(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】屈曲可能なガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241126BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61M25/00 632
A61M25/00 500
A61M25/00 630
A61M25/09 500
A61M25/09 550
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020160680
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-08-01
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01656963(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/125334(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296718(US,A1)
【文献】特開2018-171349(JP,A)
【文献】特開平08-257128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブであって、前記チューブがそれぞれの斜めの近位端
領域及びそれぞれの斜めの遠位端
領域を有する複数のスリットを画定するように成形されることによって、前記チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを含む、チューブを備え、
前記スリットの各々の前記遠位端
領域が、前記スリットのうちの第1の他のスリットの前記近位端
領域と前記スリットのうちの第2の他のスリットの前記近位端
領域との間に収められており、その結果、(i)前記ストリップのうちの1つが、前記スリットの前記遠位端
領域と前記スリットのうちの前記第1の他のスリットの前記近位端
領域との間に配置され、(ii)前記ストリップのうちの別のストリップが、前記スリットの前記遠位端
領域と前記スリットのうちの前記第2の他のスリットの前記近位端
領域との間に配置されて
おり、
前記スリットの前記近位端領域は、前記近位端領域における最遠位端から最近位端に向かって、近位方向に、且つ、前記チューブの前記長手方向軸に対して斜めに延び、前記スリットの前記遠位端領域は、前記遠位端領域における最近位端から最遠位端に向かって、遠位方向に、且つ、前記チューブの前記長手方向軸に対して斜めに延び、
前記スリットの前記近位端領域は、前記近位端領域における前記最遠位端から前記最近位端に向かって、徐々に幅が広がっており、前記スリットの前記遠位端領域は、前記遠位端領域における前記最近位端から前記最遠位端に向かって、徐々に幅が広がっており、
前記スリットの各々が、中間部分を有し、前記スリットの各々の前記中間部分が、前記長手方向軸に対して垂直に延在し、前記スリットの前記近位端領域の前記最遠位端に連結している一端部、及び、前記スリットの前記遠位端領域の前記最近位端に連結している他端部を有しており、前記チューブが、前記ストリップよりも幅広の複数の幅広ストリップを更に備え、前記幅広ストリップの各々が、前記中間部分のうちの連続する2つの間に配置されている、装置。
【請求項2】
前記ストリップのうちの少なくともいくつかが、前記チューブに沿って螺旋状に配列されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スリットの前記近位端
領域及び前記遠位端
領域が、前記長手方向軸に対して5~85度の角度で角度付けされている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スリットの密度が、前記チューブの近位部分よりも前記チューブの遠位部分においてより大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ストリップの各々の幅が、0.0025~0.075mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ストリップの各々の弧長が、前記チューブの外径の0.3~0.9倍である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブの曲げ半径が、前記チューブの外径の半分未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記チューブの壁の厚さが、25~150μm(25~150ミクロン)である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記チューブの外径が、0.305mm~1.016mm(0.012インチ~0.04インチ)である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記チューブの長さが、150~400cmである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
