IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7593570薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック
<>
  • -薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック 図1A
  • -薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック 図1B
  • -薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック 図2A
  • -薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック 図2B
  • -薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】薄層電気化学デバイスに用いられる電解質用の多孔質セラミック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20241126BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20241126BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20241126BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241126BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241126BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241126BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241126BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01B1/06 A
H01G11/56
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/121
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020560782
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 FR2019051033
(87)【国際公開番号】W WO2019215411
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】1853924
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン ファビアン
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0012264(US,A1)
【文献】特表2010-537387(JP,A)
【文献】特開平05-211059(JP,A)
【文献】特開2016-122528(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088196(WO,A1)
【文献】特表2015-536031(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0082402(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 4/00-4/62
H01M 50/10-50/198
H01B 1/06
H01G 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス内の薄層電解質(13、23)であって、
前記電解質は、リチウムイオンを運ぶ相で含浸された多孔質無機層を含み、
前記多孔質無機層は、平均直径D50が100nm未満であり、体積が前記薄層電解質の総体積の25%超えの開いた細孔が相互接続されたネットワークを有し、
前記多孔質無機層は有機バインダを含まず、
前記薄層電解質の厚さが10μm未満であることを特徴とする、薄層電解質。
【請求項2】
請求項1に記載の薄層電解質(13、23)において、
前記多孔質無機層の前記開いた細孔は、体積が前記薄層電解質の総体積の30~50%であることを特徴とする、薄層電解質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薄層電解質(13、23)において、
前記多孔質無機層は電子絶縁材料を含み、Al、SiO、ZrO及び/又は以下より形成される群から選択された材料から選択されることを特徴とする、薄層電解質:
・一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・Aは、酸化状態+IIのカチオンであり、;そして、
・Aは酸化状態+IIIのカチオンであり、;そして、
・(TO)は、アニオンであり、Tが酸化状態+IVで酸素原子によって形成された四面体の中心に位置する原子であり、TOは有利にはケイ酸又はジルコン酸アニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tの全部又は一部が酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えられ;
・dは2~10であり;xは2.6~3.4;yは1.7~2.3、そしてzは2.9~3.1であり;
・ガーネット、以下から選択される:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、M=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7-xBaLa3-x12、0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7-xLaZr2-x12、0≦x≦2及びM=Al、Ga若しくはTa又はこれらの化合物の2つ又は3つの混合物;
・リン酸リチウム、以下から選択される:NaSICONタイプのリン酸塩、LiPO;LiPO;「LASP」と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi、1.8<x<2.3;Li1+6xZr(P1-x、0≦x≦0.25;Li(Sc2-x)(PO、M=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(PO、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO、0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2-x(PO、M=Al、Y又はその2つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2-x(PO、0≦x≦1、「LATP」と呼ばれる;又はLi1+xAlGe2-x(PO、0≦x≦1、「LAGP」と呼ばれる;又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12、0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al、Ga若しくはY又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物;Li3+y(Sc2-x)Q3-y12、M=Al及び/又はY及びQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2-x3-y12、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物及びQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12、0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、M=Al又はY又はその2つの化合物の混合物及びQ=Si及び/又はSe;又はLi1+xZr2-x(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+xZr2-xCa(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+x 2-x12、0≦x≦1及びM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/又はMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物;
・ホウ酸リチウム、以下から選択される:Li(Sc2-x)(BO、M=Al又はY、0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(BO、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO、0≦x≦0.8、0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2-x(BO、M=Al、Y又はその2つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
・酸窒化物、LiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3であり0<x<4又はLiBO3-x2x/3であり0<x<3、から選択されるもの;
・「LiPON」と呼ばれる、酸窒化リチウム及びリンをベースにしたリチウム化合物であり、一般式LixPOyNzのもの、ここでx~2.8及び2y+3z~7.8及び0.16≦z≦0.4、またLiPOであり2x+3y+2z=5=wの化合物又はLiPOであり3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3の化合物又はLiAlであり5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2の化合物;
・それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる、リチウムリン又はホウ素の酸窒化物をベースとする材料であり、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウムを、又は、アルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせを、リチウムリンの酸窒化物をベースとする材料の場合はホウ素を、含んでいてもよい;
・リチウム、リン及びケイ素の酸窒化物をベースとするリチウム化合物、「LiSiPON」と呼ばれるもの;
・LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはホウ素、リン及び硫黄を、それぞれ 表す);
・LiBSOタイプ のリチウム酸窒化物;
・酸化リチウム、LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12、A=Sc、Y、Al、Ga及び1.4≦x≦2又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO、0≦x≦0.16(LLTO)から選択されるもの;
・ケイ酸塩、LiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるもの;
・以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOAであり、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物でありF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x)x/2OAであり0<x≦3、Mは二価の金属であり、元素Mg、Ca、Ba、Srの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物でありF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x) x/3OA、0≦x≦3、Mは三価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物でありF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;又は、LiCOX(1-z)、X及びYは、Aについて前述のハロゲン原子であり、0≦z≦1、
・化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
・LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(ここでM=Ge、Ti及び/又はHf、0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(ここで0≦x≦1及び0≦y≦1)をベースとする配合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薄層電解質(13、23)であって、
前記細孔は、リチウムイオンを運ぶ相で含浸されており前記相は、有機溶媒若しくは少なくとも1つのリチウム塩が溶解された溶媒混合物、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は適切な溶媒で希釈されていてもよい、少なくとも1つのリチウム塩を含むイオン液体若しくはイオン液体の混合物、でる、
ことを特徴とする、薄層電解質。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薄層電解質(13、23)において、
前記細孔は、少なくとも50重量%の少なくとも1つのイオン液体を含む、リチウムイオンを運ぶ相で含浸されている、
ことを特徴とする、薄層電解質。
【請求項6】
電極(12、22)に堆積された薄層電解質(13、23)の製造方法であって、
(a)少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の、凝集体(aggregates)又は塊(agglomerates)を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は塊は、80~300nmの平均直径を有し、
(b)電極(12、22)を準備し、
(c)前記電極に、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ(a)で得られた無機材料の粒子の懸濁液から、多孔質無機層を堆積させ;
(d)前記多孔質無機層を、乾燥させ、多孔質無機層を得て、
(e)前記多孔質無機層に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、前記多孔質無機層は有機バインダを含まず、
(f)ステップ(e)で得た前記多孔質無機層を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる、
ことを特徴とする、薄層電解質の製造方法。
【請求項7】
電極に堆積された薄層電解質(13、23)の製造方法であって、
(a1)一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つの無機材料Pのナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
(a2)前記コロイド懸濁液に存在する前記ナノ粒子を、平均直径が80~300nmの、粒子の凝集体又は塊を形成するように、不安定化させ、
(b)電極を準備し、
(c)前記電極に、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ(a2)で得られた少なくとも1つの無機材料の粒子の前記凝集体又は塊を含む前記懸濁液から、多孔質無機層を堆積し;
(d)前記多孔質無機層を、乾燥させ、多孔質無機層を得て、
(e)前記多孔質無機層に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、前記多孔質無機層は有機バインダを含まず、
(f)ステップ(e)で得た前記多孔質無機層を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる、
ことを特徴とする、薄層電解質の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の薄層電解質の製造方法において、
ステップ(c)で得た前記多孔質無機層は、厚さが、10μm未満である、薄層電解質の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法において、
ステップ(d)で得た前記多孔質無機層は、厚さが10μm未満である、薄層電解質の製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法において、
前記ナノ粒子の一次直径は、10~50nmである、薄層電解質の製造方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法において、
前記多孔質無機層の細孔の平均直径は2~50nmである、薄層電解質の製造方法。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法において、
前記電極は高密度電極、又はポーラス電極である、薄層電解質の製造方法。
【請求項13】
請求項6~12のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法の使用であって、
薄層電解質の、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、容量、抵抗器、インダクタ、トランジスタからなる群において選択されたデバイスの製造のための使用。
【請求項14】
請求項6~12のいずれか1項に記載の薄層電解質の製造方法を実施する、薄層バッテリの製造方法であって、以下のステップを備える、方法:
