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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】トレッド深さ推定システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20241126BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20241126BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241126BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C11/24 B
B60C19/00 H
G01B11/02 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023519295
(86)(22)【出願日】2021-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 IL2021051101
(87)【国際公開番号】W WO2022070176
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-09-11
(31)【優先権主張番号】17/039,793
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520375077
【氏名又は名称】ユーヴイアイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UVeye Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン ダニー
(72)【発明者】
【氏名】シュクリャル ロマン
(72)【発明者】
【氏名】グリンシュポウン イリア
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500540(JP,A)
【文献】特表2018-537655(JP,A)
【文献】特表2012-523547(JP,A)
【文献】米国特許第5987978(US,A)
【文献】特開2019-035626(JP,A)
【文献】特開2008-139126(JP,A)
【文献】特開2018-192632(JP,A)
【文献】特開2019-215247(JP,A)
【文献】特開2001-201323(JP,A)
【文献】特開平10-089927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
B60C 11/24
G01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド深さを推定するコンピュータ化されたシステムであって、前記システムが、処理及びメモリ回路(PMC)を備え、前記処理及びメモリ回路(PMC)が、
撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得し、前記画像が、前記タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、前記撮像デバイスが、前記検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、前記画像が、前記トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から前記撮像デバイスによって取得され、前記タイヤが、前記水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの前記溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、前記画像が前記照明部分及び前記影部分の少なくとも一部を捕捉するように、前記撮像デバイス及び前記照明デバイスが、前記第2の角度よりも小さい前記第1の角度を有するように位置決めされており、
少なくとも、前記照明部分に対応する第1の画像セグメント及び前記影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、前記画像においてセグメンテーションを実行し、
前記少なくとも1つの溝の溝幅を取得し、
少なくとも前記第1の画像セグメント、前記溝幅、及び前記第2の角度に基づいて前記トレッド深さを推定するように、構成されている、コンピュータ化されたシステム。
【請求項2】
前記第1の画像セグメントが、前記照明部分が完全に前記少なくとも1つの溝の前記側壁上にあることを示し、前記推定することが、前記溝幅及び前記第2の角度に基づいて前記トレッド深さの範囲を決定することを含む、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項3】
前記第1の画像セグメントが、前記少なくとも1つの溝の底部に当たる前記照明部分の第1のサブセクションに対応する第1のサブセグメントと、前記少なくとも1つの溝の側壁に当たる前記照明部分の第2のサブセクションに対応する第2のサブセグメントとを含み、前記推定することが、
前記第1のサブセグメントの幅を測定することと、
前記第1のサブセグメントの幅及び前記溝幅を用いて前記影部分の幅を計算することと、
前記影部分の幅及び前記第2の角度を用いて前記タイヤのトレッド深さを推定することと、を含む、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項4】
前記検査レーンの前記少なくとも一方の側において互いに近接して位置決めされた前記撮像デバイス及び前記照明デバイスを更に備え、少なくとも前記撮像デバイスが、前記PMCに動作可能に接続されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項5】
前記第2の角度が、異なるタイヤについて所定の深さ範囲内のトレッド深さの推定を提供するために、異なる溝幅及び/又は前記検査レーン上のタイヤ位置を含む異なるタイヤ特性に適合するように構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項6】
前記PMCが、前記トレッド深さを所定の基準と比較し、前記タイヤを交換すべきかどうかを決定するように更に構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項7】
前記セグメンテーションが、異なる照明レベルに従ってタイヤ画像をセグメンテーションするように訓練されたセグメンテーション学習モデルを使用して実行される、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項8】
前記画像が、1つ以上のトレッド摩耗バーの情報を更に提供し、前記PMCが、前記トレッド摩耗バーのうちの少なくとも1つの深さを推定するように更に構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項9】
前記画像が、1つ以上のタイヤの情報を提供し、前記PMCが、前記1つ以上のタイヤに対応する1つ以上のサブ画像を抽出し、前記1つ以上のサブ画像のそれぞれに対して前記セグメンテーション及び前記推定を実行するように構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項10】
前記タイヤが、移動車両上の回転するタイヤであり、前記PMCが、前記タイヤと前記撮像デバイスとの間の相対運動中に前記タイヤの一連の画像を取得し、前記タイヤの円周の少なくとも一部をカバーする推定されたトレッド深さを取得するように、前記一連の画像のうちの少なくともいくつかに対して前記セグメンテーション及び前記推定を実行するように構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項11】
前記画像が、前記少なくとも1つの溝上の複数の測定位置に対応する複数の画像パッチに分割され、前記PMCが、前記照明デバイス、前記撮像デバイス、及び前記タイヤの中心に対して水平面に沿った第1の画像パッチについて前記第2の角度を使用して前記セグメンテーション及び推定を実行するように構成されており、前記水平面より上又は下にある少なくとも第2の画像パッチについて、前記PMCが、前記第2の画像パッチ内の測定位置に対応する3Dの第2の角度を取得し、前記3Dの第2の角度を使用して前記第2の画像パッチに対して前記セグメンテーション及び推定を実行するように構成されている、請求項1に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項12】
前記3Dの第2の角度が、前記水平面に対する前記測定位置の相対位置、及び前記タイヤの半径に基づいて、前記第2の角度に対して補正を実行することによって取得される、請求項11に記載のコンピュータ化されたシステム。
【請求項13】
タイヤのトレッド深さを推定するコンピュータ化された方法であって、前記方法が、処理及びメモリ回路(PMC)によって実行され、前記方法が、
撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得することであって、前記画像が、前記タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、前記撮像デバイスが、前記検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、前記画像が、前記トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から前記撮像デバイスによって取得され、前記タイヤが、前記水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの前記溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、前記画像が前記照明部分及び前記影部分の少なくとも一部を捕捉するように、前記撮像デバイス及び前記照明デバイスが、前記第2の角度よりも小さい前記第1の角度を有するように位置決めされている、取得することと、
少なくとも、前記照明部分に対応する第1の画像セグメント及び前記影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、前記画像においてセグメンテーションを実行することと、
前記少なくとも1つの溝の溝幅を取得することと、
少なくとも前記第1の画像セグメント、前記溝幅、及び前記第2の角度に基づいて前記トレッド深さを推定することと、を含む、コンピュータ化された方法。
【請求項14】
前記第1の画像セグメントが、前記照明部分が完全に前記少なくとも1つの溝の前記側壁上にあることを示し、前記推定することが、前記溝幅及び前記第2の角度に基づいて前記トレッド深さの範囲を決定することを含む、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項15】
前記第1の画像セグメントが、前記少なくとも1つの溝の底部に当たる前記照明部分の第1のサブセクションに対応する第1のサブセグメントと、前記少なくとも1つの溝の側壁に当たる前記照明部分の第2のサブセクションに対応する第2のサブセグメントとを含み、前記推定することが、
前記第1のサブセグメントの幅を測定することと、
前記第1のサブセグメントの幅及び前記溝幅を用いて前記影部分の幅を計算することと、
前記影部分の幅及び前記第2の角度を用いて前記タイヤのトレッド深さを推定することと、を含む、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項16】
前記第2の角度が、異なるタイヤについて所定の深さ範囲内のトレッド深さの推定を提供するために、異なる溝幅及び/又は前記検査レーン上のタイヤ位置を含む異なるタイヤ特性に適合するように構成されている、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項17】
前記画像が、1つ以上のトレッド摩耗バーの情報を更に提供し、前記方法が、前記トレッド摩耗バーのうちの少なくとも1つの深さを推定することを含む、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項18】
前記画像が、1つ以上のタイヤの情報を提供し、前記方法が、前記1つ以上のタイヤに対応する1つ以上のサブ画像を抽出し、前記1つ以上のサブ画像のそれぞれに対して前記セグメンテーション及び前記推定を実行することを含む、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項19】
前記タイヤが、移動車両上の回転するタイヤであり、前記方法が、前記タイヤと前記撮像デバイスとの間の相対運動中に前記タイヤの一連の画像を取得し、前記タイヤの円周の少なくとも一部をカバーする推定されたトレッド深さを取得するように、前記一連の画像のうちの少なくともいくつかに対して前記セグメンテーション及び前記推定を実行することを含む、請求項13に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項20】
コンピュータによって実行されたときにコンピュータにタイヤのトレッド深さを推定する方法を実行させる命令のプログラムを有形に具体化する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法が、
撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得することであって、前記画像が、前記タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、前記撮像デバイスが、前記検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、前記画像が、前記トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から前記撮像デバイスによって取得され、前記タイヤが、前記水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの前記溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、前記画像が前記照明部分及び前記影部分の少なくとも一部を捕捉するように、前記撮像デバイス及び前記照明デバイスが、前記第2の角度よりも小さい前記第1の角度を有するように位置決めされている、取得することと、
少なくとも、前記照明部分に対応する第1の画像セグメント及び前記影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、前記画像においてセグメンテーションを実行することと、
前記少なくとも1つの溝の溝幅を取得することと、
少なくとも前記第1の画像セグメント、前記溝幅、及び前記第2の角度に基づいて前記トレッド深さを推定することと、を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、概して、タイヤ検査の分野に関し、より具体的には、トレッド深さ推定のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、道路と直接接触する車両の唯一の部品であるため、車両の重要な構成要素である。タイヤは、車両荷重を支持し、牽引力及び制動力を路面に伝達し、道路衝撃を吸収し、進行方向を変更及び維持するという機能のために、車両のハンドリング及び安全性に影響を及ぼす可能性がある。最適な性能のために、タイヤは、正しい空気圧、トレッド深さ、バランスなどを有しなければならず、車両の車輪は、適切に設置され、維持されなければならない。したがって、少なくとも安全性及び経済性の理由から、タイヤは定期的に検査されなければならない。
【0003】
タイヤのトレッドは、道路又は地面と接触するその円周上のゴムを指す。トレッドはタイヤの重要な部分であり、その重要性は安全性から経済性まで多岐にわたっている。それはタイヤに道路をグリップする能力を与え、燃費を最大にするのを助ける。
【0004】
タイヤが使用されるにつれて、トレッドは徐々に摩耗し、トラクションを提供する際のその有効性を制限する。したがって、時間が経つにつれて、タイヤは、道路をグリップする効果が低下する。場合によっては、トレッドが過度に摩耗した場合、それは重大な安全上の問題となり得る。タイヤ溝は、タイヤの下から水を排出し、ハイドロプレーニングを防止するように設計されている。浅いトレッド溝はまた、雨天時に車両を制御することをより困難にし、ハイドロプレーニングの可能性が増大する。
【0005】
摩耗及び損傷に関するタイヤの現在の検査は、通常、検査ステーションにおいて手動で行われる。例えば、タイヤのゴムの上部からタイヤの溝の底部までの垂直測定値であるトレッド深さは、タイヤの状態の重要な指標として得ることができる。タイヤトレッド深さゲージは、しばしば、プローブバーを溝に挿入し、ショルダーをトレッドと面一に押すことによってトレッド深さを測定するために使用される。深さの測定は、ゲージの上部から読み取ることができる。しかしながら、このような手動検査は、費用及び時間がかかるだけでなく、検査を実行する特定の人員によって引き起こされる検査エラー及び変動が生じやすい。
【0006】
タイヤ検査の特定の態様は、コンピュータ技術の発展とともに部分的に自動化されてきたが、トレッドの状態に関する正確な情報を自動的に提供することができる検査システムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の主題の特定の態様によれば、タイヤのトレッド深さを推定するコンピュータ化されたシステムであって、システムが、処理及びメモリ回路(processing and memory circuitry、PMC)を備え、処理及びメモリ回路(PMC)が、撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得し、画像が、タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、撮像デバイスが、検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、画像が、トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から撮像デバイスによって取得され、タイヤが、水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、画像が照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉するように、撮像デバイス及び照明デバイスが、第2の角度よりも小さい第1の角度を有するように位置決めされており、少なくとも、照明部分に対応する第1の画像セグメント及び影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、画像においてセグメンテーションを実行し、少なくとも1つの溝の溝幅を取得し、少なくとも第1の画像セグメント、溝幅、及び第2の角度に基づいてトレッド深さを推定する、ように構成されている、コンピュータ化されたシステムが提供される。
