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特許7593579ポルフィリンを含むカチオンポリマーおよびそれを含む組織マーキング剤、および光増感剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ポルフィリンを含むカチオンポリマーおよびそれを含む組織マーキング剤、および光増感剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/30 20060101AFI20241126BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20241126BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F220/34
C08F220/60
A61K49/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023539644
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016226
(87)【国際公開番号】W WO2023013175
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021127676
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、橋渡し研究プログラム、シーズA 20-23 消化管癌の長期ピンポイントマーキングを可能にする組織結合型蛍光色素の開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 徹
(72)【発明者】
【氏名】陳 国平
(72)【発明者】
【氏名】川添 直輝
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】小松 義希
(72)【発明者】
【氏名】古屋 欽司
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110642976(CN,A)
【文献】特開2019-142813(JP,A)
【文献】特開2009-127044(JP,A)
【文献】特開平02-086686(JP,A)
【文献】特開2016-169361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
A61K 49/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で示される繰り返し単位と式(II)で示される繰り返し単位とを含む共重合体。
【化1】

(式(I)または(II)中、
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、または式:R -C(=O)-(式中、R は、OH基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、または無置換若しくは置換アミノ基を表す)の基を表し、
及びL は、それぞれ独立して、OまたはNHであり、
及びL は、それぞれ独立して、炭素数1~5の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の環状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基であり、
Zはポルフィリン化合物またはその塩から任意の水素原子を1個除いた基であり、
Xは、アニオンを表す。)
【請求項2】
前記共重合体の全繰り返し単位数に対する、式(II)で表される繰り返し単位数の割合が、1~50%である、請求項に記載の共重合体。
【請求項3】
式(I)で示される繰り返し単位数に対する式(II)で表される繰り返し単位数の比((II)/(I))が、1/1000~1/2である、請求項1または2に記載の共重合体。
【請求項4】
式(II)で表される構成単位を、1または2つ有する、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項5】
前記ポルフィリン化合物が、メソポルフィリン、ジュウテロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、サイトポルフィリン、ロドポルフィリン、ピロポルフィリン、フィロポルフィリン、アルキルカルボキシポルフィリンおよびこれらのポルフィリンの塩からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項6】
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
は、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレンを表し、
は、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレンを表す、
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項7】
水溶性である、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項8】
重量平均分子量(MW)は、1000~1000000である、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体を含む、組織マーキング剤。
【請求項10】
水溶液である、請求項に記載の組織マーキング剤。
【請求項11】
消化管の局部をマーキングするための請求項または10に記載の組織マーキング剤。
【請求項12】
胃壁~直腸に亘る消化管の局部をマーキングするための請求項11に記載の組織マーキング剤。
【請求項13】
腹腔鏡下消化管手術ための請求項11または12に記載の組織マーキング剤。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体を含む、光線力学療法用の光増感剤。
【請求項15】
水溶液である、請求項14に記載の光増感剤。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
癌治療に用いられる、請求項16に記載の、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体を製造する方法であって、
以下の式(IA)及び式(IIA)の化合物であって、
【化2】

、R 、R 、R 、L 、L 、L 、L 及びXは請求項1~のいずれか一項に定義される通りである、化合物を重合する工程、及び
前記重合する工程によって得られた重合体をポルフィリン化合物またはその塩と反応させる工程を含む、方法。
【請求項19】
