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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】建材用バインダー
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/04 20060101AFI20241126BHJP
   C04B 14/08 20060101ALI20241126BHJP
   C04B 18/24 20060101ALI20241126BHJP
   C04B 18/04 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241126BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C04B26/04 B
C04B14/08
C04B18/24 Z
C04B18/04
C08L29/04 G
E04C2/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021000674
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106022
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520385021
【氏名又は名称】ウェトラブホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁夫
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-167745(JP,A)
【文献】特開2003-238921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 26/04
C04B 14/08
C04B 18/24
C04B 18/04
C08L 29/04
E04C 2/04
C09J 129/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材に用いられるバインダーであって、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液とポリビニルアルコール系樹脂粉末とを含有してなり、建材用バインダーにおけるポリビニルアルコール系樹脂粉末の含有率が10~45質量%であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末として架橋ポリビニルアルコール粉末が用いられていることを特徴とする建材用バインダー。
【請求項2】
建材に用いられる2成分系バインダーであって、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分と、ポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有するB成分とを有し、ポリビニルアルコール水溶液100質量部あたりのポリビニルアルコール系樹脂粉末の量が10~85質量部であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末として架橋ポリビニルアルコール粉末が用いられていることを特徴とする2成分系建材用バインダー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建材用バインダーおよび賦形材を含有することを特徴とする建材用組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の建材用組成物から成形されてなる建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材用バインダーに関する。さらに詳しくは、本発明は、石膏などからなる建材の強度を向上させることができ、廃棄物として取り扱われているおが屑、もみ殻などの有効利用を可能にする建材用バインダー、当該建材用バインダーが用いられている建材用組成物および当該建材用組成物から成形された建材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石膏ボードは、石膏ボード用原紙上で石膏スラリーを板状に乾燥させることによって製造されている。石膏ボードには、一般に耐衝撃強度が低く、耐折り曲げ性に劣り、さらに固定具などをネジで石膏ボードに締め付けたときにネジが空回りすることがあることから脆性が高いという欠点がある。
【0003】
撓みの発生を防止することができる石膏ボードとして、焼石膏およびセメントが用いられているスラリーを硬化させることによって得られる石膏ボードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記石膏ボードには、焼石膏がセメントによって固化されていることから、耐衝撃強度が低く、脆性が高いという欠点がある。
【0004】
また、リサイクル材料が用いられている建材として、セラミックス廃材、おが屑、葉屑、廃木材、樹脂類などの有機可燃性材、セラッミクス硬化剤、ガラス系バインダーおよび水を混合し、撹拌することによって均一な粘稠材とし、当該粘稠材を建材型に入れて素建材を成形し、前記素建材を乾燥させ、600~1000℃の温度に加熱し、前記有機可燃性材を焼成した後、自然放冷することによって得られる建材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、前記建材には、セラミック廃材、有機可燃性材などがガラス系バインダーによって接着されているため、これらの材料の接着力が弱く、耐衝撃性に劣り、脆性が高いという欠点がある。
【0005】
したがって、近年、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、低脆性を有する建材の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/052048号パンフレット
