(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントのカバー体、エキスパンションジョイント、カバー材端部の固定構造及びカバー材支持構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
(21)【出願番号】P 2020199575
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】力丸 真也
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-72602(JP,A)
【文献】特開平11-81498(JP,A)
【文献】米国特許第4557082(US,A)
【文献】特開昭59-41550(JP,A)
【文献】特開2007-9449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントを構成するカバー体であって前記間隙を形成する一方の躯体と他方の躯体間に設置されて間隙を覆うカバー体において
前記間隙を覆う遮蔽面部を有して前記間隙内に配置されていて、前記遮蔽面部は前記間隙の幅方向に沿って複数の山折り部又は複数の谷折り部が配置され、これら山折り部又は谷折り部が開いたり折れたりすることで間隙幅方向に沿って拡張し又は縮小するように形成された弾性材料からなるカバー材と、
前記カバー材の背面側で前記両躯体間に設置される伸縮自在な支持部材からなり、
前記支持部材は前記カバー材の遮蔽面部内に設けられた孔部に挿通させて前記遮蔽面部に接続された構成を有することを特徴とするエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項2】
前記カバー材は、その遮蔽面部に背面側へ突出した突面部が設けられ、この突面部に
形成された孔部に前記支持部材を挿通させて接続した構成を有することを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項3】
端部同士が接続した複数のカバー材が間隙内に設置され、これらカバー材の背面側に設置された
支持部材が各カバー材の
遮蔽面部に接続された構成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項4】
カバー材の端部同士が継手部材を介して接続され、この継手部材と支持部材が接続した構成を有することを特徴とする請求項3に記載のエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項5】
構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントを構成するカバー体であって前記間隙を形成する一方の躯体と他方の躯体間に設置されて間隙を覆うカバー体において、
前記間隙を覆う遮蔽面部を有して前記間隙内に配置されていて、前記遮蔽面部は前記間隙の幅方向に沿って複数の山折り部又は複数の谷折り部が配置され、これら山折り部又は谷折り部が開いたり折れたりすることで間隙幅方向に沿って拡張し又は縮小するように形成された弾性材料からなる複数のカバー材と、
前記カバー材の端部同士を接続する継手部材と、
前記カバー材及び継手部材の背面側で前記両躯体間に設置される伸縮自在な支持部材
とからなり、
前記継手部材はその背面側へ突出した突面部を有し、前記支持部材は前記突面部内に設けられた孔部に挿通させて前記継手部材に接続された構成を有することを特徴とするエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項6】
カバー材が硬度60°以上である請求項1から5の何れかに記載のエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項7】
カバー材が熱可塑性エラストマーからなる請求項1から6の何れかに記載のエキスパンションジョイントのカバー体。
【請求項8】
カバー材及び/又は継手部材と支持部材との接続は、接続部位同士が固定された連結であることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のカバー体。
【請求項9】
構造物の間隙に設置される、請求項1から8の何れかに記載のカバー体を備えたエキスパンションジョイントであって、
前記間隙を挟んで相対する躯体の端部にそれぞれ連繋部材が取り付けられ、
両連繋部材に前記カバー体の両端部をそれぞれ接続し、前記躯体間に架け渡した前記カバー体で間隙を遮蔽した構成を有することを特徴とする
エキスパンションジョイント。
【請求項10】
連繋部材は、躯体に取り付けられるベース材と、このベース材とでカバー材の端部を挟んだ部分にネジが螺合されてカバー材とともにベース材に取り付けられる通し材とを備え、
前記カバー材の端部が、通し材が係合して屈曲されるとともに、当該屈曲されたカバー材の端部の先端側が前記通し材とベース材に挟まれてネジ留めされた構成を有することを特徴とする請求項9に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項11】
支持部材の端部に、連繋部材に設けられた係合板の孔部に係合する係合フックと、この係合フックの外面に装着する伸縮自在なスリーブ材が設けられた構成を有する請求項9又は10に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項12】
