(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ポリアミド系ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20241126BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20241126BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20241126BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C08G73/06 ZBP
C08G69/26
D01F6/60 351Z
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020168489
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522004704
【氏名又は名称】株式会社GRIPs
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 達雄
(72)【発明者】
【氏名】アリ モハマッド アシフ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-227356(JP,A)
【文献】特開平07-228689(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0074666(KR,A)
【文献】米国特許第04420608(US,A)
【文献】特開2012-107122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00- 69/50
C08G 73/00- 73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とジアミンとを重合させてなるポリアミド系ポリマーであって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
H
2N-R
1-NH
2 (I)
(式中、R
1は炭素数
8~
10の直鎖のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンと式(II):
H
2N-R
2-NH
2 (II)
(式中、R
2は分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数
8~
10のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンとが併用されており、式(IIIa):
【化1】
(式中、pは
8~
10の整数を示す)
で表わされる繰返し単位
と式(IIIb):
【化2】
(式中、R
2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位
とからなるポリアミド系ポリマー。
【請求項2】
式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕が5/95~95/5である請求項1に記載のポリアミド系ポリマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなるポリアミド系繊維。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなる成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系ポリマーに関する。さらに詳しくは、本発明は、従来のナイロン(商品名)の代替として使用することが期待されるポリアミド系ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン(商品名、以下同じ)に代表されるポリアミドは、繊維のみならず、耐熱性、耐油性などの性質に優れていることから、インテークマニホールドなどの自動車のエンジン回りの部品に広く使用されている。
【0003】
近年、ガラス転移温度が高く、エンジニアリングプラスチックとしての性能を有するポリアミドとして、イタコン酸と、2~6個のメチレン基を有する脂肪族ジアルキレンジアミンまたはジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンとを反応させ、脱水縮合させることによって得られるポリアミドが提案されている(例えば、特許文献1の段落[0016]および実施例参照)。しかし、前記ポリアミドは、水中で光線に曝されたとき、短時間で水中に溶解するため、耐水性に劣るという欠点がある。
【0004】
従来、漁業に使用される漁網、釣り糸などの漁具には、耐水性を有し、引張強度などの機械的強度が高いナイロンが使用されている。しかし、プラスチックごみによる海洋汚染が国際問題となってきている今日において、ナイロンなどのプラスチックごみは、自然界での分解性に劣り、海洋で分解されずに漂うことから、魚類などがプラスチック製ごみを誤飲したり、海鳥の羽や足にナイロン製の釣り糸が絡まったりしたりすることなどが問題視されている。
【0005】
したがって、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有し、ナイロンの代替となり得るプラスチックの開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、バイオベースモノマーとして入手することができるイタコン酸が原料として使用され、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有し、ナイロンの代替となり得るポリアミド系ポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1) ジカルボン酸とジアミンとを重合させてなるポリアミド系ポリマーであって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
H2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数6~12の直鎖のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンと式(II):
H2N-R2-NH2 (II)
(式中、R2は分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数6~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンとが併用されていることを特徴とするポリアミド系ポリマー、
(2) 前記ジカルボン酸として、さらにテレフタル酸またはその塩が用いられ、当該テレフタル酸またはその塩がイタコン酸と併用されている前記(1)に記載のポリアミド系ポリマー、
(3) 式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕が5/95~95/5である前記(1)または(2)に記載のポリアミド系ポリマー、
(4) 前記(1)に記載のポリアミド系ポリマーの製造方法であって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸を用い、前記ジアミンとして式(I):
H2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数6~12の直鎖のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンと式(II):
H2N-R2-NH2 (II)
(式中、R2は分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数6~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンとを用い、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させ、得られた反応生成物を重合させることを特徴とするポリアミド系ポリマーの製造方法、
(5) 前記(2)に記載のポリアミド系ポリマーの製造方法であって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸およびテレフタル酸またはその塩を用い、前記ジアミンとして式(I):
H2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数6~12の直鎖のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンと式(II):
H2N-R2-NH2 (II)
(式中、R2は分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数6~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンとを用い、イタコン酸およびテレフタル酸またはその塩と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させ、得られた反応生成物を重合させることを特徴とするポリアミド系ポリマーの製造方法、
(6) 式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕が5/95~95/5である前記(4)または(5)に記載のポリアミド系ポリマーの製造方法、
(7) 前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミド系ポリマーを含有してなるポリアミド系繊維、および
(8) 前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミド系ポリマーを含有してなる成形材料
