(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】通電検査装置、半導体装置の製造方法および通電方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241126BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241126BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241126BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L21/66 H
H01L21/66 V
H01L29/78 652T
H01L29/78 658L
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
(21)【出願番号】P 2023508830
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007632
(87)【国際公開番号】W WO2022202076
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2021050041
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 雅一
(72)【発明者】
【氏名】小西 くみこ
(72)【発明者】
【氏名】三木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友紀
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150181(JP,A)
【文献】特開2019-216202(JP,A)
【文献】特開2018-205252(JP,A)
【文献】特開2017-212317(JP,A)
【文献】特開2020-187102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却板と、
前記冷却板上に設けられた絶縁板と、
前記絶縁板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極と、
を備え、
前記絶縁板は、可変熱抵抗機構を有し、
前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、半導体装置を設置可能である、通電検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通電検査装置において、
前記第1電極上に設けられ、且つ、その内部の圧力をその外部の圧力と異なる圧力に変更できる圧力容器を更に備え、
前記第2電極および前記第3電極は、前記圧力容器に取り付けられ、
前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に前記半導体装置が設置される場合、前記半導体装置は、前記圧力容器の内部に収容される、通電検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通電検査装置において、
前記圧力容器は、絶縁体からなる、通電検査装置。
【請求項4】
冷却板と、
前記冷却板上に設けられ、且つ、可変熱抵抗機構を有する絶縁板と、
前記絶縁板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極と、
を備えた通電検査装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
(a)ドレイン電極、ソース電極およびゲートパッド電極を含む半導体装置を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、前記半導体装置を設置し、前記第1電極を前記ドレイン電極に電気的に接続させ、前記第2電極を前記ソース電極に電気的に接続させ、前記第3電極を前記ゲートパッド電極に電気的に接続させる工程、
(c)前記(b)工程後、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流を通電した際に、前記半導体装置の最大定格接合温度になるように、前記可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する工程、
(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(e)前記(c)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、
(f)前記(d)工程および前記(e)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(g)前記(f)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
(i)前記(h)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、
(j)前記(i)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
を備え、
前記(a)工程は、
(a1)表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(a2)前記半導体基板の前記表面上に、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層を形成する工程、
(a3)前記半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域を形成する工程、
(a4)前記ボディ領域内に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(a5)前記ボディ領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(a6)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、
(a7)前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に、前記ソース電極を形成し、前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に、前記ゲートパッド電極を形成する工程、
(a8)前記半導体基板の前記裏面上に、前記ドレイン電極を形成する工程、
を含み、
前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記半導体装置の最大定格接合温度において、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流が通電される、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程および前記(i)工程では、前記第1リーク電流および前記第2リーク電流は、前記半導体装置の最大定格電圧によって測定される、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記通電検査装置は、前記第1電極上に設けられ、且つ、その内部の圧力をその外部の圧力と異なる圧力に変更できる圧力容器を更に備え、
前記第2電極および前記第3電極は、前記圧力容器に取り付けられ、
前記(b)工程では、前記半導体装置は、前記圧力容器の内部に収容され、
前記(e)工程および前記(i)工程では、前記圧力容器の内部の圧力が、前記圧力容器の外部の圧力よりも高くなっている、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記圧力容器は、絶縁体からなる、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
冷却板と、
前記冷却板上に設けられ、且つ、可変熱抵抗機構を有する絶縁板と、
前記絶縁板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極と、
を備えた通電検査装置を用いた通電方法であって、
(a)ドレイン電極、ソース電極およびゲートパッド電極を含む半導体装置を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、前記半導体装置を設置し、前記第1電極を前記ドレイン電極に電気的に接続させ、前記第2電極を前記ソース電極に電気的に接続させ、前記第3電極を前記ゲートパッド電極に電気的に接続させる工程、
(c)前記(b)工程後、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流を通電した際に、前記半導体装置の最大定格接合温度になるように、前記可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する工程、
(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(e)前記(c)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、
(f)前記(d)工程および前記(e)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(g)前記(f)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
(i)前記(h)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、
(j)前記(i)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
を備え、
前記半導体装置は、
表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記表面上に形成され、且つ、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層と、
前記半導体層内に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域内に形成された前記第1導電型のソース領域と、
前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に形成された前記ソース電極と、
前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に形成された前記ゲートパッド電極と、
前記半導体基板の前記裏面上に形成された前記ドレイン電極と、
を含み、
前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている、通電方法。
【請求項10】
請求項9に記載の通電方法において、
