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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L29/78 301D
H01L29/78 301S
H01L29/78 301G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023067885
(22)【出願日】2023-04-18
(65)【公開番号】P2024154187
(43)【公開日】2024-10-30
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519009105
【氏名又は名称】合肥晶合集成電路股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】大田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 伸恵
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-124670(JP,A)
【文献】特開2010-021221(JP,A)
【文献】特開2000-174271(JP,A)
【文献】特開平11-168146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0304314(US,A1)
【文献】米国特許第05346835(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン側において、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部を有するゲート酸化膜と、
前記厚膜部の下面を覆うように形成されたドレイン側LDD領域と、
前記ゲート酸化膜の下面に接するように、前記ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域と、
前記厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側に形成されるとともに、ジャンクション位置が前記ドレイン側LDD領域のジャンクション位置よりも浅く形成されたドレイン領域と
を備え
前記ソース側LDD領域とゲート電極とのオーバラップ量と、前記ドレイン側LDD領域と前記ゲート電極とのオーバラップ量とが等しい半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極を備え、
前記ゲート電極のドレイン側の端部は、前記厚膜部上に位置する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極を備え、
前記ゲート電極のドレイン側の端部は、前記厚膜部のバーズビーク上に位置する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ドレイン側LDD領域及び前記ソース側LDD領域には、同種かつ同量のイオンが注入されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
MOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、
ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部をドレイン側に有するゲート酸化膜を形成するゲート酸化膜形成工程と、
前記厚膜部の下面を覆うようにドレイン側LDD領域を形成するとともに、前記ゲート酸化膜の下面に接するように、前記ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域を形成するLDD領域形成工程と、
前記厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側の前記ドレイン側LDD領域に、前記ドレイン側LDD領域を形成する際の不純物の注入エネルギーよりも低い注入エネルギーで不純物を注入することによりドレイン領域を形成するドレイン領域形成工程と
を有し、
前記ソース側LDD領域とゲート電極とのオーバラップ量と、前記ドレイン側LDD領域と前記ゲート電極とのオーバラップ量とが等しい半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記LDD領域形成工程において注入されるイオンのドーズ量は1e+13オーダー[atoms/cm]である請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記LDD領域形成工程は、前記ゲート酸化膜形成工程よりも前の工程であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LDMOSFETにおいて、ドレイン側の酸化物の厚さを厚くし、素子間の分離を行うフィールド酸化膜に悪影響を与えることなくLDMOSFETのオン抵抗や降伏電圧を改善することが記載されている。