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイオベースモノマーとして入手することができるイタコン酸が原料として使用され、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有し、ナイロンの代替となり得るポリアミド系ポリマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図2】実施例1で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図3】実施例1で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図4】実施例4で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図5】実施例7で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図6】実施例8で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図7】実施例12で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
【
図8】実施例14で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図9】ポリマーD、ポリマーS、ポリマーXおよびポリマーYの耐光性の促進試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)ポリアミド系ポリマーA
本発明のポリアミド系ポリマーは、前記したように、ジカルボン酸とジアミンとを重合させてなるポリアミド系ポリマーであって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
H2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数6~12の直鎖のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンと式(II):
H2N-R2-NH2 (II)
(式中、R2は分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数6~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンとが併用されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のポリアミド系ポリマーは、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとが用いられていることから、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有する。
【0013】
本発明のポリアミド系ポリマーは、ジカルボン酸としてイタコン酸を用い、ジアミンとして式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとを用い、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させ、得られた反応生成物を重合させることによって調製することができる。なお、ジカルボン酸とジアミンとの重合反応は、脱水重縮合反応であることから、化学量論的にジカルボン酸1モルに対してイタコン酸1モルが反応することになる。
【0014】
イタコン酸は、例えば、扶桑化学工業(株)、磐田化学工業(株)、カーギル社などから商業的に容易に入手することができる。イタコン酸は、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)などの菌を用いて生産したものであってもよく、原料として石油を使用して合成されたものであってもよい。これらのなかでは、アスペルギルス・テレウスなどの菌を用いて生産されたイタコン酸は、原料として石油を使用して合成されたイタコン酸と対比して地球環境に優しいという利点を有する。
【0015】
式(I)で表わされるジアミンにおいて、R1は炭素数6~12の直鎖のアルキレン基である。R1の炭素数は、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、6~12であるが、好ましくは8~10の整数、より好ましくは9である。
【0016】
式(I)で表わされるジアミンとしては、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミンおよびドデカンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのジアミンのなかでは、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、オクタンジアミン、ノナンジアミンおよびデカンジアミンが好ましく、ノナンジアミンがより好ましい。
【0017】
式(II)で表わされるジアミンにおいて、R2は、分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する炭素数6~12のアルキレン基である。R2の炭素数は、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、6~12であるが、好ましくは8~10の整数、より好ましくは9である。
【0018】
R2は、分岐鎖として炭素数1~4のアルキル基を有する。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基およびtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基のなかでは、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0019】
式(II)で表わされるジアミンとしては、例えば、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-エチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-エチル-1,6-ヘキサンジアミン、3-メチル-1,6-ヘキサンジアミン、3-エチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、3-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、2-エチル-1,8-オクタンジアミン、3-エチル-1,8-オクタンジアミン、4-エチル-1,8-オクタンジアミン、3-プロピル-1,8-オクタンジアミン、2-ブチル-1,8-オクタンジアミン、3-ブチル-1,8-オクタンジアミン、4-ブチル-1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,9-ノナンジアミン、3-メチル-1,9-ノナンジアミン、4-メチル-1,9-ノナンジアミン、2-エチル-1,9-ノナンジアミン、3-エチル-1,9-ノナンジアミン、4-エチル-1,9-ノナンジアミン、2-プロピル-1,9-ノナンジアミン、3-プロピル-1,9-ノナンジアミン、4-プロピル-1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,10-デカンジアミン、3-メチル-1,10-デカンジアミン、4-メチル-1,10-デカンジアミン、2-エチル-1,10-デカンジアミン、3-エチル-1,10-デカンジアミン、4-エチル-1,10-デカンジアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジアミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
式(II)で表わされるジアミンのなかでは、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、R2が分岐鎖として炭素数1または2のアルキル基を有し、分子全体の炭素数が7~11であるジアミンが好ましく、R2が分岐鎖として炭素数1または2のアルキル基を有し、分子全体の炭素数が7~10であるジアミンがより好ましく、R2が分岐鎖として炭素数1または2のアルキル基を有し、分子全体の炭素数が7~11であるジアミンがより一層好ましく、R2がが分岐鎖としてメチル基を有し、分子全体の炭素数が9であるジアミンがさらに好ましい。より具体的には、好適なジアミンとして、2-メチル-1,6-ヘキサンジアミンおよび2-メチル-1,8-オクタンジアミンが挙げられる。これらのなかでは、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、2-メチル-1,8-オクタンジアミンが好ましい。
【0021】
本発明においては、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとが併用されている点に本発明の特徴の1つがある。本発明では、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとが併用されているので、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得ることができる。
【0022】
式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕は、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、より一層好ましくは15/85~85/15、さらに好ましくは20/80~80/20、さらに一層好ましくは25/75~75/25、特に好ましくは30/70~75/25である。
【0023】