間隙内に配置されたカバー体の背面側に取り付けられてカバー体とともに変位する第1の掛合部材と、前記間隙に面した一方の躯体であって前記第1の掛合部材の取り付け位置よりも上方の位置の当該躯体端部に取り付けられた第2の掛合部材と、前記第2の掛合部材よりも下方に取り付けられた引張部材とを有し、前記間隙に面した他方の躯体であって前記第1の掛合部材の取り付け位置よりも上方の位置の当該躯体端部に線材の先端部を引っ掛け、前記線材の中間部を前記第1の掛合部材の軸部に掛け回すとともに前記第2の掛合部材の軸部に掛け回して下側に向けて牽引し、且つ前記線材の他端部を前記引張部材に実装された張力保持部材に接続して、前記線材を両躯体間に張設する構成を有する複数の可動懸架機構を前記間隙内に設置し、前記カバー体の背面側が前記複数の可動懸架機構で支持された構成を有することを特徴とする請求項9から11の何れかに記載のエキスパンションジョイント。
【請求項13】
カバー材同士が上下に継ぎ合わされて一体に接続された構成を有する請求項9から12の何れかに記載のエキスパンションジョイント。
【請求項14】
構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントのカバー材の端部を、間隙に面した躯体又はカバー材同士を接続する継手部材に固定する構造において、
前記カバー材の端部が、通し材が係合して屈曲されるとともに、当該屈曲されたカバー材の端部の先端側が前記通し材と、前記躯体に取り付けられたベース材又は継手部材の継手ベース材に挟まれてネジ留めされた構成を有することを特徴とするカバー材端部の固定構造。
【請求項15】
構造物の
壁面の間隙に設置されるエキスパンションジョイントの、弾性変形可能に形成されたカバー材を支持する構造であって、
間隙内に配置されたカバー材の背面側に取り付けられてカバー材とともに変位する第1の掛合部材と、
前記間隙に面した一方の躯体であって前記第1の掛合部材の取り付け位置よりも上方の位置の当該躯体端部に取り付けられた第2の掛合部材と、
前記第2の掛合部材よりも下方に取り付けられた引張部材とを有し、
前記間隙に面した他方の躯体であって前記第1の掛合部材の取り付け位置よりも上方の位置の当該躯体端部に線材の先端部を引っ掛け、前記線材の中間部を前記第1の掛合部材の軸部に掛け回すとともに前記第2の掛合部材の軸部に掛け回して下側に向けて牽引し、且つ前記線材の他端部を前記引張部材に実装された張力保持部材に接続して、前記線材を両躯体間に張設する構成を有する少なくとも一つの可動懸架機構により、
前記カバー材に上向きの張力を加えて
当該カバー材を間隙内に吊設支持した構成を有することを特徴とするカバー材の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントを構成するカバー体と、これを用いたエキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の構造物は、これを構成する躯体の温度変化や地震のときなどにかかる荷重の影響を避けるため、構造物を複数の躯体に分割して躯体間に間隙(以下、「クリアランス」ともいう。)を設けて建てられ、各間隙には、間隙の両側の躯体同士を一体に接続したまま躯体が相互に異なる方向に変位してもそれに追従変形して応力を吸収するように構成されたエキスパンションジョイントが設置されている。
【0003】
間隙を挟んで向き合う躯体の外壁面の取り合い部分に設置されるエキスパンションジョイントとして、山折り部と谷折り部が繰り返した蛇腹形に形成された合成樹脂製のカバー材を用い、これを前記取り合い部分に設置して間隙に面した躯体の外壁面同士を接続した構造のものが知られている。
【0004】
かかるエキスパンションジョイントのカバー材には、間隙の両側の躯体の変位に追従変形して応力を吸収し、同時に強い風雨の荒天時でも取り合い部分の水気密性を保持する機能を備えることが求められ、現状、比較的高硬度のゴム素材を用いて成形されたものが多く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
躯体の外壁面の取り合い部分に設置される従来のエキスパンションジョイントは、躯体間に架け渡した前記蛇腹形のカバー材の両側部をそれぞれ両躯体の端部に形成された凹溝に篏合して接続し、カバー材の背面側で躯体間に通した支持部材を設置して構成されており、前記カバー材が蛇腹形であることと面剛性が大きいこととが相俟って、風を受けたときにカバー材がばたつきにくく、また、強風時にカバー材に大きな風圧が加わっても、カバー材がその背面に前記支持部材が当たって支持されることでカバー材が間隙内にずれたり凹んだりしにくいように設けられている。
【0007】
しかしながら、前記従来のエキスパンションジョイントにあっては、大きな風圧が加わったときにカバー材の背面部分に支持部材が当たってカバー材が間隙内に入り込んで変形することを抑止するが、この支持部材にカバー材自体が接続されてはいないので、カバー材に負圧がかかるとカバー材が屋外側へずれてばたついたり、大きな負圧がかかったときにはカバー材が屋外側に膨らんで変形したりすることがあった。
【0008】
また、前記エキスパンションジョイントは、カバー材と躯体との接続部は、カバー材の側端部を躯体に設けられた凹溝内に圧入して篏合させてあるだけで、カバー材に大きな引っ張り力が加わったときには前記凹溝からカバー材の側端部が外れる虞のあるもの、つまり、カバー材の許容可動量を小さく設定した仕様のものであった。