前記(f)工程では、前記半導体装置の最大定格接合温度において、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流が通電される、通電方法。
【請求項11】
請求項10に記載の通電方法において、
前記(e)工程および前記(i)工程では、前記第1リーク電流および前記第2リーク電流は、前記半導体装置の最大定格電圧によって測定される、通電方法。
【請求項12】
請求項11に記載の通電方法において、
前記通電検査装置は、前記第1電極上に設けられ、且つ、その内部の圧力をその外部の圧力と異なる圧力に変更できる圧力容器を更に備え、
前記第2電極および前記第3電極は、前記圧力容器に取り付けられ、
前記(b)工程では、前記半導体装置は、前記圧力容器の内部に収容され、
前記(e)工程および前記(i)工程では、前記圧力容器の内部の圧力が、前記圧力容器の外部の圧力よりも高くなっている、通電方法。
【請求項13】
請求項12に記載の通電方法において、
前記圧力容器は、絶縁体からなる、通電方法。
【請求項14】
(a)ドレイン電極、ソース電極、ゲートパッド電極および内蔵ダイオードを含む半導体装置を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(c)前記(b)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が第1規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
(f)前記(e)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際のリーク電流を測定する工程、
(g)前記(f)工程後、前記リーク電流が第2規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
を備え
、
前記第1規定値および前記第2規定値は、複数の実験用の前記半導体装置に対して、事前に行われた実験の結果に基づいて設定され、
前記実験は、それぞれ、
(x1)前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(x2)前記(x1)工程後、第1飽和時間で、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(x3)前記(x2)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(x4)前記(x3)工程後、前記第2オン電圧と実験時の前記第1オン電圧との変化値を算出する工程、
を有し、
前記第1規定値は、前記実験において、前記第1飽和時間中に、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値が飽和した際の値であり、
前記(c)工程は、第1飽和時間で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記実験は、それぞれ、
(y1)前記第1飽和時間で、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(y2)前記(y1)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際のリーク電流を測定する工程、
を更に有し、
前記第2規定値は、前記(y2)工程で測定された前記リーク電流を参照して設定される、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程の前記リーク電流と、前記(y2)工程の前記リーク電流とは、前記半導体装置の最大定格電圧によって測定される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a1)表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(a2)前記半導体基板の前記表面上に、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層を形成する工程、
(a3)前記半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域を形成する工程、
(a4)前記ボディ領域内に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(a5)前記ボディ領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(a6)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、
(a7)前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に、前記ソース電極を形成し、前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に、前記ゲートパッド電極を形成する工程、
(a8)前記半導体基板の前記裏面上に、前記ドレイン電極を形成する工程、
を含み、
前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)ドレイン電極、ソース電極、ゲートパッド電極および内蔵ダイオードを含む半導体装置を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(c)前記(a)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、
(d)前記(b)工程および前記(c)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(e)前記(d)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(f)前記(e)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が第1規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
(g)前記(f)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が第3規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、
を備え
、
前記第1規定値および前記第3規定値は、複数の実験用の前記半導体装置に対して、事前に行われた実験の結果に基づいて設定され、
前記実験は、それぞれ、
(x1)前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、
(x2)前記(x1)工程後、第1飽和時間で、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(x3)前記(x2)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、
(x4)前記(x3)工程後、前記第2オン電圧と実験時の前記第1オン電圧との変化値を算出する工程、
を有し、
前記第1規定値は、前記実験において、前記第1飽和時間中に、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値が飽和した際の値であり、
前記(d)工程は、第1飽和時間で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項
18に記載の半導体装置の製造方法において、
前記実験は、それぞれ、
(z1)前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、
(z2)前記(z1)工程後、前記第1飽和時間で、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、
(z3)前記(z2)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、
(z4)前記(z3)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出する工程、
を更に有し、
前記第3規定値は、前記(z4)工程で算出された前記変化値を参照して設定される、半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項
19に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程の前記第1リーク電流と、前記(g)工程の前記第2リーク電流と、前記(z1)工程の前記第1リーク電流と、前記(z3)工程の前記第2リーク電流とは、前記半導体装置の最大定格電圧によって測定される、半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項
18に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a1)表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(a2)前記半導体基板の前記表面上に、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層を形成する工程、
(a3)前記半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域を形成する工程、
(a4)前記ボディ領域内に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(a5)前記ボディ領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(a6)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、
(a7)前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に、前記ソース電極を形成し、前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に、前記ゲートパッド電極を形成する工程、
(a8)前記半導体基板の前記裏面上に、前記ドレイン電極を形成する工程、
を含み、
前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項22】
請求項
21に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程~前記(h)工程は、通電検査装置を用いて行われ、
前記通電検査装置は、
冷却板と、
前記冷却板上に設けられ、且つ、可変熱抵抗機構を有する絶縁板と、
前記絶縁板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極と、
を備え、
前記(a)工程の後であって、且つ、前記(b)工程および前記(c)工程の前に、