-1- アノードとして、そしてカソードとして使用できる材料の層(それぞれ、「アノード層」、「カソード層」)で事前に被覆した、少なくとも2つの導電性基板(11、21)を準備し、
-2- 少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は前記塊の平均直径は、80~300nmであり、
-3- 電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ-2-で得た無機材料の凝集粒子の懸濁液から、ステップ-1-で得られたそれぞれのカソード、アノード層上に、多孔質無機層を堆積させ、
-4- ステップ-3-で得た前記層を、乾燥させ、
-5- カソード及びアノードの層を積層させ、
-6- アソード及びカソードの層に存在する前記多孔質無機層を並べて組み立てるために、ステップ-5で得たアノード及びカソードの層の積層体に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
-7- ステップ-6-で得た構造を、リチウムイオンを運ぶ相で、含浸させ、組み立てられた積層体を得る。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記カソードは、
高密度電極、
又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、メソポーラス電極、又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされたメソポーラス電極であり、及び/又は、前記アノードは、
高密度電極、
又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、メソポーラス電極、
又は、ALDにより、電子絶縁性の層で、コーティングされたメソポーラス電極である、
方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、
ステップ-7-の後、以下を行う、方法:
- 前記バッテリに、以下を、交互に連続して堆積させる:
・前記バッテリの上の、パリレン及び/又はポリイミドの、少なくとも1つの第1層、
・パリレン及び/又はポリイミドの前記第1層の上の、ALD(原子層堆積)による、電気絶縁性の材料で構成された、少なくとも1つの第2層、
・そして、少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層の交互の連続の上に、前記バッテリを、該バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための、層を堆積させ、前記バッテリの封止システムを形成し、
- そのように封止された前記バッテリを、2つの切断面に沿って切断し、前記バッテリのアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、被覆するようにし、
- これらのアノード接続部及びカソード接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・任意で、第1の導電層をALDによって、堆積させ、
・前記第1の導電層に、銀を充填したエポキシ樹脂ベースの第2層を堆積させ、
・前記第2層に、ニッケルベースの第3層を堆積させ、
・前記第3層に、スズ又は銅ベースの第4層を堆積させる。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、
ステップ-6-の後、以下を行う、方法:
- 組み立てられた積層体に、以下を含む、一連の層によって、すなわちシーケンスによって形成された、封止システム(30)を、連続して交互に堆積させる:
・組み立てられた積層体に堆積される、パリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はそれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
・前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積される、電気絶縁性の材料で構成された、第2の被覆層、
- この連続した層において、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択された材料の、最後の被覆層を、堆積させ、
- そのように封止された組み立てられた積層体を、2つの切断面に沿って切断し、組み立てられた積層体のアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記組み立てられた積層体の6つの面のうち4つを、被覆するようにし、基本バッテリを得る、
ステップ-7-の後、以下を行う:
- これらのアノード及びカソードの接続部(50)において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、第1層、
・ 前記第1層に堆積させた、銅のナノ粒子で充填したインクから得られた金属銅を含む、第2層、
- 金属銅の層による、カソード及びアノード接続部(50)の被覆を得るために、得られた層を、熱処理し、
- 終端部のこの第1の積層体において及びその周囲において、連続して、以下を含む第2の積層体を堆積させてもよい:
・ 最小のコストで前記バッテリの気密性を確保するために堆積された、スズ-亜鉛合金の第1層、
・ 前記第2の積層体のこの第1層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの、合金を含む第2層。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記アノード及びカソードの接続部が前記積層体の反対側にある、方法。
【請求項19】
請求項1~5のいずれか1項に記載の薄層電解質層の少なくとも1つを備える、電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の分野、より具体的には薄層の電気化学システムに関する。より正確には、高電力バッテリ(特にリチウムイオンバッテリ)又はスーパーキャパシタなどの電気化学システムに使用され得る薄層電解質に関する。本発明は、より具体的には、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させた多孔質無機層を含む電解質と、そのような薄層電解質を調製する方法に関する。本発明はまた、少なくとも1つのそのような電解質を含む電気化学デバイスを製造するための方法、及びそれによって得られるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリは、電気エネルギーの貯蔵を可能にする電気化学部品である。一般に、それは1つ以上の基本セルで構成され、各セルは電位の異なる2つの電極と電解質とで構成されている。様々な種類の電極が、二次リチウムイオンバッテリで使用できる。セルは、高分子多孔質膜(「セパレータ」とも呼ばれる)又はリチウム塩を含む液体電解質で含浸されたセラミック多孔質膜で分離された、2つの電極で構成し得る。例えば、特許出願JP2002-042792には、バッテリの電極上の電解質層の実施について記載されている。対象となる電解質は、実質的に、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニリデンフルオライド)などの高分子膜であり、その細孔は、LiPFなどのリチウム塩で含浸されている。この文献によれば、電気泳動によって堆積された粒子のサイズは、好ましくは1μm未満であり、形成される層の厚さは好ましくは10μm未満である。このようなシステムでは、液体電解質は、膜に含まれる細孔及び電極に移動し、したがって、電極間のイオン伝導を提供する。
【0003】
高電力の薄層バッテリを作製し、2つの電極間のリチウムイオンの輸送の抵抗を減らすことを目的として、高分子膜の多孔度を増大させることが求められた。しかし、高分子膜の多孔度を増大させることは、バッテリの充電及び放電サイクル中に高分子膜の細孔内の金属リチウムデンドライトの沈殿を促進する。これらのデンドライトは、セル内の内部短絡の原因となり、バッテリの熱暴走のリスクを引き起こし得る。
【0004】
液体電解質を含浸させたこれらの高分子膜は、使用される液体電解質よりも低いイオン伝導率を有する。電極と電解質との間でのイオン伝導を促進するために、薄い高分子膜が使用された。しかし、これらの高分子膜は機械的に脆く、その電気絶縁性は、非常に薄い電解質フィルムを備えたバッテリの場合では強い電界の影響下で、又は機械的及び振動的ストレスの影響下で変化し得る。これらの高分子膜は充電及び放電サイクル中に壊れやすく、アノード及びカソードの粒子の剥離を引き起こし、電気絶縁損失を誘発し、2つの正極及び負極間の短絡を引き起こし、絶縁破壊につながる可能性がある。多孔質電極を使用したバッテリでは、この現象はさらに顕著になる。
【0005】
機械的抵抗を改善するために、Oharaは、特に、EP1049188A1及び特許EP1424743B1において、リチウムイオン伝導性のガラスセラミック粒子を含む高分子膜で構成された電解質の使用を提案した。
【0006】
さらに、Maunelらの(Polymer 47(2006)p.5952-5964)から、ポリマーマトリックス中にセラミックチャージを加えることは、ポリマー電解質の形態学的及び電気化学的特性を改良することが知られている;これらのセラミックチャージは、アクティブ(LiN、LiAlなど)であり得、この場合、それらはリチウムイオンを輸送するプロセスに関与し、又はパッシブ(Al、SiO、MgOなど)であり得、この場合、それらはリチウムイオンを輸送するプロセスに関与しない。粒子のサイズ及びセラミックチャージの特性は、電解質の電気化学的特性に影響を与える。これについては、Zhangらの、「Flexible and ion-conducting membrane electrolytes for solid-state lithium batteries: Dispersions of garnet nanoparticles in insulating POE」、NanoEnergy、28(2016)p.447-454を参照されたい。しかし、これらの膜は、比較的脆く、バッテリ組み立て中に誘発される機械的応力の影響下で簡単に破壊される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、先行技術における前述の不利な点の少なくとも一部を克服しようとするものである。
【0008】
より正確には、本発明が解決しようとする課題は、高いイオン伝導性、安定した機械的構造、優れた熱安定性、長い寿命を備え、且つ安全上の問題を引き起こさない電解質を提案することである。
【0009】
本発明が解決しようとする別の課題は、シンプル、安全、高速、実装が容易、工業化が容易で、且つ安価な、そのような薄層電解質の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする別の課題は、高い信頼性で、且つ、発火のリスクなく、動作し得るバッテリのための電極を提供することである。
【0011】
別の課題は、有機バインダを含まない電解質を提供することである。そのようなバインダは、バッテリの内部短絡が起きた際に、発火を引き起こし得るからである。
【0012】
本発明の別の目的は、衝撃及び振動に機械的に耐えることができる高電力密度を有する剛性構造を備えたバッテリを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、本発明に係る電解質を備えた、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタなどの、電子的、電気的又は電気技術的デバイスの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、信頼性が向上し、より長い寿命を有し、高温及び減圧下で原子層堆積技術(ALD)によって堆積されたコーティングによって封止できる、バッテリ、リチウムイオンバッテリセル、キャパシタ、スーパーキャパシタなどのデバイスを提案することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、高いエネルギー密度を貯蔵でき、このエネルギーを非常に高い電力密度で復元でき(特にキャパシタ及びスーパーキャパシタでは)、高温に耐え、長い寿命を有し、高温及び減圧下でALDによって堆積されたコーティングによって封止できる、バッテリ、リチウムイオンバッテリセル、キャパシタ、スーパーキャパシタなどのデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的
本発明によれば、課題は、リチウムイオンバッテリなどの電気化学デバイス内で、少なくとも1つの薄層電解質を使用することによって解決され、前記電解質は、リチウムイオンを運ぶ相で含浸された開いた細孔が相互接続されたネットワークを有する、多孔質無機層を含む。好ましくは、多孔質無機層は、多孔度が25体積%超え、好ましくは30体積%超えである、メソポーラス構造を有する。
【0017】
有利には、前記多孔質無機層の開いた細孔は、平均直径D50が100nm未満、好ましくは80nm未満、好ましくは2~80nm、より好ましくは2~50nmであり、体積が前記薄層電解質の総体積の25%超え、好ましくは30%超えである。
【0018】
有利には、前記多孔質無機層の開いた細孔は、体積が前記薄層電解質の総体積の30~50%である。
【0019】
好ましくは、前記多孔質無機層は、有機バインダを含まない。
【0020】
有利には、多孔質無機層の厚さは10μm未満、好ましくは3~6μm、好ましくは2.5~4.5μmである。
【0021】
有利には、前記多孔質無機層は電子絶縁材料を含み、好ましくは、Al、SiO、ZrO及び/又は以下より形成される群から選択された材料から選択される:
・一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・Aは、酸化状態+IIのカチオンであり、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdであり;そして、
・Aは酸化状態+IIIのカチオンであり、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laであり;そして、
・(TO)は、アニオンであり、Tが酸化状態+IVで酸素原子によって形成された四面体の中心に位置する原子であり、TOは有利にはケイ酸又はジルコン酸アニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tの全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えられ;
・dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8であり;xは2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2);yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)、そしてzは2.9~3.1であり;
・ガーネット、好ましくは以下から選択される:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12、M=Nb又はTa又はその2つの混合物;Li7-xBaLa3-x12、0≦x≦1及びM=Nb又はTa又はその2つの化合物の混合物;Li7-xLaZr2-x12、0≦x≦2及びM=Al、Ga若しくはTa又はこれらの化合物の2つ又は3つの混合物;
・リン酸リチウム、好ましくは以下から選択される:NaSICONタイプのリン酸塩、LiPO;LiPO;「LASP」と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi、1.8<x<2.3;Li1+6xZr(P1-x、0≦x≦0.25;Li(Sc2-x)(PO、M=Al又はY及び0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(PO、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物及び0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO、0≦x≦0.8;0≦y≦1及びM=Al又はY又はその2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2-x(PO、M=Al、Y又はその2つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;Li1+xAlTi2-x(PO、0≦x≦1、「LATP」と呼ばれる;又はLi1+xAlGe2-x(PO、0≦x≦1、「LAGP」と呼ばれる;又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12、0≦x≦0.8及び0≦y≦1.0及び0≦z≦0.6及びM=Al、Ga若しくはY又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物;Li3+y(Sc2-x)Q3-y12、M=Al及び/又はY及びQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2-x3-y12、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物及びQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8及び0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12、0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、M=Al又はY又はその2つの化合物の混合物及びQ=Si及び/又はSe;又はLi1+xZr2-x(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+xZr2-xCa(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+x 2-x12、0≦x≦1及びM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/又はMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物;
