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特許7593574生コンクリート圧送用先行剤及び生コンクリート圧送方法
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  • 特許-生コンクリート圧送用先行剤及び生コンクリート圧送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】生コンクリート圧送用先行剤及び生コンクリート圧送方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/16 20060101AFI20241126BHJP
   B28B 13/02 20060101ALI20241126BHJP
   E04G 21/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B28C7/16
B28B13/02
E04G21/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022040710
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023135472
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520110250
【氏名又は名称】PUMP MAN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129300
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】小澤 辰矢
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-291697(JP,A)
【文献】特開2011-057510(JP,A)
【文献】特開2019-082101(JP,A)
【文献】特開平06-207158(JP,A)
【文献】特開平08-325047(JP,A)
【文献】特開2023-000648(JP,A)
【文献】特開2023-001410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/16
B28B 13/02
C04B 2/00 - 32/02
E04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径1~1,000μmの砕砂を有効成分とし、
前記砕砂が150μm以下の微粒分を含み、
前記微粒分を含む砕砂の平均粒子径(体積平均径)が10~300μmである生コンクリート圧送用先行剤。
【請求項2】
前記微粒分を含む砕砂の粒子形状が非球形である請求項1記載の生コンクリート圧送用先行剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の生コンクリート圧送用先行剤と水とを混合し、生コンクリートに先立って圧送する工程を含む生コンクリート圧送方法。
【請求項4】
前記生コンクリート圧送用先行剤と前記水との混合比率が2~10:1である請求項3記載の生コンクリート圧送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径1~1,000μmの砕砂を有効成分とする生コンクリート圧送用先行剤、それと水を混合し、生コンクリートに先立って圧送する工程を含む生コンクリート圧送方法などに関連する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、粗骨材(砂利など)・細骨材(砂など)・水などをセメントで固めた材料であり、強度・施工の容易さなどから、建築物・ダム・橋・港湾設備など、建築・土木工事の構造材料などとして幅広く用いられている。
【0003】
コンクリート構造物の施工は、多くの場合、バッチャープラント(生コン工場)で、セメント・骨材・水などを配合し練り混ぜて生コンクリートを製造し、それをアジテータトラック(ミキサー車)で混ぜながら施工現場に輸送し、その生コンクリートをコンクリートポンプ車で型枠内に流し込み(打込み)、一定時間養生して固化させた後、型枠を撤去することで行われている。
【0004】