【0008】
上記の特徴に加えて、本開示の主題の本態様によるシステムは、技術的に可能な任意の所望の組み合わせ又は順列で、以下に列挙される特徴(i)~(xi)のうちの1つ以上を含むことができる。
(i)第1の画像セグメントは、照明部分が少なくとも1つの溝の側壁上に完全にあることを示し、推定することは、溝幅及び第2の角度に基づいてトレッド深さの範囲を決定することを含む。
(ii)第1の画像セグメントは、少なくとも1つの溝の底部に位置する照明部分の第1のサブセクションに対応する第1のサブセグメントと、少なくとも1つの溝の側壁に位置する照明部分の第2のサブセクションに対応する第2のサブセグメントとを含み、推定することは、第1のサブセグメントの幅を測定することと、第1のサブセグメントの幅及び溝幅を用いて影部分の幅を計算することと、影部分の幅及び第2の角度を用いてタイヤのトレッド深さを推定することと、を含む。
(iii)システムは、検査レーンの少なくとも一方の側に互いに近接して配置された撮像デバイス及び照明デバイスを更に備え、少なくとも撮像デバイスは、PMCに動作可能に接続されている。
(iv)第2の角度は、異なるタイヤについて所定の深さ範囲内のトレッド深さの推定を提供するために、異なる溝幅及び/又は検査レーン上のタイヤ位置を含む異なるタイヤ特性に適合するように構成されている。
(v)PMCは更に、トレッド深さを所定の基準と比較し、タイヤを交換すべきかどうかを判定するように構成されている。
(vi)セグメンテーションは、異なる照明レベルに従ってタイヤ画像をセグメント化するように訓練されたセグメンテーション学習モデルを使用して実行される。
(vii)画像は、1つ以上のトレッド摩耗バーの情報を与え、PMCは、トレッド摩耗バーのうちの少なくとも1つの深さを推定するように更に構成されている。
(viii)画像は、1つ以上のタイヤの情報を提供し、PMCは、1つ以上のタイヤに対応する1つ以上のサブ画像を抽出し、1つ以上のサブ画像のそれぞれに対してセグメンテーション及び推定を実行するように構成されている。
(ix)タイヤは、移動車両上の回転タイヤであり、PMCは、タイヤと撮像デバイスとの間の相対運動中にタイヤの一連の画像を取得し、タイヤの円周の少なくとも一部を覆う推定トレッド深さを取得するように、一連の画像のうちの少なくともいくつかに対してセグメンテーション及び推定を実行するように構成されている。
(x)画像は、少なくとも1つの溝上の複数の測定位置に対応する複数の画像パッチに分割される。PMCは、照明デバイス、撮像デバイス、及びタイヤの中心に対して水平面にある第1の画像パッチについて、第2の角度を使用してセグメンテーション及び推定を実行するように構成されている。水平面より上又は下にある少なくとも第2の画像パッチについて、PMCは、第2の画像パッチ内の測定位置に対応する3Dの第2の角度を取得し、3Dの第2の角度を使用して第2の画像パッチに対してセグメンテーション及び推定を実行するように構成されている。
(xi)3Dの第2の角度は、水平面に対する測定位置の相対位置とタイヤの半径とに基づいて第2の角度に補正を実行することによって得られる。
【0009】
本開示の主題の他の態様によれば、タイヤのトレッド深さを推定するコンピュータ化された方法であって、方法が、処理及びメモリ回路(PMC)によって実行され、撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得することであって、画像が、タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、撮像デバイスが、検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、画像が、トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から撮像デバイスによって取得され、タイヤが、水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、画像が照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉するように、撮像デバイス及び照明デバイスが、第2の角度よりも小さい第1の角度を有するように位置決めされている、取得することと、少なくとも、照明部分に対応する第1の画像セグメント及び影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、画像においてセグメンテーションを実行することと、少なくとも1つの溝の溝幅を取得することと、少なくとも第1の画像セグメント、溝幅、及び第2の角度に基づいてトレッド深さを推定することと、を含む、コンピュータ化された方法が提供される。
【0010】
開示された主題の本態様は、必要な変更を加えて、技術的に可能な任意の所望の組み合わせ又は順列で、システムに関する上述の特徴(i)~(xi)のうちの1つ以上を適宜含むことができる。
【0011】
本開示の主題の他の態様によれば、コンピュータによって実行されたときにコンピュータにタイヤのトレッド深さを推定する方法を実行させる命令のプログラムを有形に具体化する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、方法が、撮像デバイスから、検査レーン上に位置決めされたタイヤの画像を取得することであって、画像が、タイヤのトレッド及びそこに埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供し、撮像デバイスが、検査レーンの少なくとも一方の側に位置決めされており、画像が、トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度から撮像デバイスによって取得され、タイヤが、水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じ、画像が照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉するように、撮像デバイス及び照明デバイスが、第2の角度よりも小さい第1の角度を有するように位置決めされている、取得することと、少なくとも、照明部分に対応する第1の画像セグメント及び影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、画像においてセグメンテーションを実行することと、少なくとも1つの溝の溝幅を取得することと、少なくとも第1の画像セグメント、溝幅、及び第2の角度に基づいてトレッド深さを推定することと、を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0012】
開示された主題の本態様は、必要な変更を加えて、技術的に可能な任意の所望の組み合わせ又は順列で、システムに関する上述の特徴(i)~(xi)のうちの1つ以上を適宜含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示を理解し、それが実際にどのように実行され得るかを理解するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ実施形態をここで説明する。
図1A】本開示の主題の特定の実施形態によるタイヤ検査システムの機能ブロック図を概略的に示す。
図1B】本開示の主題の特定の実施形態によるトレッド深さ推定のコンピュータ化されたシステムの一般化されたブロック図を概略的に示す。
図2】本開示の主題の特定の実施形態によるトレッド深さ推定の一般化されたフローチャートを示す。
図3】本開示の主題の特定の実施形態による、照明部分が溝の底部及び側壁の両方に当たる場合のトレッド深さ推定の一般化されたフローチャートを示す。
図4】本開示の主題の特定の実施形態による、タイヤに対する撮像デバイス及び照明デバイスのシステム構成の概略図である。
図5】本開示の主題の特定の実施形態によるタイヤ画像の2つの例を示す。
図6A】本開示の主題の特定の実施形態による、影部分及び照明部分を示すタイヤ画像からの画像パッチの例を示す図である。
図6B】本開示の主題の特定の実施形態によるセグメント化されたタイヤ画像の一例を示す。
図7】本開示の主題の特定の実施形態による、トレッド深さをどのように推定するかの一例を概略的に示す。
図8】本開示の主題の特定の実施形態による、異なる溝幅と推定トレッド深さとの間の相関関係を例示する表を示す。
図9】本開示の主題の特定の実施形態による、溝を通して離間されたトレッド摩耗バーを有するタイヤを示す図である。
図10A】本開示の主題の特定の実施形態による、タイヤ画像の異なる位置から抽出された画像パッチの例を示す。
図10B】本開示の主題の特定の実施形態による、タイヤの円周に対して平行でない方向にトレッド及び溝を有するタイヤの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、本開示を十分に理解できるようにするために、数多くの具体的な詳細が示されている。しかしながら、本開示の主題は、これらの具体的な詳細がなくとも実施され得ることが、当業者には理解されるであろう。他の実施例では、本開示の主題を曖昧にしないように、周知の方法、手順、構成要素、及び回路については詳細に説明していない。
