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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】造粒方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/24 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
C22B1/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011169
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114749
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594148520
【氏名又は名称】株式会社新日南
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀田 太洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達弥
(72)【発明者】
【氏名】小林 宣裕
(72)【発明者】
【氏名】神崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】加島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】濱 優二
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147801(JP,A)
【文献】特開平06-007663(JP,A)
【文献】特開平03-213138(JP,A)
【文献】特開平05-247547(JP,A)
【文献】特開2002-206120(JP,A)
【文献】特開2009-242848(JP,A)
【文献】特開昭52-156769(JP,A)
【文献】特開昭53-116214(JP,A)
【文献】特開2009-041107(JP,A)
【文献】特開平11-021612(JP,A)
【文献】特開2001-271123(JP,A)
【文献】特開2022-037712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼を溶解する電気炉またはステンレス鋼を酸化精錬する電気炉から発生する粒径が20μm以下の粉体ダストを原料とし、総量に対して10mass%より大きく且つ12mass%以下となるように水と前記原料とを混練機に投入して混練を行い、
混練後の前記原料を、毎分6090回転で回転する回転床部と固定された側壁部とを有する造粒室を備えた造粒機に投入し、
前記造粒室内において前記回転床部を2分間以上に亘って回転させつつ、前記原料の造粒を行うことで、全粒子のうち、粒径4.75mm以上の粒子が占める割合が95%以上となる造粒物を得る
ことを特徴とする造粒方法。
【請求項2】
前記粉状の原料として、FeO:0.1~10mass%、Fe:25~45mass%、CaO:2~15mass%、SiO:5~15mass%、Al:0.1~15mass%、MgO:0.1~5mass%、MnO:2~15mass%、Cr:10~20mass%を含有し、且つ、残部が鉄および不可避の不純物であって、粒径が20μm以下のものを用いる
ことを特徴とする請求項に記載の造粒方法。
【請求項3】
前記粉状の原料の1次粒子径が全て直径で粒径が10μm以下のものを用いることを特徴とする請求項に記載の造粒方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体ダストを含む原料を用いた造粒方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス鋼の溶解/酸化精錬用電気炉からは、粉体ダストが発生することが知られている。この粉体ダストは、粒径10μm以下の微粉であるため、そのままでは活用できる用途が無い。また、例えばCrなどの環境に有害な元素が含まれている場合がある。 そのため、このようなダストの多くは産業廃棄物として処理されており、容易に埋め立て処分等ができず、廃棄コストが必要となるという問題が指摘されていた。
【0003】
さらに、粉体ダストに含まれるNi、Cr、Fe等は有価金属でもあるため、金属資源有効活用の観点からその元素の本質的価値を最大限活用できる用途を見出すことも重要である。ただ、このような有価金属を回収するにも、粉体ダストを、利用しやすい造粒物に造粒するのが好ましい。