そのため、許容可動量を超えてカバー材が伸張するような事態が生じた場合、例えば地震発生による間隙の広がりに追従して前記カバー材が大きく伸張したときや、複雑な地震動に追従してカバー材が伸縮したとき、或いは前記負圧がかかることでカバー材が屋外側へ張り出したりしたときなどに、カバー材の側端部を凹溝から引っ張り抜く大きな力が加わって篏合が外れ、カバー材の側端部が躯体から脱落する危険があった。想定を超える地震動にも対応可能なように、カバー材の可動量を大きく確保しておくことは安全性確保の上で極めて重要である。
【0009】
一方、前記カバー材の側端部を躯体の凹溝に篏合させる構成に代えて、或いはこれに加えて、カバー材の側端部を躯体に取り付けた金具にねじやビスなどの固着具で固定すればカバー材の側端部が躯体から外れることはない。
しかし、カバー材に大きな引っ張り力がかかった場合に、カバー材と金具との接続部である固着具で留め付けた部分に応力が集中して、その部分から破れる虞がある。合成樹脂製のカバー材のような可撓性を有する部材を躯体に固定する場合、固着具などで留め付けた部分に応力が集中しないように、応力を分散する手段を講じる必要がある。
【0010】
また、ゴム素材を用いて蛇腹形に成形されたカバー材は表面積が大きくて重量も大きいため、前記躯体間の取り合い部分に架け渡して取り付けた状態で自重により「ダレ」、つまり蛇腹部分の全体又は一部が不揃いに垂れ下がったり弛んだりしやすい。
そのため、カバー材は、自重ダレが起きる程度を考慮に入れてテンションを与えて、且つテンションが保持されるように取り付ける必要があるが、前記エキスパンションジョイントは、カバー材を取り付けるときのテンションは背面に当たって支持する支持部材の張力に依存しており、適正なテンションを与えて取り付けることが難しかった。そのため、施工場所に応じて適宜に、カバー材の背面部分をステンレスワイヤーで吊るすなどしてテンションを加える工事をするなどの対応が必要であった。
【0011】
本発明は、合成樹脂製のカバー材を用いた前記従来のエキスパンションジョイントが有する問題点を解決することを課題とする。また、本発明は、合成樹脂製のカバー材などの可撓性を有するシート状の部材を固着具で躯体に固定する際に、外力が加わることに伴い発生する応力を分散させて、固着具で接続した部分から破損することを防ぐことを課題とする。本発明は、可撓性を備え、弾性変形可能に形成されたカバー材が、自重により間隙内で垂れたり撓んだりせず、間隙に沿った平坦性を保持して間隙を覆い隠すことができるようにすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明は、構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントを構成するカバー体であって前記間隙を形成する一方の躯体と他方の躯体間に設置されて間隙を覆うカバー体において、
複数の山折り部及び/又は谷折り部を配した遮蔽面部を有する、前記間隙内に設置されるカバー材と、
カバー材の背面側で前記両躯体間に設置される伸縮自在な支持部材からなり、
前記カバー材の遮蔽面部の少なくとも一部が前記支持部材に接続された構成を有することを特徴とする。
【0013】
これによれば、カバー体は、カバー材の遮蔽面部の一部を、カバー材の背面側に配置した伸縮自在な支持部材に接続して構成されており、支持部材でカバー材の背面が支持されているので、カバー材に負圧がかかっても、カバー材が屋外側へずれてばたついたり、屋外側に膨らんで変形したりすることはない。
地震発生により躯体間隙が変位した際、カバー材が間隙幅方向に沿って拡張したり縮小したりするのに伴って支持部材が伸縮動作するので、変位した間隙をカバー材で適正に遮蔽することができる。
【0014】
カバー体を構成するカバー材は、ゴム弾性や可撓性を有する合成樹脂材料を用いて躯体間隙を遮蔽する大きさに形成することができる。とりわけ、硬度60°以上の合成樹脂材料によりカバー材が形成されていることが好ましく、成形加工のしやすさや加工コストの観点から熱可塑性エラストマーを成形材料に用いることが好ましい。
カバー材は、遮蔽面部に躯体間隙の幅方向に沿って複数の山折り部や、複数の谷折り部が配置され、これら山折り部や谷折り部が開いたり折れたりすることで、間隙幅方向に沿って拡張し又は縮小するように形成される。遮蔽面部は、山折り部と谷折り部を適宜に組み合わせて配置した形状や、山折り部と谷折り部が交互に繰り返す蛇腹形状に形成されていてもよい。
【0015】
支持部材は、カバー材と同様に、熱可塑性エラストマーなどのゴム弾性を有する合成樹脂材料を用いて形成することができる。支持部材は、カバー材の背面側で間隙内に架設し、カバー材とともに伸縮し得る性状であれば、ゴム材やコイルバネなどにより構成されていてもよい。また、支持部材は、間隙内に架設されてカバー材と接続し、カバー材と一体に間隙幅方向に伸縮してカバー材の背面側を支持可能であれば形状は問わず、管状や板状、網状、蛇腹状など適宜な形状に形成することができる。
【0016】
カバー材の背面側に支持部材を接続させるのは、カバー材に負圧がかかったり屋外側へずれてばたついたりした際に、カバー材を支持部材で支持することでカバー材が膨らむなどの変形をきたさないようにするためであり、ここでいう「接続」は、間隙の内外に向けてのカバー材の変形、つまり間隙深さ方向のカバー材の変形を規制するように支持部材が繋がっていることをいう。カバー材の遮蔽面部内に設けられた孔部に支持部材が挿通して接続していたり、遮蔽面部内に設けられた係合部に支持部材が係合していたり、或いは、カバー材の遮蔽面部と支持部材が両部材とは別体の接続部材を用いて接続していたりする態様が含まれる。