【文献】特開2013-227188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、低脆性を有する建材および当該建材に好適に使用することができる建材用組成物、および当該建材用組成物に好適に使用することができる建材用バインダーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)建材に用いられるバインダーであって、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液とポリビニルアルコール系樹脂粉末とを含有してなり、建材用バインダーにおけるポリビニルアルコール系樹脂粉末の含有率が10~45質量%であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末として架橋ポリビニルアルコール粉末が用いられていることを特徴とする建材用バインダー、
(2)建材に用いられる2成分系バインダーであって、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分と、ポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有するB成分とを有し、ポリビニルアルコール水溶液100質量部あたりのポリビニルアルコール系樹脂粉末の量が10~85質量部であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末として架橋ポリビニルアルコール粉末が用いられていることを特徴とする2成分系建材用バインダー
(3)前記(1)または(2)に記載の建材用バインダーおよび賦形材を含有することを特徴とする建材用組成物、および
)前記()に記載の建材用組成物から成形されてなる建材
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、低脆性を有する建材、当該建材に好適に使用することができる建材用組成物、および当該建材用組成物に好適に使用することができる建材用バインダーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)ポリビニルアルコール水溶液
ポリビニルアルコール水溶液は、ポリビニルアルコールを所定濃度となるように水に溶解させることにより、容易に調製することができる。水としては、例えば、純水、精製水、イオン交換水、水道水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記水は、その水温が常温であってもよく、加温されていてもよく、冷却されていてもよい。前記水には、本発明の目的を阻害しない範囲内で水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどの多価アルコールまたはそのモノエステル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0011】
ポリビニルアルコール水溶液に用いられるポリビニルアルコールの平均重合度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、建材の脆性を改善する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。
【0012】
なお、本発明において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、粘度法で求められる平均重合度を意味する。
【0013】
ポリビニルアルコールのケン化度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールが好ましい。
【0014】
ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、5質量%以上、好ましくは8質量%以上であり、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
【0015】
(2)ポリビニルアルコール系樹脂粉末
ポリビニルアルコール系樹脂粉末は、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、ポリビニルアルコール粉末および架橋ポリビニルアルコール粉末からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリビニルアルコール系樹脂粉末であることが好ましい。ポリビニルアルコール粉末および架橋ポリビニルアルコール粉末は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0016】
本発明においては、前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末が用いられている点に本発明の特徴の1つがあり、当該ポリビニルアルコール系樹脂粉末がポリビニルアルコール水溶液と併用されていることにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善することができる。
【0017】
本発明の建材用バインダーがこのように優れた効果を発現する理由は、定かではないが、本発明の建材用バインダーでは、当該ポリビニルアルコール系樹脂粉末とポリビニルアルコール水溶液とが併用されており、当該ポリビニルアルコール系樹脂粉末および当該ポリビニルアルコール水溶液には、いずれもポリビニルアルコールが使用されていることから、ポリビニルアルコール水溶液とポリビニルアルコール系樹脂粉末との親和性が優れているので、ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子間にポリビニルアルコール水溶液が介在し、建材用バインダーに含まれている溶媒である水が蒸発するときに当該ポリビニルアルコール水溶液に含まれているポリビニルアルコールを介してポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子同士が結合するとともに、ポリビニルアルコール系樹脂粉末が当該ポリビニルアルコールを介して建材用組成物に使用されている賦形材に強固に付着することに基づくものと考えられる。
