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特許7593549可撓性の耐伸張性機械的解放を有する医療装置送達部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】可撓性の耐伸張性機械的解放を有する医療装置送達部材
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020167536
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2021058586
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】16/592,320
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ロレンツォ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0192162(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083132(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0255290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0058435(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072165(US,A1)
【文献】特許第7508317(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するための送達部材であって、
近位ハイポチューブと、
前記近位ハイポチューブの遠位端から延在する可撓性コイルと、
前記可撓性コイルの遠位端から延在する圧縮可能遠位ハイポチューブと、
前記近位ハイポチューブの近位端から、前記近位ハイポチューブを通って、前記可撓性コイルを通って、前記圧縮可能遠位ハイポチューブを通って、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端まで延在する管腔と、
前記可撓性コイルの半径方向の拡張を阻止するために、前記可撓性コイル沿って延在するスリーブ
前記可撓性コイルの長手方向の伸びを阻止するために、前記近位ハイポチューブに付着された第1の端部を備え、かつ、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端に接近して位置決めされたループ開口部を備えるループワイヤ、を備え
前記管腔を通って延在するプルワイヤを更に備え、
前記ループワイヤ及び前記プルワイヤが、前記植え込み可能医療装置を前記送達部材に固定するように位置決めされ、
前記ループワイヤ及び前記プルワイヤが、前記植え込み可能医療装置を前記送達部材から解放するように移動可能であり、
前記ループワイヤが、耐伸張性であり、
前記植え込み可能医療装置が前記送達部材に固定されているとき、前記ループワイヤが張力下にある、送達部材。
【請求項2】
前記可撓性コイルが、前記近位ハイポチューブよりも可撓性である、請求項1に記載の送達部材。
【請求項3】
前記可撓性コイルが、
前記可撓性コイルの近位端から延在する放射線透過性近位コイルと、
前記可撓性コイル遠位端から延在する放射線透過性遠位コイルと、
前記放射線透過性近位コイルと前記放射線透過性遠位コイルとの間に延在する放射線不透過性中央コイルと、を備える、請求項1に記載の送達部材。
【請求項4】
前記可撓性コイルが、
前記可撓性コイルを形成し、前記管腔の一部分を画定するように巻かれたワイヤを備え、前記ワイヤが0.0203mm0.127mm0.0008インチ0.005インチ)の直径を含む、請求項1に記載の送達部材。
【請求項5】
前記ワイヤが円形の断面を含む、請求項4に記載の送達部材。
【請求項6】
前記圧縮可能遠位ハイポチューブ遠位端から前記可撓性コイルの近位端まで測定可能な遠位部分の長さを更に含み、
前記遠位部分の長さ40cmである、請求項1に記載の送達部材。
【請求項7】
前記スリーブが、前記可撓性コイルの外側表面覆う、請求項1に記載の送達部材。
【請求項8】
前記圧縮可能遠位ハイポチューブが、螺旋状切り込みを備え、
前記植え込み可能医療装置が前記圧縮可能遠位ハイポチューブに固定されているとき、前記圧縮可能遠位ハイポチューブが前記ループワイヤの張力により圧縮されており、
前記圧縮可能遠位ハイポチューブが、前記植え込み可能医療装置を解放するために、前記ループワイヤ及び前記プルワイヤの移動時に減圧するように移動可能である、請求項に記載の送達部材。
【請求項9】
前記ループ開口部が、前記植え込み可能医療装置内の装置開口部を通って延在し、
前記プルワイヤが、前記ループ開口部を通って延在し、
前記プルワイヤが、前記ループ開口部を出るように近位に後退可能であり、
前記ループ開口部は、前記ループ開口部が前記プルワイヤによって塞がれていないときに、前記植え込み可能医療装置内の前記装置開口部を出るように移動可能である、請求項に記載の送達部材。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の送達部材を製造するための方法であって、
前記近位ハイポチューブの遠位端を、前記可撓性コイルの近位端に接続することと、
前記可撓性コイルの遠位端を、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの近位端に接続することと、
前記近位ハイポチューブ、前記可撓性コイル、及び前記圧縮可能遠位ハイポチューブを接続して、前記近位ハイポチューブ、前記可撓性コイル、及び前記圧縮可能遠位ハイポチューブを通って延在する前記管腔を備える前記送達部材を提供することと、
前記可撓性コイルに沿って前記スリーブを位置決めすることと、
前記可撓性コイルの半径方向の拡張を前記スリーブで阻止することと、
前記ループワイヤを、前記近位ハイポチューブに付着させることと、
前記ループワイヤが前記可撓性コイルを通って延在するように、前記ループワイヤが前記近位ハイポチューブに付着されている間に、前記ループワイヤの前記ループ開口部を、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端に接近させて位置決めすることと、
