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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】風力発電機の組立方法及び組立システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/10 20160101AFI20241126BHJP
【FI】
F03D13/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022208058
(22)【出願日】2022-12-26
(65)【公開番号】P2024092259
(43)【公開日】2024-07-08
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153605
【氏名又は名称】株式会社巴技研
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 久之
(72)【発明者】
【氏名】松坂 昇
(72)【発明者】
【氏名】五十畑 登
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ目 祥
(72)【発明者】
【氏名】南木 太智
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178633(JP,A)
【文献】特開2020-041269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機のタワーの周囲に設置される支柱と、
前記支柱に設置されて前記支柱に沿って昇降する昇降装置と、
前記昇降装置に設置されて、前記タワーと接近、離間する水平方向に移動する門型フレームと、
を備える組立システムを用いる風力発電機の組立方法であって、
前記風力発電機のナセルを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記ナセルを前記先端部の直上まで移動させて、前記ナセルを前記タワーに接続するナセル設置ステップと、
前記風力発電機のハブを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの前記先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記ハブを前記ナセルとの対向位置まで移動させて、前記ハブを前記ナセルに接続するハブ設置ステップと、
前記ハブの前記風力発電機の複数のブレードとの接続部が前記ブレードの基端部と対向する位置となるよう、前記ナセルを前記タワーの中心軸まわりに回転するナセル回転ステップと、
前記風力発電機の複数のブレードのうち1枚のブレードを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの前記先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記1枚のブレードを前記ハブとの対向位置まで移動させて、前記1枚のブレードを前記ハブに接続し、前記複数のブレードの残りも同様に1枚ずつ前記昇降装置、前記門型フレームを利用して前記ハブに接続するブレード設置ステップと、
を含む風力発電機の組立方法。
【請求項2】
前記支柱は、前記タワーの周囲に立設される四本の柱材と、隣接する前記柱材を連結する梁材とを有し、前記中心軸まわりに、前記柱材が角、前記梁材が辺となる四角形状に設置され、
前記昇降装置は、前記支柱の前記四角形状の一組の対辺に沿って水平方向に延在して配置され、前記門型フレームが移動可能に設置される一対のクライミングビームと、前記支柱の前記四本の柱材のうちの二本に連結され、前記二本の柱材に沿って昇降可能な一対の尺取装置と、を有し、
前記クライミングビームは、基端側が前記尺取装置と接続され、先端側が前記支柱から離間する側に延在する第1ビームと、前記第1ビームの前記基端側または前記先端側に前記第1ビームと同一方向に延在するよう連結される第2ビームと、を有し、前記ハブ設置ステップまでは、前記第2ビームは前記第1ビームの前記基端側に連結されており、
前記ハブ設置ステップと前記ブレード設置ステップとの間で、前記クライミングビームの前記第2ビームを前記第1ビームの前記基端側から取り外して、前記第1ビームの前記先端側に連結し直し、前記クライミングビームを前記支柱から離れる方向に延伸する延伸ステップ、
を含む、請求項に記載の風力発電機の組立方法。
【請求項3】
前記組立システムは、前記門型フレームに吊り下げられ、前記ブレードを吊り下げて支持するブレード吊ビームをさらに備え、
前記ブレード吊ビームは、長手方向が前記ブレードの延在方向と一致するよう前記ブレードを支持し、かつ、前記長手方向の両端の二箇所にて前記ブレードを支持し、二箇所の支持部のうち一方に前記ブレードの軸心まわりの回転角を調整するに回転角調整装置を有し、他方に前記ブレードの水平方向に対する傾斜角を調整する傾斜角調整装置を有し、
前記ブレード設置ステップは、
前記延伸ステップにて取り付け直された前記第2ビーム上に前記門型フレームを移動する移動ステップと、
前記門型フレームに前記ブレード吊ビームを設置する吊りビーム設置ステップと、
前記門型フレームを移動させて前記ブレードを前記ハブの前記接続部に接近させる接近ステップと、
前記回転角調整装置により前記接続部に対する前記ブレードの前記回転角を調整する回転角調整ステップと、
前記傾斜角調整装置により前記接続部に対する前記ブレードの前記傾斜角を調整する傾斜角調整ステップと、
を含む、請求項に記載の風力発電機の組立方法。
【請求項4】
前記門型フレームは、前記一対のクライミングビームからそれぞれ上方に延在する一対の柱材と、前記一対の柱材の上端同士を連結する梁材と、を有し、
前記門型フレームの前記梁材は、前記梁材の中間部分で連結、分離可能な第1梁材と第2梁材とを有し、前記第1梁材は前記一対の柱材の一方に回動可能に連結され、前記第2梁材は前記一対の柱材の他方に回動可能に連結され、
前記ブレード設置ステップは、
前記複数のブレードの一つを前記ハブに接続した後に、前記門型フレームの前記第1梁材及び前記第2梁材を回動させて前記ブレードの上方から回避させる回避ステップと、
前記回避ステップの後に前記昇降装置を下降させる下降ステップと、
前記下降ステップにより前記門型フレームの上端部が前記設置されたブレードより下方まで下降した後に、前記門型フレームの前記第1梁材及び前記第2梁材を回動させて前記一対の柱材の間で連結させる連結ステップと、
を含む、請求項に記載の風力発電機の組立方法。
【請求項5】
風力発電機のタワーの周囲に設置される支柱と、
前記支柱に設置されて前記支柱に沿って昇降し、前記風力発電機のナセル、ハブ、及び複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に前記タワーの先端部まで上昇させる昇降装置と、
前記昇降装置に設置されて、前記タワーと接近、離間する水平方向に移動可能であり、前記ナセル、前記ハブ、及び前記複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に吊り下げ可能であり、前記昇降装置により上昇された前記ナセル、前記ハブ、及び前記複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に前記風力発電機の他部品との接続部まで水平移動させる門型フレームと、
を備え
前記門型フレームは、前記ナセルが前記タワーに接続され、前記ハブが前記ナセルに接続され、前記ハブの前記複数のブレードとの接続部が前記ブレードの基端部と対向する位置となるよう、前記ナセルが前記タワーの中心軸まわりに回転された後に、前記複数のブレードのうち1枚のブレードを前記ハブとの対向位置まで水平移動させて、前記1枚のブレードを前記ハブに接続し、
前記複数のブレードの残りも同様に1枚ずつ前記昇降装置、前記門型フレームを利用して前記ハブに接続される、
風力発電機の組立システム。
【請求項6】
前記支柱は、前記タワーの周囲に立設される四本の柱材と、隣接する前記柱材を連結する梁材とを有し、前記タワーの中心軸まわりに、前記柱材が角、前記梁材が辺となる四角形状に設置され、
前記昇降装置は、前記支柱の前記四角形状の一組の対辺に沿って水平方向に延在して配置され、前記門型フレームが移動可能に設置される一対のクライミングビームと、前記支柱の前記四本の柱材のうちの二本に連結され、前記二本の柱材に沿って昇降可能な一対の尺取装置と、を有し、