コンクリートポンプ車は、施工現場において生コンクリートを型枠内に流し込む際に用いる車両であり、生コンクリートを圧送するための構成として、主に、ホッパー、圧送ポンプ、配管を備える。アジテータトラックからコンクリートポンプ車などのホッパーに供給された生コンクリートは、ポンプ圧送により、長尺の配管内を流通し、型枠内に流し込まれる。
【0005】
コンクリートポンプ車などで生コンクリートを圧送する際、何の前処理も行わずに生コンクリートの圧送を開始すると、配管内全体に生コンクリートが充填される前に、配管の手前側からセメントなどのみが内壁面に先に付着していくため、配管の出口側にはコンクリート成分のうちの砂利などだけが到達するようになり、その結果、配管が砂利などで閉塞して生コンクリートが圧送できなくなる事故が生じやすい。そのため、一般的には、前処理として、生コンクリート圧送前に、予め、セメントペーストやモルタルを配管内に送っておき、配管の内壁面をセメントペーストやモルタルで被覆させておいた上で、生コンクリートを連続的に圧送することで、配管の閉塞を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、セメントペーストやモルタルでの前処理の代替となりうる手段も種々提案されている。例えば、特許文献2には、吸水性樹脂を含むコンクリートポンプ用圧送開始剤が、特許文献3には、炭酸カルシウム粉末と混合してコンクリートポンプ圧送用先行剤を製造するために用いられ微細繊維状変性セルローズなどを含む組成物が、特許文献4には、炭酸ナトリウム、メラミン、クエン酸、ポリアクリルアミド、及びメチルセルロースから構成されたコンクリートポンプ剤が、それぞれ記載されている。
【文献】特開平8-1643号公報
【文献】特開2000-34461号公報
【文献】特開2020-1586931号公報
【文献】特開2008-74086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンクリートポンプ車などでの生コンクリート圧送時における前処理において、セメントペーストやモルタルで前処理を行う場合、比較的多量のセメントペーストなどを使用する必要があり、コストが高く作業も煩雑である。一方、セメントペーストやモルタルなどの代替物として、増粘剤などを先行剤として用いる場合、セメントペーストやモルタルなどを用いる場合と比較して、作業を簡略化でき、コストも抑えることができる可能性があるものの、配管などの閉塞を充分に抑制できるとまではいえなかった。
【0008】
そこで、本発明は、コンクリートポンプ車などでの生コンクリート圧送時における配管などの閉塞を、簡易、低廉かつ有効に抑制しうる手段を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、粒子径1~1,000μmの砕砂を有効成分とする生コンクリート圧送用先行剤、それらを用いた生コンクリート圧送方法などを提供する。
【0010】
この先行剤は、例えば、天然岩石を破砕して得ることができる。破砕して得られた粒子径1~1,000μmの各砕砂は、粒子径がバラバラで、角ばっており、非球形である。そのため、水と混合することで適度の粘性を持った混合物を調製できる。そこで、コンクリートポンプ車などでの生コンクリート圧送に先立ち、先行剤として、例えば、このような砕砂を、水と混合した後、配管内に予め流通させることにより、生コンクリートの圧送を開始した後も、配管内全体に生コンクリートが充填されるまで、配管などの閉塞を、簡易、有効かつ充分に抑制できる。
【0011】
また、この先行剤における砕砂が150μm以下の微粒分を含むことも、水と混合した際の適度の粘性に寄与する。加えて、この先行剤では、砕砂製造時に、これらの微粒分をわざわざ除去する必要がないため、簡易かつ低廉に製造できる利点がある。その他、従来用途がほとんどなく廃棄・処分されていたこのような砕砂中の微粒分も除去しないで活用できるため、資源の有効活用や廃棄物の削減の観点からも有用である。
【0012】
その他、本発明は、通常使用するよりも細い配管、及び、長い配管でも、その閉塞を抑制できる点で、極めて有用性・有効性が高い。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いた前処理により、コンクリートポンプ車などでの生コンクリート圧送時における配管などの閉塞を、簡易、低廉かつ有効に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<本発明に係る生コンクリート圧送用先行剤について>
