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特許7593607流量調整装置及び流量調整装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】流量調整装置及び流量調整装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/00 20060101AFI20241126BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F16K1/00 Z
F16K31/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020025352
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131104
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安藤 優一
(72)【発明者】
【氏名】関根 聡
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3168588(JP,U)
【文献】特開2011-208786(JP,A)
【文献】特開2017-53405(JP,A)
【文献】特開2016-134390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177770(US,A1)
【文献】中国実用新案第203868403(CN,U)
【文献】特開2013-68294(JP,A)
【文献】特表2016-505130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 7/00- 7/20
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室の内部を鉛直方向に延びる軸線に沿って移動するとともに水平方向に延びる平坦な弁体面を有する弁体部と、
前記弁体部を収容する前記弁室と、流入口から流入する液体を前記弁室へ導く流入流路と、流出口へ液体を導く流出流路と、前記弁室と前記流出流路とを連通させる連通流路とが形成された本体部と、
前記連通流路と前記弁室とを連通させる流入開口の周囲に設けられるとともに前記弁体面と対向する位置に配置されて水平方向に延びる平坦な弁座面を有する弁座部と、
前記弁体部を前記軸線に沿って移動させて前記弁体面と前記弁座面との間の距離を調整することで、前記弁室から前記連通流路へ流入する液体の流量を調整する調整機構と、
前記弁体面と前記弁座面とが非接触状態を維持する移動範囲で前記弁体部が移動するように前記調整機構を制御する制御部と、を備え、
前記弁体面は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されるとともに前記流入開口よりも大きい半径を有して前記流入開口および前記弁座面に対向する位置に配置され、
前記連通流路の流路断面積が前記流入流路の流路断面積および前記流出流路の流路断面積よりも小さく、
前記流入開口の半径をr1とし、前記移動範囲をSt1とした場合、前記連通流路の流路断面積であるπ・(r1)と、2π・r1・St1とが略一致するように前記移動範囲が設定されており、
前記調整機構は、前記軸線回りに駆動軸を回転させるステッピングモータと、前記駆動軸の回転に応じて前記軸線に沿って移動するとともに前記弁体部に連結された移動部材と、を有し、
前記制御部は、
1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で変化する励磁信号により前記ステッピングモータを制御し、
前記弁体面を目標開度に対応するとともに前記移動範囲に含まれる目標位置まで移動させるためのパルス数を算出し、算出したパルス数に応じた前記励磁信号を前記ステッピングモータへ出力して前記弁体面を前記目標位置まで移動させる流量調整装置。
【請求項2】
前記弁体部は、前記軸線に沿って軸状に形成される基部と、前記基部の外周面に連結されるとともに前記軸線を中心とした円環状かつ薄膜状に形成されるダイヤフラム部とを有し、
前記基部は、前記外周面から前記弁体面へ向けて前記軸線に直交する径方向の外径が漸次減少するように形成されている請求項1に記載の流量調整装置。
【請求項3】
前記流入開口は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されており、
記弁体面の半径をr2とした場合、r2≧3・r1を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流量調整装置。
【請求項4】
流量調整装置の制御方法であって、
前記流量調整装置は、
弁室の内部を鉛直方向に延びる軸線に沿って移動するとともに水平方向に延びる平坦な弁体面を有する弁体部と、
前記弁体部を収容する前記弁室と、流入口から流入する液体を前記弁室へ導く流入流路と、流出口へ液体を導く流出流路と、前記弁室と前記流出流路とを連通させる連通流路とが形成された本体部と、
前記連通流路と前記弁室とを連通させる流入開口の周囲に設けられるとともに前記弁体面と対向する位置に配置されて水平方向に延びる平坦な弁座面を有する弁座部と、
前記弁体部を前記軸線に沿って移動させて前記弁体面と前記弁座面との間の距離を調整することで、前記弁室から前記連通流路へ流入する液体の流量を調整する調整機構と、を備え、
前記弁体面と前記弁座面とが非接触状態を維持する移動範囲で前記弁体部が移動するように前記調整機構を制御する制御工程を備え、
前記弁体面は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されるとともに前記流入開口よりも大きい半径を有して前記流入開口および前記弁座面に対向する位置に配置され、
前記連通流路の流路断面積は、前記流入流路の流路断面積および前記流出流路の流路断面積よりも小さく、
前記流入開口の半径をr1とし、前記移動範囲をSt1とした場合、前記連通流路の流路断面積であるπ・(r1)と、2π・r1・St1とが略一致するように前記移動範囲が設定されており、
前記調整機構は、前記軸線回りに駆動軸を回転させるステッピングモータと、前記駆動軸の回転に応じて前記軸線に沿って移動するとともに前記弁体部に連結された移動部材と、を有し、
前記制御工程は、
1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で変化する励磁信号により前記ステッピングモータを制御し、
前記弁体面を目標開度に対応するとともに前記移動範囲に含まれる目標位置まで移動させるためのパルス数を算出し、算出したパルス数に応じた前記励磁信号を前記ステッピングモータへ出力して前記弁体面を前記目標位置まで移動させる流量調整装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整装置及び流量調整装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量を制御する流量調整弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される流量調整弁は、モータの駆動力を弁体であるダイヤフラムニードルに伝達し、流体入口と流体入口へ挿入されたダイヤフラムニードルとの間の隙間を調整することにより、流体の流量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5144880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される流量調整弁を組み立てる際には、筐体の内部に、駆動部と駆動部に取り付けられるダイヤフラムニードルを設置する必要がある。この場合、弁座に開口する流体入口の中心軸とダイヤフラムニードルの中心軸とを精度良く一致させれば、ダイヤフラムニードルが上下運動する際に流体入口と接触することはない。
【0005】