【0018】
ポリビニルアルコール系樹脂粉末のなかでは、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、架橋ポリビニルアルコール粉末が好ましい。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子径は、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、0.1~1mmであることが好ましく、0.3~0.6mmであることが好ましい。
【0020】
ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子径は、JISメッシュ(篩)の目開きを意味する。したがって、ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子径の下限値は、特定の目開きを有する篩上にポリビニルアルコール系樹脂粉末が存在しているときの当該目開きを意味し、ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子径の上限値は、ポリビニルアルコール系樹脂粉末が特定の目開きを有する篩を通過するときの当該目開きを意味する。例えば、粒子径が0.1~1mmであるポリビニルアルコール系樹脂粉末は、ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粗粒子を目開きが1mmである16メッシュのJIS篩にかけ(アンダーメッシュ)、当該篩を通過したポリビニルアルコール系樹脂粉末をさらに目開きが0.1mmである149メッシュのJIS篩にかけ(オーバーメッシュ)、当該篩上に存在しているポリビニルアルコール系樹脂粉末である。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂粉末の粒子径は、篩(JISメッシュ)を用いて容易に調整することができる。
【0022】
なお、例えば、粒子径が所定範囲内にあるポリビニルアルコール系樹脂粉末には、当該所定範囲外の粒子径を有するポリビニルアルコール系樹脂粉末が不可避的に含まれることがある。本発明においては、前記所定範囲外の粒子径を有するポリビニルアルコール系樹脂粉末が、本発明の目的が阻害されない範囲内で含まれていてもよい。
【0023】
〔ポリビニルアルコール粉末〕
ポリビニルアルコール粉末は、通常、粉体または顆粒として商業的に容易に入手することができる。ポリビニルアルコール粉末は、水溶性を有することから、本発明の建材用バインダーを使用する直前に、ポリビニルアルコール水溶液にポリビニルアルコール粉末を添加し、当該ポリビニルアルコール粉末をポリビニルアルコール水溶液に分散させた建材用バインダーを調製して使用することが好ましい。
【0024】
したがって、ポリビニルアルコール系樹脂粉末としてポリビニルアルコール粉末を使用するか、またはポリビニルアルコール粉末と架橋ポリビニルアルコール粉末とを併用する場合、ポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分と、少なくともポリビニルアルコール粉末を含むポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有するB成分とを分離した2成分系の建材用バインダーとし、当該2成分系の建材用バインダーを使用する際に、前記A成分と前記B成分とを混合して使用するようにしてもよい。
【0025】
ポリビニルアルコール粉末に使用されるポリビニルアルコールの平均重合度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、建材の脆性を改善する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。また、前記ポリビニルアルコールのケン化度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールが好ましい。
【0026】
〔架橋ポリビニルアルコール粉末〕
架橋ポリビニルアルコール粉末は、架橋構造を有するポリビニルアルコールの粉末を意味する。
【0027】
架橋ポリビニルアルコール粉末の原料として使用されるポリビニルアルコールの平均重合度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、建材の脆性を改善する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。また、前記ポリビニルアルコールのケン化度は、本発明の建材用バインダーにより、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールが好ましい。
【0028】
架橋ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールを架橋させることによって調製することができる。架橋ポリビニルアルコールを調製する方法としては、例えば、ポリビニルアルコールの水溶液を冷解凍することによって架橋ポリビニルアルコールを調製する方法、ポリビニルアルコールを架橋剤で架橋させることにより、架橋ポリビニルアルコールを調製する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
[冷解凍による架橋]
ポリビニルアルコールの水溶液を冷解凍することによって架橋ポリビニルアルコールを調製する場合、ポリビニルアルコールの水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、ポリビニルアルコールの溶解性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0030】