(i)前記(a)工程後、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、前記半導体装置を設置し、前記第1電極を前記ドレイン電極に電気的に接続させ、前記第2電極を前記ソース電極に電気的に接続させ、前記第3電極を前記ゲートパッド電極に電気的に接続させる工程、
(j)前記(i)工程後、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流を通電した際に、前記半導体装置の最大定格接合温度になるように、前記可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項
22に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記半導体装置の最大定格接合温度において、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流が通電される、半導体装置の製造方法。
【請求項24】
請求項
23に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程の前記第1リーク電流と、前記(g)工程の前記第2リーク電流とは、前記半導体装置の最大定格電圧によって測定される、半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項
24に記載の半導体装置の製造方法において、
前記通電検査装置は、前記第1電極上に設けられ、且つ、その内部の圧力をその外部の圧力と異なる圧力に変更できる圧力容器を更に備え、
前記第2電極および前記第3電極は、前記圧力容器に取り付けられ、
前記(i)工程では、前記半導体装置は、前記圧力容器の内部に収容され、
前記(c)工程および前記(g)工程では、前記圧力容器の内部の圧力が、前記圧力容器の外部の圧力よりも高くなっている、半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項
25に記載の半導体装置の製造方法において、
前記圧力容器は、絶縁体からなる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電検査装置、半導体装置の製造方法および通電方法に関し、特に、炭化珪素基板を用いた半導体装置を選別するための通電検査装置、その通電検査装置を用いた半導体装置の製造方法、および、その通電検査装置を用いた通電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスの一つである電界効果トランジスタ(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)において、従来は、珪素(Si)基板を用いたパワーMISFET(SiパワーMISFET)が主流であった。しかし、炭化珪素(SiC)における絶縁破壊に対する電界強度は、Siにおける電界強度と比較して、約1桁大きい。
【0003】
このため、SiC基板を用いたパワーMISFET(SiCパワーMISFET)では、SiパワーMISFETと比較して、耐圧を保持するためのドリフト層の厚さを約1/10に薄くし、上記ドリフト層の不純物濃度を100倍程度高くすることができる。その結果、SiCパワーMISFETにおいて、理論上、素子抵抗を3桁以上低くすることができる。また、SiCはSiに対してバンドギャップが約3倍大きいので、SiCパワーMISFETは、同耐圧におけるオン抵抗を低くでき、高温環境下における動作も可能である。このため、SiCパワーMISFETは、SiパワーMISFETを超える性能が期待されている。
【0004】
そして、SiCパワーMISFETでは、SiC基板の裏面側にドレイン電極を設け、SiC基板の表面側にソース電極およびゲート電極を設けた、縦型プレーナ構造が適用される場合がある。このような縦型MISFETは、ソース電極とドレイン電極との間に、p型のボディ領域およびn型のSiCエピタキシャル層によって構成される寄生pnダイオードを内蔵ダイオードとして含む。この内蔵ダイオードは、インバータに用いられる還流ダイオードとして利用できる。
【0005】
しかしながら、n型のSiC基板には、欠陥が含まれる場合がある。その場合、内蔵ダイオードに電流が流れると、n型のSiC基板の内部、または、n型のSiC基板上に形成されているn型のSiCエピタキシャル層の内部において、電子および正孔の再結合が発生する。この際に発生する再結合エネルギーによって、SiC基板に存在する結晶欠陥の一種である基底面転移が移動し、2つの基底面転移に挟まれる積層欠陥が成長する。
【0006】
積層欠陥は電流を流し難いので、積層欠陥が成長すると、SiCパワーMISFETのオン抵抗および内蔵ダイオードの順方向電圧が上昇する。積層欠陥は累積的に成長するので、このような動作が継続されると、インバータ回路に発生する損失が経時的に増加し、発熱量も大きくなり、半導体装置(半導体チップ)の故障原因となる。
【0007】
それ故、SiCパワーMISFETを有する半導体装置のスクリーニングを行い、積層欠陥が無いまたはほぼ無い半導体装置を選別するための検査方法が用いられている。
【0008】
例えば、特許文献1では、まず、内蔵ダイオードに順方向電流を通電し、SiCパワーMISFETの接合温度を設定する。その後、オン電圧Von0を測定し、内蔵ダイオードに順方向電流を通電し、再びオン電圧Von1を測定し、オン電圧Von0とオン電圧Von1との変化値を算出することで、半導体装置が不適格品であるか否かを選別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のような選別方法を行う通電検査装置では、通常、SiCパワーMISFETのドレイン電極側に、ドレイン電圧を印加するための測定用電極と、半導体装置を冷却するための冷却板とが設けられている。また、測定用電極および冷却板を電気的に絶縁させるために、測定用電極と冷却板との間には、絶縁板が設けられている。
【0011】
通常の通電検査装置では、上記絶縁板を含む構造の熱抵抗値が固定されている。それ故、内蔵ダイオードに順方向電流を通電し、最大定格接合温度に達すると、順方向電流を更に上げることができなくなる。そうすると、積層欠陥を成長させるために、通電時間を長くする必要があるので、半導体装置のスクリーニングに係る時間が増加するという問題がある。更に、最大定格または半導体基板の厚さなどの製品の仕様が変わると、欠陥の成長速度も変わり、スクリーニング条件も変わるので、半導体装置の選別の精度が一定に保てない。
【0012】
本願の主な目的は、半導体装置のスクリーニングに係る時間を減少でき、製品の仕様に関わらず半導体装置の選別の精度を一定化できる方法を提供することにある。また、それらを実現できる通電検査装置を提供する。また、本願の他の目的は、半導体装置100の精密なスクリーニングを行うことで、信頼性の高い半導体装置100を提供することにある。
【0013】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施の形態おける通電検査装置は、冷却板と、前記冷却板上に設けられた絶縁板と、前記絶縁板上に設けられた第1電極と、前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極とを備える。ここで、前記絶縁板は、可変熱抵抗機構を有し、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、半導体装置を設置可能である。
【0015】
一実施の形態おける半導体装置の製造方法は、冷却板と、前記冷却板上に設けられ、且つ、可変熱抵抗機構を有する絶縁板と、前記絶縁板上に設けられた第1電極と、前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極とを備えた通電検査装置を用いる。また、半導体装置の製造方法は、(a)ドレイン電極、ソース電極およびゲートパッド電極を含む半導体装置を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、前記半導体装置を設置し、前記第1電極を前記ドレイン電極に電気的に接続させ、前記第2電極を前記ソース電極に電気的に接続させ、前記第3電極を前記ゲートパッド電極に電気的に接続させる工程、(c)前記(b)工程後、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流を通電した際に、前記半導体装置の最大定格接合温度になるように、前記可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する工程、(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、(e)前記(c)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、(f)前記(d)工程および前記(e)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、(g)前記(f)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、(h)前記(g)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が規定率よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、(i)前記(h)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、(j)前記(i)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、を備える。ここで、前記(a)工程は、(a1)表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板を用意する工程、(a2)前記半導体基板の前記表面上に、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層を形成する工程、(a3)前記半導体層内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域を形成する工程、(a4)前記ボディ領域内に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、(a5)前記ボディ領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、(a6)前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を形成する工程、(a7)前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に、前記ソース電極を形成し、前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に、前記ゲートパッド電極を形成する工程、(a8)前記半導体基板の前記裏面上に、前記ドレイン電極を形成する工程、を含む。また、前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている。