LDMOSFETは基本的にソース側のLDD(Lightly Doped Drain)注入がされておらず、一般的なMVMOSFETとは不純物プロファイル(ソース-ドレイン(SD:Source-Drain),LDD,チャネル(Channel)等)が大きく異なっている。その為、LDMOSFETの構造をそのまま取り入れるとソース抵抗が高くなり、Ion電流の低下を招く。また、ゲート電圧が8[V]のMOSFET(MVMOSFET)において、基板バイアス電圧=0[V]の場合、ゲート誘導ドレインリーク(GIDL:Gate-Induced-Drain-Leakage current)によりリーク電流は、ゲート電極であるポリシリコンとLDDとのオーバーラップ量に関わらず、1+e-11オーダー[A/μm]で一定となる場合がある。
【0003】
また、ドレイン側の酸化物を厚くしたゲート電圧が8[V]のMOSFETでは、Ioff電流について1e-15オーダー[A/μm]程度の性能を得るためにはGIDLを低下させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8119507号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MVMOSFETにおいてソース側の酸化物の厚さを厚くすると、ゲート電圧が10[V]以下の場合、ソース抵抗が大きくなりすぎてしまい、Ion電流を確保することが困難となる。また、GIDLは、ゲートとドレイン側LDDとの間の電界強度に起因するため、GIDLを抑制するためには、ゲートとLDD間の電界強度を低下させる必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、製造コストを増加することなく、半導体装置のGIDLを抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る半導体装置は、ドレイン側において、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部を有するゲート酸化膜と、前記厚膜部の下面を覆うように形成されたドレイン側LDD領域と、前記ゲート酸化膜の下面であって、前記ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域と、前記厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側に形成されるとともに、ジャンクション位置が前記ドレイン側LDD領域のジャンクション位置よりも浅く形成されたドレイン領域とを備える。
【0008】
本開示の第2態様に係る半導体装置の製造方法は、FETを備える半導体装置の製造方法であって、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部をドレイン側に有するゲート酸化膜を形成するゲート酸化膜形成工程と、前記厚膜部の下面を覆うようにドレイン側LDD領域と、前記ゲート酸化膜の下面であって、前記ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域を形成するLDD領域形成工程と、前記厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側の前記ドレイン側LDD領域に前記ドレイン側LDD領域を形成する際の不純物の注入エネルギーよりも低い注入エネルギーで不純物を注入することによりドレイン領域を形成するドレイン領域形成工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストを増加することなく、半導体装置のGIDLを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図4】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図9】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図10】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図11】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの製造工程を示した図である。
図12】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETのポテンシャル障壁の比較図である。
図13】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETの出力特性の比較を示すグラフである。
図14】本発明の一実施形態に係るMVMOSFETのポテンシャル障壁の比較図である。
図15】本発明の他の実施形態に係るMVMOSFETの構造例の断面図である。
図16】本発明の他の実施形態に係るMVMOSFETの構造例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る半導体装置及びその製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(MVMOSFETの実施形態1)
図1は、本実施形態に係るMVMOSFETの構造を示す断面図である。本実施形態において、図1に示すように、半導体基板2の厚さ(深さ)方向Xに直交する方向を幅方向Yという。また、厚さ方向X及び幅方向Yのそれぞれに直交する奥行き方向については、図1に示すような断面が所定範囲に亘って連続して形成されているものとし、その説明を省略する。
