(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】家系図に基づいて特定の疾患についての系図を構築する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20241126BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2020572536
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066597
(87)【国際公開番号】W WO2020002191
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/093826
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】クゥ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】シア,フビャオ
(72)【発明者】
【氏名】マンコヴィチ,アレクサンダー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】クラシンスキー,レイモンド ジェイ
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-281283(JP,A)
【文献】特開2016-207078(JP,A)
【文献】米国特許第09116882(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353309(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0100874(US,A1)
【文献】特開2015-201092(JP,A)
【文献】特開2008-171133(JP,A)
【文献】特開2011-253533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0143578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法であって、
系図サービスによって家族健康状態リクエストを受け取るステップと、
前記系図サービスによって前記家系図のリクエストを送
り、ブロックチェーン上で構成されたマークル木として前記家系図を取得するステップと、
前記系図サービスによって前記家系図上の血縁者の健康状態のデータリクエストをアクセス制御システムへ送るステップと、
前記アクセス制御システムによって
、前記家系図上の前記血縁者の身元がハッシュ値において保持されている前記マークル木を確認することによって、前記家系図上の前記血縁者の承諾を確認するステップと、
前記系図サービスによってヘルスデータストレージから前記血縁者の健康状態を受け取るステップと、
前記系図サービスによって前記血縁者の前記健康状態に基づいて前記疾患についての系図を描くステップと
を有
する方法。
【請求項2】
前記系図サービスによって前記系図
を患者へ送るステップを更に有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記系図サービスによって、前記家系図上の前記血縁者のうちのどれが前記疾患の影響を受けているかを決定するステップを更に有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記系図サービスによって遺伝的形質のパターンを識別するステップを更に有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記系図サービスによって前記疾患について前記家系図上の前記血縁者のリスクを識別するステップを更に有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記系図サービスが前記アクセス制御システムに前記健康状態のデータを要求するときに、前記系図サービスは前記ブロックチェーンにリンクを付ける、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクセス制御システムは、前記ブロックチェーンを確認し、前記健康状態のデータを送る、
請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記家系図のリクエストを送るステップは、患者からのゲノムデータをビーコンネットワークへ送ることを含み、前記ビーコンネットワークは、前記ゲノムデータが前記ビーコンネットワーク上の血縁者に属するかどうかを判定するよう構成され、前記家系図は、前記ゲノムデータが属していると特定された前記ビーコンネットワーク上の血縁者を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスであって、