なお、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミン以外のジアミン(以下、他のジアミンという)が本発明の目的を阻害しない範囲内で用いられていてもよい。他のジアミンとしては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとは化学量論量で反応することから、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンの合計量は、イタコン酸1モルあたり理論的には1モルである。したがって、イタコン酸1モルに対する式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量は、1モルである。しかし、本発明のポリアミド系ポリマーを調製する際には、イタコン酸の量が式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量に対して過剰であってもよく、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量がイタコン酸の量に対して過剰であってもよい。
【0025】
本発明のポリアミド系ポリマーは、前記したように、例えば、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させ、得られた反応生成物を重合させることにより、調製することができる。
【0026】
イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとの反応は、有機溶媒中で行なうことができる。当該有機溶媒は、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとに対して良溶媒であるが、前記反応生成物に対して貧溶媒であることが好ましい。
【0027】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~3の脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、フェノール、クレゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
前記有機溶媒の量は、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとの合計量(質量)の3~20倍程度の量であることが好ましく、5~15倍程度の量であることがより好ましい。
【0029】
イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、反応効率を高める観点から40~60℃程度であることが好ましい。また、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の反応時間は、使用される有機溶媒の量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、1.5~3時間程度である。イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0030】
反応終了後、得られた反応混合物から反応生成物を晶析させる。反応混合物から反応生成物を晶析させる方法としては、例えば、反応混合物を0~25℃程度の温度に冷却する方法、反応混合物にヘキサン、トルエン、キシレンなどの貧溶媒を徐々に滴下する方法、反応混合物に含まれている溶媒を徐々に蒸発させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0031】
晶析した反応生成物は、濾過などの方法によって回収することができる。回収された反応生成物は、必要により、0~25℃程度の温度を有する非有機溶媒で洗浄してもよい。
【0032】
次に、前記で得られた反応生成物を重合させることにより、本発明のポリアミド系ポリマーが得られる。
【0033】
前記反応生成物を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、不純物量が少ないポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、塊状重合法が好ましい。塊状重合法によってポリアミド系ポリマーを調製する場合、前記で得られた反応生成物を150~250℃程度の重合温度に加熱し、重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記で得られた反応生成物を重合させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0034】
なお、前記反応生成物を重合させる際には、ポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、触媒を適量で用いることが好ましい。触媒としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。触媒のなかでは、リン酸二水素ナトリウムが好ましい。
【0035】
以上のようにして前記反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記で得られたポリアミド系ポリマーは、必要により、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させた後、アセトンなどのケトン化合物で沈殿させることによって精製してもよい。また、前記で得られたポリアミド系ポリマーは、例えば、減圧乾燥などにより、乾燥させてもよい。
【0036】
以上のようにして得られるポリアミド系ポリマーは、式(IIIa):
【0037】
【0038】
(式中、pは6~12の整数を示す)
で表わされる繰返し単位および式(IIIb):
【0039】
【0040】
(式中、R2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位を有する。なお、本発明のポリアミド系ポリマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位以外の繰返し単位が含まれていてもよい。
【0041】
本発明においては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位を有するので、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有する。
【0042】
式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕は、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕と実質的に同一である。
【0043】
したがって、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、より一層好ましくは15/85~85/15、さらに好ましくは20/80~80/20、さらに一層好ましくは25/75~75/25、特に好ましくは30/70~75/25である。
【0044】
本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIa)で表わされる繰返し単位の含有率は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~90モル%、より一層好ましくは15~85モル%、さらに好ましくは20~80モル%、さらに一層好ましくは25~75モル%、特に好ましくは30~75モル%である。また、本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIb)で表わされる繰返し単位の含有率は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~90モル%、より一層好ましくは15~85モル%、さらに好ましくは20~80モル%、さらに一層好ましくは25~75モル%、特に好ましくは25~70モル%である。
【0045】
本発明のポリアミド系ポリマーにおいては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位は、通常、ランダムに存在するが、交互に存在していてもよく、あるいはブロック状に存在していてもよい。
【0046】
本発明のポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、15000~800000であることが好ましく、20000~100000であることがより好ましい。なお、ポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0047】
(2)ポリアミド系ポリマーB
本発明においては、テレフタル酸(塩)を使用しない場合でも適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有するポリアミド系ポリマーが得られるが、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの水に対する分解性、機械的強度および耐熱性を向上させる観点から、ジカルボン酸としてイタコン酸以外にさらにテレフタル酸またはその塩〔以下、テレフタル酸(塩)という〕が用いられていることが好ましい。
【0048】
本発明のポリアミド系ポリマーは、ジカルボン酸としてイタコン酸およびテレフタル酸(塩)が用いられており、ジアミンとして式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンが用いられているので、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、水に対して良好な分解性を有し、機械的強度および耐熱性に優れている。
【0049】