【0017】
また、前記接続には、カバー材の遮蔽面部の一部と支持部材とは一体に連結された態様も含まれる。ここでいう「連結」とは、カバー材の背面側で遮蔽面部の一部が支持部材に分離不能に接続し、固着し又は定着している状態をいう。カバー材と支持部材の連結は、例えば両部材を針金や撚線など金属製その他の材料からなる線材で結束する態様、クリップなどの連結金具で留め付け、掴み或いは金具上に載せて接続する態様、接着剤で接着する態様、ネジやビスなどの固着具で固着する態様、カバー材に支持部材を直に結び付けて或いは挿通させて接続する態様などが挙げられる。カバー材の一部が支持部材に分離不能に接続してあれば連結の態様は問わない。
【0018】
前記構成のカバー体において、カバー材は、その遮蔽面部に背面側へ突出した突面部が設けられ、この突面部に支持部材が接続した構成とすることができる。
前記突面部は、遮蔽面部と一体に成形されていることが好ましい。カバー材とは別に成形された突面部が、カバー材に固着する加工がなされて一体化されていてもよい。
【0019】
前記構成のカバー体は、幅が広い間隙に対し、複数のカバー材を間隙幅方向に並設して構成することができる。具体的には、端部同士が接続した複数のカバー材が間隙内に設置され、これらカバー材の背面側に設置された支持部材に各カバー材の遮蔽面部の一部と接続した構成とすることができる。
カバー材の端部同士が継手部材を介して接続され、この継手部材と支持部材が接続した構成としてもよい。
カバー材同士を接続する継手部材も、その背面側が支持部材と接続して支持されているので、カバー材及び継手部材に自重によるダレが生じにくく、テンションを保った状態で間隙を覆い、躯体変動時に欠損部が生じることを防ぐことが可能である。
継手部材は、アルミやステンレスなどの鋼材、合成樹脂材料など適宜な材料を用い、両側にカバー材の端部の接続部を設けて形成することができる。
【0020】
カバー体を、前記複数の山折り部及び/又は谷折り部を配した遮蔽面部を有する複数のカバー材と、カバー材の端部同士を接続する継手部材と、カバー材及び継手部材の背面側で前記両躯体間に設置される伸縮自在な支持部材とにより構成し、前記継手部材と支持部材を接続した態様でも、負圧を受けたときにカバー材が変形をきたさないようにすることができる。
【0021】
また、本発明は、前記構成のカバー体を備えて構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントであり、
前記間隙を挟んで相対する躯体の端部にそれぞれ連繋部材が取り付けられ、
両連繋部材に前記カバー体の両端部をそれぞれ接続し、前記躯体間に架け渡した前記カバー体で間隙を遮蔽した構成を有することを特徴とする。
【0022】
前記のとおり、カバー材の端部を躯体に取り付けた金具に固着具で留め付けて接続した場合、カバー材に外力が加わることに伴い接続部に応力が集中して破損を来しやすい。そのため応力を分散させる手段を講じる必要がある。
かかる応力分散手段として、本発明は、可撓性を有するカバー材の端部を躯体に固定する構造において、
前記カバー材の端部が、通し材が係合して屈曲されるとともに、当該屈曲されたカバー材の端部の先端側が前記通し材と、前記躯体に取り付けられたベース材又は継手部材の継手ベース材に挟まれてネジ留めされた構成を有することを特徴とする。
【0023】
本発明のエキスパンションジョイントは、上記構造を適用したものであり、前記連繋部材は、躯体に取り付けられるベース材と、このベース材とでカバー材の端部を挟んだ部分にネジが螺合されてカバー材とともにベース材に取り付けられる通し材とを備え、
前記カバー材の端部が、通し材が係合して屈曲されるとともに、当該屈曲されたカバー材の端部の先端側が前記通し材とベース材に挟まれてネジ留めされた構成を有することを特徴とする。
前記構成の一例としては、躯体に取り付けられるベース材と、主面部と主面部の端部から屈曲した折れ面部により断面略L字形に形成された通し材を備え、
カバー材の端部に形成された、当該カバー材の他側の端部方向へ折り返した第1の屈曲部と、第1の屈曲部で折り返された先端部分を略直角に折り曲げた第2の屈曲部に、通し材の折れ面部と主面部がそれぞれ係合され、
前記ベース材に設けられた受面部に、前記カバー材の第2の屈曲部に連なった平坦部を挟んで、前記通し材の主面部が重なり、
前記重なり合った通し材、カバー材及びベース材にネジが螺合されてカバー材の端部が連繋部材に接続された態様のものとすることができる。
【0024】
これによれば、カバー材の両側端部は、前記第1の屈曲部と第2の屈曲部に通し材を係合させ、且つカバー材の平坦な端部を通し材とベース材に重ね合わさり、この重なり合った部分にネジを螺合して接続してあるので、カバー材に大きな引っ張り力が加わってもネジが螺合した前記接続部に応力が集中することはなく、この部分から破損がしにくく、また、確実且つ安定して接続状態を維持してカバー材の端部が外れるようなことはなく、安全であり、カバー材の許容可動量を大きく設定することが可能である。
【0025】
前記カバー材の端部を固定する構造は、カバー材同士を、継手部材を介して接続する場合に、カバー材の端部を継手部材に取り付けて構成する態様に適用することが可能である。
【0026】