前記可撓性コイルの長手方向の伸びを前記ループワイヤで阻止することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記スリーブが前記可撓性コイルに沿って位置決めされているとき、前記可撓性コイル及び前記スリーブが、前記近位ハイポチューブ及び前記圧縮可能遠位ハイポチューブの両方よりも可撓性であるように、前記可撓性コイル及び前記スリーブを選択することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記可撓性コイル内に放射線不透過性コイル状セクションを位置決めすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記可撓性コイルが、前記管腔の一部分を画定するように巻かれたワイヤを備え、前記ワイヤが.0203mm~.127mm(.0008インチ~.005インチ)の直径を含むように、前記可撓性コイルを選択することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮可能遠位ハイポチューブ遠位端から前記可撓性コイル近位端まで測定可能な長さを含むように前記可撓性コイル及び前記圧縮可能遠位ハイポチューブをサイズ設定して、前記長さが0cm~0cmであるようにすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ヒト対象者の身体の血管を介してナビゲート可能(navigable)な血管内医療装置システムに関する。より具体的には、本発明は、植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達及び展開するための送達システムと送達部材、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の血管構造の中に治療装置(例えば拡張バルーン、ステント及び塞栓コイル)を位置決めし展開するためのカテーテル送達システムを使用することは、血管内疾患を治療するための標準手技となっている。そのような装置は、特に、従来の手術手技が不可能である場合、又は患者に大きな危険をもたらす領域を治療する場合、例えば脳血管の中の動脈瘤を治療する場合に有効であることがわかっている。脳血管を囲む繊細な組織、例えば脳組織のために、脳血管の欠陥を治療するための外科手技を実行することは、非常に難しく、往々にして危険な場合がある。カテーテルベースのインプラント送達システムの進歩によって、そのような場合の代替的な治療が実現されてきた。カテーテル送達システムの利点として挙げられるのは、周囲の組織への外傷のリスクを低減することがわかっているアプローチによって血管を治療するための方法を提供すること、及び更に過去には手術不能であると考えられていた血管の治療を可能にすることである。
【0003】
一般に、これらの手技は、送達カテーテルを患者の血管構造の中に挿入することと、それを血管構造を通して所定の送達部位まで導くことと、を伴う。送達システムは、血管閉塞装置、ステント、又は他の血管内治療装置を送達部材(例えば、マイクロカテーテル)に解放可能に取り付けるための係合/展開システムを含むことができる。治療装置が取り付けられた送達部材は、送達カテーテルを通って送達部位へと押されることができる。例示的な送達部材及び係合/展開システムは、各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2019/0192162号及び米国特許出願公開第15/964,857号に記載されている。
【0004】
そのような治療手技を適切に実行することに関連している困難の一部には、送達部材及び係合システムが治療全体を通して安定した位置に留まることを確実にすることが挙げられる。例えば、動脈瘤のいくつかの治療用途では、動脈瘤が塞栓性物質で次第に充填されていくにつれて、植え込まれている塞栓性物質からの押し戻しが増加することに起因して送達部材が移動する傾向がある可能性がある。送達部材が治療中に移動すると、医師は、塞栓性物質の配置を正確に制御することができない場合があり、動脈瘤を充填するのを停止するように選択する場合がある。このような例では、動脈瘤を十分に充填することができず、これは再疎通をもたらし得る。更に、送達部材及び/又はその上に存在する係合システムの過剰な移動又は伸張は、塞栓コイル又は他の治療装置の早期の取り外しをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、安定性の改善されたインプラント送達部材及びインプラント係合システムを提供するための改良された方法、装置、及びシステムに対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、上述の必要性を満たすシステム、装置、及び方法を提供することである。概して、本発明の目的は、可撓性遠位部分を有する送達部材を含む植え込み可能医療装置を送達及び展開するための送達システムを提供することである。
【0007】
送達部材の遠位部分の剛性により、塞栓性物質が密に充填された動脈瘤に押し込まれるとき、塞栓性物質の送達に使用されるマイクロカテーテルが動脈瘤から引き戻される可能性がある。塞栓性物質を前進させている間にマイクロカテーテルが引き戻されると、マイクロカテーテルは動脈瘤から出てくるか、そうでなければ位置から外れる可能性がある。そのような状況において、医師は、塞栓コイルの制御を失う場合があり、塞栓性物質の配置を正確に制御することができなくなり得、及び/又は治療を完了することができない場合がある。
【0008】
可撓性は、送達部材の遠位部分に沿って巻かれる、ある長さのコイルを組み込むことによって提供されることができる。巻かれたコイルは、コイルの外側の周囲に位置決めされた可撓性ポリマースリーブによって保護することができる。巻かれたコイルは、巻かれたコイルを通って延在し、インプラントを解放可能に固定するように位置決めされた、耐伸張性ループワイヤによって伸びるのが阻止され得る。
【0009】
例示的な送達システムは、植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するように構成することができる。例示的な送達システムは、近位ハイポチューブ、近位ハイポチューブから遠位に延在する可撓性コイル、可撓性コイルから遠位に延在する圧縮可能遠位ハイポチューブ、可撓性コイルに沿って延在するスリーブ、及びループワイヤを含むことができる。ループワイヤは、可撓性コイルの長手方向の伸びを阻止するのに有効であり得る。スリーブは、可撓性コイルの半径方向の拡張を阻止するのに有効であり得る。
【0010】
送達システムは、ループワイヤと共にインプラントを送達システムに固定するのに有効であるプルワイヤを更に含むことができる。ループワイヤ及びプルワイヤは、送達システムからインプラントを解放するために移動可能であり得る。送達システムは、近位ハイポチューブ、可撓性コイル、遠位ハイポチューブを通って延在する管腔を含むことができる。ループワイヤ及びプルワイヤは、管腔内に位置決めすることができる。ループワイヤは、近位ハイポチューブに付着された第1の端部と、インプラントを送達システムに固定するように位置決めされたループ開口部と、を有することができる。ループ開口部は、圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端に位置決めすることができる。