前記ポリアミド系ポリマーは、例えば、ジカルボン酸としてイタコン酸およびテレフタル酸(塩)を用い、ジアミンとして式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとを用い、イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させ、得られた反応生成物を重合させることによって得ることができる。
【0050】
テレフタル酸(塩)としては、例えば、テレフタル酸、テレフタル酸二ナトリウム、テレフタル酸二カリウムなどのテレフタル酸二アルカリ金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのテレフタル酸(塩)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。テレフタル酸(塩)のなかでは、ポリアミド系ポリマーの純度を高める観点から、テレフタル酸が好ましい。
【0051】
イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとは化学量論量で反応する。したがって、理論的にはイタコン酸およびテレフタル酸(塩)の合計1モルに対し、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンの合計1モルが反応することになる。このことから、本発明においては、ジカルボン酸としてイタコン酸以外にさらにテレフタル酸(塩)が用いられる場合、前記ポリアミド系ポリマーAにおいてイタコン酸の一部がテレフタル酸(塩)で置き換えられることになる。
【0052】
イタコン酸とテレフタル酸(塩)とのモル比〔イタコン酸/テレフタル酸(塩)〕は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの水中における分解性および耐熱性をさらに向上させる観点から、好ましくは0/100~95/5、より好ましくは5/95~95/5、より一層好ましくは5/95~85/15、さらに好ましくは10/90~80/20、さらに一層好ましくは15/85~70/30、特に好ましくは20/80~60/40である。
【0053】
式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるジアミン〕は、前記したように、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、より一層好ましくは15/85~85/15、さらに好ましくは20/80~80/20、さらに一層好ましくは25/75~75/25、特に好ましくは30/70~75/25である。
【0054】
イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとは化学量論量で反応することから、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンの合計量は、イタコン酸およびテレフタル酸(塩)の合計量1モルあたり理論的には1モルである。したがって、イタコン酸とテレフタル酸(塩)との合計量1モルに対する式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量は、1モルである。しかし、本発明のポリアミド系ポリマーを調製する際には、イタコン酸およびテレフタル酸(塩)の合計量が式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量に対して過剰であってもよく、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量がイタコン酸およびテレフタル酸(塩)の合計量に対して過剰であってもよい。
【0055】
イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとの反応は、有機溶媒中で行なうことができる。当該有機溶媒は、イタコン酸、テレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとに対して良溶媒であり、得られる反応生成物生成物に対して貧溶媒であることが好ましい。前記有機溶媒としては、前記ポリアミド系ポリマーAを調製する際に使用されるものと同様のものを例示することができる。
【0056】
有機溶媒の量は、イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、イタコン酸とテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとの合計量(質量)の3~20倍程度の量であることが好ましく、5~15倍程度の量であることがより好ましい。
【0057】
イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、反応効率を高める観点から60~90℃程度であることが好ましい。また、イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の反応時間は、使用される有機溶媒の量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、1.5~3時間程度である。イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとを反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0058】
反応終了後、得られた反応混合物から反応生成物を晶析させる。反応混合物から反応生成物を晶析させる方法としては、例えば、反応混合物を0~25℃程度の温度に冷却する方法、反応混合物にヘキサン、トルエン、キシレンなどの貧溶媒を徐々に滴下する方法、反応混合物に含まれている溶媒を徐々に蒸発させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。生成した反応生成物は、例えば、濾過により回収することができる。回収された反応生成物は、必要により、0~25℃程度の温度を有する非極性有機溶媒で洗浄してもよい。
【0059】
次に、前記で得られた反応生成物を重合させることにより、本発明のポリアミド系ポリマーが得られる。
【0060】
前記反応生成物を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、不純物量が少ないポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、塊状重合法が好ましい。塊状重合法によってポリアミド系ポリマーを調製する場合、前記で得られた反応生成物を150~250℃程度の重合温度に加熱し、重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記で得られた反応生成物を重合させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0061】
なお、前記反応生成物を重合させる際には、ポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、触媒を適量で用いることが好ましい。触媒としては、前記したものを例示することができる。
【0062】
以上のようにして前記反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記で得られたポリアミド系ポリマーは、必要により、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させた後、アセトンなどのケトン化合物で沈殿させることによって精製してもよい。また、前記で得られたポリアミド系ポリマーは、例えば、減圧乾燥などにより、乾燥させてもよい。
【0063】
以上のようにして得られるポリアミド系ポリマーは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位以外に、さらに式(IIIc):
式(Ic):
【0064】
【0065】
(式中、pは前記と同じ)
で表わされる繰返し単位および式(IIId):
【0066】
【0067】
(式中、R2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位を有する。なお、本発明のポリアミド系ポリマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、式(IIIa)で表わされる繰返し単位、式(IIIb)で表わされる繰返し単位、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位以外の繰返し単位が含まれていてもよい。
【0068】
本発明のポリアミド系ポリマーは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位以外に、さらに式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位を有することから、適度な耐水性および生分解性を有し、水に対して良好な分解性を有し、耐熱性に優れている。
【0069】
イタコン酸およびテレフタル酸(塩)と、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるジアミンとは化学量論量で反応することから、本発明のポリアミド系ポリマーにおけるイタコン酸に由来の単位およびテレフタル酸(塩)に由来の単位の合計含有率は、50モル%であり、本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(I)で表わされるジアミンに由来の単位および式(II)で表わされるジアミンに由来の単位の合計含有率は、50モル%である。
【0070】
したがって、本発明のポリアミド系ポリマーにおいて、式(IV):
【0071】
【0072】
で表わされる単位と式(V):
【0073】
【化6】