【0016】
一実施の形態おける通電方法は、冷却板と、前記冷却板上に設けられ、且つ、可変熱抵抗機構を有する絶縁板と、前記絶縁板上に設けられた第1電極と、前記第1電極の上方に設けられ、且つ、前記第1電極から離れて位置する第2電極および第3電極とを備えた通電検査装置を用いる。また、通電方法は、(a)ドレイン電極、ソース電極およびゲートパッド電極を含む半導体装置を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記第1電極と前記第2電極との間、および、前記第1電極と前記第3電極との間に、前記半導体装置を設置し、前記第1電極を前記ドレイン電極に電気的に接続させ、前記第2電極を前記ソース電極に電気的に接続させ、前記第3電極を前記ゲートパッド電極に電気的に接続させる工程、(c)前記(b)工程後、前記半導体装置の内蔵ダイオードに前記半導体装置の最大定格順方向電流を通電した際に、前記半導体装置の最大定格接合温度になるように、前記可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する工程、(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、(e)前記(c)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、(f)前記(d)工程および前記(e)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、(g)前記(f)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、(h)前記(g)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が規定率よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、(i)前記(h)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、(j)前記(i)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、を備える。ここで、前記半導体装置は、表面および前記表面と反対側の裏面を有し、且つ、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の前記表面上に形成され、且つ、炭化珪素からなる前記第1導電型の半導体層と、前記半導体層内に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域内に形成された前記第1導電型のソース領域と、前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記ボディ領域および前記ソース領域に電気的に接続するように、前記ボディ領域上および前記ソース領域上に形成された前記ソース電極と、前記ゲート電極に電気的に接続するように、前記ゲート電極上に形成された前記ゲートパッド電極と、前記半導体基板の前記裏面上に形成された前記ドレイン電極と、を含む。また、前記内蔵ダイオードは、前記ボディ領域および前記半導体層によって構成されている。
【0017】
一実施の形態おける半導体装置の製造方法は、(a)ドレイン電極、ソース電極、ゲートパッド電極および内蔵ダイオードを含む半導体装置を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、(c)前記(b)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、(d)前記(c)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、(e)前記(d)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が第1規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、(f)前記(e)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際のリーク電流を測定する工程、(g)前記(f)工程後、前記リーク電流が第2規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、を備える。
【0018】
一実施の形態おける半導体装置の製造方法は、(a)ドレイン電極、ソース電極、ゲートパッド電極および内蔵ダイオードを含む半導体装置を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記半導体装置の第1オン電圧を測定する工程、(c)前記(a)工程後、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に規定の電圧を印加した際の第1リーク電流を測定する工程、(d)前記(b)工程および前記(c)工程後、前記内蔵ダイオードに順方向電流を通電する工程、(e)前記(d)工程後、前記半導体装置の第2オン電圧を測定する工程、(f)前記(e)工程後、前記第2オン電圧と前記第1オン電圧との変化値を算出し、その変化値が第1規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、(g)前記(f)工程後、適合品として選別された前記半導体装置に対して、前記ソース電極および前記ゲートパッド電極を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の電圧を印加した際の第2リーク電流を測定する工程、(h)前記(g)工程後、前記第2リーク電流と前記第1リーク電流との変化値を算出し、その変化値が第3規定値よりも小さい場合、前記半導体装置を適合品として選別する工程、を備える。
【発明の効果】
【0019】
一実施の形態によれば、半導体装置のスクリーニングに係る時間を減少でき、製品の仕様に関わらず半導体装置の選別の精度を一定化できる。また、それらを実現できる通電検査装置を提供できる。また、半導体装置100の精密なスクリーニングを行うことができ、信頼性の高い半導体装置100を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図2】
図1の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3】
図2に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4】
図3に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1における通電検査装置を示す断面図である。
【
図6】検討例における通電方法を示すフローチャートである。
【
図7】順方向電圧の接合温度に対する依存性(αカーブ)を示すグラフである。
【
図8】αカーブと式1との交点の挙動を示すグラフである。
【
図9】αカーブと式1との交点の挙動を示すグラフである。
【
図10】αカーブと式1との交点の挙動を示すグラフである。
【
図11】実施の形態1における通電方法(半導体装置の製造方法)を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態2における事前の実験を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2における通電方法(半導体装置の製造方法)を示すフローチャートである。
【
図14】変化値ΔVonと累計通電時間との関係を示すグラフである。
【
図15】リーク電流Idssと累計通電時間との関係を示すグラフである。
【
図16】実施の形態3における事前の実験を示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態3における通電方法(半導体装置の製造方法)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1における半導体装置(半導体チップ)100、通電検査装置200、および、通電検査装置200を用いた通電方法(半導体装置の製造方法)について、順番に説明する。
【0023】
<半導体装置>
まず、
図1を用いて、実施の形態1における半導体装置100について説明する。ここでは、半導体装置100がn型のSiCパワーMISFETを有する場合を例示するが、SiCパワーMISFETは、p型であってもよい。その場合、以下で説明される不純物の導電型は、全て逆になる。また、SiCパワーMISFETは、縦型プレーナ構造である。
【0024】
実施の形態1で使用される半導体基板1は、炭素および珪素を含む化合物半導体基板であり、炭化珪素(SiC)からなる。半導体基板1は、n型の導電性を有し、且つ、表面および上記表面と反対側の裏面を有する。
【0025】
半導体基板1の裏面上には、ドレイン電極10が形成されている。ドレイン電極10は、例えば、チタン膜、ニッケル膜および金膜の積層膜であり、ドレイン電極10の厚さは、例えば0.5~1.0μmである。なお、ドレイン電極10は、これらの積層膜ではなく、これらのうちの1つからなる単層膜であってもよいし、これらとは別の導電性膜であってもよい。
【0026】
半導体基板1の表面上には、半導体基板1よりも低い不純物濃度を有し、炭化珪素からなるn型の半導体層(エピタキシャル層)2が形成されている。半導体層2は、ドリフト層として機能し、ドレイン電極10に電気的に接続されている。従って、半導体層2および半導体基板1には、ドレイン電極10からドレイン電圧が印加される。
【0027】
半導体層2には、p型のボディ領域(不純物領域)3が形成されている。ボディ領域3には、n型のソース領域(不純物領域)4が形成されている。ソース領域4は、半導体層2よりも高い不純物濃度を有する。
【0028】
ボディ領域3上および半導体層2上には、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極6が形成されている。ゲート絶縁膜5は、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜であり、ゲート電極6は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコンのような導電性膜である。ゲート電極6には、後述のゲートパッド電極9からゲート電圧が印加される。
【0029】
ゲート電極6は、層間絶縁膜7によって覆われている。層間絶縁膜7は、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜である。層間絶縁膜7には、ソース領域4の一部およびボディ領域3の一部を開口する開口部が形成されている。