【0011】
インプラントが送達システムに固定されると、ループ開口部はインプラントの開口部を通って延在することができ、プルワイヤはループ開口部を通って延在することができる。そのように構成されると、ループワイヤは、張力下にあることができ、可撓性コイルの伸びを阻止することができる。圧縮可能遠位部分は、インプラントが送達システムに固定されるときに圧縮され得、それにより、圧縮された遠位部分は、ループワイヤに張力を提供し、ループワイヤは、圧縮された遠位部分の伸びを阻止する。
【0012】
プルワイヤは、ループ開口部を出るために近位に後退可能であり得る。ループ開口部は、ループ開口部がプルワイヤによって塞がれていないときに、インプラント開口部を出るように移動可能であり得る。
【0013】
スリーブは、可撓性コイルの半径方向の拡張を阻止するのに有効であり得る。スリーブは、可撓性コイルの外側表面のほとんど又は全部を覆うことができる。
【0014】
可撓性コイルは、近位ハイポチューブよりも可撓性であり得る。可撓性コイルはまた、圧縮可能遠位ハイポチューブよりも可撓性であり得る。可撓性コイルは、1つ以上の非放射線不透過性セクション及び1つ以上の放射線不透過性セクションを含むことができる。可撓性コイルは、非放射線不透過性セクションが可撓性コイルの近位端及び遠位端から延在し、放射線不透過性セクションが非放射線不透過性セクションの間にあるように、放射線不透過性セクションによって分離された2つの非放射線不透過性セクションを含むことができる。可撓性コイルは、巻かれたワイヤから構築することができる。巻かれたワイヤは、送達システムの管腔の一部分を画定することができる。巻かれたワイヤストランドは、約千分の0.8インチ~約千分の5インチ、又は約20マイクロメートル~約130マイクロメートルのストランド直径を有することができる。ワイヤのストランドは、実質的に円形の断面を有することができる。
【0015】
送達システムの遠位部分の長さは、圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端から可撓性コイルの近位端まで測定され得る。遠位部分の長さは、約30cm~約50cm、又はより具体的には約40cmを測定することができる。
【0016】
圧縮可能遠位ハイポチューブは、螺旋状切り込みを含むことができる。圧縮可能遠位ハイポチューブは、インプラントが送達システムに固定されているとき、ループワイヤの張力により圧縮され得る。圧縮可能遠位ハイポチューブは、インプラントを解放するために、ループワイヤ及びプルワイヤの移動時に減圧するように移動可能であり得る。
【0017】
例示的な方法は、上記の例のような送達部材を設計又は構築するための工程を含むことができる。本方法は、近位チューブの遠位端を、コイル状ワイヤの近位端に接続することと、コイル状ワイヤの遠位端を、圧縮可能遠位チューブの近位端に接続することと、コイル状ワイヤの長さの大部分に沿ってスリーブを位置決めすることと、コイル状ワイヤの半径方向の拡張をスリーブで阻止することと、ループワイヤを、近位チューブに付着させることと、ループワイヤがコイル状ワイヤを通って延在するように、ループワイヤが近位チューブに付着されている間に、ループワイヤのループ開口部を遠位チューブの遠位端に位置決めすることと、コイル状ワイヤの長手方向の伸びをループワイヤで阻止することと、を含むことができる。近位チューブ、コイル状ワイヤ、及び圧縮可能チューブは、3つの部品を通って延在する管腔を形成するように接続され得る。
【0018】
遠位チューブは圧縮され得、ループワイヤが近位チューブに付着されている間、及び遠位チューブが圧縮されている間に、ループ開口部を遠位チューブの遠位端に位置決めすることができ、ループワイヤは、インプラントを送達チューブに固定するために使用され得る。インプラントが固定されると、ループワイヤの張力は、遠位チューブの圧縮を維持し、コイル状ワイヤの長手方向の拡張を阻止することができる。スリーブは、チューブの半径方向の拡張を阻止することができる。
【0019】
血管内インプラントは、プルワイヤを、3つの部品の管腔を通って延在させ、ループ開口部を、血管内インプラントの係止部分を通って延在させ、プルワイヤの遠位端を、ループ開口部を通って延在させて、送達チューブに固定することができる。インプラントは、治療中に、プルワイヤの遠位端を、ループ開口部から後退させ、ループ開口部を、血管内インプラントの係止部分から後退させて、インプラントを遠位チューブから解放することができるように固定され得る。
【0020】
コイル状ワイヤ及びスリーブは、スリーブがコイル状ワイヤの長さの大部分に沿った位置にあるとき、スリーブとコイル状ワイヤとの組み合わせが、近位ハイポチューブ及び圧縮可能遠位チューブの両方よりも可撓性であるように選択することができる。
【0021】
コイル状ワイヤは、コイル状ワイヤが、コイル状ワイヤを通って延在する管腔の一部分を画定するように巻かれたワイヤを含むように選択することができる。管腔を形成するように巻かれるワイヤは、それ自体が、約千分の0.8インチ~約千分の5インチ、又は約20マイクロメートル~約130マイクロメートルの断面直径を有することができる。
【0022】
放射線不透過性コイル状セクションは、コイル状ワイヤ内に位置決めすることができる。
【0023】
遠位チューブの遠位端からコイル状ワイヤの近位端まで測定可能な長さを有するようにコイル状ワイヤ及び圧縮可能遠位チューブをサイズ設定して、長さが約30cm~約50cm、又はより具体的には約40cmであるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の上記及び更なる態様は、
添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することが重視されている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ以上の実装形態を描写している。
図1】本発明の態様による、送達システム及びインプラントの図解である。
図2】本発明の態様による、別の送達システム及びインプラントの図解である。
図3A】本発明の態様による、送達システムの構成部品の図解である。
図3B】本発明の態様による、送達システムの構成部品の図解である。
図3C】本発明の態様による、送達システムの構成部品の図解である。
図4A】本発明の態様による、送達システムからのインプラントの解放を例示する。
