(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】柱とブレースの接続構造、及び柱とブレースを接続する接続金物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20241126BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241126BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/58 G
F16F15/02 Z
(21)【出願番号】P 2021059418
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
(72)【発明者】
【氏名】辻 千佳
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153457(JP,A)
【文献】特開2016-204998(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226516(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/58
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の側面に対してブレースが接続される、柱とブレースの接続構造であって、
前記柱の側面に配設される接続金物を介して、前記ブレースと前記柱が接続され、
前記接続金物は、前記側面に当接される当接プレートと、該当接プレートから立設する立ちプレートと、該立ちプレートの側面から側方に張り出す補強リブと、を備え、
前記補強リブは、前記柱の側面に対して傾斜する傾斜部を少なくとも備え、
前記立ちプレートには、固定孔が開設され、
前記傾斜部には、頭部と軸部を備えた頭付き固定手段の該軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、
前記当接プレートには、前記第一挿通孔を挿通された前記軸部がさらに挿通される第二挿通孔が開設されており、
前記固定孔に対して前記ブレースの端部が固定され、前記頭部が前記傾斜部に係合され、前記第一挿通孔と前記第二挿通孔に挿通されている前記軸部の一部が前記柱に固定されていることを特徴とする、柱とブレースの接続構造。
【請求項2】
前記補強リブが、前記傾斜部の他に、前記柱の側面に対して垂直な垂直部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の柱とブレースの接続構造。
【請求項3】
前記当接プレートの中央位置に前記立ちプレートが固定されており、
前記立ちプレートの左右の広幅面にそれぞれ、前記補強リブが固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の柱とブレースの接続構造。
【請求項4】
前記ブレースと前記軸部のそれぞれの延設方向が、同一もしくは略同一であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の柱とブレースの接続構造。
【請求項5】
間隔を置いて配設される二本の前記柱のうち、一方の該柱の長手方向の途中位置に前記接続金物が配設され、他方の該柱の上下端と該接続金物を二本の前記ブレースが繋いでいる、K型ブレースを有しており、
前記立ちプレートには、二本の前記ブレースの端部が固定される二つの前記固定孔が開設され、
前記立ちプレートの左右の広幅面において、二本の前記ブレースに対応する位置にそれぞれ前記補強リブが固定され、
前記当接プレートには、それぞれの前記補強リブの備える前記第一挿通孔に対応する前記第二挿通孔が開設されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の柱とブレースの接続構造。
【請求項6】
前記柱が木質柱であり、木質梁と該木質柱を有する木造軸組み架構に適用されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の柱とブレースの接続構造。
【請求項7】
柱の側面に取り付けられて、柱とブレースを接続する接続金物であって、
前記側面に当接される当接プレートと、該当接プレートから立設する立ちプレートと、該立ちプレートの側面から側方に張り出す補強リブと、を備え、
前記補強リブは、前記柱の側面に対して傾斜する傾斜部を少なくとも備え、
前記立ちプレートには、前記ブレースの端部が固定される固定孔が開設され、
前記傾斜部には、頭部と軸部を備えた頭付き固定手段の該頭部が係合され、該軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、