で表わされる単位との合計含有率は50モル%である。なお、式(IV)で表わされる単位は、イタコン酸に由来の単位であり、式(V)で表わされる単位は、テレフタル酸(塩)に由来の単位である。
【0074】
式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位と、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位と/式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位〕は、前記したイタコン酸とテレフタル酸(塩)とのモル比〔イタコン酸/テレフタル酸(塩)〕と実質的に同一である。
【0075】
したがって、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位と、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位と/式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位〕は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの水中における分解性および耐熱性をさらに向上させる観点から、好ましくは0/100~95/5、より好ましくは5/95~95/5、より一層好ましくは5/95~85/15、より一層好ましくは10/90~80/20、さらに好ましくは15/85~70/30、さらに一層好ましくは20/80~60/40である。
【0076】
式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位の合計モルと、式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位の合計モルとの比は、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるジアミンとのモル比と実質的に同一である。なお、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位は、式(I)で表わされるジアミンに由来の単位である。また、式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位は、式(II)で表わされるジアミンに由来の単位である。
【0077】
したがって、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位の合計モルと、式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位の合計モルとの比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位の合計モル/式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位の合計モル〕は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、より一層好ましくは15/85~85/15、さらに好ましくは20/80~80/20、さらに一層好ましくは25/75~75/25、特に好ましくは30/70~75/25である。
【0078】
本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位の合計含有率は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~90モル%、より一層好ましくは15~85モル%、さらに好ましくは20~80モル%、さらに一層好ましくは25~75モル%、特に好ましくは30~75モル%である。また、本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位の合計含有率は、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの機械的強度を高める観点から、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~90モル%、より一層好ましくは15~85モル%、さらに好ましくは20~80モル%、さらに一層好ましくは25~75モル%、特に好ましくは25~70モル%である。
【0079】
本発明のポリアミド系ポリマーにおいては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位、式(IIIb)で表わされる繰返し単位、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位は、通常、ランダムに存在するが、交互に存在していてもよく、あるいはブロック状に存在していてもよい。
【0080】
前記で得られたポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、適度な耐水性および生分解性をポリアミド系ポリマーに付与し、ポリアミド系ポリマーの水中における分解性を高めるとともに耐熱性を向上させる観点から、15000~800000であることが好ましく、20000~650000であることがより好ましい。なお、ポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0081】
(3)ポリアミド系ポリマーの用途
本発明のポリアミド系ポリマーは、有機溶媒に溶解することから、当該ポリアミド系ポリマーを有機溶媒に溶解させることにより、紡糸原液を調製することができる。有機溶媒としては、前記したものを例示することができる。
【0082】
本発明のポリアミド系ポリマーに対する有機溶媒の量は、当該有機溶媒の種類などによって異なるので一概には決定することができない。通常、紡糸原液が所望の粘度を有するようにポリアミド系ポリマーに有機溶媒を添加することが好ましい。
【0083】
前記で得られた紡糸原液を紡糸口金の細孔から押し出し、有機溶媒を揮散除去することにより、ポリアミド系繊維を製造することができる。
【0084】
また、本発明のポリアミド系ポリマーは、熱可塑性を有することから、当該ポリアミド系ポリマーを加熱溶融させ、溶融紡糸装置を用いて紡糸口金の細孔から射出させることによって溶融紡糸することができる。
【0085】
紡糸口金は、一般に、金と白金との合金、白金とイリジウムとの合金、白金とパラジウムとの合金などの合金で製造されている。紡糸口金の孔径は、目的とするポリアミド系繊維の繊度に応じて適宜決定されるが、通常、0.05~0.1mm程度である。紡糸口金に設けられる孔の数は、特に限定されないが、通常、1個~2万個程度である。
【0086】
ポリアミド系繊維は、単繊維(フィラメント)であってもよく、複数の孔から押し出された複数の単繊維を収束させて1つの束となった繊維であってもよい。
【0087】
以上のようにして得られるポリアミド系繊維には、必要により、水洗、乾燥、捲縮などの処理を施してもよい。
【0088】
前記で得られたポリアミド系繊維の繊度は、当該ポリアミド系繊維の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該ポリアミド系繊維の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。ポリアミド系繊維の繊度の一例を挙げれば、例えば、1~30デシテックスが挙げられるが、本発明は、当該繊度によって限定されるものではない。ポリアミド系繊維の繊度は、紡糸口金の孔径を調節したり、ポリアミド系繊維を延伸させるときの延伸倍率を調節したりすることにより、容易に調整することができる。
【0089】
前記で得られたポリアミド系繊維は、機械的強度を高めるために必要により延伸させてもよい。ポリアミド系繊維の延伸は、通常、一軸延伸であるが、二軸延伸であってもよい。
【0090】
ポリアミド系繊維は、長繊維の状態で用いてもよく、所望の繊維長となるように切断して短繊維として用いてもよい。ポリアミド系繊維の繊維長は、当該ポリアミド系繊維の用途などによって異なることから、当該ポリアミド系繊維の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0091】
ポリアミド系繊維は、釣り糸などに用いてもよく、例えば、織布、不織布、釣り網などの編物などに用いてもよい。
【0092】
前記編物は、前記ポリアミド系繊維を用い、メリヤス編機などを用いて製造することができる。編物を製造する際には、前記ポリアミド系繊維をそのままの状態で用いてもよく、例えば、前記ポリアミド系繊維とポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維、綿糸、毛糸、生糸などの繊維との混紡糸を用いてもよい。編物としては、例えば、平編み、ゴム編み、パール編みなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0093】
前記織布は、前記ポリアミド系繊維を経糸、緯糸、または経糸と緯糸の双方に用い、織機などを用いて製造することができる。織布は、経緯糸の一部または全部にポリアミド系繊維を含有する混紡糸が用いられた混紡織物であってもよく、経糸と緯糸との組成が相違し、経糸および/または緯糸にポリアミド系繊維が使用されている交織織物であってもよく、さらに本発明のポリアミド系繊維を含有し、繊維径が異なる経糸と緯糸とが用いられている高配織物であってもよい。織布が有する組織としては、例えば、平織り組織、斜文織り組織、綾織り組織、朱子織り組織、変化組織などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0094】