しかしながら、筐体の内部に駆動部とダイヤフラムニードルを設置する際の位置決め精度や各部品の寸法精度が十分でない場合には、流体入口の中心軸とダイヤフラムニードルの中心軸とが一致しない状態となる。この場合、ダイヤフラムニードルが上下運動する際にダイヤフラムニードルと流体入口とが接触し、ダイヤフラムニードル及び流体入口を形成する材料の一部がパーティクル(例えば、粒径が20nm以下の微粒子)として排出される可能性がある。パーティクルは不純物として流体に混入してしまうため、流体の純度を高く保つことができなくなる。特に、流体として、半導体製造装置用の薬液や純水等の高純度の液体を取り扱う場合には、パーティクルの問題が顕著となる。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制するとともに液体の流量調整を精度良く行うことを可能とした流量調整装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明の一態様にかかる流量調整装置は、弁室の内部を鉛直方向に延びる軸線に沿って移動するとともに水平方向に延びる平坦な弁体面を有する弁体部と、前記弁体部を収容する前記弁室と、流入口から流入する液体を前記弁室へ導く流入流路と、流出口へ液体を導く流出流路と、前記弁室と前記流出流路とを連通させる連通流路とが形成された本体部と、前記連通流路と前記弁室とを連通させる流入開口の周囲に設けられるとともに前記弁体面と対向する位置に配置されて水平方向に延びる平坦な弁座面を有する弁座部と、前記弁体部を前記軸線に沿って移動させて前記弁体面と前記弁座面との間の距離を調整することで、前記弁室から前記連通流路へ流入する液体の流量を調整する調整機構と、前記弁体面と前記弁座面とが非接触状態を維持する移動範囲で前記弁体部が移動するように前記調整機構を制御する制御部と、を備え、前記弁体面は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されるとともに前記流入開口よりも大きい半径を有して前記流入開口および前記弁座面に対向する位置に配置され、前記連通流路の流路断面積が前記流入流路の流路断面積および前記流出流路の流路断面積よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様にかかる流量調整装置によれば、弁体部の弁体面と弁座部の弁座面との間の軸線に沿った距離を調整機構により調整して液体の流量の調整が行われる。弁体面とそれに対向して配置される弁座面は、それぞれ水平方向に延びる平坦面となっている。弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合であっても、弁体面が流入開口には挿入されていないため、その周囲に設けられる弁座面に近接した非接触状態を維持する。弁体面と弁座面とが非接触状態を維持するため、弁体面と弁座面が接触してパーティクルが発生することがない。よって、弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る流量調整装置によれば、連通流路の流路断面積が流入流路の流路断面積および流出流路の流路断面積よりも小さいため、流入流路、弁室、連通流路、流出流路の順に液体を流通させる流路において、連通流路を流通する液体の流速が最も速くなる。そのため、連通流路とそれよりも容積の大きい弁室との間において、弁体面と弁座面との間の距離に応じて液体の流量を安定して変化させることが適切な流量の調整に必要となる。
【0010】
そして、本発明の一態様に係る流量調整装置によれば、容積の大きい弁室から流路断面積が小さい連通流路に向けて液体を流入させているため、弁体面と弁座面との間の距離に応じて液体の流量を精度良く調整することができる。これは、容積の大きい弁室から流路断面積が小さい連通流路に向けて液体を流入させる場合には、弁室における液体の流速の変化が定常化し、弁体面と弁座面との間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができるためであると考えられる。特に、弁室において、液体の流れが層流から乱流または乱流から層流へ遷移する遷移域で液体の流速の変化が定常化するためであると考えられる。
【0011】
一方、発明者らが検討した結果、流路断面積が小さい連通流路からそれよりも容積の大きい弁室に向けて液体を流入させる場合、弁体面と弁座面との間の距離に応じて液体の流量を精度良く調整することができないことがわかった。これは、流路断面積が小さい連通流路からそれよりも容積の大きい弁室に向けて液体を流通させる場合には、弁室における液体の流速の変化が非定常となり、弁体面と弁座面との間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができなくなるためであると考えられる。特に、弁室において、液体の流れが層流から乱流または乱流から層流へ遷移する遷移域で液体の流速の変化が非定常となるためであると考えられる。
【0012】
本発明の一態様に係る流量調整装置において、前記移動範囲は、前記弁体面と前記弁座面との間に形成される流路の最小流路断面積が、前記連通流路の流路断面積よりも小さくなる範囲を含む構成が好ましい。
本構成の流量調整装置によれば、弁体面と弁座面との間に形成される流路の最小流路断面積が連通流路の流路断面積よりも小さくなる範囲において、弁体面と弁座面との距離に応じた流量となるように液体の流量が調整される。
【0013】
本発明の一態様に係る流量調整装置おいて、前記移動範囲は、前記流入開口の流路断面積と、前記弁体面を前記弁座面に最も近接する位置から前記弁座面から最も離れた位置まで移動させた場合に前記弁体面と前記弁座面との間に形成される流路の最小流路断面積の変化量とが略一致するように設定されている構成が好ましい。
弁体面と弁座面との間に形成される流路の最小流路断面積の変化量が流入開口の流路断面積を超えている場合、流入開口から単位時間あたりに弁室に流入する液体の流量は最大となる。すなわち、移動範囲を過度に大きくしても、連通流路から弁室へ流出する液体の流量が最大となる位置を超えてしまうと液体の流量を調整することができなくなる。本発明の一態様に係る流量調整装置によれば、弁体面と弁座面との間に形成される流路の最小流路断面積の変化量が流入開口の流路断面積と略一致するように移動範囲が設定されるため、液体の流量を適切に調整することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る流量調整装置おいて、前記弁体部は、前記軸線に沿って軸状に形成される基部と、前記基部の外周面に連結されるとともに前記軸線を中心とした円環状かつ薄膜状に形成されるダイヤフラム部とを有し、前記基部は、前記外周面から前記弁体面へ向けて前記軸線に直交する径方向の外径が漸次減少するように形成されている構成が好ましい。
本発明の一態様に係る流量調整装置によれば、弁体部の基部が、外周面から弁体面へ向けて軸線に直交する径方向の外径が漸次減少するように形成されているため、弁室から弁体面と弁座面との間に形成される流路に液体が流入する際に、液体が流れる流路の断面積が漸次減少し、液体を円滑に流通させることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る流量調整装置おいて、前記調整機構は、前記軸線回りに駆動軸を回転させるステッピングモータと、前記駆動軸の回転に応じて前記軸線に沿って移動するとともに前記弁体部に連結された移動部材と、を有し、前記制御部は、1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で変化する励磁信号により前記ステッピングモータを制御する構成が好ましい。
本発明の一態様にかかる流量調整装置によれば、ステッピングモータの駆動軸の回転に応じて軸線に沿って移動する移動部材に弁体部が連結されており、ステッピングモータが1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で変化する励磁信号により制御される。ステッピングモータをフルステップあるいはハーフステップの励磁信号により制御する場合、弁体面の軸線に沿った最小移動量が大きいことから流体の流量の最小変化量が大きくなり、流量調整を精度良く行うことができない。
【0016】
それに対して、本発明の一態様にかかる流量調整装置では、弁体面の軸線に沿った最小移動量が小さいことから流体の流量の最小変化量が小さくなり、流量調整を精度良く行うことができる。