なお、ポリビニルアルコールの水溶液には、本発明の目的が阻害されない範囲内でジメチルスルホキシドなどの水溶性化合物、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどの多価アルコールまたはそのモノエステル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどの水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。
【0031】
ポリビニルアルコールの水溶液の冷解凍は、例えば、ポリビニルアルコールの水溶液を注入した容器を冷凍室(室内温度:-10℃以下)内に入れ、5~15時間程度冷却した後、冷凍室から取り出し、室温となるまで室温中で放置することによって行なうことができる。ポリビニルアルコールの水溶液の冷解凍は、必要により、複数回行なってもよい。
【0032】
以上のようにしてポリビニルアルコールの水溶液を冷解凍することによって得られる架橋ポリビニルアルコールには溶媒(水)が含まれていることから、乾燥させることが好ましい。架橋ポリビニルアルコールを乾燥させる方法としては、例えば、減圧乾燥法、温風乾燥法、加熱乾燥法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0033】
乾燥された架橋ポリビニルアルコールが塊状である場合、当該塊状の架橋ポリビニルアルコールは、粉砕し、篩を用いて分級することにより、所定の粒子径を有する架橋ポリビニルアルコール粉末を得ることができる。
【0034】
[架橋剤による架橋]
架橋ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールを架橋剤で架橋させることによって容易に調製することができる。
【0035】
架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)などのホウ酸またはその塩に代表されるホウ酸および/またはホウ酸塩〔以下、ホウ酸(塩)ともいう〕などのホウ素化合物;チタン、チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンラクテートなどのチタンおよびその化合物、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、クエン酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ジルコニウム酸、ジルコニウム酸塩などのジルコニウムおよびその化合物などに代表される多価金属およびその化合物;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどのアミン化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
架橋剤のなかでは、ポリビニルアルコールを迅速に架橋させることから、ホウ素化合物が好ましく、ホウ酸(塩)がより好ましい。また、ホウ酸(塩)のなかでは、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、ホウ酸およびホウ砂が好ましく、ホウ砂がより好ましい。
【0037】
架橋剤は、水溶性を有する場合には水溶液として用いることができ、水不溶性を有する場合には水分散体として用いることができる。例えば、架橋剤としてホウ酸(塩)を用いる場合、ホウ酸(塩)は、水溶性を有することから、所定濃度となるように水に溶解させ、水溶液として用いることができる。水溶液および水分散体に用いられる水としては、純水、精製水、イオン交換水、水道水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。水温は常温であってもよく、水が加温または冷却されていてもよい。水1L(リットル)あたりの架橋剤の量は、架橋効率を高める観点から、好ましくは1g以上、より好ましくは5g以上、さらに好ましくは10g以上であり、その量の上限値は、特に限定されないが、通常100g以下である。水溶液および水分散体の液温は、特に限定されないが、通常、室温~40℃程度であることが好ましい。
【0038】
ポリビニルアルコール100質量部あたりの架橋剤の量は、当該ポリビニルアルコールの平均重合度および当該架橋剤の種類にもよるが、ポリビニルアルコールを十分に架橋させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、未反応の架橋剤が残存しがたくする観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0039】
ポリビニルアルコールは、架橋剤と接触したときに架橋し、架橋ポリビニルアルコールが生成するので、ゲル化する。したがって、ポリビニルアルコールと架橋剤とを接触させることにより、架橋ポリビニルアルコールを得ることができる。なお、ポリビニルアルコールと架橋剤とを混合するとき、ポリビニルアルコールおよび架橋剤は、両者を均一に反応させる観点から、いずれも水溶液として用いることが好ましい。ポリビニルアルコールと架橋剤とを混合するときの温度は、特に限定されないが、通常、ポリビニルアルコールの架橋を促進させ、生産効率を高める観点から、室温~40℃程度であることが好ましい。
【0040】
以上のようにしてポリビニルアルコールを架橋させることによって得られる架橋ポリビニルアルコールには溶媒(水)が含まれていることから、乾燥させることが好ましい。架橋ポリビニルアルコールを乾燥させる方法としては、例えば、減圧乾燥法、温風乾燥法、加熱乾燥法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
乾燥された架橋ポリビニルアルコールが塊状である場合、当該塊状の架橋ポリビニルアルコールは、粉砕し、篩を用いて分級することにより、所定の粒子径を有する架橋ポリビニルアルコール粉末を得ることができる。