不織布は、前記ポリアミド系繊維を含有する繊維を用い、乾式法または湿式法によって製造することができる。不織布に用いられる繊維は、前記ポリアミド系繊維のみであってもよく、前記ポリアミド系繊維とポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維、綿糸、毛糸、生糸などの繊維との混紡糸であってもよい。乾式法としては、例えば、ケミカルポンド法、サーマルポンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法などに代表される機械結合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。湿式法としては、例えば、水流交絡法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0095】
前記ポリアミド系繊維には、本発明のポリアミド系ポリマーが用いられていることから、適度な耐水性を有するとともに、生分解性を有し、機械的強度に優れているので、漁業における漁網、釣り糸などの漁具、農業用具などに使用することができるのみならず、手袋、肌着、靴下、シャツ、洋服などの衣類をはじめ、フェースマスク、紙おむつ用素材、拭き取り化粧水シートなどの化粧用シートなどの種々の用途に好適に使用することができる。
【0096】
また、本発明のポリアミド系ポリマーは、有機溶媒に溶解することから有機溶媒溶液として用いることができ、熱可塑性を有することから加熱によって溶融させた溶融物として用いることができる。したがって、本発明のポリアミド系ポリマーは、射出成形材料などの成形材料に好適に用いることができる。
【0097】
本発明のポリアミド系ポリマーには、必要により、その用途に応じて添加剤を適量で含有させてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、染料などの着色剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、防錆剤、抗菌剤、可塑剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
【実施例】
【0098】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
なお、以下の各実施例および各比較例で得られたポリマーの物性は、以下の方法に基づいて調べた。
【0100】
〔ポリマーの構造〕
ポリマーの構造は、核磁気共鳴(1H-NMR)によって決定した。核磁気共鳴(1H-NMR)は、核磁気共鳴分光装置〔ブルカー(Bruker)社製、商品名:AVANCE III 400, 400MHz〕を用い、サンプル(ポリマー)5mgをジメチルスルホキシド-d60.5mLに溶解させ、得られた溶液をガラス製サンプルチューブに移し、25℃の温度で積算回数16回にて測定した。
【0101】
〔ポリマーの数平均分子量〕
ポリマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)によって測定した。より具体的には、装置としてカラム〔昭和電工(株)製、商品名:Shodex KD-803およびShodex KD-804、2本〕備えたGPC測定装置で測定した。なお、外部標準はプルランである。
【0102】
〔ポリマーの性質〕
(1)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定は、示差走査熱量測定装置〔セイコーインスツル(株)製、商品名:EXSTAE6100〕を用い、窒素ガス雰囲気中にて25~200℃の温度で10℃/minの昇温速度で行なった。
【0103】
(2)熱重量分析(TGA)および10%重量損失温度
熱重量分析は、熱重量分析装置セイコーインスツル(株)製、商品名:SSC/5200SII〕を用い、窒素ガス雰囲気中で10℃/minの昇温速度で30~800℃の温度で行なった。また、熱重量分析の結果に基づき、10%の重量損失温度を決定した。なお、10%の重量損失温度は、試料(ポリマー)の質量が10%減少したときの温度を意味する。
【0104】
(3)ポリマーの一軸引張強度
ポリマーの一軸引張強度は、長さ10mmの繊維状サンプル(ポリマー)を用い、引張試験機〔インストロン(INSTRON)社製、品番:3365-L5)にて室温で1mm/secのクロスヘッド速度で引っ張ることによって測定した。ヤング率は、応力-ひずみ曲線の初期傾きによって求めた。
【0105】
実施例1
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン92モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン8モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0106】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0107】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0108】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーAという)を得た(収率:92質量%)。
【0109】
前記で得られたポリマーAの数平均分子量は24500であった。ポリマーAの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを
図1および
図2に示す。なお、
図1において、DMSOは核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを測定する際に用いられた溶媒のジメチルスルホキシドを意味する。また、ポリマーAの赤外吸収スペクトルを
図3に示す。
【0110】
実施例2
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン93モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン7モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0111】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0112】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0113】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーBという)を得た(収率:92質量%)。
【0114】
前記で得られたポリマーBの数平均分子量は23400であった。ポリマーBの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0115】
実施例3
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン75モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン25モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0116】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0117】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0118】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーCという)を得た(収率:92質量%)。
【0119】
前記で得られたポリマーCの数平均分子量は38700であった。ポリマーCの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0120】
実施例4
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン56%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン44モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0121】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0122】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0123】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーDという)を得た(収率:92質量%)。
【0124】
前記で得られたポリマーDの数平均分子量は23400であった。ポリマーDの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを
図4に示す。ポリマーDの赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0125】
実施例5
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン34モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン66モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0126】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0127】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0128】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーEという)を得た(収率:92質量%)。
【0129】
前記で得られたポリマーEの数平均分子量は49600であった。ポリマーEの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0130】
実施例6