このように、本発明の一態様にかかる流量調整装置によれば、弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制するとともに流体の流量調整を精度良く行うことができる。
【0017】
本発明の一態様にかかる流量調整装置において、前記流入開口は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されており、前記流入開口の半径をr1とし、前記弁体面の半径をr2とした場合、r2≧3・r1を満たす構成が好ましい。
【0018】
弁体面の半径r2を流入開口の半径r1の3倍以上とすることで、弁体面と弁座面との間に形成される流路の壁面の面積が十分に確保される。弁体面と弁座面との間の流路の壁面は、液体に摩擦損失を与えて液体の流速を低減させる。そのため、弁体面の軸線に沿った移動量に対する液体の流量の変化量を小さくし、流量調整を精度良く行うことができる。
【0019】
本発明の一態様にかかる流量調整装置の制御方法は、前記流量調整装置は、弁室の内部を鉛直方向に延びる軸線に沿って移動するとともに水平方向に延びる平坦な弁体面を有する弁体部と、前記弁体部を収容する前記弁室と、流入口から流入する液体を前記弁室へ導く流入流路と、流出口へ液体を導く流出流路と、前記弁室と前記流出流路とを連通させる連通流路とが形成された本体部と、前記連通流路と前記弁室とを連通させる流入開口の周囲に設けられるとともに前記弁体面と対向する位置に配置されて水平方向に延びる平坦な弁座面を有する弁座部と、前記弁体部を前記軸線に沿って移動させて前記弁体面と前記弁座面との間の距離を調整することで、前記弁室から前記連通流路へ流入する液体の流量を調整する調整機構と、を備え、前記弁体面と前記弁座面とが非接触状態を維持する移動範囲で前記弁体部が移動するように前記調整機構を制御する制御工程を備え、前記弁体面は、平面視した形状が前記軸線を中心とした円形に形成されるとともに前記流入開口よりも大きい半径を有して前記流入開口および前記弁座面に対向する位置に配置され、前記連通流路の流路断面積は、前記流入流路の流路断面積および前記流出流路の流路断面積よりも小さい。
【0020】
本発明の一態様にかかる流量調整装置の制御方法によれば、弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制するとともに液体の流量調整を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、弁体部を構成する部材及び弁座部を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制するとともに液体の流量調整を精度良く行うことを可能とした流量調整装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態の流量調整装置を示す部分縦断面図である。
図2図1に示す流量調整装置のI部分の部分拡大図である。
図3図1に示す制御基板の構成を示す機能ブロック図である。
図4】制御部がモータドライバに出力するパルス信号のパルス数とモータドライバがステッピングモータに出力する励磁電流との関係を示す図である。
図5】制御部がモータドライバに出力するパルス信号のパルス数とモータドライバがステッピングモータに出力する励磁電流との関係の比較例を示す図である。
図6図2に示す流量調整装置のII部分の部分拡大図である。
図7図2に示す流量調整装置のII部分の部分拡大図である。
図8図2に示す弁座部を軸線に沿った上方からみた平面図である。
図9】本実施形態の流量調整装置におけるパルス数と流量の関係を示すグラフである。
図10】比較例の流量調整装置におけるパルス数と流量の関係を示すグラフである。
図11】制御基板が実行する処理を示すフローチャートである。
図12】本実施形態の流量調整装置におけるパルス数と流量の関係を示すグラフである。
図13】比較例の流量調整装置におけるパルス数と流量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の流量調整装置100を示す部分縦断面図である。本実施形態の流量調整装置100は、外部の配管(図示略)を介して流入ポート100aから流入し、内部流路を流通して流出ポート100bから外部の配管(図示略)へ流出する液体の流量を調整する装置である。本実施形態の流量調整装置100が流量を調整する液体は、例えば、半導体製造装置に用いる薬液,純水等である。また、液体の温度は、例えば、常温域(例えば、10℃以上かつ50℃未満)の温度であるものとする。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の流量調整装置100は、ダイヤフラム一体型弁体である弁体部10と、内部流路を有する本体部20と、弁体部10を軸線Xに沿って移動させる移動機構(調整機構)30と、弁体部10を本体部20に固定する固定部材40と、弁体部10が軸線Xに沿って移動するように支持する支持部50と、移動機構30が有するステッピングモータ31を支持するモータ支持部材60と、設置面Sに設置されるベース部70と、移動機構30を制御する制御基板(制御部)80と、を備える。
【0026】
図1に示すように、弁体部10と、移動機構30と、固定部材40と、支持部50と、モータ支持部材60と、制御基板80は、本体部20の上方に設置されるカバー部材100cの内部に収容されている。制御基板80は、ケーブル200を介して外部装置(図示略)との間で各種の信号の送受信や、外部装置からの電力供給を受ける。本体部20と、固定部材40と、支持部50と、モータ支持部材60と、ベース部70とは、締結ボルト(図示略)により締結されて一体化している。
【0027】
以下、本実施形態の流量調整装置100が備える各部について説明する。図2は、図1に示す流量調整装置100のI部分の部分拡大図である。
図2に示すように、弁体部10は、弁室R1の内部を鉛直方向に延びる軸線Xに沿って移動することにより、弁座部21に設けられた連通流路22から弁室R1に流入する流体の流量を調整するものである。弁体部10と弁座部21の距離は、後述する移動機構30により調整される。
【0028】
弁体部10は、軸線Xに沿って軸状に形成される基部11と、基部11の外周面に連結されるとともに軸線Xを中心とした円環状かつ薄膜状に形成されるダイヤフラム部(薄膜部)12と、ダイヤフラム部12の外周側端部が連結される内周面を有するとともに円環状に形成される円環部13と、基部11を移動機構30に連結する連結部14と、を有する。
【0029】
基部11とダイヤフラム部12と円環部13とは、単一の材料により一体に形成されている。弁体部10を形成する材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等の耐薬品性の高いフッ素樹脂材料を用いるのが望ましい。円環部13には、軸線X回りの周方向に沿って無端状に形成されるとともに軸線Xに沿って下方に突出する円環凸部13aが形成されている。一方、弁体部10と対向する位置に配置される本体部20には、軸線X回りの周方向に沿って無端状に形成されるとともに軸線Xに沿って上方に開口する円環溝部20aが形成されている。円環凸部13aと円環溝部20aは、軸線Xに対する半径が同一となるように形成されている。
【0030】
本実施形態の流量調整装置100を組み立てる際には、本体部20の円環溝部20aに弁体部10の円環凸部13aを圧入する。これにより、円環溝部20aと円環凸部13aとが密着した状態となり、これらが密着した領域が弁室R1から外部への流体の流出を抑制するシール領域となる。また、弁体部10の基部11の中心軸が軸線Xと一致した状態となる。弁体部10を本体部20へ固定することにより、弁体部10と本体部20により仕切られる弁室R1が形成される。
【0031】
図2に示すように、本体部20には、弁体部10を収容する弁室R1と、弁体部10と対向する位置に配置される弁座部21と、流入ポート(流入口)100aから流入する液体を弁室R1へ導く流入流路23と、流出ポート(流出口)100b液体を導く流出流路24と、弁室R1と流出流路24とを連通させる連通流路22と、が形成されている。本体部20は、例えば、単一の材料により一体に形成されている。本体部20を形成する材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等の耐薬品性の高いフッ素樹脂材料を用いるのが望ましい。