前記クライミングビームは、基端側が前記尺取装置と接続され、先端側が前記支柱から離間する側に延在する第1ビームと、前記第1ビームの前記基端側または前記先端側に前記第1ビームと同一方向に延在するよう連結される第2ビームと、を有し、
前記第2ビームは、
前記ナセル及び前記ハブを取り付ける際には、前記第1ビームの前記基端側に連結され、
前記ブレードを取り付ける際には、前記第1ビームの前記基端側から取り外され、前記第1ビームの前記先端側に連結し直され、前記クライミングビームが前記支柱から離れる方向に延伸される、
請求項に記載の風力発電機の組立システム。
【請求項7】
前記門型フレームに吊り下げられ、前記ブレードを吊り下げて支持するブレード吊ビームをさらに備え、
前記ブレード吊ビームは、長手方向が前記ブレードの延在方向と一致するよう前記ブレードを支持し、かつ、前記長手方向の両端の二箇所にて前記ブレードを支持し、二箇所の支持部のうち一方に前記ブレードの軸心まわりの回転角を調整するに回転角調整装置を有し、他方に前記ブレードの水平方向に対する傾斜角を調整する傾斜角調整装置を有する、
請求項に記載の風力発電機の組立システム。
【請求項8】
前記門型フレームは、前記一対のクライミングビームからそれぞれ上方に延在する一対の柱材と、前記一対の柱材の上端同士を連結する梁材と、を有し、
前記門型フレームの前記梁材は、前記梁材の中間部分で連結、分離可能な第1梁材と第2梁材とを有し、前記第1梁材は前記一対の柱材の一方に回動可能に連結され、前記第2梁材は前記一対の柱材の他方に回動可能に連結され、
前記門型フレームは、前記梁材の前記第1梁材と前記第2梁材とを開き前記一対の柱材が分離されたときに前記一対の柱材が倒れることを防止するための倒れ止めを有する、
請求項に記載の風力発電機の組立システム。
【請求項9】
前記梁材は、前記ナセル、前記ハブ、及び前記複数のブレードの1枚ずつを吊り下げる位置を、前記梁材の延在方向に沿って移動可能なスライド機構を有する、
請求項に記載の風力発電機の組立システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電機の組立方法及び組立システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電事業が再生可能エネルギを利用した発電事業の一つとして注目されており、発電効率を高めるために風力発電機を大型化するニーズがある。
【0003】
従来、風力発電機の施工にはクレーンが用いられ、風力発電機のタワーの組み立てや、タワー上端部へのナセルやハブなどの設置の際には、クレーンにより各部品が吊り下げられて設置場所まで持ち上げられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-145714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の風力発電機の組立工法では、風力発電機が大型化すると、施工に用いられるクレーンも大型化する必要が生じる。クレーンの大型化に伴い、クレーンの設置場所の面積も増大するので、施工に必要な地面領域が増大する問題がある。また、風力発電機やクレーンの大型化によって、強風時の施工性が悪化する問題もある。
【0006】
本開示は、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる風力発電機の組立方法及び組立システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係る風力発電機の組立方法は、風力発電機のタワーの周囲に設置される支柱と、前記支柱に設置されて前記支柱に沿って昇降する昇降装置と、前記昇降装置に設置されて、前記タワーと接近、離間する水平方向に移動する門型フレームと、を備える組立システムを用いる風力発電機の組立方法であって、前記風力発電機のナセルを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記ナセルを前記先端部の直上まで移動させて、前記ナセルを前記タワーに接続するナセル設置ステップと、前記風力発電機のハブを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの前記先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記ハブを前記ナセルとの対向位置まで移動させて、前記ハブを前記ナセルに接続するハブ設置ステップと、前記ハブの前記風力発電機の複数のブレードとの接続部が前記ブレードの基端部と対向する位置となるよう、前記ナセルを前記タワーの中心軸まわりに回転するナセル回転ステップと、前記風力発電機の複数のブレードのうち1枚のブレードを前記門型フレームに吊り下げて前記昇降装置により前記タワーの前記先端部まで上昇させ、前記門型フレームを水平移動して前記1枚のブレードを前記ハブとの対向位置まで移動させて、前記1枚のブレードを前記ハブに接続し、前記複数のブレードの残りも同様に1枚ずつ前記昇降装置、前記門型フレームを利用して前記ハブに接続するブレード設置ステップと、を含む。
【0008】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る風力発電機の組立システムは、風力発電機のタワーの周囲に設置される支柱と、前記支柱に設置されて前記支柱に沿って昇降し、前記風力発電機のナセル、ハブ、及び複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に前記タワーの先端部まで上昇させる昇降装置と、前記昇降装置に設置されて、前記タワーと接近、離間する水平方向に移動可能であり、前記ナセル、前記ハブ、及び前記複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に吊り下げ可能であり、前記昇降装置により上昇された前記ナセル、前記ハブ、及び前記複数のブレードの1枚ずつをそれぞれ個別に前記風力発電機の他部品との接続部まで水平移動させる門型フレームと、を備え、前記門型フレームは、前記ナセルが前記タワーに接続され、前記ハブが前記ナセルに接続され、前記ハブの前記複数のブレードとの接続部が前記ブレードの基端部と対向する位置となるよう、前記ナセルが前記タワーの中心軸まわりに回転された後に、前記複数のブレードのうち1枚のブレードを前記ハブとの対向位置まで水平移動させて、前記1枚のブレードを前記ハブに接続し、前記複数のブレードの残りも同様に1枚ずつ前記昇降装置、前記門型フレームを利用して前記ハブに接続される
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる風力発電機の組立方法及び組立システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る風力発電機の概略構成を示す図
図2】実施形態に係る風力発電機の組立システムの概略構成を示す図
図3】リフトアップ装置の側面図
図4】リフトアップ装置の平面図
図5】門型フレームの正面図
図6】門型フレームの側面図
図7】門型フレームの平面図
図8】門型フレームにブレード吊ビームを設置した状態を示す正面図
図9】門型フレームにブレード吊ビームを設置した状態を示す側面図
図10】門型フレームにブレード吊ビームを設置した状態を示す平面図
図11】風力発電機の組立手順の第1段階を示す側面図
図12】風力発電機の組立手順の第2段階を示す側面図
図13】風力発電機の組立手順の第3段階を示す側面図
図14】風力発電機の組立手順の第4段階を示す側面図
図15】風力発電機の組立手順の第5段階を示す側面図
図16】風力発電機の組立手順の第6段階を示す側面図
図17】風力発電機の組立手順の第7段階を示す側面図
図18図17に示す第7段階の平面図
図19】風力発電機の組立手順の第8段階を示す側面図
図20図19に示す第8段階の平面図
図21】風力発電機の組立手順の第9段階を示す側面図
図22図21に示す第9段階の平面図
図23】風力発電機の組立手順の第10段階を示す側面図
図24】風力発電機の組立手順の第11段階を示す側面図
図25図24に示す第11段階の平面図
図26】風力発電機の組立手順の第12段階を示す側面図