図4B】本発明の態様による、送達システムからのインプラントの解放を例示する。
図4C】本発明の態様による、送達システムからのインプラントの解放を例示する。
図4D】本発明の態様による、送達システムからのインプラントの解放を例示する。
図5】本発明の態様による、送達システム及びインプラントを設計、構築、又は構成し、インプラントを送達するための工程を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
動脈瘤治療などの血管内治療における鍵となる成功要因は、インプラント又は他の医療治療用装置の展開中に、送達部材(例えば、マイクロカテーテル)が安定したままであることである。血管内治療中に、治療用装置の送達部材の遠位部分に可撓性が欠如していることは、インプラントが動脈瘤又は他の治療部位に配置されている間、送達部材を治療部位から引き戻すか、別様に適所から外れさせ得る。したがって、より可撓性である遠位部分を有する送達部材及び係合システムは、同様の課題に直面する他の用途に加えて、神経血管の解剖学的構造に医療装置を送達するために安定したシステムを提供することができる。しかし、可撓性構造体は、蛇行性の解剖学的構造をナビゲートする際に変形、伸長、又は拡張する傾向がある場合がある。送達部材の変形は、治療部位にナビゲートする、及び/又は医療装置を効果的に展開する送達部材の能力を阻止し得る。送達部材が伸びることは、医療装置の早期の展開をもたらし得る。
【0026】
本発明の目的は、医療治療用装置の送達及び展開全体を通して、耐伸張性で構造的に安定している極めて可撓性の遠位部分を有する送達部材を提供することである。説明を容易にするために、医療治療用装置は、本明細書では一般に「インプラント」と称されるが、当業者によって認識され理解されるように、本発明の態様は、植め込まれていない医療治療用装置を送達及び展開するために適用され得る。
【0027】
本発明によれば、いくつかの実施例では、送達部材は、近位細長送達ハイポチューブ、近位ハイポチューブの遠位端に取り付けられたコイル状アセンブリ、及びコイル状アセンブリに遠位に取り付けられたレーザー切断された螺旋状セグメントを含むことができる。コイル状アセンブリは、極めて可撓性であるように設計することができる。コイル状アセンブリは、外側スリーブによって覆われたコイル状ワイヤを含むことができる。コイル状ワイヤは、コイル状アセンブリの遠位セクションの近くで同心円状に溶接された1つ以上の放射線不透過性コイル状セグメントを含むことができる。
【0028】
近位ハイポチューブは、送達部材の長さの大部分に延在することができ、これにより、コイル状アセンブリ及び遠位レーザー切断された螺旋状ハイポチューブは、送達部材の遠位端から約30cm~約50cm、又はより具体的には約40cmにわたって延在する。遠位螺旋状ハイポチューブは、ばねと同様の様態で軸方向に圧縮され得る。
【0029】
チューブのアセンブリ及びコイル状アセンブリは、その管腔内に、プルワイヤ及びインプラントを送達部材に固定するように一緒に位置決めされたループワイヤの形態の係止部材を含むことができる。プルワイヤが係止部材をクリアするまでプルワイヤを近位に変位させることによってインプラントを取り外すことができ、インプラントが送達部材から解放されることを可能にする。
【0030】
ループワイヤは、2つの端部を有する耐伸張性繊維で構築することができる。ループワイヤの1つの脚部は、レーザー切断された螺旋状遠位ハイポチューブの近位端で接続することができ、一方、他方の脚部は、コイル状アセンブリの近位端に対して近位方向に接続することができる。コイル状アセンブリの近位に伸張し、螺旋状切り込みハイポチューブの近位端まで延在する脚部は、送達部材がインプラントの送達中に操作されるときに、インプラントの早期の取り外しをもたらし得る、非常に可撓性のコイル状アセンブリの伸張を防止するために、耐伸張性部材の機能を果たすことができる。代わりに、ループワイヤの両方の脚部を、コイル状アセンブリの近位端の近位に取り付けてもよい。いくつかの用途では、コイル状アセンブリを通って延在する2つの脚部は、コイル状アセンブリを通って延在する単一の脚部と比較して、コイル状アセンブリの改善された耐伸張性を提供することができる。
【0031】
いくつかの用途では、例えば、インプラントが塞栓コイルである場合、インプラントの近位端の硬化を最小限に抑えるために、インプラント内へのプルワイヤの挿入を最小限に抑えることが望ましい場合がある。しかしながら、プルワイヤの移動及び/又は送達部材の変形により、プルワイヤがループワイヤから係脱し、それによってインプラントを早期に解放する可能性を最小限に抑えるために十分な長さでループワイヤを通ってプルワイヤを延在させることが望ましい場合もある。いくつかの用途では、ループワイヤの耐伸張性は、送達部材の伸びを阻止することができ、それによって、インプラントを時期尚早に解放する可能性を低減し、及び/又はプルワイヤがより短い長さでインプラント内に位置決めされることを可能にし、それによってインプラントの近位端での可撓性を増加させる。
【0032】
図を参照すると、図1図2、及び図3A図3Cに示されるように、例示的な送達部材10a、10bは、近位チューブ100、コイル状セクション200a、200b、遠位チューブ300、コイル状セクションを取り囲むスリーブ500、及びコイル状セクション200a、200bを通って延在するループワイヤ400a、400bを含むことができる。送達部材10a、10bは、中で近位チューブ100、コイル状セクション200a、200b、遠位チューブ300を通って延在する管腔608を有し得る。換言すれば、近位チューブ100は、内部を通る管腔108を有することができ、コイル状セクション200a、200bは、内部を通る管腔208を有することができ、遠位チューブ300は、内部を通る管腔308を有することができ、管腔108、208、308は、送達部材10a、10bを通る管腔608を形成するように連続していてもよい。近位チューブ100は、コイル状セクション200a、200bの近位端202に接続された遠位端104を有することができ、コイル状セクション200a、200bの遠位端204は、遠位チューブ300の近位端302に接続され得る。
【0033】