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン7モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン93モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0131】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0132】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0133】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーFという)を得た(収率:92質量%)。
【0134】
前記で得られたポリマーFの数平均分子量は49600であった。ポリマーFの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0135】
実施例7
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン6モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン94モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0136】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0137】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0138】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーGという)を得た(収率:92質量%)。前記で得られたポリマーGの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを
図5に示す。ポリマーGの赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0139】
実施例8
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに、攪拌下で45℃の液温にてn-ノナンジアミン96モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン4モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0140】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた(収率:96質量%)。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0141】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0142】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーHという)を得た(収率:92質量%)。前記で得られたポリマーHの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを
図6に示す。ポリマーHの核磁気共鳴赤外吸収スペクトルは、ポリマーAと同様であった。
【0143】
比較例1
イタコン酸1モル(13g)を含有するエタノール溶液200mLに当該エタノール溶液の液温を45℃に維持しながら攪拌下で1,6-ヘキサメチレンジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0144】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0145】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0146】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを精製させ、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマーを得た(収率:89質量%)。
【0147】
前記で得られたポリアミド系ポリマーの物性としてヤング率を測定したところ、ヤング率が580MPaであった。このことから、前記ポリアミド系ポリマーは、ポリエチレン、フッ素樹脂などと同様の延伸性を有することから、エンジニアリングプラスチックなどの用途に適していないことがわかる。
【0148】
また、前記で得られたポリアミド系ポリマーをシャーレに入れ、25℃の水中に浸漬した状態で当該ポリアミド系ポリマーに高圧水銀灯で波長250~450nmの光線を150mW/cm2の強度で照射したところ、光線照射時から約6時間経過時に当該ポリアミド系ポリマーは、水中に完全に溶解していた。このことから、前記ポリアミド系ポリマーは、耐水性に劣るので、水中で使用される釣り糸、漁網などの用途に適していないことがわかる。
【0149】
次に、前記で得られたポリマーA~Fの物性として、10%重量損失温度、ガラス転移温度、引張強度およびヤング率を調べた。その結果を表1に示す。
【0150】
【0151】
表1に示された結果から、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、いずれも10%重量損失温度が400℃以上であることから耐熱性に優れており、ガラス転移温度が53~62℃であり、ナイロン6(ポリアミド6)およびナイロン66(ポリアミド66)のガラス転移温度(約50℃)と同等であるかまたはそれ以上に高いので耐熱性に優れており、ヤング率がナイロン6(ポリアミド6)のヤング率(約1100MPa)およびナイロン66(ポリアミド66)のヤング率(約1500MPa)と対比して格段に高いことから応力を必要とする用途に適していることがわかる。
【0152】
また、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーのなかでは、ポリアミド系ポリマーの引張強度およびヤング率は、式(IIIa)で表わされる繰返し単位を与えるジアミンと式(IIIb)で表わされる繰返し単位を与えるジアミンとのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位を与えるジアミン/式(IIIb)で表わされる繰返し単位を与えるジアミン〕が20/80~80/20の範囲内で相乗的に向上することがわかる。
【0153】
次に、各実施例で得られたポリアミド系ポリマー1mgの50℃の有機溶媒1mLに対する溶解性について調べた。その結果、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、いずれもN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、トリフルオロ酢酸、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に可溶であることが確認された。
【0154】
このことから、本発明のポリアミド系ポリマーを有機溶媒に溶解させて得られた溶液は、紡糸液として用いることができることがわかる。
【0155】
次に、前記で得られポリアミド系ポリマー1mgを50℃の前記各種の有機溶媒1mLに溶解させて得られた溶液を紡糸液として用い、当該紡糸液をガラス板に付着させ、その表面にガラス棒を接触させた後、当該ガラス棒をガラス板から引き離したところ、当該紡糸液が1m以上延伸し、フィラメントが形成されたことから、当該紡糸液を用いて繊維を容易に製造することができることが確認された。
【0156】
また、前記で得られたポリアミド系ポリマーをそれぞれ80℃に加熱し、溶融させた溶融物を溶融紡糸液として用いた。前記で得られた溶融紡糸液をガラス板に付着させ、その表面にガラス棒を接触させた後、当該ガラス棒をガラス板から引き離したところ、当該溶融紡糸液が1m以上延伸し、フィラメントが形成されたことから、当該溶融紡糸液を用いても繊維を容易に製造することができることが確認された。
【0157】
実施例9
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.16モルおよびテレフタル酸0.84モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン78モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン22モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0158】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0159】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0160】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーPという)を得た。前記で得られたポリマーPの数平均分子量は100000であった。
【0161】
実施例10
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.28モルおよびテレフタル酸0.72モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン79モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン21モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0162】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0163】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0164】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーQという)を得た。前記で得られたポリマーQの数平均分子量は100000であった。