【0032】
連通流路22は、軸線Xに沿って鉛直方向に延びる流路であり、断面視が円形に形成されている。流入流路23及び流出流路24は、それぞれ軸線Xに直交する水平方向の軸線Yに沿って延びる流路であり、断面視が円形に形成されている。連通流路22は、流量を調整するための流入開口22aに連通する流路であるため、流入流路23及び流出流路24よりも流路断面積が小さい。連通流路22の水平方向の断面の直径は、軸線X方向の各位置で同一である。連通流路22の水平方向の断面の直径は、流入流路23の断面の直径の最小値の1/10以上かつ1/3以下に設定するのが望ましい。同様に、連通流路22の水平方向の断面の直径は、流出流路24の断面の直径の最小値の1/10以上かつ1/3以下に設定するのが望ましい。
流入流路23の弁室R1側の端部は、軸線Y上の位置から弁室R1へ向けて液体が流通方向(図1の左方から右方へ向かう方向)に沿って設置面Sからの距離が増加するように傾斜する形状となっている。流入流路23の弁室R1側の端部へ導かれた液体は、流入流路23の流通方向の下流側端部に設けられた流出開口23aから弁室R1へ流入する。
【0033】
連通流路22の断面の直径を流入流路23および流出流路24の断面の直径の最小値の1/10以上とすることにより、連通流路22の断面積が過度に小さくなって単位時間当たりに流通する最大流量が過度に小さくなることを抑制することができる。また、連通流路22の断面の直径を流入流路23および流出流路24の断面の直径の最小値の1/3以下とすることにより、連通流路22の断面積が過度に大きくなって弁体部10の移動量に対する単位時間あたりの流量の変化が過度に大きくなることを抑制することができる。
【0034】
移動機構30は、弁体部10を軸線Xに沿って移動させることにより、弁体部10と本体部20の弁座部21との間の距離を調整することで、弁室R1から連通流路22へ流入する液体の流量を調整する機構である。
【0035】
図2に示すように、移動機構30は、ステッピングモータ31と、ステッピングモータ31に連結されて軸線X回りに回転する駆動軸32と、駆動軸32と一体に回転する回転部材33と、駆動軸32を取り囲むように配置されるスラスト軸受部34と、回転部材33に対して軸線Xに沿って相対的に移動可能な移動部材35と、移動部材35と支持部50との間に配置されるスプリング36と、回り止め部材37と、位置検出部38(図1参照)と、を有する。駆動軸32,回転部材33,スラスト軸受部34,及び移動部材35は、金属材料(例えば、SUS304等のステンレス鋼材、S45C等の炭素鋼材、SK4等の炭素工具鋼材)により形成されている。
【0036】
ステッピングモータ31は、制御基板80から送信される階段状(矩形状)の励磁信号(励磁電流)に応じて駆動軸32を回転させる駆動機構である。図2に示すように、駆動軸32には、軸線Xに直交する水平方向に貫通する貫通孔32aが形成されている。回転部材33にも、軸線Xに直交する水平方向に貫通する貫通孔(図示略)が形成されている。駆動軸32の貫通孔32aと回転部材33の貫通孔の双方にピンPが挿入されており、回転部材33が駆動軸32と一体となって軸線X回りに回転するようになっている。
【0037】
図2に示すように、回転部材33は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成される部材であり、下半部の外周面に雄ねじ33aが設けられている。雄ねじ33aは、回転部材33を移動部材35に連結しつつ移動部材35を回転部材33に対して相対的に移動させるために設けられている。
【0038】
スラスト軸受部34は、回転部材33とステッピングモータ31との間に駆動軸32を取り囲むように配置されている。スラスト軸受部34は、スプリング36の付勢力や弁体部10が流体から受ける軸線Xに沿って上方へ向けた付勢力を支持し、このような付勢力によらずに回転部材33を円滑に回転させる。
【0039】
移動部材35は、軸線Xに沿って配置される部材であり、弁体部10に連結されている。移動部材35は、下端側に弁体部10の連結部14が締結される締結穴35aが設けられ、上端側に回転部材33が連結される連結穴35bが設けられている。弁体部10の基部11の上半部の雄ねじは、連結部14の雌ねじに締結されている。連結部14の上端の雄ねじは、移動部材35の締結穴35aの雌ねじに締結されている。
【0040】
移動部材35の連結穴35bの内周面には、回転部材33の雄ねじ33aに連結される雌ねじ35cが設けられている。雌ねじ35cは、移動部材35を回転部材33に連結しつつ移動部材35を回転部材33に対して相対的に移動させるために設けられている。移動部材35の上方の外周部分には、軸線X回りの複数箇所(例えば、120°間隔の3箇所)に軸線Xと平行な方向に延びる貫通穴(図示略)が形成されている。
【0041】
貫通穴には、移動部材35が軸線X回りに回転することを規制する棒状の回り止め部材37が挿入されている。回り止め部材37の下端は、支持部50の上面に形成された挿入穴に挿入される。回り止め部材37の下端が挿入穴に挿入されるため、移動部材35が軸線X回りに回転することが規制される。
【0042】
図2に示すように、移動部材35には、連結穴35bの下方側の空間と外部と連通した空間R2とを連通させる通気孔35dが設けられている。通気孔35dは、回転部材33に対する移動部材35の相対的な位置の変位にかかわらず、連結穴35bの下方側の空間を大気圧状態に維持するための孔である。
【0043】
スプリング36は、支持部50の上端面に形成された円環状の溝部と移動部材35に形成された円環状の溝部とに挿入され、移動部材35に軸線Xに沿って上方に向けた付勢力を発生する部材である。スプリング36は、回転部材33の雄ねじ33aに連結される移動部材35に付勢力を与えることで、バックラッシュによる弁体部10の位置決め誤差を低減するために設けられている。
【0044】
位置検出部38は、ステッピングモータ31の駆動軸32に連結される平面視が円形のエンコーダ38aと、エンコーダ38aの円周方向の複数箇所に等間隔で設けられたスリットを検出するためのフォトインタラプタ38bを備える。フォトインタラプタ38bは、通過したスリットの数に応じた矩形状のパルス信号を後述する制御基板80へ送信する。
【0045】
制御基板80は、ステッピングモータ31へ伝達したパルス信号から推定される駆動軸32の回転数と、位置検出部38が出力するパルス信号から推定される駆動軸32の回転数との双方を認識することができる。制御基板80は、これらの回転数が一致しない場合、ステッピングモータ31に脱調等の不具合が発生していることを認識することができる。
【0046】
以上説明した構成を備える移動機構30は、以下のように動作して弁体部10を軸線Xに沿って移動させる。移動機構30は、ステッピングモータ31により駆動軸32とそれに連結された回転部材33を軸線X回りに回転させる。回転部材33の外周面に形成された雄ねじ33aに連結される雌ねじ35cが設けられた移動部材35は、回り止め部材37により軸線X回りの回転が規制されている。
【0047】
そのため、移動部材35は、駆動軸32の回転に応じて回転部材33が軸線X回りに回転するのに伴って、その回転方向により軸線Xに沿って上方又は下方に移動する。弁体部10は、移動部材35に連結されているため、移動部材35の移動に伴って軸線Xに沿って上方又は下方に移動する。
【0048】
固定部材40は、軸線Xを中心とした板状に形成される部材であり、本体部20に取り付けられた弁体部10を固定する部材である。固定部材40には軸線Xを中心として開口する挿入穴が形成されており、弁体部10の連結部14が挿入可能となっている。
【0049】
支持部50は、移動機構30の移動部材35が軸線Xに沿って移動するように支持するものである。支持部50は、移動部材35の外周面に近接して配置される筒状の第1支持部材51と、第1支持部材51の外周側に配置される第2支持部材52とを有する。