上述した各問題に対して、粉体ダストを集塵し、より大きな粒径の造粒物に造粒して、廃棄以外の新しい用途に供することがすでに検討されている。このような粉体ダストの造粒には、従来から知られるパンペレタイザーやドラムペレタイザーによる造粒方法を用いることがまず考えられる。
【0004】
ただ、パンペレタイザーやドラムペレタイザーを用いた造粒方法は、造粒機の角度(造粒物の成長に影響)、水分の添加位置や添加量、装置内の意図しない部分へ付着した半造粒物のそぎ落としなどといった操作因子が多く存在し、熟練した作業員でなければ満足に造粒ができないという問題もあって、粉体ダストから造粒物を得るには不向きである。
そこで、このような一般的なパンペレタイザーやドラムペレタイザーを用いずに造粒を行う技術が、特許文献1~特許文献3のように開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、微粉を主体とする焼結原料(粒径が500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む原料)を用いた造粒方法であって、目標とする粒度分布を備えた造粒物を、従来よりも高収率で造粒できる焼結原料の造粒方法が開示されている。この特許文献1の造粒方法は、混練と造粒との2つの工程を1つの装置で実施可能な方法であり、横型容器の内径をD(m)、撹拌羽根の周速をu(m/s)、及び焼結原料の重力加速度をG(m/s)とした場合、撹拌羽根の撹拌加速度2×u2/D(m/s)を、2G(m/s)以上10G(m/s)以下の範囲内に設定することを特徴としている。
【0006】
また、特許文献2には、微粉を主体とする焼結原料(粒径が0μmを超え、且つ250μm以下とされた粒子を60質量%以上含む原料)の造粒方法であって、目標とする粒度分布を備えた造粒物を、従来に比べて高収率で製造できる微粉原料の造粒方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、鉄鋼の生産時に転炉工程で発生する含亜鉛転炉ダストを、亜鉛含有率の低いダスト分(平均粒径が8μm以上、且つ25μm以下の範囲にあって、亜鉛の含有率が1質量%以下のダスト分)と、亜鉛含有率の高いダスト分とに分けて、高炉又は転炉もしくは電炉へ効率良くリサイクルするリサイクル方法が開示されている。この特許文献3のリサイクル方法によれば、脱亜鉛処理に要するコストを低減させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-242939号公報
【文献】特開2009-287122号公報
【文献】再公表WO08/032638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、パンペレタイザーやドラムペレタイザーを用いて製造された造粒物には、次のような問題がある。
すなわち、パンペレタイザーやドラムペレタイザーを用いて製造された造粒物には、多量の水分が含まれている。この水分が多く含まれた造粒物はもろいため、造粒物を利用するためには水分を抜いて、造粒物の強度を高める必要がある。具体的には、造粒物強度が3.0kg/cm2を安定して満足することができる程度には、乾燥などで水分を抜いて造粒物強度の向上を図ることが不可欠となる。言い換えれば、パンペレタイザーやドラムペレタイザーなどの造粒機は、水分が抜けて強度が向上するまでの保管(養生)日数をある程度確保する必要があり、この水分除去のための保管が必要な分だけ生産性が良くない。
【0009】
加えて、将来的に労働人口の減少が想定されることから、熟練した作業員のスキルに依存することなく、造粒できることが望まれる。この点、熟練した作業員のスキルに頼るパンペレタイザーやドラムペレタイザーは好ましくはない。
一方、一般的なパンペレタイザーやドラムペレタイザーを用いない技術である特許文献1の造粒方法は、目標とする粒径となるまで造粒物を粒成長させ、目標とする粒度分布を備える造粒物の収率を向上させることができるとされており、そのため撹拌羽根の撹拌加速度なども規定している。しかし、造粒物の強度については何ら検討されていないため、高い造粒物強度の実現や、良好な生産性を実現できるものとはなっていない。
【0010】
さらに、特許文献2の造粒方法でも、造粒機の回転速度は20rpm程度と低く、このような低速の転動で強度に優れる造粒物が得られるとは到底考えることはできない。
さらにまた、特許文献3のリサイクル方法も、平均粒径が8μm以上、且つ、25μm以下の微細ダストを原料としているが、造粒機における回転速度について検討されておらず、少なくとも造粒物の強度が十分とは到底考えることはできない。