図27】風力発電機の組立手順の第13段階を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X方向は、門型フレーム30の移動方向であり、X正方向側が支柱10への接近方向であり、X負方向側が離間方向である。Y方向は、リフトアップ装置20の一対のクライミングビーム23、24の対向方向であり、Y正方向側が一方のクライミングビーム23の側であり、Y負方向側が他方のクライミングビーム24の側である。また、以下では説明の便宜上、Z正方向側を上側、Z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0013】
<風力発電機の概略構成>
図1は、実施形態に係る風力発電機100の概略構成を示す図である。図1に示すように、風力発電機100は、タワー101と、ナセル102と、ハブ103と、複数のブレード104A~104Cとを備える。
【0014】
タワー101は、基礎の上に設置されて上方に立設される。タワー101は例えば円柱形状である。タワー101は、施工性を考慮してZ方向に沿って複数の部材に区分されて、施工現場で下方から順に組み立てられる。図1の例では、下方から順にボトムタワー101A、第2タワー101B、第3タワー101C、第4タワー101D、トップタワー101Eの五部材で構成されるが、部材数はこれに限られない。なお、図1では、ボトムタワー101Aの下端より上方の位置に水平方向に一点鎖線が描かれているが、この一点鎖線は施工現場の地表面を表している。図11以降の図面でも同様である。
【0015】
ナセル102は、タワー101の上端部に取り付けられる。ナセル102は、例えばタワーの中心軸C1まわりに回転可能に設置される。
【0016】
ハブ103は、ナセル102の一端(図1ではX負方向側の端部)に取り付けられる。ハブ103は、ナセル102に対して、ナセル102の長手方向に沿う回転軸C2まわりに回転可能に設置される。
【0017】
複数のブレード104A~104Cは、ハブ103の回転軸C2に対して径方向外側に延在する長尺状の部材であり、それぞれの基端部がハブ103の3つの接続部103A~103Cのそれぞれに接続される。複数のブレード104A~104Cは、回転軸C2まわりの周方向に略等間隔で設置されるのが好ましい。図1の例では、第1ブレード104A、第2ブレード104B、第3ブレード104Cの3枚のブレードを有する構成であり、各ブレード104A~104Cは回転軸C2まわりに約120度ずつの間隔で配置されている。同様に、各ブレード104A、104B、104Cが接続されるハブ103の接続部103A、103B、103Cも、回転軸C2まわりに約120度ずつの間隔で設けられる。
【0018】
風力発電機100では、ハブ103とブレード104A~104Cとが回転体として一体的に回転し、ナセル102にて回転体の回転を受けて発電が行われる。
【0019】
<風力発電機の組立システム1の概略構成>
図2図10を参照して、本実施形態に係る風力発電機の組立システム1の構成について説明する。図2は、実施形態に係る風力発電機の組立システム1の概略構成を示す図である。図2に示す風力発電機の組立システム1(以下では単に「組立システム1」とも表記する場合がある)は、図1に示した風力発電機100を組み立てるためのシステムである。
【0020】
図2に示すように、組立システム1は、支柱10と、リフトアップ装置20(昇降装置)と、門型フレーム30と、を備える。
【0021】
支柱10は、風力発電機100のタワー101の周囲に設置される。支柱10は、タワー101の周囲に立設される四本の柱材11、12、13、14と、隣接する柱材を連結する複数の梁材15とを有する。支柱10は、タワー101の中心軸C1まわりに、柱材11、12、13、14が角、梁材15が辺となる四角形状に設置される。梁材15は、例えば図2に示すように、それぞれ水平方向に延在し、Z方向に沿って略等間隔に複数本が配置されている。
【0022】
リフトアップ装置20は、支柱10に設置されて、支柱10に沿って図2に矢印Aで示す上下方向に昇降する。リフトアップ装置20は、風力発電機100のナセル102、ハブ103、及び複数のブレードの1枚ずつ(第1ブレード104A、第2ブレード104B、第3ブレード104C)をそれぞれ個別にタワー101の先端部まで上昇させる。
【0023】
リフトアップ装置20は、一対のクライミングビーム23、24と、一対の尺取装置21、22と、を有する。一対のクライミングビーム23、24は、支柱10の四角形状の一組の対辺に沿って水平方向に延在して配置され、門型フレーム30が移動可能に設置される。一対の尺取装置21、22は、支柱10の四本の柱材のうちの二本(図2の例ではX負方向側に配置される二本の柱材11、12)に連結され、二本の柱材11、12に沿って昇降可能な装置である。尺取装置21、22は、例えば油圧シリンダであり、上部に連結されるクライミングビーム23、24をジャッキアップする。
【0024】
門型フレーム30は、リフトアップ装置20に設置されて、図2に矢印Bで示すタワー101と接近、離間する水平方向に移動する。門型フレーム30は、風力発電機100のナセル102、ハブ103、第1ブレード104A、第2ブレード104B、第3ブレード104Cをそれぞれ個別に吊り下げ可能であり、リフトアップ装置20により上昇されたナセル102、ハブ103、第1ブレード104A、第2ブレード104B、第3ブレード104Cをそれぞれ個別に風力発電機100の他部品との接続部まで水平移動させる。
【0025】
門型フレーム30は、リフトアップ装置20の一対のクライミングビーム23、24からそれぞれ上方に延在する一対の柱材33、34と、一対の柱材33、34の上端同士を連結する梁材35と、を有する。また、梁材35の中央には、風力発電機100の各部品を門型フレーム30に吊り下げるための吊下装置38が設けられる。吊下装置38は、例えばワイヤ39(図5図8など参照)を介して部品を吊り下げて門型フレーム30に対して所定の高さ位置に保持することができる。
【0026】
図3は、リフトアップ装置20の側面図である。図4は、リフトアップ装置20の平面図である。図3図4に示すように、リフトアップ装置20のクライミングビーム23、24は、それぞれ第1ビーム23A、24Aと、第2ビーム23B、24Bの二部材で構成される。
【0027】
第1ビーム23A、24Aは、基端側(X正方向側)がそれぞれ尺取装置21、22と接続され、先端側(X負方向側)が支柱10から離間する側に延在する。第1ビーム23A、24Aの基端部は、尺取装置21、22の上端部に固定される。また、図3に示すように、第1ビーム23A、24Aの先端側下部には、それぞれ尺取装置21、22の下部と連結する束材26が設けられる。
【0028】
第2ビーム23B、24Bは、第1ビーム23A、24Aの基端側または先端側に選択的に連結され、第1ビーム23A、24Aと同一方向に延在するよう連結される。第2ビーム23B、24Bは、ナセル102及びハブ103を取り付ける際には、第1ビーム23A、24Aの基端側に連結される。図3図4ではこの状態を実線で図示している。第2ビーム23B、24Bが第1ビーム23A、24Aの基端側に連結される状態では、図3に示すように、第2ビーム23B、24Bの先端側(X正方向側)下部には、それぞれ尺取装置21、22の下部と連結する束材26が設けられる。
【0029】
特に本実施形態では、図4に点線で示すように、第2ビーム23B、24Bは、ブレード104A~104Cを取り付ける際には、第1ビーム23A、24Aの基端側から取り外され、第1ビーム23A、24Aの先端側に連結し直される。これにより、クライミングビーム23、24が支柱10から離れる方向(X負方向)に延伸される。
【0030】
また、一対のクライミングビーム23、24は、Y方向に延在するつなぎ梁25によって連結されている。つなぎ梁25は、例えば図4に示すように、第1ビーム23A、24Aの基端側と先端側に一本ずつ、第2ビーム23B、24Bの先端側に一本ずつ設置することができる。なお、つなぎ梁25の配置や数は図4などの例に限られない。
【0031】
また、図4に示すように、組立システム1の支柱10の各柱材11~14と、風力発電機100のタワー101との間には、複数の支持機構16が設けられる。各支持機構16を介して、タワー101は支柱10に支持される。また、支持機構16は、例えば各柱材11~14の同一の高さ位置に設置される4つで一組を構成し、各組がタワー101を支柱10の同一高さの四方向から支持することができる。支持機構16の各組は、上下方向に離間して支柱10に設けられる。支持機構16は、例えば各柱材11~14とタワー101の中心C1とを結ぶ一方向へ伸縮可能な油圧アクチュエータであり、タワー101の外周面を各柱材11~14から押圧することによって、各組がタワー101を支持することができる。
