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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】丸棒状ワークの供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20241126BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B65G47/14 B
G01N35/04 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021016033
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119062
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北御門 脩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 繁則
(72)【発明者】
【氏名】吉永 誠法
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-71967(JP,A)
【文献】特開2008-201542(JP,A)
【文献】特開2011-59012(JP,A)
【文献】特開2002-326716(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105675899(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の丸棒状ワークを横倒しの姿勢にて並列配置で収容するワーク収容部と、
前記ワーク収容部に収容されている複数本の丸棒状ワークから1本の丸棒状ワークを切り出して別の工程又は場所に供給するワーク切出部材とを備える、丸棒状ワークの供給装置であって、
前記ワーク収容部は、当該ワーク収容部に収容されている丸棒状ワークの軸線方向と直交する一方向に傾斜する傾斜床を含み、
前記ワーク切出部材は、1本の丸棒状ワークを保持可能なワーク保持部を有し、
前記ワーク保持部は、前記傾斜床の傾斜方向における前端位置で1本の丸棒状ワークを横倒しの姿勢で保持し、当該丸棒状ワークを保持した状態で当該丸棒状ワークの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、当該丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する、丸棒状ワークの供給装置。
【請求項2】
前記ワーク保持部は、前記丸棒状ワークを保持した状態で鉛直上向きに上昇しながら当該丸棒状ワークの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、当該丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する、請求項1に記載の丸棒状ワークの供給装置。
【請求項3】
前記ワーク収容部は、前記傾斜床の傾斜方向を前後方向として当該傾斜床の上面に沿って前後にスライドするスライド板をさらに含む、請求項1又は2に記載の丸棒状ワークの供給装置。
【請求項4】
前記スライド板は、前記ワーク保持部が前記傾斜床の傾斜方向における前端位置で丸棒状ワークを保持する位置にあるときに、前記傾斜床の傾斜方向における前端側に位置し、前記ワーク保持部が丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する位置にあるときに、前記傾斜床の傾斜方向における後端側に位置するように、前記ワーク切出部材とリンク手段で連結されている、請求項3に記載の丸棒状ワークの供給装置。
【請求項5】
前記ワーク収容部は、前記傾斜床の傾斜方向における前端部の上方に、丸棒状ワークを1本ずつ通過させる大きさを有する開口を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の丸棒状ワークの供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば臨床検査や医療検査分野において使用されている採便管、採尿管、採血管のような丸棒状ワークを、別の工程又は場所に供給するための丸棒状ワークの供給装置に関する。
なお、本発明において「丸棒状ワーク」とは、上述の採便管等には限定されず、外形が概ね丸棒状のワーク(物品)を総称するもので、中空であっても中実であってもよい。
【背景技術】
【0002】
かかる丸棒状ワークの供給装置として、特許文献1や特許文献2に記載の供給装置が知られている。いずれの供給装置においても、横倒しの姿勢にて並列配置されている複数本の丸棒状ワークから1本の丸棒状ワークを切り出すことはできるが、切り出された丸棒状ワークは、横倒しの姿勢のままで別の工程又は場所に供給される。
例えば採便管の場合、一般的に起立の姿勢としてラックに収納するが、特許文献1や特許文献2に記載の従来の供給装置では横倒しの姿勢のままで供給されるので、これを起立の姿勢とするためには、別途新たな機構あるいは作業者による手作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-84183号公報
【文献】特開2011-59012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、横倒しの姿勢にて並列配置されている複数本の丸棒状ワークから1本の丸棒状ワークを切り出して、当該丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給することのできる丸棒状ワークの供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、次の丸棒状ワークの供給装置が提供される。
複数本の丸棒状ワークを横倒しの姿勢にて並列配置で収容するワーク収容部と、
前記ワーク収容部に収容されている複数本の丸棒状ワークから1本の丸棒状ワークを切り出して別の工程又は場所に供給するワーク切出部材とを備える、丸棒状ワークの供給装置であって、