・ホウ酸リチウム、好ましくは以下から選択される:Li(Sc2-x)(BO、M=Al又はY、0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(BO、M=Al、Y、Ga又はその3つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO、0≦x≦0.8、0≦y≦1及びM=Al又はY;Li1+x(Ga)2-x(BO、M=Al、Y又はその2つの化合物の混合物、0≦x≦0.8;LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
・酸窒化物、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3であり0<x<4又はLiBO3-x2x/3であり0<x<3、から選択されるもの;
・「LiPON」と呼ばれる、酸窒化リチウム及びリンをベースにしたリチウム化合物であり、一般式LiPOのもの、ここでx~2.8及び2y+3z~7.8及び0.16≦z≦0.4、及び特にLi2.9PO3.30.46、またLiPOであり2x+3y+2z=5=wの化合物又はLiPOであり3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3の化合物又はLiAlであり5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2の化合物;
・それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる、リチウムリン又はホウ素の酸窒化物をベースとする材料であり、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウムを、又は、アルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせを、リチウムリンの酸窒化物をベースとする材料の場合はホウ素を、含んでいてもよい;
・リチウム、リン及びケイ素の酸窒化物をベースとするリチウム化合物、「LiSiPON」と呼ばれるものであり、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
・LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはホウ素、リン及び硫黄を、それぞれ表す);
・(1-x)LiBO-xLiSO、0.4≦x≦0.8などのLiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
・酸化リチウム、好ましくはLiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12、A=Sc、Y、Al、Ga及び1.4≦x≦2又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO、0≦x≦0.16(LLTO)から選択されるもの;
・ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるもの;
・以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOAであり、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x)x/2OAであり0<x≦3、Mは二価の金属であり、好ましくは元素Mg、Ca、Ba、Srの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x) x/3OA、0≦x≦3、Mは三価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;又は、LiCOX(1-z)、X及びYは、Aについて前述したようなハロゲンであり、0≦z≦1、
・化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
・LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1,3Al0,3Ti1,7(PO、Li1+xAl2-x(PO(ここでM=Ge、Ti及び/又はHf、0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(ここで0≦x≦1及び0≦y≦1)をベースとする配合物。
【0022】
有利には、薄層電解質の前記細孔は、リチウムイオンを運ぶ相、例えば、有機溶媒、又は少なくとも1つのリチウム塩が溶解された溶媒混合物、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は、適切な溶媒で希釈されていてもよい、少なくとも1つのリチウム塩を含むイオン液体若しくはイオン液体の混合物、で含浸されている。
【0023】
有利には、前記細孔は、少なくとも50重量%の少なくとも1つのイオン液体を含む、リチウムイオンを運ぶ相で含浸されている。
【0024】
前記多孔質無機層は、電解質材料から構成され(又はそのような材料を含み得る)、すなわち、リチウムイオンが十分な移動度を有する材料から構成され得る。前記多孔質無機層は、電子伝導性またはリチウムイオンにとっての十分なイオン伝導性を有さない材料で構成され得る(又はそのような材料を含み得る)。両方の場合において、電解質層は、前記多孔質無機層と、それが含浸されたリチウムイオンを運ぶ前記相によって形成されている。第2のケースでは、リチウムイオンを運ぶこの相だけが電解質のイオン伝導性を保証するが、第1のケースでは、多孔質無機層の材料内のリチウムイオンの移動度がイオン伝導性に寄与する。
【0025】
前記リチウムイオンを運ぶ相は、リチウムイオンを含まなければならない。この運ぶ相を形成するために、リチウムイオンを任意の適切な溶媒に溶解し得る。例えば、前記リチウムイオンを運ぶ相は、適切な溶媒で希釈されていてもよいイオン液体を含み得る。それはまた、液体又は多孔性無機層の開いた多孔性に侵入し得るように少なくとも十分に粘性を有する適切な溶媒に、溶解できるポリマーを含み得る。
【0026】
本発明によると、前記多孔質無機層は、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、固体電解質材料の電気絶縁性のナノ粒子のコロイド懸濁液から、堆積させ得る。好ましくは、それはバインダを含まない。本発明の本質的な特徴によれば、この懸濁液は、一次ナノ粒子の凝集体(aggregates)又は塊(agglomerates)を含む。
【0027】
凝集体又は塊を形成する前記一次ナノ粒子は、好ましくは単分散であり、すなわち、それらの一次直径の分布は狭い。これにより、多孔度、さらにはメソ多孔度の、より良好な制御が可能となる。
【0028】
熱処理により、材料のナノ粒子が部分的に癒着する(ネッキングと呼ばれる現象)。ナノ粒子は大きな表面エネルギーを有しており、それがこの構造変更の推進力となっていることが知られている;これは、材料の融点よりもかなり低い温度で、短い処理時間後に起こる。したがって、バインダを含まず、単一構造の、開いた細孔が相互接続されたネットワークを有する、3次元メソポーラス構造が形成され、その中で、リチウムイオンは移動性を有し、これは粒界やバインダの層によって低減されない。この部分的な、凝集したナノ粒子の癒着は、塊へと変化する。熱処理によって引き起こされる塊となったナノ粒子の部分的な癒着は、3次元メソ―ポーラス構造の固化(consolidation)を可能にする。
【0029】
この構造は、また、バインダなしでも、層の良好な機械的耐性を提供する。
【0030】
凝集体及び塊は、それぞれ、懸濁液が十分に精製されていない場合での水熱合成の直後に、得ることもでき:そして、懸濁液のイオン強度は、一次ナノ粒子を、より大きなサイズの粒子への凝集及び塊へと、それぞれ導く。
【0031】
本発明の第2の目的は、電極に堆積された薄層電解質を製造するための方法であって、前記層は、好ましくは有機バインダを含まず、好ましくは、30体積%超えの、より好ましくは30~50体積%の、多孔性を、好ましくはメソポーラスを有し、前記層は、平均直径D50が100nm未満、好ましくは80nm未満、好ましくは50nm未満の、細孔を有し、前記方法は、以下を特徴とする:
(a)少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の、凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は塊は、80~300nm(好ましくは100~200nm)の平均直径を有し、
(b)電極を準備し、
(c)前記電極に、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ(a)で得られた無機材料の粒子の懸濁液から、多孔質無機層を堆積させ;
(d)前記多孔質無機層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、多孔質無機層を得て、
(e)前記多孔質無機層に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
(f)ステップ(e)で得た前記多孔質無機層を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる。
【0032】
本発明の別の目的は、電極に堆積された薄層電解質の製造方法であって、前記層は、好ましくは有機バインダを含まず、好ましくは、30体積%超えの、より好ましくは30~50体積%の、多孔性を、好ましくはメソポーラスを有し、前記層は、平均直径D50が100nm未満、好ましくは80nm未満、好ましくは50nm未満の、細孔を有し、前記方法は、以下を特徴とする:
(a1)一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つの無機材料Pのナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
(a2)前記コロイド懸濁液に存在するナノ粒子を、平均直径が80~300nmの、好ましくは100~200nmの、粒子の凝集体又は塊を形成するように、不安定化させ、該不安定化は、好ましくは、塩、好ましくはLiOHなどの不安定化剤を添加することにより行い、
(b)電極を準備し、
(c)前記電極に、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ(a2)で得た少なくとも1つの無機材料の粒子の凝集体又は塊を含む前記懸濁液から、多孔質無機層を堆積させ;
(d)前記多孔質無機層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、多孔質無機層を得て、
(e)前記多孔質無機層に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
(f)ステップ(e)で得た前記多孔質無機層を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる。
【0033】
有利には、ステップ(c)で得た多孔質無機層は、厚さが、10μm未満、好ましくは8μm未満、より好ましくは1~6μmである。
【0034】
有利には、ステップ(d)で得た多孔質無機層は、厚さが、10μm未満、好ましくは3~6μm、好ましくは2.5~4.5μmである。
【0035】
有利には、前記ナノ粒子の一次直径は、10~50nm、好ましくは10~30nmである。
【0036】
好ましくは、細孔の平均直径は2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmである。
【0037】
電極は高密度電極、又は多孔質電極、好ましくはメソポーラス電極である。
【0038】
本発明に係る方法は、薄層電解質の、以下より構成される群から選択される、電子的、電気的又は電気技術的デバイスの、製造のために使用される:バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、キャパシタ、抵抗器、インダクタンス、トランジスタ、太陽電池。
【0039】
本発明の別の目的は、本発明に係る薄層バッテリの製造方法であって、以下のステップを含む:
-1- アノードとして、そしてカソードとして使用できる材料の層(それぞれ、「アノード層」12、「カソード層」22)で事前に被覆した、少なくとも2つの導電性基板を準備し、
-2- 少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は前記塊の平均直径は、80~300nm(好ましくは100~200nm)であり、
-3- ステップ-1-で得た、それぞれカソード、アノードに、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ-2-で得た無機材料の凝集粒子の懸濁液から、多孔質無機層を堆積させ、
-4- ステップ-3-で得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
-5- カソード及びアノードの層を積層させ、好ましくは横方向にずらし、
-6- 好ましくは有機バインダを含まない、剛性の全固体組立物(all-solid-state assembly)を得るために、アノード及びカソードの層に存在する多孔質無機層を並べて組み立てるために、ステップ-5-で得たアノード及びカソードの層の積層体に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
-7- ステップ-6-で得た構造を、リチウムイオンを運ぶ相で、好ましくは少なくとも50重量%の少なくとも1つのイオン液体を含むリチウムイオンを運ぶ相で、含浸させ、組み立てられた積層体を、好ましくはバッテリを、得る。
【0040】
ステップ-1-及び-2-の順番は重要ではない。
【0041】
有利には、カソードは、高密度電極、又は多孔質電極、又は、好ましくはメソポーラス電極である。有利には、アノードは、高密度電極、又は多孔質電極、又は、好ましくはメソポーラス電極である。
【0042】
有利には、高密度電極又は多孔質電極又はメソポーラス電極は、ALDにより又は化学溶液堆積CSDにより、電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、好ましくは厚さ5nm未満の、層で、コーティングされる。有利には、カソードは、高密度電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、又は、多孔質電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、又は、好ましくは、メソポーラス電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極であり、並びに/又は、その一方で、アノードは、高密度電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、又は、多孔質電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、好ましくは、メソポーラス電極、又は、ALDにより若しくはCSDにより、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極である。
【0043】
有利には、カソード及び/又はアノードが多孔質の又はメソポーラスの電極である場合、その構造(すなわち、機械的圧縮及び/又は熱処理により処理された積層体)を、ステップ7においてリチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、前記カソード及び/又は前記アノードの多孔質無機層を含浸させる。
【0044】
有利には、ステップ-7-の後、以下を行う:
- バッテリに、以下を、交互に連続して堆積させる:
・前記バッテリ上の、パリレン及び/又はポリイミドの、少なくとも1つの第1層、
・パリレン及び/又はポリイミドの前記第1層上の、ALD(原子層堆積)による、電気絶縁性の材料で構成された、少なくとも1つの第2層、
・そして、少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層の交互の連続の上に、バッテリを、バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための、好ましくはシリコーン、エポキシ樹脂又はパリレン又はポリイミドで構成された、層を堆積させ、バッテリの封止システムを形成し、
- そのように封止されたバッテリを、2つの切断面に沿って切断し、バッテリのアノード及びカソードの接続部をその切断面の各々に露出させ、封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、
- これらのアノード接続部及びカソード接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・任意で、第1の導電層を、好ましくは金属を、好ましくはALDによって、堆積させ、
・第1の導電層に、銀を充填したエポキシ樹脂ベースの第2層を堆積させ、
.第2層に、ニッケルベースの第3層を堆積させ、
.第3層に、スズ又は銅ベースの第4層を堆積させる。
【0045】
有利には、ステップ-6-の後、以下を行う:
- 組み立てられた積層体に、以下を含む、一連の層によって、すなわちシーケンスによって、好ましくはzシーケンスによって、形成された、封止システムを、連続して交互に堆積させる:
・組み立てられた積層体に堆積される、好ましくはパリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はそれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