【0032】
図5は、門型フレーム30の正面図である。図6は、門型フレーム30の側面図である。図7は、門型フレーム30の平面図である。
【0033】
図5図7に示すように、門型フレーム30は一対の移動ベース31、32を有する。移動ベース31、32は、それぞれ複数の車輪31A、32Aを有し、車輪31A、32Aによってそれぞれクライミングビーム23、24上を移動可能に設置される。車輪31A、32Aは、例えば移動ベース31、32内に設置されるモータなどの駆動源によって駆動力が付与されて回転駆動することができる。
【0034】
なお、門型フレーム30の車輪31A、32Aの移動方向をX方向により安定化するために、クライミングビーム23、24の上面に車輪31A、32Aを誘導するためのレールなどの誘導部材を設置してもよい。また、移動ベース31、32は、少なくとも門型フレーム30をX方向に移動可能であればよく、例えばベアリングなど車輪31A、32A以外の要素を適用してもよい。
【0035】
門型フレーム30の一対の柱材33、34は、それぞれ移動ベース31、32から上方に延在するよう設置される。
【0036】
梁材35の略中央の位置には、吊下装置38が設置される。吊下装置38は、ワイヤ39などを介して、タワー101の各ブロック101A~101Eや、ナセル102、ハブ103などの部品を吊り下げることができる。吊下装置38は、例えばウインチ装置などを用いて、梁材35と各部品との間に介在するワイヤ39の長さを調整する機能を有する構成でもよい。これにより、門型フレーム30に吊り下げられた風力発電機100の各部品のZ方向の位置を任意に調整できるので、他部品との接続時の位置決め精度を向上でき、作業効率を向上できる。
【0037】
一対の柱材33、34を連結する梁材35は、風力発電機100の各部品を吊り下げる位置を、梁材35の延在方向(Y方向)に沿って移動可能なスライド機構を有する構成でもよい。このようなスライド機構を設けることにより、門型フレーム30に吊り下げられた風力発電機100の各部品のY方向の位置を任意に調整できるので、他部品との接続時の位置決め精度を向上でき、作業効率を向上できる。また、このスライド機構を吊下装置38のZ方向のワイヤ調整機構と併用すれば、門型フレーム30に吊り下げられた風力発電機100の各部品のZ方向及びY方向の二方向の位置を任意に調整できるので、他部品との接続時の位置決め精度をさらに向上でき、作業効率をさらに向上できる。
【0038】
図5図7に示すように、門型フレーム30の梁材35は、梁材35の延在方向の中間部分で連結、分離可能な第1梁材36と第2梁材37とを有する。第1梁材36は、一対の柱材のうち一方の柱材33に回動可能に連結され、第2梁材37は、他方の柱材34に回動可能に連結される。図5図7の例では、第1梁材36が第2梁材37に対して長く形成され、両者が一直線状に連結した状態では梁材35の中央部分が第1梁材36の先端部になるように構成されている。したがって、梁材35の中央に設置される吊下装置38は、第1梁材36の先端部に設置されている。
【0039】
また、図7に矢印Cで示すように、第1梁材36はX正方向側に回動するように設置される。また、図7に矢印Dで示すように、第2梁材37はX負方向側に回動するよう設置される。このように第1梁材36と第2梁材37との回動方向を設定する理由は、本実施形態ではブレード104A~104Cを設置する際にブレード104A~104Cの基端側がY負方向側に傾斜するため(図22など参照)、設置後のブレード104A~104Cとの干渉を避けるのに適した方向であるためである。
【0040】
なお、図2図5図8に示すように、門型フレーム30は、一対の移動ベース31、32の間を連結する倒れ止め53を有する。倒れ止め53は、例えば略水平方向に延在する梁状部材である。このように門型フレーム30に倒れ止め53を設けることにより、梁材35の第1梁材36と第2梁材37とを開き、一対の柱材33、34が分離されたときに、一対の柱材33、34が倒れることを防止することができる。なお、倒れ止め53は、門型フレーム30が吊り下げる風力発電機100の各要素の下端より下方に配置されればよく、一対の柱材33、34の間を連結する構成でもよい。倒れ止め53は、常設でもよいし、梁材35の第1梁材36と第2梁材37とを開く作業を行う前に逐次設置される構成でもよい。
【0041】
図8は、門型フレーム30にブレード吊ビーム40を設置した状態を示す正面図である。図9は、門型フレーム30にブレード吊ビーム40を設置した状態を示す側面図である。図10は、門型フレーム30にブレード吊ビーム40を設置した状態を示す平面図である。
【0042】
図8図10に示すように、組立システム1はブレード吊ビーム40をさらに備える。ブレード吊ビーム40は、門型フレーム30に吊り下げられ、ブレード104A~104Cを吊り下げて支持するための要素である。図8図10では、ブレード吊ビーム40により吊下げられた状態のブレード104A~104Cの模式的は外形を点線で図示している。
【0043】
ブレード吊ビーム40は、長手方向がブレード104A~104Cの延在方向と一致するようブレード104A~104Cを支持し、かつ、長手方向の両端の二箇所41A、41Bにてブレード104A~104Cを支持する。二箇所の支持部のうち一方の端部41A側の支持部には、ブレード104A~104Cの軸心C3まわりの回転角θを調整するに回転角調整装置51を有し、他方の端部41B側の支持部には、ブレード104A~104Cの水平方向に対する傾斜角αを調整する傾斜角調整装置52を有する。
【0044】
ブレード吊ビーム40は、メインフレーム41と先端フレーム42とを有する。メインフレーム41は、ブレード104A~104Cの長手方向に延在する。先端フレーム42は、メインフレーム41に直交する相対的に短いフレームであり、メインフレーム41の一方の端部41Aに設けられる。
【0045】
メインフレーム41の上面には、延在方向に沿って所定間隔をとって2つの吊りフック43が設けられる。門型フレーム30の吊下装置38に連結されるワイヤ39は、これらの2つの吊りフック43に係止され、これによりブレード吊ビーム40が門型フレーム30に吊り下げられる。
【0046】
先端フレーム42の両端には、一対のキャプスタン44が内蔵されている。キャプスタン44は、回転軸がメインフレーム41の延在方向と同方向となるように設置される。図8に示すように、一対のキャプスタン44には環状のワイヤ47が掛けまわされる。このワイヤ47は吊り下げ対象のブレード104A~104Cの下方にも掛けまわされる。さらに、一対のキャプスタン44の少なくとも一方にはモータ45などの駆動源が連結され、モータ45から伝達される駆動力によって図8に矢印Eで示すようにキャプスタン44が回転駆動し、これによりワイヤ47もキャプスタン44やブレード104A~104Cに対する環状方向の相対的な位置が移動する。この結果、吊下げられているブレード104A~104Cを軸心C3まわりに回転させ、回転角θを調整することができる。
【0047】
すなわち、本実施形態では、一対のキャプスタン44と、モータ45と、ワイヤ47とが、回転角調整装置51を構成し、回転角調整装置51の機能を実現する。
【0048】
図9図10に示すように、メインフレーム41の他方の端部41Bにはウインチ46が設置される。ウインチ46は、ドラム46Aとモータ46Bとを有する。ドラム46Aには、滑車ワイヤ48の上方側の端部が巻回されている。滑車ワイヤ48の下部滑車には環状のワイヤ49が接続され、このワイヤ49はブレード104A~104Cの下方に掛けまわされる。
【0049】
モータ46Bが駆動すると駆動力がドラム46Aに伝達されてドラム46Aが回転駆動する。ドラム46Aには滑車ワイヤ48の端部が巻き付けられているので、ドラム46Aの回転方向に応じて、図9に矢印Fで示すように、滑車ワイヤ48が上下方向に移動できる。これにより、滑車ワイヤ48及びワイヤ49を介して、吊下げられているブレード104A~104Cもワイヤ49による巻回箇所が上下方向に移動する。この結果、ブレード104A~104Cの重心位置にあるY方向に沿った軸心C4を中心として、ブレード104A~104Cの水平方向に対する傾斜角αを調整することができる。
【0050】
すなわち、本実施形態では、ウインチ46と、滑車ワイヤ48と、ワイヤ49とが、傾斜角調整装置52を構成し、傾斜角調整装置52の機能を実現する。
