IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許-空調構造 図1
  • 特許-空調構造 図2
  • 特許-空調構造 図3
  • 特許-空調構造 図4
  • 特許-空調構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】空調構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20241126BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20241126BHJP
   F24F 1/0053 20190101ALI20241126BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20241126BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20241126BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20241126BHJP
   E04B 5/48 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F3/044
F24F1/0053
F24F13/02 H
E04B1/76 200D
E04B5/02 B
E04B5/48 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019212960
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085568
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 剛往
(72)【発明者】
【氏名】津田 康浩
(72)【発明者】
【氏名】五内川 卓
(72)【発明者】
【氏名】鈴野 由樹乃
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-164393(JP,A)
【文献】特開平10-306943(JP,A)
【文献】特開2009-127910(JP,A)
【文献】特開2017-190904(JP,A)
【文献】特開2018-105550(JP,A)
【文献】実開平05-040754(JP,U)
【文献】実開平06-051742(JP,U)
【文献】米国特許第06318113(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 3/044
F24F 1/0053
F24F 13/02
E04B 1/76
E04B 5/02
E04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有し、空調室の床を形成するプレキャスト床版と、
落下物用バスケットを有し、前記貫通孔に設けられる吹出し口ユニットと、
前記プレキャスト床版の床下空間から前記吹出し口ユニットを介して前記空調室へ空調空気を送風する空調機と、
前記貫通孔内に配置された状態で前記プレキャスト床版に支持される土台部を有し、前記空調室に設置される空調センサを支持するセンサ用支柱と、
を備え、
前記落下物用バスケットは、
前記貫通孔に配置されるとともに、下部が前記プレキャスト床版の下面よりも下方へ突出する筒状部と、
前記筒状部の下端側の開口を閉塞する底部と、
を有し、
前記筒状部の下部には、吸気口が形成される、
空調構造。
【請求項2】
前記吹出し口ユニットは、複数の前記貫通孔の一部に設けられ、
前記吹出し口ユニットが設けられていない前記貫通孔には、該貫通孔を塞ぐ遮蔽体が設けられる、
請求項1に記載の空調構造。
【請求項3】
還気口を有し、前記空調室の壁に沿って設けられ、該空調室と前記床下空間とを接続する流路部を備え、
前記空調機は、前記床下空間に設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の空調構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置から、サーバ室の床下の送風チャンバー、及びサーバ室の床面の吹出し口(吸気口)を介してサーバ室に空調空気を送風する空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-196671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、サーバ室等の空調室の空調効率を高めることができるものの、空調室の床面(吹出し口)がグレーチングによって形成される。そのため、空調室の床面が振動し易い点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、空調室の床面の振動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る空調構造は、複数の貫通孔を有し、空調室の床を形成するプレキャスト床版と、前記貫通孔に設けられる吹出し口ユニットと、前記プレキャスト床版の床下空間から前記吹出し口ユニットを介して前記空調室へ空調空気を送風する空調機と、を備える。