【0050】
第1支持部材51は、移動部材35と近接する位置において、移動部材35の外径よりも大きい内径の内周面を有する。移動部材35の外径と第1支持部材51の内径との差は、移動部材35の軸線Xに沿った円滑な移動を可能にしつつ可能な限り微少な値に設定されている。第1支持部材51の内周面は軸線Xに沿って一定の範囲で延びる円筒形状となっている。
【0051】
第1支持部材51は、移動機構30が弁体部10を軸線Xに沿って移動させる際に、弁体部10が軸線Xに直交する水平方向にずれないように規制する。第1支持部材51は、移動部材35よりも低い硬度の材料により形成して移動部材35との接触時の摩擦力を抑制することが望ましい。第1支持部材51は、例えば、銅と亜鉛の合金である黄銅により形成するのが好ましい。
【0052】
図2に示すように、第1支持部材51には空間R2と連通する通気溝51aが形成され、第2支持部材52には通気溝51aと連通する通気孔52aが形成されている。通気孔52aは、大気中に開口している。そのため、通気孔52a及び通気溝51aと連通した空間R2は、大気圧に維持される。このようにすることで、流体が流通する弁室R1とダイヤフラム部12を隔てて対向する空間R2が大気圧状態に維持される。
【0053】
モータ支持部材60は、締結ボルト(図示略)によりステッピングモータ31に連結される部材である。モータ支持部材60は、下端部が第2支持部材52の上面に支持されるため、ステッピングモータ31が支持部50から一定の位置に配置されるようにステッピングモータ31を支持している。
【0054】
ベース部70は、設置面Sに設置される部材であり、例えば、締結ボルト(図示略)により設置面Sに固定される。図1に示すように、ベース部70の下方側から締結ボルトを締め付けることにより、本体部20と、固定部材40と、支持部50と、モータ支持部材60と、ベース部70とが一体化される。
【0055】
制御基板80は、ケーブル200を介して外部装置(図示略)と接続されており、ケーブル200を介して外部装置から電力供給を受けるとともに、外部装置との間で各種の信号の送受信を行う。外部装置から受信する信号は、例えば、流量調整装置100が調整する目標流量の設定値を示す信号である。制御基板80は、目標流量の設定値を示す信号を受信した場合、ステッピングモータ31を回転させて弁体部10を所望の位置に移動させるためのパルス信号を生成し、ステッピングモータ31へ伝達する。
【0056】
図3は、制御基板80の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、制御基板80は、制御部81と、モータドライバ82と、を備える。制御部81は、CPU等の演算処理部を有し、ケーブル200を介して外部装置と信号の送受信を行うとともにステッピングモータ31を制御するための矩形状のパルス信号をモータドライバ82へ送信する。制御部81は、ステッピングモータ31の駆動軸32に連結された位置検出部38から送信されるパルス信号から駆動軸32の回転数を検出することができる。
【0057】
モータドライバ82は、制御部81から受信するパルス信号に応じてマイクロステップ励磁電流(励磁信号)を生成し、ステッピングモータ31に出力する駆動回路である。モータドライバ82は、ステッピングモータ31をフルステップ駆動させる場合の1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で階段状に電流が変化する励磁電流を生成し、ステッピングモータ31を制御する。ここで、所定の分割数は、例えば、256である。
【0058】
本実施形態のステッピングモータ31は、フルステップ駆動させる場合の1ステップの回転角が1.8°の2相ステッピングモータである。図4は、本実施形態の制御部がモータドライバに出力するパルス信号のパルス数とモータドライバ82がステッピングモータ31に出力する励磁電流との関係を示す図である。図4に示すように、モータドライバ82は、A相及びB相の2相のコイル(図示略)に対し、正弦波形の励磁電流を出力する。図4に示す正弦波形は、微視的にみれば、1パルス毎に励磁電流が階段状に変化する形状となっている。
【0059】
図5は、制御部81がモータドライバ82に出力するパルス信号のパルス数とモータドライバ82がステッピングモータ31に出力する励磁電流との関係の比較例を示す図である。図5は、モータドライバ82が2相励磁のフルステップ駆動によりステッピングモータ31を制御する例を示す。
【0060】
図5の比較例に示すフルステップ駆動の1ステップは、図4に示すマイクロステップ駆動の256ステップに対応している。図5のフルステップ駆動では1ステップで回転角が1.8°変化するのに対し、図4のマイクロステップ駆動では256ステップで回転角が1.8°変化する。分割数が256のマイクロステップ駆動では、1ステップで変化する回転角は、1.8°/256=0.00703125°である。
【0061】
次に、図6から図8を参照して、本実施形態の流量調整装置100が備える弁体部10が流体の流量を調整するための構造について説明する。図6及び図7は、図2に示す流量調整装置100のII部分の部分拡大図である。図6は、連通流路22から弁室R1へ流入する液体の流量を最小値に設定した状態を示している。一方、図7は、連通流路22から弁室R1へ流入する流体の流量を最大値に設定した状態を示している。図8は、図2に示す弁座部21を軸線Xに沿った上方からみた平面図である。
【0062】
図6及び図7に示すように、弁体部10の基部11は、水平方向に延びる平坦な弁体面11aを有する。本体部20の弁座部21は、弁体面11aと対向する位置に配置されて水平方向に延びる平坦な弁座面21aを有する。弁座面21aは、連通流路22と弁室R1とを連通させる流入開口(流路開口)22aの周囲に設けられている。移動機構30により弁体部10を軸線Xに沿って上下動させることにより、弁体面11aと弁座面21aとの間の軸線Xに沿った距離が調整される。
【0063】
弁体面11aと弁座面21aとの間は、流入開口22aから弁室R1へ流入する液体が流通する流路となっている。そのため、弁体面11a及び弁座面21aにパーティクルが付着していると、そのパーティクルが不純物として液体に混入してしまう可能性がある。弁体面11a及び弁座面21aは、パーティクルが付着することを抑制するため、算術平均粗さRaが0.1μm以下に形成されている。
【0064】
図6は、連通流路22から弁室R1へ流入する液体の流量を最小値に設定した状態を示しており、弁座面21aの軸線X上の位置P0から弁体面11aの最下端位置P1までの距離がHminとなっている。距離Hminは0より大きい値であるため、弁体面11aと弁座面21aは非接触状態を維持する。
【0065】
図7は、弁室R1から連通流路22へ流入する液体の流量を最大値に設定した状態を示しており、弁座面21aの軸線X上の位置P0から弁体面11aの最上端位置P2までの距離がHmaxとなっている。弁体面11aの最下端位置P1から最上端位置P2までの移動範囲St1は、距離Hminから距離Hmaxに至るまでの範囲となっている。
【0066】
流入開口22aの半径をr1とした場合、流入開口22aの流路断面積はπ・(r1)となる。弁体面11aを位置P1から位置P2まで移動させた場合に弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積の変化量は、2π・r1・St1となる。2π・r1・St1が流入開口22aの流路断面積を超えている場合、弁室R1から単位時間あたりに流入開口22aに流入する液体の流量は最大となる。すなわち、移動範囲St1を過度に大きくしても、流入開口22aに流入する液体の流量が最大となる位置を超えてしまうと液体の流量を調整することができなくなる。
【0067】
よって、移動範囲St1は、流入開口22aの流路断面積と、弁体面11aを位置P1から位置P2まで移動させた場合に弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積の変化量とが略一致するように設定するのが望ましい。具体的には、π・(r1)と2π・r1・St1とが略一致するように移動範囲St1を設定するのが望ましい。この移動範囲St1は、弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積が、連通流路22の流路断面積よりも小さくなる範囲を含む。