前記のとおり、可撓性を備え、弾性変形可能に形成されたカバー材は、自重により間隙内で垂れたり撓んだりしやすい。前記カバー材の背面側で支持部材を接続、或いは連結して支持しても、カバー材の「ダレ」を防ぐのに不十分な場合もある。
これを解決するべく前記構成のエキスパンションジョインにあっては、カバー体の背面側が、間隙に臨む両躯体の一方から他方に亘って架設した線材を含む複数の可動懸架機構で支持された構成を有することが好ましい。
【0027】
弾性変形可能に形成されたカバー材を可動懸架機構で支持する構造は、前述のカバー材とその背面側を支持する支持部材とでカバー体を構成し、このカバー体を間隙内で支持する構成に適当することができ、また、カバー材を、支持部材を用いずに躯体間隙内に設置する構成にも適用可能である。
すなわち、本発明は構造物の間隙に設置されるエキスパンションジョイントの、弾性変形可能に形成されたカバー材を支持する構造であって、
カバー材の背面側に取り付けられた掛合部材と、
間隙に面した一方の躯体に取り付けられた掛合部材と、当該掛合部材よりも下方に取り付けられた、端部が進出及び後退可能な引張部材と、
間隙に面した他方の躯体の端部に一端が取り付けられていて前記二つの掛合部材を介して引張部材の端部に他端が取り付けられた線材とを備えてなる少なくとも一つの可動懸架機構により、
前記カバー材に上向きの張力を加えて間隙に吊設支持された構成を有し、躯体の可動追従性を備えたことを特徴とする。
かかる支持構造により、カバー材を、間隙に沿った平坦性を保持して間隙内に設置し、カバー材に自重による「ダレ」を生じさせることなく間隙を覆い隠すことが可能である。
前記可動懸架機構は、カバー材の背面側に取り付けられた少なくとも一つの掛合部材、一方の躯体の端部に取りけられる掛合部材と引張部材及び各部材に張られる線材とを有して構成される。前記線材の張設経路上に、一つ以上の他の掛合部材を配置して線材を架設してもよい。前記引張部材は、その端部を進出させたり退出させたりすることが可能な部材、好ましは一定の力で端部を引き出したり戻したりすることが可能な部材、例えば定荷重バネや、その他の伸縮或いは弾性部材、バネ部材などを用いることができる。
前記掛合部材は、線材を掛け合わしてその張設方向を案内する部位を備えていて、線材の張力を他のものに伝達したり張力を与えたりする機能を備えた部材であり、滑車や滑り性を有して前記機能を奏する部材などが用いられる。
【0028】
また、本発明は前記構成のエキスパンションジョイントにおいて、支持部材の端部に、連繋部材に設けられた係合板の孔部に係合する係合フックと、この係合フックの外面に装着する伸縮自在なスリーブ材が設けられた構成を有することを特徴とする。
さらに、前記構成のエキスパンションジョイントは、上下に配置されたカバー材同士が、互いの端部同士を継ぎ合わせて一体に接続された構成を有することを特徴とする。
なお、前記構成において、線材はワイヤーなどの鋼製の線材の他、合成樹脂やその他の材料により形成された硬質な線材が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のエキスパンションジョイントの一実施形態の概略平面図である。
【
図2】
図1のエキスパンションジョイントの背面側の概略構成を示した図である(カバー材の蛇腹形の凹凸の図示は省略してある)。
【
図3】
図1のカバー材の縮んだ状態(A)と伸長した状態(B)の平面図である。
【
図4】
図1のカバー体と躯体の接続部を拡大して示した図である。
【
図5】外装材を外した状態の連繋部材とカバー材の接続部を示した図である。
【
図7】支持部材の端部を連繋部材に接続する態様を示した図である。
【
図8】
図1のカバー体と継手部材の接続部を拡大して示した図である。
【
図9】外装材を外した状態の継手部材とカバー材の接続部を示した図である。
【
図11】(A),(B)は支持部材の端部の他の形態を示した図である。
【
図12】
図1のエキスパンションジョイントの背面側の線材の配置の概略構成を示した図である(カバー材の蛇腹形の凹凸の図示は省略してある)。
【
図16】(A)はカバー材同士を上下に継ぎ合わす態様、(B)は継ぎ合わせに持ちる接続片の概略平面図である。
【
図17】カバー材同士を上下に継ぎ合わす他の態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の技術的思想は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図1は本発明のエキスパンションジョイントの一実施形態の概略平面図、
図2はエキスパンションジョイントの背面側、つまり間隙側から見た構成を示した図である。
図示したエキスパンションジョイント1は、構造物内に設けられた間隙Gを挟んで向き合う躯体A,Bの外壁面の取り合い部分に設置されたものであり、間隙Gに臨む躯体Aの端部A1と躯体Bの端部B1間にカバー体2を架け渡して、屋外に面した間隙Gをカバー体2で遮蔽するとともに、躯体A,Bの外壁面A2,B2をカバー体2で一つ続きに接続したものである。
【0032】
詳しくは、エキスパンションジョイント1は、間隙Gのとば口に設置されていて間隙Gの幅方向に伸縮自在に形成されたカバー体2の両側端部を、間隙Gに臨む躯体Aと躯体Bの端部A1,B1に設けられた連繋部材7、7にそれぞれ接続して間隙Gをカバー体2で覆い、地震などで躯体A,Bが相対変位して間隙Gの伸縮やずれが生じたときに、前記変位に追従してカバー体2が伸縮変形することで変位を吸収し、躯体A,Bの外壁面A2,B2が欠損部のない一体の壁面に維持されるように構成されている。