【0007】
第1態様に係る空調構造によれば、プレキャスト床版は、複数の貫通孔を有し、空調室の床を形成する。このプレキャスト床版の貫通孔には、吹出し口ユニットが設けられる。また、空調機は、プレキャスト床版の床下空間から吹出し口ユニットを介して空調室に空調空気を送風する。これにより、空調室が空調される。
【0008】
ここで、前述したように、空調室の床は、プレキャスト床版によって形成される。これにより、本発明では、空調室の床をグレーチングによって形成した場合と比較して、空調室の床の振動が低減される。また、本発明では、空調室の床をグレーチングによって形成し場合と比較して、空調室の床の耐荷重が高められる。
【0009】
さらに、本発明では、空調室の床を現場打ちコンクリートによって形成する場合と比較して、施工性が向上するとともに、貫通孔の寸法精度や配置精度を高めることができる。
【0010】
第2態様に係る空調構造は、第1態様に係る空調構造において、前記貫通孔内に配置された状態で前記プレキャスト床版に支持される土台部を有し、前記空調室に設置される空調センサを支持するセンサ用支柱を備える。
【0011】
第2態様に係る空調構造によれば、センサ用支柱は、空調室に設置される空調センサを支持する。また、センサ用支柱は、土台部を有する。土台部は、貫通孔内に配置された状態でプレキャスト床版に支持される。これにより、センサ用支柱が倒れようとすると、土台部の外周部が貫通孔の内周面に接触するため、センサ用支柱の倒れが抑制される。
【0012】
また、例えば、空調室に設置される発熱機器等のレイアウト等に応じて、複数の貫通孔の中から土台部を配置する貫通孔を選択することにより、空調センサの配置を容易に変更することができる。
【0013】
第3態様に係る空調構造は、第1態様又は第2態様に係る空調構造において、前記吹出し口ユニットは、複数の前記貫通孔の一部に設けられ、前記吹出し口ユニットが設けられていない前記貫通孔には、該貫通孔を塞ぐ遮蔽体が設けられる。
【0014】
第3態様に係る空調構造によれば、吹出し口ユニットは、複数の貫通孔の一部に設けられる。また、吹出し口ユニットが設けられていない貫通孔には、当該貫通孔を塞ぐ遮蔽体が設けられる。
【0015】
ここで、例えば、空調室に設置される発熱機器等のレイアウト等に応じて、吹出し口ユニット、及び遮蔽体の配置や数を変更することにより、プレキャスト床版の吹出し口の配置や数を容易に変更することができる。
【0016】
第4態様に係る空調構造は、第1態様第3態様の何れか1つに係る空調構造において、還気口を有し、前記空調室の壁に沿って設けられ、該空調室と前記床下空間とを接続する流路部を備え、前記空調機は、前記床下空間に設けられる。
【0017】
第4態様に係る空調構造によれば、流路部は、還気口を有し、空調室の壁に沿って設けられ、空調室とプレキャスト床版の床下空間とを接続する。この流路部を介して、空調室の空気がプレキャスト床版の床下空間へ流れる。
【0018】
また、床下空間には、空調機が設けられる。これにより、空調室から流路部を介して床下空間に流れた空気は、空調機によって空調された後に、吹出し口から空調室へ再び送風される。
【0019】
このように空調室と床下空間との間で空気を循環させることにより、空調室の空調効率が高められる。
【0020】
また、前述したように、流路部は、空調室の壁に沿って設けられる。これにより、本発明では、例えば、空調室の天井に還流ダクト等を吊り下げる場合と比較して、空調室に設置された発熱機器等のレイアウト変更や更新時に、発熱機器等が流路部に干渉し難くなる。したがって、発熱機器等のレイアウト変更や更新が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る空調構造によれば、空調室の床面の振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る空調構造が適用された構造物を示す縦断面図である。