方法であって、
被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブに、前記チューブにそれぞれの斜めの近位端
領域及びそれぞれの斜めの遠位端
領域を有する複数のスリットを形成することによって、前記チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを形成することであって、
前記スリットの各々の前記遠位端
領域が、前記スリットのうちの第1の他のスリットの前記近位端
領域と前記スリットのうちの第2の他のスリットの前記近位端
領域との間に収められており、その結果、(i)前記ストリップのうちの1つが、前記スリットの前記遠位端
領域と前記スリットのうちの前記第1の他のスリットの前記近位端
領域との間に配置され、(ii)前記ストリップのうちの別のストリップが、前記スリットの前記遠位端
領域と前記スリットのうちの前記第2の他のスリットの前記近位端
領域との間に配置される、形成することと、
前記チューブに1つ又は2つ以上の構成要素を挿入することと、を含
み、
前記スリットの前記近位端領域は、前記近位端領域における最遠位端から最近位端に向かって、近位方向に、且つ、前記チューブの前記長手方向軸に対して斜めに延び、前記スリットの前記遠位端領域は、前記遠位端領域における最近位端から最遠位端に向かって、遠位方向に、且つ、前記チューブの前記長手方向軸に対して斜めに延び、
前記スリットの前記近位端領域は、前記近位端領域における前記最遠位端から前記最近位端に向かって、徐々に幅が広がっており、前記スリットの前記遠位端領域は、前記遠位端領域における前記最近位端から前記最遠位端に向かって、徐々に幅が広がっており、
前記スリットの各々が、中間部分を有し、前記スリットの各々の前記中間部分が、前記長手方向軸に対して垂直に延在し、前記スリットの前記近位端領域の前記最遠位端に連結している一端部、及び、前記スリットの前記遠位端領域の前記最近位端に連結している他端部を有しており、前記チューブが、前記ストリップよりも幅広の複数の幅広ストリップを更に備え、前記幅広ストリップの各々が、前記中間部分のうちの連続する2つの間に配置されている、方法。
【請求項12】
前記ストリップを形成することは、前記ストリップのうちの少なくともいくつかが前記チューブに沿って螺旋状に配列されるように、前記ストリップを形成することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記ストリップを形成することは、前記スリットの前記近位端
領域及び前記遠位端
領域が、前記長手方向軸に対して5~85度の角度で角度付けされるように、前記ストリップを形成することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記スリットを形成することは、前記スリットの密度が、前記チューブの近位部分よりも前記チューブの遠位部分においてより大きくなるように、前記スリットを形成することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記ストリップの各々の幅が、0.0025~0.075mmである、請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
前記ストリップの各々の弧長が、前記チューブの外径の0.3~0.9倍である、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスの分野に関し、特に、身体に挿入するためのガイドワイヤ及びカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2011/0130648号には、可撓性の挿入チューブからなる医療用プローブについて記述されており、この挿入チューブは、患者の体腔に挿入するための遠位端と、可撓性の挿入チューブの遠位端に配置され、体腔内の組織と接触させられるように構成された遠位先端部と、を有する。プローブは、遠位先端部を挿入チューブの遠位端に連結する連結部材もまた含み、弾性材の管状部品からなり、管状部品は、部品の長さの一部分に沿って部品の中を通る複数の絡み合った螺旋状の切り込みを有する。
【0003】