【0015】
特に明記しない限り、以下の記述から明らかなように、明細書の記述全体を通して、「取得する」、「捕捉する」、「実行する」、「推定する」、「セグメント化する」、「測定する」、「計算する」、「比較する」、「抽出する」、「検査する」、「選択する」、「使用する」などの用語を使用する説明は、データを操作及び/又は他のデータに変換するコンピュータの動作及び/又は処理を指しており、当該データは例えば電子量などの物理量として表され、及び/又は当該データは物理的な対象物を表す。「コンピュータ」という用語は、非限定的な例として、本出願で開示されるタイヤ検査システム、トレッド深さ推定システム及びその部分を含む、データ処理機能を備えたあらゆる種類のハードウェアベースの電子デバイスをカバーするように広く解釈されるべきである。
【0016】
本明細書の教示による動作は、所望の目的のために特別に構築されたコンピュータによって、又は非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムによって所望の目的のために特別に構成された汎用コンピュータによって実行することができる。
【0017】
本明細書で使用される「非一時的メモリ」、「非一時的記憶媒体」及び「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、現在開示されている主題に適した任意の揮発性又は不揮発性コンピュータメモリを含むように広く解釈されるべきである。
【0018】
現在開示されている主題の実施形態は、特定のプログラミング言語を参照して説明されていない。本明細書に記載されているように、現在開示されている主題の教示を実装するために、様々なプログラミング言語を使用できることが理解されるであろう。
【0019】
本明細書で使用されるように、「例えば」、「など」、「例として」などの語句及びその変形は、本開示の主題の非限定的な実施形態を説明するものである。本明細書における「1つの事例」、「いくつかの事例」、「他の事例」又はそれらの変形への言及は、実施形態に関連して記述された特定の特徴、構造又は特性が、本開示の主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つの事例」、「いくつかの事例」、「他の事例」又はその変形の語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。
【0020】
特に別の定めがない限り、別々の実施形態の文脈で記載されている本開示の主題のある特徴は、単一の実施形態においてこれらを組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の主題の様々な特徴は、別々に又は任意の好適な部分組み合わせで提供することもできる。以下の詳細な説明では、方法及び装置を十分に理解できるようにするために、数多くの具体的な詳細が示されている。
【0021】
本開示の主題の実施形態では、図面に示される1つ以上の段階は、異なる順序で実行されてもよく、及び/又は段階のうちの1つ以上のグループは、同時に実行されてもよく、逆もまた同様である。
【0022】
このことを念頭に置いて、本開示の主題の特定の実施形態によるタイヤ検査システムの機能ブロック図を概略的に示す図1Aに注目する。
【0023】
図1Aに示されるシステム100は、車両の1つ以上のタイヤ(本明細書では検査されるタイヤとも呼ばれる)を自動的に検査するためのコンピュータベースのタイヤ検査システムである。タイヤは、自動車、自転車、オートバイ、バス、トラック、重機、及び航空機などを含むがこれらに限定されない多くのタイプの車両において使用され、本開示は、特定のタイプの車両のタイヤを検査することに限定されない。
【0024】
システム100は、自動トレッド深さ推定のために構成されたコンピュータ化されたシステム101と、撮像取得デバイス130(本明細書では撮像デバイスとも呼ばれる)及び照明デバイス132のうちの少なくとも1つのセットとを備える。具体的には、システム101は、撮像デバイス130から、検査レーン110上に配置された少なくとも1つのタイヤ112の1つ以上の画像を取得するように構成することができ、取り込まれた画像に基づいてタイヤのトレッド深さを自動的に推定する。いくつかの場合において、検査されるタイヤは、検査レーン上に配置された又は検査レーンを通過する車両114に関連付けられることができる。いくつかの他の場合において、検査されるタイヤは、独立したタイヤであることができる。
【0025】
上述したように、タイヤのトレッド(タイヤトレッド又は単にトレッドとも呼ばれる)は、地面と接触する、タイヤの円周上のゴムを指す。ゴムに埋め込まれた又は成形された溝は、トレッドパターンを形成する。溝は、タイヤの下から水を排出し、ハイドロプレーニングを防止するように設計されている。タイヤが使用されるにつれて、トレッドが摩耗し、トラクションを提供する際のその有効性を制限し、車両は、制動距離の延長を生じる可能性がある。浅いトレッド溝はまた、雨天時に車両を制御することをより困難にし、ハイドロプレーニングの可能性が高まる。トレッド摩耗状態を評価するために、トレッド深さを推定し、タイヤの状態の直接表示として提供することができる。
【0026】
本明細書で使用するとき、「トレッド深さ」という用語は、タイヤトレッド上の溝(パターン)の深さを指す。トレッド深さは、タイヤのゴムの上部(すなわち、トレッドの表面)からタイヤの溝の底部までの垂直測定値である。トレッド深さは、タイヤの幅に沿ったいくつかの位置で測定することができる。新しいタイヤは、典型的には、8~9ミリメートル(10/32~11/32インチ)の平均トレッド深さを有する。異なる国は、トレッド深さについて異なる法的制限及び要件を有し得る。例えば、米国におけるほとんどの州及びタイヤ製造業者は、タイヤの溝のうちの1つ以上が1.6ミリメートル(2/32インチ)まで摩耗したときにタイヤがすり減っていると考え、タイヤを交換しなければならない。安全上の理由から、場合によっては、夏タイヤについては3ミリメートルの最小トレッド深さを有することが推奨され、冬タイヤについては少なくとも4ミリメートル(5/32インチ)を有することが推奨される。
【0027】
図1Aの説明を続けると、撮像デバイス130は、タイヤ112の少なくとも一方の側に(例えば、検査レーン110の少なくとも一方の側に)位置することができ(例えば、取り付けられている又は他の方式で配置されている)、タイヤの1つ以上の画像を取得するように構成することができる。特定の実施形態によれば、撮像デバイス130は、タイヤトレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度からタイヤに面するように配置/配向され、1つ以上の画像は、第1の角度から撮像デバイスによって取得される。撮像デバイス130によって取得された画像は、上述したように、タイヤトレッド及びその中に埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供することができる。撮像デバイス130は、システム101に動作可能に接続されることができ、捕捉された画像は、有線又は無線通信を介して、処理のためにシステム101に伝送されることができる。
【0028】
本明細書で使用される撮像デバイスは、例えば、画像及び/又はビデオ記録機能を有するデジタルカメラなど、特定の解像度及び/又は周波数でタイヤ画像を捕捉するために使用することができる画像取得機能を備えた任意の種類の画像取得デバイス又は汎用デバイスを指すことができることに留意されたい。
【0029】
照明デバイス132は、撮像デバイス130に近接して配置され(例えば、タイヤの撮像デバイスと同じ側に配置され)、画像が比較的高い解像度及び品質で捕捉されることを可能にするように、撮像デバイスの視野(Field of View、FOV)をカバーする照明を提供するように構成されている。場合によっては、撮像デバイス及び/又は照明デバイスは、検査レーンの少なくとも1つの側に配置された1つのポールなどの支持構造に取り付けることができる。撮像デバイス及び/又は照明デバイスは、検査されるタイヤに対して適切な高さ及び/又は角度で支持構造に取り付けることができる。
【0030】
具体的には、いくつかの実施形態では、撮像デバイス130は、タイヤトレッドの表面に対して垂直な水平方向に対して第1の角度(撮像角度とも呼ばれる)からタイヤに面するように配置/配向され、照明デバイスは、水平方向に対して第2の角度(照明角度とも呼ばれる)からタイヤを照明するように配置/配向され、少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じさせる。撮像デバイス及び照明デバイスは、第2の角度よりも小さい第1の角度を有するように配置され、それにより、画像は、図4を参照して以下で更に詳細に説明されるように、照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉する。
【0031】
いくつかの実施形態では、車両の両側からのタイヤ画像を同時に取得及び処理することができるように、検査レーンの両側に位置する撮像デバイス及び照明デバイスのセットが存在することができる(図1Aに例示されるように)。場合によっては、車両114は、検査レーンを通過する移動車両であることができ、検査されるタイヤは、移動車両の回転タイヤである。いくつかの他の場合には、検査されるタイヤは、検査レーン上で独立しているか、又は静止車両に関連付けられている静止タイヤである。検査されるタイヤが移動車両の回転タイヤである場合、画像取得及び/又は照明は、車両の存在/接近を検出することができる外部感知デバイスによってトリガされることができる(例えば、道路ループ、赤外線(Infra-red、IR)ビーム、VMDなど)。