本発明は、少なくとも、粒子径1~1,000μmの砕砂を有効成分とする生コンクリート圧送用先行剤を広く包含する。
【0015】
砕砂は、天然岩石を破砕したものをすべて包含する。また、原則的には、所定の粒子径で、それぞれの粒子形状が非球状の砂状物なども広く包含し、天然岩石由来のもの、若しくは破砕して得られた砂状物のみに狭く限定されない。
【0016】
砕砂の原料となる天然岩石には、公知のものを広く採用でき、特に限定されない。例えば、砂岩、花崗岩、玄武岩、安山岩、輝緑岩、石灰岩、閃緑岩、けつ岩などを用いてもよい。
【0017】
砕砂の化学成分については、例えば、天然岩石を破砕したものと同様の組成を有していればよく、特に限定されない。例えば、合計100%を超えない範囲で、SiO2が50~85%、Al2O3が5~20%、Fe2O3が0.1~5.0%の範囲で含有された砕砂であってもよい。
【0018】
砕砂の製造方法は、公知のものを広く採用でき、特に限定されない。例えば、天然岩石を破砕機・粉砕機などを用いて粉砕物を得た後、乾式製造法により、ボイラーなどで熱して乾燥させ、ふるいにかけ、集塵機で砕砂を集めることにより、製造してもよい。乾式製造法で砕砂を製造することにより、砕砂が150μm以下の微粒分を含んだ砕砂を製造することができる。
【0019】
本発明に係る生コンクリート圧送用先行剤の有効成分となる砕砂は、様々な粒子径の砕砂の集積物となるが、それらの粒子径は、1~1,000μmの範囲にあるものが好適であり、1~800μmの範囲にあるものがより好適であり、1~500μmの範囲にあるものが最も好適である。
【0020】
砕砂が、150μm以下(1~150μm)又は75μm以下(1~75μm)の微粒分を含むものである場合、それらも水と混合した際の適度の粘性に寄与する。また、これを採用する場合、砕砂製造時に微粒分を除去する必要がなくなるため、目的の砕砂を簡易かつ低廉に製造できる。さらに、従来用途がほとんどなく廃棄・処分されていたこのような砕砂中の微粒分も除去しないで活用できるため、資源の有効活用や廃棄物の削減の観点からも有用である。
【0021】
微粒分を含む砕砂の平均粒子径(体積平均径)は、10~300μmであることが好適であり、10~200μmであることがより好適であり、10~150μmであることが最も好適である。また、砕砂の平均粒子径がこの範囲である場合、砕砂は、150μm以下(1~150μm)又は75μm以下(1~75μm)の微粒分を含む。
【0022】
微粒分を含む砕砂の粒子形状は非球形であることが好ましい。砕砂中の各粒子の形状が非球形であることにより、水と混合した際に、その混合物に適度の粘性を持たせることができ、生コンクリート圧送用先行剤として利用可能となる。
【0023】
粒子が完全な球形の場合、平均粒子径に関し、個数平均径(MN;Mean Number Diameter)の値と体積平均径(MV;Mean Volume Diameter)の値が一致する。一方、非球形の場合、個数平均径と体積平均径は異なる値となる。従って、個数平均径と体積平均径の差の大きさは、各砕砂が非球形であることの指標となる。本発明に係る砕砂では、個数平均径と体積平均径の差は、10μm以上が好適であり、20μm以上がより好適であり、30μm以上が最も好適である。なお、各砕砂の粒子形状が略球状な場合、粘性が不充分になる一方、各砕砂の粒子形状が略層状又は略平板状な場合、粘性が高くなりすぎる可能性がある。個数平均径と体積平均径の差の上限については解析が難しいが、例えば、150μm以下、より好適には100μm以下であれば、少なくとも、水と混合した際の混合物の粘性は適度に保持されると推測する。
【0024】
その他、本発明に係る先行剤には、目的・用途などに応じ、適宜、他の公知の化合物などが添加されていてもよい。
【0025】
<本発明に係る生コンクリート圧送方法について>
本発明は、上述のいずれかの生コンクリート圧送用先行剤と水とを混合し、生コンクリートに先立って圧送する工程を含む生コンクリート圧送方法をすべて包含し、例えば、それ以外の工程を含むことなどによっては狭く限定されない。
【0026】
生コンクリート圧送は、例えば、(1)コンクリートポンプ車などに先行剤を投入し、ポンプ・配管内などに先行剤を送液する工程、(2)先行剤による前処理後、生コンクリートを圧送し、配管内に生コンクリートを充填する工程、(3)先行剤の混入によって、打込むコンクリートの厳密な成分組成を変化させないように、初期に圧送された生コンクリートを回収する工程、(4)実際に型枠内に生コンクリートを流し込む工程、を含む。