米国特許第7,708,704号には、ヒト被験者の身体血管を通って誘導可能な医療器具として使用するか、又はその中に組み込むための構成要素について記載されている。構成要素は、交互の切り込みのある区分及び切り込みのない区分によって画定される断続的な螺旋を有する管状部分を含む。各ブリッジ区分の弧状延長部と、端から端までの様式でブリッジ区分に隣接する切り込み区分との和は、360度の整数係数でも90度の倍数でもない。デバイスは、区分の可撓性を変化させるために、螺旋のピッチが区分ごとに変化する複数の区分を更に含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態に従って、被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブを含む装置が提供される。チューブは、チューブがそれぞれの斜めの近位端及びそれぞれの斜めの遠位端を有する複数のスリットを画定するように成形されることによって、チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを含む。スリットの各々の遠位端は、スリットのうちの第1の他のスリットの近位端とスリットのうちの第2の他のスリットの近位端との間に収められており、その結果、(i)ストリップのうちの1つが、スリットの遠位端とスリットのうちの第1の他のスリットの近位端との間に配置され、(ii)ストリップのうちの別のストリップが、スリットの遠位端とスリットのうちの第2の他のスリットの近位端との間に配置されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、ストリップのうちの少なくともいくつかは、チューブに沿って螺旋状に配列されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、スリットの近位端及び遠位端は、長手方向軸に対して5~85度の角度で角度付けされている。
【0007】
いくつかの実施形態では、スリットの密度は、チューブの近位部分よりもチューブの遠位部分においてより大きい。
【0008】
いくつかの実施形態では、
スリットは、それぞれの中間部分を有し、スリットの各々の中間部分は、長手方向軸に対して垂直であり、スリットの近位端からスリットの遠位端まで延びており、
チューブは、ストリップよりも幅広の複数の幅広ストリップを更に含み、幅広ストリップの各々は、中間部分のうちの連続する2つの間に配置されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、ストリップの各々の幅は、0.0025~0.075mmである。
【0010】
いくつかの実施形態では、ストリップの各々の弧長は、チューブの外径の0.3~0.9倍である。
【0011】
いくつかの実施形態では、近位端のうちの少なくともいくつか及び遠位端のうちのいくつかの各スリット端部は、スリット端部の終端に向かって広がっている。
【0012】
いくつかの実施形態では、チューブの曲げ半径は、チューブの外径の半分未満である。
【0013】
いくつかの実施形態では、チューブの壁の厚さは、25~150ミクロンである。
【0014】
いくつかの実施形態では、チューブの外径は、0.012インチ~0.04インチである。
【0015】
いくつかの実施形態では、チューブの長さは、150~400cmである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブに、チューブにそれぞれの斜めの近位端及びそれぞれの斜めの遠位端を有する複数のスリットを形成することによって、チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを形成することを含む方法が更に提供される。スリットの各々の遠位端は、スリットのうちの第1の他のスリットの近位端とスリットのうちの第2の他のスリットの近位端との間に収められており、その結果、(i)ストリップのうちの1つが、スリットの遠位端とスリットのうちの第1の他のスリットの近位端との間に配置され、(ii)ストリップのうちの別のストリップが、スリットの遠位端とスリットのうちの第2の他のスリットの近位端との間に配置される。本方法は、チューブに1つ又は2つ以上の構成要素を挿入することを更に含む。
【0017】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、外科処置の概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、ガイドワイヤの外側チューブの断面の概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、ガイドワイヤの外側チューブの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概論
典型的には、ガイドワイヤに可撓性を付与するために、ガイドワイヤの製造中にガイドワイヤの外側チューブに複数のスリットが形成される。しかしながら、課題は、ガイドワイヤが屈曲するとき、外側チューブの残りの切り込みのない部分にかけられる曲げ応力が、応力の分布の悪さに起因して、これらの切り込みのない部分に亀裂を生じさせ得ることである。