前記ポルフィリン化合物は、メソポルフィリン、ジュウテロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、サイトポルフィリン、ロドポルフィリン、ピロポルフィリン、フィロポルフィリンヘプタカルボキシポルフィリン、ヘキサカルボキシポルフィリンペンタカルボキシポルフィリン、およびこれらのポルフィリンの塩からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四級アンモニウムカチオンを有する繰り返し単位と、ポルフィリン化合物またはその塩を有する繰り返し単位とを含む共重合体、それを含む組織マーキング剤、および光増感剤、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん組織の切除手術において、正常な組織をどれだけ残せるかは術後の臓器の正常な機能の維持に重要である。このため、不必要な組織の切除を避けるために術前に腫瘍部位をマーキングしてから施術することが行われている。また、特に、消化管癌は、通常、消化管の内側に存在しており、消化管の外側から腫瘍部位を認識し得るマーキング方法に対するニーズが存在する。
【0003】
従来、消化管癌の手術をする際、術前に内視鏡を用いて腫瘍部位に墨を注入したり(点墨法)、蛍光色素等により発色する部位を有するクリップを留置して腫瘍部位をマーキングしていた(非特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、点墨によるマーキングは、組織の色との判別が困難で視認性が悪く、消化管の外側から腫瘍部位を認識することも困難である。また、注入した墨は短時間で拡散するため、腫瘍部位と正常組織との境界を判断することが難しい。また、墨の拡散を考慮すると、マーキング剤の注入は遅くとも手術の一日前に行う必要があり、手術のスケジューリングが難しくなるといった問題もある。
【0005】
クリップを用いたマーキングは、腹腔鏡を用いた手術では使用することができず、組織を自動縫合器で切除しようとしたときに、クリップを巻き込んでしまう問題がある。また、消化管の激しい収縮運動(蠕動運動)によってクリップが外れてしまうこともある。
【0006】
このような点墨法およびクリッピング法の問題に対して、インドシアニングリーン(ICG)を術前に、直腸がん腫瘍部位の直下の粘膜下層に注入して腫瘍部位をマーキングする方法が提案されている(非特許文献2)。この方法によれば、近赤外線を照射することで、消化管の外側から腫瘍部位を認識することが可能となり、クリッピング法に伴う問題もない。しかし、この方法においても、色素の拡散により蛍光領域がばらつき、切離ラインが不明瞭になるといった問題が依然として存在している(非特許文献2の考察を参照)。
【0007】
脂肪組織に富む乳癌にあっては、術前に切除予定部位をマーキングするためのマーキング製剤において、メチレンブルーなどの色素と増粘剤とを含む組成とすることが提案されている(特許文献1)。このマーキング製剤では、メチレンブルーなどの色素を用いることで、マーキング部位と組織や血液との区別を明確にするとともに、増粘剤を配合してマーキング製剤の粘度を高めることで、乳房の脂肪組織内においても色素の拡散を抑えようとするものである。しかし、このマーキング製剤においても、色素が腫瘍部位に結合しているわけではないため、その拡散防止効果は一時的であり、比較的短時間で色素が拡散していく。また、このマーキング製剤では、乳癌での利用を念頭に蛍光色素を用いておらず、消化管癌などに適用した際に、組織の外側から腫瘍部位を認識できるものではない。
【0008】
他方、癌治療において、癌患者の血管内に光増感剤を投与し、癌または腫瘍組織に集積させ、特定波長の光を照射することにより活性酸素を発生させ、癌細胞のみを特異的に死滅させる光線力学的治療法(PDT)が開発されている。PDTは、光化学的反応により腫瘍細胞のみを選択的に死滅させることができる低侵襲な癌治療法であるが、通常、血管内投与により実施され、全身へ光増感剤が拡散される。このため、PDTを受けた患者は、厳しい遮光制限が求められ、患者のQOLの低下が懸念されている。
【0009】
PDTに使用される光増感剤としてポルフィリン誘導体が知られており、ポリヘマトポルフィリンエーテルやタラポルフィリンナトリウムなどは既に実用化されている。患者のQOLを考慮すれば、局所投与により局在化が可能であり、使用される量が可能な限り少量である光増感剤が求められる。また、医師および患者にとって、一回の投与によりより治療効果の大きな光増感剤が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】内視鏡での術前マーキングとしての点墨法・クリッピング法(https://www.nissoken.com/jyohoshi/sc/20181011mihon/3.pdf)
【文献】小沢慶彰,村上雅彦,(2020).腹腔鏡下直腸癌手術における術前マーキング法の検討―点墨法とICG蛍光法の比較―.昭和学士会雑誌,80.1:1-6.
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平10-194998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した従来のマーキング剤の問題に鑑み、生体組織の特定部位のマーキングに使用した際に、比較的長期間にわたって、明瞭かつ的確に目的部位(典型的には腫瘍部位)のマーキングが可能であるとともに、当該部位を組織の外側から確認することを可能とする、共重合体及びその製造方法、並びにその共重合体を含む組織マーキング剤を提供するものである。
本発明はまた、上述した従来の光線力学的療法(PDT)の問題に鑑み、局所投与により、癌組織内に局所的に長期間残存する光増感剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、四級アンモニウムカチオンを有する構成単位と、ポルフィリンまたはその塩を有する構成単位とを含む共重合体は、局所投与した組織部位に結合して、比較的長期間に亘り目的の部位のマーキングを可能とし、しかも組織の外側から目的の部位を確認することができることを見出した。また、本発明者らは、この共重合体の特性をPDTで利用することを着想し、目的とする組織(典型的には癌組織)に光増感剤を局所投与することで、組織内に局所的に光増感剤を長期間残存させることができ、これによりより効果的なPDTを実施できることを見出した。
【0014】
本発明は、このような知見に基づくものであり、下記の共重合体及びその製造方法、並びにその共重合体を含む組織マーキング剤および光増感剤を提供する。
[1] 以下の式(I)で示される繰り返し単位と式(II)で示される繰り返し単位とを含む共重合体。
【化1】

(式(I)または(II)中、
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、または式:R-C(=O)-(式中、R は、OH基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、または無置換若しくは置換アミノ基を表す)の基を表し、
及びL は、それぞれ独立して、OまたはNHであり、