前記当接プレートには、前記第一挿通孔を挿通された前記軸部がさらに挿通される第二挿通孔が開設されていることを特徴とする、柱とブレースを接続する接続金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱とブレースの接続構造、及び柱とブレースを接続する接続金物に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法による木造建築物においては、柱や梁、土台等を形成する木質軸部材からなる架構に対して、ブレース(斜材、筋交い)が取り付けられることにより耐震性の向上が図られている。例えば、正面視矩形の架構の対角線に沿うようにブレースが取り付けられる形態や、ブレースが内蔵された耐力壁が架構の内部に設けられている形態等が挙げられる。
【0003】
ここで、
図1乃至
図4を参照して、従来のブレースを備えた架構の一例を説明する。
図1は、K型のブレースを備えた架構の正面図であって地震時の水平荷重が作用している状態を示す図であり、
図2は、
図1のII部の拡大図である。また、
図3は、接続金物の一例の斜視図であり、
図4は、地震時におけるブレースの軸力-変形特性を示す図である。
【0004】
架構60は、梁11と、土台14と、一対の柱12,13と、正面視K型の二本のブレース21とを有する。梁11及び土台14と、柱12,13とは、接続金物15と接続ボルト16により相互に接続される。また、一方の柱13の中央位置には接続金物30が複数(図示例は
図3に示すように四本)の頭付き固定手段40を介して接続され、他方の柱12と梁11及び土台14との隅角部19にはそれぞれガセットプレート17が取り付けられており、接続金物30とガセットプレート17に対して、ブレース21の両端にある接続治具22が接続ボルト18を介して接続されている。頭付き固定手段40は、頭部42と軸部41とを有する部材であり、ビスやネジ、釘、ボルト等により形成される。
【0005】
図1に示すように、地震時の水平荷重Qが架構60に作用すると、水平荷重Qの作用方向へ架構60が変位し、架構60の変位の際に各ブレース21に軸力Nが生じることにより、各ブレース21にて架構60の変位が抑制される。
【0006】
図2及び
図3に示すように、接続金物30は、柱13の側面13aに当接される平面視矩形の当接プレート31と、当接プレート31の中央位置において当接プレート31から立設する立ちプレート32と、立ちプレート32の側面から側方に張り出す複数の補強リブ33とを備えている。立ちプレート32には固定孔35が開設されており、固定孔35と接続治具22の固定孔(図示せず)が位置合わせされ、接続ボルト18が挿通されて接続金物30とブレース21とがボルト接合される。
【0007】
また、当接プレート31には、頭付き固定手段40が挿通される挿通孔34が開設されている。ブレース21や当接プレート31における挿通孔34の加工誤差、柱13の側面13aに対する当接プレート31の取り付け時の施工誤差等に対応するべく、挿通孔34の孔径t1は一般に、頭付き固定手段40の軸部41の径t2よりも1mm乃至数mm大きく設定されている。
【0008】
従来の架構60における柱とブレースの接続構造70では、当接プレート31の挿通孔34を介して、頭付き固定手段40の軸部41は柱13の長手方向(鉛直方向)に対して直交する方向(水平方向)に刺し込まれている。
【0009】
ここで、特許文献1には、
図1に示すK型のブレース(ここでは筋交い)を備えた木造建物の耐力壁構造が提案されている。具体的には、平行する二本の柱材と平行する二本の横架材で構成される木造建物の骨組内に、一方の柱材の中央部に取り付けられるエネルギー吸収体と、一方の端部がエネルギー吸収体に取り付けられ、他端が他方の柱材もしくは横架材にそれぞれ取り付けられた略V字型の筋交いが設けられ、水平力によりエネルギー吸収体が変形し、エネルギーの吸収を行うようになされている。ここで、特許文献1においても、例えばその
図1(イ)に示すように、二本の筋交い3を繋ぐスペーサー4に固定されているエネルギー吸収体2が、柱5の長手方向に直交する方向(水平方向)に延設する固定手段にて固定されている構造が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図1に示すように、架構60に地震時の水平荷重Qが作用した際には、
図2に示すように接続金物30と柱13との間にせん断力Sが作用し、当接プレート31と柱13aの側面13aとの間の静止摩擦力をせん断力Sが超えた際に、接続金物30は、柱13の側面13上を、挿通孔34と軸部41の間のクリアランス(径t1,t2の差によるクリアランス)に応じて滑ることになる。