【0042】
ポリビニルアルコール系樹脂粉末として架橋ポリビニルアルコール粉末を使用する場合、ポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分と、架橋ポリビニルアルコール粉末を含有するB成分とを分離した2成分系の建材用バインダーとし、当該建材用バインダーを使用する際に、前記A成分と前記B成分とを混合して使用するようにしてもよい。
【0043】
なお、架橋ポリビニルアルコール粉末には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂粉末、無機物粉末などの粉末が含まれていてもよく、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤、着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0044】
(3)建材用バインダー
本発明の建材用バインダーは、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液とポリビニルアルコール系樹脂粉末とを含有することを特徴とする。
【0045】
本発明の建材用バインダーは、前記ポリビニルアルコール水溶液および前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有していることから、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善することができる。
【0046】
本発明の建材用バインダーは、前記ポリビニルアルコール水溶液と前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末とを混合することにより、容易に調製することができる。
【0047】
ポリビニルアルコール水溶液とポリビニルアルコール系樹脂粉末とを混合する際のポリビニルアルコール水溶液の液温は、特に限定されない。ポリビニルアルコール系樹脂粉末にポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、当該ポリビニルアルコール粉末がポリビニルアルコール水溶液に溶解しがたくする観点から、0~20℃であることが好ましく、1~15℃であることがより好ましく、3~10℃であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂粉末にポリビニルアルコール粉末が含まれておらず、架橋ポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、ポリビニルアルコール水溶液の取り扱い性を向上させる観点から、ポリビニルアルコール水溶液の液温は、0~40℃であることが好ましく、1~35℃であることがより好ましく、3~30℃であることがさらに好ましく、室温であってもよい。
【0048】
また、ポリビニルアルコール水溶液と前記ポリビニルアルコール系樹脂粉末とを混合することによって得られる建材用バインダーの液温は、特に限定されない。ポリビニルアルコール系樹脂粉末にポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、当該ポリビニルアルコール粉末がポリビニルアルコール水溶液に溶解しがたくする観点から、0~20℃であることが好ましく、1~15℃であることがより好ましく、3~10℃であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂粉末にポリビニルアルコール粉末が含まれておらず、架橋ポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、ポリビニルアルコール水溶液の取り扱い性を向上させる観点から、ポリビニルアルコール水溶液の液温は、0~40℃であることが好ましく、1~35℃であることがより好ましく、3~30℃であることがさらに好まく、室温であってもよい。
【0049】
本発明の建材用バインダーにおけるポリビニルアルコール系樹脂粉末の含有率は、ポリビニルアルコール水溶液に含まれているポリビニルアルコールの濃度によってやや異なるが、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%である。したがって、本発明の建材用バインダーにおけるポリビニルアルコール水溶液の含有率は、ポリビニルアルコール水溶液に含まれているポリビニルアルコールの濃度によってやや異なるが、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、好ましくは50~95質量%、より好ましくは55~90質量%である。
【0050】
なお、本発明の建材用バインダーには、必要により、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤、着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。建材用バインダーにおける添加剤の含有率は、当該添加剤の種類によって異なることから、当該添加剤の種類に応じて適宜調整することが好ましい。
【0051】
(4)2成分系建材用バインダー
本発明の建材用バインダーは、ポリビニルアルコールの濃度が5~20質量%であるポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分と、ポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有するB成分とを別々に有する2成分系建材用バインダーとして用いることができる。
【0052】