【0068】
移動範囲St1は、流入開口22aの半径r1の0.5倍(流入開口22aの直径の0.25倍)となる。例えば、流入開口22aの直径(ポート径)が0.5mmの場合には、移動範囲St1を約0.13mmに設定するのが望ましい。また、流入開口22aの直径(ポート径)が2.0mmの場合には、移動範囲St1を約0.50mmに設定するのが望ましい。
【0069】
また、移動範囲St1は、弁体面11aを位置P1から位置P2まで移動させた場合に、位置検出部38のエンコーダ38aが軸線X1回りに1回転しないように設定するのが望ましい。このようにすることで、位置検出部38のフォトインタラプタ38bが検出するパルス信号の数と弁体面11aの軸線X上の位置とを容易に対応付けて、弁体面11aの位置を認識することができる。
【0070】
本実施形態の制御基板80は、弁体面11aと弁座面21aとが非接触状態を維持する移動範囲St1で弁体部10が移動するようにステッピングモータ31を制御する。具体的には、制御基板80は、弁体面11aの軸線X上の位置が弁座面21aよりも上方の最下端位置P1よりも下方とはならず、最上端位置P2よりも上方とはならないようにステッピングモータ31を制御する。
【0071】
弁体面11aの軸線X上の位置が最下端位置P1よりも下方とはならいようにしているのは、弁体面11aが弁座面21aに接触し、弁体面11a及び弁座面21aを形成する材料の一部がパーティクル(例えば、粒径が20nm以下の微粒子)として排出されることを抑制するためである。
【0072】
最下端位置P1は、例えば、流出ポート100bから外部の配管へ流出する流体の単位時間当たりの流量が所定の最小値となる位置に予め調整されている。制御基板80は、電源投入後の初期化処理により弁体面11aを初期位置に設定し、初期化処理後に駆動軸32が回転した回転角をエンコーダ38aにより検出することができる。制御基板80は、記憶部(図示略)に記憶した最下端位置P1に対応するパルス数を読み込んでパルス数に応じてステッピングモータ31を駆動して初期化位置から駆動軸32を回転させることにより、弁体面11aを弁座面21aから距離Hminの位置に移動させることができる。
【0073】
本実施形態において、1マイクロステップで弁体面11aが軸線Xに沿って移動する移動量はSt2である。移動量St2は、その値が大き過ぎると1マイクロステップで変動する流体の流量が多くなり、目標流量に対する実流量の差が大きくなって目標流量への追従性が悪くなる。また、移動量St2は、その値が小さすぎると1マイクロステップで変動する流体の流量が少なくなり、目標流量に到達するまでに要する時間が長くなって応答性が悪くなる。
【0074】
発明者らは、1マイクロステップで弁体面11aが軸線Xに沿って移動する移動量St2と、1分間あたりに連通流路22を通過する流体の流量との関係を検討したところ、1分間あたりに弁室R1から連通流路22へ流入する液体の流量の移動量St2による変化が0.01mL以上かつ0.05mL以下を満たす場合に、目標流量への追従性と応答性が良好に維持されるという知見を得た。
【0075】
本実施形態においては、マイクロステップ駆動の所定の分割数を32以上かつ512以下(例えば、256)に設定することにより、前述した流量の変化の条件を満たす。所定の分割数に下限を設けているのは、所定の分割数を小さくしすぎると1マイクロステップで弁体部10を移動させた場合の流量の変化が過度に大きくなって流体の流量を目標流量への追従性が悪くなるからである。所定の分割数に上限を設けているのは、所定の分割数を大きくしすぎると弁体部10を移動させるのに必要なマイクロステップのステップ数が過度に大きくなって応答性が悪くなるからである。
【0076】
図8に示すように、流入開口22aは、平面視した形状が軸線Xを中心とした円形に形成されている。図6および図7に示すように、弁座面21aは、平面視した形状が軸線Xを中心として流入開口22aを取り囲むとともに水平面に沿って延びる平坦状に形成されている。弁座面21aの平坦状の領域は対向して配置される弁体面11aよりも広い領域に存在している。弁体面11aは、平面視した形状が軸線Xを中心とした円形に形成されている。流入開口22aの半径をr1とし、弁体面11aの半径をr2とした場合、3・r1≦r2≦8・r1を満たす関係となっている。
【0077】
弁体面11aの半径r2を流入開口22aの半径r1の3倍以上とすることで、弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の壁面の面積が十分に確保される。弁体面11aと弁座面21aとの間の流路の壁面は、流体に摩擦損失を与えて流体の流速を低減させる。
【0078】
弁体面11aの半径r2を流入開口22aの半径r1の8倍以下とすることで、弁体面11aの表面積が過度に大きくなることが抑制される。弁体面11aの表面積が過度に大きくなると、これらの面を算術平均粗さRaが0.1μm以下となるように高精度に加工することが困難となる。あるいは、これらの面を算術平均粗さRaが0.1μm以下となるように高精度に加工するのに要する時間が長くなって生産効率が悪化する。
図6および図7に示すように、弁体部10の基部11は、ダイヤフラム部12に接続される外周面11bから弁体面11aに向けて軸線Xに直交する径方向の外径が一定の勾配で漸次減少するように形成される傾斜面11cを有する。傾斜面11cは、弁室R1から弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路に液体が流入する際に、液体が流れる流路の断面積を漸次減少させ、液体を円滑に流通させるものである。
【0079】
図9は、本実施形態の流量調整装置100において、弁体面11aを最下端位置P1から最上端位置P2に向けて分割数256のマイクロステップ駆動により変化させた際の、パルス数と流量の関係を示すグラフである。図10は、比較例の流量調整装置において、弁体面11aを最下端位置P1から最上端位置P2に向けてフルステップ駆動により変化させた際の、パルス数と流量の関係を示すグラフである。
【0080】
図9及び図10に示す流量は、流量調整装置100の流出ポート100bに接続された配管で流量計(図示略)により計測したものである。図9及び図10において、ΔPは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧である。
【0081】
図9に示すように、本実施形態の流量調整装置100によれば、制御部81からモータドライバ82に送信するパルス数を0から25000に増加させるにつれて流体の流量が増加し、パルス数が25000に至ると流量が略変化しない状態となる。本実施形態の流量調整装置100によれば、パルス数が0から25000に至るまでの範囲において流量の変化がみられるため、0から25000までのパルス数を入力することにより任意の目標流量に調整することができる。
【0082】
一方、図10に示すように、比較例の流量調整装置によれば、制御部81からモータドライバ82に送信するパルス数を0から5000に増加させるにつれて流体の流量が増加し、パルス数が5000に至ると流量が略変化しない状態となる。本実施形態の流量調整装置100によれば、パルス数が0から5000に至るまでの範囲において流量の変化がみられるものの、パルス数が5000から25000に至るまでの範囲では流量の変化が殆どない。そのため、比較例の流量調整装置では、0から5000までの限られたパルス数の中で目標流量を調整しなければならない。そのため、1パルス(1ステップ)で変動する流体の流量が多くなり、目標流量に対する実流量の差が大きくなって目標流量への追従性が悪くなってしまう。
【0083】