【0051】
なお、ブレード吊ビーム40は、例えば図9に示すように、ブレード104A~104Cを両端部41A、41Bで支持しているときに、門型フレーム30の柱材33、34のX方向の位置にブレード104A~104Cの重心を配置でき、これによりブレード104A~104Cの姿勢が水平に保持しやすくできるのが好ましい。この構成は、例えばブレード104A~104Cを支持する各ワイヤ39、47、48、49の長さや、2つの吊りフック43の位置を調整することで実現できる。また、この構成の場合、図9に示すように重心を通り、ブレード104A~104Cを軸心C3と直交する回転軸C4まわりに、傾斜角調整装置52はブレード104A~104Cの傾斜角αを調整できる。
【0052】
また、図9に示すように、ブレード吊ビーム40は発電機50を備える構成でもよい。発電機50は、回転角調整装置51のモータ45と、傾斜角調整装置52のモータ46Bに電力を供給する。発電機50は、重心位置への影響を考慮すると、例えばメインフレーム41の2つの吊りフック43の中間位置に設置されるのが好ましい。
【0053】
なお、組立システム1の各要素である支柱10、リフトアップ装置20、門型フレーム30、ブレード吊ビーム40の各部品は、強度や耐久性を考慮すると金属製であるのが好ましい。
【0054】
次に、本実施形態に係る風力発電機の組立システム1の効果を説明する。本実施形態の組立システム1は、風力発電機100のタワー101の周囲に設置される支柱10と、支柱10に設置されて支柱10に沿って昇降し、風力発電機100のナセル102、ハブ103、及び複数のブレード104A~104Cの1枚ずつをそれぞれ個別にタワー101の先端部まで上昇させるリフトアップ装置20と、リフトアップ装置20に設置されて、タワー101と接近、離間する水平方向に移動可能であり、ナセル102、ハブ103、及び複数のブレード104A~104Cの1枚ずつをそれぞれ個別に吊り下げ可能であり、リフトアップ装置20により上昇されたナセル102、ハブ103、及び複数のブレード104A~104Cの1枚ずつをそれぞれ個別に風力発電機100の他部品との接続部まで水平移動させる門型フレーム30と、を備える。
【0055】
この構成により、風力発電機100の各部品をリフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用してタワー101上端の他部品との接続位置まで搬送することができるので、リフトアップ装置20が支柱10の下端の所定位置まで下降している状態で、風力発電機100の各部品を門型フレーム30に吊り下げる作業を行うことができる。つまり、風力発電機100の各部品を、クレーンを用いてタワー101上端の他部品との接続位置まで持ち上げる必要がなく、各部品を持ち上げる高さを従来手法より低く抑えることができるので、風力発電機100の各部品の運搬に用いるクレーンを従来手法より小型化できる。クレーンを小型化できると、クレーンの設置場所の面積も低減できる。また、クレーンの重量も軽量になるので、設置場所の地盤の強度の条件も緩和できる。さらに、風力発電機100が大型化しても、クレーンによる各部品を門型フレーム30に吊り下げる高さ位置は変わらず、組立システム1の支柱10の高さと、リフトアップ装置20の上昇距離が伸びるだけなので、例えば強風時などの悪条件下でも施工性が悪化する影響を受けずに済むことができ、施工性を向上できる。
【0056】
ところで、従来手法では、風力発電機が大型化し、クレーンによる各部品の持ち上げだけでは組立作業性が悪化する場合には、例えば地上やタワーの下方位置にてハブ103にブレード104A~104Cを接続して予め回転体を組み立てて、その後にタワー上端の設置位置まで組み立て後の回転体を持ち上げる手法も提案されている。このような従来手法の場合、施工に必要な地面領域として、回転体の直径、すなわちブレードの長径の約1.5倍程度の幅(本実施形態の場合Y方向の長さ)が必要となると考えられる。これに対して本実施形態の組立システム1では、風力発電機100のナセル102、ハブ103、及び複数のブレード104A~104Cの1枚ずつをそれぞれ個別に、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用してタワー101上端の他部品との接続位置まで搬送することができる。これにより、各部品の搬送時にY方向の寸法を門型フレーム30の幅に収めることができるので、従来手法に対して風力発電機100の施工に必要な地面領域をさらに縮小できる。この結果、本実施形態に係る風力発電機の組立システム1は、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる。
【0057】
また、本実施形態の組立システム1において、支柱10は、タワー101の周囲に立設される四本の柱材11~14と、隣接する柱材11~14を連結する梁材15とを有し、タワー101の中心軸C1まわりに、柱材11~14が角、梁材15が辺となる四角形状に設置される。リフトアップ装置20は、支柱10の四角形状の一組の対辺に沿って水平方向に延在して配置され、門型フレーム30が移動可能に設置される一対のクライミングビーム23、24と、支柱10の四本の柱材11~14のうちの二本(本実施形態で柱材11、12の二本)に連結され、二本の柱材11、12に沿って昇降可能な一対の尺取装置21、22と、を有する。クライミングビーム23、24は、基端側が尺取装置21、22と接続され、先端側が支柱10から離間する側に延在する第1ビーム23A、24Aと、第1ビーム23A、24Aの基端側または先端側に第1ビーム23A、24Aと同一方向に延在するよう連結される第2ビーム23B、24Bと、を有する。第2ビーム23B、24Bは、ナセル102及びハブ103を取り付ける際には、第1ビーム23A、24Aの基端側に連結され、ブレード104A~104Cを取り付ける際には、第1ビーム23A、24Aの基端側から取り外され、第1ビーム23A、24Aの先端側に連結し直され、クライミングビーム23、24が支柱10から離れる方向に延伸される。
【0058】
この構成により、ナセル102やハブ103に対して長尺のブレード104A~104Cを門型フレーム30に吊り下げるために、門型フレーム30の位置を支柱10に対して離すことが可能となる。これにより、リフトアップ装置20の支柱10に対する設置位置を二本の柱材11、12から変更しなくても、ブレード104A~104Cの基端部が支柱10やタワー101に接触することを回避して門型フレーム30に吊り下げることが可能となる。これにより、作業効率をさらに向上できる。
【0059】
また、本実施形態の組立システム1は、門型フレーム30に吊り下げられ、ブレード104A~104Cを吊り下げて支持するブレード吊ビーム40をさらに備える。ブレード吊ビーム40は、長手方向がブレード104A~104Cの延在方向と一致するようブレード104A~104Cを支持し、かつ、長手方向の両端41A、41Bの二箇所にてブレード104A~104Cを支持する。二箇所の支持部のうち一方41Aにブレード104A~104Cの軸心C3まわりの回転角θを調整するに回転角調整装置51を有し、他方41Bにブレード104A~104Cの水平方向に対する傾斜角αを調整する傾斜角調整装置52を有する。
【0060】
この構成により、ナセル102やハブ103に対して長尺のブレード104A~104Cを門型フレーム30に吊り下げる際に、長手方向がブレード104A~104Cの延在方向と一致するようブレード104A~104Cを支持する長尺状のブレード吊ビーム40を用いることができる。これにより、ブレード104A~104Cをより安定して支持することができる。また、ブレード吊ビーム40に吊った状態で、回転角調整装置51や傾斜角調整装置52により接続部103A~103Cに対するブレード104A~104Cの回転角θや傾斜角αを調整することもできる。これにより、ブレード104A~104Cをハブ103に接続する工程の作業効率や作業精度を向上できる。
【0061】
また、本実施形態の組立システム1では、門型フレーム30は、一対のクライミングビーム23、24からそれぞれ上方に延在する一対の柱材33、34と、一対の柱材33、34の上端同士を連結する梁材35と、を有する。門型フレーム30の梁材35は、梁材35の中間部分で連結、分離可能な第1梁材36と第2梁材37とを有し、第1梁材36は一対の柱材の一方33に回動可能に連結され、第2梁材37は一対の柱材の他方34に回動可能に連結される。