【0032】
システム101は、撮像デバイス130、場合によっては照明デバイスにも動作可能に接続することができ、デバイスを制御し(例えば、画像取得及び照明動作を同期させ)、セットアップ段階中にシステムを較正し、実行時にトレッド深さを推定するようにタイヤの取得画像を処理するために使用することができる。場合によっては、システム101は、1つ以上の外部データリポジトリ138に動作可能に接続することができる。
【0033】
ここで図1Bを参照すると、本開示の主題の特定の実施形態を有するトレッド深さ推定のコンピュータ化されたシステムの一般化されたブロック図が概略的に示されている。
【0034】
システム101は、ハードウェアベースのI/Oインターフェース126及び記憶ユニット122に動作可能に接続された処理及びメモリ回路(PMC)102を備えることができる。PMC102は、図2図3を参照して更に詳述されるオペレーティングシステム101のための必要な処理を提供するように構成される。PMC102は、プロセッサ(別個に図示せず)及びメモリ(別個に図示せず)を備える。PMC102のプロセッサは、PMCに含まれる非一時的コンピュータ可読メモリ上に実装されたコンピュータ可読命令に従っていくつかの機能モジュールを実行するように構成することができる。このような機能モジュールは、以下、PMCに含まれるものとして言及される。本明細書で言及されるプロセッサという用語は、データ処理能力を有する任意の処理回路を包含するように拡張的に解釈されるべきであり、本開示は、そのタイプ若しくはプラットフォーム、又はその中に含まれる処理コアの数に限定されないことに留意されたい。
【0035】
特定の実施形態によれば、PMC102に含まれる機能モジュールは、互いに動作可能に接続されたセグメンテーションモジュール104及び深さ推定モジュール106を含むことができる。PMCは、(例えば、ハードウェアベースのI/Oインターフェース126を介して)撮像デバイス130から、検査されるタイヤの画像を取得するように構成されている。画像は、タイヤのトレッド及びその中に埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供する。上述したように、撮像デバイス及び照明デバイスは、撮像デバイスによって取得された画像が少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁において照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉するような特定の相対位置に配置されている。セグメンテーションモジュール104は、少なくとも、照明部分に対応する第1の画像セグメント及び影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメントを取得するために、画像においてセグメンテーションを実行するように構成することができる。深さ推定モジュール106は、少なくとも1つの溝の溝幅を取得し、少なくとも第1の画像セグメント、溝幅、及び第2の角度に基づいてトレッド深さを推定するように構成され得るように構成することができる。これらの機能モジュールによる処理の詳細は、図2及び図3を参照して後述する。
【0036】
記憶ユニット122は、検査される1つ以上のタイヤの取得された画像を記憶するように構成することができる画像データベース123を含むことができる。場合によっては、これらの画像は、撮像デバイス130から事前に取得され、PMCによって検索及び処理されるために画像データベース123に記憶されることができる。記憶ユニット122は、例えば、画像セグメント、測定値などの中間処理結果のいずれかを記憶するように構成することもできる。任意選択で、画像データベース123は、システム101の外部に、例えば、外部データリポジトリのうちの1つに、又は外部システム若しくはプロバイダに存在することができ、画像は、I/Oインターフェース126を介して検索することができる。
【0037】
I/Oインターフェース126は、入力として、撮像デバイス及び/又は画像データベースから取得された画像を取得し、出力として、推定されたトレッド深さを提供するように構成することができる。任意選択的に、システム101は、入力及び/又は出力の表示をユーザにレンダリングするように構成されたグラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)124を更に備えることができる。任意選択的に、GUIは、オペレーティングシステム101のためのユーザ指定入力を可能にするように構成することができる。
【0038】
場合によっては、システム101は、ローカル又はリモート(例えば、クラウドベース)であることができる1つ以上の外部データリポジトリ138に動作可能に接続することができる。取得された画像及び/又はランタイム画像処理の結果は、記憶ユニット122及び/又は外部データリポジトリ138に保存することができる。
【0039】
また、図1A及び/又は図1Bに示されるシステムは、分散コンピューティング環境において実装することができることに留意されたい。例として、図1Bに示される機能モジュールのうちのいくつかは、いくつかのローカル及び/又は遠隔デバイスにわたって分散されることができ、通信ネットワークを通じてリンクされることができる。別の例として、システム101は、撮像デバイスとは異なる場所に配置することができる。
【0040】
当業者は、本開示の主題の教示が図1A及び図1Bに示されるシステムによって拘束されないことを容易に理解するであろう。同等及び/又は変更された機能は、別の形式で統合又は分割することができ、ソフトウェアとファームウェア及び/又はハードウェアとの適切な組み合わせで実装できる。図1A及び図1Bにおけるシステムは、独立型ネットワークエンティティであるか、又は他のネットワークエンティティと完全に又は部分的に統合されることができる。当業者はまた、データリポジトリ又はその中の記憶ユニットが、他のシステムと共有されることができるか、又はサードパーティ機器を含む他のシステムによって提供されることができることを容易に理解するであろう。
【0041】
必ずしもそうではないが、システム101の動作のプロセスは、図2及び図3に関して説明される方法の段階の一部又は全部に対応することができる。同様に、図2及び図3に関して説明される方法並びにそれらの可能な実装は、システム101によって実装することができる。したがって、図2及び図3に関して説明した方法に関連して論じた実施形態は、システム101の様々な実施形態として必要な変更を加えて実装することもでき、逆もまた同様であることに留意されたい。
【0042】
次に図2を参照すると、本開示の主題の特定の実施形態によるトレッド深さ推定の一般化されたフローチャートが示されている。
【0043】
撮像デバイスによって取得されたタイヤ(すなわち、検査レーン上に配置された検査されるタイヤ)の少なくとも1つの画像を取得することができる(202)(例えば、図1Bに示したように、PMC102によってI/Oインターフェース126を介して、又は記憶ユニット122から)。
【0044】
本明細書で使用される少なくとも1つの画像は、i)任意の種類の画像取得デバイスによって任意の好適なフォーマットで捕捉された1つ以上の原画像/生画像、又はii)原画像に対して特定の画像処理手順を実行した後に生成された1つ以上の処理画像のいずれかを指すことができる。場合によっては、撮像デバイスによって取得された原画像は、タイヤだけでなく車両の他の構成要素も含む車両のより大きな部分を捕捉することができる。そのような場合、原画像は、タイヤを含む処理されたタイヤ画像を得るために、セグメント化及/又はクロッピングされる必要があり得る。例として、タイヤが移動車両の回転するタイヤである場合、セグメンテーションは、2つの連続するフレーム間のピクセルの動きを推定し、水平移動のピクセルから円形移動のピクセル(すなわち、ホイールピクセル)を分離することによって実行することができる。
【0045】
特定の実施形態によれば、車両の複数のタイヤが検査される。そのような場合、タイヤの各々について、1つ以上の画像を捕捉することができる。車両が移動車両である場合、例として、撮像デバイスは、車両が検査レーンを通過しているときに、所与の捕捉率(例えば、毎秒100~250フレーム)でタイヤの複数の画像を捕捉することができる。場合によっては、複数の捕捉された画像のうちの少なくとも1つの画像が選択され、更なる処理のために直接使用され得る。いくつかの他の場合には、重複する視野を有する複数の画像は、タイヤの単一のスティッチングされた画像を形成するために組み合わせることができる。そのようなスティッチングされた画像は、典型的には比較的高い解像度を有し、更なる処理のために使用することができる。
【0046】
簡略化及び例示の目的で、本開示の特定の実施形態は、タイヤの1つの画像に基づくトレッド深さ推定を参照して説明される。しかしながら、これは決して本開示を限定することを意図するものではなく、本明細書に開示される推定方法は、タイヤの複数の画像、又は車両の1つ以上のタイヤのうちの1つ以上の画像に同様に適用することができる。
【0047】