【0020】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、ガイドワイヤに加えられる曲げ応力がガイドワイヤの外側チューブに亀裂を生じさせないように、1つ又は2つ以上の応力分散機構を有するスリットを提供する。例えば、スリット(又は「スリット端部」)の端部は、ガイドワイヤの長手方向軸に対して斜めに角度付けされてもよく、及び/又はスリット端部のうちの少なくともいくつかの各々は、スリット端部の終端に向かって広がっていてもよい。代替的に又は追加的に、外側チューブの屈曲可能な切り込みのない部分の数は、2つの他のスリットのそれぞれの近位端の間の各スリットの遠位端を収めることによって増加されてもよい。
【0021】
特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、変数は、特定の値の±10%以内であれば、その値に「おおよそ」到達していると言われる。
【0022】
装置の説明
初めに、本発明のいくつかの実施形態による、外科処置の概略図である
図1を参照する。
【0023】
図1は、被験者22の頭蓋血管などの血管から血塊を除去するための処置を示す。この処置の間、医師20は、例えば、被験者の大腿内の動脈を介して、ガイドワイヤ24を被験者22の身体内に挿入する。続いて、医師20は、ガイドワイヤ24の近位端に連結されたガイドワイヤトルカー26を使用して、血塊が位置する標的部位にガイドワイヤを誘導する。手処置中、標的部位は、ディスプレイ27上に表示されてもよい。
【0024】
ガイドワイヤが標的部位に到達した後、医師は、ガイドワイヤを介して1つ又は2つ以上のツールを送達し、次いでツールを使用してその部位で手術を実施する。例えば、医師は、ガイドワイヤを介してマイクロカテーテルを送達し、その後、ガイドワイヤは引き抜かれてもよい。次に、医師は、マイクロカテーテルを通してステント回収器を挿入し、マイクロカテーテル及びステント回収器の両方を血塊内に前進させてもよい。続いて、医師は、マイクロカテーテルを引き抜くことができ、ステント回収器が血塊内で拡張して、血管が広がる。
【0025】
ガイドワイヤ24は、医師によってガイドワイヤに加えられたトルクを遠位に伝達することによってガイドワイヤの誘導を促進する外側チューブを備える。
図2A及び
図2Bを参照して以下で更に説明されるように、ガイドワイヤの外側チューブは、屈曲することによって外側チューブの湾曲を促進する、複数の屈曲可能なストリップを備える。有利には、屈曲可能なストリップは、任意の1つの特定の点における曲げ応力が、外側チューブが亀裂するであろう閾値曲げ応力を超えないように、外側チューブに加えられる曲げ応力を分散するように構成される。したがって、外側チューブは、鋭角にさえも屈曲(又は「湾曲」)し得る。換言すれば、外側チューブの曲げ半径、すなわち、外側チューブが亀裂を伴わずに(又は任意の他の種類の損傷を受けずに)屈曲し得る最小半径は比較的小さく、例えば、チューブの外径の半分以下であってもよい。この可撓性によって、ガイドワイヤは、中大脳動脈のM2領域など、一般に到達することが困難な脳の領域にも誘導され得る。
【0026】
前述の外側チューブに加えて、ガイドワイヤは、例えば、外側チューブ内に配置され得る任意の他の好適な構成要素を備えてもよい。そのような構成要素の例としては、外側チューブを補強するためのコイル、位置追跡システム、光ファイバ構成要素、及び/又は電気信号を搬送するためのワイヤと共に使用するためのセンサ(例えば、電磁センサ)が挙げられる。これらの構成要素は、ガイドワイヤの製造中に外側チューブに挿入されてもよい。
【0027】
図1に示される特定の種類の処置にかかわらず、ガイドワイヤ24は、任意の好適な処置で使用され得ることに留意されたい。ガイドワイヤは、副鼻腔、大静脈、又は別の血管など、身体の任意の適切な部分に挿入されてもよい。更に、任意の好適な医療デバイスがガイドワイヤを介して案内されてもよい。
【0028】
ここで
図2A及び
図2Bを参照するが、
図2A及び
図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ガイドワイヤ24の外側チューブ29の概略図である。
図2Aは、外側チューブ29の近位部分36の一部を拡大し、一方、
図2Bは、外側チューブの遠位部分38の一部を拡大している。
【0029】
外側チューブ29は、内腔を取り囲む円筒形壁25を備え、その内部に、
図1を参照して上述されたように、ガイドワイヤの他の構成要素(例えば、補強コイル)が配置されてもよい。壁25は、金属(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、若しくはチタン)又はポリマーなどの任意の好適な材料で作製されてもよい。典型的には、壁25の厚さは、25~150ミクロンである。更に典型的には、チューブの長さは150~400cmであり、及び/又はチューブの外径は0.012インチ~0.04インチである。
【0030】
外側チューブ29は、複数のスリット(又は「切り込み」)32を画定するように成形される。換言すれば、チューブの壁25にスリット32が形成されている。スリット32によって、チューブは、複数の屈曲可能なストリップ28を備える。より具体的には、以下に更に記載されるように、屈曲可能なストリップ28は、スリット32の端部の間に配置される。屈曲可能なストリップの各々の幅w0は、屈曲可能なストリップが加えられるトルクに応じて屈曲するように、比較的小さい(例えば、0.025~0.1mm)。(ストリップの長さに沿って各ストリップの幅は必ずしも一定ではないことに留意されたい。)