及びL は、2価の基であり、
Zはポルフィリン化合物またはその塩から任意の水素原子を1個除いた基であり、
Xは、アニオンを表す。)
[2] 前記L 及びL は、それぞれ独立して、炭素数1~5の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の環状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の芳香族炭化水素基、-O-、-S-、-N(R)-(式中、R は、水素原子、または炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す)、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-CH=N-、またはこれらを組み合わせた基である、[1]に記載の共重合体。
[3] 前記共重合体の全繰り返し単位数に対する、式(II)で表される繰り返し単位数の割合が、1~50%である、[1]または[2]に記載の共重合体。
[4] 式(I)で示される繰り返し単位数に対する式(II)で表される繰り返し単位数の比((II)/(I))が、1/1000~1/2である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体。
[5] 式(II)で表される構成単位を、1または2つ有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の共重合体。
[6] 前記ポルフィリン化合物が、メソポルフィリン、ジュウテロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、サイトポルフィリン、ロドポルフィリン、ピロポルフィリン、フィロポルフィリン;ヘプタカルボキシポルフィリン、ヘキサカルボキシポルフィリン、ペンタカルボキシポルフィリン等のアルキルカルボキシポルフィリン;およびこれらのポルフィリンの塩からなる群から選択される、[1]~[5]のいずれか一項に記載の共重合体。
[7] R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
は、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレンを表し、
は、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレンを表す、
[1]~[6]のいずれか一項に記載の共重合体。
[8] R 、R 、R 及びR は、-CHを表し、
は、-O-を表し、
は、-NH-を表し、
は、-CH-CH-を表し、
は、-CH-CH-CH-を表し、
Xは、Clを表し、
前記ポルフィリン化合物が、ヘマトポルフィリン二塩酸塩である、
[7]に記載の共重合体。
[9] 水溶性である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の共重合体。
[10] 分子量(MW)は、1000~100000である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の共重合体。
[11] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体を含む、組織マーキング剤。
[12] 水溶液である、[11]に記載の組織マーキング剤。
[13] 消化管の局部をマーキングするための[11]または[12]に記載の組織マーキング剤。
[14] 胃壁~直腸に亘る消化管の局部をマーキングするための[13]に記載の組織マーキング剤。
[15] 腹腔鏡下消化管手術ための[13]または[14]に記載の組織マーキング剤。
[16] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体を含む、光線力学療法用の光増感剤。
[17] 水溶液である、[16]に記載の光増感剤。
[18] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体を含む、医薬組成物。
[19] 癌治療のための[18]に記載の医薬組成物。
[20] 前記癌が、消化器癌である、[19]に記載の医薬組成物。
[21] [11]の組織マーキング剤を、目的の組織部位(典型的には腫瘍部位)に局所投与し、前記組織部位に所定の波長(例えば、350nm~420nmの波長)の紫外線を照射して組織マーキング剤を励起させることを含む、組織マーキング方法。
[22] 前記組織マーキング剤は、水溶液である、[21]に記載の組織マーキング剤。
[23] 前記目的の組織部位は、消化管の特定の部位である、[21]または[22]に記載の組織マーキング方法。
[24] 前記目的の組織部位は、胃壁~直腸に亘る消化管の特定の部位である、[23]に記載の組織マーキング方法。
[25] 腹腔鏡下消化管手術ために実施される、[23]または[24]に記載の組織マーキング方法。
[26] [16]に記載の光増感剤を対象の標的部位に投与すること、および前記対象の標的部位に所定の波長(例えば、630nm~660nmの波長)のレーザー光を照射することを含む、光線力学療法。
[27] 癌治療のための、[26]に記載の光線力学療法。
[28] 前記癌が、消化器癌である、[27]に記載の光線力学療法。
[29] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体の、組織マーキング剤を調製するための使用。
[30] 前記組織マーキング剤は水溶液である、[29]に記載の使用。
[31] 前記組織マーキング剤は、消化管の局部をマーキングするために使用される、[29]または[30]に記載の使用。
[32] 前記組織マーキング剤は、胃壁~直腸に亘る消化管の局部をマーキングするために使用される、[31]に記載の使用。
[33] 前記マーキングは、腹腔鏡下消化管手術ために実施される、[31]または[32]に記載の使用。
[34] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体の、光線力学療法用の光増感剤を調製するための使用。
[35] 前記光増感剤は、水溶液である、[34]に記載の使用。
[36] [16]に記載の光増感剤の、光線力学療用医薬を調製するための使用。
[37] 前記医薬は、癌治療用である[36]に記載の使用。
[38] 前記癌が、消化器癌である、[37]に記載の使用。
[39] [1]~[10]のいずれか一項に記載の共重合体を製造する方法であって、
以下の式(IA)及び式(IIA)の化合物であって、
【化2】

、R 、R 、R 、L 、L 、L 、L 及びXは[1]~[8]のいずれか一項に定義される通りである、化合物を重合する工程、及び
前記重合する工程によって得られた重合体をポルフィリン化合物またはその塩と反応させる工程を含む、上記方法。
