IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッドの特許一覧 ▶ エントリンシック ヘルス ソリューションズ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】アミノ酸組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20241126BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P11/06
A61P43/00 121
A61K31/405
A61K9/72
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060554
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019539737の分割
【原出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2023100617
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】62/403,965
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/421,443
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】517183281
【氏名又は名称】エントリンシック,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Entrinsic,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビドヤサガー,サダシバン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,レシュ
(72)【発明者】
【氏名】イン,リアンジエ
(72)【発明者】
【氏名】グロッシェ,アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】オクニエフ,ポール,ガーソン
(72)【発明者】
【氏名】ガット,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】デニソン,ダニエル
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/085735(WO,A1)
【文献】特表2016-512522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00- 9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅発型気道反応及び/又は気道過敏性に関連する肺の状態の治療を必要とする対象前記肺の状態を治療するための製剤であって、
前記製剤は、遊離アミノ酸の治療上有効な組合せを含み、
前記遊離アミノ酸の治療上有効な組合せは、トレオニン、バリン、チロシン、セリン、及びアスパラギン酸からなる治療上有効な量の遊離アミノ酸から本質的に構成され、
前記製剤は、経口投与用に調製され、
前記遊離アミノ酸の治療上有効な組合せは、前記対象の遅発型気道反応及び/又は気道過敏性に関連する前記肺の状態改善するのに十分である、製剤。
【請求項2】
遅発型気道反応及び/又は気道過敏性に関連する肺の状態の治療を必要とする対象前記肺の状態を治療するための製剤であって、
前記製剤は、遊離アミノ酸の治療上有効な組合せを含み、
前記遊離アミノ酸の治療上有効な組合せは、トレオニン、バリン、チロシン、セリン、及びトリプトファンからなる治療上有効な量の遊離アミノ酸から本質的に構成され、
前記製剤は、吸入療法に使用するために調製され、
前記遊離アミノ酸の治療上有効な組合せは、前記対象の遅発型気道反応及び/又は気道過敏性に関連する前記肺の状態改善するのに十分である、製剤。
【請求項3】
(i)トレオニンの治療上有効な量は、0.4~1.5グラム/リットル若しくは0.7~1.3グラム/リットルの濃度であるか又は、
(ii)バリンの治療上有効な量は、0.7~1.7グラム/リットル若しくは0.9~1.5グラム/リットルの濃度であるか又は、
(iii)チロシンの治療上有効な量は、0.05~0.4グラム/リットルの濃度であるか又は、
(iv)セリンの治療上有効な量は、0.6~1.6グラム/リットル若しくは0.8~1.4グラム/リットルの濃度であるか又は、
(v)アスパラギン酸が存在する場合、アスパラギン酸の治療上有効な量は、0.4~3.6グラム/リットルの濃度であるか又は、
(vi)トリプトファンが存在する場合、トリプトファンの治療上有効な量は、1.1~2.1グラム/リットル若しくは1.3~1.9グラム/リットルの濃度であるか又は、
前記(i)乃至前記(vi)の任意の組合せである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
(i)トレオニンの治療上有効な量は、0.9~1.1グラム/リットルの濃度であるか又は、
(ii)バリンの治療上有効な量は、1.1~1.3グラム/リットルの濃度であるか又は、
(iii)チロシンの治療上有効な量は、0.1~0.3グラム/リットルの濃度であるか又は、
(iv)セリンの治療上有効な量は、1.0~1.2グラム/リットルの濃度であるか又は、
(v)アスパラギン酸が存在する場合、アスパラギン酸の治療上有効な量は、0.4~3.6グラム/リットルの濃度であるか又は、
(vi)トリプトファンが存在する場合、トリプトファンの治療上有効な量は、1.5~1.7グラム/リットルの濃度であるか又は、
前記(i)乃至前記(vi)の任意の組合せである、請求項1乃至3の何れかに記載の製剤。
【請求項5】
(i)トレオニンの治療上有効な量は、約1.0グラム/リットルであるか又は、
(ii)バリンの治療上有効な量は、約1.2グラム/リットルであるか又は、
(iii)チロシンの治療上有効な量は、約0.2グラム/リットルであるか又は、
(iv)トリプトファンが存在する場合、トリプトファンの治療上有効な量は、1.6グラム/リットルであるか又は、
前記(i)乃至前記(iv)の任意の組合せである、請求項1乃至4の何れかに記載の製剤。
【請求項6】
トレオニンの治療上有効な量は8mMであり、
バリンの治療上有効な量は10mMであり、
チロシンの治療上有効な量は1.2mMであり、
トリプトファンが存在する場合、トリプトファンの治療上有効な量は8mMであり、
アスパラギン酸が存在する場合、アスパラギン酸の治療上有効な量は8mMであり、
セリンの治療上有効な量は10mMである、請求項1乃至5の何れかに記載の製剤。
【請求項7】
遊離アミノ酸の少なくとも1つはL型の遊離アミノ酸であるか、又は遊離アミノ酸の各々がL型の遊離アミノ酸である、請求項1乃至6の何れかに記載の製剤。
【請求項8】
製剤は、薬学的に許容される担体、緩衝剤、アジュバント又は賦形剤をさらに含む、請求項1乃至7の何れかに記載の製剤。
【請求項9】
製剤は、水をさらに含む、請求項1乃至8の何れかに記載の製剤。
【請求項10】
製剤は殺菌されている、請求項1乃至9の何れかに記載の製剤。
【請求項11】
製剤は医薬組成物である、請求項1乃至10の何れかに記載の製剤。
【請求項12】
製剤は、肺又は鼻腔内への投与のために調製される、請求項2乃至11の何れかに記載の製剤。
【請求項13】
対象は哺乳動物である、請求項1乃至12の何れかに記載の製剤。
【請求項14】
哺乳動物は、ヒト、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヤギである、請求項1乃至13の何れかに記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2016年10月4日に出願された米国仮出願第62/403,965号、及び2016年11月14日に出願された米国仮出願第62/421,443号について、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張し、前記出願の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
<発明の背景>
ヒト腸管上皮細胞は、腸腺窩の下部に機能的に位置する幹細胞の固定集団から生成され、前記腸腺窩は、マウスでは、細胞分裂が速い腺窩基底部柱状細胞(CBC)とパネート細胞の上に不活発な「+4」細胞とを含む14-16。これらの幹細胞は、吸収性腸細胞、粘液細胞、パネート細胞及び腸内分泌細胞を生じさせる17。各細胞型の分化は、細胞が、絨毛(吸収細胞、粘液細胞及び内分泌細胞)の中へ上向きに移動する時、又は、腺窩(パネス細胞)の下部で下向き濃化する時に起こる。これら複雑な事象の原因である複数のメカニズムについては完全には理解されていない。
【0003】
放射線療法及び/又は化学療法は、消化管(GI)の内壁(lining)に重大な損傷を生じさせることがある。中程度乃至高度の用量を投与する放射線療法及び/又は化学療法では、正常な増殖、成熟、及び分化プロセス中に絨毛の上部から脱落する細胞の連続的置換を行う際に不可欠なクローン形成能力を有する細胞を破壊する結果となる。
【0004】
胃腸系に対する放射線被曝及び/又は化学療法の毒性作用は、悪心、嘔吐、下痢、電解質不均衡、脱水などの症状を引き起こし、癌治療の過程で患者の健康に悪影響を及ぼす。放射線被曝は、粘膜下の腺窩で急速な有糸分裂をしている腸上皮細胞に悪影響を与える。治療による放射線被曝では、胃腸毒性が治療のための線量制限要因となることが多く、患者の生活の質に悪影響を与えることがある。毒性を最小限に抑えるために、治療用化合物及び支持療法を使用されることがあるが、これらの方法は完全には有効でない。
【0005】
癌患者及び放射線災害の犠牲者における短期間及び長期間の消化管毒性を軽減する製剤の開発に関心が高まっている5,15,34,37。FDAに承認された薬剤は2種類のみである。Neupogen(登録商標)とPegfilgrastim(顆粒球-コロニー刺激因子)とが、放射線症候群を治療するために、現在使用されているFDA承認薬剤である。どちらも骨髄機能を抑制する放射線量に被曝した患者の生存率を高める働きを有する。しかしながら、胃腸毒性を特異的に扱う薬剤が存在しない。消化管毒性の治療は主に対症療法であり、体液消失を防ぐための下痢止め剤、胆汁酸塩を吸収するためのスメクタイト、胃や直腸の痛みを軽減するためのオピオイド、炎症を軽減するためのステロイド、そして、極端な場合には栄養素や電解質の吸収不良を直すための非経口投与である。
消化管毒性を軽減するために使用可能な他の作用剤(agents)として次のものがある。
1)スタチン及び/又はアンギオテンシン変換酵素。これらの作用剤は、骨盤の根治的放射線治療に使用され、その抗炎症作用、抗線維化作用及び抗血栓作用により有効であることが判明した。
2)ビタミンE及び/又はセレンなどの抗酸化剤。
3)テドグルチド、グルカゴン様ペプチド-2類似体。これらは、放射線照射前に投与されなければならない。
4)スクラルファート。高度に硫酸化されたポリアニオン性の二糖類であり、上皮の治癒に有用であるが、放射線に誘発されたGI毒性に有用であることは示されていない。
5)ヒドロキシルアミン(テンポール)などのニトロキシド。その抗酸化特性により作用する。
6)ジチオールチオン(オルチプラズ)。細胞内のスルフヒドリルを増加させることによって作用する。
7)イソフラボン(ゲニステイン)。チロシンキナーゼ阻害剤及び抗酸化剤である。
8)コックス阻害剤(セレコキシブ、アスピリン)。Cox2活性及びプロスタグランジン合成を増加させることによって作用する。
8)プロバイオティクス。生存が明確な微生物を大量に含む製剤で、宿主の微生物叢(microflora)を改変し、放射線に誘発されたGI毒性に何らかの影響を与える可能性がある。[Stacey, R. & Green, J. T. Radiation-induced small bowel disease: latest developments and clinical guidance. Ther. Adv. Chronic Disease, 5, 15-29, doi:10.1177/2040622313510730 (2014).]
【0006】
腺窩の絨毛への移動は5~7日かかる。それ故、胃腸毒性は、放射線被曝及び/又は化学療法後の最初の週に現われ、癌治療における最も重要な用量制限因子である。低線量でも、照射及び/又は化学療法後数日以内に小腸の絨毛及び刷子縁の連続的な消失が観察される。腺窩細胞は、軽度から中程度の線量照射及び/又は化学療法では、照射及び療法後にその領域を急速に再増殖させることができるが、高線量の照射及び/又は化学療法の後では、対数的速度で消失した。
【0007】
放射線照射及び/又は化学療法は、栄養素及び電解質の吸収が起こる絨毛上皮に対して特に破壊的である。絨毛上皮では、細胞の消失と再生が連続的に行われて、リーベルキューン腺小窩の下極内に位置する前駆細胞に由来する未成熟腸細胞が絶え間なく供給され、供給された前記細胞は、腺窩基部の増殖区画から出て絨毯の頂部に移動する。それらは短い寿命の間に、これらの腸細胞が腺窩-絨毛軸に沿って、徐々に、絨毛細胞へ成熟する。放射線療法及び/又は化学療法は、既存の絨毛細胞だけでなく、そこから新たな絨毛細胞が形成される幹細胞及び/又は前駆細胞も破壊するため、中程度の線量でも絨毛上皮のほぼ全体を枯渇させることがある。
【0008】
成熟し分化した絨毛細胞は、ナトリウム、塩化物、及び栄養素吸収に続く体液吸収に関与するのに対し、腺窩(crypt)に位置する分化の少ない未成熟上皮細胞は、主に、塩化物(Cl)の分泌及び体液消失に関与する。吸収性絨毛上皮細胞が欠如すると、吸収不良状態となり、吸収されていない栄養素、電解質及び水が消化管の遠位部分に放出されて、吐き気、嘔吐、及び下痢を引き起こす。
【0009】
その場(in situ)での細胞の増殖及び/又は遠隔部位からの前駆細胞の循環による組織への潜在的移動を通じて、絨毛細胞が幹細胞を媒介して再増殖すると、強烈な照射及び/又は化学療法効果から組織レベルでの回復に関与する11-13。それゆえ、腺窩幹細胞又は絨毛内皮細胞の消失は、放射線及び/又は化学療法による腸の損傷の原因であると考えられている。
【0010】
消化管の損傷は、栄養素、ミネラル及び体液の吸収不良や消失を生じるだけでなく、腸のバリア機能も崩壊する。消化管からの漏出が起こると、食物の病原体その他の抗原性物質が、粘膜バリアを越えて、全身区画へ容易に進入することができるので、炎症、菌血症、及び内毒素血症を引き起こす。GI毒性は、通常は、かなり高い線量でないと生じないが、5~12Gy(通常の放射線療法の分割過程では1分割あたり1.8~2Gyを使用する)という低い線量でも、照射後数日以内に、例えば、急性放射線腸炎、下痢、腹痛を発症することがある。慢性放射線腸炎は、放射線治療後18か月乃至6年の間に発症することがあるが、15年後でも発症することがある27-29
【0011】
放射線及び/又は化学療法による腸炎の治療法の選択肢は限られている。従来の治療法では、流体損失を防ぐための下痢止め薬、胆汁酸塩の吸着剤としてのスメクタイト、胃又は直腸の痛みを軽減するためのオピオイド、及び炎症を軽減するためのステロイドの投与が含まれる。
【0012】
放射線療法及び/又は化学療法による腸炎の一般的な治療法は、完全非経口栄養法(TPN)を使用して腸管を安静にすることである。しかしながら、非経口栄養が患者の栄養ニーズを満たすのか、又は実際に放射線療法や化学療法による腸炎に治療効果があるのかは、まだ依然として明らかにされていない。TPNは特定の患者の栄養の不均衡を是正するかもしれないが、放射線及び/又は化学療法による重い腸炎が発症する可能性がある37。TPNはまた、通常、投与後48時間以内に腸萎縮を引き起こす。また、TPNは機械的及び免疫学的バリアを弱化する38
【0013】
米国特許第8,993,522号で使用された製剤は、アミノ酸結合ナトリウム輸送を通じて再水和を修正し、抗分泌特性を有する一組のアミノ酸を選択することによって腺窩からのアニオン分泌を減少させ、粘膜バリアを強化することが示されたアミノ酸を使用して粘膜を強化する作用を有する。
【0014】
増殖する幹細胞及び/又は前駆細胞の消失に続いて起こる放射線照射及び/又は化学療法誘発性GI損傷を治療するための組成物の改善が必要とされている。また、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又は消化管粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの治療及び改善をするための組成物が要請されている。
【発明の概要】
【0015】
<発明の要約>
本明細書に記載される組成物は、胃腸疾患、肺疾患、及び皮膚疾患を治療するためのアミノ酸組成物である。一態様において、本開示は、細胞生存、細胞増殖、細胞遊走、細胞成熟、及び/又は細胞分化を促進するための組成物及び方法を提供する。特定の実施形態において、本開示は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長(development)を促進するための組成物及び方法を提供する。細胞成長は、例えば、遊走、成熟、及び/又は分化を含み得る。本開示はまた、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又は消化管粘膜の損傷の治療を必要とする対象者(subject)において、それらの治療及び改善するための組成物及び方法を提供する。
【0016】
この細胞の増殖及び/又は成長は、様々な臓器系及び体内の場所に存在する幹細胞及び前駆細胞の増殖及び機能を改善するために使用されることができる。幹細胞及び/又は前駆細胞は、例えば、小腸の中にあるか、又は他の組織に由来するもので、前記他の組織は、皮膚、骨髄、肺、ニューロン、膵臓、筋肉、骨格組織、血管内皮細胞及び角膜上皮細胞を含むがこれらに限定されない。幹細胞及び/又は前駆細胞は、成人の幹細胞、胚性幹細胞又は癌幹細胞であり得る。一実施形態において、本明細書に記載された状態の治療に有用な組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含み、任意選択的に、許容される担体を含む。
【0017】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、リジン、グリシン、イソロイシン、及びアスパラギンからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸を含まない。特定の実施形態において、組成物は、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン、及びアスパラギンを含まない。別の特定の実施形態において、組成物は、セリン、リジン、グリシン、アスパラギン、イソロイシン、及びアスパラギンを含まないか、又は無視できる量だけ含む。特定の実施形態において、組成物は、グルタミン及び/又はメチオニン、並びに、グルタミン及び/又はメチオニンに加水分解され得る任意のジ-、オリゴ-、又はポリペプチド若しくは蛋白質を含まない。特定の実施形態において、組成物はメチオニンを含まない。
【0018】
或いは、特定の実施形態において、これらアミノ酸が組成物中に存在する場合でも、前記アミノ酸は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を阻害する量では存在しない。幾つかの実施形態において、組成物はセリンを含まない。幾つかの実施形態において、組成物はシステインを含まない。特定の実施形態において、これらアミノ酸が組成物中に存在する場合でも、前記アミノ酸は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療に悪影響及ぼす量では存在しない。
【0019】
これらのアミノ酸は、組成物中に存在する場合、存在が許容される濃度は、例えば、トレオニンは、約0.4~約1.5、約0.7~約1.3、又は約0.9~約1.1グラム/リットルであり、バリンは、約0.7~約1.7、約0.9~約1.5、又は約1.1~約1.3グラム/リットルであり、セリンは、約0.6~約1.6、約0.8~約1.4、約1.0~約1.2グラム/リットルであり、チロシンは、約0.05~約0.4、又は約0.1~約0.3グラム/リットル、トリプトファンは、約1.1~約2.1、約1.3~約1.9、又は約1.5~約1.7グラム/リットルである。特定の実施形態において、濃度は、溶液1リットル当たりのアミノ酸数のグラム数である。特定の実施形態において、溶液は水を含む。特定の実施形態において、治療用組成物は、トレオニン(約1.0グラム/リットル)、バリン(約1.2グラム/リットル)、セリン(約1.1グラム/リットル)、チロシン(約0.2グラム/リットル)、及びトリプトファン(約1.6グラム/リットル)を含む。一実施形態において、組成物はセリンを含まない。幾つかの実施形態において、組成物はメチオニンを含まない。幾つかの実施形態では、組成物はシステインを含まない。
【0020】
幾つかの実施形態において、組成物のオスモル濃度の合計は、約100mosm~約280mosmであるか、又は約150mosm~約280mosmである。
【0021】
組成物のpHは、例えば、約2.5~約8.5であってよい。特定の実施形態において、組成物のpHは、約2.5~約6.5、約3.0~約6.0、約3.5~約5.5、約3.9~約5.0、又は約4.2~約4.6である。他の実施形態において、組成物のpHは約6.5~約8.5、約7.0~約8.0、又は約7.2~約7.8である。
【0022】
特定の実施形態において、組成物は、溶液若しくは飲料、粉末、ピル、ゲル、クリーム、軟膏が、マトリックスの一部として、又は包帯の上に投与される。特定の実施形態において、組成物は、マトリックス送達システムの一部として投与される。
【0023】
組成物は全身又は局所に投与することができる。特定の実施形態において、組成物は、細胞の生存、増殖、及び/又は成長を促進するために、エクスビボ(ex vivo)又はインビトロ(in vitro)で使用される。特定の実施形態において、組成物は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療に使用される。
【0024】
特定の実施形態において、組成物は、添加剤(例えば、栄養素、電解質、ビタミン、ミネラルなど)も含む。
【0025】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、前記組成物及び前記方法は、DNA損傷を防止すると考えられ、DNAの損傷の防止及び/又は損傷したDNAの修復に有用である。別の実施形態において、前記組成物及び前記方法は、DNAの損傷を防止すること、及び/又は損傷を受けたDNAを修復することにより、幹細胞の生存、増殖、及び成長を促進する。
【0026】
別の態様において、本開示は、肺疾患の治療を必要とする対象者の肺疾患を治療する方法を提供する。別の態様において、本開示は、肺治癒の改善、肺炎の症状軽減、気道抵抗(airway resistance)の軽減、及び/又は肺機能の改善を必要とする対象者に対して、それらを改善又は軽減するための組成物及び方法を提供する。特定の実施形態において、肺の状態は肺損傷、肺炎、又は喘息である。特定の実施形態において、肺の状態は気道抵抗の増加と関連する。特定の実施形態において、肺の状態は、バリア機能の低下と関連する。特定の実施形態において、組成物は全身に投与されるか、又は吸入によって投与される。特定の実施形態では、組成物及び方法は、例えば放射線曝露及び/又は化学療法後において、肺治癒の改善、肺炎の緩和、気道抵抗の軽減、及び肺機能の改善に有用である。
【0027】
別の実施形態において、本開示は、例えば、薬物、ウイルス、細菌、毒素、化学物質、又はビタミン欠乏によって引き起こされる骨髄抑制を治療するための組成物及び方法を提供する。例えば、特定の実施形態において、前記組成物及び前記方法は、例えばデング熱ウイルス感染によって引き起こされる低血小板(血小板減少症)の患者を治療するために使用される。
【0028】
別の態様において、本開示は、GI疾患若しくはGI管疾患(例えば、放射線傷害、虚血性大腸炎、感染、外傷)、又は粘膜バリア機能及び/若しくは完全性に関連する他のあらゆる状態を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態は、粘膜バリアの機能不全である。特定の実施形態において、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療は、創傷治癒、GI粘膜の損傷の治療を必要とする対象者における治癒、治療である。特定の実施形態において、GI粘膜の損傷を治療を必要とする対象者における治療法を提供する。特定の実施形態において、GI粘膜は小腸粘膜である。特定の実施形態において、組成物は、手術(例えば腸手術)後の治療に使用される。特定の実施形態において、組成物は、虚血性腸に至るあらゆる疾患又は状態を治療するために使用され、前記虚血性腸として、例えば、低血圧、ショック、血栓症、腸閉塞などを含む。
【0029】
放射線腸炎の治療に有用な組成物の1つは、米国特許第8,993,522号に記載されたアミノ酸系経口再水和溶液(AA-ORS)である。この米国特許の記載は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。AA-ORSは小腸の健康を改善するための組成物であり、該組成物は経腸投与用に調製され、遊離アミノ酸としてトレオニン、バリン、トリプトファン、セリン及びチロシンと、水とを含む。なお、遊離アミノ酸グルタミン又はグルタミン含有ジペプチドを含まないが、遊離アミノ酸グルタミン及び/又はグルタミン含有ジペプチドが存在する場合は、遊離アミノ酸グルタミンとグルタミン含有ジペプチドの合計濃度は50mg/l未満である。また、組成物はグルコースを含まないが、グルコースが存在する場合は、グルコースの濃度は1g/l未満である。また、組成物は遊離アミノ酸メチオニン又はメチオニン含有ペプチドを含まず、任意選択的にリジン、グリシン、アスパラギン酸、及び/又はイソロイシンを含まず、任意選択的に電解質、ビタミン、ミネラル、及び/又は香味剤を含まない。