・前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積される、電気絶縁性の材料で構成された、第2の被覆層、
・このシーケンスは、z≧1でz回繰り返され得る、
- この連続した層において、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択された材料の、最後の被覆層を、堆積させ、
- そのように封止された組み立てられた積層体を、2つの切断面に沿って切断し、組み立てられた積層体のアノード及びカソードの接続部をその切断面の各々に露出させ、封止システムが前記組み立てられた積層体の6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、基本バッテリを得て、
ステップ(7)の後、以下を行う:
- これらのアノード及びカソードの接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、好ましくはグラファイトを充填したエポキシ樹脂の、第1層、
・ 第1層に堆積させた、銅のナノ粒子で充填したインクから得られた金属銅を含む、第2層、
- 金属銅の層による、カソード及びアノード接続部の被覆を得るために、得られた層を、好ましくは赤外線フラッシュランプによって、熱処理し、
- 終端部のこの第1の積層体において及びその周囲において、連続して、以下を含む第2の積層体を堆積させてもよい:
・ 最小のコストでバッテリの気密性を確保するために、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴への浸漬によって堆積された、スズ-亜鉛合金の第1層、
・ 第2の積層体のこの第1層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの、合金を含む第2層。
【0046】
有利には、アノード及びカソードの接続部50は、積層体の反対側にある。
【0047】
本発明の別の目的は、本発明に係る少なくとも1つの薄層電解質を備えるバッテリ、好ましくはリチウムイオンバッテリに関する。
【0048】
本発明の別の目的は、本発明に係る少なくとも1つの薄層電解質を備えるスーパーキャパシタに関する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1及び2は、本発明の範囲を限定しない、本発明の実施形態を示す図である。
図1A図1Aは、熱処理前のナノ粒子を示し、ネッキング現象を示す。
図1B図1Bは、熱処理後のナノ粒子を示し、ネッキング現象を示す。
図2A図2Aは、回折図を示す。
図2B図2Bは、電気泳動による多孔質電極の堆積に使用される一次ナノ粒子の電子顕微鏡法により得られたスナップショットを示す。
図3図3は、本発明に係る電解質を備えるバッテリを引き出した状態の正面図を図式的に示し、封止システム及び終端部により被覆された基本セルの組立物を備えるバッテリの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
表1は、図面で使用される符号のリストである。
【0051】
【表1】
【0052】
詳細な説明
1.定義
この明細書の文脈では、粒子サイズはその最大寸法によって定義される。「ナノ粒子」とは、その寸法の少なくとも1つが100nm以下であるナノメートルサイズのあらゆる粒子又は物体を指す。
【0053】
この明細書の枠組みでは、材料又は電子絶縁層、好ましくは、電子絶縁性及びイオン伝導性の層は、電気抵抗(電子の通過に対する抵抗)が10Ω・cmを超える材料又は層である。
【0054】
「イオン液体」とは、電気を輸送でき、100℃未満の融解温度で溶融されたすべての塩とは区別されるあらゆる液体塩を意味する。これらの塩の一部は周囲温度で液体のままであり、非常に低い温度でも固化しない。そのような塩は、「周囲温度のイオン液体」と呼ぶ。
【0055】
「メソポーラス材料」とは、その構造内に、サイズがミクロ細孔(幅2nm未満)及びマクロ細孔(幅50nm超え)の中間である、つまり2~50nmの、「メソ細孔」と呼ばれる細孔がある、あらゆる固体を指す。この用語は、当業者のための参照としてのIUPAC(国際純正・応用化学連合)によって採用された用語に対応する。したがって、上記で定義されたようなメソ細孔は、ナノ粒子の定義に関してナノメートルの寸法を有するが、「ナノ細孔」という用語はここでは使用しない。メソ細孔のサイズよりも小さいサイズの細孔は、当業者によって「ミクロ細孔」と呼ばれることが知られている。
【0056】
多孔質の概念(及び前記で開示された用語)の提示は、「Techniques de l’Ingenieur」, traite Analyse et Caracterisation, fascicule P 1050に掲載された、F.Rouquerolらによる「Texture des materiaux pulverulents ou poreux」に記載されている;この記事には、多孔性を特定する技術、特にBET法について記載されている。
【0057】
本発明に関して、は「メソポーラス層」は、メソ細孔を有する層を指す。以下で説明するように、これらの層では、メソ細孔が総多孔質体積に大きく寄与する;この状態は、以下の説明において「メソポーラス多孔度がX体積%を超えるメソポーラス層」という表現を使用して言及される。ここで「X%」は、層の総体積の、好ましくは25%超え、好ましくは30%超え、より好ましくは30~50%である。
【0058】
「凝集体」は、UPACの定義によれば、一次粒子が弱く結合した集合体を意味する。ここで、これらの一次粒子は、透過型電子顕微鏡で測定できる直径を持つナノ粒子である。当業者に知られた技術によれば、凝集した一次ナノ粒子の凝集体は、通常、超音波の影響下で破壊され液相に懸濁できる(すなわち、一次ナノ粒子となる)。
【0059】
「塊」は、UPACの定義によれば、一次粒子又は凝集体が強く結合した集合体を意味する。
【0060】
本発明に関して、「電解質層」という用語は、電気化学デバイス内の層を指し、このデバイスは、その目的に応じて動作し得る。例えば、電気化学デバイスが二次リチウムイオンバッテリである場合、「電解質層」という用語は、リチウムイオンを運ぶ相で含浸された「多孔質無機層」を指す。
【0061】
電気化学デバイス内の前記多孔質無機層は、当技術分野で使用される用語により、ここでは「セパレータ」とも呼ばれる。
【0062】
本発明によると、「多孔性無機層」は、好ましくはメソポーラスであり、電気泳動によって、ディップコーティングによって、インクジェットによって、ロールコーティングによって、カーテンコーティングによって又はドクターブレードによって、ナノ粒子の凝集体又は塊の懸濁液から、好ましくはナノ粒子の塊を含む濃縮懸濁液から、堆積され得る。
【0063】
2.懸濁液の準備
多分散ナノ粒子の堆積により、閉じた多孔性を有する多孔質構造が得られる。このため、これらの多分散ナノ粒子の使用は、本発明に係る方法では、避けるべきである。
【0064】
本発明に係る方法は、これらの多孔質の、好ましくはメソポーラスの、層の堆積技術として、ナノ粒子懸濁液の、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングを使用する。本発明の枠組みの中では、これらのナノ粒子の懸濁液は、乾燥ナノ粉末から調製しないことが好ましい。それらは、液相中で粉末又はナノ粉末を粉砕することによって調製し得る。
【0065】
例えば、粒子はエタノール中で湿式ナノ粉砕してもよい;粒子はジルコニアビーズ(例えば直径0.3mm)を、一次粒子サイズが50nm以上に、粉しくは80以上に、より好ましくは50~150nmになるまで、数時間(例えば5時間)粉砕してもよい;これにより、密な相の形成につながる、堆積された層の制御されない焼結を防止する。懸濁液の導電率は、低いまま、約20μS/cmを維持する。したがって、単峰性であるがかなり広いサイズの分布を得ることができる。ナノ粉砕の欠点は、表面に近い領域の粒子の部分的なアモルファス化であり、これは、これらのナノ粒子から堆積された層の処理を妨害する場合がある。
【0066】
本発明の別の実施形態では、ナノ粒子は懸濁液で、沈殿によって直接、調製される。沈殿によるナノ粒子の合成は、単峰性サイズの、非常に均質なサイズの、すなわち非常に狭い単分散の、良好な結晶性及び純度を備えた、一次ナノ粒子を得ることを可能にする。非常に均質なサイズ及び狭い分布のこれらのナノ粒子の使用により、堆積後、制御された且つ開いた多孔性を備えた多孔質構造を得ることが可能になる。これらのナノ粒子の堆積後に得られる多孔質構造には、閉じた細孔が、ほとんど、好ましくは全く、ない。
【0067】
本発明のより好ましい実施形態では、ナノ粒子は、ソルボサーマル合成又は水熱合成によってそれらの一次サイズで直接調製される;この技術により、サイズ分布が非常に狭い単一分布のナノ粒子を得ることができる;これらの粒子は、「単分散ナノ粒子」と呼ばれる。さらに、これらの粒子は結晶性が非常に良好である。これらの非凝集の又は塊でない(non-agglomerated)粒子のサイズは、一次サイズと呼ぶ。それは、本発明では、100nm未満が好ましく、有利には10~50nmであり、10~30nmが好ましい;これは、ネッキング現象により、この方法の後のステップ中での、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、相互接続されたネットワークの形成に有利である。
【0068】
単分散ナノ粒子のこの懸濁液は、液相中で干渉する可能性のあるすべてのイオンを除去するために精製してもよい。次いで、精製の程度に応じて、特別に処理して、制御された寸法の凝集体又は塊を形成してもよい。より正確には、凝集体又は塊の形成は、イオンによって引き起こされる懸濁液の不安定化から、生じさせてもよい。懸濁液が完全に精製されている場合、それは安定しており、それを通常は塩の形で不安定にするために、イオンを添加する;これらのイオンは、好ましくはリチウムイオン(好ましくはLiOHの形で添加される)である。
【0069】
懸濁液が完全に精製されていない場合、凝集体又は塊の形成は、自発的に又は経時変化によって進行し得る。この進行の方法は、精製ステップが少ないためよりシンプルだが、凝集体又は塊のサイズを制御するのがより困難である。本発明に係る多孔質層の製造のための本質的な態様の1つは、使用される一次粒子のサイズ及びそれらの凝集又は塊形成の程度を制御することからなる。
【0070】
そして、この凝集体又は塊の懸濁液は、本発明に係る多孔質層の、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングによる堆積に使用される。
【0071】
一実施形態では、本発明に係る多孔質層の製造に使用される材料は、低融点で、電子絶縁性で且つホットプレスのステップ中に電極と接触して安定な、無機材料から選択される。材料が耐熱性であるほど、電極/電解質界面を高温で加熱する必要性が高くなり、特に相互拡散によって電極材料との界面が改質するリスクがある。これは、パラサイト反応を発生させ、その電気化学的特性が界面からより深いところにある同じ材料に見られる特性とは異なる、枯渇層(depletion layers)を生成する。リチウムを含む材料は、これらのリチウム枯渇現象を防ぎ又は除外しさえもし得るので、好ましい。
【0072】
本発明に係る多孔質層の製造に使用される材料は、無機物である。特定の実施形態では、本発明に係る多孔質層の製造に使用される材料は、電気絶縁材料である。それは、好ましくは、Al、SiO、ZrOから選択し得る。
【0073】
あるいはこれに代えて、本発明に係る多孔質無機層の製造に使用される材料は、電極/電解質界面の改質を制限するために、リチウムを含む固体電解質などのイオン伝導性材料であってもよい。
【0074】
本発明によれば、多孔質無機層の製造に使用される固体電解質材料は、特に、以下より選択してもよい:
・ 一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・ Aは、酸化状態+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し;そして、
・ Aは、酸化状態+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し;そして、
・ (TO)はアニオンを表し、Tが酸化状態+IVの原子であり、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置し、TOは、有利には、ケイ酸又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えることができる;
・ dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)である;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)であり、zは2.9~3.1である;
・ ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12であってM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xBaLa3-x12であって0≦x≦1且つM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xLaZr2-x12であって0≦x≦2、M=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物;
・ リン酸リチウム、好ましくは以下から選択されるもの:NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO、Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSiであって1.8<x<2.3;Li1+6xZr(P1-xであって0≦x≦0.25;Li(Sc2-x)(PO、M=Al若しくはY且つ0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(PO、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物であり且つ0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(POであって0≦x≦0.8;0≦y≦1且つM=Al若しくはY、又はこれら2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2-x(POであってM=Al、Y又は2つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;「LATP」と呼ばれるLi1+xAlTi2-x(POであって0≦x≦1、又は「LAGP」と呼ばれるLi1+xAlGe2-x(POであって0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1.0且つ0≦z≦0.6且つM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2-x)Q3-y12であってM=Al及び/若しくはY且つQ=Si及び/若しくはSe、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2-x3-y12、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe、且つ0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12であって0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe;又はLi1+xZr2-x(POであって0≦x≦0.25;又はLi1+xZr2-xCa(POであって0≦x≦0.25;又はLi1+x 2-x12であって0≦x≦1且つM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/若しくはMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物;
・ ホウ酸リチウムであって、好ましくは以下から選択されるもの:Li(Sc2-x)(BOであってM=Al若しくはY且つ0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(BO、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(BOであって0≦x≦0.8、0≦y≦1且つM=Al若しくはY;Li1+x(Ga)2-x(BOであってM=Al、Y又はこれら2つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
・ 酸窒化物であって、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3であって0<x<4又はLiBO3-x2x/3であって0<x<3、から選択されるもの;
・ x~2.8且つ2y+3z~7.8且つ0.16≦z≦0.4であるLiPOで表されるリチウム酸窒化物及びリンに基づく、「LiPON」と呼ばれる、リチウム化合物、特にLi2.9PO3.30.46、また、化合物LiPOであって2x+3y+2z=5=w又はLiPOであって3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3の化合物、又はLiAlの形式の化合物であって、5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2;
・ リチウムリン又はホウ素酸窒化物に基づく、それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる材料であって、また、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウムを、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせを、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を、含み得る材料;