【0062】
この構成により、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用して、風力発電機100の複数のブレード104A~104Cを個別にハブ103に接続しても、ハブ103に接続した後のブレードより上方に配置される梁材35の第1梁材36と第2梁材37とを分離して柱材33、34側に回動させて、当該ブレードの上方から回避させることができる。これにより、ハブ103に接続した後のブレードに阻害されることなく、リフトアップ装置20を下降させることが可能となる。この結果、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を備える組立システム1を利用でき、かつ、風力発電機100の各部品を個別にタワー上端に搬送して順次接続して組み立てる工法を実施できるので、より確実に、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる。
【0063】
<風力発電機の組立方法>
図11図27を参照して、本実施形態に係る組立システム1を用いる風力発電機の組立方法について説明する。
【0064】
図11は、風力発電機100の組立手順の第1段階を示す側面図である。図11の第1段階の前段階として、ボトムタワー101A、第2タワー101B、第3タワー101C、第4タワー101D、トップタワー101Eが連結されて風力発電機100のタワー101が組み立て済であり、タワー101の周囲に支柱10が設置済である。支柱10は、例えばタワー101の各段の設置に応じて上方にせり上げられ、せり上げられた下端部と設置面との間に追加支柱が引き込まれて連結される。この過程が繰り返されて、支柱10は段階的に上方に延伸され、最終的に図11に示す状態となる。
【0065】
図11に示す第1段階では、リフトアップ装置20が支柱10の下方の所定位置に配置され、クレーン等を用いて門型フレーム30にワイヤ39を介してナセル102が吊り下げられる。ナセル102の吊下げが完了すると、矢印A1で示すようにリフトアップ装置20が上方に移動する(ナセル設置ステップ)。
【0066】
図12は、風力発電機100の組立手順の第2段階を示す側面図である。リフトアップ装置20は支柱10の上端の所定位置まで上昇する。その後、矢印B1で示すように門型フレーム30が支柱10側へ移動し、これにより門型フレーム30に吊り下げられているナセル102がタワー101の上端部の連結位置まで移動する(ナセル設置ステップ)。
【0067】
図13は、風力発電機100の組立手順の第3段階を示す側面図である。門型フレーム30が支柱10上の位置まで移動して、門型フレーム30に吊り下げられているナセル102がタワー101の上端部の連結位置まで移動すると、ナセル102がタワー101の上端部に連結される(ナセル設置ステップ)。このとき、ナセル102の回転軸の位置が、タワー101の軸心C1の位置と揃うように調整されながらナセル102がタワー101の上端部に接近される。これにより、ナセル102が回転軸C1まわりに回転可能にタワー101に接続される。
【0068】
また、図8などに示すように、門型フレーム30の下方は解放されており、さらに、支柱10はタワー101の外周側に配置されているので、図13に示す第3段階の状態では、ナセル102とタワー101との間に他部材が介在しない。このため、例えば門型フレーム30の吊下装置38によってワイヤ39を下方に伸ばしてナセル102の高さ位置を下げることにより、ナセル102とタワー101との接続部分を容易に対向位置まで接近させて、両者を接続することができる。
【0069】
図14は、風力発電機100の組立手順の第4段階を示す側面図である。タワー101に取り付けられたナセル102は、矢印Gで示すようにタワー101の中心軸C1まわりに180度回転され、これによりナセル102のハブ103との接続部がX負方向側を向く状態となる。また、リフトアップ装置20は支柱10の下端の所定位置まで下降され、クレーン等を用いて門型フレーム30にワイヤ39を介してハブ103が吊り下げられる。ハブ103の吊下げが完了すると、矢印A2で示すようにリフトアップ装置20が上方に移動する(ハブ設置ステップ)。
【0070】
図15は、風力発電機100の組立手順の第5段階を示す側面図である。リフトアップ装置20は支柱10の上端の所定位置まで上昇する。その後、矢印B2で示すように門型フレーム30が支柱10側へ移動し、これにより門型フレーム30に吊り下げられているハブ103がナセル102の連結位置まで移動すると、ハブ103がナセル102に連結される(ハブ設置ステップ)。このとき、ハブ103の回転軸の位置が、ナセル102の軸心C2の位置と揃うように調整されながらハブ103がナセル102に接近される。これにより、ハブ103が回転軸C2まわりに回転可能にナセル102に接続される。
【0071】
図16は、風力発電機100の組立手順の第6段階を示す側面図である。リフトアップ装置20は支柱10の下端の所定位置まで下降される。ここで、クライミングビーム23、24の第2ビーム23B、24Bが、第1ビーム23A、24Aの基端側から先端側に移設され、クライミングビーム23、24を支柱10から離れる方向に延伸する(延伸ステップ)。矢印B3で示すように、門型フレーム30が、移設された第2ビーム23B、24Bの位置まで支柱10から離れる方向に移動する(移動ステップ)。さらに、門型フレーム30にブレード吊ビーム40が設置される(吊りビーム設置ステップ)。
【0072】
図17は、風力発電機100の組立手順の第7段階を示す側面図である。図18は、図17に示す第7段階の平面図である。図17図18に矢印Hで示すように、ハブ103の各ブレード104A~104Cとの接続部103A~103Cが各ブレード104A~104Cの基端部と対向する位置となるよう、ナセル102をタワー101の中心軸C1まわりに回転する(ナセル回転ステップ)。具体的には、ナセル102は、ハブ103の先端部がナセル102に対してY負方向側を向くように中心軸C1まわりに約75度回転される。この結果、図18に示すように、ハブ103の回転軸C2の方向がY方向に対して約15度傾斜した状態となる。また、ハブ103の3つのブレードとの接続部103A~103Cのうちの1つの接続部103Aが第1ブレード104Aと対向するように、ハブ103の回転軸C2まわりの位置が調整される。例えば接続部103Aが水平方向(X負方向側)を向くように調整される。
【0073】
また、第7段階では、図17に示すように、クレーン等を用いてブレード吊ビーム40にワイヤ47~49を介して第1ブレード104Aが吊り下げられる。また、図18に示すように、第1ブレード104Aは、基端部の長手方向(例えば図8に示す軸心C3の方向)がハブ103の回転軸C2と直交するように、X方向に対して傾斜して設置される。このとき、ブレード吊ビーム40は、門型フレーム30の一対の柱材33、34の間に収まるように配置されている。第1ブレード104Aの吊下げが完了すると、矢印A3で示すようにリフトアップ装置20が上方に移動する(ブレード設置ステップ)。
【0074】
図19は、風力発電機100の組立手順の第8段階を示す側面図である。図20は、図19に示す第8段階の平面図である。リフトアップ装置20は支柱10の上端の所定位置まで上昇する。その後、矢印B4で示すように門型フレーム30が支柱10側へ移動し、これにより門型フレーム30に吊り下げられている第1ブレード104Aがハブ103の接続部103Aとの対向位置まで接近すると(接近ステップ)、第1ブレード104Aの基端部がハブ103の接続部103Aに接続される(ブレード設置ステップ)。このとき、第1ブレード104Aの軸心C3の回転角θや、回転軸C4まわりの傾斜角αが、第1ブレード104Aの基端部がハブ103の接続部103Aと正対するように調整されながら第1ブレード104Aがハブ103に接近される。回転角調整装置51により、接続部103Aに対する回転角θが調整され(回転角調整ステップ)、傾斜角調整装置52により、接続部103Aに対する傾斜角αが調整される(傾斜角調整ステップ)。このとき、ブレード吊ビーム40は、門型フレーム30の一対の柱材33、34の間に収まるように配置されている。
【0075】