メモリと、
プロセッサと
を有し、
前記プロセッサは、
家族健康状態リクエストを受け取り、
前記家系図のリクエストを送り、
ブロックチェーン上で構成されたマークル木として前記家系図を取得し、
前記家系図上の血縁者の健康状態のデータリクエストをアクセス制御システムへ送り、
ヘルスデータストレージから
、前記家系図上の前記血縁者の身元がハッシュ値において保持されている前記マークル木を確認することによって前記アクセス制御システムによって承諾を確認された前記血縁者の健康状態を受け取り、
前記血縁者の前記健康状態に基づいて前記疾患についての系図を描く
よう構成され
る系図サービス。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記系図
を患者へ送るよう更に構成される、
請求項
9に記載の系図サービス。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記家系図上の前記血縁者のうちのどれが前記疾患の影響を受けているかを決定するよう更に構成される、
請求項
9に記載の系図サービス。
【請求項12】
前記プロセッサは、遺伝的形質のパターンを識別するよう更に構成される、
請求項
9に記載の系図サービス。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記疾患について前記家系図上の前記血縁者のリスクを識別するよう更に構成される、
請求項
9に記載の系図サービス。
【請求項14】
前記系図サービスが前記アクセス制御システムに前記健康状態のデータを要求するときに、前記系図サービスは前記ブロックチェーンにリンクを付ける、
請求項
9に記載の系図サービス。
【請求項15】
前記アクセス制御システムは、前記ブロックチェーンを確認し、前記健康状態のデータを送る、
請求項
14に記載の系図サービス。
【請求項16】
前記家系図のリクエストを送ることは、患者からのゲノムデータをビーコンネットワークへ送ることを含み、前記ビーコンネットワークは、前記ゲノムデータが前記ビーコンネットワーク上の血縁者に属するかどうかを判定するよう構成され、前記家系図は、前記ゲノムデータが属していると特定された前記ビーコンネットワーク上の血縁者を含む、
請求項9に記載の系図サービス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、系図を構築することに関係があり、より具体的には、しかし排他的ではなく、家系図に基づいて特定の疾患についての系図を構築することに関係がある。
【背景技術】
【0002】
遺伝的疾患は、個人のゲノム内の異常によって引き起こされるあらゆる疾患である。ゲノム内の異常は、単一遺伝子の一塩基における個別的な突然変異から染色体異常までの範囲に及ぶ。遺伝的疾患は、親から遺伝により受け継がれることがある一方で、他は、前から存在する遺伝子又は遺伝子のグループにおける後天性の突然変異によって引き起こされることがある。
【0003】
親から遺伝により受け継がれる遺伝的疾患の場合、そのような疾患には、単一遺伝子遺伝、他因子遺伝、染色体異常、及び/又はミトコンドリア遺伝パターンが含まれ得る。他因子遺伝疾患は、環境要因と同義遺伝子の突然変異との組み合わせによって引き起こされることがある。
【0004】
従って、家族のメンバーは、彼らの遺伝子、環境、及び生活様式を含む多くの因子を共通して持っているので、家族病歴は、共通の病気(例えば、心臓病、高血圧、脳卒中、特定の癌、及び糖尿病)についての遺伝子を有する可能性が高い家族内の人々を特定する助けとなる。
【0005】
血縁者間の病気のパターンを認識することによって、ヘルスケア専門家は、家族内の個人、他の家族、又は将来の世代が特定の状態を発現するリスクが高い可能性があるかどうかを判定することができる。
【0006】
結果として、特定の状態についてリスクが高い個人は、低年齢から開始する頻繁なスクリーニングを受けることができる。
【0007】
個人はまた、いくつかの疾患を発現するリスクを下げるよう自身の生活様式を変えることができる(例えば、健康なダイエット、定期的な運動、禁煙)。
【0008】
誕生前でさえ、例えば、受精卵は、受精卵のゲノム内の既存の欠陥を除くようゲノム編集を受けることができる。
【発明の概要】
【0009】
様々な実施形態の簡単な概要が以下で提示される。実施形態は、家系図に基づいて特定の疾患についての系図を構築する方法及び装置を扱う。
【0010】
様々な例となる実施形態の簡単な概要が提示される。いくつかの簡約及び省略が以下の概要で行われることがあるが、概要は、様々な例となる実施形態のいくつかの態様を明らかにし紹介することを目的としており、本発明の範囲を制限する意図はない。
【0011】
発明概念を構成及び使用することを当業者に可能にするのに適した例となる実施形態の詳細な説明は、後の項目において続く。