・ 「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素の酸窒化物に基づくリチウム化合物、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
・ LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ(thio)-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す);
・ (1-x)LiBO-xLiSOであって0.4≦x≦0.8である、LiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
・ リチウム酸化物であって好ましくは以下より選択されるもの:LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12であってA=Sc、Y、Al、Ga且つ1.4≦x≦2、又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiOであって0≦x≦0.16(LLTO);
・ ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるもの;
・ 以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOAであって、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はそれらの2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x)x/2OA、0<x≦3、Mは二価の金属、好ましくは元素Mg、Ca、Ba、Srの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくは元素F、Cl、Br、Iの少なくとも1つ又はこれらの元素のうちの2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x) x/3OAであって0≦x≦3、Mは三価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくは元素F、Cl、Br、Iの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;又はLiCOX(1-z)であって、X及びYはAに関して前述したようなハロゲン原子、且つ0≦z≦1、
・ 化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
・ LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHf且つ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1且つ0≦y≦1)に基づく配合物。
【0075】
バッテリの組み立てのために、アノード及びカソードの間に、リン酸リチウムをベースとした固体電解質の多孔質層が存在することが好ましい。これらの材料は、比較的融点が低く、粒子は適度な温度で比較的よく融合する。さらに、それらがすでに挿入されたリチウムを含んでいるという事実は、表面における枯渇領域の形成につながるおそれのある、リチウムの材料内での拡散を、防止するのを可能にする。
【0076】
出願人らの観察によると、ナノ粒子の凝集体又は塊の平均直径は、方法の後のステップで、80~300nm(好ましくは100~200nm)であり、開いた多孔性を有する層の細孔の平均直径は、100nm未満、好ましくは80nm未満、好ましくは2~80nm、より好ましくは2~50nmである。
【0077】
本発明によれば、多孔質無機層は、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより堆積させ得る。
【0078】
3.電気泳動による多孔質無機層の堆積
本発明に係る方法は、多孔質層の堆積技術としての、ナノ粒子の懸濁液の電気泳動を使用できる。ナノ粒子の懸濁液から層を堆積する方法それ自体は、知られてる(例えばEP2774208B1を参照)。電気泳動による堆積は、堆積が行われる基板とカウンタ電極との間に電界を印加することによって行い、コロイド懸濁液中の荷電粒子を移動させ、それらを基板上に堆積させる。コロイド懸濁液の安定性を確保するために、極性ナノ粒子を用いるのが好ましく、及び/又は、コロイド懸濁液は、有利には、絶対値が25mVを超えるゼータ電位を有する。
【0079】
電気泳動による堆積は、十分な導電性を有する基板に、本発明に係る多孔質無機層として使用できる無機材料の粒子の懸濁液から行う。したがって、これは金属基板であってもよく、例えば、金属箔(厚さ約5μmのステンレス鋼箔など)、又は導電性表面を有するポリマーの又は非金属の箔(例えば、金属の層で、又は拡散バリアとしても機能する利点があるITOなどの、導電性酸化物の層で、コーティングされている)であってもよい。バッテリを製造するには、無機材料は、電極材料(アノード又はカソード)の層に、電気泳動によって堆積され得る。電極材料の前記層は、例えば、金属箔又は導電性の層でコーティングされたポリマー箔タイプの導電性基板に、堆積され得る。電気泳動を行うために、カウンタ電極を懸濁液中に配置し、導電性基板と前記カウンタ電極との間に電圧を印加する。
【0080】
電気泳動の堆積速度は、作用させる電界及び粒子の電気泳動の移動度に依存し、非常に速くすることができる。作用電圧200Vでは、堆積速度は約10μm/分に達し得る。
【0081】
発明者は、この技術により、非常に広い領域に非常に均質な層(基板の表面で均一な粒子の濃度及び電界にしたがっている)を堆積できることを観察した。また、それは連続バンドプロセス(a continuous band process)、及びプレートでのバッチプロセスに適している。
【0082】
多孔質の、好ましくはメソポーラスの、無機層は、アノード12及び/又はカソード22層に堆積され、それ自体は、適切なプロセスにより集電体として使用される導電性基板上に、及び/又は集電体として使用される十分に導電性のある基板上に直接、形成される。
【0083】
集電体として使用されるこの基板は、例えば、金属箔、又はポリマー箔若しくは金属化された非金属(すなわち、金属の層でコーティングされている)であってもよい。基板は、好ましくは、チタン、銅、ニッケル又はステンレス鋼から構成された箔から選択される。
【0084】
金属箔は、特に金、白金、チタン又はこれらの金属の少なくとも1つ以上を主に含む合金から選択される貴金属の層、又はITOタイプの導電性材料の層(拡散バリアとしても機能する利点がある)でコーティングされていてもよい。
【0085】
本発明に係る多孔質無機層及び多孔質電極を使用するバッテリでは、細孔に含浸するリチウムイオンを運ぶ液相は、集電体と直接接する。しかし、これらのリチウムイオンを運ぶ液相が、金属基板と接し、カソードに対してアノード性が高く、アノードに対してカソード性が高いような電位で分極している場合、これらのリチウムイオンを運ぶ液相は、集電体の溶解を誘発し得る。これらのパラサイト反応は、バッテリの寿命を短くし、バッテリの自己放電を加速させ得る。これを防ぐために、すべてのリチウムイオンバッテリのカソードにアルミニウム集電体が使用されている。アルミニウムは、まさにアノード電位でアノード酸化するという特殊性を備えており、その表面に形成される酸化物の層がそれを溶解から保護する。しかし、アルミニウムは600℃に近い溶融温度を有し、本発明に係る多孔質電極及び電解質を備えるバッテリの製造に使用できない。本発明に係る多孔質電極及び電解質の固化処理は、集電体の溶融につながる。したがって、バッテリの寿命を短くし、その自己放電を加速し得るパラサイト反応を防止するために、チタン製の箔を、カソードにおける集電体として有利に使用する。バッテリの動作中、チタン製の箔はアルミニウムのようにアノード酸化し、その酸化物の層は液体電解質と接するチタンの溶解のパラサイト反応を防ぐ。さらに、チタンはアルミニウムよりもはるかに高い融点を有するので、本発明に係る全固体電極は、このタイプの箔上に直接作製できる。
【0086】
これらのしっかりした材料(massive materials)、特にチタン、銅又はニッケルで構成された箔を使用すると、バッテリの電極の切断端部を腐食現象から保護することもできる。
【0087】
ステンレス鋼も、特に合金元素としてチタン若しくはアルミニウムを含む場合、又は表面に保護酸化物の薄層を有する場合、集電体として使用できる。
【0088】
卑金属箔など、集電体として使用される他の基板を、保護コーティングで被覆して使用してもよく、それらと接触する電解質の存在によって引き起こされるこれらの箔の溶解を防ぐことができる。
【0089】
これらの卑金属箔は、銅、ニッケル製の箔、又はステンレス鋼製の箔、Fe-Ni合金、Be-Ni-Cr合金、Ni-Cr合金若しくはNi-Ti合金などの金属合金の箔であってもよい。
【0090】
集電体として使用される基板を保護するために使用できるコーティングは、様々な性質のものであってもよい。それは以下のようなものであってもよい:
・ 電極と同じ材料の、ゾルゲル法で得られた薄層。この薄層には多孔性がないので、電解質と金属集電体との接触を防ぐことができる;
・ 電極と同じ材料の、真空蒸着、特に物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)によって得られた、薄層、
・ 金、チタン、プラチナ、パラジウム、タングステン又はモリブデンの薄い金属層など、欠陥のない高密度の薄い金属層。これらの金属は、良好な導電性を有し、その後の電極製造方法での熱処理に耐性があるので、集電体を保護するために使用できる。この層は、特に電気化学、PVD、CVD、蒸着、ALDによって形成できる、
・ ALD、PVD、CVDによって、又はゾルゲル溶液のインク付けによって堆積された、ダイヤモンドカーボン(diamond-like carbon)、グラファイトなどのカーボンの薄層、これらは、熱処理後にカーボンドープ無機相を得て導電性にできる。又は、酸化物が低電位に還元されるので、カソード基板にのみ堆積されたITO(インジウムスズ酸化物)の層などの導電性酸化物の層、
・ 窒化物は低電位でリチウムを挿入するので、カソード基板にのみ堆積されたTiNの層などの導電性窒化物の層。
【0091】
集電体として使用される基板を保護するために使用できるコーティングは、抵抗が大きくなりすぎて、このコーティングに後で堆積される電極の動作を損なわないように、電子伝導性でなければならない。
【0092】
一般に、バッテリセルの動作に過度の影響を与えないために、電極の動作電位で、基板で測定されるμA/cmで表される最大溶解電流は、μAh/cmで表される電極の表面容量の1000分の1でなければならない。
【0093】
多孔質の、好ましくはメソポーラスの、無機層は、アノード層12及び/又はカソード層22に堆積される。材料の層の電気泳動堆積は、形状や粗い欠陥の存在にかかわらず、電極層表面を完全に被覆する。その結果、それは層の誘電特性を保証できる。有利な実施形態では、堆積中における懸濁液中の電界の変動及び電極の表面での気泡の形成を防ぐという理由から、高周波電流パルスが適用される。このように堆積された多孔質無機層の厚さは、有利には10μm未満、好ましくは8μm未満であり、より好ましくは1~6μmである。
【0094】
電気泳動堆積によって得られる層のコンパクトさ、及び層内に大量の有機化合物がないことは、乾燥ステップ中の層のひび割れ又は他の欠陥の出現のリスクを制限又は防止し得る。本発明の本質的な特徴によると、本発明に係る多孔質無機層は、本発明は有機バインダを含まない。
【0095】
4.ディップコーティングによる多孔質無機層の堆積
使用するナノ粒子の化学的性質に関係なく、ディップコーティング法及びこれにより無機材料のナノ粒子の堆積が可能である。この堆積方法は、無機ナノ粒子がほとんど又はまったく帯電していないことが好ましい。所望の厚さの層を得るために、無機ナノ粒子をディップコーティングにより堆積するステップと、それに続く得られる層の乾燥のステップとが、必要なだけ繰り返される。
【0096】
浸漬/乾燥によるこの一連のコーティングのステップは時間がかかるが、浸漬コーティングによる堆積方法は、シンプルで、安全で、実施が容易であり、工業化が容易な方法であり、均質でコンパクトな最終層を得ることを可能にする。
【0097】
これらのナノ粒子は、アノード12及び/又はカソード22層に堆積され、適切なプロセスによって集電体として使用される導電性基板に、及び/又は前述のセクション3で示した集電体として使用される十分な導電性の基板上に直接、それ自体が形成される。
【0098】
5.堆積した層の処理及び特性
これらの堆積後、層を乾燥させなければならず;乾燥は亀裂の形成を引き起こしてはならない。このため、乾燥は湿度及び温度を制御した状態で行うことが好ましい。
【0099】
乾燥された層は、プレス及び/又は熱処理のステップによって固化できる。本発明の非常に有利な実施形態では、この機械的(すなわち、機械的圧縮)及び/又は熱処理は、凝集体又は塊中、及び隣接する凝集体又は塊の間で、一次ナノ粒子の部分的な癒着をもたらす;この現象は「ネッキング」又は「ネック形成」と呼ばれる。これは、接触している2つの粒子が部分的に癒着し、ネック(縮み(shrinkage))で接続されて分離されたままになっていることによって特徴づけられる;これは、図1に示される。このように、相互接続された粒子の3次元ネットワークが形成され、このネットワークは、相互接続された細孔により形成された開いた多孔性を含む。これらの細孔のサイズは、有利には、メソ細孔、すなわち2~50nmの範囲にある。有利には、前記多孔質無機層の開いた細孔は、前記多孔質無機層の総体積の25%超え、好ましくは30%超えの体積を有する。多孔質無機層の細孔の体積が25%未満の場合、相互接続された粒子の3次元ネットワークは得られない;この場合、得られる層は、構造が後にリチウムイオンを運ぶ相で含浸できない閉じた多孔性を有する。
【0100】
「ネッキング」を得るのに必要な温度は、材料によって異なり;その処理の時間は、ネッキングを引き起こす現象の拡散性に照らして、その温度によって異なる。
【0101】
場合によっては、この熱処理は、十分な温度、例えば350℃で行われる場合、ナノ粒子又は溶媒の懸濁液の製造方法に由来する有機残留物を除去することも可能にする。
【0102】
熱処理及び/又はプレスは、他の目的に使用される製造の後のステップの間、有利に実行される;これは、バッテリの製造に関する、以下のセクション6で説明される。
【0103】
6.バッテリの組み立て
本発明の目的の1つは、二次のリチウムイオンバッテリ用の新しい薄層電解質を提供することである。以下、多孔質無機層を含む電解質を備えるバッテリの実施について説明する。
【0104】
多孔質無機層の前駆材料であるのナノ粒子懸濁液は、ソルボサーマル的に、特に熱水的に、調製され、これにより結晶性が良好なナノ粒子を直接得られる。多孔質有機層は、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、基板21を被覆するカソード層22及び/又は基板11を被覆するアノード層12に、堆積される;いずれの場合にも、基板11、21は、カソードの又はアノードの集電体として、それぞれ機能し得るのに十分な導電性を有していなければならない。
【0105】
アノード層、多孔質無機層及びカソード層により構成されたセルの組み立ては、好ましくは不活性雰囲気下で、ホットプレスにより行う。その温度は、有利には300~500℃、好ましくは350~450℃である。圧力は、有利には40~100MPaである。ホットプレスは、例えば350℃及び100MPaで行う。
【0106】
次いで、完全に固体で剛性があり、有機材料を含まないこのセルを、リチウムイオンを運ぶ層で浸漬して含浸させる。開いた多孔性及びサイズの小さな多孔性(特に、細孔のD50サイズが50nm未満)により、セル全体(電極及びセパレータ)への含浸は、毛細管現象によって行う。特に好ましいセパレータは、メソ多孔性を有するLiAl0.4Sc1.6(POで構成されたセパレータである。含浸の詳細は、後述のセクション7で説明する。
【0107】
リチウムイオンを運ぶ相は、例えば、非プロトン性溶媒に溶解したLiPF若しくはLiBF又はリチウム塩を含むイオン液体を含み得る。イオン液体は、また、適切な溶媒に溶解して、及び/又は有機電解質と混合して使用してもよい。例えば、EC/DMCに溶解された50重量%のLiPFを、LiTFSI:PYR14TFSI(モル比1:9)のタイプの、リチウム塩を含むイオン液体と混合してもよい。イオン液体の混合物は、例えば、LiTFSI:PYR13FSI:PYR14TFSI(モル比2:9:9)の混合物のように、低温ではたらくもので構成されていてもよい。
【0108】
ECは、炭酸エチレンの一般的な略語である(CAS番号:96-49-1)。DMCは、炭酸ジメチルの一般的な略語である(CAS番号:616-38-6)。LITFSIは、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(CAS番号:90076-65-6)の一般的な略語である。PYR13FSIは、N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドの一般的な略語である。PYR14TFSIは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの一般的な略語である。
【0109】
本発明に係るリチウムイオンバッテリの製造の別の例を示す。この方法は、以下のステップを含む:
(1) アノードとして、そしてカソードとして、それぞれ使用できる材料の層(これらの層は、「アノード層」及び「カソード層」と呼ぶ)で事前に被覆した、少なくとも2つの導電性基板を準備し、
(2) 少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は前記塊の平均直径D50は、80~300nm(好ましくは100~200nm)であり、
(3) ステップ(1)で得た、カソード及びアノードの少なくとも一方に、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、前記コロイド懸濁液から、多孔質無機層を堆積させ、