【0165】
実施例11
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.42モルおよびテレフタル酸0.58モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン63モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン37モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0166】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0167】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0168】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーRという)を得た。前記で得られたポリマーRの数平均分子量は100000であった。
【0169】
実施例12
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.56モルおよびテレフタル酸0.44モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン63モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン37モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0170】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0171】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0172】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーSという)を得た。前記で得られたポリマーSの数平均分子量は100000であった。前記で得られたポリマーSの核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを
図7に示す。なお、
図7中、Aromatic-は芳香環を意味し、DMSOは核磁気共鳴(
1H-NMR)スペクトルを測定する際に用いられた溶媒のジメチルスルホキシドを意味する。
【0173】
実施例13
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.77モルおよびテレフタル酸0.23モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン79モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン21モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0174】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0175】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0176】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーTという)を得た。前記で得られたポリマーTの数平均分子量は100000であった。
【0177】
実施例14
溶媒としてジオキサン20質量%とN,N-ジメチルホルムアミド70質量%と水10質量%との混合溶媒が用いられ、イタコン酸0.20モルおよびテレフタル酸0.80モルを含有する混合物200mLに、攪拌下で80℃の液温にてn-ノナンジアミン20モル%および2-メチル-1,8-オクタンジアミン80モル%からなるジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0178】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色粉末の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0179】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で240℃に加熱し、当該反応生成物を2時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得た。
【0180】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをジメチルスルホキシド5質量%とイソプロパノール95質量%との混合溶媒に添加し、得られた混合物をアセトンに添加することにより、ポリアミド系ポリマーを洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーUという)を得た。前記で得られたポリマーUの数平均分子量は100000であった。前記で得られたポリマーUの赤外吸収スペクトルを
図8に示す。
【0181】
次に、前記で得られたポリマーP~Tの物性として、10%重量損失温度、ガラス転移温度、融点、引張強度およびヤング率を調べた。その結果を表1に示す。
【0182】
【0183】
表2に示された結果から、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、10%重量損失温度が400℃以上であることから耐熱性に優れており、ガラス転移温度が54~105℃であり、ナイロン6(ポリアミド6)およびナイロン66(ポリアミド66)のガラス転移温度(約50℃)よりも高いので耐熱性に優れており、ヤング率がナイロン6(ポリアミド6)のヤング率(約1100MPa)およびナイロン66(ポリアミド66)のヤング率(約1500MPa)と対比して格段に高いことから張力を必要とする用途に適していることがわかる。
【0184】
前記で得られたポリアミド系ポリマーをそれぞれ270℃に加熱し、溶融させた溶融物を溶融紡糸液として用いた。前記で得られた溶融紡糸液をガラス板に付着させ、その表面にガラス棒を接触させた後、当該ガラス棒をガラス板から引き離したところ、当該溶融紡糸液が1m以上延伸し、フィラメントが形成されたことから、当該溶融紡糸液を用いて繊維を容易に製造することができることが確認された。
【0185】
次に、前記で得られたポリマーP~Tをシャーレに入れ、それぞれ25℃の水中に浸る程度に浸漬した状態でポリマーP~Tに高圧水銀灯で波長250~450nmの光線を150mW/cm2の強度で照射し、ポリマーP~Tの耐光性の促進試験を行なった。その結果、ポリマーP~Tは、光線の開始時から36時間経過した時点でポリマーP~Tの直径がいずれも2倍以上に膨張していることが確認された。このことから、ポリマーP~Tは、光線の照射により、水和し、徐々に分解するので、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持つことがわかる。
【0186】
次に、前記で得られたポリマーDおよびポリマーSをそれぞれシャーレに入れ、25℃の水中に浸る程度に浸漬した状態でポリマーDおよびポリマーSに高圧水銀灯で波長250~450nmの光線を150mW/cm2の強度で照射し、ポリマーDおよびポリマーSの耐光性の促進試験を行なった。
【0187】
また、従来のポリアミド系ポリマーとして、イタコン酸50モル%とm-キシレンジアミンとからなるポリマーXおよびイタコン酸50モル%とヘキサメチレンジアミン50モル%とからなるポリマーYを用い、これらのポリマーについても前記と同様にして耐光性の促進試験を行なった。
【0188】
前記耐光性の促進試験の結果を
図9に示す。
図9において、DはポリマーDの耐光性の促進試験の結果、SはポリマーSの耐光性の促進試験の結果、XはポリマーXの耐光性の促進試験の結果、YはポリマーYの耐光性の促進試験の結果を示す。
【0189】
図9に示された結果から、ポリマーXおよびポリマーYについては、短時間で膨潤したため、耐水性に劣るのに対し、ポリマーDは長期間にわたって耐水性に優れており、ポリマーSはポリマーXおよびポリマーYよりも膨潤しがたいことから耐水性に優れており、いずれのポリマーも適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持つことがわかる。また、ポリマーSは、ポリマーDよりも短時間で膨潤することから、本発明のポリアミド系ポリマーにおけるテレフタル酸の含有率を調整することにより、本発明のポリアミド系ポリマーの耐水性を調節することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明のポリアミド系ポリマーは、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、ナイロンに匹敵する機械的強度を有するので、従来のナイロンの代替として漁業における漁網、釣り糸などの漁具、農業用具などに使用することができるのみならず、高性能を有するポリアミド系ポリマーとして用いることができるので、自動車用部品に適用した場合には自動車の軽量化、ひいては燃費の向上に貢献することが期待される。
【0191】
また、本発明のポリアミド系ポリマーは、適度な耐水性を有するとともに、水中における分解性および耐久性を併せ持ち、機械的強度に優れていることから、ヒトをはじめとする動物を手術する際に使用される縫合糸などの繊維への用途展開が考えられ、水分の存在下で分解する性質を有することから、食べても安全な玩具などの用途に展開されることが期待される。