送達部材10a、10bが組み立てられると、コイル状セクション200a、200b及びスリーブ500は、遠位ハイポチューブ及び近位ハイポチューブよりも可撓性であり得る。可撓性を測定する1つの方法は、3点曲げ試験を実行することであり、送達部材10a、10bの一部分が、2つの端点で固定された状態で保持され、力が、点間の中央で部材10a、10bに垂直に加えられ、可撓性は、力によって引き起こされる送達部材10a、10bのたわみの長さによって定量化される。このように測定されるとき、いくつかの実施例では、コイル状セクション200a、200b及びスリーブ500は、遠位ハイポチューブよりも約1.5倍可撓性であり、近位ハイポチューブ100よりも約20倍可撓性であり得る。換言すれば、3点試験が3つのセクション100、200a、200a、300で同じように実行されるとき、コイル状セクションは、遠位ハイポチューブのたわみ長さの約1.5倍、及び近位ハイポチューブのたわみの長さの約20倍の長さにわたってたわむことができる。可撓性は、当業者によって認識され理解されるように、他の方法で測定することができる。送達部材10a、10bが組み立てられると、コイル状セクション200a、200b及びスリーブ500は、可撓性が当業者に既知であるような他の手段によって決定されるとき、遠位ハイポチューブ及び近位ハイポチューブよりも可撓性であり得る。
【0034】
図1及び図2の図解に従って製造された送達部材10a、10bは、競合する送達システムよりも約25%~約40%大きい可撓性を有することが実証されている。
【0035】
図1に示されている送達部材10aを図2に示されている送達部材10bと比較すると、図1では、ループワイヤ400aは、近位チューブ100に第1の端部取り付け部406aを有し、遠位チューブ300に第2の端部取り付け部408aを有するように示されており、一方、図2では、ループワイヤ400bは、近位チューブ100に第1及び第2の端部取り付け部406b、408bの両方を有するものとして示されている。いくつかの要因が、送達部材の可撓性に寄与し得るが、他のすべてが等しいとしても、図1に示される送達部材10aは、図2に示される送達部材10bと比較してより可撓性であり得るが、なぜなら、図1に示される送達部材10aは、コイル状セクション200aを通過するループワイヤ400aの単一の脚部を有し、したがって、コイル状セクション200bを通過するループワイヤ400bの2つの脚部を有する図2の送達部材10bと比較して、コイル状セクション200aを通過する材料が少ないからである。代替的な構成も企図され、例えば、ループワイヤは、2つの分離可能な端部を有する必要はなく、例えば、ループワイヤの脚部は、単一ユニットとして融着、撚り、ないしは別の方法で形成され得る。
【0036】
図3A図3Cは、図3Aに示されるスリーブ500を有する例示的な送達システムの構成部品、図3Bに示されるループワイヤ400a、並びに図3Cの近位チューブ100、コイル状セクション200b、及び遠位チューブ300を含むアセンブリを示す。図1に示す例示的な送達部材10aを、図3A図3Cに示す構成部品と比較すると、図1では、コイル状セクション200aの巻線は実質的に正方形の断面を有し、一方、図3Cでは、コイル状セクション200bの巻線は実質的に円形の断面を有する。コイル状ワイヤは、コイルの形状に巻かれた実質的に線形のワイヤ、及び/又は螺旋パターンでレーザー切断されたハイポチューブで形成することができる。コイル状ワイヤがレーザー切断されたハイポチューブから形成される場合、螺旋は、より可撓性のあるコイルを設けるように、コイル内の巻線を接続する干渉的な切断がない場合がある。レーザー切断されたハイポチューブから形成されたコイル状セクションは、図1及び図2のコイル状セクション200aによって示されるように、実質的に正方形の断面を有することができる。コイル形状に巻かれた線形ワイヤから形成されたコイル状セクションは、図3Cのコイル状セクション200bによって示されるように、実質的に円形の断面を有することができる。
【0037】
図1に示す例示的な送達部材10aを、図3A図3Cに示す構成部品と比較すると、図3Cでは、近位ハイポチューブ100は、可撓性セクション106の可撓性を高めるために材料を除去した可撓性セクション106を含むことができる。可撓性セクション106は、螺旋パターンで切断することができる。可撓性セクション106の螺旋パターンは、螺旋内に巻線を接続する干渉的な切断を欠くことができる。ループワイヤ400の近位取り付け端部406aは、近位チューブ100の可撓性セクション106に対して近位方向に近位チューブ100に取り付けることができる。これにより、ループワイヤ400aは、近位チューブ100の可撓性セクション106及びコイル状セクション200bの伸びを阻止することができる。スリーブ500は、可撓性セクション106の少なくとも一部分を覆って、血管内ナビゲーション中に可撓性セクションの変形を阻止し、かつ/又は血管構造及び可撓性セクション106との摩擦を低減することができる。いくつかの例では、スリーブ500は、近位チューブ100の遠位端104に接近する及び/又は含む近位チューブ100の約10cmを覆うことができる。
【0038】
図1図3Cをまとめて参照すると、コイル状セクション200a、200bは、近位ハイポチューブ100及び/又は遠位ハイポチューブ300とは別個に形成され得る。別個に形成されたコイル状セクション200a、200bは、溶接部712、714、あるいは近位チューブ100及び/又は遠位チューブ300への他の適切な取り付けで付着させることができる。加えて、又は代替的に、コイル状セクションの少なくとも一部分は、ハイポチューブの螺旋状レーザー切断部分で形成されてもよい。別個に形成されたコイル状セクション200bは、特定の直径Dを有する特定の断面(例えば円形)を有するワイヤを選択することによって、又は可撓性を増大させる材料特性を有するワイヤを選択することによって、螺旋状切り込みチューブ200aと比較してより可撓性にすることができる。反対に、レーザー切断部分200aは、単一のハイポチューブを切断して近位チューブ100、コイル状セクション200a、及び遠位ハイポチューブ300を形成し、溶接部712、714、又は他の取り付けを削減又は削除することによって、より容易に製作することができる。いずれの場合も、コイル200a、200bのワイヤは、約0.8ミル及び5ミル(約20nm~約130nm)を含む範囲内で測定される直径D又は幅Wを有し得る。
【0039】
コイル状セクションは、鋼などの非放射線不透過性材料から主に形成することができ、白金及び/又はタングステンなどの放射線不透過性材料から作製された放射線不透過性セクション216を含むことができる。放射線不透過性セクション216は、コイル212の近位の非放射線不透過性セクションとコイル214の遠位の非放射線不透過性セクションとの間に位置決めすることができる。放射線不透過性セクション216は、治療手技中に医師が送達部材の遠位部分の配置を容易に可視化することができるように、送達部材10a、10bの遠位端304から所定の距離に位置決めされ得る。近位セクション212、放射線不透過性セクション216、及び遠位セクション214は、同心円状に溶接され得る。
【0040】