(4) そのようにして得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
(5) カソード及びアノードの層を積層させ、好ましくは横方向にずらし、
(6) カソード及びカソードの層に存在する多孔質無機層を並べて組み立てるために、ステップ(5)で得たアノード及びカソードの層の積層体に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
(7) ステップ(6)で得た構造を、リチウムイオンを運ぶ相で、好ましくは少なくとも50重量%の少なくとも1つのイオン液体を含むリチウムイオンを運ぶ相で、含浸させ、バッテリを、得る。
【0110】
ステップ(1)及び(2)の順番は重要ではない。
【0111】
得られたバッテリは完全に剛性であり、少なくとも1つのイオン液体が使用されている場合でも、これは多孔質層の細孔にナノ制限(nanoconfined)されている。
【0112】
凝集体又は塊を形成するナノ粒子の平均一次直径D50は、50nm以下であり得、この場合、この懸濁液は、沈殿又はソルボサーマル合成によって調製される。それはまた、50nm超え、好ましくは50~150nmであってもよく、この場合は湿式粉砕で得られた懸濁液を使用し得る。
【0113】
有利には、アノード層及びカソード層は、高密度電極、すなわち体積多孔度が20%未満の電極、多孔質電極、好ましくは開いた細孔又はメソポーラスの相互接続されたネットワークを有し、好ましくは開いたメソ細孔の相互接続ネットワークを有する電極であり得る。
【0114】
多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は比表面積が非常に大きいため、液体電解質と使用する際に、電極と電解質との間のパラサイト反応が起こり得る;これらの反応は少なくとも部分的には不可逆である。有利な実施形態では、電子絶縁性の材料の、好ましくはイオン伝導である、非常に薄い層は、これらのパラサイト反応を防止するために、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極層に適用される。
【0115】
高密度電極の枠組みでは、及び別の有利な実施形態では、電子絶縁材料の、好ましくはイオン伝導性の、非常に薄い層が、高密度電極と電解質との間に存在する界面抵抗を低減するために電極層に、適用される。
【0116】
この電子絶縁性材料の、好ましくはイオン伝導性の、層は、有利には10-8S/cm未満の電子伝導率を有する。有利には、この堆積は、多孔質であるか高密度であるかにかかわらず、電極と電解質との間の界面を形成する、電極の少なくとも1つの面で行なわれる。この層は、例えば、アルミナ、シリカ又はジルコニアから構成され得る。カソードでは、LiTi12を使用でき、又はLiTi12のような、カソードの動作電圧でリチウムを挿入せず、電子絶縁体として動作するという特性を持つ、別の材料を使用し得る。
【0117】
あるいはこれに代えて、この電子絶縁性の層は、イオン伝導性であってもよく、有利には10-8S/cm未満の電子伝導率を有する。この材料は、バッテリの動作電圧でリチウムを挿入せず、輸送するためだけに選択しなければならない。これには、例えば、LiPO、LiBOや、LiLaZr12などのリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZOと呼ばれる)を使用できる。これらは、幅広い動作電位を有する。一方、Li3xLa2/3-xTiOなどのリチウムランタンチタン酸化物(略称LLTO)、リン酸リチウムアルミニウムチタン(略称LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(略称LAGP)は、動作電位の範囲が限られているので、カソードとの接触でのみ使用できる;その範囲を超えると、それらは、リチウムをその結晶構造に挿入できる。
【0118】
この堆積は、多孔質か高密度かにかかわらず、少なくとも1つの電極を備えるリチウムイオンバッテリの性能をさらに改善する。含浸された多孔質電極の場合、この堆積は、電解質との界面ファラデー反応を抑制し得る。これらのパラサイト反応は、温度が高いときにさらに重大である;それらは、容量の可逆的及び/又は不可逆的な損失の原因となる。電解質と接する高密度電極の場合、それは、スペースチャージの出現に関係する界面抵抗を制限し得る。
【0119】
非常に有利には、この堆積は、被覆コーティング(コンフォーマル堆積とも呼ばれる)、すなわち、それが適用される基板の原子トポグラフィを忠実に再現する堆積を可能にする技術によって、行われる。そのようなものとして知られているALD(原子層堆積)又はCSD(化学溶液堆積)技術が適している可能性がある。それは、多孔質無機層の堆積の前及びセルの組み立ての前に、高密度電極に行い得る。それは、製造後、多孔質無機層の堆積の前及び/又は後並びにセルの組み立ての前及び/又は後、好ましくは多孔質電極を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる前に、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極に行い得る。ALDによる堆積技術は、周期的な方法によって層ごとに行われ、基板のトポグラフィを真に再現する封止コーティングを行うことを可能にする;それは電極の表面全体に沿う。この被覆コーティングは、通常、1~5nmの厚さを有する。CSDによる堆積技術は、基板のトポグラフィを真に再現する封止コーティングを行うことを可能にする;それは電極の表面全体に沿う。この被覆コーティングは、典型的には5nm未満、好ましくは1~5nmの厚さを有する。
【0120】
使用される電極が多孔質であり電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料のナノ層で被覆されている場合、その電子絶縁性の材料の、好ましくはイオン伝導性の、層が電極層の開いた多孔性を塞ぐのを防ぐために、それを生成するために用いられる電極材料の粒子の一次直径D50は少なくとも10nmであることが好ましい。
【0121】
電子絶縁性の材料の、好ましくはイオン伝導性の、層は、いかなる有機バインダも含まない電極にのみ堆積されなければならない。実際、ALDによる堆積は、通常100~300℃の温度で行う。この温度では、バインダを形成する有機材料(例えば、インクのテープキャスティングによって生成される電極に含まれるポリマー)が分解するリスクがあり、ALD反応器を汚染する。さらに、活性電極材料の粒子と接触する残留ポリマーの存在は、ALDコーティングが粒子の表面全体を被覆するのを妨げる可能性があり、これはその有効性にとって有害である。
【0122】
例えば、約1.6nmの厚さのアルミナの層が適切である可能性がある。
【0123】
電極がカソードである場合、それは、以下から選択されるカソード材料Pによって構成されていてもよい:
- 酸化物LiMn、Li1+xMn2-xであり0<x<0.15、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-xでありXはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、及びSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され0<x<0.1、LiMn2-xでありM=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg又はこれらの化合物の混合物であり0<x<0.4、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-xであり0≦x<0.15、LiNi1/xCo1/yMn1/zでありx+y+z=10;
- リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;式LiMM’POのリン酸塩でありM及びM’(M≠M’)がFe、Mn、Ni、Co、Vから選択され;
- 以下のカルコゲニドのすべてのリチウム形態:V、V、TiS、オキシ硫化チタン(TiOでありz=2-y且つ0.3≦y≦1)、オキシ硫化タングステン(WOであり0.6<y<3且つ0.1<z<2)、CuS、CuS、好ましくはLiであり0<x≦2、Liであり0<x≦1.7、LiTiSであり0<x≦1、オキシ硫化チタン及びオキシ硫化リチウムLiTiOでありz=2-y、0.3≦y≦1、LiWO、LiCuS、LiCuS
【0124】
電極がアノードである場合、それは、以下から選択されるアノード材料Pによって構成されていてもよい:
- カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト;
- リン酸鉄リチウム(一般式LiFePOのもの);
- ケイ素及びスズの酸窒化物(一般式SiSnでありa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3)(SiTONとも呼ばれる)、特にSiSn0.871.21.72;同様に、一般式SiSnの酸窒化物-炭化物でありa>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17;
- 以下のタイプの窒化物:Si(特にx=3且つy=4)、Sn(特にx=3且つy=4)、Zn(特にx=3且つy=2)、Li3-xN(M=Coの場合は0≦x≦0.5、M=Niの場合は0≦x≦0.6、M=Cuの場合は0≦x≦0.3);Si3-xでありM=Co又はFe且つ0≦x≦3、
- 以下の酸化物:SnO、SnO、LiSnO、SnSiO、LiSiO(x>=0及び2>y>0)、LiTi12、TiNb、Co、SnB0.60.42.9及びTiO
- 0~10重量%の炭素を含む複合酸化物TiNbであり、好ましくは炭素はグラフェン及びカーボンナノチューブから選択されるもの。
【0125】
電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料により、コーティングされているかどうかにかかわらず、高密度の、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極に、好ましくはALDによって又は頭字語CSDの既知の溶液中での化学的な方法で、本発明に係る電解質を実施し得る。
【0126】
エネルギー密度が高く、電力密度が高いバッテリを得るために、このバッテリは、有利には、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、アノード層とカソード層と、本発明に係る電解質とを備える。
【0127】
有利には、アノード及びカソード層は、ALDによって、電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料の層でコーティングされているかどうかにかかわらず、次に、多孔質無機層で被覆され、焼結(sintering)を誘発することなくセルの組み立てを容易にするためにホットプレスされる。堆積物は多孔質のままであり、後での短絡のあらゆるリスクを防ぐことにより、後で電解液で含浸され得る。
【0128】
有利には、本発明に係る、少なくとも1つの多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極及び電解質を備えるバッテリは、性能が向上しており、特に電力密度が高い。
【0129】
少なくとも1つの多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極を備える、本発明に係るリチウムイオンバッテリの製造例を、以下、説明する。この方法は、以下のステップを含む:
(1)一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つのカソード材料のナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し;
(2)平均一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つのアノード材料のナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
(3)少なくとも2つの、好ましくは金属である、導電基板を準備し、該導電基板は、バッテリの集電体として使用でき、
(4)カソード、アノードの少なくとも1つの薄層を、ステップ(1)、ステップ(2)でそれぞれ得た材料のナノ粒子の懸濁液から、好ましくは、ディップコーティング、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又は電気泳動により、好ましくはパルス電流定電流電着により、ステップ(3)で得た前記基板に堆積し、
(5)ステップ(4)で得た層を乾燥させ、
(6)任意で、電気絶縁材料の層を、ALDにより、ステップ(5)で得たカソード及び/又はアノードの層の表面に堆積させ、
(7)多孔質無機材料を、電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液から、ステップ(5)又はステップ(6)で得たカソード及び/又はアノードの層に、堆積させ、第1の及び/又は第2の中間構造を得て、
(8)そのようにしてステップ(7)で得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
(9)以下のいずれかにより、前記第1の及び又は第2の中間構造から積層体を生成し、「基板/アノード/多孔質無機層/カソード/基板」のタイプの積層体を得て:
・ 前記第1の中間構造にアノード層を堆積させるか、
・ 又は、前記第2の中間構造にカソード層を堆積させるか
・ 又は、多孔質無機層のその2つの層の一方を他方の上に配置するように、前記第1の中間構造及び前記第2の中間構造を重ね合わせる、
(10)ステップ(9)で得た積層体をホットプレスし、
(11)ステップ(10)又はステップ(11)で得た構造を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、含浸された構造を、好ましくはセルを、得る。
【0130】
ステップ(1)、(2)及び(3)の順番は重要ではない。
【0131】
有利には、少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の前記凝集体又は塊は、平均直径が80~300nm、好ましくは100~200nmである。
【0132】
ホットプレスによってバッテリを形成する積層体の組み立てが完了すると、これはリチウムイオンを運ぶ相で含浸させ得る。この相は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマーに溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むイオン液体(すなわち、溶融リチウム塩)に溶解された、リチウム塩によって構成された溶液であってもよい。この相は、これらの成分の混合物から構成された溶液でもあってもよい。多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は、その細孔の平均直径D50が2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、好ましくは8~20nmである場合に、単純な毛細管現象によって液相を吸収できる。この全く予想外の効果は、これらの電極の細孔の直径が小さいと、特に有利である。
【0133】
有利には、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は、電解質によって、好ましくは、有機溶媒又はイオン液体に溶解したものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒の混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などの、リチウムイオンを運ぶ相によって、含浸される。
【0134】
そのようにして、非常に高い電力密度を有するリチウムイオンバッテリセルが得られる。
【0135】
7.多孔質無機層の含浸
前のセクションで示したように、多孔質無機層の堆積及び処理、例えば、バッテリを形成する積層体の組み立て中のホットプレスが完了すると、それをリチウムイオンを運ぶ相で含浸させ得る。この相は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマーに溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むイオン液体(すなわち、溶融リチウム塩)に溶解された、リチウム塩によって構成された溶液であってもよい。この相は、これらの成分の混合物から構成された溶液でもあってもよい。
【0136】
本発明者らは、本発明に係る多孔質無機層が、単純な毛細管現象によって液相を吸収し得ることを見出した。この全く予想外の効果は、本発明に係る、多孔質無機層の堆積に特有である;それは、メソ細孔の平均直径D50が2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmである場合に特に有利である。
【0137】
本発明の有利な実施形態では、多孔質無機層は、30%超えの多孔性、好ましくはメソポーラス多孔性を有し、細孔の平均直径D50は50nm未満であり、粒子の一次直径は30nm未満である。その厚さは、有利には、その特性を損なうことなくバッテリの最終的な厚さを小さくするために、10μm未満、好ましくは3~6μm、好ましくは2.5~4.5μmである。バインダは含まれない。その細孔は、有機溶媒又はイオン液体に溶解したものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒の混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などの、電解液によって、含浸される。
【0138】
特に有利な一実施形態では、多孔性、好ましくはメソポーラスは、好ましくは35~50%であり、より好ましくは40~50%である。
【0139】