[40] 前記ポルフィリン化合物は、メソポルフィリン、ジュウテロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、サイトポルフィリン、ロドポルフィリン、ピロポルフィリン、フィロポルフィリン;ヘプタカルボキシポルフィリン、ヘキサカルボキシポルフィリンおよびペンタカルボキシポルフィリン等のアルキルカルボキシポルフィリン、およびこれらのポルフィリンの塩からなる群から選択される、[39]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の共重合体は、四級アンモニウムカチオンを有する構成単位に由来するプラスの電荷により、生体組織への優れた結合性を示し、組織への注入後に拡散することなく、一週間以上の長期間にわたってピンポイントに目的の部位をマーキングすることができる。特に、様々なpH条件下でも常にプラスの電荷を有するため、様々なpH環境を有する生体組織でも優れた結合性を発揮し、例えば胃壁~直腸に亘る胃腸管で、目的の部位を一週間以上の長期間にわたって的確にマーキングできる。
【0016】
また、本発明の共重合体を用いて組織をマーキングした場合、ポルフィリン化合物またはその塩を有する構成単位により、UVの照射により組織の外側から明確にマーキング部位を視認することができる。
【0017】
また、本発明の共重合体は、癌組織等の目的の組織内に長期間にわたって局在し、レーザ照射により高い抗腫瘍効果を示す。従って、光増感剤の全身への拡散が大幅に低減され、PDT治療に必要な光増感剤の投与量も大幅に減少させることができ、PDTに伴う患者への負担を大幅に軽減することが期待される。また、1回の光増感剤の投与で、比較的長い時間PDTを実施でき、単回投与により得られる治療効果を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で得られた共重合体PMETAC-co-PAPMAA(HpD)およびヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD)をゲルクロマトグラフィーにかけて得られたクロマトグラムを示す。励起波長は400nmで、蛍光波長は635nmである。実線は、実施例1で得られた共重合体PMETAC-co-PAPMAA(HpD)のクロマトグラムであり、点線は、ヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD)のクロマトグラムである。縦軸は、蛍光強度を示し、横軸は、溶出時間を示す。
図2】実施例1で得られた共重合体PMETAC-co-PAPMAA(HpD)の365nmで励起した際の蛍光スペクトルを示す。
図3】実施例1で得られた共重合体PMETAC-co-PAPMAA(HpD)(濃度:0.25mg/mL)の吸収スペクトルを示す。
図4】10μMのヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD)の吸収スペクトルを示す。
図5】ブタの大腸組織の粘膜側に、実施例2および比較例1のマーキング剤を局所注射した後に、漿膜側(消化管の外側)および粘膜側(消化管の内腔側)から注射した部位のマーキング状態を写した写真である。左の写真は、比較例1のマーキング剤を大腸組織の粘膜側に局所注射した状態を示す写真であり、左から2番目の写真は、比較例1のマーキング剤を局所注射した状態を、漿膜側(消化管の外側)から見た写真である。左から3番目の写真は、実施例2のマーキング剤を大腸組織の粘膜側に局所注射した状態を示す写真であり、右から2番目の写真は、実施例2のマーキング剤を局所注射した状態を、漿膜側(消化管の外側)から見た写真であり、右側の写真は、実施例2のマーキング剤を局所注射し、365nmの紫外線を照射した状態を、漿膜側(消化管の外側)から見た写真である。矢印は、注射部位を示す。
図6】比較例2のマーキング剤(200μMのHpD)と実施例2のマーキング剤(HpD換算値で200μMのPMETAC-co-PAPMAA(HpD)、5mg/ml)をラットの胃前壁に局所注射した後の、胃の蛍光強度の経日変化を示すグラフである。
図7】比較例2および実施例2のマーキング剤を、ラットの胃前壁に局所注射した一週間後に、365nmの紫外線を照射した際の写真を示す。白矢印は、局所注射部位を示す。蛍光フィルター有の写真では、ポルフィリンの蛍光は白く表示される。
図8】比較例2のマーキング剤および実施例2のマーキング剤を腹腔内注射した後のラットの体重の経日変化を示すグラフである。
図9】それぞれ、比較例2のマーキング剤および実施例2のマーキング剤を腹腔内注射した後のラット血液中のALT、AST、CREおよびBUNの経日変化を示すグラフである。PBS投与群をコントロールとして用いた。
図10】比較例2のマーキング剤および実施例2のマーキング剤を腹腔内注射した一週間後に、腸管の癒着状態の確認した際の写真を示す。PBS投与群をコントロールとして用いた。
図11】実施例3および比較例3の光増感剤をColon26担癌マウスにおける癌組織に投与した後の各光増感剤の残存状態を経日的に示すグラフである。光増感剤の残存状態は、癌組織からの光増感剤に基づく蛍光を測定して評価した。図11(A)は、赤色可視光を照射しなかった場合の癌組織からの蛍光強度の経日的変化を示し、図11(B)は、赤色可視光を照射した場合のそれを示す。
図12】Colon26担癌マウスに実施例3および比較例3の光増感剤を用いてPDT療法を実施した際のColon26担癌マウス中の癌組織のサイズの変化を示す図である。比較対照として実施例3及び比較例3の光増感剤を投与後赤色可視光の照射を行わなかった場合の癌組織のサイズの変化も示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
<本発明の共重合体>
本発明の共重合体(単に「共重合体」と称することもある)は、少なくとも以下の式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位を含む。
【化3】

(式(I)または(II)中、
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、
、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基、または式:R -C(=O)-(式中、R は、OH基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、または無置換若しくは置換アミノ基を表す)の基を表し、
及びL は、それぞれ独立して、OまたはNHであり、
及びL は、2価の基であり、
Zはポルフィリン化合物またはその塩から任意の水素原子を1個除いた基であり、
Xは、アニオンを表す。)
【0020】
及びR は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し、より好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~3の直鎖アルキル基を表す。
【0021】