図21は、風力発電機100の組立手順の第9段階を示す側面図である。図22は、図21に示す第9段階の平面図である。図22に示すように、門型フレーム30の梁材35を構成する第1梁材36と第2梁材37との連結が解除される。第1梁材36は、ブレード吊ビーム40を吊り下げた状態で、矢印Cで示すようにX正方向側へ回動し、ブレード吊ビーム40と共に、ハブ103に設置済の第1ブレード104Aの上方から回避する。第2梁材37は、矢印Dで示すようにX負方向側へ回動し、ハブ103に設置済の第1ブレード104Aの上方から回避する。
【0076】
第1ブレード104Aがハブ103に取り付けられた後に、門型フレーム30の梁材35と、リフトアップ装置20との間に取り付けた第1ブレード104Aが介在して、そのままリフトアップ装置20を下げようとすると、門型フレーム30の梁材35の下方への移動が第1ブレード104Aにより阻害される。この状況を回避するために、第1ブレード104Aをハブ103に接続した後に、門型フレーム30の第1梁材36と第2梁材37を回動させて、梁材35を第1ブレード104Aの上方から回避させる(回避ステップ)。これによりリフトアップ装置20を下降可能となる。
【0077】
ハブ103に設置済の第1ブレード104Aは、X方向に対して基端部がY負方向側に傾斜している姿勢のため、第1梁材36、第2梁材37、ブレード吊ビーム40のすべてがより確実に第1ブレード104Aの上方から回避しやすいように、第1梁材36と第2梁材37がそれぞれ矢印C、Dの方向に回動される。
【0078】
このように第1梁材36と第2梁材37とが回動され、梁材35が第1ブレード104Aの上方から回避された後に、図21に矢印A4で示すようにリフトアップ装置20が支柱10の下端の所定位置まで下降する(下降ステップ)。門型フレーム30の上端部が第1ブレード104Aより下方まで下降した後のタイミングで、門型フレーム30の第1梁材36及び第2梁材37をそれぞれ矢印C、Dと逆方向に回動させて、第1梁材36と第2梁材37とが一対の柱材33、34の間で再び連結状態に戻される(連結ステップ)。
【0079】
図23は、風力発電機100の組立手順の第10段階を示す側面図である。矢印Iで示すように、ハブ103が回転軸C2まわりに120度回転し、第1ブレード104AがX正方向側へ回動する。これにより、ハブ103の3つのブレードとの接続部103A~103Cのうちの1つの接続部103Bが第2ブレード104Bと対向するように、ハブ103の回転軸C2まわりの位置が調整される。例えば接続部103Bが水平方向(X負方向側)を向くように調整される。
【0080】
第10段階では、クレーン等を用いてブレード吊ビーム40にワイヤ47~49を介して第2ブレード104Bが吊り下げられる。第2ブレード104Bも、図18に示した第1ブレード104Aと同様に、基端部の長手方向がハブ103の回転軸C2と直交するように、X方向に対して傾斜して設置される(図25参照)。その後、矢印A5で示すようにリフトアップ装置20が上昇する(ブレード設置ステップ)。
【0081】
図24は、風力発電機100の組立手順の第11段階を示す側面図である。図25は、図24に示す第11段階の平面図である。リフトアップ装置20は支柱10の上端の所定位置まで上昇する。その後、矢印B5で示すように門型フレーム30が支柱10側へ移動し、これにより門型フレーム30に吊り下げられている第2ブレード104Bがハブ103の接続部103Bとの対向位置まで接近すると(接近ステップ)、第2ブレード104Bの基端部がハブ103の接続部103Bに接続される(ブレード設置ステップ)。このとき、第2ブレード104Bの軸心C3の回転角θや、回転軸C4まわりの傾斜角αが、第2ブレード104Bの基端部がハブ103の接続部103Bと正対するように調整されながら第2ブレード104Bがハブ103に接近される。回転角調整装置51により、接続部103Bに対する回転角θが調整され(回転角調整ステップ)、傾斜角調整装置52により、接続部103Bに対する傾斜角αが調整される(傾斜角調整ステップ)。
【0082】
第11段階の後は、図21図22に示した第9段階と同様に、門型フレーム30の梁材35を構成する第1梁材36と第2梁材37との連結を解除して回動させ、ハブ103に設置済の第2ブレード104Bの上方から梁材35を回避する(回避ステップ)。その後にリフトアップ装置20が支柱10の下端の所定位置まで下降する(下降ステップ)。第1梁材36と第2梁材37とは、門型フレーム30が第2ブレード104Bより下方まで下降した後のタイミングで再び連結状態に戻される(連結ステップ)。
【0083】
図26は、風力発電機100の組立手順の第12段階を示す側面図である。矢印Jで示すように、ハブ103が回転軸C2まわりに120度回転し、第2ブレード104BがX正方向側へ回動する。これにより、ハブ103の3つのブレードとの接続部103A~103Cのうちの1つの接続部103Cが第3ブレード104Cと対向するように、ハブ103の回転軸C2まわりの位置が調整される。例えば接続部103Cが水平方向(X負方向側)を向くように調整される。
【0084】
第12段階では、まず、クレーン等を用いてブレード吊ビーム40にワイヤ47~49を介して第3ブレード104Cが吊り下げられる。第3ブレード104Cも、図18に示した第1ブレード104Aと同様に、基端部の長手方向がハブ103の回転軸C2と直交するように、X方向に対して傾斜して設置される。
【0085】
その後、図26に示すように、リフトアップ装置20が上端の所定位置まで上昇する。続いて矢印B6で示すように門型フレーム30が支柱10側へ移動し、これにより門型フレーム30に吊り下げられている第3ブレード104Cがハブ103の接続部103Cとの対向位置まで接近すると(接近ステップ)、第3ブレード104Cの基端部がハブ103の接続部103Cに接続される(ブレード設置ステップ)。このとき、第3ブレード104Cの軸心C3の回転角θや、回転軸C4まわりの傾斜角αが、第3ブレード104Cの基端部がハブ103の接続部103Cと正対するように調整されながら第3ブレード104Cがハブ103に接近される。回転角調整装置51により、接続部103Cに対する回転角θが調整され(回転角調整ステップ)、傾斜角調整装置52により、接続部103Cに対する傾斜角αが調整される(傾斜角調整ステップ)。
【0086】
図27は、風力発電機100の組立手順の第13段階を示す側面図である。門型フレーム30の梁材35を構成する第1梁材36と第2梁材37との連結を解除して回動させ、ハブ103に設置済の第3ブレード104Cの上方から梁材35を回避する(回避ステップ)。その後にリフトアップ装置20が矢印A6で示すように支柱10の下端の所定位置まで下降する(下降ステップ)。リフトアップ装置20が下降した後に、矢印Kで示すように、ナセル102がタワー101の中心軸C1まわりに90度回転し、ハブ103がX負方向側を向く姿勢に遷移する。この結果、風力発電機100の組み立てが完了する。
【0087】
第13段階の後、組立システム1の各装置が風力発電機100の周囲から取り外されて、最終的に図1に示すような風力発電機100の完成状態となる。
【0088】
次に、本実施形態に係る風力発電機組立方法の効果を説明する。本実施形態に係る風力発電機組立方法は、ナセル設置ステップ(図11の第1段階から図13の第3段階までの工程)と、ハブ設置ステップ(図14の第4段階から図15の第5段階までの工程)と、ブレード設置ステップ(図16の第6段階から図27の第13段階までの工程)と、を含む。ナセル設置ステップでは、風力発電機100のナセル102を門型フレーム30に吊り下げてリフトアップ装置20によりタワー101の先端部まで上昇させ、門型フレーム30を水平移動してナセル102をタワー101の先端部の直上まで移動させて、ナセル102をタワー101に接続する。ハブ設置ステップでは、風力発電機100のハブ103を門型フレーム30に吊り下げてリフトアップ装置20によりタワー101の先端部まで上昇させ、門型フレーム30を水平移動してハブ103をナセル102との対向位置まで移動させて、ハブ103をナセル102に接続する。ブレード設置ステップでは、風力発電機100の複数のブレード104A~104Cのうち1枚のブレードを門型フレーム30に吊り下げてリフトアップ装置20によりタワー101の先端部まで上昇させ、門型フレーム30を水平移動して持ち上げた1枚のブレードをハブ103との対向位置まで移動させて、この1枚のブレードをハブ103に接続し、複数のブレードの残りも同様に1枚ずつリフトアップ装置20、門型フレーム30を利用してハブ103に接続する。
【0089】