【0012】
すなわち、
図4に示すように、接続金物30がδ1だけ柱13の側面13aに沿って滑ると、これに同期するようにしてブレース21もδ1だけ変位した(滑った)後に、ブレース21に軸力が生じてブレース21が機能し始めることになる。そのため、ブレース21には、架構60に水平荷重Qが作用した当初から所望される軸力Nが生じないことから、架構60の地震時の変位を水平荷重Qが作用した当初から抑制することができず、初期の滑りに起因してブレース21の地震時におけるエネルギー吸収性能が低下するといった課題がある。尚、この課題は、図示例のようにK型のブレース21を備えた架構のみならず、正面視矩形の架構の対角線に一本のブレースが配設される形態においても同様に存在する。また、木造軸組工法による木造建築物の他にも、鉄骨造建築物においても同様に存在する。
【0013】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、頭付き固定手段にて柱に固定されている接続金物を介して柱とブレースが接続される架構において、架構に地震時の水平荷重が作用した当初からブレースが機能することができ、耐震性能に優れた架構を形成できる、柱とブレースの接続構造と、柱とブレースを接続する接続金物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による柱とブレースの接続構造の一態様は、
柱の側面に対してブレースが接続される、柱とブレースの接続構造であって、
前記柱の側面に配設される接続金物を介して、前記ブレースと前記柱が接続され、
前記接続金物は、前記側面に当接される当接プレートと、該当接プレートから立設する立ちプレートと、該立ちプレートの側面から側方に張り出す補強リブと、を備え、
前記補強リブは、前記柱の側面に対して傾斜する傾斜部を少なくとも備え、
前記立ちプレートには、固定孔が開設され、
前記傾斜部には、頭部と軸部を備えた頭付き固定手段の該軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、
前記当接プレートには、前記第一挿通孔を挿通された前記軸部がさらに挿通される第二挿通孔が開設されており、
前記固定孔に対して前記ブレースの端部が固定され、前記頭部が前記傾斜部に係合され、前記第一挿通孔と前記第二挿通孔に挿通されている前記軸部の一部が前記柱に固定されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、接続金物の補強リブが柱の側面に対して傾斜する傾斜部を備え、傾斜部に頭付き固定手段の軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、接続金物の当接プレートに第一挿通孔を挿通された軸部が挿通される第二挿通孔が開設され、頭付き固定手段の頭部が傾斜部に係合され、第一挿通孔と第二挿通孔を挿通された軸部の一部が柱に対してその長手方向に傾斜した方向に固定されていることにより、当接プレートと柱の側面に地震時のせん断力が作用した際の当接プレートの滑りが、斜め方向に延設して柱に固定される頭付き固定手段にて効果的に抑止される。
【0016】
すなわち、従来の接続構造では、頭付き固定手段の軸部が柱の長手方向に直交する水平方向に固定されていることから、せん断力が作用した際に挿通孔と軸部の間のクリアランス分だけ接続金物が柱の側面上を滑っていたのに対して、本態様では、柱の長手方向に傾斜する方向に頭付き固定手段が延設して柱に固定されていることにより、頭付き固定手段が柱の長手方向に沿うせん断力に対して有効に抵抗することができ、従って、地震時の水平荷重が架構に作用する初期の段階からブレースが機能することができる。
【0017】
また、頭付き固定手段の軸部が、二つの挿通孔(第一挿通孔と第二挿通孔)に挿通されながら柱に固定されることから、軸部の延設方向(柱に対する固定方向)が一義的に設定され、頭付き固定手段の柱に対する固定方向がぶれるといった問題も生じない。
【0018】
ここで、「補強リブが傾斜部を少なくとも備え」とは、補強リブが傾斜部のみを備える形態と、傾斜部の他に例えば柱の側面に対して垂直な垂直部を備える形態の双方を含んでいる。補強リブは、本来的には当接プレートから立設する立ちプレートの座屈を防止する機能を有しているが、傾斜部を備えることにより、立ちプレートの座屈防止機能と、接続金物の地震時のせん断力作用時の滑り防止機能を有することになる。
【0019】
また、本発明による柱とブレースの接続構造の他の態様において、