【0030】
別の態様において、本開示は、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療を必要とする対象者において、前記皮膚状態を治療する方法を提供するもので、該方法は、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、皮膚状態は、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚の老化に関連する皮膚の老化、又は褥瘡である。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、皮膚の様々な層及び/又は皮膚の下にある組織の若返りが所望される美容用途に有用である。
【0031】
<定義>
「皮膚の状態(skin condition)を改善する」又は「皮膚の状態を治療する」という用語は、皮膚の状態を予防学的に予防すること又は治療学的に治療することを含み、その効果として、皮膚の肥厚化、皮膚弾力減少の防止、小じわ(lines)及びしわの減少の少なくとも1つを含む。
【0032】
本明細書で使用される「表皮(epidermis)」又は「表皮の(epidermal)」という用語は、皮膚の最外層のことを指す。
【0033】
本明細書で使用される「局所適用(topical application)」という用語は、本発明の組成物を表皮組織の表面に適用又は塗布することを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「皮膚科学的に許容される」という用語は、そのように記載された組成物又はその成分が、哺乳動物表皮組織との接触使用に適しており、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを伴わないことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「治療的に有効な量」という用語は、良好な効果、好ましくは良好な皮膚外観及び/又は感覚をもたらすのに十分な化合物又は組成物の量のことを言う。本開示に基づく治療的に有効な量は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて皮膚を調節及び/又は改善するアミノ酸の量である。
【0036】
本明細書で使用される「改善(amelioration)」又はそのあらゆる文法的変形(例えば、ameliorate, ameliorating, ameliorationなど)は、疾患又は状態の発症を遅らせること、又はその程度を軽減することを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される「改善」は、症状を完全な無くすことを必要としない。
【0037】
本明細書で使用される「有効量」又は「有意な量」という用語は、疾患又は状態を治療又は改善することができるか、又は意図する治療効果を生じることができる量のことを言う。
【0038】
「健康機能食品(health functional food)」という用語は、人体に有用な機能を有する原材料又は成分を使用して、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液体、ピル、又は他の任意の形態に調製又は加工された食品のことを言う。
【0039】
「機能的(functional)」という用語は、ヒトの健康に対する有用な効果を意味し、該効果には、例えば、栄養素の構造的又は機能的調節、免疫系、炎症(inflammation)、体液バランス、生理学的作用などが含まれる。
【0040】
「担体(carrier)」という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビークルのことを言う。適当な医薬担体の例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0041】
本明細書で使用される「治療(treatment)」又はそのあらゆる文法的変形(例えば、treat, treating, treatmentなど)は、疾患又は状態の症状を軽減すること、並びに/又は、疾患若しくは状態の進行、程度及び/若しくは範囲について、それらを低減、抑制、阻止、軽減、又は影響を及ぼすことを含むがこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される「から本質的に構成される(consisting essentially of)」という用語は、成分及び工程の範囲を、特定の材料又は工程に限定するもので、本発明の基本的で新規の特徴である幹細胞の成長を促進するための組成物及び方法に実質的に悪影響を及ぼさない成分及び工程に限定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1A及び図1Bは、AA-ORSが、放射線照射後の腺窩数及び絨毛長さを増加させたことを示す。対照として生理食塩水(食塩水)を使用した。食塩水とAA-ORSは経胃管強制給餌(gastric gavage)により投与した。放射線グループ(0、1、3、5、6、7、9、13及び15Gy)あたり6匹のマウスについて、治療有りと治療無しのものがある。
図1A図1Aは、腺窩数に対するAA-ORSの効果を示す半対数生存曲線を示す。AA-ORSはグラフを左にシフトさせた。腺窩生存曲線は、1ヒット型の多標的細胞生存モデルを用いてモデル化して、生物学的効果を評価した。放射線照射後の腺窩内での有糸分裂細胞の生存確率は、式[S=1-(1-e^-D/D ]を用いて計算した。Sは各放射線量で生存した腺窩内の有糸分裂細胞の割合を表し、Dは放射線量を表す。Dは腺窩生殖器に固有の放射線耐性の尺度である。食塩水処理されたマウスのDq値及びAA-ORS処理されたマウスのDq値は、それぞれ、黒色矢印と灰色矢印で表されている。Dqは、式Dq=DIn nから計算される。一定の細胞感受性を制限することなく、N値は10.4±0.2及び5.3±0.1(P<0.001)であり、対照の一周あたり(per circumference)の前駆体単位のほぼ2倍を示した。定数D(4.8±0.1Gy)を拘束した場合、差は8.8±0.4乃至6.1±0.3(P<0.001)であって依然として有意であった。
図1B図1Bは、放射線照射マウスにおいて食塩水及びAA-ORSを用いて処理した後の絨毛の高さを示す。AA-ORS処理したマウスは、生理食塩水を投与されたマウスと比較して、絨毛の高さが有意に増加した。回腸から得られた10個の切片から、一周あたりの腺窩数をカウントし、絨毛長さを測定した。データは、1グループあたり6匹のマウスについて、平均値±S.E.M.として示す。*は統計的に有意な差(P<0.01)を示す。生理食塩水(食塩水)を対照として使用し、食塩水及びAA-ORSの両方とも経胃管強制給餌により投与した。
【0044】
図2A図2Aは、顕著に染色された上皮細胞を有する縦方向回腸切片について、絨毛の長さに沿う共焦点顕微鏡写真を示す。5μm厚のパラフィン包埋組織を使用した。細胞核をDAPI(濃い灰色)で染色し、Edu陽性上皮細胞を薄い灰色に染色した。Image Pro Plusソフトウェアを用いて、Edu陽性細胞による遊走距離を絨毛の高さに沿って測定した。バーは50μm。組織切片当たり少なくとも5つの高配向性(well-oriented)の絨毛をカウントし、その結果を平均した。5Gy照射組織では、絨毛の先端までEdu陽性細胞が観察されたが、AA-ORSで処理されたマウスでは観察されなかった。
【0045】
図2B図2Bは、EdU陽性細胞の72時間の遊走距離を示す。5Gyが照射された生理食塩水処理マウスは、0Gyと比較して細胞遊走距離(黒いバー)が有意に減少した。AA-ORSで処理したマウスは、食塩水処理されたマウスで放射線照射されていないものと放射線照射されたものと比べて遊走距離が増加した。値は1グループにつき6匹のマウスの平均値±SEMである。
【0046】
図3A図3Aは、22Na及び36Clを用いたウッシングチャンバーフラックス試験を示しており、ナトリウム及び塩化物の吸収に対するAA-ORSの効果を示す。AA-ORSは、0Gy組織及び5Gy照射組織において、ネットナトリウム(JnetNa)及びネット塩化物(JnetCl)吸収を増加させた(n=8)。
図3B図3Bは、22Na及び36Clを用いたウッシングチャンバーフラックス試験を示しており、ナトリウム及び塩化物の吸収に対するAA-ORSの効果を示す。AA-ORSは、0Gy組織及び5Gy照射組織において、ネットナトリウム(JnetNa)及びネット塩化物(JnetCl)吸収を増加させた(n=8)。
【0047】
図3C図3Cは、絨毛上皮細胞(白色矢印)の刷子縁膜(BBM)に沿うNHE3発現(薄い灰色)の拡大図を示す免疫組織化学図である。厚さ5μmのパラフィン包埋組織を使用した。細胞核をDAPI(濃い灰色)で染色した。少なくとも5つの高配向性の絨毛を使用した。
【0048】
図3D図3Dは、NHE3蛋白質についてのウエスタンブロット分析を示す。
【0049】
図3E図3Eは、0照射又は5Gy照射後、食塩水で処理したマウス(黒いバー)又はAA-ORSで処理したマウス(斜線バー)マウスの腸組織におけるNHE3蛋白質密度のグラフを示す。免疫ブロットは4回繰り返した。値はn=4の平均値±SEMである。*は食塩水処理した動物との統計的有意差(P<0.05)を示す。
【0050】
図3F図3Fは、0照射又は5Gy照射後、食塩水で処理したマウス(黒いバー)又はAA-ORSで処理したマウス(斜線バー)の腸組織におけるNHE3転写レベルを示す。値はn=6の平均値±SEMである。*は食塩水処理した動物との統計的有意差(P<0.05)を示す。食塩水又はAA-ORSは6日間投与した。
【0051】
図4A乃至図4Dは、グルコース刺激によるナトリウム吸収とSGLT1蛋白質レベルを示す。
図4A図4Aは、22Naを用いたウッシングチャンバーフラックス試験の結果であり、グルコース結合ナトリウム吸収に対するAA-ORSの効果を示す。AA-ORS処理により、5Gy照射組織(n=8)のJnetNa吸収が増加した。
図4B図4Bは、SGLT1蛋白質及びβ-ガラクトシダーゼに対するウエスタンブロット分析であり、0Gy及び5Gyマウス由来の絨毛細胞において、AA-ORS処理により蛋白質レベルが増加したことを示している。免疫ブロットは4回繰り返した。
図4C図4Cは、ウエスタン分析のSGLT1蛋白質レベルを正規化したものである。5Gyマウスで比較した場合、AA-ORSで処理した5Gy照射マウスは、SGLT1蛋白質レベルに有意な差異が観察された。
図4D図4Dは、0又は5Gy照射後、食塩水で処理したマウス(黒色バー)又はAA-ORSで処理したマウス(斜線バー)の腸組織におけるSGLT1転写レベルを示す。値はn=6の平均値±SEMである。*は食塩水処理した動物との統計的有意差(P<0.05)を示す。食塩水又はAA-ORSは6日間投与した。
【0052】
図5A乃至5Gは、0又は5Gy照射後、生理食塩水で処理したマウス及びAA-ORSで処理したマウスの絨毛上皮細胞におけるLgr5、BMI1、p-AKT、AKT、pERK、及びERKの蛋白質レベル及びmRNA発現を示す。図5Hは、Lgr5、BMI1、p-AKT、AKT、p-ERK、及びERKに対するウエスタンブロット分析を示す。免疫ブロットは少なくとも4回繰り返し、qPCRは少なくとも6回繰り返した。
図5A図5Aは、幹細胞及び増殖マーカー(Lgr5、BMI1、p-AKT、AKT、p-ERK、ERK、及びPCNA)に対するウエスタンブロット分析である。対象の蛋白質バンドは、クマシーブルー染色を用いて各レーンの蛋白質の総量に対して正規化されている。
図5B図5Bは、アポトーシス蛋白質(Bc12、Bax、切断カスパーゼ-3、カスパーゼ-3及びp53)に対するウエスタンブロット分析である。
図5C図5Cは、食塩水又はAA-ORSで処理され、0Gy又は5Gyを照射したマウスにおけるLgr5のmRNAレベルである。
図5D図5Dは、食塩水又はAA-ORSで処理され、0Gy又は5Gyを照射したマウスにおけるBMI1のmRNAレベルの変化である。
図5E図5Eは、食塩水又はAA-ORSで処理され、0Gy又は5Gyを照射したマウスにおけるERKのmRNAレベルの変化である。
図5F図5Fは、食塩水又はAA-ORSで処理され、0Gy又は5Gyを照射したマウスにおけるAKTのmRNAレベルの変化である。
図5G図5Gは、カスパーゼ-3のmRNA発現である。値は、n=6の平均値±SEMであり、異なるマウスを3回反復した。食塩水対照と比較して#P<0.05及び*P<0.001である。
図5H図5Hは、Lgr5、BMI1、p-AKT、AKT、pERK、及びERKに対するウエスタンブロット分析である。対象の蛋白質バンドは、ポンソーS染色を用いて各レーンの蛋白質の合計量に対して正規化されている。
【0053】
図6A乃至図6Gは、食塩水(上)又はAA-ORS(下)で処理した後、0Gy(左)及び5Gy(右)後の回腸粘膜内におけるLgr5、Ki67及びPCNA細胞の分布について代表的な顕微鏡写真を示す。
図6A図6Aは、Lgr5の免疫染色であり、Lgr5細胞は腺窩の下部1/3に見られた。5Gyを照射したマウスは回腸腺窩におけるLgr5幹細胞が有意に減少し、AA-ORSはLgr5幹細胞を増加させた。スケールバーは25μmを表す。
図6B図6Bは、腺窩内で発現したLgr5細胞の平均数である。エラーバーはS.E.M.を表す。
図6C図6Cは、Ki-67の免疫染色であり、増殖マーカーであるKi-67発現細胞の数は、食塩水処理されたグループと比較すると、AA-ORSで処理された0Gy照射マウスでは有意な差異はなかった。5Gy照射マウスは、AA-ORS処理されたKi67細胞が有意な増加を示した。スケールバーは100μmを表す。
図6D図6Dは、腺窩細胞及び/又は絨毛細胞におけるKi-67発現細胞の平均数である。エラーバーはS.E.M.を表す。
図6E図6Eは、PCNAの免疫染色であり、PCNA細胞の数と分布を示す。5Gy放射線照射後のマウスではPCNA細胞が減少したが、AA-ORS処理されたマウスでは増加した。スケールバーは100μmを表す。
図6F図6Fは、腺窩細胞及び/又は絨毛細胞におけるPCNA発現細胞の平均数である。エラーバーはS.E.M.を表す。
図6G図6Gは、0及び5Gy照射後、生理食塩水及びAA-ORSで処理されたマウスの絨毛上皮細胞における切断カスパーゼ3、全カスパーゼ3及びp53の蛋白質レベル及びmRNA発現を示す。免疫ブロットは少なくとも4回繰り返し、q-PCRは少なくとも6回繰り返した。切断カスパーゼ3、全カスパーゼ3、及びp53に対するウエスタンブロット分析である。対象の蛋白質バンドは、ポンソーS染色を用いて各レーンの蛋白質の合計量に対して正規化されている。
【0054】
図7図7は、小腸絨毛及び腸細胞の概略図を示す。AA-ORS処理により、急速に分裂するLgr5陽性である幹細胞、並びに増殖マーカーであるp-ERK、p-AKT及びPCNAを増加させる。この処理はまた、切断カスパーゼ3、p53及びBcl-2を増加させる。AA-ORS処理により、絨毛の高さが増加し、NHE3、SGLT1及びβ-ガラクトシダーゼの発現が増加する。NHE3、SGLT1及びβ-ガラクトシダーゼは、夫々、電解質吸収、ナトリウム結合グルコース吸収、刷子縁膜での二糖類の分解を増加させる。右上の腸細胞の図は、NHE3介在によるNa吸収とAA-ORSによるグルコース結合ナトリウム輸送における機能的改善を示す。
【0055】
図8は蛋白質密度を示す。蛋白質密度はb-アクチンに正規化されている。0又は5Gyの照射後、食塩水で処理されたマウスは黒いバーで示し、AA-ORS処理されたマウスを斜線バーとして示す。値は、異なるマウスを3回繰り返し、n=4の平均値±SEMである。食塩水対照と比較して#P<0.05である。
図8A図8Aは、Lgr5蛋白質である。
図8B図8Bは、Bmil蛋白質である。
図8C図8Cは、p-ERK蛋白質である。
図8D図8Dは、p-AKT蛋白質である。
図8E図8Eは、AKT蛋白質である。
図8F図8Fは、カスパーゼ-3蛋白質である(b-アクチンに正規化されている)。
【0056】
図9A図9Aは、バリンを用いた経胃管強制給餌により、0Gy照射マウス及び5Gy照射マウスにおいてLgr5蛋白質レベルが上昇したことを示すウエスタン分析結果を示す。
図9B図9Bは、バリンで6日間処理したマウスにおいてLgr5蛋白質の蛋白質レベルのグラフ表示を示す。図9図13について、データは、個々のアミノ酸で処理したオスのNIHスイスマウス(8週)のものであり、アミノ酸は、図9がバリン、図10がトリプトファン、図11がセリン、図12がチロシン、図13がトレオニンであり、6日間の胃サベージ(gastric savage)(300μl OD)による。動物は、6日目にCO安楽死によって犠牲にし、ウエスタンブロット分析のための組織を収集した。Lgr5(100KD)を腺窩幹細胞増殖のマーカーとして使用した。これらの実験は4匹の異なるマウスについて少なくとも4回繰り返した(データに示される)。
【0057】
図10A図10Aは、6日間のトリプトファン処理によるLgr5蛋白質レベルの変化を示す。
図10B図10Bは、トリプトファンで6日間処理されたマウスにおけるLgr5蛋白質レベルのグラフ表示を示す。
【0058】
図11A図11Aは、6日間のセリン処理によるLgr5蛋白質レベルの変化を示す。
図11B図11Bは、セリンで6日間処理されたマウスにおけるLgr5蛋白質レベルのグラフ表示を示す。
【0059】
図12A図12Aは、6日間のチロシン処理によるLgr5蛋白質レベルの変化を示す。
図12B図12Bは、チロシンで6日間処理されたマウスにおけるLgr5蛋白質レベルのグラフ表示を示す。
【0060】
図13図13は、6日間のトレオニン処理によるLgr5蛋白質レベルの変化を示す。
【0061】
図14乃至図20は、ヒツジモデルにおいて、アミノ酸製剤を用いた処理に対するアレルギー性喘息及び抗炎症性気道機能の結果を示す。この研究では、動物は、ブタ回虫抗原を用いた吸入攻撃に対して気道反応が早いものと遅いものの両方を実証することになる。薬物動態学的データのための静脈血液試料(約3ml)は、外頸静脈から得られることができる。気道力学の測定は次のとおりである。非鎮静下でのヒツジを、カートの中で、頭を固定した状態にて腹臥位に押さえて動かないようにした。2%リドカイン溶液で鼻腔を局所麻酔した後、バルーンカテーテルを1方の鼻孔を通して下部食道に進入させる。カフ付き気管内チューブを他方の鼻孔を通して動物に挿管する(気管内チューブのカフは、気道メカニズム測定の間及び過度の不快感を防止するためのエアロゾルチャレンジの間の時にのみ膨張する。この手順は気道メカニズムには影響を及ぼさない)。胸腔内圧は、胃食道接合部から5~10cmのところに位置する食道バルーンカテーテル(1mlの空気が充満)で推定される。この位置では、呼気終末胸腔内圧は-2~-5cmHOの範囲である。バルーンが配置されると、実験が行われる間中、定位置に残るように固定される。気管内の側圧は、気管内チューブの先端を通って前進し遠位に位置する側孔型カテーテル(内径2.5mm)を用いて測定される。気管内圧と胸膜内圧との差である肺圧差は、差圧トランスデューサーカテーテルシステムで測定される。肺抵抗(RL)を測定する場合は、気管内チューブの近位端がニューモタコグラフに接続される。流れ及び肺圧差の信号は、オシロスコープ記録計に記録され、前記記録計は、RLのオンライン計算用コンピュータにリンクされ、肺圧差、呼吸量(デジタル積分により得られる)及び流れから求められる。5~10呼吸の分析は、L x cm HO/L/SにおけるRLの決定に使用される。
【0062】
<抗原誘導の気道反応に対する効果>
エアロゾルカルバコールに対する基準(baseline)用量反応曲線は、抗原攻撃の1~3日前に得られる。投与日に、肺抵抗(RL)の基準値が得られ、次にヒツジにはブタ回虫抗原で攻撃する。RLの測定値は、攻撃直後に得られ、攻撃後1~6時間は毎時、投与後6-1/2~8時間は半時間毎に得られる。RLの測定値は、攻撃後24時間得られ、続いて攻撃24時間後の用量反応曲線が得られる。図14図19は、気道反応(PC400)を示しており、BSLは基準であり、PASCは抗原攻撃である。
【0063】
最初の研究では、ヒツジに、上記の噴霧システムを用いて、化合物(チロシン(1.2mM)、トレオニン(8mM)、バリン(10mM)、セリン(10mM)及びトリプトファン(8mM)からなるアミノ酸製剤であって、該アミノ酸製剤の4mLが投与される)を、抗原攻撃の30分前若しくは1時間前、又は抗原攻撃の30分後若しくは2時間後に噴霧する。RLの測定は、処理後に繰り返して行われる。その後、後続試験により、化合物を経口投与した後の効果が評価される。経口試験では、ヒツジは、チロシン(1.2mM)、アスパラギン酸(8mM)、トレオニン(8mM)、バリン(10mM)、セリン(10mM)からなるアミノ酸製剤を摂取し、8ozのアミノ酸製剤溶液が経口投与され、RLと気道反応性(PC400)の測定が上記の通り行われる。
【0064】
図14図14は、抗原攻撃1時間前に化合物が噴霧されたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0065】
図15図15は、抗原攻撃2時間後に化合物の噴霧処理がされたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0066】
図16図16は、抗原攻撃30分前に化合物の噴霧処理がされたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0067】
図17図17は、抗原攻撃30分後に化合物の噴霧処理がされたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0068】
図18図18は、抗原攻撃30分後に化合物製剤が経口投与されたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0069】
図19図19は、抗原攻撃2時間後に化合物製剤が経口投与されたヒツジの肺抵抗(RL)とPC400(呼気単位)の結果について、対照との比較を示している。
【0070】
図20図20は、気道機能抗炎症性の改善を調べるために、エアロゾル抗原攻撃の前後において、化合物を噴霧(5~8時間)又はアミノ酸製剤を経口投与した対照とヒツジについて、平均遅発型気道反応(LAR)及び気道過敏性(AHR)を含む喘息試験の結果の要約を示す。「*」は平均遅発型気道反応(5~8時間)を示す。「+」は、攻撃後/攻撃前のPC400を示す。比率が1に近いことは、気道過敏性(AHR)がないことを示す。
【0071】
図21図21は、創傷治癒試験の結果を示す。手術用に選択されたマウスの背面は毛を除去するために剃毛した。全ての外科的処理は、5%のイソフルランを含む酸素で麻酔し、麻酔の外科用平面はイソフルラン1~3%の状態を維持した。8週齢のNIHスイスマウスの背部に、3mmサイズのパンチ生検を行なった。マウス創傷モデルは、皮下筋肉層(ヒトには存在しない層)が存在するため、創傷収縮の影響を受ける可能性がある。この創傷収縮を防ぐために、シリコン製Oリングを副子(splint)として使用し、縫合糸によって適所に保持した。創傷の透明閉塞包帯には、AA-ORS又は食塩水を使用した。包帯は、キャリパーを用いて創傷面積を測定した後、毎日交換した。この手順は、再び形成された上皮を測定しており、ヒトにおける創傷治癒に類似する。結果は図に示されており、データは1グループあたりn=6のマウスから得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
<詳細な説明>
本明細書では、消化管疾患、肺疾患、及び皮膚疾患を治療するためのアミノ酸組成物について記載する。一態様において、細胞の増殖及び/又は成長を促進するための組成物及び方法について記載する。特定の実施形態において、細胞は幹細胞及び/又は前駆細胞である。この明細書で使用される「成長(development)」の用語は、例えば、細胞の遊走(migration)、成熟、及び/又は分化を含み得る。本開示はまた、創傷、皮膚の状態(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、褥瘡、皮膚の老化に関連する状態、美容状態)、肺疾患(例えば、肺損傷、肺炎、又は喘息)、GI疾患(例えば、放射線傷害、虚血性大腸炎、感染、外傷)、又は粘膜バリア機能及び/又は完全性に関連する他のあらゆる状態、治療するための組成物及び方法を提供する。
【0073】
前記組成物及び前記方法は、インビボ、エクスビボ及び/又はインビトロで、幹細胞集団及び/又は前駆細胞集団を向上させるために使用され得る。これらの細胞は、多くの病状、変性及び損傷に対する治療を提供するために有用である。
【0074】
一実施形態では、幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長の治療を必要とする対象者において、本開示の組成物を対象者に投与することにより、前記治療及び/又は成長を促進する方法を提供する。
【0075】
対象者は、幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長の促進を必要とする患者であり得る。患者がこれを必要とするのは、例えば、吸収不良、放射線若しくは化学療法誘発性の胃腸毒性、又は感染症、癌若しくは癌療法に伴う症状などによる。一実施形態では、患者は無症候性である。対象者は、例えばヒトを含む任意の動物であり得る。動物は、ヒトに加えて、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、及びネコなどの哺乳動物であり得る。動物はまた、例えば、ニワトリ、七面鳥、又は魚であり得る。