コイル状セクション200a、200bは、本明細書において総称的に「スリーブ」と称される可撓性スリーブ又は融着ジャケット500によって包囲され得る。スリーブは、ナビゲーション中にコイル200a、200bが径方向に拡張すること、及び/又は血管壁に係合することを阻止することができる。スリーブ500は、ポリマーを含み得る。ポリマーは、スリーブ500の潤滑性を増大させるための添加剤を含むことができ、スリーブが身体の血管を通って容易に摺動できるようにする。図2Aに示すように、スリーブ500は、約0.5ミル及び約2ミル(約0.01mm~約0.05mm)などの範囲内で測定される壁厚Tを有することができる。スリーブ500は、血管内ナビゲーションの間の摩擦を更に最小限に抑えるために、親水性コーティングで更にコーティングすることができる。スリーブ500は、コイル200a、200b、近位ハイポチューブ100及び/又は遠位ハイポチューブ300に融着又は接着され得る。
【0041】
近位チューブ100は、コイル状セクション200a、200b及び遠位チューブ300を有する送達部材10a、10bの長さの大部分を延在することができ、治療部位におけるインプラントの配置中に生じ得る押し戻しの大部分を吸収するのに十分な長さLを形成する。近位チューブが可撓性セクション106を含むとき、長さLは、遠位チューブ300、コイル状セクション200a、200b、及び近位チューブの可撓性セクション106を含むことができ、可撓性セクション106の近位端から遠位チューブ300の遠位端まで測定される。いくつかの実施例では、長さLは、約30cm~約50cm、又はより具体的には約40cmを測定することができる。
【0042】
いくつかの実施例では、比較的剛性の近位ハイポチューブ100、比較的可撓性の遠位圧縮可能チューブ300、並びに近位ハイポチューブ100及び遠位圧縮可能チューブ300の両方よりも可撓性である可撓性コイル200a、200b及びスリーブ500アセンブリを有することが有利であり得る。近位ハイポチューブ100は、その長さの大部分にわたって十分に剛性であり、マイクロカテーテルを通して押されている間の捻れに抵抗することができる。可撓性コイル200a、200b及び遠位圧縮可能チューブ300は各々、インプラント12が動脈瘤内に配置されているときに押し戻しの影響を低減するために、十分に可撓性であり得る。可撓性コイル200a、200bは圧縮可能に弾性である必要はないので、可撓性コイルは、遠位圧縮可能チューブよりも高い可撓性を有することができる。
【0043】
いくつかの実施例では、可撓性コイル200a、200b及びスリーブ500アセンブリは、遠位圧縮可能チューブ300よりも約25%可撓性であり得る。いくつかの実施例では、可撓性コイル200a、200b及びスリーブ500アセンブリは、近位ハイポチューブ100よりも約20倍可撓性であり得る。可撓性は、当業者によって認識され理解されるように、3点曲げ試験又は他の適切な試験を使用して測定することができる。一般に、3点曲げ試験は、2点でチューブ部分を固定し、2つの点の間に力を加えることによって実行することができる。可撓性は、所定の力に対するチューブ部分の変位の長さによって、及び/又はチューブを所定の長さだけ変位させる力の大きさによって定量化することができる。
【0044】
図1図2、及び図4Aは各々、インプラント12を展開するために医師によって近位端で操作され得る、ループワイヤ400a、400b、400及び内側の細長い部材140を含む機械的係合システムによって送達部材10a、10b、10に固定されたインプラント12を示す。こうしたワイヤ又は内側の細長い部材は、本明細書では「プルワイヤ」140と総称される。図1図2、及び図4Aをまとめて参照すると、コイル200a、200b、スリーブ500、及びループワイヤ400、400a、400bの組み合わせは、神経血管を含む蛇行性解剖学的構造をナビゲートするのに好適な送達部材10、10a、10bの極めて可撓性の遠位部分を提供することができる。ループワイヤ400、400a、400bは、コイル200a、200bを支持して、血管のナビゲーション中にコイル200a、200bが著しく伸びるのを防ぐことができ、それによって、プルワイヤ140のループ開口部405への係合における張力を低減し、取り付けられた医療治療用装置12の時期尚早の展開の可能性を低減する。
【0045】
図1図2図3C、及び図4A図4Cをまとめて参照すると、遠位チューブ300は、圧縮可能部分306を含むことができる。圧縮可能部分306は、細長い状態と圧縮状態との間で軸方向に調節可能であり得る。圧縮部分306は、レーザー切断操作により形成されたチューブ300の螺旋状の切断部分から形成され得る。加えて又は代替的に、圧縮可能部分は、巻線、螺旋状のリボン、又は本発明による軸方向の調節を可能にする他の構成で形成することができる。好ましくは、圧縮可能部分306は静止時に細長い状態にあり、他に拘束がない限り、圧縮状態から細長い状態に自動的又は弾性的に戻る。
【0046】
図4A図4Dは、送達部材10からの医療装置(例えば、インプラント)12の解放を描いた図解の時間系列セットである。送達部材10は、図1図3Cに示されるように、及び他の方法で本明細書に記載されるように構成され得る。図4Aは、医療装置12の係止部分18に係止されたループワイヤ400及びプルワイヤ140を含む係合システムを示す。遠位チューブ300の圧縮可能部分306は圧縮され得、ループワイヤ400の遠位端404にあるループワイヤ400の開口部405は、係止部分18を通って配置され得る。プルワイヤ140が開口部405に通されると、その時点で医療装置12は固定されている。図4Bは、医療装置12の解放シーケンスを開始するために、近位に引っ張られているプルワイヤ140を示す。図4Cは、プルワイヤ140の遠位端144が開口部405を出て、プルワイヤ140が、ループワイヤ400がない状態で引っ張られる時点を示す。ループワイヤ400の遠位端404は離れ、係止部分18から出る。図からわかるように、これで医療装置12を取り外しシステム10に保持しているものは何もない。図4Dは、解放シーケンスの終了時を示す。ここで、圧縮可能部分306は元の形状に拡張し/戻り、前方に「弾ける」。遠位チューブ300の遠位端304により弾性力Eが医療装置12に付与されて、これを「押し出し」、医療装置12の完全な分離及び送達を確実に行う。
【0047】
圧縮可能部分306は、圧縮構成と元の非圧縮構成とで測定されたとき、約0.5mm~約0.75mmの長さの差(圧縮距離)を有し得る。より大きな圧縮距離を使用することによって、より大きな弾性力Eを達成することができる。圧縮距離は、ループワイヤ400の寸法、係止部分18の形状、及び遠位チューブ300の遠位端304の形状によって決定することができる。
【0048】