図2】(A)は、図1に示されるプレキャスト床版の貫通孔に取り付けられた吹出し口ユニットを示す平面図であり、(B)は、図2(A)の2B-2B線断面図である。
図3】(A)は、図1に示されるプレキャスト床版の貫通孔に取り付けられた遮蔽ユニットを示す平面図であり、(B)は、図3(A)の3B-3B線断面図である。
図4図1に示されるプレキャスト床版の貫通孔にセンサポールが取り付けられる前の状態を示す縦断面図である。
図5図1に示されるプレキャスト床版の貫通孔にセンサポールが取り付けられた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る空調構造について説明する。
【0024】
(空調構造)
図1には、本実施形態に係る空調構造20が適用された構造物(建物)10が示されている。構造物10は、例えば、電子部品や機械部品等を生産する工場とされる。この構造物10の所定階には、空調室22が設けられている。空調室(生産室)22は、電子部品や機械部品等を生産する図示しない複数の発熱機器等(熱源)が設置される。この空調室22に、本実施形態に係る空調構造20が適用されている。
【0025】
空調構造20は、空調室22の床30に設けられた吹出し口48A(図2参照)から空調空気Wを上方へ吹き出す加圧式床吹出し空調とされるとともに、空調室22の床下に空調機70等の設備機器を設置可能なプレナム空間(設備室)24を備える二層式空調とされている。この空調構造20は、空調室22の床30を形成する複数のプレキャスト床版32を備えている。なお、プレナム空間24は、床下空間の一例である。
【0026】
(プレキャスト床版)
複数のプレキャスト床版32は、鉄筋コンクリート造とされている。これらのプレキャスト床版32は、水平方向に配列されており、プレナム空間24に設けられた柱12、及び柱12に架設された図示しない複数の梁によって支持されている。
【0027】
プレキャスト床版32には、複数の貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、プレキャスト床版32を厚み方向に貫通する円形状の孔とされている。この貫通孔34は、例えば、工場等においてプレキャスト床版32に予め形成されている。なお、プレキャスト床版32の貫通孔34の周りには図示しない開口補強材(開口補強筋など)が適宜、設けられている。
【0028】
複数の貫通孔34には、空調室22に必要となる空調空気Wの量や、空調室22に設置される発熱機器のレイアウトに応じて、吹出し口ユニット40(図2(B)参照)又は遮蔽ユニット50(図3(B)参照)が設けられている。
【0029】
(吹出し口ユニット)
図2(A)及び図2(B)に示されるように、吹出し口ユニット40は、貫通孔34に着脱可能に取り付けられている。この吹出し口ユニット40は、取付リング42と、落下物用バスケット44と、吹出しカバー48とを有している。
【0030】
取付リング42は、筒状部42A及びフランジ部42Bを有している。筒状部42Aは、円筒状に形成されており、プレキャスト床版32の上面側から貫通孔34に挿入されている。この筒状部42Aの上端部に、フランジ部42Bが設けられている。
【0031】
フランジ部42Bは、筒状部42Aの上端部からプレキャスト床版32の上面に沿って外側へ張り出し、貫通孔34の周縁部に引っ掛けられている。これにより、取付リング42が、プレキャスト床版32に着脱可能に保持されている。この取付リング42の筒状部42Aには、落下物用バスケット44が取り付けられている。
【0032】
落下物用バスケット44は、後述する吹出しカバー48の吹出し口48Aから吹出し口ユニット40内に落下した落下物を捕捉するものである。この落下物用バスケット44は、筒状部44A及び底部44Bを有している。筒状部44Aは、円筒状に形成されており、貫通孔34に挿入されている。また、筒状部44Aの上端側は、開口されている。
【0033】
筒状部44Aの上部は、取付リング42の筒状部42Aの内側に嵌め込まれた状態で図示しないビス等によって筒状部42Aに固定されている。また、筒状部42Aの下部は、貫通孔34に挿入された状態で、プレキャスト床版32の下面よりも下方へ突出し、プレナム空間24に配置されている。この筒状部44Aの下端部には、底部44Bが設けられている。
【0034】
底部44Bは、円盤状に形成されている。この底部44Bによって、筒状部44Aの下端側の開口が閉塞されている。これにより、吹出しカバー48の吹出し口48Aから吹出し口ユニット40内に落下した落下物が、落下物用バスケット44内に捕捉されるため、落下物がプレナム空間24に落下することが抑制される。なお、落下物用バスケット44は、省略可能である。