前記ワーク収容部は、当該ワーク収容部に収容されている丸棒状ワークの軸線方向と直交する一方向に傾斜する傾斜床を含み、
前記ワーク切出部材は、1本の丸棒状ワークを保持可能なワーク保持部を有し、
前記ワーク保持部は、前記傾斜床の傾斜方向における前端位置で1本の丸棒状ワークを横倒しの姿勢で保持し、当該丸棒状ワークを保持した状態で当該丸棒状ワークの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、当該丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する、丸棒状ワークの供給装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の供給装置によれば、横倒しの姿勢にて並列配置されている複数本の丸棒状ワークから1本の丸棒状ワークを切り出して、当該丸棒状ワークを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明の一実施形態である丸棒状ワークの供給装置の全体構成を示す斜視図。
図1B】本発明の一実施形態である丸棒状ワークの供給装置の全体構成を示す正面図。
図2A】本発明の一実施形態である丸棒状ワークの供給装置の動作を示す斜視図。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図3】本発明の一実施形態である丸棒状ワークの供給装置の動作を示す側断面図(図2Dの状態にある丸棒状ワークの供給装置の側断面図。)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1A及び図1Bに、本発明の一実施形態である丸棒状ワークの供給装置の全体構成を示している。
図1A及び図1Bに示す丸棒状ワークの供給装置(以下、単に「供給装置」という。)1は、複数本の丸棒状ワーク(以下、単に「ワーク」という。)Wを横倒しの姿勢にて並列配置で収容するワーク収容部10と、ワーク収容部10に収容されている複数本のワークWから1本のワークWを切り出して別の工程又は場所に供給するワーク切出部材20とを備えている。
【0009】
ワーク収容部10は、平面視において、横幅がワークWの軸線方向の長さに略対応し、縦幅が横幅より長い長方形をなす角箱形状に形成されており、このワーク収容部10に収容されているワークWの軸線方向と直交する一方向に傾斜する傾斜床11を含む。
本実施形態においてワーク収容部10は、傾斜床11の傾斜方向を前後方向として傾斜床11の上面に沿って前後にスライドするスライド板12をさらに含む。
また、本実施形態においてワーク収容部10は、傾斜床11の傾斜方向における前端部の上方に、ワークを1本ずつ通過させる大きさを有する開口13を含む。具体的には、傾斜床11の傾斜方向における前端部の上方に開口13が形成されるように仕切壁14が設置されている。仕切壁14と側壁15との間の間隙の大きさ(幅)はワークWの直径に略対応する。また、開口13の大きさ(高さ)もワークWの直径に略対応する。
なお、図1A及び図1Bにおいて、ワーク収容部10の正面壁は省略している。
【0010】
ワーク切出部材20は、1本のワークWを保持可能なワーク保持部21を有する。本実施形態においてワーク切出部材20は、ワーク収容部10の側壁を兼ねる側壁15の内面に沿って上下方向(鉛直方向)に移動可能な基板22と、この基板22の上端部の一端に回転可能に連結された回転板23とを含み、回転板23の上端面がワーク保持部21となっている。
【0011】
本実施形態において供給装置1は、ワーク切出部材20を駆動させる駆動源として、ワーク収容部10の下方に回転モータ30を備えている。回転モータ30の回転軸には円盤31が固定されており、この円盤31にカムフォロア32が取り付けられている。一方、基板22には、カムフォロア32を受けるための、水平溝状のカムフォロア受け部22aが設けられている。また、基板22には、側壁15の両側面にそれぞれ設けているガイドレール15aに沿って上下方向(鉛直方向)にスライドするスライド部22bが設けられている。このような構成において、回転モータ30が回転すると、スライド部22bがガイドレール15aに沿って上下方向(鉛直方向)にスライドし、結果として基板22が側壁15の内面に沿って上下方向(鉛直方向)に移動する。
【0012】
一方、図2Aに表れているように、回転板23には、基板22との連結部側(基板22の上端部の一端側)の反対側(基板22の上端部の他端側)にガイド突起23aが設けられており、側壁15には、ガイド突起23aをガイドするガイド溝15bが設けられている。ガイド溝15bは、回転板23と基板22との連結部側(基板22の上端部の一端側)の反対側(基板22の上端部の他端側)から、回転板23と基板22との連結部側(基板22の上端部の一端側)へ向けて湾曲しながら上方向に伸びるように設けられている。このような構成により、上述の通り回転モータ30の回転により基板22が側壁15の内面に沿って上下方向(鉛直方向)に移動すると、回転板23は、上下方向(鉛直方向)に移動しながら基板22との連結部を回転中心として回転する。
【0013】
本実施形態においてスライド板12は、ワーク切出部材20の基板22のスライド部22bとリンク板40(リンク手段)で連結されている。具体的には、スライド板12の下面側にリンク連結部12aを設け、このリンク連結部12aにリンク板40の一端を連結している。リンク板40の他端は、ワーク切出部材20の基板22のスライド部22bに直接連結している。このような構成により、上述の通り回転モータ30の回転により基板22が側壁15の内面に沿って上下方向(鉛直方向)に移動すると、その移動と連動してスライド板12は傾斜床11の上面に沿って前後にスライドする。その具体的な連動の関係性については後述する。
【0014】