この構成により、風力発電機100の各部品をリフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用してタワー101上端の他部品との接続位置まで搬送することができるので、リフトアップ装置20が支柱10の下端の所定位置まで下降している状態で、風力発電機100の各部品を門型フレーム30に吊り下げる作業を行うことができる。つまり、風力発電機100の各部品を、クレーンを用いてタワー101上端の他部品との接続位置まで持ち上げる必要がなく、各部品を持ち上げる高さを従来手法より低く抑えることができるので、風力発電機100の各部品の運搬に用いるクレーンを従来手法より小型化できる。クレーンを小型化できると、クレーンの設置場所の面積も低減できる。また、クレーンの重量も軽量になるので、設置場所の地盤の強度の条件も緩和できる。さらに、風力発電機100が大型化しても、クレーンによる各部品を門型フレーム30に吊り下げる高さ位置は変わらず、組立システム1の支柱10の高さと、リフトアップ装置20の上昇距離が伸びるだけなので、例えば強風時などの悪条件下でも施工性が悪化する影響を受けずに済むことができ、施工性を向上できる。
【0090】
ところで、従来手法では、風力発電機が大型化し、クレーンによる各部品の持ち上げだけでは組立作業性が悪化する場合には、例えば地上やタワーの下方位置にてハブ103にブレード104A~104Cを接続して予め回転体を組み立てて、その後にタワー上端の設置位置まで組み立て後の回転体を持ち上げる手法も提案されている。このような従来手法の場合、施工に必要な地面領域として、回転体の直径、すなわちブレードの長径の約1.5倍程度の幅(本実施形態の場合Y方向の長さ)が必要となると考えられる。これに対して本実施形態では、上記のナセル設置ステップ、ハブ設置ステップ、及びブレード設置ステップにより、風力発電機100のナセル102、ハブ103、及び複数のブレード104A~104Cの1枚ずつをそれぞれ個別に、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用してタワー101上端の他部品との接続位置まで搬送することができる。これにより、各部品の搬送時にY方向の寸法を門型フレーム30の幅に収めることができるので、従来手法に対して風力発電機100の施工に必要な地面領域をさらに縮小できる。この結果、本実施形態に係る風力発電機組立方法は、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる。
【0091】
また、本実施形態に係る風力発電機組立方法は、ハブ設置ステップの後に、ハブ103のブレード104A~104Cとの接続部103A~103Cがブレード104A~104Cの基端部と対向する位置となるよう、ナセル102をタワー101の中心軸C1まわりに回転するナセル回転ステップ(図17図18の第7段階)を含む。
【0092】
この構成により、ブレード104A~104Cをハブ103に設置するために門型フレーム30により水平移動する方向を、ナセル102をタワー101に設置するときと、ハブ103をナセル102に設置するときの方向と同一方向にできる。これにより、ナセル設置ステップとハブ設置ステップの後に、組立システム1のリフトアップ装置20の支柱10に対する設置位置を変更することなくブレード設置ステップを実施できるので、作業効率を向上できる。
【0093】
また、本実施形態に係る風力発電機組立方法は、ハブ設置ステップとブレード設置ステップとの間で、リフトアップ装置20のクライミングビーム23、24の第2ビーム23B、24Bを第1ビーム23A、24Aの基端側から取り外して、第1ビーム23A、24Aの先端側に連結し直し、クライミングビーム23、24を支柱10から離れる方向に延伸する延伸ステップ(図16の第6段階)を含む。
【0094】
この構成により、ナセル102やハブ103に対して長尺のブレード104A~104Cを門型フレーム30に吊り下げるために、門型フレーム30の位置を支柱10に対して離すことが可能となる。これにより、リフトアップ装置20の支柱10に対する設置位置を変更しなくても、ブレード104A~104Cの基端部が支柱10やタワー101に接触することを回避して門型フレーム30に吊り下げることが可能となる。これにより、作業効率をさらに向上できる。
【0095】
また、本実施形態に係る風力発電機組立方法では、ブレード設置ステップは、延伸ステップにて取り付け直された第2ビーム23B、24B上に門型フレーム30を移動する移動ステップと、門型フレーム30にブレード吊ビーム40を設置する吊りビーム設置ステップと(以上、図16の第6段階)、門型フレーム30を移動させてブレード104A~104Cをハブ103の接続部103A~103Cに接近させる接近ステップと、回転角調整装置51により接続部103A~103Cに対するブレード104A~104Cの回転角θを調整する回転角調整ステップと、傾斜角調整装置52により接続部103A~103Cに対するブレード104A~104Cの傾斜角αを調整する傾斜角調整ステップと、(以上、図19図20の第8段階、図24図25の第11段階、図26の第12段階)を含む。
【0096】
この構成により、ナセル102やハブ103に対して長尺のブレード104A~104Cを門型フレーム30に吊り下げる際に、長手方向がブレード104A~104Cの延在方向と一致するようブレード104A~104Cを支持する長尺状のブレード吊ビーム40を用いることができる。これにより、ブレード104A~104Cをより安定して支持することができる。また、ブレード吊ビーム40に吊った状態で、回転角調整装置51や傾斜角調整装置52により接続部103A~103Cに対するブレード104A~104Cの回転角θや傾斜角αを調整することもできる。これにより、ブレード104A~104Cをハブ103に接続する工程の作業効率や作業精度を向上できる。
【0097】
また、本実施形態に係る風力発電機組立方法では、ブレード設置ステップは、複数のブレード104A~104Cの一つをハブ103に接続した後に、門型フレーム30の第1梁材36及び第2梁材37を回動させてブレード104A~104Cの上方から回避させる回避ステップと、回避ステップの後にリフトアップ装置20を下降させる下降ステップと、下降ステップにより門型フレーム30の上端部が設置されたブレードより下方まで下降した後に、門型フレーム30の第1梁材36及び第2梁材37を回動させて一対の柱材33、34の間で連結させる連結ステップと(図21図22の第9段階、図24図25の第11段階の後、図27の第13段階)、を含む。
【0098】
この構成により、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を利用して、風力発電機100の複数のブレード104A~104Cを個別にハブ103に接続しても、ハブ103に接続した後のブレードに阻害されることなく、リフトアップ装置20を下降させることが可能となる。これにより、リフトアップ装置20及び門型フレーム30を備える組立システム1を利用でき、かつ、風力発電機100の各部品を個別にタワー上端に搬送して順次接続して組み立てる工法を実施できるので、より確実に、風力発電機の施工に必要な地面領域を縮小でき、かつ施工性を向上できる。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0100】
上記実施形態では、本実施形態に係る風力発電機100の組み立てシステム1を、地上の風力発電設備の施工に適用する構成を例示したが、洋上風力発電設備の施工にも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 風力発電機の組立システム
10 支柱
11、12、13、14 柱材
15 梁材
20 リフトアップ装置(昇降装置)
21、22 尺取装置
23、24 クライミングビーム
23A、24A 第1ビーム
23B、24B 第2ビーム
30 門型フレーム
33、34 柱材
35 梁材
36 第1梁材
37 第2梁材
38 吊下装置
53 門型フレームの倒れ止め
40 ブレード吊ビーム
51 回転角調整装置
52 傾斜角調整装置
100 風力発電機
101 タワー
102 ナセル
103 ハブ
103A、103B、103C 接続部
104A 第1ブレード
104B 第2ブレード
104C 第3ブレード
C1 タワーの中心軸、ナセルの回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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