次に、制御基板80がステッピングモータ31を駆動して弁体面11aを所定の目標位置に移動させる動作について説明する。図11は、制御基板80が実行する処理を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS1001で、制御基板80の制御部81は、外部装置から送信される信号を解析し、弁体部10の目標開度が設定されたか否かを判断する。制御部81は、外部装置から目標開度を設定する信号を受信した場合、目標開度が設定されたと判断する。制御基板80は、目標開度を設定する信号に含まれる弁体部10の目標開度と、現在の弁体部10の開度に基づいて、弁体面11aを現在位置から目標開度に対応する目標位置まで移動させるために必要なパルス数を算出する。
【0085】
ここで、現在の弁体部10の開度は、初期状態から現在までにモータドライバ82へ送信したパルス信号のパルス数から算出される。このパルス数は、例えば、正回転のパルス数から逆回転のパルス数を減算したパルス数である。
【0086】
ステップS1002で、制御部81は、ステッピングモータ31をマイクロステップ駆動するための1パルス分のパルス信号をモータドライバ82へ出力する。
ステップS1003で、モータドライバ82は、制御部81からパルス信号を受信したことに応じて励磁電流を生成し、ステッピングモータ31へ出力する。ステッピングモータ31は、モータドライバ82から出力された励磁電流により駆動される。
【0087】
ステップS1004で、制御部81は、弁体部10の弁体面11aの位置が目標開度に応じた位置へ到達したかを判断する。制御部81は、ステップS1001で算出された必要なパルス数がステップS1002で出力されたかどうかを判断する。制御部81は、必要なパルス数がステップS1002で出力されていない場合はステップS1002を再び実行する。制御部81は、必要なパルス数がステップS1002で出力された場合には、本フローチャートの処理を終了させる。
【0088】
図11に示す処理では、外部装置から目標開度を設定する信号を受信して目標開度を設定するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、ステップS1001で、制御部81は、外部装置から目標流量を設定する信号を受信して目標流量を設定してもよい。この場合、流出ポート100bに接続された配管に流量計(図示略)が設置されており、流量計が計測した流量を制御基板80が受信するものとする。
【0089】
そして、制御部81は、ステップS1004で、流量計から受信する流量が目標流量に到達したかどうかを判断する。すなわち、制御部81は、流量計から受信する流量が目標流量と一致するように弁座面21aに対する弁体面11aの位置を制御する。
【0090】
次に、本実施形態の流量調整装置100により液体の流量を調整した例と、比較例の流量調整装置により液体の流量を調整した場合について説明する。図12は、本実施形態の流量調整装置100において、弁体面11aを最下端位置P1から最上端位置P2に向けて移動させた際の、パルス数と流量の関係を示すグラフである。図10は、比較例の流量調整装置において、弁体面11aを最下端位置P1から最上端位置P2に向けて移動させた際の、パルス数と流量の関係を示すグラフである。
【0091】
本実施形態の流量調整装置100は、図1および図2に示すように、流入流路23、弁室R1、連通流路22、流出流路24の順に液体を流通させる装置である。一方、比較例の流量調整装置は、図1および図2に示す装置において、流出流路24、連通流路22、弁室R1、流入流路23の順に液体を流通させる装置である。すなわち、比較例の流量調整装置は、本実施形態の流量調整装置100と、液体の流通方向が逆方向となっている。
【0092】
図12に示す流量は、図1に示す流量調整装置100の流出ポート100bに接続された配管で流量計(図示略)により計測したものである。図13に示す流量は、図1に示す流量調整装置100の流入ポート100aに接続された配管で流量計(図示略)により計測したものである。図12及び図13において、ΔPは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧である。
【0093】
図12および図13において、「ΔP:50kPa up」とは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が50kPaであり、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合(液体の流量を増加させる場合)のパルス数と流量の関係を示している。また、「ΔP:50kPa down」とは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が50kPaであり、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合(液体の流量を減少させる場合)のパルス数と流量の関係を示している。
【0094】
図12および図13において、「ΔP:100kPa up」とは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が100kPaであり、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合(液体の流量を増加させる場合)のパルス数と流量の関係を示している。また、「ΔP:100kPa down」とは、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が100kPaであり、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合(液体の流量を減少させる場合)のパルス数と流量の関係を示している。
【0095】
図12に示すように、本実施形態の流量調整装置100においては、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が50kPaである場合には、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合と、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合のパルス数と流量の関係が一致している。また、パルス数と流量との関係がなだらかな曲線形状の関係となっている。
【0096】
また、図12に示すように、本実施形態の流量調整装置100においては、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が100kPaである場合にも、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合と、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合のパルス数と流量の関係が一致している。さらに、パルス数と流量との関係がなだらかな曲線形状の関係となっている。したがって、本実施形態の流量調整装置100では、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができる。
【0097】
一方、図13に示すように、比較例の流量調整装置においては、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が50kPaである場合には、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合と、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合のパルス数と流量の関係が一致していない。また、パルス数と流量との関係がなだらかな曲線形状の関係となっておらず、パルス数の変化に対する流量の変化量が大きい領域(変位領域)が存在する。
【0098】
また、図13に示すように、比較例の流量調整装置においては、流入ポート100aにおける流体の圧力と流出ポート100bにおける流体の圧力との差圧が100kPaである場合にも、弁体面11aと弁座面21aとの距離を増加させる場合と、弁体面11aと弁座面21aとの距離を減少させる場合のパルス数と流量の関係が一致していない。さらに、パルス数と流量との関係がなだらかな曲線形状の関係となっておらず、パルス数の変化に対する流量の変化が大きい領域(変位領域)が存在する。したがって、比較例の流量調整装置では、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができない。