【0035】
筒状部44Aの下部には、複数の吸気口46が形成されている。複数の吸気口46は、筒状部44Aの周方向に間隔を空けて配置されている。これらの吸気口46を介して、プレナム空間24の空調空気Wが筒状部44A内に供給される。
【0036】
取付リング42の内側には、吹出しカバー48が設けられている。吹出しカバー48は、円盤状に形成されている。この吹出しカバー48は、取付リング42よりも空調室22側へ突出しないように、取付リング42の内側に着脱可能に嵌め込まれている。これにより、空調室22の床30が略平坦とされている。
【0037】
吹出しカバー48には、複数の吹出し口48Aが形成されている。複数の吹出し口48Aは、スリット状に形成されるとともに、吹出しカバー48の中央部を中心に、放射状に配置されている。これらの吹出し口48Aから、筒状部44A内の空調空気Wが空調室22に吹き出される。
【0038】
なお、吹出し口48Aの形状や配置、数は、適宜変更可能である。また、吹出し口ユニット40には、例えば、吹出し口48Aから吹き出す空調空気Wの吹出し量を増減する風量調整ダンパーや、吹出し口48Aを開閉するシャッター等を設けても良い。さらに、落下物用バスケット44は、適宜省略可能である。
【0039】
複数の貫通孔34のうち、吹出し口ユニット40が設けられていない貫通孔34には、遮蔽ユニット50(図3(B)参照)、又はセンサポール60(図4参照)が着脱可能に取り付けられている。
【0040】
(遮蔽ユニット)
図3(A)及び図3(B)に示されるように、遮蔽ユニット50は、貫通孔34を遮蔽(閉塞)して空調室22の床面を形成するものである。この遮蔽ユニット50は、取付リング52と、遮蔽カバー54とを有している。なお、取付リング52は、吹出し口ユニット40の取付リング42と同様の構成とされている。この遮蔽ユニット50は、筒状部52A及びフランジ部52Bを有している。
【0041】
取付リング52の内側には、遮蔽カバー54が設けられている。遮蔽カバー54は、円盤状に形成されている。この遮蔽カバー54は、取付リング52よりも空調室22側へ突出しないように、取付リング52の内側に着脱可能に嵌め込まれている。これにより、空調室22の床30が略平坦とされている。
【0042】
遮蔽カバー54は、無開口とされている。つまり、遮蔽カバー54には、吹出し口が形成されていない。この遮蔽カバー54によって貫通孔34が遮蔽されている。そのため、遮蔽カバー54が設けられた貫通孔34からは、プレナム空間24の空調空気Wが空調室22に吹き出されない。
【0043】
(センサポール)
図4及び図5に示されるように、センサポール60は、貫通孔34に着脱可能に取り付けられた状態で、後述する空調センサ68を支持する。このセンサポール60は、土台部62と、支柱部64と、センサ取付部66とを有している。なお、センサポール60は、センサ用支柱の一例である。
【0044】
土台部62は、例えば、金属板等によって形成されており、センサポール60の倒れを抑制可能な重量を有している。また、土台部62は、プレキャスト床版32の貫通孔34内に配置された状態で、当該プレキャスト床版32に支持される。この土台部62は、土台本体62Aと、上側フランジ62Bと、下側フランジ62Cとを有している。
【0045】
土台本体62Aは、円筒状に形成されており、軸方向をプレキャスト床版32の厚み方向(上下方向)として貫通孔34内に挿入されている。この土台本体62Aの上端部には、上側フランジ62Bが設けられている。一方、土台本体62Aの下端部には、下側フランジ62Cが設けられている。
【0046】
上側フランジ62Bは、円盤状に形成されており、土台本体62Aの上端側の開口を塞いでいる。また、上側フランジ62Bの外周部は、土台本体62Aの上端部からプレキャスト床版32の上面に沿って外側へ張り出し、貫通孔34の周縁部に引っ掛けられている。これにより、土台部62が、プレキャスト床版32に保持される。
【0047】
下側フランジ62Cは、上側フランジ62Bよりも小径の円盤状に形成されており、土台本体62Aの下端側の開口を塞いでいる。また、下側フランジ62Cは、貫通孔34内に嵌め込まれている。具体的には、下側フランジ62Cの外周部は、土台本体62Aの下端部から外側へ張り出し、貫通孔34の内周面34Aに近接されている。この下側フランジ62Cの外周部が、貫通孔34の内周面34Aに接触することにより、土台部62の傾きが抑制される。
【0048】
なお、下側フランジ62Cには、貫通孔34の内周面34Aに接触し、土台部62の傾きを抑制するストッパ等を設けても良い。