【0076】
特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びアスパラギン酸からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。組成物は、好ましくは、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、及びトリプトファンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される2種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される3種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される4種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物はトレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びアスパラギン酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びセリンの遊離アミノ酸を含む。
【0077】
一実施形態において、治療用組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、セリン、アスパラギン酸、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含むか、又は前記遊離アミノ酸から本質的に構成されるか、又は前記遊離アミノ酸から構成され、任意選択的に、例えば、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び他の活性剤を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、セリン、及びアスパラギン酸からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含み、任意選択的に、例えば、薬学的に許容される担体、アジュバント、他の活性剤、及び添加剤(例えば、糖類、電解質、ビタミン、ミネラルなど)を含む。
【0078】
一態様では、本明細書に記載の組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。
【0079】
特定の幾つかの実施形態において、組成物は、リジン、グリシン、イソロイシン、及びアスパラギンからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸を含まない。特定の実施形態において、組成物はリジンを含まない。特定の実施形態において、組成物はグリシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はイソロイシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン及びグリシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン及びイソロイシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン、グリシン、及びイソロイシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン、グリシン、及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン、グリシン、イソロイシン、及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はグリシン及びイソロイシンを含まない。特定の実施形態において、組成物はグリシン及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はグリシン、イソロイシン、及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はイソロイシン及びアスパラギンを含まない。特定の実施形態において、組成物はリジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン、及びアスパラギンを含まない。別の特定の実施形態において、組成物は、セリン、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン、及びアスパラギンを含まないか、又は含む場合は無視できる量である。特定の実施形態において、組成物はグルタミン及び/又はメチオニンを含まない。また、グルタミン及び/又はメチオニンに加水分解され得る任意のジ-ペプチド又は蛋白質、オリゴ-ペプチド又は蛋白質、又はポリペプチド又は蛋白質を含まない。
【0080】
なお、特定の実施形態において、これらのアミノ酸が組成物中に存在したとしても、それらは幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を阻害する量では存在しない。幾つかの実施形態では、組成物はセリンを含まないか、又は無視できる量のセリンを含む。ここで「無視できる(negligible)」とは、セリンが存在しても、幹細胞の生存、増殖、及び/又は成長に影響を及ぼさないことを意味する。また、「無視できる」とは、存在するセリンが、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の治療、及び/又は消化管粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの疾患及び又は状態並びに治療に効果をもたらさないことを意味する。
【0081】
これらアミノ酸が組成物中に存在する場合、その濃度は、例えば、トレオニンが、約0.4~約1.5、約0.7~約1.3、又は約0.9~約1.1グラム/リットルであり、バリンが、約0.7~約1.7、約0.9~約1.5、又は約1.1~約1.3グラム/リットルであり、セリンが、約0.6~約1.6、約0.8~約1.4、約1.0~約1.2グラム/リットルであり、チロシンが、約0.05~約0.4、又は約0.1~約0.3グラム/リットルであり、トリプトファンが、約1.1~約2.1、約1.3~約1.9、又は約1.5~約1.7グラム/リットルである。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン(約1.0グラム/リットル)、バリン(約1.2グラム/リットル)、セリン(約1.1グラム/リットル)、チロシン(約0.2グラム/リットル)、トリプトファン(約1.6グラム/リットル)、及びアスパラギン酸(約0.4~3.6グラム/リットル)を含む。特定の実施形態において、組成物はセリンを全く含まないか、又は含む場合は無視できる量である。特定の実施形態において、濃度は、溶液1リットル当たりのアミノ酸のグラム数である。特定の実施形態において、溶液は水を含む。
【0082】
一実施形態において、組成物の全オスモル濃度は、約100mosm~約280mosmであり、又は好ましくは、約150~約260mosmである。
【0083】
組成物のpHは、約2.5~約8.5の範囲であってよい。特定の実施形態において、組成物のpHは、約2.5~約6.5、約3.0~約6.0、約3.5~約5.5、約3.9~約5.0、又は約4.2~約4.6の範囲である。他の実施形態において、組成物のpHは、約6.5~約8.5、約7.0~約8.0、又は約7.2~約7.8の範囲である。
【0084】
特定の実施形態において、組成物のpHは、例えば、約2.5~約8.5である。特定の実施形態において、組成物のpHは、約2.5~約6.5、約2.5~約6.0、約3.0~約6.0、約3.5~約6.0、約3.9~約6.0、約4.2~約6.0、約3.5~約5.5、約3.9~約5.0、又は約4.2~約4.6である。他の実施形態において、pHは約6.5~約8.5、約7.0~約8.5、約7.0~約8.0、約7.2~約8.0、又は約7.2~約7.8である。
【0085】
幾つかの実施形態において、組成物は全身に又は局所に投与される。特定の実施形態において、組成物は、細胞の生存、増殖、及び/又は成長を促進するために、エクスビボ又はインビトロで使用される。特定の実施形態において、組成物は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療に使用される。治療用組成物は、経腸経路により、又は非経口的に、又は局所的に、又は吸入により投与されることができる。特定の実施形態において、組成物は治療用、化粧品用、又は栄養用である。
【0086】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組成物(例えば、アミノ酸系経口再水和溶液(AA-ORS))は、放射線照射後にGI粘膜で起こった機能的変化を是正する作用を有する。特定の実施形態において、組成物は溶液である。特定の実施形態において、溶液はアミノ酸系経口再水和溶液(AA-ORS)である。アミノ酸は、放射線照射後における傍細胞透過性の増加、Cl分泌の増加、及び電解質吸収の減少に対抗させるために選択される。本明細書に記載の組成物(例えば、AA-ORS)はGI粘膜の機能的変化を是正するので、その作用は、パイプライン中の現在の薬剤の上流にあると考えられる。当該組成物は他の治療剤と共に投与されることができる。最近になって、電解質、グルコース、及び数種のアミノ酸は、放射線照射後は、消化管に吸収されにくいことがわかった。さらに、グルコースと数種のアミノ酸は、Na吸収に加えて起電性Cl分泌を刺激して、傍細胞透過性を増加させることができることが観察され、これは放射線誘発下痢及び腸透過性の増加をさらに複雑にする51,52。傍細胞透過性の増加は、抗原物質の腸管腔から全身コンパートメントへの移動を増加させて、炎症性サイトカインの増加を引き起こすことが知られている51
【0087】
一実施形態において、本開示の組成物は、有意量のグルコース、グルタミン、メチオニン、及び/又はラクトースを含まない。特定の実施形態において、組成物は有意量のグルコースを含まない。特定の実施形態において、組成物は有意量のグルタミンを含まない。特定の実施形態において、組成物は有意量のメチオニンを含まない。特定の実施形態において、組成物はメチオニンを含まない。特定の実施形態において、組成物は有意量のラクトースを含まない。
【0088】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、成長、及び/又は増殖を促進するための細胞を培養するための組成物として使用される。前記細胞培養用組成物は、様々な疾患を治療するために、幹細胞及び/又は前駆細胞を増量させるために使用され得る。組成物はまた、移植の直前及び/又は直後に幹細胞及び/又は前駆細胞に施されることができる。組成物はまた、身体の様々な部分に存在する天然幹細胞の増殖を増加させるためにも使用されることができる。
【0089】
一実施形態において、本開示は、移植された幹細胞及び/又は前駆細胞の治療結果を改善する方法を提供するもので、幹細胞及び/又は前駆細胞の移植と組み合わせて、又は骨髄移植若しくは肝臓移植などの移植後の維持療法又は支持療法として、組成物を投与することを含む。特定の実施形態において、本明細書では、例えば骨髄又は肝臓移植後の維持療法又は支持療法を提供する。組成物の投与は、ヒト又はヒト以外の動物における標的幹細胞及び/又は前駆細胞の移植部位又はその近傍で行われることができる。代替の実施形態において、環境のさらなる改変は、影響因子を提供することにより、又は投与された幹細胞及び/又は前駆細胞に悪影響を及ぼし得る好ましくない毒性物質を環境から取り除くことによって行われることができる。
【0090】
投与された細胞は、改変されなくてもよいし、標的分化終点に向かってバイアスされるように操作されることもできる。米国特許出願公開第2006/0134789号及び第2006/0110440号は、負及び正の分化バイアスに向けて設計された幹細胞の例を提供しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとし、本明細書に記載される方法と共に使用することが企図される。
【0091】
培養された組成物又はその場で生成される組成物が幹細胞及び/又は前駆細胞に施されると、細胞の生存因子及び増殖関連因子並びに転写因子などの分泌蛋白質に変化が生じる。その結果、細胞活性が変化し、特に細胞の増殖、生存及び/又は成長が促進される。それゆえ、本発明に係る組成物を用いることで、幹細胞及び/又は前駆細胞が産生される規模は増大し、産生された細胞は、細胞の再生を促進すると共に様々な状態を効果的に治療するために細胞治療剤として、疾患又は他の部位に移植されることができる。
【0092】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を刺激することができ、その効果は、1)p-ERK及びp-AKTなどの増殖マーカーのmRNA及び/又は蛋白質のレベルが上昇すること、2)BMI1及びLgr5などの幹細胞マーカーのmRNA及び/又は蛋白質のレベルが上昇すること、3)MEK及びERKなどの蛋白質キナーゼが活性化すること、及び4)切断カスパーゼ3などのアポトーシスマーカーが減少すること、のうちの少なくとも1つによって実証される。
【0093】
ERKは、増殖をもたらすのに必要な転写及び翻訳の変化を媒介するために細胞表面シグナルを核に伝達することが知られている蛋白質である。ERK1及びERK2は、44kDa及び42kDaの蛋白質であり、広範囲の細胞活性及び生理学的過程を、プロアポトーシス分子の下方制御及び抗アポトーシスの上方制御による細胞増殖及び分化することを含む制御作用を有する蛋白質キナーゼの重要なサブファミリーである。MEK1/2の活性化はERK1及びERK2のリン酸化をもたらす。ERK1/2を刺激すると、トレオニン及びチロシン残基がリン酸化され、後者はERK1/2がMEK1/2から解離する。ERK1/2は次いで核に移行する。一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、レイトG1期がS期に進むまで、細胞分裂促進刺激を維持する働きがある。
【0094】
AKTは、細胞を増殖及び生存させる役割を有し、アポトーシス及び代謝を阻害するセリン/トレオニン特異的蛋白質キナーゼである。AKTのリン酸化はAKTを活性化する。pERKと同様に、AKTも細胞周期において役割を果たすことが知られている。AKTは成長因子を介した細胞の生存も促進する。アポトーシス細胞死を防止するAkt経路の重要な役割については、さまざまな研究によって実証されている。DNA複製に関連する特有の蛋白質であって、増殖のマーカーとして使用されるPCNAは、AA-ORS又は食塩水の処理で測定される。0Gy及び5Gyが照射されたマウスのPCNAは、AA-ORS処理されたマウスでは増加したが、食塩水で処理されたマウスでは増加しなかった。PCNAの増加は、小腸上皮増殖の早期徴候である。これらの研究を総合すると、AA-ORSを用いた処理により、増殖の促進が示唆される。
【0095】
カスパーゼ-3は、アポトーシスのエクセキューショナー又はエフェクターであり、細胞内の蛋白質基質を切断し、DNA分解及びクロマチン凝縮並びにアポトーシスプロセスをトリガするための膜ブレビングを含むアポトーシス関連の形態学的変化をもたらす。この不活性なプロ酵素は、蛋白質の分解的切断によって活性化される7,46。研究は、0Gy及び5Gyマウスの絨毛上皮細胞において、放射線がカスパーゼ-3を増加させ、AA-ORS処理が切断カスパーゼ-3を減少させることを示した。Erk1/2の下流標的であるBc1-2は、内因性プロアポトーシス経路においてBaxを阻害することが知られている。AA-ORSによるBcl-2蛋白質レベルの上昇は、アポトーシスを予防するための防御メカニズムを示唆する。しかしながら、放射線照射されたマウスの組織におけるBcl-2の蛋白質レベルの上昇は、放射線防護メカニズムを示唆する可能性がある。照射後のBcl-2蛋白質レベルの同様の上昇が報告されており、以前の知見と一致している[Ezekwudo, D.et al. Inhibition of expression of anti-apoptotic protein Bcl-2 and induction of cell death in radioresistant human prostate adenocarcinoma cell line (PC-3) by methyl jasmonate. Cancer Lett 270, 277-285, doi:10.1016/j.canlet.2008.05.022 (2008)]。しかしながら、Bax蛋白質は放射線又は治療によって有意な変化を示さなかった。これは、Bax26の上流段階において、アポトーシスに対するAA-ORSの効果を示唆している。AA-ORSで処理されたマウスにおけるp-Aktの増加は、その作用が、増殖の活性化又はアポトーシスの阻害によるものであり得ることを示唆している(図5)。これらの結果は、カスパーゼ-3及びBcl-2に見られる効果と共に、AA-ORS処理で観察された生存促進効果及び増殖の増加を説明することができるであろう。しかしながら、AA-ORSが、Erk1/2及びAkt、PCNAカスパーゼ-3、Bc1-2又はBaxを活性化するメカニズムを特徴づけるには、さらなる研究が必要であろう。
【0096】
<p53>
Aktは悪性形質転換においても重要な役割を果たし得るため、既知の腫瘍抑制蛋白質であるp53の役割をAA-ORSと共に研究した。p53蛋白質の変化は、AA-ORSに腫瘍抑制効果があることを示唆する可能性がある。p53腫瘍-抑制53遺伝子における突然変異は、ヒトの癌において最も頻繁に観察される遺伝的病変である。ヌル対立遺伝子についてホモ接合性のマウスは正常に見えるが、様々な腫瘍が自然発症する傾向がある11。p53も放射線反応において重要な役割を果たすことが示されており、放射線照射に反応したp53蓄積のレベルは主にDNA損傷の強度に起因している12。幹細胞の消失が放射線誘発急性腸傷害及び致死性において重要な役割を果たし、p53経路並びにその転写標的PUMA及びp21によって調節されることを示す研究がある23,34,37。PUMA依存性アポトーシスは、高線量照射後数時間で腸管幹細胞(ISC)及びその前駆細胞を急速に減少させる。PUMAの欠乏は、p21依存性DNA修復を高めることによって動物の生存率及び腺窩再生を改善するので、放射線誘発腸傷害に対して非常に重要である24,38。Lgr5、p-Erk及びp-Aktと共に、切断カスパーゼ-3の変化は、放射線の照射を受けていないマウスと受けたマウスの腸管組織の絨毛高さがAA-ORSによって増加したことが、増殖を通じてだけでなく、アポトーシスの減少及び細胞生存の増加によるものもあったことを示唆している。増殖の増加及びアポトーシスの減少により、絨毛上皮細胞が、成熟し、分化し、そして機能的に活性であるかどうかを評価するために、Na吸収容量とグルコースで刺激されたNa吸収量とを測定した。小腸においてNa吸収の主たる輸送体であるNHE3と、ナトリウム結合グルコースを吸収するための輸送体であるSGLT1は、両方とも、成熟絨毛細胞及び分化絨毛細胞においてのみ検出された。それらは、mRNA及び蛋白質レベルの上昇と同様に機能増加を有していた(図3及び4)。これらの研究は、放射線照射後のAA-ORS処理が、電解質とグルコースの吸収を増加させることを示唆している(図3、4、及び7)。
【0097】
一実施形態において、本明細書に記載された組成物は、DNAへの損傷を防ぐために、及び/又は損傷したDNAを修復するために有用である。別の実施形態において、組成物は、DNAへの損傷を防止又は低減することにより、及び/又は損傷を受けたDNAを修復することによって幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長を促進する。
【0098】
<放射線照射、腺窩カウント数、絨毛長さ、及び免疫組織化学>
体重増加と生存数の増加は、腺窩数と絨毛の高さの増加の後の二次的作用として、吸収表面積が増加することがわかった。腺窩数と絨毛の高さは、放射線照射後6日目に開始するAA-ORS処理によって増加することが実証された。1ヒット型の多標的細胞生存モデルを用いて腺窩生存を調べたところ、回腸一周あたりの腺窩前駆体単位の数(N)は、D0(4.8±0.1Gy)が変化することなく有意に増加する(P<0.001)ことが分かった(図1A)。Dq値は、AA-ORS治療による1.7Gyの放射線耐性の増加と同等の改善があり、腺窩生存率の向上を示した。腺窩の生存研究は、腺窩あたりの前駆体単位又は幹細胞の増加を示唆した。このように、幹細胞数に対する放射線照射とAA-ORSの効果の調査が、腸管幹細胞マーカーに特異的な抗体と、増殖後における娘細胞の絨毛への移動とを利用して、EdUを取り込むことにより行われた2,4,36。少なくとも3つの区別可能な腺窩細胞型は腸幹細胞(ISC)を表すと仮定されている。集団の各メンバーは、増殖動態及び放射線に対する感受性が明確に区別されるので、それぞれが独特の機能を有すると考えられている31。それらは、サイトカイン、ホルモン又は成長因子によって引き起こされる抑制シグナル及び刺激シグナルに反応して、ある型から別の型へ動的に切り替わると考えられている25。これに対し、「+4腺窩位置」にある細胞分裂が遅い腸管上皮幹細胞(IESC)[ラベル保持細胞(LRC)]は、特に損傷からの回復時に、恒常的な再生能力に寄与する33。これらのLRCは、Bmil、HopX、Lrigl、及び/又はDclk1などの様々なマーカーを発現し、損傷に反応して、迅速に細胞分裂する(rapidly cycling)IESCsに変化することができる34。Bmi1とHopXは+4細胞を優先的にマークすることが報告されているが、Lgr5は両方の細胞をマークすることができる。放射線損傷後の腸再生には、15Lgr5+ISCが必要である35。Lgr5及びBmilは、損傷又は放射線誘発損傷後の再生反応を開始する予備細胞であると考えられている。研究では、Bmilを発現する幹細胞プールの活性化によりLgr5細胞の消失が許容されることを示している2,30
【0099】
絨毛の高さを増加させるアミノ酸製剤AA-ORSは、放射線又は化学療法に起因する毒性の範囲外にある病気状態、例えば、クローン病、セリアック病、栄養失調及び環境性腸疾患などの絨毛の高さの減少に特徴づけられる病気状態と重要な関係を有する。この研究は、消化管機能に対する有益な効果に基づく特定栄養素の系統的な選択が、腸管幹細胞のその場での増殖、成熟及び分化の改善にどのように役立つかを示すもので、腸管幹細胞の機能及び高さが放射線によって最初に危険に曝される長い絨毛上皮細胞を機能的に活性にすることを示す(図7)。この研究は、骨髄由来幹細胞が、高線量照射後の腸粘膜の再増殖において有意な役割を果たしていないというLeibowitzらの観察によっても裏付けられている[Leibowitz, B. J. et al. Ionizing irradiation induces acute haematopoietic syndrome and gastrointestinal syndrome independently in mice. Nat Commun 5, 3494, doi:10.1038/ncomms4494 (2014)]。将来の研究としては、これらアミノ酸が幹細胞集団を増加させ、それらの増殖を増加させ、アポトーシスを減少させるメカニズムを決定し、悪性形質転換を排除することを求めるべきである。この研究は、造血幹細胞を含む様々な幹細胞集団に影響を与えるために、異なる栄養素や個々のアミノ酸を慎重に選択することの重要性を強調している。
【0100】
<幹細胞及び/又は前駆細胞>
本明細書に記載された組成物及び方法は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を増加させるために使用されることができる。細胞は、例えば、胚性、多能性又は全能性であってよく、インビボ又はインビトロであってよい。
【0101】
幹細胞は、通常、外胚葉細胞、中胚葉細胞、及び内胚葉細胞に分化することができる。多能性幹細胞は、様々な細胞型に分化する能力を有する未分化細胞である。全能性幹細胞は、全ての細胞型に分化する能力を有する未分化細胞であり、定義上、生殖系細胞列伝達を意味する。
【0102】
一実施形態において、幹細胞は、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、間質細胞、腱細胞、上皮細胞、神経細胞、及び血管内皮細胞に分化する能力を有する間葉系幹細胞である。
【0103】
一実施形態において、細胞は胚性幹(ES)細胞であり、これは未分化状態で無限に増殖することができる。さらに、ES細胞は全能性細胞であり、体内(骨、筋肉、脳細胞など)に存在する全ての細胞を生成することができることを意味する。ES細胞は、成長中のマウス胚盤胞の内部細胞塊(ICM)から単離される[Evans et al., Nature 292:154-156, 1981; Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 78:7634-7636, 1981; Robertson et al., Nature 323:445-448, 1986]。また、ES特性を有するヒト細胞は、内胚盤胞細胞塊から単離される[Thomson et al., Science 282:1145-1147, 1998) and developing germ cells (Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726-13731, 1998]。ヒト及び非ヒト霊長類の胚性幹細胞が生産されている(米国特許第6,200,806号を参照することができ、この特許は引用を以てこの明細書に組み込まれる)。
【0104】