【0031】
スリット32は、レーザー切断、放電加工、従来の機械加工(例えば、フライス加工及び/若しくは旋盤加工)、又は化学エッチングなどの任意の好適な技術を使用して形成されてもよい。典型的には、スリットの密度(すなわち、チューブの単位長さ当たりのスリットの数)、ひいては、チューブの可撓性は、チューブに沿って遠位に移動するにつれて増加する。例えば、
図2A及び
図2Bに示されるように、チューブは、2つの部分、すなわち、チューブに沿ったスリットの密度が第1のより低い値を有する近位部分36と、チューブに沿った密度が第2のより高い値を有する遠位部分38とを備えてもよい。チューブは、それぞれの中間スリット密度値を有し、近位部分36と遠位部分38との間に配置される1つ又は2つ以上の中間部分を更に備えてもよい。例えば、スリットの密度は、チューブの長さにわたって徐々に増加(遠位に移動)することができ、その結果、密度は、例えば、10以上の離散値の連続値を得る。(いくつかの実施形態では、
図2A及び
図2Bに示されるように、チューブの遠位端、及び/又はチューブの近位端は、なんらかのスリットを画定するように成形されていない。)
【0032】
遠位部分38に沿ったスリットの密度がより大きいことに起因して、w0は、チューブの近位部分よりもチューブの遠位部分において小さくなり得る。純粋に例示的な例として、w0は、近位部分において約0.0025インチであり、遠位部分において約0.0015インチであり得る。チューブが1つ又は2つ以上の中間部分を備える実施形態では、w0は、チューブの近位部分と遠位部分との間の任意の数の中間値を得ることができる。
【0033】
チューブに加えられる曲げ応力を分散させ、したがってチューブの亀裂の危険性を低減する補助とするために、スリットの端部、ひいてはチューブの屈曲可能なストリップは、チューブの長手方向軸30に対して斜めに角度付けされ、その結果、屈曲可能なストリップは、屈曲方向と部分的に整列される。換言すれば、各スリットは、スリット端部の各々と長手方向軸30との間の角度θがゼロよりも大きく、かつ90度未満であるという点で、斜めの近位端34及び斜めの遠位端35を有する。例えば、θは、5~85度であり得る。
【0034】
遠位部分38に沿ったスリットの密度がより大きいことに起因して、角度θは、近位部分36よりも遠位部分38においてより大きくなり得る。例えば、角度θは、チューブの近位部分において10~40度であり、チューブの遠位部分において30~60度であり得る。チューブが1つ又は2つ以上の中間部分を備える実施形態では、θは、チューブの近位部分と遠位部分との間の任意の数の中間値を得ることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、チューブ29におけるスリットの数の増加、ひいては屈曲可能なストリップの数の増加を促進するために、スリットの各々の遠位端35(最も遠位の2つのスリットを除く)は、第1の他のスリットの近位端と第2の他のスリットの近位端との間に位置している(又は、「収められている」)。このように収めることによって、1つの屈曲可能なストリップは、スリットの遠位端と第1の他のスリットの近位端との間に配置され、別の屈曲可能なストリップは、スリットの遠位端と第2の他のスリットの近位端との間に配置される。(同等に、最も近位の2つのスリットを除くスリットの各々の近位端は、2つの他のスリットのそれぞれの遠位端の間に収められており、その結果、2つの屈曲可能なストリップは、近位端に対してそれぞれ近位及び遠位に配置されるようになると言うことができる。)
【0036】
例えば、
図2Bは、(i)第1の他のスリット32bの近位端34bと、(ii)第2の他のスリット32cの近位端34cとの間に収められた遠位端35aを有する第1のスリット32aを示す。同様に、スリット32bの遠位端35bは、近位端34cと更に別のスリットの近位端との間に収められている。(明確にするために、曲線40はスリット32bの経路をたどり、曲線40の点線部分は、チューブの遠い側に沿って延びるスリットの部分に対応している。)
【0037】
典型的には、屈曲可能なストリップのうちの少なくともいくつかは、チューブに沿って螺旋状に配列され、すなわち、チューブに沿って延びる仮定的な螺旋状曲線42(
図2A)は、屈曲可能なストリップを通過する。有利には、この構成によって、チューブは、優先的な湾曲の方向を有していない。
【0038】
典型的には、各スリットの角度長(すなわち、スリットによって広がる外側チューブの円周に沿った角度)は、200~480度である。例えば、
図2A及び
図2Bに示されるように、各スリットの角度長は約270度であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、スリット32は、それぞれの中間部分44を有し、各スリットの中間部分44は、長手方向軸30に対して垂直であり、スリットの近位端からスリットの遠位端まで延びている。他の実施形態では、スリット32は中間部分44を有さず、むしろ、スリットは完全に斜めである。