【0027】
このうち、先行剤を投入・送液する工程では、上述の生コンクリート圧送用先行剤と水とを混合・撹拌した後、その混合物を、コンクリートポンプ車のポンプ・配管などに流通させることができればよく、公知の手段を広く採用でき、狭く限定されない。
【0028】
例えば、コンクリートポンプ車のホッパーに、上述の生コンクリート圧送用先行剤と水との混合物を投入し、圧送ポンプを起動することにより、ポンプ・配管内にこの混合物を流通させることができる。
【0029】
生コンクリート圧送用先行剤と水との混合物の粘性について、例えば、高さ30cm、上底の直径10cm、下底の直径20cmスランプコーンによるスランプ試験で測定したスランプ値を指標としてもよい。本発明では、生コンクリート圧送用先行剤と前記水との混合物のスランプ値が5~25cmが好適であり、8~20cmがより好適であり、10~18cmが最も好適である。
【0030】
生コンクリート圧送用先行剤と前記水との混合比率は、その混合物の粘性に基づいて判断すればよく、特に限定されない。例えば、1~10:1が好適であり、2~8:1がより好適であり、2~6:1が最も好適である。
【0031】
本発明は、通常使用するよりも細い配管、例えば、コンクリートポンプ車の配管の外径4 inch(約10.16cm)の場合でも、コンクリートポンプ車の配管などの閉塞を有効に抑制できる。また、本発明は、通常使用するよりも長い配管、例えば、全長200m程度の配管の場合でも、コンクリートポンプ車の配管などの閉塞を有効に抑制できる。
【0032】
生コンクリート圧送用先行剤と水との混合物の投入量については、コンクリートポンプ車の配管の口径・全長などによって適宜設定すればよく、前処理により配管などの閉塞を有効に抑制し得る範囲において、狭く限定されない。コンクリートポンプ車の配管の外径4 inch(約10.16cm)、全長10m~250m程度の場合、先行剤による前処理として、例えば、前記生コンクリート圧送用先行剤と水との混合物を、1~2,500L、より好適には5~500L、最も好適には8~250L送液することにより、コンクリートポンプ車の配管などの閉塞を有効に抑制できる。
【実施例1】
【0033】
実施例1では、花崗岩より砕砂を製造した。
【0034】
花崗岩を破砕し、粉砕機で再粉砕した。得られた花崗岩由来の粉砕物をボイラーで熱し(100~140℃)、乾燥させた後、ふるいにかけ、集塵機で、微粒分を含む砕砂を得た。
【0035】
得られた砕砂(試料量90g)について、JIS R 7密度試験により、密度を測定した結果、2.64g/cm3であった。
【0036】
また、JIS A 6201 8.5.2 プレーン法(比表面積)により、比表面積を測定した結果、3,650cm2/gであった。
【0037】
得られた砕砂について、レーザー回析・散乱法により粒度分布を測定した。測定装置には、「粒度分布計MT3300EX II(マイクロトラック・ベル株式会社製)」を用いた。測定条件は、測定レンジ0.1~700μm、測定時間30秒、分散媒エチルアルコール、測定回数2回とした。
【0038】
結果を図1に示す。図1は、粒子径分布の測定結果を示すグラフであり、横軸は粒子径、(単位:μm)、縦軸は頻度(%)を表す。また、DVは0.0791、透過率(TR)は0.831、粒子屈折率は1.81、溶媒屈折率は1.36であり、D10は5.821μm、D50(メジアン径)は39.69μm、D90は130.1μm、MV(体積平均径)は58.11、MA(面積平均径)は16.03μm、MN(個数平均径)は3.183μm、SDは46.94μmであった。
【0039】
図1に示す通り、得られた花崗岩由来の砕砂は、粒子径1.783~418.6μmの間に分布するものであり、150μm以下、75μm以下の微粒分を含有したものであった。平均粒子径(体積平均径)は、58.11μmであった。また、MN(個数平均径)が3.183μmであったのに対し、MV(体積平均径)は58.11μmで、両者の差が50μm以上あり、各砕砂が非球形であることが分かった。
【0040】