、R 及びR は、好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数5~6のシクロアルキル基、炭素数7~8のアラルキル基、または式R -C(=O)-の基(式中、R は、OH基、炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基、または無置換アミノ基を表す)を表す。R 、R 及びR は、より好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖アルキル基を表す。
【0022】
は、好ましくはOである。また、Lは、好ましくはNHである。
【0023】
及びL は、好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~5の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の環状脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の二価の芳香族炭化水素基、-O-、-S-、-N(R )-(式中、R は、水素原子、または炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す)、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-CH=N-、またはこれらを組み合わせた基であり、より好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~5の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数5~6の二価の環状脂肪族炭化水素基、炭素数5~6の二価の芳香族炭化水素基、-O-、-S-、-N(R)-(式中、R は、水素原子、または炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す)、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、-CH=N-、またはこれらを組み合わせた基である。L およびL は、さらに好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~5の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、または炭素数3~5の二価の分岐状脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素数1~3の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基である。
【0024】
Zは、ポルフィリン化合物またはその塩から任意の水素原子を1個除いた基である。
ポルフィリン化合物は、ポルフィンと称されるピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ有機化合物であり、例えば、メソポルフィリン、ジュウテロポルフィリン、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、サイトポルフィリン、ロドポルフィリン、ピロポルフィリン、フィロポルフィリン、またはヘプタカルボキシポルフィリン、ヘキサカルボキシポルフィリン、ペンタカルボキシポルフィリン等のアルキルカルボキシポルフィリン(好ましくはC1-10アルキルカルボキシポルフィリン、より好ましくはC3-8アルキルカルボキシポルフィリン)などを例示できる。
【0025】
ポルフィリン化合物の塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。また、酸付加塩としては、無機酸塩及び有機酸塩が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸から誘導される塩が挙げられ、有機酸塩としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸から誘導される塩が挙げられる。
塩基付加塩としても、無機塩基塩及び有機塩基塩が挙げられる。無機塩基塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等の無機塩基から誘導される塩が挙げられる。有機塩基塩としては、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフルオロアセチル、エタノールアミン等の有機塩基から誘導される塩が挙げられる。
【0026】
ポルフィリン化合物は、実際に光増感剤としても実用化され安全性が確認されているヘマトポルフィリンが好ましい。また、所定の組織へ注入してマーキング剤として利用されることを想定すると、本発明の共重合体は水溶性であることが好ましく、その点で、Zはポルフィリン化合物の塩であることが好ましく、塩としては、酸付加塩が好ましく、塩酸塩等の無機酸塩がより好ましい。
【0027】
によって表されるアニオンとしては、無機アニオンおよび有機アニオンが挙げられ、無機アニオンとしては、例えば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、ヒドロキシアニオン等が例示でき、有機アニオンとしては、例えば、炭素数1~4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2~5のアルキルカルボキシアニオン、炭酸水素アニオン等が例示できる。
【0028】
共重合体は、式(I)および式(II)以外の繰り返し単位を有してよく、例えば、式(II)中のZがHである繰り返し単位を含んでもよい。
また、共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体(ジブロック、トリブロック、又はマルチブロック)のいずれであってもよい。
【0029】
共重合体中の式(II)で表される繰り返し単位数は、共重合体をマーキング剤として利用した際に、所望の蛍光強度が得られると共に、マーキング剤を水溶液として得られ得るようにし共重合体間の凝集を低減する点から所定の範囲とすることが好ましい。具体的には、共重合体の全繰り返し単位の合計数に対する、式(II)で表される繰り返し単位数の割合が、0.01~50%であることが好ましく、1~30%であることがより好ましく、2~20%であることが特に好ましい。
【0030】
式(II)で示される繰り返し単位数と式(I)で表される繰り返し単位数との比((II)/(I))は、同様の点および組織への接着性の観点から、1/100000~1/1であることが好ましく、1/1000~1/1であることがより好ましく、1/100~1/2であることがさらに好ましく、1/70~1/10であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態による共重合体は、共重合体中に式(II)で表される繰り返し単位を1~10個有し、より好ましい実施形態による共重合体は、1~5個有し、更に好ましい実施形態による共重合体は、1または2つ有する。ポルフィリン部位の構造にもよるが、共重合体中のポルフィリン部位の数が多くなると、共重合体が疎水性となり水に溶解しないだけでなく、ポルフィリン環のスタッキングによりポルフィリンの蛍光が消光する傾向が強くなることがある。また、興味深いことに、共重合体は、共重合体に含まれるポルフィリン部位の数が少ない方が、より強い蛍光を発し、式(II)で表される繰り返し単位を、1または2つ有する共重合体で強い蛍光強度が確認された。