【0040】
典型的には、各スリット端部の角度長φは、20~240度である。φは、典型的には、近位及び遠位スリット端部と同じであるため、φは典型的には(β-γ)/2であり、(i)βはスリットの角度長であり、(ii)γは、スリットが中間部分を含まない場合、中間部分44又はゼロの角度長である。(β及びγは、
図2A及び
図2Bに明示的に示されていない。)
【0041】
遠位部分38に沿ったスリットのより大きな密度に起因して、φはチューブの近位部分よりもチューブの遠位部分において小さくなり得る。例えば、φはチューブの近位部分において80~100度であり得るが、チューブの遠位部分においてわずか50~70度であり得る。あるいは、例えば、φはチューブの近位部分において400~480度であり得るが、チューブの遠位部分においてわずか180~320度であり得る。チューブが1つ又は2つ以上の中間部分を備える実施形態では、φは、チューブの近位部分と遠位部分との間の任意の数の中間値を得ることができる。
【0042】
典型的には、各屈曲可能なストリップの弧長s0は、チューブの外径の0.3~0.9倍である。したがって、例えば、0.012インチ~0.04インチの外径の場合、s0は、0.0036インチ~0.036インチであり得る。s0は、φに関して上述されたように、チューブの近位部分よりもチューブの遠位部分において小さくなり得る。
【0043】
スリット32が中間部分44を有する実施形態では、チューブは、複数の幅広ストリップ46を備え、各幅広ストリップ46は、中間部分44のうちの連続する2つの間に配置されている。幅広ストリップ46は、屈曲可能なストリップよりも幅広であり、したがって、典型的には、屈曲可能なストリップが屈曲するほどには屈曲しない。遠位部分38に沿ったスリットの密度がより大きいことに起因して、各幅広ストリップの幅w1は、近位部分36よりも遠位部分38において小さくなり得る。例えば、w1は、近位部分において約0.007インチであり、遠位部分において約0.002インチであり得る。チューブが1つ又は2つ以上の中間部分を備える実施形態では、w1は、チューブの近位部分と遠位部分との間の任意の数の中間値を得ることができる。
【0044】
典型的には、各スリットの幅w3は、12~75ミクロンである。いくつかの実施形態では、幅w3は、スリット端部のうちの少なくともいくつかに対して非一定である。例えば、近位端34のうちの少なくともいくつか及び遠位端35のうちのいくつかの各スリット端部は、スリット端部の終端に向かって広がっていてもよく、その結果、スリット端部の終端は球根状である。有利には、スリット端部の球根状の形状は、スリット端部に加えられる応力を分散するのに役立つ。いくつかの実施形態では、各スリット端部に沿った幅w3の変化は、スリットの密度がより小さいチューブの近位部分において、チューブの遠位部分よりも大きい。
【0045】
本発明の範囲は、本明細書に記載されるようなスリット及び屈曲可能な部分の形成を、例えば、カテーテル又は引き抜きスネークを含む任意の管状体に形成することを含むことに留意されたい。
【0046】
本発明が、本明細書上に具体的に示されて記載されたものに限定されない点が、当業者により理解されよう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書上に記載されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに、上記の説明を一読すれば当業者には想起されると思われる、従来技術には存在しない特徴の変更例及び改変例を含む。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブであって、前記チューブがそれぞれの斜めの近位端及びそれぞれの斜めの遠位端を有する複数のスリットを画定するように成形されることによって、前記チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを含む、チューブを備え、
前記スリットの各々の前記遠位端が、前記スリットのうちの第1の他のスリットの前記近位端と前記スリットのうちの第2の他のスリットの前記近位端との間に収められており、その結果、(i)前記ストリップのうちの1つが、前記スリットの前記遠位端と前記スリットのうちの前記第1の他のスリットの前記近位端との間に配置され、(ii)前記ストリップのうちの別のストリップが、前記スリットの前記遠位端と前記スリットのうちの前記第2の他のスリットの前記近位端との間に配置されている、装置。