次に、供給装置1の動作について説明する。図2Aから図2Dに、供給装置1の動作を示している。なお、図2Aから図2Dでは、図1A及び図1Bと同様にワーク収容部10の正面壁を省略すると共に、仕切壁14及びリンク板40を破線で示しこれらを透視して示している。また、図2Aから図2Dでは、複数本のワークWのうち、ワーク切出部材20のワーク保持部21に保持された1本のワークWのみを示している。
【0015】
図2Aは、ワーク保持部21が傾斜床11の傾斜方向における前端位置でワークWを保持する位置にある初期状態を示している。この初期状態では、スライド板12は傾斜床11の傾斜方向における前端側に位置している。なお、ワークWは開口13を通じてワーク保持部21へ1本ずつ供給される。
この初期状態から回転モータを駆動して円盤31を図2A中の矢印方向に回転させると、ワーク保持部21は、図2Bから図2Cに順次示しているように、ワークWを保持した状態で鉛直上向きに上昇しながらワークWの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、図2Dに示すようにワークWを起立の姿勢とする。
図3に、図2Dの状態にある供給装置1を側断面で示している。同図に示すように、本実施形態において起立の姿勢とされたワークWは案内管50内に滑り落ちるように落下し、この案内管50を通じて、起立の姿勢のままで別の工程又は場所に供給される。
このように、ワーク保持部21がワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する位置にある状態においてスライド板12は、図2Dに表れているように、傾斜床11の傾斜方向における後端側に位置する。
そのワークWを別の工程又は場所に供給したら、回転モータ30を逆方向に回転させ、図2Aの初期状態に戻す。
【0016】
本実施形態では以上の動作を繰り返すことで、ワーク収容部10内に横倒しの姿勢にて並列配置されている複数本のワークWからワークWを1本ずつ切り出して、そのワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給することができる。
【0017】
また、本実施形態では、ワーク保持部21は、ワークWを保持した状態で鉛直上向きに上昇しながらワークWの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、ワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する。これにより、傾斜床11より高い位置において、ワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給することができるから、別の工程又は場所を傾斜床11より高い位置に設けることができる。
なお、別の工程又は場所を傾斜床11より高い位置に設ける必要がない場合には、ワーク保持部21は、鉛直上向きに上昇することなく単にワークWの軸線方向に沿った一方向に回転することにより、ワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給するようにすることもできる。この場合、ワーク保持部21を含むワーク切出部材20の一端に直接、回転モータを連結することもできる。
【0018】
また、本実施形態においてワーク収容部10は、傾斜床11の傾斜方向を前後方向として傾斜床11の上面に沿って前後にスライドするスライド板12を含む。これにより、ワーク収容部10に横倒しの姿勢にて並列配置されている複数本のワークWが流動しやすくなり、ワークWがワーク保持部21(傾斜床11の傾斜方向における前端位置)に向けて移動しやすくなる。
さらに、本実施形態においてスライド板12は、ワーク保持部21が傾斜床11の傾斜方向における前端位置でワークWを保持する位置にあるときに(図2Aの状態)、傾斜床11の傾斜方向における前端側に位置し、ワーク保持部21がワークWを起立の姿勢として別の工程又は場所に供給する位置にあるときに(図2Dの状態)、傾斜床11の傾斜方向における後端側に位置するように、ワーク切出部材20とリンク板40で連結されている。これにより、ワークWがワーク保持部21(傾斜床11の傾斜方向における前端位置)に向けてさらに移動しやすくなる。なお、本実施形態ではリンク手段としてリンク板40を用いたが、他のリンク手段を用いることもできる。
ここで、傾斜床11はワーク保持部21側に向けて傾斜しているので、スライド板12は必ずしも設ける必要はない。
【0019】
本実施形態においてワーク収容部10は、傾斜床11の傾斜方向における前端部の上方に、丸棒状ワークを1本ずつ通過させる大きさを有する開口13を含む。これにより、ワークWをワーク保持部21に向けて1本ずつ供給することができる。さらに本実施形態においてワーク収容部10には、傾斜床11の傾斜方向における前端部の上方に開口13が形成されるように仕切壁14が設置されており、仕切壁14と側壁15との間の間隙の大きさ(幅)はワークWの直径に略対応する。これにより、ワークWをワーク保持部21に向けて1本ずつ供給することができると共に、ワーク保持部21は、確実に1本のワークWを保持した状態で鉛直上向きに上昇しながらワークWの軸線方向に沿った一方向に回転することができる。
なお、ワーク保持部21は、基本的に1本のワークWのみを保持可能であるから、開口13や仕切壁14がなくても、ワーク収容部10に収容されている複数本のワークWからワークを1本ずつ切り出すことは可能である。
【0020】
また、本実施形態では、ワーク保持部21は、ワーク切出部材20の回転板23の上端面としたが、回転板23の側面に1本のワークWを保持可能な溝を設けてこれをワーク保持部とすることもできる。
【符号の説明】
【0021】
1 供給装置
10 ワーク収容部
11 傾斜床
12 スライド板
12a リンク連結部
13 開口
14 仕切壁
15 側壁
15a ガイドレール
15b ガイド溝
20 ワーク切出部材
21 ワーク保持部
22 基板
22a カムフォロア受け部
22b スライド部
23 回転板
23a ガイド突起
30 回転モータ
31 円盤
32 カムフォロア
40 リンク板(リンク手段)
50 案内管
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3