【0033】
カバー体2は、三つのカバー材3と、カバー材3の背面側で前記両躯体A,B間に架設される伸縮自在な複数の支持部材4と、カバー材3,3同士を一体に接続する継手部材5とを備え、カバー材3の背面側で、カバー材3及び継手部材5を鋼製のワイヤー6で支持部材4に一体に連結固着して構成してある。
【0034】
詳しくは、カバー材3は、ゴム弾性を有する材料、好ましくは硬度60°以上である熱可塑性エラストマーを用いて弾性変形可能に形成された部材であり、
図3に示されるように、正面側に面する山折り部31aと背面側に面する谷折り部31bが交互に繰り返した蛇腹形に形成された、間隙Gを覆う幅に拡張する遮蔽面部31と、遮蔽面部31の両側に設けられていて前記連繋部材7,7に接続する接続部32,32を有して、間隙Gの長さ方向、つまり前記外壁面A2,B2の高さ方向に沿って帯状に形成してある。
【0035】
カバー材3の接続部32,32は、遮蔽面部31の端部から外方へ延びた平面部の端部をカバー材3の他側の端部方向へ折り返した第1の屈曲部32aと、第1の屈曲部32aで折り返された先端部分を略直角に折り曲げた第2の屈曲部32bを介して当該カバー材の正面側へ屈曲しており、その先端部には外側に突出した肉厚部32cを設けてある。
また、カバー材3の幅方向の中央に位置する遮蔽面部31の谷折り部31bに、背面側へ突出した突面部33が一体に設けてある。この突面部33には、前記支持部材4が挿通する孔部33aが形成してある。
【0036】
支持部材4は、前記カバー材3と同様に、ゴム弾性を有する材料、好ましくは熱可塑性エラストマーを用いてその軸方向に伸縮自在に形成された棒状の部材であり、その両端部に鉤状の係合フック41,41が一体に設けてある。
支持部材4は間隙Gの幅よりも短い長さに形成されており、その両端部間を伸長させてテンションを与えた状態で、前記連繋部材7,7間に架け渡されるようになっている。
図2に示されるように、支持部材4は、間隙Gの高さ方向に沿って複数本が互いに適宜な間隔を開けて躯体A,B間に架設される。
【0037】
前記躯体端部A1,B1に設けられた連繋部材7,7は、
図4から
図7に示されるように、何れもアルミ形材により形成されたベース材71、通し材72と外装材73とを備えて形成されている。ベース材71、通し材72、外装材73は、アルミ形材以外の鋼材や、合成樹脂材などを用いて形成することもできる。
【0038】
ベース材71は、その一側の端部に前記カバー材3の肉厚部32cが篏合する凹溝71aを有し、その表面にL字アングル材である係合板74を重ねて躯体端部にあてがった状態で、間隙G側からボルトなどの固着具Sを、前記係合板74の重なり部を通して躯体端部に打ち込んで取り付けてある。
ベース材71には、
図5に示されるように、後述する通し材74の主面部74aが重なる平坦な受面部71bを有し、この受面部71bか間隔を開けて形成された突出面部71cとの間にカバー材3の接続部32が係入するように設けてある。
【0039】
通し材72は、
図6に示されるように、平坦な主面部72aの端部に略直角に折れた折れ面部72bが連なった断面略T字形を呈する板材である。
通し材72は、前記カバー材3の肉厚部32cをベース材71の凹溝71aに篏合させた状態で、カバー材3の前記第1、第2の屈曲部32a,32bに通し材の折れ面部72bと主面部72aがそれぞれ係合し、ベース材71の受面部71bに、前記カバー材3の第2の屈曲部32bに連なった平坦部を挟んで通し材71の主面部71aが重なり、この重なり合った通し材71、カバー材3及びベース材71に固着具Sであるネジが螺合されて固定され、カバー材71との間でカバー材3の接続部32を挟持して取り付けられるようになっている。
【0040】
外装材73は、
図4に示されるように、前記ベース材71の凹溝71aに肉厚部32cを圧入したカバー材3の接続部32をベース材71と通し材72で挟んだ状態で、間隙G側から通し材72被せるとともに、その外側から留めネジなどの固着具Sを、前記重なり合った通し材72、カバー材3の接続部32及びベース材71に打ち込んで取り付けられるようになっている。
【0041】
係合板74は、ベース材71表面から間隙G側に垂直に張り出した面内に孔部74aが形成されており、この孔部74aに支持部材4の係合フック41が係合するようになっている。
支持部材4の端部の係合板74への取り付けは、
図7に示されるように、予め係合板74を固着具Sの先端側に位置させた状態で支持部材4の係合フック41を孔部74aに係合させ、その状態で、工具Tで固着具Sを螺合して係合板74を固着具Sの他端側へ変位させることで、支持部材4の両端部間を伸長させてテンションを与えた状態で間隙G内に取り付けることができるようになっている。
【0042】
継手部材5は、
図8から
図9に示されるように、何れもアルミ形材により形成された継手ベース材51、通し材52と外装材53とを備えて形成されている。継手ベース材51、通し材52、外装材53は、アルミ形材以外の鋼材や、合成樹脂材などを用いて形成することもできる。
【0043】
継手ベース材51は、
図8及び
図9に示されるように、その正面側の両側部に前記カバー材3の肉厚部32cが篏合する凹溝51a,51aを有するとともに、その中央に背面側に突出した突面部51bを有する形状に形成してある。突面部51bには、前記支持部材4が挿通する孔部51cが形成してある。また、凹溝51aの縁部には平坦な受面部51dを設けてある。