また、以下の説明において、厚さや幅について一例をあげているが、この例に限られず、例えば、製造工程などにおける注入量等の誤差、また、完成品における厚さ、幅等の誤差の範囲は許容されるものとする。
【0013】
本実施形態において半導体装置は、MVMOSFET1を有している。MVMOSFET1は、P型不純物を注入することによりPウェル領域が形成された半導体基板2と、シャロートレンチアイソレーション(STI)(不図示)と、ソース側LDD領域3と、ドレイン側LDD領域4と、ソース側SD領域5と、ドレイン側SD領域(ドレイン領域)6と、ゲート酸化膜7と、ゲート(ゲート電極)Gとを備える。また、ゲート酸化膜7は、膜厚が薄い薄膜部8と薄膜部8に比べて膜厚が厚い厚膜部9とを備える。
【0014】
本実施形態では、MVMOSFET1は、MVNMOS(中電圧のNMOS)を例として説明するが、他の構造のMOSであっても良い。MVNMOSとは、動作電圧が概して2.5V以上8V以下の電圧に分類されるMOSFETである。
【0015】
半導体基板2は、本実施形態においてシリコン基板である。半導体基板2は、Pウェル領域と、STI(不図示)を備えている。Pウェル領域は、半導体基板2にボロン(B)等のP型不純物を注入することによって形成されるP型の極性を有する領域である。また、STIは、半導体基板2に形成される各領域間を分断するための構成であり、所定の位置に溝(トレンチ)を掘り、溝をシリコン酸化膜で埋めることにより形成される。STIは絶縁体で構成されるため、シリコン基板表面に形成された各領域を電気的に分離する。
【0016】
ソース側LDD領域3は、半導体基板2に砒素(As)やリン(P)等のN型不純物を注入することにより、半導体層に形成される低濃度領域である。半導体層に低濃度領域を形成することにより、空乏層が拡大し電界強度を低下させる。また、ソース側LDD領域3は、ソース側の薄膜部8に対して、MVMOSFET1の厚さ方向Xの下方側に位置し、ソース側の薄膜部8の下面の一部を覆うように形成される。
【0017】
同様に、ドレイン側LDD領域4は、半導体基板2に砒素(As)やリン(P)等のN型不純物を注入することにより、半導体層に形成される低濃度領域である。半導体層に低濃度領域を形成することにより、ゲートG下部のPウェル領域において空乏層が拡大し電界強度が低下する。また、ドレイン側LDD領域4は、厚膜部9に対して、MVMOSFET1の厚さ方向Xの下方側に位置し、厚膜部9の下面を覆うように形成される。
【0018】
ソース側SD領域5は、トランジスタのソースを設けたい領域に不純物が注入されることによって形成される。換言すると、ソース側SD領域5は、ポリシリコン等の材料によって構成されるソース電極が形成される領域である。なお、ソース側SD領域5は、ジャンクション位置がソース側LDD領域3のジャンクション位置よりも浅く形成される。
【0019】
ドレイン側SD領域(ドレイン領域)6は、トランジスタのドレインを設けたい領域に不純物が注入されることによって形成される。換言すると、ドレイン側SD領域6は、ポリシリコン等の材料によって構成されるドレイン電極が形成される領域である。なお、ドレイン側SD領域6は、ジャンクション位置がドレイン側LDD領域4のジャンクション位置よりも浅く形成される。
例えば、ソース側SD領域5及びドレイン側SD領域6は、半導体基板2に砒素(As)やリン(P)等のN型不純物を注入することにより形成される。
【0020】
ゲート酸化膜7は、半導体基板2表面に形成される酸化膜である。ソース側の薄膜部8は、ゲート酸化膜7のソース側の領域に位置し、膜厚は、例えば14[nm]である。
【0021】
厚膜部9は、ゲート酸化膜7のドレイン側の領域に位置し、膜厚は、例えば、120[nm]である。また、厚膜部9の幅は、例えば、200~300[nm]である。このように、ドレイン側のゲート酸化膜を厚くすることにより、MVMOSFET1の降伏電圧を高めることができ、GIDLを低減できる。
【0022】
ソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4は、ドーズ種及びドーズ量が同じN型不純物が注入されることにより形成されることが好ましい。
これらの条件を満たすことにより、MVMOSFET1の降伏電圧をより効果的に高めることができ、GIDLを低減できる。
【0023】
ゲート電極Gは、ポリシリコンにより構成されている。ゲート電極Gは、ゲート酸化膜7上に形成され、ゲート電極Gの膜厚は、例として200[nm]である。なお、ゲート電極Gは、ポリシリコンの他に、高誘電率絶縁膜/メタル・ゲート(MGHK:metal gate/high-k)を用いることとしても良い。また、ソース側LDD領域3とゲート電極Gとの幅方向Yにおけるオーバーラップ量と、ドレイン側LDD領域4とゲート電極Gとの幅方向Yにおけるオーバーラップ量とが等しくなるように形成されることが好ましい。なお、オーバーラップ量は、好ましくは200[nm]である。
【0024】
(MVMOSFETの製造方法)
次に、本実施形態におけるMVMOSFET1の製造工程(プロセスフロー)の一例について図2図11を参照して説明する。
【0025】
図2に示すステップS10において、半導体基板2にSTIを形成する。STIは、各領域間を分断するための構成であり、所定の位置に溝(トレンチ)を掘り、溝をシリコン酸化膜で埋めることにより形成される。STIは絶縁体で構成されるため、半導体基板2に形成された各領域を電気的に分離する。