一実施形態において、細胞は成体幹細胞であり、自己再生して分化細胞を生成する。成体幹細胞は体性幹細胞とも称され、体内に見られる組織を維持及び修復する幹細胞である。これらの細胞は、例えば骨髄幹細胞である。
【0105】
体性前駆細胞もまた、本明細書中に開示される方法と共に利用され得る。体性前駆細胞は、当業者に公知の方法を用いて様々な供給源から単離されることができる。体性前駆細胞は、外胚葉性、中胚葉性、又は内胚葉性起源であり得る。インビトロで得られ維持され得るあらゆる体性前駆細胞は、本方法に従って使用されることができる。そのような細胞には、皮膚及び腸壁などの上皮組織の細胞、胚性心筋細胞及び神経前駆細胞が含まれる[Stemple and Anderson, 1992, Cell 71:973-985]。そのような細胞には、膵臓幹細胞、臍帯血幹細胞、末梢血幹細胞、及び脂肪組織由来の幹細胞も含まれる。
【0106】
一実施形態において、幹細胞は、体細胞をプログラミングすることによって得られる多能性幹細胞をさらに含む。体細胞リプログラミングは、分化した体細胞のエピジェネティック状態をあらゆる細胞型を生じさせることができる多能性状態に変換するプロセスである。体細胞再プログラミングは、例えば体細胞核をドナー卵母細胞に移植することによって達成されることができ、これは体細胞核移植(SCNT)と呼ばれる。また、体細胞リプログラミングは、例えば誘導多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれる直接リプログラミングにより、例えば4つの転写因子Oct4、Sox2、Klf4、及びC-mycの同時レトロウイルス発現によっても達成されることができる。これらのiPSCはES細胞の重要な特徴を全て共有している。
【0107】
別の実施形態において、他の胚形成後幹細胞は、妊娠後12週目から、胎児肝臓、周産期臍帯血(UCB)、ヒト骨髄又はG-CSF刺激末梢血から得ることができる。
【0108】
特定の実施形態において、幹細胞は、神経幹細胞(NSC)、皮膚幹細胞、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、組織幹細胞(例えば、筋肉幹細胞)、中胚葉幹細胞、臓器幹細胞(例えば、膵臓幹細胞及び肝臓幹細胞)、又は腸幹細胞である。特定の実施形態において、幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、癌幹細胞、神経幹細胞(NSC)、皮膚幹細胞、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、組織幹細胞(例えば、筋肉幹細胞)、中胚葉性幹細胞、器官幹細胞(例えば、膵臓幹細胞及び肝臓幹細胞)、又は腸幹細胞である。
【0109】
一実施形態において、細胞は神経幹細胞である。非限定的な実施例において、細胞は神経前駆細胞及び/又はグリア前駆細胞である。未分化神経幹細胞は、神経芽細胞及びグリア芽細胞に分化して、ニューロン及びグリア細胞を生じる。
【0110】
神経幹細胞及び前駆細胞は、正常な成長の態様に関与することができ、前記態様には、確立された移動経路に沿った播種性CNS領域への移動が含まれ、また、宿主前駆体及びそれらの子孫との微小環境合図や、非破壊的、非発がん性散在に反応して、複数の成長的及び領域的に適当な細胞型への分化が含まれる。
【0111】
ヒトNSCは、これらの播種部位において外来導入遺伝子をインビボで発現する能力を有する。それゆえ、これらの細胞は、脊髄、脳、及び末梢神経系への外傷性損傷を含む様々な状態の治療、また、アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病などの変性疾患の治療、うつ病を含む情動障害の治療、脳卒中などの用途が見出される。
【0112】
一実施形態において、幹細胞は筋肉幹細胞である。成体脊椎動物の筋肉組織は、衛星細胞と呼ばれる予備筋芽細胞から再生する。衛星細胞は筋肉組織全体に分布し、傷害又は疾患がない場合は有糸分裂的に休止している。損傷又は疾患による損傷から回復した後、又は成長又は肥大に対する刺激に反応した後の衛星細胞は、細胞周期に再び入り、増殖し、そして、新しい筋線維を形成する多核筋管に分化する。筋芽細胞は、最終的に置換筋線維を産生するか、又は既存の筋線維に融合し、それによって収縮装置構成要素の合成による線維周長を増大させる。筋原性の基準は、筋原性蛋白質を含み、前記蛋白質は、中間径フィラメント蛋白質デスミンを含み、筋原性転写因子MyoD、Myf-5、及びPax-7を含む。
【0113】
一実施形態において、幹細胞は、毛包幹細胞である。毛包バルジ領域は、活発に成長する多能性成体幹細胞の豊富で容易にアクセス可能な供給源である。神経幹細胞の蛋白質マーカーであるネスチンはまた、卵胞幹細胞の中、及び分化直後の後代の中でも発現する。ネスチン発現毛包幹細胞は、インビトロで、例えば、ニューロン、グリア細胞、ケラチノサイト、及び平滑筋細胞に分化する。
【0114】
一実施形態において、幹細胞は、膵臓幹細胞及び膵臓多能性前駆細胞(PMP)細胞である。これらの細胞は、膵島及び膵管由来の組織から単離されて、例えば、他のPMP細胞、神経細胞又は膵臓細胞にさらに発達し得る。膵臓細胞は、任意選択的に、アルファ細胞、デルタ細胞、ベータ細胞、膵外分泌細胞、及び膵星細胞を含む。α細胞は成熟グルカゴン産生細胞である。インビボでは、これらの細胞はランゲルハンス島の膵島に見られる。β細胞は成熟インスリン産生細胞である。インビボでは、これらの細胞はランゲルハンス島の膵島にも見られる。膵臓幹細胞は、β細胞を提供するために、糖尿病、特にI型糖尿病の治療において重要である。
【0115】
一実施形態において、幹細胞は骨髄幹細胞である。骨髄幹細胞は骨髄で生成される細胞であり、様々な体組織の細胞に分化することができる。骨髄幹細胞はまた、分化誘導剤の影響下で組織の細胞に分化することによって組織の失われた機能を回復することができる。骨髄幹細胞として、例えば、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞又は骨髄間質細胞に分化し得る骨髄間葉系幹細胞、及び、例えば赤血球及び白血球などの血球に分化し得る造血幹細胞が挙げられる。
【0116】
一実施形態において、幹細胞は胃腸管のものである。上皮細胞は胃腸管の内壁にある。これらの細胞の代謝回転は、正常な恒常性の下での一定の過程であり、損傷後に増加する。多能性幹細胞によるこのプロセスの調節は、全ての胃腸上皮細胞系統を生成することにより、さらには腸の腺窩及び胃腺の全体を生成することによって行われる。これらの幹細胞は、腸腺窩の下部に位置し、高速循環する腺窩基底部柱状細胞(CBC)及び哺乳動物のパネート細胞の上のより不活発な「+4」細胞を含む。
【0117】
腸管幹細胞(ISC)を表すために、少なくとも3つの異なる腺窩細胞型が設定される。集団の各メンバーは、増殖動態及び放射線に対する感受性が明確に区別されるので、それぞれが独特の機能を有すると考えられる。それらは、サイトカイン、ホルモン又は成長因子によって引き起こされる抑制シグナル及び刺激シグナルに反応して、ある型から別の型へ動的に切り替わると考えられる。これに対し、「+4腺窩位置」にある細胞分裂が遅い腸管上皮幹細胞(IESC)[ラベル保持細胞(LRC)]は、特に損傷からの回復時に、恒常的な再生能力に寄与する。これらのLRCは、Bmil、HopX、Lrigl、及び/又はDclk1などの様々なマーカーを発現し、損傷に反応して、迅速に細胞分裂するIESCに変化することができる。Bmi1とHopXは+4細胞を優先的にマークすると報告されている。放射線及び/又は化学療法によって引き起こされる胃腸損傷後の腸再生には、Lgr5ISCが必要である。LgrS及びBmilは、損傷又は放射線誘発損傷後の再生反応を開始する予備細胞であると考えられる。同様に、製剤は、腸透過性の増加、局所及び全身の炎症の増加、並びに絨毛の高さの減少に関連する環境性腸疾患などの無症候性疾患状態に使用されることができる。環境性腸疾患の対象者は、栄養素やミネラルの吸収不良の二次的作用である慢性的栄養失調を経験する。
【0118】
<幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長を促進するための組成物であって、創傷治癒用組成物、皮膚状態、肺疾患、粘膜バリア状態及び粘膜バリア機能に関連する疾患の治療用組成物、並びに消化管粘膜損傷の治療用組成物>
一態様において、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を促進するための治療用組成物を提供する。本明細書において、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又は消化管粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの治療及び改善をするための組成物について記載する。
【0119】
一実施形態において、治療用組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含むか、又は前記遊離アミノ酸から本質的に構成されるか、又は前記遊離アミノ酸から構成され、任意選択的に、例えば、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/又は追加の活性剤を含む。一実施形態において、治療用組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含むか、又は前記遊離アミノ酸から本質的に構成されるか、又は前記遊離アミノ酸から構成され、任意選択的に、例えば、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/又は追加の活性剤を含む。特定の実施形態において、組成物は殺菌されている。
【0120】
一実施形態において、組成物の全オスモル濃度は、約100mosm~約280mosmであるか、又はその間の任意の値である。好ましくは、全オスモル濃度は、約150mosm~約280mosmである。他の実施形態において、組成物の全オスモル濃度は、約280mosmよりも低い任意の値である。
【0121】
組成物のpHは、例えば、約2.5~約8.5であってよい。特定の実施形態において、組成物のpHは、約2.5~約6.5、約3.0~約6.0、約3.5~約5.5、約3.9~約5.0、又は約4.2~約4.6である。他の実施形態において、組成物のpHは約6.5~約8.5、約7.0~約8.0、又は約7.2~約7.8である。
【0122】
特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びアスパラギン酸からなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。組成物は、好ましくは、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、及びトリプトファンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される2種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される3種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、及びセリンからなる群から選択される4種以上の遊離アミノ酸を含む。特定の実施形態において、組成物はトレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びアスパラギン酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びセリンからなる遊離アミノ酸を含む。
【0123】
これらのアミノ酸は、組成物中に存在する場合、存在が許容される濃度は、例えば、トレオニンは、約0.4~約1.5、約0.7~約1.3、又は約0.9~約1.1グラム/リットルであり、バリンは、約0.7~約1.7、約0.9~約1.5、又は約1.1~約1.3グラム/リットルであり、セリンは、約0.6~約1.6、約0.8~約1.4、約1.0~約1.2グラム/リットルであり、チロシンは、約0.05~約0.4、又は約0.1~約0.3グラム/リットル、トリプトファンは、約1.1~約2.1、約1.3~約1.9、又は約1.5~約1.7グラム/リットルである。特定の実施形態において、治療用組成物は、トレオニン(約1.0グラム/リットル)、バリン(約1.2グラム/リットル)、セリン(約1.1グラム/リットル)、チロシン(約0.2グラム/リットル)、及びトリプトファン(約1.6グラム/リットル)を含む。一実施形態において、組成物はセリンを含まない。
【0124】
さらなる実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、及びトリプトファン、及び/又は、それらの誘導体から選択される1種の遊離アミノ酸を含むか、又は前記1種のアミノ酸から本質的に構成される。さらなる実施形態において、治療用組成物は、遊離アミノ酸としてトレオニンを含むか、又は本質的にトレオニンから構成される。治療用組成物はまた、遊離アミノ酸としてバリンを含むか、又は本質的にバリンから構成されることができる。また、治療用組成物は遊離アミノ酸としてチロシンを含むか、又は本質的にチロシンから構成される。治療用組成物は、遊離アミノ酸としてトリプトファンを含むか、又は本質的にトリプトファンから構成される。さらに、治療用組成物は遊離アミノ酸としてアスパラギン酸を含むか、又は本質的にアスパラギン酸から構成される。特定の実施形態において、組成物は遊離アミノ酸としてセリンを含む。
【0125】
別の実施形態において、組成物はまた、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸からなる群から選択される2種の遊離アミノ酸を含むか、又は前記2種の遊離アミノ酸から本質的に構成され、前記2種の遊離アミノ酸は、トレオニンとバリンとの組合せ;トレオニンとセリンとの組合せ;トレオニンとチロシンとの組合せ;トレオニンとトリプトファンとの組合せ;バリンとセリンとの組合せ;バリンとチロシンとの組合せ;バリンとトリプトファンとの組合せ;セリンとチロシンとの組合せ;セリンとトリプトファンとの組合せ;チロシンとアスパラギン酸との組合せ;セリンとアスパラギン酸との組合せ;バリンとアスパラギン酸との組合せ;トレオニンとアスパラギン酸との組合せ;トリプトファンとアスパラギン酸との組合せ;及びチロシンとトリプトファンとの組合せを含む。
【0126】
別の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸からなる群から選択される3種の遊離アミノ酸を含むか、又は前記3種の遊離アミノ酸から本質的に構成され、前記3種の遊離アミノ酸は、トレオニン、バリン及びセリンの組合せ;トレオニン、バリン及びチロシンの組合せ;トレオニン、バリン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、セリン及びチロシンの組合せ;トレオニン、セリン及びチロシンの組合せ;トレオニン、セリン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;バリン、セリン及びチロシンの組合せ;バリン、セリン及びトリプトファンの組合せ;バリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;セリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、バリン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、セリン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、セリン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;セリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;セリン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;を含む。
【0127】
別の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸からなる群から選択される4種の遊離アミノ酸を含むか、又は前記4種の遊離アミノ酸から本質的に構成され、前記4種の遊離アミノ酸は、トレオニン、バリン、セリン及びチロシンの組合せ;トレオニン、バリン、セリン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、バリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、セリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;バリン、セリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、バリン、セリン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、バリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、バリン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、セリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、セリン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、セリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、セリン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;バリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;を含む。
【0128】
別の実施形態において、組成物は、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸からなる群から選択される5種の遊離アミノ酸を含むか、又は前記5種の遊離アミノ酸から本質的に構成され、前記5種の遊離アミノ酸は、トレオニン、バリン、セリン、チロシン及びトリプトファンの組合せ;トレオニン、バリン、セリン、チロシン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、バリン、セリン、トリプトファン、及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;トレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸の組合せ;を含む。
【0129】
別の実施形態において、組成物は、遊離アミノ酸として、トレオニン、バリン、セリン、チロシン、トリプトファン及びアスパラギン酸を含むか、又はそれらから本質的に構成される。
【0130】
特定の実施形態において、組成物は、天然アミノ酸を含むことができ、また、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を向上させる点において、前記天然アミノ酸と実質的に同じ、又はより良好な活性を保持することがきる誘導体を含むことができる。特定の実施形態において、組成物は、天然アミノ酸を含むことができ、また、特定の実施形態において、組成物は、創傷治癒、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療を必要とする対象者の治療及び改善することができる点において、前記天然アミノ酸と実質的に同じ、又はより良好な活性を保持することがきる誘導体を含むことができる。前記誘導体は、例えば、エナンチオマーであり、アミノ酸のD型及びL型の両方を含む。誘導体は、例えば、ヨードチロシン、又はノルバリンであり得る。他のアミノ酸誘導体として、例えば、ノルロイシン、オルニチン、ペニシラミン、ピログルタミン誘導体を挙げることができ、又は他の誘導体として、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、プロリン、フェナラリン、セリン、トレオニン、トリプトファン又はバリンを挙げることができる。特定の実施形態において、アミノ酸誘導体は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はセリンの誘導体である。他のアミノ酸誘導体として、例えば、アミノ酸のアシル化、メチル化、及び/又はハロゲン化によって合成されたものが挙げられるが、これらに限定されない。これらには、例えば、β-メチルアミノ酸、C-メチルアミノ酸、及びN-メチルアミノ酸が含まれる。
【0131】
幾つかの特定の実施形態において、本開示の組成物は、セリン、リジン、グリシン、イソロイシン、及びアスパラギンからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸を含まない。又は、特定の実施形態において、これらのアミノ酸が組成物中に存在するとしても、それらは幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を阻害する量では存在しない。
【0132】
特定の具体的実施形態において、本開示の組成物は、セリン、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン、及びアスパラギンからなる群から選択されるアミノ酸の1種を含まないか、又は含む場合は無視できる量である。さらなる実施形態において、治療用組成物は遊離アミノ酸としてリジンを含まないか、又は治療用組成物は遊離アミノ酸としてグリシンを含まないか、又は治療用組成物は遊離アミノ酸としてアスパラギン酸を含まないか、又は治療用組成物は遊離アミノ酸としてイソロイシンを含まないか、又は治療用組成物は遊離アミノ酸としてアスパラギンを含まない。
【0133】
幾つかの実施形態において、治療用組成物は、セリン、リジン、グリシン、イソロイシン及びアスパラギンからなる群から選択される遊離アミノ酸の任意の2種を含まず、前記2種は、リジンとグリシンとの組合せ;リジンとアスパラギン酸との組合せ;リジンとイソロイシンとの組合せ;リジンとアスパラギンとの組合せ;グリシンとアスパラギン酸との組合せ;グリシンとイソロイシンとの組合せ;グリシンとアスパラギンの組合せ;アスパラギン酸とイソロイシンとの組合せ;アスパラギン酸とアスパラギンとの組合せ;及びイソロイシンとアスパラギンとの組合せを含む。
【0134】
他の実施形態において、組成物は、セリン、リジン、グリシン、イソロイシン及びアスパラギンからなる群から選択される遊離アミノ酸の任意の3種を含まず、前記3種は、リジン、グリシン及びアスパラギン酸の組合せ;リジン、グリシン及びイソロイシンの組合せ;リジン、グリシン及びアスパラギンの組合せ;リジン、アスパラギン酸及びイソロイシンの組合せ;リジン、アスパラギン酸及びアスパラギンの組合せ;リジン、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;グリシン、アスパラギン酸及びイソロイシンの組合せ;グリシン、アスパラギン酸及びアスパラギンの組合せ;グリシン、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;を含む。
【0135】
さらなる実施形態において、組成物は、セリン、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンからなる群から選択される遊離アミノ酸の任意の4種を含まず、前記4種は、リジン、グリシン、アスパラギン酸及びイソロイシンの組合せ;リジン、グリシン、アスパラギン酸及びアスパラギンの組合せ;リジン、アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;リジン、グリシン、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンの組合せ;を含む。
【0136】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンを含まない。別の特定の実施形態において、組成物は、セリン、リジン、グリシン、アスパラギン酸、イソロイシン及びアスパラギンを含まないか、又は無視できる量だけ含む。一実施形態において、組成物はグルタミン及び/又はメチオニン、並びに、グルタミン及び/又はメチオニンに加水分解され得る任意のジ-ペプチド、オリゴ-ペプチド又はポリペプチド又は蛋白質を含まない。
【0137】
幾つかの特定の実施形態において、治療用組成物はリジンを含んでもよく、リジンの全濃度は、300mg/l未満、100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。治療用組成物はアスパラギン酸を含んでもよく、アスパラギン酸の全濃度は、300mg/l未満、100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。治療用組成物はグリシンを含んでもよく、グリシンの全濃度は。300mg/l未満、100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/L未満である。治療用組成物はイソロイシンをさらに含んでもよく、イソロイシンの全濃度は、300mg/l未満、100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/L未満である。治療用組成物はアスパラギンをさらに含んでもよく、アスパラギンの全濃度は、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。
【0138】