【0011】
つまり、特許文献1~特許文献3の方法はいずれも強度がある造粒物を造粒できるものではない。そのため、操作因子の少ない半自動装置を用いて、所定の強度を有する造粒物、つまり指で潰れない3.0kg/cm2以上の強度の造粒物を、ステンレス溶製炉などで発生する微粉ダストから造粒する技術を確立することが求められていた。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、微粉のダストから強度が3.0 kg/cm2以上の造粒物を、粒径4.75mm以上の割合が95%以上となるように、良好な生産性で造粒することができる造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の配送体は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の造粒方法は、ステンレス鋼を溶解する電気炉またはステンレス鋼を酸化精錬する電気炉から発生する粒径が20μm以下の粉体ダストを原料とし、総量に対して10mass%より大きく且つ12mass%以下となるように水と前記原料とを混練機に投入して混練を行い、混練後の前記原料を、毎分6090回転で回転する回転床部と固定された側壁部とを有する造粒室を備えた造粒機に投入し、前記造粒室内において前記回転床部を2分間以上に亘って回転させつつ、前記原料の造粒を行うことで、全粒子のうち、粒径4.75mm以上の粒子が占める割合が95%以上となる造粒物を得ることを特徴とする。
【0013】
お、好ましくは、前記粉状の原料として、FeO:0.1~10mass%、Fe:25~45mass%、CaO:2~15mass%、SiO:5~15mass%、Al:0.1~15mass%、MgO:0.1~5mass%、MnO:2~15mass%、Cr:10~20mass%を含有し、且つ、残部が鉄および不可避の不純物であって、粒径が20μm以下のものを用いるとよい。
【0014】
なお、好ましくは、前記粉状の原料の1次粒子径が全て直径で粒径が10μm以下のものを用いるとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の造粒方法によれば、微粉のダストから強度が3.0 kg/cm2以上の造粒物を、粒径4.75mm以上の割合が95%以上となるように、良好な生産性で造粒することができることができる。なお、本発明は、造粒物の原料として、ステンレス製造工程の粉体ダストに限定されるものではなく、例えば転炉ダストなど、粒径が20μm以下の微粉ダストに広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の造粒方法に用いられる造粒設備を示した図である。
図2】本実施形態の造粒機を示した断面図である。
図3】造粒機の回転床部の回転数と、粒径が4.75mm以上の造粒物が全造粒物に対して示す割合との関係を示したグラフである。
図4】篩の目開きと、目開きで篩上に捕集される造粒物の割合との関係を示したグラフである。
図5】造粒中に造粒物に加わる力を示した模式図である。
図6】造粒中に造粒室中で造粒物がどのような軌跡で運動するかを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る造粒方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
本実施形態の造粒方法は、粒径が20μm以下の粉状の原料Mとして、強度が3.0 kg/cm2以上の造粒物を得るものとなっている。
上述した粉状の原料Mは、ステンレス鋼の溶解/酸化精錬用電気炉から発生する粉体ダストと一般に呼ばれるものである。この粉体ダストには、Ni、Cr、Fe等は有価金属が含まれており、金属資源を有効活用するためには利用が困難なダスト形状から、より粒度が大きな造粒物に調整するのが好ましい。本発明において、粉状の原料Mの組成は特に限定されるものではないが、例えば粉状の原料として、FeO:0.1~10mass%、Fe:25~45mass%、CaO:2~15mass%、SiO:5~15mass%、Al:0.1~15mass%、MgO:0.1~5mass%、MnO:2~15mass%、Cr:10~20mass%を含有し、且つ、残部が鉄および不可避の不純物であって、粒径が20μm以下のものを用いることができる。より好適には1次粒子径が全て直径で10μm以下とされたものを用いることができる。また、上述した粉状の原料Mとしては、2次粒径が0.850mm以下のものを用いるのが好ましい。
【0018】