次に、半導体基板2に対して、ボロン(B)等のP型不純物を注入し、半導体基板2にPウェル領域を形成する。
【0026】
次に、図3に示すステップS12において、Pウェル領域に対してN型不純物を注入し、ソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4を形成する。
まず、MOSFETを形成する半導体基板2表面においてソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4を形成する各領域以外の領域をフォトレジストによってマスクする。ここで、マスクの位置は、後述するソース及びドレインが形成される各SD領域を考慮して設計される。
【0027】
次に、半導体基板2表面がマスクされた状態で不純物を注入することにより、ソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4を形成する。ソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4は、例えば、Pウェル領域に対して、リン(P)等のN型不純物を、ドーズ量1e+13オーダー[atoms/cm]で注入して形成する。
【0028】
次に、図4に示すステップS14において、ソース側LDD領域及びドレイン側LDD領域を形成するためのマスクを除去した後、CVD法によって70~200[nm]程度の窒化シリコン(SiN)膜を形成する。
【0029】
さらに、窒化シリコン膜上にフォトレジストを塗布し、半導体基板2表面において厚膜部9を形成する領域以外の領域をレジスト層PRによってマスクする。そして、半導体基板2表面にマスクを形成した状態で、高周波(RF:Radio Frequency)放電等を用いてドライエッチングを行う。ドライエッチングを行うことにより、厚膜部9を形成するための酸化物を埋め込む溝を形成する。
【0030】
次に、図5に示すステップS16において、ドライエッチング完了後、レジスト層の除去と薬品洗浄を行う。その後、例えば、熱酸化法により、厚さ約120[nm]の厚膜部9を形成する。なお、熱酸化法は、ドライ酸化、ウェット酸化、スチーム酸化のいずれを用いてもよい。
【0031】
次に、図6に示すステップS18において、半導体基板2上に形成された窒化シリコン(SiN)膜を除去するために、リン酸(HPO)系溶液を例とする薬品を用いてウェットエッチングを行う。その後、厚膜部9の形成工程と同様に、熱酸化法により、厚膜部9よりもソース側の位置に厚さ14[nm]の薄膜部8を形成する。このように、ゲートG下部のゲート酸化膜7は、ドレイン側の領域において膜厚が厚く、ソース側の領域において膜厚が薄い構造が形成される。
【0032】
次に、図7に示すステップS20において、ソース側に薄膜部8を形成した後、リソグラフィ技術によって、厚さ200[nm]のポリシリコンのゲート電極Gがパターニングされる。
【0033】
次に、図8に示すステップS22において、フォトレジストを除去した後、CVD法の成膜方法により半導体基板2表面の所定の領域にポリシリコンを堆積させ、堆積したポリシリコンのドレイン側が厚膜部9のチャネル側と重なるように、厚さ200[nm]のポリシリコンのゲート電極Gを形成する。
【0034】
次に、図9に示すステップS24において、CVD法により誘電体膜を成膜した後、反応性イオンエッチング(RIE)によりゲート電極Gの両側面にサイドウォールSWを形成する。ソース側のサイドウォールSWはソース側の薄膜部8上に形成される。また、ドレイン側のサイドウォールSWは厚膜部9上に形成される。
【0035】
次に、図10に示すステップS26において、リン(P)等のN型不純物をソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4へ注入し、N型のソース側SD領域5及びドレイン側SD領域6を形成する。なお、図10において、ゲート電極Gのドレイン側端部がゲート酸化膜7の厚膜部9上に位置するように設けられている。さらに、ドレイン側SD領域6は、ゲート電極Gのドレイン側端部に対して所定の距離を設けるように形成される。
ソース側SD領域5及びドレイン側SD領域6の各ジャンクション位置は、ソース側SD領域5及びドレイン側SD領域6を形成する際の不純物の注入エネルギーを、ソース側LDD領域3及びドレイン側LDD領域4を形成する際の注入エネルギーよりも低くすることにより、ドレイン側LDD領域4のジャンクション位置よりも浅くなる。
また、厚膜部9が厚く形成されたことにより、ドレイン側SD領域6形成時に注入されるN型不純物は、厚膜部9下部のドレイン側LDD領域4に浸透しない。
【0036】
次に、スパッタリング等のPVD法により半導体基板2表面にニッケル(Ni)膜を形成する。ニッケル膜の成膜後にアニール処理を行うことにより、シリコン(Si)とニッケルの接合部はニッケルシリサイド(NiSi)に変化する。その後、薬品処理によって酸化膜上のニッケルだけを除去する。
なお、ニッケルシリサイド等のシリサイドは、上述のように一般的なシリサイドプロセスフローによって形成される。
【0037】
