情報が設定パラメータとして適用されることで、監視制御システム4からPLC信号処理部34で受信したPLC信号に応じて、HMI画面32aにおける操作要素の表示状態が変更される。
【0043】
本実施の形態によれば、製図処理部11が排他的グループ化手段11aを有することで、製図エリア111の図面上に配置された複数の操作要素を相互に排他的にグループ化することが可能となる。これにより、複数の操作要素を排他的に且つ高い自由度で配置可能なHMI画面を作成することができる。しかも、汎用SCADAの如くスクリプトによりHMI画面を作成しないため、ウェブブラウザ32上に表示されるHMI画面の品質を低下させることもない。
【0044】
また、製図処理部11が相互関係規定手段11bをさらに有することで、排他的グループ化された複数の操作要素の相互の排他的関係または非排他的関係を規定することが可能となる。これにより、他的グループ化された操作要素に対して上位概念及び下位概念のような方向付けを行うことが可能となる。結果として、HMI画面32aの設計自由度が向上する。
【0045】
また、ステンシルエリア110に実行ボタンEXEを選択可能に配列し、ステンシルエリア110上で選択された操作要素及び実行ボタンEXEを配置することで製図エリア111に図面を描くように構成すれば、操作要素及び実行ボタンが配置されたHMI画面32aを作成することができる。これにより、HMI画面32a上でオペレータによる2アクション操作が可能となるため、監視対象装置7に対する誤操作を防止することができる。
【0046】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施形態のシステムにおいては、SVG形式の図面データを用いているが、図面データはこれに限定されるものではない。ウェブブラウザ32がWebGLに対応している場合は、図面データはWebGLに対応する形式であってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、SCADAウェブHMI実行装置3がウェブサーバ31とウェブブラウザ32を備えているが、ウェブサーバ31に複数のクライアント端末を接続し、各クライアント端末のディスプレイにウェブブラウザ32を表示するように構成してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、HMI画面32a上でオペレータによる2アクション操作が行われる場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、HMI画面32a上に実行ボタンが配置されなくてもよく、この場合、操作要素を選択すると、選択した操作要素に対応する操作が監視対象装置7に対して行われるようにすればよい。また、上記実施の形態では、操作要素とは別に実行ボタンEXEをステンシルエリア110に配列しているが、操作要素の1つとして実行ボタンをステンシルエリア110に配列してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…HMI画面設計装置、11…製図処理部、11a…排他的グループ化手段、11b…相互関係規定手段、110…ステンシルエリア、111…製図エリア、12…ウェブHMIデータ生成処理部(図面データ生成処理部)、32…ウェブブラウザ、32a…HMI画面、PL1,PL1A,PL2…操作要素、EXE…実行ボタン
【要約】
HMI画面の品質を低下させることなく、複数の操作要素を排他的に且つ高い自由度で配置可能なHMI画面を作成することができるHMI画面作成装置を提供する。本開示のHMI画面設計装置は、HMI画面に配置される複数の操作要素が選択可能に配列されるステンシルエリアと、ステンシルエリア上で選択された操作要素を配置することで図面が描かれる製図エリアとを有する製図処理部と、複数の操作要素が配置された図面のデータである図面データを生成する図面データ生成処理部と、を備える。製図処理部は、図面上に配置された複数の操作要素を相互に排他的にグループ化する排他的グループ化手段を有する。