【0049】
図5に示されるように、支柱部64は、棒状に形成されており、土台部62上に立てられている。この支柱部64の下部は、土台部62の上側フランジ62Bに形成された貫通孔に挿入された状態で、土台部62に保持されている。また、支柱部64の上部は、土台部62から上方へ延出し、空調室22に配置されている。この支柱部64の上部には、センサ取付部66が設けられている。
【0050】
センサ取付部66は、箱状に形成されている。このセンサ取付部66の少なくとも1つの側面66Sには、空調センサ68が取り付けられている。
【0051】
(空調センサ)
空調センサ68は、例えば、空調室22の温度を計測する温度センサ、空調室22の湿度を計測する湿度センサ、又は空調室22とプレナム空間24との差圧を計測する差圧センサとされている。
【0052】
空調センサ68は、空調機70と電気的に接続されている。この空調センサ68は、計測した空調室22の温度、湿度、又は空調室22とプレナム空間24との差圧等の環境情報を空調機70に出力する。
【0053】
(空調機)
空調機70は、空調室22の床下に形成されたプレナム空間(床下空間)24に設置されている。プレナム空間24は、例えば、設備機器や配線、配管等が設置される人が入室可能な設備室としても捉えることができる。
【0054】
空調機70は、前述した空調センサ68で計測された空調室22の環境情報に基づき、温度や湿度が調整された空調空気Wを生成するとともに、生成された空調空気Wを所定の風量(圧力)で送風する。これにより、空調機70からプレナム空間24、及び複数の吹出し口ユニット40を介して空調室22に、所定の空調空気Wが送風される。この空調機70には、還流ダクト72が接続されている。
【0055】
なお、本実施形態では、プレナム空間24と空調室22との圧力差を計測し、計測された圧力差が所定値又は所定範囲内に保たれるように、空調機70からプレナム空間24を介して空調室22に送風される空調空気Wの送風量が制御される。
【0056】
(還流ダクト)
還流ダクト72は、空調室22とプレナム空間24とを接続し、空調室22内の空気をプレナム空間24へ還流させるダクトとされる。この還流ダクト72は、空調室22を区画する壁22Aに沿って上下方向に延びており、空調室22とプレナム空間24とに渡って配置されている。
【0057】
還流ダクト72の上部における側面には、還気口74が形成されている。一方、還流ダクト72の下端部は、空調機70に接続されている。これにより、空調室22の空気が、還気口74から還流ダクト72を介して空調機70へ還流される。なお、還流ダクト72は、流路部の一例である。
【0058】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0059】
図1に示されるように、空調室22の床30は、複数のプレキャスト床版32によって形成されている。これらのプレキャスト床版32は、複数の貫通孔34を有している。図2(B)に示されるように、複数の貫通孔34のうち一部の貫通孔34には、吹出し口ユニット40が着脱可能に取り付けられている。また、図3(B)に示されるように、複数の貫通孔34のうち、吹出し口ユニット40が設けられていない貫通孔34には、遮蔽ユニット50が設けられている。
【0060】
これにより、図1に示されるように、空調室22の床下のプレナム空間24に設置された空調機70が作動されると、空調機70によって生成された空調空気Wが、プレナム空間24及び複数の吹出し口ユニット40を介して空調室22へ送風される。これにより、空調室22が空調される。
【0061】
また、プレナム空間24から空調室22に送風された空調空気Wは、還気口74から還流ダクト72を介して空調機70へ還気される。このように空調室22と空調機70との間で空調空気Wを循環させることにより、空調室22を空調効率が高められる。
【0062】
ここで、前述したように、空調室22の床30は、複数のプレキャスト床版32によって形成されている。これにより、本実施形態では、例えば、空調室22の床30をグレーチングによって形成した場合と比較して、空調室22の床30の振動が低減される。さらに、本実施形態では、空調室22の床30をグレーチングによって形成した場合と比較して、空調室22の床30の耐荷重が高められる。
【0063】
また、本実施形態では、空調室22の床30を現場打ちコンクリートによって形成する場合と比較して、床30の施工性が向上する。さらに、本実施形態では、空調室22の床30を現場打ちコンクリートによって形成する場合と比較して、貫通孔34の配置精度を高めることができる。
【0064】