次に、図11に示すステップS28において、CVD法とCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、MVMOSFET1における導電層や各電極、配線上に層間絶縁膜を形成する。そして、ソースS、ドレインD及びゲートGの各電極をそれぞれ接続するためのコンタクトホールをドライエッチングにより形成する。そして、コンタクトホールにタングステン(W)を埋め込むことによってコンタクトが形成され、形成されたコンタクトの表面にメタル配線等が敷設されてソースS、ドレインD及びゲートGの各電極が形成される。
本実施形態に係るMVMOSFET1は、以上のプロセスフローを経て製造される。
【0038】
(MVMOSFETの性能評価)
図12は、MVMOSFETのポテンシャル障壁の比較図である。また、図13は、構造が異なるMVMOSFETのGIDLの比較を示すグラフである。
【0039】
また、図12において、横軸(厚さ方向X)はゲートG-ドレインD間の電界強度を示す。縦軸(幅方向Y)はソースS-ドレインD間の電界強度を示す。また、図中の実線はLDD領域が浅いMOSFETの伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evを示す。一点鎖線はLDD領域が深いMOSFETの伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evを示す。破線はLDD領域が深くかつゲート酸化膜に厚膜部を有するMOSFETの伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evを示す。また、図中のY軸方向マイナス側に位置する実線、一点鎖線、破線のそれぞれは価電子帯の電界強度Evを示し、図中のY軸方向プラス側に位置する実線、一点鎖線、破線のそれぞれは伝導帯の電界強度Ecを示す。
【0040】
図12において、伝導帯の電界強度Ecと価電子帯の電界強度Evに挟まれた領域はポテンシャル障壁を表す。図中の各線より、MVMOSFETの各構造におけるポテンシャル障壁を比較する。実線及び一点鎖線を比較すると一点鎖線のポテンシャル障壁の方が拡大している。すなわち、MVMOSFETの各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成することにより、ゲート酸化膜近傍において、伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度EvのX軸方向における各電界強度が小さくなり、ポテンシャル障壁が拡大している。また、MVMOSFETの各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成することにより、ゲート酸化膜に対して深い位置(図12におけるX軸方向右側)においても電界が発生し、ポテンシャル障壁が形成される。このように、ポテンシャル障壁が拡大することにより、ポテンシャル障壁を通過する電子の数が減少し、GIDLをさらに抑制できる。
【0041】
また、一点鎖線及び破線を比較すると破線のポテンシャル障壁の方が拡大している。MVMOSFETの各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成するとともに、ゲート酸化膜が厚膜部を有することにより、ゲート酸化膜近傍において、伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度EvのX軸方向における各電界強度がさらに小さくなり、ポテンシャル障壁が拡大している。このように、ポテンシャル障壁が拡大することにより、ポテンシャル障壁を通過する電子の数が減少し、GIDLをさらに抑制できる。
【0042】
図13は、MVMOSFETの出力特性の比較を示すグラフである。図13の横軸はゲート電圧Vgを示し、縦軸はドレイン電流Idを示す。図13において、一点鎖線は各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成したMOSFETのGIDLを示す。実線は各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成し、かつゲート酸化膜に厚膜部を有するMOSFETのGIDLを示す。一点鎖線及び実線で示されるドレイン電流Idの最小値が、MOSFETのGIDLの評価値である。
【0043】
図13によれば、各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成し、かつゲート酸化膜に厚膜部を有するMOSFETのGIDLは、各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成したMOSFETのGIDLよりも略2.5桁分低下している。すなわち、ゲート酸化膜に厚膜部を形成することにより、MOSFETのGIDLが改善される。
以上より、MOSFETの構造を変更し、ポテンシャル障壁を拡大することにより、GIDLを抑制することができる。
【0044】
また、図14は、MVMOSFETのポテンシャル障壁の比較図である。図14において、横軸(厚さ方向X)はゲートG-ドレインD間の電界強度を示し、縦軸(幅方向Y)はソースS-ドレインD間の電界強度を示す。図14において、実線は各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成し、かつゲート酸化膜が厚膜部を有するMVMOSFETの伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evの各電界強度を示す。破線は各LDD領域をゲート酸化膜に対して深く形成し、かつゲート酸化膜が厚膜部を有し、さらに、ドレイン側SD領域の端部とゲート電極Gのドレイン側端部と間に所定の距離が設けられているMVMOSFET(実施形態1)の伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evの各電界強度を示す。