【0032】
ここで、本願明細書において、共重合体の全繰り返し単位の合計数に対する、式(II)で表される繰り返し単位数の割合、ならびに式(II)で示される繰り返し単位数と式(I)で表される繰り返し単位数との比((II)/(I))は、H NMR法によって決定される。より具体的には、共重合体を重メタノール、もしくは重水に溶解し、H NMRを測定し、側鎖由来のプロトンの積分値を分析することにより、上記割合を算定する。
また、本願明細書中、「水溶性」との用語は、相応する物質が純水中で少なくとも1g/lの溶解度を示すことを意味する。本発明の共重合体は、好ましくは少なくとも5g/lの溶解度を示し、より好ましくは少なくとも10g/lの溶解度を示し、特に好ましくは少なくとも100g/lの溶解度を示す。
【0033】
共重合体は、分子量(MW)について特に制限はなく、例えば、300~1000000の分子量(MW)を有し得る。もっとも、共重合体の分子量は、水溶性、粘度等の特性に影響を及ぼし得る要因の1つであるので、マーキング剤としての利用を考慮すると、1000~100000が好ましく、5000~70000がより好ましい。
本願明細書において使用する場合、「分子量」は、特に断らない限り、重量平均分子量(Mw)をいう。また、重量平均分子量(Mw)、および数平均分子量(Mn)とも、本願明細書においては、以下の条件でゲルろ過クロマトグラフィーによって測定される値を意味する。
測定装置:Shimadzu 20AD
カラム:TSK gel G3000PW and G5000PW columns
溶離液:0.5 M 酢酸水溶液(20mM tetramethylammonium hydroxide pentahydrate含有)
標準物質:ポリエチレングリコール
流速:0.5mL/min
【0034】
<本発明の共重合体の製造方法>
本発明の共重合体は、
反応工程1:式(IA)及び式(IIA)
【化4】

(式中、R 、R 、R 、R 、L 、L 、L 、L 及びXは、式(I)または(II)に関して述べた定義と同じであり、それぞれの好ましい、およびより好ましい(さらに好ましい等も同様である)選択肢も前述の通りである。)
の化合物を重合する工程、及び
反応工程2:反応工程1によって得られた重合体(以下では、中間重合体ということがある)をポルフィリン化合物と反応させる工程
を含む、方法により製造される。
【0035】
反応工程1
式(IA)及び式(IIA)の化合物の重合反応は、式(IA)及び式(IIA)の化合物と、熱重合開始剤と、溶媒との混合物を反応させることで行う。また、この重合反応は、例えば、70℃、窒素下等の不活性雰囲気下、20時間で行うことができる。式(IA)の化合物に対する式(IIA)の化合物の混合比((IIA)/(IA))は、予定する、繰り返し単位(I)の全繰り返し単位に対する比、ならびに繰り返し単位(I)および(II)間の構成比に応じて調整することが好ましいが、通常は、1/1000~1/2の範囲とすることができる。また、組織接着性等の求められる特性から1/200~1/50の範囲とすることが好ましい。また、ランダム共重合体、交互共重合体、およびブロック共重合体といった構造制御は、共重合体の製造において一般的に知られる方法で実施すればよい。
熱重合開始剤としては、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)など水溶性ラジカル発生剤を挙げることができる。溶媒としては、水、エタノール、または水・エタノール混合溶媒などを挙げることができる。
式(IA)及び式(IIA)の化合物は、市販の化合物を利用することができ、例えば、シグマアルドリッチ社、または東京化成工業株式会社から入手可能である。
【0036】
所望の分子量分布の共重合体を得たい場合には、反応工程1で合成された重合体を、所望の分子量分布に応じて、分画分子量1000~100000の透析膜を用いて透析により精製してもよい。
【0037】
反応工程2
反応工程1によって得られた重合体とポルフィリン化合物またはその塩とを反応させることで、重合体中の式(IIA)の化合物に由来する繰り返し単位のアミノ基にポルフィリンを導入することができる。中間重合体へのポルフィリンの導入は、例えば、中間重合体と、ポルフィリン化合物またはその塩と、縮合剤との混合物を、pH6~8の緩衝液中で、1~24時間反応させることで行うことができる。中間重合体とポルフィリン化合物またはその塩の混合比は、予定するポルフィリン化合物またはその塩の導入量に応じて調整することが好ましいが、通常一級アミノ基1モルに対して、ポルフィリン化合物またはその塩が2~20倍のモル数となる量とすることができ、製造コストの点から、2~5倍のモル数となる量とすることが好ましい。縮合剤としては、N-ヒドロキシコハク酸イミド、水溶性カルボジイミド塩酸塩などを挙げることができる。
【0038】
<本発明の共重合体の用途>
本発明の共重合体は、組織マーキング剤として使用することができ、生体の組織を局所的にマーキングすることができる。好ましい実施形態においては、共重合体は水溶性であり、共重合体を純水、生理食塩水、緩衝液等に溶解した溶液を組織マーキング剤とすることができる。また、本発明の組織マーキング剤は、負電荷を有していなければ各種添加剤を含んでもよい。溶液中の共重合体の濃度は、通常0.1mg/mL~100mg/mLとすればよく、1mg/mL~10mg/mLとすることが好ましい。このような溶液は、組織に局所的に注入して特定部位をマーキングでき、注入方法は特に制限はなく周知・慣用方法でよい。マーキング剤注入後は、紫外線、好ましくは、350nm~370nmの波長の紫外線を注入部位に照射してマーキング剤を励起して蛍光を発生させ、これにより注入部位を確認できる。
【0039】
本発明の共重合体は、四級アンモニウムカチオンを有する繰り返し単位を含むため、様々なpH条件下でも常にプラスの電荷を有する。このため、pHの異なる環境を有する様々な組織のすべてに対して優れた結合性を有しており、特に様々なpH環境を有する消化管、より具体的には胃壁~直腸に亘る消化管の局部をマーキングするのに適する。
また、本発明の共重合体は、ポルフィリン骨格を有する繰り返し単位に由来して、UVの照射により蛍光を発し、組織の外側から簡単にはっきりと特定の部位を視認することができる。このため、本発明の組織マーキング剤は、腹腔鏡下消化管手術において、施術前に、切除予定部位を組織の外側から確認できるというメリットがある。また、本発明の共重合体は、組織に注入された後、少なくとも1週間は組織に保持されるため、マーキング剤の注入からマーキングされた組織の切除手術までのスケジュールを比較的柔軟に決めることができる。加えて、組織に注入後に癒着等の副作用を生じないことも確認されており、安全性の高いマーキング剤が提供される。