上述したように、取得された画像は、検査されるタイヤを捕捉し、タイヤのトレッド及びその中に埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供する。図5は、本開示の主題の特定の実施形態によるタイヤ画像の2つの例を示す。図示されるように、502は、車両の3つのタイヤの画像表現を含む、撮像デバイスによって取得された原画像であり、504は、原画像に基づいてスケーリング及び/又はクロップされた処理されたタイヤ画像であり、タイヤの部分/スライスを表す画像パッチを含む。示されるように、画像502及び504は、タイヤのトレッド及びその中に埋め込まれた1つ以上の溝の情報を提供する。
【0048】
タイヤ画像は、図1Aを参照して上述したように、撮像デバイス及び照明デバイスに関する特定のシステム構成で取得される。具体的には、撮像デバイスは、検査レーンの少なくとも一方の側に配置され、画像は、トレッドの表面に対して垂直な水平方向に対する第1の角度から撮像デバイスによって取得される。タイヤは、水平方向に対して第2の角度から照明デバイスによって照明され、少なくとも1つの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分を生じさせる。撮像デバイス及び照明デバイスは、画像が照明部分及び影部分の少なくとも一部を捕捉することができるように、第2の角度よりも小さい第1の角度を有するように特定の相対位置に配置される。
【0049】
ここで図4を参照すると、本開示の主題の特定の実施形態による、タイヤに対する撮像デバイス及び照明デバイスのシステム構成の概略図が示されている。
【0050】
図1Aの例を続けると、車両114が検査レーン110上に配置されており、検査される車両の2つのタイヤ402及び404が示されている。上述したように、車両114は、検査レーンを通過する移動車両であるか、又は検査レーンに駐車された静止車両であることができる。撮像デバイス130及び照明デバイス132は、検査レーンの片側に互いに近接して配置されている。タイヤ404を例にとると、撮像デバイス130は、タイヤトレッドの表面に対して垂直な水平方向410に対して第1の角度406から画像を取得するように配向されている。水平方向410は、検査レーンの地面に対して水平であることを指す。この特定の例では、方向410は、車両の進行方向に対して平行である、又は車両の長手方向軸に対して平行であると理解することもできる。同様に、照明デバイス132は、水平方向410に対して第2の角度408からタイヤ404を照明するように配向されている。図示されているように、第1の角度406が第2の角度408よりも小さいこと、すなわち、撮像デバイス130が照明デバイス132と比較してタイヤ/検査レーンの比較的近くに配置されていることが、本開示によって具体的に設計されている。
【0051】
照明デバイス132はタイヤの側方から光を照射し、トレッドが光の一部を遮断するので、タイヤの溝の底部及び/又は側壁に影部分及び照明部分が自然に生じる。撮像デバイスは、照明デバイスと比較してタイヤに対してより小さい角度で配置されているので、取得される画像は、照明部分全体及び影部分の少なくとも一部を捕捉することができる。
【0052】
図6Aは、本開示の主題の特定の実施形態による影部分及び照明部分を示すタイヤ画像からの画像パッチの例を示す。画像600の本実施例では、照明部分603は、溝の底部及び側壁の両方に当たっている。溝の側壁は、トレッドの表面と溝の底部との間の溝の側部上の垂直領域を指す。画像600に捕捉される影部分601は、照明デバイスとタイヤとの相対位置に起因して、溝の底部において照明デバイスによって実際に生じる影部分の一部である。
【0053】
図2の説明を続けると、少なくとも、照明部分に対応する第1の画像セグメント(照明セグメントとも呼ばれる)と、影部分の少なくとも一部に対応する第2の画像セグメント(影セグメントとも呼ばれる)とを含む画像セグメントを取得するために、画像において画像セグメンテーションを行うことができる(204)(例えば、PMC102のセグメンテーションモジュール104によって)。
【0054】
本明細書で言及される画像セグメンテーションは、例えば、閾値化、クラスタリング、エッジ検出、ブロブ分析、分類、又は任意の他の好適なセグメンテーション方法などの異なるセグメンテーション方法を使用して様々な方法で実行することができ、本開示は、本明細書で使用される特定のセグメンテーション方法によって限定されない。いくつかの実施形態では、画像セグメンテーションは、機械学習を使用して実行することができる。例として、セグメンテーションは、例えば、深層学習ニューラルネットワーク(深層ニューラルネットワーク又はDNNとも呼ばれる)などのセグメンテーション学習モデルを使用して実装することができる。セグメンテーション深層学習モデルは、PMC102のセグメンテーションモジュール104に含まれるものと見なすことができる。
【0055】
本明細書で使用されるDNNは、それぞれのDNNアーキテクチャに従って編成された複数の層を含む教師あり又は教師なしDNNを指すことができる。非限定的な例として、DNNの層は、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、CNN)アーキテクチャ、回帰型ニューラルネットワークアーキテクチャ、再帰型ニューラルネットワークアーキテクチャ、GANアーキテクチャなどに従って編成することができる。任意選択で、層のうちの少なくともいくつかは、複数のDNNサブネットワークに編成することができる。DNNの各層は、当技術分野では通常次元、ニューロン、又はノードと呼ばれる複数の基本計算要素(computational element、CE)を含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、セグメンテーション深層学習モデル(例えば、セグメンテーションDNN)は、例えば、照明部分、影部分、トレッド表面部分などの異なる照明レベルを有する異なる部分に従って各々がセグメント化及びラベル付けされた訓練タイヤ画像のセットを含む訓練データセットを使用して訓練することができる。セグメントに対応する訓練画像及びラベルは、訓練のためにセグメンテーションDNNに提供される。訓練プロセスは、タイヤ画像のセグメンテーションラベル(例えば、ピクセル単位のセグメンテーションラベル)を正しく予測することができるようにモデルを最適化することである。場合によっては、様々なタイプのタイヤ(例えば、異なるタイプの車両のタイヤ)の画像をカバーする異なる訓練データセットが、実行時に異なるタイプの入力タイヤ画像をセグメント化できるようにモデルを訓練するために提供される必要がある。
【0057】
本開示の主題の教示は、特定のセグメンテーション方法、又はセグメンテーションを実行するために使用される機械学習モデルの特定のタイプ又は構造によって拘束されないことに留意されたい。
【0058】
特定の実施形態によれば、タイヤ画像の異なるセグメントへの分割は変化してもよく、例えば、特定のセグメントをサブセグメントに更に分割することが可能である。例として、照明部分が溝の底部及び側壁の両方に当たる場合、照明部分に対応する第1の画像セグメントは、2つのサブセグメントに更に分割することができる。第1のサブセグメントは、少なくとも1つの溝の底部に当たる照明部分の第1のサブセクション(底部照明部分とも呼ばれる)に対応し、第2のサブセグメントは、少なくとも1つの溝の側壁に当たる照明部分の第2のサブセクション(側壁照明部分とも呼ばれる)に対応する。2つのサブセグメントは、溝の底部と側壁との間のコーナーラインによって分離されている。そのようなサブセグメンテーションは、セグメンテーションDNNによって実行されるセグメンテーションから生じることができ、すなわち、セグメンテーションDNNの出力は、影セグメントと照明セグメント内の2つのサブセグメントとを含む。代替的に、サブセグメンテーションは、影セグメント及び照明セグメントを含むDNNの出力に対して別々に実行することができる。例として、それは、照明角度に対する底部及び側壁の異なる光反射から生じる2つのサブセクションのグレースケールレベル間の差に基づいて実行することができる。別の例として、それは、2つのサブセクションを分離するコーナーラインを検出することによって実行することができる。いくつかの更なる場合において、サブセグメンテーションは、上述したような任意の他のセグメンテーション方法において実行され得る。
【0059】
次に図6Bを参照すると、本開示の主題の特定の実施形態によるセグメント化されたタイヤ画像の例が示されている。示されるように、セグメント化されたタイヤ画像620は、図6Aに示されるようなタイヤ画像600に対応する。タイヤ画像600は、図示されているように、複数の画像セグメント602、604、606、608及び610にセグメント化されている。セグメンテーションは、画像セグメントがタイヤ画像における異なる部分を表すように実行される。一例として、画像セグメント604、606、及び608はそれぞれ、影部分601、溝の底部に当たる照明部分603の第1のサブセクション、及び溝の側壁に当たる照明部分603の第2のサブセクションに対応する。画像セグメント606及び608は、溝の底部と側壁との間のコーナーラインによって分離されており、照明部分603に対応する2つのサブセグメントである。加えて、画像セグメンテーションは、溝に隣接するトレッド部分を表す画像セグメント602及び610ももたらす。
【0060】
図2の説明を続けると、少なくとも1つの溝の幅(溝幅とも呼ばれる)を得ることができ(206)、少なくとも第1の画像セグメント、溝幅、及び第2の角度に基づいてトレッド深さを推定することができる(208)(例えば、PMC102の深さ推定モジュール106によって)。