【0012】
様々な実施形態は、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法及び装置に関係があり、方法は、系図サービスによって家族健康状態リクエストを受け取るステップと、系図サービスによって家系図のリクエストを送るステップと、系図サービスによって家系図上の血縁者の健康状態のデータリクエストをアクセス制御システムへ送るステップと、アクセス制御システムによって家系図上の血縁者の承諾を確認するステップと、系図サービスによってヘルスデータストレージから血縁者の健康状態を受け取るステップと、系図サービスによって血縁者の健康状態に基づいて疾患についての系図を描くステップとを含む。
【0013】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法は、系図サービスによって系図を患者へ送るステップを更に含む。
【0014】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法は、系図サービスによって、家系図上の血縁者のうちのどれが疾患の影響を受けているかを決定するステップを更に含む。
【0015】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法は、系図サービスによって遺伝的形質のパターンを識別するステップを更に含む。
【0016】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する方法は、系図サービスによって疾患について家系図上の血縁者のリスクを識別するステップを更に含む。
【0017】
本開示の実施形態で、アクセス制御システムは、家系図上の血縁者と、家系図を提供するサービスからのシグニチャとを照合する。
【0018】
本開示の実施形態で、家系図上の血縁者は、マークル木を用いて、ブロックチェーン上のデータにハッシュ値を付ける。
【0019】
本開示の実施形態で、系図サービスがアクセス制御システムに健康状態データを要求するときに、系図サービスはブロックチェーンにリンクを付ける。
【0020】
本開示の実施形態で、アクセス制御システムは、ブロックチェーンを確認し、健康状態データを送る。
【0021】
本開示の実施形態で、患者からのゲノムデータは、ゲノムデータがネットワーク上の血縁者に属するかどうかを判定するネットワークへ送られる。
【0022】
様々な実施形態は、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスに関係があり、系統図サービスは、メモリと、プロセッサとを有し、プロセッサは、家族健康状態リクエストを受け取り、家系図のリクエストを送り、家系図上の血縁者の健康状態のデータリクエストをアクセス制御システムへ送り、ヘルスデータストレージから血縁者の健康状態を受け取り、血縁者の健康状態に基づいて疾患についての系図を描くよう構成される。
【0023】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスにおいて、プロセッサは、系図を患者へ送るよう更に構成される。
【0024】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスにおいて、プロセッサは、家系図上の血縁者のうちのどれが疾患の影響を受けているかを決定するよう更に構成される。
【0025】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスにおいて、プロセッサは、遺伝的形質のパターンを識別するよう更に構成される。
【0026】
本開示の実施形態で、家系図に基づいて疾患についての系図を構築する系図サービスにおいて、プロセッサは、疾患について家系図上の血縁者のリスクを識別するよう更に構成される。
【0027】
本開示の実施形態で、アクセス制御システムは、家系図上の血縁者と、家系図を提供するサービスからのシグニチャとを照合する。
【0028】
本開示の実施形態で、家系図上の血縁者は、マークル木を用いて、ブロックチェーン上のデータにハッシュ値を付ける。
【0029】
本開示の実施形態で、系図サービスがアクセス制御システムに健康状態データを要求するときに、系図サービスはブロックチェーンにリンクを付ける。
【0030】
本開示の実施形態で、アクセス制御システムは、ブロックチェーンを確認し、健康状態のデータを送る。
【0031】
本開示の実施形態で、患者からのゲノムデータは、ゲノムデータがネットワーク上の血縁者に属するかどうかを判定するネットワークへ送られる。
【0032】
添付の図面で、同じ参照符号は、各図を通して同じ又は機能的に類似した要素を参照しており、図面は、以下の詳細な説明とともに、明細書に組み込まれてその部分を形成し、特許請求の範囲で見いだされる概念の例となる実施形態を更に図解し、それらの実施形態の様々な原理及び利点を説明するのに役立つ。