前記補強リブが、前記傾斜部の他に、前記柱の側面に対して垂直な垂直部をさらに有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、補強リブが、傾斜部の他に、柱の側面に対して垂直な垂直部をさらに有することにより、立ちプレートの座屈方向もしくは略座屈方向に延設する垂直部が立ちプレートの座屈を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、本発明による柱とブレースの接続構造の他の態様において、
前記当接プレートの中央位置に前記立ちプレートが固定されており、
前記立ちプレートの左右の広幅面にそれぞれ、前記補強リブが固定されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、立ちプレートの左右の広幅面に補強リブが固定されていることにより、補強リブによる立ちプレートの座屈防止効果が一層高められ、また、それぞれの補強リブの傾斜部を介して複数の頭付き固定手段にて接続金物が柱に固定されることから、地震時の接続金物(及びブレース)の滑り防止効果が一層高められる。
【0023】
また、本発明による柱とブレースの接続構造の他の態様において、
前記ブレースと前記軸部のそれぞれの延設方向が、同一もしくは略同一であることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、ブレースの延設方向と頭付き固定手段の軸部の延設方向が同一もしくは略同一であることにより、ブレースに軸力(引っ張り)が作用した際に、この軸力に対して頭付き固定手段が効果的に抵抗でき、接続金物が柱から引き抜かれる引き抜き力(ブレースからの軸力)に対する引き抜き抵抗力の高い、柱とブレースの接続構造を形成できる。
【0025】
また、本発明による柱とブレースの接続構造の他の態様は、
間隔を置いて配設される二本の前記柱のうち、一方の該柱の長手方向の途中位置に前記接続金物が配設され、他方の該柱の上下端と該接続金物を二本の前記ブレースが繋いでいる、K型ブレースを有しており、
前記立ちプレートには、二本の前記ブレースの端部が固定される二つの前記固定孔が開設され、
前記立ちプレートの左右の広幅面において、二本の前記ブレースに対応する位置にそれぞれ前記補強リブが固定され、
前記当接プレートには、それぞれの前記補強リブの備える前記第一挿通孔に対応する前記第二挿通孔が開設されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、立ちプレートの左右の広幅面において、K型ブレースを構成する二本のブレースに対応する位置に補強リブを備え、当接プレートにおいて、それぞれの補強リブの備える第一挿通孔に対応する第二挿通孔が開設されていることにより、柱の長手方向に傾斜した斜め方向に延設する計四本の頭付き固定手段にて、接続金物が柱に強固に固定されている、柱とブレースの接続構造を形成できる。
【0027】
また、本発明による柱とブレースの接続構造の他の態様は、
前記柱が木質柱であり、木質梁と該木質柱を有する木造軸組み架構に適用されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、地震時の水平荷重が作用した当初からブレースが効果的に機能し、従って耐震性能に優れた木造軸組み架構を形成することができる。
【0029】
また、本発明による柱とブレースを接続する接続金物の一態様は、
柱の側面に取り付けられて、柱とブレースを接続する接続金物であって、
前記側面に当接される当接プレートと、該当接プレートから立設する立ちプレートと、該立ちプレートの側面から側方に張り出す補強リブと、を備え、
前記補強リブは、前記柱の側面に対して傾斜する傾斜部を少なくとも備え、
前記立ちプレートには、前記ブレースの端部が固定される固定孔が開設され、
前記傾斜部には、頭部と軸部を備えた頭付き固定手段の該頭部が係合され、該軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、
前記当接プレートには、前記第一挿通孔を挿通された前記軸部がさらに挿通される第二挿通孔が開設されていることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、接続金物の補強リブが柱の側面に対して傾斜する傾斜部を備え、傾斜部に頭付き固定手段の軸部が挿通される第一挿通孔が開設され、接続金物の当接プレートに第一挿通孔を挿通された軸部が挿通される第二挿通孔が開設され、頭付き固定手段の頭部が傾斜部に係合され、第一挿通孔と第二挿通孔を挿通された軸部が柱に対して固定されることにより、補強リブの傾斜部にて軸部を柱に対してその長手方向に傾斜した方向に延設させることができる。このことにより、当接プレートと柱の側面との間に地震時のせん断力が作用した際の当接プレートの滑りが、斜め方向に延設して柱に固定される頭付き固定手段にて効果的に抑止される。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明の柱とブレースの接続構造と接続金物によれば、頭付き固定手段にて柱に固定されている接続金物を介して柱とブレースが接続される架構において、架構に地震時の水平荷重が作用した当初からブレースが機能することができ、耐震性能に優れた架構を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】K型のブレースを備えた従来の架構の正面図であって、地震時の水平荷重が作用している状態を示す図である。