本発明の建材用バインダーを2成分系建材用バインダーとした場合、本発明の建材用バインダーを使用する直前にポリビニルアルコール水溶液を含有するA成分とポリビニルアルコール系樹脂粉末を含有するB成分とを均一な組成となるように混合することにより、建材用バインダーを得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂粉末にポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、当該ポリビニルアルコール粉末がポリビニルアルコール水溶液に溶解することを回避することができ、ポリビニルアルコール系樹脂粉末に架橋ポリビニルアルコール粉末が含まれている場合、当該架橋ポリビニルアルコール粉末がポリビニルアルコール水溶液で膨潤することを回避することができる。
【0053】
本発明の建材用バインダーを2成分系建材用バインダーとして用いる場合、当該2成分系建材用バインダーの製品状態におけるポリビニルアルコール水溶液の量およびポリビニルアルコール系樹脂粉末の量は特に限定されない。2成分系建材用バインダーを実際に使用する際には、ポリビニルアルコール水溶液100質量部あたりのポリビニルアルコール系樹脂粉末の量は、ポリビニルアルコール水溶液に含まれているポリビニルアルコールの濃度によってやや異なるが、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、5~100質量部であることが好ましく、10~85質量部であることがより好ましい。
【0054】
(5)建材用組成物
本発明の建材用バインダーは、建材用組成物に好適に用いることができる。建材用組成物は、建材の原料として用いられるものである。建材は、当該建材用組成物を用いて所定形状となるように成形することよって製造することができる。
【0055】
本発明の建材用組成物は、前記建材用バインダーおよび賦形材を含有する。賦形材としては、例えば、石膏、おが屑、もみ殻、貝殻粉末、珪藻土、セメントなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの賦形材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの賦形材の中では、石膏、おが屑、もみ殻、貝殻粉末および珪藻土が好ましい。
【0056】
石膏ボードの芯材である石膏は、耐熱性および耐火性に優れている反面、耐衝撃強度に劣り、脆性を有するため、ネジで各種部材を石膏ボードに取り付けるためにネジを締め付けたときに空回りすることがある。
【0057】
これに対して、本発明の建材用組成物には、その賦形材として石膏が用いられている場合であっても、当該建材用組成物から成形されたボードは、従来の石膏ボードの芯材として使用されている石膏と対比して、耐衝撃強度が高められており、耐折り曲げ性が向上し、さらに脆性が改善される。
【0058】
したがって、本発明の建材用組成物に賦形材として石膏が使用されている場合、当該建材用組成物を用いて成形されたボードは、従来の石膏ボードの芯材として使用されている石膏と対比して耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、さらに脆性が改善されるので、従来の石膏ボードの代替品として広く使用することが期待される。
【0059】
また、従来、おが屑、もみ殻、貝殻などは、廃棄物として焼却されたり、地中に廃棄されたりしている。
【0060】
これに対して、本発明の建材用組成物の賦形材として、例えば、おが屑、もみ殻などの植物性廃棄物を用いた場合には、当該植物性廃棄物が含まれている建材用組成物から成形された建材用ボードは、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、脆性が低いので、建材として好適に使用することができる。さらに、本発明の建材用組成物の賦形材として、例えば、ホタテ貝などの貝殻を用いた場合には、当該貝殻が含まれている建材用組成物から成形された建材用ボードは、前記植物性廃棄物と同様に、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、脆性が低いので、建材として好適に使用することができる。
【0061】
したがって、本発明の建材用組成物によれば、従来、廃棄されていたり、焼却されていた廃棄物を有効活用することができるという優れた効果が発現される。
【0062】
本発明の建材用組成物に使用される賦形材の形状および大きさは、特に限定されず、得られる建材の用途などに応じて適宜調整することが好ましい。例えば、賦形材がおが屑またはもみ殻である場合、おが屑およびもみ殻は、そのままの状態で使用することができるほか、用途に応じて粉砕したものを使用することができる。また、賦形材が貝殻である場合、粉末状に粉砕したものを用いることができる。
【0063】
本発明の建材用組成物において、建材用バインダー100質量部あたりの賦形材の量は、当該賦形材の種類および得られる建材の用途によって異なるので一概には決定することができないことから、当該賦形材の種類および得られる建材の用途に応じて適宜決定することが好ましい。建材用バインダー100質量部あたりの賦形材の量は、建材の耐衝撃強度を高め、耐折り曲げ性を向上させ、脆性を改善する観点から、一般的には好ましくは100~450質量部、より好ましくは100~400質量部、さらに好ましくは100~350質量部の範囲内で調整することが好ましい。
【0064】
本発明の建材用組成物は、建材用バインダーと賦形材とを均一な組成となるように混合することにより、容易に調製することができる。このようにして得られた建材用組成物を所定形状に成形することにより、建材を得ることができる。
【0065】
(6)建材
本発明の建材は、本発明の建材用組成物を、例えば、熱プレス成形法、射出成形法、中空成形法、押出成形法などの成形方法によって成形することにより、製造することができる。例えば、本発明の建材用組成物を熱プレス成形法によって成形させて建材を作製する場合、所定形状を有する成形型内に建材用組成物を充填し、当該成形型内の充填物を上部から加熱成形型で押圧することによって成形することができる。
【0066】
前記のようにして得られる建材の大きさおよび形状は、任意であり、当該建材の用途に応じて適宜調整することが好ましい。本発明の建材を石膏ボードの代替に使用する場合には、例えば、厚さが8~25mmのプレートとなるように本発明の建材用組成物を成形することができる。