粒径が20μm以下の微粉(粉体ダスト)は、粒径が小さすぎてそのままでは活用できる用途がない。また、上述したCr等の元素(有害元素)を含むため、そのままでは容易に埋め立て処分等ができない場合もある。
そこで、本発明では、ダストよりも粒径が大きく利用しやすい造粒物に造粒を行って、従来は再利用が困難であった粉体ダストの用途を広げ、資源有効活用の観点から、この粉体ダストに金属や酸化物として含まれるNi、Cr、Fe等の元素(有価金属)の本質的価値を最大限活用できるようにしているのである。
【0019】
具体的には、本発明の造粒方法は、総量に対して10mass%より大きく且つ12mass%以下となるように水とを混練機2に投入して混練を行い、混練後の原料Mを、毎分50~150回転で回転する回転床部4と、固定された側壁部5とを有する造粒室6を備えた造粒機3に投入し、造粒室6内において回転床部4を2分間以上に亘って回転させつつ、原料Mの造粒を行うことで造粒物を得るものとなっている。なお、好ましくは、造粒室6内で造粒を行うに際しては、回転床部4を毎分60~110回転で回転させつつ、原料Mの造粒を行うのが好ましい。
【0020】
次に、本発明の造粒方法に用いられる造粒設備1、および造粒条件について詳しく説明する。
図2に示すように、本実施形態の造粒設備1は、原料供給機7と、混練機2と、造粒機3とで構成されている。
上述した原料供給機7は、上方に向かって広がるようにテーパ状に形成されたホッパ8と、ホッパ8の下端に設けられたシャッタ9と、を備えている。ホッパ8は、上方に向かって広がるようにテーパ状に形成されることで、原料Mをこぼさず収集できるようになっている。ホッパ8の上部から供給された原料Mは、ホッパ8の下部に設けられたシャッタ9に送られる。シャッタ9は、供給された原料Mを一定量ごとに遮断できるようになっており、原料Mを定量供給できるようになっている。シャッタ9を通過した材料は混練機2(混練機2の一端側)に送られる。
【0021】
混練機2は、水平方向に軸心を向けた混練スクリュを2軸備えた連続混練機2であり、
2軸の混練スクリュの間に供給された原料Mに、混練によるせん断力を付与することで、原料Mを混練可能となっている。混練機2は、ホッパ8に接続された一端側から原料Mを供給し、供給された原料Mを混練しつつ他端側に送り、造粒機3に接続された他端側から混練済の原料Mを排出する構成となっている。
【0022】
なお、本実施形態の混練機2の他端側は、造粒機3の上端と同じ高さ、または造粒機3よりも上方に配備されており、混練済みの原料Mを造粒機3の上方より供給可能となっている。
図2及び図3に示すように、造粒機3は、混練機2で混練された原料Mを造粒する造粒室6を備えている。この造粒室6は、本実施形態の場合、上下方向に軸心を向けた略円筒状に形成されている。そして、造粒室6の側壁部5が固定されているのに対して、回転床部4が回転可能となっており、供給された原料Mを転動しつつ造粒可能となっている。
【0023】
具体的には、本実施形態の造粒機3は、上方に向かって開口する有底円筒状の造粒室6を備えている。造粒室6の側壁部5は上下方向に沿って起立した垂直壁として形成されており、また造粒室6の底壁部10は水平方向に沿って伸びる水平壁として形成されている。底壁部10の中央には、底壁部10を上下方向に貫通する貫通孔11が形成されている。なお、造粒室6に形成される側壁部5は、装置上部から観察した形状が、図6図7に示すように、円形状に形成されていることが望ましいが、原料Mへ後述に記載する加工が行われるのであれば、これに限定されるものではない。例えば、多角形の形状でもよい。
【0024】
造粒室6の底壁部10の上側には、回転床部4が配備されている。この回転床部4は、造粒室6を構成する底壁部10とは別の部材であり、造粒室6に上方から嵌め込み可能な形状を有する円盤状に形成されている。回転床部4は、上述した造粒室6の底壁部10の上側に配備されており、固定された底壁部10に対して回転可能に設けられている。
回転床部4の中央側の下面には、下方に向かって垂下状に突出する軸部12が配備されている。この軸部12は、回転床部4と一体に回転可能とされており、上述した底壁部10の貫通孔11に対して上方から貫通状に挿通されている。また、軸部12の下端は駆動モータ13に連結されており、ウォームギヤあるいはベベルギヤなどの動力伝達機構14を介して駆動モータ13の回転駆動力が伝達可能とされている。
【0025】
それゆえ、駆動モータ13を駆動させると、駆動モータ13の回転駆動力が動力伝達機構14を介して軸部12に伝達され、円盤状の回転床部4が上下方向を向く軸回りに回転する。つまり、上述した造粒室6は、固定されていて回転しない造粒室6の側壁部5に対して、回転床部4が上下方向を向く軸回りに回転する構造となっており、造粒室6に供給された原料Mを、回転する回転床部4の上で転動しつつ造粒可能となっている。