【0030】
層間絶縁膜7の開口部内を埋め込むように、層間絶縁膜7上には、ボディ領域3およびソース領域4に電気的に接続するように、ソース電極(ソースパッド電極)8が形成されている。ソース電極8は、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜および窒化チタン膜を含む積層膜であり、上記導電性膜は、例えばアルミニウム膜である。
【0031】
また、ここでは図示しないが、層間絶縁膜7には、ゲート電極6の一部を開口する開口部も形成されている。この開口部内を埋め込むように、層間絶縁膜7上には、ゲート電極6に電気的に接続するゲートパッド電極9が形成されている。ゲートパッド電極9は、ソース電極8と同じ材料によって構成されている。
【0032】
以下に、実施の形態1における各構成の深さおよび不純物濃度などのパラメータを記載する。なお、以下に示される各々の深さは、半導体層2の表面からの深さである。言い換えれば、これらの深さは、各不純物領域の厚さである。
【0033】
n型の半導体基板1は、例えば1×1018~1×1021cm-3の不純物濃度を有する。
【0034】
n型の半導体層2は、例えば5~50μmの厚さを有し、例えば1×1014~1×1017cm-3の不純物濃度を有する。
【0035】
p型のボディ領域3は、例えば500~2000nmの深さを有し、例えば1×1016~1×1019cm-3の不純物濃度を有する。
【0036】
n型のソース領域4は、例えば100~1000nmの深さを有し、例えば1×1019~1×1021cm-3の不純物濃度を有する。
【0037】
ゲート電極6がSiCパワーMISFETのゲートとして機能し、ソース領域4がSiCパワーMISFETのソースとして機能し、半導体層2がSiCパワーMISFETのドレインとして機能し、ゲート電極6の下方に位置するボディ領域3が、SiCパワーMISFETのチャネル領域として機能する。また、p型のボディ領域3およびn型の半導体層2によって構成される寄生pnダイオードは、内蔵ダイオードとして利用でき、この内蔵ダイオードは、インバータに用いられる還流ダイオードとして利用できる。
【0038】
<半導体装置(SiCパワーMISFET)の製造方法>
以下に
図2~4を用いて、半導体装置100の製造方法について説明する。
【0039】
まず、
図2に示されるように、半導体基板1を用意する。次に、半導体基板1の表面上に、例えばエピタキシャル成長法によって、半導体層2を形成する。
【0040】
次に、
図3に示されるように、半導体層2内に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入によって、ボディ領域3を形成する。次に、ボディ領域3内に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入によって、ソース領域4を形成する。
【0041】
次に、
図4に示されるように、ボディ領域3およびソース領域4を含む半導体層2上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、ゲート絶縁膜5を形成する。次に、ゲート絶縁膜5上に、例えばCVD法によって、ゲート電極6を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、ゲート電極6をパターニングする。
【0042】
次に、ゲート電極6を覆うように、半導体層2上に、例えばCVD法によって、層間絶縁膜7を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって層間絶縁膜7の一部をパターニングすることで、層間絶縁膜7およびゲート絶縁膜5を貫通する複数の開口部を形成する。複数の開口部には、ボディ領域3の一部およびソース領域4の一部に達する開口部と、ゲート電極6の一部に達する開口部とが含まれる。
【0043】
図4の工程後、以下の工程を経て、
図1に示される半導体装置100が製造される。まず、層間絶縁膜7の複数の開口部内を埋め込むように、層間絶縁膜7上に、例えばスパッタリング法またはCVD法によって、バリアメタル膜および導電性膜を順次形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、上記バリアメタル膜および上記導電性膜をパターニングすることで、ソース電極8およびゲートパッド電極9を形成する。ソース電極8は、ボディ領域3およびソース領域4に電気的に接続され、ゲートパッド電極9は、ゲート電極6に電気的に接続される。次に、半導体基板1の裏面上に、例えばスパッタリング法またはCVD法によって、ドレイン電極10を形成する。ドレイン電極10は、半導体基板1および半導体層2に電気的に接続される。
【0044】
なお、ここでは詳細な説明を省略したが、ウェハ状態の半導体基板1には、複数の半導体装置100が製造されている。ウェハ状態の半導体基板1をダイシングによって個片化することで、1つの半導体チップとして半導体装置100が取得される。
【0045】
<通電検査装置>
以下に
図5を用いて、実施の形態1における通電検査装置200について説明する。
【0046】
図5に示されるように、通電検査装置200は、冷却板21と、絶縁板22と、制御機器23と、測定用電極24と、導電性シート25と、測定用電極26と、測定用電極27と、圧力容器28とを備える。
【0047】
冷却板21は、例えば、その表面にニッケルがメッキ処理された銅板からなる。冷却板21は、通電検査装置200を用いて半導体装置100に通電する際に、半導体装置100から発生する熱を冷却するための冷却機構を有している。
【0048】
絶縁板22は、冷却板21上に設けられ、例えばセラミックまたは酸化アルミニウムからなる。また、絶縁板22は、その内部に、制御機器23に接続された可変熱抵抗機構を有している。可変熱抵抗機構は、例えばヒートポンプ、マイクロヒートポンプまたはヒートパイプである。
【0049】
例えば、制御機器23によって、可変熱抵抗機構へ流れる電流を調整する、または、可変熱抵抗機構へ流れるガス流量を調整する等の調整手段を行うことで、絶縁板22の熱抵抗値を変更することができる。
【0050】
測定用電極24は、絶縁板22上に設けられ、例えば、その表面に金がメッキ処理された銅板からなる。導電性シート25は、測定用電極24上に設けられ、例えばグラファイトからなる。導電性シート25の主な働きは、ドレイン電極10と測定用電極24との間の熱的な接触を促進すると共に、導電性シート25面内の高い熱伝導度によって、半導体装置100全体の温度を均一化することにある。半導体装置100に通電する際には、測定用電極24が導電性シート25を介してドレイン電極10に電気的に接続され、測定用電極24からドレイン電極10へドレイン電圧が印加される。
【0051】
測定用電極26および測定用電極27は、圧力容器28に取り付けられ、測定用電極24の上方に設けられ、且つ、測定用電極24から離れて位置している。測定用電極24と測定用電極26との間、および、測定用電極24と測定用電極27との間に、半導体装置100を設置可能である。半導体装置100に通電する際には、測定用電極26がソース電極8に電気的に接続され、測定用電極26からソース電極8へソース電圧が印加され、測定用電極27がゲートパッド電極9に電気的に接続され、測定用電極27からゲートパッド電極9へゲート電圧が印加される。
【0052】
測定用電極26および測定用電極27は、針状を成し、例えばパラジウムを主体とする合金からなり、パラジウムの他に、銀、金、プラチナおよび銅などを含む。また、
図5では、2つの測定用電極26および1つ測定用電極27が例示されているが、通電検査装置200には、複数の測定用電極26および複数の測定用電極27が備えられていてよい。
【0053】
圧力容器28は、測定用電極24上に設けられ、且つ、その内部の圧力をその外部の圧力と異なる圧力に変更できる。測定用電極24と測定用電極26との間、および、測定用電極24と測定用電極27との間に半導体装置100が設置される場合、半導体装置100は、圧力容器28の内部に収容される。
【0054】
例えば、半導体装置100に通電する際には、圧力容器28の内部の圧力を、圧力容器28の外部の圧力(大気圧)よりも高い圧力に設定することができる。また、圧力容器28は、半導体装置100に通電する際の放電を防止するために、例えばガラスまたは樹脂のような絶縁体からなることが好ましい。
【0055】
<検討例における通電方法>
以下に
図6を用いて、本願発明者らが検討した検討例の通電方法について説明する。
【0056】
検討例では、特許文献1と同様に、内蔵ダイオードに順方向電流を通電する前後のオン電圧の変化値を算出することで、半導体装置100が適格品であるか否かが選別される。例えば、積層欠陥の成長によってオン電圧の変化値が高くなった半導体装置100が、不適格品として選別される。
【0057】
ここで、積層欠陥の成長によって、SiCパワーMISFETのブロッキング耐圧が低下するという現象が発生する事が、本願発明者らの検討によって明らかになった。更に、この現象は、オン電圧の変化値に関わらず発生することも、本願発明者らの検討によって明らかになった。
【0058】
そこで、検討例の通電方法では、オン電圧の変化値による判定だけでなく、ブロッキング耐圧の変動による判定も行っている。ここで説明するブロッキング耐圧の変動は、ソース電極8およびゲートパッド電極9を電気的に短絡した状態、または、前記ソース電極に対して前記ゲートパッド電極に負バイアスを印加した状態で、ソース電極8とドレイン電極10との間に規定の電圧を印加した際のリーク電流Idssの変動値によって判断される。繰り返しになるが、検討例の通電方法は、従来から知られていた技術ではなく、本願発明者らが考案した新しい通電方法である。
【0059】
なお、検討例で用いられる通電検査装置は、実施の形態1における通電検査装置200とは異なり、絶縁板22は可変熱抵抗機構を含んでおらず、圧力容器28も適用されていない。
【0060】
まず、ステップS101では、半導体装置100を用意する。すなわち、
図1~
図4で説明した製造工程によって製造された半導体装置100を用意する。次に、半導体装置100を通電検査装置200へ移送し、測定用電極24と測定用電極26との間、および、測定用電極24と測定用電極27との間に、半導体装置100を設置する。そして、測定用電極24をドレイン電極10に電気的に接続させ、測定用電極26をソース電極8に電気的に接続させ、測定用電極27をゲートパッド電極9に電気的に接続させる。
【0061】
ステップS102では、ソース電極8およびゲートパッド電極9を電気的に短絡した状態、または、ソース電極8に対してゲートパッド電極9に負バイアスを印加した状態で、ソース電極8に0Vを印加し、ドレイン電極10に規定の高電圧を印加した際のリーク電流Idss1を測定する。
【0062】