【0044】
通し材52は、前記
図6に示された連繋部材7の通し材72と同様に、主面部52aと折れ面部52bからなる一側の端部が断面略T字形を呈する板材である。
通し材52は、前記カバー材3の肉厚部32cを継手ベース材51の凹溝51aに篏合させた状態で、カバー材3の前記第1、第2の屈曲部32a,32bに通し材の折れ面部52bと主面部52aがそれぞれ係合し、継手ベース材51の受面部51dに、前記カバー材3の第2の屈曲部32bに連なった平坦部を挟んで通し材52の主面部51aが重なり、この重なり合った通し材52、カバー材3及び継手ベース材51に固着具Sであるネジが螺合されて固定され、継手ベース材51との間でカバー材3の接続部32を挟持して取り付けられるようになっている。
【0045】
外装材53は、
図8に示されるように、前記継手ベース材51の両側部の凹溝51a,51aに、一体に接続するカバー材3,3の肉厚部32c,32cをそれぞれ圧入するとともに、通し材52,52を両カバー材3.3の接続部32,32に重ねて、接続部32,32を継手ベース材51と通し材52,52で挟み込んだ状態で、その外側に当該外装材を被せ、留めネジなどの固着具Sを、前記重なり合った通し材52、カバー材3の接続部32及び継手ベース材51に打ち込んで取り付けられるようになっている。外装材53を固着具Sで継手ベース材51に留め付けることにより、カバー材3,3の側端部同士が一体に接続される。
【0046】
カバー体2は、前記のように、カバー材3,3の側端部同士を、継手部材5を介して接続することにより構成され、本形態では三つのカバー材3,3,3を継手部材5,5で一体に接続して構成してある。
そして、各カバー材3と継手部材5は、カバー材3では突面部33の孔部33aに支持部材4を通した位置、継手部材5は継手ベース材51の突面部51bの孔部51cに支持部材4を通した位置で、それぞれ支持部材4に突き刺したワイヤー6を両突面部33,51bの外周に掛けまわし、且つ結束して、支持部材4に一体に連結固着してある。
カバー体2は、前記接続された三つのカバー材3,3,3が支持部材4と一体に伸縮変位し、カバー体2の両側端部間の長さが伸張することで、前記躯体端部A1,B1間にテンションを与えた状態で架け渡されるようになっている。
【0047】
前記支持部材4の端部の係合フック41、前記係合板74の孔部74aから外れに難くするため、
図11に示されるように、支持部材4の端部に係合フック41とともにコイルバネなどの伸縮自在な中空スリーブ材42を一体に取り付け、係合フック41を孔部74aに係合させた後、スリーブ材42を係合フック41の外周面に嵌めるようにしてもよい。
【0048】
図12は、カバー体2の背面側、つまり間隙Gの内部で、エキスパンションジョイント1のカバー体2を支持する、躯体A,Bの可動追従性を備えた可動懸架機構8,8の配置を示している。
詳しくは、可動懸架機構8,8は、カバー体2に取り付けられてカバー体2ともに変位する第1の掛合部材81、躯体に固定される第2の掛合部材82及び端部が進出及び後退可能な引張部材83を介して、間隙Gを挟む躯体A,Bの端部間に線材Wを架け渡して構成されており、カバー体2の背面側を可動懸架機構8,8で支持して、カバー体2に上向きの張力を加えて吊設することで、自重による「ダレ」を生じさせることなく、間隙G内の所定の位置に保持せしめるように構成されている。
なお、同図には二つの可動懸架機構8,8でカバー体2を支持する形態が示されているが、間隙Gの長さ寸法(鉛直高さ方向の寸法)が大きく、これを覆うカバー体2の高さの大きい場合、所定の間隔を開けて上下多段に設置された可動懸架機構8,8でカバー体2が支持される。
【0049】
詳しくは、前記掛合部材81は、
図13に示されるように、カバー材3,3同士を接続する継手部材5の背面側に取り付けられており、向かい合わせた基板81a,81aを互いに間隔を開けてボルトなどの固着具81bで継手部材5に固定してある。両基板81a,81aは固着具81bの軸部を介して向かい合い、その基板81a,81aの間に線材Wを通し、前記固着具81bの軸部に掛合することにより、軸部の外周に沿って線材Wが摺動し得るように構成してある。
前記掛合部材82は、
図14に示されるように、間隙Gに臨む躯体A,Bの端部でそれぞれの連繋部材7に取り付けられており、前記掛合部材81と同様に、向かい合わせた基板82a,82aを互いに間隔を開けてボルトなどの固着具82bで連繋部材7に固定し、固着具82bの軸部を介して向かい合う両基板82a,82aの間に線材Wを通して前記軸部に掛合することにより、軸部の外周に沿って線材Wが摺動し得るように構成してある。
また、引張部材83は、
図15に示されるように、間隙Gに臨む躯体A,Bの、前記掛合部材82の取り付け位置よりも下方で連繋部材7に取り付けられており、本体枠83a内に、端部を一定の力で引き出し、押し出し機能を有する張力保持部材83bを実装して構成してある。
【0050】
図12に示されるように、可動懸架機構8,8は、線材Wの先端部を躯体A,Bの端部で
あって前記カバー体2に取り付けられた第1の掛合部材81の取り付け位置よりも上方の位置に設けられたフックに引っ掛け、その中間部を前記掛合部材81の軸部に掛け回してV字状に張り、さらに