代替実施形態において、組成物は、遊離アミノ酸グルタミンと、任意選択的に1又は複数のグルタミン含有ジペプチドとを含んでもよく、遊離アミノ酸グルタミンとグルタミン含有ジペプチドの合計濃度は、300mg/l未満であるか、又は300mg/l未満の任意の濃度であってよく、例えば100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。特定の実施形態において、組成物は遊離アミノ酸グルタミンと、任意選択的に1又は複数のグルタミン含有ペプチドとを含むことができ、遊離アミノ酸グルタミンとグルタミン含有ペプチドの合計濃度は300mg/l未満であるか、又は300mg/l未満の任意の濃度であってよく、例えば100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。
【0139】
別の代替実施形態において、治療用組成物は、遊離アミノ酸メチオニンと、任意選択的に1又は複数のメチオニン含有ジペプチドとを含んでもよく、遊離アミノ酸メチオニンとメチオニン含有ジペプチドの合計濃度は、300mg/l未満であるか、又は300mg/l未満の任意の濃度であってよく、例えば100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。特定の実施形態において、組成物は遊離アミノ酸メチオニンと、任意選択的に1又は複数のメチオニン含有ペプチドとを含むことができ、遊離アミノ酸メチオニンとメチオニン含有ペプチドの合計濃度は300mg/l未満であるか、又は300mg/l未満の任意の濃度であってよく、例えば100mg/l未満、50mg/l未満、10mg/l未満、5mg/l未満、1mg/l未満、0.5mg/l未満、又は0.01mg/l未満である。
【0140】
特定の実施形態において、組成物は添加剤(例えば、栄養素、電解質、ビタミン、ミネラルなど)も含む。特定の実施形態において、組成物は鉄又は亜鉛を含む。特定の実施形態において、治療用組成物は、例えばNa;K;HCO ;CO 2-;Ca2+;Mg2+;Fe;Cl;例えば、HPO 、HPO 2-、PO 3-などのリン酸イオン;亜鉛;ヨウ素;銅;鉄;セレン;クロム;及びモリブデンから選択される1又は複数の電解質を含む。他の実施形態において、組成物はHCO 又はCO 2-を含まない。別の代替実施形態において、組成物は、HCO 及びCO 2-を、合計濃度で5mg/l未満、又は5mg/l未満の濃度で含む。特定の実施形態において、組成物は電解質を含まない。例えば、特定の実施形態において、組成物は、Na;K;HCO ;CO 2-;Ca2+;Mg2+;Fe;Cl;例えば、HPO 、HPO 2-、PO 3- などのリン酸イオン;亜鉛;ヨウ素;銅;鉄;セレン;クロム;及びモリブデンの1種、又は2種以上、又は何れも含まない。
【0141】
特定の実施形態において、組成物は、オリゴ糖、多糖類、及び炭水化物;オリゴペプチド若しくはポリペプチド又は蛋白質;脂質;小鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸及び/又は長鎖脂肪酸;及び/又は上記栄養素を1種又は複数含む食物;から選択される1又は複数の成分を含まない。特定の実施形態において、組成物はグルコース又はスクロースを含まない。
【0142】
一実施形態において、本開示の組成物を緩衝するために、HPO 、HPO 2-、及びPO 3-などのリン酸イオンが使用される。一実施形態において、治療用組成物は、緩衝剤としてHCO 又はCO 2-を使用する。他の実施形態では、治療用組成物は、緩衝剤としてHCO 又はCO 2-を使用しない。
【0143】
特定の実施形態において、組成物は、バリン、トレオニン、チロシン、電解質、Na(約10mmol~60mmol)、及びK(約1mmol~20mmol)を含む。特定の実施形態において、組成物は緩衝剤を含む。
【0144】
<創傷治癒、皮膚状態及び肺疾患の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜傷害の治療のための幹細胞及び/又は前駆細胞による治療>
本明細書において、胃腸、肺及び皮膚の疾患を治療するための方法として、アミノ酸組成物について記載する。本開示は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を向上させる組成物及び方法を提供する。本開示は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又は消化管粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの治療及び改善をするための組成物及び方法を提供する。幹細胞及び/又は前駆細胞の数は、細胞の生存、増殖、及び/又は成長を増加させることによって増加させることができる。一実施形態において、方法は、幹細胞及び/又は前駆細胞を本開示の組成物に曝露することを含む。幹細胞及び/又は前駆細胞は、対象者へ投与された後、又は埋め込まれた後、又は送給された後に、培養された組成物、エクスビボで生成された組成物、その場で生成された組成物、又はインビボで生成された組成物に曝露されることができる。
【0145】
対象者は、例えば、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖及び/又は成長の促進が必要とされるヒトであり得る。対象者は、例えば、治療を必要とする疾患又は状態を有するヒトであり得る。対象者は、ヒトの他に、あらゆる種の動物であってよく、例えば、犬、猫、マウス、ラット、モルモット及びハムスターなどの家畜及び実験室動物;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、アヒル、ガチョウ、及びニワトリなどの家畜;エイプ(apes)、チンパンジー、オランウータン、モンキーなどの他の霊長類;魚;カエルやサンショウウオなどの両生類;ヘビやトカゲなどの爬虫類;キツネ、ラクダ、クマ、アンテロープ、ラマ、イタチ、ウサギ、ミンク、ビーバー、アーミン、カワウソ、クロテン、アザラシ、コヨーテ、チンチラ、シカ、ムスクラット、フクロネズミどの他の動物;を含む哺乳動物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0146】
一実施形態において、本方法は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長の増加をもたらす。特定の実施形態において、方法は、例えば創傷などの粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態、皮膚の状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)、肺疾患(例えば、喘息)、粘膜バリア機能、及び/又は消化管粘膜の損傷を有する対象の状態に改善をもたらす。
【0147】
一実施形態において、方法は、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長を促進するために、本発明に係る組成物を培養中の幹細胞及び/又は前駆細胞に導入することを含む。組成物は、様々な疾患及び状態を治療するのに用いられる細胞の量を増加させるために使用されることができる。
【0148】
一実施形態において、本開示は、移植された幹細胞の治療成果を向上させる方法を提供するもので、本開示の組成物を、幹細胞移植と併用して投与することを含む。組成物の投与は、ヒト又はヒト以外の動物における標的幹細胞及び/又は前駆細胞の移植部位又はその近傍で行われることができる。特定の実施形態において、本発明は、例えば創傷などの粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療、皮膚の状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療を必要とする対象者を治療する方法であって、本明細書に記載した組成物を前記対象者に投与することを含む、方法を提供する。
【0149】
一実施形態において、幹細胞及び/又は前駆細胞を投与された対象者は、シクロスポリンなどの免疫抑制薬を使用するか、又は局所免疫抑制法により局所適用免疫抑制剤を使用することにより、免疫抑制されることはできるが、そのような免疫抑制は、例えば脳や眼の組織などの特定の免疫特権組織においては必ずしも必須条件ではない。
【0150】
特定の実施形態において、投与される幹細胞及び/又は前駆細胞は本質的に自己由来(autologous)であり、投与を受けた者自身の組織から調製される。そのような場合、幹細胞の後代は、解離又は単離された組織から生成され、本開示の組成物を使用してインビトロで増殖され得る。適当な細胞数に拡大すると、細胞は採取され、対象者の患部組織に投与される状態になる。
【0151】
一実施形態において、本開示は、幹細胞の増殖及び分化を促進する必要がある対象者において、幹細胞の増殖及び分化を促進する方法を提供するもので、該方法は、前記対象者を特定すること、及び前記対象者に有効量の組成物を投与することを含み、前記組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸及びセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含むか、又は前記遊離アミノ酸から本質的に構成されるか、又は前記遊離アミノ酸から構成され、任意選択的に、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/又は他の活性剤を含み、前記組成物は、全オスモル濃度が、約100mosm~約280mosmであり、pHが、約2.5~約6.5である。特定の実施形態において、本開示は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの治療及び改善をするための方法を提供するもので、前記方法は、前記対象者を特定すること、及び前記対象者に有効量の組成物を投与することを含み、前記組成物は、トレオニン、バリン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸及びセリンからなる群から選択される1又は複数の遊離アミノ酸を含むか、又は前記遊離アミノ酸から本質的に構成されるか、又は前記遊離アミノ酸から構成され、任意選択的に、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/又は他の活性剤を含み、前記組成物は、全オスモル濃度が、約100mosm~約280mosmであり、pHが、約2.5~約6.5である。
【0152】
別の実施形態では、本開示の組成物及び方法は、原因不明の薬物、化学物質、及びウイルス感染症又は細菌感染症の二次的作用である骨髄抑制を克服するために使用されることができる。
【0153】
特定の実施形態において、本開示は、疾患及び状態における幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び成長を促進するために使用されることができ、前記疾患及び状態は、例えば、悪性腫瘍;ペインス細胞欠乏症;下垂体機能低下症;無グルテン食に反応しないセリアック病などのセリアック病;トロピカルスプルー;放射線関連虚血;ネオマイシン及びアザチオプリンによって誘発される絨毛萎縮のような薬物誘発性の絨毛萎縮;重度の食物過敏症;先天性クローン病;自己免疫性腸症;腸炎;肝炎;腸癌腸リンパ腫;1型糖尿病;アレルギー;角膜裂傷などの眼の症状;好酸球性胃腸炎;ウイルス性胃腸炎、及び免疫不全症候群;を含むが、これらに限定されない。
【0154】
幾つかの実施形態において、本開示は、ウイルス、真菌又は細菌の感染によって誘発される状態及び疾患における幹細胞の増殖及び分化を促進するために使用されることができ、前記状態及び疾患は、例えばウイルス、真菌又は細菌の感染によって引き起こされる骨髄抑制である。例えば、組成物及び方法は、例えばデング熱ウイルスによって血小板数が低下した患者を治療するために使用されることができる。
【0155】
本明細書に記載の組成物はまた、例えば、神経変性疾患、外傷性傷害、神経毒性傷害、虚血性、発達障害、視覚に影響を与える障害、脊髄の傷害又は疾患、脱髄性疾患、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、又は全身性疾患によって引き起こされる欠損症の症状を治療又は改善するために使用されることができる。
【0156】
特定の実施形態において、移植された幹細胞は、増殖すること、組織損傷の領域に移動すること、及び/又は、組織特異的に分化して欠損を軽減するように機能することが可能である。
【0157】
一実施形態において、本開示による方法及び組成物は、放射線に曝露された患者、又は放射線、化学療法及び/又は陽子線治療を受けている患者に特に有用である。
【0158】
別の態様において、本開示は、GI管(例えば、小腸粘膜、食道、胃、大腸など)の損傷、尿生殖路の損傷、又は粘膜内壁を有する臓器の損傷の治療を必要とする対象者において、前記治療をする方法を提供するもので、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。別の態様では、本開示は、粘膜バリアに関連する状態の治療を必要とする対象者において前記治療をする方法を提供するもので、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。
【0159】
本開示の組成物は、幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長を必要とするあらゆる疾患又は状態の治療又は改善に使用されることができる。特定の実施形態において、本開示の組成物及び方法は、幹細胞の増殖を促進することにより、放射線照射で生じた小腸の損傷の治療又は改善に使用されることができる。別の特定の実施形態において、本開示は、放射線療法、特に骨盤及び腹部の放射線療法によって引き起こされる小腸の損傷の治療又は改善に使用されることができる。特定の実施形態において、放射線療法は、癌の治療法である。
また、本開示は、化学療法剤によって小腸に生じる損傷を治療又は改善するために、幹細胞の増殖を促進するために使用されることができる。前記化学療法剤は、限定されるものでないが、シスプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ヒドロキシ尿素、エトポシド、アラビノシド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、メトヘキセート、ステロイド、及び/又はこれらの組合せを含む。例示的な化学療法剤として、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、及びメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えばゴシクリン及びロイプロリド)、抗アンドロゲン(例えばフルタミド及びビカルタミド)、光線力学療剤(例えばベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、及びデメトキシ-ヒポクレリンA(2BA-2-DMHA))、窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、及びメルファラン)、ニトロソ尿素(例カルムスチン(BCNU))及びロムスチン(CCNU))、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン及びトレスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)、タキソイド(例えば、パクリタキセル、又はナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン)、ポリグルタメート結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT-2103、XYOTAXなどのパクリタキセル同等物)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(パクリタキセルの3分子に結合したアンジオペプ-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2認識ペプチドEC-1に結合したパクリタキセル)、及びグルコース結合パクリタキセル、例えば2’-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルサクシネート;ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィリン(例えば、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、トポテカン、9アミノカンプトテシン、カンプトテリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、ミトマイシンC)、代謝拮抗物質、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキセート、ジクロロメトトレキセート、トリメトレキセート、エダトレキセート)、IMP脱水素酵素阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、及びEICAR)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素及びデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5フルオロウラシル(5-FU)、フロクスリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド、テガフール-ウラシル、カシペシタビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB1089、CB1093及びKH1060)、イソプレニル化阻害薬(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒素(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ATPアーゼ阻害剤(例えば、タプシガルギン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736))、ボスチニブ(SKI-606)、セジラニブ(RECENTIN(登録商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-70)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマクサニブ(セマクサニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロニブス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、ドビチニブラクテート(TKI258、CHIR-258)、BIBW2992(TOVOK(登録商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、及び/又は、XL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(VELCADE)、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD-001)、リダホロリムス、AP23573(アリアド)、AZD8055(AstraZenecca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF-4691502(Pfizer)、GDC0980(Genetech)、SF1126(Semafoe)及びOSI-027(OSI))、オブリミセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルバジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクチン、プロカルバジン、ディスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン、及びヘキサメチルメチラミン、を挙げることができる。
【0160】
特定の実施形態において、本開示は、小腸への損傷を含む疾患の治療又は改善のために幹細胞の生存及び増殖を促進するために使用されることができ、前記疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、十二指腸潰瘍、クローン病、及び/又はシリアック病(セリアック病としても知られる)を含むが、これらに限定されない。本開示は、ウイルス、細菌、真菌又は他の微生物の感染による病原性感染症による小腸の損傷の治療又は改善に使用されることができる。
【0161】
一実施形態において、幹細胞及び/又は前駆細胞は、本開示の組成物による治療の前に放射線に曝されている。別の実施形態では、幹細胞及び/又は前駆細胞は、本開示の組成物による治療の後に放射線に曝されるだろう。放射線は、本明細書に記載された組成物で細胞を処理する前後において、例えば、1分、5分、30分、1時間、6時間、12時間、1日、5日、7日、14日、30日、60日、3か月、6か月、1年、2年、又は3年以上、細胞に照射されることができる。放射線の線量は、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、85、90、95、100、120、又は150 Gyであってよい。
【0162】
一実施形態において、本開示は骨髄移植の関連で使用されることができる。骨髄の幹細胞及び/又は前駆細胞は、本開示の組成物を用いてインビボ又はエクスビボで処理されることができる。そのような処理は細胞の生存、増殖、及び/又は成長を向上させる。
【0163】
別の実施形態において、本開示は、小児の急性移植片対宿主病の管理に使用されるプロキマルの関連で使用されることができる。これは成人ドナーの骨髄に由来する間葉系幹細胞(MSC)に基づく同種幹細胞療法である。MSCの生存、増殖、及び/又は成長は、インビトロ又はエクスビボで本開示の組成物と接触させることによって向上させることができる。
【0164】
別の実施形態において、本開示の組成物及び方法は心臓治療に使用されることができる。心筋梗塞の治療のための幹細胞療法は、しばしば自家骨髄幹細胞を利用するが、脂肪組織由来幹細胞のような他の種類の成体幹細胞を使用されることもできる。一実施形態において、幹細胞療法を使用することにより、心臓組織が再生され、心臓損傷後の心不全の発症の根底にある組織消失を元に戻すことができる。
【0165】
別の実施形態において、本開示の組成物及び方法は、血球の形成及び増殖に使用され得る。完全に成熟したヒト赤血球は、赤血球の前駆体である造血幹細胞(HSC)によってエクスビボで生成され得る。このプロセスでは、HSCは間質細胞と一緒に増殖されることができ、骨髄の状態、赤血球増殖の天然部位の状態に類似した環境を作り出す。本開示の組成物の使用に際して、成長因子であるエリスロポエチンを添加することにより、幹細胞を誘導して、赤血球への最終分化を完了させることができる。組成物及び方法はまた、赤血球、白血球、及び/又は血小板の集団を拡大するために用いられることができ、例えば、酸素運搬能力(運動選手などのために)、免疫系(免疫不全の治療を含む)を改善し、凝固を改善するために用いられる。
【0166】
別の実施形態では、本開示の組成物で処理した胚性幹細胞を使用して、蝸牛有毛を再成長させることができる。
【0167】
別の実施形態において、本開示に基づいて処理された幹細胞は、失明及び視覚障害を治療するために使用されることができる。特定の実施形態において、組成物及び方法は角膜裂傷を治療するために使用される。
【0168】
別の実施形態において、本開示は、インスリン産生膵臓β細胞の移植を含む組織移植の成功を高めるために使用されることができる。これらの細胞は、例えば、ベータ細胞に分化させられた胚性幹細胞から調製されることができる。これらの細胞は、本開示の組成物を用いてインビボ又はエクスビボで処理されることができる。
【0169】
別の態様において、本開示は、創傷の治療及び/又は創傷治癒の促進を必要とする対象者において、前記治療及び/又は促進を行う方法を提供するもので、当該方法は、本明細書に記載された組成物を前記対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、本開示は、創傷の治療を必要とする対象者において、前記治療を行う方法を提供するもので、当該方法は、本明細書に記載された組成物を前記対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、本開示は、創傷又は火傷の治療を必要とする対象者において、前記治療を行う方法を提供するもので、当該方法は、本明細書に記載された組成物を前記対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、本開示は、火傷の治療を必要とする対象者において、前記治療を行う方法を提供するもので、当該方法は、本明細書に記載された組成物を前記対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、創傷は、部分層創傷又は全層創傷である。特定の実施形態において、火傷は部分層火傷又は全層火傷である。
【0170】
本開示はまた、創傷治癒の関連において利用され得る。成人では、創傷組織は、最も頻繁には、瘢痕組織に置換され、前記組織は、崩壊(disorganized)コラーゲン構造、毛嚢の消失、及び不規則な血管構造によって特徴づけられる。一実施形態において、幹細胞の「シード(seeds)」は、創傷床内の組織層の内側に位置しており、幹細胞が組織層細胞の分化を刺激することを可能にする。この方法は、幹細胞の添加の有無に関係なく、創傷を本開示の組成物と接触させることによって大幅に向上させることができる。特定の実施形態において、組成物は皮膚に塗布される。特定の実施形態において、組成物は幹細胞及び/又は前駆細胞に施される。