ステップS103では、半導体装置100の接合温度Tjを設定する。接合温度Tjの設定は、内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電することによって行われる。順方向電流Ifとは、ソース電極8とゲートパッド電極9とを短絡させた状態、または、ソース電極8に対してゲートパッド電極9に負バイアスを印加した状態で、ソース電極8に正電圧を印加し、ドレイン電極10に0Vを印加した際に、ソース電極8からドレイン電極10に流れる電流のことである。ここでは、接合温度Tjが175℃になるまで順方向電流Ifを流し、その時の順方向電圧Vfを測定しておく。なお、順方向電流Ifは、直流または適当なDuty比、例えば50%のパルスで印加してよい。
【0063】
ステップS104では、初期状態のオン電圧Von1を測定する。オン電圧は、SiCパワーMISFETがオン状態である場合のドレイン電極10とソース電極8との間の電位差である。すなわち、オン電圧は、ドレイン電極10に正電圧を印加し、ソース電極8に0Vを印加し、ゲート電極6の電圧を徐々に大きくすることで、ドレイン電極10からソース電極8に電流が流れている状態である場合のドレイン電極10とソース電極8との間の電位差である。
【0064】
ステップS105では、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。なお、順方向電流Ifの印加条件は、ステップS103と同一とする。
【0065】
ステップS106では、ステップS104と同様の方法で、最終状態のオン電圧Von2を測定する。
【0066】
ステップS107では、オン電圧Von2とオン電圧Von1との変化値ΔVonを算出する。変化値ΔVonは、ΔVon=(Von2-Von1)/Von1より求められる。なお、ここで説明する変化値ΔVonは、絶対値である。
【0067】
ステップS108では、変化値ΔVonの判定を行う。オン電圧が変化することは、積層欠陥が成長してオン抵抗が増加していることを意味する。変化値ΔVonが規定値よりも小さい場合、半導体装置100を適合品として選別する。例えば、変化値ΔVonが0.02未満の場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS109となる。変化値ΔVonが0.02以上の場合(NO)、ステップS110のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0068】
ステップS109では、ステップS102と同様の方法で、最終状態のリーク電流Idss2を測定する。
【0069】
ステップS111では、リーク電流Idss2とリーク電流Idss1との変化値ΔIdssを算出する。変化値ΔIdssは、ΔIdss=Idss2-Idss1より求められる。なお、ここで説明する変化値ΔIdssは、絶対値である。
【0070】
ステップS112では、変化値ΔIdssの判定を行う。変化値ΔIdssが規定値よりも小さい場合、半導体装置100を適合品として選別する。例えば、変化値ΔIdssが1μA未満である場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS113となり、半導体装置100に対して後工程などが行われる。変化値ΔIdssが1μA以上である場合(NO)、ステップS114のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0071】
<検討例の問題点>
以下に
図7~10を用いて、検討例の問題点について説明する。
【0072】
検討例では、内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電する際に、最大定格接合温度Tjmaxが律速要因となり、順方向電流Ifを最大定格順方向電流Ifmaxにし難いという問題がある。順方向電流Ifを最大定格順方向電流Ifmaxに出来ないと、積層欠陥を成長させるために、通電時間を長くする必要があるので、半導体装置のスクリーニングに係る時間が増加するという問題がある。最大定格順方向電流Ifmaxにするために、適当なDuty比でパルス駆動して最大定格接合温度Tjmaxにするという方法もあるが、この場合もDuty比の逆数分は、通電時間が長くなるので有効な手段とは言えない。
【0073】
図7は、順方向電流Ifを30A~50Aの範囲とした場合の、半導体装置100の接合温度Tjに対する順方向電圧Vfの依存性(αカーブ)を示している。冷却板21などとの熱接触によって、平衡状態における半導体装置100の接合温度Tjは、熱抵抗値Rthを用いて以下の「式1」で示される。なお、Tcpは、常温(25℃)である。
【0074】
Tj=Tcp+Rth×Vf×If (式1)
【0075】
ここで、
図8に示されるように、「式1」は一次関数の直線で導ける。例えば、最大定格接合温度Tjmaxが175℃である場合、熱抵抗値Rthを0.7k/Wとすれば、最大定格順方向電流Ifmax(50A)におけるαカーブと、式1との交点が、最適な条件として算出できる。
【0076】
一方で、
図9に示されるように、熱抵抗値Rthが1.1k/Wであると、αカーブと式1との交点における接合温度Tjが、高くなり過ぎ、最大定格接合温度Tjmaxである175℃を越える。
【0077】
また、
図10に示されるように、熱抵抗値Rthが1.1k/Wであっても、順方向電流Ifを35A程度に設定すれば、αカーブと式1との交点が、最適な条件に近づく。しかしながら、
図10では、順方向電流Ifが低いので、積層欠陥を成長させるために、通電時間を長くする必要があり、半導体装置100のスクリーニングに係る時間が増加する。
【0078】
また、積層欠陥の成長速度は、主に、内蔵ダイオードの通電中に半導体層2の内部に蓄積される正孔濃度で決まるが、蓄積される正孔濃度は、接合温度Tjおよび順方向電流Ifに大きく依存する。従って、
図8であっても、製品の仕様が変わると、最大定格接合温度Tjmaxおよび最大定格順方向電流Ifmaxが異なってしまうので、積層欠陥を成長させるための条件が変わる。すなわち、熱抵抗値Rthが固定されていると、半導体装置100の選別の精度を一定に保つことが難しい。
【0079】
また、検討例のステップS102およびステップS109で行われるリーク電流Idssの測定は、数千Vの電圧を印加する必要があり、通常の通電検査装置では行えないので、ステップS102およびステップS109を別の装置で行う必要がある。従って、装置を移し替えて測定を行う作業の分、半導体装置100のスクリーニングに係る時間が増加する。
【0080】
また、リーク電流Idssの測定では、数千Vの電圧が印加されるので、放電が発生し易い。それ故、リーク電流Idssの測定は、最大定格電圧Vdssよりも低い電圧で行われる場合がある。そうすると、リーク電流Idss1、リーク電流Idss2および変化値ΔIdssが、最大定格電圧Vdssの場合よりも低く測定されることになる。それ故、後工程後または製品化された後などに、半導体装置100の耐圧不良が発生する恐れがある。
【0081】
以上のように、検討例での問題点を考慮すると、半導体装置100のスクリーニングに係る時間を減少でき、製品の仕様に関わらず半導体装置100の選別の精度を一定化できる方法が求められる。また、オン電圧Vonの測定だけでなく、リーク電流Idssの測定も、同じ通電検査装置で行うことができれば、半導体装置100のスクリーニングに係る時間を更に減少できる。
【0082】
<実施の形態1における通電方法(半導体装置の製造方法)>
以下に
図11を用いて、実施の形態1における通電方法について説明する。なお、
図11に示されるステップS2~S14は、ステップS1(
図1~
図4で説明した製造工程)と、ステップS15の後工程との間で、半導体装置100に対して行われるものであるので、これらを纏めて「半導体装置の製造方法」と見做すこともできる。すなわち、実施の形態1における半導体装置の製造方法は、ステップS2~S14の通電方法を有している。
【0083】
まず、ステップS1では、半導体装置100を用意する。すなわち、
図1~
図4で説明した製造工程によって製造された半導体装置100を用意する。次に、半導体装置100を通電検査装置200へ移送し、測定用電極24と測定用電極26との間、および、測定用電極24と測定用電極27との間に、半導体装置100を設置する。そして、測定用電極24をドレイン電極10に電気的に接続させ、測定用電極26をソース電極8に電気的に接続させ、測定用電極27をゲートパッド電極9に電気的に接続させる。
【0084】
ステップS2では、半導体装置100の接合温度Tjを設定する。接合温度Tjの設定は、内蔵ダイオードに最大定格順方向電流Ifmaxを直流で通電することによって行われる。また、その時の最大定格順方向電圧Vfmaxを測定する。
【0085】
ステップS3では、接合温度Tjが、最大定格接合温度Tjmaxであるか否かが判定される。接合温度Tjが最大定格接合温度Tjmaxである場合(YES)、次のステップは、ステップS4となる。接合温度Tjが最大定格接合温度Tjmaxでない場合(NO)、ステップS5において、絶縁板22の可変熱抵抗機構の抵抗値を調整し、上述の「式1」の熱抵抗値Rthを調整する。すなわち、内蔵ダイオードに最大定格順方向電流Ifmaxを通電した際に、最大定格接合温度Tjmaxになるように、可変熱抵抗機構の抵抗値を調整する。その状態になるまで、ステップS2、ステップS3およびステップS5が繰り返される。
【0086】
ステップS4では、初期状態のオン電圧Von1を測定する。オン電圧Von1の測定方法は、ステップS104と同様である。
【0087】
ステップS6では、初期状態のリーク電流Idss1を測定する。例えば、ソース電極8およびゲートパッド電極9を電気的に短絡した状態、または、ソース電極8に対してゲートパッド電極9に負バイアスを印加した状態で、ソース電極8に0Vを印加し、ドレイン電極10に規定の電圧を印加した際のリーク電流Idss1を測定する。ここでは、規定の電圧は、最大定格電圧Vdssである。また、ステップS6では、圧力容器28の内部の圧力を、圧力容器28の外部の圧力よりも高い圧力に設定する。これにより、数千Vとなる最大定格電圧Vdssが印加されても、圧力容器28の内部で放電が発生することを防止できる。
【0088】
ステップS7では、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。ここでは、順方向電流Ifは最大定格順方向電流Ifmaxである。すなわち、最大定格接合温度Tjmaxにおいて、内蔵ダイオードに最大定格順方向電流Ifmaxを通電する。
【0089】
ステップS8では、ステップS4と同様の方法で、最終状態のオン電圧Von2を測定する。
【0090】
ステップS9では、オン電圧Von2とオン電圧Von1との変化値ΔVonを算出する。変化値ΔVonは、ΔVon=(Von2-Von1)/Von1より求められる。なお、ここで説明する変化値ΔVonは、絶対値である。
【0091】