前記第1の掛合部材81の取り付け位置よりも上方の位置の躯体A,Bの端部に取り付けられた前記掛合部材82の軸部に掛け回して下側に向けて牽引するとともに、当該線材Wの他端部を、ターンバックル83cを介して引張部材83の張力保持部材83bの可動端に接続して、両躯体A,B間に張設してある。可動懸架機構8,8は、掛合部材81の軸部に掛け回された線材Wの張設角度θを適宜な角度に設定し、且つ前記軸部を通る鉛直線の左右で略等間隔となるように、テンションを与えて架設してある。
前記張設角度θは、例えば20°から150°の範囲に設定することができる。或いは、それよりも狭い範囲の60°から100°の角度に設定することができる。
【0051】
前記
図12に示されるように、エキスパンションジョイント1のカバー体2は、三つのカバー材3,3,3を二つの継手部材5,5で、隣接するカバー材3,3の端部同士を接続し、その背面側を複数の支持部材4で支持して構成され、カバー体2の背面側で、前記二つの継手部材5,5に掛合部材81,81をそれぞれ固定し、この掛合部材81,81に線材W,Wを掛け回して躯体A,B間に一組の可動懸架機構8,8を吊設してある。
図示されるように、両継手部材5,5の掛合部材81,81に掛け回された線材Wの張設角度θはともに70°から100°で略同角度に設定してある。可動懸架機構8,8から継手部材5,5を介してカバー体2に、両可動懸架機構8,8から均等に力が加わる。そのため、躯体間隙の変位により、間隙Gの幅が伸縮するのに対応してカバー体2が伸縮した際に、躯体Aから一の継手部材5の間、両継手部材5,5の間、他の継手部材5から躯体Bの間の各カバー材3の幅は、連動して伸縮する可動懸架機構8,8により、略等間隔で伸縮させることができる。
躯体間隙の変位が発生したときでも、カバー体2を外側から見たときの意匠性を保持し、変位発生後もカバー体2を間隙G内の所定の位置に保持させることが可能である。
【0052】
図16は、間隙Gの長さ方向の寸法が大きい場合に、カバー材3,3同士を上下に継ぎ合わせてカバー体2の上下の長さ寸法を大きくする態様を示している。
この場合、上下に継ぎ合わせるカバー材3,3の端部同士を当接させた状態で、同図(B)に示される適宜な長さの接続片9を、両カバー材3,3の遮蔽面部31,31の裏面側に重ねて接着剤で定着させることで、カバー材3,3同士を上下一体に接続することができる。
この接続片9は、カバー材3と同材質で、適宜な長さでカバー材3の遮蔽面部31と同じ蛇腹形の端面形状に形成してある。上下に端部を当接させたカバー材3,3の遮蔽面部31,31の裏面側に接続片9を重ねて定着させることで、カバー材3,3同士を、隙間を開けずに一体に接続することが可能である。
【0053】
この場合、遮蔽面部31の山折りと谷折りが多い蛇腹型のカバー材3に対し、それよりも山折りと谷折りの数が少ない接続片9を用いて、上下に配置したカバー材3,3同士を接続するときは、カバー材3の山折りと谷折りに沿って複数の接続片9を直列に並べて接合させて、各接続片9を両カバー材3,3の遮蔽面部31,31に重ねて定着させる。隣り合う接続片9,9同士は互いの端部が重なり合うため、接続片9がカバー材3の表面になじみ、上下のカバー材3,3の蛇腹形の凹凸にギャップを形成することなく密着して定着させることが可能である。また、接続片9同士を互いに端部を重ねて直列に配置することで、幅方向の寸法が大きなカバー材3,3同士の接続に対応可能である。
【0054】
図17は、カバー材3,3同士を上下に継ぎ合わせる他の態様を示している。
この場合、上下に継ぎ合わせるカバー材3,3の両側部の接続部32,32と背面の突面部33に適宜に切り欠き部を形成し、上側のカバー材3の被覆面部31の下部と下側のカバー材3の被覆面部31の上部が互いに重なり、且つ前記切り欠いた部分が突き合って一体に接続するように設けることができる。接続した部分の固定は例えば両面テープなどの固着部材を用いることができる。
【0055】
なお、図示したカバー材3や支持部材4、継手部材5、連繋部材7の形態は一例であり、本発明は図示した形態に限定するものではない。図示したカバー材3は、突出する孔部33a付きの突面部33をその背面側の中央に一つ設けてあるが、複数設けてもよい。
図12では継手部材5を介して複数のカバー材3を接続して構成されたカバー体2を可動懸架機構8で支持する態様を示したが、カバー材3が継手部材5で接続されていなくても適用可能である。この場合、可動懸架機構8の前記第1の掛合部材81は、カバー材3の背面側に直に、或いはカバー材3に取り付けた取り付け部材を介して取り付けられる。
また、可動懸架機構8で支持する態様は、カバー材3の背面側が支持部材4で支持されない態様、つまり、カバー材3のみを間隙G内に設置する態様や、継手部材5で接続されたカバー材3を間隙G内に設置する態様にも適用可能である。カバー材3を可動懸架機構8で支持することで自重による変形の発生を抑制することが可能である。図示した形態では二つ(一組)の可動懸架機構8,8でカバー体2を支持したが、エキスパンションジョイント1の設置条件等により、一つの可動懸架機構8を用いて支持したり、三つ以上或いは二組以上の可動懸架機構8を用い支持したりするように構成することも可能である。
また、図示したエキスパンションジョイント1は、外壁面の間隙Gを被覆する態様であるが、構造物の屋内の壁面に設けられた間隙にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 エキスパンションジョイント、2 カバー体、3 カバー材、31 遮蔽面部、32 接続部、4 支持部材、5 継手部材、6 ワイヤー、7 連繋部材、8 可動懸架機構、9 接続片、A,B 躯体、G 間隙、S 固着具、W 線材