【0026】
この造粒室6の側壁部5の下側には、造粒室6で造粒が終了した造粒物を室外に取り出す取出口15が形成されている。この取出口15は、造粒室6の側壁部5を内外に貫通するように形成されており、開口の下縁が回転床部4の上面と面一(同じ高さ)になる位置に形成されており、回転する回転床部4の上を転動し、遠心力によって外周側に転がってきた造粒物を室外に取り出し可能となっている。
【0027】
上述した取出口15には、取出口15から室外に取り出される造粒物のサイズを調整する造粒サイズ調整板16が設けられている。この造粒サイズ調整板16は、取出口15の開口のうち、下側の部分を閉鎖可能な板部材である。
つまり、供給された原料Mは円筒状に形成された造粒室6内で加工され、所定の加工時間にわたって造粒室6内に留まる。そして、造粒室6内で、回転床部4の表面を転動する造粒物は転動の時間が長くなるにつれて粒径が大きくなり、徐々にサイズが大きな造粒物に成長する。やがて、目的の粒径以上になった造粒物から順次、造粒サイズ調整板16を乗り越えて自動排出される。例えば、上述した造粒サイズ調整板16が存在すると、粒径が小さな造粒物は造粒サイズ調整板16を乗り越えることができず、室外に取り出されることはない。しかし、粒径が大きく成長した後であれば、造粒物は造粒サイズ調整板16を乗り越えることができ、一定のサイズまで成長した造粒物のみが室外に取り出される。
【0028】
つまり、造粒サイズ調整板16は、所定の粒径に満たない造粒物の排出を規制する規制板(邪魔板)として機能するものであり、所定の粒径以上の造粒物の取り出しのみを許容
して、排出される造粒物のサイズを調整する機能を有している。それゆえ、大粒径の造粒物を造粒する場合は、造粒室6に滞留する加工時間を長くすると共に、造粒サイズ調整板16の上下方向の幅、言い換えれば造粒サイズ調整板16の高さを高くするとよい。また、小粒径の造粒物を造粒する場合は、造粒室6に滞留する加工時間を短くすると共に、造粒サイズ調整板16の上下方向の幅、言い換えれば造粒サイズ調整板16の高さを低くするとよい。
【0029】
上述した構成の造粒設備1を用いて造粒を行う場合、造粒物の強度が指で摘まんでも潰れない程度の強さ、具体的には3.0kg/cm2以上の強度とする必要がある。この3.0kg/cm2以上の強度を満足できない場合は、造粒物が簡単に崩れてしまい、利用することが困難となる。また、造粒物の強度をさらに高めるために、追加で養生や乾燥が必要となり、造粒のコストが高騰したり生産性が悪化したりする。
【0030】
一方、造粒物として用いる場合には、利用しやすいサイズに造粒物を造粒する必要がある。この点、本発明の造粒方法では、造粒物の全粒子のうち、粒径4.75mm以上の粒子が占める割合が95%以上となるようなサイズ(粒度分布)に、造粒するのが好ましい。
さらに、上述した強度及びサイズの造粒物を生産する場合は、良好な生産性で造粒することも必要となる。
【0031】
そこで、上述した造粒物の強度、粒度分布、及び生産性をすべて満足すべく、本発明の造粒方法は、回転数を毎分50~150回転、好ましくは毎分60~110回転とし、2分間以上に亘って回転床部4を回転させて、造粒を行っている。なお、この加工時間とは、粉体ダスト等の原料Mをホッパ8から造粒設備1に投入し終えてから、造粒物が取出口15より排出されるまでの時間を示すものである。
【0032】
上述した回転数及び加工時間で造粒を行うと、回転する回転床部4の表面を造粒物が転動するにつれて造粒物が締まり、同時に造粒物から水分が抜けて造粒物の強度が向上するため、3.0kg/cm2以上の強度を備えた造粒物を効率的に生産することが可能となる。
また、造粒室6で造粒を行う加工時間が長くなるほど、造粒物は粒径が大きくなる。そして、2分間に亘って造粒を行うと粒径が4.75mm以上となるものの割合が大部分となるまで粒子が成長する。それゆえ、例えば高さが50mmの造粒サイズ調整板16を設けて、造粒物の取り出しサイズを調整すれば、粒径4.75mm以上の粒子が占める割合が95%以上となる粒度分布の造粒物を得ることが可能となる。
【0033】
上述した造粒設備1を用いて、回転数を毎分50~150回転、好ましくは毎分60~110回転とし、2分間以上に亘って回転床部4を回転させて造粒を行えば、強度、粒度分布、および生産性に優れた造粒物を得ることが可能となる。その結果、微細な粉体ダストのように粒径が20μm以下の粉状の原料Mであっても、強度が3.0kg/cm2以上となる造粒物を、粒径4.75mm以上の造粒物が95%以上となるような粒度分布で造粒することが可能となる。