【0067】
本発明の建材は、本発明の建材用バインダーが使用されているので、当該建材用バインダーが使用されていないものと対比して耐衝撃強度が高められており、耐折り曲げ性が向上し、脆性が改善されているので、例えば、住宅用建材などの建築物用建材などとして好適に使用することができる。
【実施例
【0068】
次に、本発明の建材用バインダーを実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
製造例1
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が3質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Aという。以下の表1ではAと表記)を得た。
【0070】
製造例2
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が5質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Bという。以下の表1ではBと表記)を得た。
【0071】
製造例3
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Cという。以下の表1ではCと表記)を得た。
【0072】
製造例4
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が15質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Dという。以下の表1ではDと表記)を得た。
【0073】
製造例5
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が20質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Eという。以下の表1ではEと表記)を得た。
【0074】
製造例6
平均重合度が500であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-105〕を濃度が15質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Fという。以下の表1ではFと表記)を得た。
【0075】
製造例7
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕を濃度が15質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Gという。以下の表1ではGと表記)を得た。
【0076】
製造例8
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕を濃度が25質量%となるように水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液(以下、PVA溶液Hという。以下の表1ではHと表記)を得た。
【0077】
調製例1
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を乳鉢で粉砕し、得られた破砕物を目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩で分級することにより、ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Aという。以下の表1ではAと表記)を得た。
【0078】
調製例2
平均重合度が500であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-105〕を乳鉢で粉砕し、得られた破砕物を目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩で分級することにより、ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Bという。以下の表1ではBと表記)を得た。
【0079】
調製例3
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕を乳鉢で粉砕し、得られた破砕物を目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩で分級することにより、ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Cという。以下の表1ではCと表記)を得た。
【0080】
調製例4
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕の濃度が10質量%である水溶液(液温:20℃)を容器の内面における縦の長さが25cm、横の長さが20cm、深さが7cmであるポリプロピレン製の直方体の樹脂容器内に、深さが約2mmとなるように注いだ後、当該樹脂容器を冷凍室(室内温度:-20℃)内に入れ、5時間冷却した後、冷凍室から取り出し、室温となるまで室温中で放置することにより、シートを得た。
【0081】
次に、前記で得られたシートを前記樹脂容器から取り出し、乾燥器内に入れ、60℃となるまで加熱し、同温度で10分間保持した後、乾燥器から取り出し、放冷することにより、乾燥されたシートを得た。前記で得られたシートを乳鉢で破砕し、目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩を用いて破砕物を分級することにより、架橋ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Dという。以下の表1ではDと表記)を得た。
【0082】
調製例5