図5は、動脈瘤を治療するための方法800の例示的な方法の工程を概説するフローチャートである。工程804、808、812、816、820、及び824は、概して、本明細書に提示される例示的なシステム、その変形、及び当業者によって認識され理解されるような代替のインプラント送達システムなどの送達システムを設計、構築、又は構成することに向けられている。工程828、832、836、及び840は、前述の方法の工程のうちの1つ以上に従って設計、構築、又は構成された送達システムを用いてインプラントを送達及び展開することに向けられている。
【0049】
工程804では、近位チューブ、コイル状ワイヤ、及び圧縮可能遠位チューブを、アセンブリが実質的に管状であり、組み立てられたセクションを通って延在する連続的な管腔を有するように接続することができる。近位チューブ、コイル状ワイヤ、及び圧縮可能遠位チューブは各々、それぞれ、本明細書に記載及び/又は図示されるような近位チューブ100、支持コイル200a、200b、及び遠位ハイポチューブ300、その変形、又は当業者によって認識され理解されるような代替物であり得る。
【0050】
工程808では、コイル状ワイヤに沿ってスリーブを位置決めすることができる。スリーブは、本明細書に記載及び/又は図示されるようなスリーブ500、その変形、又は当業者によって認識され理解されるような代替物であり得る。スリーブは、コイル状ワイヤの長さの一部分、又はコイル状ワイヤの全長を取り囲むように位置決めすることができる。スリーブはまた、近位チューブ及び遠位チューブのうちの一方又は両方のそれぞれの部分を覆うように延在するように位置決めされてもよい。
【0051】
工程812では、ループワイヤを近位チューブに付着させることができる。ループワイヤは、本明細書に記載及び/又は図示されるようなループワイヤ400、400a、400b、その変形、又は当業者によって認識され理解されるような代替物であり得る。ループワイヤは、2つの端部を有することができ、2つの端部のうちの少なくとも1つは、工程812において近位チューブに付着させることができ、ループ開口部が、2つの端部の間のループワイヤの屈曲部として画定され得る。工程812において近位チューブに付着されていない端部は、遠位チューブ又は他の位置で送達部材に付着され得る。あるいは、ループワイヤは、工程812において近位チューブに付着された単一の端部と、ループワイヤの反対側の端部に形成されたループ開口部と、を有することができる。
【0052】
工程816では、ループワイヤのループ開口部を遠位チューブの遠位端に位置決めすることができる。ループ開口部は、本明細書に記載及び/又は図示されているように位置決めすることができ、ないしは別の方法で位置決めされて、遠位チューブの遠位端におけるインプラントの取り付けを容易にすることができる。
【0053】
工程820では、圧縮可能遠位チューブが圧縮され得る。
【0054】
工程824では、ループ開口部をインプラント上の係合機構(係止部分又は開口部)に通し、プルワイヤをループ開口部に通すことによって、インプラントを圧縮された遠位チューブに固定することができる。
【0055】
工程828では、インプラントが治療部位に送達され得る。インプラントは、本明細書に記載及び/又は図示されているようなインプラント10、10a、10b、その変形、又は当業者によって認識され理解されるような代替的な医療治療用装置であり得る。インプラントは、当業者に既知の手段によって送達され得る。いくつかの例では、治療部位は、動脈瘤又は病巣などの血管内治療部位であり得る。インプラントは、血管内に位置決めされたカテーテルを通して送達され得る。送達システムの一部分(例えば、近位チューブ)は、医師が送達システムを患者の中に、かつカテーテルを通して押すことができるように、医師によってアクセス可能であり得る。インプラントは、送達システムの遠位端に取り付けられ得、送達システムが医師によってカテーテル内に更に押されるときに、送達システムによって押され得る。
【0056】
工程832では、スリーブは、インプラントが治療部位に送達されているときに、コイルの半径方向の拡張を阻止することができる。スリーブは、本明細書に記載される手段、その変形、又は当業者によって認識され理解されるような代替物によって、コイルの半径方向の拡張を阻止することができる。
【0057】
工程836では、コイル状ワイヤの長手方向の拡張が、インプラントの送達中にループワイヤで阻止することができる。ループワイヤは、耐伸張性であり得、インプラントの送達中にループワイヤが著しく伸びないように位置決めされ得る。
【0058】
工程840では、プルワイヤを後退させることによってインプラントを解放することができる。医師がプルワイヤを後退させると、プルワイヤの遠位端が近位に移動してループ開口部を出ることができる。ループワイヤがプルワイヤによってもはや定位置に保持されなくなると、ループワイヤは、インプラント上の係止部分から後退し、それによってインプラントを解放することができる。
【0059】
本明細書で任意の数値又は数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば、「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0060】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されるように、本発明は、代替的なインプラントのタイプ、構成部品の代替的幾何形状、構成部品の代替的配置、代替的取り付け手段、代替的材料、代替的治療アプリケーション、構成部品を構築するための代替的方法等を含む、送達部材の多くの変形及び修正を企図している。これらの修正は、本発明が関連する当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するための送達部材であって、
近位ハイポチューブと、
前記近位ハイポチューブの遠位端から延在する可撓性コイルと、
前記可撓性コイルの遠位端から延在する圧縮可能遠位ハイポチューブと、
前記近位ハイポチューブの近位端から、前記近位ハイポチューブを通って、前記可撓性コイルを通って、前記圧縮可能遠位ハイポチューブを通って、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端まで延在する管腔と、
前記可撓性コイルの大部分に沿って延在するスリーブであって、
前記スリーブが、前記可撓性コイルの半径方向の拡張を阻止するのに有効である、スリーブと、
前記近位ハイポチューブに付着された第1の端部を備え、かつ、前記圧縮可能遠位ハイポチューブの遠位端に接近して位置決めされたループ開口部を備えるループワイヤであって、
前記ループワイヤが、前記可撓性コイルの長手方向の伸びを阻止するのに有効である、ループワイヤと、を備える、送達部材。