ステップS10では、変化値ΔVonの判定を行う。変化値ΔVonが規定値よりも小さい場合、積層欠陥の成長が無いまたはほぼ無いと判断できるので、半導体装置100を適合品として選別する。例えば、変化値ΔVonが0.02未満の場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS11となる。変化値ΔVonが0.02以上の場合(NO)、ステップS12のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0092】
ステップS11では、ステップS6と同様の方法で、最終状態のリーク電流Idss2を測定する。
【0093】
ステップS13では、リーク電流Idss2とリーク電流Idss1との変化値ΔIdssを算出する。変化値ΔIdssは、ΔIdss=Idss2-Idss1より求められる。なお、ここで説明する変化値ΔIdssは、絶対値である。
【0094】
ステップS14では、変化値ΔIdssの判定を行う。変化値ΔIdssが規定値よりも小さい場合、積層欠陥の成長が無いまたはほぼ無いと判断できるので、半導体装置100を適合品として選別する。例えば、変化値ΔIdssが1μA未満である場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS15となり、半導体装置100に対して後工程などが行われる。変化値ΔIdssが1μA以上である場合(NO)、ステップS16のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0095】
通常の通電検査装置では、検討例のように、熱抵抗値Rthが固定されている。これに対して、実施の形態1の通電検査装置200では、絶縁板22が可変熱抵抗機構を有しているので、熱抵抗値Rthを可変にすることができる。このため、最大定格接合温度Tjmaxにおいて、内蔵ダイオードに最大定格順方向電流Ifmaxを通電できる。従って、積層欠陥を成長させるための通電時間を大幅に短縮でき、半導体装置100のスクリーニングに係る時間を減少できる。
【0096】
また、熱抵抗値Rthを可変にすることができるので、製品の仕様が変わり、積層欠陥を成長させるための条件が変わったとしても、半導体装置100の選別の時間を最小化できる。また製品の最大定格電圧Vdssが低い場合(例えば600Vまたは1200V)、一般に上記ΔVonが高耐圧(例えば3.3kV)よりも小さくなる傾向がある。これは、半導体層2を構成するエピ層の厚さが薄くなるからである。このような場合には、オン電圧の判定基準を緩める、または、廃止し、ΔIdssの判定だけを実施するようにしてもよい。
【0097】
また、リーク電流Idssの測定を最大定格電圧Vdssで行うことができるので、後工程後などに、半導体装置100の耐圧不良が発生する恐れを抑制できる。
【0098】
また、オン電圧Vonの測定だけでなく、リーク電流Idssの測定も同一の通電検査装置200で行うことができるので、半導体装置100のスクリーニングに係る時間を更に減少できると共に、半導体装置100の精密なスクリーニングを行うことができる。これにより、信頼性の高い半導体装置100を提供できる。
【0099】
(実施の形態2)
以下に
図12および
図13を用いて、実施の形態2における通電方法(半導体装置の製造方法)について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0100】
実施の形態2では、実施の形態1とは他の方法を用いて半導体装置100のスクリーニングを行う。実施の形態2では、
図11に示される実施の形態1のステップS2~S14の代わりに、
図13に示されるステップS40~S49が行われる。すなわち、実施の形態2における半導体装置の製造方法は、ステップS40~S49の通電方法を有している。
【0101】
<事前の実験>
図13に示されるステップS40~S49を行う前に、複数の実験用の半導体装置100に対して、
図12に示される実験をそれぞれ行う。
【0102】
まず、ステップS20では、半導体装置100の接合温度Tjを設定する。接合温度Tjの設定は、内蔵ダイオードに順方向電流Ifを直流で通電することによって行われる。
【0103】
ステップS21では、接合温度Tjが、最大定格接合温度Tjmaxであるか否かが判定される。接合温度Tjが最大定格接合温度Tjmaxである場合(YES)、次のステップは、ステップS22となる。接合温度Tjが最大定格接合温度Tjmaxではない場合(NO)、ステップS23において、最大定格接合温度Tjmaxになるまで、内蔵ダイオードに通電される順方向電流Ifの調整を行う。ステップS22以降では、調整された順方向電流Ifおよび順方向電圧Vfが用いられる。
【0104】
ステップS24では、初期状態のオン電圧Von1を測定する。オン電圧Von1の測定方法は、ステップS4と同様である。ステップS25では、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。ステップS26では、ステップS24と同様の方法で、最終状態のオン電圧Von2を測定する。ステップS27では、オン電圧Von2とオン電圧Von1との変化値ΔVonを算出する。変化値ΔVonは、ΔVon=(Von2-Von1)/Von1より求められる。
【0105】
ステップS28では、ΔVonが飽和しているか否かを判定する。ΔVonが飽和していれば、次のステップはステップS29となる。ΔVonが飽和していなければ、ステップS25へ戻る。
【0106】
ステップS29は、実験のサンプルとなるデータが十分に取得できたか否かを判定する。ここでは、実験用の半導体装置100の個数が、例えば100個以上であれば、実験のデータが十分であると判定され、次のステップはステップS30となる。上記個数が100個未満であれば、ステップS24に戻り、次の実験用の半導体装置100について、実験を行う。なお、実験用の半導体装置100の個数は、100個に限られず、多ければ多い程好ましい。
【0107】
ステップS30では、飽和時間Tsatと、オン電圧の飽和変化値ΔVonsatとを決定する。
図14は、この実験によって得られた変化値ΔVonと累計通電時間との関係を示すグラフである。
【0108】
複数の実験用の半導体装置100のうち大部分は、「飽和群」に示されるグラフとなる。「飽和群」では、通電時間の経過と共に変化値ΔVonがほぼ変動しなくなり、変化値ΔVonが飽和する。すなわち、「飽和群」では、通電時間の経過と共に積層欠陥がほぼ増加せず、抵抗成分の増加が無い。従って、「飽和群」の半導体装置100を適合品と判断することができる。
【0109】
一方で、複数の実験用の半導体装置100のうち一部には、「非飽和群」に示されるグラフとなるものが含まれる場合がある。「非飽和群」では、通電時間の経過と共に変化値ΔVonの値が変動する。すなわち、「非飽和群」では、通電時間の経過と共に積層欠陥が増加し、抵抗成分が増加するので、オン電圧の変動が起こっている。従って、「非飽和群」の半導体装置100を不適合品と判断することができる。
【0110】
図14のグラフから、「飽和群」の半導体装置100の変化値ΔVonが十分に飽和したと見做せる通電時間を飽和時間Tsatとして決定できる。また、
図14に示される第1規定値は、この実験において、飽和時間Tsat中に、「飽和群」の半導体装置100のオン電圧Von2とオン電圧Von1との変化値ΔVonが飽和した際の値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)である。
【0111】
例えば、
図14の第1規定値は、飽和時間Tsatを通電時間「10」とした場合の「飽和群」の半導体装置100のオン電圧の飽和変化値ΔVonsatとして設定されている。半導体装置100のスクリーニングの信頼性を確保するならば、通電時間が長い方が「非飽和群」を確実に排除できる。
【0112】
一方で、スクリーニングの時間を短縮して、半導体装置100の生産性を向上させるならば、通電時間「5」のように、通電時間が短い方が好ましい。その場合、「非飽和群」の半導体装置100も含まれる恐れがある。しかし、ある程度の短い通電時間であっても、後述する
図15に示されるように、リーク電流Idssが通電時間「5」までの間に急激に変化することが実験で確認できていれば、通電時間「5」であっても、リーク電流Idssによる選別によって、変化値ΔVonの「非飽和群」の半導体装置100を不適合品として排除することが可能である。
【0113】
それらの事情を考慮して、飽和時間Tsatは、
図14で「非飽和群」が含まれないような第1規定値を設定できる時間に設定することが好ましい。しかし、通電時間を短くするために、飽和時間Tsatを、
図14で「非飽和群」の一部が含まれる可能性がある時間であって、且つ、
図15でリーク電流Idssの急激な変化が起こる時間よりも長い時間に設定してもよい。
【0114】
また、
図12に示される実験では、複数の実験用の半導体装置100に対して、リーク電流Idssの測定も行われる。この測定では、ステップS24~S30で用いた実験用の半導体装置100とは別の実験用の半導体装置100が用いられる。以下にリーク電流Idssの測定に関するステップS31~S35について説明する。
【0115】
ステップS31では、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。
【0116】
ステップS32では、リーク電流Idssを測定する。例えば、ソース電極8およびゲートパッド電極9を電気的に短絡した状態、または、ソース電極8に対してゲートパッド電極9に負バイアスを印加した状態で、ソース電極8に0Vを印加し、ドレイン電極10に所定の電圧を印加した際のリーク電流Idssを測定する。ここでは、上記所定の電圧は、最大定格電圧Vdssである。
【0117】
ステップS33では、内蔵ダイオードの通電時間が、累計所定時間に到達しているか否かを判定する。すなわち、内蔵ダイオードの通電時間が累計所定時間(飽和時間Tsat、または、飽和時間Tsatよりも長く設定した時間)に到達していれば、次のステップはステップS34になる。内蔵ダイオードの通電時間が累計所定時間に到達していなければ、ステップS31へ戻る。
【0118】
ステップS34では、実験のサンプルとなるデータが十分に取得できたか否かを判定する。ここではステップS29と同様に、実験用の半導体装置100の個数は100個以上であるが、その個数は、多ければ多い程好ましい。
【0119】
ステップS35では、最大リーク電流Idssmaxを決定する。
図15は、この実験によって得られたリーク電流Idssと累計通電時間との関係を示すグラフである。
【0120】
リーク電流Idssの増加は、通電時間の経過と共に飽和する傾向にあるが、複数の実験用の半導体装置100のうち一部では、突発的にリーク電流Idssが増加する場合がある。このような突発的なリーク電流Idssの増加は、
図14の「非飽和群」だけでなく「飽和群」でも発生する可能性があることが、本願発明者らの検討によって明らかになっている。
【0121】
積層欠陥は基底面に沿って成長するが、その際に、半導体基板に形成されているPN接合を横切る特異的な転位があると、リーク電流Idssが増加し易くなると推察される。そして、それが要因となって、上述の突発的なリーク電流Idssの増加が発生していると推察される。