【0033】
これら及び他のより詳細な及び具体的な特徴は、添付の図面を参照して、以下の明細書でより十分に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】目下の実施形態の家系図を用いて特定の疾患についての系図を構築するためのシステムアーキテクチャのブロック図を表す。
【
図2】目下の実施形態の特定の疾患についての家系図を表す。
【
図3】目下の実施形態の実時間データ処理システムのブロック図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
理解されるべきは、図は概略にすぎず、実寸通りではない点である。また、理解されるべきは、同じ参照符号は、同じ又は類似した部分を示すために図面を通して使用される点である。
【0036】
明細書及び図面は、様々な例となる実施形態の原理を説明する。よって、明らかなように、当業者であれば、本明細書で明示的に記載又は図示されていなくても、発明の原理を具現し、その範囲内に含まれる様々な配置を想到可能である。更に、本明細書で示される全ての例は、主に、当該技術を促進することに本発明者によって寄与される概念及び発明の原理を読者が理解することを助ける教育上の目的を明白に意図され、そのような具体的に挙げられている例及び条件に制限されないと解釈されるべきである。その上、本明細書で使用される「若しくは」、「又は」、及び「あるいは」(or)という語は、別段(例えば、「又は他に」(or else)や「又は代替的に」(or in the alternative)など)示されない限り、非排他的な論理和(すなわち、「及び/又は」(and/or))を指す。また、本明細書で記載される様々な実施形態は、必ずしも相互排他的ではなく、いくつかの実施形態は、新しい実施形態を形成するように1つ以上の実施形態と組み合わされ得る。「第1」、「第2」、「第3」などの記述子は、論じられている要素の順序を制限するよう意図されず、1つの要素を隣の要素と区別するために使用され、一般的に互いに交換することができる。
【0037】
近親者間で健康データ及び記録を共有することは、家族内の2よりも多い世代の健康データ及び記録を共有することと比べて簡単であるが、家族内の2よりも多い世代の健康データ及び記録を共有することは、健康データ及び記録の連携及び利用可能性により難しくなり得る。
【0038】
しかし、たとえ難しいとしても、遺伝的疾患又は希少な疾患の場合に、患者の医師は、患者の他の近親者についてのこの健康データ及び記録へのアクセスを必要とし、更には、3つの世代を含み場合によりそれ以上の世代を含む患者の拡大された血縁者の健康データ及び記録へのアクセスも必要とする。必要とされる健康データ及び記録は、患者にとって未知の血縁者に関するものである可能性がある。しかし、この血縁者の健康データ及び記録は、医師が患者を正確に診断してその予後に備えることを助けることがある。
【0039】
目下の実施形態は、患者の家族及び遠い血縁者の健康データ及び記録並びに/又はゲノムデータにアクセスするための承諾を自動的にかつ効率的に回収して、医師が患者を正確に診断するためのこの情報の取り出しの正確さ及び効率を確かにすることに向けられている。
【0040】
目下の実施形態は、家系図及び/又はゲノムデータ比較結果に基づいて家族の特定の疾患についての系図を構築する方法及びシステムである。
【0041】
図1は、目下の実施形態の家系図を用いて特定の疾患についての系図を構築するためのシステム100のアーキテクチャのブロック図を表す。
【0042】
システム100は、系図サービス101、ヘルスデータデータベース102、及び家系図サービス103を含む。患者120が、特定の疾患又は疑わしい疾患のグループについて系図サービス101への家族健康状態リクエストを開始すると、系図サービス101は、患者の家系
図108上の血縁者を特定するために家系図サービス103へリクエストを送る。
【0043】
系図サービス101は、患者の家系
図108上の血縁者の健康データ及び記録を要求するためにヘルスデータストレージ102のアクセス制御システム104へデータリクエストを送ってよい。ヘルスデータデータベース102は、要求されたデータにより系図サービス101に応えてよい。最後に、系図サービス101は、患者の要求されている疾患についての系図を出力し、結果を患者120に返してよい。
【0044】
特定の疾患について、系図サービス101が家系
図108上の血縁者の健康データ及び記録を受け取った後、系図サービス101は、患者の要求されている疾患についての系図を出力する。
【0045】
系図サービス101から出力される系図は、血縁者の病歴に関する情報を体系化し、誰が影響を受ける可能性があるかを提示し、遺伝的形質のパターンを識別し、誰が患者の要求されている疾患についてリスクを持っているかを計算する。