【
図3】従来の架構に適用される、従来の接続金物の一例の斜視図である。
【
図4】従来の架構に適用されているブレースの地震時の軸力-変形特性を示す図である。
【
図5】実施形態に係る柱とブレースの接続構造を備えた架構の正面図であって、地震時の水平荷重が作用している状態を示す図である。
【
図6】
図5のVI部の拡大図であって、実施形態に係る柱とブレースを接続する接続金物が柱に接続されている状態を拡大して示す図である。
【
図7】実施形態に係る柱とブレースを接続する接続金物の一例の斜視図である。
【
図8】実施形態に係る柱とブレースの接続構造を形成する、ブレースの地震時の軸力-変形特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係る柱とブレースの接続構造と、柱とブレースを接続する接続金物について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0034】
[実施形態に係る柱とブレースの接続構造、及び柱とブレースを接続する接続金物]
図5乃至
図8を参照して、実施形態に係る柱とブレースの接続構造の一例と、柱とブレースを接続する接続金物の一例について説明する。ここで、
図5は、実施形態に係る柱とブレースの接続構造を備えた架構の正面図であって、地震時の水平荷重が作用している状態を示す図であり、
図6は、
図5のVI部の拡大図であって、実施形態に係る柱とブレースを接続する接続金物が柱に接続されている状態を拡大して示す図である。また、
図7は、実施形態に係る柱とブレースを接続する接続金物の一例の斜視図であり、
図8は、実施形態に係る柱とブレースの接続構造を形成する、ブレースの地震時の軸力-変形特性を示す図である。
【0035】
図1に示す従来の柱とブレースの接続構造70に対して、
図5に示す実施形態に係る柱とブレースの接続構造80は、実施形態に係る接続金物50が接続金物30と異なる構成を有し、接続金物30,50の構成の相違に起因して、柱13に対して接続金物50を固定する頭付き固定手段40の延設方向が相違している。
【0036】
図5に示す架構65は木造軸組み架構であり、梁11と、土台14と、一対の柱12,13と、正面視K型の二本のブレース21とを有する。梁11及び土台14と、柱12,13とは、接続金物15と接続ボルト16により相互に接続される。また、一方の柱13の中央位置には接続金物50が複数(図示例は
図7に示すように四本)の頭付き固定手段40を介して接続され、他方の柱12と梁11及び土台14との隅角部19にはそれぞれガセットプレート17が取り付けられており、接続金物50とガセットプレート17に対して、ブレース21の両端にある接続治具22が接続ボルト18を介して接続されている。尚、接続構造80が適用される架構は、図示例以外にも、正面視矩形の架構の対角線に沿うようにブレースが取り付けられている形態や、ブレースが内蔵された耐力壁が架構の内部に設けられている形態等であってもよく、これらの形態においても、ブレースと柱の間に図示例の接続金物50やその変形例(図示せず)が適用される。
【0037】
二本のブレース21の延設方向L1に対して、頭付き固定手段40の延設方向L2は略同一に設定されており、いずれも、柱13の長手方向(鉛直方向)に傾斜した斜め方向である。ここで、図示例の頭付き固定手段40はビスであるが、頭付き固定手段はその他、ネジや釘、ボルト等であってもよい。尚、従来の接続構造70では、
図1に示すように、頭付き固定手段40は、柱13の長手方向に直交する水平方向に延設している。ここで、延設方向L1,L2が略同一とは、双方の延設方向が例えば20度以下程度の角度の相違を有することを意味している。延設方向L1,L2は、図示例のように僅かに相違する略同一の方向の他に、双方が同一の方向に設定されていてもよい。
【0038】
図6及び
図7に示すように、接続金物50は、柱13の側面13aに当接される平面視矩形の当接プレート51と、当接プレート51から立設する立ちプレート52と、立ちプレート52の左右の側面(左右の広幅面)から側方に張り出す計四つの補強リブ53とを有する。