(2) 前記ストリップのうちの少なくともいくつかが、前記チューブに沿って螺旋状に配列されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記スリットの前記近位端及び前記遠位端が、前記長手方向軸に対して5~85度の角度で角度付けされている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記スリットの密度が、前記チューブの近位部分よりも前記チューブの遠位部分においてより大きい、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記スリットが、それぞれの中間部分を有し、前記スリットの各々の前記中間部分が、前記長手方向軸に対して垂直であり、前記スリットの前記近位端から前記スリットの前記遠位端まで延びており、
前記チューブが、前記ストリップよりも幅広の複数の幅広ストリップを更に備え、前記幅広ストリップの各々が、前記中間部分のうちの連続する2つの間に配置されている、実施態様1に記載の装置。
【0048】
(6) 前記ストリップの各々の幅が、0.0025~0.075mmである、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記ストリップの各々の弧長が、前記チューブの外径の0.3~0.9倍である、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記近位端のうちの少なくともいくつか及び前記遠位端のうちのいくつかの各スリット端部が、前記スリット端部の終端に向かって広がっている、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記チューブの曲げ半径が、前記チューブの外径の半分未満である、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記チューブの壁の厚さが、25~150μm(25~150ミクロン)である、実施態様1に記載の装置。
【0049】
(11) 前記チューブの外径が、0.305mm~1.016mm(0.012インチ~0.04インチ)である、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記チューブの長さが、150~400cmである、実施態様1に記載の装置。
(13) 方法であって、
被験者の身体に挿入されるように構成されたチューブに、前記チューブにそれぞれの斜めの近位端及びそれぞれの斜めの遠位端を有する複数のスリットを形成することによって、前記チューブの長手方向軸に対して斜めに角度付けされた複数のストリップを形成することであって、
前記スリットの各々の前記遠位端が、前記スリットのうちの第1の他のスリットの前記近位端と前記スリットのうちの第2の他のスリットの前記近位端との間に収められており、その結果、(i)前記ストリップのうちの1つが、前記スリットの前記遠位端と前記スリットのうちの前記第1の他のスリットの前記近位端との間に配置され、(ii)前記ストリップのうちの別のストリップが、前記スリットの前記遠位端と前記スリットのうちの前記第2の他のスリットの前記近位端との間に配置される、形成することと、
前記チューブに1つ又は2つ以上の構成要素を挿入することと、を含む、方法。
(14) 前記ストリップを形成することは、前記ストリップのうちの少なくともいくつかが前記チューブに沿って螺旋状に配列されるように、前記ストリップを形成することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記ストリップを形成することは、前記スリットの前記近位端及び前記遠位端が、前記長手方向軸に対して5~85度の角度で角度付けされるように、前記ストリップを形成することを含む、実施態様13に記載の方法。
【0050】
(16) 前記スリットを形成することは、前記スリットの密度が、前記チューブの近位部分よりも前記チューブの遠位部分においてより大きくなるように、前記スリットを形成することを含む、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記スリットを形成することは、前記スリットがそれぞれの中間部分を有し、前記スリットの各々の前記中間部分が、前記長手方向軸に対して垂直であり、前記スリットの前記近位端から前記スリットの前記遠位端まで延びるように、かつ、前記チューブが、前記ストリップよりも幅広の複数の幅広ストリップを更に含み、前記幅広ストリップの各々が、前記中間部分のうちの連続する2つの間に配置されるように、前記スリットを形成することを含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記ストリップの各々の幅が、0.0025~0.075mmである、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記ストリップの各々の弧長が、前記チューブの外径の0.3~0.9倍である、実施態様13に記載の方法。
(20) 前記スリットを形成することは、前記近位端のうちの少なくともいくつか及び前記遠位端のうちのいくつかの各スリット端部が、前記スリット端部の終端に向かって広がるように、前記スリットを形成することを含む、実施態様13に記載の方法。