【0034】
また、上述した造粒方法であれば、造粒により造粒物から水分が十分に抜けているため、従来の造粒方法のように水分を抜くための保管(養生)や乾燥が費用となり、これらの処理に必要とされていた工程の日数も生産工程から省略できるため、造粒の生産性を飛躍的に高めることができる。
【実施例
【0035】
次に、比較例及び実施例を用いて、本発明の造粒方法が有する作用効果について詳しく説明する。 実施例及び比較例は、粒径20μm以下の粉状の原料を、本発明の造粒機3、パンペレタイザー、及びドラムペレタイザーを用いて、表1および表2に記載の条件で造粒を行い、造粒された造粒物について、強度、水分量、及び粒度分布を計測したものである。
【0036】
なお、強度は、試料圧縮/破壊型の圧壊強度試験機を用いて計測した圧潰強度であり、指で潰れない程度の強度である「3.0kg/cm2以上」か、否かで判断した。上述のように造粒物が「3.kg/cm2以上」の強度である場合は、「ペレットのハンドリング性を向上させることができる」と判断できる。
また、上述した強度を造粒直後で達成できれば、造粒後に水分が抜けて強度が向上する
までの保管(養生)日数を省略できるため、「製造コストの低減や生産性の向上が期待できる」と判断できる。
【0037】
なお、強度の計測は、造粒直後、造粒3日後、造粒7日後においてそれぞれ計測したものである。
また、水分量は、造粒直後の造粒物に含まれる水分量を、赤外線加熱式の乾燥質量計を用いて計測したものである。
さらに、粒度分布は、「粒径が4.75mm以上となる造粒物が、全粒子に占める割合を、重量%の百分率で示したもの」である。
【0038】
上述した実施例および比較例の結果を、表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の比較例1及び比較例2の圧潰強度を見ると、造粒機3にパンペレタイザーを用いた比較例1や、ドラムペレタイザーを用いた比較例2では、圧潰強度が0.5kg/cm2や1kg/cm2と非常に低く、実施例の圧潰強度4.9kg/cm2~7.2kg/cm2に比して圧潰しやすいことがわかる。これは、造粒室6中に静止した側壁部5と回転する回転床部4とが設けられていないパンペレタイザーやドラムペレタイザーでは、造粒物が転動していないか、転動状態となっていても転動速度が遅いためと考えられる。つまり、転動が不十分な比較例1及び比較例2は、造粒物に大きな歪が付与されず、造粒された造粒物も弱いため、目標となる「≧3kg/cm2」という圧壊強度を満足できない。これに対して、静止した側壁部5に対して、底面が回転している実施例の造粒機3は、側壁部5と底面との相対速度の差が大きく、造粒物を強く転動できる。そのため、造粒物に対して大きな歪を付与でき、造粒された造粒物も強くなって、目標となる「≧3kg/cm2」という圧壊強度を満足できると判断される。
【0041】
また、比較例1や比較例2は、実際に設備を操業オペレートに熟練した作業員が作業に当たっている。このような作業には、原料M投入、水分の供給(まんべんなくふりかけるように水を投入)、新たな原料Mの供給(水同様にまんべんなくふりかけるように原料Mを投入)があり、作業者の熟練したスキルにより造粒物の仕上がり状態が良いものとなっている。
【0042】
つまり、比較例1や比較例2は、熟練したスキルを備えた作業者が作業しているため、造粒物の粒径の目標である粒径4.75mm以上の割合、すなわち歩留まりは99.1%や99.3%と高くなっている。
しかし、通常のスキルの作業者や熟練度が低い作業者が作業した場合には、粒径4.75mm以上の割合は上述した数値より低くなったり、安定した歩留まりの実現が難しくなったりすることを発明者は確認しており、実施例のような「粒径4.75mm以上の割合が安定的に95%以上となる」という結果は当然ながら満足できない可能性が高いと判断できる。
【0043】
次に、本実施形態の造粒機3、言い換えれば「側壁部5が固定された状態で回転床部4が回転する造粒機3」を用いて、造粒の条件である「回転床部4の回転数(装置の回転数)」、及び「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」を変えた場合に、「造粒直後の圧潰強度」及び「造粒物の総量に占める粒径4.75mm以上の造粒物の割合(+4.75mm比率)」がどのように変化するか整理し、結果を表2及び図4に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2及び図4の結果を見ると、造粒機3の造粒室6の回転数(回転床部4の回転数)を高くすると、「造粒物の総量に占める粒径4.75mm以上の造粒物の割合」が徐々に低くなっていくことがわかる。これは、回転床部4の回転数が高くなりすぎると、造粒物が側壁部5に衝突して、せっかく造粒した造粒物が破損してしまい、かえって粒径が小さい造粒物が増えてしまったためと考えられる。