【0171】
他の実施形態において、本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、皮膚及び/又はその下の組織の様々な層の活性化が所望される化粧品用途に有用である。この活性化は、例えば、幹細胞及び/又は前駆細胞の生存、増殖、及び/又は成長の向上によって支援され得る。この活性化は、例えば、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態(例えば創傷)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)、肺疾患(例えば、喘息)、粘膜バリア機能、及び/又は消化管粘膜の損傷に関係する疾患又は状態を治療することにより、支援され得る。
【0172】
この実施形態において、本開示の方法は、概して、皮膚(例えば表皮)の治療を必要とする患者の皮膚に、治療に有効な量の組成物を局所的に塗布するステップを含む。一実施形態において、組成物は顔に塗布される。
【0173】
本発明は、皮膚の老化に対抗する(combat)組成物及び方法を提供するもので、前記皮膚の老化に対応することには、例えば、しわ、小じわの外観及び望ましくない肌のきめ等の他の形態の治療することを含む。組成物を皮膚の真皮及び/又は表皮層に供給することにより、皮膚の形態、強度、及び機能が改善される。特定の実施形態において、本明細書に記載された組成物及び方法は、例えば、皮膚の様々な層及び/又はその下にある組織の活性化が望まれる美容用途に有用である。
【0174】
別の態様では、本開示は、皮膚の状態(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、又は皮膚の加齢に関連する状態)を治療及び/又は予防することが必要とされる対象者において、前記治療及び/又は予防する方法を提供するもので、該方法は、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、皮膚の状態は、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚の老化、皮膚の老化に関連する状態、又は褥瘡である。幾つかの実施形態において皮膚の状態は、掻痒(かゆみ)、乾癬、湿疹、火傷、又は皮膚炎である。特定の実施形態において、皮膚の状態は乾癬である。特定の実施形態において、皮膚の状態は掻痒である。
【0175】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、アミノ酸の他に、皮膚の老化、しわ発生、及び/又は、内因性状態(老化、更年期障害、ニキビなど)及び外的状態(環境汚染、風、熱、日光、放射線、低湿度、過酷な界面活性剤など)に一般的に関連する他の組織学的変化を、遅延させ、最小化し、又は排除するのに有用な薬剤を含む。
【0176】
本発明は、皮膚の視覚的及び/又は触覚的特徴を治療及び/又は予防するのに有用である。例えば、一実施形態では、小じわ及び/又はしわについて、長さ、深さ、及び/又は他の寸法が減少する。
【0177】
別の態様において、本開示は、肺疾患を治療することが必要とされる対象者において、前記治療及び/又は予防する方法を提供するもので、該方法は、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、組成物は全身投与されるか、又は吸入によって投与される。別の態様において、本開示は、肺機能、肺治癒の改善、肺炎の減少、気道抵抗の減少、及び/又は肺機能の改善を必要とする対象者において、前記改善及び前記減少を達成する方法を提供するもので、該方法は、本明細書に記載された組成物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態において、肺の状態は、肺損傷、肺炎、気道抵抗に関連する状態、喘息、又は肺の炎症状態である。特定の実施形態において、組成物は全身投与されるか、又は吸入によって投与される。
【0178】
一実施形態において、皮膚又は他の組織に塗布される組成物は、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸(HA)をさらに含み得る。一実施形態において、HAは架橋HAである。組成物がさらに含むことができる成分として、限定するものでないが、皮膚科学的に許容される担体、落屑剤、抗にきび剤、抗しわ剤/抗萎縮剤、ビタミンB3化合物、レチノイド、ヒドロキシル酸、抗酸化剤/ラジカルスカベンジャー、キレート剤、フラボノイド、抗炎症剤、抗セルライト剤、局所麻酔剤、日焼け防止剤、美白剤、皮膚鎮静剤及び皮膚治癒剤、抗菌剤及び抗真菌剤、日焼け止め剤、コンディショニング剤、構造化剤、増稠剤(増粘剤及びゲル化剤を含む)、調製組成物及び防腐剤を含む。これに関しては、国際出願公開WO2008/089408号が、引用を以てその全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
本開示の組成物は、治癒及び外科的成果を改善するために、低侵襲手術のサイトを含む手術サイトで投与されることもできる。
【0180】
幹細胞は、本開示に従って、不妊症を治療するために使用されることもできる。特定の実施形態において、対象者は、最初に、幹細胞の生存、増殖及び/又は成長が対象者にとって有益になるだろう状態であることが診断される。例えば、対象者は、そのような状態であると診断されると、対象者に適用される組成物は、幹細胞の生存、増殖及び/又は成長をもたらすことのできる量が、経路を介して投与される。好ましくは、そのような投与により、状態の治療(例えば、改善)がもたらされる。
【0181】
<腸の幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び/又は成長を促進するための組成物の使用であって、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態、皮膚の状態、肺疾患を治療するための組成物の使用、並びに、粘膜バリア機能及びGI粘膜を傷害するための組成物の使用>
本明細書には、胃腸疾患、肺疾患及び皮膚疾患を治療するためのアミノ酸組成物の使用について記載する。特定の実施形態において、本発明の組成物は、腸上皮細胞増殖を誘導するために使用されることができ、絨毛の高さを増大させることができる。前記絨毛は、成熟し分化された上皮細胞であって、電解質及び栄養素の吸収を増大させる上皮細胞を含む。一実施形態において、本開示による組成物は、幹細胞及び/又は前駆細胞の増殖及び分化を刺激する。これは、刷子縁膜におけるNHE3及びSGLT1の発現レベルの上昇によって実証される。それゆえ、この組成物は絨毛の高さを増加させると共に、さらに電解質及び栄養素吸収のための重要な輸送体の発現を増加させる。
【0182】
従って、一実施形態において、本開示は、特に絨毛領域及び刷子縁における小腸上皮細胞の消失に関連する胃腸損傷を予防又は治療するための医薬組成物、及び/又は、小腸の吸収能力の変化に関連する疾患又は状態を、幹細胞の分化又は増殖を促進することによって治療又は改善するための医薬組成物を提供する。これらの幹細胞は、腸腺窩の下部に位置し、高速循環腺窩基底柱状細胞(CBC)と、より不活発な「+4」細胞とを哺乳動物のパネス細胞の上方に含む。
【0183】
本開示はさらに、特に絨毛領域及び刷子縁における小腸上皮細胞の消失に関連する疾患又は状態、並びに小腸上皮における輸送蛋白質機能の変化に関連する疾患又は状態を、幹細胞の分化と増殖を促進することによって治療又は改善するための方法を提供する。該方法は、前記治療を必要とする対象者に本開示の組成物を有効量投与することを含む。別の態様において、本開示は、粘膜バリア機能に関連する疾患又は状態の治療(例えば創傷治癒)、皮膚状態(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、床ずれ、又は皮膚の老化に関連する状態)の治療、肺疾患(例えば、喘息)の治療、粘膜バリア機能の改善、及び/又はGI粘膜の損傷の治療を必要とする対象者において、それらの治療及び改善をする方法を提供する。
【0184】
<製剤とキット>
本開示は、治療用又は医薬組成物を提供するもので、治療上有効量の本発明の組成物と、任意選択的に1又は複数の薬学的に許容される担体とを含む。本開示は、治療用、医薬用、化粧用又は栄養用組成物を提供するもので、治療上有効量の本発明の組成物と、任意選択的に1又は複数の薬学的に許容される担体とを含む。前記薬学的に許容される担体は、水などの液体であり得る。治療用組成物はまた、活性化合物を薬学的に使用可能な調製物への加工を容易にする材料、例えば、賦形剤、アジュバント、香味剤などを含むことができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。一実施形態において、治療用組成物及びその中に含まれるすべての成分は殺菌されている。適当な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与形態を提供するために、治療上有効な量の治療用組成物を適当量の担体と共に含む。調製物は経腸形態の投与にも適合する。
【0185】
一実施形態において、組成物の投与は全身的であり得る。その他に、経口、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、心室内、鼻腔内、経粘膜、皮下、局所、直腸、及び他の投与形態がすべて意図される。
【0186】
一実施形態において、注射用の場合、活性成分は、水溶液の中、好ましくは生理学的に適合する緩衝液の中で調製されることができる。経粘膜投与の場合、バリアへの浸透に適した浸透剤が調製物の中に使用される。そのような浸透剤は、当該分野で一般的に知られている。経口投与の場合、活性成分は、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに含めるのに適した担体と組み合わせて使用される。製剤は吸入療法で使用するために調製されることもできる。吸入による投与の場合、組成物は、適当な噴射剤を使用して、加圧パック又はネブライザーによるエアロゾルスプレーの形態で送達されることができる。組成物は、吸入又は他の経路で粉末として投与されることもできる。
【0187】
本明細書に記載された組成物の治療上有効な量は、所望数の幹細胞及び/又は前駆細胞を達成することを目的として、当業者が決定することができる。幹細胞及び前駆細胞の数の増加は、これら細胞のマーカーを使用して評価することができるし、また、これら細胞の分化した子孫の数の増加を決定することによって評価することもできる。分化細胞の増加数を測定するための方法は当技術分野において公知である。例えば、免疫組織化学、行動評価又は電気生理学的技術もまた利用され得る。当業者であれば、特定の表現型の細胞数の増加を容易に検出することができる。
【0188】
特定の実施形態において、本開示による方法は、治療用組成物を徐放システムによって投与することを含む。徐放システムの適当な例として、適当なポリマー材料(例えば、フィルムやマイクロカプセルなどの形状物品形態の半透過性ポリマーマトリックスなど)、適当な疎水性材料(例えば許容可能な油の中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂、及び難溶性の誘導体(例えば、難溶性の塩など)が挙げられる。徐放性組成物は、経口的に、非経口的に、嚢内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏、ゲル、点滴又は経皮パッチによる)、又は経口若しくは鼻腔スプレーとして投与することができる。徐放マトリックスとして、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートとの共重合体を挙げることができる[Sidman et al., Biopolymers 22:547-556, 1983, poly(2-hydroxyethyl methacrylate)); (Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277, 1981; Langer, Chem. Tech. 12:98-105, 1982, ethylene vinyl acetate (Langer et al., Id.) or poly-D-(-)-3-hydroxybutyric acid (EP 133,988)]。
【0189】
一実施形態において、患者に対して、治療用組成物を長期間一定の投与又は注入をするために、移植可能な薬物注入デバイスを使用することもできる。そのようなデバイスは能動的又は受動的に分類されることができる。
【0190】
一実施形態において、イオン制御放出に、ポリマーを使用することができる。制御された薬物送達に使用するための様々な分解性及び非分解性ポリマーマトリックスが当技術分野において公知である[Langer, Accounts Chem. Res. 26:537, 1993]。例えば、ブロックコポリマー、ポラキサマー407、ヒドロキシアパタイト、及びリポソームである。
【0191】
本発明の医薬組成物は、単独で使用することができるが、疾患を治療するのに有効であることが知られている1又は複数の薬物と組み合わせて使用することもできる。組成物はまた、安定化化合物又は緩衝化合物などの少なくとも1つの他の製剤と組み合わせて調製されることもできる。前記化合物は、例えば、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース及び水などの滅菌性生体適合性医薬用担体の中で投与されることができる。本明細書の中に記載した重要な成分である細胞又は影響因子に加えて、組成物は、適当な薬学的に許容される担体を含むことができ、前記担体は、活性化合物を薬学的に使用可能な調製物への処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む。組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を用いて、一回量形態として調製されることができるし、複数回投与用容器の中に収容されることもできる。
【0192】
一実施形態において、組成物は他の増殖剤及び/又は分化誘導剤をさらに含むことができる。増殖剤又は分化誘導剤は、増殖又は分化を誘導する製剤として知られている任意の製剤であってよい。例として、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、及びレチノイン酸が挙げられる。
【0193】
組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤などの他の一般的に使用されている添加剤をさらに含有してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、滑剤等をさらに加えることにより、水溶液、懸濁液、エマルジョンなどの注入可能な製剤、ピル、カプセル、顆粒、タブレット等に調製されることができる。
【0194】
本発明の食品組成物は、健康機能食品に含められることができる。
【0195】
本発明の健康機能食品は、当該分野で一般的に採用されている方法によって製造されることができる。また、健康機能食品を製造する際、一般的に使用されている原材料及び成分を添加されることができる。
【0196】
本発明の組成物が健康機能食品に含まれる場合、組成物は、単独で加えられることができるし、また、一般的に使用される方法に従って、他の健康機能食品又は他の食品成分と一緒に添加されることもできる。有効成分の量は、使用目的(例えば、予防、健康改善、又は治療的介入)に応じて適宜決定されることができる。食品組成物は、例えば、プレバイオティック物質又はプロバイオティック物質をさらに含むことができる。
【0197】
食品の種類は限定されない。組成物を添加することができる食品の例として、肉、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー、スナック、菓子、ピザ、ラーメン、他の麺、ガム、アイスクリームを含む乳製品、スープ、飲料、茶、ドリンク、アルコール飲料、ビタミン複合体を挙げることができるが、これらに限定されるものでない。
【0198】
また、キット(例えば、医薬品、治療薬、化粧品又は栄養物のパック)についても本開示に包含される。キットは、本明細書に記載された医薬組成物又は化合物、及び容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、及び/又はディスペンサーパッケージ又は他の適当な容器)を含み得る。幾つかの実施形態において、キットは、任意選択的に、本明細書に記載された医薬組成物又は化合物を希釈又は懸濁するための医薬賦形剤を含む第2の容器をさらに含むことができる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された医薬組成物又は化合物は、第1の容器及び第2の容器の中に入れられ、前記第1及び第2の容器が組み合わされて、1ユニットの投与形態を形成する。
【0199】
従って、一態様において、本明細書に記載された組成物を含む第1の容器を含むキットが提供される。特定の実施形態において、疾患(例えば、GI、肺及び皮膚の疾患)の治療を必要とする対象者において、キットは、前記治療をするのに有用である。特定の実施形態において、疾患(例えば、GI、肺及び皮膚の疾患)の予防を必要とする対象者において、キットは、前記予防に有用である。
【0200】
特定の実施形態において、本明細書に記載されたキットは、キットの中に含まれる組成物を使用するための説明書をさらに含む。本明細書に記載されたキットはまた、米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局によって要求される情報を含み得る。特定の実施形態において、キットに含まれる情報は処方情報である。特定の実施形態において、キットと説明書は、疾患(例えば、GI、肺、及び皮膚の障害)の治療及び/又は予防を必要とする対象者において、前記治療及び/又は予防を提供する。本明細書に記載されたキットは、1又は複数の追加の医薬品、又は別個の組成物として本明細書に記載された他の製剤を含み得る。
【0201】
<投与の方法>
一実施形態において、本開示は、本開示による組成物を対象者に投与することを含み、幹細胞及び/又は前駆細胞を対象者にさらに投与することを含む。組成物は、細胞との接触ができるように、前記対象者の中の遺伝子座に投与される。これは、幹細胞が投与される位置と同じ位置、又はその近傍、又はその遠位置にあってよい。
【0202】
幹細胞及び/又は前駆細胞は、例えば、注射器を用いて1又は複数の細胞を注射することにより、又はカテーテルを用いて幹細胞を挿入することにより、又は幹細胞を外科的に移植することによって投与されることができる。特定の実施形態において、幹細胞は、標的組織に流体連通する体腔内に投与される。幾つかの好ましい実施形態において、体腔は脳室である。他の実施形態では、細胞は注射器又はカテーテルを用いて挿入されるか、又は標的組織部位に直接外科的に移植される。他の実施形態において、幹細胞及び/又は前駆細胞は非経口投与される。非経口投与は、胃腸管を迂回する経路による投与として定義される。非経口投与は脳室内投与を含む。
【0203】
一般的に、組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下又は直腸の手段を含む多くの経路の何れかによって投与されることができる。因子(factors)は、投与された幹細胞と同じ位置に投与されることがでる。影響因子及び幹細胞の投与は、相対位置及びタイミングにより因子が幹細胞及び/又は前駆細胞に影響を与えることができる限り、同時に又は相前後して、同じ位置又は異なる位置で行うことができる。
【0204】
例えば、「から本質的になる」を使用することにより、治療用組成物は、特定されていないあらゆる成分を含まない。前記成分として、限定されるものでないが、遊離アミノ酸、ジ-ペプチド、オリゴ-ペプチド若しくはポリペプチド又は蛋白質と、幹細胞の成長促進に対して直接的に有益な治療効果又は有害な治療効果を有する単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類及び炭水化物と、を含む。また、「から本質的になる」という用語を使用することにより、組成物は、幹細胞発生の促進に対して治療効果を有しない物質を含み得る。前記物質は、幹細胞の促進及び/又は成長に影響を及ぼさない担体、賦形剤、アジュバント、香味剤などを含む。
【0205】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、当業者であれば示唆され得る様々な修正又は変更は本出願の精神及び範囲内に含まれるべきであることを理解されるべきである。
【実施例
【0206】
<材料及び方法>
動物モデル:8週齢のオスのNIHスイスマウスに通常の食餌を与え、1ケージあたり4匹のマウスで飼育した。マウスの放射は、平行で対向する形状の2つのセシウム137線源が収容されたGammacell 40 Exactor LowDose Research Irradiator(Best Theratronics、Ottawa、Ontario)を使用して行い、±3%以内の線量均一性で等方性照射を送達した。マウスは0.9Gy/分の線量率でTBIの単回照射を受けた。マウスは、5匹を同時に照射できるようにするために、プラスチック治具で照射チャンバーの中央に固定した。調製物で処理されるマウスには、経胃管強制給餌により、1日1回AA-ORSを与えた(0.3ml/マウス)。対照グループには通常の食塩水を与えた。アミノ酸調製物は支持療法として与えられ、補充療法の一部ではなかった。マウスは強制経口投与前8時間絶食した。照射の6日後にアニオン分泌がピークになり、その時、動物にCO吸入させて人道的に安楽死させて、頸椎脱臼した(動物の安楽死のためのAVMAガイドラインに基づく)。毒性は主に急性GI症候群によるものであり、骨髄症候群による乱れは最小限のものだった18。血を抜いた後、回腸粘膜が前述のように得られた18,20。全ての実験は、Florida Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認され、IACUCプロトコル#3875に基づいて実施した。
【0207】
<腺窩の計数及び絨毛長さの測定>
腸の長軸に対して垂直の向きに切断された腸切片からパラフィン切片(5μm)を得た。一周あたりの腺窩を数え、回腸から得られた10個の切片から絨毛長さを測定した。細胞生存曲線パラメータを決定するために、腺窩数を正規化し、古典的方法を用いて分析した21。AA-ORS処理を6日間行った。生理食塩水を対照として使用した。
【0208】
<細胞増殖と腺窩から絨毛への遊走のアッセイ>
5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU、チミジン類似体)を細胞DNAの中に取り込み、銅触媒中でのその後のEdUと蛍光アジドとの反応を利用して、腺窩細胞領域における細胞増殖の研究を行なった。腺窩細胞における有糸分裂活性を評価するために(これらの研究は腺窩におけるS期を明らかにする)、0.5mgのEdU(16.7mg/Kg)を含む150mlのPBSをマウスに注射し、注射後24、48及び72時間で安楽死させた。マウス回腸からパラフィン切片を調製し、取り込まれたEdU(Thermo Fisher Scientific社カタログ番号A10044)を製造元の説明書(Alexa社647イメージングキット、カタログ番号C10340)に従って視覚化した。次いで切片をDAPI(VectaShield、社カタログ番号H-1200)を含む蛍光封入剤の中に装入した。細胞は、腺窩全体及び絨毛単位ごとに記録した。マウス1匹あたり60以上の腺窩及び対応する絨毛を分析した。EdU標識細胞は、腺窩又は絨毛あたり合計細胞数に対して正規化した。陽性染色された腸細胞は腺窩の基部から絨毛の先端へ移動していることが示されている。
【0209】
<ナトリウムと塩化物吸収に対するフラックス試験>
剥がされた回腸シートを、0.3cmの露出表面積を有するウッシングチャンバーの2つの半体の間に取り付けた(P2304, Physiological Instruments社, San Diego, CA, USA)。リンゲル溶液は、(mmol.1-1)Na140、Cl119.8、K5.2、HPO 2.4、HPO 0.4、Mg2+1.2、Ca2+1.2、及びHCO 25を含み、該リンケル溶液を、95%O及び5%COでバブリングし、37℃に維持した。組織を45分間安定化させた後、μeq・h-1・cm-2として表される基底短絡電流(Isc)及びmS.cm-2として表されるコンダクタンス(G)を、コンピュータ制御された電圧/電流クランプ装置(VCC MC-8, Physiological Instruments社)を用いて前述のように記録した18,20。フラックス試験については、ナトリウム(22Na)及び塩化物(36Cl)の放射性同位体を用いて、前述の通り、回腸粘膜を横切るナトリウム及び塩化物フラックスの流れを調べた18,2022。Na活性はガンマカウンター(Wizard 2, 2480 Automatic Gamma Counter, Perkin Elmer社, USA)を用いて測定し、36C1は液体シンチレーションカウンター(LS 6500 Multipurpose Scintillation Counter, Beckman Coulter, Inc., Brea, CA, USA)を用いて測定した。
【0210】
<リアルタイムの定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)>