しかも、本実施形態では、空調室22の床30を現場打ちコンクリートによって形成する場合と比較して、複数の貫通孔34の寸法精度を高めることができる。これにより、各貫通孔34に対して吹出し口ユニット40、遮蔽ユニット50、及びセンサポール60を容易に着脱することができる。
【0065】
さらに、空調室22に設置される発熱機器等のレイアウト等に応じて、吹出し口ユニット40、及び遮蔽ユニット50の配置や数を変更することにより、プレキャスト床版32の吹出し口48Aの配置や数を容易に変更することができる。
【0066】
また、吹出し口ユニット40の吹出しカバー48、及び遮蔽ユニット50の遮蔽カバー54は、空調室22に突出していない。したがって、空調室22に発熱機器等を容易に設置することができるとともに、発熱機器等のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0067】
ここで、空調機70は、空調センサ68で計測された温度等の環境情報に基づき、空調空気Wを生成するとともに、生成した空調空気Wを所定の風量(圧力)で送風する。これにより、空調機70からプレナム空間24、及び複数の吹出し口ユニット40を介して空調室22に、所定の空調空気Wが送風される。
【0068】
図5に示されるように、空調センサ68は、センサポール60に取り付けられている。センサポール60は、土台部62を有している。土台部62は、貫通孔34内に配置された状態でプレキャスト床版32に支持されている。これにより、センサポール60が倒れようとすると、土台部62の下側フランジ62Cが貫通孔34の内周面34Aに接触するため、センサポール60の倒れが抑制される。
【0069】
また、土台部62は、貫通孔34に着脱可能に取り付けられている。これにより、例えば、空調室22に設置される発熱機器等のレイアウト変更等に応じて、土台部62を設置する貫通孔34を変更することにより、空調センサ68の配置を容易に変更することができる。さらに、支柱部64の長さを適宜変更することにより、空調センサ68の取付高さを容易に変更することができる。
【0070】
また、還流ダクト72は、空調室22の壁22Aに沿って設けられている。これにより、本実施形態では、例えば、空調室22の天井に還流ダクト等を吊り下げる場合と比較して、空調室22に設置された発熱機器等のレイアウト変更や更新時に、発熱機器等が還流ダクト72に干渉し難くなる。したがって、発熱機器等のレイアウト変更や更新が容易となる。
【0071】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0072】
上記実施形態では、空調機70がプレナム空間24に設置されている。しかし、空調機70は、プレナム空間24に限らず、例えば、空調室22とプレナム空間24とを接続するシャフト内に設置されても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、空調機70によって、空調室22とプレナム空間24との間で空調空気Wを循環させている。しかし、例えば、プレナム空間24や前述したシャフトに設置された外調機によって構造物10の外気を空調し、プレナム空間24及び吹出し口ユニット40を介して空調室22に空調空気を送風することも可能である。また、前述した外調機と空調機70とを併用することも可能である。
【0074】
また、上記実施形態のプレキャスト床版32には、工場等において、複数の貫通孔34が予め形成されている。しかし、貫通孔34は、現場においてプレキャスト床版32に形成することも可能である。この場合、将来、貫通孔34が設けられることが想定されるプレキャスト床版32の部位に予め開口補強材(開口補強筋など)を設けておくようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、空調室22に空調センサ68が設置されている。しかし、空調センサ68は、必要に応じて空調室22に設置すれば良く、適宜省略可能である。
【0076】
また、上記実施形態に係る空調構造20は、工場に限らず、例えば、データセンタや他の構造物にも適宜適用可能である。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
20 空調構造
22 空調室
22A 壁
24 プレナム空間(床下空間)
30 床
32 プレキャスト床版
34 貫通孔
40 吹出し口ユニット
50 遮蔽ユニット(遮蔽体)
60 センサポール(センサ用支柱)
62 土台部
68 空調センサ
70 空調機
72 還流ダクト(流路部)
74 還気口
W 空調空気
図1
図2
図3
図4
図5