【0046】
プロセスは、患者120が特定の疾患又は疑わしい疾患のグループについて系図サービス101への家族健康状態リクエストを開始するステップ106から始まる。プロセスは、ステップ106で患者120からリクエストを受け取った後に、系図サービス101が患者の家系
図108上の血縁者を特定するために家系図サービス103へリクエストを送るステップ107へ進む。
【0047】
プロセスは次いで、系図サービス101が患者の家系
図108上の血縁者の健康データ及び記録を要求するためにヘルスデータストレージ102のアクセス制御システム104へデータリクエストを送るステップ109へ進む。プロセスは次いで、アクセス制御システム104が血縁者の承諾を確認するステップ110へ進む。
【0048】
承諾が与えられる場合には、アクセス制御システム104は、承諾ポリシーが、特定の疾患系図を構築するために血縁者の健康データ及び記録が共有されることを許可する、と確認することができ、プロセスは、関連する健康データ及び記録がアクセス制御システム104及び系図サービス101により共有されるステップ111へ進む。承諾が与えられない場合には、アクセス制御システム104は、承諾ポリシーが、特定の疾患系図を構築するために血縁者の健康データ及び記録が共有されることを許可する、と確認することができず、プロセスは終了し、健康データ及び記録は共有されない。
【0049】
プロセスは次いでステップ112へ進み、ステップ112は、患者の血縁者からの健康記録及びデータを使用し、データ解析を実行し、患者の要求されている疾患についての系図を描く。次いで、プロセスは、患者の要求されている疾患についての系図を患者120に返すステップ113へ進む。
【0050】
特定の疾患について、系図サービス101が患者の家系
図108上の血縁者からの健康データ及び記録を受け取った後、系図サービス101は、患者の要求されている特定の疾患についての系図を描く。系図は、どの血縁者が特定の疾患の影響を受けているかを表すことによって血縁者の病歴に関する情報を体系化し、遺伝的形質のパターンを特定し、誰が患者の要求されている疾患についてリスクを持っているかを計算する。
【0051】
図2は、目下の実施形態の特定の疾患についての家系
図200を表す。
【0052】
矢印201によりマークを付されている血縁者は、要求されている疾患条件を有している。
【0053】
家系図は、第三者サービス(例えば、Ancestry.com、Facebook(登録商標)、など)によって提供されてよい。
【0054】
系図サービスが、患者によって、特定の疾患についての系図を提供することを要求される場合に、系図サービスは、患者の代わりに、患者の家系図上の家族のリストを家系図生成サービスに要求する。家系図サービスは、家族のリストをシグニチャとともに系図サービスに供給する。
【0055】
系図サービスがアクセス制御システムに要求するとき、特定の疾患の状態についての健康データ及び記録、並びに家族のリストは、家系図によって供給される。アクセス制御システムは、家族リスト及びシグニチャを照合する。
【0056】
家系図サービス及び家族リストが確認されるとき、アクセス制御システムは、家族リストの要求されている健康状態により系図サービスに応えてよい。
【0057】
他の実施形態では、ブロックチェーンが、家系図サービスを提供するために使用されてよい。例えば、マークル木(Merkle tree)がブロックチェーン上で構成されてよい。ブロックチェーンにおいて、家族の夫々は、ブロック上のデータを確認することができ、それらのデータをハッシュ値とともにブロックチェーンに付けることができる。
【0058】
従って、系図サービスが患者の家族の健康データ及び記録をアクセス制御システムに要求するとき、系図サービスは、家系図ブロックチェーンのリンクをアクセス制御システムに付けてもよい。患者の家系図上の血縁者の身元は、ハッシュ値において保持されてよく、従って、機密保持目的のためにアクセス制御システムへの匿名性を保ち得る。アクセス制御システムは、ブロックチェーンのマークル木を確認し、健康データ及び記録により系図サービスに応えることができる。
【0059】
他の実施形態では、一部の遠い血縁者について、身元は患者の家系図に現れないことがある。しかし、特定の希少な疾患の場合に、それらの血縁者のデータ及び記録を知っている必要がある場合がある。
【0060】