【0039】
立ちプレート52には、二本のブレース21の端部が固定される二つの固定孔56が開設されており、立ちプレート52の左右の広幅面において、各固定孔56(各ブレース221)に対応する位置に、それぞれ二つで一組の補強リブ53(計二組の補強リブ53)が固定されている。
【0040】
図7に示すように、補強リブ53は、立ちプレート52の上端から当接プレート51に対して垂直に延設する垂直部53a(
図6に示すように、垂直部53aは柱13の長手方向に直交する水平方向へ延設)と、垂直部53aから立ちプレート52の外側へ屈曲して、柱13の長手方向に傾斜した斜め方向へ延設する傾斜部53bとを有する。
【0041】
図6及び
図7に示すように、傾斜部53bには、頭付き固定手段40の軸部41が挿通される第一挿通孔54が開設されており、当接プレート51には、第一挿通孔54に挿通された軸部41がさらに挿通される第二挿通孔55が開設されている。
【0042】
図6に示すように、第一挿通孔54及び第二挿通孔55の二つの挿通孔を挿通された軸部41は、その延設方向L2が一義的に設定され、所望の延設方向L2に延設する軸部41が柱13に刺し込まれることになる。このように、軸部41の延設方向L2が一義的に設定されることから、頭付き固定手段40の柱13に対する固定方向がぶれるといった問題は生じない。また、頭付き固定手段40の打ち込み施工においても、二つの第一挿通孔54と第二挿通孔55が打ち込み方向の誘導孔となることから、打ち込み施工性が良好になる。
【0043】
図6に示すように、頭付き固定手段40は、その軸部41が対応する第一挿通孔54及び第二挿通孔55に挿通されて柱13に刺し込まれ、頭部42が傾斜部53bに係合される。
【0044】
頭付き固定手段40の頭部42が傾斜部53bに係合され、第一挿通孔54と第二挿通孔55を挿通された軸部41の一部が柱13に対してその長手方向に傾斜した方向L2に固定されることにより、当接プレート51と柱13の側面13aとの間に地震時のせん断力Sが作用した際の当接プレート51の滑りが、斜め方向L2に延設して柱13に固定される頭付き固定手段40にて効果的に抑止される。
【0045】
例えば、
図2に示す従来の接続構造70では、頭付き固定手段40の軸部41が柱13の長手方向に直交する水平方向に固定されていることから、この水平方向に直交する方向のせん断力Sが作用した際に、挿通孔34と軸部41との間のクリアランス分だけ接続金物30が柱13の側面13a上を滑っていたのに対して、
図6に示す接続構造80では、柱13の長手方向に傾斜する方向L2に頭付き固定手段40が延設して柱13に固定されていることから、柱13の長手方向に沿うせん断力Sが作用した際に頭付き固定手段40が有効に抵抗することにより、接続金物50とブレース21の滑りが抑止されることになる。
【0046】
従って、従来の接続構造70では、
図4に示すように、地震時の水平荷重Qが架構60に作用する初期の段階において、接続金物30とブレース21がδ1滑ることにより、ブレース21が初期段階から機能しないことに対して、接続構造80では、地震時の水平荷重Qが架構65に作用した際の接続金物50とブレース21の滑りが抑止されていることから、
図8に示すように、水平荷重Qが架構65に作用する初期の段階からブレース21が機能することになる。このことにより、耐震性能に優れた架構65(木造軸組み架構)を形成できる。
【0047】
また、接続金物50では、補強リブ53が垂直部53aと傾斜部53bを備えることにより、垂直部53aは、当接プレート51から立設する立ちプレート52の座屈を主として防止する機能を発揮し、傾斜部53b(の第一挿通孔54)は、当接プレート51の第二挿通孔55とともに頭付き固定手段40を所望の斜め方向L2に延設させて柱13に固定させ、地震時のせん断力作用時の接続金物50及びブレース21の滑り防止機能を発揮する。
【0048】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0049】
11:梁
12,13:柱
13a:側面
14:土台
15:接続金物
16:接続ボルト
17:ガセットプレート
18:接続ボルト
19:隅角部
21:ブレース
22:接続治具
30:接続金物
31:当接プレート
32:立ちプレート
33:補強リブ
34:挿通孔
35:固定孔
40:頭付き固定手段
41:軸部
42:頭部
50:接続金物
51:当接プレート
52:立ちプレート
53:補強リブ
53a:垂直部
53b:傾斜部
54:第一挿通孔
55:第二挿通孔
56:固定孔
60,65:架構
70、80:柱とブレースの接続構造(接続構造)
Q:水平荷重
N:軸力
S:せん断力