RNAは、放射線非照射マウス及び放射線照射マウス(0Gy、5Gy及び7Gy)の腸組織サンプルからTRIZOL法を用いて抽出した。C-DNAは、c-DNAキット(iScript(登録商標) Select cDNA Synthesis Kit, Bio-Rad社, Hercules, CA)を用いて調製した。半定量的及びリアルタイムPCRは、カスパーゼ3、Lgr5、sglt1及びBMI1に対する特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて行なった。半定量的PCRについては、c-DNA(2μL)を25μLのPCR混合物に加え、定量的PCRについては、20μLのSyBr未加工(green)混合物を加えた。半定量的PCRにはVeriti Thermal Cycler(Thermo Fisher Scientific社, Waltham, MA)を使用し、リアルタイムPCRにはCFX Connect Real-time
Cycler(Bio-Rad社)を使用して、30サイクル(又は、結果に示されるように30サイクル以上)のPCRを実施した。1サイクルは、変性のために94℃で30秒間、アニーリングのために60秒間、そして延長のために72℃で90秒間である。アンプリコンをアガロースゲル電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色により検出した。リアルタイム分析には、CFX Manager(登録商標)ソフトウェア(Bio-Rad)を使用した。標準化はデルタ-デルタCt(DDCt)法を使用した。簡単に説明すると、DCt=Ct(標的遺伝子処理)-Ct(ref遺伝子処理)及びDCt=Ct(標的遺伝子対照)-Ct(ref遺伝子-対照)、及び、DCt=Ct(標的遺伝子-対照)-Ct(ref遺伝子-対照)である。それゆえ、DDCt=DCt(処理)-Ct(対照)である。倍率変化(fold change)は式2(-DDCt)から計算した。
【0211】
<ウエスタンブロット>
非照射マウス、及び照射されAA-ORS処理又は食塩水処理したマウスからの全細胞溶解物を氷冷RIPA緩衝液[50mmol/L トリス-HCl(pH7.4)、150mmol/L NaCl、1%IGEP AL、1mmol/L EDTA、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、1mmol/Lフッ化ナトリウム、1mmol/Lオルトバナジン酸ナトリウム、0.5mmol/L PMSF、10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン]の中で調製した。各抽出物中の蛋白質濃度をBCAアッセイ(Sigma社, St. Louis, MO)によって決定した。細胞抽出物をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の処理に付した。蛋白質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写し、Lgr5、SGL T1、Bmi 1、カスパーゼ3、p ERK、及び全ERKを検出する一次抗体を用いてプローブで蛋白質を探った。シグナルはLI-CORのOdyssey CLXで検出された。製造者のインストラクションに従って、可逆性ポンソーS染色(カタログ番号786-575、G
Biosciences)を使用して、ゲルの等量負荷を調べた。対象蛋白質の存在量を各レーンの蛋白質の全量に対して正規化した。この技術は、蛋白質密度を単一の蛋白質との比較に関連する変動を最小にするものである。
【0212】
核蛋白質PCNA及びKi-67、並びに幹細胞特異的膜蛋白質Lgr5の免疫組織化学的同定は、多クローン性の抗マウスウサギGPCR(Lgr5)(Abeam社カタログ番号ab75732)、Ki-67(Abeam社カタログ番号ab15580)及びPCNA(Abeam社カタログ番号ab18197)抗体を用いて行なった。ウサギ特異性ABC検出キット(Abeam社カタログ番号ab64261)を使用し、製造業者のインストラクションに従って蛋白質の発現を視覚化した。簡単に説明すると、ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋された全層回腸試料を横断面4μm厚さに切断し、試料をスーパーフロストプラスガラススライド上に載置し、脱パラフィン処理して、再水和した。抗原回収のために、圧力鍋(125℃で30秒間、90℃で10秒間)及び回収用バッファを用いて加熱の前処理を行った。前記バッファは、pH6.0でDeloaker RTUバッファ(Biocare Medical社カタログ番号RV1000MMRTU)である。内因性ペルオキシダーゼを急冷し、非特異的結合をブロックした後、切片をPBS(室温にて、Lgr5-1:100を2時間、Ki-67-1:1000を15分、PCNA-1:4000を2時間)で希釈した一次抗体でインキュベートした。PBSは陰性対照として使用した。次に組織をビオチン化ヤギの抗ウサギ二次抗体で10分間インキュベートした。ストレプトアビジンペルオキシダーゼと共にインキュベートした後、顕微鏡下で可視化することにより、ジ-アミノ-ベンジジンの所望の染色強度を得た。切片をメイヤーのヘマトキシリン(Electron Microscopic Sciences社(EMS)カタログ番号26043-05)で対比染色し、脱水して、Permountマウンティング培地(Fisher Scientific社カタログ番号SP15-100)の中にマウントした。スライドは、光学顕微鏡により、PCNA及びKi-67については20倍の対物レンズを使用し、Lgr5については油浸した40倍の対物レンズを使用して評価した。陽性褐色細胞の数は1グループあたり50の腺窩から計数し、分析した。
【0213】
<統計学>
結果は平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表される。統計分析は次の段階で行われた:1)全体の差異は分散分析(ANOVA)(又はそのノンパラメトリック的等価なクラスカル-ワリス)を用いて試験した;及び2)全てのペアワイズ比較についてボンフェローニ調整P値を計算した。
【0214】
<実施例1:AA-ORSにより、照射されたマウスの腸組織における腺窩数及び絨毛長さが増加した>
AA-ORSで処理された照射マウス(5~15Gy)の腸組織は、一周あたりの腺窩数(N)において有意な増加を示した。腺窩は再生単位によって形成されるので、これらの結果は前駆上皮細胞の数が増加したことを示している。同様に、AA-ORSで処理したものは、食塩水処理したものと比較して、全ての放射線量に亘って、絨毛の長さが有意に増加した(図1B)。これは、自然排出(sloughing)前の前駆細胞増殖の増加及び/又は上皮細胞のより長い生存と一致する。
【0215】
腺窩生存曲線は、1ヒット型多標的細胞生存モデルを用いてモデル化し、生物学的効果を評価した。一定の細胞感受性を制限することなく、N値は10.4±0.2及び5.3±0.1(P<0.001)であり、一周あたりの前駆体単位が対照のほぼ2倍を示した。一定のDo(4.8±0.1Gy)に制限された場合、その差は8.8±0.4乃至6.1±0.3(P<0.001)であり、差は有意なままであった。擬閾値線量(Dq)の値は、腺窩の放射線耐用性の複合指標であり、AA ORS処理マウスでは10.5±0.5Gyであり、食塩水処理マウスでは8.8±0.4Gyであった(P<0.01)。
【0216】
AA-ORS群は、食塩水グループと比較して、低放射線量領域に「広い肩幅(broad shoulder)」を有し、腸一周あたりの前駆細胞数は増加した(老化が少ない)(図1A)。
【0217】
予想された通り、末端部分は指数関数的な関係になった。5Gyは腺窩数と絨毛高さの両方とも有意な増加が起こった最小の放射線量であったので、その後のすべての研究は0と5Gyを照射したマウスで行なった。
【0218】
体重増加と生存率の増加は、腺窩数と絨毛の高さの二次的作用であり、吸収の表面積を増加させることがわかった。照射後6日目のAA-ORS処理によって、腺窩数及び絨毛の高さの増加することが実証された。腺窩生存の1ヒット多標的モデルを使用して、回腸一周あたりの腺窩前駆細胞単位の数(N)が、Do(4.8±0.1Gy)が変化することなく、有意に(P<0.001)増加することがわかった(図1A)。Dq値は、AA-ORS処理による1.7Gyの放射線耐用性の増加と同等に向上され、腺窩生存率の向上を示した。腺窩生存の研究は、腺窩あたりの前駆細胞単位又は幹細胞が増加することを示唆した。それゆえ、腸管幹細胞マーカーに特異的な抗体と、EdUの取込みによる増殖の二次的作用として娘細胞の絨毛への遊走を利用して14-16、幹細胞数に対する照射とAA-ORSの影響を調べた。
【0219】
<実施例2:AA-ORSが腸上皮細胞の遊走を促進する>
AA-ORS処理した放射線照射マウスの回腸切片は腺窩数の増加を示した。絨毛上皮細胞が継続的な再生すると、腺窩-絨毛軸に沿った細胞の連続的な遊走がある23。細胞が絨毛に沿って移動すると、上皮細胞はさらなる成熟と分化を経て、絨毛の先端に遊走し、そこでアノイキスにより脱落する。細胞増殖は、EdUの取込みを用いて研究された。
【0220】
細胞は、約72時間後に、腺窩基部から絨毛先端へ移動することがわかった。放射線が照射されていないマウスの回腸切片は、平均76.5時間であったが、細胞(EdUが取り込まれた細胞)が絨毛先端に到達した時間は異なった(75±0.9時間;n=10)。6日間のAA-ORS処理したものは、移動した細胞によって含まれる長さが、0マウスと5Gy照射マウスとでは、長さに有意な差異は認められなかった(153.5±6mm対158.1±7mm;n=10マウス)。しかしながら、6日間のAA-ORS処理したものは、5Gy照射マウスでは、有意な差異があった(158.1±7mm対183.1±4mm;P<0.01、n=10マウス)(図2A及び図2B)。これらの研究は、AA-ORSが細胞の増殖を増加し、含まれる長さに関与していることを示している。
【0221】
<実施例3-AA-ORSによりナトリウム及び塩化物の吸収が増加した>
AA-ORSは、腺窩細胞reg10n中の絨毛の高さ及び増殖を増加させた。絨毛上皮細胞の機能的成熟と分化が、絨毛の高さの増加によるものかどうかを決定するために、同位体フラックス研究を行なって、ナトリウム及び塩化物吸収を決定することにした。
【0222】
放射線が照射されていない非照射マウスは、ナトリウムのネット吸収量(JNetNa)が1.9±0.6ueq.cm.h-であり、塩化物のネット吸収量(JNetCl)が1.9±0.4ueq.cm.h-であった(図3A乃至図3B)。5Gyが照射されたマウスの回腸は、JNetNa(1.9±0.6ueq.cm.h-対0.1±0.0ueq.cm.h-;p<0.001、n=8)及びJNetCl(1.9+0.4ueq.cm.h-対-0.9±0.4ueq.cm.h-)であり、減少した。AA-ORS処理したものは、ナトリウムのネット吸収量について、0Gyマウスの回腸(3.9±0.7ueq.cm.h-;p<0.05、n=8)と、5Gyマウスの回腸(3.4±0.7ueq.cm.h-;p<0.001、n=8)との間で有意な増加があった(図3A)。同様に、AA-ORS処理したものは、塩化物のネット吸収量について、0Gyマウスの回腸(4.1±0.6ueq.cm.h-;p<0.05、n=8)と、5Gyマウスの回腸(3.6±0.6ueq.cm.h-;p<0.001、n=8)との間で有意な増加があった(図3B)。
【0223】
これらの研究は、電解質吸収能力及びナトリウム結合グルコース吸収が増加することを示すことにより、AA-ORSの誘発による絨毛高さの増加は、絨毛上皮細胞の成熟及び分化に基づく機能であることを示唆する。
【0224】
NHE3蛋白質の免疫組織化学では、絨毛上皮細胞の刷子縁領域に沿ってNHE3抗体が認識された(図3C)。5Gy照射された動物の絨毛細胞は、刷子縁膜に沿う発現は殆ど無いか、又は全く観察されなかった。AA-ORS処理したものは、0Gyマウス及び5Gy照射マウスの上皮細胞は両方とも、境界領域に沿うNHE蛋白質発現が増加した(図3C)。ウエスタンブロット分析では、0Gy(3.5倍)マウス及び5Gy(15.5倍)照射されたAA-ORS処理マウスは、食塩水処理された照射マウスと比較して、腸組織におけるNHE3蛋白質発現の増加を示した(図3D図3E)。これらの研究は、絨毛上皮細胞の刷子縁膜においてNHE3蛋白質が増加することを示唆している。NHE3蛋白質の増加がNHE3のmRNAの増加に起因するかどうかを決定するために、腸組織中におけるそのレベルを、qPCRを用いて決定した(図3F)。NHE3蛋白質レベルとは異なり、NHE3のmRNAレベルは、食塩水処理された5Gy照射マウスと比較した場合、5Gyで有意に異なるだけであった。蛋白質レベルは、NHE3のmRNAレベルの変化とあまり相関しておらず、同様の観察結果が以前に報告されている。
【0225】
<実施例4:AA-ORSによるグルコース刺激ナトリウム吸収の増加>
グルコースは、絨毛の中にあって成熟及び分化した上皮細胞の頂端膜に位置する特異的輸送体を介してナトリウム吸収を刺激する。グルコース吸収の向上がAA-ORSによって誘発された絨毛の高さの増加によるものかどうかを決定するために、22Naフラックス研究を用いてグルコース刺激ナトリウム吸収を評価した。
【0226】
5Gy照射マウスの回腸組織はグルコース刺激ナトリウム吸収において有意な減少を示した(4.8±0.5ueq.cm.h-対0.3±0.1ueq.cm.h-;p<0.001、n=6)。AA-ORS処理された5Gy照射マウスの回腸組織は、グルコース刺激ナトリウム吸収の有意な増加を示した(0.3±0.1ueq.cm.h-対3.1±0.3ueq.cm.h-;p<0.001、n=6)。一方、0Gy照射マウスは、この増加を示さなかった(4.8±0.5ueq.cm.h-対5.9±0.7ueq.cm.h-;p=ns、n=6)(図4A)。AA-ORS処理したマウスは、食塩水処理マウスと比較して、0Gy及び5Gy照射マウスにおける転写及び翻訳レベルでのSGLT1発現が増加した(図4B図4D)。これらの研究は、消化間期(NHE3媒介Na吸収)及び消化期(グルコース刺激Na吸収)の間に電解質吸収能力が増加することを示すことにより、AA-ORSの誘発による絨毛高さの増加は、絨毛上皮細胞の成熟及び分化に基づく機能であることを示唆する。
【0227】
単離した絨毛細胞におけるベータ-ガラクトシダーゼ(ラクトース蛋白質)レベルを、ウエスタンブロット分析を用いて測定した。主に、ベータ-ガラクトシダーゼ発現は成熟し分化した絨毛上皮細胞で起こる。AA-ORS処理により、0Gy及び5Gy照射マウスの絨毛細胞におけるベータ-ガラクトシダーゼ蛋白質レベルが上昇した(図4B)。
【0228】
<実施例5-腸幹細胞及び増殖マーカーに対するAA-ORSの効果>
腸幹細胞(ISC)を表すために、少なくとも3種類の異なる腺窩細胞型が設定される14。集団の各メンバーは、増殖動力学び放射線に対する感受性が明確に区別されているので、各メンバーが固有の機能を果たすと考えられている28。それらは、サイトカイン、ホルモン、又は成長因子によって引き起こされる抑制シグナル及び刺激シグナルに反応して、ある型から別の型へ動的に切り替わると考えられている28。これに対し、「+4腺窩位置」にある細胞分裂が遅い腸管上皮幹細胞(IESC)[ラベル保持細胞(LRC)]は、特に損傷からの回復時に、恒常的な再生能力に寄与する30。これらのLRCは、Bmil、HopX、Lrigl、及び/又はDclk1などの様々なマーカーを発現し、損傷に反応して、迅速に細胞分裂するIESCに変化することができる31。Bmi1とHopXは+4細胞を優先的にマークすると報告されているが、Lgr5は両方の細胞をマークすることができる。放射線損傷後の腸再生には、15Lgr5ISCが必要である35。Lgr5及びBMIlは、損傷又は放射線誘発損傷後の再生反応を開始する予備細胞であると考えられている。研究では、BMI1を発現する幹細胞プールの活性化によりLgr5細胞の消失が許容されることを示している14,32
【0229】
AA-ORSで観察された絨毛高さの増加が、幹細胞数及び増殖の増加によるものであるかどうかを決定するために、幹細胞及び増殖のマーカーに対するAA-ORSの効果を調べた。
【0230】
照射により、Lgr5蛋白質レベルが有意に減少した(図5A)。AA-ORSで処理したものは、食塩水処理された対照グループと比較べて、0Gy及び5Gy照射マウスにおいてLgr5蛋白質レベルが上昇した。しかしながら、5Gy照射マウスの腸組織は、0Gyマウスと比べて、BMI1蛋白質レベルに有意な変化を示さなかった。同様に、AA-ORSは、0Gyマウス及び5Gy照射マウスにおいてBMI1蛋白質レベルに変化を起こさなかった(図5A)。BMI1レベルではなく、Lgr5転写レベルでは、AA-ORS処理された0Gyマウス及び5Gyマウスにおいて有意に上昇した(図5C図5D)。
【0231】
5Gyは、0Gyと比べて、Bmilレベルを大きく変化させることなく、Lgr5転写及び蛋白質レベルに有意な減少をもたらすことがわかった。AA-ORS処理により、Lgr5のmRNA及び蛋白質レベルが、Bmilを大きく変化させることなく有意に向上したことは、Lgr5陽性幹細胞の増加を示唆している。これらの結果はまた、AA-ORS処理された照射マウスの腸切片は、遊走細胞によって含まれる長さが、食塩水処理マウスよりも有意に大きいことを示している。アポトーシスを受けている細胞では転写が停止するので、細胞生存率の増加は、長寿命の転写物よりもLgr5などの短寿命の転写物の方を優先的に増加させると考えられる。腸組織中のBMI1蛋白質レベルは、放射線又はAA-ORSに反応する変化は起こらなかった。これは、ISCの予備集団が、研究した放射線量では影響を受けていないことを示唆している。また、AA-ORSによるLgr5蛋白質レベルの上昇は、腺窩数研究において、1ヒット多標的モデルとして適合させた場合に、放射線量増加後のAA-ORS処理がISC番号の増加に繋がるということが観察されたことを裏付ける。
【0232】
全細胞画分を用いてERK1/2及びpERK1/2のウエスタンブロット分析を行ない、増殖に対する放射線及びAA-ORSの影響を評価した。ERK及びAKTの転写レベルを決定するために、0Gy組織及び5Gy照射組織から単離した上皮細胞において、両方とも、処理有りと処理無しについて、qPCR研究を行なった。ERK1/2及びAKTは活性化されるとリン酸化される。ウエスタンブロット分析では、p-ERK蛋白質レベルが、0Gyと5Gyとで有意差のあることを示した(図5A)。全ERK蛋白質レベルについては、AA-ORS処理マウスと食塩水処理マウスは、0Gy又は5Gyで有意差はなかった。同様に、ERKでは、AA-ORS処理された0マウスと5Gyマウスとでは、AKTレベルに有意差を示さなかったが、対応する食塩水処理した照射グループと比べると、p-AKT蛋白質レベルが上昇した。5Gyマウス由来の腸組織は、0Gyマウスと比べると、p-AKTに有意な減少を示した。
【0233】
これらの研究は、AA-ORS処理による蛋白質のリン酸化レベルが、全蛋白質の発現を変化させることなく、上昇することを示唆している。MAPKの効果は活性化転写因子4(Atf4)の下流のエフェクターに依存するので、Atf4の蛋白質レベルは、ウエスタンブロット分析を用いて測定した。5Gy照射はAtf4の蛋白質レベルを低下させたが、AA-ORS処理は、0Gyマウス及び5Gy照射マウスにおいて、Atf4の蛋白質レベルを上昇させた。qPCRを用いてERK及びAKT転写物レベルを調べると、5Gyの照射が、0Gyと比べて、mRNAレベルに有意な減少をもたらすことを示した。AA-ORS処理は、食塩水処理されたマウスと比べて、0Gy及び5Gyにて、有意な増加を示した(図5E図5F)。腸管内での正常細胞増殖の初期変化が、正常な胃腸機能からの逸脱の指標として提供される。増殖する細胞核抗原(PCNA)である36kD蛋白質の発現における変化が、消化管における変化のマーカーの1つとして認識される。AA-ORSは、0Gyマウス及び5Gy照射マウスにおいてPCNA蛋白質レベルを上昇させた(図5A)。
【0234】
また、Erk1/2の下流標的であるB細胞リンパ腫-2蛋白質(Bc1-2)に対するAA-ORSの効果について調べた。Bcl-2は、内在性カスパーゼカスケードにおけるプロアポトーシスBcl-2関連X蛋白質(Bax)の発現レベルを調節することにより、細胞増殖を促進するよりもむしろ細胞死を防止する。0Gyマウスでは、Bc1-2レベルがAA-ORS処理により上昇した。照射によりBcl-2蛋白質レベルに有意な上昇をもたらした。AA-ORSを用いた処理は、5Gyが照射されたマウスではBc12蛋白質レベルのさらなる上昇を示さなかった(図5B)。照射によるBcl-2蛋白質レベルの上昇は、アポトーシスを予防するための防御メカニズムを示唆している可能性がある。しかしながら、Bax特異的抗体を用いたウエスタンブロット分析は、蛋白質レベルにおいて有意な差異を示さなかった(図5B)。この研究は、Bc1-2を標的とする介入がBax4の蛋白質レベルを必ずしも変化させるとは限らないという以前の観察と一致する。
【0235】
AA-ORSはp-ERKを増加させたこの研究は、アミノ酸が、レイトG1期がS期に進むまで、分裂促進刺激を維持する作用を有することを示唆している38
【0236】
この研究では、0Gyマウス及び5Gyマウスの絨毛上皮細胞において、放射線がカスパーゼ-3を増加させ、AA-ORS処理が切断カスパーゼ-3を減少させることを示した。AA-ORS処理マウスにおけるpAKTの増加は、その作用が増殖の活性化又はアポトーシスの阻害による可能性があることを示唆している(図5)。カスパーゼ-3に見られる効果と合わせて、これらの結果は、AA-ORS処理で観察される生存促進効果及び増殖の増加を説明することができる。しかしながら、AA-ORSがERK1/2及びAKT又はカスパーゼ-3を活性化するメカニズムを特徴付けるには、さらなる研究が不可欠である。
【0237】
<実施例6:AA-ORSによる切断カスパーゼ-3及びカスパーゼ-3の転写産物レベルの減少>
カスパーゼ-3の活性化により、19kD切断型カスパーゼ-3が生成される。切断カスパーゼ-3はアポトーシスと共に増加する。ウエスタンブロット分析では、照射後及び処理後の全カスパーゼ-3は、対照との比較において、有意な差異を示さなかった。5Gyマウス由来の腸組織は、0Gyマウス由来の組織と比べて、切断カスパーゼ-3の有意な増加を示した。しかしながら、対応する照射対照と比較した場合、AA-ORSでは、切断カスパーゼ-3が減少した(図5B)。qPCRを用いて測定されたカスパーゼ3のmRNAレベルは、5Gy照射後のカスパーゼ3転写産物レベルが、0Gyと比べて、有意な増加を示した。AA-ORSを用いた処理により、0Gyマウス及び5Gy照射マウス由来の腸組織におけるカスパーゼ3転写産物レベルに有意な減少をもたらした(図5G)。
【0238】
AA-ORSにより、非照射マウス及び照射マウのスの腸組織の絨毛高さが増加したことが、増殖だけでなく、アポトーシスの減少及び増加によるものであることは、Lgr5、p-ERK、及びp-AKTと共に、この切断カスパーゼ-3の変化によって示唆される。
【0239】
増殖の増加及び/又はアポトーシスの減少から生じる絨毛上皮細胞が成熟し、分化し、機能的に活性であるかどうかを評価するために、ナトリウム吸収能力とグルコース刺激ナトリウム吸収を測定した。小腸におけるナトリウム吸収の主要トランスポータであるNHE3と、ナトリウム結合ナトリウム吸収のためのトランスポータであるSGLT1は、両方とも、成熟及び分化した絨毛細胞においてのみ生じ、機能の増加(図3A図3F及び図4A図4D)、mRNa及び蛋白質レベルが上昇したことが示された。これらの研究は、放射線照射後のAA-ORSによる処理が、電解質及びグルコースの吸収を増加させることを示唆している(図5A図5G)。
【0240】
<実施例7:全p53のウエスタンブロット分析>
p53は腫瘍抑制蛋白質であり、その活性は腫瘍の形成を阻止する。p53腫瘍抑制遺伝子における突然変異は、ヒトの癌において最も頻繁に観察される遺伝的病変である。ヌル対立遺伝子についてホモ接合性のマウスは正常に見えるが、様々な腫瘍を自然発症させる傾向がある。p53は照射の反応において重要な役割を有することが示されている。照射に反応したp53蓄積のレベルは、主として、DNA損傷の強度から生じる。幹細胞の消失は、放射線に誘発される急性腸傷害及び致死性において重要な役割を有し、p53経路並びにその転写標的PUMA及びp21によって調節されることが実証された。PUMA依存性アポトーシスは、高線量照射後数時間でISC及びその前駆細胞を急速に減少させ、PUMAの欠乏が、p21依存性DNA修復を高めることによって動物の生存率及び腺窩の再生を向上させるので、放射線誘発性腸損傷に対して極めて重要である。
【0241】
ウエスタンブロット分析では、0Gyマウス及び5Gyマウスの腸組織におけるp53(腫瘍抑制蛋白質)レベルに有意な差異は見られなかった。AA-ORSによるp53蛋白質レベルの上昇は小さいが一貫していた(図5B)。
【0242】
これらの研究により、AA-ORSに関連する増殖作用は、腫瘍形成には関与しないことを示唆している。
【0243】
<実施例8:免疫組織化学>
Lgr5腸管幹細胞に対するポリクローナル抗体を用いたアビジン-ビオチン検出法は、放射線照射によりLgr5細胞の減少を示した(3.0±0.2対1.6±0.2;P<0.001、n=50腺窩)。AA-ORSを用いた処理の場合、0Gy照射マウスではLgr5に有意な差異を示さなかった。しかしながら、5Gy照射マウスでは、AA-ORS処理により、Lgr5細胞が増加した(1.6±0.2対3.4±0.3;P<0.001、n=50腺窩)(図6A図6B)。
【0244】