【0046】
つまり、図5に示すように、造粒中、言い換えれば回転する回転床部4の上で転動する造粒物には、回転に伴う円周方向の力だけでなく、当然ながら遠心力も作用する。そのため、造粒物にはこれらの力の合力である力が、図中に矢印で示すように作用する。この合力は、造粒物を側壁部5に衝突させる方向に作用するため、造粒物は側壁部5への衝突と、衝突の反力で側壁部5から一旦離れ、回転に伴って再度衝突するという動作を繰り返す。
【0047】
その結果、図6示すように、造粒物は螺旋状に回転しつつ衝突と離反とを繰り返しつつ、回転床部4の回転軸心の周囲を周回するように移動する。そのため、回転床部4の回転数が高い場合は、側壁部5への衝突頻度が高くなり、造粒物が破損して粒径をかえって小さくしてしまう可能性も高くなるものと考えられる。
また、表2及び図4の結果を見ると、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が10%の場合には、「造粒物の総量に占める粒径4.75mm以上の造粒物の割合」が19%や29%と著しく低い。これに対して、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が11%や12%の場合には、回転床部4の回転数によっては、「造粒物の総量に占める粒径4.75mm以上の造粒物の割合」が95%という目標値以上とできることがわかる。
【0048】
一方、回転床部4の回転数については、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が11%や12%の実験例において、回転数が50rpm~150rpm、好ましくは60rpm~110rpmとすることで、「造粒物の総量に占める粒径4.75mm以上の造粒物の割合」を95%という目標値以上とすることができる。
さらに、表2の実施例1~実施例11までの造粒物を、目開きが1.0mm、1.75mm、4.75mm、6.75mm、9.5mm、19mmの篩に、目開きが大きい順番からかけて、どの程度の造粒物が篩上に捕集されるか重量%で示した結果を、図5に示す。
【0049】
図5の結果を見ると、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が10%の実施
例10や実施例11は、目開きが1.0mm、1.75mm、4.75mm、6.75mmまでの篩には捕集されるが、9.5mm、19mmの篩にはほとんど捕集されない。このことから、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が10%より小さくなると、造粒物の粒径が小さくなり、粒径4.75mm以上の造粒物を造粒できないことがわかる。
【0050】
しかし、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」が11%や12%の実施例1~実施例9は、目開きが1.0mmや1.75mmの篩にはほとんど造粒物が捕集されず、目開きが4.75mm~19mmの篩上に造粒物の大部分が捕集されている。このことから、「原料Mにおける水分の配合量(配合設定値)」を11%や12%とすると、十分な粒径まで造粒物が成長し、粒径4.75mm以上の造粒物を高い収率で造粒できると判断される。
【0051】
以上のことから、粒径が20μm以下の粉状の原料Mに対して、総量の10mass%より大きく且つ12mass%以下となるように水を配合したものを原料Mとして混練を行い、混練後の原料Mを上述した構成(回転床部4のみが回転する造粒室6を有する
構成)の造粒機3で、回転数が50rpm~150rpm、好ましくは60rpm~110rpmとなる造粒条件で造粒すれば、「粒径4.75mm以上の割合が安定的に95%以上となる」という結果が得られると考えられる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0053】
1 造粒設備
2 混練機
3 造粒機
4 回転床部
5 側壁部
6 造粒室
7 原料供給機
8 ホッパ
9 シャッタ
10 底壁部
11 貫通孔
12 軸部
13 駆動モータ
14 動力伝達機構
15 取出口
16 造粒サイズ調整板
M 原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6