多孔性に、特にメソ多孔性に、「ナノ制限(nanoconfined)」又は「ナノトラップ(nanotrapped)」された液体は、もはや出てくることができない。これは、ここで「メソポーラス構造での吸収」と呼ばれる現象(リチウムイオンバッテリの文脈では文献に記載されていないようである)と関連しており、セルを真空に置いても出てくることができない。その場合、バッテリは準固体(quasi-solid)と見なされる。
【0140】
リチウムイオンを運ぶ相は、リチウム塩を含むイオン液体であってもよく、有機溶媒又はイオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒の混合物で希釈されていてもよい。
【0141】
イオン液体は、アニオンを伴うカチオンを含む;このアニオン及びこのカチオンは、イオン液体が蓄電池の動作温度範囲で液体状態になるように選択される。イオン液体は、熱安定性が高く、可燃性が低く、不揮発性であり、毒性が少なく且つ電極材料として使用できる材料であるセラミックの濡れ性が良い、という長所がある。驚くべきことに、リチウムイオンを運ぶ相に含まれるイオン液体の重量パーセントは、50%超え、好ましくは60%超え、より好ましくは70%超えであってもよく、これは、従来のリチウムイオンバッテリとは対照的である。従来のものは、電解質中のイオン液体の重量パーセントは、バッテリが放電の際に大きな容量及び高い電圧を維持し、且つサイクルで良好な安定性を維持するために、50重量%未満でなければならない。出願US2010/209783A1に示されているように、50重量%を超えると、従来技術のバッテリの容量は小さくなる。これは、従来技術のバッテリの電解質内のポリマーバインダの存在によって説明できる;これらのバインダはイオン液体によってわずかしか濡らされておらず、リチウムイオンを運ぶ相内のイオン伝導が不十分になり、バッテリの容量の低下を引き起こす。
【0142】
本発明に係る多孔質電極を使用するバッテリは、好ましくは、バインダを含まない。このため、これらのバッテリは、バッテリの最終容量を減少させることなく、少なくとも1つのイオン液体が50重量%を超えの、リチウムイオンを運ぶ相を使用できる。
【0143】
リチウムイオンを運ぶ相は、いくつかのイオン液体の混合物を含んでいてもよい。
【0144】
有利には、イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI+とも呼ばれる)タイプ及び/又はn-プロピル-n-メチルピロリジニウム(PYR13 とも呼ばれる)及び/又はn-ブチル-n-メチルピロリジニウム(PYR14 とも呼ばれる)のカチオンであってもよく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)及び/又はビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)タイプのアニオンを伴っていてもよい。電解質を形成するために、LiTFSIなどのリチウム塩を、溶媒として使用されるイオン液体又はγ-ブチロラクトンなどの溶媒に溶解してもよい。γ-ブチロラクトンは、イオン液体の結晶化を防ぎ、イオン液体の温度での、特に低温での、動作範囲をより広くする。
【0145】
リチウムイオンを運ぶ相は、PYR14TFSI及びLiTFSIを含む電解液であってもよい;これらの略語は、以下で定義される。
【0146】
有利には、多孔質アノード又はカソードがリン酸リチウムの表面保護膜を含む場合、リチウムイオンを運ぶ相は、LiBH、又は、LiBHとLiCl、LiI及びLiBrから選択される1つ以上の化合物との混合物などの固体電解質を含む。LiBHはリチウムの優れた伝導体であり、融点が低いため、特に浸漬することにより、多孔質電極の含浸が容易になる。LiBHは非常に還元力が強いため、電解質としてはほとんど使用されない。多孔質のリン酸リチウム電極の表面に保護膜を使用することで、LiBHによる、電極材料の、特にカソード材料の、還元を防ぎ、電極の劣化を防ぐ。
【0147】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、少なくとも1つのイオン液体、好ましくは周囲温度での少なくとも1つのイオン液体、例えば、γ-ブチロラクトンなどの、少なくとも1つの溶媒で希釈されていてもよいPYR14TFSIなど、を含む。
【0148】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、10~40重量%の溶媒、好ましくは30~40重量%の溶媒、より好ましくは30~40重量%のγ-ブチロラクトンを含む。
【0149】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、50重量%超えの少なくとも1つのイオン液体及び50%未満の溶媒を含み、これは、リチウムイオンを運ぶそのような相を含むバッテリの故障の場合における安全性及び発火のリスクを抑制する。
【0150】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、以下を含む:
- 30~40重量%の溶媒、好ましくは30~40重量%のγ-ブチロラクトン、及び、
- 50重量%超えの少なくとも1つのイオン液体、好ましくは50重量%超えのPYR14TFSI。
【0151】
リチウムイオンを運ぶ相は、PYR14TFSI、LiTFSI及びγ-ブチロラクトンを含む電解液、好ましくは、約90重量%のPYR14TFSI、0.7MのLiTFSI及び10重量%のγ-ブチロラクトンを含む電解液であってもよい。
【0152】
8.封止
リチウムイオンを運ぶ相で含浸されていてもよい、1つ以上の組み立てられたセルによって構成された、多層の剛体システムである、バッテリ1又は組立物は、周辺空気から確実に保護するために適切な方法で封止しなければならない。封止システムは、少なくとも1つの層を含み、好ましくは、いくつかの層の積層体である。封止システムが単層で構成されている場合、それは、ALDによって堆積されるか、又はパリレン及び/若しくはポリイミドで構成されていなければならない。これらの封止層は、化学的に安定で、高温に耐性があり、周辺空気が不透過でなければならない(バリア層)。特許出願WO2017/115032、WO2016/001584、WO2016/001588又はWO2014/131997に記載されている方法の1つを利用してもよい。
【0153】
有利には、バッテリ又は組立物は、いくつかの層の積層体、すなわち、以下を含む、シーケンス、好ましくはzシーケンス(z sequences)によって形成された、封止システム30で被覆されていてもよい:
- アノード及びカソードの箔の積層体に堆積された、好ましくはパリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はこれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
- 電気絶縁材料で構成され、前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積された、第2の被覆層、
このシーケンスは、z≧1でz回繰り返し得る。この多層シーケンスにはバリア効果がある。封止システムのシーケンスが繰り返されるほど、このバリア効果はより大きくなる。それは、堆積された薄層が多数あるのと同様に効果が大きい。
【0154】
有利には、第1の被覆層は、ポリマー層であり、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からの含浸若しくはプラズマアシスト化学気相堆積によって堆積される)、又はエポキシ樹脂、又はポリイミド、ポリアミド、又はポリパラキシリレン(より一般的にはパリレンとして知られている)、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドベース、から構成されている。この第1の被覆層は、バッテリの、影響を受けやすい要素をその周辺環境から保護することを可能にする。前記第1の被覆層の厚さは、好ましくは、0.5~3μmである。
【0155】
有利には、第1の被覆層は、C型のパリレン、D型のパリレン、N型のパリレン(CAS番号:1633-22-3)、F型のパリレン又はC、D、N及び/若しくはF型のパリレンの混合物であってもよい。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)とも呼ばれる)は、誘電性の透明な半結晶性材料であり、高い熱力学的安定性、溶剤に対する高い耐性及び非常に低い透過性を備えている。パリレンは、外部環境からバッテリを保護できるバリア特性も備えている。この第1の被覆層がF型のパリレンから構成されていると、バッテリの保護は強化される。化学蒸着技術(CVD)により真空蒸着してもよい。この第1の封止層は、有利には、化学蒸着技術(CVD)によって表面に堆積されたガス状モノマーの凝縮から得られ、それによって、その対象物の近接可能なすべての表面の、コンフォーマルで薄く均一な被覆が可能となる。それによって、その動作中のバッテリの体積の変化を追跡することが可能となり、その弾性特性によってバッテリの特定の切断を容易にする。この第1の封止層の厚さは、2~10μm、好ましくは2~5μmであり、より好ましくは約3μmである。それは、積層体の近接可能なすべての表面を覆い、これらの近接可能な表面の細孔への近接をその表面でのみ閉じ、基板の化学的性質を均一にすることを可能にする。第1の被覆層は、堆積されたポリマーのサイズが大きすぎて積層体の細孔には入ることができないので、バッテリ又は組立物の細孔には入らない。
【0156】
この第1の被覆層は、有利には、剛性である;柔軟な表面と見なすことはできない。したがって、封止は積層体上で直接実行でき、コーティングは近接可能なすべての細孔に浸透できる。
【0157】
ここで、本発明に係る電解質及び/又は電極の細孔にバインダがないために、バッテリは真空処理を行うことができることに留意されたい。
【0158】
一実施形態では、パリレンCの層、パリレンDの層、パリレンN(CAS番号:1633-22-3)の層又はパリレンC、D及び/若しくはNの混合物を含む層などの、パリレンから構成された第1の層を堆積する。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)とも呼ばれる)は、誘電性の透明な半結晶性材料であり、高い熱力学的安定性、溶剤に対する優れた耐性及び非常に低い透過性を備えている。
【0159】
パリレンのこの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素を、その周辺環境から保護できる。この保護は、この第1の封止層がパリレンNから構成されていると、強化される。
【0160】
別の実施形態では、ポリイミドベースの第1の層が堆積される。このポリイミドの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素をその周辺環境から保護する。
【0161】
別の実施形態では、第1の封止層は、好ましくは1μmの厚さの、ポリイミドの第1の封止層から構成され、その上に、好ましくは2μmの厚さの、パリレンの第2の層が堆積される。この保護は、この第2の層が、パリレンから、好ましくは厚さ約2μmのパリレンNから、構成されていると、強化される。パリレンの層と組み合わされたポリイミドの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素のその周辺環境からの保護を向上させる。
【0162】
しかしながら、本発明者らは、この第1の層がパリレンベースである場合、酸素の存在下で十分な安定性がないことを観察した。この第1の層がポリイミドベースである場合、特に水の存在下では、シール性が十分でない。これらの理由により、第1の層をコーティングする第2の層を堆積する。
【0163】
有利には、電気絶縁材料から構成される第2の被覆層は、この第1の層に原子層堆積(ALD)などのコンフォーマルな堆積技術によって堆積され得る。したがって、第1の被覆層で、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドの第1の層で、事前に被覆された、積層体の近接可能なすべての表面に、コンフォーマルな被覆が得られる;この第2の層は、好ましくは無機層である。ALDによって堆積された層の成長は、基板の性質に影響される。化学的性質の異なる様々な領域を有する基板上にALDによって堆積された層は、不均一な成長を示し、この第2の保護層の完全性が失われる可能性がある。パリレン及び/又はポリイミドのこの第1の層に堆積された第2の被覆層は、パリレン及び/又はポリイミドの第1の層を、空気から保護し、封止されたバッテリの寿命を長くする。
【0164】
ALDによる堆積技術は、非常に粗い表面を、全体的に高い気密性で且つコンフォーマルに被覆するのに特に適している。それらは、例えば穴のない層(「ピンホールフリー」と呼ばれる層)などの、欠陥のない(defect-free)、非常に優れたバリア性を示す、コンフォーマルな層を実現することを可能にする。それらのWVTR係数は非常に小さい。WVTR係数(水蒸気透過率)により、封止システムの蒸気の透過性を評価できる。WVTR係数が小さいほど、封止システムはより気密性が高くなる。例えば、ALDによって堆積された厚さ100nmのAlの層は、蒸気の透過性が0.00034g/mdである。第2の被覆層は、セラミック材料、ガラス質材料又はガラスセラミック材料、例えば、酸化物の、Alタイプの、窒化物の、リン酸塩の、酸窒化物の若しくはシロキサンの、形態のもので、構成されていてもよい。この第2の被覆層は、200nm未満、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nm、10~50nm、さらにより好ましくは約50nmの厚さを有する。
【0165】
ALDによって堆積されたこの第2の被覆層は、一方では構造の気密性を確保すること、すなわち構造内部の水の移動を防止することを可能にし、他方では第1の被覆層を、好ましくはパリレン及び/又はポリイミド、好ましくはF型のパリレンの層を、その劣化を防ぐために、周辺環境から、保護することを可能にする。
【0166】
しかし、ALDによって堆積されたこれらの層は、機械的に非常に脆弱で、保護の役割を確実にするために剛性の支持面が必要である。柔軟な表面に脆弱な層が堆積されると、亀裂が形成され、この保護層の完全性が失われる。
【0167】
一実施形態では、バッテリセルの外部環境からの保護を強化するために、第2の被覆層に又は前述したようないくつかの層の積層体によって構成された封止システム30に、すなわち、封止システムのシーケンスに、好ましくはz≧1であるzシーケンスに、第3の被覆層を堆積する。典型的には、この第3の層は、ポリマーから、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、CAS番号:107-46-0)からの含浸若しくはプラズマアシスト化学蒸着によって堆積されたもの)、又はエポキシ樹脂、又はポリイミド、又はパリレンから構成されている。
【0168】
さらに、封止システムは、多層封止システムを形成するために、好ましくは厚さ約3μmの、パリレン及び/又はポリイミドと、前述のようにALDによってコンフォーマルに堆積された無機層などの電気絶縁材料から構成された層とが、交互に連続する層を、含んでいてもよい。封止の性能を向上させるために、封止システムは、好ましくは約3μmの厚さの、パリレン及び/又はポリイミドの第1の層と、第1層にALDによってコンフォーマルに堆積され、電気絶縁材料から、好ましくは無機層から、構成された、第2の層と、第2の層に堆積され、好ましくは厚さ約3μmの、パリレン及び/又はポリイミドの第3の層と、第3の層にALDによってコンフォーマルに堆積された電気絶縁材料から構成された第4の層とを含んでいてもよい。
【0169】
次いで、封止システムのこのシーケンスにより、好ましくはzシーケンスにより、このように封止されたバッテリ又は組立物は、このように封止された積層体を機械的に保護するために、そして任意で美的側面を提供するために、最後の被覆層で被覆してもよい。この最後の被覆層は、バッテリを保護し且つその寿命を長くする。有利には、この最後の被覆層はまた、高温に耐性があるように選択され、後の使用の際にバッテリを保護するのに十分な機械的耐性を有する。有利には、この最後の被覆層の厚さは、1~50μmである。理想的には、この最後の被覆層の厚さは約10~15μmであり、このような厚さの範囲により、バッテリを機械的損傷から保護できる。
【0170】
有利には、バッテリセルの外部環境からの保護を強化し、機械的損傷から保護するために、この最後の被覆層は、前述したようないくつかの層の積層体によって構成された封止システムに、すなわち、封止システムのシーケンスに、好ましくはz≧1のzシーケンスに、好ましくは厚さ約3μmでありALDによってコンフォーマルに堆積された無機層の、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドのこの交互に連続した層に、堆積される。この最後の封止層は、好ましくは、約10~15μmの厚さを有する。この最後の被覆層は、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカを主成分とする。有利には、この最後の被覆層は、浸漬によって堆積される。典型的には、この最後の層は、ポリマーから、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からの浸漬若しくはプラズマアシスト化学蒸着によって堆積されたもの)、又はエポキシ樹脂、又はパリレン、又はポリイミドから、構成されている。例えば、バッテリを機械的損傷から保護するために、シリコーンの層(典型的には厚さ約15μm)を、インジェクションによって堆積してもよい。これらの材料は、高温に耐性があり、ガラス転移を起こすことなく電子基板に溶接することでバッテリを簡単に組み立てることができる。有利には、バッテリの封止は、積層体の6つの面のうちの4つに行う。封止層は積層体の周囲を囲み、残りの部分の周辺空気からの保護は、終端部により得られる層によって与えられる。
【0171】
封止のステップの後、このように封止された積層体は、次いで、切断面に沿って切断し、バッテリのアノード及びカソード接続部50がその切断面の各々に露出した、ユニットバッテリコンポーネントが得られる。そして、封止システム30は、前記バッテリの6つの面のうちの4つを、好ましくは連続的に、被覆し、そして、バッテリの他の2つの面は、後に終端部40によって被覆されるので、このシステムは溶接なしで組み立てることができる。