【0040】
本発明の共重合体はまた、PDT療法における光増感剤として使用することができ、目的の組織(例えば癌組織)にPDT療法を実施する際に使用することができる。従って、本発明は、一の実施形態において、本発明の共重合体を含む医薬組成物、とりわけ癌治療のための医薬組成物を提供する。好ましい実施形態においては、共重合体は水溶性であり、共重合体を純水、生理食塩水、緩衝液等に溶解した溶液を光増感剤とすることができる。溶液中のまた、光増感剤及び医薬組成物は、負電荷を有していなければ各種添加剤を含んでもよい。溶液中の共重合体の濃度は、通常0.1mg/mL~100mg/mLとすればよく、1mg/mL~10mg/mLとすることが好ましい。
【0041】
このような溶液は、目的の組織(例えば癌組織)に、例えば、胃カメラ、大腸カメラ、気管支鏡などを用いて局所的に注入され、次いで、目的の組織に所定の波長(例えば、630nm~660nmの波長)のレーザー光(通常、赤色可視光)を照射し、これにより本発明の共重合体に光化学反応を引き起こして活性酸素を発生させ、がん細胞を変性・壊死させることができる。
【0042】
本発明の共重合体は、ポルフィリン骨格を有する繰り返し単位に由来して、赤色可視光の照射により、目的の組織(例えば腫瘍組織)を変性・壊死させる。
本発明の共重合体はまた、四級アンモニウムカチオンを有する繰り返し単位を含むため、様々なpH条件下でも常にプラスの電荷を有する。このため、pHの異なる環境を有する様々な組織(各種癌組織を含む)のすべてに対して優れた結合性を有しており、特に様々なpH環境を有する消化管、より具体的には胃壁~直腸に亘る消化管の特定組織(例えば、癌組織)のPDTに適する。四級アンモニウムカチオンを有する繰り返し単位はまた、癌組織に局所的に投与された際に、本発明の共重合体が癌組織に長期間局所的に維持されるのを可能とする。この結果、光増感剤の全身拡散が大幅に低減され、少量の光増感剤の一回の投与により、より治療効果が大きなPDT療法を実施できる。これは、患者のQOLを低下させることなく、PDT療法による高い治療効果をもたらすものと期待される。
【実施例
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
1.ポリカチオン含有ポルフィリン誘導体の製造
(実施例1)
[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド(METAC)とN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド(APMAA)の共重合体(PMETAC-co-PAPMAA)をフリーラジカル重合によって合成し、次いで、共重合体中のAPMAAの一級アミノ基にヘマトポルフィリンを反応させて、共重合体にポルフィリンを導入し、[PMETAC-co-PAPMAA(HpD)]を得た。
【化5】

具体的には、まず、熱重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ACVA、シグマアルドリッチ社製)を10mg、APMAA(シグマアルドリッチ社製)を50mg、METAC(シグマアルドリッチ社製)を200mgおよび水・エタノールの混合溶媒を2mLフラスコに加え、窒素バブリング後、窒素下で20時間、70℃で重合を行った(上記、反応工程1)。その後、分画分子量3500の透析膜を用いて純水に対する透析によって精製を行い、精製物を凍結乾燥して、白い粉末の共重合体(PMETAC-co-PAPMAA)を回収した。得られた共重合体の分子量を、下記条件で、ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した結果、数平均分子量(Mn)は23,500、重量平均分子量(Mw)は54,500、分子量分布Mn/Mwは、2.3であった。
測定装置:Shimadzu 20AD
カラム:TSK gel G3000PW and G5000PW columns
溶離液:0.5 M 酢酸水溶液(20mM tetramethylammonium hydroxide pentahydrate含有)
標準物質:ポリエチレングリコール
流速:0.5mL/min
【0045】
次に、40mgの共重合体に、2.5mgのヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD、MedChem Express Company社製)、11.5mgのN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS、社製)、15.5mgの水溶性カルボジイミド塩酸塩(WSCD・HCl、ペプチド研究所社製)を加え、500mMのリン酸バッファー(pH7.0)中で20時間、室温で反応させた(上記反応工程2)。
図1に示すゲル濾過クロマトグラム(蛍光検出)から、PMETAC-co-PAPMAA(HpD)のクロマトグラムは、低分子ヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD)の溶出時間よりも早く、また低分子HpDの溶出時間には、ピークがなかったことから、PMETAC-co-PAPMAA一分子中にHpDが導入され、精製により未反応の低分子HpDが除去されたことを確認した。図2に実施例1で得られたPMETAC-co-PAPMAA(HpD)の蛍光スペクトルを示す。低分子HpDと同様に、365nmで励起した際に、600nm~700nmに蛍光シグナルを確認した。
また、図3に実施例1で得られた共重合体PMETAC-co-PAPMAA(HpD)の吸収スペクトルを、図4に低分子ヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD)の吸収スペクトルを示す。低分子HpDの400nmの吸光度を用いて検量線を作成し、上記共重合体(PMETAC-co-PAPMAA)の数平均分子量(Mn)から、共重合体の全繰り返し単位の合計数に対する、繰り返し単位PAPMAA(HpD)の数の割合を算出したところ、その割合は1~2%であり、PMETACに対するPAPMAA(HpD)の構成比(PAPMAA(HpD)/PMETAC)は、1/50~1/100と推定された。また、後述する評価試験で述べる通り、PMETAC-co-PAPMAA(HpD)は、少なくとも5mg/mlの濃度で純水に溶解することを確認した。
【0046】
2.マーキング特性評価
(実施例2)
実施例1で得られたPMETAC-co-PAPMAA(HpD)を純水で溶解して、5mg/ml(HpD換算値で200μM)の水溶液を調製し、マーキング剤とした。
(比較例1)
臨床現場で用いられている墨(開明社製)を、そのまま比較対象のマーキング剤として用いた。
(比較例2)
ヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD、MedChem Express Company社製)を純水で溶解して、200μMの水溶液を調製し、マーキング剤とした。
(1)点墨法との比較による視認性の評価
食肉加工会社から購入したブタの大腸組織の粘膜側に、実施例2および比較例1のマーキング剤を10μL局所注射した。比較例1のマーキング剤では、注射直後、漿膜側(消化管の外側)および粘膜側(消化管の内腔側)からそのまま肉眼で注射部位を確認し、実施例2のマーキング剤では、365nmの紫外光を当てて、同様に漿膜側(消化管の外側)から肉眼で注射部位を確認した。
図5に示す通り、比較例1のマーキング剤では、漿膜側(消化管の外側)から注射部位を確認することが困難であった。また、粘膜側(消化管の内側)から見ても、注射部位とその周囲の組織との境界が明確に判別することができなかった。一方、実施例2のマーキング剤では、紫外光を照射すると、漿膜側(消化管の外側)から注射部位を明確に確認でき、注射部位とその周囲の組織との境界も明確に判別可能であった。
(2)HpDとの比較によるマーキングの持続性の評価
比較例2のマーキング剤(200μMのHpD)と実施例2のマーキング剤(HpD換算値で200μMのPMETAC-co-PAPMAA(HpD)、5mg/ml)を、それぞれ10μL、開腹して胃を露出させたラットの胃前壁に局所投与し、経日的に蛍光強度を確認した。
各マーキング剤を投与したラットの胃前壁に365nmの光を照射すると、投与直後は、比較例2および実施例2の何れのマーキング剤でも強い蛍光シグナルを発したが、図6に示す通り、投与後一日目で、比較例2のマーキング剤を投与したラットでは、投与部位で蛍光を検出できなくなった(シグナル強度は約2%)。これに対して、実施例2のマーキング剤では、投与後7日目でも強い蛍光シグナルが検出された(それぞれ比較例2および実施例2のマーキング剤を投与したラットの胃に7日後に紫外光を照射した際の蛍光発色状態を示す図7も参照)。
【0047】
3.安全性試験
消化管の組織マーキング剤は、内視鏡を用いて局所投与するため、マーキング時に腹腔内に漏れることがある。従って、組織マーキング剤は腹腔内に漏れても安全なものである必要がある。そこで、実施例2の組織マーキング剤について、腹腔内に漏れた際の安全性を確認した。
具体的には、6週齢のWistar雄ラットの腹腔内に、PBS、比較例2のマーキング剤および実施例2のマーキング剤を、それぞれ、100μLずつ投与し、それぞれのラットの体重を経日的に測定した。また、PBS、または各マーキング剤の投与前、投与の1日後および7日後に、ラットの尾の先端を切断し、ヘパリン加血として採血し、採取した血液を、3000rpm、5分間、室温で遠心分離処理し、血漿を回収した。得られた血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)を、動物用臨床化学分析装置(富士ドライケムNX7000V、富士フィルム社製)を用いて測定した。また、7日後の採血後に三種混合麻酔薬で鎮静し腹部を正中切開し臓器の癒着の有無を確認した。その結果、マーキング特性評価の試験での投与量の10倍量を投与したにもかかわらず、比較例2のマーキング剤および実施例2のマーキング剤によって、体重の変化(図8)、腎臓・肝臓障害を示すAST、ALT、BUN、CREの値に変化はなく(図9)、また腸管の癒着も見られなかった(図10)。従って、PMETAC-co-PAPMAA(HpD)の高い安全性が示された。
【0048】
4.PDT療法用光増感剤の評価
(実施例3)
実施例1で得られたPMETAC-co-PAPMAA(HpD)を純水で溶解して、5mg/ml(HpD換算値で200μM)の水溶液を調製し、光増感剤とした。
(比較例3)
ヘマトポルフィリン二塩酸塩(HpD、MedChem Express Company社製)を純水で溶解して、200μMの水溶液を調製し、光増感剤とした。
(1)Colon26担癌マウス
マウス大腸癌細胞株(Colon26、理化学研究所 細胞バンクから入手)をリン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁させた。この細胞株(細胞2×106個、50μL)をマウスの背中に注射し、Colonn26担癌マウスを得た。
【0049】
(2)IVIS画像診断による癌組織内残存性試験
細胞株注射後3日目に、実施例3および比較例3の光増感剤50μLをColon26担癌マウスの癌組織近傍に皮下注射し、皮下注射後の赤外可視光の照射の有無による光増感剤の残存状態への影響を調べた。詳細には、一方のColon26担癌マウスには各光増感剤を皮下注射後の翌日(すなわち、細胞株注射後4日目)から3日間連続して赤色可視光(波長:635nm、強度:130mW/cm2)を10分間照射し、もう一方のColon26担癌マウスには各光増感剤を皮下注射後赤色可視光を照射しなかった。IVISイメージングシステムを用いて、それぞれのColon26担癌マウスの癌組織からの光増感剤に基づく蛍光を測定し、光増感剤の残存性を評価した。結果を図11に示す。
【0050】
図11(A)は、赤色可視光を照射しなかった場合の各光増感剤を注射したColon26担癌マウスにおける癌組織からの蛍光強度の変化を示し、図11(B)は、赤色可視光を照射した場合のそれを示す。これらのグラフから理解できる通り、いずれも、光増感剤投与後の日数の経過に伴い、蛍光強度の低下は見られたが、実施例3の光増感剤を注射したマウスでは、比較例3の光増感剤を注射したマウスに比べて、高い蛍光強度を示した。このことは、実施例3の光増感剤は、比較例3に比べて、癌組織内により多く残存していたことを示す。また、図11(A)と図11(B)との比較から、実施例3の光増感剤は、赤色可視光の連続照射の影響を受けることなく癌組織内に残存することが示された。
【0051】
(3)PDT療法による抗腫瘍効果
細胞株注射後3日目に、実施例3および比較例3の光増感剤50μL、ならびに、コントロールとしてPBS投与群を、Colon26担癌マウスの癌組織近傍に皮下注射した。皮下注射後のColon26担癌マウスにPDT療法を行い、癌組織のサイズ(腫瘍サイズ)の経日的変化を調べた。詳細には、皮下注射後の当日から15日間、赤色可視光(波長:635nm、強度:130mW/cm2)を、毎日10分間、Colon26担癌マウスの癌組織に照射した。なお、皮下注射当日の赤色可視光の照射は、皮下注射後10分後に行った。結果を図12に示す。
【0052】
図12には比較のため、PDT療法を行わない(すなわち、赤色可視光を照射しない)場合の癌組織サイズの経日的変化も併せて示す。図12によれば、全体に日数の経過に伴い、癌組織は大きくなる傾向を示すが、驚くべきことに、実施例3の光増感剤を用い、PDT療法を行えば、癌組織の増大が劇的に抑制されることが分かった。
【0053】
以上から、本発明の共重合体は、PDT療法の光増感剤として機能し得、特に、長期間にわたって癌組織内に残存し、高い抗腫瘍効果を有することが示された。
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