平均重合度が500であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-105〕の濃度が10質量%である水溶液(液温:20℃)を容器の内面における縦の長さが25cm、横の長さが20cm、深さが7cmであるポリプロピレン製の直方体の樹脂容器内に、深さが約2mmとなるように注いだ後、前記樹脂容器を冷凍室(室内温度:-20℃)内に入れ、5時間冷却した後、冷凍室から取り出し、室温となるまで室温中で放置することにより、シートを得た。
【0083】
次に、前記で得られたシートを前記樹脂容器から取り出し、乾燥器内に入れ、60℃となるまで加熱し、同温度で10分間保持した後、乾燥器から取り出し、放冷することにより、乾燥されたシートを得た。前記で得られたシートを乳鉢で破砕し、目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩を用いて破砕物を分級することにより、架橋ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Eという。以下の表1ではEと表記)を得た。
【0084】
調製例6
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕の濃度が10質量%である水溶液(液温:20℃)を容器の内面における縦の長さが25cm、横の長さが20cm、高さが7cmであるポリプロピレン製の直方体の樹脂容器内に、深さが約2mmとなるように注いだ後、前記樹脂容器を冷凍室(室内温度:-20℃)内に入れ、5時間冷却した後、冷凍室から取り出し、室温となるまで室温中で放置することにより、シートを得た。
【0085】
次に、前記で得られたシートを前記樹脂容器から取り出し、乾燥器内に入れ、60℃となるまで加熱し、同温度で10分間保持した後、乾燥器から取り出し、放冷することにより、乾燥されたシートを得た。前記で得られたシートを乳鉢で破砕し、目開きが300μmであるJIS篩および目開きが600μmであるJIS篩を用いて破砕物を分級することにより、架橋ポリビニルアルコール粉末(以下、PVA粉末Fという。以下の表1ではFと表記)を得た。
【0086】
実施例1~30および比較例1~8
各製造例で得られたPVA溶液をA成分として用い、各調製例で得られたPVA粉末をB成分として用い、A成分とB成分とを組み合わせることにより、2成分系建材用バインダーを得た。
【0087】
次に、前記で得られた2成分系建材用バインダーで使用されているPVA溶液とPVA粉末とを混合することにより、表1に示されるPVA粉末の含有率を有する建材用バインダーを得た。
【0088】
前記で得られた建材用バインダー100質量部に対して賦形材を表1に示す量で用い、建材用バインダーと賦形材とを均一な組成となるように混合することにより、建材用組成物を得た。
【0089】
なお、表1の「賦形材の種類および量」の欄に記載の各記号は、以下の賦形材を意味する。
P:石膏〔吉野石膏販売(株)製、商品名:ハイストーンN〕
Q:おが屑〔(株)島田小割製作所製、杉のおがくず〕
R:もみ殻〔滋賀県産米、品種:コシヒカリのもみ殻〕
S:貝殻粉末〔オーエイチラボ(株)製、ホタテ貝焼成パウダー〕
T:珪藻土〔日本ケイソウ土建材(株)製、商品名:エコ・クイーン〕
【0090】
前記で得られた建材用組成物を縦8cm、横16cm、深さ5mmの成形型内に充填し、その充填物の上に100℃に加熱された金型を載置し、成形された建材から水蒸気が出なくなるまで熱プレスすることにより、長さ16cm、幅8cm、厚さ5mmを有する建材を作製した。
【0091】
前記で得られた建材の物性として、耐衝撃性、耐折り曲げ性および脆性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0092】
〔耐衝撃性〕
前記で得られた建材の両端の短辺から1cmの部分の底面を鉄製の直方体状の台に載せ、当該建材の上面からの高さが1mの位置から当該建材の中心部に向けて鋼球(質量:200g)を落下させた。当該鋼球と接触した建材の上面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて、耐衝撃性を評価した。
(評価基準)
◎:建材の表面に異状なし。
〇:建材の表面にやや窪みが認められるが、建材に割れが認められない。
△:建材の表面に明らかな窪みが認められるが、建材に割れが認められない。
×:建材に割れが認められる。
【0093】
〔耐折り曲げ性〕
前記で得られた建材の一端の短辺から1cmの部分を万力で固定し、当該建材の他端の短辺にクランプを取り付け、当該クランプに吊り秤(ドクター・メーター社製、品番:ES-PS01)を取り付けて当該吊り秤を建材の平面に対して直角の方向に引っ張り、建材が折れ曲がるときの応力(秤の測定値)を測定し、以下の評価基準に基づいて耐折り曲げ性を評価した。
(評価基準)
◎:建材が折れ曲がるときの応力(秤の測定値)が4kg以上である。
〇:建材が折れ曲がるときの応力(秤の測定値)が3kg以上、4kg未満である。
△:建材が折れ曲がるときの応力(秤の測定値)が2.5kg以上、3kg未満である。
×:建材が折れ曲がるときの応力(秤の測定値)が2.5kg未満である。
【0094】
〔脆性〕
前記で得られた建材にタッピンネジ(ステンレス鋼製、呼び径D:5mm、呼び長さL:16mm)を電動ドライバー〔パワーランド社製、品番:D018SS〕で取り付ける際に、当該電動ドライバーの変速目盛りを変化させ、当該ネジが空回りし始めるときの変速目盛りを読み取り、以下の評価基準に基づいて脆性を評価した。
(評価基準)
◎:電動ドライバーの変速目盛り(クラッチ)が3以上でもネジが空回りしない。
〇:電動ドライバーの変速目盛り(クラッチ)が3でネジが空回りする。
△:電動ドライバーの変速目盛り(クラッチ)が2でネジが空回りする。
×:電動ドライバーの変速目盛り(クラッチ)が1でネジが空回りする。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示された結果から、各実施例で得られた建材用バインダーを用いた場合には、耐衝撃強度が高く、耐折り曲げ性に優れ、低脆性を有する建材が得られることがわかる。