【0172】
有利な一実施形態では、このように封止され及び切断された積層体は、無水雰囲気中で、有機溶媒、又は、本出願のパラグラフ10に示されているように、イオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などのリチウムイオンを運ぶ相によって含浸され得る。含浸は、有機溶媒又はイオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などの電解液に浸漬して行ってもよい。イオン液体は、毛細管現象によって細孔に即座に入る。
【0173】
バッテリの封止、切断及び場合によって含浸の、ステップ後、終端部40が加えられ、バッテリの適切な動作に必要な電気的接触部が設けられる。
【0174】
9.終端部
有利には、バッテリは、カソード、アノードのそれぞれにおいて、集電体が現れる終端部40を備える。好ましくは、アノード接続部及びカソード接続部は、積層体において反対側にある。これらの接続部50及びその周囲に、終端システム40(a termination system)を堆積させる。接続部は、当業者に知られているプラズマ堆積技術を使用して、好ましくはALDによって並びに/又は(銀が充填された)導電性エポキシ樹脂及び/若しくはスズの溶融浴に浸漬することによって、金属化できる。好ましくは、終端部は、ALDによって堆積された、好ましくは金属の、第1の薄い導電性の被覆層と、この第1の層に堆積された銀が充填された第2のエポキシ樹脂層と、この第2の層に堆積されたスズベースの第3の層とを連続して含む、積層体から構成されている。ALDによって堆積された第1の導電層は、バッテリのその領域を湿気から保護するために使用される。ALDによって堆積されるこの第1の導電層は任意である。それは、終端部でのWVTRを小さくすることにより、バッテリのカレンダ寿命を長くできる。この第1の薄い被覆層は、特に金属又は金属窒化物ベースであってもよい。銀を充填したエポキシ樹脂から構成された第2の層は、電気回路が熱及び/又は振動のストレスにさらされたときに電気的接触を壊すことなく、接続部に「柔軟性」を与えることを可能にする。
【0175】
スズベースの第3の金属化された層は、バッテリの溶接性を確保するために使用される。他の実施形態では、この第3の層は、異なる材料の2つの層から構成され得る。第1の層が銀を充填したエポキシ樹脂の層と接触する。この層はニッケルから、電着によって形成される。このニッケルの層は熱バリアとして使用され、再溶融による、コンポーネントの残りの部分を組み立てステップ中の拡散から保護する。このニッケルの層に堆積された最後の層もまた、金属化層であり、再溶融することにより界面の組立物との相性をよくするために、好ましくはスズから構成されている。このスズの層は、溶融スズ浴に浸漬するか又は電着によって、堆積できる;これらの技術は、そのように知られている。
【0176】
マイクロ配線(micro-wiring)による銅トラック上の特定の組立物では、銅製の最後の金属化層が必要になる場合がある。このような層は、スズの代わりの電着によって実現できる。
【0177】
別の実施形態では、終端部40は、銀が充填されたエポキシ樹脂で構成された層と、第1の層に堆積されたスズ又はニッケルベースの第2の層とを連続して含む積層体から構成されていてもよい。
【0178】
別の実施形態では、終端部40は、銀が充填されたエポキシ樹脂の層と、第1の層に堆積されたニッケルベースの第2の層と、スズ又は銅ベースの第3の層とを連続して含む積層体から構成されていてもよい。
【0179】
他の好ましい実施形態では、終端部40は、カソード及びアノード接続部の端部において、グラファイトが充填された材料、好ましくはグラファイトが充填されたエポキシ樹脂、から構成された第1の層と、第1の層に堆積された銅のナノ粒子が充填されたインクから得られた金属銅を含む第2の層とを連続的に含む第1の積層体から、構成されている。そして、この終端部の第1の積層体は、金属銅の層によるカソード及びアノード接続部の被覆が得られるように、赤外線フラッシュランプによって焼結される。
【0180】
バッテリの最終的な用途によれば、終端部は、さらに、終端部の第1の積層体に配置された第2の積層体を含み得る。これは、最小のコストでバッテリの気密性を確保するための、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴に浸漬することによって、堆積された、スズ-亜鉛合金の第1の層と、第2の積層体のこの第1の層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2の層、又は銀、パラジウム及び銅ベースの合金を含む第2の層とを連続して含む。
【0181】
終端部40により、バッテリの端部の各々で、正及び負の電気接続部を交互に取ることができる。これらの終端部40は、バッテリの異なる要素間に並列の電気接続部を生成することを可能にする。このために、カソード接続部50のみが一方の端部に出て、アノード接続部50はもう一方の端部で利用可能である。
【0182】
別の好ましい実施形態では、リチウムイオンバッテリは、以下のステップを含む方法によって本発明にしたがい製造される。
(1)少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液を準備し、前記凝集体又は塊の平均直径は80~300nm(好ましくは100~200nm)である;
(2)少なくとも1つの電極を準備する、
(3)電気泳動、インクジェット、ドクターブレード、ロールコーティング、カーテンコーティング又はディップコーティングにより、ステップ(1)で得た無機材料の粒子の懸濁液から、前記電極に、少なくとも1つの多孔質無機層を堆積し;
(4)前記多孔質無機層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、多孔質無機層を得て、
(5)前記多孔質無機層に、機械的圧縮及び/又は熱処理を行い、
(6)任意で、ステップ(5)で得た前記多孔質無機層を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、
(7)少なくとも1つの多孔質無機層がカソード層及びアノード層の間に配置されるように、好ましくは横方向にずらされた、薄層のカソード及びアノードが交互に連続した積層体を実施し、
(8)積層体を、機械的圧縮及び/又は熱処理によって固化し、組み立てられた積層体を得て、
(9)任意で、前記多孔質無機層を含む、ステップ(8)で得た組み立てられた積層体を、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる。
【0183】
本発明に係る、リチウムイオンバッテリの製造方法のステップ(9)の後、以下を行う:
- 組み立てられた積層体に、連続して、交互に、一連の層によって、すなわち、以下を含むシーケンスによって、好ましくはzシーケンスによって、構成された封止システムを堆積する:
・ 組み立てられた積層体に堆積された、好ましくは、パリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はこれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
・ 電気絶縁材料で構成され、前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積された、第2の被覆層、
・ このシーケンスは、z≧1でz回繰り返すことができる、
- 最後の被覆層は、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択される材料から構成され、この連続した層に堆積させ、
- このように封止された組み立てられた積層体を、2つの切断面に沿って切断し、組み立てられた積層体のアノード及びカソードの接続部をその切断面の各々に露出させ、封止システムが前記組み立てられた積層体の6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、基本バッテリを得る、
- 任意で、封止され及び切断された基本バッテリを、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、
- これらのアノード接続部及びカソード接続部並びにその周囲に、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、好ましくはグラファイトを充填したエポキシ樹脂の、第1の層、
・ 第1の層に堆積する、銅のナノ粒子が充填されたインクから得られる金属銅を含む、第2の層、
- 得られた層を、好ましくは、金属銅の層によるカソード及びアノード接続部の被覆を得るように、赤外線フラッシュランプによって、熱処理し、
- この終端部の第1の積層体に及びその周囲に、連続して、以下を含む第2の積層体を堆積してもよい:
・ 最小のコストでバッテリの気密性を確保するために、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴に浸漬することによって堆積されるスズ-亜鉛合金の第1の層、及び、
・ 第2の積層体におけるこの第1の層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2の層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの合金を含む第2の層。
【0184】
この方法では、電気絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料の、ALD又は化学溶液堆積CSDによる、層の堆積は、機械的圧縮及び/若しくは熱処理による多孔質無機層の処理の後、組み立てられた積層体を得ることを可能にするような機械的圧縮及び/若しくは熱処理による積層体の固化の後、又は、組み立てられた積層体のアノード接続部及びカソード接続部を切断面の各々に露出させるような2つの切断面にしたがった切断の後、行い得る。電子絶縁材料の、好ましくはイオン伝導性の、層のこの堆積は、有利には、リチウムイオンを運ぶ相で多孔質無機層を含浸する任意のステップの前に、行う。この堆積物は、好ましくは5nm未満の厚さを有する。
【0185】
この方法では、リチウムイオンを運ぶ相による多孔質無機層の含浸は、械的圧縮及び/若しくは熱処理による多孔質無機層の処理の後、組み立てられた積層体を得ることを可能にするような機械的圧縮及び/若しくは熱処理による積層体の固化の後、又は、組み立てられた積層体のアノード接続部及びカソード接続部を切断面の各々に露出させるような2つの切断面にしたがった切断の後、行い得る。別の好ましい実施形態では、リチウムイオンバッテリは、本発明にしたがい、ステップ(1)が以下のステップを含むことを除いて、前述の方法と同じ方法によって、製造される:
(1a)一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つの無機材料Pのナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
(1b)前記コロイド懸濁液に存在するナノ粒子を、平均直径が80~300nmの、好ましくは100~200nmの、粒子の凝集体又は塊を形成するように、不安定化させ、該不安定化は、好ましくは、塩、好ましくはLiOHなどの不安定化剤を添加することにより行う。
【0186】
有利には、アノード及びカソード接続部は、積層体の反対側にある。
【0187】
前述の、電池の組み立て、多孔質無機層の含浸、封止システム及び終端部の堆積に関連するすべての実施形態は、その組み合わせが当業者にとって現実的である場合、互いに独立してそれぞれ組み合わせてもよい。
【実施例
【0188】
実施例1:カソード層に堆積したLiPOベースのメソポーラス電解質層の実施
a.LiPOのナノ粒子の懸濁液の実施
2つの溶液を調製した:
11.44gのCHCOOLi、2HOを112mlの水に溶解し、次いで、56mlの水を、激しく攪拌しながらその溶媒に加え、溶液Aを得た。
【0189】
4.0584gのHPOを105.6mlの水で希釈し、次いで45.6mlのエタノールをこの溶液に加え、以下で溶液Bと呼ぶ第2の溶液を得た。
【0190】
次いで、激しく攪拌しながら、溶液Bを溶液Aに加えた。
【0191】
得られた溶液は、混合中に形成された気泡の消失後に完全に透明になり、溶媒を均質化するためのUltraturraxTMタイプのホモジナイザーの作用下で、1.2リットルのアセトンに加えた。液相懸濁液中の白色沈殿が直ちに観察された。
【0192】
反応媒体を5分間均質化し、次いでマグネチックスターラで10分間攪拌した。1~2時間デカントした。次いで、上澄みを廃棄し、残りの懸濁液を6000rpmで10分間遠心分離した。次いで、300mlの水を加えて沈殿物を懸濁液に戻した(ソノトロード、マグネチックスターラを使用)。このようにして得られたコロイド懸濁液に、激しく攪拌しながら、トリポリリン酸ナトリウム100g/lの溶液125mlを加えた。そのようにして、懸濁液をより安定化させた。次いで、懸濁液をソノトロードを使用して超音波処理した。次いで、懸濁液を8000rpmで15分間遠心分離した。次いで、その主成分を150mlの水に再分散させた。次いで、得られた懸濁液を再び8000rpmで15分間遠心分離し、得られた主成分をエタノール300mlに再分散させ、電気泳動堆積を実行可能な懸濁液を得た。
【0193】
このようにして、10nmのLiPOの一次粒子から形成された約100nmの塊が、エタノールに懸濁されて、得られた。
【0194】
b.LiPOのナノ粒子の懸濁液をベースとした本発明に係る多孔質無機層の実施
i.LiCoOベースのメソポーラスカソードの実施
LiCoOの結晶性ナノ粒子の懸濁液を、水熱合成によって調製した。懸濁液100mlのために、0.5Mの硝酸コバルト六水和物の水溶液20mlを、3Mの水酸化リチウム一水和物の溶液20mlに攪拌しながら加え、次いで、50%のHの20mlを滴下して加えることにより、反応混合を行った。反応混合物を200℃のオートクレーブに1時間入れた;オートクレーブ内の圧力は約15バールに達した。
【0195】
溶媒中の懸濁液中に黒色の沈殿物を得た。この沈殿物を、約200μS/cmの導電率、-30mVのゼータ電位の、懸濁液が得られるまで、一連の遠心分離-水中での再分散ステップを行った。一次粒子のサイズは約10~20nmであり、凝集体のサイズは100~200nmであった。その生成物を、X線回折及び電子顕微鏡によって特定した。
【0196】
これらの凝集体を、水性溶媒中で、厚さ5μmのステンレス鋼箔上に、ピーク時で0.6A、平均で0.2Aのパルス電流を流すことにより、電気泳動によって堆積させた;印加電圧は400秒間で約4~6Vであった。そのようにして、約4μmの厚さの堆積物を得た。ナノ粒子を互いに溶接し(weld)、基板への付着を改善し、LiCoOの再結晶のために、空気中600℃で1時間固化させた。
【0197】
ii.LiTi12ベースのメソポーラスアノードの実施:
LiTi12のナノ粒子の懸濁液をグリコサーマル合成により調製した:190mlの1,4-ブタンジオールをビーカーに注ぎ、撹拌しながら4.25gの酢酸リチウムを加えた。酢酸塩が完全に溶解するまで、溶液の撹拌を維持した。不活性雰囲気下で16.9gのチタンブトキシドを取り、酢酸塩溶液に入れた。次いで、溶液を数分間撹拌した後、追加の60mlのブタンジオールで事前に満たされたオートクレーブに移した。次いで、オートクレーブを閉じて、少なくとも10分間窒素でパージした。次いで、オートクレーブを3℃/分の速度で300℃に加熱し、撹拌しながらこの温度で2時間維持した。最後に、攪拌しながら、放冷した。
【0198】
溶媒中の懸濁液中に白色の沈殿物を得た。この沈殿物に、イオン伝導度の低い純粋なコロイド懸濁液を得るために、一連の遠心分離-エタノールへの再分散ステップを行った。これには、10nmの一次粒子から形成された約150nmの凝集体が含まれていた。ゼータ電位は約-45mVであった。生成物を、X線回折及び電子顕微鏡により特定した。図2Aは回折図を示し、図2Bは透過型電子顕微鏡によって得た一次ナノ粒子のスナップショットを示す。
【0199】
これらの凝集体を、水性媒体中で、厚さ5μmのステンレス鋼箔上に、ピーク時で0.6A及び平均で0.2Aのパルス電流を流すことにより、電気泳動によって堆積させた;印加電圧は500秒間で約3~5Vであった。そのようにして、約4μmの厚さの堆積物を得た。ナノ粒子を互いに溶接し、基板への付着を改善し、LiTi12の再結晶のために、窒素中で40%の電力で1時間RTAアニーリングして固化した。
【0200】
iii.以前に作製したアノード層及びカソード層での、前述のパートa)で説明したLiPOのナノ粒子の懸濁液から多孔質無機層の実施
次いで、LiPOの薄い多孔質層を、以前に作製したアノード及びカソード表面に、上記で得られたLiPOのナノ粒子の懸濁液に20V/cmの電界を90秒間印加することにより、電気泳動によって堆積させて、厚さ約1.5μmの層を得た。この層を空気中120℃で乾燥させ、微量の有機残留物を除去した後、350℃で1時間空気中で焼成した。
【0201】
実施例2:電気化学セルの実施
事前に作製した電極(LiCoO及びLiTi12)の各々に、1.5μmの多孔質LiPOを堆積させた後、LiPOの膜が接触するように2つのサブシステムを積層した。次いで、この積層体を真空ホットプレスした。
【0202】
これを行うために、積層体を1.5MPaの圧力下に置き、10-3バールで30分間真空乾燥させた。次いで、プレスプラテンを4℃/秒の速度で450℃に加熱した。次いで、450℃で、積層体を45MPaの圧力下で1分間熱圧縮し、システムを周囲温度まで冷却した。
【0203】
組み立てを行って、1つ以上の組み立てられたバッテリセルから構成された剛性の多層システムを得た。
【0204】
次いで、この組立物を、0.7MのPYR14TFSI25及びLiTFSIを含む電解液に含浸させた。イオン液体は、多孔性に、毛細管現象によって即座に入る。システムを1分間浸漬し、次いで、セルの積層体の表面をNカーテンで乾燥させた。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3