(2) 前記可撓性コイルが、前記近位ハイポチューブよりも可撓性である、実施態様1に記載の送達部材。
(3) 前記可撓性コイルが、
前記可撓性コイルの近位端から延在する非放射線不透過性近位コイルと、
前記可撓性コイルの前記遠位端から延在する非放射線不透過性遠位コイルと、
前記非放射線不透過性近位コイルと前記非放射線不透過性遠位コイルとの間に延在する放射線不透過性中央コイルと、を備える、実施態様1に記載の送達部材。
(4) 前記可撓性コイルが、
前記可撓性コイルを形成し、前記管腔の一部分を画定するように巻かれたワイヤを備え、前記ワイヤが、約0.0203mm~約0.127mm(約0.0008インチ~約0.005インチ)の直径を含む、実施態様1に記載の送達部材。
(5) 前記ワイヤが、実質的に円形の断面を含む、実施態様4に記載の送達部材。
【0062】
(6) 前記圧縮可能遠位ハイポチューブの前記遠位端から前記可撓性コイルの近位端まで測定可能な遠位部分の長さを更に含み、
前記遠位部分の長さが約40cmである、実施態様1に記載の送達部材。
(7) 前記スリーブが、前記可撓性コイルの外側表面の少なくとも大部分を覆う、実施態様1に記載の送達部材。
(8) 前記管腔を通って延在するプルワイヤを更に備え、
前記ループワイヤ及び前記プルワイヤが、前記植え込み可能医療装置を前記送達システムに固定するように位置決めされ、
前記ループワイヤ及び前記プルワイヤが、前記植え込み可能医療装置を前記送達システムから解放するように移動可能である、実施態様1に記載の送達部材。
(9) 前記ループワイヤが、耐伸張性であり、
前記植え込み可能医療装置が前記送達システムに固定されているとき、前記ループワイヤが張力下にある、実施態様8に記載の送達部材。
(10) 前記圧縮可能遠位ハイポチューブが、螺旋状切り込みを備え、
前記植え込み可能医療装置が前記圧縮可能遠位ハイポチューブに固定されているとき、前記圧縮可能遠位ハイポチューブが前記ループワイヤの張力により圧縮されており、
前記圧縮可能遠位ハイポチューブが、前記植え込み可能医療装置を解放するために、前記ループワイヤ及び前記プルワイヤの移動時に減圧するように移動可能である、実施態様9に記載の送達部材。
【0063】
(11) 前記ループ開口部が、前記植え込み可能医療装置内の装置開口部を通って延在し、
前記プルワイヤが、前記ループ開口部を通って延在し、
前記プルワイヤが、前記ループ開口部を出るように近位に後退可能であり、
前記ループ開口部は、前記ループ開口部が前記プルワイヤによって塞がれていないときに、前記植え込み可能医療装置内の前記装置開口部を出るように移動可能である、実施態様8に記載の送達部材。
(12) 近位チューブの遠位端を、コイル状ワイヤの近位端に接続することと、
前記コイル状ワイヤの遠位端を、圧縮可能遠位チューブの近位端に接続することと、
前記近位チューブ、前記コイル状ワイヤ、及び前記圧縮可能遠位チューブを接続して、前記近位チューブ、前記コイル状ワイヤ、及び前記圧縮可能遠位チューブを通って延在する管腔を備える送達チューブを提供することと、
前記コイル状ワイヤの大部分に沿ってスリーブを位置決めすることと、
前記コイル状ワイヤの半径方向の拡張を前記スリーブで阻止することと、
ループワイヤを、前記近位チューブに付着させることと、
前記ループワイヤが前記コイル状ワイヤを通って延在するように、前記ループワイヤが前記近位チューブに付着されている間に、前記ループワイヤのループ開口部を、前記遠位チューブの遠位端に接近させて位置決めすることと、
前記コイル状ワイヤの長手方向の伸びを前記ループワイヤで阻止することと、を含む、方法。
(13) 前記スリーブが前記コイル状ワイヤの前記大部分に沿って位置決めされているとき、前記コイル状ワイヤ及び前記スリーブが、前記近位ハイポチューブ及び前記圧縮可能遠位チューブの両方よりも可撓性であるように、前記コイル状ワイヤ及び前記スリーブを選択することを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記コイル状ワイヤ内に放射線不透過性コイル状セクションを位置決めすることを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記コイル状ワイヤが、前記管腔の一部分を画定するように巻かれたワイヤを備え、前記ワイヤが約0.0203mm~約0.127mm(約0.0008インチ~約0.005インチ)の直径を含むように、前記コイル状ワイヤを選択することを更に含む、実施態様12に記載の方法。
【0064】
(16) 前記遠位チューブの前記遠位端から前記コイル状ワイヤの前記近位端まで測定可能な長さを含むように前記コイル状ワイヤ及び前記圧縮可能遠位チューブをサイズ設定して、前記長さが約40cm~約50cmであるようにすることを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(17) 血管内インプラントを前記送達チューブに、以下の通り、
プルワイヤを、前記管腔を通って延在させ、
前記ループ開口部を、前記血管内インプラントの係止部分を通って延在させ、
前記プルワイヤの遠位端を、前記ループ開口部を通って延在させて、
固定することを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(18) 前記圧縮可能遠位チューブを圧縮することと、
前記遠位チューブが圧縮されている間、及び前記ループワイヤが前記近位チューブに付着されている間に、前記ループ開口部を前記遠位チューブの前記遠位端に接近させるように位置決めすることと、
前記遠位チューブが圧縮されている間、及び前記ループワイヤが前記近位チューブに付着されている間に、前記ループワイヤで、インプラントを前記送達チューブに固定することと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記ループワイヤの張力を介して、前記遠位チューブの圧縮を維持することと、
前記ループワイヤの張力を介して、前記遠位チューブが圧縮されている間、前記コイル状ワイヤの長手方向の拡張を阻止することと、
前記遠位チューブが圧縮されている間、前記コイル状ワイヤの半径方向の拡張を前記スリーブで阻止することと、を更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記血管内インプラントを前記遠位チューブから、以下の通り、
前記プルワイヤの前記遠位端を、前記ループ開口部から後退させ、
前記ループ開口部を、前記血管内インプラントの前記係止部分から後退させて、
解放することを更に含む、実施態様17に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5