得られた砕砂をディスク型ミルで微粉砕し、950℃、1時間強熱による強熱減量の後、蛍光X線分析装置ZSX Primus IV(株式会社リガク社製)を用いた半定量分析で、成分分析を行った。その結果、強熱減量は1.50質量%で、SiO2が66.97質量%、Al2O3が16.49質量%、Fe2O3が3.18質量%、CaOが1.32質量%、MgOが0.12質量%、SO3が0.01質量%、Na2Oが4.53質量%、K2Oが5.06質量%、TiO2が0.17質量%、P2O5が0.02質量%、MnOが0.08質量%、Clが0.014質量%、Fが0.356質量%、V2O5が0.002質量%、Cr2O3が0.003質量%、NiOが0.003質量%、CuOが0.001質量%、ZnOが0.020質量%、Ga2O3が0.004質量%、Rb2Oが0.040質量%、SrOが0.003質量%、Y2O3が0.030質量%、ZrO2が0.028質量%、Nb2O5が0.008質量%、SnO2が0.002質量%、BaOが0.014質量%、CeO2が0.015質量%、Nd2O3が0.008質量%、Gd2O3が0.002質量%、PbOが0.006質量%、ThO2が0.009質量%であった。
【実施例2】
【0041】
実施例2では、実施例1で得られた砕砂の粘性を調べた。
【0042】
40Lバケツに、実施例1で得られた砕砂20Lと水5Lを入れて撹拌器で撹拌し、その撹拌物(混合物)をスランプコーンに詰め、その後ゆっくりとスランプコーンを引き抜き、スランプ値を測定した。その結果、スランプ値は16.5cmであり、得られた花崗岩由来の砕砂が適度な粘性を有することが分かった。
【実施例3】
【0043】
実施例3では、実施例1で得られた砕砂を用いることによって、実際に、コンクリートポンプ車の配管の閉塞を抑制できるか、検証した。
【0044】
実施例2と同様、実施例1で得られた砕砂20Lと水5Lを入れて撹拌器で撹拌し、コンクリートポンプ車(配管の外径4 inch(約10.16cm)、配管の全長200m)のホッパー内に、先行水を投入後、この撹拌物(混合物)を投入し、圧送ポンプを起動し、ポンプ・配管内にこの撹拌物を送液した。この送液は、送液状態が不安定になることなく、スムーズに行うことができた。
【0045】
次に、ホッパー内に生コンクリートを投入し、圧送ポンプを起動し、生コンクリートを連続的に圧送し、生コンクリートを配管内に流通させた。その結果、配管全体に生コンクリートが充填された。本発明に係る砕砂と水との撹拌物(混合物)を予め配管内などに送液したことにより、生コンクリートの圧送は、送液状態が不安定になることなく、スムーズに行うことができた。また、この生コンクリート圧送では、配管内などの閉塞は全く発生せず、その兆候も全く見当たらなかった。生コンクリート圧送後の配管の分解・清掃時において、配管内を確認した際においても、同様であった。
【0046】
このように、粒子形状が非球形で、粒子径1.783~418.6μmで150μm以下の微粒分を含有し、平均粒子径(体積平均径)58.11μmの砕砂の生コンクリート圧送用先行剤と水とを混合し、生コンクリートに先立って圧送することにより、通常よりも細く非常に長い配管であっても、コンクリートポンプ車の配管の閉塞を有効に抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
コンクリート、モルタルなどを作る際の細骨材として用いられる天然砂の代替として、砕砂が利用されている。砕砂の製造方法には、主に、乾式製造法と湿式製造法がある。乾式製造法では、砕砂を比較的簡易に製造できるものの、粒子径が150μm以下の微粒分が多く含有されたものが製造される。微粒分を一定以上含有する砕砂は、コンクリート用細骨材としての基準を満たさないため、それらの微粒分を除去できる湿式製造法による砕砂の製造が主流である。それに対し、本発明では、今まで用途のほとんどなかった150μm以下の微粒分を含有したものを、微粒分を除去せずにそのまま生コンクリート圧送用先行剤として利用できるので、乾式製造法により、簡易かつ低廉に製造できる利点がある。
【0048】
また、(1)従来用途がほとんどなく廃棄・処分されていた砕砂中の微粒分も活用でき、かつ(2)製造に乾式製造法を採用することで、湿式製造法で発生する汚濁水・脱水ケーキなどの発生もなくすことができるため、資源の有効活用や廃棄物の削減の観点からも有用である。
【0049】
その他、本発明に係る生コンクリート圧送用先行剤は、天然岩石を破砕したものにすぎず、原則的には増粘剤などの化学物質などを含有しないため、環境負荷の低く、かつ先行剤の使用後も、その廃棄・処分が容易であるという有利性がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例1において、粒子径分布の測定結果を示すグラフ。
図1