【0061】
本開示の主題の特定の実施形態によれば、トレッド深さを推定するために影部分及び照明部分の測定値を使用することが本開示によって提案される。具体的には、影部分の幅Wが得られれば、図7を参照して説明したように、例えば、D=Wshadow/tan(θ)によって、影部分の幅Wshadowと第2の角度θ(すなわち、照明角度)とに基づいてトレッド深さDを推定することができる。しかしながら、撮像デバイスが、図4に示されるように、水平/進行方向に沿って直接位置付けられ、したがって、垂直方向からタイヤに面する場合にのみ、撮像デバイスは、影部分全体を捕捉することができ、その幅は、次いで、画像から取得されることができることを理解されたい。しかしながら、多くの場合、特に、検査されるタイヤが走行中の車両上にある場合、(検査レーンを掘って撮像デバイスを地下に設置するなど、設備に変更を加えることなく)撮像デバイスをそのような方向に配置することは不便であるか、又はほとんど不可能である。
【0062】
本開示では、撮像デバイスと照明デバイスとを検査レーンの側方に位置させ、上記のように特定の相対位置に配置することにより、取得される画像が影部分の少なくとも一部を捕捉することができるので、照明部分全体が画像に捕捉されることを確実にする。このようにして、照明部分の幅を取得することができ、溝の全幅から照明部分の幅を引くことにより、影部分の幅を推定することができる。
【0063】
タイヤ上の照明部分の位置に応じて、トレッド深さを推定する異なるシナリオが存在し、これは、例えば、異なるタイヤタイプ、溝幅、タイヤ年齢、照明角度、照明デバイス/撮像デバイスに対する検査レーン上のタイヤの位置などの要因によって異なり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、上述のように、照明部分が溝の底部及び側壁の両方に当たるとき、照明部分に対応する第1の画像セグメントは、実際には、少なくとも1つの溝の底部に当たる照明部分の第1のサブセクションに対応する第1のサブセグメントと、少なくとも1つの溝の側壁に当たる照明部分の第2のサブセクションに対応する第2のサブセグメントとを含む。図3は、このようなケースにおける、すなわち、このようなケースにおける本開示の特定の実施形態による、照明部分が溝の底部及び側壁の両方に当たる場合のトレッド深さ推定の一般化されたフローチャートを示す。
【0065】
第1のサブセグメントの幅(底部照明部分の第1のサブセクションに対応する)は、画像から測定することができる(302)。影部分の幅は、第1のサブセグメントの幅及び溝幅を使用して計算することができる(304)。影部分の幅及び第2の角度を使用して、タイヤのトレッド深さを推定することができる(306)。
【0066】
図7を参照すると、本開示の主題の特定の実施形態による上記シナリオにおいてトレッド深さをどのように推定するかの一例が概略的に示されている。
【0067】
図7は、タイヤトレッド700の一部、及びその中に埋め込まれた溝702の断面図を示す。光は、上述したように、第2の角度408からタイヤに照射される(水平方向410に対して、水平方向410は、図の異なる斜視図及び断面図のために本図では垂直に見えることに留意されたい)。示されるように、照明部分は、溝の底部及び溝の側壁408の両方に当たる。
【0068】
図3を参照して説明した方法によれば、画像セグメンテーションの後、溝の底部に当たる照明部分の第1のサブセクションに対応するサブセグメント706を得ることができ、サブセグメント706の幅を画像から測定することができる。溝の幅は、例えば、画像から溝702の上部幅708を測定することによって得ることができる。例として、上部幅は、セグメント604、606、及び608の画像セグメントの全幅として測定することができる。あるいは、場合によっては、溝幅は、タイヤ製造業者によって提供されるタイヤ情報の一部として取得されてもよい。タイヤモデル及び製造業者のタイヤ情報は、図4に示すように、サイドカメラ420を使用してタイヤの側方からタイヤマーキングを読み取ることによって認識することができる。影部分704の幅Wshadowは、上部幅708からサブセグメント706の幅を引くことによって得ることができる(溝702の上部幅及び底部幅は実質的に同じであると仮定する)。したがって、トレッド710の表面と溝の底部との間の垂直距離であるトレッド深さDは、D=Wshadow/tan(第2の角度408)として推定することができる。
【0069】
あるいは、側壁照明部分の幅Wsidewall(例えば、図6に示すようなセグメント608の幅)を測定することができ、トレッド深さDは、Wsidewall及び第1の角度(すなわち、撮像角度)に基づいて計算することができ、例えば、D=Wsidewall/sin(第1の角度)である。
【0070】
異なる部分の幅など、本開示で説明される測定値は、例えば、ミリメートル、センチメートルなどの長さの単位における幅を指すことに留意されたい。場合によっては、画像から取得される元の測定値は、ピクセルの単位であってもよく、これらの測定値は、ピクセルからミリメートルに変換する較正係数を使用することによって、長さの単位の測定値に変換することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、照明部分は、場合によっては、溝の側壁のみに当たることができる(例えば、溝が非常に狭い及び/又は深い場合)。このような場合には、溝の底部に照明部分が存在しないため、上述した方法を用いてトレッド深さを推定することができない。しかしながら、トレッド深さの範囲は、依然として、溝幅及び第2の角度に基づいて決定することができる(310)。
【0072】
次に図8を参照すると、本開示の主題の特定の実施形態による、異なる溝幅と推定トレッド深さとの間の相関関係を例示する表が示されている。
【0073】
表800は、所与の照明角度において、異なる溝幅(例えば、図示のように4~10mm)及び異なるトレッド深さ(例えば、1~12mm)を有する異なるタイヤについて、溝の底部における照明部分の幅を示す。例として、10mmの溝幅を有するタイヤ(表の最後の列を参照されたい)について、図3を参照して説明した推定方法を使用して、底部照明部分の幅とトレッド深さとの間の相関関係を確立することができる。例えば、底部照明部分の幅が9.3mmと測定された場合、トレッド深さは1mmと推定され、底部照明部分の幅が2.1mmと測定された場合、トレッド深さは12mmと推定される。示されるように、固定された溝幅を有するタイヤでは、底部照明部分が小さいほど、トレッドが深い。
【0074】
別の観点から、溝幅が小さくなる(すなわち、溝が狭くなる)と、溝の底部において見ることができる照明部分のサイズも制限される。例として、4mmの溝幅を有するタイヤ(表の第2の列を参照)について、底部照明部分の幅が3.3mmとして測定されるとき、トレッド深さは1mmとして推定されるが、底部照明部分が0.1mmになるか又は画像から消失する(すなわち、0mm)とき、トレッド深さは6mm又は7mm以上として推定される。これは、比較的狭い溝幅を有するタイヤでは、場合によっては、トレッド深さが特定の閾値を超えるときに、光が側壁上のみに照明され、溝底部全体が照明されずに影になることを意味する。そのような場合、図3を参照して上述した方法を使用してトレッドの深さ値を推定することは不可能であるが、深さの範囲は依然として表800を使用して導出することができる。例えば、溝幅が4mmのタイヤでは、照明部分が溝の側壁の全体にある場合、トレッド深さは7mm以上であると判断することができる。同様に、6mmの溝幅を有するタイヤでは、照明部分が側壁の全体にある場合、トレッド深さが10mm以上であると判断することができる。
【0075】
表800は、特定の照明角度に対応して導出されることを理解されたい。異なるシステム設定で構成された異なる照明角度について、上記の推定方法を使用して、それぞれの表を同様に導出することができる。
【0076】
したがって照明部分が溝の側壁上のみにある場合、トレッド深さの範囲(例えば、最小トレッド深さ)は、タイヤの溝幅及び照明角度に基づいて、そのような相関表を使用して決定することができる。
【0077】
特定の実施形態によれば第2の角度は、異なるタイヤについて所定の深さ範囲内のトレッド深さの推定を提供することができるように、異なる溝幅及び/又は検査レーン上のタイヤ位置を含む異なるタイヤ特性に適合するように特に構成することができる。タイヤ位置は、検査レーンに対するタイヤの位置、例えば、中央、左、又は右を指す。所定の深さ範囲は、例えば、異なる法的要件及び/又は推奨に従って、異なって決定することができる。例えば、上述したようにタイヤトレッド深さについての米国の法的限界は、約1.6ミリメートル(2/32インチ)である。いくつかの場所では、夏タイヤについては3ミリメートルの最小トレッド深さを有することが推奨され、冬タイヤについては少なくとも4ミリメートル(5/32インチ)を有することが推奨される。したがって、安全上の理由から、3~5mmの臨界深さ範囲を予め決定することができ、照明角度は、様々なタイヤについて臨界範囲内でトレッド深さを常に推定することができるように具体的に設定することができる。例えば、表800を導出するために使用される特定の照明角度では、4~10mmの範囲の様々な溝幅を有する異なるタイヤについて、図3を参照して説明した方法を使用して、3~5mmの臨界範囲内のトレッド深さを常に推定/計算することができることが分かる。
【0078】