ビーコンネットワーク(Beacon Network)は、遠い血縁者についての家系図情報を供給し得る。例えば、患者は、自身のミトコンドリアDNA又はY染色体に関するゲノムデータをビーコンネットワークへ提供してよい。ビーコンネットワークは、任意のデータがいずれかの他のユーザに属するかどうかを識別するために、患者のミトコンドリアDNA又はY染色体に関するゲノムデータを、ビーコンネットワーク上の他のユーザのそれと比較してよい。これは、そのよう血縁者を特定することを助けることができる。ビーコンネットワークが患者の血縁者を特定する場合に、ビーコンネットワークは、家族リストを系図サービスに返してよい。ビーコンネットワークは、関連する遺伝データのみを供給し、患者の血縁者についての識別情報を供給しないことによって、患者の血縁者の匿名性を保つことができる。
【0061】
他の実施形態では、システムは、受精卵について潜在的な遺伝的疾患を特定し、関連する遺伝子にマークを付すために使用されてもよい。
【0062】
例えば、患者が、自身の家族の中に遺伝による疾患がある可能性があると知っている場合に、患者は、遺伝による疾患についての系図検索を開始することができる。系図サービスは、要求されている疾患の系図を供給してよい。親の医師は、受精卵のゲノムデータ及び系図に従って親の受精卵に対してゲノム編集を行うことができる。
【0063】
図3は、家系図に基づいて特定の疾患についての系図を構築する方法を実施する、例となるハードウェア
図300を表す。図示されるように、デバイス300は、1つ以上のシステムバス310を介して相互に接続されているプロセッサ320、メモリ330、ユーザインターフェース340、ネットワークインターフェース350、及びストレージ360を含む。
図3は、いくつかの点で、抽象概念を構成し、デバイス300のコンポーネントの実際の編成は、表されているよりも複雑であり得ることが理解されるだろう。
【0064】
プロセッサ320は、メモリ330又はストレージ360に記憶されている命令を実行するか、又は別なふうにデータを処理することができる如何なるハードウェアデバイスであってもよい。そのようなものとして、プロセッサ320は、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は他の同様のデバイスを含んでよい。
【0065】
メモリ330は、例えば、L1、L2、若しくはL3キャッシュ、又はシステムメモリのような様々なメモリを含んでよい。そのようなものとして、メモリ330は、静的ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、動的RAM(DRAM)、フラッシュメモリ、リード・オンリー・メモリ(ROM)、又は他の同様のメモリデバイスを含んでよい。
【0066】
ユーザインターフェース340は、アドミニストレータなどのユーザとの通信を可能にする1つ以上のデバイスを含んでよい。例えば、ユーザインターフェース340は、ユーザコマンドを受け取るためにディスプレイ、マウス、及びキーボードを含んでよい。いくつかの実施形態で、ユーザインターフェース340は、ネットワークインターフェース350を介して遠隔の端末へ提示され得るコマンドラインインターフェース又はグラフィカルユーザインターフェースを含んでもよい。
【0067】
ネットワークインターフェース350は、他のハードウェアデバイスとの通信を可能にする1つ以上のデバイスを含んでよい。例えば、ネットワークインターフェース350は、Ethernet(登録商標)プロトコルに従って通信するよう構成されたネットワーク・インターフェース・カード(NIC)を含んでよい。更に、ネットワークインターフェース350は、TCP/IPプロトコルに従う通信のためのTCP/IPスタックを実装してよい。ネットワークインターフェース350のための様々な代替又は追加のハードウェア又は構成は明らかである。
【0068】
ストレージ360は、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、又は同様の記憶媒体などの1つ以上のマシン可読記憶媒体を含んでよい。様々な実施形態でストレージ360は、プロセッサ320による実行のための命令、又はプロセッサ320が作用し得るデータを記憶してよい。例えば、ストレージ360は、ハードウェア300の様々な基本動作を制御する基本オペレーティングシステム361と、家系図に基づいて特定の疾患についての系図を構築する方法を実施するための命令362とを記憶してよい。
【0069】
明らかなように、ストレージ360で記憶されるものとして記載される様々な情報は、追加的に、又は代替的に、メモリ330に記憶されてもよい。これに関連して、メモリ330も、“記憶デバイス”と構成すると見なされてよく、ストレージ360は、“メモリ”と見なされてよい。様々な他の配置は明らかである。更に、メモリ330及びストレージ360は両方とも、“非一時的なマシン可読媒体”と見なされてよい。本明細書で使用されるように、「非一時的」という語は、一時的な信号を除外するが、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの両方を含む全ての形態のストレージを含むと理解される。
【0070】