【0045】
図14によれば、ドレイン側SD領域の端部が、ドレイン側LDD領域によってオフセットされることにより、ドレイン側SD領域からゲート電極下部のドレイン側LDD領域に拡散する不純物の量が低減される。これにより、ゲート酸化膜近傍において、伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度EvのX軸方向における各電界強度がさらに小さくなり、ポテンシャル障壁を拡大する。
以上より、ドレイン側SD領域の端部とゲート電極のドレイン側端部との間がオフセットされることにより、MOSFETのGIDLを抑制することができる。
【0046】
(MVMOSFETの実施形態2)
図15は、他の実施形態に係るMVMOSFETの構造例の断面図である。本実施形態のMVMOSFET11は、ドレイン側SD領域6の端部が、ドレイン側LDD領域4によってオフセットされておらず、ゲート(ゲート電極)Gの端部が厚膜部9のバーズビーク上に位置している(図中の二点鎖線部)点が、MVMOSFET1と異なっている。なお、本実施形態におけるMVMOSFET11の製造工程については、上述のステップS14及びS16において、レジスト層及び厚膜部を形成する位置が異なることを除いて実施形態1と同様である。
【0047】
本実施形態に係るMVMOSFET11によれば、ドレイン側SD領域6の端部とゲート電極Gのドレイン側端部との間に所定の距離が設けられていないため、MVMOSFET11を幅方向Yに短縮することができ、サイズを小型化することができる。
なお、本実施形態におけるMVMOSFET11の製造工程については、上述のステップS20において、ポリシリコンを堆積する位置が異なることを除いて実施形態1と同様である。
【0048】
(MVMOSFETの実施形態3)
図16は、他の実施形態に係るMVMOSFET21の構造例の断面図である。本実施形態のMVMOSFET21は、厚膜部9が熱酸化法ではなくCVD法により成膜される。また、ゲート電極Gのドレイン側端部が、厚膜部9のドレイン側端部上に位置している点が、MVMOSFET1と異なっている。
【0049】
なお、本実施形態におけるMVMOSFET21の製造工程については、上述のステップS16において、厚膜部9を形成する方法がCVD法であることを除いて実施形態1と同様である。熱酸化法は、高温プロセスによって半導体基板に熱処理を加えることにより、ゲート酸化膜を成膜するため、バーズビークが形成される。これに対して、CVD法は、熱酸化法と異なりバーズビークが形成されず、ゲート酸化膜形成時において、厚膜部と薄膜部の各領域をより正確に形成することができる。
【0050】
また、新しくマスクを追加する必要が無いため、製造コストを増すことなく、GIDLが改善されたMOSFETを製造することができる。さらに、CVD法によるゲート酸化膜の形成前に犠牲酸化を行い、半導体基板表面のダメージ層の除去や汚染の除去を行うことにより、より均一性が高いゲート酸化膜を形成することができる。
【0051】
以上説明したように、各実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、ドレイン側において、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部(9)を有するゲート酸化膜(7)と、厚膜部の下面を覆うように形成されたドレイン側LDD領域(4)と、前記ゲート酸化膜の下面であって、前記ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域(3)と、厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側に形成されるとともに、ジャンクション位置がドレイン側LDD領域のジャンクション位置よりも浅く形成されたドレイン領域(6)とを備える。これにより、ゲート酸化膜近傍において、ポテンシャル障壁が拡大され、伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evの各方向における電界強度が小さくなるため、MVMOSFETはGIDLを抑制することができる。また、従来のMOSFET製造工程を利用することができるため、新たに製造工程やマスクを追加する必要がない。したがって、製造コストを増加することなく、半導体装置の性能を改善することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極(G)を備え、ゲート電極のドレイン側の端部は、厚膜部上に位置する。すなわち、ゲート酸化膜が有する厚膜部上にゲート電極が形成される構造であってもよい。すなわち、MOSFETは、ゲート電極のドレイン側端部とドレイン領域の端部との間に所定の距離が設けられている構造である。