【0099】
以上説明した本実施形態の流量調整装置100が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の流量調整装置100によれば、移動機構30により弁体部10の弁体面11aと弁座部21の弁座面21aとの間の軸線Xに沿った距離を調整することにより液体の流量の調整が行われる。弁体面11aとそれに対向して配置される弁座面21aとがそれぞれ水平方向に延びる平坦面となっている。
【0100】
そのため、弁体部10を構成する部材及び弁座部21を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合であっても、弁体面11aは流入開口22aには挿入されずにその周囲に設けられる弁座面21aに非接触状態で近接する。弁体面11aと弁座面21aとが非接触状態を維持するため、弁体面11aと弁座面21aが接触してパーティクルが発生することがない。よって、弁体部10を構成する部材及び弁座部21を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態の流量調整装置100によれば、連通流路22の流路断面積が流入流路23の流路断面積および流出流路24の流路断面積よりも小さいため、流入流路23、弁室R1、連通流路22、流出流路24の順に液体を流通させる流路において、連通流路22を流通する液体の流速が最も速くなる。そのため、連通流路22とそれよりも容積の大きい弁室R1との間において、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じて液体の流量を安定して変化させることが適切な流量の調整に必要となる。
【0102】
そして、本実施形態の流量調整装置100によれば、容積の大きい弁室R1から流路断面積が小さい連通流路22に向けて液体を流入させているため、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じて液体の流量を精度良く調整することができる。これは、容積の大きい弁室R1から流路断面積が小さい連通流路22に向けて液体を流入させる場合には、弁室における液体の流速の変化が定常化し、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができるためであると考えられる。特に、弁室R1において、液体の流れが層流から乱流または乱流から層流へ遷移する遷移域で液体の流速の変化が定常化するためであると考えられる。
【0103】
一方、発明者らが検討した結果、流路断面積が小さい連通流路22からそれよりも容積の大きい弁室R1に向けて液体を流入させる場合、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じて液体の流量を精度良く調整することができないことがわかった。これは、流路断面積が小さい連通流路22からそれよりも容積の大きい弁室R1に向けて液体を流通させる場合には、弁室R1における液体の流速の変化が非定常となり、弁体面11aと弁座面21aとの間の距離に応じた適切な流量の液体を流通させることができなくなるためであると考えられる。特に、弁室R1において、液体の流れが層流から乱流または乱流から層流へ遷移する遷移域で液体の流速の変化が非定常となるためであると考えられる。
【0104】
本実施形態の流量調整装置100によれば、弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積が連通流路22の流路断面積よりも小さくなる範囲において、弁体面11aと弁座面21aとの距離に応じた流量となるように液体の流量が調整される。
【0105】
弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積の変化量が流入開口22aの流路断面積を超えている場合、流入開口22aから単位時間あたりに弁室R1に流入する液体の流量は最大となる。すなわち、移動範囲を過度に大きくしても、連通流路22から弁室R1へ流出する液体の流量が最大となる位置を超えてしまうと液体の流量を調整することができなくなる。本実施形態の流量調整装置100によれば、弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の最小流路断面積の変化量が流入開口22aの流路断面積と略一致するように移動範囲が設定されるため、液体の流量を適切に調整することができる。
【0106】
本実施形態の流量調整装置100によれば、弁体部10の基部11が、外周面11bから弁体面11aへ向けて軸線Xに直交する径方向の外径が漸次減少するように形成されているため、弁室R1から弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路に液体が流入する際に、液体が流れる流路の断面積が漸次減少し、液体を円滑に流通させることができる。
【0107】
本実施形態の流量調整装置100によれば、ステッピングモータ31の駆動軸32の回転に応じて軸線Xに沿って移動する移動部材35に弁体部10が連結されており、ステッピングモータ31が1ステップを所定の分割数で分割したマイクロステップ単位で変化する励磁信号(励磁電流)により制御される。ステッピングモータ31をフルステップあるいはハーフステップの励磁信号により制御する場合、弁体面11aの軸線Xに沿った最小移動量が大きいことから流体の流量の最小変化量が大きくなり、流量調整を精度良く行うことができない。
【0108】
それに対して、本実施形態の流量調整装置100では、弁体面11aの軸線Xに沿った最小移動量が小さいことから流体の流量の最小変化量が小さくなり、流量調整を精度良く行うことができる。
このように、本実施形態の流量調整装置100によれば、弁体部10を構成する部材及び弁座部21を構成する部材の組み付け誤差や寸法誤差が生じる場合のパーティクルの発生を抑制するとともに流体の流量調整を精度良く行うことができる。
【0109】
本実施形態の流量調整装置100において、1マイクロステップで弁体面11aが軸線に沿って移動する移動量St2による1分間あたりの流量の変化が0.05mL以下を満たすように所定の分割数を設定することで、弁体面の軸線に沿った最小移動量と流体の流量の最小変化量を十分に小さくし、流量の定常変化(実際の流量と目標流量との差分)を少なくすることができる。また、移動量St2による1分間あたりの流量の変化が0.01mL以上を満たすように所定の分割数を設定することで、流量変化量が過度に小さくなることを抑制し、目標流量への応答性を高めることができる。
【0110】
本実施形態の流量調整装置100において、弁体面11aの半径r2を流入開口22aの半径r1の3倍以上とすることで、弁体面11aと弁座面21aとの間に形成される流路の壁面の面積が十分に確保される。弁体面11aと弁座面21aとの間の流路の壁面は、流体に摩擦損失を与えて流体の流速を低減させる。そのため、弁体面11aの軸線Xに沿った移動量に対する流体の流量の変化量を小さくし、流量調整を精度良く行うことができる。
【0111】
本実施形態の流量調整装置100によれば、連通流路22の断面の直径を流入流路23の断面の直径の最小値の1/10以上とすることにより、連通流路22の断面積が過度に小さくなって単位時間当たりに流通する最大流量が過度に小さくなることを抑制することができる。また、連通流路22の断面の直径を流入流路23の断面の最小値の直径の1/3以下とすることにより、連通流路22の断面積が過度に大きくなって弁体部10の移動量に対する流量の変化が過度に大きくなることを抑制することができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0113】
10 弁体部
11a 弁体面
21 弁座部
21a 弁座面
22 連通流路
22a 流入開口
30 移動機構
31 ステッピングモータ
32 駆動軸
35 移動部材
80 制御基板
81 制御部
82 モータドライバ
100 流量調整装置
P1 最下端位置
P2 最上端位置
R1 弁室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13