ホストデバイス300は、夫々の記載されているコンポーネントの1つを含むものとして示されているが、様々なコンポーネントは、様々な実施形態において複製されてよい。例えば、プロセッサ320は、本明細書で記載される方法を独立して実行するよう構成されるか、あるいは、本明細書で記載される方法のステップ又はサブルーチンを実行するよう構成される複数のマイクロプロセッサを含んでよく、それにより、複数のプロセッサは、本明細書で記載される機能性を達成するよう協働する。更に、デバイス300がクラウドコンピューティングシステムにおいて実装される場合に、様々なハードウェアコンポーネントは、別個の物理システムに属してよい。例えば、プロセッサ320は、第1サーバ内の第1プロセッサと、第2サーバ内の第2プロセッサとを含んでよい。
【0071】
上記の説明から明らかなように、本発明の様々な例となる実施形態は、ハードウェアで実施されてよい。更に、様々な例となる実施形態は、本明細書で詳細に記載される動作を実行するために少なくとも1つのプロセッサによって読み出され実行され得る、揮発性又は不揮発性メモリのような非一時的なマシン可読記憶媒体に記憶されている命令として実施されてもよい。非一時的なマシン可読記憶媒体には、パーソナル若しくはラップトップコンピュータ、サーバ、又は他のコンピュータデバイスなどのマシンによって読み出し可能な形態で情報を記憶する如何なるメカニズムも含まれ得る。よって、非一時的なマシン可読記憶媒体には、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、及び同様の記憶媒体が含まれてよく、一時的な信号は除外される。
【0072】
当業者に当然ながら、本明細書の如何なるブロック及びブロック図も、本発明の原理を具現する実例となる回路の概念図を表す。特定のブロックの実施は変更可能であり、それらは、本発明の範囲を制限することなしに、ハードウェア又はソフトウェアドメインにおいて実施可能である。同様に、明らかなように、如何なるフローチャート、フロー図、状態遷移図、擬似コード、なども、マシン可読媒体において実質的に表現され、コンピュータ又はプロセッサによって(そのようなコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されていようとなかろうと)そのように実行され得る様々なプロセスを表す。
【0073】
従って、理解されるべきは、上記の説明は、例示であって限定ではない点である。与えられている例以外の多くの実施形態及び応用は、上記の説明を読んで明らかである。適用範囲は、上記の説明及び以下の要約を参照して決定されるべきではなく、代わりに、添付の特許請求の範囲及び特許請求の範囲が権利を与えられる均等の全範囲を参照して決定されるべきである。将来の開発が本明細書で議論される技術で起こり、議論されているシステム及び方法がそのような将来の開発に組み込まれることは予想及び意図される。要約すると、理解されるべきは、本願は、変更及び変形が可能である。
【0074】
利点、効果、課題の解決法、及びより明らかになる又は起こるべき如何なる利点、効果、又は解決法ももたらしえるあらゆる要素は、いずれか又は全ての請求項の重要な、必要な、又は必須の特徴若しくは要素として解釈されるべきではない。本発明は、本願の係属中に行われるあらゆる補正及び発行されるそれらの請求項の全ての均等を含む添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0075】
特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で別段明示されない限りは、本明細書で記載される技術において通常の知識を有する者によって理解されるそれらの最も広い適当な構成及びそれら普通の意味を与えられるよう意図される。特に、「1つ」(a)、「前記」(the)、「前記」(said)などの単数冠詞の使用は、請求項が別に明示的な限定を示さない限りは、示されている要素の1つ以上を列挙すると読まれるべきである。
【0076】
本開示の要約は、技術的開示の性質を即座に確かめることを読者に可能にするために設けられている。それは、特許請求の範囲の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないとの理解の下で提出される。その上、上記の詳細な説明において、様々な図は、本開示を簡素化するために様々な実施形態でまとめられることが分かる。本開示のこの方法は、請求される実施形態が、各請求項で明示的に示されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、続く特許請求の範囲が反映するように、発明対象は、単一の開示されている実施形態の全てに満たない特徴にある。よって、続く特許請求の範囲は、詳細な説明にこれを持って組み込まれ、各請求項は、別々に請求される対象として独立している。