これにより、ドレイン領域からドレイン側LDD領域に拡散する不純物が、ドレイン側LDD領域のゲート電極下部の領域に拡散し、不純物濃度が過度に高くなることを抑制することができ、GIDLを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極を備え、ゲート電極のドレイン側の端部は、厚膜部のバーズビーク上に位置する。すなわち、MOSFETのゲート電極のドレイン側端部とドレイン領域の間にオフセットを設けない構造である。これにより、半導体装置の大型化を抑制するとともに、GIDLを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、ドレイン側LDD領域及びソース側LDD領域には、同種かつ同量のイオンが注入されている。これにより、半導体装置の製造工程においてマスク数を増加することなく、ソース側抵抗を低減し、Ion電流の低下を抑制することができる。
【0055】
また、各実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、MOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部をドレイン側に有するゲート酸化膜を形成するゲート酸化膜形成工程と、厚膜部の下面を覆うようにドレイン側LDD領域を形成するとともに、ゲート酸化膜の下面であって、ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域を形成するLDD領域形成工程と、厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側のドレイン側LDD領域に、ドレイン側LDD領域を形成する際の不純物の注入エネルギーよりも低い注入エネルギーで不純物を注入することによりドレイン領域を形成するドレイン領域形成工程とを有する。これにより、ドレイン側において、ソース側の厚さよりも厚く形成された厚膜部を有するゲート酸化膜と、厚膜部の下面を覆うように形成されたドレイン側LDD領域と、ゲート酸化膜の下面であって、ドレイン側LDD領域と幅方向に間隔をあけて設けられたソース側LDD領域と、厚膜部のドレイン側端部よりもドレイン側に形成されるとともに、ジャンクション位置がドレイン側LDD領域のジャンクション位置よりも浅く形成されたドレイン領域とを備える半導体装置を製造できる。また、ドレイン領域は、ドレイン側LDD領域を形成する際の不純物の注入エネルギーよりも低い注入エネルギーで不純物を注入することにより形成されるため、ジャンクション位置がドレイン側LDD部のジャンクション位置よりも浅く形成される。また、製造された半導体装置は、ゲート酸化膜近傍において、ポテンシャル障壁が拡大され、伝導帯の電界強度Ec及び価電子帯の電界強度Evの各方向における電界強度が小さいため、GIDLを抑制することができる。また、従来のMOSFET製造工程を利用することができるため、新たに製造工程やマスクを追加する必要がない。したがって、製造コストを増加することなく、半導体装置の性能を改善することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、LDD領域は、SD領域よりも深いジャンクションを有し、かつ、イオンのドーズ量が1e+13オーダー[atoms/cm2]である。ここで、LDD領域及びSD領域のジャンクションの深さがそれぞれ異なる条件として、例えば、PMOSの場合、注入エネルギー20[keV]でボロン(B)を注入してLDD領域を形成し、注入エネルギー6[keV]でボロン(B)注入してSD領域を形成する。また、NMOSの場合、注入エネルギー70[keV]でリン(P)を注入してLDD領域を形成し、注入エネルギー30[keV]でリン(P)を注入してSD領域を形成する。これにより、より効果的にGIDLを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、LDD領域形成工程は、ゲート酸化膜形成工程よりも前の工程である。これにより、ゲート電極形成時におけるポリシリコンのイオン注入による突き抜けを考慮する必要が無く、深いジャンクションを有するLDD領域を形成することができる。すなわち、従来の製造工程を利用してGIDLが抑制された半導体装置を製造することができる。
【0058】
以上、本発明について各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、上記各実施形態で説明した製造工程の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な工程を削除したり、新たな工程を追加したり、工程の順序を入れ替えたりしてもよい。また、各実施形態で説明した具体的なドーズ量、厚さ等の各種設計値についても一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 MVMOSFET
2 半導体基板
3 ソース側LDD領域
4 ドレイン側LDD領域
5 ソース側SD領域
6 ドレイン側SD領域
7 ゲート酸化膜
8 薄膜部
9 厚膜部
11 MVMOSFET
21 MVMOSFET
D ドレイン
Ec 伝導帯の電界強度
Ev 価電子帯の電界強度
G ゲート(ゲート電極)
Id ドレイン電流
PR レジスト層
S ソース
SW サイドウォール
Vg ゲート電圧
X 厚さ方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16