Ki-67は、増殖のための細胞マーカーである核蛋白質であり、そしてリボソームRNA転写と関連している。Ki-67はまた、細胞周期の全活性期(G、S、G及び有糸分裂)の間、細胞内に存在するが、休止細胞(G)には存在しない。回腸切片は、腺窩の下極以外の部分に沿ってKi67発現し、その発現は絨毛の下部1/3まで及ぶことを示した。放射線では、Ki-67の発現に有意な差異は無かったが、AA-ORSを用いた処理では、Ki-67発現細胞は有意に増加した(50.7±1.3対54.6±1.4;P<0.05、n=50腺窩)(図6C図6D)。
【0245】
回腸切片におけるPCNAの免疫染色では、腺窩の下極以外の部分に沿って発現を示した。照射により、腺窩及び絨毛の下部領域は両方とも、PCNA発現が有意に減少した(31.1±0.8対26.6±0.6; P<0.001、n =50腺窩)。AA-ORSを用いた処理では、5Gyマウス有意な増加(26.6±0.6対34.2±0.5; P<0.001、n=50腺窩)を示したが、0Gy照射マウスでは、増加は認められなかった(図6E図6F)。
【0246】
ウエスタンブロット分析は、5Gyで照射された小腸マウスの細胞ホモジネートは0Gyと比べて有意な増加を示した。AA-ORSで処理されたマウスは、0GyではKi67蛋白質レベルを上昇させたが、5Gyではさらなる上昇は無かった。これらの研究は、AA-ORSに誘導された上皮の増殖は、5Gyではなく0Gyで、Ki67が介在していることを示唆している。
【0247】
この研究は、消化管機能に対する有益な効果に基づいた特定栄養素の系統的選択が、腸管幹細胞の増殖、成熟及び分化を改善するのに有用であり、機能的に活性な長い絨毛上皮細胞の機能と高さが、照射によって、最初に損なわれることを示す(図7)。
【0248】
<実施例9:AA-ORSによるマウスの胃腸機能の改善>
電気生理学的手法を用いることにより、明らかな組織病理学的変化を生じさせるには低すぎる放射線量で、放射線に誘発されたCl分泌が起こり得ることが示された55。放射線誘発腸機能障害は、(1)Cl分泌が増加して体液分泌の増加に関与すること;(2)Naの吸収が減少して、体液吸収が減少すること;及び(3)傍細胞透過性の増細により、管腔内抗原物質の全身区画(systemic compartment)への転移を増加させて、局所的及び全身的免疫応答を生じさせること、によって特徴づけられた。管腔内物質の全身区画への浸透が増加すると、血漿内毒素及び炎症性サイトカイン(例えば、IL1β)が増加する51
【0249】
以前の研究の中で概要が説明されたように、アミノ酸系経口再水和溶液(AA-ORS)は以前に開発された51。具体的なアミノ酸の選択は、照射されたマウスの腸組織について、選択されたアミノ酸が、(1)Naとの結合によりNaの吸収を増加させたこと;(2)Cl分泌を刺激しなかったこと、すなわち体液分泌を刺激しなかったこと;(3)傍細胞透過性又は粘膜バリアの締付けを低下させたこと、という結果に基づいて行われる。AA-ORS処理を14日行うことで、電解質吸収が改善され、傍細胞透過性が低下し、血漿内毒素及び炎症誘発性サイトカインレベルが低下し、体重がより良好に維持され、また、別の致死量の全身照射(8.5GyTBI)51に曝露されたマウスにおける生存が向上した。その後の研究では、これらの改善がAA-ORS処理後7日という早さで起こることが示された。ただし、これら効果の正確なメカニズムは知られていない。
【0250】
要約すると、選択された一組のアミノ酸を含むAA-ORSが、Lgr5及びBMI1などの幹細胞マーカーを選択的に向上させることにより、並びに、腸管幹細胞及び前駆細胞におけるカスパーゼ-3媒介アポトーシスをブロックすることにより、マウスにおける腸管放射線緩和剤として同定される。それゆえ、この研究は、腸管幹細胞の増殖、成熟及び分化に対する単純アミノ酸の効果を意味し、機能的に活性な長い絨毛上皮細胞の機能と高さが、照射によって、最初に損なわれる。
【0251】
この明細書に記載された実施例及び実施形態は例示目的のみであり、当業者であれば、様々な変形又は変更を示唆されることができるが、これらは、本出願の精神及び範囲内に含まれる。また、この明細書に開示された全ての発明又は実施形態における全ての要素又は限定は、この明細書に記載された任意の及び/又は全ての他の要素若しくは限定、又は他の発明又は実施形態と(個々に又は任意に)組み合わせることができ、それらの組合せは全て、それらに限定されることなく、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0252】
<参考文献>
1. Adams, P. D. et al. Identification of a cyclin-cdk2 recognition motif present in substrates and p21-like cyclin-dependent kinase inhibitors. Mol Cell Biol 16, 6623-6633 (1996).
2. Barker, N., van Oudenaarden, A. & Clevers, H. Identifying the stem cell of the intestinal crypt: strategies and pitfalls. Cell Stem Cell 11, 452-460, doi:10.1016/j.stem.2012.09.009 (2012).
3. Bullwinkel J, Baron-Luhr B, Ludemann A, et al. Ki-67 protein is associated with ribosomal RNA transcription in quiescent and proliferating cells. J Cell Physiol 2006;206:624-35.
4. Cheng, H. & Leblond, C. P. Origin, differentiation and renewal of the four main epithelial cell types in the mouse small intestine. V. Unitarian Theory of the origin of the four epithelial cell types. Am J Anat 141, 537-561 (1974).
5. Citrin, D. et al. Radioprotectors and mitigators of radiation-induced normal tissue injury.
6. Crosnier, C., Stamataki, D. & Lewis, J. Organizing cell renewal in the intestine: stem cells, signals and combinatorial control. Nat Rev Genet 7, 349-359, doi:10.1038/nrg1840 (2006).
7. Cryns, V. & Yuan, J. Proteases to die for. Genes Dev 12, 1551-1570 (1998).8. Danial, N. N. & Korsmeyer, S. J. Cell death: critical control points. Cell 116, 205-219 (2004).
9. Datta, S. R., Brunet, A. & Greenberg, M. E. Cellular survival: a play in three Akts. Genes Dev 13, 2905-2927 (1999).
10. Davis, N. M. et al. Deregulation of the EGFR/PBK/PTEN/Akt/mTORC1 pathway in breast cancer: possibilities for therapeutic intervention. Oncotarget 5, 4603-4650, doi: 10.18632/oncotarget.2209 (2014).
【0253】
11. Donehower, L. A. et al. Mice deficient for p53 are developmentally normal but susceptible to spontaneous tumours. Nature 356, 215-221, doi:10.1038/356215a0 (1992).
12. Fei, P. & El-Deiry, W. S. P53 and radiation responses. Oncogene 22, 5774-5783, doi: 10.1038/sj.onc.1206677 (2003).
13. Fukuda, M., Gotoh, Y. & Nishida, E. Interaction of MAP kinase with MAP kinase: its possible role in the control of nucleocytoplasmic transport of MAP kinase. EMBOJ16, 1901-1908, doi:10.1093/emboj/16.8.1901 (1997).
14. Gopal, R. et al. The relationship between local dose and loss of function for irradiated lung. Int J Radiat Oneal Biol Phys 56, 106-113 (2003).
15. Greenberger, J. S. Radioprotection. In Vivo 23, 323-336 (2009).
16. Hahn, S. M. et al. Identification of nitroxide radioprotectors. Radiat Res 132, 87-93 (1992).
17. Hall, P. A. & Lane, D. P. Tumor suppressors: a developing role for p53? Curr Biol 7, R1 44-14 7 (1997).
18. Hauer-Jensen, M., Wang, J. & Denham, J. W. Bowel injury: current and evolving management strategies. Semin Radiat Oncol 13, 357-371 (2003). Health Phys 106, 734-744, doi:10.1097/HP.0000000000000117 (2014).
19. Houghton, J. et al. Gastric cancer originating from bone marrow-derived cells. Science 306, 1568-1571, doi:10.1 126/science.1099513 (2004).
20. Kahan, C., Seuwen, K., Meloche, S. & Pouyssegur, J. Coordinate, biphasic activation of p44 mitogen-activated protein kinase and S6 kinase by growth factors in hamster fibroblasts. Evidence for thrombin-induced signals different from phosphoinositide turnover and adenylylcyclase inhibition. J Biol Chem 267, 13369-13375 (1992).
21. Kandel, E. S. et al. Activation of Akt/protein kinase B overcomes a 0(2)/m cell cycle checkpoint induced by DNA damage. Mol Cell Biol 22, 7831-7841 (2002).
22. Karam, S. M. Lineage commitment and maturation of epithelial cells in the gut. Front Biosci 4, D286-298 (1999).
23. Komarova, E. A. et al. Dual effect of p53 on radiation sensitivity in vivo: p53 promotes hematopoietic injury, but protects from gastro-intestinal syndrome in mice. Oncogene 23, 3265-3271, doi: 10.1038/sj.onc.1207494 (2004).
24. Leibowitz, B. J. et al. Uncoupling p53 functions in radiation-induced intestinal damage via PUMA and p21. Mol Cancer Res 9, 616-625, doi:10.1158/1541-7786.MCR-11-0052 (2011).
【0254】
25. Li L, Clevers H. Coexistence of quiescent and active adult stem cells in mammals. Science 2010;327:542-5.
26. Li, X. M., Hu, Z., Jorgenson, M. L., Wingard, J. R. & Slayton, W. B. Bone marrow sinusoidal endothelial cells undergo nonapoptotic cell death and are replaced by proliferating sinusoidal cells in situ to maintain the vascular niche following lethal irradiation. Exp Hematol 36, 1143-1156, doi:10.1016/j.exphem.2008.06.009 (2008).
27. Lu, Z. & Xu, S. ERK1/2 MAP kinases in cell survival and apoptosis. IUBMB Life 58, 621-631, doi: 10.1080/15216540600957438 (2006).
28. Marks, L. B. Dosimetric predictors of radiation-induced lung injury. Int J Radiat Oneal Biol Phys 54, 313-316 (2002).
29. Meloche, S. Cell cycle reentry of mammalian fibroblasts is accompanied by the sustained activation of p44mapk and p42mapk isoforms in the G 1 phase and their inactivation at the Gl/S transition.JCell Physiol 163, 577-588, doi:10.1002/jcp.1041630319 (1995).
30. Metcalfe, C., Kljavin, N. M., Ybarra, R. & de Sauvage, F. J. Lgr5+ stem cells are indispensable for radiation-induced intestinal regeneration. Cell Stem Cell 14, 149-159, doi:10.1016/j.stem.2013.11.008 (2014).
31. Nair, C. K., Parida, D. K. & Nomura, T. Radioprotectors in radiotherapy. J Radiat Res 42, 21-37 (2001).
32. Niu, Y. et al. Intraesophageal MnSOD-plasmid liposome enhances engraftment and selfrenewal of bone marrow derived progenitors of esophageal squamous epithelium. Gene Ther 15, 347-356, doi: 10.1038/sj.gt.3303089 (2008). Oncologist 15, 360-371, doi: 10.1634/theoncologist.2009-S 104(2010).
33. Pageot, L. P. et al. Human cell models to study small intestinal functions: recapitulation of the crypt-villus axis. Microsc Res Tech 49, 394-406, doi:10.1002/(SICI)1097-0029(20000515)49:4<394: :AID-JEMT8> 3.0.00;2-K (2000).
34. Potten, C. S. A comprehensive study of the radiobiological response of the murine (BDF1) small intestine. Int J Radiat Biol 58, 925-973, doi:7AQN1HHQNKSERATM [pii] (1990).
35. Potten, C. S. Radiation, the ideal cytotoxic agent for studying the cell biology of tissues such as the small intestine. Radiat Res 161, 123-136 (2004).
36. Potten, C. S., Booth, C. & Pritchard, D. M. The intestinal epithelial stem cell: the mucosal governor. Int J Exp Pathol 78, 219-243 (1997).
【0255】
37. Pritchard, D. M., Potten, C. S., Korsmeyer, S. J., Roberts, S. & Hickman, J. A. amageinduced apoptosis in intestinal epithelia from bc1-2-null and bax-null mice: investigations of the mechanistic determinants of epithelial apoptosis in vivo. Oncogene 18, 7287-7293, doi: 10.1038/sj.onc.1203150 (1999).
38. Qiu, W. et al. PUMA regulates intestinal progenitor cell radiosensitivity and gastrointestinal syndrome. Cell Stem Cell 2, 576-583, doi:10.1016/j.stem.2008.03.009 (2008).
39. Ramaswamy, S. et al. Regulation of G 1 progression by the PTEN tumor suppressor protein is linked to inhibition of the phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway. Proc Natl Acad Sci USA 96, 2110-2115 (1999).
40. Reszka, A. A., Seger, R., Diltz, C. D., Krebs, E. G. & Fischer, E. H. Association of mitogen-activated protein kinase with the microtubule cytoskeleton. Proc Natl Acad Sci US A 92, 8881-8885 (1995).
41. Rubin, P. & Casarett, G. W. Clinical radiation pathology as applied to curative radiotherapy. Cancer 22, 767-778 (1968).
42. Sarbassov, D. D., Guertin, D. A., Ali, S. M. & Sabatini, D. M. Phosphorylation and regulation of Akt/PKB by the rictor-mTOR complex. Science 307, 1098-1101, doi:10.1126/science.1106148 (2005). Science 327, 542-545, doi:10.1126/science.1180794 (2010).
【0256】
43. Shivdasani, R. A. Radiation redux: reserve intestinal stem cells miss the call to duty. Cell Stem Cell 14, 135-136, doi:10.1016/j.stem.2014.01.015 (2014).
44. Stephens, L. et al. Protein kinase B kinases that mediate phosphatidylinositol 3,4,5-trisphosphate-dependent activation of protein kinase B. Science 279, 710-714 (1998).
45. Takeda, N. et al. Interconversion between intestinal stem cell populations m distinct niches. Science 334, 1420-1424, doi:10.1126/science.1213214 (2011).46. Thornberry, N. A. & Lazebnik, Y. Caspases: enemies within. Science 281, 1312-1316 (1998).
47. Tucker, S. L., Withers, H. R., Mason, K. A. & Thames, H. D., Jr. A dose-surviving fraction curve for mouse colonic mucosa. Eur J Cancer Clin Oncol 19, 433-437 (1983).
48. Vidyasagar, S., Barmeyer, C., Geibel, J., Binder, H. J. & Rajendran, V. M. Role of shortchain fatty acids in colonic HCO3- secretion. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 288, G 1217-1226 (2005).
49. Yamamoto, T. et al. Continuous ERK activation downregulates antiproliferative genes throughout G 1 phase to allow cell-cycle progression. Curr Biol 16, 1171-1182, doi: 10.1016/j.cub.2006.04.044 (2006).
50. Yan, K. S. et al. The intestinal stem cell markers Bmi 1 and Lgr5 identify two functionally distinct populations. Proc Natl Acad Sci U S A 109, 466-471, doi: 10.1073/pnas.1118857109(2012).
51. Yin L, Vijaygopal P, Menon R, et al. An amino acid mixture mitigates radiation-induced gastrointestinal toxicity. Health Phys 2014; 106:734-44.
52. Yin, L. et al. Glucose stimulates calcium-activated chloride secretion in small intestinal cells. Am J Physiol Cell Physiol 306, C687-696, doi:10.1152/ajpce11.00174.2013 (2014).
53. Yu, J. Intestinal stem cell injury and protection during cancer therapy. Transl Cancer Res 2, 384-396 (2013).
54. Zhang, H., Ameen, N., Melvin, J. E. & Vidyasagar, S. Acute inflammation alters bicarbonate transport m mouse ileum. J Physiol 581, 1221-1233, doi:10.1113/jphysio1.2007.129262(2007).
55. Zhang, K. et al. Radiation decreases murine small intestinal HCO3- secretion. Int J Radiat Biol 87, 878-888, doi: 10.3109/09553002.2011.583314 (2011).
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21