【0122】
そこで、実施の形態2では、第1規定値によってスクリーニングの判定を行うだけでなく、ある程度のリーク電流Idssが発生している半導体装置100に対しても、第2規定値を設定することで、スクリーニングの判定を行う。
【0123】
この第2規定値は、ステップS33で測定されたリーク電流Idssを参照して設定される。例えば、第2規定値は、突発的なリーク電流Idssの増加があるものを排除した後、最も大きなリーク電流Idssの値か、そのリーク電流Idssよりも若干大きな値に設定される。このように設定された第2規定値を最大リーク電流Idssmaxとする。また、このとき、飽和時間Tsatの通電時間で突発的なリーク電流Idssの増加があるものを排除できるかを確認しておく。そのため、ステップS33の累計所定時間は、飽和時間Tsat以上の時間に設定しておく。
【0124】
以上のように、複数の実験用の前記半導体装置100に対して、事前に
図12の実験を行うことで、この結果に基づいて、飽和時間Tsat、第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)および第2規定値(最大リーク電流Idssmax)が決定される。
【0125】
<実施の形態2における通電方法(半導体装置の製造方法)>
以下に
図13を用いて、実施の形態2の通電方法(半導体装置の製造方法)について説明する。なお、実施の形態2の通電方法(半導体装置の製造方法)は、通電検査装置200を利用しなくとも実施できるが、実施の形態1と同様に通電検査装置200を利用して実施してもよい。
【0126】
まず、ステップS40では、半導体装置100を用意する。すなわち、実施の形態1と同様に、
図1~
図4で説明した製造工程によって製造された半導体装置100を用意する。
【0127】
ステップS41では、初期状態のオン電圧Von1を測定する。オン電圧Von1の測定方法は、ステップS24と同様である。ステップS42では、飽和時間Tsatで、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。
【0128】
ステップS43では、内蔵ダイオードの通電時間が飽和時間Tsatに達しているか否かを確認する。通電時間が飽和時間Tsatに達している場合(YES)、次のステップは、ステップS44となる。通電時間が飽和時間Tsatに達していない場合(NO)、通電時間が飽和時間Tsatに達するまで、ステップS42が繰り返される。ステップS44では、ステップS41と同様の方法で、最終状態のオン電圧Von2を測定する。
【0129】
ステップS45では、オン電圧Von2とオン電圧Von1との変化値ΔVonを算出する。変化値ΔVonは、ΔVon=(Von2-Von1)/Von1より求められる。
【0130】
ステップS46では、変化値ΔVonの判定を行う。変化値ΔVonが第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)よりも小さい場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS47となる。変化値ΔVonが第1規定値よりも大きい場合(NO)、ステップS48のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0131】
ステップS47では、ステップS31と同様の方法で、リーク電流Idssを測定する。なお、リーク電流Idssは、半導体装置100の最大定格電圧によって測定される。
【0132】
ステップS49では、リーク電流Idssの判定を行う。リーク電流Idssが第2規定値(最大リーク電流Idssmax)よりも小さい場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS50となり、半導体装置100に対して後工程などが行われる。リーク電流Idssが第2規定値よりも大きい場合(NO)、ステップS51のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0133】
このように、実施の形態2では、内蔵ダイオードの通電時間を飽和時間Tsatとし、第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)および第2規定値(最大リーク電流Idssmax)を用いることで、半導体装置100の精密なスクリーニングを行うことができる。従って、オン電圧の変化値ΔVonが小さく、且つ、リーク電流Idssが小さい半導体装置100を選別できるので、信頼性の高い半導体装置100を提供することができる。
【0134】
(実施の形態3)
以下に
図16および
図17を用いて、実施の形態3における通電方法(半導体装置の製造方法)について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態2との相違点について主に説明し、実施の形態2と重複する点については説明を省略する。
【0135】
実施の形態2では、第2規定値(最大リーク電流Idssmax)と比較することで、リーク電流Idssの選別を行っていた。実施の形態3では、リーク電流Idssの選別に、実施の形態1と同様に変化値ΔIdssを使用する。そのため、実施の形態3では、
図13に示される実施の形態2のステップS40~S49の一部が、
図17に示されるステップS70~S73に置き換えられている。
【0136】
<事前の実験>
図17に示されるステップS40~S48、S70~S73を行う前に、複数の実験用の半導体装置100に対して、
図16に示される実験をそれぞれ行う。なお、第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)に関する実験は、実施の形態2のステップS20~S30と同じなので、それらの説明を省略する。
【0137】
まず、ステップS22の後に、ステップS60を実施する。ステップS60では、ステップS32と同じ手法を用いて、リーク電流Idss1を測定する。なお、リーク電流Idss1は、半導体装置100の最大定格電圧によって測定される。ステップS61では、半導体装置100の内蔵ダイオードに順方向電流Ifを通電し、積層欠陥を成長させる。ステップS62では、ステップS60と同じ手法を用いて、リーク電流Idss2を測定する。なお、リーク電流Idss2は、半導体装置100の最大定格電圧によって測定される。
【0138】
ステップS63では、内蔵ダイオードの通電時間が、累計所定時間に到達しているか否かを判定する。すなわち、内蔵ダイオードの通電時間が累計所定時間(飽和時間Tsat、または、飽和時間Tsatよりも長く設定した時間)に到達していれば、次のステップはステップS64になる。内蔵ダイオードの通電時間が累計所定時間に到達していなければ、ステップS61へ戻る。
【0139】
ステップS64では、実験のサンプルとなるデータが十分に取得できたか否かを判定する。ここではステップS29と同様に、実験用の半導体装置100の個数は100個以上であるが、その個数は、多ければ多い程好ましい。
【0140】
ステップS65では、リーク電流の変化値ΔIdssの算出を行う。変化値ΔIdssは、ΔIdss=Idss2-Idss1より求められる。
【0141】
ステップS66では、第3規定値として、リーク電流の最大変化値ΔIdssmaxを決定する。この第3規定値は、ステップS64で算出された変化値ΔIdssを参照して設定される。例えば、第3規定値は、
図15に示される突発的なリーク電流Idssの増加があるものを排除した後、複数の実験用の半導体装置100で算出された変化値ΔIdssのうち、最も大きな変化値ΔIdssか、その変化値ΔIdssよりも若干大きな値に設定される。このように設定された第3規定値をリーク電流の最大変化値ΔIdssmaxとする。最大変化値ΔIdssmaxは、例えば、1μAである。
【0142】
以上のように、複数の実験用の前記半導体装置100に対して、事前に
図16の実験を行うことで、この結果に基づいて、飽和時間Tsat、第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)および第3規定値(リーク電流の最大変化値ΔIdssmax)が決定される。
【0143】
<実施の形態3における通電方法(半導体装置の製造方法)>
以下に
図17を用いて、実施の形態3の通電方法(半導体装置の製造方法)について説明する。なお、実施の形態3の通電方法(半導体装置の製造方法)は、通電検査装置200を利用しなくとも実施できるが、実施の形態1と同様に通電検査装置200を利用して実施してもよい。
【0144】
実施の形態3では、ステップS41とステップS42との間でステップS70を行う。なお、ステップS70は、ステップS40とステップS41との間でもよい。ステップS70では、ステップS60と同じ手法を用いて、リーク電流Idss1を測定する。その後、実施の形態2と同様にステップS42~S48を行う。ステップS46で適合品と選別された半導体装置100に対しては、ステップS71~S73が行われる。
【0145】
ステップS71では、ステップS62と同じ手法を用いて、リーク電流Idss2を測定する。なお、リーク電流Idss2は、半導体装置100の最大定格電圧によって測定される。ステップS72では、リーク電流の変化値ΔIdssの算出を行う。変化値ΔIdssは、ΔIdss=Idss2-Idss1より求められる。
【0146】
ステップS73では、変化値ΔIdssの判定を行う。変化値ΔIdssが第3規定値(リーク電流の最大変化値ΔIdssmax)よりも小さい場合(YES)、半導体装置100を適合品として選別する。そして、次のステップは、ステップS50となり、半導体装置100に対して後工程などが行われる。変化値ΔIdssが第3規定値よりも大きい場合(NO)、ステップS51のように、半導体装置100を不適合品として選別する。
【0147】
このように、実施の形態3では、内蔵ダイオードの通電時間を飽和時間Tsatとし、第1規定値(オン電圧の飽和変化値ΔVonsat)および第3規定値(リーク電流の最大変化値ΔIdssmax)を用いることで、半導体装置100の精密なスクリーニングを行うことができる。従って、オン電圧の変化値ΔVonが小さく、且つ、リーク電流Idssが小さい半導体装置100を選別できるので、信頼性の高い半導体装置100を提供することができる。
【0148】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 半導体基板
2 半導体層
3 ボディ領域
4 ソース領域
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 層間絶縁膜
8 ソース電極(ソースパッド電極)
9 ゲートパッド電極
10 ドレイン電極
21 冷却板
22 絶縁板
23 制御機器
24 測定用電極
25 導電性シート
26 測定用電極
27 測定用電極
28 圧力容器
100 半導体装置(半導体チップ)
200 通電検査装置