場合によっては、システム100の構成(例えば、撮像デバイス及び照明デバイスのレイアウト、並びに名目上構成されるような第1及び第2の角度など)が具体的に定義されると、検査されるタイヤの実際の位置は依然として可変である。これは、システムを通過する車両が、場合によっては、検査レーン上に(例えば、検査レーンの中心に)完全に位置決めされないという事実に起因する。更に、車両は異なる車幅を有してもよい。このため、車両がレーンの中心に位置していても、車両と撮像デバイスとの相対位置及び距離は依然として異なる。タイヤ位置のそのような変動により、実際の第1及び第2の角度が公称構成角度と異なることになる可能性がある。実際の角度は、画像内のタイヤの位置から推測することができる。例えば、画像の中心にあるタイヤは、公称角度を有すると推測することができ、画像の遠い側のタイヤは、より大きい角度を有すると推測することができ、逆もまた同様である。画像内のタイヤの異なる位置と、それに対応するそれぞれの角度との間の較正を行うことができる。したがって、例えば、画像内のタイヤの位置を測定し、較正に基づいて公称角度に対する補正を実行することによって、画像内の実際の角度を得ることができる。
【0079】
上述のようにトレッド深さが推定されると(208)、推定されたトレッド深さは、例えば、法的限界、所定の範囲などの所定の基準と比較することができ、比較の結果に基づいてタイヤを交換するかどうかを決定することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、取得された画像は、1つ以上のタイヤの情報を提供することができる例えば、図5に示される画像502など)。PMCは、1つ以上のタイヤに対応する1つ以上のサブ画像を抽出し、1つ以上のサブ画像の各々に対して図2を参照して上述したようなセグメンテーション及びトレッド深さ推定を実行するように更に構成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、取得された画像(画像502又は504など)は、所与の溝の複数の測定位置(例えば、タイヤトレッド/溝の湾曲表面に沿った異なる位置)及び/又は異なる溝に対応する複数の画像パッチ(画像パッチ600など)に分割されることができ、トレッドの異なる位置に対する深さ推定を取得するように、各画像パッチに対して、上述のような画像セグメンテーション及び推定を行うことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において本明細書で使用される第1及び第2の角度は、タイヤ中心、照明デバイス、及び撮像デバイスが存在する水平面上で定義されることに留意されたい。図10Aは、照明デバイス、撮像デバイス及びタイヤの中心に対して水平面に沿ったタイヤ画像から抽出された画像パッチ1001の一例を示す。しかしながら、タイヤトレッドの湾曲表面上には、複数の三次元(three-dimensional、3D)角度が存在する(これらの角度は、水平面上ではなく、測定点とデバイスとの間の3D空間において定義されるため)。これらの追加の角度は、測定を改善するための追加の測定位置/点を提供することができる。例えば、画像パッチを、タイヤ画像の異なる位置において抽出し、トレッド深さ推定のために使用することができる。場合によっては、水平面に対してタイヤの下方(又は上方)部分に移動するとき、図10Aの底部の画像パッチ1002に例示されるように、3D入射角に起因して、底部照明部分の幅が0に低減されるまで影部分が更に延びる位置が常に存在する。そのような測定点(及び追加の測定点)は、溝深さのロバストな測定のために使用することができる。例えば、異なる測定点からの測定値は、実質的に一貫性があり、互いに一致すべきである。3D角度は、例えば、水平面に対する測定点の相対位置及びタイヤ半径に基づいて、第1及び第2の角度に対して補正を行うことによって計算することができる。
【0083】
例えば、水平面より上又は下にある少なくとも第2の画像パッチについて、PMCは、第2の画像パッチ内の測定位置に対応する3Dの第2の角度を取得し、3Dの第2の角度を使用して第2の画像パッチに対してセグメンテーション及び推定を実行するように構成することができる。3Dの第2の角度は、上述のように、例えば、水平面に対する測定位置の相対位置とタイヤの半径とに基づいて第2の角度に補正を実行することによって得ることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、上述の3D角度は、本開示の主題の特定の実施形態に従って図10Bに例示されるように、トレッド及び溝の少なくとも一部がタイヤの円周に対して平行でない方向にあるタイヤのトレッド深さを測定するために使用することができる。例示されているように、トレッド1004(及びそれに隣接する溝)は、タイヤの円周に対して平行でない向きを有する。そのようなトレッドのトレッド深さを推定するために使用される照明角度は、トレッド及び照明デバイスの方向に対する3D角度として推定することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、タイヤが移動車両上の回転タイヤであるとき、PMCは、タイヤと撮像デバイスとの間の相対運動中にタイヤの一連の画像を取得するように構成することができ、セグメンテーション及び推定を、タイヤの円周の範囲(又は少なくともその一部)をカバーする推定トレッド深さを取得するように、一連の画像のうちの少なくともいくつかに対して実行することができる。例として、一連の画像は、サンプリングされた画像がタイヤの円周の範囲をカバーすることができるように、所与の周波数に基づいてサンプリングすることができる。
【0086】
特定の実施形態によれば、トレッド摩耗状態は、トレッド摩耗インジケータ又は摩耗バーを使用して推定することもできる。摩耗バーは、タイヤトレッドにおける主溝を通って均等に間隔を置いて配置された平坦なゴムバーのように見える。摩耗バーがトレッド表面のレベルと同一平面上にあるとき、それはタイヤを交換すべきであることを示す。図9は、本開示の主題の特定の実施形態の実施形態による、溝を通して離間されたトレッド摩耗バー900を有するタイヤを示す。
【0087】
摩耗バーは通常、それらがトレッド表面のレベルと同一平面であるかどうかをチェックするために手動で検査される。本開示の特定の実施形態によれば、図2及び図3を参照して説明されるような深さ推定方法は、摩耗バーの深さを自動的に推定するためにも同様に適用することができる。具体的には、トレッド摩耗バーの情報を提供するタイヤ画像は、上述したような画像セグメンテーションを使用してセグメント化することができ、推定方法は、溝の底部が摩耗バーの表面によって置き換えられるべき場合に同様に適用することができる。例えば、図7の図を例として使用して、溝702に埋め込まれた摩耗バーがあると仮定すると、影部分704及び照明部分706は摩耗バーの表面に当たり、残りの推定は、摩耗バーの深さを導き出すように図3に従って同様に適用することができ、それによってトレッド摩耗状態の指標を提供する。
【0088】
トレッド摩耗状態を推定する目的で、いくつかの実施形態では、上述のトレッド摩耗バーの深さの推定は、トレッド深さの推定に加えて実行することができるが、いくつかの他の実施形態では、トレッド摩耗バーの深さの推定は、トレッド深さの推定とは別に、かつトレッド深さの推定の代わりに実行することができることに留意されたい。
【0089】
本明細書においてトレッド深さ推定システムを参照して示された例及び実施形態は、全ての可能な代替形態を決して含むものではなく、非限定的な例のみを示すことが意図されていることが理解される。
【0090】
本開示は、その適用において、本明細書に含まれる説明又は図面に示される詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践及び実施することができる。したがって、本明細書で使用される表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。そのため、当業者は、本開示の基づく概念が、本開示の主題のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として容易に利用できることを理解するであろう。
【0091】
本開示によるシステムは、少なくとも部分的に、好適にプログラムされたコンピュータ上で実装されてよいことも理解されるであろう。同様に、本開示は、本開示の方法を実行するためのコンピュータによって読み取り可能なコンピュータプログラムを企図する。本開示は更に、本開示の方法を実行するためにコンピュータによって実行可能な命令のプログラムを有形に具体化する非一時的なコンピュータ可読メモリ又は記憶媒体を企図する。
【0092】
プロセッサに本開示の態様を実行させる非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスによる使用のための命令を保持及び記憶することができる有形デバイスであることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又は前述のものの任意の好適な組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0093】
当業者は、添付の特許請求の範囲において、及びそれによって定められるその範囲から逸脱することなく、前述のように、様々な修正及び変更を本開示の実施形態に適用できることを容易に理解するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B